sokuhyo

Trademark Appeal Case

商標不使用取消

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023300511
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第5997222号商標(以下「本件商標」という。)は、「SECRET KEY」の文字を標準文字で表してなり、平成29年4月17日に登録出願、第3類「美容用化粧品,肌の手入れ用化粧品,顔の手入れ用化粧品,身体の手入れ用化粧品,顔・身体及び肌のケア用自然化粧品,化粧品,肌のケア及び洗浄用角質取り剤,肌の保湿用・滋養用・収れん用・手入れ用剤(医療用のものを除く。),スキンケア用乳液,肌の手入れ用乳液状化粧品,メーキャップ用化粧品,フェイシャルパック,化粧用マスク,ワイプにしみこませた顔用化粧品,美顔用マスク(化粧品),クレンジング用化粧用マスク,しわ防止用クリーム,肌の引き締め用化粧品,口紅,リップモイスチャライザー,リップコンディショナー,唇用化粧品,液状又は粉状のファンデーション,基礎化粧品,スキンモイスチャライジングクリーム・ローション,ジェル状のスキンモイスチャライジング用化粧品,美白用化粧品,肌の状態を整える化粧品,化粧用アストリンゼント,スキンクレンジング用化粧品,目元用のシート状化粧品,目元用のクリーム・化粧水・ジェル,マッサージ用化粧品,香水類,エッセンシャルオイルその他の香料,ヘアースプレー,ヘアージェル,コンディショナー,スプレー式の頭皮用コンディショナー,ヘアーコンディショナー,スキンコンディショナー,コンディショニングクリーム,ヘアーローション,整髪用化粧品,ヘアスタイリング剤,頭皮・頭髪用化粧品,毛髪用着色剤,染毛剤,防汗用化粧品,身体用防臭化粧品,身体用洗浄剤,シャンプー,ドライシャンプー,せっけん類,歯みがき」を指定商品として、同年11月17日に設定登録されたものである。

そして、本件審判請求の登録日は、令和5年8月8日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である同2年8月8日から同5年8月7日までを、以下「要証期間」という場合がある。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標について登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書、令和5年11月13日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同6年1月29日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)及び同年12月6日付け回答書(以下「回答書」という。)に対する同7年5月8日付け上申書(以下「上申書」という。)において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証(以下、証拠の表記にあたっては、「甲第1号証」を「甲1」のように省略して表記する。枝番号を全て含む場合には枝番号の表記を省略する。)を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁

(1)乙号証の検討

乙第1号証には、本件審判の予告登録日が令和5年8月8日であることが記載されている。

乙第2号証には、被請求人グループの歴史、取扱商品分野などが記載されているが、本件商標の使用についての記載はない。

乙第3号証には、MaxFactorや、SK-II(審決注:「II」の文字はローマ数字における「2」に該当する文字を表したもの。以下同じ。)の前身である化粧品「シークレットキイ」から「SK-II」誕生までの歴史などが記載されているとしても、これは英文であるため、日本での公開を目的としておらず、日本国内での本件商標の使用についての記載もない。

乙第4号証には、「シークレットキイ II フェイシャル トリートメント エッセンス」の発売についての記載があるとしても、要証期間での本件商標の使用を示すものではない。

乙第5号証には、化粧品ブランド「SK-II」について、「SKはシークレット・キー、秘密の鍵を意味する」との記載があり、「シークレット・キー」の文字が記載されているものの、当該文字は、化粧品ブランド「SK-II」の説明に使用されており、本件審判請求に係る指定商品(以下「請求に係る指定商品」という。)の商標として使用されるものではない。

乙第6号証には、SK-IIの製品「フェイシャルトリートメントエッセンス」についての記載があるようであるが、本件商標の使用についての記載はない。

乙第7号証には、SK-IIの開催記念イベント「World Pitera Day」が開催されたことが記載されているようであるが、本件商標の使用についての記載はない。

乙第8号証、乙第9号証及び乙第10号証には、イベント「SK-IIシークレットキーハウス」(以下「本件イベント」という。)について記載されているようであるが、これは、イベントの報道記事であり、当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことを示すものではないし、イベント会場の写真があるが、本件商標を確認することができない。

乙第11号証には、本件イベントについて記載され、「SK-IIの名前の由来は「Secret Key(シークレットキー)」の頭文字である「S」と「K」。」との記載があり、「Secret Key」の文字が記載されているものの、これは、イベントの報道記事であり、当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことを示すものではない。

乙第12号証には、本件イベントについて記載されているようだが、これは、イベントの報道記事であり、当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことを示すものではないし、イベント会場の写真があるが、綾瀬はるか氏によって文字が隠れてしまって、本件商標を確認することができない。

乙第13号証には、本件イベントについて記載されているようだが、これは、イベントの報道記事であり、当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことを示すものではない。

乙第14号証には、「シークレットキーII」のボトルがあるようだが小さくて確認することができず、綾瀬はるか氏が「SK-II」ブランドと「シークレットキーII」ブランドとの関係を説明しているだけのようであり、当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことは示されてない。

乙第15号証の1には、「SK-II」「THE」「SECRET」「KEY」「HOUSE」の文字があるが、これは本件イベントの施設の入り口にあるイベント名称表示であり、当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことは示されてない。

乙第15号証の2には、「SECRET」「KEY」「II」の文字があるが、当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことは示されてない。

乙第15号証の3には、「THE SECRET KEY」の文字があるが、当該文字は「SK-II」及び「PITERA」の文字と一体的になって同心円に沿って多数段で規則的に繰り返して配列されて装飾模様になっており、個々の「THE SECRET KEY」の文字部分を分離して認識すべき特段の事情は見当たらない。

乙第15号証の4には、「PITERA」「SK-II」「SECRET」「KEY」の文字があるが、当該文字は多数段で規則的に繰り返して配列されて装飾模様になっており、しかも断片的になっており、個々の「SECRET KEY」の文字部分を分離して認識すべき特段の事情は見当たらない。

乙第15号証の5には、「THE SECRET KEY」の文字があるが、当該文字は多数段で規則的に繰り返して配列されて装飾模様になっており、個々の「THE SECRET KEY」の文字部分を分離して認識すべき特段の事情は見当たらない。

乙第15号証の6には、四段併記の「THE」「SEC」「RET」「KEY」の文字があるが、英語の一単語を二段に分離して併記することは一般的ではないので「SEC」及び「RET」文字部分から「SECRET」を認識することはできず、しかも、これは本件イベントの施設の入り口にあるイベント名称表示であって、当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことは示されてない。

乙第15号証の7には、「SECRET KEY」の文字があるが、当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことは示されてない。

乙第15号証の8には、「THE SECRET KEY」の文字があるが、当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことは示されてない。

乙第15号証の9には、「THE SECRET KEY HOUSE」の文字があるが、これは本件イベントの入り口にあるイベント名称表示であり、当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことは示されてない。

乙第15号証の10には、「THE」「SECRET」「KEY」の文字があるが、当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことは示されてない。

乙第15号証の11には、「SK-II SECRET KEY」の文字があるが、複数段で規則的に繰り返して配列されて壁面の装飾模様になっており、当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことは示されてない。

乙第15号証の12には、「SECRET KEY」の文字があるが、当該文字は壁面の装飾模様になっており、しかも切り欠かれて断片的になっており、個々の「SECRET KEY」の文字部分を分離して認識すべき特段の事情は見当たらない。

乙第15号証の1ないし12、乙第16号証及び乙第17号証には、本件イベントの外装及び内装の様子が示されているようだが、その撮影日、撮影者及び撮影場所の提示を求める。

乙第18号証には、「登録商標の使用と認められる事例」が記載されている。

乙第19号証には、映画「ターミネーター」の原題が「The Terminator」であることが記載されているとしても、不使用取消審判の「社会通念上同一」の判断で、登録商標の前に「THE」を付加することが許容されるかどうかの参考にはならない。

乙第20号証には、映画「ネバーエンディング・ストーリー」の英語題名が「The Never Ending Story」であることが記載されているとしても、不使用取消審判の「社会通念上同一」の判断で、登録商標の前に「THE」を付加することが許容されるかどうかの参考にはならない。

乙第21号証には、ローマ数字「II」は識別力に乏しいことが記載されているとしても、これは、商標法第4条第1項第11号の判断基準であり、不使用取消審判の「社会通念上同一」の判断基準ではない。

乙第22号証には、ローマ数字「II」は識別力に乏しいことが記載されているとしても、これは、商標法第3条第1項第6号の判断基準であり、不使用取消審判の「社会通念上同一」の判断基準ではない。

乙第23号証には、横一連の登録商標を、二段又は三段書きにして使用した商標について、社会通念上同一性が認められたことが記載されているとしても、使用商標のデザイン化によって一連の文字であると認められたともいえるので、本件審判とは事情が異なる。

乙第24号証には、「SK-II」ブランドのウェブサイトに「Secret Key」のページがあることが示されているようだが、要証期間での本件商標の使用を示すものではないし、「Secret Key」の文字は見出しとしてのみ使用されているので、そもそも当該文字が請求に係る指定商品の商標として使用されたことは示されてない。

乙第25号証には、「SK-II」のウェブサイトの動画で「THE SECRET KEY」の文字が使用されていることが示されているようだが、要証期間での本件商標の使用を示すものではない。

(2)「SK-II」ブランド

被請求人は、答弁書において、「SK-II」が我が国において人気が高い化粧品ブランドであることを述べており、この点につき全く異論はない。

(3)「SECRET KEY」の文字と「SK-II」の関係

被請求人は、答弁書で、「マックスファクター日本支社は、1980年12月からこの「シークレットキイ II フェイシャルトリートメントエッセンス」の発売を開始した」と述べ、さらに、「当該化粧品ブランド名を「シークレットキイ II/SECRET KEY II」から、その頭文字(SECRETの「S」と、「KEY」の「K」)を組み合わせた「SK-II」に変更した」と述べている。

また、「「SK-II」は、最初は「SECRET KEY II」という名称で販売されており、これは「美肌への秘密の鍵」という意味になっている」との記載がある。

これらのことから、「SECRET KEY」の文字は、「SK-II」と密接に結びついているものと理解される。

(4)イベント「SK-IIシークレットキーハウス」(本件イベント)

被請求人は、本件イベント及びその前日に開催されたオープン記念イベント(以下「オープン記念イベント」という。)で、「SECRET KEY」(乙16の4葉目)、「THE SECRET KEY」(乙16の5葉目)及び「SECRET/KEY/II」(乙16の2葉目の赤色の円柱状の土台の上の透明なドーム型で覆ったディスプレイ内に展示されたボトル)を使用したと主張しているので、これらにつき検討した。

「SECRET KEY」及び「THE SECRET KEY」は、いずれも「SK-II」の文字とともに使用されており、上述したように「SK-II」は我が国において人気が高い化粧品ブランドであって、取引者、需要者に対して商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与え、それとの対比において「SECRET KEY」又は「THE SECRET KEY」の印象が薄いので、「SK-II」と結合して使用されたというべきで、単独で使用されたとはいえない。

「SECRET/KEY/II」は、展示されたボトルに書された文字であり、「会場を訪れたSK-IIブランドの愛用者(需要者)に、ブランドの歴史を感じてもらい、より一層SK-II化粧品への愛着を持ってもらいたいという意図が込められている」(答弁書)ことから、「SECRET/KEY/II」も「SK-II」と結合して使用されたというべきで、単独で使用されたとはいえない。

あるいは、答弁書で述べられているように、「「SECRET KEY」の語は、「SK-II」ブランドのイメージや世界観を表すキーワードとして、現在も「SK-II」ブランドに大切に受け継がれている」わけであるから、「SECRET KEY」(使用商標1)、「THE SECRET KEY」(使用商標2)及び「SECRET/KEY/II」(使用商標3)のそれぞれは、「SK-II」ブランドの「キーワード」にすぎず、識別表示として使用されておらず、商品の性質や成分の記載と何ら変わらない。(審決注:「使用商標1」ないし「使用商標3」の定義については、下記第3の1(3)ウを参照。)

(5)「SK-II」ブランドのウェブサイト

被請求人は、「SK-II」ブランドのウェブサイト(乙24)において、「secret-key」、「Secret Key」及び「THE SECRET KEY」が使用されていると主張しているが、「secret-key」はURLであるhttps://www.sk-ii.jp/secret-keyの一部にすぎず、「Secret Key」はタブ名称にすぎず、「THE SECRET KEY」は、「SK-II」の文字とともに使用されており、上記(4)で述べたのと同じ理由で、単独で使用されたとはいえず、あるいは識別表示として使用されていないので、請求に係る指定商品の商標として使用されてない。

なお、「SK-II」ブランドのウェブサイトに関する乙第24号証及び乙第25号証は、上記文字が使用された時期が要証期間の範囲内であることを証明していない。

3 上申書における意見

(1)本件イベントの開催

ア 乙第26号証及び乙第27号証

本件イベント及びオープン記念イベントは、「プロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナル・オペレーションズ SA」(以下「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」という。)のシンガポール支社(以下「シンガポール支社」という。)が開催し、「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」は、「ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー」(以下「本件商標権者」という場合がある。)の100%子会社である「プロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナルSARL」の100%子会社である、と被請求人は述べている。

ここで、開催主体が、「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」ではなく、その「シンガポール支社」であるということは、「シンガポール支社」が法人格を有することを前提としているようだが、その証明がされていない。

また、「シンガポール支社」が法人格を有するのであれば、「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」との関係が証明されていない。

そもそも、乙第26号証及び乙第27号証は、被請求人が作成した書面にすぎず、客観的な第三者機関(登記所、公証人、監査法人など)による証明がないので、被請求人の主張を裏付ける証拠とはなり得ない。仮に、これらによって、「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」が「プロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナル SARL」の子会社であり、「プロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナル SARL」が本件商標権者の「子会社」であることが証明されたとしても、それぞれが「100%子会社」であることは証明されてないので、「シンガポール支社」が本件商標権者の支配下にあることは証明されてない。

イ 乙第28号証ないし乙第31号証

乙第28号証として、F氏の署名入り宣誓書が提出されているが、同氏が実在することの証明、同氏が全世界のSK-IIブランドに関する上級広報責任者であることの証明、署名が真正なものであることの証明がされてない。

また、乙第28号証の宣誓書は、被請求人の支配下にある者によって作成されたものであるため、その内容には利害関係が含まれており、自己に有利な供述にすぎない可能性がある。さらに、反対尋問を経ていないことから、その信憑性には疑義が残る。

したがって、当該宣誓内容は、具体的かつ客観的な事実によって十分に裏付けられているとはいない。

被請求人は、本件イベントの開催場所に関する使用料の請求書写し(乙29)を提出しているが、当該請求書は文字・記号・線のみで構成された電子データにすぎず、誰でも容易に作成可能なものである上、その発行者の実在性や被請求人グループからの独立性を示す証拠も存在しない。このため、当該請求書には客観的な信憑性が認められず、その発行が実際の支払い、さらにはイベント開催の事実を直接的に証明するものとはいえない。

さらに、請求書の発行日は2023年5月22日であり、オープン記念イベント及び本件イベントが開催された期間(2023年7月28日から30日)よりもかなり前の日付であるため、実際に支払いが行われたかは不明であり、オープン記念イベント及び本件イベントが実際に開催されたことを証明するものではない。

また、たとえ請求書の「Product Name」に記載された「BATSU」及び「STANDBY」が、本件イベントの開催場所であると乙第8号証に記載されていたとしても、同号証の発行者に関する会社情報が不明確である以上、証拠としての能力には疑義がある。さらに、乙第30号証についても発行者が明らかでなく、その情報の信頼性や客観性が確保されていないことから、当該証拠に証拠能力を認めることはできない。

したがって、これらの証拠からは、シンガポール支社がオープン記念イベント及び本件イベントの開催主体であることを裏付けることはできない。なお、商標法第50条は、商標登録の取消し要件として「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないとき」と規定している。

しかし、シンガポール支社が法人であることは証明されておらず、そのため専用使用権者又は通常使用権者になり得ない。仮にシンガポール支社が登録商標を使用していたとしても、それは専用使用権者又は通常使用権者による使用とはみなされず、本件における商標の使用実績を証明するものとはならない。

乙第31号証として、国際PRアワード「PR Awards Asia-Pacific 2024」に関する記事及びその訳文が提出されており、本件イベントが「Fashion & Beauty」部門でゴールド、「PR Event」部門でブロンズを受賞した旨が記載されているが、当該記事の「Market」(市場)欄には「Singapore」と記載されている一方で、実際にイベントが東京で開催されたことを裏付ける証拠は示されていない。また、当該アワードへの申請主体が誰であったのかも明らかにされておらず、さらに、提出された記事自体が真正なものであることについての証明もなされていないため、証拠としての信用性には疑義がある。

ウ 乙第32号証

乙第32号証として、ライセンス契約書の変更契約書が提出されているが、仮に「シンガポール支社」が本件商標権者の支配下にあるのであれば、本件商標の使用許諾は当然の前提といえるため、かえってこのような契約が締結されていること自体、「シンガポール支社」が本件商標権者の支配下にない可能性を示唆するものといえる。そうであるとすれば、乙第32号証は本件商標の使用を個別具体的に許諾した証拠とはならず、包括的な使用許諾に関する形式的な契約にすぎない。仮にライセンス契約の存在を認めたとしても、それは本件商標が使用された可能性を示すにとどまり、要証期間内に通常使用権者によって本件商標が実際に使用されたという具体的事実を証明するものではない。

乙第32号証の契約書は、黙示の使用許諾の存在を裏付ける証拠としても提出されているようだが、仮に「シンガポール支社」が本件商標権者の支配下にあるのであれば、黙示の使用許諾は当然に行われるものであり、あえて主張する必要性は認められない。むしろ、このような主張を行うことにより、「シンガポール支社」が本件商標権者の支配下にない可能性が示唆されることとなり、そうであれば、黙示の使用許諾自体が成立し得ないことになる。仮に黙示の許諾があったとしても、それのみでは、要証期間内に本件商標が実際に使用されたという具体的事実を証明するものではない。

(2)乙第15号証の写真

被請求人の主張は、本件イベントの会場内外を撮影した写真(乙第15号証の各枝番号)は、シンガポール支社が専門のカメラマンに依頼して撮影したもので、カメラマンは5名であり、撮影期間は2023年7月28日から8月2日であり、各カメラマンの撮影日時は、乙第35号証の各カメラマンのページに記載されているというものであるが、乙第35号証には各カメラマンの紹介やスケジュールの記載があるものの、そのスケジュールが何を指すのかは不明である。また、本件イベントの会場と思われる写真が掲載されていたとしても、その説明が一切ないため、乙第15号証の各枝番号に係る写真の撮影日及び撮影者を証明するものとはならない。

なお、乙第16号証及び乙第17号証の写真については、回答書で「当該証拠の写真はインターネット上で一般的に公開されている個人のブログを引用した証拠であるから、被請求人がこれを特定することは困難である。」と述べて、撮影者及び撮影日の証明を断念している。

被請求人は、「SK-II」の公式インスタグラムの投稿(乙36、乙37)を証拠として提出しているが、当該アカウントの管理者が明らかにされておらず、被請求人と何らかの関係を有する可能性があることから、当該投稿は独立した第三者による客観的な証拠とはいい難く、内容にも主観的な要素が含まれているおそれがある。さらに、これらの投稿は反対尋問を経ておらず、その信憑性には疑義が残る。

加えて、投稿内容が加工・編集されている可能性も否定できず、ハッシュタグや説明文が必ずしも客観的事実を示すものとは限らない。

被請求人は、乙第36号証に掲載された写真が乙第15号証の2及び3と同一の内装を撮影したものであり、また乙第37号証の写真が乙第15号証の5とほぼ同一であると主張しているが、被請求人が世界的に事業を展開する企業であることを踏まえると、これらの写真が日本国外で撮影された可能性を排除することはできない。

したがって、当該写真は他国で実施された類似のプロモーションイベントのものである可能性や、スタジオセット等で撮影されたイメージ写真である可能性もあり、本件イベントの実際の会場を撮影したものであることは証明されてない。

さらに、乙第37号証の投稿は、本件審判の予告登録日(2023年8月7日)よりも後の2023年8月11日に行われたものであるため、投稿自体を証拠とすることはできないし、投稿内容を検証するためにはインスタグラムの管理者を明らかにする必要があるが、その点についての証明はなされていない。

また、被請求人は「kazumin」のインスタグラム投稿(乙第38号証)を提出しているが、当該アカウントの管理者を第三者が特定することはできないので、乙第38号証は証拠能力に欠ける。

以上の点から、乙第36号証から乙第38号証にかかるインスタグラムの投稿をもって、乙第15号証の1から12に示された本件イベントの内装が、本件イベント期間中に本件イベント会場に実際に存在していたことを証明することはできない。

(3)SK-IIのウェブサイトにおける本件商標の使用

ア 被請求人は、乙第28号証を以て、SK-IIのウェブサイト(乙24、以下「本件ウェブサイト」という。)の提供者がシンガポール支社であることは明らかであると述べているが、乙第28号証の証明力には疑義があり、このため、本件ウェブサイトの提供者、本件商標権者と当該提供者との関係、本件ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。

イ 被請求人は、本件ウェブサイトには「Secret Key」(使用商標4)のタブがあり、タブをクリックすると、動画が再生され、動画内に「THE/SECRET KEY」(使用商標5)、「THE/SECRET/KEY」(使用商標6)が表示され、ウェブページ下部にはSK-II商品の説明や購入ページも表示されると述べているが、本件ウェブサイトの提供者、本件商標権者と当該提供者との関係、本件ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。(審決注:「使用商標4」ないし「使用商標6」の定義については、下記第3の2(4)イを参照。)

ウ 使用商標4

被請求人は、使用商標4の「Secret Key」は本件商標の欧文字部分と同じつづり、同じ称呼、同じ観念を持ち、大文字・小文字の点で本件商標と異なるが、大文字と小文字の相互間の使用は登録商標の使用と認められると述べているが、本件ウェブサイトの提供者、本件商標権者と当該提供者との関係、本件ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。

エ 使用商標5

被請求人は、使用商標5の「THE/SECRET KEY」は、「THE」が小さく書かれているため、実質的に「SECRET KEY」の使用と考えられ、「シークレットキー」の称呼、及び「秘密の鍵」の観念は共通しているので、社会通念上同一と認められると述べているが、本件ウェブサイトの提供者、本件商標権者と当該提供者との関係、本件ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。

オ 使用商標6

被請求人は、使用商標6の「THE/SECRET/KEY」は三段表記であるが、「THE」は自他商品識別機能を発揮しないため、「SECRET KEY」部分が要部であり、「SECRET」と「KEY」の二段表記である点でも本件商標と異なるが、「シークレットキー」の称呼、及び「秘密の鍵」の観念は共通しており、社会通念上同一と認められると述べているが、本件ウェブサイトの提供者、本件商標権者と当該提供者との関係、本件ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。

カ 被請求人は、使用商標4ないし使用商標6は、本件ウェブサイトで要証期間以降、「化粧品」の宣伝広告のために使用され、これは「商品に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当し、シンガポール支社は、通常使用権者として本件ウェブサイトで商標を使用していると述べているが、本件ウェブサイトの提供者、本件商標権者と当該提供者との関係、本件ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。

(4)単独の使用

被請求人の主張は、本件イベントがSK-IIのプロモーションであるため、SK-IIとの関連付けは当然であり、使用商標1ないし使用商標3はそれぞれ単独で使用されているというものである。

使用商標1について、被請求人は、使用商標1がパネル前面に表示され、側面に小さく表示された「SK-II」とは視覚的に分離していると主張するが、イベント全体がSK-IIブランドのプロモーションであり、パネル全体としてもSK-IIのブランドイメージを構成する一部であることは明らかである。

したがって、使用商標1は、SK-IIブランドの一環として認識されるものであり、独立した商標として認識されるものではない。

使用商標2について、被請求人は、使用商標2が「SK-II」よりも文字数が多く目立つように書かれていると主張するが、これもSK-IIブランドのプロモーションの一環として意図的にデザインされたものであり、使用商標2が独立した商標として認識されることを意味するものではない。

使用商標3について、被請求人は、使用商標3が「SK-II」の文字と離れて展示されていると主張するが、イベント全体がSK-IIブランドのプロモーションであることを考慮すれば、使用商標3もSK-IIブランドに関連付けて認識されるのは当然である。物理的な距離のみをもって、単独で使用されていると結論付けることはできない。

したがって、使用商標1ないし使用商標3は、本件イベント全体、並びに個別の展示物においても、SK-IIブランドと密接不可分に結びついて認識されており、単独で使用されているとは到底いえない。

被請求人は、本件ウェブサイトで「SECRET KEY」が単独で使用されており、使用商標4のタブをクリックすることでSK-II商品の説明や購入ページにつながるため、自他商品識別機能を発揮していると主張するが、本件ウェブサイトの提供者、本件商標権者と当該提供者との関係、本件ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていない。

(5)出所表示

被請求人の主張は、「SECRET KEY」がキーワードであるとしても、出所表示としての使用を否定するものではないというものであるが、「SECRET KEY」がキーワードである場合、それは商品の内容や特徴を説明するものであり、出所を識別する機能は乏しいといわざるを得ない。

宣伝広告に使用されたとしても、それが必ずしも出所識別標識としての使用を意味するものではない。宣伝広告では、商品の魅力を伝えるための様々な表現が用いられるが、その全てが出所を識別するための商標として認識されるわけではない。

被請求人は、使用商標1ないし使用商標3が商品の性質等を直接的に表す語ではなく、第三者が広く使用している語でもないと主張するが、これは「SECRET KEY」という言葉が、化粧品関連の宣伝において、決して一般的でないとはいい切れない点を看過している。

被請求人は、展示態様からも出所表示として使用されていると認識するのが自然であると主張するが、イベント全体がSK-IIのプロモーションである以上、SK-IIのブランドイメージを強化する目的で表示されたものと解釈するのが自然である。

被請求人は、セールチラシの例を挙げているが、これは個別の事例であり、本件にそのまま当てはめることはできない。

以上の点から、「SECRET KEY」は、本件イベントにおいて、出所表示として使用されているとは到底いえない。

(6)商標法第50条の解釈

商標法第50条は、長期間にわたり使用されていない商標の存続がもたらす弊害を防止することを目的としている。同条における「使用」とは、指定商品又は指定役務に対して商標が何らかの態様で用いられていれば足りると解釈されており、必ずしも商標が商品の出所表示機能を果たしていることまでは求められていない。

もっとも、「何らかの態様での使用」とはいっても、登録商標が取引上、独立した出所表示として認識され得る態様で使用されていることが必要である。他の商標と結合された結果、登録商標部分が独立して出所表示機能を果たしていないような使用態様は、商標法第50条における「使用」とは認められない。

実際、これまでの判例において、登録商標部分が独立して認識されない結合商標の使用が、同条にいう「使用」と判断された例は確認されていない。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、答弁書及び令和6年10月11日付け審尋に対する回答書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第43号証を提出している。

1 答弁書

(1)答弁の理由

本件商標と社会通念上同一の商標が、商標権者により、要証期間に、請求に係る指定商品中、第3類「(化粧品に含まれる)化粧水」並びにその他の「化粧品」について、日本国内で使用されている。

(2)グローバルスキンケアブランド「SK-II」について

被請求人である「ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー」(本件商標権者)は、米国の本社を置く世界的な大企業であり、我が国も含め、世界180カ国以上の国・地域において、衣料用洗剤、衣料用柔軟剤、台所用洗剤、エアケア製品、化粧品・スキンケア製品、ヘアケア製品、シェービング用品、電気シェーバー・ビューティーケア製品、乳幼児用紙おむつ、吸水ケア製品など、日常生活に欠かせない多種多様な製品を、180年以上の長きにわたり、製造・販売している企業である(乙2)。

本件商標権者が製造販売する化粧品・スキンケア製品のうち、特に我が国において人気が高い化粧品ブランドとして、「SK-II」が挙げられる。

(3)本件商標の使用について

ア 「SK-IIシークレットキーハウス」(本件イベント)のイベントの概要

化粧品「SK-II」ブランドを展開する本件商標権者は、令和4年(2022年)から、「ワールドピテラデー(The Wor1d Pitera Day)」というグローバルイベントを開催し、「SK-II」製品に使用されている独自の成分「ピテラ」の魅力を発信している。令和4年は、7月13日にベルサール高田馬場(東京都新宿区大久保)で当該イベントが行われた(乙7)。

令和5年は、このイベントの名称を「ワールドピテラマンス」とし、この一環として、7月29日(土)及び30日(日)に、「SK-IIシークレットキーハウス」という入場無料のポップアップイベントを、東京表参道の「Standby Harajuku,Batsu Art Gallery」(東京都渋谷区神宮前)で開催した(乙8、乙9)。

このイベントは、参加者に、五感を通じて「ピテラ」(SK-II製品に使用されている独自の成分)の10の秘密を知ってもらい、SK-II製品(化粧品)の素晴らしさを広めることを目的とした宣伝広告イベント(プロモーションイベント)である。イベントでは、SK-IIの名前の秘密から始まり、「ピテラ」の製造過程の秘密などに関するコンテンツ、肌測定器による肌診断コーナーや、「ピテラ」が90%以上含まれているSK-IIの看板商品「フェイシャルトリートメントエッセンス」(化粧水)をはじめとするSK-II製品がお試しできるブース等の体験型コンテンツも用意されていた(乙8~乙11)。参加希望者は、事前に「SK-II」のウェブサイト(https://www.sk-ii.jp/secret-key-house-event)より予約を行い、参加するしくみであった(乙8)。

イ 「SK-IIシークレットキーハウス」オープン記念イベント

本件イベントの開催前日である令和5年7月28日には、「SK-IIシークレットキーハウス」オープン記念イベントが開かれ、SK-II製品のグローバルアンバサダーを務める女優の綾瀬はるか氏が登壇した(乙12)。

このオープン記念イベントの様子をおさめた動画が、YouTubeにて公開されている(乙13)。その動画の複数の画像をキャプチャし、併せて司会並びに綾瀬はるか氏の発言を記載したものを、乙第14号証として提出する。乙第14号証に表れるとおり、まず綾瀬はるか氏が登壇する前、壁に書された「SK-II」と「THE SECRET KEY」の文字が写されている。そこに綾瀬はるか氏が登壇すると、用意された箱の中から化粧品ボトルを取り出し、手に持ったボトルを見ながら「シークレットキーと書いてあります。」とコメントしている(手に持ったボトルには、「SECRET/KEY/II」の文字が付されている)。

これは、「SK-II」の前身「SECRET KEY II」のボトルであり、このボトルを見ながら、「「SK-II」は、最初は「SECRET KEY II」という名称で販売されており、これは「美肌への秘密の鍵」という意味になっている」というような話が展開されている(乙14)。その後、綾瀬はるか氏の肌年齢や美容の秘訣等の話があり、最後に綾瀬はるか氏が現在の「SK-II」の看板商品「フェイシャルトリートメントエッセンス」(化粧水)のボトルを手にして、写真撮影に応じるところでイベントの動画は終了している。

ウ 本件イベントの内容、及び会場ディスプレイやオープニングイベントにおける本件商標の使用

本件イベントは、上述のとおり、SK-IIの看板商品である「フェイシャルトリートメントエッセンス」(化粧水)や、その他のSK-IIの化粧品を宣伝広告するためのプロモーションイベントである。すでにご説明させていただいたとおり、「SK-II」は、もともと「SECRET KEY II」の商品名で発売されていたもので、「SK-II」の「SK」とは「SECRET KEY」の頭文字に由来している。「美肌への秘密の鍵」を意味する、この「SECRET KEY」の語は、「SK-II」ブランドのイメージや世界観を表すキーワードとして、現在も「SK-II」ブランドに大切に受け継がれているものである。このイベントにおいては、そういった初代「SECRET KEY II」へのオマージュも込めて、会場のいたるところに「SECRET KEY」の文字をあしらったディスプレイや内装が使用されていた。乙第15号証として、イベント会場の外装及び内装の様子を撮影した写真を提出する。

また、こういったディスプレイや内装は、本件イベント参加者が、後日、参加レポートとしてその内容に関する記事をあげているウェブサイトやブログの写真でも、確認することができる。その一例として、まず、当該イベント参加者によるブログ記事を、乙第16号証として提出する。乙第16号証のブログ記事には、イベント会場内で撮影した内装ディスプレイの動画が掲載されている。乙第16号証内に、黄色の矢印で印をつけた動画の画像キャプチャを、乙第17号証として提出する。横一連に書した「SECRET KEY」の文字を、反時計回りに90度回転させた態様(欧文字が下から上に読まれるように記載された態様)で、赤色のパネルに白抜きで書されているものが、イベント会場にディスプレイされていた(乙16、乙17)(以下、当該ディスプレイに表れる商標を「使用商標1」という。)。なお、このディスプレイは、乙第15号証の5の写真右側にも写っている。また、乙第15号証の7には、これと色違い(白色のパネルに赤色で文字が書されている)のディスプレイが写っている。

次に、オープン記念イベントにおいては、二段に書された「SK-II」と「THE SECRET KEY」の標章が白抜きで表示されている赤色のパネルの前で、SK-II製品のグローバルアンバサダーである綾瀬はるか氏が、SK-II製品に関する話をし、最後にはSK-IIの看板商品である「フェイシャルトリートメントエッセンス」(化粧水)のボトルを手にして写真撮影に応じている(乙13、乙14)。さらに、本件イベント会場おいても、乙第16号証において黄色の矢印で印をつけた写真に表れるとおり、赤色の壁に「THE SECRET KEY」の文字が、白抜きで上段に5行、下段に6行書されており、その間に「SK-II」の文字が白抜きで大きく書されている内装が施されていた(乙17)(以上に使用されている「THE SECRET KEY」の標章を、まとめて「使用商標2」という。)。なお、この内装は、乙第15号証の5にも写っており、「THE SECRET KEY」の文字は、赤色の床にも繰り返し、白抜きで記載されていることがわかる。

さらに、本件イベント会場には、赤色の円柱状の土台の上に飾った、「SK-II」の前身である「SECRET KEY II」の「フェイシャルトリートメントエッセンス」のボトルを、透明なドーム型で覆ったディスプレイも展示されていた(乙10、乙16)。このディスプレイは、乙第15号証の2及び3にも写っている。

このディスプレイの円柱状の赤色の土台の周囲には、「SK-II」「PITERA」「THE SECRET KEY」の文字がぐるっと一周、白抜きで書されており、その下の赤色の地面にも、このディスプレイを囲むように、「THE SECRET KEY」と「PITEA」の文字が、中心の小さな文字から外側の大きな文字へと文字の大きさを変えながら、白抜きで何周にも書されている。そして、この透明なドーム内に展示されたボトル上には、「SECRET/KEY/II」の文字が、三段に書されている(以下、このボトル上に表示された商標を「使用商標3」という。)。このようなボトルを展示することで、会場を訪れたSK-IIブランドの愛用者(需要者)に、ブランドの歴史を感じてもらい、より一層SK-II化粧品への愛着を持ってもらいたいという意図が込められている。

エ 以上のとおり、本件イベント会場では、少なくとも、使用商標1「SECRET KEY」、使用商標2「THE SECRET KEY」並びに使用商標3「SECRET/KEY/II」が、「SK-II」の看板商品「フェイシャルトリートメントエッセンス」(化粧水)や、その他のSK-IIの化粧品と関連付けられて、これらの「SK-II」ブランドの化粧品の宣伝広告のために表示されていた。

(4)使用商標について

ア 使用商標1

本件イベント会場のディスプレイに使用されていた使用商標1「SECRET KEY」(乙15の5、乙16、乙17)は、標準文字からなる本件商標とほぼ同じ書体からなり、欧文字のつづりは同一である。したがって、両者は「シークレットキー」の称呼及び「秘密の鍵」の観念において同一である。一方、使用商標1は、横一連に書した「SECRET KEY」の文字を、反時計回りに90度回転させた態様(欧文字が下から上に書されている態様)である点で、左横書きの本件商標とは異なっている。

ここで、特許庁審判便覧(以下「審判便覧」という。)「登録商標の不使用による取消審判53-01」によれば、「その他社会通念上同一と認められる例」の「例3」として、「縦書きによる表示態様とこれに対応すると認められる左横書き又は右横書き(ローマ字にあっては、右横書きを除く)による表示態様の相互間の使用」の記載がある(乙18)。

これに基づけば、横書きの欧文字商標を反時計回りに90度回転させて縦に表示する態様である使用商標1と、左横書きのローマ字(欧文字)表記である本件商標は、「縦書きによる表示態様とこれに対応すると認められる左横書きによる表示態様の相互間の使用」に該当(若しくは同一視)し得るから、使用商標1は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められるものと考えられる。

イ 使用商標2

本件イベント会場のディスプレイに使用されていた使用商標2「THE SECRET KEY」(乙13、乙14、乙15の5、乙16、乙17)は、標準文字からなる本件商標とほぼ同じ書体からなり、単語の間にスペースがある点や、横一連に書されている点も同一である。一方、使用商標2は語頭に「THE」が付加されている点で、両者は異なる。

ここで、「THE」は、英語の定冠詞であり、我が国においては中学校の英語授業の初期段階で学習する初歩的な英単語である。「THE」は、直接的に該当する日本語が存在しないこともあり、翻訳する場合、「THE」の存在は、原則として観念に影響を及ぼさない(もちろん、翻訳の際に考慮はされ得る)。特に、文章において使用される場合に比べ、単語に付される場合、日本人の感覚として「THE」の有無が観念に与える影響はあまりなく、翻訳においては考慮されないことも多々ある。また、米国で制作された映画のタイトルに「THE」が含まれていても(タイトルが「THE」から始まっていても)、日本では、「THE」を表す「ザ」の音を映画タイトルに含めないことが一般的に行われていること等からも、「THE」の語が日本語において重視されない語であることは、明らかである。例えば、日本で上映された映画「ターミネーター」の英語のタイトルは「The Terminator」(乙19)であり、映画「ネバーエンディング・ストーリー」の英語のタイトルは「The NeverEnding Story」(乙20)である。

このような、我が国における「THE」の取り扱いを考慮すると、一般論として、「THE」の語は、我が国においてはさほど重要視されておらず、基本的には自他商品識別機能を発揮しない、と考えることが妥当である。よって、使用商標2「THE SECRET KEY」においても、「THE」は自他商品識別機能を発揮しておらず、使用商標2における要部は「SECRETKEY」の部分と考えられる。

以上から、使用商標2は、本件商標と同じ「SECRET KEY」を要部とするものであり、「シークレットキー」の称呼、及び「秘密の鍵」の観念が共通し、外観においてもほぼ同一であることから、使用商標2は、本件商標と社会通念上同一の商標と判断されるべきと考える。

ウ 使用商標3

本件イベント会場においては、「SK-II」の前身「SECRET KEY II」へオマージュとして、「SECRET KEY II フェイシャルトリートメント」のボトルを展示していた(乙10、乙15の2、乙15の3、乙16)。ボトル上には、「SECRET/KEY/II」(使用商標3)の文字が三段に書されている。

使用商標3と本件商標を比較すると、本件商標は横一連に書されているのに対し、使用商標3は三段に書されており、かつ語尾に「II」のローマ数字が付加されている点で異なっている。

ここで、商標は、商標を付す対象に応じて(例えば物理的な表示スペースの大きさや形状等に応じて)、適宜変更して使用されるのが一般的である。本件商標は横一連に書された態様であるが、これを縦長の化粧品ボトル上に表示しようとするとき、正面から見て文字がすべて見えるようにするためには、かなり小さな文字で表示することとなる。商標をより目立たせようとする場合、ボトルのような細長い物体が対象であれば、これを二段あるいは三段に書するということは、通常の企業活動において行われる範ちゅうであるといえる。

また、使用商標3における「II」は、算用数字の「2」を表すローマ数字であり、各種商品を取り扱う業界においては、商品の型式、規格、品番等を表す記号、符号等として、原則として識別力に乏しいと判断されるものである。ご参考までに、商標中に含まれる「II」部分につき、識別力に乏しいと判断した審決を、乙第21号証及び乙第22号証として提出する。

そうすると、使用商標3「SECRET/KEY/II」において、自他商品識別機能を発揮している要部は「SECRET/KEY」部分であると考えられる。そして、当該要部は二段に併記されているものの、右側の語尾部分を揃えて、全体としてまとまりよく一体的に書されており、かつ本件商標とは「シークレットキー」の称呼、並びに「秘密に鍵」の観念も共通する。

したがって、使用商標3は、本件商標と社会通念上同一の商標と判断されるべきものである。

参考までに、横一連の登録商標「電撃Hobbymagazine」について、「電撃」、「HOBBY」及び「MAGAZINE」の各文字の大きさ、書体、色彩を変更し、また「HOBBY」と「MAGAZINE」を二段に書して使用した商標を、社会通念上同一と認めた審決を提出する(乙23)。

このような審決からも、上記のように判断すべきとの被請求人の主張の妥当性が裏付けられるものと思料する。

エ 以上のとおりであるから、使用商標1ないし3は、本件商標と社会通念上同一の商標と認められるべきである。

(5)使用商品及び使用の行為について

SK-IIブランドの「フェイシャルトリートメントエッセンス」(化粧水)やその他の「化粧品」を宣伝広告するプロモーションイベントである「SK-IIシークレットキーハウス」(本件イベント)や、そのオープン記念イベントで、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標1ないし3が使用されていることから、本件商標権者によるこのような行為は、「商品(化粧品)に関する広告に標章を付して展示する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当するといい得る。よって、本件商標権者は第3類「(化粧品に含まれる)化粧水」や「化粧品」に、本件商標と社会通念上同一の商標を使用しているといえる。

(6)要証期間内における使用

本件商標権者は、令和5年(2023年)7月28日にオープニングイベントを、7月29日と30日に「SK-IIシークレットキーハウス」のイベント(本件イベント)を、我が国において開催した。

すなわち、本件商標と社会通念上同一である使用商標1ないし3が使用された、化粧水その他の化粧品の宣伝広告イベント及びそのオープン記念イベントが、要証期間内(令和5年8月8日から前3年以内)である令和5年7月28日から7月30日までの間、我が国において行われた。

(7)以上より、本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権者が第3類「(化粧品に含まれる)化粧水」や「化粧品」に使用した結果、業務上の信用が化体しているものであり、本件審判の取消の対象とはなりえない商標である。このような商標登録を取消すことは業務上の信用の化体しない商標の整理を図るという不使用取消審判制度の趣旨に反するだけではなく、業務上の信用の保護という法目的にも反するものである。

2 審尋に対する回答書における主張

被請求人が提出した証拠からは、要証期間内における本件商標の使用の事実を確認できない旨の合議体からの審尋に対し、被請求人は要旨以下のとおり回答した。

(1)「「SK-IIシークレットキーハウス」(本件イベント)が誰によって行われたか(主催者)を明らかにするとともに、本件商標権者と当該主催者との関係を説明し、それらを証する証拠を提出してください。」との審尋について

ア 令和5年7月29日及び30日に開催された本件イベント、並びに同年7月28日に開催されたオープン記念イベントの開催主体は、いずれも本件商標権者の子会社である「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」のシンガポール支社である。

「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」は、本件商標権者の100%子会社である「プロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナルSARL」の100%子会社である。

また、「プロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナルSARL」と「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」が、本件商標権者の子会社であることの証拠として、本件商標権者が2021年に作成し、米国証券取引委員会(Securities and Exchange Commission/通称SEC)に提出したSubsidiaries(子会社)のリスト(本件商標権者のスタンプ付き)を、乙第27号証として提出する。乙第27号証リストには、両社が記載されている。

「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」のシンガポール支社は、アジア太平洋地域の地域企業として、プランドデザインとエクイティ、製品供給、消費財のマーケティングと流通を含む、本件商標権者に係るブランド全般の事業戦略と計画を策定することである。これには、本件商標権者に係る化粧品ブランド「SK-II」の事業展開も含まれるため、本件イベントやオープン記念イベントは、シンガポール支社が開催主体となり、日本において開催したものである。また、その際、シンガポール支社は、本件商標権者より本件商標(並びにこれと社会通念上同一の商標)の使用に関する許諾を受け、通常使用権者として使用商標1ないし3を同イベントにおいて「化粧品」について使用した。

イ 次に、シンガポール支社が本件イベントの開催主体であることを示す証拠として、シンガポール支社における、全世界のSK-IIブランドに関する上級広報責任者であるF氏署名の宣誓書及びその訳文(乙28)、並びにシンガポール支社宛に発行された、本件イベントの開催場所使用料の請求書写し(乙29)を提出する。

まず、乙第28号証について、署名者であるF氏は、本件イベントとオープン記念イベントの企画担当者(宣誓書の項目5)であり、これらのイベントが、シンガポール支社により開催されたことを述べている(宣誓書の項目4)。乙第28号証においては、「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」が、本件商標権者の子会社であることも述べられている(宣誓書の項目2)。

次に、乙第29号証の請求書について、発行者である「en one tokyo inc.」(en one tokyo株式会社)は、本件イベントの開催場所である「Standby Harajuku,Batsu Art Gallery」等の貸しスペース(ギャラリーやイベント会場)を運営する会社である(乙30)。請求項目(Product Name)として、「BATSU,MASS,STANDBY,TERRACE Usage fee 7/23(Sun)-8/4(Fri),2023 for 13 days」の記載がある。この「BATSU」「MASS」「STANDBY」は、同社が運営している貸し出しスペース(ギャラリーやイベント会場)の名称で、「BATSU」は「BATSU Art Gallery」を示しており、「STANDY」とともに、本件イベントの開催場所となっていた(乙8)。なお、「MASS」は本件イベントの開催場所として、乙第8号証等に記載はされていないが、乙第30号証に記載のとおり、これらのスペースは同じ並びに位置し、近接していることから、本件イベント開催にあたりまとめて賃借したものと思料される。そして、使用期間として2023年7月23日から8月4日と記載されているところ、オープン記念イベントと本件イベントは、2023年7月28日から30日に開催されたものであり、準備期間や撤収期間を考慮すれば、上記賃借期間に特に不審な点はない。

さらに、シンガポール支社が本件イベントの開催主体であることを間接的に裏付ける証明する証拠として、国際PRアワードである「PR Awards Asia-Pacific2024」(開催日:2024年6月12日(水)、開催国:香港)の結果(受賞者)を伝える記事とその訳文を提出する(乙31)。「PR Awards Asia-Pacific」は、主として前年のアジア太平洋地域におけるPR業界の優れたキャンペーン等を表彰するアワードである。このアワードでは、2023年に行われた「シークレットキーハウス」が、「Fashion & Beauty」と「PR Event」の部門で、それぞれゴールドとブロンズの賞を獲得した。その際、当該イベントが東京で行われているにもかかわらず、「Market」(市場)の欄が「Singapore」となっているのは、このイベントの開催主体がシンガポール支社だからである。

ウ 次に、シンガポール支社が本件商標の使用に関して使用許諾を受けている点(本件商標の通常使用権者である点)を示す証拠として、被請求人と「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」の間で交わされた使用許諾契約書と訳文を提出する(乙32)。

具体的には、乙第32号証の契約書は、被請求人の美容、健康、家庭用ケア製品に関するライセンス契約書(2005年7月1日締結)の変更契約書であり、本件商標権者(ライセンサー)と「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」(ライセンシー)の間で交わされ、2014年7月1日に効力が発生したものである。

契約書1.10において、本契約書の対象となる商標につき、「プロクターアンドギャンブルが、直接的または間接的に所有し、現在存在しまたは契約期間においてこれ以降開発もしくは取得する、すべての商標、商号、トレードドレス、関連するインターネットドメイン名、その他の類似の財産及びすべての。」と規定しており、本件商標が含まれることは明らかである。

また、契約書2「ライセンスの付与」として、「ライセンサーはライセンシーに対し、その権利の範囲内において、本件製品をあらゆる国において製造し、加工し、包装しまたは製造させ、加工させ、包装させることができる通常使用権を付与し、第11.2条に従い、ライセンシーまたはその他の当事者が製造しまたは製造させた本件製品を、所有権情報を表示した適切な本件商標を使用して、ならびに適切な特許および特許出願の下に、テリトリーの範囲内において流通・販売する(または提携/非提携販売業者を雇用し流通・販売させる)独占的権利を付与する」と規定しており、ライセンサー(本件商標権者)が、ライセンシー(P&Gインターナショナルオペレーションズ社)に対し、本件製品の製造や販売に対して、通常使用権等を付与している。なお「本件製品」とは、契約書1.6により、「本件商標を使用してテリトリー内で販売される添付資料1の記載の製品カテゴリーに含まれる製品」と定義されており、添付資料1によれば「美容」「高級スキンケア」が列記されていることから、「SK-II」の化粧品が含まれることは明らかである。

また、「テリトリー」とは、契約書1.9により、「ライセンシー、サブライセンシー、ライセンシーもしくはサブライセンシーが雇用する提携/非提携販売業者が、本件製品を本契約に基づき第三者に販売することを許可されたテリトリーは、米国、カナダ、プエルトリコを除く全ての国を指す。」としており、日本が含まれる。

そして、契約書3「本件商標および名義」の3.1「使用」により、「ライセンシーは、本件商標を、本契約の条件の下でのみ使用するものとし、本件商標が使用される本件製品の本契約に基づく製造、加工、広告、販売および流通に関連してのみ使用するものとする。」と定められており、ライセンシーである「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」が、「SK-II」化粧品についての宣伝広告活動として、「シークレットキーハウス」(本件イベント)や「オープン記念イベント」を行い、当該イベントにおいて本件商標と社会通念上同一の商標を使用したことがわかる。

なお、契約書16「契約期間」の16.1において、「本契約は、当初の契約期間である発効日から2020年6月30日までの間有効に存続するものとする。

本契約は、いずれかの当事者から当初の契約期間もしくは更新後の契約期間の満了日から24ヶ月前に書面による通知により契約解除の申し出がない限り、その後の継続する1年間の各年度の終了日を6月30日とし、1年毎に自動的に更新されるものとする。」と定められており、本契約は現在も有効に継続している。

エ 乙第32号証は、包括的な使用許諾に関する契約書なので、本件商標の登録番号を特定した上で、使用許諾がなされているわけではない。しかしながら、本件商標権者のように、世界中の多数の国で、多岐にわたる事業を展開している世界的企業の場合、各国で登録している商標の数は膨大であり、かつ日々増えていくため、それらに1つ1つの登録番号を記載した上で使用許諾の契約書を交わすことは現実的でなく、乙第32号証のような包括的使用許諾契約書を交わすことが商慣行上行われている。

また、乙第28号証の宣誓書において、シンガポール支社が本件商標(商標登録第5997222号)について、本件商標権者から使用許諾を得て、ライセンシーとして本件商標(社会通念上同一の商標も含む)を本件イベントにおいて使用したことが述べられている(宣誓書の項目6及び7)。このことからも、本件商標権者とシンガポール支社の間に本件商標に関する使用許諾があったことが認められる。

オ 一方、仮に乙第32号証の契約書及び乙第28号証の宣誓書では、シンガポール支社が、本件商標権者から本件商標の使用に関する許諾を受けていたこと(シンガポール支社が通常使用権者であること)が認定できない場合であっても、通常使用権の許諾は、明文の契約に限らず、黙示の契約によっても可能であるから(乙33)、以下の点から、本件商標権者はシンガポール支社に対し、黙示の使用許諾を与えていた(シンガポール支社は、本件商標権者から黙示の使用許諾を受けていた)と考えることができる。

上述のとおり、「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」は本件商標権者の子会社であるから、そのシンガポール支社が、アジア太平洋地域において化粧品ブランド「SK-II」の事業を展開していくに当たり、本件商標権者から、広告宣伝活動において本件商標を使用する(黙示の)許諾を受けていた、ということは十分に考えられることである。乙第32号証の契約書や、乙第28号証の宣誓書からも、使用許諾の存在が裏付けられている。そして、このような状況において、「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」やシンガポール支社が、本件商標の使用について、本件商標権者から許諾を受けていなかった(本件商標権者が、シンガポール支社に本件商標の使用を許諾していなかった)と考えるべき、合理的な根拠や理由もない。

カ 以上のとおり、本件イベント「シークレットキーハウス」及び「オープン記念イベント」の開催主体は、本件商標権者の子会社である「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」のシンガポール支社であり、シンガポール支社は当該イベントにおいて、本件商標権者から本件商標の使用許諾を受け、通常使用権者として要証期間内に日本国内において、本件商標と社会通念上同一と判断される使用商標1ないし3を使用したものである。

(2)「被請求人は、乙第15号証の各枝番号に係る写真の撮影日、撮影者、撮影場所を明らかにし、それらが本件イベントに係る写真であることを証してください。」との審尋について

ア 乙第15号証の1ないし12の撮影者並びに撮影日について

乙第15号証の1ないし12は、本件イベントの会場内外の様子を撮影した写真であるが、これはシンガポール支社が、記録等のために専門のカメラマンに撮影を依頼したものである。具体的には、シンガポール支社作成のカメラマンに関する資料(乙35)に掲載されているプロのカメラマン5名が、令和5年7月28日から8月2日の間に、「シークレットキーハウス」の会場内外の様子を撮影した。各カメラマンの活動日時(撮影日時)は、乙第35号証の各カメラマンのページ右上に記載されている。

イ 現時点で、乙第15号証の1ないし12の各写真が、乙第35号証のどのカメラマンにより、何日に撮影されたか、を特定することはできていないものの、乙第15号証1ないし12に表れる本件イベントの内装、特に乙第15号証の2、3及び5に写る内装が、本件イベント期間中に、本件イベント会場において存在していたことを示す証拠として、写真・動画投稿を行うSNS「Instagram (インスタグラム)」の以下の投稿を提出する。

(ア)「SK-II」の公式インスタグラム 2023年8月2日の投稿(乙36)

ハッシュタグ「#SKIISECRETKEYHOUSE」、並びに説明文に「Secret Key House」と記載されていることから、同投稿の写真が、本件イベントの写真であることがわかる。投稿された3枚の写真は、乙第15号証の2及び3と、多少角度は異なるものの、同一の内装を写したものである。これらの写真から、使用商標3が付された化粧品用ボトルが、本件イベントにおいて展示されていたことがわかる。

(イ)「SK-II」の公式インスタグラム 2023年8月11日の投稿(乙37)

ハッシュタグ「#SKIISECRETKEYHOUSE」の記載等から、同投稿の写真が本件イベントの写真であることは明らかである。投稿された3枚の写真の内、最初の1枚は、乙第15号証の5とほぼ同一であり、使用商標2に係る内装が本件イベントにおいて施されていたことがわかる。また、1枚目の写真右側に写っている縦長の広告物(縦に下から上に「SECRET KEY」の文字が書された態様の使用商標1が付されている)のディスプレイは、乙第16号証及び乙第17号証に表れるものであるが、本件投稿の2枚目及び3枚目の投稿写真にも同様のディスプレイが写っている。これらの写真から、使用商標1が付された広告物が、本件イベントにおいてディスプレイされていたことがわかる。

(ウ)「_kazumin_」のインスタグラム 2023年8月7日の投稿(乙38)

このインスタグラムの投稿は、本件イベントに参加した個人によるものである。

説明文章に「SK IIのTHE SECRET KEYのイベントヘ行ってきました。」との記載があり、2023年8月7日に投稿されたものであるから、本件イベントに参加したと考えられる。乙第38号証として提出する画像は、同投稿中の動画(静止画の自動再生)のうちの一静止画である(一般人の方であるため、提出に当たり顔を黒塗りしている。)。壁の出っ張りに腰かけている女性の後ろに鏡があり、そこに向かい側のディスプレイ(縦に下から上に「SECRET KEY」の文字が書されている)が反転して写っている。この撮影場所は、乙15号証の5に写っている本件イベント中の一コーナーである。乙第15号証の5の写真では、受かって左側に鏡が写っており、向かい側に乙第17号証の広告物がディスプレイされている。これは乙第37号証の写真とも矛盾しない。

そして、同投稿の静止画から、使用商標1が付された広告物が、本件イベントにおいてディスプレイされていたことがわかる。

ウ 以上、乙第36号証ないし乙第38号証にかかるInstagramの投稿写真から、乙第15号証の写真に表れる本件イベントの内装、特に乙第15号証の2、3及び5に写る内装が、本件イベント期間中に、本件イベント会場において撮影されたもの(このような内装が存在していたこと)が証明されたものと思料する。

(3)「被請求人は、SK-IIのウェブサイト(本件ウェブサイト)の提供者を明らかにすると共に、本件商標権者と当該提供者との関係を説明し、それらを証する証拠を提出してください。」との審尋について

SK-IIのウェブサイト(本件ウェブサイト)の提供者は、本件商標権者の子会社である「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」のシンガポール支社である。乙第28号証として提出した、シンガポール支社における、全世界のSK-IIブランドに関する上級広報責任者の署名の宣誓書及びその訳文の項目8において、「当支社は、2023年6月30日に、「SK-II」の日本語ウェブサイトにおいて、「SecretKey」に関連するウェブページの掲載を開始しましたが~(後略)」と述べていることから、本件ウェブサイトの提供者がシンガポール支社であることは明らかと考える。

また、被請求人とシンガポール支社の関係については、上記(1)において説明したとおりである。

(4)「被請求人は、インターネットアーカイブやウェブサイトのアクセスログ等によって、本件ウェブサイトと同じ内容のウェブサイトが要証期間に提供されていたことを証明してください。」との審尋について

ア 乙第28号証の宣誓書及びその訳文の項目8において、以下の内容が記載されている。

「8.当支社は、2023年6月30日に、「SK-II」の日本語ウェブサイト(https://www.sk-ii.jp/secret-key)において、「SecretKey」に関連するウェブページの掲載を開始しましたが、このページは、取消審判2023-300509号及び2023-300511号において「ザ・プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー」が提出した乙第24号証及び第25号証と同一のページです。」

上記記載により、本件ウェブサイトと同じ内容のウェブサイトが要証期間に提供されていたことが裏付けられるものと思料する。

イ このウェブサイトにおいては、タブに「Secret Key」の文字が表示されており(乙24)(以下、「使用商標4」という。)、当該タブをクリックすると乙第25号証に示す動画が再生され、動画の中で「THE/SECRET KEY」(乙25中のキャプチャ3番目)(以下、「使用商標5」という。)、並びに「THE/SECRET/KEY」(乙25中のキャプチャ5番目)(以下、「使用商標6」という。)の文字が表示される。そして、当該ウェブページの下部では、「SK-II」の各種商品の説明が記載され、さらに購入のためのページも表示される(乙24)。

(ア)使用商標4

使用商標4「Secret Key」は、本件商標の欧文字部分と同じつづりであり、かつ「シークレットキー」の称呼及び「秘密の鍵」の観念は本件商標と同一である。一方、使用商標4は、「S」と「K」以外が小文字である点で本件商標とは異なる。

ここで、乙第18号証の審判便覧「登録商標の不使用による取消審判53-01」の「(2) 登録商標の使用の認定に関する運用の事例/ア登録商標の使用と認められる事例/(ア)書体にのみ変更を加えた同一の文字からなる商標/例5」において、ローマ字の大文字と小文字の相互間の使用は登録商標の使用と認められているから、使用商標4は、本件商標と社会通念上同一と認められる。

(イ)使用商標5

次に使用商標5「THE/SECRET KEY」については、「THE」が極端に小さく書されていることから、実質的に「SECRET KEY」の使用と考えられる。本件商標は標準文字「SECRET KEY」からなるものであり、使用商標5とは欧文字のつづり、「シークレットキー」の称呼、並びに「秘密の鍵」の観念が同一である。よって、使用商標5は、本件商標と社会通念上同一と認められる。

(ウ)使用商標6

使用商標6については、「THE/SECRET/KEY」を三段に書した態様であるところ、まず語頭の「THE」については、上記1(4)イにおいて述べたとおり、我が国において「THE」の語はさほど重要視されておらず、基本的には自他商品識別機能を発揮しない、と考えることが妥当であるから、使用商標6における要部は「SECRET KEY」部分であると考えられる。

そして、使用商標6は、「SECRET」と「KEY」が二段に書されている点で本件商標とは異なっている。しかしながら、使用商標6の「SECRET」と「KEY」は二段に書されながらも右端が揃えられていることから、全体がまとまりよく一体不可分に書されているといえ、全体として「SECRET KEY」の語を表示したものと無理なく認識できる。そうすると、二段に書されているという差異点が、両商標の要部や自他商品識別標識としての機能に与える影響は極めて小さく、逆にこれらの機能において重要な「シークレットキー」の称呼及び「秘密の鍵」の観念については、本件商標と使用商標6において共通している。

よって、使用商標6は、本件商標と社会通念上同一と認められる。参考までに、登録商標を二段に書して使用した商標について、登録商標との社会通念上同一性を認めた審決「平成11年審判第31230号」(乙39)及び「取消2001-30252号」(乙40)が存在する。

(5)以上のとおり、本件商標の通常使用権者である「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」のシンガポール支社が、要証期間内である令和5年6月30日以降、本件商標と社会通念上同一の商標である使用商標4ないし使用商標6を、化粧品ブランド「SK-II」のウェブサイトにおいて使用している。これは、「商品(化粧品)に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当し、本件商標は指定商品について要証期間内に通常使用権者により使用されているといえる。

3 弁駁に対する回答書における主張

弁駁書における請求人の主張に対し、被請求人は要旨以下のとおり回答した。

(1)乙第15号証の1ないし12の撮影者並びに撮影日について

請求人は、弁駁書4頁目において、乙第15号証の1ないし12、乙第16号証及び乙第17号証について、その撮影日、撮影者及び撮影場所の提示を求めている。

これに関し、まず乙第15号証の1ないし12の撮影日、撮影者及び撮影場所については、上記2(2)で述べたとおりである。

一方、乙第16号証並びに乙第17号証の写真の撮影者や撮影日については、当該証拠の写真はインターネットで一般的に公開されている個人のブログを引用した証拠であるから、被請求人がこれを特定することは困難である。一般的には、ブログ作成者が、当該ブログ内に記載された日にち(2023年7月29日)に本件イベントに参加し、そこで撮影したと考えることが妥当と思われる。

(2)弁駁書の上記第2の2(4)の記載内容について

ア 請求人は、上記第2の2(4)において、以下のように述べている。

(ア)使用商標1及び2は、いずれも「SK-II」の文字とともに使用されており、上述したように「SK-II」は我が国において人気が高い化粧品ブランドであって、取引者、需要者に対して商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与え、それとの対比において使用商標1及び2の印象が薄いので、「SK-II」と結合して使用されたというべきで、単独で使用されたとはいえない。

使用商標3は、展示されたボトルに書された文字であり、(中略)このことから、使用商標3も「SK-II」と結合して使用されたというべきで、単独で使用されたとはいえない。

(イ)(前略)使用商標1、2及び3のそれぞれは、「SK-II」ブランドの「キーワード」にすぎず、識別表示として使用されておらず、商品の性質や成分の記載と何ら変わらない。

イ 請求人による上記ア(ア)の主張は、使用商標1ないし3は、いずれも「SK-II」とともに使用されているから(単独で使用されていないから)、本件商標と社会通念上同一の商標と認められない、との主張と理解する。上記ア(イ)の主張は、使用商標1ないし3は、出所表示機能を発揮する態様で使用されていない(出所識別標識として使用されていない)、との主張と理解する。

まず、上記ア(ア)の主張に対しては、使用商標1ないし3が使用されたイベントは、いずれも被請求人の化粧品ブランド「SK-II」の広告宣伝のためのプロモーションイベントであるため、使用商標1ないし3が、「SK-II」のブランド名と関連付けられて使用されていることは否定しない。しかしながら、使用商標1が表れるパネル前面には、「SECRET KEY」の文字が反時計回りに90度回転した態様で、赤地に白抜きで書されており、「SK-II」の文字はそのパネル側面に、「SECRET KEY」よりかなり小さな文字で書されているにすぎない。よって、使用商標1は、「SK-II」とは視覚的に分離独立して認識される態様で使用されており、いかに「SK-II」が著名な商標であるとしても、これほど文字の大きさに差があり(「SECRET KEY」がこれほど大きく書されており)、かつ表示場所が離れていれば、「SK-II」と一緒に使用されているとはいえず、また使用商標1の印象が薄い、とも到底いえないと考える。

また、使用商標2「THE SECRET KEY」については、上段に同じサイズの文字で「SK-II」がセンタリングして書されている(乙13、乙14)、あるいは「THE SECRET KEY」が壁の上から下に連続して書されている中に、「SK-II」の文字が、「THE SECRET KEY」の3倍程度大きな文字にて、中央よりやや上に書されている(乙15の5、乙16、乙17)。ここで、乙第13号証及び乙第14号証においては、使用商標2「THE SECRET KEY」は「SK-II」より文字数が多く長いため、非常に目立つ態様で書されているといえる。よって、いかに「SK-II」が著名商標であるとしても、下段に書された使用商標2の印象が薄い、とは思われない。また、乙第15号証の5、乙第16号証及び乙第17号証においては、確かに「SK-II」の文字は大きいが、「THE SECRET KEY」の文字が繰り返し連続して壁から床一面に書されていることから、その文字のインパクトは大きく、使用商標2の印象が薄い、とは思われない。

さらに、使用商標3 「SECRET/KEY/II」については、これが書されたボトルが展示された土台部分に「SK-II」の文字が書されているものの、相当程度離れており、「SK-II」の文字と共に使用されている、とはいえない。

以上のとおりであるから、使用商標1ないし3は、本件商標と社会通念上同一の商標である「SECRET KEY」「THE SECRET KEY」「SECRET/KEY/II」が、それぞれ単独で使用されているといえるから、請求人による前者の主張は失当である。

ウ 次に、上記ア(イ)の主張については、確かに被請求人は、「SECRET KEY」の語は、「SK-II」ブランドのイメージや世界観を表すキーワードとして、現在も「SK-II」ブランドに大切に受け継がれているものである旨、答弁書にて述べた。しかしながら、これは「SECRET KEY」の語が持つ歴史的意味や重要性を述べたにすぎず、使用商標1ないし3が出所表示であること(出所表示として使用されていること)を否定するものではない。当該語がキーワードであることと、出所表示として使用されていることは、矛盾せず両立する。

「SECRET KEY」の語が、「SK-II」ブランドのイメージや世界観を表すキーワードであったとしても、指定商品(化粧品)との関係で、商品の内容や特徴を直接的、具体的に表示する記述的な語ではない以上、宣伝広告への使用であっても出所識別標識として使用されていると判断されるべきである。本件の場合、「SECRET KEY」の語が「SK-II」と強く結びつくことで、「SECRET KEY」の語から「SK-II」化粧品を連想するに至っていることから、「SECRET KEY」の語は「SK-II」ブランドの出所を表示する識別標識として機能しているといえる。

また、「キーワード」とは、そのブランドのイメージや世界観などを表す語である点で、企業理念や経営方針などを表すスローガンやキャッチフレーズに近い側面もあると考えられるが、例えばスローガンやキャッチフレーズであったとしても、商品・役務のとの関係で直接的、具体的な意味合いが認められない場合や、当該スローガン等が自他商品識別標識として使用されている一方で、第三者が当該スローガンと同一又は類似の語句を宣伝広告として使用していない場合には、自他商品・役務識別機能を有するものとして、特許庁において登録が認められ得るものである(乙41)。

本件イベントやオープン記念イベントで使用された使用商標1ないし3は、使用商品「フェイシャルトリートメントエッセンス(化粧水)」やその他の「化粧品」との関係で、商品の性質や成分、その他のいかなる内容や特徴等を直接的、具体的に表す語ではなく、また第三者により商品の宣伝広告に広く使用されている語でもない。むしろ、使用商標1のように、目立つ態様で「SECRET KEY」の語が記載された広告物がディスプレイされている点、使用商標2のように、「SK-II」と同じ文字の大きさで目立つよう、あるいは繰り返し書されている点、並びに使用商標3のように化粧品ボトルに記載された態様で展示されている点から、これらは出所表示として使用されている(商標的使用態様である)と認識されると考える方が自然である。

なお、参考までに、指定商品自体に登録商標は付されておらず、指定商品に関するセール(謝恩大廉売会)を知らせるチラシに登録商標を記載したこと(セールの名称として登録商標を使用したこと)につき、指定商品に関する登録商標の使用と認めた審決が存在する(乙42)。このような審決からも、宣伝広告への登録商標の使用が、指定商品に関する出所識別標識としての使用と認められ得ることが裏付けられる。

エ 仮に使用商標1ないし3が出所表示として使用されていない(自他商品識別機能を発揮していない)と判断され得るとしても、以下の点から、本件商標登録は取り消されるべきではない。

商標法第50条の主な趣旨は,登録された商標には、その使用の有無にかかわらず、排他独占的な権利が発生することから、長期間にわたり全く使用されていない登録商標を存続させることは,当該商標に係る権利者以外の者の商標選択の余地を狭め、国民一般の利益を不当に侵害するという弊害を招くおそれがあるので、一定期間使用されていない登録商標の商標登録を取り消すことについて審判を請求することができるというものである。上記趣旨に鑑みれば,商標法50条所定の「使用」は、当該商標がその指定商品又は指定役務について何らかの態様で使用されていれば足り、出所表示機能を果たす態様に限定されるものではないというべきである(乙43、並びに東京高判平成3・2・28判時1389号128頁「POLA」事件)。

よって、使用商標1ないし3の使用が、「商品(化粧品)に関する広告に標章を付して展示する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当する以上、出所表示機能を果たす態様であるか否かにかかわらず、本件商標は指定商品について要証期間内に通常使用権者により使用されているといえるから、本件商標登録は取り消されるべきではない。

(3)弁駁書の上記第2の2(5)の記載内容について

請求人は、弁駁書の上記第2の2(5)において、ウェブサイト中で「SECRET KEY」は単独で使用されておらず(「SK-II」とともに使用されている)、あるいは識別表示として使用されていない、と述べているが、以下のとおり妥当でない。

まず、当該ウェブサイトが、「SK-II」ブランドの宣伝広告や販売のためのサイトであること、並びに本件商標が「SK-II」ブランドに係る化粧品の広告に使用されていることを考えれば、使用商標4ないし使用商標6がいずれも「SK-II」の近くで(あるいは、共に)使用されていることは当然である。しかしながら、当該ウェブサイトにおける使用態様においては、「Secret Key」「SECRET KEY」は、「SK-II」とは物理的に分離しているから、使用商標4ないし使用商標6は単独で使用されているといえる。

また、請求人は、使用商標4はタブ名称にすぎないと述べているが、当該夕ブをクリックすることで、「SK-II」の化粧品についての説明や、購入の記載にたどり着けるのであるから(乙24)、使用商標4はまさに「SK-II」の化粧品の宣伝広告のために使用されており、自他商品識別機能を発揮している。

そして、請求人は、乙第24号証及び乙第25号証は、要証期間内における使用であることを証明していないと述べているが、上記2(4)にて、要証期間内における使用であることを述べた。

第4 当審の判断

1 被請求人の提出に係る乙各号証及び被請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。

(1)「シークレットキーハウス」のイベント(本件イベント)について

PRTIMESが2023年7月13日に配信した「SK-IIが新・体験型イベント「シークレットキーハウス」を開催 ピテラTMとともにクリアな素肌へ」と題するプレスリリースに「7月29日(土)・30日(日)の二日間、一般の方も入場可能なポップアップイベント「SKIIシークレットキーハウス」を表参道のBATSU-ART GALLERY/STANDBYにて開催します。」及び「【イベント概要】」として「名称:SK-IIシークレットキーハウス」「日時:7月29日(土)11:00-21:00/30日(日)11:00-21:00(最終受付19:45)」「場所:STANDBY,BA-TSU ART GALLERY 〒150-0001 東京都渋谷区神宮前」と記載されている(乙8)。

また、「モデルプレス/modelpress」がYAHOO!ニュースを通じて2023年8月3日に配信した「「SK-IIシークレットキーハウス」が2日間限定で開催 ピテラ(TM)の秘密を五感で体験」と題する記事に「その一環として7月29日(土)・7月30日(日)の2日間、ポップアップイベント「SK-IIシークレットキーハウス」を開催した。」との記載がある(乙9)。

(2)本件イベントの会場に展示されている商品ついて

乙第36号証は、「SK-II」の公式インスタグラムに2023年8月2日に投稿された記事であるところ、「「シークレットキーハウス」のオープニングルームの中心には、SK-IIピテラTMエッセンスの最初のボトルが置かれています。」との記載(乙36訳文)とともに、当該オープニングルームを撮影した写真が掲載され、赤い円筒状の台の上に、透明のドーム型のケース内に商品のボトルが展示されている。そして、5葉目には商品のボトルがアップされた写真が掲載されており、そのボトルに使用商標3が掲載され、「KEY」の文字の下には、「FACIAL」「TREATMENT」「ESSENCE」の文字が記載されている。

また、乙第11号証は、「MAQUIA ONLINE」に2023年8月28日に公開された「SK-IIシークレットキーハウス」(本件イベント)に関する記事であるところ、その2葉目に商品のボトルが掲載され、「SK-II」の文字の下には、「FACIAL」「TREATMENT」「ESSENCE」の文字が記載され、「SK-IIの代表的な化粧水です」「毛穴、シミ、くすみ、ハリどんなお悩みにもアプローチしてくれる名品中の名品化粧水です。」の記載が認められる。

(3)本件イベントの実施者について

乙第29号証は、2023年5月22日付けの請求書(Invoice)であるところ、この請求書は「Procter & Gamble International Operations SA Singapore Branch」に対し、「en one tokyo inc.」が請求したものを内容とするものであり、「Item」の「1」の行における「Product Name」の欄に「BATSU,MASS,STANDBY,TERRACE Usage fee 7/23(Sun)-8/4(Fri),2023 for 13 days」の記載がある。また、乙第30号証は、「【】TECTURE MAG」に2023年8月29日に掲載された記事であることころ、「東京、渋谷原宿を拠点にギャラリーやイベント会場、飲食店などを運営し、アートシーンのみならずストリートカルチャーに常に新鮮な影響を与え続けるen one TOKYO。」「そんなen one TOKYOが新たに立ち上げるベニューは、表参道から1本通りに入ったところにある、同社が運営する<Stand by><The Mass><BATSU art gallery>の並びに位置する。」と記載があることから、「en one tokyo inc.」は「BATSU art gallery」のスペースの貸与に関し管理、運営をしていることが認められる。

そうすると、「本件イベント」の実施に際し、その会場となった「STANDBY,BATSU-ART GALLERY」をイベントの開催期間及びその前後の期間を含め、「Procter & Gamble International Operations SA Singapore Branch」が借用したことが認められる。

(4)「ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー」と「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」について

ア 被請求人について

被請求人である「ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー」は、米国に本社を置く世界的な大企業であり、我が国も含め、世界180カ国以上の国・地域において、衣料用洗剤、衣料用柔軟剤、台所用洗剤、エアケア製品、化粧品・スキンケア製品、ヘアケア製品、シェービング用品、電気シェーバー・ビューティーケア製品、乳幼児用紙おむつ、吸水ケア製品など、日常生活に欠かせない多種多様な製品を、製造・販売している企業である(乙2)。

イ 「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」について

被請求人の主張によれば、P&Gインターナショナルオペレーションズ社は、本件商標権者の100%子会社である(乙27)。

ウ 本件商標権者とP&Gインターナショナルオペレーションズ社の間における契約について

本件商標権者とP&Gインターナショナルオペレーションズ社の間には、「プロクター・アンド・ギャンブルの美容・健康・家庭用ケア製品に関する変更契約書」と題する契約が締結されている(乙32訳文)。

その契約書の書面には、以下のことが記載されていることが認められる。

「本契約書は、・・・ザ プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー(以下「ライセンサー」)と、・・・プロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナル・オペレーションズ・SA(以下「ライセンシー」)との間で、2014 年7月1日(以下「発効日」) に締結された。」

「1.(定義 )本契約書において、以下の用語の意味は次の通りとする」

「1.9 テリトリー:・・・許可されたテリトリーは、米国、カナダ、プエルトリコを除く全ての国を指す。」

「1.10 本件商標:プロクター アンド ギャンブルが、直接的または間接的に所有し、現在存在しまたは契約期間においてこれ以降開発もしくは取得する、すべての商標・・・」

「2.ライセンスの付与:ライセンサーはライセンシーに対し、その権利の範囲内において、・・・所有権情報を表示した適切な本件商標を使用して、・・・テリトリーの範囲内において流通・販売する・・・独占的権利を付与する。」

「3.本件商標および名義:」

「3.1 使用:ライセンシーは、本件商標を、本契約の条件の下でのみ使用するものとし、本件商標が使用される本件製品の本契約に基づく製造、加工、広告、販売および流通に関連してのみ使用するものとする。」

「16.契約期間」

「16.1 期間:・・・本契約は、当初の契約期間である発効日から2020年6月30日までの間有効に存続するものとする。本契約は、いずれかの当事者から・・・契約解除の申し出がない限り、・・・自動的に更新されるものとする。」

2 上記1によれば、以下のとおり判断できる。

(1)使用商標について

本件商標は、上記第1のとおり、「SECRET KEY」の文字を標準文字で表してなるものである。

他方、使用商標3は、別掲のとおり、「SECRET」及び「KEY」の文字を両文字の右側を揃える形で上下に横書きしてなり、「KEY」の文字の下には、小さな文字で「FACIAL」「TREATMENT」「ESSENCE」の文字が三段に横書きされ、「KEY」の文字の左側には、小さな文字で「MAXFACTOR」の文字が横書きされ、「FACIAL」「TREATMENT」「ESSENCE」の文字の左側には「II」の文字が記載された構成からなるものである。

そして、使用商標3は、その構成中「SECRET」、「KEY」及び「II」の文字部分が大きく表されているところ、「II」の文字部分は、ローマ数字であり自他商品の識別標識としての機能がないか弱いものといえる。また、「SECRET」及び「KEY」の両文字は、右側を揃える形で配置され、まとまりよく一体に看取し得ることから、その構成中の「SECRET」及び「KEY」の文字が自他商品の識別標識として機能しているものであるから、当該文字部分が使用商標3の要部であるとみるのが相当である。

そうすると、本件商標と使用商標3の要部は、同一の構成文字からなり、文字の配置及び書体の相違にすぎないことから、使用商標3は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標といえる。

(2)使用商品について

上記1(2)のとおり、本件イベントの会場に展示されている商品のボトルに使用商標3が付されており、同じく「FACIAL」「TREATMENT」「ESSENCE」の文字が表されており、「FACIAL TREATMENT ESSENCE」(フェイシャルトリートメントエッセンス)は、「SK-IIの代表的な化粧水です」等と紹介されていることから、使用商標3が「化粧水」のボトルに使用されていたといえるものである。

そして、「化粧水」は、請求に係る指定商品中の「化粧品」の範ちゅうに属する商品である。

(3)商標の使用行為、使用時期、使用者について

ア 使用行為について

上記1(2)によれば、本件イベントにおいて、商品の広告をするために、本件商標と社会通念上同一の商標といえる使用商標3が付された商品「化粧水」のボトルが展示されていたということができる。

そして、この行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する広告に標章を付して展示する行為」に該当する。

イ 使用時期について

上記1(1)によれば、本件イベントは、東京都渋谷区神宮前に所在の「STANDBY,BATSU-ART GALLARY」と称するイベント会場で2023年(令和5年)7月29日及び30日に開催されたということができる。

そして、上記開催日は要証期間内である。

ウ 使用者について

上記1(1)によれば、本件イベントは、P&Gインターナショナルオペレーションズ社のシンガポール支社がイベント会場をイベント開催期間中に借り受けていたことが認められることから、このイベントはP&Gインターナショナルオペレーションズ社のシンガポール支社が実施したといえるものである。

そして、上記1(4)によれば、本件商標権者とP&Gインターナショナルオペレーションズ社の間で業務上の契約が結ばれており、この契約は、発効日から2020年6月30日までの間有効に存続するとしているものであるが、「本契約は、いずれかの当事者から・・・契約解除の申し出がない限り、自動的に更新されるものとする」としていることから、要証期間内おいても有効に存続していたものと推認することができる。

そこで、契約の内容についてみるに、その内容は、米国、カナダ、プエルトリコを除く全ての国において、本件商標権者が有する商標権について、所有権情報を表示した適切な商標の使用を前提とし、商品の流通、販売に関する独占的権利を付与するもので、商標の使用には商品の広告に関連するものが含まれていることから、日本がその対象の地域に含まれるといえるものであり、本件商標の商標権がその対象に含まれ、上記条件における商標の使用が契約に含まれていることが認められる。

そうすると、上記契約におけるライセンシーであるP&Gインターナショナルオペレーションズ社は、ライセンサーである本件商標権者より、要証期間内に、本件商標の使用について許諾を得ていたといえることから、通常使用権者であるということができる。

また、本件イベントはP&Gインターナショナルオペレーションズ社(シンガポール支社)が実施したと認められることから、本件イベントにおける本件商標の使用は、通常使用権者により本件商標が使用されたものとみて差し支えないといえる。

(4)小括

以上によれば、本件商標の通常使用権者は、要証期間内である2023年(令和5年)7月29日及び同月30日に日本国内で商品の広告に関するイベントを開催し、そのイベントにおいて請求に係る指定商品中「化粧品」の範ちゅうに含まれる「化粧水」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付した商品のボトルを広告のため展示したものといえる。そして、この行為は商標法第2条第3項第8号に該当する。

3 請求人の主張について

(1)請求人は、使用商標3について、展示されたボトルに書された文字であり、「会場を訪れたSK-IIブランドの愛用者(需要者)に、ブランドの歴史を感じてもらい、より一層SK-II化粧品への愛着を持ってもらいたいという意図が込められている」(答弁書)ことから、「SK-II」と結合して使用されたというべきで、単独で使用されたとはいえない。また、「SECRET KEY」の語は、「SK-II」ブランドのイメージや世界観を表すキーワードとして、現在も「SK-II」ブランドに大切に受け継がれている」わけであるから、「SECRET」「KEY」「II」は、「SK-II」ブランドの「キーワード」にすぎず、識別表示として使用されておらず、商品の性質や成分の記載と何ら変わらない旨主張する。

しかしながら、「SK-II」の文字が被請求人の取り扱いに係る商品のブランドとして使用されている商標であり、その構成中の「SK」の文字を採択した経緯が「SECRET」及び「KEY」の語であり、その使用が「SK-II」の文字とともに多く使用されているとしても、請求に係る指定商品との関係において、「SECRET」及び「KEY」のいずれの語も商品の出所を表示する機能を果たし得ないという事情を見いだすことはできず、使用商標3の商品のボトルに表された「SECRET」「KEY」の文字は本件商標の使用にあたるというのが相当である。

(2)請求人は、被請求人が本件イベント及びオープン記念イベントは「シンガポール支社」により開催されたと主張することに対し、「シンガポール支社」について法人格を有する証明がされておらず、「シンガポール支社」が法人格を有するのであれば、「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」との関係が証明されていない。また、「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」が「プロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナル SARL」の子会社であり、「プロクター・アンド・ギャンブル・インターナショナル SARL」が本件商標権者の「子会社」であることが証明されたとしても、それぞれが「100%子会社」であることは証明されていないので、「シンガポール支社」が本件商標権者の支配下にあることは証明されていない旨主張する。

しかしながら、上記1及2のとおり、本件商標権者と「P&Gインターナショナルオペレーションズ社」との間には、本件商標に関する使用許諾が認められ、その支社であるシンガポール支社が本件イベントを開催したと認められることから、本件商標の使用について、必ずしも本件商標権者の支配下にある証明を要するとはいえない。

(3)請求人は、本件イベントの開催場所に関する使用料の請求書(Invoice)の写し(乙29)について、その発行者の実在性や被請求人グループからの独立性を示す証拠もないことから、この請求書には客観的な信憑性が認められない。そして、この請求書の発行日は2023年5月22日であり、開催された期間よりもかなり前の日付であるため、実際に支払いが行われたかは不明であり、この請求書の「Product Name」に記載された「BATSU」及び「STANDBY」が、本件イベントの開催場所であると乙第8号証に記載されていたとしても、乙第29号証の発行者に関する会社情報が不明確である以上、証拠としての能力には疑義がある。さらに、乙第30号証についても発行者が明らかでなく、その情報の信頼性や客観性が確保されていない旨主張する。

しかしながら、この請求書には、右上に発行者の名称、住所及び電話番号が確認でき、左下に発行者の銀行のアカウントの内容と思われる記載も認められることから、発行者の実在性に疑義があるとはいい難いものであり、また、この請求書に記載の借用場所と乙8号証に記載のイベントが開催された場所とが一致することからすれば、この請求書の基づく支払いが行われ、イベントが開催されたものと推認できるものである。

(4)請求人は、「SK-II」の公式インスタグラムの投稿(乙36、乙37)について、当該アカウントの管理者が明らかにされておらず、被請求人と何らかの関係を有する可能性があることから、当該投稿は独立した第三者による客観的な証拠とはいい難く、内容にも主観的な要素が含まれているおそれがあり、その信憑性には疑義が残る旨主張している。

しかしながら、乙第36号証は、本件商標権者のブランドである「SK-II」の公式インスタグラムの写しであることから、本件商標権者(被請求人)又はその関係者が管理するものであることは容易に推認できるところ、同号証に掲載の赤い円筒状の台の上に、透明のドーム型のケース内に商品のボトルが展示されている写真は、乙第10号証における本件イベントが紹介された「MAQUIA ONLINE」の記事における3/11ページの上部に掲載の写真と一致するものであるから、乙第36号証に掲載の内容は、本件イベントにおけるものであると推認できることから、掲載内容の信憑性に疑義があるということはできない。

(5)その他、請求人は、F氏の署名入り宣誓書における宣誓内容は、具体的かつ客観的な事実によって十分に裏付けられていないこと、乙第31号証の国際PRアワード「PR Awards Asia-Pacific 2024」の記事は、本件イベントが東京で開催されたことを裏付ける証拠として示されていないこと、乙第15号証の各枝番号に係る写真の撮影日及び撮影者を証明するものとはならないこと、使用商標1及び使用商標2の使用はSK-IIブランドの一環として認識されるものであり、独立した商標として認識されるものではないこと、使用商標4ないし使用商標6の使用は本件ウェブサイトの提供者、本件商標権者と当該提供者との関係、本件ウェブサイトが要証期間中に提供されていた事実のいずれも証明されていないことのほか、被請求人が提出した乙各号証及び主張について、るる述べているものの、これらの多くは上記1及び2の認定及び判断における本件商標の使用とは直接的に関係する部分の主張ではないなど、上記2の本件商標の使用の判断を覆すに足りるものということはできない。

(6)したがって、請求人の上記(1)ないし(5)の主張は、いずれも採用することはできない。

4 まとめ

以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標の通常使用権者が、請求に係る指定商品中「化粧品」の範ちゅうに含まれる商品「化粧水」について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたことを証明したというべきである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すべきではない。

よって、結論のとおり審決する。

Next Action

次の一手につながるサービス

類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。

次の一歩へ

商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。