sokuhyo

Trademark Appeal Case

ORBICとOBICの称呼・外観類似

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023890065
審判種別記載はありません。
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

結 論
登録第6581775号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6581775号商標(以下「本件商標」という。)は、「ORBIC CARE」の文字を標準文字で表してなり、令和3年12月3日に登録出願、第9類「アプリケーションソフトウエアその他のコンピュータソフトウエア,ダウンロード可能なコンピュータソフトウエア」を指定商品として、同4年6月6日に登録査定、同年7月4日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標

請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第第11号及び同項第15号に該当するとして引用する登録商標は、以下の1ないし6であり、いずれの商標権も、現に有効に存続しているものである。

1 登録第2267160号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲1のとおり、「オービック」の片仮名及び「OBiC」の欧文字を2段に横書きした構成からなり、昭和62年9月3日に商標登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成2年9月21日に設定登録され、その後、同22年12月1日に指定商品を第7類「起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー,電機ブラシ」、第8類「電気かみそり及び電気バリカン」、第9類「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,磁心,抵抗線,電極」、第10類「家庭用電気マッサージ器」、第11類「電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類」、第12類「陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。)」、第17類「電気絶縁材料」及び第21類「電気式歯ブラシ」とする指定商品の書換登録がされたものである。

2 登録第2267161号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲2のとおり、「OBiC」の欧文字を横書きした構成からなり、昭和62年9月3日に商標登録出願、第11類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成2年9月21日に設定登録され、その後、同22年12月1日に指定商品を第7類「起動器,交流電動機及び直流電動機(陸上の乗物用の交流電動機及び直流電動機(その部品を除く。)を除く。),交流発電機,直流発電機,家庭用食器洗浄機,家庭用電気式ワックス磨き機,家庭用電気洗濯機,家庭用電気掃除機,電気ミキサー,電機ブラシ」、第8類「電気かみそり及び電気バリカン」、第9類「電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,配電用又は制御用の機械器具,回転変流機,調相機,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,磁心,抵抗線,電極」、第10類「家庭用電気マッサージ器」、第11類「電球類及び照明用器具,家庭用電熱用品類」、第12類「陸上の乗物用の交流電動機又は直流電動機(その部品を除く。)」、第17類「電気絶縁材料」及び第21類「電気式歯ブラシ」とする指定商品の書換登録がされたものである。

3 登録第3254140号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲3のとおり、「オービック」の片仮名を横書きした構成からなり、平成6年4月8日に商標登録出願、第9類「配電用又は制御用の機械器具・回転変流機・調相機,電気磁気測定器,電線及びケーブル,電気通信機械器具,電子応用機械器具およびその部品,電気アイロン・電気掃除機,磁心・抵抗線・電極」を指定商品として、同9年1月31日に設定登録されたものである。

4 登録第4585946号商標(以下「引用商標4」という。)は、別掲4のとおり、「オービック」の片仮名を横書きした構成からなり、平成13年2月22日に商標登録出願、第9類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品として、同14年7月19日に設定登録されたものである。

5 登録第5252765号商標(以下「引用商標5」という。)は、別掲5のとおり、「オービック」の片仮名を横書きした構成からなり、平成19年6月29日に商標登録出願、第35類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同21年7月31日に設定登録されたものである。

6 登録第5252768号商標(以下「引用商標6」という。)は、別掲6のとおり、「OBIC」の欧文字を横書きした構成からなり、平成19年6月29日に商標登録出願、第35類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、同21年7月31日に設定登録されたものである。

なお、引用商標1ないし引用商標6を、まとめていうときは、以下「引用商標」という。

第3 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。

以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載し、枝番号の表記について「甲第○号証-1」を「甲○の1」のように省略して記載し、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略して記載する。

1 請求の趣旨

本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号により、無効とされるべきものである。

2 具体的理由

(1)商標法第4条第1項第11号の該当性について

ア 本件商標の構成について

本件商標は、「ORBIC CARE」の文字を標準文字で表してなるものであり、「ORBIC」と「CARE」との間には一文字分の空白がある。

「ORBIC」は、もともと特段の意味を有しない造語であり(甲2の1)、「CARE」は「気づかい,面倒,世話,看護,養護,保護,ケア」が転じて「(機械・肌などの)手入れ,メンテナンス」等を意味するようになった英語である(甲2の2)。

そして、本件商標全体として、まとまった意味合いが認識される熟語等ではない(甲2の3)。

引用商標1、3ないし5を構成する「オービック」、引用商標1、2及び6を構成する「OBIC」も造語であるが、「コトバンク」によれば「正式社名「株式会社オービック」。英文社名「OBIC Co., Ltd.」。情報・通信業」と認識されている(甲2の4)。

イ 本件商標の称呼について

本件商標全体「ORBIC CARE」からは、「オービックケア」の称呼が生ずるが、「ORBIC」の文字部分からは「オービック」の称呼が生ずる。

「OR」の次に子音が来る英単語については、通常「オル**」ではなく「オー**」と日本語表記がされ、「オー」と称呼される。辞書を参照するに、「O」、「R」、「子音」の順の英単語のうち、一般にも親しみのある中学学習語又は高校学習語の10語は、全て「オル」ではなく「オー」と発音され(甲3の)、これらの単語についてウェブ検索したところ、日本語のウェブサイトでは、「オルガン」及び「オルソドックス」に関する例外を除き、「オー**」という表記が圧倒的に多く、全体としては93%を占めている(甲3の2)。

この結果からも、造語である「ORBIC」についても、指定商品の需要者は、頭の中では称呼である「オービック」によって記憶し、「OBIC」を想起するものといえる。

上記のとおり、「OR」について、「オー」と読まれる場合が、「オル」と読まれる場合よりも圧倒的に多いことから、本件商標の商標権者が「オルビック」と併記したとしても、必ず「オルビック」の称呼が生じ、「オービック」の称呼が生じないといえるものではない。

ウ 引用商標の著名性について

「OBIC」の欧文字及び「オービック」の片仮名からなる引用商標は、商品「コンピューターソフトウェア」等について、本件商標の登録出願時及び登録査定時において著名である。

(ア)申立人の沿革、業態、売上げ等(甲4)

1968年4月、大阪にて「株式会社大阪ビジネス」として設立、1997年4月、統合業務ソフトウェア「OBIC7 シリーズ」を開発、2018年12月、「OBIC7 シリーズ」累計導入社数2万社突破、17年連続No.1を獲得(2002~2017年ERP主要ベンダー(ライセンス売上高シェアトップ10)における累計導入社数、株式会社矢野経済研究所調べ2017年12月現在)。

2023年3月末現在、売上高、連結約1,001億円、単体約933億円等。

(イ)昭和51年(1976年)より、三菱電機の代理店としてコンピューターショーを行い、その後独立系ディーラーとして発展してきたことが、当時の日経産業新聞等にも掲載されている(甲5)。

(ウ)申立人による引用商標に関する宣伝等

a テレビコマーシャル

2009年10月1日から2023年5月26日まで、「オービック」のロゴを表示し、著名なプロゴルファーが出演するテレビコマーシャルを継続的に行ってきた(甲6)。

b オービックシーガルズ

2003年からアメリカンフットボールチーム「オービックシーガルズ」として、全国リーグでの活動を続けていて、2021年「ライスボウル」で7年ぶりの日本一、2023年には4年ぶりのパールボウルで4連覇、9度目の優勝を果たしている。

多数の観客が来場する駅や、スタジアム看板、ユニフォーム等に「オービック」や「OBiC7」が使用されている(甲7)。

c 球場等の広告看板

東京ドーム、甲子園球場、横浜スタジアムのフェンス等に「オービック」の看板が掲げられている(甲8)。

d 新聞・雑誌広告

読売・朝日・毎日・日経等の新聞、日経ビジネス等の雑誌に、「オービック」や「OBIC」の広告を継続的に行っている(甲9)。

e 駅広告・自動車教習所関係広告

京橋駅(東京都)等で「オービック」の広告を行い(甲10)、雑誌「自動車学校」でも広告を行っている(甲11)。

f 御堂筋ビル

大阪市のオービック御堂筋ビルは、イベント等を開催し、地域ではよく知られた存在である(甲12)。

(エ)紹介記事等

本件商標の登録出願日から登録査定日までについて、引用商標に関して、「コンピューターソフトウェア」等について、業界紙・一般紙でも「オービック」及び「OBIC」の文字を表示した商品が数多く露出し、それらの商品は好評を博し、ウェブ等の各種ランキングで上位を占める等、幅広い取引者・需要者に知られている。

例えば、株式会社YRKandは、「昭和後期、平成、令和へと3時代を生き抜く企業の、※ブランド力“上昇ランキング”」と題し、サントリー、SMBCコンシューマーファイナンス、任天堂に続き、オービックを4位と評価し、日経クロステック(xTECH)でも、IT企業中では突出した営業利益率を継続している旨の記載があり、日経業界地図2021年度版(令和2年8月21日発行)に、「オービック」は、ソフトウェア業界を代表する企業の一つとして、「ERPソフト国内大手」と記載されている(甲13)。

よって、本件商標の登録出願時から登録査定時に至るまで、「オービック」及び「OBIC」は信用が蓄積されたブランドとして認められており、その商品に表示されている「オービック」及び「OBIC」の文字からなる商標は、著名商標であるということができる。

(オ)ブランドランキング・ブランドシェア等

矢野経済研究所によれば、OBIC7は、年商500億円の中堅・中小企業向けERP(経営資源管理)パッケージのライセンスについて、2017年ないし2019年の売上高が、それぞれ13,929百万円、14,196百万円、15,456百万円、シェアが22.4%、21.8%、22.5%とトップである(2019年は見込)(甲14の1)。

ミック経済研究所によれば、中堅企業向けERPパッケージの出荷金額・シェアについて、「オービック」の2017年ないし2020年の売上高が、それぞれ38,440百万円、42,600百万円、46,200(見込)百万円、49,000(推定)百万円で、2017ないし2019年のシェアが24.8%、24.9%、25.1%とトップである(2019年は見込)(甲14の2)。

(カ)防護標章登録

「オービック」の片仮名からなる商標登録第3017459号について最初の防護標章登録が令和2年に認められ、特許情報プラットフォームの「日本国周知・著名商標検索」にも、この登録防護標章について掲載されている(甲15)。

(キ)不正競争事件に係る裁判所の認定

不正競争防止法に係る民事訴訟で、東京地方裁判所は、「オービック」及び「OBiC」の文字からなる標章を著名なものと認め、類似し、混同のおそれがあるものを使用する被告の行為を不正競争行為とし(平成19年5月31日判決。平成18(ワ)17357)、知的財産高等裁判所も同様に判断して控訴を棄却している(平成19年11月28日判決。平成19(ネ)10055。甲16)。

エ 本件商標の分離観察について

著名商標である「オービック」と同一の称呼を生じる「ORBIC」を一部に含む本件商標については、本件商標の構成中「ORBIC」部分が著名商標「オービック」及び「OBIC」を想起させるため、構成中の「CARE」部分に比べて極めて強い印象を与えるから、分離観察が許される。

本件商標がその指定商品に使用された場合には、その構成中「ORBIC」の部分が取引者、需要者に対して商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり、構成中の「CARE」の部分は、指定商品と密接に関連しかつ一般的、普遍的な文字であって、具体的取引の実情においてこれが出所の識別標識として使用されている等の特段の事情も認められないから、出所の識別標識としての称呼、観念は生じない。

つまり、本件商標については、その構成中の「ORBIC」の文字が、著名商標「オービック」及び「OBIC」と類似するから、「CARE」と分離観察することが許されるのである。

オ 本件商標と引用商標との類否

上記エのとおり、本件商標については、「ORBIC」と「CARE」とに分離観察することが許される。

(ア)外観について、「OBIC」の欧文字と「ORBIC」の欧文字とは類似し、「オービック」の片仮名と「ORBIC」の欧文字とは外観が異なるが、本件商標、引用商標とも記憶に残るような特徴のある外観を有するものではない。

(イ)称呼については、「オービック」の称呼を共通にする。

(ウ)観念について、「OBIC」、「オービック」及び「ORBIC」は、いずれも造語であって特段の観念を有さない。

また、「CARE」は、「(機械・肌などの)手入れ,メンテナンス」程度の観念を有する。

(エ)以上により、本件商標と引用商標の要部とは、観念については比較することができず、外観において一部近似し、称呼において紛らわしいものである。

そして、「オービック」又は「OBIC」の文字からなる引用商標は、著名であるが、印象的な外観を有するものとまではいえないから、需要者に与える印象や記憶については称呼によるものが大きい。

そうすると、「オービック」又は「OBIC」の文字からなる引用商標と、標準文字からなる本件商標とは、少なくとも外観の相違が称呼の類似性を凌駕するものとはいえない。

よって、本件商標は、引用商標の商品又は役務に類似する商品「アプリケーションソフトウエアその他のコンピュータソフトウエア,ダウンロード可能なコンピュータソフトウエア」に使用した場合、商品の出所につき混同を生じるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。

カ 商品等の類否

本件商標の指定商品「アプリケーションソフトウエアその他のコンピュータソフトウエア,ダウンロード可能なコンピュータソフトウエア」と、引用商標1ないし引用商標3の指定商品中、第9類「電子応用機械器具およびその部品」、引用商標4の指定商品中、第9類「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む)及びその他の電子応用機械器具及びその部品」並びに引用商標5及び引用商標6の指定役務中、第35類「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」とは、同一又は類似するものである。

キ 商標法第4条第1項第11号に関するまとめ

以上のとおり、本件商標は、引用商標と類似する商標であり、かつ、その指定商品は、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似のものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(2)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について

ア 引用商標の著名性について

上記(1)ウのとおり、商標「オービック」及び「OBIC」は、「コンピューターソフトウェア」等について著名なハウスマークである。

イ 本件商標と引用商標との類似性について

上記(1)オのとおり、本件商標と引用商標は、「オービック」の称呼を生ずる点が共通し、少なくとも類似性がないとまではいえない。

ウ 商品等の類似性について

上記(1)カのとおり、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品等と類似する。

エ 請求人の国内グループ会社

請求人の国内グループ会社として、商号の一部に「オービック」を含むものが存在する(甲4の2)。よって、本件商標を需要者が目にした場合には、それが「株式会社オービック」及びその著名な「オービック」及び「OBIC」の文字からなるブランドに関連するものであると認識する。

オ 商標法第4条第1項第15号に関するまとめ

本件商標は、「コンピューターソフトウェア」等につき著名な商標「オービック」及び「OBIC」と称呼において共通する「ORBIC」の文字並びに相対的に識別力の弱い「CARE」からなる。

よって、本件商標を商標権者が使用すれば、請求人と少なくともいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれがある。

以上により、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、その登録を無効とすべきものである。

(3)本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性について

上記(1)ウのとおり、「オービック」及び「OBIC」は著名商標であり、請求人の社名「株式会社オービック」及び英文社名「OBIC Co., Ltd.」(甲4の2)の著名な略称に該当する。

本件商標は、請求人の名称の著名な略称「オービック」及び「OBIC」に酷似するものを含む商標であるが、その使用について請求人の承諾を得ていない。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものであり、その登録を無効とすべきものである。

第4 被請求人の主張

被請求人は、請求人の主張に対して、何ら答弁していない。

第5 当審の判断

請求人が本件審判を請求することにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。

1 引用商標の周知著名性について

(1)請求人は、1968年4月に、大阪にて「株式会社大阪ビジネス」として設立し、1997年4月に統合業務ソフトウェア「OBIC7シリーズ」を開発、2018年12月に「OBIC7シリーズ」のソフトウェア商品が、ERP主要ベンダー(ライセンス売上高シェアトップ10)における累計導入社数において、累計導入社数2万社を突破し、請求人の当該商品の導入会社数は、2002年ないし2017年の間、ERPソフトウェアの分野において連続して1位であることがうかがえる(甲4の1)。

なお、「ERP」については、例えば、「統合業務ソフトともいう。」(「大辞林 第4版」株式会社三省堂)や「統合業務ソフト。」(「コンサイスカタカナ語辞典 第5版」株式会社三省堂)と、辞書に載録されていることから、「統合業務ソフトウェア」と「ERPソフトウェア」とは、同義の語といい得る。

(2)請求人は、2009年10月1日ないし2017年10月6日まで、「オービック」のロゴを表示した著名なプロゴルファーが出演するテレビコマーシャル、及び2012年6月11日ないし2023年5月26日まで、「オービック」のロゴを表示したアメリカンフットボールチーム「オービックシーガルズ」が出演するテレビコマーシャルを行ったことがうかがえる(甲6)。

また、請求人が2003年から運営するアメリカンフットボールチーム「オービックシーガルズ」は、ユニフォームやパンフレット、試合会場の看板に、「オービック」の片仮名やそのロゴを表示している(甲7)。

(3)請求人は、野球等のスポーツ競技の開催、観戦などに使用される施設である「東京ドーム」のフェンス上に2004年2月1日ないし2024年1月31日に「オービック」のロゴを表示し、「阪神甲子園球場」のフェンス上に2005年3月1日ないし2024年2月29日に、「システムインテグレータの」又は「統合業務ソフトウェア」の文字とともに「オービック」のロゴを表示し、「横浜スタジアム」のサイン上に2015年3月1日ないし2022年12月31日に、「統合業務ソフトウェア」の文字とともに「オービック」のロゴを表示した。

(4)請求人は、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日本経済新聞等の新聞、日経ビジネス、日経コンピュータ等の雑誌に、「オービック」や「OBIC」の広告を行った(甲9、甲11)。

(5)請求人は、地下鉄やJR等の駅における、構内看板において、「オービック」のロゴを表示した広告を行ったことがうかがえる(甲7、甲10)。

(6)「日経業界地図2021年度版」(令和2年8月21日発行)において、「「オービック」は、ソフトウェア業界を代表する企業の一つとして、「ERPソフト国内大手」」との記載がされている(甲13の3)。

(7)小括

上記(1)ないし(6)によれば、請求人は1968年4月に大阪で設立、1997年4月に統合業務ソフトウェア「OBIC7シリーズ」を開発し、その後、2018年12月には,当該統合業務ソフトウェアが累計導入社数2万社を突破し、統合業務ソフトウェアベンダーのトップ10において、請求人が取り扱う当該統合業務ソフトウェアの導入会社数が、2002年ないし2017年の間、連続して1位となっており、また、テレビコマーシャル、アメリカンフットボールチーム、スポーツ施設や鉄道の駅施設、雑誌や新聞の広告を通じて、継続的に、「オービック」の片仮名や当該文字のロゴが、「統合業務ソフトウェア」又は「システムインテグレータ」の文字とともに表示されていることから、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められる。

2 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)商標の類否について

商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、かつ、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である(最高裁昭和39年(行ツ)第110号、昭和43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁参照)。

また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、商標の構成部分の一部が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合等、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものと認められない場合には、その構成部分の一部を抽出し、当該部分だけを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである(最高裁昭和37年(オ)第953号 昭和38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号 平成5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号 平成20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁、参照)。

(2)本件商標について

ア 本件商標は、「ORBIC CARE」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字全体は一般の辞書等に載録されている語ではなく、当該文字が、一連で、何らかの特定の意味合いを需要者、取引者に認識されているというような事情もなく、構成全体を不可分一体のものとして把握しなければならない事情も見いだせないことからすると、本件商標の構成中「ORBIC」の文字と「CARE」の文字の間に、1文字分のスペースを有していることもあいまって、「ORBIC」の文字と「CARE」の文字とから構成されるものと容易に認識されるものであって、視覚的にも、外観上分離して観察されるものといえる。

イ 本件商標は、その構成中「ORBIC」の文字が、一般の辞書等に載録のない語であるものの、「OR」の次に子音が来る英単語について、英和辞書には、中学又は高校における学習語として挙げられている10語について、「OR」に相当する部分が全て「オー」と発音(甲3の1)されていることから、英語風に「オービック」と称呼され得るものである。

ウ 次に、本件商標の構成中「CARE」の文字は、「気づかい、面倒、手入れ」など(甲2の2)の意味を有する広く親しまれた語であって、「ケア」の称呼が生じるものであるところ、当該文字が、本件指定商品との関係において、本件商品の規格、型番、品番等や商品の品質等を表示するものである等、出所識別標識としての機能を果たし得ないとみるべき事情は見いだせない。

しかし、当該「CARE」の文字は、「介護。世話。手入れ。」を意味する外来語「ケア」の英語表記(「広辞苑 第7版」株式会社岩波書店)として広く知られている語であり、例えば、「アフターケア」、「在宅ケア」、「スキンケア」、「ヘルスケア」など、辞書に載録され一般にも使用される文字(「アフター」、「在宅」、「スキン」、「ヘルス」)と「ケア」の文字と結合した語にあっては「ケア(CARE)」の文字は、「介護。世話。手入れ。」の意味を理解させる語として認識されるものであって、このように「介護。世話。手入れ。」などを商品の品質や役務の質等とする多様な分野における商品又は役務においては、当該「CARE」の文字が取引者又は需要者に対し商品の出所識別標識として強く印象に残る部分とはいい難い。

エ ところで、上記1のとおり、「オービック」の片仮名及びそのロゴは、請求人が統合業務ソフトウェア等に関する商品及び役務に使用するものとして、コンピュータソフトウェアの分野における取引者、需要者の間に広く知られているものであり、当該「統合業務ソフトウェア」を扱う分野は本件商標の指定商品と同じ商品分野であることからすると、本件商標の構成中「ORBIC」の文字部分から生じる「オービック」の称呼を片仮名表記した場合の「オービック」は、本件商標の指定商品と同じコンピュータソフトウェアを扱う分野において広く知られている引用商標から生じる「オービック」の称呼を共通にするものであるから、本件商標は、商標の識別上重要な要素となる語頭の「ORBIC」の文字部分より「オービック」の称呼及び「統合業務ソフトウェアを取り扱うオービック社」ほどの観念が生じる場合があるというべきである。

オ したがって、本件商標は、その構成文字に相応して、「オービックケア」の称呼が生じるほか、その構成中「ORBIC」の欧文字に相応して「オービック」の称呼が生じ、また、当該称呼を片仮名表記した「オービック」の文字は、統合業務ソフトウェアを取り扱うオービック社を表示するものとして周知著名であるから、「統合業務ソフトウェアを取り扱うオービック社」の観念が生じる。

(3)引用商標について

ア 引用商標1について

引用商標1は、別掲1のとおり、デザインされた「オービック」の片仮名を上段に、下段にデザイン化された「OBIC」の欧文字を2段に表してなり、上段の片仮名は、下段の欧文字の読みを特定したものと無理なく認識し得るものであるから、これよりは「オービック」の称呼が生じる。

そして、上記1のとおり、「オービック」の文字及びそのロゴは、請求人が統合業務ソフトウェア等に使用して、コンピュータソフトウェアの分野における取引者、需要者の間に広く知られているものであり、引用商標1の上段は、当該「オービック」のロゴと同視できるものであって、当該片仮名は、下段の「OBIC」の欧文字の読みを特定したものと無理なく認識し得るものであるから、引用商標1は、「統合業務ソフトウェアを取り扱うオービック社」ほどの観念が生じるというべきである。

イ 引用商標2について

引用商標2は、別掲2のとおり、デザイン化された「OBIC」の欧文字を横書きしてなり、これよりは「オービック」の称呼が生じ、上記1及び上記アからすると、その指定商品に使用するときには、「統合業務ソフトウェアを取り扱うオービック社」ほどの観念が生じるというべきである。

ウ 引用商標3ないし引用商標5について

引用商標3ないし引用商標5は、別掲3ないし別掲5のとおり、デザインされた「オービック」の片仮名を横書きしてなり、これよりは「オービック」の称呼が生じ、上記1及び上記アからすると、その指定商品又は指定役務に使用するときには、「統合業務ソフトウェアを取り扱うオービック社」ほどの観念が生じるというべきである。

エ 引用商標6について

引用商標6は、別掲6のとおり、「OBIC」の欧文字を横書きしてなり、これよりは「オービック」の称呼が生じ、上記1及び上記アからすると、その指定役務に使用するときには、「統合業務ソフトウェアを取り扱うオービック社」ほどの観念が生じるというべきである。

(4)本件商標と引用商標との類否について

ア 本件商標と引用商標1との類否について

本件商標は、上記第1のとおりの構成からなるものであり、また、引用商標1は、別掲1のとおりの構成からなるものであるから、両者の外観は、判然と区別し得るものである。

また、本件商標は、上記(2)のとおり、「オービック」の称呼も生じるものであり、他方、引用商標1は片仮名と欧文字の2段に表され、上段の片仮名は、下段の欧文字の読みを特定したものと無理なく認識し得るものであって、これよりは「オービック」の称呼が生じるものであるから、両者は、「オービック」の称呼を共通にするものである。

そして、本件商標と引用商標1から生じる共通の称呼「オービック」を片仮名表記した「オービック」は、上記(2)のとおり「オービック」の文字及びそのロゴが、請求人が統合業務ソフトウェア等に使用して、コンピュータソフトウェアの分野における取引者、需要者の間に広く知られているものであることからすると、本件商標からは、「統合業務ソフトウェアを取り扱うオービック社」ほどの観念が生じるというべきである。

してみると、本件商標と引用商標1とは、全体の外観において相違するとしても、称呼及び観念を共通にするものであることから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本件商標と引用商標1とは、商品の出所について誤認混同を生じるおそれのある、互いに類似の商標というのが相当である。

イ 本件商標と引用商標2及び引用商標6との類否について

本件商標は、上記第1のとおりの構成からなるものであり、また、引用商標2及び引用商標6は、別掲2及び別掲6のとおりの構成からなるものであるから、両者の外観は、判然と区別し得るものである。

また、本件商標は、上記(2)のとおり、「オービック」の称呼も生じるものであり、他方、引用商標2及び引用商標6は「OBiC(OBIC)」の欧文字からなり、これよりは「オービック」の称呼が生じるものであるから、両者は、「オービック」の称呼を共通にするものである。

そして、本件商標と引用商標2及び引用商標6から生じる共通の称呼「オービック」を片仮名表記した「オービック」は、上記(2)のとおり、「オービック」の文字及びそのロゴが、請求人が統合業務ソフトウェア等に使用して、コンピュータソフトウェアの分野における取引者、需要者の間に広く知られているものであることからすると、本件商標からは、「統合業務ソフトウェアを取り扱うオービック社」ほどの観念が生じるというべきである。

してみると、本件商標と引用商標2及び引用商標6とは、全体の外観において相違するとしても、称呼及び観念を共通にするものであることから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本件商標と引用商標2及び引用商標6とは、商品又は役務の出所について誤認混同を生じるおそれのある、互いに類似の商標というのが相当である。

ウ 本件商標と引用商標3ないし引用商標5との類否について

本件商標は、上記第1のとおりの構成からなるものであり、また、引用商標3ないし引用商標5は、別掲3ないし別掲5のとおりの構成からなるものであるから、両者の外観は、判然と区別し得るものである。

また、本件商標は、上記(2)のとおり、「オービック」の称呼も生じるものであり、他方、引用商標3ないし引用商標5は「オービック」の片仮名からなり、「オービック」の称呼が生じるものであるから、両者は「オービック」の称呼を共通にするものであり、また、本件商標と引用商標3ないし引用商標5から生じる共通の称呼「オービック」を片仮名表記した「オービック」は、上記1のとおり「オービック」の文字及びそのロゴが、請求人が統合業務ソフトウェア等に使用して、コンピュータソフトウェアの分野における取引者、需要者の間に広く知られているものであることからすると、本件商標からは、「統合業務ソフトウェアを取り扱うオービック社」ほどの観念が生じるというべきである。

してみると、本件商標と引用商標3ないし引用商標5とは、全体の外観において相違するとしても、称呼及び観念を共通にするものであることから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、本件商標と引用商標3ないし引用商標5とは、商品又は役務の出所について誤認混同を生じるおそれのある、互いに類似の商標というのが相当である。

(5)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務との類否について

本件商標の指定商品「アプリケーションソフトウエアその他のコンピュータソフトウエア,ダウンロード可能なコンピュータソフトウエア」は、引用商標1及び引用商標2の指定商品中、第9類「電子応用機械器具及びその部品」、引用商標3の指定商品中、第9類「電子応用機械器具およびその部品」、並びに、引用商標4の指定商品中、第9類「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む)及びその他の電子応用機械器具及びその部品」と同一又は類似する商品である。

また、本件商標の指定商品「アプリケーションソフトウエアその他のコンピュータソフトウエア,ダウンロード可能なコンピュータソフトウエア」は、引用商標5及び引用商標6の指定役務中、第35類「電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」と類似する商品である。

(6)小括

以上により、本件商標は、引用商標に類似する商標であって、引用商標の指定商品及び指定役務と同一又は類似する商品について使用をするものである。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

3 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであるから、その余の無効事由について判断するまでもなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものである。

したがって、本件商標の登録は、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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