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Trademark Appeal Case

スカイランタンの普通名称性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023890071
審判種別記載はありません。
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

結 論
登録第6633183号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6633183号商標(以下「本件商標」という。)は、「スカイランタン」の文字を標準文字で表してなり、令和3年12月3日に登録出願、第11類「電球類及び照明用器具,LED照明用器具,クリスマスツリー用電気式ランプ,ろうそく式ランタン,電気式ランタン,LED式ランタン,祭りの飾り用飾りランプ,祭りの飾り用ひも状のライト,あんどん,ちょうちん」を指定商品として、同4年10月17日に登録査定、同月27日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第665号証(枝番号及び欠番を含む。)を提出した。

1 本件商標は、商標法第3条第1項第1号、同項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第7号に該当するものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号によって無効とされるべきである。

2 本件商標を無効とすべき理由

(1)「スカイランタン」が広く一般的に使用されている実情について

スカイランタンは、空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称であり、タイのコムローイ祭、台湾の平渓天燈祭等の世界各国の歴史ある祭事の無病息災を祈る儀式等において使用されてきた。日本では、2011年に放映されて大ヒットを博した映画「塔の上のラプンツェル」でスカイランタンが空に舞うシーンが有名になったことをきっかけに、スカイランタンが認知されるようになり、その後、スカイランタンという表示は広く使用されるようになった。

ア 新聞における「スカイランタン」の使用

スカイランタンという表現は、空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明具を使用したイベントの紹介等において、極めて頻繁に使用されている(甲2~甲508)。

イ インターネット等における「スカイランタン」の使用

インターネット、ソーシャルネットワーキング等においても、スカイランタンの使用例は、極めて多数に及んでいる(甲509~甲592)。

ウ 意匠登録においても、「意匠に係る物品」を「スカイランタン」とする登録意匠(甲593)が7件存在する(そのうちの4件の意匠登録は被請求人を権利者とするもの。)。「意匠に係る物品」の欄には、一般的な名称を記載するものとされており、商標名は「物品の区分」として不適切であることは、意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引きに明示されている。被請求人を権利者とする意匠登録よりも以前から、「スカイランタン」は「意匠に係る物品」として記載され、登録が認められてきたことから、「スカイランタン」は商標名として扱われていなかったことが明らかである。

エ これまでに開催された「スカイランタン」を使用したイベントについて

これまでに少なくともほぼ200ものスカイランタンを使用したイベントがリリース又は実施されている。

オ 小括

上述の証拠資料を総合的に考慮すると、スカイランタンは、ろうそく等の燃料又は発光ダイオード(LED)を用いて明かりをともし、燃料を燃やして温めた空気又はヘリウムガスを用いて空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称として長年にわたって使用されてきたことは明らかである。なお、2011年から2017年頃までは、ろうそく等の燃料を用いたスカイランタンが主流であったと見受けられるが、ろうそく等の燃料を燃やすことから防火上の管理が難しく、イベントの開催時期や地域が限られるものであったところ、2018年頃から、ろうそく等の燃料に代わって、発光ダイオード(LED)を用いたスカイランタンが登場したことで、防火上の問題が解消し、以降、発光ダイオード(LED)を用いたスカイランタンが、時期や地域を選ぶことなく、日本全国で多く使用されるようになっている。このような変遷を経たスカイランタンは、2016年に開催された「The Lantern Fest(ランタンフェスト)」において、300名の募集に約28万人が応募したことから、2016年の時点で既に広くに知られているといえるが、2016年以降もスカイランタンを用いたイベント数は開催数が年々増加し、1000個から6000個ものスカイランタンを使用する大掛かりなイベントの数も、年々増加していることから、スカイランタンの人気はますます高まっていることがうかがい知れる。

また、歌手のミュージックビデオ、中日ドラゴンズのイベント、東京2020パラリンピック開催記念イベントで使用されるなど、スカイランタンが非常に人々の目を引く場面でも使用されていることや、政府・地方自治体やそれに関連する団体等においても一般的に多用されたり、公的なイベントで使用されている事実も、スカイランタンが広く一般的に使用されていることを裏付けるものといえる。

以上を総合すると、本件商標の登録査定時点で、「スカイランタン」が、空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称として、日本全国で広く一般的に使用されていたことは明らかである。

(2)商標法第3条第1項第1号該当性について

商標法第3条第1項第1号は、「その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」について商標登録を受けることができないことを定めており、商標審査基準においては「取引者において、その商品又は役務の一般的な名称(略称及び俗称等を含む。)であると認識されるに至っている場合には、「商品又は役務の普通名称」に該当する」と示されている。

ここで、「スカイランタン」の表示が、10年以上も前から新聞、インターネットウェブサイト、多くのイベント等において、空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称として、日本全国で広く一般的に使用されていることは、上記で述べたとおりである。

したがって、本件商標について登録査定当時、「スカイランタン」は、空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の普通名称であると認識されていたとみるのが相当といえる。

(3)商標法第3条第1項第3号該当性について

商標法第3条第1項第3号について、商標審査基準においては、「商標が、その指定商品又は指定役務に使用されたときに、取引者又は需要者が商品又は役務の特徴等を表示するものと一般に認識する場合、本号に該当すると判断する。」と示されている。

これまでに述べたとおり、スカイランタンの名称は、空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具を示す表示として長年にわたって使用され続けている。逐条解説には、商標法第3条第1項第3号の例示の解説として「商品又は役務を流通過程又は取引過程におく場合に必要な表示であるから何人も使用をする必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであるから一私人に独占を認めるのは妥当ではなく、また、多くの場合に既に一般的に使用がされ、あるいは将来的に必ず一般的に使用がされるものである」と示されている。

スカイランタンの表示は、既に、空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称として広く使用されていることは明らかであり、とすれば、スカイランタンについて一私人に独占を認めることは、商標法第3条第1項第3号の趣旨にもとるものであるといえる。

したがって、本件商標は商標法第3条第1項第3号に該当することは明らかである。

(4)商標法第3条第1項第6号該当性について

商標法第3条第1項第6号は、「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」について商標登録を受けることができないことを定めており、商標審査基準においては「一般に使用され得る標章であって、識別力がない場合には、本号に該当する」と示されている。

スカイランタンの表示は、空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称として、数多の取引者又は需要者に、長期間にわたって一般的に使用され続けているものであって、識別力がないものであることは明らかである。

したがって、スカイランタンの表示は、何人かの業務に係る商品であることを認識させるものではなく、本件商標が商標法第3条第1項第6号に該当することは明らかである。

(5)商標法第4条第1項第7号該当性について

本件商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称として広く使用されていたことはこれまでに述べたように明らかである。また、スカイランタンを用いた大規模なイベントは数多く実施され、そのイベントのリリース、イベントのレポートなどが、新聞、インターネットウェブサイトなどに頻繁に掲載されていたことも明らかである。このような事実を踏まえると、被請求人が、本件商標を知り得ることなく、偶然に本件商標を採択したとは想定し難く、むしろ、被請求人は、本件商標が登録されていないことを奇貨として、剽窃的に本件商標を出願したと考えられる。

そして、被請求人は、請求人に対して、令和5年6月22日付けで通知書を送付し(甲662)、当該通知書において被請求人は、請求人が「スカイランタン」の標章を付したLEDランタンを販売することは本件商標の商標権侵害に該当し、さらに、「七タスカイランタン」、「東京スカイランタン」等のように「スカイランタン」をイベント名に使用することが、被請求人所有の商標登録第6437078号(甲664)の商標権侵害に該当すると主張し、請求人に対して、SNSアカウント、ウェブサイトからの「スカイランタン」の文言の削除、イベントでの「スカイランタン」の標章の使用中止等を要求するとともに、損害賠償を行うために販売個数等を開示するよう要求した。また、被請求人は、請求人に対してのみならず、請求人の取引先を含む多数の会社等の団体に対しても、同様に、商標権侵害である旨の主張を行って、「スカイランタン」の使用中止や損害賠償を求めるよう要求している。

なお、請求人は、上記の被請求人の通知書に対して、請求人の行為が商標権侵害に該当しないことを説明するとともに、被請求人に対して、請求人の行為が商標権侵害に当たる旨を第三者に告知等することをやめるよう要求した(甲663)が、被請求人は、何らの反論や回答等を行っていない。

この点、上述のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称として、スカイランタンが広く使用されていたことは明らかであり、また、請求人は突出した規模のスカイランタンを用いたイベントを継続的に行ってきたことから、被請求人が、本件商標を知らずに、偶然に本件商標を採択したとは想定し難く、また、請求人の存在を全く知らなかったとも想定し難いと考えられえる。すなわち、被請求人は、本件商標が登録されていないことを奇貨として、大規模なイベントを行ってきた請求人から不正な利益を得る目的で本件商標を出願したことがうかがい知れるところといえる。

スカイランタンという表現が広く一般的に使用され続けてきたにもかかわらず、本件商標が登録されていないことを奇貨とし、先願主義に名を借りて本件商標を登録し、金銭的利益を要求した本件商標の登録を維持することは、明らかに、商標法の目的でもある公正な取引秩序を乱すことに他ならない。

したがって、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当することは明らかである。

第3 被請求人の答弁

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証から乙第5号証(枝番号を含む。)を提出した。

1 「スカイランタン」が広く一般に使用されているとの主張に対する反論

請求人は、本件商標に対して登録査定時点で、「スカイランタン」が、空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称として、日本全国で広く一般的に使用されていたことは明らかであると主張している。

請求人が証拠として提出する記事において、「スカイランタン」の用語は使用されているものの、熱気球に対して使用されているもの、風船に対して使用されているもの、語句は登場するものの「スカイランタン」が具体的に何を示すのか不明であるもの、行事や行為の名称として使用されているもの、記事内の記述にばらつきのあるものなど様々ある。すなわち、「スカイランタン」が「空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称」として使用されていないものが多数存在する。

また、物品名を「スカイランタン」とする意匠登録が7件あり、このうち4件は被請求人名義となっている。しかし、被請求人の意匠登録出願は、被請求人による初めての意匠登録出願であり、また、代理人を介さずに出願したため、物品名は、記載不備を避けるため、過去の登録例に倣って記載したにすぎない。

なお、「塔の上のラプンツェル」の日本語吹き替え版には、「スカイランタン」という文字や言葉は出現していない。

以上のとおり、登録査定時点で「スカイランタン」が、「空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称」として、日本全国で広く一般的に使用されていたとはいえない。

2 商標法第3条第1項第1号に該当しないこと

上記1のとおり、「スカイランタン」が、「空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称」として、日本全国で広く一般的に使用されていたとはいえない。

また、商標審査基準における「取引者」とは、一般消費者でなく、製造販売者や卸売業者を指す。この点、工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕1541ページによれば、「一般の消費者等が特定の名称をその商品又は役務の一般的名称であると意識しても普通名称ではない。問題は特定の業界内の意識の問題であり、それゆえに、例えばある商標が極めて有名となって、それが一般人の意識ではその商品の普通の名称だと意識され、通常の小売段階での商品購入にその商品の一般的名称として使われたとしても、それだけではその商標は普通名称化したとはいえない」とされている。

請求人は新聞記事やウェブサイトの記事を証拠として多数提出しているが、それらは、一般消費者目線のものであり、取引者が「スカイランタン」をどのように使用し、どのように認識しているかについて、直接的な証明はなされていない。

さらには、業界の事情として、本件商標の登録査定時において、空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具を「スカイランタン」と称して製造販売していた業者は、被請求人と請求人を含む極めて少数の寡占状態であり、少なくとも主要な取引者の一方(被請求人)は、「スカイランタン」を商品商標として使用、認識している。

また、請求人の代表取締役は、2017年に「スカイランタン」を第11類の照明用器具などに対して出願しており、少なくとも請求人に関しても「スカイランタン」を商品名として使用、認識していたことがうかがえる。

つまり、請求人が証拠として提出する新聞記事やウェブサイトの記事は、被請求人や請求人が製造販売した空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の商品名「スカイランタン」を、一般名称であるかのように誤認して記載しているにすぎず、本件商標の指定商品の主要取引者に関しては、「スカイランタン」は商品名として使用、認識されていたと解される。

加えて、「スカイランタン」の語は、令和元年から令和4年までに出版された主要な辞書には掲載されていない(乙1)。

以上の事実からすれば、登録査定当時、指定商品の取引者が「スカイランタン」を普通名称として認識しているとはいえず、請求人の主張は認められない。

3 商標法第3条第1項第3号に該当しないこと

上記1のとおり、「スカイランタン」が、「空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称」として、日本全国で広く一般的に使用されていたとはいえない。

また、被請求人が本件商標を出願した際、商標法第3条第1項第3号に該当することを理由に拒絶理由通知書が送付された(乙2)。

これに対し被請求人は、意見書(乙3)において、(1)「ランタン」は、審査官の述べている意味のほか、「角型の手下げランプ。」という意味もあること、(2)被請求人は「スカイ」でなく、「ランタン」でもなく、「ランタンスカイ」でもなく、「ランタン スカイ」でもなく、「スカイ ランタン」でもなく、連続した標章として「スカイランタン」として出願していること、(3)審査官の示す記事の内容は、多くの表記のゆらぎや曖昧さの残る記述となっており、本件商標の商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務において、これに接する取引者あるいは需要者が広く「スカイランタン」の概念を認識しているものと結論付けることはできないこと、一部は偶発的に使用されているのみであること、一部はスカイランタンの説明があり、説明が必要であるということはこれに接する取引者あるいは需要者が広く認知していない証左であること、(4)審査官が示す記事の内容について、あくまで「催事名」として使用されているだけのものがあり、それらは本件商標の指定商品とはまったく無関係であること、(5)「スカイ」ないし「SKY」の文字を表してなる商標登録例が存在しており、本件商標が分離できない一体不可分の標章であることから、本件商標が登録できない理由はないことについて意見を述べた。

当該意見は正当なものであり、結果として本件商標は登録査定となった(乙4)。本件においても、被請求人は、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当しないことの根拠として、上記(1)から(5)と同様の主張をする。

以上のとおり、「スカイランタン」が、「空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称」として、日本全国で広く一般的に使用されていたとはいえず、「スカイランタン」は分離できない一体不可分の標章であり、「スカイ」は空に浮き上がらせることのできる機能を直接的に表すものではないことから、本件商標は商標法第3条第1項第3号には該当しない。

4 商標法第3条第1項第6号に該当しないこと

上記1のとおり、「スカイランタン」が、「空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称」として、日本全国で広く一般的に使用されていたとはいえず、また、上記3のとおり、「スカイランタン」は分離できない一体不可分の標章であり、「スカイ」は空に浮き上がらせることのできる機能を直接的に表すものではない。

よって、本件商標は商標法第3条第1項第6号には該当しない。

5 商標法第4条第1項第7号に該当しないこと

請求人は、被請求人が、本件商標が登録されていないことを奇貨とし、先願主義に名を借りて本件商標を登録し、金銭的利益を要求した本件商標の登録を維持することは、明らかに、商標法の目的でもある公平な取引秩序を乱すとして、商標法第4条第1項第7号に該当すると主張している。

しかしながら、上記1のとおり、「スカイランタン」が、「空に浮き上がらせることのできるランタン又はランタン型照明器具の名称」として、日本全国で広く一般的に使用されていたとはいえず、請求人の請求はその前提を欠く。

また、被請求人が請求人に対して警告書を送付したことは事実であるが、商標権者として当然の行動であり、この点に関する請求人の主張は、商標法第4条第1項第7号該当性を判断する上で何らの意味も持たない。

さらには、請求人が引用する知財高判令和5年1月19日は、「原告が、先願主義に名を借りて、商標権が本来持つべき出所識別機能とは関係なく、剽窃的な商標出願を大量にした上、金銭的利益を得ることを業とするという事案」において、商標法第4条第1項第7号に該当するとしている。

しかしながら、請求人が引用する上記裁判例と本件は明らかに事案が異なる。被請求人は日本スカイランタン協会を運営し(乙5)、スカイランタンの名称を付した商品を販売するなど、指定商品に対して本件商標を誠実に使用しており、また、被請求人は大量の商標出願を行っているわけではないため、「剽窃的な商標出願を大量にした」とは到底いえない。

以上のとおり、請求人が引用した上記裁判例は本事案とは明らかに事案が異なり、むしろ、本件商標が商標法第4条第1項第7号には該当しないことを示すものといえる。

加えて、請求人は、「請求人は突出した規模のスカイランタンを用いたイベントを継続的に行ってきた」「大規模なイベントを行ってきた請求人から不正な利益を得る目的で本件商標を出願したことがうかがい知れる」と主張しているが、具体的な事実及び証拠に基づかない主張であり、何らの根拠にもならない。

第4 当審の判断

1 「スカイランタン」について

(1)両当事者の提出に係る証拠及び被請求人の主張によれば、次の事実が認められる。

ア 「英辞郎 on the WEB」のウェブサイトにおいて、「sky lantern」について、「スカイ[チャイニーズ]ランタン、天灯、コムローイ◆底面に開口部がある一種のちょうちん。火をともすことにより、無人熱気球として空を飛ぶ仕掛けになっているもの。タイのイーベン祭り・台湾のランタンフェスティバルなどの伝統行事において、地上から放たれることがある。◆「天灯」は中国名。台湾などにおける表記は「天燈」。「コムローイ」(khom loi)はタイ語。」と説明されている(甲597の1)。

イ 「ウィキペディア」のウェブサイトにおいて、「天灯」について、「天灯(てんとう)は中国やタイ王国などアジア各地域で広く見られる熱気球の一種である。・・・当初は通信手段として使用されたが、後には節句における祈祷儀式の用具となっている。スカイランタン(英:Sky lantern)、チャイニーズランタンとも呼ばれる。」と説明されている(甲597の2)。

ウ 株式会社岩波書店発行「岩波国語辞典第8版」、株式会社三省堂発行「コンサイスカタカナ語辞典第5版」、同社発行「新明解国語辞典第8版」、株式会社大修館書店発行「明鏡国語辞典第3版」及び株式会社三省堂発行「三省堂国語辞典第8版」には、「スカイランタン」の語は掲載されていない(乙1の1~乙1の5)。

エ 2011年9月14日付け河北新報(甲2)を始めとして、本件商標の登録査定時までの間に発行された各種の新聞において、「スカイランタン」の語が記載された記事が極めて多数掲載されている(甲2~甲51、甲53~甲58、甲60~甲109、甲111、甲113~甲177、甲179~甲194、甲196~甲238、甲240~甲392、甲394~甲428、甲431~甲461、甲463~甲506)。

オ 「excite.ニュース」と称するウェブサイトにおける2012年8月28日付けの記事(甲549)を始めとして、本件商標の登録査定時までの間に掲載された各種のウェブサイトの記事において(記事の内容からして、同期間内に掲載されたものと推認できるものを含む。)、「スカイランタン」の語が極めて多数記載されている(甲509~甲547、甲549~591)。

カ 前記エ及びオの記事において、「スカイランタン」については、例えば、「不燃性の紙でできた熱気球」(甲2)、「東南アジアの宗教儀式で用いられる小型熱気球・・・円筒状の骨組みに和紙を張りつけ、中でろうそくなどをともし、上昇気流を発生させる要領で宙に浮かぶ。」(甲6)、「「天灯(スカイランタン)」と呼ばれる灯籠」(甲17)、「天灯(スカイランタン)と呼ばれる灯籠を飛ばす」(甲27)、「和紙製の発光ダイオード(LED)電球入り風船」(甲31)、「ランタンで魅力発信・・・スカイランタンは中国やタイの祭りで打ち上げられ、無病息災を祈る風習として知られる。」(甲37)、「熱気球の原理で浮かぶ紙製の行灯(あんどん)」(甲111)、「ランタン(中国風ちょうちん)約300個を夜空に浮かべる」(甲229)、「ヘリウムガスを充填(じゅうてん)した風船」(甲305)などと説明されている。

キ 前記エ及びオの記事のうちの多くには、底面に開口部があり、中に明かりがともされた薄い膜でできた略円筒形の袋状のもの(以下「本件商品」という。)が夜空に浮かんでいる写真が掲載されている(甲2、甲5、甲7等)。

ク 本件商品を夜空に浮かび上がらせる各種のイベントが全国で多数開催されており(甲2、甲4、甲5等)、その中には、例えば「スカイランタンスペシャルナイト」(甲7)、「スカイランタンおくり火祭」(甲105)、「スカイランタン天燈上げ」(甲130)、「スカイランタン IN KUROBE」(甲149)、「スカイランタン祭り」(甲160)、「スカイランタンナイトin南伊豆」(甲191)、「ハッピースカイランタン」(甲197)、「大阪七夕スカイランタン祭り」(甲552)のように、イベントの名称中に「スカイランタン」の語が含まれているものも多数ある。

ケ 本件商標の登録査定時よりも前に登録出願された登録意匠について、「意匠に係る物品」を「スカイランタン」とするものが6件存在する(甲593の2~甲593の7)。

コ 被請求人は、日本スカイランタン協会を運営しているところ(被請求人の主張)、同協会は本件商品を取り扱っており、同協会のウェブサイトでは、「・・・旧型タイプ[風船式ランタン]から完全に脱却し、[LEDランタンにヘリウムガスをダイレクトに注入する形式]に刷新しました。」のように、本件商品をランタンとして説明している(乙5)。

(2)前記(1)で認定した事実によれば、本件商品は、中国、台湾及びタイなどのアジア各地域における伝統行事おいて用いられるものであり、我が国においては、遅くとも平成23年(2011年)頃より、本件商品を夜空に浮かび上がらせるイベントが全国で開催されるようになり、当該イベントを始めとする本件商品に関する新聞記事及びウェブサイトの記事が本件商標の登録査定時での間に多数掲載されたことが認められる。

また、当該記事において、本件商品を表す名称として「スカイランタン」の語が多数使用されており、全国で開催されている本件商品を夜空に浮かび上がらせる各種のイベントの名称中にも当該語が多数使用されていることが認められる。

そして、本件商品は、前記記事中において、熱気球、小型熱気球、灯籠、風船、行灯(あんどん)、ランタン、ちょうちんなどと説明され(被請求人が運営する日本スカイランタン協会はランタンとして説明している。)、その定義ないし説明は一定しないが、当該記事の多くには、底面に開口部があり、中に明かりがともされた薄い膜でできた略円筒形の袋状のもの(本件商品)の写真が掲載されている。

さらに、本件商品は、ろうそくで明かりをともすもののほか発光ダイオード(LED)で明かりをともすものもあり、また、熱気球の原理で浮かび上がらせるもののほかヘリウムガスで浮かび上がらせるものがあるなど、様々なものがあるが、いずれも、明かりをともして夜空に浮かび上がらせるといった点においては共通している。

以上よりすると、本件商品は、熱気球、小型熱気球、灯籠、風船、行灯(あんどん)、ランタン又はちょうちんといった商品そのものではないが、底面に開口部があり、中に明かりがともされた薄い膜でできた略円筒形の袋状のものであって、これを夜空に浮かび上がらせてその景観を楽しむイベント用品といえるものであり、「スカイランタン」の語は、たとえ一般の辞書に掲載されていないとしても、本件商標の登録査定時において、本件商品の一般名称として使用され、かつ、認識されていると判断するのが相当である。

2 商標法第3条第1項第1号該当性について

本件商標は、前記第1のとおり、「スカイランタン」の文字を標準文字で表してなるものであり、前記1(2)のとおり、当該文字(語)は、本件商品の一般名称を表したものといえる。

しかしながら、本件商標の指定商品は、前記第1のとおり、「電球類及び照明用器具,LED照明用器具,クリスマスツリー用電気式ランプ,ろうそく式ランタン,電気式ランタン,LED式ランタン,祭りの飾り用飾りランプ,祭りの飾り用ひも状のライト,あんどん,ちょうちん」であり、本件商品を明示的に指定したものとはいえない。

また、本件商標の指定商品は、いずれも照明を目的とした商品であると認められ、他方、本件商品は、中に明かりがともされるものの、夜空に浮かび上がらせてその景観を楽しむイベント用品というべきものであって、照明それ自体を目的としたものとはいえない。

そうすると、本件商標の指定商品中には、本件商品は含まれていないと判断するのが相当であり、そのため、本件商標は、その指定商品の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ということはできない。

しかがって、本件商標は、商標法第3条第1項第1号に該当しない。

3 商標法第3条第1項第3号該当性について

(1)商標法第3条第1項第3号が、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期そ他の特徴、数量若しくは価格」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録を受けることができない旨規定しているのは、このような商標は、指定商品との関係で、その商品の産地、販売地、品質、形状その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠くものであることによるものと解される。

そうすると、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、登録査定時において、本件商標が、その指定商品との関係で、その商品の産地、販売地、品質、形状その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本件商標の指定商品の取引者、需要者によって、本件商標がその指定商品に使用された場合に、将来を含め、商品の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(平成27年(行ケ)第10107号同年10月21日判決)。

そして、当該商標の取引者、需要者によって、当該商品に使用された場合に商品の品質を表示したものと一般に認識されるかどうかは、当該商標の構成やその指定商品に関する取引の事情を考慮して判断すべきである(令和3年(行ケ)第10113号同4年1月25日判決、令和4年(行ケ)第10002号同年6月16日判決)。

(2)本件商標は、前記第1のとおり、「スカイランタン」の文字を標準文字で表してなるものであり、前記1(2)のとおり、当該文字(語)は、本件商品(底面に開口部があり、中に明かりがともされた薄い膜でできた略円筒形の袋状のものであって、これを夜空に浮かび上がらせてその景観を楽しむイベント用品)の一般名称を表したものといえる。

また、本件商品は、中に明かりをともすものであるから、灯籠、行灯(あんどん)、ランタン、ちょうちんなどと説明されることが多いといった事情がある。

なお、前記1(1)コのとおり、被請求人が運営する日本スカイランタン協会も、本件商品をランタンとして説明している。

そして、本件商標の指定商品は、いずれも照明を目的とした商品であって、ランタン、あんどん、ちょうちんなども含まれるものである。

そうすると、「スカイランタン」の文字(語)が本件商標の指定商品に使用された場合には、その取引者又は需要者に対して、「スカイランタン」として使用する又は使用できる商品であるといった商品の品質又は用途を表したものと認識されるとみるのが相当である。

してみると、「スカイランタン」の文字からなる本件商標は、その指定商品との関係において、その商品の品質又は用途を表示するものとして取引に際し必要適切な表示であり、指定商品に使用された場合には、その取引者又は需要者によって、商品の品質又は用途を表示したものと一般に認識されるものというべきである。

また、本件商標は、標準文字で表してなるものであるから、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であることが明らかである。

したがって、本件商標は、商品の品質又は用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわなければならないから、商標法第3条第1項第3号に該当する。

4 商標法第3条第1項第6号該当性について

前記3(2)のとおり、「スカイランタン」の語が本件商品の一般名称であること、本件商品は灯籠、行灯(あんどん)、ランタン、ちょうちんなどと説明されることが多いこと、本件商標の指定商品はいずれも照明を目的とした商品であって、ランタン、あんどん、ちょうちんなども含まれるものであることからすると、本件商標がその指定商品に使用された場合には、その取引者又は需要者に対して、「スカイランタン」として使用する又は使用できる商品であることを表したものと認識されるにすぎないものであるから、本件商標は、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標というべきである。

したがって、本件商標は、仮に商標法第3条第1項第3号に該当しないとしても、同項第6号に該当する。

5 商標法第4条第1項第7号該当性について

(1)請求人は、スカイランタンという表現が広く一般的に使用され続けてきたにもかかわらず、本件商標が登録されていないことを奇貨とし、先願主義に名を借りて本件商標を登録し、金銭的利益を要求した本件商標の登録を維持することは、明らかに商標法の目的でもある公正な取引秩序を乱すことに他ならないとして、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当すると主張している。

(2)前記1(1)で認定した事実のほか、請求人の提出に係る証拠によれば、被請求人は、令和5年6月22日付けで請求人に対して、本件商標及び「スカイランタン」の文字を標準文字で表してなる登録第6437078号商標(甲664)に基づく権利行使を行ったことが認められる(甲662)。

しかしながら、商標権に基づく権利行使を行うことは商標権者としては当然の行為であり、また、当該権利行使を行ったのは、本件商標の登録査定後である。

そうすると、たとえ、スカイランタンという表現が広く一般的に使用され続けてきたとしても、これらの事実のみによって、本件商標の登録査定時において、本件商標が公正な取引秩序を乱すものであったということはできない。

他に、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべき事情は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

6 まとめ

以上により、本件商標は、商標法第3条第1項第1号及び同法第4条第1項第7号には該当しないものの、同法第3条第1項第3号に該当し、仮に同号に該当しないとしても同項第6号に該当するものであるから、その登録は、同条の規定に違反してされたものである。

したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項により、無効とすべきである。

よって、結論のとおり審決する。

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