結論テキスト
登録第6714308号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024890030 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理 由
本件登録第6714308号商標(以下「本件商標」という。)は、「改質リグニン」の文字を標準文字で表してなり、令和4年5月11日に登録出願、第1類「リグニン化合物,リグニン化合物誘導体」を指定商品として、同5年5月24日に登録査定、同年7月5日に設定登録されたものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第25号証(枝番号を含む。以下、枝番号をまとめて引用するときは枝番号を省略する。)を提出した。
本件商標は、商標法第3条第1項第1号、同項第3号、同法第4条第1項第16号及び同項第7号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきものである。
(1)請求人及び被請求人について
ア 請求人について
請求人は、明治38年に農商務省山林局林業試験所として発足後、改編・名称変更を経て平成13年に成立した独立行政法人であり、森林、林業、木材産業、林木育種にわたる森林に関係する学際的な研究を行う中核的な試験研究機関である(甲1)。
請求人は、平成17年頃からリグニンを主成分とする工業素材の研究開発を開始し、平成22年頃には、ポリエチレングリコールを用いて杉由来のリグニンを改質することにより高強度かつ熱加工性に優れた工業素材(以下「PEG改質リグニン」という。)を生成することに成功したことから、遅くとも平成26年頃にはこのPEG改質リグニンを「改質リグニン」と名付けて、「改質リグニン」との名称を現在まで使用している。
また、請求人は、PEG改質リグニンの研究開発等に関して、「地域リグニン資源開発ネットワーク」、「高機能リグニン」、「SIPリグニン」等のコンソーシアムを結成し、代表機関を務めてPEG改質リグニンの研究開発を牽引してきた。
イ 被請求人について
被請求人は、化成品等の製造・販売、加工品工場の設備・設計等を目的として、令和元年12月3日に設立された法人であり(甲2)、PEG改質リグニンの研究開発には、同2年1月頃から参入している。同年4月1日には、被請求人は、請求人ほか5機関との間で、「木質新素材による新産業創出事業共同事業体協定書」を締結し、同3年7月1日には、請求人との間で、「改質リグニンの製造プロセスの高度化に関する共同研究開発契約」を締結した(なお、同契約は令和6年3月31日をもって終了した。)ほか、請求人が代表を務める上記の地域リグニン資源開発ネットワーク等にも参加しているが、被請求人は、共同研究の成果を単独発明として特許出願し、本件商標を単独で出願する等し、請求人が当該特許出願の取下げや本件商標に係る商標権の譲渡を申し入れても一向に応じようとしない。
(2)商標法第3条第1項第1号について
本件商標の登録査定時、本件商標の指定商品を取り扱う業界においては、リグニン化合物、リグニン化合物誘導体を示す普通名称として一般に認識され、かつ、使用されていたものであるから、商品の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である。
ア 特許文献における使用例(甲3)
本件商標は、上記(1)アのとおり、遅くとも平成26年頃から、請求人やPEG改質リグニンの研究開発のために結成されたコンソーシアムの構成員により使用されているが、それ以前から、本件商標の指定商品を取り扱う業界においてリグニン化合物、リグニン化合物誘導体を指す用語として使用されている。
(ア)「特許出願公告昭48-2377」(甲3の1)
「改質リグニンを添加した鉛蓄電池用陰極板の製造法」に係る発明に使用される「改質リグニン」について、「クラフト法バルブの廃液より得たリグニンをpH10の水溶液とし、これに希硫酸を加えてpH4で沈殿させ、次いで該沈殿物に苛性ソーダを加えてpH10で溶解し、さらに希硫酸を加えてpH4で沈殿させる工程を繰り返して得られる改質リグニン」(2頁右段13~18行目)等との記載がある。
(イ)「公開特許公報昭63-315612」(甲3の2)
炭化ケイ素とカーボンより成る連続繊維の製造方法に係る発明に使用される有機物質として「リグニン、改質リグニン、フェノール類、アルキル基を持つ高級パラフィンおよび高級アルコール」が列挙されており、各物質を順に説明する中で、「改質リグニンとは、上記リグニンを水蒸気処理、溶剤分別、水素添加、重質化、熱分解等の改質操作によって改質したものである」(1頁左下段10~13行目、2頁右上段19~20行目・左下段1~2行目)等との記載がある。
(ウ)「公開特許公報平6-23273」(甲3の3)
「担体Bとして使用することができる適当な物質の例は、改質セルロール及び未改質セルロール並びに澱粉、改質リグニン及び未改質リグニン、・・・合成ポリマー並びにアルミナ、アルミナ水和物、リン酸アルミニウム、シリカ、チタン、ジルコニウム、及びハフニウムの金属珪酸塩及び二酸化物である」(段落【0022】)等との記載がある。
(エ)「公開特許公報2001-202987」(甲3の4)
「クラフトリグニン又はリグニンスルホン酸と、・・・液体クレゾール、又は、有機溶媒のアセトンに溶解させたメトキシフェノール、ジメトキシフェノール若しくはジメトキシフェノールとジメチルフェノールとの混合物とを十分混合させた後に、濃度が60質量%以下の硫酸を加えて、約25°Cの雰囲気温度下で後述する所定時間、激しく攪拌して十分に反応させた後、所定溶液を加えてリグニンを沈殿させるか又は過剰な水を投入して不溶解なリグニンを回収し、得られたリグニンを乾燥させた(以下、このリグニンを改質リグニンという。)。」(段落【0013】)等との記載がある。
(オ)「公開特許公報2004-131672」(甲3の5)
「本発明は、化学物質あるいは金属イオンの付加処理、酸化処理、還元処理、アルカリ処理、酸処理、電磁波処理、酵素処理、微生物処理、亜臨界流体処理及び超臨界流体処理から選択される1以上の処理を施したリグニン(本明細書ではこれを「改質リグニン」という)を含む紫外線吸収剤を提供するものである。」(段落【0006】)等との記載がある。
(カ)「公開特許公報2010-30921」(甲3の6)
「リグノセルロース系材料を化学的に改変した材料としては、特許文献1、2に記載のリグノフェノール誘導体のほか、スルホリグニンなどの改質リグニンのほか、パルプ抽出残渣である黒液、茶ガラ等の植物性の食品廃棄物等が挙げられる。」(段落【0014】)等との記載がある。
(キ)「公開特許公報2021-188234」(甲3の7)
再使用型マスクに係る発明の1実施例として「第1マスク(図2)に改質リグニン系樹脂やバイオマス由来の樹脂を枠(1a-1b)と膜面(2)に使用し、ガーゼ・不織布・布・ティッシュ・紙等の衛生素材(4)のセルローズ系抗菌・防塵素材で分別不要の環境型マスク(図1)とする。」(段落【0039】)等との記載がある。
(ク)「公開特許公報2022-49388」(甲3の8)
実施例の中で「20重量%のリグニン粉体(改質リグニン、PEG入り)、20重量%のプロピレングリコールモノメチルエーテル、13重量%のアミン、および47重量%のイオン交換水を混合し、適量のアミンを添加することによりpHを10に調整した」(段落【0085】)との記載がある。
(ケ)「特許公報特許第7162366号」(甲3の9)
酢酸セルロースと混合される充填剤の例として「バイオマス系有機充填剤としては、杉、ヒノキ、竹及びコーヒー粕等の木質系粉末又は工業的に分離されたセルロース粉末、セルロース繊維、ヘミセルロース粉末、ナノセルロース粉末及び改質リグニン等が挙げられる。」(段落【0024】)との記載がある。
(コ)「公表特許公報2023-511672」(甲3の10)
改質リグニン補強型ゴムの製造方法に関する発明について、「改質リグニンは、炭素炭素二重結合を含む化合物、硫黄元素を含む化合物、及び水酸基を封鎖可能な化合物によりリグニンに対して複合改質処理を行って得られたものである。」(段落【0008】)、「改質リグニン補強型ゴムの製造方法は、改質リグニン、ゴム、カーボンブラック、加硫剤、加硫助剤を密閉式混錬機に加えて混練し、混練ゴムを得るステップ(1)と、(中略)ステップ(2)と、を含む。」(段落【0036】)等との記載がある。
上記(ア)ないし(コ)の特許文献における使用例は、単にリグニンを改質することにより生成されるリグニン化合物、リグニン化合物誘導体を「改質リグニン」と称するもの(ア、イ、エ、オ、コ)や、「アルミナ」等の物質名の普通名称と「改質リグニン」とを並列するもの(イ、ウ、カ、キ、ク、ケ、コ)であるから、本件商標の登録査定時において、本件商標が指定商品であるリグニン化合物、リグニン化合物誘導体を示す普通名称であったことは明らかである。
イ その他の文献における使用例(甲4)
さらに、上記アの使用例のほかにも、論文、業界紙等において、以下のような使用例が存在する。
(ア)紙パルプ技術協会の月刊誌「紙パ技協誌」(第31巻第9号 甲4の1)
昭和52年9月刊行の誌面において、「高歩留パルプの製造に関する研究」について報告がなされており、研究に至る経緯を述べる部分で、「グラフト化による改質リグニンの利用の途は見出されていない」(2頁左段4~5行目)との記載がある。ここでのグラフト化はリグニンに親水基を導入するものであるから、グラフト化による「改質リグニン」はリグニン化合物誘導体を指す。
(イ)一般社団法人日本ゴム協会の月刊誌「日本ゴム協会誌」(第66巻第3号 甲4の2)
平成5年7月9日発行の同紙では、リグニン中のフェノール性水酸基を化学改質することにより脂肪族水酸基に転換したリグニンを合成ゴムの補強剤として利用する研究の成果が報告されており、「[OH]mod.は改質リグニン中のフェノール性水酸基の濃度(mol/l)である」(2頁右段27~28行目)、「CB-BRと60phrの未改質リグニン及び脂肪族性水酸基への転化率が最も高い改質リグニン(ML-5)の複合体を作製した」(4頁左段30~右段1行目)、「ECによる改質リグニンは脂肪族性水酸基を有し、ジイソシアナートとの反応性がより高まっているものと予想され(後略)」(5頁右段30~32行目)等との記載がある。
(ウ)紙パルプ技術協会の月刊誌「紙パ技協誌」(第50巻第12号 甲4の3)
平成8年に刊行された同紙に掲載された「化学改質したチオリグニン抗菌活性」と題する報告論文において、「低分子カルボン酸の方が高分子の改質リグニンに比べて、膜透過が起こり易く、(中略)高い抗菌活性を示したと推定する」(8頁左段11~14行目)、「工業リグニンをアルカリ溶融およびアルカリ処理した改質リグニンでは大腸菌、枯草菌、特に酵母に対して高い活性が認められた」(8頁右段1~3行目)等との記載がある。
上記(ア)ないし(ウ)の文献における使用例も、単にリグニンを改質して生成されるリグニン化合物やリグニン化合物誘導体を指す用語として「改質リグニン」の語を使用するものであり、特段鍵括弧を付されたり、被請求人の自社商品に係る商標であるというような注記が付されたりすることもなく、「フェノールカルボン酸誘導体」「ジイソシアナート」等、他の物質の普通名称と同等に取り扱われているものである。
また、上記(ア)及び(ウ)の月刊誌「紙パ技協誌」を発行している紙パルプ技術協会は、製紙業界だけでなく、化学業界、工業機械器具等の製造業界等を含む企業会員175社(2024年1月時点)、個人会員2,350名(2023年3月末時点)を擁する団体であり、同月刊誌は会員に郵送されるほか、J-STAGE(文部科学省所管の国立研究開発法人科学技術振興機構が運営する電子ジャーナルの無料公開システム)でも記事全文を閲覧できる。上記(イ)の月刊誌「日本ゴム協会誌」を発行している日本ゴム協会も、個人会員数は不明であるが、企業会員389社を擁する団体であり、同月刊誌の会員郵送及びJ-STAGE閲覧の取扱いは上記と同様である。
これらの事情からすると、本件商標の登録査定時において、取引者や需要者は、上記(ア)ないし(ウ)の記事を通じて、「改質リグニン」という用語がリグニンを改質して生成されるリグニン化合物、リグニン化合物誘導体一般を指す名称であると認識していた。
ウ 請求人及びコンソーシアムの構成員等による使用例(甲5~甲7)
上記(1)アのとおり、請求人は、自らの研究開発を経て生成されたPEG改質リグニン(この工業素材はリグニン化合物、リグニン化合物誘導体である)を「改質リグニン」と名付けて、「改質リグニン」との名称を現在まで使用し続けており、以下のような使用例がある。
(ア)「公開特許公報昭62-110922」(甲5の1)
リグニン炭素繊維の製造法に係る発明に用いるリグニンについて、「水素添加分解反応液を塩酸で酸性にした後、クロロホルムで抽出し、これを濃縮・乾固後二酸化炭素で低分子部を抽出・除去してクロロホルム可溶-二酸化炭素不溶の改質リグニンを調製した」(2頁右下段12~16行目)等との記載がある。
なお、甲第5号証の1の出願人は、「農林水産省林業試験場長」となっているが、上記(1)アのとおり、農林水産省林業試験場は請求人の前身であるから(甲1の2)、請求人と実質的に同一の法人である。
(イ)森林総合研究所「平成28年版研究成果選集2016」(甲5の2)
ポリエチレングリコールと結合させることにより杉から抽出すると同時に改質をしたリグニンについて、「その沈殿物を集めたものが「改質リグニン」とよばれる工業材料です。」「PEGをリグニンに導入することにより、(中略)改質リグニンとなります。」等との記載がある。
請求人が毎年発行する研究成果選集は、請求人のウェプサイトで公表されるほか、冊子により行政機関や大学等の研究機関への配布も行っている。同ウェブサイトの閲覧数は、令和5年5月22日から令和6年5月23日の1年間で約5,000回、同冊子の発行部数は、年間2,600部である。
(ウ)森林総合研究所「平成30年版研究成果選集2018」(甲5の3)
工業材料としての改質リグニンを製品に応じた特性にデザイニングする方法に関し、「改質リグニンの製造には、ポリエチレングリコール(PEG)という化合物を用い、PEGで改質されたリグニンを木材から取り出しています」「改質リグニンの製造に使用するPEGの種類と、改質リグニンの性質との関係を詳細に検討しました。」「改質リグニンを用いた高付加価値製品群の市場性は2000億ともいわれ、(後略)」等との記載がある。
(エ)森林総合研究所「令和元年版研究成果選集2019」(甲5の4)
改質リグニンの用途開発の一環として行われた繊維強化材の開発に係る成果に関し、「開発したこの新素材「改質リグニン」は、森林由来の国産新素材として期待されています。」「改質リグニンを樹脂成分として用いたガラス繊維強化材(GFRP)の開発を進めました。」「改質リグニンを用いたGFRPが、従来のGFRPよりも引張弾性率が10ないし20%向上していること(中略)も確認されました。」等との記載がある。
(オ)特定非営利活動法人農学生命科学研究支援機構「生物資源」(第15巻第2号 甲5の5)
令和3年に発行された同誌には、「国産森林資源由来の新素材「改質リグニン」」と題する論文が掲載されており、ポリエチレングリコール中での酸加溶媒分解により抽出されたリグニンについて「このリグニン分解物のPEG誘導体を「PEG改質リグニン」もしくは「グリコールリグニン」と呼ぶが、PEG改質リグニンを略して「改質リグニン」と呼ばれるようになった。」(4頁)、「改質リグニンは、リグニン由来物のPEG誘導体であるので、PEG導入分が加算されている。」(5頁)、「改質リグニンはリグニン分解物にPEGがグラフトしたリグニン誘導体であり(後略)」(5頁)、「改質リグニン系マトリックス樹脂を用いたCFRPは石油化学系樹脂を用いたそれより高強度となり(後略)」(7~8頁)等との記載がある。
なお、フレキシブルフィルムの試作の際に改質リグニンと組み合わされた「粘土鉱物フィルム(クレースト)」(8頁)について、「クレースト」は登録商標(登録番号第5095054)であるが、粘土鉱物を原料とした素材の名称を指すものとして括弧書きで表されている。
(カ)日刊木材新聞社「日刊木材新聞」(甲5の6)
令和4年7月29日に発行された同紙では、「木材利用の最新技術講座」と題する連載記事において「改質リグニン」が取り上げられており、「改質リグニンは木材中の「リグニン」と総称される成分を原料として製造する素材である。」「製造されたリグニン由来物はPEGにより改質されたリグニン由来物であり、PEG改質リグニンであるが、略して改質リグニンとして知られるようになった。」「改質リグニンは、性質が安定したスギリグニンの分解物にPEGが結合した特異な構造の誘導体で(後略)」等の記載がある。
さらに、請求人の創作に係るPEG改質リグニンの研究開発は、後記(5)イないしウで詳述するとおり、国等の委託研究事業として取り上げられる等したことから、そうした事業に参加した多数の機関においても「改質リグニン」との語が使用されるようになった。
(キ)「公開特許公報2017-105991」(甲6の1)
「本発明の耐熱ガスバリアフィルムは、ポリエチレングリコールにより修飾された改質リグニンと粘土鉱物とからなる」(段落【0011】)、「その後(中略)により、カルボキシル基付加改質リグニンを得た(以下、C-改質リグニン)。」(段落【0074】)等との記載がある。
また、リグニン化合物、リグニン化合物誘導体以外の物質名について商品名を示す場合は、「リチウム交換型精製ベントナイト(「クニピア M」:クニミネ工業株式会社)」(段落【0043】)、「オキサゾリン基含有樹脂「エポクロス」(登録商標)WS-700(株式会社日本触媒、以下、「エポクロス」)」(段落【0054】)、ポリカルボジイミド樹脂「カルボジライト」(登録商標)V-02(日清紡ケミカル株式会社、以下「カルボジライト」)」(段落【0057】)のように物質名の普通名称と併記して商品名が鍵括弧付きで記載されているのに対し、リグニン化合物、リグニン化合物誘導体についてはそのような記載はない。
(ク)「公開特許公報2018-104688」(甲6の2)
「ポリエチレングリコールにより化学修飾された改質リグニンとエポキシ化合物とを加熱硬化した熱硬化性プラスチック」に係る発明について、「近年、従来法とは異なる、ポリエチレングリコールを溶媒とした木材原料の酸加水分解処理により、改質リグニンとして(中略)供給できることが可能な例が見出されている」(段落【0002】)、「本発明で用いる改質リグニンとしては、ポリエチレングリコール鎖がリグニンの骨格に結合したものが用いられる」(段落【0011】)、「実施例14 改質リグニン/PEG/ビスフェノール/水酸化アルミニウム」(段落【0065】)等との記載がある。
また、リグニン化合物、リグニン化合物誘導体以外の物質名について商品名を示す場合は、「ポリテトラフルオロエチレン(「テフロン」(登録商標))製の型」(段落【0025】)、「「エポライト」(商標)400E(共栄社化学株式会社製ポリエチレングリコールジグリシェーテルジル)」(段落【0033】)、「フタル酸化合物(ナガセケムテックス製品名XNH6830)」「ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ナガセケムテックス製品名XNR6830)」(段落【0070】)、「エポキシ樹脂(「エピコート」(登録商標)828、三菱ケミカル製、(中略))」(段落【0074】)のように物質名と併記して商品名が記載されているのに対し、リグニン化合物、リグニン化合物誘導体についてはそのような記載はない。
(ケ)一般社団法人日本粘土学会「第62回粘土科学討論会発表抄録」(甲6の3)
平成30年9月10日から11日にかけて開催された上記討論会の発表抄録では、「改質リグニンと粘土を用いたハイブリッド膜材料の開発と評価」と題する報告において、「近年スギ材から抽出されたリグニン由来化合物(以下、改質リグニン)に着目し、改質リグニンと粘土からなるナノコンポジット膜の開発に取り組んでいる」「森林総研から提供を受けた改質リグニン(以下GL)を用い、粘土はクニミネ工業製のアンモニウムイオン交換型ベントナイト(以下、NK)を用いた」等との記載がある。
(コ)名古屋大学森林化学研究室のウェブサイト(甲6の4)
公開されている研究発表の履歴によると、平成28年3月27日ないし29日に名古屋で開催された第66回日本木材学会大会では、「改質リグニン精製工程におけるカチオン基導入リグニンの適用」と題する発表、平成29年3月17日ないし19日に福岡で開催された第67回日本木材学会大会では、「改質リグニン製造プロセスにおけるリグニン系凝集剤を用いた固液分離システムの高度化」と題する発表、同年10月26日ないし27日に名古屋で開催された第62回リグニン討論会では、「中山間地域導入型PEG改質リグニン製造システムの開発」と題する発表、平成30年3月16日に京都府立大学で開催された第68回日本木材学会大会では、「固液分離効率向上のための改質リグニン粒子凝集制御」と題する発表が行われている。
(サ)国立研究開発法人産業技術総合研究所のウェブサイト(甲6の5)
平成30年10月23日に発表された研究成果に関する記事では、改質リグニンを用いた繊維強化複合材料の評価試験について、「PEGにより改質されたリグニン(改質リグニン)は(中略)工業用素材としての応用が期待される」「改質リグニンをネットワークポリマー化するための液状硬化剤を改質リグニンに加える。」等との記載がある。また、「用語の説明」の中では、「ポリエチレングリコール」「ガラス繊維強化プラスチック」「エポキシ樹脂」等の一般的な名称とともに、「改質リグニン」の説明がされており、「改質リグニンは、(中略)ポリエチレングリコールで改質された加工性のよいリグニン誘導体」との記載がある。
このように、請求人やPEG改質リグニンの研究開発に係る事業に参加した機関により使用されてきた「改質リグニン」との名称は、PEG改質リグニンの新素材としての注目度の高さから、以下使用例が示すとおり、官公庁の出版物や業界紙等でも数々取り上げられている。
(シ)公益財団法人つくば科学万博記念財団のウェブサイト(甲7の1)
平成30年10月23日に発表された「樹脂でガラス繊維強化プラスチック」と題する記事に、請求人を含む研究グループの研究成果として、「スギ木材に140°Cのポリエチレングリコール(PEG)を加えて木材中のリグニンを分解すると、そのとき同時にリグニンがPEGと結合し工業用素材として応用できる改質リグニンが作れることを見出した。」「改質リグニンを用いてガラス繊維強化プラスチック(GFRP)を作ることで、(中略)できることが分かった。」等の記載がある。
(ス)自動車Webメディア「KURUKURA=くるくら」(甲7の2)
平成30年11月12日に公開された、改質リグニンを樹脂成分としたGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)を原材料とする自動車の内外装部品の評価試験を紹介する記事では、「改質リグニンはどう製造する?」「改質リグニンは140°Cに保ったポリエチレングリコール(PEG)にスギ木材を加え、少量の酸と共に攪拌して木材中のリグニンを分解するという手法で製造される。リグニンは分解すると同時にPEGと結合し、物理特性が改質したリグニン、つまり改質リグニンとなる」等の記載がある。評価試験に協力した小型車の名称である「ビュート」(登録番号第5003983号。英子文字からなる商標。)の用語は記事全体を通じて鍵括弧付きであるのに対して、「改質リグニン」の用語は最初に出てくる箇所以外は鍵括弧が付されていない。
(セ)林野庁の情報誌「林野-RINYA- No.142」(甲7の3)
平成31年1月の特集記事として「改質リグニン」が取り上げられており、「改質リグニンは「ポリエチレングリコール(PEG)」という薬剤を用いてスギから取り出された新素材です」「取り出されたリグニンはPEGで改質されており、「PEG改質リグニン」略して「改質リグニン」と呼ばれています」「中山間地域の製材工場に隣接して改質リグニン製造工場を設置した場合、(中略)主材製造時に副産する端材を用いて改質リグニン製造ビジネスを行うことができます」等の記載がある。
(ソ)一般社団法人全国森林土木建設業協会会報「全森建」(第156号 甲7の4)
令和2年1月15日に発行された会報に林野庁長官から年頭所感が寄稿されており、林業分野における生産性向上に向けた先端技術の活用を呼び掛ける場面で、「セルロースナノファイバーや改質リグニンといった木質系新素材の開発などの「林業イノベーション」を実現していこうではありませんか」という記載がある。「改質リグニン」と並列されている「セルロースナノファイバー」は「ナノセルロース」の一種としてWikipediaに掲載がある。
(タ)株式会社国際農業社のWebサイト「農村ニュース」(甲7の5)
令和4年4月26日付けで業界動向を伝える記事の中で、「改質リグニン普及へ 活用推進議連を立ち上げ」という表題の下、「改質リグニン活用推進議員連盟」の会長や副会長の発言が引用されており、「(前略)足元にはすごい資源がある。日本古来のスギがその特性を発揮できる改質リグニンだ。」「改質リグニンについても国の支援体制を強化し、実際に大量生産が市場のメカニズムでできるところまで一定のお手伝いをすることができればと考えている」等の記載がある。
(チ)日経BPのバイオ専門メディア「日経バイオテク」(甲7の6)
同サイトにはライフサイエンス分野の重要なキーワードを解説する記事が連載されており、令和5年5月30日時点で500件の記事が掲載されている。令和4年11月1日付けの記事では、「改質リグニン」の用語が取り上げられており、「改質リグニンとはスギを原料に工業生産化されたバイオマス新素材」「改質リグニンはポリエチレングリコール(PEG)を用いてスギから抽出した素材で、PEGリグニン、グリコールリグニンなどとも呼ばれている。」等の記載がある。
(ツ)コンバーティングテクノロジー総合展開催報告書(甲7の7)
平成31年1月30日から2月1日にかけて東京ビッグサイトで開催されたコンバーティングテクノロジー総合展では、請求人を含む28機関(平成31年3月当時)が参加するコンソーシアム「SIPリグニン」の研究成果が出展されており、「改質リグニンの化学原料としての利用が可能になったため、(後略)」「改質リグニンによる部材を採用した試作車」等の記載がある。同展示会は、出展者が352社、来場者数が43,622名に及んでいる。
上記(ア)ないし(ツ)の多数の使用例からすれば、「改質リグニン」の用語が、本件商標の登録査定時において、リグニン化合物、リグニン化合物誘導体を指す名称として認識、使用されていたことは明らかである。
エ 小括
以上のとおり、「改質リグニン」の語は指定商品であるリグニン化合物、リグニン化合物誘導体を指す用語として多数の文献で繰り返し使用されており、中にはリグニン化合物、リグニン化合物誘導体以外の物質の普通名称と並列して使用されている例もあること、いずれの使用例においても「改質リグニン」の用語が被請求人の自社商品を識別するものであるというような特段の注記もされていないことから、本件商標が指定商品であるリグニン化合物、リグニン化合物誘導体を示す普通名称であることは明らかである。
(3)商標法第3条第1項第3号について
本件商標の構成中「改質」の文字は「化学反応により炭化水素の組成や構造を変化させること」を意味する語であり、「リグニン」の文字は「維管束植物の道管・仮道管・繊維などの細胞壁に蓄積される高分子重合体」を意味する語であることから(甲8)、本件商標は全体として「化学反応により炭化水素の組成や構造を変化させたリグニン」ほどの意味合いを認識させるものである。
したがって、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者は単にその商品の品質を認識するにすぎないため、本件商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である。
ア 本件商標の構成について
本件商標を構成する「改質リグニン」の文字は、本件商標の指定商品を取り扱う業界においては、それぞれ化学辞典にも収載され(甲9)、一般的に使用されてきた「改質」及び「リグニン」の語を結合してなるものである。そして、「改質」の語は、「化学反応により炭化水素の組成や構造を変化させること」の意味を有するものであり(甲8の1)、化学品の研究開発の分野では所定の物質の欠点を克服し機能性を向上させるために採用されることの多い化学反応の一種と認識されている。また、「リグニン」の語は、「維管束植物の道管・仮道管・繊維などの細胞壁に蓄積される高分子重合体」の意味を有するものであり(甲8の2)、セルロースやヘミセルロースと並ぶ木材の組成物の1つを称するものであることは周知である。
そうすると、これらの語を結合した「改質リグニン」の文字は、その構成全体として、「化学反応により炭化水素の組成や構造を変化させたリグニン」ほどの意味合いを認識させるものである。
イ 「改質リグニン」の語の使用例
「改質リグニン」の語は、本件商標の登録査定以前から、リグニンに含まれる炭化水素の組成や構造を変化させたリグニンを指す語として、特許文献や業界紙等において使用されている(上記(2)ア(ア)~(コ)、同イ(ア)~(ウ))。使用例の中には、「改質リグニン」の対概念として「未改質リグニン」との語を用いる例(同ア(ウ)、同イ(イ))や、「改質リグニン」の類似概念として「改質セルロース」等の語を用いる例もあることから(同ア(ウ))、「改質」と「リグニン」の語が結合した「改質リグニン」との語は、単に改質の操作が加えられたリグニンを指すものとして、「化学反応により炭化水素の組成や構造を変化させたリグニン」ほどの意味合いを理解させるものにすぎず、それ以外の特段の意味合いは生じ得ない。
また、請求人が請求人の発明に係るPEG改質リグニンの研究開発に関連して「改質リグニン」との語を使用して以降、当該PEG改質リグニンの研究開発を目的として結成された各種コンソーシアムに所属する企業や研究機関による使用も増え始め、その新素材としての注目度の高さから官公庁広報誌や業界紙等でも「改質リグニン」との語が広く使用されるようになった(同ウ(ア)~(サ))。これらの使用例はいずれも、ポリエチレングリコールを用いた化学反応により炭化水素の組成や構造を変化させた杉由来のリグニンを指しているため、「改質リグニン」との語が「化学反応により炭化水素の組成や構造を変化させたリグニン」との意味合いで認識されていることを示すものである。
ウ 小括
以上より、本件商標は、その構成全体として「化学反応により炭化水素の組成や構造を変化させたリグニン」ほどの意味合いを容易に認識、理解させるものである。
したがって、本件商標は、その指定商品中「改質されたリグニン化合物、リグニン化合物誘導体」に使用されるときは、商品の品質又は特徴を一般に認識させるものであって、自他商品の識別力を有するということはできないから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第16号について
上記(3)のとおり、本件商標の指定商品を取り扱う業界においては、通常、「改質リグニン」との語は、「化学反応により炭化水素の組成や構造を変化させたリグニン」ほどの意味合いを理解させるものであるから、「化学反応により炭化水素の組成や構造を変化させていないリグニン化合物、リグニン化合物誘導体」に「改質リグニン」との語を使用すると、需要者及び取引者は、当該リグニン化合物、リグニン化合物誘導体が改質されたものと誤解するおそれがある。
したがって、本件商標は、その指定商品中「改質されたリグニン化合物、リグニン化合物誘導体」以外の商品について使用するときは、商品の品質又は特徴の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、以下のとおり、出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない上、指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するため、商標法第4条第1項第7号に該当する。
ア 請求人が「改質リグニン」との語を提唱してきたこと
上記(1)アのとおり、請求人は、明治38年に農商務省山林局林業試験所として発足後、改編・名称変更を経て平成13年に成立した独立行政法人であり、森林、林業、木材産業、林木育種にわたる森林に関係する学際的な研究を行う中核的な試験研究機関である。
請求人は、平成17年頃から、これまで十分な利活用がなされていなかったリグニンのバイオマス資源としての可能性に着目し、有効に利活用する技術の研究開発に取り組んできた。その中で、化学構造の多様なリグニンの中でも杉に含まれるリグニンの構造が比較的均一であることを発見し、また、ポリエチレングリコールを用いてリグニンを改質することにより効率的にリグニンを抽出することができ、当該方法により得られたリグニン化合物が高強度かつ熱加工性に優れた新素材として工業的に利活用できることを見出した。請求人は、この新素材を「改質リグニン」と名付け、現在に至るまで、論文、学会、ウェブサイト、広報誌等で使用し続けている(上記(2)ウ(ア)~(力)、甲5の1~甲5の6)。
イ PEG改質リグニンの研究開発に係る事業は公益的な性質を有すること
請求人の創作に係るPEG改質リグニンは、上述のとおり、高強度かつ熱加工性に優れているという工業材料としての利点にとどまらず、生分解性を有する環境にやさしい素材であることや、わが国固有の樹木である杉を原料としており国産資源の利活用の観点からも有用であること、農山村地域でも安全に製造することができ地方創生にも貢献しうること等から、府省庁の主催する課題研究や補助事業等にも取り上げられている。
例えば、閣議決定に基づき平成26年度ないし平成30年度に実施された第1期戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)では、林地残材の産業利用を実現し、新たな地域産業を創出する可能性のある高付加価値素材としてPEG改質リグニンに関する研究が採択され、請求人を含む産学官26機関(平成29年当時)で結成されたコンソーシアム「SIPリグニン」において委託研究が実施された(甲10)。内閣府は、平成30年度に創設した官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)においても、バイオ技術領域の委託研究としてPEG改質リグニンの高機能化に係る研究を取り上げており、請求人が代表を務めるコンソーシアム「高機能リグニン」も、15機関(当時)で体制を再編し、研究に参加している(甲11)。
また、農林水産技術会議(農林水産省の下部組織)の令和2年度農林水産研究推進事業委託プロジェクト研究では、「木質リグニン由来次世代マテリアルの製造・利用技術等の開発」と題する公募研究課題について、請求人を含む産学官11機関に対し研究推進事業が委託され、令和2年度ないし同6年度にかけて、PEG改質リグニンの研究開発が進められている(甲12)。
さらに、林野庁の「林業分野における新技術推進対策事業」においても、木質新素材による新産業創出事業(地域資源を活用した改質リグニン製造産業のモデル開発)に対する助成金の採択が決定し、当該事業の一環として請求人を含む7機関が共同してPEG改質リグニンの製造を行う実証プラントを建設した(甲13)。林野庁は、ほかにも「林業イノベーション現場実装推進プログラム」において、プラスチック問題の解決や新たな産業創出に資する重要な事業の1つとしてPEG改質リグニンの実用化を位置づけ、開発・普及に向けた各種取組みを支援しており(甲14)、請求人も産学6機関とともに共同事業体を結成して、当該プログラムに参加している(甲15)。
上記のような官公庁・関係機関によるPEG改質リグニンの取扱いから明らかなとおり、PEG改質リグニンに係る研究開発は、単に請求人個人による研究開発というにとどまるものではなく、農林水産業の次世代を担う新素材の開発・普及を推進するという国の政策目的に基づく公益的な性質を有するものである。
ウ PEG改質リグニンの研究開発が多数の参加機関により発展してきたこと
上記イのとおり、PEG改質リグニンの研究開発は、戦略的イノベーション創造プログラムでは26機関が、官民研究開発投資拡大プログラムでは15機関が、農林水産研究推進事業委託プロジェクト研究では11機関が、林業分野における新技術推進対策事業では7機関が取り組み、発展させてきた。
その他にも、前述の「高機能リグニン」と称するコンソーシアムでは、官民研究開発投資拡大プログラムの終了後も、協力機関が8機関加わって、引き続きPEG改質リグニンの高度利用を中心とした研究開発が行われており(甲16)、138社の一般会員、27の特別会員、70名の研究会員が所属している「地域リグニン資源開発ネットワーク(リグニンネットワーク)」と称するコンソーシアムでは、PEG改質リグニン等の新素材の産業化に向けた連携・協力が図られ、会員においてPEG改質リグニンの研究開発等が進められている(甲17)。いずれのコンソーシアムも、セミナーの開催、イベントヘの出展、学会発表等により研究開発の成果を多数発信している。
上記のようなPEG改質リグニンの研究開発に携わってきた多数の関係者は、その取り組みの中で「改質リグニン」との語を継続して使用してきており(上記(2)ウ(ア)~(サ)、甲5、甲6)、実際に、その取り組みを紹介する各種報道において「改質リグニン」との語が広く使用されている(同(シ)~(ツ)、甲7)。
エ 被請求人が「改質リグニン」の名称による利益の独占を図る意図を有していたこと
一方、被請求人は、化成品等の製造・販売、加工品工場の設備・設計等を目的として、令和元年12月3日に設立された法人であり(甲2)、PEG改質リグニンの研究開発には、令和2年1月頃から参入している(上記(1)イ)。被請求人の参入当時には、既にPEG改質リグニンの製造方法や製造のためのテストプラントは請求人により完成されており、請求人以外の機関もPEG改質リグニンの研究開発に加わっていたことから、被請求人は、設立当初から請求人等とともにPEG改質リグニンの研究開発に取り組んでいた。例えば、上記イの林野庁の主催する林業分野における新技術推進対策事業では、被請求人は、請求人ほか6機関とともに共同事業体を結成して実証プラントの建設に取り組み、その後は、共同事業体から技術移転を受けて改質リグニンの試験的な生産を担当している(上記イ、甲13)。被請求人のウェブサイトに、請求人が保有するPEG改質リグニンのテストプラントを参考にして実証プラントを完成させ、PEG改質リグニンを世界に広めることが経営計画として掲げられているとおり(甲18 現在、同記載は削除されている。)、被請求人の事業は、このときの共同事業を基盤としたものである。
また、被請求人は、林業イノベーション現場実装推進プログラムに係る共同事業体の研究開発、地域リグニン資源開発ネットワークにも参加しているため(甲15、甲17)、それらの活動を通じて、PEG改質リグニンの研究開発の経緯や公益的な意義を十分に認識していた。にもかかわらず、被請求人は、令和4年5月11日、本件商標を単独で出願し、設定登録を受けた。当該出願を知った請求人は、同年9月、被請求人に対し、当該出願が設定登録された場合は商標権を譲渡するよう口頭で申し入れ、被請求人から譲渡する旨の回答を得ており、また、同5年7月5日に当該出願が設定登録されて以降も、同年11月29日に、電子メールにて商標権を譲渡する旨の連絡を受けていたが、同6年1月12日に、請求人から商標権譲渡の手続きの状況をメールで問い合わせても返答がなく、同月19日、22日、25日に被請求人の担当者に電話をしても繋がらなかった。
そのため、請求人は、被請求人に対して、同年2月7日、商標権譲渡を申し入れる旨の内容証明郵便を送ったものの(甲19)、指定の期限までに回答はなく、同年3月6日、改めて弁護士名義で送付した内容証明郵便(甲20)に対しても、指定の期限までに回答はなかった。
上記のような本件商標登録出願に係る一連の経緯に加え、被請求人は、請求人との間で締結した改質リグニンの製造プロセスの高度化に関する共同研究契約に違反して共同研究の成果である発明を単独で特許出願し(甲21。特願2022-198943、特願2022-212489、特願2023-006853)、林野庁主催の林業イノベーション現場実装推進プログラムに係る共同事業体の活動に伴う共同発明についても単独で特許出願している(甲15、甲19、甲20 特願2022-164925)。前者の3件の特許出願については、出願から約半年を経過した令和5年7月頃、請求人が当該出願の事実を知ってすぐ抗議をしたことにより取下げに至っているものの(甲22)、後者の特許出願については、現在も請求人からの取下げの申入れに対する回答はなく(甲19、甲20)、さらには、林野庁に対して被請求人を除く他の構成員から被請求人に対し特許を受ける権利の譲渡があった旨の虚偽の報告書までもが提出されている(甲23)。
被請求人によるPEG改質リグニン関連の発明及び商標に係る権利の単独取得を目指した上記の動きは、令和4年5月から令和5年1月にかけて行われており、その間には、同年1月4日付けで請求人との間で請求人が保有する特許権(特許番号第6890821号)の実施許諾契約が締結されている(甲24 なお、この特許権は、林野庁の補助事業として建設した実証プラントの稼働をしていく上で必須のものである。)。その上で、被請求人は、同年3月15日には本店を移転し(甲2)、同年7月31日には株式会社エムビーエス(以下「エムビーエス社」という。)との間で資本業務提携契約を締結して、同社とともにPEG改質リグニンの事業化を進める方向へ転換した(甲25)。
これらの事情を踏まえると、被請求人がPEG改質リグニンに係る共同発明について利益を独占するとともに、請求人が提唱し、PEG改質リグニンの研究開発に携わる多数の関係者が使用してきた「改質リグニン」との名称についても併せて利益の独占を図る意図を有していたことは明らかである。
オ 小括
以上のとおり、本件商標は、請求人の開発した木質新素材の名称として採用されたものであって、官公庁・関係機関が公費を投じて推進してきた研究開発事業においても多数の参加機関により使用されてきた「改質リグニン」との語と同一であるところ、被請求人は、請求人とともに林野庁の補助事業に参加し、その後も請求人と当該木質新素材の共同研究契約を締結する等、当該木質新素材の研究開発に関与していたことから、当該木質新素材が「改質リグニン」との名称で公共的な研究開発事業の中心に据えられ、当該事業の関係者に広く使用されてきたことを熟知していたにもかかわらず、本件商標が登録されていないことを奇貨として先取り的に商標登録出願し、登録を得たものである。また、被請求人が当該木質新素材の共同発明について請求人等に無断で単独発明として特許出願を行ったことや、再三にわたる請求人による本件商標に係る商標権譲渡の申入れにも一向に応じようとしないこと、それらの発明及び商標に係る権利を利用してエムビーエス社との資本提携関係の下でPEG改質リグニンの事業化を進めていることに鑑みると、今後請求人をはじめとする当該木質新素材の研究開発に係る事業の関係者が「改質リグニン」との語の使用を妨げられる事態が生じることは明らかであるから、被請求人による商標登録出願は、当該事業の遂行を阻止し、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、「改質リグニン」との語による利益の独占を図る意図でしたものであって、剽窃的なものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない上、その指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、あるいは、社会の一般的道徳観念に反するものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
被請求人には請求書の副本を送達し、相当の期間を指定して、請求人の主張に対して、答弁書を提出する機会を与えたが、被請求人は、何ら答弁をしていない。
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがないものであり、請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
以下、本案に入って審理する。
(1) 請求人の提出に係る証拠によれば、次の事実が認められる。
ア 「平成28年版研究成果選集2016」(編集・発行:国立研究開発法人 森林総合研究所 平成28年8月発行 甲5の2)
「地域産業を創出する現場設置型のリグニン製造システム」の見出しの下、「その沈殿物を集めたものが「改質リグニン」とよばれる工業材料です。」「PEGをリグニンに導入することにより、・・・改質リグニンとなります。」との記載がある。
イ 「平成30年版研究成果選集2018」(編集・発行:国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所 平成30年7月発行 甲5の3)
「様々な製品展開が可能な新素材「改質リグニン」のデザイニング」の見出しの下、「改質リグニンの製造には、ポリエチレングリコール(PEG)という化合物を用い、PEGで改質されたリグニンを木材から取り出しています。」との記載がある。
ウ 「生物資源 第15巻第2号(令和3年)」(甲5の5)
「国産森林資源由来の新素材「改質リグニン」」の見出しの下、「このリグニン分解物のPEG誘導体を「PEG改質リグニン」もしくは「グリコールリグニン」と呼ぶが、PEG改質リグニンを略して「改質リグニン」と呼ばれるようになった。」との記載がある。
エ 「日刊木材新聞」(2022年(令和4年)7月29日 第6面 甲5の6)
「木材利用の最新技術講座」の見出しの下、「改質リグニンは木材中の「リグニン」と総称される成分を原料として製造する素材である。」「製造されたリグニン由来物はPEGにより改質されたリグニン由来物であり、PEG改質リグニンであるが、略して改質リグニンとして知られるようになった。」との記載がある。
オ 「第62回粘土科学討論会発表抄録」(主催:日本粘土学会、開催日:2018年(平成30年)9月10日~11日 甲6の3)
「改質リグニンと粘土を用いたハイブリッド膜材料の開発と評価」の見出しの下、「近年スギ材から抽出されたリグニン由来化合物(以下、改質リグニン)に着目し、改質リグニンと粘土からなるナノコンポジット膜の開発に取り組んでいる」との記載がある。
カ 「国立研究開発法人産業技術総合研究所」のウェブサイト(発表・掲載日:2018年(平成30年)10月23日 甲6の5)
「木材の成分を用いた自動車内外装部品の実車搭載試験を開始」の見出しの下、「用語の説明」の項において、「改質リグニンは、・・・ポリエチレングリコールで改質された加工性のよいリグニン誘導体」との記載がある。
キ 「つくばサイエンスニュース」のウェブサイト(公益財団法人つくば科学万博記念財団、2018年(平成30年)10月23日発表 甲7の1)
「樹脂でガラス繊維強化プラスチック」の見出しの下、「スギ木材に140°Cのポリエチレングリコール(PEG)を加えて木材中のリグニンを分解すると、そのとき同時にリグニンがPEGと結合し工業用素材として応用できる改質リグニンが作れることを見出した。」との記載がある。
ク 「KURUKURA」のウェブサイト(公開日:2018年(平成30年)11月12日 甲7の2)
「産総研など、スギ由来の「改質リグニン」を用いたGFRPを開発。ミツオカ「ビュート」に装着して約1年の評価試験開始」の見出しの下、「改質リグニンはどう製造する?」の項において、「改質リグニンは140°Cに保ったポリエチレングリコール(PEG)にスギ木材を加え、少量の酸と共に攪拌して木材中のリグニンを分解するという手法で製造される。リグニンは分解すると同時にPEGと結合し、物理特性が改質したリグニン、つまり改質リグニンとなる」との記載がある。
ケ 「林野-RINYA- No.142」(発行:林野庁、2019年(平成31年)1月 甲7の3)
「希望の新素材「改質リグニン」のいま」の見出しの下、「改質リグニンは「ポリエチレングリコール(PEG)」という薬剤を用いてスギから取り出された新素材です。」「取り出されたリグニンはPEGで改質されており、「PEG改質リグニン」略して「改質リグニン」と呼ばれています。」との記載がある。
コ 「農村ニュース」のウェブサイト(株式会社国際農業社、2022年(令和4年)4月26日 甲7の5)
「改質リグニン普及へ 活用推進議連を立ち上げ」の見出しの下、「足元にはすごい資源がある。日本古来のスギがその特性を発揮できる改質リグニンだ。」「改質リグニンについても国の支援体制を強化し、実際に大量生産が市場のメカニズムでできるところまで一定のお手伝いをすることができればと考えている」との記載がある。
サ 「日経バイオテク」のウェブサイト(2022年(令和4年)11月1日 甲7の6)
「改質リグニンとは スギを原料に工業生産化されたバイオマス新素材」の見出しの下、「改質リグニンはポリエチレングリコール(PEG)を用いてスギから抽出した素材で、PEGリグニン、グリコールリグニンなどとも呼ばれている。」との記載がある。
シ 「コンバーティングテクノロジー総合展 開催報告書」(主催:株式会社加工技術研究会、2019年(平成31年)1月30日~2月1日開催 甲7の7)
「出展者 Pick Up」の見出しの下、「SIPリグニン」の項において、「改質リグニンの化学原料としての利用が可能になったため、(後略)」「改質リグニンによる部材を採用した試作車」との記載がある。
ス 「広辞苑 第七版(株式会社岩波書店)」(甲8)
「改質」の文字は「化学反応により炭化水素の組成や構造を変化させること。」を、「リグニン」の文字は「維管束植物の道管・仮道管・繊維などの細胞壁に蓄積される高分子重合体。」をそれぞれ意味する語として掲載されている。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、「改質リグニン」の語は、「化学反応により炭化水素の組成や構造を変化させたリグニン」、すなわち「改質したリグニン」を表す語である。
そして、化学品の分野において、改質したリグニンのうち、特にポリエチレングリコール(PEG)を用いて改質したものを「PEG改質リグニン」あるいは「グリコールリグニン」等と称されるが、「PEG改質リグニン」を略した語として「改質リグニン」と称される場合がある。
してみれば、「改質リグニン」の語は、「改質したリグニン」又は「ポリエチレングリコール(PEG)を用いて改質したリグニン」を表す語をいうと判断するのが相当であり、当該語は、化学の分野において、上記意味を表す語として、本件商標の登録査定時よりも前において多数使用されていることが認められる。
そうすると、「改質リグニン」の語は、「改質したリグニン」又は「ポリエチレングリコール(PEG)を用いて改質したリグニン」を表す語として、当該分野の取引者及び需要者に認識され、かつ、使用されていると判断するのが相当である。
本件商標は、前記第1のとおり、「改質リグニン」の文字を標準文字で表してなるものである。
そして、前記2(2)のとおり、「改質リグニン」の語は、化学品の分野において、「改質したリグニン」又は「ポリエチレングリコール(PEG)を用いて改質したリグニン」を表す語として、当該分野の取引者及び需要者に認識され、かつ、使用されているものである。
また、本件商標の指定商品は、第1類に属する前記第1のとおりの商品であり、化学品の分野に属する商品である。
そうすると、本件商標は、その指定商品に使用するときには、「改質したリグニン化合物(又は誘導体)」又は「ポリエチレングリコール(PEG)を用いて改質したリグニン化合物(又は誘導体)」と認識され、当該性質を有する商品といった商品の品質を表したものと認識されるといわなければならない。
また、本件商標は、標準文字で表してなるものであるから、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であることが明らかである。
したがって、本件商標は、その指定商品中「改質したリグニン化合物(又は誘導体)」又は「ポリエチレングリコール(PEG)を用いて改質したリグニン化合物(又は誘導体)」に使用するときには、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といわなければならないから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
さらに、本件商標は、その指定商品中、上記商品以外の商品に使用するときには、当該商品があたかも「改質したリグニン化合物(又は誘導体)」又は「ポリエチレングリコール(PEG)を用いて改質したリグニン化合物(又は誘導体)」であるかのように、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
本件商標を構成する「改質リグニン」の文字は、「化学反応により炭化水素の組成や構造を変化させたリグニン」又は「ポリエチレングリコール(PEG)を用いて改質したリグニン」を意味する語であり、上記3のとおり、本件商標の指定商品との関係においては、商品の品質を表示するものであるから、商品の普通名称ということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第1号に該当しない。
請求人は、本件商標が、商標法第4条第1項第7号に該当する理由として、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない上、指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するため主張するので、以下判断する。
(1)請求人による本件商標の登録出願の機会について
上記第2の2(1)アのとおり、請求人は、本件商標の登録出願(令和4年5月11日)前である明治38年に農商務省山林局林業試験所として発足後、改編・名称変更を経て平成13年に成立した独立行政法人である。そして、遅くとも平成26年頃には「PEG改質リグニン」を「改質リグニン」と名付けて、現在まで「改質リグニン」の名称を使用していると主張する。
そうすると、請求人は、自らすみやかに本件商標について登録出願する機会が十分あったにもかかわらず、それをしなかったということであり、また、それができなかった特段の事情があったと認めるに足りる事実もないことから、当該登録出願を怠っていたものと評価せざるを得ない。
(2)被請求人が請求人及び「改質リグニン」の存在を知っていたかについて
請求人は、「被請求人は、本件商標が登録されていないことを奇貨として先取り的に商標登録出願し登録を受けたものであり、また、今後請求人をはじめとする木質新素材に係る事業の関係者が「改質リグニン」との語の使用を妨げられる事態が生じることは明らかであるから、被請求人による本件商標に係る登録出願は、当該事業の遂行を阻止し、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、「改質リグニン」との語による利益の独占を図る意図でしたものであって、剽窃的なものといわざるを得ない。」旨を主張している。
確かに、請求人の主張及び同人の提出に係る甲各号証によれば、被請求人は、請求人とともに林野庁の補助事業に参加し、その後も請求人と当該木質新素材の共同研究契約を締結する等、研究開発に関与していたことから、被請求人は、本件商標の登録出願時には、請求人の存在及び当該木質新素材が「改質リグニン」との名称で公共的な研究開発事業の中心に据えられ、当該事業の関係者に広く使用されていたことを知っていたものといえる。
しかしながら、令和4年5月に、本件商標について登録出願し登録を受けたこと、当該木質新素材の共同発明について請求人等に無断で単独発明として特許出願を行ったこと、請求人による本件商標に係る商標権譲渡の申入れに応じないこと、PEG改質リグニンの事業化を進めるために請求人以外の第三者(エムビーエス社)との資本提携を行ったことは認められるが、これらのことをもって本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあるとまではいえない。
そして、請求人の提出した証拠からは、具体的に、被請求人が請求人の活動を阻害しあるいは請求人に対して交渉等における有利な地位を確保しようとしていることなどを裏付ける事実は見いだせない。
(3)以上からすると、本件商標について、商標法の先願登録主義を上回るような、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあるということはできないし、そのような場合には、あくまでも、当事者間の私的な問題として解決すべきであるから、公の秩序又は善良の風俗を害するというような事情があるということはできない。
その他、本件商標の構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
以上により、本件商標は、商標法第3条第1項第1号及び同法第4条第1項第7号には該当しないものの、同法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項により、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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