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Trademark Appeal Case

称呼類似と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024890050
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6783725号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和5年7月31日に登録出願、第44類「動物の医療,動物の治療,動物の美容,動物の飼育,動物用の調剤,動物の介護,動物に関する栄養の指導,動物の医療および健康に関する情報の提供,動物の治療用機械器具の貸与」を指定役務として、同6年2月22日に登録査定、同年3月1日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標及び使用標章

1 商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標

請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第11号に該当するものとして引用する登録第6669170号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、令和3年9月21日に登録出願、第44類「動物の診察,動物の治療,獣医療情報の提供,動物の健康診断及びこれに関する情報の提供,動物の予防接種,動物の看護,動物用の調剤,動物に関する栄養の指導及び相談,動物の飼育及びこれに関する情報の提供,動物の美容及び理容,動物の治療用機械器具の貸与」及び第43類に属する商標登録原簿記載のとおりの役務を指定役務として、同5年2月6日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

2 商標法第4条第1項第10号に該当するとして引用する使用標章

請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第10号に該当するとして引用する標章(以下「使用標章」という。)は、「埼玉動物医療センター」の文字からなるものであって、請求人が動物の医療等を含む獣医師業務において使用していると主張するものである。

第3 請求人の主張

請求人は、本件商標の商標登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書において要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第9号証(「枝番号」及び「甲第5号証に関する提出資料AないしE及びR」を含む。)を提出した。

なお、以下、証拠の記載に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように省略して記載し、枝番号を全て記載するときは枝番号を省略して記載する場合がある(甲第5号証において、甲第5号証に関する提出資料AないしE及びRをすべて含む場合も同様とする)。

1 無効事由

本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第11号に該当するため、同法第46条第1項第1号により無効にすべきものである。

2 商標法第4条第1項第11号該当性に係る無効原因について

(1)本件商標は、上記第1のとおり登録されたものであるが、請求人所有に係る登録第6669170号商標(引用商標)は、その先出願に係るものであって、両商標は相類似しており、その指定商品も類似するものである(甲8)。

(2)商標の類似について

請求人所有に係る引用商標と本件商標とは、その名称を表す「埼玉動物医療センター」と「(アニファ)埼玉(総合)動物医療センター」という部分において、その要部が一致するものであり、少なくとも取引者や需要者の間において、請求人と被請求人とがグループ病院であるかのような誤解・混同を生じさせるおそれがあるものとなっている。

事実、動物病院を含む医療機関との取引や診療要請を検討する者において、最も重要となるのは、医療行為等の実施主体を示す名称、すなわち「どの病院であるか」あるいは「どの系列に属する病院であるか」といったことであり、付属するデザインの有無やその内容等において認識・区別されることは極めて稀であると思われる。

よって、少なくとも称呼、観念の点において、両商標は相類似しているといえる。

(3)商品の類似について

本件の指定商品については、商標法施行令別表にも示されているように、引用商標の指定商品とは販売ならびに需要者が同一で、類似する商品ということができる(合議体注:「商品」の文字部分は「役務」の誤り。)。

3 商標法第4条第1項第10号該当性に係る無効原因について

(1)総論

本件商標は、請求人により請求人の業務を表すものとして長年用いられ、少なくとも埼玉県内及びその周辺で広く認識されるに至っていた「埼玉動物医療センター」という商標(名称)を、被請求人においてその存在を十分認識しながら、請求人が形成してきた信用や実績にフリーライドすると同時に、競業者となる請求人の業務を妨害する不当な目的で登録出願されたものと評さざるを得ないものである。

(2)需要者の認識について

ア 請求人による使用標章「埼玉動物医療センター」の利用開始

請求人は、埼玉県入間市において1997年(平成9年)2月に請求人の現代表者が開業した『林宝どうぶつ病院』を前身とし、その後、1999年(平成11年)に法人化したものであるが(甲1)、請求人は、遅くとも2007年(平成19年)ころから「埼玉動物医療センター」の名称をもって獣医師としての諸サービスを提供してきている(甲2)。

なお、被請求人が「埼玉動物医療センター」の名称を使用し始めたのは、請求人に遅れること10年以上となる、2018年(平成30年)3月16日であることが確認できる(甲3)。

イ 外部への広報等

請求人は、一般的な広告やWebサイトによる各種情報の発信のほかに、2015年(平成27年)より「埼玉動物医療センターニュースレター」という名称のニュースレター(以下、単に「ニュースレター」という場合がある。)を定期的に発行し、既存顧客や他の動物病院など、需要者ないし需要者に繋がりうる人達(直接顧客となる一般消費者のみならず、困難な症例等に関しては他院を紹介することも珍しくない動物医療業界においては、他の動物病院自体も需要者ないし潜在的需要者であるといえる)に向け広く配布されてきている(甲4/ニュースレター。便宜上、従前提出時である令和3年までの分としている。なお配布総数は、第1号の時点で1811件であったが、提出分最新号の時点では1673件となっている)。

ウ 所属獣医師の専門性及び様々な活躍

さらに事業主としての面だけでなく、臨床・研究等の点においても、「埼玉動物医療センター」に所属する獣医師であることが明記される形での学会発表や論文投稿などが重ねられてきており、その結果、請求人が高度な動物医療サービスを提供可能な集団であることが、需要者に広く認識されるに至っている(甲第5号証のA1~/学会発表資料等)。

エ 請求人は県外からも広く紹介を受ける有力動物病院として知られている

前述のアないしウによる成果も含め、請求人の長年の努力の結果、請求人は、地元埼玉県に限らず、県外からも多数の紹介客が訪れる、業界内でも有力な動物病院として広く知られる存在になっており、直近1年に限っても県内外から1000件以上の患者紹介を受けるに至っている(甲6/便宜上、従前提出時における直近での紹介件数一覧および紹介病院一覧)。

オ 「埼玉動物医療センター」は請求人そのものを示すと周知されている

以上のとおり、請求人が高度かつ充実した動物医療を提供する存在であることは、「埼玉動物医療センター」の商標(名称)名と共に、少なくとも埼玉県とその周辺において、需要者である一般顧客・同業者(潜在顧客を含む)のいずれにおいても広く周知されるに至っているといえる(甲7/周知性調査報告書)。なお、当然のことながら、請求人は現在に至るまで営業を継続しており、その周知性は更に拡大することはあっても、失われることがないのはいうまでもない。

(3)さらに、このような評価に関しては、既に特許庁において同様の判断が(先行する別の商標登録出願に対する拒絶理由として)、下されていることを念のため付言しておく。

すなわち、本件と同様に被請求人により申請されていた【商願2020-159815】においても、商標「埼玉動物医療センター」は、取引者、需要者間に広く認識されているものであるとして拒絶理由通知がなされ、その後、令和4年5月には正式に拒絶査定がなされているものである。

(4)「同一又は類似の商標」であること

請求人が長年用いてきた「埼玉動物医療センター」の名称・商標と、そこに「アニファ」といった単なる文字列を加えただけの本件商標とが、「類似」と評価されるべき関係にあることは明らかである(なお、前述のとおり、何らデザイン等を伴わない「埼玉動物医療センター」という名称そのものに周知性が存在するとされる以上、本件商標との対比も、その名称を示す部分を重視すべきであることはいうまでもない)。

4 商標法第4条第1項第7号該当性に係る無効原因について

出願人と請求人との間における合意書(甲9)の内容を見れば明らかなとおり、本件は、出願人が「アニファ埼玉動物医療センター」という名称・標章を今後一切用いない事を誓約しているにも関わらず、それとほぼ同一内容での商標登録を試みるものであることがわかる。そうすると、本件出願は、出願人と請求人との間における紛争解決に至るまでの過程や合意内容そのものを全く蔑ろにする極めて背信的なものであり、単に請求人との間の合意違反となるのみならず、適正な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠く行為というべきである。

そして、そのような商標登録を認めることは、公正な取引秩序の維持の観点からみても不相当であって、「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護する」という商標法の目的(同法第1条)にも反するというべきである。

よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号所定の「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するものといえる。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第21号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号該当性について

請求人が本号の根拠としている引用商標は、乙第1号証にあるように、犬と猫が向き合っている様子からなる図形と、「埼玉動物医療センター」という文字からなるものであり、その全体が緑色基調の配色で描かれているものである。

一方、本件商標は、うさぎ、猫、犬、鳥、亀及びカメレオンといった動物の図形と十字図形を月桂樹の葉が包むように描かれている円型の構成の周りを「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTER」という文字で囲んだ構成の下に、「アニファ埼玉総合動物医療センター」という文字を配してなるものであり、その全体が青色基調の配色で描かれているものである。

本件商標に係る指定役務が引用商標に係る指定役務と同一・類似である点については認める。一方、本件商標と引用商標は非類似の商標であるので、以下その論拠を示す。

本件商標及び引用商標は、その文字部分において「埼玉」「動物」「医療」「センター」といった文字を共通としているが、「埼玉」の文字は「関東地方中央部の県」を示す地名(乙2)、「動物」の文字は「生物を二大別したときに、植物に対する一群。」といった意味(乙3)、「医療」の文字は「医術・医薬で病気やけがを治すこと。治療。療治。」といった意味を表す語であり(乙4)、本件登録に係る役務との関係ではそれぞれ「役務の提供の場所(埼玉)」、「役務の提供対象(動物)」及び「役務の一般名称(医療)」を示すものにすぎない。また、「センター」の文字は「その分野・部門の中心的役割をする機関や施設。」といった意味を表す語であり(乙5)、「医療センター」などの形で広く使用されているものである。

これらを組み合わせた「地名+動物医療センター」という語については、乙第6号証に示すように特許庁においても多数の登録例があり、そのうち11件は被請求人保有のものでもある。このような事実は、「地名+動物医療センター」という商標全体として識別力の観点から登録適格が認められるということを示してはいるが、そもそもが識別力の低い語の組み合わせであるため、その権利が認められる範囲はほぼ同一の範囲に限られるといった解釈がなされている。この点が本事案の最重要論点になるので、以下詳述する。

そのような解釈を示す本件の類似審査例として、まずは、「日本動物医療センター」という語に係る審査例を挙げる。株式会社Aが保有していた登録第4549124号は図形の下に「Neo Vets」という欧文字が配されており、そのさらに下に「日本動物医療センター」という文字を配した商標であり(乙7)、2002年3月8日に登録された後、不使用取消審判の取消審決確定に伴い当該審判の予告登録日である2005年4月15日付で取り消されたものである。この登録が未だ存在していた2003年8月22日付にて、株式会社Bが出願していた登録第4702275号「日本総合動物医療センター」が登録となっている(乙8)。両登録に係る商標の日本語文字部分の差分は「総合」のみである中で並存登録されたという事実は、先行登録の日本語部分「日本動物医療センター」が識別力の低い語の組み合わせであるため、その権利が認められる範囲はほぼ同一の範囲に限られるといった解釈を端的に示している。なお、登録第4702275号の権利者である株式会社Bは、登録第4549124号が取消されたことに伴い、猫の顔の図形と欧文字「JAMC」を組み合わせた図形、「JAPAN ANIMAL MEDICAL CENTER」という欧文字及び「日本動物医療センター」という文字からなる登録第4923009号を登録している(乙9)。

そのような状況下で、株式会社Cが登録第5693951号「日本動物救急医療センター」について登録している(乙10)。この登録の審査過程においては、上述の登録第4923009号は引用されず、株式会社Bの未登録周知商標として挙げられた「日本動物医療センター」との類似のみ問題とされたが(乙11)、意見書による反論のすえ、相互に非類似の商標であると判断され登録となっている。

その後、また別の主体である株式会社Dが、図形と「日本動物高度医療センター」という文字列からなる商標を出願したが、やはり上述の登録群とは非類似であるとの判断がなされ、登録第5922959号として登録となった(乙12)。

さらにその後、登録第4702275号及び同4923009号の権利者である株式会社Bが登録第5945321号「日本動物医療センター」を登録したが、個別審査の原則がある中で、上述の登録群が問題になることはなかった(乙13)。このことは、「日本動物医療センター」というまとまりについて識別力が認められ登録になったとしても、それに「高度」「救急」など、指定役務との関係で決して識別力が高くはない要素が入っただけでも非類似のものとして判断されること、すなわち、権利範囲(類似の幅)が極めて狭いことを示している。このような識別力と類似範囲の広狭の相関性は、需要者・取引者の認識実態を反映した特許庁審査実務の基本的な考え方であるといえる。

次に、同種審査例として、「神奈川動物医療センター」の事例を挙げる。株式会社Eが保有していた登録第5476099号は、「AGMC」との欧文字の下に犬と猫をモチーフとした図形を配し、その下に「神奈川動物総合医療センター」という文字を配した商標であり(乙14)、2012年3月2日に登録された後、2022年3月2日に存続期間満了を理由として消滅したものである。この登録が存在する中で、被請求人は商標「神奈川動物医療センター」を出願し、2022年1月13日に登録となった(乙15)。両登録の差分は「総合」のみである中、並存登録されたという事実は、相互に識別力の低い語の組み合わせであるため、その権利が認められる範囲はほぼ同一の範囲に限られるといった解釈を端的に示している。

さらに、同種審査例として、「千葉動物医療センター」の事例を挙げる。株式会社Eが保有していた登録第5476100号は、「AGMC」との欧文字の下に犬と猫をモチーフとした図形を配し、その下に「千葉動物総合医療センター」という文字を配した商標であり(乙16)、2012年3月2日に登録された後、2022年3月2日に存続期間満了を理由として消滅したものです。この登録が存在する中で、株式会社Cは商標「千葉動物救急医療センター」を出願し、2014年2月7日に登録となった(乙17)。その後さらに、被請求人が商標「千葉動物医療センター」を出願し、2014年8月8日に登録となった(乙18)。各登録の差分は「総合」や「救急」といった識別力の強くはない語のみである中で並存登録されたという事実は、相互に識別力の低い語の組み合わせであるため、その権利が認められる範囲はほぼ同一の範囲に限られるといった解釈を端的に示している。

本件商標に係る審査においては、これらの特許庁審査例と同様の判断がなされたということになるが、このような特許庁審査実務は識別力や本件登録に係る需要者の認識を考慮すると極めて妥当だと考える。以下、上述の認識を踏まえ、本件商標と引用商標の類否を検討する。

まず、外観については、先ほど認定したとおり図形も文字数も大きく異なるものであるので、需要者・取引者に与える印象も大きく異なり、両者は明確に非類似である。

次に、称呼については、本件商標からは「アニファサイタマジェネラルアニマルメディカルセンター」又は「アニファサイタマソウゴウドウブツイリョウセンター」との称呼が生じうるところ、引用商標の称呼は「サイタマドウブツイリョウセンター」であり、どちらも音数自体大幅に異なり、需要者・取引者に与える印象が大きく異なるので非類似である。

最後に、観念については、本件登録に係る役務に関して識別力の生じない部分である「埼玉」「動物」「医療」など個別の語については共通する部分もあるが、商標全体としてはどちらも造語であり比較できず非類似である。

以上のように、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念それぞれにつき非類似であることから、相互に非類似であるものと思料する。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号の拒絶理由に該当するものではない。

なお、請求人の主張は上述のような背景を検討することなく、「要部が一致」と認定し、本件商標の文字部分のうちの「埼玉総合動物医療センター」部分は識別力の低い構成要素の結合であるので、本件商標の要部は「アニファ」とするのが自然な解釈である。請求人は、こうした商標実務上基本的な事項すら考慮することなく、「少なくとも称呼、観念の点において、両商標は相類似する」と述べているのみであり、その主張は何ら説得力を持つものではない。敷衍すれば、請求人の商標が識別力の弱い語の組み合わせで構成されているにもかかわらず、十分に識別力を有する造語商標と同じような取り扱いをしてしまっているようにうかがえる。

2 商標法第4条第1項第10号該当性について

本号の要件のうち、役務が同一・類似である点は認めるが、請求人の使用に係る「埼玉動物医療センター」と本件商標は非類似の商標である。この点の主張は、上記1で述べたとおりであるが、審判請求書の4(4)において請求人が「請求人が長年用いてきた「埼玉動物医療センター」の名称・商標と、そこに「アニファ」といった単なる文字列を加えただけの本件商標」との記述を行っている点は看過できず、本件商標の日本語部分は「アニファ埼玉総合動物医療センター」であり、「アニファ」の文字列を加えただけではない。先に述べた「アニファ」とその他部分の識別力の軽重を考慮していない点も含め、説得力に欠ける主張と言わざるを得ない。

その他、本号の要件として、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」といういわゆる周知性に関する要件があり、請求人もこの点について種々主張しているので、以下反論する。

請求人は審判請求書の4(2)アにおいて「遅くとも2007年(平成19年)ころから「埼玉動物医療センター」の名称をもって獣医師としての諸サービスを提供してきている」と述べているが、甲第2号証の1ないし3を見てもどこにもそのような記述がない。甲第2号証の1ないし3はインターネットのアーカイブ閲覧サービスの写しのようであるが、最も古い甲第2号証の1でも2010年のものとなっており、同2は2013年、同3は2018年のものである。これらをもって2007年ころからの使用している証拠にはならない。また、「被請求人が「埼玉動物医療センター」の名称を使用し始めたのは」とあるが、甲第3号証から確認できるのは被請求人による「アニファ埼玉動物医療センター」という名称の使用であり、「埼玉動物医療センター」単独での使用は確認できない。

審判請求書の4(2)イにおいてはニュースレターについて触れられているが、その発行部数や発行範囲を証明するようなものは提出されていない。同様にニュースレターの写しを提出した事例である無効2015-890045においては、「また、図形と組み合わせた「Design Thinking」の文字を有する商標(使用商標3)は、請求人の前身である、「慶應義塾大学SFCデザイン思考研究会」の発行するニュースレター(甲14、甲19、甲20、甲21)において表示されていたのは認められるが、請求人が現在の団体となってから使用している証拠の提出はなく、また、このニュースレターがどの程度の量、どの程度の範囲に頒布されていたかの証左もないことから、このニュースレターへの使用をもって広く認識されていたと認めることはできない。」との認定がなされており(乙19)、甲第4号証についても同様に証拠としての実質的な意義を認めることはできない。

審判請求書の4(2)ウにおいては、学会発表・論文投稿の実績についての主張がなされているが、商標法第4条第1項第10号において問題にされるのは本件登録に係る需要者・取引者における周知性であり、学会発表・論文投稿の内容について一般の需要者の目に触れることはないと思われ、関心もないと思われるところ、それが需要者の認知に結びつくという主張を認めることはできない。また、さまざまな発表の場・投稿の場があると考えられるところ、請求人提出の証拠に係る発表や投稿がなされた学会・論文の規模・掲載誌の発行部数等についての説明もなく、どの程度同業者の認知に結びついたのかも立証されていない。

審判請求書の4(2)エにおいては、甲第6号証として請求人の作成に係る一覧表が提出されているが、この数字を裏付ける具体的な証拠の提出はない。また、仮に一覧表に示されている数字が事実であったとして、このような紹介数がどの程度の数字であるのか、業界の事情についての説明もないことから、周知性の評価資料として参考にすることができない。このような認定は周知性証明資料に関する認定としては一般的であり枚挙に暇がないが、たとえば無効2019-890083では「広告掲載回数と広告費は、これを証明する証拠は、請求人が作成した一覧表のみの資料であり、この数字を裏付ける具体的な証拠の提出もないし、仮に、この広告掲載回数や広告費がそうであったとしても、これがどの程度のものであるかを判断する他社の広告掲載回数や広告費や業界全体の広告掲載回数や広告費等が不明であるから、その多寡を評価することができない。また、請求人の業務に係る商品及び役務の売上高、製造数量、提供回数、市場のシェア等の具体的な数字の記載もないし、それを裏付ける具体的な証拠の提出もない。そうすると、使用商標は、請求人の業務に係る商品及び役務であることを表示するものとして、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されるものと認めるに足りる証拠を見いだすことができないから、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。」として(乙20)、客観的な裏付けのない一覧表について証拠性を認めていない。

審判請求書の4(2)オについて、甲第7号証として周知性の調査報告書が提出されているが、これは調査主体の株式会社ロイヤリティマーケティングが行ったものであり、調査手法は「Webアンケート」とあるので、ポイントをインセンティブとして行っているものだと思われる。同社ウェブサイトにおける説明によれば、「Webアンケート」は所要時間1~5分程度、ポイントは1~100ポイントとのことで、これによりどこまでアンケートの質が担保されるのかという問題意識も生まれるところである(乙21)。

そのようなアンケート結果の信頼性の問題を横においたとして、甲第7号証によれば、調査対象としたエリア全体での認知率が22%、請求人の所在する入間市に限定しても32.8%とのことである。商標法第4条第1項第10号は、登録主義と使用主義のバランスをとるべく、未登録周知商標の保護を図る趣旨であるところ、この程度の認知度に基づいて周知性を認めるとすれば、先願主義を基本とする商標制度のバランスを崩すこととなり問題である。

また、「現在に至るまで営業を継続しており、その周知性は更に拡大することはあっても、失われることがない」という請求人の主張も、「業務上の信用」という概念への理解を感じさせないものであり、失当である。認知の度合いはその営業の状況によって大きく左右され揺れ動くものであり、多種多様なマーケティング技法が開発され、多くの事業者が競争を行っている状況下では、漫然と営業を継続しているという事実だけでは、認知が失われることがないといったことはいえない。そうしたことから、2021年6月23日付の甲第7号証が、本件登録の査定時(登録査定起案日)である2024年2月22日の請求人の使用に係る商標の認知をどれだけ的確に示しているものなのかは疑問である。

審判請求書の4(3)について、商願2020-159815について、請求人の転記した拒絶理由通知が発せられ、その後拒絶査定となった点は認める。しかしながら、その背景としては、当該拒絶理由通知が刊行物等提出書の提出を受けてその妥当性について確認すべく出された拒絶理由であると考えられるところ、同出願の出願人であった被請求人が拒絶理由通知に対し何ら反論を行わなかったことからそのまま拒絶査定がなされたという事情があるものであり、審判例ですらない一審査例に過ぎないので、個別審査の原則から何らの拘束力をも持たない点、付言する。

上述のように、請求人提出の資料から請求人商標の周知性は認められないことは明らかである。

3 商標法第4条第1項第7号該当性について

甲第9号証として合意書が提出されており、その存在自体は認めるが、請求人が審判請求書の5で主張している内容については否定する。

まず、「「アニファ埼玉動物医療センター」という名称・標章を今後一切用いない事を誓約している」という点について、甲第9号証を参照してもそのような条項は見当たらない。「アニファ埼玉動物医療センター」については、請求人も承知のとおり、「アニファ埼玉総合動物医療センター」へと変更しており、請求人の使用に係る「埼玉動物医療センター」と被請求人の変更後の商標「アニファ埼玉総合動物医療センター」が非類似であり引用商標に係る商標権を侵害しないことは本件登録の登録によって特許庁により証明されているところである。この非類似の判断が需要者・取引者の実態を考慮した特許庁審査実務に即している点は上記1で述べたとおりである。

また、本件商標に係る出願が社会的妥当性に欠くという主張も失当である。当該合意書の第1条には、引用商標と同一又は類似する標章を用いるなどして請求人の商標権を侵害しないことを約する旨記載されている。商標権の侵害か否かは当事者の主観的な判断に拠るべきものではなく、特許庁のような専門官庁、また必要に応じて裁判所が判断すべき事柄であるから、被請求人としてはむしろ商標権侵害にならないように本件商標の出願を行い、実際に非類似との判断を得ているものである。このことが、何ら社会的妥当性に欠く行為でないことは明らかである。

4 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第10号及び同項第7号に該当するものではない。よって、本件商標は商標法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とされるべきものではなく、本件審判請求には理由がない。

第5 当審の判断

請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。

以下、本案に入って審理する。

1 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)商標法第4条第1項第11号について

商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の役務に使用された場合に、役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような役務に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその役務の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日判決参照)。

また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認められる場合においては、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して類否を判断することは、原則として許されないが、その場合であっても、商標の構成部分の一部が取引者又は需要者に対し、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じない場合などには、商標の構成部分の一部だけを取り出して、他人の商標と比較し、その類否を判断することが許されるものと解される(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日判決、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日判決、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日判決参照)。

(2)商標法第4条第1項第11号該当性

ア 本件商標

(ア)本件商標は、別掲1のとおり、哺乳類、鳥類及びは虫類とおぼしき6体の動物のシルエットの図形(青色)、十字図形並びに植物の葉のような図形(水色)が、全体として円形に収まるよう配された周りを「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTER」という文字(青色)で円弧状に囲んだ構成(以下、これらの図形部分と文字部分をまとめて「本件上段部分」という場合がある。)の下に、「アニファ埼玉」と「総合動物医療センター」の文字を2段に書したもの(以下「本件下段部分」という場合がある。)を配してなるものであり、植物の葉のような図形部分が水色で、その他の部分は青色で表されているものであるところ、本件商標は、図形と文字とを組み合わせてなる結合商標であると容易に看取、把握されるものである。

そして、本件上段部分と本件下段部分は、相互に重なり合うこともなく間隔を空けて配されており、かつ、本件上段部分の図形部分と本件下段部分とは、図形と文字との違いが、本件上段部分の文字部分と本件下段部分とは、文字種の違いに加え、その文字の大きさにも違いがあることも考慮すると、それぞれが視覚上分離、独立した印象を与えるものである。

(イ)本件下段部分は「アニファ埼玉総合動物医療センター」の文字を2段に書してなるところ、その構成中、上段の「アニファ」の文字は、辞書等に掲載されている語ではなく、特定の意味合いをもって親しまれている語でもないことから、特定の観念を有しない語として認識されるものである。

また、その構成中、上段の「埼玉」の文字部分は、関東地方の県である「埼玉県」を表す語であると(岩波書店「広辞苑第七版」参照。以下、単に「広辞苑」という。)、下段の「総合」の文字部分は、「個々別々のものを一つに合わせまとめること」などの意味を有する語であると(広辞苑)、「動物」の文字部分は、「ヒト以外の動物」などの意味を有する語であると(広辞苑)、「医療」の文字部分は、「医術で病気をなおすこと、療治、治療」の意味を表す語であると(広辞苑)、「センター」の文字部分は、「その分野の中心となる機関・施設」などの意味を有する語である(広辞苑)。

そうすると、本件下段部分は、その構成する文字の語義の組み合わせから、全体として、「アニファと称する埼玉県にある複数の診療科を備えた動物に関する医療施設」ほどの意味を表すものと理解されるとともに、本件商標の指定役務を含む医療業界において、「医療センター」の文字は、「○○医療センター」(「○○」は任意の語。以下、同じ。)のように、前の語と組み合わされて使用されることにより、全体として特定の医療施設の名称を示すものとして認識、把握されることが多いものといえる。

したがって、本件下段部分の「アニファ埼玉総合動物医療センター」の語は、構成文字全体として医療施設の名称を表したものと理解されるといえ、また、これより生じる「アニファサイタマソウゴウドウブツイリョウセンター」の称呼も、やや冗長であるものの、無理なく一連に称呼し得るものであって、かつ、外観上もまとまりよく一体的に表されたものであるため、本件商標に接する需要者は、本件下段部分を一体不可分のものと認識、理解するとみるのが相当であるから、本件下段部分からは、その構成文字に相応して「アニファサイタマソウゴウドウブツイリョウセンター」の称呼を生じ、「アニファ埼玉総合動物医療センターという特定のクリニックの名称」との観念が生じるものである。

(ウ)本件上段部分は、別掲1のとおり、図形部分(以下「本件図形部分」という場合がある。)と欧文字部分(以下「本件欧文字部分」という場合がある。)からなるものであるが、本件図形部分は、6体の動物のシルエットの図形(青色)、十字図形(青色)及び植物の葉のような図形(水色)が、全体として円形に収まるような構成からなることから、外観上、全体として一体的にまとまった印象を与えるものである。

そして、本件図形部分の構成中、十字図形のほか、そのシルエットの図形の形状から動物及び植物を表したものであると理解でき、一部うさぎや亀などその動物の種類が認識し得るものも含まれるが、複数の動物及び植物の葉のシルエット図形を複数配置した構成においては、いかなる動物又は植物を図案化したものであるか、一見して明確に認識できないものも多い。

そうすると、本件図形部分は、その構成がまとまりよく一体に表されていることから、全体を不可分一体のものと認識されるとみるのが相当であるが、いかなる動物又は植物であるか一見して明確に認識し得ない図形も含まれ、当該図形全体からも、我が国において特定の事物また意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないことから、本件図形部分全体からは、特定の称呼及び観念は生じない。

また、本件欧文字部分は、別掲1のとおり、本件図形部分の周りを「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTER」という文字で円弧状に囲んだ構成からなるところ、「アニファ」の欧文字部分は、辞書等に掲載されている語ではなく、特定の意味合いをもって親しまれている語でもないことから、特定の観念を有しない語として認識されるものである。

また、その構成中「SAITAMA」の欧文字部分は、その表音「サイタマ」から「埼玉」の文字に通じる関東地方の県である「埼玉県」を表す語であると(広辞苑)、「GENERAL」の文字部分は、「総合的な」などの意味を有する語であると(大修館書店「ジーニアス英和辞典第6版」参照。以下、単に「ジーニアス」という。)」)、「ANIMAL」の文字部分は、「動物」などの意味を有する語であると(ジーニアス)、「MEDICAL」の文字部分は、「医学の、医療の」の意味を表す語であると(ジーニアス)、「CENTER」の文字部分は、「(施設としての)センター、中央施設」などの意味を有する語である(ジーニアス)。

そうすると、本件欧文字部分は、その構成する文字の語義の組み合わせから、全体として、「ANIFAと称する埼玉県にある総合的な動物に関する医療施設(センター)」であると容易に理解されるものであることから、本件下段部分の「アニファ埼玉総合動物医療センター」を英語表記したものであると理解されるとともに、本件商標の指定役務を含む医療業界において、「MEDICAL CENTER」の文字は、「○○MEDICAL CENTER」のように、前の語と組み合わされて使用されることにより、特定の医療施設の名称を示すものとして認識、把握されることが多いものといえる。

そうすると、「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTER」の語は、本件下段部分の「アニファ埼玉総合動物医療センター」を英語表記したものであって、その構成文字全体として医療施設の名称を表したものと理解されるものといえ、また、これより生じる「アニファサイタマジェネラルアニマルメディカルセンター」の称呼も、やや冗長であるものの、無理なく一連に称呼し得るものであって、かつ、外観上も本件図形部分の周りを囲むように円弧状にまとまりよく一体的に表されたものであるため、本件商標に接する需要者は、本件欧文字部分を一体不可分のものと認識、理解するとみるのが相当であるから、本件欧文字部分からは、その構成文字に相応して「アニファサイタマジェネラルアニマルメディカルセンター」の称呼を生じ、「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTERという特定の医療施設の名称」との観念が生じるものである。

(エ)上記のとおり、本件図形部分、本件欧文字部分及び本件下段部分は、それぞれ、「複数の図形の組み合わせからなるもの」、「欧文字のみからなるもの」又は「漢字と片仮名の組み合わせからなるもの」といった違いから、視覚上分離、独立した印象を与えるものであって、かつ、本件欧文字部分は本件下段部分を英語表記したものであると理解できるものの、その文字の大きさの顕著な違い、円弧状と横書きなどの記載方法の違いや相互に重なり合うこともなく間隔を空けて配されていることなどから、常に一体のものとしてのみ観察しなければならないものであるとはいえないこと、また、「本件図形部分と本件欧文字部分」及び「本件図形部分と本件下段部分」とは称呼及び観念における関連性も見いだせないものであることから、それぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないし、ほかに各構成部分を常に一体のものとしてのみ観察しなければならない特段の事情も見いだせない。

そうすると、本件図形部分、本件欧文字部分である「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTER」の欧文字及び本件下段部分である「アニファ埼玉総合動物医療センター」の文字は、それぞれ独立して役務の出所識別標識としての機能を発揮し得る要部といえる。

したがって、本件商標は、その要部である本件欧文字部分である「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTER」の欧文字及び「アニファ埼玉総合動物医療センター」の文字に相応して、それぞれ「アニファサイタマジェネラルアニマルメディカルセンター」及び「アニファサイタマソウゴウドウブツイリョウセンター」の称呼を生じ、「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTERという特定の医療施設の名称」及び「アニファ埼玉総合動物医療センターという特定の医療施設の名称」との観念が生じるものである。

また、本件商標は、本件図形部分が要部となり得るものの、本件図形部分から特定の称呼及び観念が生じるものではない。

イ 引用商標

(ア)引用商標は、別掲2のとおり、犬と猫とおぼしき動物が横向きに向かい合って抱き合っているような構成からなる図形(以下「引用図形部分」という場合がある。)の下に、「埼玉動物医療センター」の文字(以下「引用文字部分」という場合がある。)を配してなるものであり、動物とおぼしき耳の部分が黄緑色で、その他の部分は緑色で表されているものであるところ、引用商標は、図形と文字とを組み合わせてなる結合商標であると容易に看取、把握されるものである。

そして、引用図形部分と引用文字部分は、相互に重なり合うこともなく間隔を空けて配されており、かつ、図形と文字の違いがあることも考慮すると、それぞれが視覚上分離、独立した印象を与えるものである。

(イ)引用文字部分は「埼玉動物医療センター」の文字からなるところ、上記ア(イ)で述べたとおり、その構成中、「埼玉」、「動物」、「医療」及び「センター」の文字部分は、それぞれ「埼玉県」、「人以外の動物」、「医術で病気をなおすこと、療治、治療」及び「その分野の中心となる機関・施設」などの意味を有する語である(広辞苑)。

そうすると、引用文字部分は、その構成する文字の語義の組み合わせから、全体として、「埼玉県にある動物に関する医療施設」ほどの意味を表すものと理解されるとともに、引用商標の指定役務を含む医療業界において、「医療センター」の文字は、上記ア(イ)で述べたとおり、前の語と組み合わされて使用されることにより、特定の医療施設の名称を示すものとして認識、把握されることが多いものといえる。

したがって、引用文字部分の「埼玉動物医療センター」の語は、構成文字全体として医療施設の名称を表したものと理解されるといえ、また、これより生じる「サイタマドウブツイリョウセンター」の称呼も、やや冗長であるものの、無理なく一連に称呼し得るものであって、かつ、外観上もまとまりよく一体的に表されたものであるため、引用商標に接する需要者は、引用文字部分を一体不可分のものと認識、理解するとみるのが相当であるから、引用文字部分からは、その構成文字に相応して「サイタマドウブツイリョウセンター」の称呼を生じ、「埼玉動物医療センターという特定のクリニックの名称」との観念が生じるものである。

(ウ)引用図形部分は、犬と猫とおぼしき動物が横向きに向かい合って抱き合っているような構成からなることころ、これより犬及び猫をモチーフに図案化したものであると看取されるものの、全体として、我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないため、引用図形部分全体からは、特定の称呼及び観念は生じない。

(エ)上記のとおり、引用図形部分及び引用文字部分は、図形と文字といった違いから、視覚上分離、独立した印象を与えるものであって、かつ、称呼及び観念における関連性も見いだせないものであることから、それぞれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものとはいえないし、ほかに各構成部分を常に一体のものとしてのみ観察しなければならない特段の事情も見いだせない。

そうすると、引用図形部分と引用文字部分である「埼玉動物医療センター」の文字は、それぞれ独立して役務の出所識別標識としての機能を発揮し得る要部といえる。

したがって、引用商標は、その要部である引用文字部分である「埼玉動物医療センター」の文字に相応して、「サイタマドウブツイリョウセンター」の称呼を生じ、「埼玉動物医療センターという特定の医療施設の名称」との観念が生じるものである。

また、引用商標は、引用図形部分が要部となり得るものの、引用図形部分から特定の称呼及び観念が生じるものではない。

ウ 本件商標と引用商標の類否について

(ア)本件商標の要部である「アニファ埼玉総合動物医療センター」の文字と引用商標の要部である「埼玉動物医療センター」の文字との比較について

本件商標の要部である「アニファ埼玉総合動物医療センター」の文字と引用商標の要部である「埼玉動物医療センター」の文字を比較するに、外観においては、「埼玉」及び「動物医療センター」の文字が共通するものの、書体及び色彩の違いのほか、「埼玉」の文字の前後の「アニファ」及び「総合」の文字の有無の違いから文字数も異なるものであり、かつ、本件下段部分(アニファ埼玉総合動物医療センター)は2段で書されていることから、全体の外観において異なった印象を与えるものであり、外観において相紛れるおそれはないものである。

次に、称呼においては、本件商標の要部である「アニファ埼玉総合動物医療センター」の文字から生じる「アニファサイタマソウゴウドウブツイリョウセンター」の称呼と引用商標の要部である「埼玉動物医療センター」の文字から生じる「サイタマドウブツイリョウセンター」の称呼とは、「サイタマ」及び「ドウブツイリョウセンター」の称呼の部分を共通にするものの、「サイタマ」の音の前後の「アニファ」及び「ソウゴウ」の8音の有無に違いがあり、全体の音数も異なることから、これらの違いが称呼全体に与える影響は大きいものといえ、それぞれを一連に称呼しても互いに聞き誤るおそれはないことから、称呼において相紛れるおそれはないものである。

そして、観念においては、本件商標の要部である「アニファ埼玉総合動物医療センター」の文字及び引用商標の要部である「埼玉動物医療センター」の文字から、それぞれ「アニファ埼玉総合動物医療センターという特定の医療施設の名称」との観念及び「埼玉動物医療センターという特定の医療施設の名称」との観念が生じるから、観念において相紛れるおそれはないものである。

そうすると、本件商標の要部である「アニファ埼玉総合動物医療センター」の文字と引用商標の要部である「埼玉動物医療センター」の文字とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない、非類似の商標というのが相当である。

(イ)本件商標の要部である「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTER」の欧文字と引用商標の要部である「埼玉動物医療センター」の文字との比較について

本件商標の要部である「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTER」の欧文字と引用商標の要部である「埼玉動物医療センター」の文字を比較するに、外観においては、文字種、書体、文字数及び色彩の違いのほか、その配置における構成も異なることから、全体の外観において異なった印象を与えるものであり、外観において相紛れるおそれはないものである。

次に、称呼においては、本件商標の要部である「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTER」の欧文字から生じる「アニファサイタマジェネラルアニマルメディカルセンター」の称呼と引用商標の要部である「埼玉動物医療センター」の文字から生じる「サイタマドウブツイリョウセンター」の称呼とは、「サイタマ」及び「センター」の称呼の部分を共通にするものの、「アニファ」の4音の有無及び「サイタマ」の音の後に続く「ジェネラルアニマルメディカル」と「ドウブツイリョウ」の部分の音数及び音構成において異なり、これらの違いが称呼全体に与える影響は大きいものといえ、それぞれを一連に称呼しても互いに聞き誤るおそれはないことから、称呼において相紛れるおそれはないものである。

そして、観念においては、本件商標の要部である「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTER」の欧文字及び引用商標の要部である「埼玉動物医療センター」の文字から、それぞれ「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTERという特定の医療施設の名称」との観念及び「埼玉動物医療センターという特定の医療施設の名称」との観念が生じるから、観念において相紛れるおそれはないものである。

そうすると、本件商標の要部である「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTER」の欧文字と引用商標の要部である「埼玉動物医療センター」の文字とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない、非類似の商標というのが相当である。

(ウ)その他の要部との比較について

(a)本件商標の要部である本件下段部分(アニファ埼玉総合動物医療センター)及び本件欧文字部分(ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTER)と引用商標の要部である引用図形部分、(b)本件商標の要部である本件図形部分と引用商標の要部である引用文字部分(埼玉動物医療センター)、並びに(c)本件商標の要部である本件図形部分と引用商標の要部である引用図形部分とを比較するに、称呼及び観念は比較できない又は相紛れるおそれはないものの、外観においては明確に区別できるものであるから、それぞれ非類似の商標というのが相当である。

(エ)請求人の主張について

請求人は、本件商標と引用商標とは、その名称を表す「埼玉動物医療センター」という部分において、その要部が一致するものであるから、少なくとも称呼及び観念の点において両商標は類似している旨主張するが、本件商標の構成中「アニファ埼玉総合動物医療センター」の文字及び引用商標の構成中「埼玉動物医療センター」の文字は、それぞれその構成全体として医療機関の名称を表したものと需要者に把握されるものであることは上記で述べたとおりであって、例えば「アニファ埼玉総合動物医療センター」を名称とする医療施設が、「埼玉動物医療センター」と略称されて需要者の間に広く知られているなど、本件商標の構成中の「アニファ埼玉総合動物医療センター」が「埼玉動物医療センター」と略称されて需要者に認識されているという特段の事情は見いだせない。また、本件商標の指定役務に関する分野との関係において、「埼玉」の文字は、役務を提供する場所などの地域の名称を、「動物医療センター」の文字は、動物を対象とした医療施設であること、すなわち当該役務の質(内容)等を意味するものであると容易に認識されるものであるから、本件下段部分の構成中「アニファ」の文字を除く「埼玉総合動物医療センター」の一部の文字部分のみが、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということはできない。

そうすると、「アニファ埼玉総合動物医療センター」と「埼玉動物医療センター」とは、その要部が一致するものであるとして本件商標と引用商標が称呼及び観念において類似するものであるということはできず、上記請求人の主張は採用することができない。

(オ)本件商標と引用商標の類否

したがって、本件商標と引用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標である。

エ 小括

上記のとおり、本件商標と引用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務が同一又は類似するものであるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

2 商標法第4条第1項第10号該当性について

(1)商標法第4条第1項第10号における周知性について

商標法第4条第1項第10号は、先使用未登録商標に他の商標登録出願を排除する効力を認めるものであるから、同号にいう「広く認識されている」に該当するといえるための地理的範囲としては、必ずしも全国的に知られている必要まではないが、1都道府県内で知られているだけでは足りず、少なくとも、例えば、関西一円などの数県にわたる相当広い範囲で、取引者・需要者に知られていることを要するというべきである。また、「広く認識されている」といえるための取引者・需要者の範囲としても、同様の趣旨から、すべての取引者・需要者に知られている必要まではないが、相当程度の取引者・需要者に知られていることを要すると解すべきである(知的財産高等裁判所平成26年(行ケ)第10118号同年9月3日判決)。

また、同号の規定を適用するために引用される使用標章は、本件商標の出願時においても、我が国内の需要者の間に広く認識されていなければならない(商標法第4条第3項)。

(2) 使用標章の周知性について

ア 動物の医療等を含む獣医師業務に係る需要者について

獣医師業務は、獣医師法第17条の規定から飼育動物(一般に人が飼育する動物)の診療を業務とするものであると解されることから、その需要者は、その業務を医療施設等で行う医療従事者(以下、単に「医療従事者」という場合がある。)及び飼育動物を所有する一般の需要者(以下、単に「一般の需要者」といい、「医療従事者」と「一般の需要者」をまとめて単に「需要者」という場合がある。)を含むものである。

イ 使用標章について

上記第2の2のとおり、請求人が動物の医療等を含む獣医師業務の役務において使用し、請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていると主張する使用標章は、「埼玉動物医療センター」の文字からなるものである。

ウ 使用標章の使用について

請求人の提出証拠及び主張によれば、以下の事実が認められる。

(ア)請求人は、1999年(平成11年)6月に埼玉県入間市において法人化されたものであって(甲1)、請求人は、遅くとも2010年(平成22年)には「埼玉動物医療センター」の名称を用いて動物の医療等の獣医師業務を提供していた(甲2の1、甲4)。

(イ)請求人は、2015年(平成27年)より「埼玉動物医療センターニュースレター」という名称のニュースレター(以下、単に「ニュースレター」という。)を2021年(令和3年)までの間に定期的に第24号まで作成している(甲4。なお、ニュースレターのうち、送付先の宛名票に茨城県、東京都、神奈川県及び埼玉県所在の動物病院名が記載されているものが5件ある。)。

(ウ)2020年(令和2年)2月から2021年(令和3年)6月の間に、請求人が運営する医療施設(埼玉動物医療センター。以下「請求人医療施設」という場合がある。)には、県内外の他院の病院からの紹介客が1496件訪れており、その内訳は、埼玉県752件、東京都598件、群馬県42件、栃木県38件、茨城県18件、神奈川県8件、千葉県5件、山梨県8件、長野県17件、秋田県1件、岩手県2件、宮城県1件、福島県5件、沖縄県1件である(甲6)。

(エ)2009年(平成21年)から2021年(令和3年)の間に、請求人医療施設「埼玉動物医療センター」に所属する獣医師が、学会・講演資料や論文等において「埼玉動物医療センター」に所属することが分かるように記載したうえで、学会発表、講演、論文等の執筆活動を行っていた(甲5)。

(オ)株式会社ロイヤリティマーケティングが埼玉県及び東京都(青梅市、武蔵村山市、瑞穂町、羽村市、福生市、立川市、あきる野市、日の出町、八王子市、日野市、国立市)在中のペット飼育経験のある者(以下「本件調査対象者」という。)を対象としたWebアンケート調査により2021年6月23日付けで作成した埼玉動物医療センターに関する「周知性調査-報告書-」(以下「調査報告書」という。)の調査結果によれば、有効回答数は500サンプルであるところ、本件調査対象者全体における「埼玉動物医療センター」の認知率は21.6%であった(甲7)。

エ 使用標章の周知性

(ア)請求人は、遅くとも2010年(平成22年)には「埼玉動物医療センター」を名称とする埼玉県入間市所在の請求人医療施設において、動物の治療等の獣医師業務を行っており、埼玉県及び東京都など関東圏を中心に県内外の他院からの紹介客が1年5ヶ月の間に約1500件訪れているとともに、当該医療施設に所属する獣医師が学会発表や講演、論文など執筆活動を行っていることが認められる。

(イ)しかしながら、県内外の他院からの紹介については、埼玉県及び関東圏における飼育動物を所有する一般の需要者の規模、並びに他院における招待客の受け入れが一般的にどの程度行われているかがわかる同業者における件数の証拠等の提出がないため、同業界におけるその紹介客の件数の多寡を判断することができないことから、これより直ちに使用標章にどの程度の周知性があるが推し量ることはできない。

(ウ)請求人が作成したニュースレターについては、定期的に発行されていることは認められるものの、その配布部数、配布地域及び配布対象等について、提出された証拠からは5件のみ配布対象が確認できるのみで、その他は明らかとはなっていないことから、本件商標の出願時(令和5年7月31日)及び査定時(同6年2月22日)(以下、まとめて「本件商標の出願時等」という。)において、ニュースレターにより使用標章がどの程度の数の需要者の目に触れたのかなどを推し量ることはできない。

なお、請求人は、上記ニュースレターの配布総数が第1号は1811件、最新号が1673件である旨主張するが、それらの配布総数を証明する客観的な証拠は提出されておらず、仮に、その配布数が事実であったとしても、埼玉県及び関東圏において飼育動物を所有する一般の需要者は相当な数に及ぶことを考慮すると、その配布数は多いものであるとはいえない。

(エ)請求人医療施設に所属する獣医師が学会発表や講演、論文など執筆活動については、これらの活動を行っていることは確認できるものの、当該学会発表や講演会に係る参加者の規模や参加者の所在地及び論文などの執筆活動における掲載誌の発行部数や配布地域等を客観的に証明する証拠等の提出はなく、これらの活動が医療従事者への周知性の向上にどの程度寄与したのか判断することはできない。さらに、これらの活動は、獣医師などの医療従事者を対象としたといえるものであって、通常、一般の需要者の目に触れるものではないことから、飼育動物を所有する一般の需要者への周知性の向上に寄与するものとはいえない。

(オ)調査報告書については、具体的な本件調査対象者の選定方法及び質問方法(質問事項や質問の選択肢など)等について、請求人提出の証拠から不明な部分があり、特に埼玉県内在中の調査対象者の所在地の分布状況が不明なため、その対象地域に偏りがないか疑問な部分もあるが、それはおくとしても、本件調査対象者全体における使用標章の認知率は21.6%であることから、関東圏などの数県にわたる相当広い範囲で、相当程度の需要者に知られていたとまでは、これのみに基づいて認めることはできない。

(カ)その他、例えば、第三者による書籍やウェブサイト等における記事において、使用標章が請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることが伺えるような記載も確認できない。

(キ)このような上記の実情とともに、獣医師業務に関する需要者は、その業務を医療施設等で行う医療従事者のほか、飼育動物を所有する一般の需要者を含むものであって、例えば、埼玉県及び関東圏において飼育動物を所有する一般の需要者は相当な数に及ぶことも併せて考慮すると、少なくとも使用標章が相当程度の飼育動物を所有する一般の需要者の目に触れ、請求人の業務に係る役務を表すものとして記憶されていたと認めることはできないことから、上記の請求人の主張及び立証からは、本件商標の出願時等において、使用標章のみをもって、それが請求人に係る役務を表示するものであると、例えば、関東圏などの数県にわたる相当広い範囲で、相当な数の需要者に知られていたとは認められない。

オ 小括

以上のとおり、使用標章は、請求人の使用によっても、本件商標の出願時等に、関東圏などの数県にわたる相当広い範囲において、請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであるとは認められない。

(3)商標法第4条第1項第10号該当性

上記(2)のとおり、使用標章は、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることができないものである。

また、上記1(2)ウで述べたとおり、本件商標と使用標章「埼玉動物医療センター」とは、非類似の商標である。

したがって、他の要件を判断するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号を適用するための要件を欠くものといわざるを得ないから、同号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第7号について

(1)請求人は、被請求人と請求人との間における合意書(甲9。以下、単に「合意書」という。)の内容から明らかなとおり、被請求人が「アニファ埼玉動物医療センター」という名称・標章を今後一切用いない事を誓約しているにも関わらず、それとほぼ同一内容での商標登録を試みるものであることから、本件商標の出願は、被請求人と請求人との間における紛争解決に至るまでの過程や合意内容そのものを全く蔑ろにする極めて背信的なものであり、単に請求人との間の合意違反となるのみならず、適正な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠く行為である旨を主張する。

そこで、令和5年(2023年)6月21日付けで請求人と被請求人で作成された合意書をみるに、被請求人が「アニファ埼玉動物医療センター」という名称・標章を今後一切用いない事を誓約しているとする請求人が主張する合意書の内容とは「第1条 乙

(被請求人)

は、本合意成立後1年以内に、現在乙が病院名として使用している「アニファ埼玉動物医療センター」の名称を変更し、以後は(看板、広告、案内パンフ、ウェブページ、その他媒体や名目の如何を問わず)本件商標

(埼玉動物医療センター)

と同一又は類似する標章を用いるなどして、甲(請求人)の商標権を侵害しないことを約する。」と記載されている部分(甲9。下線部の文字は合議体が追記。)を指すものであると推認される。

しかしながら、合意書の第1条には、被請求人が「埼玉動物医療センター」と同一又は類似する標章を用いないことを約した旨の記載があることが確認できるものの、本件商標は、別掲1のとおり、図形部分と「アニファ埼玉総合動物医療センター」及び「ANIFA SAITAMA GENERAL ANIMAL MEDICAL CENTER」の文字部分からなるところ、「埼玉動物医療センター」と同一のものは含まれていない。また、上記第4(被請求人の答弁)の1のとおり、被請求人は、本件商標と「埼玉動物医療センター」は同一又は類似するものではないと主張していることから、このような認識のもと、本件商標の出願を行ったものと推認される。したがって、本件商標の出願は、被請求人と請求人との合意内容に違反するとの認識又は意図をもって行った極めて背信的なものであるとは直ちにはいえないことから、適正な商道徳に反し、著しく社会的妥当性を欠く行為であると評価することはできない。

その他、請求人提出の証拠によっては、被請求人が本件商標を利用して不正な利益を得たり、請求人の事業活動を阻害しているような事実関係は把握できない。

また、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような図形又は文字からなるものではない。

以上によれば、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標とはいえない。

したがって、本件商標は、商標法4条第1項第7号に該当しない。

4 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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