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Trademark Appeal Case

シェアリングカスクの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024890060
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6765112号商標(以下「本件商標」という。)は、「シェアリングカスク」の文字を標準文字で表してなり、令和5年6月13日に登録出願、第33類「清酒,日本酒,焼酎,泡盛,洋酒,ウイスキー,蒸留酒,ウォッカ,ジン,ブランデー,ラム,リキュール,カクテル,スピリッツ,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同年10月11日に登録査定され、同年12月22日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び審判弁駁書において、その理由(商標法第3条第1項第3号)を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第12号証(枝番号を含む。以下証拠は「甲(乙)○」と表記する。枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略する。)を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。

2 審判請求書における主張

(1)「シェアリング」及び「カスク」の意味

ア 「シェアリング」の文字は、“共有すること。分かち合うこと。”の意味を有する英単語の「share(シェア)」が動名詞に変化したもので、「シェア(share)」同様、“分かち合うこと。共有すること。”という意味を有する(「広辞苑 第七版」(株式会社岩波書店刊))(甲2)。

イ 「カスク」の文字は、“樽,桶;一樽(の量).”の意味を有する英単語の「cask」の発音をカタカナで表記したものである(「リーダーズ英和辞典 第3版」(株式会社研究社刊))(甲3)。

(2)酒類における審査例

ア 「シェアリング」、あるいは同義語の「シェア」の文字が飲食料品において品質表示であると指摘された審査例がある(甲4)。

イ 「カスク」、あるいはそれに通ずる英単語の「cask」の文字が酒類において品質表示であると指摘された審査例がある(甲5)。

(3)酒類分野における販売形態について

酒類のうち、例えばウイスキーの場合、カスク(樽)に詰められ、相応の熟成期間を経た後、ボトル詰めされて市販されるのが一般的であるが、カスクで熟成中のウイスキーをカスクごと市販されることがある。カスク単体での販売の他、蒸留所が、一のウイスキーカスクに対して、一口数万円単位で複数のオーナーを募集する形で販売する場合もある。カスクの大きさは小さいもので180リットル、大きいものとなると520リットルの大きさがあるが、ウイスキーの熟成期間が終了すると、購入した口数に基づいて、オーナー一人一人にウイスキーをボトル詰めして頒布される。端的にいえば、熟成中のウイスキーカスク(樽)を複数人で共有(シェア、シェアリング)するものである。最近のウイスキー人気の上昇により、当該権利が投資対象として売買されることもある。日本各地の蒸留所がこのようなウイスキー樽を共有する権利について販売を行っている(甲6)。

(4)シェア形式による取引について

「シェアリングエコノミー」と呼ばれる、複数人で共有する形での商取引は、「シェアリングエコノミー」=「共有型経済」、「シェアオフィス」=共用オフィス(事務所)、「シェアサイクル」=自転車の共同利用システム等(甲7)のように、食品分野のみならず広く一般的に行われており、「シェアリング」に接した取引者・需要者は、“共有する形式で取引される”商品(役務)であることを容易に想起し得るといえる。

(5)本件商標の自他商品識別力、及び第3条第1項第3号の該当性について

ア 本件商標を構成する「シェアリングカスク」は、“分かち合うこと。共有すること。”を意味する「シェアリング」の文字と、“樽,桶;一樽(の量).”の意味を有する英単語の「cask」に通ずる「カスク」の文字を組み合わせたものであるところ、酒類、特にウイスキーは、上記(3)のとおり、一のウイスキー樽に対して一ロ数万円単位で複数のオーナーを募集する形で販売されている事実がある。そして、オーナーの権利を購入したからといって直ちにウイスキーを飲むことが出来る訳ではなく、熟成期間中は正に、ウイスキー樽(カスク)を共有(シェアリング)している状態なのである。

このように、本件商標の指定商品を取り扱う分野においては、ウイスキー樽を複数人で共有する形態にて商品が取引される実情があるから、これに接する需要者は、「ウイスキー等の樽を共有する形式で取引される商品(酒類)」であることを認識、すなわち、指定商品との関係において単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示したにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとみるのが相当である。本件商標「シェアリングカスク」が「取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであって、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないもの」であることは明らかである。

イ 実際の使用例の有無について

商標の自他商品識別力の有無が争われた平成12年(行ケ)第76号審決取消請求事件(平成12年7月5日口頭弁論終結)(甲8の2)では、「商標が、その指定商品の取引過程において使用されている事実がないとしても、将来、商品の品質、機能等を表す表示として使用され、取引者、需要者に商品の品質表示等であると認識される可能性がある場合には、商標法3条1項3号が適用される」と述べられている。“当該商標の使用事実がない”からといって、当該商標が自他商品識別力を有するとは限らないのであり、取引者・需要者における「シェアリングカスク」の文字の使用例がなかったとしても、そのような事実を根拠に“本件商標は自他商品識別力を有している”と判断すべきではない。

3 審判弁駁書における主張

(1)請求人適格について

ア 請求人である「日本洋酒酒造組合」は、昭和28年に「酒税法」とともに制定された「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」により、同年7月に大蔵大臣(当時)の認可を受けて設立された法人である(同法第3条(甲9の1))。

請求人の設立の目的は以下のとおりである(「日本洋酒酒造組合定款」より(甲9の2))。

「第1条(目的)

組合は、組合員の緊密な連絡親和と相互扶助の精神に基づき、酒税の円滑な納税を促進し、酒類業界の安定と健全な進歩発展のために必要な事業を行い、組合員の自主的、かつ、自由公正な事業活動の機会を確保し、もって酒税の保全に協力し、及び共同の利益増進を図ることを目的とする。」

請求人の事業は「日本洋酒酒造組合定款」の第4条、請求人の組合員資格は同定款の第9条に記載のとおりである(甲9の2)。

イ ところで、請求人の組合員である「組合の地区内において洋酒を製造する酒類製造業者」は、本件商標が有効である限り、その指定商品について本件商標を使用することが出来ないため、本件商標の有効性は、請求人の組合員にとって利害関係があるのは明らかである。そして請求人は、上記の第1条を目的としているから、酒類業界の安定と健全な進歩発展のための事業を行う場合や、組合員の自主的、かつ、自由公正な事業活動の機会を確保する場合は、商標使用に関し組合員と同様の立場であるのみならず、組合員が本件商標を使用することが出来るかどうかは、上記目的の実現に関連した事項であるということができる。

したがって、請求人が、「その他組合の目的達成のために必要な事業」(「日本洋酒酒造組合定款」第4条(16))として、本件無効審判請求をすることにつき利害関係を有し、請求人適格を有しているのは明らかである。

ウ ちなみに、社団法人全日本コーヒー協会が登録商標「イルガッチェフェ」に請求した商標登録無効審判の審決取消訴訟(平成22年3月29日判決言渡、平成21年(行ケ)第10229号審決取消請求事件(甲10))において、社団法人全日本コーヒー協会が、当該協会の会員、設立目的及びその事業内容から、請求人適格を有することを認めている。

(2)商標法第3条第1項第3号の該当性について

ア 本件商標は、上記2(5)アのとおり、「シェアリング」の文字が“分かち合うこと。共有 すること。”を意味する「sharing」に通じ、「カスク」の文字が“樽,桶;一樽(の量)”を意味する「cask」に通じるものとして本件商標の指定商品の分野において認識されている。そして本件商標の指定商品を取り扱う分野、特にウイスキーは、ウイスキー樽を複数人で共有する形態にて商品が取引される実情があるから、これに接する需要者は、「ウイスキー等の樽を共有する形式で取引される商品(酒類)」であること、すなわち、指定商品との関係において単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示したにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとみるのが相当である。

イ 上記2(5)イのとおり、本件商標は、その使用事実がないからといって、自他商品識別力を有するとは限らない。

ウ 上記2(3)の本件商標の指定商品の取引実情のとおり、樽において熟成中のウイスキーを、一のウイスキー樽に対して一口数万円単位で複数のオーナーを募集する形で販売されている事実に鑑みれば、「シェアリング」「シェア」「カスク」という文字に関する請求人が挙げる審査例は、同種商品を指定商品とする本件商標にも十分当てはまるものと考え、例示したのであって、当該事実は、本件商標が品質表示であることを示す証拠になり得るものと考える。

エ 上記2(3)で請求人が挙げた、樽において熟成中のウイスキーを、一のウイスキー樽に対して一口数万円単位で複数のオーナーを募集する形で販売されている実情の中で、「ウイスキー樽のオーナー」などの他の言葉で表現されているからといって、本件商標から「ウイスキー等の樽を共有する形式で取引される商品」という意味合いが直ちに生じない訳ではない。原産国の言葉で商品の品質等を表現することが一般的である洋酒業界においては、仮に日本語において「ウイスキー等の樽を共有する形式で取引される商品」として使用される言葉があったとしても、将来、商品の品質、機能等を表す表示として使用され、取引者、需要者に商品の品質表示等であると認識される可能性がある言葉については、一私人に独占権を認めるべきではない。

また、被請求人自身も、「private cask」「プライベートカスク」という名称でそのような商品を販売しており、「cask」を“ウイスキー等が入った樽”という意味合いで用いているように見受けられる(甲12)。このような状況を見る限り、本件商標から「ウイスキー等の樽を共有する形式で取引される商品」の意味合いが生じ得るという請求人の主張は妥当なものと考える。

(3)まとめ

本件商標を構成する「シェアリング」及び「カスク」の意味、そして、主としてウイスキー業界における使用状況に鑑みれば、本件商標は全体として「ウイスキー等の樽を共有する形式で取引される商品」といった意味を容易に想起し得るものであり、酒類の品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識として機能し得ないものである。

第3 被請求人の答弁

1 答弁の趣旨

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1及び乙2(枝番号を含む)を提出した。

2 答弁の理由(要旨)

(1)商標法第3条第1項第3号の該当性について

ア 本件商標は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔に横一連に表してなるものであり、その構成全体から生じる「シェアリングカスク」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。かかる構成からなる本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、その構成全体をもって一体不可分の一種の造語として認識されるとみるのが自然であり、ほかに、その構成中の「シェアリング」又は「カスク」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見いだせない。そうすると、本件商標は、その構成全体をもって、特定の観念を生じることのない一体不可分の一種の造語とみるのが相当である。

さらに、本件商標は、辞書にも掲載されておらず、インターネット上で検索した場合にも、本件商標の記載は散見されないから、本件商標は一連一体で判断されるべきであり、被請求人による造語であるといえる。

イ また、「カスク」や「シェアリング」という文言を含む商標が数多く登録されている(乙1)。

なお、請求人が挙げる、「シェアリング」、あるいは同義語の「シェア」の文字が飲食料品において品質表示であると指摘された審査例は、本件商標の指定商品、第33類とは異なる区分の例であり、同様に、「カスク」あるいはそれに通ずる英単語の「cask」の文字が酒類において品質表示であると指摘された審査例は、本件商標とは異なる、文字要素との組み合わせに関する例であり、乙1の登録例が示すように、「シェアリング」または「カスク」の文字を含むからといって直ちに品質表示と指摘されるわけではない。

ウ また、審査基準において、実際に一般的に使用されていることは必要とされないとはいえ、請求人が主張している「ウイスキー等の樽を共有する形式で取引される商品」は、請求人が資料で示しているように、現在、「複数人でウイスキー樽のオーナーに」、「樽1本につき~~共同購入型のオーナーズカスク」、「一口樽オーナー」などの文言で表現されて不自由なく取引されている(甲6)。

エ 以上のことから、あえて本件商標を需要者・取引者が使用する必要性は全く無く、特定人に独占使用を認めたからといって公益に反するとも思われず、むしろ、本件商標は請求人が主張する品質を普遍的に具体的記述的に表しているとは思われないため、品質表示として使用するには極めて不適切である。

オ さらに、本件商標は、漠然としており、仮に、「シェアリング」と「カスク」と分離して判断したとしても、英単語「シェアリング」は共有、「カスク」は樽、桶を意味するから(甲2)、記述的な意味合いは、「共有の(容器としての)樽」の意味にとどまるのであって、請求人のいう「ウイスキー等が入った樽を共有する形式で取引される商品」は、本件商標の上記意味合いからは飛躍しており、本件商標からの想像の一つにすぎない。近時、ウイスキーの価格が高騰して投資の対象となり、少額での投資を容易にするために一樽を複数人で共有できることとし、一口ごとに売買される取引が注目されていることの影響による偏った認識である。

すなわち、本件商標が「共有の樽」や「共有する樽」を意味するとしても、それは誰が共有する樽なのか、何を共有する樽なのかなど、何ら明確で具体的な特定の内容を示していないから、需要者、取引者が、様々な意味合いを想像する可能性がある商標である。

例えば、容器である一つの樽を複数の生産者が順次使用するという形で共有しているとも考えられ、あるいは、容器としての樽には希少な木材を使用していることから、使用済みのシェリー酒などの樽を再利用したりする事実がある(乙2の1)。この他にも、特定の木を共通使用する樽であったり、別の種類のお酒と共有(前後で使用)されている樽と想像する可能性(乙2の2)、あるいは、一口分の権利を売買して保有する投資のようなものではなく、単純に複数人で一樽を購入してウイスキーをボトリングする、等々多岐にわたる想像があり得る(乙2の3)。

カ このように本件商標は、漠然と「共有の樽」という意味合いを表すものの、そこから様々な想像が喚起されるが故に需要者・取引者が興味関心を持ち記憶に残るものであり、まさに識別力を有する造語の商標である。

(2)請求人適格について

商標法において、無効審判は利害関係人に限り請求することができる(46条2項)。ここで、請求人は、請求書において、本件商標に対して、どのような利害関係を有しているのか、何ら言及しておらず、利害関係を有することを証明する証拠も提出されていない。さらに、請求人が本件商標をすでに使用しているという事実も無いことから、請求人は本件審判事件の利害関係人とは認められない。

第4 当審の判断

1 利害関係について

本件審理に関し、当事者間において利害関係について争いがあるので、以下、検討する。

請求人が提出した証拠(甲9)及び主張によれば、以下のことが認められる。

(1)請求人は、昭和28年7月「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」により設立された法人である(甲9の1)。

(2)請求人の設立の目的は、「組合は、組合員の緊密な連絡親和と相互扶助の精神に基づき、・・・酒類業界の安定と健全な進歩発展のために必要な事業を行い、組合員の自主的、かつ、自由公正な事業活動の機会を確保し、・・・共同の利益増進を図ることを目的とする。」(甲9の2、定款第1条)ものである。

(3)請求人の組合員は、「組合員たる資格を有する者は、組合の地区内においてウイスキー、ブランデー・・・を製造する酒類製造業者とする。」(甲9の2、定款第9条)とされている。なお、ここでいう「組合の地区」とは「全国一円の区域」(同第3条)である。

(4)上記(1)ないし(3)によれば、請求人の組合員は、日本国内において「ウイスキー、ブランデー・・・を製造する酒類製造業者」であるところ、酒類製造業者は、本件商標が有効な権利として存続している限り、本件商標を「ウイスキー,ブランデー」等を始めとするその指定商品に使用することができないから、請求人の組合員は利害関係があるということができる。そして、請求人は、その「組合員の自主的、かつ、自由公正な事業活動の機会を確保」することを目的としていることから、本件商標の登録の可否は、「組合員の自由公正な事業活動の機会の確保」の実現に関連した事項であるということができる。

そうとすれば、請求人は、本件商標の登録の可否について利害関係があるというべきである。

したがって、請求人は、本件商標登録無効審判請求をするにつき利害関係を有し、請求人適格を有すると認めるのが相当である。

2 商標法第3条第1項第3号該当性について

(1)本件商標について

本件商標は、「シェアリングカスク」の文字を標準文字で表してなるところ、請求人の主張及び提出された証拠並びに職権調査によれば以下のとおりである。

ア 「シェアリング」と「カスク」の意味について

「シェアリング」は、「分かち合うこと。共有すること。」の意味を有する(「広辞苑 第七版」(株式会社岩波書店刊))語であり、「カスク」は、「樽,桶;一樽(の量).」の意味を有する英単語の「cask」の発音をカタカナで表記したものである(「リーダーズ英和辞典 第3版」(株式会社研究社刊))(甲3)。

イ ウイスキーの販売形態について

ウイスキーは、カスク(樽)に詰められ、相応の熟成期間を経た後、ボトル詰めして市販されるのが一般的であるところ、カスク単位での販売の他、蒸留所が一つのウイスキーカスクに対して、一口数万円単位で複数のオーナーを募集する形で販売する場合がある(甲6)。ウイスキーの熟成期間が終了すると、購入した口数に基づいてオーナーにボトル詰めのウイスキーが頒布される。

甲6には、「ウイスキー樽のオーナーになる方法」(甲6の1)、「ウイスキー樽オーナー募集」(甲6の2)、「樽1本につき複数オーナーを募集する共同購入型のオーナーズカスクが多い」(甲6の3)、「一口樽オーナー・・・募集」(甲6の4)等の記載がある。

ウ シェア形式の取引について

複数人で共有する形での商取引は「シェアリングエコノミー(共有型経済)」と呼ばれ、「シェアオフィス(共用オフィス(事務所))」、「シェアサイクル(自転車の共同利用システム)」等がある。

エ 上記アないしウを踏まえ、以下検討する。

本件商標は、「シェアリングカスク」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ大きさ及び書体で、字間なく横書きしたまとまりの良い構成よりなるから、一連一体の語を表してなると看取できる。

そして、上記アによれば、本件商標を構成する「シェアリング」及び「カスク」の文字は、それぞれ「分かち合うこと。共有すること。」「樽,桶;一樽(の量).」の意味合いを有する語と理解されるものであるところ、全体として辞書等に載録されている語ではないことから造語といえるものであるが、それぞれの語義から、本件商標全体よりは「共有する樽」ほどの漠然とした意味合いを想起するというのが自然である。

また、上記イによれば、本件商標の指定商品中「ウイスキー」について、カスク単位での販売や蒸留所が一つのウイスキーカスクに対して、一口数万円単位で複数のオーナーを募集する形で販売すること、すなわち、一つの樽を複数のオーナーで共有する状態があるとしても、請求人が挙げる実情はわずか4件にすぎず、その販売形式について「シェアリング」の文字で説明されている事情は見いだせない。

さらに、上記ウによれば、本件商標の指定商品(ウイスキーを含む。)に関してシェア形式の商取引が行われている実情や「シェアリング」の文字を使用した取引実情を発見することはできない。

そうすると、請求人が提出した証拠は、本件商標「シェアリングカスク」の文字が特定の商品の品質を表示していることを示す証拠ということはできない。

そして、当審において職権をもって調査するも、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、「シェアリングカスク」の文字が、具体的な商品の品質を表示するものとして、取引上一般に使用されている事実を発見することができず、取引者、需要者が「シェアリングカスク」の文字を商品の品質を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。

そうとすれば、本件商標は、その指定商品との関係において商品の品質を直接的かつ具体的に表したものとして理解、認識されるとまではいえないものであって、これをその指定商品に使用した場合には、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。

(2)請求人の主張について

ア 請求人は、「シェアリング」「シェア」の文字が飲食料品との関係で、「カスク(cask)」の文字が酒類との関係で品質表示であると指摘された審査例を挙げるとともに、熟成中のウイスキーをカスク(樽)ごとに市販される取引実情があり、「シェアリングエコノミー」「シェアサイクル」「シェアオフィス」など、食品分野のみならず一般に広く使用されている事実を踏まえれば、本件商標よりは、「ウイスキー等の樽を共有する形式で取引される商品(酒類)」といった意味を容易に想起し得るから、酒類の品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識として機能し得ない旨を主張する。

しかしながら、請求人が挙げる、「シェアリング」「シェア」の審査例は、いずれも「カスク」と異なる語との組み合わせの商標における判断であり、構成文字が相違するものであるばかりか、指定商品についても本件商標の指定商品とは類似しない商品分野であり、「カスク(cask)」の審査例についても、「シェアリング」「シェア」と異なる語との組み合わせの商標の判断であり、構成文字が相違するものであるから、本件商標を判断するにあたり適切な事例とはいえない。

また、ウイスキーの取引において、複数人が共同で購入することを前提としてカスク(樽)ごとに市販される取引実情があるとしても、請求人が提出する証拠(甲6)をみても、そのようなカスク(樽)を「シェアリングカスク」と称している事情が見いだせないばかりか、そのような取引において「シェアリング」又は「シェア」の語が使用されている事実も見いだすことができない。

そして、「シェアリングエコノミー」「シェアサイクル」「シェアオフィス」の例については、全く異なる分野における使用例であるばかりか、請求人が主張する「共有する形式で取引される商品」との意味合いで「シェアリング」又は「シェア」の語が使用されているものでもない。

したがって、請求人の主張及び提出された証拠を参酌したとしても、本件商標は、請求人が主張する「ウイスキー等の樽を共有する形式で取引される商品(酒類)」の意味合いを想起させるとはいい難く、上記(1)のとおり、「共有する樽」ほどの漠然とした意味合いを想起するにとどまるものというのが相当であるから、商品の品質等を具体的に表示するものとはいえない。

イ 請求人は、判決例を挙げて、本件商標の使用事実がないからといって、本件商標が自他商品識別力を有するとは限らない旨主張する。

しかしながら、請求人が挙げる判決例(甲8の2)は、その商標を構成する各文字について、指定商品との関係から、その意味を認定し、それらが結合してもなお、構成全体から生じる意味合いが取引者・需要者に商品の品質を認識させるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する旨判断したものであり、本号の適用にあっては、取引者・需要者の認識をもとに判断されるものであり、商標が実際に使用されていることを要しないとされたものである。

そして、本件商標は、上記(1)のとおり、各構成文字について取引の実情をも踏まえその意味合いを認定した上で、それらが結合した構成文字全体の意味合いが漠然としたものにとどまり、請求人が主張する具体的な品質を表すものとはいえないと判断したものであって、単に使用例がないといった事情をもって商標法第3条第1項第3号に該当しないと判断したものではない。

したがって、請求人が挙げる判決例があるとしても、本件商標が自他商品識別標識として機能し得ないとはいえない。

以上より、請求人のいずれの主張も採用できない。

(3)小括

以上によれば、本件商標は、その指定商品について、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章とはいえず、商標法第3条第1項第3号に該当しない。

3 まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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