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Trademark Appeal Case

結合商標の記述性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024890061
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6765113号商標(以下「本件商標」という。)は、「シークレットカスク」の文字を標準文字で表してなり、令和5年6月13日に登録出願、第33類「清酒,日本酒,焼酎,泡盛,洋酒,ウイスキー,蒸留酒,ウォッカ,ジン,ブランデー,ラム,リキュール,カクテル,スピリッツ,果実酒,酎ハイ,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同年10月11日に登録査定され、同年12月22日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び審判弁駁書において、その理由(商標法第3条第1項第3号)を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第9号証(枝番号を含む。以下「甲○」と表記する。枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略する。)を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。

2 審判請求書における主張

(1)「シークレット」及び「カスク」の意味

ア 「シークレット」の意味

「シークレット」の文字は、“秘密。機密。内証事。”を意味する(「広辞苑第七版」(株式会社岩波書店刊))(甲2)。

イ 「カスク」の意味

「カスク」の文字は、“樽,桶;一樽(の量).”という意味を有する英単語の「cask」をカタカナで表記したものである(「リーダーズ英和辞典第3版」(株式会社研究社刊))(甲3)。

(2)酒類における審査例

「カスク」あるいは、それに通ずる英単語の「cask」の文字が酒類において品質表示であると指摘された審査例がある(甲4)。

(3)酒類分野における販売形態について

酒類のうち、例えばウイスキーの場合、蒸溜所の名前を伏せたものについて“シークレット○○”と称して販売されることがある(甲5)。

ア ウェブサイト「M’s Liquor House」

「【シークレット ~蒸溜所非公開~】素性が隠されたシングルモルト」の標題の下、「近年のトレンドのひとつに、蒸溜所の名前を伏せたシークレット・シングルモルトのリリースがあります。かつて蒸溜所の名前が伏せられるのは、いくつかの決まった蒸溜所と独立瓶詰業者のプライベート・ブランドくらいでした。しかし今では、蒸溜所や地域を問わず様々な「シークレット・シングルモルト」がリリースされています。」の記載がある(甲5の1)。

イ ウェブサイト「ATCF Ltd.| 有限会社 アズザクロウフライ」

「蒸留所名非公開?シークレットスペイサイドを名乗る珠玉の3本をご紹介/Vision」の標題の下、「ボトラーズからリリースされるウイスキーで、「シークレット」とされ、蒸留所名を明かされていないウイスキーがあります。今回はそんなボトルから、3本のスペイサイドモルトをご紹介します。紹介しつつ最後に「なぜシークレットなのか」についてもご案内します。」の記載がある。(※2019年12月17日公開)(甲5の2)。

ウ ウェブサイト「LIQUORS HASEGAWA リカーズハセガワ 本店」

「【リカーズハセガワ】シークレットアイラ 2013/2021 50.9/700[160352][正規輸入][箱なし]」の標題の下、「今回のボトルは、蒸留所名は秘密ですがアイラのシングルモルトで樽のタイプはシェリー・ホグスへッド、カスクストレングスでボトリングはウイスキーエージェンシーとなっています。・・・約8年間の熟成としてはとても熟成感のある味わい深いアイラシングルモルトです。」の記載がある(甲5の3)。

(4)本件商標「シークレットカスク」の自他商品識別力、及び第3条第1項第3号の該当性について

ア 本件商標を構成する「シークレットカスク」は、“秘密。機密。内証事”を意味する「シークレット」の文字と、“樽,桶;一樽(の量).”の意味を有する英単語の「cask」に通ずる「カスク」の文字を組み合わせたものであるところ、酒類、特にウイスキーでは、蒸留された蒸留所の名前を公開して販売するのが一般的であるところを、蒸留所の名前を敢えて伏せ、“シークレット○○”と称して販売されている事実がある。

このように、本件商標の指定商品を取り扱う分野、特にウイスキーに関しては、蒸留所の名前を敢えて伏せ、“シークレット○○”と称して商品が取引される実情があるから、これに接する需要者は、「蒸留所が伏せられた樽入りの商品(酒類)」であることを認識、すなわち、指定商品との関係において単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示したにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとみるのが相当である。「シークレットカスク」が「取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであって、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないもの」であることは明らかである。

イ 実際の使用例の有無について

商標の自他商品識別力の有無が争われた平成12年(行ケ)第76号審決取消請求事件(平成12年7月5日口頭弁論終結)(甲6の2)では、「商標が、その指定商品の取引過程において使用されている事実がないとしても、将来、商品の品質、機能等を表す表示として使用され、取引者、需要者に商品の品質表示等であると認識される可能性がある場合には、商標法3条1項3号が適用される」と述べられている。「当該商標の使用事実がない」からといって、当該商標が自他商品識別力を有するとは限らないのであり、取引者・需要者における「シークレットカスク」の文字の使用例がなかったとしても、そのような事実を根拠に“本件商標は自他商品識別力を有している”と判断すべきではないのである。

3 審判弁駁書における主張

(1)請求人適格について

ア 請求人である「日本洋酒酒造組合」は、昭和28年に「酒税法」とともに制定された「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」により、同年7月に大蔵大臣(当時)の認可を受けて設立された法人である(同法第3条(甲7の1))。

請求人の設立の目的は以下のとおりである(「日本洋酒酒造組合定款」より(甲7の2))。

「第1条(目的)

組合は、組合員の緊密な連絡親和と相互扶助の精神に基づき、酒税の円滑な納税を促進し、酒類業界の安定と健全な進歩発展のために必要な事業を行い、組合員の自主的、かつ、自由公正な事業活動の機会を確保し、もって酒税の保全に協力し、及び共同の利益増進を図ることを目的とする。」

請求人の事業は「日本洋酒酒造組合定款」の第4条、請求人の組合員資格は同定款の第9条に記載のとおりである(甲7の2)。

イ ところで、請求人の組合員である「組合の地区内において洋酒を製造する酒類製造業者」は、本件商標が有効である限り、その指定商品について本件商標を使用することが出来ないため、本件商標の有効性は、請求人の組合員にとって利害関係があるのは明らかである。そして請求人は、上記の第1条を目的としているから、酒類業界の安定と健全な進歩発展のための事業を行う場合や、組合員の自主的、かつ、自由公正な事業活動の機会を確保する場合は、商標使用に関し組合員と同様の立場であるのみならず、組合員が本件商標を使用することが出来るかどうかは、上記目的の実現に関連した事項であるということができる。

したがって、請求人が、「その他組合の目的達成のために必要な事業」(「日本洋酒酒造組合定款」第4条(16))として、本件無効審判請求をすることにつき利害関係を有し、請求人適格を有しているのは明らかである。

ウ ちなみに、社団法人全日本コーヒー協会が登録商標「イルガッチェフェ」に請求した商標登録無効審判の審決取消訴訟(平成22年3月29日判決言渡、平成21年(行ケ)第10229号審決取消請求事件(甲8))において、社団法人全日本コーヒー協会は、当該協会の会員、設立目的及びその事業内容から、請求人適格を有することを認めている。

(2)商標法第3条第1項第3号の該当性について

ア 本件商標は、上記2(4)アのとおり、特にウイスキーにおいて、蒸留所を敢えて伏せたものについて、「シークレット」と称して取引されている実情があるから、これに接する需要者は、「蒸留所が伏せられた、樽入りの商品(酒類)」であることを認識、すなわち、指定商品との関係において単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示したにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとみるのが相当である。

イ 上記2(4)イのとおり、「シークレットカスク」の使用事実が少なかったとしても、本件商標が自他商品識別力を有していると判断すべきではない。

ウ 上記2(2)の審査例は、「カスク」の文字を含む商標に対する審査、それも複数案件において、「「カスク」の文字は「樽。」の意味で認識されている」と指摘されており、このような特許庁の判断は、同種商品を指定商品とする本件商標にも十分当て嵌まるものと考え、例示したのである。

「シークレットモルト」の使用例に関しては、「シークレット」の文字と酒類、特にウイスキーにおいて品質表示にすぎない言葉を組み合わせたという点において非常に似た構成態様であることから、使用例として挙げたのであり、当該事実は本件商標が品質表示であることを示す証拠になり得るものと考える。

エ 被請求人は、請求人が主張する「蒸留所が伏せられた樽入りの商品」は、現在、「シークレットボトル」、「シークレットアイラ」などの文言で表現されて不自由なく取引されていると主張するが、そのような主張は、「シークレット」の文字が「蒸留所が伏せられた樽入りの商品」という意味で取引者・需要者に認識されていることを裏付けるものである。

「ボトル」「カスク」共に、酒類においては容器を表す言葉にすぎず識別力の弱い言葉であるが、「シークレットボトル」が“蒸留所が伏せられた樽入りの商品”という意味で取引者・需要者の間で認識されているならば、「シークレットカスク」に関しても、“蒸留所が伏せられた樽入りの商品”という意味で取引者・需要者の間で認識され得る、との解釈は極めて自然なものである。

オ 被請求人は、本件商標は、漠然としており、仮に、「シークレット」と「カスク」と分離して判断したとしても、英単語「シークレット」は秘密の、「カスク」は樽を意味するのだから、記述的な意味合いは、「秘密の樽」の意味にとどまるのであって、請求人のいう「蒸留所が伏せられた樽入りの商品(酒類)」は、本願商標の上記意味合いからは飛躍している旨主張するが、甲5で挙げたように、「蒸留所の名前が伏せられた商品」が現に存在しており、本件商標から「蒸留所が伏せられた樽入りの商品(酒類)」の意味合いが生じ得るという請求人の主張は妥当なものであり、飛躍したものではない。

また、「蒸留所の名前が伏せられた商品」が現に存在していることからすれば、取引者・需要者は「秘密とされているのは“蒸留所”である」と自然に捉えるから、本件商標は商品の品質を具体的に表したものであり造語ではないのは明らかである。

(3)まとめ

本件商標を構成する「シークレット」及び「カスク」の意味、そして、主としてウイスキー業界における使用状況に鑑みれば、本件商標は全体として「蒸留所が伏せられた樽入りの商品(酒類)」といった意味を容易に想起し得るものであり、酒類の品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識として機能し得ないものである。

第3 被請求人の答弁

1 答弁の趣旨

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1及び乙2(枝番号を含む。)を提出した。

2 答弁の理由(要旨)

(1)商標法第3条第1項第3号の該当性について

ア 本件商標は、同じ書体、同じ大きさ、同じ間隔に横一連に表してなるものであり、その構成全体から生じる「シークレットカスク」の称呼も格別冗長というべきものでなく、よどみなく一連に称呼し得るものである。かかる構成からなる本件商標は、これに接する取引者、需要者をして、その構成全体をもって一体不可分の一種の造語として認識されるとみるのが自然であり、ほかに、その構成中の「シークレット」又は「カスク」の文字部分のみが独立して認識されるとみるべき特段の事情は見いだせない。そうすると、本件商標は、その構成全体をもって、特定の観念を生じることのない一体不可分の一種の造語とみるのが相当である。

さらに、本件商標は、辞書にも掲載されておらず、インターネット上で検索した場合にも、本件商標の記載は散見されないから、本件商標は、一連一体で判断されるべきであり、被請求人による造語であるといえる。

イ また、「シークレット」という文言を含む商標が数多く登録されている(乙1)。

なお、請求人が挙げる、「カスク」の文字が指定商品において品質表示であると指摘された審査例は、本件商標とは異なる文字要素との組み合わせに関する例であり、さらに「シークレットモルト」の使用例も挙げているが、本件商標とは異なる文字の使用例であり、本件商標の使用例については何ら言及していない。

以上より、請求人が挙げている審査例および使用証拠は、本件商標が品質表示であることを示す証拠にはなり得ない。

ウ また、審査基準において、実際に一般的に使用されていることは必要とされないとはいえ、請求人が主張している「蒸留所が伏せられた樽入りの商品」であることは、現在、「シークレットボトル」「シークレットアイラ」、などの文言で表現されて不自由なく取引されている(乙2)。

エ 以上のことから、あえて本件商標を需要者・取引者が使用する必要性は全く無く、特定人に独占使用を認めたからといって公益に反するとも思われず、むしろ、本件商標は請求人が主張する品質を普遍的に具体的記述的に表しているとは思われないため、品質表示として使用するには極めて不適切である。

オ さらに、本件商標は、漠然としており、仮に「シークレット」と「カスク」と分離して判断したとしても、英単語「シークレット」は、秘密の、「カスク」は樽を意味するのであるから、記述的な意味合いは、「秘密の樽」の意味にとどまるのであって、請求人のいう「蒸留所が伏せられた樽入りの商品(酒類)」は、本件商標の上記意味合いからは飛躍しており、本件商標からの想像の一つにすぎない。

すなわち、本件商標が「秘密の樽」を意味するとしても、何が秘密なのかは明示されておらず、樽の原材料が秘密なのか、樽の内容物が秘密なのか、など、何ら明確で具体的な特定の内容を示していないから、需要者・取引者が、様々な意味合いを想像する可能性がある商標である。

カ このように本件商標は、漠然と「秘密の樽」という意味合いを表すものの、そこから様々な想像が喚起されるが故に需要者・取引者が興味関心を持ち記憶に残るものであり、まさに識別力を有する造語の商標である。

(2)請求人適格について

商標法において、無効審判は利害関係人に限り請求することができる(46条2項)。ここで、請求人は、審判請求書において、本件商標に対して、どのような利害関係を有しているのか、何ら言及しておらず、利害関係を有することを証明する証拠も提出されていない。さらに、請求人が本件商標をすでに使用しているという事実も無いことから、請求人は本件審判事件の利害関係人とは認められない。

第4 当審の判断

1 利害関係について

本件審理に関し、当事者間において利害関係について争いがあるので、以下、検討する。

(1)請求人が提出した証拠(甲7)及び主張によれば、以下のことが認められる。

請求人は、昭和28年7月「酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律」により設立された法人である(甲7の1)。

(2)請求人の設立の目的は、「組合は、組合員の緊密な連絡親和と相互扶助の精神に基づき、・・・酒類業界の安定と健全な進歩発展のために必要な事業を行い、組合員の自主的、かつ、自由公正な事業活動の機会を確保し、・・・共同の利益増進を図ることを目的とする。」(甲7の2、定款第1条)ものである。

(3)請求人の組合員は、「組合員たる資格を有する者は、組合の地区内においてウイスキー、ブランデー・・・を製造する酒類製造業者とする。」(甲7の2、定款第9条)とされている。なお、ここでいう「組合の地区」とは「全国一円の区域」(同第3条)である。

(4)上記(1)ないし(3)によれば、請求人の組合員は、日本国内において「ウイスキー、ブランデー・・・を製造する酒類製造業者」であるところ、酒類製造業者は、本件商標が有効な権利として存続している限り、本件商標を「ウイスキー,ブランデー」等を始めとするその指定商品に使用することができないから、請求人の組合員は利害関係があるということができる。そして、請求人は、その「組合員の自主的、かつ、自由公正な事業活動の機会を確保」することを目的としていることから、本件商標の登録の可否は、「組合員の自由公正な事業活動の機会の確保」の実現に関連した事項であるということができる。

そうとすれば、請求人は、本件商標の登録の可否について利害関係があるというべきである。

したがって、請求人は、本件商標登録無効審判請求をするにつき利害関係を有し、請求人適格を有すると認めるのが相当である。

2 商標法第3条第1項第3号該当性について

(1)本件商標について

本件商標は、「シークレットカスク」の文字を標準文字で表してなるところ、請求人の主張及び提出された証拠並びに職権調査によれば以下のとおりである。

ア 「シークレット」と「カスク」の意味について

「シークレット」は、「秘密。機密。内証事。」の意味を有する語(甲2)であり、「カスク」は、「樽,桶;一樽(の量)」の意味を有する英単語の「cask」を片仮名で表記したものである(甲3)。

イ 酒類分野における販売形態について

ウイスキーの場合、蒸溜所の名前を伏せたものについて“シークレット○○”と称して販売されることがある。(ア)「M’s Liquor House」のウェブサイトには「近年のトレンドのひとつに、蒸溜所の名前を伏せたシークレット・シングルモルトのリリースがあります。・・・蒸溜所や地域を問わず様々な「シークレット・シングルモルト」がリリースされています。」との記載、(イ)「ATCF Ltd.」のウェブサイトには、「蒸留所名非公開?シークレットスペイサイドを名乗る珠玉の3本をご紹介・・・3本のスペイサイドモルト」の記載、(ウ)「LIQUORS HASEGAWA リカーズハセガワ 本店」のウェブサイトには、「シークレットアイラ」として「今回のボトルは、蒸留所名は秘密ですがアイラのシングルモルト」「約8年間の熟成」等と記載されている。

ウ 上記ア及びイを踏まえ、本件商標について検討する。

(ア)本件商標は、「シークレットカスク」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ大きさ及び書体で、字間なく横書きしたまとまりの良い構成よりなるから、一連一体の語を表してなると看取されるものである。

そして、上記アによれば、「シークレット」は「秘密」の意味を有する語であり、「カスク」は「樽」の意味を有する語と理解されるものであるところ、「シークレットカスク」の語は、辞書等に載録されている語ではないことから造語といえるものであるが、各語が有する語義から、構成全体より「秘密の樽」ほどの漠然とした意味合いを想起するというのが自然である。

また、上記イによれば、酒類を取り扱う業界において「シークレット○○」と称して販売されている例として(イ)「シークレットシングルモルト」、(ウ)「シークレットスペイサイド」(エ)「シークレットアイラ」の3件の使用例が挙げられている。「シークレット」に続く文字として、(イ)の「シングルモルト」の文字は「単一蒸留所の原酒で作られたモルトウイスキー」を意味するものであって(https://www.suntory.co.jp/whisky/malt/about/)、(ウ)及び(エ)の「アイラ」や「スペイサイド」は英国のスコッチウイスキーの蒸留所が数多くある地域名として知られているものである(参考:スコッチウイスキー入門・6つの産地別特徴まとめ(https://liquorpage.com/scotch-whiskey-production-area-summary/)から、それぞれの使用例よりは、名前を非公開にした一蒸留所のモルトウイスキー、名前を非公開にしたアイラ地域又はスペイサイド地域のどこかの蒸留所のシングルモルトウイスキーといった意味合いを理解させるものである。

そうすると、これらの使用例における「シークレット」の文字は、商品「ウイスキー」の製造場所(蒸留所名)が非公開であることを表すものとして使用されているものといえる。

そして、当該使用例は、「アイラ」や「スペイサイド」がウイスキーの生産地として愛好家の間で知られており、閉鎖蒸留所を含めた当該地域のどこかの蒸留所のシングルモルトが長期熟成等をした希少な商品であることを表すものとして使用されていることがうかがえる。

してみると、当該使用例は、「シークレット」の文字が「アイラ」「スペイサイド」「シングルモルト」の語を伴い一連で使用されることで、「シークレット」の文字が蒸留所名が非公開であることを意味するという個別の事情を前提にしたものである。

他方、「樽」を意味する「カスク」との関係においては、蒸留所名を非公開として、樽単位で商品が取引されるという実情を見いだすことはできず、本件商標の指定商品、特にウイスキーを取り扱う分野においても、蒸留所名を非公開とする商品の取引が一般に行われている実情を見いだすこともできない。

したがって、本件商標の指定商品における「シークレット」の文字が「蒸留所名が非公開」との意味合いであるというのは、上記の個別の事情がある場合に限られるというのが相当であり、「カスク」の文字と一連に表された本件商標「シークレットカスク」の「シークレット」の文字からは「蒸留所名が非公開」といった意味合いを理解させるものとはいえず、上記(ア)のとおり「秘密の樽」ほどの漠然とした意味合いを想起するにすぎないというのが相当であるから、本件商標は、商品「ウイスキー」の具体的な品質等を表すものとはいえない。

そして、当審において職権をもって調査するも、本件商標登録時に、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、「シークレットカスク」の文字が、具体的な商品の品質を表示するものとして、取引上一般に使用されている事実を発見することができず、取引者、需要者が「シークレットカスク」の文字を商品の品質を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。

そうとすれば、本件商標は、その指定商品との関係において商品の品質を直接的かつ具体的に表したものとして理解、認識されるとまではいえないものであって、これをその指定商品に使用した場合には、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。

(2)請求人の主張について

ア 請求人は、「カスク」あるいは「cask」の文字が品質表示であると指摘された審査例を挙げて、本件商標よりは、「蒸留所が伏せられた樽入り商品」という意味を容易に想起し得るから、酒類の品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識として機能し得ない旨を主張する。

しかしながら、請求人が挙げる審査例は、「カスク」「cask」の文字を有するものであるが、その他の構成文字が相違している上、全体の構成から商品の品質を表すものと判断されたものである。また、「プライベートカスク」については、その構成全体で「ウイスキーを樽単体で販売するサービスの商品」を表すものとしてウイスキーを取り扱う業界において使用されている実情が認められることから、商品の品質を表示するものと判断されたものであるから、これらの審査例が本件商標を判断するにあたり適切な事例とはいえない。

したがって、請求人の主張及び提出された証拠を参酌したとしても、本件商標は、請求人が主張する「蒸留所が伏せられた樽入り商品」の意味合いを想起するというよりは、「秘密の樽」ほどの漠然とした意味合いを想起、理解させるにとどまるというのが相当であるから、商品の品質等を具体的に表示するものとはいえない。

イ 請求人は、判決例を挙げて、本件商標の使用事実がないからといって、本件商標が自他商品識別力を有するとは限らない旨主張する。

しかしながら、請求人が挙げる判決例(甲6の2)は、その商標を構成する各文字について、指定商品との関係から、その意味を認定し、それらが結合してもなお、構成全体から生じる意味合いが、取引者・需要者に商品の品質を認識させるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する旨判断したものであり、本号の適用にあっては、取引者・需要者の認識をもとに判断されるものであり、商標が実際に使用されていることを要しないとされたものである。

そして、本件商標は上記(1)ウのとおり、各構成文字について取引の実情を踏まえその意味合いを認定した上で、それらが結合した構成文字全体の意味合いが漠然としたものにとどまり、請求人が主張する具体的な品質を表すものとはいえないと判断したものであって、単に使用例がないといった事情をもって商標法第3条第1項第3号に該当しないと判断したものではない。

したがって、請求人が挙げる判決例があるとしても、本件商標が自他商品識別標識として機能し得ないとはいえない。

以上より、請求人のいずれの主張も採用できない。

(3)小括

以上によれば、本件商標は、その指定商品について、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章とはいえず、商標法第3条第1項第3号に該当しない。

3 まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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