結論テキスト
登録第6192088号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024890071 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理 由
本件登録第6192088号商標(以下「本件商標」という。)は、「テプラ」の片仮名及び「TEPRA」の欧文字を二段に書してなり、平成30年10月17日に登録出願、第23類「糸(脱脂屑糸を除く。)」、第24類「織物(畳べり地を除く。),メリヤス生地,フェルト及び不織布,ゴム引防水布,ビニルクロス,レザークロス,ろ過布,布製身の回り品,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,ふきん,シャワーカーテン,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),カーテン,テーブル掛け,スリーピングバッグ」及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として令和元年10月2日に登録査定、同月25日に設定登録され、その後、本件商標に係る商標権は、同6年6月7日受付の商標権の登録の一部放棄により、指定商品中、第25類「全指定商品」について、本権の登録の一部抹消がされたものである。
本件商標の閉鎖登録原簿によれば、その後、令和6年8月23日に商標権の取消し審判が請求され、同年9月9日に同審判の請求の予告登録がされ、同7年1月20日に本件商標の登録を取り消す旨の審決が確定し、同年2月27日に本商標権の登録の抹消の登録がされているものである。
そして、本件審判の請求は、令和6年10月25日にされたものである。
請求人が、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する商標は、引用商標1ないし引用商標3(別掲1~別掲3)の態様を含む、「テプラ」の片仮名及び「TEPRA」の欧文字(以下これらをまとめて「テプラ商標」という。)であり、請求人の製造・販売に係る「ラベルライター、ラベルプリンター、当該ラベルライター・ラベルプリンター用のテープカートリッジ」(以下、これらをまとめて「請求人商品」という。)について使用され、請求人の業務に係る商品を表示するものとして著名であると主張するものである。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書において要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第135号証を提出した。
以下、証拠の表記に当たっては、甲○号証を甲○のように記載する。
本件商標は、黒色のゴシック体で書した全角の片仮名文字「テプラ」を上段に、同様の書体で書した全角の欧文字「TEPRA」を下段に配したいわゆる二段書き商標で、これらのカタカナ文字は、「テ」が「T」の直上に、「プ」が「P」の直上に、「ラ」が「A」の直上にそれぞれ来るよう均等割付けがされた態様からなる。
(1)引用各商標の構成
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する商標は、請求人が製造・販売する請求人商品を表象する商標として、例えば、引用商標1ないし引用商標3の態様により、我が国の全域で広く永年にわたり継続的に使用がされてきた片仮名文字商標「テプラ」及び欧文字商標「TEPRA」である。また「テプラ商標」については、多数の商標登録がある。
(2)テプラに関する商標の商標登録状況
テプラに関する商標については、昭和63年(1988年)6月22日の商標登録出願を筆頭に、これまでに64件もの商標登録が我が国においてなされており(甲125)、現在も28件の商標登録が有効に存続中である(甲126)。失効した商標登録は、テプラ商標と同一の文字からなる旧ロゴについてのものや、もはや使用しなくなった商品についてのものであるものの、引用商標1及び引用商標3と色彩を反転したにすぎないロゴ商標については今からおよそ28年も前である平成8年(1996年)10月9日に最先のものが商標登録出願され、テプラ商標がおよそ四半世紀にもわたり継続して使用され、かつ登録が維持されてきたことがわかる。
(3)請求人の市場における位置付け及びテプラ商標の使用状況
ア はじめに
請求人は、事務用ファイルと電子文具を主力製品とする文具・事務用品のメーカーであり(甲1、甲2)、筆記具、紙製品及び事務用品から構成される「文具・事務用品市場」(2018年度の市場規模は約4576億円)において、その約6%にあたる270億9900万円(2018年度)の売上高を誇る(甲3)。「文具・事務用品市場」は、「鉛筆」や「万年筆」等を含む27品目の市場に分類され(甲3の18ページ)、請求人はこれら27品目の市場中、「ファイル類市場」と「電子文具市場」での製品販売に特化し、当該「電子文具市場」の主力商品の中に、請求人商品であるラベルプリンター製品「テプラ「PRO」シリーズ」(以下、適宜「プリンター本体」又は「テプラ」という。)がある。
なお、「ラベルプリンター」は、「ラベル印刷専用のプリンター」あるいは「印刷幅が狭く、シール付きの比較的厚手の紙に印刷できるのを特徴とするプリンター」(甲4)を指し、「ラベラー」や「ラベルライター」とも呼ばれている。一般に「ラベルプリンター」と「ラベルライター」は同一のものを指すが、請求人は販売戦略上、タイプライター式の製品を「ラベルライター」、パソコン又はスマートフォンに接続してラベル印刷する形式の製品は「ラベルプリンター」のように、あえて区別している。請求人の「ラベルライター」と「ラベルプリンター」では、同一の形状のテープカートリッジが使用されているので、以下、請求人の製品は、まとめて「ラベルプリンター」と称する。
1988年にラベルプリンターを日本で最初に発売したのが請求人であり、テプラカートリッジを着脱する「テプラ」は1992年に発売が開始され、バージョンアップやバリエーション展開を繰り返して30年以上の永きにわたり、日本全国で販売されてきた(甲5)。発売当初は、企業事務での使用を想定しており、テプラに内蔵されるテープの種類は限定的であったが、その後、一般需要者(家庭用)向けに、テープの色・模様・幅・素材等が異なるものが発売されるようになった。また、昨今では、装飾的なフォントや絵文字が印字可能なプリンター本体及びキャラクターテープやリポンテープが内蔵されたテプラカートリッジ等、製品ラインアップがさらに拡充され、女性を中心とした一般需要者からの支持も集めている。
これまでに販売されたテプラカートリッジは918種類に及び、それら種類ごとに「品番」が付されている(甲6)。テプラカートリッジは、請求人の社内用語で「SRテープ」と表記され、上記「品番」とは別に、テープの色・材質・模様ごとの「品名」、並びに「細分類」により管理されている。
甲第6号証は、1992年12月から2020年8月まで、27年8か月間の永きにわたる「品番」ごとのテプラカートリッジ(SRテープ)の販売数量を示す表である。例えば、表のNo.2「品番」SS4Rの行にあるように、「細分類名」が「SRテープ」、「品名」が「SRテープ 白ラベル」であり、2007年12月3日に発売が開始、2016年4月20日に製造が中止され、この約8年半の間に「品番換算」で8618個、「本数換算」で8618本が販売されたことがわかる。
また、表中には、「品名」が同一であるため、一見すると商品間の違いが確認できないものが複数あるが、これは「テープ幅」や「ラベルに印字される文字の色」が相違していることによる。例えば、No.1ないしNo.6では、「品名」はいずれも「SRテープ 白ラベル」だが、「ラベル幅」(6mm、9mm、12mm)に加え、No.1とNo.2及びNo.3ないしNo.6ではラベルに印字される文字の色が異なっている(No.1は4mm黒、No.2は4mm赤、No.3は6mm青、No.4は6mm黒、No.5は6mm赤及びNo.6は6mm灰色)。
「品番換算(個)」と「本数換算(本)」が異なる例としては、No.544「品番」SS6K-5Pがある。この行を見ると、「細分類名」は「SRテープ」、「品名」は「SRテープ エコパック 白ラベル」であり、2006年8月1日に販売が開始され、2020年8月までの14年間に「品番換算」で44万3720個、「本数換算」で221万8600本販売されたことがわかる。また「備考」の記載は、テプラ商品が5個入りの複数パックで流通していることを示している。
表の一番下には918種類あるテプラカートリッジの「品番換算(個)」と「本数換算(本)」の合計を記載しており、販売開始から27年8か月間の販売数量の合計は、「品番換算(個)」で「4億982万2347個」、「本数換算(本)」で「4億5754万7340本」であることがわかる。
イ テプラ商品の販売網及び請求人の販売促進活動について
請求人は主に、自社の製品カタログとウェブサイトを通じて継続的にテプラ商品の販売促進活動を行ってきた。
(ア)カタログの種類
請求人は、「テプラ」関連商品を含む請求人販売製品を網羅的に掲載した「ファイル読本・総合カタログ」、「ファイル総合カタログ」及び「キングジム総合カタログ」(甲7~甲31。以下、まとめて「総合カタログ」という。)、並びに「テプラ」関連製品に特化した「「テプラ」総合カタログ」、「ラベルライター「テプラ」総合カタログ」、「ラベルライターPCラベルプリンター「テプラ」総合カタログ」及び「ラベルライターラベルプリンター「テプラ」総合カタログ」(甲32~甲78。以下、まとめて「テプラカタログ」という。)を発行し、日本全国に発送している。
(イ)総合カタログによる請求人商品の宣伝広告
「総合カタログ」では、カタログの版ごとに若干記載内容が異なるが、いずれもラベルプリンター製品の項目が設けられ、テプラカートリッジがその全景写真とともに紹介されている。なお、テプラ発売後の5年間、すなわち1992年から1997年の間には、1993年に発行された上記「総合カタログ Vol.24」と1995年に発行された「総合カタログVol.25」があるが、「Vol.25」についてはカタログデータが残っていなかったため、1997年から1999年版の「総合カタログ」を提出する(甲8~甲10)。
2000年から2006年の間に発行された「総合カタログ」(甲11~甲17)では、例えば、2000年発行の「総合カタログ vol.29」(甲11)にあるとおり、118ページ左上にテプラカートリッジの正面写真がテプラ商品のパッケージとともに掲載され、テプラカートリッジに内蔵されるテープ(ラベル)の種類と種類ごとの価格が示されている。
2008年及び2010年から2021年の14年間に発行された「総合カタログ」(甲18、甲20~甲31)では、テプラカートリッジの品番と価格の紹介ページに加えて、「PROテープカートリッジ 機能性テープ一覧」(以下「機能性テープ一覧」という。)のページが設けられた。
なお、「テプラカタログ」(甲32~甲78)でも、「総合カタログ」と同様の内容により、請求人商品が細かく宣伝広告されている。
(ウ)総合カタログの配布数量並びに配布先及びその地域
甲第79号証は、1993年から2021年間における版ごとの「総合カタログ」発行数及び配布数を示した表である。「総合カタログ」の版は定期的に更新され、2003年は13万8310部、2005年は13万6290部と、ほぼ各版10万部を超えるカタログが配布され、一番多い年では13万8310部(2003年)を数えるに至り、これまでの「総合カタログ」配布数の合計は、194万3020部に上る。なお、近年カタログ発行数及び配布数が減少しているが、これは書類の電子化が進んだためであり、請求人はウェブサイト上のテプラ商品紹介ページをリニューアルするなどオンラインでの販売促進に力を入れている。また「総合カタログ」は電子版もあり、請求人のウェブサイトから自由にダウンロードできるようになっている(甲80)。
これら「総合カタログ」は、請求人の各支店・営業所・事業所(北海道札幌市、宮城県仙台市、埼玉県さいたま市、千葉県松戸市、東京都千代田区、愛知県名古屋市、大阪府大阪市、広島県広島市及び福岡県福岡市)(甲81)の各担当者を通じて、日本全国の配送先に配布された後、これら配送先(甲82~甲99)から、主に官公庁、民間企業、文具店、ホームセンター、量販店、ECサイト運営会社及び一般需要者へとまんべんなく拡散していく。なお、「総合カタログ」の発行は1993年からであるが、配送先リストのデータは2003年から2021年まで(2004年を除く。)の18年分しか残っておらず、また、表(甲79)の配布数は請求人支店への配布数も含めて集計しているため、配送先リスト(甲82~甲99)に記載の配布数合計は異なる。
これらにより、テプラ商標の使用された請求人商品が、日本全国で広く知られる情況にあったことは明らかである。例えば、甲第82号証では、2003年発行「総合カタログ」が1650の配送先へ配布されており、その住所を見ると、北海道、青森県、宮城県、新潟県、栃木県、東京都、長野県、愛知県、大阪府、岡山県、島根県、徳島県、福岡県、熊本県、鹿児島県、沖縄県と全国津々浦々にわたっている。なお、2020年発行「総合カタログ」については、「総合カタログ」が配送先に確実に送付されたことを示す受領書(甲100)があるので提出する。受領書1ページ目を見ると、「総合カタログ」(2021年キングジム総合カタログVol.50)210部が(株)東京クラウン関東支店へ発送され、当支店は2020年12月7日にこれを受領したことがわかる。よって、これら18年分の配送先リストから、少なくとも延べ2万の配送先に「総合カタログ」が確実に配布され、各配布先で閲覧されている情況をうかがうことができる。
また、「総合カタログ」とは別に、「テプラカタログ」も定期的に版が更新され、同様に配布がされてきた。甲第101号証は、1994年から1998年間における版ごとの「テプラカタログ」の発行数を示す表であり、例えば、1999年は「1993年3月版」が30万部、「1999年5月版」が20万部、「1999年9月版」が21万部、及び「1999年12月版」が20万部発行されたことがわかる。そして、上記期間に発行された「テプラカタログ」部数の合計は、1018万部にも上る。「テプラカタログ」は、主として請求人の本社営業部門から社内の各部署へ配布された後、そこから各取引先へ配送、あるいは商品展示会で配布するために用いられるものであるので、「総合カタログ」と異なり配布数は集計されていない。したがって、表(甲101)では発行数のみを記載しているが、請求人がいかにテプラないしテプラカートリッジの販売促進に注力してきたかが理解できるものと信ずる。
(エ)カタログ以外の方法によるテプラ商品の宣伝広告
請求人は自社ウェブサイト上に、「「テプラ」PROテープカートリッジ」のページを設け、「総合カタログ」及び「テプラカタログ」と同様に、テプラカートリッジを正面から表した写真とテプラカートリッジのパッケージの写真とを掲載し、テプラカートリッジに内蔵されるテープ(ラベル)の種類を紹介している(甲102)。また、テプラカートリッジの品番を示したページ、例えば「PROテープカートリッジ 白ラベル」のページ(甲103)では、異なる品番ごとにテプラカートリッジを正面から表した写真とテプラカートリッジのパッケージ写真が細部まではっきりと視認できる解像度で掲載されており、テプラ商品の形状が需要者等の記憶に確実に残るよう工夫がされている。
さらに、「「テプラ」PROテープカートリッジ3つの特長」の標題を付したページを設け、テプラカートリッジを正面視及び斜視した写真を複数掲載し、テプラカートリッジの特長を記述している(甲104)。この記述では、主に「テプラ商品を90度回転させると「「テプラ」PROシリーズ」の「P」のシルエットになり、シンボリックな形状を有する点」及び「コンパクトな形状である点」が訴求されている。
ウ 電子文具市場における市場占有率
請求人は、ラベルプリンター及びその消耗品(テープカートリッジ)等を含む電子文具市場において、売上高でみて市場一位の占有率(61.1%(2018年度))を有する(甲105)。甲第105号証は、株式会社矢野経済研究所の発行する「文具・事務用品マーケティング総覧」(以下「マーケティング総覧」という。甲106~甲122)を元に、1995年から2018年まで23年間にわたる請求人の電子文具市場での市場占有率(1995年から2009年間は2年毎、2010年から2018年間は各年)を示した表であり、この間、請求人は継続的に6割前後の市場占有率を維持していることがわかる。
なお、「マーケティング総覧」によると、「電子文具」に含まれる製品は、以下のとおりである(「マーケティング総覧」に記載の「ラベルワープロ」、「ラベルライター」及び「PCラベルプリンター」は、全て請求人の主張における「ラベルプリンター」と同義のものを指している。)。
<「電子文具」に含まれる製品>
・1995年度及び1997年度・・・「ラベルワープロ」の機器本体と消耗品・サプライ品。
・1999年度及び2001年度・・・「ラベルライター」及び「スタンプメーカー」の機器本体と消耗品・サプライ品」。
・2003年度から2018年度(2005年度は記載なし。)・・・「ラベルライター」、「PCラベルプリンター」、「スタンプ作成機」及び「その他電子文具」の機器本体と消耗品・サプライ品」。
表(甲105)は、テープカートリッジ市場ではなく、電子文具市場における請求人の売上高及び市場占有率を示すものだが、「マーケティング総覧」によると、「ラベルライターの市場は、その8割がラベルテープなどのサプライ品」(甲127(審決注:甲115~甲117の誤記と認める。))、「当市場の約8割がラベルライター市場(本体、テープ等消耗品)で占められている」、「キングジムの2018年6月期の電子文具売上の8割以上をテープが占めている」(甲121)、又は「電子文具市場はラベルライター関連が8割以上を占め」(甲122)とあり、電子文具市場の売上高の約8割がラベルプリンター製品(テープ等の消耗品を含む。)によるもので、さらにその約8割がテープカートリッジ等の消耗品によるものであることがわかる。
また、請求人に限ると、請求人の電子文具市場における販売商品の約9割が「テプラ」関連製品であり、「テプラ」は売上の8割以上をテープが占めていることから、請求人の電子文具市場における本件商品の売上高比率は4.3割以上であると推定できる。
プリンター本体及び本件商品が、一般的な流通経路を経て業種を問わず幅広い需要者層に販売される属性を持っていることからすれば、電子文具市場における本件商品の売上高比率が4.3割を超えるということの意味は、文房具店や量販店の文房具売り場又は通信販売のサイトの文房具売場等で、需要者等が目にする電子文具の大半が、テプラ商品であることに等しくなるとの予測に繋がる。
以上から、需要者等がいかに電子文具の流通・購入場面で本件商品に接しその形状を目にする機会が多く、またその頻度が高いかを理解し得る。
エ 小括
以上のように、請求人商品及びこれを表象するテプラ商標は、永年にわたり我が国で広く継続的に使用されてきたものであって、その周知著名性は極めて高いことがわかる。
(1)適用法条
本件商標は、その指定商品全部について、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)判断手法
判決(最三小判平成12年7月11日平成10年(行ヒ)第85号)の説示からすれば、商標構成中に、指定商品・指定役務との関係で強く支配的な印象を与えるものと認められる部分がある場合には、その部分を抽出し類否判断を行うことが許されると解される。以下、この判断基準に従い検討する。
(3)混同を生ずるおそれ
ア 類似性の程度
本件商標は、片仮名文字と欧文字を上下に結合させた二段書き商標であるところ、上段が下段の読みを表したものであることは明らかであるから、これより「テプラ」の称呼を生じる。この語は、元より造語であって特段の意味合いを生ずるものではないが、テプラ商標の周知著名性より、請求人商品のこと(請求人商品であることの意味合い)を想起させる。
一方、引用商標1は、黒色の横長長方図形の内部中央付近に「TEPRA」の文字を白色のゴシック体で書してなり、このうちの「E」の文字にあっては、3画目の横棒が2画目の縦棒を跨ぐように右肩上がりに配されてなる。引用商標2は、黒色のゴシック体にて鉤括弧で「テプラ」の文字を括ってなる。引用商標3は、黒色の横長長方図形の内部中央上寄りに「TEPRA」の欧文字を白色のゴシック体で書してなり、このうちの「E」の文字にあっては、3画目の横棒が2画目の縦棒を跨ぐように右肩上がりに配されてなる。該欧文字の下部には、その左右端を揃えた長さの細い白色の横長長方図形を配し、その中心に「PRO」の欧文字を黒色のゴシック体で書してなる。これらより、引用各商標からは「テプラ」の称呼(引用商標3にあってはこのほかに「テプラプロ」の称呼)を生じる。この語は、元より造語であって特段の意味合いを生ずるものではないが、引用各商標の周知著名性より、請求人商品のこと(請求人商品であることの意味合い)を想起させる。
本件商標上段の片仮名文字部は、下段の欧文字とは1対1の比率で書されてなるから、上段部分も独立した出所識別標識とみて差し支えなく、よってこの部分と引用商標2は同一の片仮名文字からなると認識される。両者は、片仮名文字の間隔の違いと鉤括弧の有無という点で異なっているが、我が国で少数の文字を書す際に間隔を空けることは広く一般に行われるし、鉤括弧は特段の称呼・観念を生じない付記的な要素であるから、いずれの違いも同一性の判断に影響は及ぼさない。すなわち、本件商標の上段、片仮名文字で書された引用商標2とは、外観・称呼・観念(生ずる意味合い)のいずれをとってもほぼ同一といって良いほど類似性の程度が高いというべきである。
また、本件商標下段の欧文字部は、白黒を反転させた引用商標1と外観上ほぼ同視し得るほどに近似するから、上段の片仮名文字部におけるのと同様、外観・称呼・観念のいずれを取っても引用商標1との類似性の程度は高いと言わざるを得ない。また引用商標3との対比では、引用商標3の「TEPRA」の下部に配された「PRO」の欧文字は、品質誇称表示として広く一般に用いられるものである上、上段に比して下段の文字が小さく書されていることから、識別力の程度は高くない。そうすると、引用商標3は「TEPRA」部分が要部として捉えられる結果、引用商標1と同様、引用商標3との類似性の程度も高い。
よって、本件商標とテプラ商標の類似性の程度は、その称呼が完全同一であることもあいまって、非常に高い。
なお、被請求人名義の現存している商標登録出願ないし商標登録は本件商標のみであるが、旧NI帝人商事と旧帝人ファイバーが統合してできた被請求人の前身の帝人ファイバー株式会社が、過去には「テプラ\TEPLA」の文字からなる二段書き商標の登録を有していた(甲127~甲130)。これら失効済みの4件にあっては欧文字部分の四文字目が「L」であって、称呼は共通するもののテプラ商標とは構成文字が相違していたが、平成30(2018)年に出願された本件商標については、いかなる意図であるかは不明であるものの、欧文字の四文字目が「R」となっており、引用商標との類似度が一層高まっていることは明らかである。
イ 他人の表示の周知著名性
テプラ商標の使用状況により、全国にその名称を認識させるに至っている。請求人は、テプラ商標を一般的な文房具の一種としてのラベルライター・ラベルプリンターについてのみ使用してきたのではなく、布製のアイロンラベルについても永年にわたり使用してきた。この布製のアイロンラベルは、現在では少なくともテープ幅が12mm、18mm、24mmの3種がラインナップされており、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)においても好評を博している(甲131)。我が国において広く親しまれているオンラインショッピングサイト「アマゾン」においては、2006年8月4日からその取り扱いが開始され(甲132)、現在までに当該商品は、1270件のレビューを獲得し、かつ5点満点中4.3点という高い評価を獲得している(甲133)。
そうすると、テプラ商標の周知著名性が裏付けられることは当然のことながら、布製のアイロンラベルについての周知著名性が損なわれることをうかがわせる事情は存しないから、テプラ商標は布製のアイロンラベルにあっても変わりなく周知著名というべきである。
ウ 独創性の程度
テプラ商標は、昭和63年(1988年)11月に発売された初代「テプラ」TR55に起源を有するもので、漢字混じりの印刷ができるラベル作成機能と、使いやすさが功を奏して大ヒットを記録した。その後も30年以上にわたるロングセラー商品として、累計販売台数は1,000万台を突破した。ファイルのタイトル付けをはじめとして、工場・建設現場での注意表示や、店舗・駅・病院・学校などでの案内表示、家庭で持ち物への名前付けなど、様々なシーンで活用されている。この「テプラ」との名称は、「テープライター」の省略形を表した造語であるとともに、その欧文字表記は、「テプラ」商品の概念・特徴を盛り込んだものである。
そのネーミングの開発過程においては、別の候補もあったが、最終的に造語・一般名詞・人名など数百に及ぶ候補の中から、音としてのイメージ、仮想するロゴタイプ、商品との関連などを検討した結果、「テプラ」に最終決定した経緯がある(甲134)。
このように、テプラ商標の独創性は極めて高いものである。
エ 商品間の性質、用途又は目的における関連性の程度
本件商標は、第24類の布製の商品を幅広く指定しており、第23類では、布製商品の原材料となるべき「糸(脱脂屑糸を除く。)」を指定するものである。
一方、テプラ商標は、その製品販売の初期から「布製ラベル」を指定する商標登録を受けていたことから分かるように、請求人商品は、当初からアイロンで貼り付ける「布製のアイロンラベル」についての使用もあり得ることを予定していた。そして「布製ラベル」の原材料には糸が用いられるのであるから、「布製ラベル」と「糸」とは完成品と原材料の関係に立つものであり、関連性の程度は高い。
本件商標の第24類の指定商品はいずれも布製の製品であるが、テプラ商標が永年にわたって付され続ける対象の中にも布製の商品は多く含まれる。例えば、初等教育における子どもの被服や履物、かばん、雑巾、ハンカチ等の布製品には、その所有者が誰であるかを識別するための記名が求められるが、その方法として、名札等のラベルを縫い付けたり、ピン留めしたり、あるいは貼り付けたりする場合に、着用感や見た目を阻害しないよう「布製身の回り品」(国際分類第24類)に属するタオルやハンカチを布製ラベルの素材として用いることも多く、できる限り簡易に名札を作れるような製品が好まれることはいうまでもない。そして請求人商品は、まさにこのような「記名」をしたり「タイトル付け」をしたりというニーズに合致する商品として開発された。請求人商品のうち、特に「布製ラベル」は、記名等をするに当たり、布製品を対象としてアイロン付けにより容易に貼り付けることができる「布製品」そのものということもできるから、請求人商品と本件商標の指定商品との間には密接な関連性があることになる。
オ 商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情
本件商標の指定商品は一般に流通する糸製品ないし布製品であるところ、こうした商品は、BtoBという位置付けに限らず、最終消費者もその需要者として含まれることからBtoC取引に商い関連性を有する。ユザワヤやokadaya等をはじめとする手芸用品を取り扱う店舗においては、手芸の素材となる糸や布製品のほか、手芸を行うにあたり使用される定規、はさみ、型紙など、広義の文房具に属する商品が幅広く取り扱われているところ、大手手芸洋品店であるユザワヤでは、テプラ関連の商品が現に取り扱われている(甲135)。また、最終消費者が多く利用するオンラインショッピングサイトであるアマゾンや楽天市場においても、糸や布製品はもちろん、テプラ関連の商品が幅広く取り扱われていることは論を侯たない。そうすると、本件商品の指定商品とテプラ商品の取引者及び需要者は共通するのであって、異なる取引者及び需要者により取引されることを示す取引の実情は垣間見えない。
以上の事情によれば、本件商標をその指定商品について使用した場合には、請求人商品と混同を生ずるおそれがあったことが明らかであるから、その登録は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
被請求人は、請求人の主張に対し、何ら答弁していない。
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認めるので、以下、本案に入って審理する。
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 請求人は、事務用ファイルと電子文具を主力製品とする文具・事務用品のメーカーであり(甲1、甲2)、請求人は、1988年にラベルプリンターを我が国で初めて発売して以降、1992年にテプラカートリッジを着脱する「テプラ」の発売を開始し(甲5)、その後、少なくとも2021年まで請求人商品に請求人商標を継続して使用している(甲7~甲78ほか)。
イ 請求人商品中、「SRテープ」と称するテプラカートリッジの1992年12月から2020年8月までの販売実績は、「品番換算(個)」で「4億982万2347個」、「本数換算(本)」で「4億5754万7340本」とされる(甲6、請求人の主張)。
ウ 1996年ないし2019年版のマーケティング総覧によれば、1995年度ないし2018年度の電子文具市場の規模に対する請求人商品を含む電子文具の市場占有率は、49.7%ないし64.2%と高いシェアで推移し、メーカー別シェアにおいて、請求人が継続して1位を獲得していることがうかがえる(甲105~甲122)。
エ 請求人は、1993年ないし2021年に発行された自社の製品カタログを通じて継続的に請求人商品の広告宣伝を行い、各カタログには、請求人商標が使用されている(甲7~甲80、甲82~甲101)。
なお、請求人の製品カタログのうち、「テプラ」関連商品を含む請求人販売製品を網羅的に掲載した「総合カタログ」(1993年~2021年)の発行数は累計約368万部、配布数は累計約194万部(甲79)、「テプラ」関連製品に特化した「テプラカタログ」(1994年~2020年)の発行数は累計1018万部(甲101)であり、これらのカタログは、全国各地に配送されたことがうかがえる(甲82~甲100)。
オ 請求人は、自社のウェブサイトを通じて、請求人商品の広告宣伝を行い、当該ウェブサイトには請求人商標が使用されている(甲102、甲104)。
(2)上記(1)よりすれば、請求人商標は、本件商標の登録出願前から、登録査定日はもとより現在においても、請求人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものといえる。
(1)請求人商標の周知著名性
請求人商標は、上記1のとおり、本件商標の登録出願前から、登録査定日はもとより現在においても、請求人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものである。
(2)本件商標と請求人商標の類似性の程度
本件商標は、上記第1のとおり、「テプラ」の片仮名及び「TEPRA」欧文字を二段に書してなり、他方、請求人商標は、上記第2のとおり、「テプラ」の片仮名及び「TEPRA」の欧文字からなる若しくはその構成中に「テプラ」の片仮名及び「TEPRA」の欧文字を有してなるところ、本件商標と請求人商標を比較すると、全体の外観において異なるものの、本件商標と請求人商標中の「テプラ」の片仮名及び「TEPRA」の欧文字とは、構成文字を共通にし、両商標の構成文字に相応して生じる「テプラ」の称呼が共通するものであるから、本件商標と請求人商標の類似性の程度は高いといえる。
(3)請求人商標の独創性の程度
請求人商標を構成する「テプラ」及び「TEPRA」の語は一般の辞書等に載録がなく、請求人によって創造された造語といえるから(甲134)、請求人商標の独創性の程度は高い。
(4)本件商標の指定商品と請求人商品の関連性、需要者の範囲
本件商標の指定商品である「糸」、「布製品」などの商品と請求人商品とは、原材料、用途等が必ずしも一致するとはいえないものの、特に日用品や雑貨等を取扱う小売店などにおいて商品の販売場所を共通にする場合があるから一定程度の関連性があるといえ、また、その需要者は一般需要者を含む点で需要者の範囲が一致するといい得る。
(5)出所の混同のおそれ
上記(1)ないし(4)のとおり、請求人商標は、本件商標の登録出願前から、登録査定日はもとより現在においても、請求人商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていること、本件商標と請求人商標は類似性の程度が高いこと、請求人商標の独創性の程度の高さ、本件商標の指定商品と請求人商品の関連性の程度、需要者の範囲の一致等を踏まえ、本件商標の指定商品の取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用した場合、これに接する需要者は、請求人商標を連想又は想起し、その商品が他人(請求人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(6)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当し、その登録は、同項の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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