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Trademark Appeal Case

蒸留所コレクションの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024890076
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6790287号商標(以下「本件商標」という。)は、「Distillery Collection」の欧文字を標準文字により表してなり、令和5年9月26日に登録出願、第33類「スピリッツ(飲料),焼酎,蒸留酒,洋酒,果実酒,酎ハイ,リキュール,日本酒,清酒,泡盛,合成清酒,白酒,直し,みりん,中国酒,薬味酒」を指定商品として、同6年2月14日に登録査定、同年3月25日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張

請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び審判弁駁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第7号証(枝番号を含む。以下証拠の記載は「甲(乙)○」と省略して表記する。枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略する。)を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。

2 審判請求書における主張

(1)「Distillery」及び「Collection」の意味

ア 「Distillery」の意味

「Distillery」の文字は、「蒸留所,蒸留酒製造所」という意味を有する英単語である(「リーダーズ英和辞典 第3版」(株式会社研究社刊))(甲2)。

イ 「Collection」の意味

「Collection」の文字は、「1.集めること,収集,採集;(投函された郵便物の)回収;取立て,集金,徴税;寄附金募集,募金.収集物,所蔵品,コレクション;集合,集団〈of〉;献金,寄附金;(水・ほこり・紙くずなどの)堆積,山.コレクション(あるシーズンに向けて創作される一群の衣服).2.「(特にOxford大学の)学期試験.3.(馬の)収縮姿勢.」という意味を有する英単語である(「リーダーズ英和辞典 第3版」(株式会社研究社刊))(甲2)。

(2)酒類における審査例

ア 「Distillery」の文字が酒類において品質表示であると指摘された審査例がある(甲3)。

イ 「Collection」及び発音を片仮名で表記した「コレクション」の文字が酒類において品質表示であると指摘された審査例がある(甲4)。

(3)酒類分野における使用例

「Distillery Collection」の文字、及びその発音を片仮名で表記した「ディスティラリーコレクション」の文字が酒類の販売現場において品質表示として使用されている。

ア ウェブサイト「すすきの洗練された漆黒Bar(バー)「n/ナイン」」

当該ウェブサイトでは、ベネズエラの酒造メーカー「Diplomatico」(ディプロマティコ)のラム酒である「Diplomatico Distillery Collection」について説明している。その説明によれば、「ディスティラリーコレクション」とは、「ディプロマティコを構成する3つのタイプのラムをブレンドせず、タイプごとに詰めた限定商品」のことであり、「(Diplomaticoの)蒸留所で製造されたラム酒のコレクション(のうちの一つ)」という意味合いで「Distillery Collection」が使用されている(甲5の1)。なお当該ウェブサイトのページが公開されたのは、令和2年(2020年)10月17日である。

イ ウェブサイト「Midleton Distillery Collection」

当該ウェブサイトは、アイリッシュウィスキーの産地であるアイルランド共和国ミッドルトンにあるウイスキー蒸留所で製造されたウイスキーを紹介・販売するサイトである。サイト中に、「The Midleton Distillery Collection brings together,celebrates,and shares seven of Ireland’s best-loved whiskey brands with the whole of the world.」(訳:ミッドルトン ディスティラリーコレクションは、アイルランドで最も愛されている7つのウイスキーブランドを集め、称え、世界中に広めています。)と記載されているように、「Distillery Collection」の文字は、「(ミッドルトンにある)蒸留所で製造されたウイスキーのコレクション(のうちの一つ)」という意味合いで用いられている(甲5の3)。

なお、「Internet Archive(インターネットアーカイブ)」が運営するウェブサイト「WayBack Machine(ウェイバックマシーン)」から取得したアーカイブ資料によれば、令和4年(2022年)8月10日の時点で甲5の3の上記の文章(審決注:甲5の3の上記文章中の「seven」は甲5の4では「six」と記載されている。)が使用されている(甲5の4)。

ウ ウェブサイト「COPELAND DISTILLERY」

当該ウェブサイトは北アイルランドの「Copeland」という蒸留所のもので、当該蒸留所で製造されたジン、ラム、ウイスキーをセットにし、「The Copeland Distillery Collection」の商品名で販売を行っている(甲5の5)。

「Distillery Collection」の文字は、「(Copelandの)蒸留所で製造されたスピリッツ(ジン,ラム酒,ウイスキー)のコレクション(のうちの一つ)」という意味合いで用いられている。

なお、ウェブサイト「WayBack Machine」から取得したアーカイブ資料によれば、令和5年(2023年)9月19日の時点で甲5の5の上記商品が販売されている(甲5の6)。

エ ウェブサイト「Cambridge Distillery | Dedicated to Creating Outstanding Gins」

当該ウェブサイトは英国ケンブリッジにあるジンの製造及び販売を行っている企業のサイトである。当該ウェブサイトでは、当該企業が選りすぐった6種類のジンを「The Cambridge Distillery Collection」と称し、紹介及び販売を行っている。「The Cambridge Distillery Collection,a sensorial discovery through extraordinary ingredients from around the world: a unique collection of ground-breaking gins,often imitated never equalled.」(ケンブリッジ・ディスティラリー・コレクションは、世界中から集めた特別な原料を通して、感動的な発見をお届けします:しばしば模倣され、決して並べられることのない、画期的なジンのユニークなコレクション。)との説明がなされている(甲5の7)。

「Distillery Collection」の文字は、「(英国ケンブリッジにある)蒸留所で製造されたジンのコレクション(のうちの一つ)」という意味合いで用いられている。

なお、ウェブサイト「WayBack Machine」から取得したアーカイブ資料によれば、令和5年(2023年)12月5日の時点で「The Cambridge Distillery Collection」の表記が使用されている(甲5の8)。

(4)本件商標「Distillery Collection」の自他商品識別力、及び第3条第1項第3号該当性

ア 本件商標を構成する「Distillery Collection」は、「蒸留所」の意味を有する英単語の「Distillery」と、「収集されたもの」の意味を持つ英単語「Collection」を組み合わせたものであるところ、ウイスキー、ジン、ラムといったスピリッツを製造する蒸留所においては、色々な種類、品質のスピリッツを取り揃えており、それらをまとめたものについて、「(特定の)蒸留所で(製造された酒類)を集めたもの(コレクション)」という意味合いで「Distillery Collection」が使用されている状況にある。

本件商標は全体で、「(特定の)蒸留所で(製造された酒類)を集めたもの(コレクション)」であることを示すものであり、指定商品との関係において単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示したにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものとみるのが相当である。

「Distillery Collection」が「取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであって、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないもの」であることは明らかである。

イ 実際の使用例の有無について

商標の自他商品識別力の有無が争われた平成12年(行ケ)第76号審決取消請求事件(甲6の2)では、「商標が、その指定商品の取引過程において使用されている事実がないとしても、将来、商品の品質、機能等を表す表示として使用され、取引者、需要者に商品の品質表示等であると認識される可能性がある場合には、商標法3条1項3号が適用される」と述べられている。「当該商標の使用事実がない」からといって、当該商標が自他商品識別力を有するとは限らないのである。取引者・需要者における「Distillery Collection」の文字の使用例が少なかったとしても、そのような事実を根拠に「本件商標は自他商品識別力を有している」と判断すべきではないのである。なお、「Distillery Collection」単独での使用例があまり見受けられないのは、意味するところが「(特定の)蒸留所で(製造された酒類)を集めたもの」であって、「Distillery Collection」単独では何らの出所を表示する機能をも有さず、基本的にある蒸留所に関連する言葉(地名、人名など)と結合して初めて、どの蒸留所の酒類を集めたものであるかが特定されるためと考えられる。

3 審判弁駁書における主張

(1)商標法第3条第1項第3号の該当性について

上記2(4)アのとおり、本件商標は、「Distillery」は「蒸留所」、「Collection」は「集められたもの、商品群等」という、いずれも一般的で明確な意味を有する語の組合せからなるものである。

また、酒類分野においては、特定の蒸留所に由来する製品群を「Distillery Collection」と表現する慣用例が数多く確認されており(甲5)、造語としてではなく、商品の品質・出所を表示するものとして用いられている。

そうとすれば、「Distillery」を「蒸留所」と解した場合に、それに続く「Collection」を「集められたもの、商品群等」と解釈し、本件商標を「特定の蒸留所で製造された酒類」と解釈することは妥当なものである。

(2)被請求人の主張

ア 被請求人の主張する「蒸留所で製造される各種酒類の集合体」という解釈は、請求人が主張する、「(特定の)蒸留所で(製造された酒類)を集めたもの(コレクション)」とほぼ同義である。一方、「数多くの蒸留所の収集形態」という解釈も結局のところ、「数多くの蒸留所によるコレクション」を意味し、それは商品の品質表示といえる。

イ 被請求人は、請求人が挙げた「Distillery Collection」の文字が酒類に使用された例に対し、「いずれも「Distillery Collection」単独での使用ではなく、「Distillery Collection」のみの単独での表記と同解釈すべきではない」旨主張するが、単独での使用例がないのは、「Distillery Collection」の意味するところが「(特定の)蒸留所で(製造された酒類)を集めたもの」であり、「Distillery Collection」単独では何らの出所を表示する機能を有さない、すなわち、基本的にある蒸留所に関連する言葉(地名、人名など)と結合して初めて、どの蒸留所の酒類を集めたものであるかが特定されるためと考えられる。

ただ、「Distillery Collection」が他の語とともに用いられている場合でも、その構成語が品質表示として理解されていることは変わらない。

(3)まとめ

本件商標を構成する「Distillery」及び「Collection」各文字の意味、そして、主としてウイスキー業界における使用状況に鑑みれば、本件商標は全体として「(特定の)蒸留所で(製造された酒類)を集めたもの(コレクション)」といった意味を容易に想起し得るものであり、酒類の品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識として機能し得ないものである。

第3 被請求人の主張

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙1ないし乙10を提出した。

1 本件商標の自他商品識別力について

(1)本件商標は、英文字で「Distillery Collection」と横書きしたものである。その構成のうち、前半部分の「Distillery」は日本語の「蒸留所」を意味する語彙であり、後半部分の「Collection」は「集める、集めること」等の意味を有するところ、この前半部と後半部と一体不可分に一連に結合した本件商標は必ずしも請求の理由で述べられたように「蒸留所で製造された酒類を集めたもの」と解することはできない。

「Collection」は、単に「収集物、コレクション」と物のみに限定して解する以外、「集められたもの、商品群、商品ラインナップ」等の意のみに解釈するだけではなく、「モノを広く集めること、収集、蒐集」等の意に解することも多い。例えば、趣味としての収集活動として使用されると、研究用資料、所蔵、作品群等の意に解されるから、本件商標は、数多くの蒸留所の収集形態や蒸留所の多数の形態の中の特定の集合体の意、あるいは蒸留所で製造される各種酒類の集合体の意に解釈するものであったりする。

したがって、本件商標は、請求人が主張するような商品の品質を普通に用いられる方法で表示したものではなく、自他商品の識別標識としての機能を果たしている。

(2)本件商標は、観念的には多数の蒸留所の集合体という意味合い、さらには多数の蒸留所の中での特定の蒸留所を集めたものとの観念を有している。

このように本件商標の観念は、「蒸留所を主体」としたCollection、すなわち多数の蒸留所の中の気に入った蒸留所の集合体、あるいは気に入った蒸留所の集合体としての意味合いが強いから、本件商標を蒸留所の集合体、多数の蒸留所の中で自分が気に入った蒸留所を集めたコレクションと解したほうが自然な解釈といえる。

このように、本件商標は、蒸留所における産物、すなわち酒類を主体として「Collection」を解するのではなく、蒸留所そのものの集合体を指称するものとして解釈する方が妥当である。

このように解釈すると本件商標は自他商品識別機能を充分に具備することができる。

2 請求人の主張する審査例等について

(1)請求人は「Distillery」が酒類において品質表示であると指摘されたとする審査例を挙げている。

しかし、これらの審査例はいずれも単なる蒸留所の「Distillery」ではなく、そこに一定の地域的あるいは形態的特性を表わす語を限定的に付加している。

したがって、単なる「Distillery」(蒸留所)というのではなく「特定の限定された蒸留所(Distillery)」という観念を有しているから、一般的な蒸留所を指称しているものではない。

(2)請求人は、「Collection」についても品質表示であると指摘された審査例を掲げている。

しかし、これらの審査例は地名や一般の「WHISKY」名称や西暦年号名を付加限定したものであり、本件商標は「Collection」を特定するような限定付加用語は何ら用いられていない。

換言すれば、収集することの意を有する「Collection」がそのまま用いられているにすぎないから、それ以外の観念を想起させる意は全く付加されていない。

(3)請求人は、上記第2の2(3)において、「Distillery Collection」の文字が酒類の販売現場において品質表示として使用された例を挙げている。

アの使用例は、ベネズエラの酒造メーカーのディプロマティコのラム酒として「Diplomatico Distillery Collection」の名称が使用されていたのである。ここで用いられた「Distillery Collection」はラム酒の一般名称として使用されたものではない。酒造メーカーの製造者名を冠した名称として「Diplomatico Distillery Collection」とされている。すなわち、単独で「ディスティラリーコレクション」が用いられたものではない。

イの使用例は、ウイスキーの産地のアイルランド共和国にあるウイスキー蒸留所で製造されたウイスキーの紹介記事であるが、この紹介記事の中においては「Distillery Collection」の文字は必ずしも「蒸留所で製造されたウイスキーのコレクション」という意味で用いられていると解することはできない。

この記事の中で「ディスティラリー・コレクション」の「Midleton」という製造地名を冠した「Distillery Collection」の説明をしている。「Distillery Collection」単独での使用ではなく、アイリッシュウイスキーの産地「Midleton」と共に用いられている。「ミッドルトン(Midleton)」という地名を冠することによって製造地限定のウイスキー商品の説明として用いられたものである。

したがって、甲5の3の「Distillery Collection」の表記文字は必ずしも蒸留所で製造されたウイスキーのコレクション(のうちの一つ)という観念を表したものとして解することはできない。

ウの使用例は、ウェブサイト「COPELAND DISTILLERY」では「Distillery Collection」の販売を行っていることが表記されている。しかし、実際の販売は「The Copeland Distillery Collection」という商品名であり、必ずしも「Distillery Collection」の単独の使用や表記がなされていた訳ではない。

すなわち、商品名として「The Copeland Distillery Collection」が用いられているが、これはあくまでCopelandの蒸留所で製造されたスピリッツのコレクションという意味合いにすぎない。

したがって、商品名が「The Copeland Distillery Collection」という表記であるからといって、この商品名表記をもって「Distillery Collection」の文字が Copelandの蒸留所で製造されたスピリッツのコレクションという限定解釈すべきではない。

エの使用例は、英国のケンブリッジにある企業サイトのジンメーカーにおけるサイトであり、英国のケンブリッジにあるジンメーカー企業の説明として企業名「ケンブリッジ・ディスティラリー・コレクション」に関して説明している。英国のケンブリッジに所在する企業であるが故に「The Cambridge Distillery Collection」と表記し称しており、英文字での紹介文でも「Distillery Collection」ではなく、所在も明記した「The Cambridge Distillery Collection」としている。

ここでは「Distillery Collection」の文字のみの表記ではないから、「Cambridge Distillery Collection」のウェブサイト表記を「Cambridge」を除いて「Distillery Collection」と同一として把握すべきではない。あくまで「Cambridge Distillery Collection」というように全体の一体不可分表記の標章としており、「Distillery Collection」のみの単独で表記と同解釈すべきものではない。

3 過去の登録事例について

酒類分野において、アルファベット表記の「Collection」、及びカタカナ表記の「コレクション」の文字を含む商標の登録事例は多数存在する(乙1~乙10)。

4 本件商標の自他商品識別力について

本件商標は「Distillery Collection」を一体不可分に一連に結合した商標であり、「Collection」が多種の観念を有しているがために、これと一体不可分の「Distillery Collection」も多数の観念を包含した結合語として解釈される。

したがって、本件商標は、前半部と後半部との一体不可分の商標として自他識別機能を有するものである。

第4 当審の判断

1 利害関係について

請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがないものであり、請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認められるから、本案に入って審理する。

2 商標法第3条第1項第3号該当性について

(1)本件商標について

本件商標は、「Distillery Collection」の欧文字を標準文字で表してなるところ、請求人の主張及び提出された証拠並びに職権調査によれば以下のとおりである。

ア 「Distillery」及び「Collection」の意味

「Distillery」の文字は、「蒸留所,蒸留酒製造所」の意味を有する英単語であり、「Collection」の文字は、「集めること,収集,所蔵品,コレクション」等の意味を有する英単語である(甲2)。また、「コレクション」の片仮名も、「1趣味として集めること。収集。2収集品。」の意味を有する(広辞苑 第七版)。

イ 酒類分野における使用例について

(ア)ウェブサイト「すすきの洗練された漆黒Bar(バー)「n/ナイン」」では、ベネズエラの酒造メーカー「DIPROMATICO」(ディプロマティコ)のラム酒である「DIPROMATICO DISTILLERY COLLECTION」について、「ディスティラリーコレクションはディプロマティコを構成する3つのタイプのラムをブレンドせず、タイプごとに詰めた限定商品」との記載がある(甲5の1)。

(イ)ウェブサイト「Midleton Distillery Collection」には、「The Midleton Distillery Collection brings together,celebrates,and shares seven of ireland’s best-loved whiskey brands with the whole of the world.」(訳:ミドルトン蒸留所コレクションは、アイルランドで最も愛されている7つのウイスキーブランドを集め、称え、世界中に広めています。)と記載されている(甲5の3)。

(ウ)ウェブサイト「COPELAND DISTILLERY」には、北アイルランドの「Copeland」という蒸留所で製造されたジン、ラム、ウイスキーをセットにし、「The Copeland Distillery Collection」の商品名で販売を行っている(甲5の5、甲5の6)。

(エ)英国ケンブリッジにあるジンの製造及び販売を行っている企業のサイトでは、「The Cambridge Distillery Collection is a sensorial discovery through extraordinary ingredients from around the world: a unique collection of ground-breaking gins,often imitated never equalled.」(訳:ケンブリッジ蒸留所コレクションは、世界中の素晴らしい原料を使った感覚的な発見です。真似されることはあっても、決して真似できることのない画期的なジンのユニークなコレクションです)との記載がある(甲5の7、甲5の8)。

(2)上記(1)を踏まえ、本件商標について検討する。

ア 本件商標は、「Distillery Collection」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同じ大きさ及び書体で、横書きしたまとまりの良い構成よりなるから、一連一体の語を表してなると看取されるものである。

そして、上記(1)アによれば、「Distillery」は「蒸留所」の意味を有する英語であり、「Collection」は「集めること,収集,収集品,コレクション」等の意味を有する親しまれた英語であるところ、「Distillery Collection」の語は、辞書等に載録されている語ではないことから造語といえるものであるが、各語が有する語義から、構成全体より「蒸留所コレクション(収集)」ほどの漠然とした意味合いを想起するというのが自然である。

イ また、上記(1)イによれば、酒類を取り扱う業界において「Distillery Collection」と称して販売されている例として(ア)「DIPROMATICO DISTILLERY COLLECTION」(イ)「The Midleton Distillery Collection」(ウ)「The Copeland Distillery Collection」(エ)「The Cambridge Distillery Collection」の英語で表記された4件の使用例が挙げられている。これらの使用例は、「Distillery(蒸留所)」を特定するために前の文字が付加されているものであり、付加された文字によって、請求人も主張するように「DIPROMATICO」蒸留所、「Midleton」蒸留所、「The Copeland」蒸留所、「The Cambridge」蒸留所と、蒸留所が特定され、それらの蒸留所が取り扱う商品の出所を表示するものといえる。

したがって、これらの使用例は、「Distillery(蒸留所)」の前に文字があり、一連で使用されることで、蒸留所名を特定することができ、その蒸留所の商品であることを理解させるものであるから、上記使用例からは、「Distillery Collection」の文字部分のみで、特定の商品の品質等を直接的かつ具体的に表示するものとはいえない。

そうとすれば、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、上記アのとおり「蒸留所コレクション(収集)」ほどの漠然とした意味合いを想起するにすぎないというのが相当であるから、本件商標は、その指定商品の具体的な品質等を表すものとはいえない。なお、請求人が挙げる使用例は、いずれも英語のウェブサイトであり、日本において本件商標が品質表示として使用されている例は見当たらない。

そして、当審において職権をもって調査するも、本件商標の登録査定時に、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、「Distillery Collection」の文字が、具体的な商品の品質を表示するものとして、取引上一般に使用されている事実を発見することができず、取引者、需要者が「Distillery Collection」の文字を商品の品質を表示したものと認識するというべき事情も発見できなかった。

ウ そうとすれば、本件商標は、その指定商品との関係において商品の品質を直接的かつ具体的に表したものとして理解、認識されるとまではいえないものであって、これをその指定商品に使用した場合には、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものというべきである。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当しない。

(3)請求人の主張について

ア 請求人は、「Distillery」あるいは「Collection(コレクション)」の文字が品質表示であると指摘された審査例を挙げて、本件商標よりは、「(特定の)蒸留所で(製造された酒類)を集めたもの(コレクション)」という意味を容易に想起し得るから、酒類の品質を表示するにすぎず、自他商品識別標識として機能し得ない旨を主張する。

しかしながら、請求人が挙げる審査例は、商標の構成中に「Distillery」あるいは「Collection(コレクション)」の文字を有するものであるが、その他の構成文字が相違している上、全体の構成から商品の品質を表すと判断されたものであるから、これらの審査例と同様に本件商標を判断することは適切とはいえない。

したがって、請求人の主張及び提出された証拠を参酌したとしても、本件商標は、請求人が主張する意味合いを想起するというよりは、「蒸留所コレクション(収集)」ほどの漠然とした意味合いを想起、理解させるにとどまるというのが相当であるから、商品の品質等を具体的に表示するものとはいえない。

イ 請求人は、判決例を挙げて、本件商標の使用事実がないからといって、本件商標が自他商品識別力を有するとは限らない旨主張する。

しかしながら、請求人が挙げる判決例(甲6の2)は、商標法第3条第1項第3号の適用にあっては、取引者・需要者の認識をもとに判断されるものであり、商標が実際に使用されていることを要しないとされたものである。

そして、本件商標は上記(2)ウのとおり、各構成文字について取引の実情を踏まえその意味合いを認定した上で、それらが結合した構成文字全体の意味合いが漠然としたものにとどまり、請求人が主張する具体的な品質を表すものとはいえないと判断したものであって、単に使用例がないといった事情をもって商標法第3条第1項第3号に該当しないと判断したものではない。

したがって、請求人が挙げる判決例があるとしても、本件商標が自他商品識別標識として機能し得ないとはいえない。

以上より、請求人のいずれの主張も採用できない。

(4)小括

以上によれば、本件商標は、その指定商品について、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章とはいえず、商標法第3条第1項第3号に該当しない。

3 まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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