結論テキスト
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 平成10年審判第35007号 |
|---|---|
| 審判種別 | 不服 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
本件登録第3337101号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第14類「貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶及び水盤,貴金属製針箱,貴金属製宝石箱,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製靴飾り,貴金属製コンパクト,貴金属製喫煙用具,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品,時計,記念カップ,記念たて」を指定商品として平成5年10月26日に登録出願され、同9年8月8日に設定登録されたものである。
結論同旨の審決
(1)請求人の略称「DIOR」「ディオール」の著名性について
請求人「クリスチャン ディオール クチュール」(CHRISTIAN DIOR COUTURE)は、フランスのファッションデザイナーであるクリスチャン・ディオール(CHRISTIAN DIOR)を創始者とするフランス国法人である。しかして請求人及びその関連会社の取り扱いに係る商品は、「クリスチャン ディオール」(CHRISTIAN DIOR)ブランドとして、婦人服、バッグ、シューズ、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、ライター等、服飾関係を主として幅広い分野にわたり、世界的に周知著名である。創始者クリスチャン・ディオールは、戦後間もない1947年に発表した婦人服デザインのコレクション「ニュールック」によって一躍モード界で有名になった。この「ニュールック」は戦後の豊かなモードの時代への先鞭をつけたこと等によって歴史的な意義を有している。その後「Aライン」「Yライン」などの新しいスタイルを創作し、戦後のモード界に大きな影響を与え、「モード界の王」とまでいわれている。
また同氏はドレスのみならずファッション関連商品を幅広く手がけ、「大ディオール帝国」を築き上げた。同氏は1957年に急逝したが、イヴ・サンローラン、マルク・ボアン、ジャンフランコ・フェレ、ジョン・ガリアーノ等が主任デザイナーとなってその遺志は受け継がれている。
上記した事実は日本において出版された数多くの刊行物によって紹介されている。これら刊行物において、随所に前記請求人の創始者及び請求人並びに請求人の関連会社(以下総称して「請求人ら」という。)は、「ディオール」(DIOR)と略称されている。
即ち、三省堂発行の「コンサイス外来語辞典第3版」(甲第1号証)には「ディオール」の見出しのもとに、次のとおり紹介されている。「フランスのデザイナー。1947年夏、画商から転じてニュー−ルックと称しロングースカートのモードをもって服飾界に登場。以後Hライン、Aライン、Yラインなど数多くのモードを発表、鬼才といわれた。」
同様に、同社発行「コンサイスカタカナ語辞典」(甲第2号証)、同社発行「コンサイス外国人名事典改訂版」(甲第3号証)、及び文化出版局発行の「服飾辞典」(甲第4号証)には、「ディオール」の項が設けられ、請求人の創始者であるデザイナー「クリスチャン・ディオール」が紹介されている。
また研究社発行「英和商品名辞典」(甲第5号証)において、「Dior」「ディオール」→「Christian Dior」の項には、次のとおり記載されている。
「フランスのデザイナーChristian Diorのデザインした婦人服、および同氏の後継者Marc Bohanのデザインした婦人衣料品・毛皮製品・子供服のブランド、その店、その関連会社が製造している香水・オードトワレ・化粧品・スキンケア用品のブランド。製品は米国その他多くの国でライセンス生産されており,また同社の指揮のもとに、皮製またはジャガード地のバッグ・宝飾品・時計・眼鏡枠・サングラス・靴・浴室用品その他種々のファッション商品が契約会社で製造され、同ブランドで市場化されている。・・・」
さらに、世界の一流ブランドを紹介する各種刊行物、たとえば主婦と生活社発行「世界の逸品百科事典」(甲第6号証)、サンケイマーケティング発行「’84ザ・ブランド」(甲第7号証)、講談社発行「新編集世界の一流品大図鑑」(甲第8号証)、同’88年版及び同’95年版(甲第9号証及び甲第10号証)、読売新聞社発行「The一流品」(甲第11号証)、同「Special Made ln フランス大特集」(甲第12号証)、日本交通公社出版事業局発行「メイド・イン・フランス大図鑑」(甲第13号証)、毎日新聞社発行「パリ大図鑑」(甲第14号証)、世界文化社発行「世界の特選品’90」(甲第15号証)及び同社発行「Miss家庭画報創刊号」(甲第16号証)において随所にみられるように、請求人らは「ディオール」「DIOR」と略称されている。
上述したところから、「ディオール」「DIOR」は、請求人らの著名な略称であることが明らかである。
(2)請求人の商標「DIOR」「ディオール」の著名性について
「DIOR」「ディオール」は、請求人らの略称として著名であると同時に、上記した各種刊行物(甲第5号証ないし甲第16号証)に記載されているところから明らかなように、本件商標の出願前より、請求人らの業務に係る商品を表示するものとして極めて著名である。
(3)本件商標から「DIOR」(ディオール)が認識されるかどうかについて
本件商標からは以下の理由により、著名な「DIOR」(ディオール)が認識されるというべきである。
(ア)本件商標「アルディオール/ARDIOR」は一連に書されているにしても、その構成中の「DIOR」の文字が請求人らの著名な略称であり、それ以外のなにものでもない。
(イ)「ARDIOR」なる語は、フランス語に存在せず、何ら特定の観念を生ずるものでない。
(ウ)「AR」はフランス語の接頭辞であり、一連に称呼される場合にも、語頭部の「アル」の音に比して、「ディ」の音が強く響くからなおさら「ディオール」を含むものとして聴取される。
被請求人は、以上の3つの理由から、本件商標から著名な「Dior」が認識されると主張するものである。
なお、被請求人は「Dior」の著名性について言及しておらず、かかる点について争いはない。にもかかわらず、被請求人は本件商標から「DIOR」(ディオール)が認識されるか否かについて、著名性を全く無視し、一般消費者において「ディオール」あるいは「Dior」を含む商標と観念することはないとの主張を行っており、失当であると言わざるを得ない。
また、著名な「Dior」と全く同一の文字を含む商標であって、かつ構成全体としては何等特定の語義を有さないような本件商標を被請求人が如何なる理由によって採択したのか、その意図においてそもそも不明である。
(4)出所の混同のおそれについて
本件商標の指定商品は、貴金属製品および「身飾品」等のファッション関連商品であり、これらの商品は、請求人の世界的に著名な商標「DIOR」(ディオール)の取引にかかる商品と取引者・需要者を同一にするものである。
これら取引者、需要者が、その取引分野において著名な請求人の商標「DIOR」(ディオール)を知らないはずはなく、なおさら本件商標構成中の「DIOR」(ディオール)の文字の印象を強く受けることは言うまでもない。
従って、本件商標「アルディオール/ARDIOR」がその指定商品について使用された場合、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあると判断されて然るべきである。
(5)むすび
本件商標は、請求人らの著名な略称を含むものであるから商標法第4条第1項第8号に該当し、また請求人らの著名な商標を含むがゆえに、請求人らの業務に係る商品とその出所について混同を生ずるおそれがあるので同第15号に該当するものである。
したがって、同法第46条の規定によりにより、その登録を無効とすべきものである。
請求人は、審判請求書及び弁駁書に記載のとおり甲第1号証ないし同第44号証(枝番号を含む。)を提出した。
「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決
(1)本件商標「アルディオール」「ARDIOR」は、全体として一体に認識されるものであって、一般需要者が「ディオール」、「DIOR」の部分を、「AR」の部分から分離して読み取ることは不自然である。
(2)本件商標は、発音上、非常に語調が良く「アルディオール」と一気に読むのが自然であり、音の強さも「アル」の部分と「ディオール」の部分で差異の存するものではない。とくに、称呼上「アル」の部分で止め、「ディオール」の部分と分離して発音することは不可能な位に不自然である。また、外観的にも「AR」は二語しかない短い文字であり、これが「DIOR」部分と一体に結合され、全体としても6文字という構成であるから、長すぎることもなく短かすぎることもない、一つにまとまった商標となっているのである。長い文言の商標によくある結合商標的な前後に分離して認識されるものではない。
要するに本願商標は、前段の「AR」と後段の「DIOR」が一体に解け込んだものであり、全く新たな感覚の一つの造語「ARDIOR」として生じたものである。
したがって、本件商標が前段と後段とに分離して観念されることはなく、一般消費者において「ディオール」あるいは「DIOR」を含む商標と観念されることはない。
(3)むすび
以上に述べた理由により、本件商標は請求人らの著名な略称「DIOR」を含む分離商標と認識されるものでないので、商標法第4条第1項第8号及び同第15号の規定違反を理由とした請求人の主張は理由がない。
被請求人は、答弁書に記載のとおり乙第1号証を提出した。
請求人の提出した甲第1号証ないし同第16号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)請求人「クリスチャン ディオール クチュール」は、フランスのファッションデザイナーであるクリスチャン・ディオール(Christian Dior)を創始者とするフランス国法人である。
そして、クリスチャン・ディオールはフランスのノルマンディーで生まれ、長じて画商となったが、1947年「ニュールック」と銘打った一連の婦人服デザインのコレクションの発表をし、一躍モード界で有名になった。長いフレアスカートが戦争中のタイトで短い男性的な装いに飽きた人たちに熱狂的に迎えられて大成功を収め、第一線のデザイナーとなりAライン、Hライン、チューリップラインなどを発表し、パリ・モードを代表するものとなった。
1951年には現在の本社がある、アヴェニュー・モンテーニュとフランソワ・プルミエの一角に本拠を構えた。
ディオールは、1957年急逝したが、ピエール・カルダン、イヴ・サンローラン、マルク・ボアンなどのメンバーがその意志を引き継いでいる。
また、クチュール開店と同じ1947年、「パルファン・クリスチャン・ディオール」を設立、天才調香師「ジャン・カール」がベストセラー香水「ミス・ディオール」を発表した。
(2)「CHRISTIAN DIOR」、「クリスチャン ディオール」、「DIOR」、「ディオール」などの商標は、請求人及びその関連会社など請求人らに係る商標として、商品「婦人服、バッグ、シューズ、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、シガーライター」等について使用をした結果、本件商標の出願当時はもとより現在においても引き続き著名なものとなっているものであり、「DIOR」「ディオール」(以下これらをまとめて引用商標という。)の商標の著名性については、被請求人も認めているところである。
本件商標は、別掲のとおり、「アルディオール」の片仮名文字及び「ARDIOR」の欧文字を二段に横書きしてなるものであり、片仮名文字にあっては長音記号を含む7文字で構成され、欧文字にあっては6文字で構成されているものであり、これよりは「アルディオール」の称呼を生ずるものである。そして、本件商標を構成する「アル」及び「AR」が、わが国において外国語として何らかの意味を持つものとして親しまれているものとは認められない。また、その全体で特別の意味を構成するものとも認められないものであり、この点については請求人、被請求人とも認めて争わないところである。
一方、引用商標は片仮名の「ディオール」又は「DIOR」であり、「ディオール」にあっては長音記号を含む5文字で構成され、「DIOR」にあっては4文字で構成されているものであり、これよりは「ディオール」の称呼を生ずるものである。そして、この文字全体で何らかの意味を有するものではないが、前1で認定のとおり、請求人らの「婦人服、バッグ、シューズ、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、シガーライター」などの商品についての商標として著名なものとして認識されているものである。
本件商標と引用商標とを比較すると、本件商標には引用商標と同一の文字を、片仮名文字にあっては長音を含む5文字、欧文字にあっては4文字を、それぞれその後半に含むものである。
(1)前2で認定のとおり、本件商標は全体の文字が一体となって特別の意味を構成するものでなく、前2文字を除く後ろの文字は、片仮名「ディオール」にあっても、欧文字「DIOR」にあってもともに著名な商標と同一である。そして、片仮名文字にあっては全体が長音記号を含む7文字の5文字を共通にし、欧文字にあっても全体が6文字のうち4文字を共通にするものである。
(2)本件商標の指定商品は「貴金属製食器類,貴金属製のくるみ割り器・こしょう入れ・砂糖入れ・塩振出し容器・卵立て・ナプキンホルダー・ナプキンリング・盆及びようじ入れ,貴金属製の花瓶及び水盤,貴金属製針箱,貴金属製宝石箱,貴金属製のろうそく消し及びろうそく立て,貴金属製のがま口及び財布,貴金属製靴飾り,貴金属製コンパクト,貴金属製喫煙用具,身飾品(「カフスボタン」を除く。),カフスボタン,宝玉及びその模造品,時計,記念カップ,記念たて」であり、貴金属を主体とする商品及び宝玉、時計などのいずれもファッションに関係する商品である。
一方、引用商標に係る商品もファッションに関係する商品であり、特に「時計、貴金属製のシガーライター、カフスボタン、身飾品などのジュエリー商品」等の商品については同一の商品である。
(3)そうすると、引用商標はわが国において「婦人服、バッグ、シューズ、ジュエリー、眼鏡、腕時計、万年筆、シガーライター」等の商標としてファッション関連商品の取引者、需要者の間において周知なものであるところ、本件商標の指定商品はいずれもファッションに関連する商品であり、特に貴金属を主体とする商品であること、本件商標は著名な「ディオール」又は「DIOR」をその構成の一部とするものであることからすると、ファッションに関連する本件商品の取引者、需要者が長音を含め6音と比較的短い称呼の本件商標が付された商品に接すれば、引用商標との構成上の相違にもかかわらず、「ディオール」又は「DIOR」の部分に着目して、著名な引用商標を連想し、請求人らに係る商品と、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
(3)むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号の規定に違反して登録されたものかどうかは別として、同第15号の規定に違反して登録されたものであって、同法第46条第1項第1号に該当する。
よって、本件審判請求については、その商標登録を無効にすることとし、審判費用の負担について商標法第56条第1項、特許法第169条第2項、民事訴訟法第61条を適用して、結論のとおり審決する。
(審理終結の日 平成12年9月13日)
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