結論テキスト
登録第6783642号商標の商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024900101 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件登録第6783642号商標(以下「本件商標」という。)は、「獣王BEAST」の文字を標準文字で表してなり、令和5年7月5日に登録出願、第5類「サプリメント」を指定商品として、同6年2月22日に登録査定され、同年3月1日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおりである。
(1)登録第6737699号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 UNLEASH THE NITRO BEAST!(標準文字)
指定商品 第5類及び第32類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 令和5年3月17日
設定登録日 令和5年9月20日
(2)登録第6159219号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲のとおり
指定商品 第32類に属する商標登録原簿に記載の商品
登録出願日 平成30年8月13日
設定登録日 令和元年7月5日
なお、引用商標1及び2に係る商標権は、いずれも現に有効に存続しているものである。
また、引用商標1及び2をまとめていうときは、以下「引用商標」という。
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第579号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人のMONSTERブランドの周知著名性
ア MONSTERブランドの創設及び「MONSTER」の使用
申立人は、2002年に「MONSTER」なるエナジードリンクのブランドを創設し、これ以降、現在に至るまで、「MONSTER」及びその音訳「モンスター」をMONSTERブランドのエナジードリンク(以下「申立人商品」という。)の出所識別標識として使用している。
申立人商品は、2002年に米国でMONSTERブランドの第1号の個別製品「MONSTER ENERGY」を発売後、世界各国における販売も開始し、現在は日本を含む世界130以上の国及び地域で販売中である。
申立人商品には、2002年以降現在まで一貫して、「MONSTER」の文字を基調とする個別商品名(例えば、「MONSTER ENERGY」「MONSTER ASSAULT」「MONSTER KHAOS」「MONSTER M-80」「MONSTER RIPPER」など)が採用されている。また、これらの個別製品の包装容器は同じデザインで統一されており、特徴的な書体で大きく表示した「MONSTER」の文字(甲416)を独立して見る者の目をひきつける態様で顕著に表示している(異議申立書の別紙1及び2。以下、別紙○のように表記する。)。
このように、規則的なネーミング法(すなわち「MONSTER」に他の語を結合する方法)で命名された個別製品名と特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字を顕著に表示した統一的デザインの包装容器を特徴とする申立人商品は、申立人のMONSTERブランドのエナジードリンク事業を拡大し、その成功は経済界で高い評価を受けている(甲2~甲33、甲51~甲58、甲391~甲393)。
国内では、2012年5月の「MONSTER ENERGY」(モンスターエナジー 缶355ml)及び「MONSTER KHAOS」(モンスターカオス 缶355ml)発売以降、現在まで30種類以上(リニューアル商品を含む。)の申立人商品を販売している(別紙1)。
イ 広告宣伝活動
申立人商品に関する広告宣伝活動は、幅広く継続的なものであり、国際的に活躍する多数の有名アスリート・チーム及びイベントに対するスポンサー活動を中核として、ウェブサイト及びプレスリリースによる広告、申立人商品サンプルの配布、大手コンビニエンスストアやイベント主催者と提携した大規模な販売キャンペーン(景品・賞品のプレゼントを含む。)、スポーツイベント等の開催、契約アスリート等の動画・画像の公開、MONSTERブランドのライセンス商品の開発及び販売、ビデオゲーム会社と提携したMONSTERブランドを使用したビデオゲームの開発及び共同販売促進活動の実施など極めて多彩な内容である。こうした広告宣伝活動は、「MONSTER」の文字(特徴的な書体で表示したものを含む。)、爪の図柄と特徴的な書体で表示した「MONSTER」の文字と活字体で表示した「ENERGY」の文字からなるロゴマーク、「MONSTER ENERGY」の文字(以下、これらをあせて「MONSTERブランドマーク」という。)を使用して、本件商標の登録出願日前から継続的かつ頻繁に全国規模で実施されている(別紙3~7)。
また、申立人は、申立人商品の中心的需要者層である10~30代の若い世代(特に男性)に人気が高いモータースポーツ、エクストリームスポーツの分野を中心にスポンサー活動を行うとともに、全16の異なるウェブサイト及びソーシャルメディアのアカウント(別紙9)を開設して、こうした若い世代が多く利用するインターネットメディアによる大規模な情報発信を通じてMONSTERブランドを需要者に強くアピールするための効果的な広告を実施している。
ウ ライセンス商品の輸入差止
需要者におけるMONSTERブランドのライセンス商品の人気の高さに便乗して、海外で製造された申立人の商標権侵害物品が日本の税関で輸入差止される事案が遅くとも平成25年7月から度々発生している(別紙8)。
エ 商標登録によるブランド保護
MONSTERブランドマークについて、申立人は、引用商標をはじめとして、国内外において多数の商標登録を取得している(甲58)。
オ ブランド認知度及び市場占有率
複数の第三者が実施したエナジードリンクに関する市場調査及び消費者アンケート調査によれば、既に2013年時点で申立人商品の国内市場占有率は25%を超えており、一般消費者におけるブランド認知度も第2位であったことが明らかである。
2013年以降も、申立人商品は着実に売上を伸ばしており、若い世代の男性を中心とした従来の主要需要者層に止まらず、美しいカラフルな色使いのボトル缶に大きく目立つ態様で表示された爪の図柄が人目をひきつけ、男性のみでなく女性の間でもMONSTERブランドの認知度を高めてきた。 2018年には、申立人商品の販売実績は1千万ケースに近づき、それまで首位の「レッドブル」を超えて市場占有率トップに立った(甲317等)。
申立人商品は、2018年に国内エナジードリンク市場でトップシェアを獲得後は、首位を独走状態であり、第三者の市場調査では2022年時点における申立人商品の市場占有率は約40%であった。
カ 「MONSTER」「モンスター」の表示で認識されていたこと
上記のような販売実績を通じて、申立人商品は、飲料業界で「モンスター」と称され、「MONSTER」「モンスター」と表示され、「MONSTER(モンスター)」のブランドとして認識されている。
この点に関しては、特許庁の審査においても、「モンスター」は、申立人が飲料等について使用する商標「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」の略称として需要者の間で広く認識されていると認定されている(甲433等)。
キ 小括
以上の事柄に照らせば、本件商標の登録出願時及び査定時には、申立人の製造販売に係るMONSTERブランドのエナジードリンク並びに当該申立人商品に使用される「MONSTER」及びその音訳「モンスター」の文字が申立人の製造販売に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
したがって、申立人商品に使用される「MONSTER(モンスター)」の文字は、申立人商品の出所識別標識として極めて強い出所表示力を有すものであるといえる。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
ア 申立人商品における「UNLEASH THE BEAST!」等の使用
申立人は、2002年に米国で「MONSTER」なるエナジードリンクのブランドを創設し、申立人商品の販売を開始した。申立人商品は2012年から国内での販売も開始し、現在、日本を含む世界130以上の国及び地域で販売されている。
2002年のMONSTERブランド創設時から現在に至るまで、申立人商品には「BEAST」の語を包含するセンテンスからなるスローガン商標(以下「BEASTスローガン商標」という。)が使用されている。
BEASTスローガン商標として最初に採択された「UNLEASH THE BEAST!」は、「野獣を解き放て!」との衝撃的意味を表すフレーズとして経済界の注目を浴び、このような斬新なスローガン商標を導入して展開された申立人のマーケティング戦略に焦点を当てた多数の記事が有名経済誌に掲載された(甲51~甲57)。
現在までに、「UNLEASH THE BEAST!」をはじめとして、「UNLEASH THE ULTRA BEAST!」、「REHAB THE BEAST!」、「PUMP UP THE BEAST!」、「HYDRATE THE BEAST!」、「UNLEASH THE NITRO BEAST!」、UNLEASH THE SALTY BEAST!」、「UNLEASH THE CAFFEINE FREE BEAST!」といった様々なBEASTスローガン商標が申立人商品の個別製品の缶の裏面、製品情報、その他の広告物等に表示され、販売及び広告宣伝されている(甲486等)。
また、申立人のBEASTスローガン商標は、国内は引用商標1及び2として、さらに、諸外国は甲第576号証及び甲第577号証として示すとおり、世界各国で商標登録されている(甲574~甲577)。
申立人は、2012年に国内販売を開始して以降現在までに別紙1に表示の個別製品からなる申立人商品を販売し、そのうち、本件商標の登録出願日まで全19種類(18種類の異なるフレーバー)、本件商標の登録査定日までに全20類種(19種類の異なるフレーバー)を販売した。
また、申立人商品は、2018年以降現在まで国内エナジードリンク市場でトップシェアを独占しており、2022年時点で市場全体の約4割を申立人商品が占めていた(甲448等)。
したがって、本件商標の登録出願時及び登録査定時において申立人商品が取引者、需要者の間で広く認識されていたことは明白である。
そして、申立人商品の個別製品の缶(ボトル)及びその広告宣伝物には、「UNLEASH THE BEAST!」をはじめとする様々なBEASTスローガン商標が2012年の販売開始時から継続的に使用されてきた。
以上の事柄を総合すれば、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の使用に係るBEASTスローガン商標及びこれらに共通して用いられている「BEAST」の文字は、申立人商品の出所識別標識として取引者、需要者の間で広く認識されていたことが明らかである。
イ 出所の混同のおそれ
本件商標の構成文字「獣王BEAST」は、「獣王」(甲579)と「BEAST」(甲578)の2語を結合したものとして容易に認識され、当該構成全体が辞書等に掲載されている成語ではなく一体的な熟語的観念を生じるものではないから、それを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているとはいえないから、簡易迅速を旨とする取引過程では「獣王」と「BEAST」の各文字部分がそれぞれ独立の出所識別標識として機能するとみるべきである。
そうすると、本件商標は、出所識別標識として「BEAST」の文字を包含し、これより、「ピースト」の称呼及び「動物、(鳥・魚に対して)獣、四足獣」の観念(甲578)を生じるから、申立人の使用に係る「BEAST」及び「BEAST」スローガン商標と類似する。
また、本件商標は、「BEAST」の文字に他の文字(獣王)を結合させて構成されているから、申立人の「BEAST」スローガン商標と構造が同一であり、出所識別標識として「BEAST」スローガン商標と極めて似通った印象、記憶、連想を取引者、需要者に与える。
よって、本件商標は、申立人の使用に係る「BEAST」及び「BEAST」スローガン商標と類似性の程度が高い。
さらに、本件商標が使用される本件商標の指定商品は、申立人商品(エナジードリンク)とその原材料、用途、効能、販売場所、需要者層を共通にすることが多いものであり、関連性が極めて密接であり、本件指定商品は、引用商標1の登録に係る指定商品と同一又は類似のものである。
してみると、本件商標がその指定商品に使用された場合、これに接した取引者、需要者は「BEAST」スローガン商標を用いて販売、広告宣伝されて広く認識されている申立人商品を想起、連想し、当該商品が申立人又は申立人と組織的又は経済的な関連を有する者の取り扱いに係るものであると誤信し、その出所について混同を生ずるおそれがあることが明らかである。
そのうえ、本件商標が使用された場合は、申立人商品の出所識別標識として広く認識されているBEASTスローガン商標の出所表示力が希釈化するおそれが高く、本件商標の使用は、申立人商品の信用力及びMONSTERブランドの顧客吸引力にフリーライドするものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標は、社会一般道徳及び公正な取引秩序の維持を旨とする商標法の精神並びに国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(1)BEASTスローガン商標の使用及び周知性
ア 申立人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査(インターネット情報、新聞記事情報など。)によれば、次のとおりである。
(ア)申立人は、米国の飲料メーカーであって、我が国においてはアサヒ飲料株式会社を通じて2012年5月にエナジードリンク「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」及び「MONSTER KHAOS(モンスターカオス)」の販売を開始し、その後、2024年まで毎年、新製品やリニューアル商品を25種類以上販売した(甲7等)。
(イ)申立人のウェブサイト(日本語版)において、申立人商品(容器)の写真が掲載されており、その写真の横にMONSTERロゴ及びそのロゴの下に引用商標2と思われる商標が掲載されており、また、商品の製品情報の最後に「Unleash The Beast!」の文字が記載されている(甲486)。
なお、同ウェブサイトの掲載日は確認できないが、ウェブサイトの印刷日と思われる「2013」(合議体注:2013年は確認できるが、月日は不鮮明で確認できない。)の記載が確認できることから、2013年に印刷されたものといえる。
また、同ウェブサイト(日本語版)に、複数のページで商品の製品情報の最後に「Unleash The Beast!」(「!」の無いものを含む。)の文字が記載されており(甲499~甲502)、ほかに「Unleash The Ultra Beast」の文字が記載されているものも存在する(甲503)。
そして、これらの掲載日は確認できないが、各ページの左上に印刷日と思われる「2019/5/13」があることから、2019年5月13日に印刷されたものといえる。
さらに、同ウェブサイト(日本語版)で申立人商品「モンスターエナジー」、「モンスターエナジーM3」、「モンスターパイプラインパンチ」、「モンスターエナジーボトル缶500ML」、「モンスターマンゴーロコ」、「モンスタースーパーコーラ」、「モンスターウルトラ」の紹介ページにおいて、商品の紹介文に「UNLEASH THE BEAST!」又は「Unleash The Beast!」の文字が記載されている(甲538~甲544)。
なお、これら記事のウェブサイトの掲載日は確認できないが、各ページの左上に印刷日と思われる「2023/6/26」又は「2023/6/27」があることから、2023年6月26日又は2023年6月27日に印刷されたものといえる。
(ウ)申立人のウェブサイト(英語版)において、申立人商品(容器)の写真とともに、商品の製品情報の最後に「Unleash The Beast」、「Unleash The Beast!」(「!」の無いものを含む。)、「Rehab The Beast!」、「Unleash The Ultra Beast!」、「Pump Up The Beast!」、「Hydrate The Beast!」及び「Unleash The Nitro Beast!」(引用商標1)の文字が記載されている(甲504~甲532)。
なお、同ウェブサイトの掲載日は確認できないが、各ページの左上に印刷日と思われる「2019/05/13」又は「2019/05/14」の記載が確認できることから、2019年5月13日又は2019年5月14日に印刷されたものといえる。
(エ)PRTIMESの記事において、モンスタエナジージャパン合同会社(決定注:申立人の関連会社と認める。)が2021年3月30日に配信した記事に「モンスタースーパーコーラボトル缶500ml」の商品が紹介され、記事中に4枚の写真があり、右下の写真に商品の容器とともに「UNLEASH」、「THE」、「BEAST!」の文字が三段に記載されている(甲533)。
また、PRTIMESの記事において、モンスタエナジージャパン合同会社が2022年2月28日、同年4月12日の11:00、同日の15:00、同月21日、2023年3月10日、同年4月11日、同年5月29日、同年6月19日、同年7月4日、同年9月11日、同年10月3日、2024年5月14日及び同月22日に配信した記事に「商品概要」の紹介文の最下部に「Unleash The Beast!」が記載されている(甲534~甲537、甲547、甲551、甲553、甲554、甲563、甲566、甲572、甲573)。
(オ)申立人は、申立人商品の容器とともに「Unleash The Beast!」、「PUMP UP THE BEAST!」、「Unleash The Caffeine Free Beast!」の文字が使用されている画像及び申立人商品の容器(缶)に「Rehab The Beast!」、「Unleash The Ultra Beast!」、「Pump Up The Beast!」及び「Unleash The Beast!」の文字が記載されている画像を提出している(甲488~甲497)。
なお、当該容器に掲載の情報は全て英語で記載されている。
(カ)2004年ないし2006年において、申立人がBEASTスローガン商標を導入して展開されたマーケティング戦略に焦点をあてた記事が米国の経済誌に掲載された(甲51~甲57)。
(キ)引用商標を含むBEASTの文字を含むBEASTスローガン商標は、日本を含む多数の国で商標登録されている(甲574~甲577)。
イ 上記アからすれば、以下のとおり判断できる。
申立人、モンスタエナジージャパン合同会社及びアサヒ飲料株式会社(以下、三者をあわせて「申立人等」という。)は、我が国で2012年5月頃から「MONSTER ENERGY(モンスターエナジー)」を始めとして、多数の種類の申立人商品を販売してきた。
そして、我が国において、BEASTスローガン商標は、上記ア(イ)によれば、遅くとも2013年頃から商品の紹介に使用されていたと推認することができるものであり、その後、申立人のウェブサイト(日本語版)及びPRTIMESの記事から、現在に至るまで継続的に使用されているものと推認できる。
そこで、BEASTスローガン商標の使用についてみるに、申立人のウェブサイトで製品情報に使用される場合には、その多くは他の製品情報の文字と比較し文字の太さは強調されているとしても、同程度の大きさで、製品情報の最後に記載されているものであり、PRTIMESの記事においても製品概要の紹介文の最後に記載されているにすぎないものであり、いずれの使用においてもそれほど目立つ態様で表されたものではないことから、ウェブサイトの情報及びPRTIMESの記事に接する者は、当該紹介されている商品の名称等に強い注意を引くものであり、その中のBEASTスローガン商標に着目し、該商標を強く記憶にとどめるものとはいい難いものである。
また、申立人のウェブサイトにおける、BEASTスローガン商標の使用は、英語版におけるものが多く、これらの証拠は我が国の需要者に向けたものとはいえず、申立人商品(容器)への使用についても、全て英語で記載されているものであるから、我が国の需要者に向けて製造されたものとはいい難く、我が国で流通している商品ということはできない。
そのほか、アメリカの雑誌の掲載記事は、申立人のマーケティング戦略に焦点をあてた一つとして掲載されているにすぎず、その記事の数も多いものといえず、その掲載日は2004年ないし2006年と古い記事のものに限られるばかりか、そもそもアメリカの雑誌であるので我が国の需要者が目にするものではない。
さらに、諸外国において申立人がBEASTの文字を含む商標の商標登録を有することが我が国おける需要者の間に広く認識されている商標であることに直接的に結びつくものではない。
そうすると、申立人等は、申立人商品を紹介する際にBEASTスローガン商標を使用していることが認められるとしても、申立人が提出した証拠及び同人の主張からすれば、BEASTスローガン商標は申立人の取り扱いに係る商品を表すものとして、需要者の間に広く認識されている商標とはいえないものである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性
ア BEASTスローガン商標の周知性
上記(1)イのとおり、引用商標を含むBEASTスローガン商標は、申立人の業務に係る商品(エナジードリンク)を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものとは認められない。
イ 本件商標とBEASTスローガン商標(引用商標を含む。)の類似性の程度
(ア)本件商標
本件商標は、上記1のとおり、「獣王BEAST」の文字を標準文字で表してなるところ、「獣王」と「BEAST」の文字の2つの単語からなると容易に認識できるものであり、それを構成する文字は、同じ書体及び大きさで、文字の間隔を等しくし、まとまりよく一体的に表され、その構成中「獣王」の文字は、「獣の中の王にあたるもの。獅子(しし)をいう。」(甲579:(コトバンク)精選版 日本語大辞典 株式会社小学館)を意味し、また、「BEAST」の文字は、「動物、獣、四足獣」(甲578:新英和大辞典第4版 株式会社研究社)を意味するものである。
そして、本件商標は、それを構成する文字の語義が組み合わさって特定の意味合いを生じるとはいえないもので、「獣王BEAST」の文字全体より特定の意味合いを有する事情も認められないことから、特定の意味合いを有しない造語といえるものである。
そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して、「ジュウオウビースト」の称呼を生じ、特定の意味合いを有しない造語といえるものであるから、特定の観念を生じないものである。
(イ)引用商標
a 引用商標1
引用商標1は、上記2(1)のとおり、「UNLEASH THE NITRO BEAST!」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「UNLEASH」の文字は、「<感情・攻撃などを>解き放つ」(新英和第7版・和英第5版中辞典 株式会社研究社)、「THE」は「英語の定冠詞」、「NITRO」の文字は、「ニトロ基をもつ意。ニトログリセリンの俗称。」(広辞苑第7版 株式会社岩波書店)意味するもの及び「BEAST」の文字は、上記(ア)のとおり、「動物、獣、四足獣」を意味するものである。
そして、引用商標1は、それを構成する各文字の語義より「ニトロの動物(獣、四足獣)を解き放せ」ほどの意味合いを生じるものである。
そうすると、引用商標1は、構成文字に相応し「アンリーシュザニトロビースト」の称呼を生じ、「ニトロの動物(獣、四足獣)を解き放せ」ほどの観念を生じるものである。
b 引用商標2
引用商標2は、別掲のとおり、「Unleash」及び「The Beast!」も文字を右上がりで斜めに二段書きした構成からなるところ、その構成中「Unleash」、「The」及び「Beast」の文字は、それぞれ上記aと同様に「<感情・攻撃などを>解き放つ」、「英語の定冠詞」及び「動物、獣、四足獣」を意味する成語である。
そして、引用商標2は、それを構成する各文字の語義より「動物(獣、四足獣)を解き放せ」ほどの意味合いを生じるものである。
そうすると、引用商標2は、構成文字に相応し「アンリーシュザビースト」の称呼を生じ、「動物(獣、四足獣)を解き放せ」ほどの観念を生じるものである。
(ウ)BEASTスローガン商標「Unleash The Ultra Beast」
申立人等による我が国における引用商標以外で使用が認められるBEASTスローガン商標は、上記(1)ア(イ)のとおり、「Unleash The Ultra Beast」であるところ、該文字は、引用商標2の「The」と「Beast」の文字の間に「Ultra」の文字を挿入した構成からなるものであり、該文字は「極端な、過激な、過度の」等の意味を有する語(新英和中辞典(第7版)株式会社研究社)で、比較的慣れ親しまれた英語であり、「アルトラ」と発音される単語であるものの、我が国では「ウルトラ」と一般に称呼されるといえるものである。
そうすると、BEASTスローガン商標「Unleash The Ultra Beast」は、その構成文字に相応し「アンリーシュザウルトラビースト」の称呼を生じ、「過激な動物(獣、四足獣)を解き放せ」ほどの意味合いの観念を生じるというのが相当である。
(エ)本件商標と引用商標及びBEASTスローガン商標の類似性の程度
a 本件商標と引用商標1との比較
本件商標と引用商標1とを比較をすると、両者は、外観において、「BEAST」の文字部分を共通にするものの「獣王」と「UNLEASH THE NITRO」及び「!」の差異があることから明確に区別できるものであり、称呼において、「ビースト」の音を共通にするものの「ジュウオウ」と「アンリーシュザニトロ」の音の有無の差異があることから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは明瞭に聴別できるものであり、観念において、本件商標は特定の観念を生じないものに対して引用商標1は、「ニトロの動物(獣、四足獣)を解き放せ」の観念を生じるから相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標1は、外観、称呼、観念のいずれの点において相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
b 本件商標と引用商標2との比較
本件商標と引用商標2とを比較すると、両者は、外観において、「BEAST(Beast)」の文字部分のつづりを共通にするものの「獣王」と「Unleash」、「the」及び「!」の差異があることから明確に区別できるものであり、称呼において、「ビースト」の音を共通にするものの「ジュウオウ」と「アンリーシュザ」の音の有無の差異があることから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは明瞭に聴別できるものであり、観念において、本件商標は特定の観念を生じないものに対して引用商標1は、「動物(獣、四足獣)を解き放せ」の観念を生じるから相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標2は、外観、称呼、観念のいずれの点において相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
c 本件商標とBEASTスローガン商標「Unleash The Ultra BEAST!」との比較
本件商標とBEASTスローガン商標「Unleash The Ultra BEAST!」とを比較すると、両者は、外観において、「BEAST」の文字部分を共通にするものの「獣王」と「Unleash The Ultra」の差異があることから明確に区別できるものであり、称呼において、「ビースト」の音を共通にするものの「ジュウオウ」と「アンリーシュザウルトラ」の音の有無の差異があることから、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは明瞭に聴別できるものであり、観念において、本件商標は特定の観念を生じないものに対してBEASTスローガン商標は、「過激な動物(獣、四足獣)を解き放せ」の観念を生じるから相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と上記BEASTスローガン商標は、外観、称呼、観念のいずれの点において相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標であるから、類似性の程度は低いものである
ウ 引用商標及びBEASTスローガン商標「Unleash The Ultra Beast」の独創性の程度
引用商標及びBEASTスローガン商標「Unleash The Ultra Beast」は、上記イ(イ)及び(ウ)のとおり、その商標を構成する文字は、それぞれ意味を有する成語であるとしても、構成文字全体では辞書等に掲載がないものであることからすれば、独創性は高いといえる。
エ 混同のおそれ
引用商標は、上記ウのとおり、その独創性の程度は高いといえるものであるとしても、上記(1)イのとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものとは認められず、上記イ(エ)a及びbのとおり、本件商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
また、BEASTスローガン商標「Unleash The Ultra Beast」は、上記エのとおり、その独創性の程度は高いといえるものであるとしても、上記(1)イのとおり、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものとは認められず、上記イ(エ)cのとおり、本件商標と相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標及びBEASTスローガン商標「Unleash The Ultra Beast」を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人等)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
オ 申立人の主張
(ア)申立人は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の使用に係るBEASTスローガン商標及びこれらに共通して用いられている「BEAST」の文字は、申立人商品の出所識別標識として取引者、需要者の間で広く認識されていたことが明らかである旨主張している。
しかしながら、BEASTスローガン商標(引用商標を含む。)が申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものとはいえないものであることは、上記(1)イのとおりである。
(イ)申立人は、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、申立人の製造販売に係るMONSTERブランドのエナジードリンク並びに当該申立人商品に使用される「MONSTER」及びその音訳「モンスター」の文字が申立人の製造販売に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間で広く認識されていたことが明らかであり、申立人商品に使用される「MONSTER(モンスター)」の文字は、申立人商品の出所識別標識として極めて強い出所表示力を有すものであるといえる旨主張している。
しかしながら、本件商標はその構成中に「MONSTER(モンスター)」の文字を含むものではないことからすれば、申立人の「MONSTER(モンスター)」の文字よりなる商標とは、商標の構成態様は明らかに異なるものであるばかりでなく、申立人の「MONSTER(モンスター)」の文字よりなる商標の存在が、本件商標の登録の可否の判断に影響を与えるものではない。
(ウ)以上のとおり、申立人のかかる主張は採用できない。
カ 小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性
本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字ではなく、商標権者がこれを本件商標の指定商品に使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合や国際信義に反する場合に該当するという事情を見いだすこともできない。
そして、本件商標を登録出願するにあたり、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合に該当するという事情を見いだすこともできない。
したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ではないことから、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(4)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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