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Trademark Appeal Case

要部抽出と称呼の類似性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900072
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6887856号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6887856号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、令和6年6月26日に登録出願、第9類「3D眼鏡,眼鏡,コンピュータ周辺機器,モニター付監視装置(医療用のものを除く。),ポータブルスピーカー,マイクロホン,ヘッドセット,蓄電池用充電器,プローブ(「医療用機械器具」に属するものを除く。),風速計,乗物用走行距離記録計,測定用具,映写装置,写真撮影用フラッシュ,カメラ用三脚,映画用撮影機,双眼鏡,着用可能なアクティビティトラッカー,全地球測位装置(GPS),恒湿器」を指定商品として、同7年1月9日に登録査定され、同月21日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立人が引用する商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する登録第5963447号商標(以下「引用商標」という。)は、「NAUTO」の欧文字を横書きしてなり、2016年12月8日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条(商標法第9条の2)による優先権を主張し、平成29年2月7日に登録出願、第9類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年7月14日に設定登録され、その商標権は現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議申立ての理由

申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。)を提出した。

以下、証拠の表記に当たっては、「甲第○号証」を「甲○」のように簡略して記載する。

1 本件商標について

本件商標は、「NautoUS」の欧文字を横書きしてなり、1文字目の「N」を大文字で、それに続く「auto」を小文字でそれぞれ表し、その後唐突に、大文字により「US」の2字を続けている構成であるから、視覚上、「Nauto」の文字部分と「US」の文字部分とが容易に分離して観察される。このように大文字と小文字とを使い分けて表してなる構成において、あえて、「NautoUS」の文字が専ら不可分一体のものとしてのみ認識されるとみるべき特段の事情はない。

したがって、本件商標は、「Nauto」と「US」との2つの語を結合してなる結合商標である。

しかるに、本件商標の構成中の「Nauto」の文字は、一般的な辞書等に掲載されている成語や外来語ではなく、「Nauto」の文字部分からは他の商標と対比すべき特定の観念は生じない。一般に、このような造語商標に接した取引者、需要者は、親しまれた英語読み風又はローマ字読み風に称呼するのが一般的であるところ、「Nauto」の文字部分からは、その構成文字に相応して「ナウト」の称呼が生じる。一方、本件商標の構成中の大文字で表された「US」の文字は、欧文字2字からなるところ、当該文字部分は、そもそも、商品の記号、符号として使用されることが多いもので、極めて簡単かつありふれたものとして一般的に自他識別力がないとされる欧文字2字の結合にすぎないということに加え、「アメリカ合衆国」を意味する「United States」の略語(甲3)として、我が国をはじめ世界的に親しまれ、広く認識されているものであるから、その指定商品がアメリカ合衆国において製造又は販売される商品であることを認識させるにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を有しないか、極めて弱い部分である。

そうすると、本件商標においては、その構成中の「Nauto」の文字部分が、強く支配的な印象を与えるものであって、独立して自他商品の識別標識としての機能を有するものであり、当該文字部分を要部として抽出し、他人の商標と比較することも許されるものである。

したがって、本件商標は、構成全体から生じる「ナウトユウエス」の称呼のほかに、構成中の「Nauto」の文字部分に相応して「ナウト」の称呼も生じ、本件商標からは何ら特定の観念を生じない。

2 引用商標について

引用商標は、「NAUTO」の欧文字からなる商標であり、当該文字は、一般的な辞書等に掲載されている成語や外来語ではなく、「NAUTO」の文字からは他の商標と対比すべき特定の観念は生じない。一般に、このような造語商標に接した取引者、需要者は、親しまれた英語読み風又はローマ字読み風に称呼するのが一般的であるところ、「NAUTO」の文字部分からは、その構成文字に相応して「ナウト」の称呼が生じる。

したがって、引用商標は、「ナウト」の称呼を生じ、何ら特定の観念を生じないものである。

3 引用商標の周知著名性について

引用商標は、申立人が開発した、車両向けのAI(人工知能)搭載型のドライブレコーダーを中心とする安全運行管理プラットフォーム(以下「申立人製品」という。)について使用され、本件商標の出願日である2024年6月26日までに、我が国及び世界において広く知られるに至っていた周知商標である(甲4~甲22)。

申立人は、米国シリコンバレーに本社を置くAI(人工知能)開発企業であり、脇見運転をリアルタイムで検知できるシステムを2017年に世界で初めて実用化して以来、AIを活用した車両の安全運行管理のパイオニアとして業界をけん引している(甲4)。申立人は、2015年に米国シリコンバレーで創業し、2017年には日本法人であるNauto Japan合同会社(以下「NautoJapan社」という。)を設立、2018年に我が国市場に本格的に参入した(甲5、甲6)。

従来、普及する一般的なドライブレコーダーは、録画機能や事故発生時の自動連絡機能などを搭載し、事故発生時の対応がその主な目的であるところ、申立人製品は、一般的なドライブレコーダーの機能に加え、平常時のドライバーの顔の角度や視線、及びその他の細かい動作を検知して、脇見運転や居眠り運転、スマートフォンを操作しながらの運転など、交通事故につながる可能性のある行動を瞬時に判断し、ドライバーに警告音を鳴らすことによって事故を未然に防ぐことを可能とするものである(甲7~甲13)。申立人製品を導入した車両から集められたデータに基づきAIが学習した走行距離は、2025年2月時点で46億キロメートル分にも及び、その豊富な実走行データに基づく深層学習で進化し続けるAIにより、危険運転につながる行動をより短時間で正確に検知することを可能としている(甲7、8)。

我が国においては、物流企業やカーリース企業、営業車を活用する不動産、製薬といった業界を中心に、700社以上もの企業が自社のトラックや営業車に申立人製品を導入しており、その稼働台数は数万台に上る(甲4、甲11)。NautoJapan社を設立した2017年から2025年3月までの間における申立人製品の総売上高は、数10億円に達する。

また、申立人は、「NAUTO」の欧文字について、我が国以外にも、米国(登録第5425328号、甲19)、欧州連合(登録第016315954号、甲20)、英国(登録第UK00916315954号、甲21)及び中国(登録第24442612号、甲22)においても商標権を有しており、各国における「NAUTO」商標の保護に努めている。

以上のことから、本件商標の登録出願日には、「NAUTO」は、申立人が開発し、我が国を始めとする世界各国で販売されている車両向けのAI(人工知能)搭載型のドライブレコーダーを中心とする安全運行管理プラットフォームの名称として、我が国の取引者及び需要者の間において広く知られており、周知商標としての地位を獲得しており、本件商標の登録査定時においても継続してその周知性を維持していたと推認できる。

4 本件商標と引用商標の類似性について

本件商標及び引用商標は、上記1及び2記載のとおりの構成からなるところ、両者の全体の外観は、本件商標の末尾の「US」の欧文字の有無において相違する。しかしながら、本件商標の要部である「Nauto」の文字と、引用商標の「NAUTO」の文字は、そのつづりを同じくするものであるから、本件商標と引用商標は、外観において近似する印象を与えるものである。

また、本件商標と引用商標は、「ナウト」の称呼を同一にするものである。

そして、本件商標と引用商標は、いずれも特定の観念を生じない造語であるため、観念上比較することができないが、観念上の相違点によって両者を識別することもできない。

そうすると、本件商標と引用商標は、外観上近似する印象を与えるものであり、称呼を同一にし、観念においても、かれこれ識別できないものであるから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に勘案すると、両商標は、互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきものである。

5 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類似性について

本件商標の指定商品中、第9類「3D眼鏡,眼鏡,コンピュータ周辺機器,モニター付監視装置(医療用のものを除く。),ポータブルスピーカー,マイクロホン,ヘッドセット,蓄電池用充電器,プローブ(「医療用機械器具」に属するものを除く。),風速計,乗物用走行距離記録計,測定用具,映写装置,写真撮影用フラッシュ,カメラ用三脚,映画用撮影機,双眼鏡,着用可能なアクティビティトラッカー,全地球測位装置(GPS),恒湿器」は、引用商標の指定商品及び指定役務中、第9類の全指定商品と類似群コードを共通にするものである。

したがって、本件商標の指定商品は、引用商標の第9類の指定商品と同一又は類似する。

6 本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当することについて

本件商標及び引用商標は、上記4で述べたとおり、外観上近似する印象を与えるものであり、称呼を同一にし、観念においてもかれこれ識別できないものであるから、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合的に勘案すると、両商標は、互いに紛れるおそれのある類似の商標というべきものである。

また、上記5で述べたとおり、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品である。

以上より、本件商標と引用商標とは、類似する商標であって、かつ、その指定商品も同一又は類似のものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。

7 本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することについて

仮に、本件商標が、商標法第4条第1項第11号に該当しない場合であっても、「NAUTO」の欧文字が、申立人が製造・販売するAI搭載型ドライブレコーダーの商標として高い周知性を獲得していたことからすれば、本件商標は、他人たる申立人の業務に係る商品及び役務と混同を生じるおそれがある商標であるといわざるを得ず、同項第15号に該当する。

(1)本件商標の使用によって、出所混同の生ずるおそれがあること

商品の出所混同のおそれの判断は、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準に、商品間の関連性、商標自体の類似性の程度、他人の商標の著名性の程度、著名商標の独創性の程度、取引者及び需要者の共通性、並びに実際の具体的取引の実情を勘案した上で、総合的に判断されるべきものである。

この点を本件商標と引用商標について検討すると、まず、引用商標の周知著名性については、上記3のとおり、申立人が開発し、我が国をはじめとする世界各国で販売されている車両向けのAI(人工知能)搭載型のドライブレコーダーを中心とする安全運行管理プラットフォームの名称として高い周知性を有しているものである。そして、審査基準上、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似する。

引用商標は、既成の語ではなく、造語であり、申立人が提供する車両運行管理プラットフォームの商品名としての他に、「NAUTO」の語が一般的に使用されているという事実もないから、その独創性の程度は極めて高い。

さらに、本件商標と引用商標のそれぞれの指定商品の分野が共通し、審査基準上も互いに類似する商品として取り扱われている実情に鑑みると、両商標の指定商品は、その用途又は目的における関連性が極めて高く、またその取引者・需要者も共通にするものである。

以上より、両商標の指定商品の取引者及び需要者において、普通に払われる注意力を基準に、商品間の関連性、商標自体の類似性の程度、引用商標の著名性の程度、引用商標の独創性の程度、取引者及び需要者の共通性、並びに実際の具体的取引の実情を勘案すると、本件商標がその指定商品に使用された場合、本件商標に接した取引者・需要者は、あたかも申立人又は申立人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがある。

さらにいえば、申立人が米国シリコンバレーに本社を置くAI(人工知能)開発企業であり、「NAUTO」が米国企業である申立人によって開発、販売されている製品の名称であることからすれば、「Nauto」に米国を意味する「US」の文字を結合することは、本件商標と引用商標とを識別することにはならず、むしろ「米国のNauto」といった観念を直感させることによって、混同を生じるおそれはより深刻なものになる。

また、「NAUTO」が申立人製品の商品名又は商標として周知著名であり、本件商標は、これに自他商品識別力のない「US」の文字を結合したにすぎないものであることからすれば、本件商標が、審査基準にいう「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標」に当たることも明らかであるから、その外観構成がまとまりよく一体に表されているものであるとしても、商品等の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して取り扱うべきである。

よって、本件商標に接した取引者・需要者は、本件商標が使用された商品が、あたかも申立人又は申立人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。

また、最高裁判所における判決例(最高裁第三小法廷平成10年(行ヒ)第85号審決取消請求事件)において、商標法第4条第1項第15号の趣旨から、フリーライド及びダイリューションを引き起こすような広義の混同を生ずる商標をも同項第15号に該当すべきであると判示されている。

本件においても、申立人の著名な引用商標と相紛れるおそれのある本件商標が、申立人の著名表示に化体した高い名声及び信用にフリーライドすることによって、ひいては申立人の名声、信用及び評判の棄損が引き起こされる蓋然性は高いといえるから、引用商標に対する希釈化を防止し、その自他商品・役務識別機能を保護すべき必然性は高いといえる。そして、本条の趣旨から考えても、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。

以上に述べたとおり、申立人の引用商標が我が国をはじめ世界中で高い周知性を獲得していること、引用商標の指定商品に類似する商品を本件商標が指定していること等の実情に照らし、両商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断した場合において、本件商標に接した取引者・需要者は、あたかも申立人又は申立人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 当審の判断

1 引用商標の周知、著名性について

(1)申立人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、次のとおりである。

ア 申立人は、2015年にアメリカ合衆国のシリコンバレーで創業し、同地に本社を置くAI(人工知能)開発企業であり、脇見運転をリアルタイムで検知できるシステムを2017年に世界で初めて実用化し(甲4、甲5)、同年6月には日本国内での事業展開のためNautoJapan社を設立(甲6)、2018年に、我が国の「法人向け人工知能(AI)搭載型ドライブレコーダー」の市場に本格的に参入したとされる(甲4~甲6、申立人の主張)。

イ 申立人製品は、同人自身が開発した、「車両向けのAI(人工知能)搭載型のドライブレコーダーを中心とする安全運行管理プラットフォーム」である旨、申立人が述べているが、同人の提出した証拠によると、申立人の日本法人の公式ウェブサイト(甲4、甲6)及び申立人の日本法人が発行するパンフレット(甲7、甲8)には、図形の右側に「nauto」の文字(甲4の1頁左上部)、「AI搭載安全運行管理プラットフォーム「ナウト」」(甲4の1頁中央部)、「ナウトのAI搭載型ドライブレコーダーだからできること」(甲4の3頁)、「AI安全運行管理のパイオニアNautoが、日本の自動車社会に変革を Nauto(ナウト)は、米シリコンバレーに本社を置くAI(人工知能)開発企業です。」(甲4の5頁)、「国内700社以上がAI搭載型の安全運行管理プラットフォーム「ナウト」を導入し、ドライバーの運転習慣の改善や事故削減を実現しています。」(甲4の8頁)、「事業内容 安全運行管理プラットフォーム「ナウト」の開発、製造、販売、サポート」(甲6の4頁)、「AI搭載安全運行管理プラットフォーム「ナウト」」(甲7の1葉目)、「nauto」(甲8の1葉目)など、「Nauto(nauto)」又は「ナウト」の文字については使用されているが、引用商標と同じ大文字つづりの「NAUTO」の欧文字については、申立人の日本法人の公式ウェブサイト及びパンフレットにおいては確認できなかった。

ウ 申立人及び申立人製品に関する記事が、次のとおり、新聞やウェブサイトにおいて掲載されている。

(ア)日刊工業新聞(2018年8月6日発行)には、「米ナウト、日本参入」の見出しの下、「米ナウト(カリフォルニア州)が6日、日本市場に参入する。オリックス自動車(東京都港区)と組み、法人向け人口知能(AI)搭載型ドライブレコーダーの販売・サービスを始める。」の記載がある(甲5)。

(イ)FNNプライムオンライン(2024年1月9日)には、「眠気も検知する!?Nauto JapanのAIドラレコは事故予防から運転習慣の改善までできる」の見出しの下、申立人日本法人社長のインタビュー記事が掲載されている(甲9)。

(ウ)産経ニュースのウェブサイトには、「ドラレコが眠気、ながらスマホまで検知 AIの活用で事故予防の先行くNautoのソリューション」の見出しの下、申立人日本法人社長のインタビュー記事が掲載されている(甲10)。

(エ)NEWS PICKSのウェブサイト(申立人主張:2019年3月29日)には、「この3社、「ドラレコ」で何を仕掛ける?/ソフトバンク×Nauto×オリックス自動車」の見出しの下、「もはや「ドライブレコーダー」ではない。次代のドライバー安全システムの正体」の記載がある(甲12)。

(オ)LOGISTICS TODAYのウェブサイト(2021年5月21日)には、「鴻池運輸、全トラックにナウトのAIドラレコ導入へ」の見出しの下、「鴻池運輸は21日、同社グループが保有するすべてのトラックと業務連絡車の計2460台に、米国ナウト社製のAI搭載通信型ドライブレコーダーの導入を進めていることを明らかにした。」の記載がある(甲13)。

(カ)産経新聞(2021年7月16日 東京朝刊28ページ)には、「最新ドラレコ 脇見や居眠りをAIが警告 事故時にはリポート作成」の見出しの下、「「AI企業 ナウト」が開発したドライブレコーダーは、ドライバーが2・5秒以上脇見運転すると、車内を撮影し、ドライブレコーダーが異常を検知、音で知らせる。」の記載がある(甲14)。

(キ)西日本新聞(申立人主張:2021年8月4日 夕刊)には、「脇見、居眠り AIが警告」の見出しの下、「開発したのは米AI企業「ナウト」。日本でも社用車などに導入が進む。」の記載がある(甲15)。

(ク)電子デバイス産業新聞(2023年10月12日)には、「ナウト 居眠り防止を強化 警告機能を追加」の見出しの下、「米ナウトの日本法人である・・・は、販売中のAI搭載安全運行管理プラットフォーム「ナウト」のソフトウエアを9月下旬より順次アップデートし・・・」の記載がある(甲16)。

(ケ)大阪読売新聞(2024年3月24日 朝刊37ページ)には、「ながら運転 再び 厳罰化5年 緩む意識 画面通知の利用 影響」の見出しの下、「「ナウトジャパン」・・・が開発したドライブレコーダーは搭載したAIの画像認識技術で・・・」の記載がある(甲17)。

エ 申立人は、「NAUTO」の欧文字について、我が国以外にも、米国(甲19)、欧州連合(甲20)、英国(甲21)及び中国(甲22)においても商標権を有している。

(2)判断

上記(1)からすると、申立人は、アメリカ合衆国シリコンバレー地区に本社を置くAI(人工知能)開発企業であって、我が国においては、NautoJapan社が、2018年から国内事業を展開しており、本件商標の登録出願前からNautoJapan社により、「AI搭載通信型ドライブレコーダー」及び「AI搭載安全運行管理プラットフォーム」を開発販売していることが認められる。

また、申立人製品は、我が国において、物流企業やカーリース企業、営業車を活用する企業を中心に、700社以上もの企業が自社のトラックや営業車に申立人製品を導入しており、その稼働台数は数万台になることがうかがえる。(甲4、甲11)

そして、申立人製品の総売上高は、2017年から2025年3月までの間において、数10億円に達するとされるが、申立人製品を導入している企業及びその企業が当該製品を設置した当該企業所有に係る自動車(トラック等)が一定程度あるとされていることから、申立人製品についての一定程度の売上げがあったことについてうかがえるものの、当該金額を裏付ける証拠の提出が認められず、申立人製品の売上高は不明である。

さらには、申立人提出の証拠からは、「nauto」又は「ナウト」の文字が、申立人又はNautoJapan社(以下、両者をまとめて「申立人ら」という場合がある。)の名称の略称として使用されている記事、あるいは、申立人が開発販売している「AI搭載通信型ドライブレコーダー」又は「AI搭載安全運行管理プラットフォーム」に使用されている記事がそれぞれあることから、いずれの使用を持って周知に至っているのかを判断することができない。

また、申立人の提出に係る証拠からは、引用商標の周知性を判断するための、我が国における申立人製品の販売数、売上高、市場シェア等の販売実績並びに宣伝広告の期間及び規模等の広告実績を確認できる客観的な証拠の提出を確認することができないから、我が国における引用商標の周知性の程度を推し量ることはできない。

その他、申立人の提出に係る証拠をみても、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人製品を表示するものとして、又は申立人らの略称として、我が国の取引者、需要者の間で、広く認識されていたと認めるに足りる事実は見いだせない。

(3)そうすると、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人製品に使用されていたことはうかがえるものの、申立人製品を表示するもの、又は申立人及び申立人の日本法人の略称として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。

2 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標

本件商標は、別掲のとおり、「NautoUS」の欧文字を太字で横書きしてなるところ、その構成は、語頭の「N」及び末尾の「US」の欧文字を大文字で、中間部の「auto」の欧文字を小文字で表しており、文字の間隔を狭め、全体として外観上まとまりよく一体的にバランスよく構成されているものであり、当該文字は、一般の辞書等に載録のないものであるから、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として理解されるものである。

また、特定の語義を有しない欧文字からなる商標については、我が国において広く親しまれているローマ字読み又は英語風の発音をもって称呼されるのが一般的といえる(例えば、「大型の乗合自動車」を意味する「バス【bus】」、「加えること」を意味する「プラス【plus】」、「人や動植物の病原体。」等を意味する「ウイルス【virus】」「ギリシア神話の最高神。」等を意味する「ゼウス【Zeus】」等。いずれも「広辞苑 第7版」(株式会社岩波書店)より。)から、「NautoUS」部分からは「ナウトウス」、「ナウトアス」の称呼を生じるものとみるのが相当であって、当該称呼は、格別冗長なものではなく、無理なく一連に称呼し得るものである。

さらに、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人製品を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものであり、他に本件商標の構成中「Nauto」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りる事情も見いだせず、その構成中「US」の文字部分が、本件商標の指定商品との関係において、直ちに商品の品質、種別等を表すものとして自他商品の出所識別標識としての機能を欠くというべき事情はない。

してみれば、本件商標の上記構成からすれば、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「US」の欧文字を捨象し、その構成中の「Nauto」の文字部分のみに着目するというより、むしろ「NautoUS」の文字全体をもって、特定の観念を生じない一体不可分の造語を表したものとして認識し、把握するというのが自然である。

したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して「ナウトアス」又は「ナウトウス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。

(2)引用商標

引用商標は、「NAUTO」の欧文字を横書きしてなるところ、当該文字は、辞書類に載録された既成語ではないから、我が国において親しまれた英語読み又はローマ字読みに倣って発音されるとみるのが相当である。

そうすると、本件商標は、その構成文字に相応して「ナウト」の称呼を生じ、当該文字からは、特定の観念を生じないものと認められる。

(3)本件商標と引用商標の類否

本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、7文字と5文字という比較的少ない文字数での「NAUTO(Nauto)」の欧文字のつづりを共通にするとしても、語尾部の「US」の欧文字の有無の差異及び中間部の「AUTO(auto)」の大文字と小文字の差異を有することから、両者は、明確に区別し得るものである。

また、本件商標から生じる「ナウトアス」又は「ナウトウス」の称呼と引用商標から生じる「ナウト」の称呼を比較すると、いずれも5音又は3音からなる音構成の中で語尾における「アス」又は「ウス」の音の有無の差異を有するものであって、比較的短い音構成においてこの差異が両称呼全体の語調語感に及ぼす影響は大きく、両者は、それぞれ一連に称呼しても、聞き誤るおそれのないものである。

そして、観念においては、本件商標及び引用商標ともに、特定の観念を生じないものであるから、両者は、観念において比較することができない。

(4)小括

以上によれば、本件商標と引用商標とは、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標であるというべきものである。

したがって、本件商標と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第15号該当性について

上記1のとおり、引用商標は、申立人製品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたと認めることができないものである。

また、本件商標と引用商標とは、上記2のとおり、非類似の商標であるから、類似性の程度は低いものである。

そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、これに接する取引者、需要者が、引用商標を連想、想起することはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように認識することはないから、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

その他、本件商標が出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は、見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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