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Trademark Appeal Case

不使用目的出願の判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900130
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6917606号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

1 本件商標

本件登録第6917606号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、令和5年7月12日に登録出願、第35類「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,清涼飲料水の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,布製身の回り品・旅行用ひざ掛け・ブランケット・タオルケット・布団カバー・枕カバー・クッション・クッションカバー・授乳用クッションの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,家具・植木鉢・植木棚・剪定はさみ・植木はさみ・はさみ(手動利器)・靴べら・脂取り紙・髪留め・くし・ヘアバンドの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,時計・腕時計の小売又は卸売の業務において行はれる顧客に対する便益の提供,キーホルダーの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ビニール製の包装用袋・プラスチック製の包装用袋の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,化粧品・シャンプー・洗濯洗剤・つけ爪・つけまつげ・歯ブラシ・歯ブラシホルダー・かみそり・かみそりホルダー・かみそり立て・ネイルアート用ステッカー・爪とぎ・化粧用綿棒・医療用綿棒の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,銀製の洋食ナイフ・貴金属製の洋食ナイフ・乳児用の食卓用ナイフ・プラスチック製の食卓用ナイフ・包丁類・手動利器の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,鏡・花瓶の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,乳幼児用浴室用椅子・浴室用腰掛け・浴室用手おけ・風呂用ふた・浴室用ラックの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,香木・香・香皿・身体用消臭スプレー・家庭用消臭剤の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同7年3月10日に登録査定され、同年4月10日に設定登録されたものである。

2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る異議申立理由において、商標法第4条第1項第19号に該当するとして引用する商標(以下「引用商標」という。)は、「tuki.」の文字からなり、シンガーソングライターのアーティストの名称として、日本国内において周知著名性を有していると主張するものである。

3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備せず、また、商標法第3条第1項第6号及び同法第4条第1項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証(以下「甲○」と表記する場合がある。)を提出した。

(1)商標法第3条第1項柱書違反について

ア 事実

(ア)大量出願の実態

商標権者は、令和5年~7年の3年間で、小売役務(第35類)関係の出願だけでも合計187件(R5:37件/R6:34件/R7:92件)、さらに令和7年に別区分14件を追加出願し、本件登録査定後(令和7年3月14日)も、同一区分・ほぼ同一指定役務の出願を29件継続している(甲2)。

(イ)使用実態の欠如

ウェブ・SNSを調査したが、商標権者名義で登録商標を実際に使用している事業活動は確認できない(甲3)。

例として、登録第6543435号「not fade away」についても使用例は皆無である(甲4の1及び2)。

(ウ)補正の濫用・出願料の後付け

商標権者は、本件商標や2025年度だけでも方式審査が終了した約100件の商標出願において、いずれも出願時に出願料(印紙)を納付しておらず、その中で出願料を納付したものはわずか7件である。登録査定や社会情勢を見ながら出願料を納付するという態様を採っている(甲5、甲6の1~6)。

本件商標においても、出願日は令和5年7月18日であるが、出願料は数か月遅れで納付されており、その間にアーティスト「tuki.」の楽曲「晩餐歌」が急速に知名度を上げていた(甲7)。

補正書に添付された「事業計画」(令和6年4月10日付)にも、「令和6年10月 工場の建設」「同月 販売開始予定」と記載されているにすぎず、商標と指定役務の関係性は記されていない。その後の2回の手続補正書にも「事業計画」が記載されているが、日付が後ろにずれているだけで一切具体性がない(甲8の1~3)。

イ 評価

個人事業者が登録査定後も同一区分で出願を繰り返し、かつ出願料の納付を後回しにしていることは、通常の商取引慣行に反する。

平成24年(行ケ)第10019号・RC TAVERN事件(知財高裁平成24年5月31日判決 甲9)においても、短期に44件を出願し実使用がなかったケースで柱書違反が認定されている。

商標権者はそれを上回る規模での出願を行い、かつ意図的に審査の進行をコントロールするような補正・納付手続きを繰り返していることから、真摯な使用意思がないことはより明白である。

ウ 結論

商標権者に「自己の業務に使用する真摯な意思」は認め難く、本件商標は商標法第3条第1項柱書に違反する。

(2)商標法第3条第1項第6号該当性について

ア 事実

本件商標「月 ツキ Tuki」は、「月」という普通名詞に「ツキ」という片仮名と、「Tuki」というそのローマ字表記を結合したものであり、観念上は一体不可分に“月”の意味として認識されるにすぎない。

「月」という言葉は、「地球の衛星」や「暦の単位」などの一般的な言葉であり、需要者にとって自他商品等識別機能を持つ商標とは認識されない。

イ 評価

「月」と「ツキ」と「Tuki」は同一観念(moon)を普通に用いられる方法で三重に表示しただけであり、識別力が乏しい。

BOUTIQUE 9事件(平成21年(行ケ)第10270号 審決取消請求事件 甲10)においても平易語の単純結合は識別力を欠くとしている。同様に、本件商標も同様である。

ウ 結論

本件商標は出所識別力を有せず、商標法第3条第1項第6号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第19号該当性について

ア 事実

アーティスト“tuki.”(Sony Music所属)は2023年以降、Billboard Japan1位・YouTube1億再生超のヒット曲「晩餐歌」で周知されている(甲11、甲12)。

「晩餐歌」は、2023年7月7日にTikTokに投稿され、9日間(2023年7月16日)で100万再生を突破している。出願日は2023年7月18日であり、tuki.の知名度が急上昇した直後の出願である(甲7)。

さらに、出願時に手数料を納付せず、同楽曲がSpotifyのDaily Viral Songs Japanで1位を獲得した2023年10月18日以降に出願料を納付している。

イ 評価

商標権者は、アーティスト名や楽曲と同一・類似語を多区分で出願している(甲2、甲5)、本件商標も「tuki.」の周知性を利用しようとしたと推認される。

Office 2000事件(平成13年(行ケ)第205号 商標登録取消決定取消請求事件 甲13)と同様、不正目的(free-riding)が成立する。

ウ 結論

需要者を混同させ、正当権利者の使用を妨げる目的が認められ、商標法第4条第1項第19号に該当する。

(4)むすび

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同項第6号及び同法第4条第1項第19号に該当し、商標登録を受けることができないものである。

よって、本件商標は、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消されるべきである。

4 当審の判断

(1)商標法第3条第1項柱書について

商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標、あるいは、将来、自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(平成24年5月31日 知財高裁 平成24(行ケ)第10019号)。

そうすると、本件商標権者が、大量出願を行い、本件商標について使用が確認等できないとしても、本件商標の登録査定時において、本件商標を自己の業務に係る指定役務について現に使用をしていなくとも、将来においてその使用をする意思があれば、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するといえるところ、申立人が提出する全証拠によっても、本件商標権者が、本件商標の登録査定時において、将来、自己の業務に係る指定役務に本件商標を使用する意思を有していたことを否定するに足りる事実は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。

(2)商標法第3条第1項第6号該当性について

本件商標は、前記1のとおり、「月」、「ツキ」及び「Tuki」の文字を3段に表してなるところ、申立人は、本件商標は「月」という普通名詞を片仮名とローマ字で表記させたものであり、観念上も「月」の意味を認識させるにすぎず、また、「月」という言葉が「地球の衛星」、「暦の単位」などの一般的な語であり、需要者にとって自他役務の識別機能を有する商標とはいえない旨主張する。

しかしながら、本件商標の「月」の文字が「地球の衛星」等の意味を有し、仮に、構成中の「ツキ」及び「Tuki」の文字からは「月」の観念が生じるとしても、本件商標は、その指定役務(小売等役務)との関係において、取扱商品の具体的な品質や特徴等を表示するものとは認識されない。

また、申立人は、本件商標は識別力を欠くとして過去の判決例を引用するが、本件商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否かの判断は、商標の構成に基づき、個別具体的に判断されるものであるところ、これらの判決例は、商標の具体的構成等において本件とは事案を異にするものであり、本件と必ずしも同列に論じるべきでない。

さらに、申立人は、本件商標が自他役務の識別標識としての機能を有さないとする具体的な証拠を提出していない。

そうすると、本件商標は、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないといえるほどに、取引上一般に使用されている事実を発見することができず、さらに、本件商標の指定役務の取引者、需要者が、該文字を自他役務の識別標識とは認識しないというべき事情も発見できない。

そうとすれば、本件商標をその指定役務に使用しても、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるとはいえない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しない。

(3)商標法第4条第1項第19号該当性について

ア 引用商標の周知性について

(ア)甲第11号証によれば、「Real Sound」のウェブサイトにおいて、「(2023.10.24)tuki.「晩餐歌」バイラル1位 15歳シンガーソングライターが放つ特別な輝き」の見出しの下、「Spotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」は、(中略)純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたランキング。同チャートの10月18日付けのTOP10は以下のとおり。1位:tuki.「晩餐歌」」の記載がある。

(イ)甲第12号証によれば、「PR TIMES」のウェブサイトにおいて、「TikTok発、シンガーソングライターtuki.、デビュー曲「晩餐歌」が歴代最年少でストリーミング累計1億回再生突破 2024年1月24日」の見出しの下、「tuki.のデビュー曲「晩餐歌」が1月24日付のBillboard JAPANストリーミング・ソング・チャート Streamings Songsにて、ストリーミング累計1億回再生を突破。」の記載がある。

(ウ)上記の事実によれば、アーティストである「tuki.」の「晩餐歌」がSpotifyの「Daily Viral Songs(Japan)」において、ストリーミング再生された曲の中で1位(2023年10月18日付け)を獲得し、また、2024年1月24日時点のBillboard JAPANストリーミング・ソング・チャート「Streaming Songs」で、ストリーミング累計1億回再生を突破したことはうかがえる。

しかしながら、アーティストである「tuki.」の楽曲である「晩餐歌」がある程度知られていたとしても、「tuki.」自体の周知性について客観的に判断し得る証拠の提出はない。

そうすると、引用商標である「tuki.」の文字が、我が国及び外国の需要者にどの程度認識されているのか把握することができない。

したがって、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が他人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間において広く認識されていたものと認めることはできない。

イ 判断

引用商標は、上記アのとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されている商標ではない。

また、申立人は、本件商標権者はアーティスト名や楽曲と同一、類似の商標を多区分で出願しており(甲2、甲5)、本件商標も「tuki.」の周知性を利用したと推認されるものであって、本件商標の出願は、需要者を混同させ、正当権利者の使用を妨げる目的があるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する旨主張するが、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標権者が我が国及び外国において、引用商標の周知性に便乗しフリーライドを行い、または希釈化させる意図を有するなど、不正の目的をもって本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠の提出はないから、本件商標は、本件商標権者が引用商標の名声を毀損させることを認識し、あるいは、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものとはいえない。

そうすると、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の要件を欠くものであるから、商標の類否について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。

(4)むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものではなく、また、同項第6号及び同法第4条第1項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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