結論テキスト
特許第5754860号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔21~30、32〕、〔37~42〕、[43~54]について訂正することを認める。
請求項1~36、38~54に係る発明についての特許を無効とする。
請求項37についての本件審判の請求を却下する。
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2021800005 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理 由
1.請求の趣旨
請求人は、特許第5754860号の特許請求の範囲の請求項1~46に記載された発明についての特許を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求める。
2.答弁の趣旨
被請求人は、本案前の答弁の趣旨として、本件無効審判を却下する、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、本案の答弁の趣旨として、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
特許第5754860号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、2010年(平成22年)12月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年12月3日(米国))を国際出願日とする出願であって、平成27年6月5日にその特許権の設定登録がなされたものである。
これに対して、請求人は、令和3年1月26日付けで本件特許の請求項1~46に記載された発明についての特許を無効にすることについて、特許無効審判の請求を行った。本件特許無効審判事件の手続の経緯は、以下のとおりである。
・令和3年 1月26日 特許無効審判の請求
・ 同 年 8月 2日付け 答弁書及び訂正請求書(被請求人)
・ 同 年11月 1日付け 訂正請求書に係る手続補正書(方式)(被請求人)
・ 同 年12月 8日付け 弁駁書
・令和4年 2月 7日付け 審理事項通知書
・ 同 年 3月14日付け 訂正請求書に係る手続補正書(方式)(被請求人)
・ 同 日付け 口頭審理陳述要領書(被請求人)
・ 同 年 3月25日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
・ 同 年 4月11日 口頭審理
・ 同 日付け 上申書(以下「上申書1」とい
う。)(被請求人)
・ 同 年 5月10日付け 上申書(以下「上申書2」とい
う。)(被請求人)
・ 同 年 5月20日付け 被請求人に対する審尋
・ 同 年 6月20日付け 回答書(被請求人)
・ 同 年 6月30日付け 請求人に対する審尋
・ 同 年 7月21日付け 回答書(請求人)
・ 令和5年 2月20日 一次審決
・ 同 年 3月31日 審決取消訴訟提起(令和5年行
(ケ) 第10033号)
・ 同 年 5月17日 特許権の移転登録
(被請求人の変更)
・ 令和6年 3月25日 判決言渡
・ 令和6年11月27日付け 審決の予告
また、令和6年11月27日付の審決の予告において、特許法第164条の2第2項の規定にしたがって指定した期間内に被請求人からの応答はなかった。
以下、本件特許に係る出願の願書に添付した明細書を「本件明細書」といい、特許請求の範囲及び図面と合わせて「本件明細書等」ということがある。
1.訂正の内容
令和3年8月2日付け訂正請求書における訂正請求の趣旨は、「特許第5754860号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項21~30、32、37~54について訂正することを求める」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)~(6)のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
訂正前の請求項21~29において、
「【請求項21】
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり0.1μg~50μgの間のヘマグルチニンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせは、ワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約15μgのヘマグルチニンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約10μgのヘマグルチニンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約7.5μgのヘマグルチニンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約5μgのヘマグルチニンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約3.8μgのヘマグルチニンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約3.75μgのヘマグルチニンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約1.9μgのヘマグルチニンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項29】
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約1.5μgのヘマグルチニンを含む、請求項20に記載の方法。」
とあるのを
「【請求項21】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり0.1μg~50μgの間のヘマグルチニンを含む、請求項
15
に記載の方法。
【請求項22】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせは、ワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約15μgのヘマグルチニンを含む、請求項
15
に記載の方法。
【請求項23】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約10μgのヘマグルチニンを含む、請求項
15
に記載の方法。
【請求項24】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約7.5μgのヘマグルチニンを含む、請求項
15
に記載の方法。
【請求項25】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約5μgのヘマグルチニンを含む、請求項
15
に記載の方法。
【請求項26】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約3.8μgのヘマグルチニンを含む、請求項
15
に記載の方法。
【請求項27】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約3.75μgのヘマグルチニンを含む、請求項
15
に記載の方法。
【請求項28】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約1.9μgのヘマグルチニンを含む、請求項
15
に記載の方法。
【請求項29】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約1.5μgのヘマグルチニンを含む、請求項
15
に記載の方法。」
と訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の請求項30において、
「【請求項30】
・・・請求項20~29のいずれか1項に記載の方法。」
とあるのを
「【請求項30】
・・・請求項2
1
~29のいずれか1項に記載の方法。」
と訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の請求項37を削除する。
且つ、訂正前の請求項38~42において、
「【請求項38】
・・・請求項33~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
・・・請求項33~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
・・・請求項33~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
・・・請求項33~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
・・・請求項33~41のいずれか1項に記載の方法。」
とあるのを
「【請求項38】
・・・請求項33~3
6
のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
・・・請求項33~
36および
38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
・・・請求項33~
36、38および
39のいずれか1項に記載の方法。」
【請求項41】
・・・請求項33~
36および38~
40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
・・・請求項33~
36および38~
41のいずれか1項に記載の方法。」
と訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の請求項39において、
「【請求項39】
前記水中油型エマルジョンが、約10%(w/v)以下の油含量を有する・・・」
とあるのを
「【請求項39】
前記水中油型エマルジョンが、
2~
10
体積%
以下の油含量を有する・・・」
と訂正する。
(5)訂正事項5
訂正前の請求項43において、
「【請求項43】
前記均質な水中油型エマルジョンに、1つ以上の成分を添加して、該水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程をさらに包含する、請求項33~42のいずれか1項に記載の方法。」
とあるのを
「【請求項43】
均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法であって、該方法は、
水中油型エマルジョンを、0.3μm以上の孔サイズを有する第1の親水性ポリエーテルスルホン膜層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の親水性ポリエーテルスルホン層膜とを使用して濾過し、それによって、濾過された水中油型エマルジョンを形成する工程であって、該水中油型エマルジョンは、2体積%~20体積%の間の油を含み、該水中油型エマルジョンは、スクアレンを含む、工程、ならびに
該
均質な水中油型エマルジョンに、1つ以上の成分を添加して、該水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程
を
包含する
、
方法。」
と訂正する。
(6)訂正事項6
請求項47~54として、
「【請求項47】
前記水中油型エマルジョンが、平均油滴サイズが500nm以下であり、1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数が5×10
10
/ml以下であることを特徴とし;かつ前記濾過された水中油型エマルジョンが、平均油滴サイズが220nm以下であり、1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数が5×10
8
/ml以下であることを特徴とする、請求項43~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
(a)前記第1の親水性ポリエーテルスルホン膜層が非対称の膜を含むか、
(b)前記第2の親水性ポリエーテルスルホン膜層が、非対称の膜を含むか、
または、その組み合わせ
である、請求項43~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の親水性ポリエーテルスルホン膜層および前記第2の親水性ポリエーテルスルホン膜層が二重層フィルタとして提供される、請求項43~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記均質な水中油型エマルジョンが135nm~175nmの間の平均油滴サイズを有する、請求項43~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記水中油型エマルジョンが、2~10体積%の油含量を有する、請求項43~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記水中油型エマルジョンが界面活性剤を含む、請求項43~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記水中油型エマルジョンが、スクアレン、ポリソルベート80およびソルビタントリオレエートを含む、請求項43~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記水中油型エマルジョンが、約5体積%のスクアレン、約0.5体積%のポリソルベート80および約0.5体積%のソルビタントリオレエートを含む、請求項43~53のいずれか1項に記載の方法。
」
を追加する。
2.訂正事項の適否
(1)訂正事項1について
ア.訂正の目的について
訂正事項1は、訂正前の請求項21~29が、請求項20を引用する形式で記載されていたものを、請求項20との引用関係を解消し、請求項15を引用する形式で記載することで、間接的に引用されていた訂正前の請求項16~19との引用関係を解消し、加えて、訂正前の請求項20に記載されていた「抗原は、インフルエンザウイルス抗原であ」るとの限定を付すものである。したがって、訂正事項1は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」若しくは同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ.新規事項追加の有無
訂正事項1は、訂正前の請求項21~29に記載の各発明における請求項16~19に従属する請求項に記載の発明を削除するものであるから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ.特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項1は、訂正前の請求項21~29に記載の各発明における発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ.独立特許要件について
請求項21~29は、無効審判の請求がされている請求項であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
(2)訂正事項2について
ア.訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項30が、請求項20~29のいずれか1項を引用する形式で記載されていたものを、「請求項21~29のいずれか1項」を引用するものに限定することで請求項20との引用関係を解消することを目的とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」若しくは同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ.新規事項追加の有無
訂正事項2は、訂正前の請求項30に記載の発明における請求項20に従属する請求項に記載の発明を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ.特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項2は、訂正前の請求項30に記載の発明における発明特定事項を限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ.独立特許要件について
請求項30は、無効審判の請求がされている請求項であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
(3)訂正事項3について
ア.訂正の目的
訂正事項3は、訂正前の請求項37を削除し、これに伴い、請求項37を引用する請求項38~42において、請求項37との引用関係を解消することを目的とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」若しくは同第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ.新規事項追加の有無
訂正事項3は、請求項37に記載の発明を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ.特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項3は、請求項37に記載の発明を削除するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ.独立特許要件について
請求項37及びそれを引用する請求項38~42は、無効審判の請求がされている請求項であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
(4)訂正事項4について
ア.訂正の目的
訂正事項4は、訂正前の請求項39において、
「前記水中油型エマルジョンが、約10%(w/v)以下の油含量を有する・・・」とされていたところ、この油含量に係る「約10%(w/v)以下」について、訂正前の請求項39が引用する請求項33の油含量に係る「2体積%~20体積%の間」との特定と整合していなかったものを、油含量の単位を訂正前の請求項33における特定に合わせて「%(w/v)」から「体積%」とするとともにその数値範囲を「2~10」とすることで、「2~10体積%」とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」若しくは特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ.新規事項追加の有無
訂正事項4に係る「前記水中油型エマルジョンが、2~10体積%以下の油含量を有する・・・」は、訂正前の請求項39が引用する請求項33中の水中油型エマルジョンの油含量「2体積%~20体積%の間」と下限が一致するものであり、また、上限については、特許明細書中の次の記載:
「【0113】
(最終エマルジョン)
微小流動化および濾過の結果は、・・・水中油型エマルジョンである。
・・・
【0117】
上記最終エマルジョン中の油(体積%)の好ましい量は、2~20%の間(例えば、
約10%
)である。約5%もしくは約10%のスクアレン含有量は 、特に有用である。」
から、把握できる事項である。
よって、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ.特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
請求項39は訂正前から請求項33を引用しており、かつ、訂正事項4に係る「%(w/v)」から「体積%」への単位の訂正は、請求項39における水中油型エマルジョンの油含量の範囲を当該引用請求項33の「2体積%~20体積%の間」の一部である「2~10体積%」へと限定するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ.独立特許要件について
請求項39及びそれを引用する請求項40~42は、無効審判の請求がされている請求項であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
(5)訂正事項5について
ア.訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項43が、請求項33及びその従属請求項34~42を引用した従属形式で規定されていることから、それらの請求項と同じ「均質な水中油型エマルジョンを製造するための方法」に係る発明であるにもかかわらず、「前記均質な水中油型エマルジョンに、1つ以上の成分を添加して、該水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程をさらに包含する」方法であることを併せて規定していることから、その最終的な製造目的物が「均質な水中油型エマルジョン」であるのか、「均質な水中油型エマルジョン」にさらに「1つ以上の成分を添加し」た「薬学的組成物」であるのか不明瞭であった記載を明確にするために「該均質な水中油型エマルジョンに、1つ以上の成分を添加して、該水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程」を設けた、「均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法」である発明とするものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
イ.新規事項追加の有無
訂正事項5は、訂正前の請求項33及び43に記載されていた範囲内の事項であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ.特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項5は、訂正前の請求項43に記載される「均質な水中油型エマルジョンに、1つ以上の成分を添加して、該水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程」との記載に整合させるべく、発明特定事項に関する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ.独立特許要件について
請求項43及びそれを引用する請求項44~46は、無効審判の請求がされている請求項であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
(6)訂正事項6について
ア.訂正の目的
訂正事項6は、訂正事項3に係る請求項37の削除、及び、訂正事項5に係る請求項43における請求項33~42との引用関係の解消に伴い、訂正前の請求項43中の引用請求項34~36、38~42について、請求項33との引用関係を解消しつつ、請求項43を引用する従属請求項47~54として追加するものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ.新規事項追加の有無
訂正事項6は、訂正前の請求項33~36、38~43に記載されていた範囲内の事項であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ.特許請求の範囲の実質拡張・変更の有無
訂正事項6は、訂正前の請求項33~36、38~43に記載されていた範囲内の事項であって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当せず、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
エ.独立特許要件について
請求項33~43は、無効審判の請求がされている請求項であるので、特許法第134条の2第9項で準用する同法第126条第7項の規定は適用されない。
3.一群の請求項について
(1)訂正後の請求項〔21~30、32〕について
上記訂正事項1に係る請求項21~29は、上記訂正事項2を含む請求項30において引用されているものであるので、請求項21~30は、特許法第134条の2第3項に規定する一群の請求項である。
また、請求項32は、請求項21~30を引用するものである。
よって、上記訂正事項1及び2に係る訂正後の請求項21~30、32は、一群の請求項を構成する。
(2)訂正後の請求項〔37~54〕について
訂正前の請求項37~46について、請求項38~46は請求項37を直接又は間接的に引用しており、訂正後の請求項44~54は請求項43を直接又は間接的に引用しているものであって、上記訂正事項3、5及び6によって連動して訂正されるものである。
また、訂正前の請求項39~46について、請求項40~46は、請求項39を直接又は間接的に引用しており、訂正後の請求項44~54は、請求項43を直接又は間接的に引用しているものであって、上記訂正事項4、5及び6によって連動して訂正されるものである。
よって、請求項37~54は、一群の請求項を構成する。
そして、被請求人は、本件訂正後の請求項43~54について、当該請求項の訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することを求めている。
4.まとめ
以上によれば、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第4号に掲げるいずれかの事項を目的とするものであり、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項に規定する要件に適合する。
そして、被請求人は、訂正請求書において、訂正後の請求項43~54について、一群の請求項の他の請求項とは別の訂正単位とすることを求めているから、訂正後の請求項[21~30、32]、[37~42]、[43~54]について訂正することを認める。
1.前記第3のとおり、本件訂正は認められたので、本件訂正後の請求項1~36、38~54に係る発明は、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~36、38~54に記載された事項により特定される、次のとおりのものであると認める(以下、本件訂正後の請求項1~36、38~54に係る発明を順に「本件発明1~36、38~54」ということがあり、これらの発明をまとめて「本件発明」ということがある。)。
「【請求項1】
スクアレン含有水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、該方法は、
(i)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを提供する工程;
(ii)該第1のエマルジョンを微小流動化して、該第1の平均油滴サイズより小さな第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程;および
(iii)該第2のエマルジョンを、0.3μm以上の孔サイズを有する第1の層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の層とを含む親水性二重層ポリエーテルスルホン膜を使用して、濾過し、それによって、スクアレン含有水中油型エマルジョンを提供する工程、
を包含する、方法。
【請求項2】
スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を製造するための方法であって、該方法は、
(i)5000nm以下の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを提供する工程;
(ii)該第1のエマルジョンを微小流動化して、500nm以下である平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程;
(iii)該第2のエマルジョンを、0.3μm以上の孔サイズを有する第1の親水性ポリエーテルスルホン膜層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の親水性ポリエーテルスルホン膜層とを使用して濾過し、それによって、スクアレン含有水中油型エマルジョンを提供する工程、および
(iv)該エマルジョンアジュバントと抗原とを合わせる工程
を包含する、方法。
【請求項3】
前記第1の平均油滴サイズは、5000nm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のエマルジョンにおいて1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数は、5×10
11
/ml以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の平均油滴サイズは、500nm以下である、請求項1、3、および請求項1に従属する場合の請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2のエマルジョンにおいて1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数は、5×10
10
/ml以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
スクアレン含有水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、該方法は、
(i)500nm以下の平均油滴サイズを有するスクアレン含有エマルジョンを形成する工程;
(ii)該スクアレン含有エマルジョンを、0.3μm以上の孔サイズを有する第1の層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の層とを含む親水性二重層ポリエーテルスルホン膜を使用して、濾過し、それによって、スクアレン含有水中油型エマルジョンを提供する工程、を包含する、方法。
【請求項8】
濾過後の前記平均油滴サイズは、220nm未満である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
濾過後の1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数は、5×10
8
/ml以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第2のエマルジョンは、前記親水性二重層ポリエーテルスルホン膜の前記第2の層による濾過の前に、前記親水性二重層ポリエーテルスルホン膜の前記第1の層を通って濾過される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記膜の前記第1の層は、非対称および/もしくは多孔性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記膜の前記第2の層は、非対称および/もしくは多孔性である、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記膜の前記第2の層、および必要に応じて前記膜の前記第1の層は、ポリマー支持材料を含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記エマルジョンの体積が、20Lよりも大きい、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ワクチン組成物を調製するための方法であって、該方法は、請求項1または3~14のいずれか1項に記載のスクアレン含有水中油型エマルジョンの製造方法に従うエマルジョンアジュバントを調製する工程および該エマルジョンアジュバントと抗原とを合わせる工程を包含する、方法。
【請求項16】
ワクチンキットを調製するための方法であって、該方法は、請求項1または3~14のいずれか1項に記載のスクアレン含有水中油型エマルジョンの製造方法に従うエマルジョンアジュバントを調製する工程および該エマルジョンアジュバントを、キット成分として、抗原成分と一緒にキットにパッケージする工程を包含する、方法。
【請求項17】
前記キット成分は、別個のバイアル中にある、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記バイアルは、ホウケイ酸ガラスから作製される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記エマルジョンアジュバントは、バルクアジュバントであり、前記方法は、キット成分としてパッケージするために、該バルクアジュバントから単位用量を抽出する工程を包含する、請求項16~18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原である、請求項15~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり0.1μg~50μgの間のヘマグルチニンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせは、ワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約15μgのヘマグルチニンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約10μgのヘマグルチニンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約7.5μgのヘマグルチニンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約5μgのヘマグルチニンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約3.8μgのヘマグルチニンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約3.75μgのヘマグルチニンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約1.9μgのヘマグルチニンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項29】
前記抗原は、インフルエンザウイルス抗原であり、前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、インフルエンザウイルス株あたり約1.5μgのヘマグルチニンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項30】
前記エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせは、ワクチン組成物を形成し、該ワクチン組成物は、チメロサール保存剤もしくは2-フェノキシエタノール保存剤を含む、請求項21~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
水性成分、スクアレンおよび界面活性剤を含有する水中油型エマルジョンを調製するための、0.3μm以上の孔サイズを有する第1の膜の層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の膜の層とを含む親水性二重層ポリエーテルスルホンフィルタの使用であって、該水中油型エマルジョンが、2体積%~20体積%の間の油を含む、使用。
【請求項32】
前記水中油型エマルジョンが、約5体積%のスクアレン、約0.5体積%のポリソルベート80および約0.5体積%のソルビタントリオレエートを含む、請求項1~31のいずれか1項に記載の方法または使用。
【請求項33】
均質な水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、該方法は、水中油型エマルジョンを、0.3μm以上の孔サイズを有する第1の親水性ポリエーテルスルホン膜層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の親水性ポリエーテルスルホン層膜とを使用して濾過し、それによって、濾過された水中油型エマルジョンを形成する工程、
を包含し、該水中油型エマルジョンは、2体積%~20体積%の間の油を含み、該水中油型エマルジョンは、スクアレンを含む、方法。
【請求項34】
前記水中油型エマルジョンが、平均油滴サイズが500nm以下であり、1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数が5×10
10
/ml以下であることを特徴とし;かつ前記濾過された水中油型エマルジョンが、平均油滴サイズが220nm以下であり、1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数が5×10
8
/ml以下であることを特徴とする、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
(a)前記第1の親水性ポリエーテルスルホン膜層が非対称の膜を含むか、(b)前記第2の親水性ポリエーテルスルホン膜層が、非対称の膜を含むか、または、その組み合わせである、請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の親水性ポリエーテルスルホン膜層および前記第2の親水性ポリエーテルスルホン膜層が二重層フィルタとして提供される、請求項33~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】 (削除)
【請求項38】
前記均質な水中油型エマルジョンが135nm~175nmの間の平均油滴サイズを有する、請求項33~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記水中油型エマルジョンが2~10体積%の油含量を有する、請求項33~36および38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記水中油型エマルジョンが界面活性剤を含む、請求項33~36、38および39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記水中油型エマルジョンが、スクアレン、ポリソルベート80およびソルビタントリオレエートを含む、請求項33~36および38~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記水中油型エマルジョンが、約5体積%のスクアレン、約0.5体積%のポリソルベート80および約0.5体積%のソルビタントリオレエートを含む、請求項33~36および38~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法であって、該方法は、
水中油型エマルジョンを、0.3μm以上の孔サイズを有する第1の親水性ポリエーテルスルホン膜層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の親水性ポリエーテルスルホン層膜とを使用して濾過し、それによって、濾過された水中油型エマルジョンを形成する工程であって、該水中油型エマルジョンは、2体積%~20体積%の間の油を含み、該水中油型エマルジョンは、スクアレンを含む、工程、ならびに
該均質な水中油型エマルジョンに、1つ以上の成分を添加して、該水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程
を包含する、方法。
【請求項44】
前記薬学的組成物が無菌である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記薬学的組成物が抗原を含む、請求項43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記薬学的組成物がワクチンである、請求項43~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記水中油型エマルジョンが、平均油滴サイズが500nm以下であり、1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数が5×10
10
/ml以下であることを特徴とし;かつ前記濾過された水中油型エマルジョンが、平均油滴サイズが220nm以下であり、1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数が5×10
8
/ml以下であることを特徴とする、請求項43~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
(a)前記第1の親水性ポリエーテルスルホン膜層が非対称の膜を含むか、
(b)前記第2の親水性ポリエーテルスルホン膜層が、非対称の膜を含むか、
または、その組み合わせ
である、請求項43~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の親水性ポリエーテルスルホン膜層および前記第2の親水性ポリエーテルスルホン膜層が二重層フィルタとして提供される、請求項43~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記均質な水中油型エマルジョンが135nm~175nmの間の平均油滴サイズを有する、請求項43~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記水中油型エマルジョンが、2~10体積%の油含量を有する、請求項43~50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記水中油型エマルジョンが界面活性剤を含む、請求項43~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記水中油型エマルジョンが、スクアレン、ポリソルベート80およびソルビタントリオレエートを含む、請求項43~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記水中油型エマルジョンが、約5体積%のスクアレン、約0.5体積%のポリソルベート80および約0.5体積%のソルビタントリオレエートを含む、請求項43~53のいずれか1項に記載の方法。 」
1.請求人の主張する無効理由及び証拠方法
請求人は、無効理由として、次の1~5(以下、順に「無効理由1」~「無効理由5」という。)を主張し、証拠方法として甲第1~39号証を提出している(以下、例えば、甲第1号証を「甲1」等ということがある)。
(1)無効理由1(明確性要件違反)
本件特許の登録時の請求項1~46に係る特許は、次のア~ウにより、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
ア 本件特許の登録時の請求項1、2、7、10、31、33、35、36に記載された「親水性」の意味が明確であるとはいえず、これらの請求項に係る発明は明確ではない。
本件特許の登録時の請求項1、2、7、10、31、33、35、36を直接又は間接的に引用する請求項3~6、8、9、11~30、32、34、37~46に係る発明も同様である。
イ 本件特許の登録時の請求項16~19を間接的に引用する請求項21~29の記載の意味が整合的に理解できないから、本件特許の登録時の請求項21~29に係る発明は明確ではない。
本件特許の登録時の請求項20~29を引用する請求項30及び32に係る発明も同様である。
ウ 本件特許の登録時の請求項33~42を直接又は間接的に引用する請求項43~46の記載の意味が整合的に理解できないから、本件特許の登録時の請求項43に係る発明は明確ではない。
本件特許の登録時の請求項43を直接又は間接的に引用する請求項44~46に係る発明も同様である。
(2)無効理由2(実施可能要件違反)
当業者は、「0.3μm以上の孔サイズを有する第1の層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の層とを含む親水性二重層ポリエーテルスルホン膜」を入手ないし製造して濾過を行うことができず、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許の登録時の請求項1~46に係る発明の実施(使用)をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
したがって、本件特許の登録時の請求項1~46に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(3)無効理由3(サポート要件違反)
本件特許の登録時の請求項1に係る発明は、本件明細書の発明の詳細な説明により当業者が「微小流動化した水中油型エマルジョン生成のためのさらなるかつ改善された方法、特に、商業スケールでの使用に適しておりかつ濾過を使用する方法を提供すること」(ここで、「さらなるかつ改善」は、「0.22μmフィルタ(特にポリスルホンフィルタ)による濾過」と比較しての「さらなるかつ改善」である)という課題を解決できると認識できる範囲のものではない。同様に、本件特許の登録時の請求項2~46に係る発明も当業者がその課題を解決できると認識できる範囲を超えている。
したがって、本件特許の登録時の請求項1~46は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許の登録時の請求項1~46に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。
(4)無効理由4(進歩性欠如)
本件特許の登録時の請求項1~46は、次のア~エにより、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
ア 甲11に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 甲12に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 甲13に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
エ 甲14に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)無効理由5(新規事項の追加)
本件特許の登録時の請求項37、39に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、同法第123条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。
[証拠方法]
・甲第1号証:特許第5754860号公報
・甲第2号証:化学大辞典,(2001年6月1日)第1版第6刷,(株)東京化学同人,1579頁「トコフェロール」
・甲第3号証:JIS工業用語大辞典【第5版】,(2001年3月30日)第5版第1刷,(財)日本規格協会,1053頁「親水性」
・甲第4号証:日本食品科学工学会誌,(1999年4月),46(4),220~229頁
・甲第5号証:化学工学論文集,(1989),15(3),645~651頁
・甲第6号証:化学工学論文集,(1994),20(4),468~474頁
・甲第7号証:膜(MEMBRANE),(2004),29(5),309~318頁
・甲第8号証:化学大辞典2縮刷版,(1997年9月20日)縮刷版第36刷,共立出版(株),269頁「解乳化」
・甲第9号証:Gary Ott et al.,「MF59 Design and Evaluation of a Safe and Potent Adjuvant for Human Vaccines」,Pharmaceutical Biotechnology,Vol.6「Vaccine Design:The Subunit and Adj
uvant Approach」,(1995),Chapter 10,277~296頁
・甲第10号証:特表2002-504106号公報
・甲第11号証:Gary Ott et al.「The Adjuvant MF59:A 10-Year Perspective」,Vaccine Adjvants Preparation Methods and Research Protocols(ISBN:0-89603-735-5),(2000),12,211~228頁
・甲第12号証:国際公開第2008/009309号
・甲第13号証:特表2002-513773号公報
・甲第14号証:特表2001-515870号公報
・甲第15号証:Sartorius stedim biotech「Bioprocess Catalogue Products and Solutions for the Biopharmaceutical Industry」(Sartorius社作成のカタログ),(2007),表紙、3~9頁、98~99頁、114~115頁、304~305頁
・甲第16号証:The Journal of Infectious Diseases,(1994),170,1110~1119頁
・甲第17号証:The Journal of Immunology,(2008),180,5402~5412頁
・甲第18号証:国際公開第2008/056263号
・甲第19号証:European Pharmacopoeia 4th Edition(欧州薬局方 第4版),(2001),(ISBN:92-871-4587-3),271~275頁
・甲第20号証:ワクチンの事典,(2005年2月10日)初版第2刷,(株)朝倉書店 28~29頁
・甲第21号証:Clinical Infectious Diseases,(2006),43,1135~1142頁
・甲第22号証:承認番号15700EZZ01004000「A型インフルエンザHAワクチン(H1N1株)」添付文書,2009年10月改訂(第2版)
・甲第23号証:承認番号16100EZZ01167「インフルエンザHAワクチン」添付文書,2007年7月改訂(第10版)
・甲第24号証:最高裁平成30年(行ヒ)第69号判決
・甲第25号証:本件特許出願の国際出願翻訳文提出書,(平成24年7月2日付け),明細書1~31頁,特許請求の範囲1~3頁,要約書,図3
・甲第26号証:本件特許出願の審査係属時の手続補正書(平成26年8月
27日付け),1~5頁
・甲第27号証:化学大辞典,(2001年6月1日)第1版第6刷,(株)東京化学同人,1331頁「トコフェロール」
・甲第28号証:承認番号22400AMX00782「クアトロバック
(R)
皮下注シリンジ」添付文書,2020年11月改訂(第2版)
(※合議体注:「(R)」は、原文では○の中にR。以下同様。)
・甲第29号証:承認番号22500AMX01249「ビームゲン
(R)
注0.25mL」・承認番号22500AMX01250「「ビームゲン
(R)
注0.5mL」添付文書 2020年10月改訂(第2版)
・甲第30号証:KMバイオロジクス株式会社ホームページ>医療用医薬品>「ヒト用ワクチン類」URL:https://www.kmbiologics.com/medical/vaccine.html
・甲第31号証:国際公開第2016/010081号
・甲第32号証:Influenza Other Respi.Viruses,(2020),14,551~563頁
・甲第33号証:特許庁編「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」〔第21版〕(令和2年2月),3~9,11~14,84~88,124~133頁
・甲第34号証:「COLLINS COBUILD ENGLISH DICTIONARY」,(1995),ISBN:0 00 375053 1(hardback)/0 00 375052 3(paperback) 670頁「foul」
・甲第35号証:知財高裁令和元年(行ケ)第10077号判決
・甲第36号証:Filtration + Separation、 October 2008,12-21頁「膜と濾過:バイオ医薬産業における膜濾過」、及び抄訳
・甲第37号証:甲第11号証の抄訳
・甲第38号証:甲第15号証の抄訳
・甲第39号証:令和5年(行ケ)第10056号承継参加申立事件の丙第4号証(本件の甲第15号証と同一の文献)の抄訳
2.被請求人の主張及び提出した証拠方法
被請求人が提出した答弁書、陳述要領書、上申書1、上申書2及び回答書によれば、被請求人は、請求人は本件無効審判の請求人適格を欠くことから、本件無効審判請求は却下されるべきであること、及び、請求人の請求人適格が認められたとしても、前記無効理由1~5はいずれも理由がないことを主張し、証拠方法として乙第1~16号証を提出している(以下、例えば、乙第1号証を「乙1」等ということがある。)。
[証拠方法]
・乙第1号証:Declaration by Robert Eskes(ロベルト エスケスによる宣誓書) 2021年7月27日付け
・乙第2号証:本件特許に対する異議申立事件の審理係属時に特許権者(被請求人)が提出した実験成績証明書 2016年7月12日付け
・乙第3号証:Pall Supor
(R)
EKV Sterilizing Grade Filters,(PALL
(R)
Life Science社作成カタログ),(2008),1~15頁,裏表紙
・乙第4号証:Sartorius stedim biotech「Bioprocess Catalogue Products and Solutions for the Biopharmaceutical Industry」(Sartorius社作成のカタログ),(2007),表紙、3~9頁、98~99頁、114~115頁、304~305頁
・乙第5号証:3M Filtration CUNO Division「Fluid Thinking From a World Leader in Purification」(3M社作成のカタログ),(2007)
・乙第6号証:Ind.Eng.Chem.Res.,(1996),35,3179~3185頁
・乙第7号証:松田徳一郎監修「リーダーズ英和辞典」,(1984年6月 初版第2刷),(株)研究者,853頁「foul」
・乙第8号証:米国特許第6193077号明細書
・乙第9号証:「Handbook of Pharmaceutical Controlled Release Technology」(ISBN:0-8247-0369-3),(2000),119頁
・乙第10号証:国際公開第2011/067669号
・乙第11号証:Novartis Vaccines & Diagnostics GmbH & Co.KG「MF59 COMPLIANCE POSITION PAPER WITH RESPECT TO STERILE FILTRATION VALIDATION WITHIN NOVARTIS VACCINS」,(DATE OF REPORT:22 July 2009),1~11頁(Novartis Vaccines社作成の、滅菌濾過検証に関するMF59適合性方針説明書)
・乙第12号証:Declaration by Robert Eskes(ロベルト エスケスによる宣誓書),2022年6月17日付け
・乙第13号証:Declaration by Marco Riensche(マルコ リーンシェによる宣誓書),2022年6月17日付け
・乙第14号証:Declaration by Achim Frauenschuh(アヒム フラウエンジューによる宣誓書),2022年6月17日付け
・乙第15号証:PALL
(R)
Life Sciences「Validation Guide for Pall Supor
(R)
EBV Filter Cartridges」(PALL
(R)
Life Sciences社作成のカタログ),(2002),表紙、目次、4~18頁、裏表紙
・乙第16号証:「BioASSURETM Robust Sterilizing Guide Polyethersulfone Membrane Filters」(Cuno社作成のカタログ),(2005),表紙、2~7頁
合議体は、以下の1.で述べるとおり、請求人を本件無効審判の請求人適格を有すると判断し、2.で述べるとおり、本件訂正後の請求項1~36、38~54に係る特許は、無効理由1~3、5によって無効にすべきものではなく、無効理由4によって無効にすべきものである、と判断する。
1.請求人が当事者適格を有する利害関係人であることについて
甲28及び甲29の記載から、請求人が、例えばアジュバントとしてアルミニウム塩を添加したワクチンである「クアトロパック(登録商標)皮下注シリンジ」(沈降精製百日せきジフテリア破傷風不活化ポリオ(セービン株)混合ワクチン)及び「ビームゲン(登録商標)注0.25mL及び0.5mL」組換え沈降B型肝炎ワクチン(酵母由来))を実際に販売している者であることが把握できる。また、甲30の記載から、請求人はそれら以外にもヒト用ワクチン類を製造販売していることが把握できる。
さらに、甲31や甲32の記載から、それらのワクチンに関連して、アルミニウム塩だけではなく、MF59やAS03等といった水中油型エマルジョンアジュバントを使用したワクチンの製品化も視野に入れた研究開発を行っている者であることも把握できる。
したがって、これらの甲28~甲32の記載を踏まえると、請求人が、アジュバントの研究開発やアジュバントを添加したワクチンの製造販売に従事している者であることは、明らかであり、本件発明と、請求人の研究開発・製造販売するものとは、技術分野を同じくし、競業関係にあって、本件発明の特許の有効/無効は請求人の業務の遂行に直接影響を及ぼす関係にあるといえる。
よって、請求人は、本件特許の存在により、法律上の利益や、その権利に対する法律的地位に直接の影響を受けるか、又は受ける可能性のある者、即ち利害関係人であり、本件無効審判の請求人適格を有する。
2.無効理由1~無効理由5について
(1)主な甲号証及び乙号証の記載事項(下線は合議体による。以下同様。 )
甲11(抄訳は甲37による)
・甲11-1(213頁25~33行)
「2.材料
安定性を高めた第2世代MF59エマルジョンは、MF59C.1と命名され、 以下の成分からなる。
1.スクアレン(2,6,10,15,19,23-ヘキサメチル-2,6,1 0,14,18-22-テトラコサヘキサエン)
2.ポリソルベート80
3.ソルビタントリオレエート
4.クエン酸3ナトリウム塩2水和物
5.クエン酸1水和物
6.注射用水(WFI)」
・甲11-2(213頁34行~219頁19行)
「3.方法
3.1.MF59の50L規模製造プロセス
上述したMF59を実験室規模に生産する方法では、マイクロフルイダイザー110Sを用いて最小10mlのエマルジョンを調製する。ここでは、発売仕様が確立され、長期間保存が可能な無菌臨床等級のMF59C.1の製造プロセスを取り上げるものとする。図1にMF59C.1の50L規模製造プロセスを図示している。まず、ポリソルベート80をWFIに溶解させ、水性クエン酸ナトリウム-クエン酸の緩衝液と組み合わせる。それとは別途に、ソルビタントリオレエートをスクアレンに溶解させた。2つの溶液を組み合わせた後、インラインホモジナイザーで処理し、粗エマルジョンを得る。当該粗エマルジョンをマイクロフルイダイザーに入れて更に処理を施し、安定性を有するサブミクロンエマルジョンを取得する。粗エマルジョンを、所望の粒径になるまでマイクロフルイダイザーの相互作用室に繰り返して通らせる。バルクエマルジョンを窒素下で0.22μmフィルタに通して濾過し、大きな粒子を取り除き、ガラス瓶に詰め込んだMF59C.1アジュバ ントエマルジョンのバルクを手に入れた。棚保管において、MF59の存在下で安定的な長期保存性を示すワクチン抗原を得るためには、抗原とMF59を組み合わせて0.22μm膜を用いて滅菌濾過を行う。この組み合わせた「単一のバイアル」ワクチンを単回投与容器に充填する。長期保存性を示さないワクチン抗原に対しては、アジュバントを別個のバイアルとして提供する。この場合、MF59バルクを滅菌濾過し、最終単回投与用バイアルに充填して包装する。」
・甲11-3(214頁20~38行)
「3.2.MF59C.1のプロセス評価
製造プロセスでは、MF59C.1製品が再現性のある一貫した方法で得られる。図2は、プロセス中のマイクロフル5イダイザーの各パスの間のMF59C.1の平均粒径の効率的かつ反復可能な減少を実証する、代表的な7ロットを合わせた粒径データを提示する。平均粒径に加えて、アジュバントエマルジョン1ml当たりの大きな粒子、すなわち径が>1.2μmの粒子、の数をモニターする。エマルジョンは熱力学的に不安定な系であり、貯蔵中に凝集(油粒子の可逆的凝集)及び合体(大きな粒子を形成する油粒子の不可逆的凝集と、最終的な油及び水相の不可逆的分離)を受ける。安定なエマルジョンの製造のための重要な目標は、大きな粒子の数を最小限に抑えることである。なぜなら、大きな粒子は、貯蔵中に潜在的に相分離をもたらす更なる凝集の核形成部位として作用するからである。図3は、製造プロセス中の粗大粒子数の低減に関する、MF59C.1の代表的な7ロットのデータを示す。マイクロ流動化工程の後、0.22μmの膜を通してエマルジョンを濾過すると、径が>1.2μmの粒子の99.5%が除去される。バルクエマルジョンは、>1.2μmである全粒子が0.1%未満である。」
・甲11-4(215頁)
「図1.MF59製造プロセス
74
49
0001430333000001.jpg
」
・甲11-5(216頁)
「
27
34
0001430333000002.jpg
」
・甲11-6(216頁本文1行~217頁本文2行)
「3.3.MF59C.1の仕様評価
MF59C.1は、あらかじめ定められた仕様書に従って製造された明確に定義されたエマルジョンである。エマルジョンバルク及び最終単回用量アジュバントは、カイロンの標準操作手順に従って一連のアッセイを用いて分析される。主要なアッセイには、外観、pH、平均粒径、品質に関する1ml当たりの大きな粒子数、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法による内容物のスクアレン、ポリソルベート80及びソルビタントリオレエートの濃度並びに安全性に関するエンドトキシン及び汚染微生物の含有量が含まれる。視覚的には、MF59C.1は、乳白色の均質な液体であり、外来粒子を含まない。高温での長時間ばく露や凍結のようなストレス条件下では、大きな油球が形成される。したがって、このような条件下でのMF59C.1の保管は避けなければならない。MF59C.1は、クエン酸ナトリウム-クエン酸緩衝液でpH6.5に緩衝されている。プロセス中のように、MF59C.1の平均粒径及びml当たりの大きな粒子数は、バルク及び最終アジュバントエマルジョンのための重要な品質パラメータである。MF59C.1の平均粒径は、約150nmであり、1.2μm以上の粒子が1×10
7
個の上限仕様であることが認められる。スクアレン、ポリソルベート80及びソルビタントリオレエートの量は、それぞれ39、4.7及び4.7mg/mlの表示濃度付近の許容範囲内でなければならない。」
・甲11-7(217頁)
「
32
37
0001430333000003.jpg
」
・甲11-8(217頁本文14行~218頁3行)
「3.5. 最終ワクチン製剤
3.5.1.ワクチンの構成
HSV-2 gB/gD、HBV、HIV gp120及び/又はp24、CMV gB、インフルエンザヘマグルチニン(HA)を含む様々な抗原を、アジュバントエマルジョンMF59C.1と共に、単一容器又は別個のバイアル(投与前に混合するため、デュアルバイアルワクチンとも言う。)のうちの一方の方式で、製剤化する。」
・甲11-9
甲11の211頁本文6~9行目の記載等によると甲11にいう「MF59」及び「MF59C.1」は、いずれも「水中油型エマルジョンアジュバント」であると認められる。
甲12
・甲12-1(請求の範囲1(日本語公報【請求項1】))
「1.パンデミックに関与しているかまたはパンデミックに関与する可能性があるインフルエンザウイルス株由来の小量の
インフルエンザウイルス抗原または抗原調製物とアジュバントとを組合わせて含む一価のインフルエンザワクチン組成物
であって、小量の抗原量が1用量当たり15μgの赤血球凝集素(HA)を超えず、かつ前記アジュバントが代謝可能な油、ステロールまたはトコフェロール、および乳濁化剤を含む水中油型エマルジョンである前記組成物。」
・甲12-2(50頁24行~51頁5行(日本語公報【0202】~【0203】+α)
「実施例11
水中油型エマルジョンおよびアジュバント製剤
の調製と特徴付け
・・・
II.1.2. スケールアップした調製
SB62エマルジョンの調製は、
疎水性成分(α-トコフェロールおよびスクアレン)からなる油相と、水溶性成分(Tween80およびPBS(変性)、pH6.8)を含有する水相とを強く撹拌しながら混合する
ことによって行う。撹拌しながら、油相(1/10全容積)を水相(9/10全容積)に移し、混合物を室温で15分間撹拌する。次いで
得られる混合物を、
マイクロフルイダイザー(15000 PSI-8サイクル)の相互作用チャンバ内で剪断力、衝撃力、および空洞力にかける
ことにより、
サブミクロンの液滴(100~200nmの分布)
が生成される。得られるpHは、6.8±0.1の間である。次いでSB62エマルジョンを、
0.22μm膜に通す濾過によって滅菌し、滅菌バルクエマルジョンを、2~8°CのCupac容器に冷蔵保存する
。滅菌不活性ガス(窒素またはアルゴン)を、少なくとも15秒間、SB62エマルジョンの最終バルク容器の死容積に一気に流す。
SB62エマルジョン
の最終的な組成は、下記の通りである:
Tween80:1.8%(v/v) 19.4mg/ml; スクアレン:5%(v/v) 42.8mg/ml; α-トコフェロール:5%(v/v) 47.5mg/ml; PBS-mod:NaCl 121mM、KCl 2.38mM、Na2HPO4 7.14mM、KH2PO4 1.3mM; pH6.8±0.1。」
・甲12-3(69頁24行~73頁4行(日本語公報【0303】~【0314】))
「III.4.1.3. AS03アジュバント添加H5N1を用いるワクチン組成物の調製
1)組成物
第I相臨床試験H5N1-007で評価する、AS03アジュバント添加不活化スプリットウイルスパンデミックインフルエンザ候補ワクチンは筋肉内投与を意図する。このワクチンは、I型ガラスバイアルで提供される濃縮不活化スプリットビリオン(H5N1)抗原と予め充填したI型ガラスシリンジに含有されるAS03アジュバントとから成る2成分ワクチンである。
調製したAS03アジュバント添加パンデミックインフルエンザワクチンの1用量は1mlに対応する。その組成を表7に掲げる。研究H5N1-007は用量を見出す研究であるので、試験臨床ロットのそれぞれについての1用量当たりのHA含量は異なる。1用量は3.8、7.5、15または30μgHAを含有する。ワクチンは、その薬物の製造プロセスに由来する次の残留物を含有する:ホルムアルデヒド、卵白アルブミン、スクロース、チメロサールおよびデオキシコール酸ナトリウム。
表7
再構成されたAS03アジュバント添加パンデミックインフルエンザ候補ワクチンの組成
52
68
0001430333000004.jpg
2)製剤
AS03アジュバント添加パンデミックインフルエンザワクチンの製造は次の3つの主要ステップから成る:
(a)アジュバント無添加スプリットウイルス最終バルク(2×濃縮)の製剤と抗原容器の充填、
(b)AS03アジュバントの調製とアジュバント容器の充填、
(c)AS03アジュバント添加スプリットウイルスワクチンの用事調製。
1)アジュバント無添加最終バルクの製剤と抗原容器の充填
製剤のフローシートを図5に示す。一価バルクの体積は、製剤前に一価バルクで測定したHA含量と標的体積4000mlに基づく。最終バルクバッファー(製剤バッファー中の含量:塩化ナトリウム:7.699g/l;リン酸二ナトリウム十二水和物:2.600g/l;リン酸二水素カリウム:0.373g/l;塩化カリウム:0.2g/l;塩化マグネシウム六水和物:0.1g/l)および補正体積のTritonX-100(5%オクトキシノール10(TritonX-100)溶液)およびチメロサール(0.9%チメロサールストック溶液)を連続攪拌下で一緒に混合する。次いでモノバルクH5N1を、得られるバルクバッファー-TritonX-100-チメロサールで希釈して、最終バルク(30、15、7.5または3.8μgHA/500μl最終バルク)1ml当たり60/30/15/7.6μgH5N1の最終濃度とする。この混合物を30~60分間攪拌する。pHが7.2±0.3であることをチェックする。Tween80を加える必要はなかった、というのは、モノバルク中に存在するTween80の濃度(822μg/ml)は濃度標的(12.26μg/μgHA)に十分到達するからである。
最終バルクを滅菌状態で3ml滅菌I型(Ph. Eur.) ガラスバイアル中に充填する。各バイアルは0.65ml±0.05mlの体積を含有する。
2)AS03滅菌アジュバントバルクの調製とアジュバント容器の充填
アジュバントAS03を、次の2成分の混合により調製する:SB62エマルジョンとリン酸バッファー。
SB62エマルジョン
SB62エマルジョンの調製は、疎水成分(α-トコフェロールとスクアレン)からなる油相と、水溶性成分(Tween80とリン酸塩-生理食塩水バッファー、pH6.8)を含有する水相とを強く撹拌しながら混合することによって行う。攪拌しながら、油相(全容積の1/10)を水相(全容積の9/10)に移し、その混合物を15分間室温にて攪拌する。次いで、 得られる混合物に、ミクロフルイダイザー(15000 PSI~8 サイクル)の相互作用チャンバ内で剪断力、衝撃力、および空洞力にかけることにより、サブミクロン液滴(100~200nmの間の分布)を作製した。得られるpHは6.8 ± 0.1の間である。次いでSB62エマルジョンを、0.22μm膜を通しての濾過によって滅菌し、滅菌バルクエマルジョンを、2~8°CのCupac容器に冷蔵保存する。滅菌不活性ガス(窒素)を、少なくとも15秒間、SB62エマルジョンの最終バルク容器の死容積に一気に流す。
SB62エマルジョンの最終的な組成は次の通りである(表8):
表8
25
69
0001430333000005.jpg
AS03アジュバント系
AS03アジュバント系は、バッファー(PBS mod)をSB62バルクと混合することにより調製する。混合物を15~45分間室温で攪拌し、NAOH(0.05または0.5M)/HCl(0.03Mまたは0.3M)によってpHを6.8±0.1に調節する。さらに15~20分間室温で攪拌し、pHを測定して混合物を、0.22μm膜を通す濾過により滅菌する。滅菌AS03アジュバントは1.25ml滅菌I型(Ph. Eur.)ガラスシリンジ中に無菌充填するまで、+2~8°Cで保存する。各シリンジは720μl(500μl+220μlで一杯になる)の全体積を有する。
AS03 アジュバントの最終組成物は次の通りである(表9):
表9
31
39
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3)AS03アジュバント添加スプリットウイルスワクチンの即時再構成
注射の時点で、予め充填したアジュバントを含有するシリンジの内容物を、濃縮三価不活化スプリットビリオン抗原を含有するバイアル中に射出する。混合後に、内容物をシリンジ中に吸い込み、そして注射針を筋肉用注射針と取り替える。即時再構成したアジュバント添加インフルエンザ候補ワクチンの1用量は1mlに対応する。
III.4.2 ワクチン調製物
ワクチンを、利き腕でない方の腕の三角筋部に、筋肉内投与した。パンデミックインフルエンザ候補ワクチンは、バイアル(抗原容器)に入れて提供される抗原とアジュバント(アジュバント容器)または希釈剤のいずれかを含有する予め充填したシリンジとから成る2成分ワクチンである。注射の時点で、予め充填したアジュバントを含有するシリンジの内容物を、抗原を含有するバイアル中に射出する。混合後、内容物をシリンジ中に吸い込む。使用した注射針を筋肉用注射針と取り替える。ワクチンの1用量は1mlに対応する。」
甲13
・甲13-1(請求項1、19)
「【請求項1】 代謝可能な油と、一つ又は複数の界面活性剤と、抗酸化剤と、組成物を等張にするための成分とを含む
アジュバント組成物
。
・・・
【請求項19】
抗原と
、代謝可能な油、一つ又は複数の界面活性剤、抗酸化剤、および組成物を等張にするための成分を含む
アジュバント組成物とを含むワクチン組成物
。
・・・」
・甲13-2(【0005】)
「発明の概要
本発明は、
新規なアジュバント組成物
である。アジュバント組成物は、代謝可能な油と、界面活性剤と、抗酸化剤と、乳濁液を等張にするための成分とを含む安定な
水中油型乳濁液(SE)
である。特許請求の範囲に記載された安定な乳濁液の粒子サイズは、130nmから3μm未満である。70~200nmの範囲の乳濁液は、濾過により滅菌されうる。安定な乳濁液の親水親油バランス(HLB)は、約7.5から約10.5であり、好ましくは約8.0である。」
・甲13-3(【0024】)
「
本発明の組成物はアジュバントである。有効量の組成物がタンパク質抗原と共に宿主に投与されると、その抗原に対する宿主の免疫応答は増強される。
特許請求の範囲に記載されたアジュバント組成物の有効量は、免疫応答を刺激又は増強する量である。当業者は、その抗原に対する免疫応答を刺激するために必要な抗原の量を認識していると思われる。例えば、本発明の好ましい態様と共に投与された2.5μgのB型肝炎表面抗原(HBsAg)は、マウスにおいて体液性応答を誘導した。」
・甲13-4(【0027】~【0031】)
「実施例1-3D-MLA/SEの調製
特に好ましい態様において、本発明の安定な乳濁液は、以下のものを含む。
材料 量
3D-MLA 1.200-0.005% w/v
スクアレン 10.000% v/v
PLURONIC-F68ブロック共重合体 0.091% w/v
卵ホスファチジルコリン 1.909% w/v
グリセロール 1.800% v/v
αトコフェロール 0.050% w/v
注射用水 78.200% v/v
リン酸アンモニウム緩衝液 10.000% v/v
特許請求の範囲に記載された乳濁液を調製するための方法は、当業者には明らかであると思われる。しかし、本発明者らは、MLA/卵PCストック、油ストック溶液、及び水性ストック溶液という3つのストック溶液を準備することにより、特許請求の範囲に記載された乳濁液が、最も容易に調製されることを見出した。
MLA/卵PCストックを調製するためには、3-脱アシル化モノホスフォリル・リピドA(3D-MLA)(Ribi ImmunoChem Research,Inc.,Hamilton,MT)及び卵ホスファチジルコリン(卵PC)を、それぞれ4:1クロロホルム:メタノール(C:M)に溶解させる。その後、その溶液を合わせ、C:Mを蒸発させる。混合物を凍結乾燥機に置き、減圧下でおよそ1~2時間保持することにより、残り のC:Mを除去する。
油相ストック溶液
は、αトコフェロール及びスクアレンを合わせ、溶解するまで加熱された水浴中でそれらを攪拌することにより調製される。
水相ストック溶液
は、PLURONIC F-68 NFブロック共重合体及びグリセロールをスクリューキャップ・ボトル中に計量することにより調製される。注射用水をボトルに添加し、それを、成分が溶解するまで加温し穏和に混合する。pH5.1±0.005の0.25Mのリン酸アンモニウム緩衝液を、PLURONIC F-68 NFブロック共重合体/グリセロール/水中に添加する。所望の容量が達成されるまで、さらに水を添加する。
安定な乳濁液を調製するためには、
ストック油相をMLA/卵PC混合物と合わせる
。MLAが溶解するまで、混合物を超音波処理する。その後、油相を75°Cに加熱し、水相を75°Cに加熱する。
水相を徐々に添加しながら、油相MLA/卵PC混合物を、シルバーソン乳化器(Silverson Emulsifier)を用いて乳化する。
得られた
SE乳濁液
は、8.0のHLBを有しており、氷浴中で室温まで冷却する。
乳濁液は、粒子サイズが0.2μm以下になるまで、
バルブにおける22,000~25,000psiの圧力において
アベスチンC-50ホモジナイザー(Avestin C-50 homogenizer)を用いてさらに均質化されうる
。最終的なアジュバント生成物を、
0.2μm親水性メンブレン・フィルターを用いて濾過する
。さらなる均質化及び最終濾過滅菌の工程は、組成物中に存在する3D-MLAの量又は調製物のアジュバント能に影響を与えない。」
甲14
・甲14-1(【0050】~【0052】)
「実施例1.水中油型エマルジョンのアジュバントの製造
各々が下記の水中油型エマルジョンの成分を含んでなる、引き続く実施例において使用する
水中油型エマルジョンのアジュバント処方物を製造した:5%のスクアレン、5%のα-トコフェロール、2.0%のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN80)。
エマルジョンを次のようにして2倍の濃厚物として製造した。余分の成分および希釈剤の添加により、免疫学的実験において使用したすべての実施例を希釈して、1×の濃度(240:1のスクアレン:QS21の比(w/w)に等しい)にするか、あるいはさらに希釈する。
簡単に述べると、
TWEEN80をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解して、PBS中の2%の溶液を形成する。100mlの2倍の濃厚なエマルジョンを形成するために、5mlのDLα-トコフェロールおよび5mlのスクアレンを撹拌して完全に混合する。95mlのPBS/TWEEN80溶液を油に添加し、よく混合する。次いで生ずるエマルジョンを注射器の針に通過させ、最後にM110S マイクロフラッディスク(Microfluidisc)装置を使用して微小流動化する。生ずる油滴はほぼ145~180nm(PCS により測定したzav.として表す)の大きさを有し、そして「完全な投与量の」SB62と命名する。
これらの処方物を0.2μmのフィルターを通して滅菌濾過することができる。他のアジュバント/ワクチン成分(QS21、3D-MPLまたは抗原)を、簡単な混合でエマルジョンに添加する。
本発明において使用する抗原を含有するワクチンは、完全な投与量のSB62アジュバントと配合して高いスクアレン:QS21の比(240:1)の形成するか、あるいはより少い量のエマルジョンと配合して低い比の処方物(48:1)を形成し、これらの処方物を、それぞれ、SB62およびSB62’と呼ぶ。乳化プロセス前に、エマルジョンの油相にコレステロールを添加して、他のワクチンを処方し、ここでQS21:コレステロールの比は1:10である(文字「c」の付加により表示する)。」
甲15(抄訳は甲38、甲39による)
・甲15-1(1頁、表紙)
「バイオプロセスカタログ
バイオ医薬産業のための製品とソリューション」
・甲15-2(114頁表題、114頁左欄2~24行)
「Sartopore
(R)
「Sartopore
(R)
は、医薬品適正製造基準の要求事項を順守することを目的として、広範囲の医薬製品を濾過できるように設計された0.2μm級滅菌フィルタカートリッジである。Sartopore
(R)
2カートリッジは、独特な親水性異質二重層ポリエーテルスルホン膜からなり、現存する滅菌フィルタカートリッジのいずれに比べても優れた特性を持ち、広範囲の化学的適合性、高耐熱性、高処理量、高流速の特性を全て備えています。
...
主用途は、以下の滅菌フィルタを含む:
-治療用
-生体液
-眼科剤
-SVPs(少量注射剤)、LVPs(大容量注射剤)
-抗生物質
-WFI(注射用水)
-化学物質
-洗浄剤、殺菌剤
-バルク医薬品」
・甲15-3(114頁右欄2~8行)
「Sartopore
(R)
2カートリッジは、0.45μm膜を用いた「組み込み予備濾過」による分画濾過のため、非常に高い総処理能力を持ち合わせている。ポリエーテルスルホン膜の非対称的孔構造は、低い圧力下で、高い流速を提供します。」
・甲15-4(114頁右欄14~17行)
「Sartopore
(R)
2フィルタカートリッジは、HIMA及びASTM F-838-83ガイドラインに従う滅菌グレードのフィルタエレメントとして十分検証されています。」
・甲15-5(114頁右欄のグラフ)
「総処理量比較
総処理量[95%閉塞時kg]
18
46
0001430333000007.jpg
10インチカートリッジ型」
・甲15-6(115頁左欄1~2行)
「孔サイズ
0.45μm+0.2μm」
・甲15-7(115頁右欄最上部の表)
「
17
66
0001430333000008.jpg
」
・甲16
・甲16-1(1111頁左欄40~51行)
「MF59エマルジョンは、5%(vol/vol) の代謝可能な天然油であるスクアレン(E. Merck, ダルムシュタット, ドイツ)、 ICIアメリカ(ウィルミントン, デラウエア)からの、 それぞれ0.5% (vol/vol) の界面活性剤Tween80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)及びSpan85 (ソレビタントリオレエート)を含んでいた。混合物を高圧(~4500k g/6.5cm
2
) で乳化すると (model 110Y 1:Microfluidics, ニートン,マサチュー セッツ)、平均粒径 1 9 4 士 76nmの非粘性水中油型エマルジョンとなった。 エマルジョンをポリスルホンフィルタ(0.22μm孔サイズ: Gelman Sciences, アナーバー ,ミシガン)を通して滅菌濾過し4°Cで貯蔵した。」
・甲17
・甲17-1(5403頁左欄42~48行)
「水中の5%スクアレン、0.5%ツイーン80及び0.5%スパン85(Sigma-Aldrich) からなるエマルジョンである、MF59は、マイクロフルイダイザー (model 110Y;Microfluidics) を用いて12,000psiで均質化して調製した。エ マルジョンはポリスルホンフィルタ (0.22μm孔サイズ;Gelman Sciences) を通して滅菌し 4 °Cで貯蔵した。 エマルジョンの液滴の平均粒径はMastersizer(Malvern Instruments) で測定すると1 9 4 土 76nmであった。」
・甲18
・甲18-1(5頁28行~6頁13行)
「スクアレンを含有し、かつ本発明の方法で試験することができる特定の水中油型エマルジョンアジュバントとしては、下記が挙げられるが、これらに限定されない。
・スクアレン、Tween 80、およびSpan 85のサブミクロンエマルジョン。エマルジョンの組成(体積)は、約5%のスクアレン、約0.5%のポリソルベート80、および約0.5%のSpan 85とすることができる。重量で表すと、これらの量は、4.3%のスクアレン、0.5%のポリソルベート80、および0.48%のSpan 85となる。このアジュバントは「MF59」と呼ばれる。MF59エマルジョンは、クエン酸塩イオン類、例えば10mMクエン酸ナトリウム緩衝剤を含むことが有利である。
・スクアレン、トコフェロール、およびTween 80のエマルジョン。このエマルジョンは、リン酸緩衝生理食塩水を含んでもよい。これは、Span 85(例えば、1%)および/またはレシチンも含んでよい。これらのエマルジョンは、2%~10%のスクアレン、2%~10%のトコフェロール、および0.3%~3%のTween 80を有してもよく、かつスクアレン:トコフェロールの重量比は≦1であることが、より安定なエマルジョンをもたらすので好ましい。スクアレンとTween 80は、約5:2の体積比で存在してもよい。このような1つのエマルジョンは、Tween 80をPBSに溶解して、2%溶液を得、次いでこの溶液90mlを(5gのDL-α-トコフェロールおよび5mlのスクアレン)の混合物と混合し、次いでこの混合物を微小流動化することによって作製することができる。得られたエマルジョンは、例えば平均直径100nm~250nm、好ましくは約180nmのサブミクロン油滴を有してもよい。このエマルジョンは、3d-MPLおよび/またはサポニン(例えば、QS21)も含んでよい。
・スクアレン、トコフェロール、およびTriton洗浄剤(例えば、Triton X-100)のエマルジョン。このエマルジョンは、3-O-脱アシル化モノホスホリル脂質A(「3d-MPL」)も含んでよい。このエマルジョンは、リン酸塩緩衝剤を含有してもよい。
・スクアレン、Pluronic F-68ブロックコポリマー、卵ホスファチジルコリン、グリセロール、およびトコフェロールを含むエマルジョン[14]。」
甲36
・甲36-1(18頁左欄1行目)
「導入」
・甲36-2(18頁左欄2~6行目)
「合成ポリマーの微小多孔性膜を使用する通常のフローフィルタ又はデッドエンドフィルタは、多種多様なバイオ医薬液体の濾過用途に広く使用される。」
・甲36-3(18頁中欄6行目~右欄2行目)
「媒体濾過には、典型的には、プレフィルタとして0.45μm、最終フィルタとして0.2μm及び0.1μmの範囲の保持定格を持つ膜が含まれる。膜フィルタは、セルロースDE清澄化フィルタ後の細胞回収清澄化においても使用される。これらのフィルタの主な目的は、濾液中のバイオバーデンを減らし、それによって製品中の細菌汚染の可能性を減らすことである。下流工程では、バイオバーデンを低減させ、プールされた下流精製中間体の無菌性を維持するために、滅菌グレードの0.2μm定格の膜フィルタが一般的に使用される。滅菌グレードの0.2/0.22μm定格フィルタは、最終的に精製されたバルク原薬をバイアルに滅菌するためにも使用される。」
・甲36-4(19頁左欄4~14行目)
「膜濾過は、血液分画、血清の処理、大容量非経口剤(LVP)等の従来 の製薬用途でも日常的に使用されている。ここでの目標は、バイオ医薬品プロセス と同じであり、製品の細菌汚染の可能性を低減させ、低温滅菌の方法を提供することである。プレフィルタと最終フィルタの組合せを正しく選択することで、流速、 濾過時間及び全体的な濾過コストの最適なバランスが得られる。」
・甲36-5(19頁左欄15~16行目)
「重要なメンブレンフィルタの特性」
・甲36-6(19頁左欄17行目~右欄2行目)
「膜濾過の主な目標は、濾液中の細菌汚染を減らし、0.2μm定格のフィルタ で「滅菌」濾液を提供することであるため、それらは、以下の基準に基づいて評価される:
・細菌汚染のリスクを大幅に低減させるための細菌の効果的な保持
・高い総処理量性能による低い濾過面積と削減された濾過コスト
・バッチ全体が妥当な時間枠で濾過することを保証する許容可能な流速範囲
・特に下流に移動し、標的たんぱく質の濃度が増加する場合の標的たんぱく質の低い吸収/吸着度」
・甲36-7(20頁右欄5行目)
「メンブレンフィルタの種類」
・甲36-8(20頁右欄18~20行目)
「膜の実際の孔径よりも大きい粒子や微生物は、効果的に除去される。」
・甲36-9(20頁右欄30~36行目)
「市販の膜フィルタデバイスの多くは、一般に、2つの不均一な膜の層からひだ加工されている。上流の膜層は、より大きな粒子除去のためにより粗いが、 下流の膜は、コロイド含有量とバイオバーデンを減らすためにより細かくなる。」
・甲36-10(21頁左欄18行目~中欄11行目)
「ザルトリウス・ステディム・バイオテックのSartopore
(R)
(R)
乙1
・乙1-1(1頁11~17行)
「概要
3.本件特許発明は、PES製の2つの異なる孔サイズを有する二重層を有する特定のフィルタを使用して、スクアレン含有水中油型エマルジョンを濾過するための改良された方法を対象としています。本件特許の明細書の実施例4には、異なる特性を有するフィルタと比較して、特許請求の範囲に含まれるフィルタの改善を示すデータが記載されています。本宣誓書は、
本件特許の明細書に記載されたデータを補足するための追加情報
を提供するものとなります。」
・乙1-2(1頁18~22行、表)
「本件特許明細書の実施例4
4.この実施例では、様々なメーカーの親水性膜が試験されています。
試験されたすべてのフィルタは、商業的な製造業者から得られたものであり、ノバルティス社のために特別に設計されたものではありません。
5.私たちの記録を調べたところ、実施例4で使用した9つのフィルターの特性は以下の表のとおりです。
48
72
0001430333000009.jpg
」
・乙1-3(1頁下から5~1行)
「要約
6.例示したフィルタは、
単層のフィルタ、両方の層が0.3μm以下の二重層のフィルタ、及びPVDF製の1層または2層のフィルタを含む、特許請求の範囲外のフィルタと比較して、本件特許のフィルター膜の%回収率が予想外に向上している
ことを示しています。」
乙2
・乙2-1(1頁7~最下行)
「1.実験日:2007年5月24日から2008年4月9日まで
2.実験場所:Marburg,Germany-Novartis Vaccines and Diagnostics GmbH
3.実験者:Gottfried Kraus
4.実験の目的
親水性ポリエーテルスルホン以外の親水性材料、例えばPVDFで製造された、孔サイズ0.45μmを有する予備濾過膜と孔サイズ0.2μmを有する最終濾過膜からなる滅菌フィルタの回収率を測定する。
5.実験内容
ポリソルベート80、ソルビタントリオレエートおよびクエン酸ナトリウム緩衝液を含むエマルジョンを、本件特許明細書の実施例1に従って調製した。上記エマルジョンを、165nm以下の平均油滴サイズを有し、かつ1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数が5×l0
8
/ml以下になるまで微小流動化した。
上記エマルジョンを、孔サイズ0.45μmを有する親水性の多孔性PVDFの予備濾過膜および孔サイズ0.2μmを有する親水性の多孔性PVDFの最終濾過膜を有する、滅菌グレードのフィルタカートリッジ(フィルタ3)を通してろ過した。
50リットルのエマルジョンを濾過した後のエマルジョンの収率を測定した。」
・乙2-2(2頁1~4行、表)
「6.実験結果
濾過後に回収された入カエマルジョンの%は以下のとおりであった。比較のために、本件特許明細書に記載のフィルタA~Cの結果を示す。
16
67
0001430333000010.jpg
14
38
0001430333000011.jpg
」
乙3
・乙3-1(1頁下段・標題)
「Pa11 Supor
(R)
EKV
滅菌グレードフィルター」
・乙3-2(2頁5行)
「採り入れられたPES膜・・・」
・乙3-3(6頁5~8行)
「同じ材料
*
シリンジフィルターから生産規模まで、すべての製品が、同じ膜及び同一の構
成材料を採り入れる。」
・乙3-4(7~12、14、15頁の各製品における各「構成材料」表中
の最上行)
(※合議体注:罫線省略)
「濾過膜 親水性PES」
乙4
(*合議体注:被請求人が乙4として提出したカタログ写しと、請求人が甲15として提出したそれとは、同一製品Sartopore
(R)
2についての同じカタログと認められる。よって、乙4の記載事項については、甲15の甲15-1~甲15-7を参照のこと。)
乙5
・乙5-1(5頁1~7行)
「 ヘルスケア
・・・CUNOは、Zeta Plus
(R)
、BioASSURE
(R)
、ZetaCarbon
(R)
及びMicrofluor
(R)
といった製品により、お客様に最も費用対効果の高い濾過・精製システムを提供するために、常に取り組んでいます。」
乙6
・乙6-1(3180頁左欄8~14行)
「・・・名目上の孔径0.22μmのポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)膜(Durapore,Millipore Corp.)を支持体として使用した。これらの膜は、薄いポリアクリレートコーティングにより親水性化したもの(Steuck,1986)又はコーティングなしのもの(疎水性)の2つの形態で得ることができる。」
乙7
・乙7-1(853頁右欄「foul」)
「foul ・・・
・・・
-vt.1
よごす,汚す
;<名を>汚す,はずかしめる;・・・.2a<網などを>もつれさせる,からませる.b海藻などが<船底に>付着する((航行を妨げる));
<銃・煙突などを>詰まらせる,ふさぐ;<線路・交通を>ふさぐ;
・・・」
乙8
・乙8-1(請求の範囲)
「1.永久親水性コーティングを有する非クラッキングポリエーテルスルホン微孔質膜であって、ここでコーティングは (a)
約0.1~100μm範囲の平均孔径
を有する
疎水性ポリエーテルスルホン膜
の全面に対し、ポリアルキレンオキシドポリマー及び少なくとも1つの多官能性モノマーの水溶液を直接塗布し、そして(b)多孔質膜の全体にわたり当該モノマーをプラズマ重合化して、得られるポリマーがポリエーテルスルホン多孔質膜及びポリオキシアルキレンオキシドポリマーの双方に結合し、当該多孔質膜がひだ状のカートリッジフィルタとしての使用のため折りたたまれる際にクラックを生じない非抽出可能な表面を形成せしめる、非クラッキングポリエーテルスルホン微孔質膜。
2.モノマーがジ-若しくはトリ-若しくはテトラ-アクリレート又はメタクリレートである、請求項1の膜。
3.モノマーは、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート、及び1,4-ブタンジオールジメタクリラートからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の膜。
・・・」
・乙8-2(2欄36~46行)
「米国特許第4,900,449号、第4,964,990号、および第5,108,607号は、疎水性ポリマー出発材料の溶液を形成し、
ポリマーを膜にキャストする前に高分子量(最大10,000ダルトン)ボリエチレングリコールを加えることによって、親水性ポリエーテルスルホン膜を調製する
ことを記載する。
高分子量のポリエチレングリコールは、得られるポリエーテルスルホン膜の初期の親水性を担う
ものである。
しかし、加工過程で公知の湿潤剤でもある高分子量ポリエチレングリコールはゆっくりと浸出し、ろ液を汚染する。
」
・乙8-3(3欄44~54行)
「本発明は、(a)疎水性ポリエーテルスルホン膜の表面全体を、ポリアルキレンオキシドポリマーと少なくとも1種の多官能重合性モノマーのアルコール-水溶液で直接コーティングし、(b)得られたポリマーがポリエーテルスルホン膜およびポリエチレンオキシドに付着して、膜が折り畳まれてプリーツカートリッジを形成する場合にクラックしない抽出不能表面を形成させる条件で膜表面全体にモノマーを重合して作成した非クラック性親水ポリエーテルスルホン膜に関するものである。」
・乙8-4(4欄30~38行)
「本明細書で使用される
ポリアルキレンオキシドポリマー
は、各繰り返し単位に2から約4個の炭素原子を有する(例えば、エチレンオキシド、プロヒオキシド、ブチレンオキシド)。
適切なポリマーは、高分子量、即ち、約25,000から1,000,000ダルトン以上、好ましくは約75,000ダルトン以上を有し、
ポリマーが通常室温で固体であるため、その上限は溶解時間によってのみ制限される。
最も好ましくは、ポリマーは、約75,000から200,000の分子量を有するポリエチレンオキシド
である。」
乙9
・乙9-1(119頁17~19行)
「・・・。PEGとPEOの構造は同じであり、
PEGは通常分子是20,000未満のポリマーを指し、PEOはより分子星の大きいポリマーを指す
。・・・」
乙10
・乙10-1(16頁16~17行)
(特許明細書【0107】中の「・・・PVPの代わりに、PEG(親水性)での処理は、
容易に詰まり(fouled)
(特に・・・」に対応する箇所)
「・・・. Treatment with PEG (hydrophilic) instead of PVP has been found to give a hydrophilized PES membrane that is
easily fouled
(particularly・・・」
・乙10-2(28頁30行~29頁1行)
(特許明細書【0194】中の「・・・フィルタDはまた、上記の基準を満たす濾過されたエマルジョンを提供したが、
より早く詰まり、
従って、上記フィルタD膜の交換を必要とすることが見いだされた。・・・」に対応する箇所)
「Although, filter D also provided a filtered emulsion meeting the above criteria, it was found
to block more quickly,
thus necessitating the replacement of the filter D membrane.・・・」
・乙10-3(29頁12行)
(特許明細書【0197】中の「・・・低回収%は、例えば、
詰まりが原因で
、上記フィルタが上記エマルジョンを保持することを示す。・・・」に対応する箇所)
「A low recovery % indicates that the filter retains the emulsion, for instance
because of blocking
.」
乙11
・乙11-1(6/11頁 表)
「ノバルティス ヴァクシーンズ アンド ダイアグノスティックス ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
ノバルティス ヴァクシーンズ内の滅菌濾過検証に関するMF59適合性方針説明書
表1 MF-59滅菌濾過構想/検証
19
72
0001430333000012.jpg
ノバルティス ヴァクシーンズ - 機密11頁のうちの6頁」
(※合議体注:「■」は被請求人による黒塗りを示す。以下同様。)
・乙11-2(7/11頁 表)
「ノバルティス ヴァクシーンズ アンド ダイアグノスティックス ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー
ノバルティス ヴァクシーンズ内の滅菌濾過検証に関するMF59適合性方針説明書
表2 プロセスフィルター0.2μm/低生体負荷 (方針説明書番号■)
19
72
0001430333000013.jpg
ノバルティス ヴァクシーンズ - 機密1頁のうちの7頁」
乙12
・乙12-1(2.~7.)
「2.私は、対象無効審判手続において、乙第1号証として提出された2021年7月27日付け宣誓供述書の宣誓供述者です。
・・・
4.本宣誓供述書では、2021年7月27日の宜誓供述書[以下、「宣誓供述書」]がどのように作成されたか、特にフィルター1の孔径について説明します。
5.ノバルティスアーゲーおよびその代理人の依頼により、私は、本特許明細書の実施例4の実験結果の詳細を示すために宣誓供述書を作成しました。作成にあたり、ノバルティス アーゲーの記録を確認しました。
フィルター1の大きな方の孔径が0.45μmという情報は、本件特許の情報および他の手続きで提出された情報に基づいています。
例えば、対象無効審判手続において別紙
乙第2号証
として提出されたフローリアン ビーレフェルトが宣誓供述した2016年7月12日付けの実験結果証明書[以下「証明書」]、EP2 343 052に関するEPOでの手続において2016年8月2日に、EP2 506 832に関するEPOでの手続において2016年8月3日に、EP2 601 933に関するEPOでの手続において2017年4月21日に提出された提出物などです。
6.本件発明の発明者であるにもかかわらず、このように
上記記録を確認したのは、実施例4の実験が10年以上前のものであり、その実験の正確なデータを覚えていなかった
からです。また、
ノバルティス社のワクチン事業が会社分割され、ノバルティス社が私の実験記録を入手できなくなったため、実施例4の実験の詳細について、私の実験記録を入手することができなかった
からです。
7.したがって、フィルター1の孔径に関して、私は、特許、証明書、および他の手続きで提出された情報を参照して、宣誓供述書の項目5の表を作成し、大きい方の孔径を0.45μmと記述しました。」
乙13
・乙13-1(1.~7.)
「1.私はノバルティス ファーマ アーゲーの特許訴訟・異議(米国外)の長をしています。私は2009年5月からノバルティス社で社内弁理士として勤務しています。特許5754860号(以下「本件発明」という。)を含む世界の特許ファミリーの統括に関与してきており、したがって、特許5754860号の内容に熟知しています。
・・・
3.私は、ローベルト エスケス氏による2021年7月27日の宣誓供述書(以下「宣誓供述書」)の調製を統括しており、フィルター1の大きな方 の孔径が0.45μmという情報は、本件特許の情報および他の手続きで提出された情報に基づいていることを確認することができます。例えば、対象無効審判手続において別紙
乙第2号証
として提出されたフローリアン ビーレフェルトが宣誓供述した2016年7月12日付けの実験結果証明書[以下「証明書」]、EP 2 343 052に関するEPOでの手続において2016年8月2日に、EP 2 506 832に関するEPOでの手続において2016年8月3日に、EP 2 601 933に関するEPOでの手続において2017年4月21日に提出された提出物などです。
4.
証明書がその宣誓供述者であるフローリアン ビーレフェルト氏によってどのように調製されたかわかりません。同氏はノバルティス社には在籍しておらず、証明書は6年も前に作成されたものであるからです。
5.乙第1および2号証が調製された履歴は以上の通りです。したがって、我々は誤った事実に基づいて主張する意図は全くありませんでした。
6.
我々はこれ以上の情報を見出すことができませんでした。なぜなら、ノバルティス社のワクチン事業は会社分割され、ノバルティス社は発明者のファイルにアクセスすることができなくなったからです。しかしながら、我々は、残りの記録をつぶさに検討し、我々がアクセスできた関連情報すべてを提供しました。
7.いずれにせよ、Supor EKVフィルターおよびSupor EBVフィルターの両方が、本件特許発明の技術的範囲に属するものです。」
乙14
・乙14-1(1.~5.)
「1.私は、ノバルティス アーゲーの原薬開発サイエンスオフィスのアソシエイトディレクターであり、本書の内容を熟知しています。
・・・
3.
2022年5月24日にPall社のバーバラ フライ氏に問い合わせた
ところ、S
upor EKVフィルターは2009年12月3日より前に市販されており、2層の親水性ポリエーテルスルホン膜で、孔径は0.65/0.2μmであると回答した
ことを確認いたしました。
4.さらに、
2022年6月16日にPall社のバーバラ フライ氏に間い合わせた
ところ、彼女は、
SuporEBVフィルターは2009年12月3日より前に市販されており、このフィルターは孔径0.45/0.2μmの親水性ポリエーテルスルホン膜の2重層であると回答した
ことを確認いたしました。
5.私はさらに、2009年7月22日付の 「MF59 COMPLIANCE POSITION PAPER WITH RESPECT TO STERILE FILTRATION VALIDATION WITHIN NOVARTIS VACCINES」という文書(訳注:
乙第11号証
として提出)及び2005年から入手可能なCUNO社の「BioASSURE
TM
」というカタログ(訳注:
乙第16号証
として提出する 「BioASSURE
TM
Robust Steri1izing Grade Po1yethersulfone membrane」と称する文書)に基づき、
CUNO BioASSUREフィルターが、ポリエーテルスルホン膜の2層構造で孔径が0.45/0.2μmであり、2009年12月3日より前から市販されていたことを確認いたしました
。」
乙15
・乙15-1(4頁2~6行)
「1.1 序
Pall Supor
(R)
EBVフィルターカートリッジは、0.2μm規格の液体滅菌フィルターとして製薬業界内での使用のために設計されました。このフィルターは、2層のポリエーテルスルホン膜で構成されています。上流側の粗い膜は、下流側のより細かい膜へのビルトイン前濾過を提供します。・・・」
・乙15-2(15頁下段表最上行)
「膜Pall親水性ポリエーテルスルホン膜」
乙16
・乙16-1(2頁上段3~4行)
「CUNOの新しいBioASSUREフィルターは、2つの非対称ポリエーテルスルホン(PES)膜層を、自社独自のAdvanced Pleat Technology
(R)
(APT)デザインとともに組み合わせたものである。」
・乙16-2(2頁中段中欄4~6行)
「BioASSUREフィルターは、ユニークな親水性ポリエーテルスルホン膜の2つの膜を組み込むものである。・・・」
・乙16-3(3頁上段表)(※合議体注:罫線省略)
「特徴 利点
強靱な二重膜層フィルター構造 ・・・
親水性非対称性ポリエーテルスルホン膜 ・・・
検証された0.2μm絶対rateの膜 ・・・
・・・」
(2)無効理由1について
ア. 無効理由1(1)について
審判請求人は、請求項1に記載の「親水性二重層ポリエーテルスルホン膜」の「親水性」は、本件明細書の発明の詳細な説明の【0093】、【0101】、【0107】、【0186】、【0192】、【0196】の開示及び本件出願時の技術常識に照らせば、単に「水に親和性があればよいという性質」であるとは解されないにもかかわらず、本件明細書の発明の詳細な説明には、水との親和力の強さの程度や水への親和度の程度について何ら定義されず、本件出願時の技術常識を参酌してもこれらの程度は一義に定まらないから、請求項1に記載された「親和性」の意味する範囲が明確であることはいえず、したがって、請求項1に係る発明は明確ではないと主張する。
確かに、本件明細書の発明の詳細な説明には、水との親和力の強さの程度や水との親和度の程度を定義した記載はない。しかしながら、「親和性」との用語は、甲2に、「ある物質が、水との間で相互作用し合い、水との親和力が強い性質をもつこと」、甲3に、「水に親和性を示す性質」と示されるとおり、一般に、水に親和性があればよいという性質を意味することは、本件出願時の当業者の技術常識である。
そして、このことは、本件明細書の発明の詳細な説明の記載とも符合する。すなわち、本件明細書中に、ポリエーテルスルホン膜(PES膜)の「親水性」化に関し、次のような記載がされている。
「【0100】
濾過膜は、代表的には、ポリマー支持材料(例えば、PTFE(ポリ-テトラ-フルオロ-エチレン)、
PES(ポリエーテルスルホン)
、・・・、ニトロセルロースなどから作製される(・・・)。これら支持材料は、種々の特性を有し、・・・。しかし、これら本質的な特性は、上記膜表面を処理することによって改変され得る。例えば、上記膜表面を他の材料(例えば、他のポリマー、グラファイト、シリコーンなど)で処理して、
上記膜表面をコーティングすることによって、親水性化(hydrophilized)膜
もしくは疎水性化(hydrophobized)膜を調製することは公知である(・・・)。二重層フィルタにおいて、上記2つの膜は、異なる材料から作られてもよいし、(理想的には)同じ材料から作られてもよい。
【0101】
本発明とともに使用するための理想的フィルタは、疎水性(ポリスルホン)フィルタが使用されるべきであるという参考文献9~12の教示とは対照的に、
親水性
表面を有する。
親水性
表面を有するフィルタは、・・・
疎水性材料の親水性化(hydrophilization)
によって形成され、本発明での使用に好ましいフィルタは、
親水性ポリエーテルスルホン膜
である。いくつかの異なる方法は、
疎水性PES膜を親水性PES膜へと変える
ことは公知である。しばしば、それは、
親水性ポリマーで上記膜をコーティングする
ことによって達成される。・・・」
かかる本件明細書の記載を参照すると、「親水性」とは、「疎水性」との対比において用いられている用語であり、請求項1に記載の「親水性ポリエーテルスルホン膜」とは、本来疎水性であるポリエーテルスルホンから作製される支持体を、他のポリマー等で処理して、膜表面をコーティングすることによって、親水性化したものであるとむしろ自然に解されるものである。
したがって、発明の詳細な説明に、水との親和力の強さの程度や水への親和度の程度についての定義がないからといって、請求項1に記載の「親水性」の意味が不明確であるということにはならない。
したがって、本件発明1は明確である。
同様の記載のある請求項2~36、38~54に係る発明についても同様である。
よって、無効理由1(1)は理由がない。
イ. 無効理由1(2)について
(ア)請求人の主張の概要
無効理由1(2)についての審判請求書における請求人の主張は、概要次のとおりのものである。
「請求項16に係る方法は、「エマルジョンアジュバントを、キット成分として、抗原成分と一緒にキットにパッケージする工程を包含する」、「
ワクチンキット
を調製するための方法」であり、調製された
ワクチンキットのエマルジョンアジュバントと抗原成分は組成物を形成していない
。請求項16を直接または間接的に引用する請求項17~19に記載された方法も同様である。
これに対し、請求項16~19を引用する請求項20を引用する、請求項21~29には、「
エマルジョンおよび前記抗原の組み合わせがワクチン組成物を形成
し」と記載されており、
この記載と、請求項16~19の記載とが整合していない
。
したがって、当業者には、本件請求項21~29に係る発明が明確に理解できない。
請求項20~29を引用する請求項30及び32も同様である。」
(イ)請求人の主張に対する合議体の判断
本件訂正により、請求人の主張する不整合はもはや存在しないことは明らかである。したがって、本件発明21~29は明確である。請求項21~29を引用する請求項30及び32についても同様である。
よって、無効理由1(2)は、理由がない。
ウ. 無効理由1(3)について
(ア)請求人の主張の概要
無効理由1(3)についての審判請求書における請求人の主張は、概要次のとおりのものである。
「本件請求項33に記載されている方法は、「
均質な水中油型エマルジョン
を製造するための方法」である。
ここで、本件明細書の発明の詳細な説明を参照すると、「薬学的組成物」は、「上記エマルジョン
および上記任意の抗原のほかに、成分を含み得る
」(特許明細書【0152】)ものとされているから、
本件請求項33に記載されている方法により製造される「水中油型エマルジョン」は、「薬学的組成物」とは異なる
意味概念のものであると解される。請求項33を引用する請求項34~42に記載されている方法により製造されるものも同様である。
そうすると、請求項43の「
薬学的組成物を形成する
工程をさらに包含する」という記載は、「薬学的組成物」とは異なる
「水中油型エマルジョン」を製造するための方法に係る請求項33~42を引用した「請求項33~42のいずれか1項に記載の方法」という記載と整合していない
ことになる。
したがって、当業者は、本件請求項43に係る発明が明確に理解できない。
本件請求項43を直接又は間接的に引用する請求項44~46に係る発明も同様である。」
(イ)請求人の主張に対する合議体の判断
本件訂正により、請求項43において、「請求項33~42」との引用関係が解消されると共に、最終目的製造物が「薬学的組成物」であることが明確にされ、請求人の主張する不整合はもはや存在しないことは明らかである。したがって、本件発明43は明確である。当該請求項43を引用する請求項44~46についても同様である。
よって、無効理由1(3)は、理由がない。
(3)無効理由2について
ア. 本件発明1~36、38~54は、いずれも、発明のカテゴリーを、物を生産する方法あるいは方法とする発明であるところ、これらの発明について、発明の詳細な説明の記載が、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、「方法の発明」については、当業者がその方法を使用できるように記載されていなければならず、「物を生産する方法」については、当業者がその物を製造できるように記載されていることが要される。
本件各発明は、1)「第1の層」と「第2の層」とを含む「二重層」の「ポリエーテルスルホン」膜であること、2)前記「第1の層」が「0.3μm以上」の孔サイズを有し、かつ、同「第2の層」が「0.3μmより小さい」孔サイズを有すること、3)「親水性」であることを併せ満たす、親水性二重層ポリエーテルスルホン(PES)膜(以下「本件各発明に係る親水性二重層PES膜」ともいい、前記1)から3)までの本件各発明に係る構成上の要件を併せて「本件各要件」という。)を用いた濾過工程を含む水中油型エマルジョンを製造する方法に係る発明である。
請求人は、本件明細書の発明の詳細な説明からでは、当業者が本件各発明の本件各発明に係る親水性二重層PES膜を入手ないし製造して濾過を行うことができないから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件各発明に係る発明の実施(使用)をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないと主張する。
イ. この点について、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を検討すると、以下のとおりの記載がある。
「【0095】
上記エマルジョンは、例えば、0.45μmフィルタを通って、予備濾過(prefilter)され得る。上記予備濾過および濾過は、より大きな孔を有する第1の膜層およびより小さな孔を有する第2の膜層を含む公知の二重層フィルタの使用によって、一工程で達成され得る。二重層フィルタは、本発明で特に有用である。上記第1の層は、理想的には、孔サイズ>0.3μm(例えば、0.3~2μmの間もしくは0.3~1μmの間、もしくは0.4~0.8μmの間、もしくは0.5~0.7μmの間)を有する。上記第1の層における孔サイズ≦0.75μmは、好ましい。従って、上記第1の層は、例えば、孔サイズ0.6μmもしくは0.45μmを有し得る。上記第2の層は、理想的には、上記第1の層の孔サイズの75%未満(お よび理想的には、その半分未満(例えば、上記第1の層の孔サイズの25~70%の間もしくは25~49%の間、例えば、上記第1の層の孔サイズの30~45%の間(例えば、1/3もしくは4/9)))である孔サイズを有する。従って、上記第2の層は、0.3μmより小さな孔サイズ(例えば、0.15~0.28μmの間もしくは0.18~0.24μmの間)を有し得る(例えば、0.2μmもしくは0.22μmの孔サイズの第2の層)。一例において、上記より大さな孔を有する第1の膜層は、0.45μmフィルタを提供する一方で、上記より小さな孔を有する第2の膜層は、0.22μmフィルタを提供する。」
「【0100】
濾過膜は、代表的には、ポリマー支持材料(例えば、PTFE(ポリ-テトラ-フルオロ-エチレン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVDF(ポリビニリデンフルオリド)、ナイロン(ポリアミド)、PP(ポリプロピレン)、セルロース(セルロースエステルを含む)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ニトロセルロースなどから作製される(しかし、本発明は、好ましくは、セルロースベースのフィルタの使用を回避する)。これら支持材料は、種々の特性を有し、あ る支持体は、本質的に疎水性(例えば、PTFE)であり、またほかの支持体は、本質的に親水性(例えば、酢酸セルロース)である。しかし、これら本質的な特性は、上記膜表面を処理することによって改変され得る。例えば、上記膜表面を他の材料(例えば、他のポリマー、グラファイト、シリコーンなど)で処理して、上記膜表面をコーティングすることによって、親水性化(hydrophilized)膜もしくは疎水性化(hydrophobized)膜を調製することは公知である(例えば、参考文献15の第2.1節を参照のこと)。二重層フィルタにおいて、上記2つの膜は、異なる材料から作られてもよいし、(理想的には)同じ材料から作られてもよい。
【0101】
本発明とともに使用するための理想的フィルタは、疎水性(ポリスルホン)フィルタが使用されるべきであるという参考文献9~12の教示とは対照的に、親水性表面を有する。親水性表面を有するフィルタは、親水性材料から形成され得るか、または疎水性材料の親水性化(hydrophilization)によって形成され、本発明での使用に好ましいフィルタは、親水性ポリエーテルスルホン膜である。いくつかの異なる方法は、疎水性PES膜を親水性PES膜へと変えることは公知である。しばしば、それは、親水性ポリマーで上記膜をコーティングすることによって達成される。上記親水性ポリマーの恒久的なPESへの結合を提供するために、親水性コーティング層は、通常、架橋反応もしくはグラフト化(grafting)のいずれかに供される。参考文献15は、官能化可能な鎖の末端を有する疎水性ポリマーの表面特性を改変するためのプロセスを開示し、上記プロセスは、上記ポリマーとリンカー部分の溶液とを接触させて、共有結合を形成する工程、次いで、上記反応した疎水性ポリマーと改変剤の溶液とを接触させる工程を包含する。参考文献16は、直接膜コーティングによってPES膜を親水性化する方法を開示し、上記方法は、アルコールであらかじめぬらす工程、次いで、親水性モノマー、多官能性モノマー(架橋剤)および重合開始剤を含む水溶液中に浸漬させる工程を包含する。上記モノマーおよび架橋剤は、次いで、熱開始重合もしくはUV開始重合を使用して重合されて、上記膜表面上に架橋された親水性ポリマーのコーティングを形成する。同様に、参考文献17および18は、PES膜を、親水性ポリマー(ポリアルキレンオキシド)および少なくとも1種の多官能性モノマー(架橋剤)の水溶液中に浸漬し、次いで、モノマーを重合して、非抽出可能な親水性コーティングを提供することによって、上記PES膜をコーティングすることを開示する。参考文献19は、PES膜が低温ヘリウムプラズマ処理、続いて、親水性モノマーであるN-ビニル-2-ピロリドン(NVP)の、上記膜表面へのグラフト化に供されるグラフト化反応によって、PES膜の親水性化を記載する。さらに、このようなプロセスは、参考文献20~26に開示される。
【0102】
コーティングに依拠しない方法において、PESは、溶媒中に溶解され得、可溶性の親水性添加剤とともにブレンドされ得、次いで、上記ブレンドされた溶液は、親水性膜を、例えば、沈殿によるかもしくは共重合化を開始するかによって、注型のために使用される。このような方法は、参考文献27~33において開示される。例えば、参考文献33は、低い膜抽出性を有し、超純水耐性の迅速な回復を可能にする、親水性の電荷が改変された膜を調製するための方法を開示し、上記膜は、PES、PVP、ポリエチレンイミン、および脂肪族ジグリシジルエーテルのブレンドのポリマー溶液を作製し、上記溶液の薄いフィルムを形成し、膜としてこのフィルムを沈殿させて形成される、架橋された、相互貫入(inter-penetrating)ポリマーネットワーク構造を有する。類似のプロセスは、参考文献34に開示される。
【0103】
ハイブリッドアプローチが、使用され得る。ここで親水性添加剤が、膜形成の間に存在し、また、コーティングとして後に添加される(例えば、参考文献35を参照のこと)。
【0104】
PES膜の親水性化はまた、低温プラズマでの処理によって達成され得る。参考文献36は、低温CO2プラズマでの処理によるPES膜の親水性改変を記載する。
【0105】
PES膜の親水性化はまた、参考文献37に記載されるように、酸化によって達成され得る。この方法は、疎水性PES膜を、低表面張力を有する液体中であらかじめぬらす工程、上記ぬらしたPES膜を酸化剤の水溶液に曝露する工程、次いで、加熱する工程を包含する。
【0106】
転相(phase inversion)もまた、参考文献38に記載されるように、使用され得る。
【0107】
理想的な親水性PES膜は、PES(疎水性)をPVP(親水性)で処理することによって得られ得る。PVPの代わりに、PEG(親水性)での処理は、容易に詰まり(fouled)(特に、スクアレン含有エマルジョンを使用する場合に)、また、不利なことには、オートクレーブの間にホルムアルデヒドを放出する、親水性化したPES膜を与えることが見いだされた。
【0108】
好ましい二重層フィルタは、第1の親水性PES膜および第2の親水性PES膜を有する。濾過が、最初に、二重層酢酸セルロースフィルタを介し、次いで、第2の二重層酢酸セルロースフィルタを通る実施形態は、好ましく ない(およびときおり、放棄され得る)。ここで上記第1のフィルタのより小さな孔サイズは、上記第2のフィルタのより大きな孔サイズより大きく、上記第2の二重層フィルタは、濾過滅菌を達成する。
【0109】
公知の親水性膜としては、Bioassure(Cuno製);EverLUXTM ポリエーテルスルホン;STyLUXTM ポリエーテルスルホン(ともにMeissner製);Millex GV、Millex HP、Millipak 60、Millipak 200およびDurapore CVGL01TP3膜(Millipore製);FluorodyneTM EX EDF膜、SuporTM EAV;SuporTM EBV、SuporTM EKV(すべてPall製);SartoporeTM(Sartorius製);Sterlitechの親水性PES膜;およびWolftechnikのWFPES PES膜が挙げられる。」
「【0185】
(実施例1)・・・
【0186】
上記エマルジョンを、孔サイズ0.45μmを有する親水性の非対称性多孔性ポリエーテルスルホンの予備フィルタ膜および孔サイズ0.2μmを有する親水性の非対称性多孔性ポリエーテルスルホンの最終フィルタ膜を有する、滅菌グレードのフィルタカートリッジ(フィルタA)を通して濾過した。濾過の間に、上記エマルジョンを、40±5°Cの温度で維持した。
【0188】
・・・
表1に示されるように、フィルタAは、上記エマルジョンにおける上記油滴の平均サイズを一貫して低下させた。さらに、フィルタAは、上記エマルジョン中の1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数を、約1/10
3
に一貫して低下させた。」
「【0189】
(実施例2)
実施例1について使用されたものと同じ微小流動化エマルジョンを、異なる滅菌グレードのフィルタカートリッジ(フィルタB)を通して濾過した。フィルタBは、親水性の非対称性多孔性ポリエーテルスルホンの予備フィルタ膜および孔サイズ0.2μmを有する親水性の非対称性多孔性ポリエーテルスルホンの最終フィルタ膜を有した。・・・
【0191】
・・・実施例1および実施例2から、フィルタBが、油滴サイズがわずかに小さくなるが、1.2μmより大きいサイズを有する油滴の数がわずかに多くなることが認められ得る。しかし、フィルタAおよびフィルタBはともに、優れた結果を示した。」
「【0192】
(実施例3)
実施例1について使用したものと同じ微小流動化エマルジョンを、別の異なる滅菌グレードフィルタカートリッジ(フィルタC)を通して濾過した。フィルタCは、孔サイズ0.45μmを有する親水性の非対称性多孔性ポリエーテルスルホンの予備フィルタ膜および孔サイズ0.2μmを有する親水性の非対称性多孔性ポリエーテルスルホンの最終フィルタ膜を有した。
・・・
【0194】
フィルタCは、平均油滴サイズ155±20nmを有し、かつ1.2μmよりも大きいサイズを有する油滴の数が5×10
6
/ml以下である濾過されたエマルジョンを提供する、優れた濾過結果を示した。」
「【0195】
(実施例4)
種々の製造業者の、10枚の異なる親水性膜を、スクアレン、ポリソルベート 80、ソルビタントリオレエートおよびクエン酸ナトリウム緩衝液を含む微小流動化エマルジョンを濾過するために試験した。上記フィルタを、表3に示されるように、1から10まで番号付けした(注:フィルタ1は、上記実施例3におけるフィルタCと同じである;フィルタ2は、フィルタDである;フィルタ9は、フィルタAである;フィルタ10は、フィルタBである)。
【0196】
50リットルのエマルジョンを濾過した後のエマルジョンの収率を測定して、上記フィルタが工業スケールでの使用に適しているか否かを決定した。濾過後に回収された入力エマルジョンの%は、以下のとおりであった:
【0197】
12
89
0001430333000014.jpg
低回収%は、例えば、詰まりが原因で、上記フィルタが上記エマルジョンを保持することを示す。フィルタ1、フィルタ8、フィルタ9およびフィルタ10(すなわち、上記のフィルタA、フィルタBおよびフィルタCと、フィルタAに類似であるが、上記第1の層においてより大きな孔サイズを有する1枚のさらなるフィルタ)のみが、50%以上の収率を与え、工業スケールで使用するのに最も実用的な収率は、フィルタ8~10であったことは、明らかである。フィルタ1、フィルタ8、フィルタ9およびフィルタ10は、すべて、3者の異なる製造業者によって調製された二重層親水性PES膜である。これら4枚の膜における上記第1の層は、0.45μmもしくは0.6μmのいずれかであり、上記第2の層は、0.2μmである。最良の結果は、上記2つの層のうちの少なくとも一方が非対称性膜であった場合に認められた。」
ウ. 本件特許の出願時の技術常識
・乙8の乙8-1~8-3、8-5に示されるように、ポリオキシアルキレンオキシドポリマーで表面をコーティングすることで疎水性PES膜を親水性化することは、本件特許出願当時技術常識であった。
・下記乙3、4、15、16に示されるとおり、本件各要件を満たすファイルは周知技術であった。
本件特許出願当時、市販されていた周知のフィルタとして、例えば、Pall社製のSupor
TM
EKV(乙3)、Sartorius社製のSartopore
TM
2(乙4(甲15))、Pall社製のSupor
TM
EBV(乙15)、CUNO社製のBioASSURE
TM
(乙16)が挙げられる。
エ. 判断
本件明細書の発明の詳細な説明には、本件各要件を備えるフィルタにつき、「予備濾過および濾過は、より大きな孔を有する第1の膜層およびより小さな孔を有する第2の膜層を含む公知の二重層フィルタの使用によって、一工程で達成され得る。二重層フィルタは、本発明で特に有用である。上記第1の層は、理想的には、孔サイズ>0.3μm・・・上記第2の層は、0.3μmより小さな孔サイズ・・・を有し得る(例えば、0.2μmもしくは0.22μmの孔サイズの第2の層)。一例において、上記より大さな孔を有する第1の膜層は、0.45μmフィルタを提供する一方で、上記より小さな孔を有する第2の膜層は、0.22μmフィルタを提供する。」(【0095】)こと、「濾過膜は、代表的には、ポリマー支持材料(例えば、・・・PES(ポリエーテルスルホン)・・・などから作製される(しかし、本発明は、好ましくは、セルロースベースのフィルタの使用を回避する)。これら支持材料は、種々の特性を有し、ある支持体は、本質的に疎水性(例えば、PTFE)であり、・・・これら本質的な特性は、上記膜表面を処理することによって改変され得る。例えば、上記膜表面を他の材料(例えば、他のポリマー、グラファイト、シリコーンなど)で処理して、上記膜表面をコーティングすることによって、親水性化(hydrophilized)膜もしくは疎水性化(hydrophobized)膜を調製することは公知である(例えば、参考文献15の第2.1節を参照のこと)。二重層フィルタにおいて、上記2つの膜は、異なる材料から作られてもよいし、(理想的には)同じ材料から作られてもよい。」(【0100】)こと、「理想的な親水性PES膜は、PES(疎水性)をPVP(親水性)で処理することによって得られ得る。」(【0107】)ことが記載されるとおり、その製造方法が説明されるとともに、「公知の親水性膜としては、Bioassure(Cuno製);EverLUXTM ポリエーテルスルホン;STyLUXTM ポリエーテルスルホン(ともにMeissner製);Millex GV、Millex HP、Millipak 60、Millipak 200およびDurapore CVGL01TP3膜(Millipore製);FluorodyneTM EX EDF膜、SuporTM EAV;SuporTM EBV、SuporTM EKV(すべてPall製);SartoporeTM(Sartorius製);Sterlitechの親水性PES膜;およびWolftechnikのWFPES PES膜が挙げられる。」(【0109】)と記載されるとおり、これらの膜が市販されていることが示されている。そしてこのことは、上記ウの本件特許の出願時の技術常識とも符合する。
その上で、本件明細書の発明の詳細な説明には、具体的態様として、実施例1~3に、本件各要件を備える親水性二重層PES膜に相当するフィルタA、フィルタB、フィルタCを濾過膜を用いてエマルジョンを製造した具体例が開示され、当該実施例1~3には、フィルタA、フィルタB、フィルタC、が、いずれも、平均油滴サイズ141nm~155±20nm程度、かつ、1.2μmより大きいサイズの油滴数が0.08×10
6
~5×10
6
/ml程度の、優れて均質化された水中油型エマルジョンをもたらすことができることが、実験結果をもって具体的に示され、実施例4には、これらのフィルタを用いた工業スケールでのエマルジョンの製造結果が記載されている。
そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件各要件を備える親水性二重層PES膜を製造ないし取得することができることが説明され、これを用いた場合にワクチンアジュバントを製造することができたことを示す実施例が開示されているのであるから、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明には、請求項1~36、38~54の各発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されている、ということができる。
オ. 請求人の主張について
請求人は、フィルタ1、8、9、10の各製造業者とその商品を特定することができないことを根拠に、「フィルタX」に対応する消費を製造業者に注文し入手することができないから、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないと主張するが、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件各要件を備える親水性二重層PES膜の材料や製造方法について記載されており(【0100】、【0107】)、かかる親水性二重層PES膜が商業的に入手可能であったことも、【0108】の記載やウで述べた本件特許の出願時の技術常識から明らかである。
そして、本件特許明細書の発明の詳細な説明では、そのような記載や技術常識を踏まえた上で、実施例1~4として本件各要件を備える親水性二重層PES膜をフィルタとして用いて本件発明を実施したことが示されているのだから、販売される商品番号を特定することができないからといって、実施可能要件を充足しないということにはならない。
したがって、請求人の主張は、採用できない。
カ. 本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1~36、38~54について、当業者が実施することができるといえる程度に明確かつ十分に記載されているということができる。
よって、無効理由2は、理由がない。
(4)無効理由3について
ア. サポート要件について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断される。
イ. 本件発明が解決しようとする課題について
本件発明が解決しようとする課題に関し、特許明細書中には、次の記載がある。
「【0002】
(技術分野)
本発明は、例えば、微小流動化(microfluidization)による、
ワクチンのための水中油型エマルジョンアジュバント
を製造する分野にある。
【背景技術】
【0003】
(背景技術)
「MF59」として公知のワクチンアジュバント
[1(特許文献1)、2~3(非特許文献1~2)]
は、スクアレン、ポリソルベート 80(Tween 80としても公知)、およびソルビタントリオレエート(Span 85としても公知)のサブミクロン水中油型エマルジョンである。
これはまた、クエン酸イオン(例えば、10mM クエン酸ナトリウム緩衝液)を含み得る。体積による上記エマルジョンの組成は、約5% スクアレン、約0.5% Tween 80および約0.5% Span 85であり得る。上記アジュバントおよびその生成は、参考文献4の第10章、参考文献5の第12章および参考文献6の第19章により詳細に記載される。
【0004】
参考文献7に記載されるように、
MF59は、上記スクアレン相の中にSpan 85を、および水相の中にTween 80を分散させ、続いて、高速で混合して、粗いエマルジョンを形成することによって、商業スケールで製造される。次いで、この粗いエマルジョンは、反復して、マイクロフルイダイザーを通過させられて、均一な油滴サイズを有するエマルジョンを生成する。
参考文献6に記載されるように、
次いで、上記微小流動化エマルジョンは、任意の大きい油滴を除去するために、0.22μm膜を通して濾過され、
得られたエマルジョンの平均液滴サイズは、少なくとも3年間にわたって4°Cにおいて変化しないままである。上記最終エマルジョンのスクアレン含有量は、参考文献8(特許文献2)に記載されるように測定され得る。
【0005】
種々の文書(例えば、参考文献9~12)は、MF59が
微小流動化
、続いて、
0.22μmポリスルホンフィルタを通す濾過滅菌
によって製造され得ることを開示する。ポリスルホンは、主なポリマー骨格中にスルホン基(SO
2
)を含むポリマーであり、
ポリスルホンフィルタは、周知の疎水性フィルタである
。
【0006】
微小流動化した水中油型エマルジョン(例えば、MF59)の生成のためのさらなるかつ改善された方法、特に、商業スケールでの使用に適しておりかつ濾過を使用する方法を提供すること
が、本発明の目的である。」
これらの記載からみて、本件発明は、従来、MF59のようなスクアレン含有水中油型アジュバントは、「スクアレン相の中にSpan 85を、および水相の中にTween 80を分散させ、続いて、高速で混合して、粗いエマルジョンを形成することによって、商業スケールで製造され」、「次いで、この粗いエマルジョンは、反復して、マイクロフルイダイザーを通過させられて、均一な油滴サイズを有するエマルジョンを生成」し、「微小流動化エマルジョンは、任意の大きい油滴を除去するために、0.22μm膜を通して濾過され」ることにより得られるものであって、「MF59が微小流動化、続いて、0.22μmポリスルホンフィルタを通す濾過滅菌によって製造され得ること」、「ポリスルホンフィルタは、周知の疎水性フィルタである」ことが背景技術として存在していた中でなされた発明であって、その解決しようとする課題とは、【0006】に記載されているとおり、「微小流動化した水中油型エマルジョン(例えば、MF59)の生成のためのさらなるかつ改善された方法、特に、商業スケールでの使用に適しておりかつ濾過を使用する方法を提供すること」にあるといえる。
ウ. 検討
本件発明は、上記イの課題の解決手段として、本件各要件を備える本件各発明に係る親水性二重層PES膜を用いた濾過工程を含む水中油型エマルジョンを製造する方法が規定されているものである。
そこで、本件発明が、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であり、上記詳細な説明の記載又は本件出願時の技術常識に照らして、当業者が前記のような本件発明の課題を解決するものと認識できる範囲のものであるといえるかについて、検討する。
(ア)本件明細書の各段落の記載
本件各要件を備える親水性二重層PES膜について、発明の詳細な説明には、以下のように説明されている。
【0093】
濾過滅菌に適した上記特定の濾過膜は、上記第2のエマルジョンの流体特性および必要とされる濾過の程度に依存する。フィルタの特性は、上記微小流動化エマルジョンの濾過の適切性に影響を及ぼし得る。例えば、その孔サイズおよび表面特性は、特に、スクアレンベースのエマルジョンを濾過する場合に、重要であり得る。
【0094】
本発明とともに使用される膜の孔サイズは、所望の液滴の通過を許容すると同時に、望ましくない液滴を保持すべきである。例えば、それは、1μm以上のサイズを有する液滴を保持すると同時に、200nmより小さな液滴の通過を許容すべきである。0.2μmもしくは0.22μmのフィルタが理想的であり、同様に、濾過滅菌を達成し得る。
【0095】
上記エマルジョンは、例えば、0.45μmフィルタを通って、予備濾過(prefilter)され得る。上記予備濾過および濾過は、より大きな孔を有する第1の膜層およびより小さな孔を有する第2の膜層を含む公知の二重層フィルタの使用によって、一工程で達成され得る。二重層フィルタは、本発明で特に有用である。上記第1の層は、理想的には、孔サイズ>0.3μm(例えば、0.3~2μmの間もしくは0.3~1μmの間、もしくは0.4~0.8μmの間、もしくは0.5~0.7μmの間)を有する。上記第1の層における孔サイズ≦0.75μmは、好ましい。従って、上記第1の層は、例えば、孔サイズ0.6μmもしくは0.45μmを有し得る。上記第2の層は、理想的には、上記第1の層の孔サイズの75%未満(お よび理想的には、その半分未満(例えば、上記第1の層の孔サイズの25~70%の間もしくは25~49%の間、例えば、上記第1の層の孔サイズの30~45%の間(例えば、1/3もしくは4/9)))である孔サイズを有する。従って、上記第2の層は、0.3μmより小さな孔サイズ(例えば、0.15~0.28μmの間もしくは0.18~0.24μmの間)を有し得る(例えば、0.2μmもしくは0.22μmの孔サイズの第2の層)。一例において、上記より大さな孔を有する第1の膜層は、0.45μmフィルタを提供する一方で、上記より小さな孔を有する第2の膜層は、0.22μmフィルタを提供する。
・・・
【0097】
上記濾過膜は、多孔性もしくは均質であり得る。均質な膜は、通常は、10~200μmの範囲の密なフィルムである。多孔性の膜は、多孔性構造を有する。一実施形態において、上記濾過膜は、多孔性である。二重層フィルタにおいて、両方の層は、多孔性であり得、両方の層は、均質であり得るか、または一方は多孔性および一方は均質な層であり得る。好ましい二重層フィルタは、両方の層が多孔性であるものである。
【0098】
一実施形態において、上記第2のエマルジョンは、非対称で親水性の多孔性膜を通して濾過され、次いで、上記予備濾過膜より小さな孔を有する別の非対称で親水性の多孔性膜を通って濾過される。これは、二重層フィルタを使用し得る。
・・・
【0100】
濾過膜は、代表的には、ポリマー支持材料(例えば、PTFE(ポリ-テトラ-フルオロ-エチレン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PVP(ポリビニルピロリドン)、PVDF(ポリビニリデンフルオリド)、ナイロン(ポリアミド)、PP(ポリプロピレン)、セルロース(セルロースエステルを含む)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ニトロセルロースなどから作製される(しかし、本発明は、好ましくは、セルロースベースのフィルタの使用を回避する)。これら支持材料は、種々の特性を有し、ある支持体は、本質的に疎水性(例えば、PTFE)であり、またほかの支持体は、本質的に親水性(例えば、酢酸セルロース)である。しかし、これら本質的な特性は、上記膜表面を処理することによって改変され得る。例えば、上記膜表面を他の材料(例えば、他のポリマー、グラファイト、シリコーンなど)で処理して、上記膜表面をコーティングすることによって、親水性化(hydrophilized)膜もしくは疎水性化(hydrophobized)膜を調製することは公知である(例えば、参考文献15の第2.1節を参照のこと)。二重層フィルタにおいて、上記2つの膜は、異なる材料から作られてもよいし、(理想的には)同じ材料から作られてもよい。
【0101】
本発明とともに使用するための
理想的フィルタは、疎水性(ポリスルホン)フィルタが使用されるべきであるという参考文献9~12の教示とは対照的に、親水性表面を有する。
親水性表面を有するフィルタは、親水性材料から形成され得るか、または疎水性材料の親水性化(hydrophilization)によって形成され、本発明での使用に好ましいフィルタは、親水性ポリエーテルスルホン膜である。・・・
【0108】
好ましい二重層フィルタは、第1の親水性PES膜および第2の親水性PES膜を有する。濾過が、最初に、二重層酢酸セルロースフィルタを介し、次いで、第2の二重層酢酸セルロースフィルタを通る実施形態は、好ましくない(およびときおり、放棄され得る)。ここで上記第1のフィルタのより小さな孔サイズは、上記第2のフィルタのより大きな孔サイズより大きく、
上記第2の二重層フィルタは、濾過滅菌を達成する。
【0109】
公知の親水性膜としては、Bioassure(Cuno製);EverLUXTM ポリエーテルスルホン;STyLUXTM ポリエーテルスルホン(ともにMeissner製);Millex GV、Millex HP、Millipak 60、Millipak 200およびDurapore CVGL01TP3膜(Millipore製);FluorodyneTM EX EDF膜、SuporTM EAV;SuporTM EBV、SuporTM EKV(すべてPall製);SartoporeTM(Sartorius製);Sterlitechの親水性PES膜;およびWolftechnikのWFPES PES膜が挙げられる。
(イ)実施例の記載
本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の実施例として、実施例1(孔サイズ0.45μmを有する親水性の非対称性多孔性ポリエーテルスルホンの予備フィルタ膜および孔サイズ0.2μmを有する親水性の非対称性多孔性ポリエーテルスルホンの最終フィルタ膜を有する、滅菌グレードのフィルタカートリッジ(フィルタA)用いて、濾過処理を行ったこと(【0185】~【0188】)、実施例2(「親水性の非対称性多孔性ポリエーテルスルホンの予備フィルタ膜および孔サイズ0.2μmを有する親水性の非対称性多孔性ポリエーテルスルホンの最終フィルタ膜」であるフィルタBを用いて、濾過処理を行ったこと(【0189】~【0191】)、実施例3(「孔サイズ0.45μmを有する親水性の非対称性多孔性ポリエーテルスルホンの予備フィルタ膜および孔サイズ0.2μmを有する親水性の非対称性多孔性ポリエーテルスルホンの最終フィルタ膜」であるフィルタCを用いて濾過処理を行ったこと(【0192】)、実施例4に、「種々の製造業者の、10枚の異なる親水性膜を、スクアレン、ポリソルベート 80、ソルビタントリオレエートおよびクエン酸ナトリウム緩衝液を含む微小流動化エマルジョンを濾過するために試験した。」ところ、実施例3におけるフィルタCと同じであるフィルタ1、実施例1におけるフィルタAと同じであるフィルタ9、実施例2におけるフィルタBと同じであるフィルタ10が、別の異なる滅菌グレードのフィルターカートリッジ(「親水性の非対称性多孔性ポリエーテルスルホンの予備フィルタ膜および親水性の多孔性PVDFの最終フィルタ膜」であるフィルタD)と対比した実験結果が開示され(表3)、「低回収%は、例えば、詰まりが原因で、上記フィルタが上記エマルジョンを保持することを示す。フィルタ1、フィルタ8、フィルタ9およびフィルタ10(すなわち、上記のフィルタA、フィルタBおよびフィルタCと、フィルタAに類似であるが、上記第1の層においてより大きな孔サイズを有する1枚のさらなるフィルタ)のみが、50%以上の収率を与え、工業スケールで使用するのに最も実用的な収率は、フィルタ8~10であったことは、明らかである。」ことが記載されている。
(ウ)本件明細書の各段落の記載と上記対比試験の結果を踏まえると、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件各要件を備える本件各発明に係る親水性二重層PES膜を用いることを発明特定事項として含む濾過工程を含む水中油型エマルションを製造する方法は、前記イで認定した本件発明の課題を解決することができるものと認識できる範囲のものであるといえる。
(エ)したがって、本件発明は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということができるから、請求項1~36、38~54に係る特許請求の範囲の記載は、いずれも、サポート要件に適合するものである。
エ. 請求人の主張について
請求人は 本件発明の解決しようとする課題は、「微小流動化した水中油型エマルジョン生成のための
さらなるかつ改善
された方法、特に、商業スケールでの使用に適しておりかつ濾過を使用する方法を提供すること」であり、「さらなるかつ改善」とは、
「0.22μmフィルタ(特にポリスルホンフィルタ)による濾過」と比較しての「さらなるかつ改善」
であると主張する。
しかしながら、発明の詳細な説明には、請求人の主張する課題の解決手段として、本件所定の孔サイズを有する疎水性のPESからなるフィルタを表面処理により親水性としたものとした、本件各要件を備える本件発明に係る親水性PES二重膜が記載され、かかる膜を採用することにより、濾過特性が優れることが、実施例における対比試験をもって示されているのであるから、請求人の主張は採用できない。
オ. 小括
以上のとおり、本件発明は、特許請求の範囲に記載された発明が発明の詳細な説明に記載された発明であり、上記詳細な説明の記載又は本件出願時の技術常識に照らして、当業者が前記のような本件発明の課題を解決するものと認識できる範囲のものであるといえる。
よって、無効理由3は、理由がない。
(5)無効理由4について
ア. 無効理由4(1)について
(ア)甲11に記載された発明
取消判決が認定したとおり、甲11には、次の「甲11発明」が記載されているものと認める。
甲11発明
「(I)ポリソルベート80をWFIに溶解させて水性クエン酸ナトリウム-クエン酸の緩衝液と組み合わせ、それとは別に、ソルビタントリオレエートをスクアレンに溶解させ、これら2つの溶液を組み合わせた後、インラインホモジナイザーで処理して、粗エマルジョンを得る工程、 (II)当該粗エマルジョンを、所望の粒径になるまでマイクロフルイダイザーの相互作用室に繰り返し通らせて平均粒径が約150nm、1.2μm以上の粒子がml当たり3.3×10
7
個程度のサブミクロンエマルジョンを取得する工程、
(III-1)バルクエマルジョンを窒素下で0.22μm膜に通して濾過し、大きな粒子を取り除いて、平均粒径が約150nm、1.2μm以上の粒子がml当たり0.2×10
6
個程度であるMF59C.1アジュバントエマルジョンの50L規模のバルクを手に入れる工程、
(III-2)得られたアジュバントエマルジョンのバルクを0.22μm膜に通して滅菌濾過する工程、
を含むMF59C.1アジュバントエマルジョンの製造方法」
(イ) 本件発明1について
A 対比
本件発明1と甲11発明とを対比する。
・甲11-1より「MF59.C1」は「スクアレン」を含む「第2世代MF59エマルジョン」であり、甲11-2、甲11-3、甲11-4、甲11-6、甲11-8、甲11-9より「MF59」は「水中油型エマルジョンアジュバント」であるから、甲11発明の「MF59C.1アジュバントエマルジョン」は、本件発明1の「スクアレン含有水中油型エマルジョン」に相当する。
・甲11発明の工程(I)、(II)は、本件発明1の工程(i)、(ii)にそれぞれ相当する。
そうすると、両者は
「スクアレン含有水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、
該方法は、
(i)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを提供する工程;
(ii)該第1のエマルジョンを微小流動化して、該第1の平均油滴サイズより小さな第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程;
を包含する、方法」
の点で一致し、次の相違点1で相違する。
(相違点1)
濾過工程について、本件発明1においては、「0.3μm以上の孔サイズを有する第1の層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の層とを含む親水性二重層ポリエーテルスルホン膜を使用して、濾過」する工程と特定されているのに対し、 甲11発明においては、「(III-1)バルクエマルジョンを窒素下で0.22μm膜に通して濾過し、大きな粒子を取り除いて、平均粒径が約150nm、1.2μm以上の粒子がml当たり0.2×10
6
個程度であるMF59C.1アジュバントエマルジョンの50L規模のバルクを手に入れる工程、(III-2)得られたアジュバントエマルジョンのバルクを0.22μm膜に通して滅菌濾過する工程」と特定されている点
B 判断
(A)相違点1に係る本件発明1の構成の容易想到性について
a 周知技術の認定
甲15の甲15-1~15-7の記載によると、「Sartopore
(R)
2」(以下「本件製品」という。)は、孔サイズが0.45μm である予備濾過膜及び孔サイズが0.2μmである最終濾過膜からなる親水性異質二重層ポリエーテルスルホン膜を備えるものであると認められる。また、甲15、甲36によると、本件製品は、本件優先日当時に市販されており、本件製品が備える上記の膜は、本件優先日当時の当業者に広く知られていたものと認められる。 したがって、本件製品の上記の膜を用いて濾過を行うことは、本件優先日当時の周知技術(以下「本件周知技術」という。)であったものと認められる。
そして、相違点1に係る本件発明1の構成と本件周知技術とを比較すると、本件周知技術は、相違点1に係る本件発明1の構成に相当するものであるから、以下、本件優先日当時の当業者において、甲11発明に本件周知技術を適用し(以下、この適用を「本件適用」ということがある)、相違点1に係る本件発明1の構成に容易に想到し得たか否かについて検討する。
b 本件適用に係る動機付けの有無
(a)技術分野
甲11の記載によると、甲11発明は、ワクチンアジュバントのエマルジョンを製造する技術の分野に属する発明であると認められる。
他方、甲36の甲36-1~甲36-10のとおり、甲36には、「導入」として、「合成ポリマーの微小多孔性膜を使用する通常のフローフィルタ等は、多種多様なバイオ医薬液体の濾過用途に広く使用され、これらのフィルタの主な目的は、製品中の細菌汚染の可能性を減らすことである」旨の記載、「濾過膜は、血液分画、血清の処理、大容量非経口剤(LVP)等の従来の製薬用途でも日常的に使用され、ここでの目標は、バイオ医薬品プロセスと同じであり、製品の細菌汚染の可能性を低減させることである」旨の記載等があり、甲36は、これらの膜を備えた具体的な製品として、本件製品に言及している。また、甲15の甲15―2のとおり、本件製品が「広範囲の医薬製品を濾過できるように設計されたものであり、広範囲の化学的適合性を備えるものである」旨の記載がある。これらによると、本件製品は、少なくとも上記の「従来の製薬」に該当すると解されるワクチンアジュバントのエマルジョンの製造にも当然に適用し得るものであると認められるから(なお、甲15-2には、本件製品の用途の例として「バルク医薬品」が挙げられている。)、本件周知技術は、甲11発明が属する技術分野を包む技術分野に属する技術であると認められる。
以上のとおりであるから、甲11発明と本件周知技術とは、その属する技術分野を共通にするといえる。
(b)甲11発明が有する課題
甲11には、甲11-1~甲11―9において認定した箇所を含め、本件適用を動機付けるような課題の記載はみられない。
しかしながら、甲20(日本ワクチン学会編「ワクチンの事典」(平成16年))の「無菌性の保証ワクチンは通常、...無菌製造、無菌充填が行われる。」との記載、甲36の記載(「プレフィルタと最終フィルタの組合せを正しく選択することで、流速、濾過時間及び全体的な濾過コストの最適なバランスが得られる」旨の記載、「膜濾過の主な目標である滅菌濾液の提供を評価する基準として1)細菌の効果的な保持がされること、2)高い総処理量を有することによる濾過コストの削減がされること、3)許容可能な範囲の流速による妥当な時間枠におけるバッチ全体の濾過がされることなどが挙げられる」旨の記載、「本件製品の製造業者が製造する本件製品と同種の製品のプレフィルタ層は、非常に高い処理量を実現し、10インチエレメント当たりの有効濾過面積を30%以上向上させ、0.2μmの最終フィルタ層は、本件製品の組合せと同じで、信頼性の高い細菌保持を 提供する」旨の記載等)に加え、甲11発明と本件周知技術とがその属する技術分野を共通にすること(前記(a))に照らすと、ワクチンアジュバントのエマルジョンの製造に用いられる濾過膜については、その品質を向上させるため1)細菌を効果的に保持すること、2)総処理量が大きいこと及び3)流速が妥当なものであることが求められているものと認められる。それのみならず、そもそもワクチンアジュバントのエマルジョンの製造に用いられる濾過膜において、上記1)から3)までの要請が達成されることにより当該濾過膜の品質の向上につながることは、これらの要請の内容に照らし、本件優先日の当業者にとって自明であったというべきである。したがって、甲11発明には、これらの要請を達成するとの課題(以下「本件課題」という。)が内在しており、甲11発明に接した本件優先日当時の当業者は、甲11発明が本件課題を有していると認識したものと認められる。
(c)本件課題の解決手段
甲15の甲15-1~15-7のとおりの記載(「本件製品のフィルタカートリッジは、現存する滅菌フィルタカートリッジのいずれと比較しても優れた特性を持ち、広範囲の化学的適合性、高耐熱性、高処理量、高流速の特性を全て備えている」旨の記載、「本件製品のカートリッジは、0.45μm膜を用いた「組み込み予備濾過」による分画濾過のため、非常に高い総処理能力を持ち合わせている。ポリエーテルスルホン膜の非対称的孔構造は、低い圧力下で、高い流速を提供する」旨の記載、「本件製品のフィルタカートリッジは、HIMAやASTM F-838-83ガイドラインに従う滅菌グレードのフィルタエレメントとして十分検証されている」旨の記載、95%閉塞時における総処理量において本件製品が最も優れている旨のグラフ等)、甲36の記載(「本件製品の製造業者が製造する本件製品と同種の製品の0.2μmの最終フィルタ層は、本件製品の0.45μm/0.2μmの組合せと同じで、信頼性の高い細菌保持を提供する」旨の記載等)によると、本件製品が備える親水性異質二重層ポリエーテルスルホン膜をワクチンアジュバントのエマルジョンの製造(濾過)に用いることにより、本件課題をいずれも解決することができるものと認められる。
c 相違点1に係る本件発明1の構成の容易想到性についての小括
以上のとおりであるから、本件優先日当時の当業者において、甲11発明に本件周知技術を適用する動機付けがあったものと認められ、本件適用に係る阻害要因もないから、本件優先日当時の当業者は、甲11発明に本件周知技術を適用することにより相違点1に係る本件発明1の構成に容易に想到し得たものと認める。
(B) 本件発明1が奏する効果
本件明細書には、50Lのエマルジョンの濾過において10種類の異なる膜のうち本件各要件を備える親水性二重層ポリエーテルスルホン膜を用いた場合には、いずれも50%以上の回収率を示したが、その余の膜を用いた場合には、16%以下の回収率を示した旨の記載(実施例4(段落【0195】~【0197】、【表4】)がある。
しかしながら、本件明細書の実施例4の【表3】中の回収率の低いものとして比較対象となる膜の材質や孔サイズは本件明細書中では十分に開示されておらず、これらのデータだけでは、上記50%以上の回収率が本件発明1に係る親水性二重層ポリエーテルスルホン膜の効果によるものであるとの証明がされているとまではいえない。それのみならず、甲15の記載(「本件製品のカートリッジは、現存する滅菌フィルタカートリッジのいずれと比較しても優れた特性を持ち、広範囲の化学的適合性、高耐熱性、高処理量、高流速の特性を備えている」旨の記載、「本件製品のカートリッジは、0.45μm膜を用いた「組み込み予備濾過」による分画濾過のため、非常に高い総処理能力を持ち合わせている」旨の記載、本件製品の膜が95%閉塞するまでにおける総処理量が約90kgである旨のグラフ等)によると、本件製品を用いて50L程度のエマルジョンを濾過した場合、膜の詰まりの程度が低く抑えられ、本件明細書に記載された程度の高い回収率を実現し得ることは、本件優先日当時の当業者にとって容易に理解し得たものと認められる。
以上によると、甲11発明に本件周知技術を組み合わせた構成が奏するものとして本件優先日当時の当業者が予測することのできないものであったと認めることはできず、また、当該構成から当該当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものであったと認めることもできないというべきである。
(C) 本件発明1の進歩性についての小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、本件優先日当時の当業者において甲11発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(ウ) 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1における、工程(i)、工程(ii)の平均油滴サイズを特定の数値範囲とし、エマルジョンアジュバントと抗原とを合わせる工程(iv)を追加して、「スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を製造するための方法」に係る発明としたものである。
ここで、甲11発明の工程(II)は「平均粒径が約150nm」である「サブミクロンエマルジョンを取得する工程」であるから、本件発明2の工程(ii)の「500nm以下である平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程」に相当する。
そうすると、本件発明2と甲11発明を対比すると、両者の相違点は、上記ア(イ)Aの相違点1と同様の相違点に加えて、以下の相違点2、3において相違する。
(相違点2)
工程(i)の第1エマルジョンが、本件発明2においては、「5000nm以下の平均油滴サイズを有する」ものであるのに対し、甲11発明においてはその特定がない点
(相違点3)
本件発明2においては、工程(iv)として「該エマルジョンアジュバントと抗原とを合わせる工程」を含み、「スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を製造するための方法」であるのに対し、甲11発明においてはその特定がない点
上記相違点について検討する。
相違点1についての判断は上記(イ)Bで述べたとおりである。
(相違点2について)
甲11発明は、粗エマルジョンを得る工程(I)に続く工程(II)である「サブミクロンエマルションを取得する工程」において「当該粗エマルジョンを、所望の粒径になるまでマイクロフルイダイザーの相互作用室に繰り返し通らせて平均粒径が約150nm・・・のサブミクロンエマルションを取得」することを発明特定事項として含むものであるから、「マイクロフルイダイザーの相互作用室」に通らせて、平均粒径が約150nmの「サブミクロンエマルジョン」に微小化する段階の前のエマルジョンである「粗エマルジョン」の平均油滴サイズが、「サブミクロンエマルション」の平均粒径である約150nmよりも大きい粒径であることは、甲11にその明示がなくとも明らかであり、またその上限を「5000nm以下」と決定することは当業者が適宜為し得たことである。
(相違点3について)
甲11には、甲11-3、甲11-4、甲11-8に示されるとおり、MF59C.1アジュバントエマルジョンを抗原と合わせてワクチンを製造することが記載されているから、甲11発明において、「エマルジョンアジュバントと抗原とを合わせる工程をさらに付加して、「スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を製造するための方法」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明2は、本件優先日当時の当業者において甲11発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(エ)本件発明7について
本件発明7は、本件発明1の工程(i)を発明特定事項として備えず、本件発明1における工程(ii)、(iii)を改めて工程(i)、(ii)とした上で、当該工程(i)のエマルジョンの平均油滴サイズを特定の数値範囲とした発明である。
ここで、甲11発明の工程(II)は「平均粒径が約150nm」である「サブミクロンエマルジョンを取得する工程」であるから、本件発明7の工程(i)の「500nm以下である平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程」に相当する。
そうすると、本件発明7と甲11発明を対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点1と同様の相違点において相違する。そして、相違点1についての判断は上記(イ)Bで述べたとおりである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明7は、本件優先日当時の当業者において甲11発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(オ) 本件発明31について
A 対比
本件発明31と甲11発明を対比する。
・甲11発明の「MF59C.1アジュバントエマルジョン」は、「WFI」、「水性クエン酸ナトリウム-クエン酸の緩衝液」、「ポリソルベート80」、「ソルビタントリオレエート」、「スクアレン」を含むところ、甲11発明の「WFI」、「水性クエン酸ナトリウム-クエン酸の緩衝液」はいずれも、本件発明31の「水性成分」に相当し、甲11発明の「ポリソルベート80」、「ソルビタントリオレエート」はいずれも、本件発明31の「界面活性剤」に相当する。そして、甲11-2、甲11-3、甲11-4、甲11-6、甲11-8、甲11-9の記載によれば、「MF59C.1アジュバントエマルジョン」は「水中油型エマルジョンアジュバント」である。そうすると、甲11発明の「MF59C.1アジュバントエマルジョンの製造」は、本件発明31の「水性成分、スクアレンおよび界面活性剤を含有する水中油型エマルジョン」の「調製」に相当する。
・甲11発明の工程(III-1)及び(III-2)の「0.22μm膜」は、「フィルタ」に相当するから両者は「フィルタの使用」という点で共通するものである。
そうすると、両者は、
「水性成分、スクアレンおよび界面活性剤を含有する水中エマルジョンを調製するための、フィルタの使用」
の点で一致し、以下の相違点4、5において相違する。
(相違点4)
フィルタについて、本件発明31においては「0.3μm以下の孔サイズを有する第1の膜の層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の膜の層とを含む親水性二重層ポリエーテルスルホンフィルタ」であると特定するのに対し、甲11発明においてはその特定がない点
(相違点5)
本件発明31においては、水中油型エマルジョンが「2体積%~20体積%の油を含む」ことを特定するのに対し、甲11発明においてはその特定がない点
B 判断
上記相違点について検討する。
(相違点4について)
相違点4は、上記(イ)Aの相違点1と同様な相違点であり、その判断については上記(イ)Bで述べたとおりである。
(相違点5について)
本件優先日当時、MF59における油であるスクアレンの体積%は5体積%であることは技術常識であったものと認められるところ((甲16の甲16-1、甲17の甲17-1、甲18の甲18-1)、MF59と同種である甲11発明の「MF59C.1アジュバントエマルジョン」に含まれるスクアレンの体積%について5体積%の近傍で実験的に最適化を行って、相違点5に係る体積%に決定することは当業者が容易に想到し得たことであり、その設定に臨界的意義があるものとも認められない。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明31は、本件優先日当時の当業者において甲11発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(カ) 本件発明33について
本件発明33は、本件発明1における水中油型エマルジョンが「均質な」ものであることを発明特定事項として含み、「該水中油型エマルジョン」が含む「油」の「体積%」の数値範囲を特定のものとした発明である。
ここで、本件発明33の「均質な」「水中油型エマルジョン」について本件明細書の記載をみると、段落【0044】、【0045】、【0050】、【0056】等において、ホモジナイザーによる処理を「均質化」と表現しているところ、甲11発明の「MF59C.1アジュバントエマルジョン」もまた(インライン)ホモジナイザーで処理される工程(I)を経て調製されるものであるから、甲11発明の「MF59C.1アジュバントエマルジョン」は「均質」であるものといえる。
そうすると、本件発明33と甲11発明を対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点1と同様の相違点に加えて、上記(オ)Aで述べた相違点5において相違する。
しかし、相違点1、5についての判断は上記(イ)B、上記(オ)Bでそれぞれ述べたとおりである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明33は、本件優先日当時の当業者において甲11発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(キ) 本件発明43について
本件発明43は、本件発明1における水中油型エマルジョンが「均質な」ものであることを発明特定事項に含み、「1つ以上の成分を添加して、該水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程」を追加して、「均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法」に係る発明としたものである。
ここで、「上記ア.(カ)で述べたとおり、甲11発明の「MF59C.1アジュバントエマルジョン」は「均質」であるものといえる。。
そうすると、本件発明43と甲11発明を対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点1と同様の相違点に加えて、以下の相違点6において相違する。
(相違点6)
本件発明43においては「均質な水中油型エマルジョンに1つ以上の成分を添加して、該水中エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程」を特定した、「均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法」であるのに対し、甲11発明においてはその特定がない点
上記相違点について検討する。
相違点1についての判断は上記(イ)Bで述べたとおりである。
(相違点6について)
甲11には、甲11-3、甲11-4、甲11-8に示されるとおり、MF59C.1アジュバントエマルジョンを抗原と合わせてワクチンを製造することが記載されており、甲11発明において、アジュバントエマルジョンに抗原等他の1つ以上の成分を添加してワクチン、すなわち薬学的組成物を形成する工程を設けて、「均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明43は、本件優先日当時の当業者において甲11発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(ク) 本件発明3~6、8~30、32、34~36、38~42、44~54について
本件発明3~6、8~30、32、34~36、38~42、44~54は、(ア)~(キ)の上記独立請求項を直接的又は間接的に引用し、油滴の数、膜の状態、エマルジョンの組成、キット形態、保存剤の配合等について具体的態様として特定するものであるが、それらの技術的事項は、当業者が最適化のために適宜なし得たことか、適宜採用し得る周知慣用技術に過ぎず、それらの技術的事項を採用することにより格別顕著な効果を奏するものでもないから、本件発明3~6、8~30、32、34~36、38~42、44~54は、本件優先日当時の当業者において甲11発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(ケ)無効理由4(1)についての小括
以上、(ア)~(ク)で述べたとおりであるから、無効理由4(1)は、理由がある。
イ. 無効理由4(2)について
(ア) 甲12に記載された発明
甲12には、「アジュバント製剤」に用いられる「水中油型エマルジョン」である「エマルジョンSB62」の製造方法が記載されており(甲12-2)、次の「甲12発明」が記載されているものと認められる。
甲12発明
「疎水性成分(α-トコフェロールおよびスクアレン)からなる油相と、水溶性成分(Tween80およびPBS(変性)、pH6.8)を含有する水相とを強く撹拌しながら混合する工程、
得られる混合物を、ミクロフルイダイザーにかけることにより、サブミクロンの液滴(100~200nmの分布)のエマルジョンを生成させる工程、 次いで、得られたエマルジョンを、0.22μm膜に通す濾過によって滅菌し、滅菌バルクエマルジョンを得る工程
を含む、アジュバント製剤に用いられる以下の組成の水中油型エマルジョンSB62の製造方法
Tween80:1.8%(v/v) 19.4mg/ml; スクアレン:5%(v/v) 42.8mg/ml; α-トコフェロール:5%(v/v) 47.5mg/ml; PBS-mod:NaCl 121mM、KCl 2.38mM、Na
2
HPO4 7.14mM、KH
2
PO
4
1.3mM; pH6.8±0。」
(イ)本件発明1について
A 対比
本件発明1と甲12発明を対比する。
・甲12発明の「水中油型エマルジョンSB62」は、「スクアレン」を含む「油相」を用いて製造されるものであるから、本件発明1の「スクアレン含有水中油型エマルジョン」に相当する。
・甲12発明の「疎水性成分(α-トコフェロールおよびスクアレン)からなる油相と、水溶性成分(Tween80およびPBS(変性)、pH6.8)を含有する水相とを強く撹拌しながら混合する工程」、「得られる混合物を、ミクロフルイダイザーにかけることにより、サブミクロンの液滴(100~200nmの分布)のエマルジョンを生成させる工程」は、本件発明1の工程(i)、(ii)にそれぞれ相当する。
・両者は膜を使用して濾過する工程を含む点で共通する。
そうすると、両者は
「スクアレン含有水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、
該方法は、
(i)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを提供する工程;
(ii)該第1のエマルジョンを微小流動化して、該第1の平均油滴サイズより小さな第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程;
(iii)膜を使用して濾過する工程;
を包含する、方法」
の点で一致し、次の相違点7で相違する。
(相違点7)
膜を使用して濾過する工程について、本件発明1においては、「0.3μm以上の孔サイズを有する第1の層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の層とを含む親水性二重層ポリエーテルスルホン膜を使用して、濾過」する工程と特定されているのに対し、甲12発明においては、「得られたエマルジョンを、0.22μm膜に通す濾過によって滅菌し、滅菌バルクエマルジョンを得る工程」と特定されている点
B 判断
上記ア.(イ)Bで述べたとおり、本件製品の膜を用いて濾過することは、本件優先日当時の周知技術であったものと認められる。
そして、相違点7に係る本件発明1の構成と本件周知技術とを比較すると、本件周知技術は、相違点7に係る本件発明1の構成に相当するものであるから、以下、本件優先日当時の当業者において、甲12発明に本件周知技術を適用し、相違点7に係る本件発明1の構成に容易に想到し得たか否かについて検討する。
(a)技術分野
甲12の記載によると、甲12発明は、ワクチンアジュバントのエマルジョンを製造する技術の分野に属する発明であると認められる。
他方、甲36の甲36-1~甲36-10の記載のとおり、甲36には、「導入」として、「合成ポリマーの微小多孔性膜を使用する通常のフローフィルタ等は、多種多様なバイオ医薬液体の濾過用途に広く使用され、これらのフィルタの主な目的は、製品中の細菌汚染の可能性を減らすことである」旨の記載、「濾過膜は、血液分画、血清の処理、大容量非経口剤(LVP)等の従来の製薬用途でも日常的に使用され、ここでの目標は、バイオ医薬品プロセスと同じであり、製品の細菌汚染の可能性を低減させることである」旨の記載等があり、甲36は、これらの膜を備えた具体的な製品として、本件製品に言及している。また、甲15の甲15―2のとおりに示されるように、本件製品が「広範囲の医薬製品を濾過できるように設計されたものであり、広範囲の化学的適合性を備えるものである」旨の記載がある。これらによると、本件製品は、少なくとも上記の「従来の製薬」に該当すると解されるワクチンアジュバントのエマルジョンの製造にも 当然に適用し得るものであると認められるから(なお、甲15-2には、本件製品の用途の例として「バルク医薬品」が挙げられている。)、本件周知技術は、甲12発明が属する技術分野を包む技術分野に属する技術であると認められる。
以上のとおりであるから、甲12発明と本件周知技術とは、その属する技術分野を共通にするといえる。
(b)甲12発明が有する課題
甲12には、本件適用を動機付けるような課題の記載はみられない。
しかしながら、甲20(日本ワクチン学会編「ワクチンの事典」(平成16年))の「無菌性の保証ワクチンは通常、...無菌製造、無菌充填が行われる。」との記載、甲36の記載(「プレフィルタと最終フィルタの組合せを正しく選択することで、流速、濾過時間及び全体的な濾過コストの最適なバランスが得られる」旨の記載、「膜濾過の主な目標である滅菌濾液の提供を評価する基準として1)細菌の効果的な保持がされること、2)高い総処理量を有することによる濾過コストの削減がされること、3)許容可能な範囲の流速による妥当な時間枠におけるバッチ全体の濾過がされることなどが挙げられる」旨の記載、「本件製品の製造業者が製造する本件製品と同種の製品のプレフィルタ層は、非常に高い処理量を実現し、10インチエレメント当たりの有効濾過面積を30%以上向上させ、0.2μmの最終フィルタ層は、本件製品の組合せと同じで、信頼性の高い細菌保持を提供する」旨の記載等)に加え、甲11発明と本件周知技術とがその属する技術分野を共通にすること(前記(a))に照らすと、ワクチンアジュバントのエマ ルジョンの製造に用いられる濾過膜については、その品質を向上させるため1)細菌を効果的に保持すること、2)総処理量が大きいこと及び3)流速が妥当なものであることが求められているものと認められる。それのみならず、そもそもワクチンアジュバントのエマルジョンの製造に用いられる濾過膜において、上記1)から3)までの要請が達成されることにより当該濾過膜の品質の向上につながることは、これらの要請の内容に照らし、本件優先日の当業者にとって自明であったというべきである。したがって、甲12発明には、これらの要請を達成するとの課題(以下「本件課題」という。)が内在しており、甲12発明に接した本件優先日当時の当業者は、甲12発明が本件課題を有していると認識したものと認められる。
(c)本件課題の解決手段
甲15の甲15-1~15-7のとおりの記載(「本件製品のフィルタカートリッジは、現存する滅菌フィルタカートリッジのいずれと比較しても優れた特性を持ち、広範囲の化学的適合性、高耐熱性、高処理量、高流速の特性を全て備えている」旨の記載、「本件製品のカートリッジは、0.45μm膜を用いた「組み込み予備濾過」による分画濾過のため、非常に高い総処理能力を持ち合わせている。ポリエーテルスルホン膜の非対称的孔構造は、低い圧力下で、高い流速を提供する」旨の記載、「本件製品のフィルタカートリッジは、HIMAやASTM F-838-83ガイドラインに従う滅菌グレードのフィルタエレメントとして十分検証されている」旨の 記載、95%閉塞時における総処理量において本件製品が最も優れている旨のグラフ等)、甲36の記載(「本件製品の製造業者が製造する本件製品と同種の製品の0.2μmの最終フィルタ層は、本件製品の0.45μm/0.2μmの組合せと同じで、信頼性の高い細菌保持を提供する」旨の記載等)によると、本件製品が備える親水性異質二重層ポリエーテルスルホン膜をワクチンアジュバントのエマルジョンの製造(濾過)に用いることにより、本件課題をいずれも解決することができるものと認められる。
以上のとおりであるから、本件優先日当時の当業者においては、甲12発明に本件周知技術を適用する動機付けがあったものと認められ、本件適用に係る阻害要因もないから、本件優先日当時の当業者は、甲12発明に本件周知技術を適用することによりことにより、相違点7に係る本件発明1の構成に容易に想到し得たものと認められる。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
C 本件発明1の進歩性についての小括
以上のとおりであるから本件発明1は、本件優先日当時の当業者において甲12発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものとは認められず、進歩性を欠くものである。
(ウ)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1における、工程(i)、工程(ii)の平均油滴サイズを特定の数値範囲とし、エマルジョンアジュバントと抗原とを合わせる工程(iv)を追加し、「スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を製造するための方法」に係る発明としたものである。
ここで、甲12発明の「得られる混合物を、ミクロフルイダイザーにかけることにより、サブミクロンの液滴(100~200nmの分布)のエマルジョンを生成させる工程」は、本件発明2の工程(ii)の「500nm以下である平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程」に相当する。
そうすると、本件発明2と甲12発明を対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点7と同様の相違点に加えて、以下の相違点8、9において相違する。
(相違点8)
工程(i)の第1エマルジョンが、本件発明2においては「5000nm以下の平均油滴サイズを有する」ものであるのに対し、甲12発明においてはその特定がない点
(相違点9)
本件発明2においては工程(iv)として「該エマルジョンアジュバントと抗原とを合わせる工程」が特定された、「スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を製造するための方法」であるのに対し、甲12発明においてはその特定がない点
上記相違点について検討する。
相違点7についての判断は上記(イ)Bで述べたとおりである。
(相違点8について)
甲12発明は、「得られる混合物を、ミクロフルイダイザーにかけることにより、サブミクロンの液滴(100~200nmの分布)のエマルジョンを生成させる工程」において「100~200nmの分布」の「サブミクロンの液滴」「エマルジョン」を生成させることを発明特定事項として含むものであるから、その段階の前のエマルジョンである「疎水性成分(α-トコフェロールおよびスクアレン)からなる油相と、水溶性成分(Tween80およびPBS(変性)、pH6.8)を含有する水相とを強く撹拌しながら混合する工程」におけるエマルジョンの平均液滴サイズは、当該「サブミクロンの液滴」「エマルジョン」の平均粒径である「100~200nm」よりも大きい粒径であることは、甲12にその明示がなくとも明らかであり、またその上限を「5000nm以下」と決定することは当業者が適宜為し得たことである。
(相違点9について)
甲12には、甲12-1、甲12-3に示されるとおり、水中油型エマルジョンSB62は抗原と合わせてワクチンを製造することが記載されているから、甲12発明において、「エマルジョンアジュバントと抗原とを合わせる工程をさらに付加して、「スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を製造するための方法」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明2は、本件優先日当時の当業者において甲12発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(エ)本件発明7について
本件発明7は、本件発明1の工程(i)を発明特定事項として備えず、本件発明1における工程(ii)、(iii)を改めて工程(i)、(ii)とした上で、当該(i)のエマルジョンの平均油滴サイズを特定の数値範囲とした発明である。
ここで、甲12発明の「得られる混合物を、ミクロフルイダイザーにかけることにより、サブミクロンの液滴(100~200nmの分布)のエマルジョンを生成させる工程」は、本件発明7の工程(i)の「500mm以下である平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを成形する工程」に相当する。
そうすると、本件発明7と甲12発明を対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点と同様の相違点7において相違する。そして、相違点7についての判断は上記(イ)Bで述べたとおりである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明7は、本件優先日当時の当業者において甲12発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(オ) 本件発明31について
A 対比
本件発明31と甲12発明を対比する。
・甲12発明は、「水相」、「Tween80」を含むものであり、甲12発明の「水相」は、本件発明31の「水性成分」に、甲12発明の「Tween80」は、本件発明31の「界面活性剤」に相当するところ、甲12発明の「水中油型エマルジョンSB62の製造」は、本件発明31の「水性成分、スクアレンおよび界面活性剤を含有する水中油型エマルジョン」の「調製」に相当する。
・甲12発明の「0.22μm膜」は、「フィルタ」に相当するから両者は「フィルタの使用」という点で共通するものである。
・甲12発明の「水中油型エマルジョンSB62」は、「5%(v/v)」の「スクアレン」及び「5%(v/v)」の「α-トコフェロール」を含むものであるから、本件発明31の「2体積%~20体積の油を含む」「水中油型エマルジョン」に相当する。
そうすると、両者は、
「水性成分、スクアレンおよび界面活性剤を含有する水中エマルジョンを調製するための、フィルタの使用であって、該水中油型エマルジョンが、2体積%~20体積の油を含む、使用」
の点で一致し、以下の相違点9において相違する。
(相違点9)
フィルタについて、本件発明31においては「0.3μm以下の孔サイズを有する第1の膜の層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の膜の層とを含む親水性二重層ポリエーテルスルホンフィルタ」であるのに対し、甲12発明においてはそのことについて特定がない点
B 対比
上記相違点について検討する。
(相違点9について)
相違点9は、上記(イ)Aの相違点7と同等な相違点であり、その判断については上記(イ)Bで述べたとおりである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明31は、本件優先日当時の当業者において甲12発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(カ)本件発明33について
本件発明33は、本件発明1における水中油型エマルジョンが「均質な」ものであることを発明特定事項として含み、「該水中油型エマルジョン」が含む「油」の「体積%」の数値範囲を特定のものとした発明である。
ここで、本件発明33の「均質な」「水中油型エマルジョン」について、本件明細書の記載をみると、段落【0044】、【0045】、【0050】、【0056】等においてホモジナイザーによる処理を「均質化」と表現しているところ、甲12発明の「水中油型エマルジョンSB62」も「強く撹拌しながら混合」の後、「ミクロフルイダイザー」による微細化処理を経て調製されるものであるから、甲12発明の「水中油型エマルジョンSB62」は「均質」であるものといえる。
また、上記(オ)で述べたとおり、甲12発明の「水中油型エマルジョンSB62」は、本件発明31の「2体積%~20体積%の間の油を含」む「水中油型エマルジョン」に相当する。
そうすると、本件発明33と甲12発明とを対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点7において相違する。しかし、相違点7についての判断は上記(イ)Bで述べたとおりである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明33は、本件優先日当時の当業者において甲12発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(キ)本件発明43について
本件発明43は、本件発明1の水中油型エマルジョンが「均質な」ものであることを発明特定事項に含み、「1つ以上の成分を添加して、該水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程」を追加して、「均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法」に係る発明としたものである。
ここで、上記(カ)で述べたとおり、甲12発明の「水中油型エマルジョンSB62」は「均質」であるものといえる。
そうすると、本件発明43と甲12発明を対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点7と同様の相違点に加えて、相違点10において相違する。
(相違点10)
本件発明43においては「均質な水中油型エマルジョンに1つ以上の成分を添加して、該水中エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程」を特定した、「均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法」であるのに対し、甲12発明においてはそのことについて特定しない点
上記相違点について検討する。
相違点7についての判断は上記(イ)Bで述べたとおりである。
(相違点10について)
甲12には、甲12-1、甲12-3に示されるとおり、水中油型エマルジョンSB62を抗原と合わせてワクチンを製造することが記載されており、甲12発明において、エマルジョンアジュバントに抗原等他の1つ以上の成分を添加してワクチン、すなわち薬学的組成物を形成する工程を設けて、「均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明43は、本件優先日当時の当業者において甲12発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(ク)本件発明3~6、8~30、32、34~36、38~42、44~54について
本件発明3~6、8~30、32、34~36、38~42、44~54は、(イ)~(キ)の上記独立請求項を直接的又は間接的に引用し、油滴の数、膜の状態、エマルジョンの組成、キット形態、保存剤の配合等について具体的態様として特定するものであるが、それらの技術的事項は、当業者が最適化のために適宜なし得たことか、適宜採用し得る周知慣用技術に過ぎず、それらの技術的事項を採用することにより格別顕著な効果を奏するものでもないから、本件発明3~6、8~30、32、34~36、38~42、44~54は、本件優先日当時の当業者において甲12発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(ケ) 無効理由4(2)についての小括
以上、(ア)~(ク)で述べたとおりであるから、無効理由4(2)は、理由がある。
ウ. 無効理由4(3)について
(ア) 甲13に記載された発明
甲13には、「水中油型乳濁液(SE)」である「アジュバント組成物」に関し(甲13-2)、具体的態様として「3D-MLA/SE」の製造方法が記載されており(甲13-3)、甲13-4の製造工程からみて、甲13には、次の「甲13発明」が記載されているものと認められる。
甲13発明
「ストック油相とMLA/卵PCの混合物に対し水相を添加し、シルバーソン乳化器(Silverson Emulsifier)を用いて乳化し水中油型乳濁液を得る工程、
得られた乳濁液をホモジナイザーにより粒子サイズが0.2μm以下になるまで均質化する工程、
得られた最終的なアジュバント生成物を、0.2μm親水性メンブレン・フィルターを用いて濾過する工程、
を含む、水中油型乳濁液であるアジュバント組成物の製造方法であって、当該アジュバント組成物は以下の組成を有する、当該製造方法。
27
53
0001430333000015.jpg
」
(イ)本件発明1について
A 対比
本件発明1と甲13発明とを対比する。
・甲13発明の「水中油型乳濁液であるアジュバント組成物」は、「スクアレン」を含むものであるから、本件発明1の「スクアレン含有水中油型エマルジョン」に相当する。
・甲13発明の「スクアレンを含むストック油相とMLA/卵PCの混合物に対し水相を添加し、シルバーソン乳化器(Silverson Emulsifier)を用いて乳化し水中油型乳濁液を得る工程」、「得られた乳濁液をホモジナイザーにより粒子サイズが0.2μm以下になるまで均質化する工程」は、本件発明1の工程(i)、(ii)にそれぞれ相当する。
・両者は膜を使用して濾過する工程を含む点で共通するものである。
そうすると、両者は
「スクアレン含有水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、
該方法は、
(i)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを提供する工程;
(ii)該第1のエマルジョンを微小流動化して、該第1の平均油滴サイズより小さな第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程;
(iii)膜を使用して濾過する工程;
を包含する、方法」
の点で一致するが、次の相違点11で相違する。
(相違点11)
膜を使用して濾過する工程について、本件発明1においては、「0.3μm以上の孔サイズを有する第1の層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の層とを含む親水性二重層ポリエーテルスルホン膜を使用して、濾過」する工程と特定されているのに対し、甲13発明においては、「得られた最終的なアジュバント生成物を、0.2μm親水性メンブレン・フィルターを用いて濾過する工程」と特定されている点
B 判断
上記ア.(イ)Bで述べたとおり、本件製品の膜を用いて濾過することは、本件優先日当時の周知技術であったものと認められる。
そして、相違点11に係る本件発明1の構成と本件周知技術とを比較すると、本件周知技術は、相違点11に係る本件発明1の構成に相当するものであるから、以下、本件優先日当時の当業者において、甲13発明に本件周知技術を適用し、相違点11に係る本件発明1の構成に容易に想到し得たか否かについて検討する。
(a)技術分野
甲13の記載によると、甲13発明は、ワクチンアジュバントのエマルジョンを製造する技術の分野に属する発明であると認められる。
他方、甲36の甲36-1~甲36-10の記載のとおりによると、甲36には、「導入」として、「合成ポリマーの微小多孔性膜を使用する通常のフローフィルタ等は、多種多様なバイオ医薬液体の濾過用途に広く使用され、これらのフィルタの主な目的は、製品中の細菌汚染の可能性を減らすことである」旨の記載、「濾過膜は、血液分画、血清の処理、大容量非経 口剤(LVP)等の従来の製薬用途でも日常的に使用され、ここでの目標は、バイオ医薬品プロセスと同じであり、製品の細菌汚染の可能性を低減させることである」 旨の記載等があり、甲36は、これらの膜を備えた具体的な製品として、本件製品に言及している。また、甲15の甲15―2のとおりに示されるように、本件製品が「広範囲の医薬製品を濾過できるように設計されたものであり、広範囲の化学的適合性を備えるものである」旨の記載がある。これらによると、本件製品は、少なくとも上記の「従来の製薬」に該当すると解されるワクチンアジュバントのエマルジョンの製造にも 当然に適用し得るものであると認められるから(なお、甲15-2には、本件製品の用途の例として「バルク医薬品」が挙げられている。)、本件周知技術は、甲13発明が属する技術分野を包む技術分野に属する技術であると認められる。
以上のとおりであるから、甲13発明と本件周知技術とは、その属する技術分野を共通にするといえる。
(b)甲13発明が有する課題
甲13には、本件適用を動機付けるような課題の記載はみられない。
しかしながら、甲20(日本ワクチン学会編「ワクチンの事典」(平成16年))の「無菌性の保証ワクチンは通常、...無菌製造、無菌充填が行われる。」との記載、甲36の記載(「プレフィルタと最終フィルタの組合せを正しく選択することで、流速、濾過時間及び全体的な濾過コストの最適なバランスが得られる」旨の記載、「膜濾過の主な目標である滅菌濾液の提供を評価する基準として1)細菌の効果的な保持がされること、2)高い総処理量を有することによる濾過コストの削減がされること、3)許容可能な範囲の流速による妥当な時間枠におけるバッチ全体の濾過がされることなどが挙げられる」旨の記載、「本件製品の製造業者が製造する本件製品と同種の製品のプレフィルタ層は、非常に高い処理量を実現し、10インチエレメント当たりの有効濾過面積を30%以上向上させ、0.2μmの最終フィルタ層は、本件製品の組合せと同じで、信頼性の高い細菌保持を 提供する」旨の記載等)に加え、甲13発明と本件周知技術とがその属する技術分野を共通にすること(前記(a))に照らすと、ワクチンアジュバントのエマ ルジョンの製造に用いられる濾過膜については、その品質を向上させるため1)細菌を効果的に保持すること、2)総処理量が大きいこと及び3)流速が妥当なものであることが求められているものと認められる。それのみならず、そもそもワクチンアジュバントのエマルジョンの製造に用いられる濾過膜において、上記1)から3)までの要請が達成されることにより当該濾過膜の品質の向上につながることは、これらの要請の内容に照らし、本件優先日の当業者にとって自明であったというべきである。したがって、甲13発明には、これらの要請を達成するとの課題(以下「本件課題」という。)が内在しており、甲13発明に接した本件優先日当時の当業者は、甲13発明が本件課題を有していると認識したものと認められる。
(c)本件課題の解決手段
甲15の甲15-1~15-7のとおりの記載(「本件製品のフィルタカートリッジは、現存する滅菌フィルタカートリッジのいずれと比較しても優れた特性を持ち、広範囲の化学的適合性、高耐熱性、高処理量、高流速の特性を全て備えている」旨の記載、「本件製品のカートリッジは、0.45μm膜を用いた「組み込み予備濾過」による分画濾過のため、非常に高い総処理能力を持ち合わせている。ポリエーテルスルホン膜の非対称的孔構造は、低い圧力下で、高い流速を提供する」旨の記載、「本件製品のフィルタカートリッジは、HIMAやASTM F-838-83ガイドラインに従う滅菌グレードのフィルタエレメントとして十分検証されている」旨の 記載、95%閉塞時における総処理量において本件製品が最も優れている旨のグラフ等)、甲36の記載(「本件製品の製造業者が製造する本件製品と同種の製品の0.2μmの最終フィルタ層は、本件製品の0.45μm/0.2μmの組合せと同じで、信頼性の高い細菌保持を提供する」旨の記載等)によると、本件製品が備える親水性異質二重層ポリエーテルスルホン膜をワクチンアジュバントのエマルジョンの製造(濾過)に用いることにより、本件課題をいずれも解決することができるものと認められる。
以上のとおりであるから、本件優先日当時の当業者においては、甲13発明に本件周知技術を適用する動機付けがあったものと認められ、本件適用に係る阻害要因もないから、本件優先日当時の当業者は、甲13発明に本件周知技術を適用することによりことにより、相違点11に係る本件発明1の構成に容易に想到し得たものと認められる。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
C 本件発明1の進歩性についての小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、本件優先日当時の当業者において甲13発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(ウ)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1における、工程(i)、工程(ii)の平均油滴サイズを特定の数値範囲とし、エマルジョンアジュバントと抗原とを合わせる工程(iv)を追加し、「スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を製造するための方法」に係る発明としたものである。
ここで、甲13発明の「得られた乳濁液をホモジナイザーにより粒子サイズが0.2μm以下になるまで均質化する工程」は、「500nm以下である平均油滴サイズを有する第2エマルジョン」である旨特定する本件発明2の工程(ii)に相当する。
そうすると、本件発明2と甲13発明を対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点11と同様の相違点に加えて、以下の相違点12、13において相違する。
(相違点12)
工程(i)の第1エマルジョンが、本件発明2においては、「5000nm以下の平均油滴サイズを有する」ものであるのに対し、甲13発明においてはその特定がない点
(相違点13)
本件発明2においては、工程(iv)として「該エマルジョンアジュバントと抗原とを合わせる工程」を特定された、「スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を製造するための方法」であるのに対し、甲13発明においてはその特定がない点
上記相違点について検討する。
相違点11についての判断は上記(イ)Bで述べたとおりである。
(相違点12について)
甲13発明は、「得られた乳濁液をホモジナイザーにより粒子サイズが0.2μm以下になるまで均質化する工程」において「粒子サイズが0.2μm以下」である生成物を取得することを発明特定事項として含むものであるから、その段階の前のエマルジョンである「水中油型乳濁液」の平均液滴サイズが、当該「生成物」の粒子サイズである0.2μmよりも大きい粒径であることは、甲13にその明示がなくとも明らかであり、またその上限を「5000nm以下」と決定することは当業者が適宜為し得たことである。
(相違点13について)
甲13には、甲13-1、甲13-3に示されるとおり、水中油型乳濁液であるアジュバント組成物を抗原と合わせてワクチンを製造することが記載されているから、水中油型乳濁液であるアジュバント組成物を抗原と組み合わせる工程をさらに付加して、「スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を製造するための方法」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明2は、本件優先日当時の当業者において甲13発明及び周知技術に基づき容易に発明することができたものであり、進歩性を欠くものである。
(エ)本件発明7について
本件発明7は、本件発明1の工程(i)を発明特定事項として備えず、本件発明1における工程(ii)、(iii)を改めて工程(i)、(ii)とした上で、当該(i)のエマルジョンの平均油滴サイズを特定の数値範囲とした発明である。
ここで、甲13発明の「得られた乳濁液をホモジナイザーにより粒子サイズが0.2μm以下になるまで均質化する工程」は、本件発明7の工程(i)の「500nm以下である平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程」に相当する。
そうすると、本件発明7と甲13発明を対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点11と同様の相違点において相違する。そして、相違点についての判断は上記(イ)Bで述べたとおりである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明7は、本件優先日当時の当業者において甲13発明及び周知技術に基づき容易に発明することができたものであり、進歩性を欠くものである。
(オ) 本件発明31について
A 対比
本件発明31と甲13発明を対比する。
・甲13発明の「水中油型乳濁液であるアジュバント組成物」は、「注射用水」、「リン酸アンモニウム緩衝液」、「PLURONIC-F68ブロック共重合体」を含むものであるところ、甲13発明の「注射用水」、「リン酸アンモニウム緩衝液」はいずれも、本件発明31の「水性成分」に、甲13発明の「PLURONIC-F68ブロック共重合体」は、本件発明31の「界面活性剤」に相当するところ、甲13発明の「水中油型乳濁液であるアジュバント組成物の製造」は、本件発明31の「水性成分、スクアレンおよび界面活性剤を含有する水中油型エマルジョン」の「調製」に相当する。そして、甲13発明の「0.2μM親水性メンブレン・フィルターを用いて濾過する」とは、「水中油型乳濁液であるアジュバント組成物」を「製造」するための「フィルター」の使用に他ならず、また「フィルタ」と「フィルター」は同義であることは自明であるところ、本件発明31と甲13発明は、「水性成分、スクアレンおよび界面活性剤を含有する水中油型エマルジョンを調製するための、フィルタの使用」という点で共通するものである。
・甲13発明の「水中油型乳濁液であるアジュバント組成物」は、「10.000%v/v」の「スクアレン」、「0.050%v/v」の「αトコフェロール」を含有するところ、本件発明31の「2体積%~20体積%の間の油を含」む「水中油型エマルジョン」に相当する。
そうすると、両者は
「水性成分、スクアレンおよび界面活性剤を含有する水中エマルジョンを調製するための、フィルタの使用であって、該水中油型エマルジョンが、2体積%~20体積の油を含む、使用」
の点で一致し、以下の相違点14において相違する。
(相違点14)
フィルタについて、本件発明31においては「0.3μm以下の孔サイズを有する第1の膜の層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の膜の層とを含む親水性二重層ポリエーテルスルホンフィルタ」であると特定しているのに対し、甲13発明においてはそのことについて特定がない点
B 判断
上記相違点について検討する。
(相違点14について)
相違点14は、上記(イ)Aの相違点11と同様な相違点であり、その判断については上記(イ)Bで述べたとおりである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明31は、本件優先日当時の当業者において甲13発明及び周知技術に基づき容易に発明することができたものであり、進歩性を欠くものである。
(カ)本件発明33について
本件発明33は、本件発明1における水中油型エマルジョンが「均質な」ものであることを発明特定事項として含み、「該水中油型エマルジョン」が含む「油」の「体積%」の数値範囲を特定のものとした発明である。
ここで、本件発明33の「均質な」「水中油型エマルジョン」とは、本願明細書の記載をみると、段落【0044】、【0045】、【0050】、【0056】において、ホモジナイザーによる処理を「均質化」と表現しているところ、甲13発明の「水中油型乳濁液であるアジュバント組成物」もまた「ホモジナイザー」による処理を経て調製されるものであるから、甲13発明の「水中油型乳濁液であるアジュバント組成物」は「均質」であるものといえる。
また、上記(オ)で述べたとおり、甲13発明の「水中油型乳濁液であるアジュバント組成物」は、本件発明31の「2体積%~20体積%の間の油を含」む「水中油型エマルジョン」に相当する。
そうすると、本件発明33と甲13発明を対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点11と同様の相違点において相違する。そして、相違点11についての判断は上記(イ)Bで述べたとおりである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明33は、本件優先日当時の当業者において甲13発明及び周知技術に基づき容易に発明することができたものであり、進歩性を欠くものである。
(キ)本件発明43について
本件発明43は、本件発明1の水中油型エマルジョンが「均質な」ものであることを発明特定事項として含み、「1つ以上の成分を添加して、該水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程」を追加して、「均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法」に係る発明としたものである。
ここで、「均質」であることは上記(カ)で述べたとおり、甲13発明の「水中油型乳濁液であるアジュバント組成物」は「均質」であるものといえる。。
そうすると、本件発明43と甲13発明とを対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点11と同様の相違点に加えて、相違点15において相違する。
(相違点15)
本件発明43においては「均質な水中油型エマルジョンに1つ以上の成分を添加して、該水中エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程」を特定した、「均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法」であるのに対し、甲13発明においてはその特定がない点
上記相違点について検討する。
相違点11についての判断は上記(イ)Bで述べたとおりである。
(相違点15について)
甲13には、甲13-5に示されるとおり、水中油型乳濁液であるアジュバント組成物を抗原と合わせてワクチンを製造することが記載されているから、甲13発明において、水中油型乳濁液であるアジュバント組成物に抗原等他の1つ以上の成分を添加してワクチン、すなわち薬学的組成物を形成する工程を設けて、「均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明43は、本件優先日当時の当業者において甲13発明及び周知技術に基づき容易に発明することができたものであり、進歩性を欠くものである。
(ク)本件発明3~6、8~30、32、34~36、38~42、44~54について
本件発明3~6、8~30、32、34~36、38~42、44~54は、(ア)~(キ)の上記独立請求項を直接的又は間接的に引用し、油滴の数、膜の状態、エマルジョンの組成、キット形態、保存剤の配合等について具体的態様として特定するものであるが、それらの技術的事項は、当業者が最適化のために適宜なし得たことか、適宜採用し得る周知慣用技術に過ぎず、それらの技術的事項を採用することにより格別顕著な効果を奏するものでもないから、本件発明3~6、8~30、32、34~36、38~42、44~54は、本件優先日当時の当業者において甲13発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(ケ)無効理由4(3)についての小括
以上、(ア)~(ク)で述べたとおりであるから、無効理由4(3)は、理由がある。
エ. 無効理由4(4)について
(ア) 甲14に記載された発明
甲14には、「水中油型エマルジョンのアジュバントの製造」方法が記載されており(甲14-1)、甲14-1の記載によれば、次の「甲14発明」が記載されているものと認められる。
甲14発明
「TWEEN80をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)注に溶解して形成したPBS注の2%の溶液にDLα-トコフェロール、スクアレンを撹拌し完全に混合し濃厚なエマルジョンを形成する工程、
次いで、生ずるエマルジョンを注射器の針に通過させ、M110Sマイクロフラッディスク(Microfluidisc)装置を使用して微小流動化して、ほぼ145~180nmの大きさを有するエマルジョンとする工程、
さらに0.2μmのフィルターを通して滅菌濾過する工程
を含む、水中油型エマルジョンアジュバントSB62の製造方法であって、当該水中油型エマルジョンアジュバントSB62は、5%のスクアレン、5%のα-トコフェロール、2.0%のポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(TWEEN 80)を含んでいる、当該製造方法。」
(イ)本件発明1について
A 対比
本件発明1と甲14発明を対比する。
・甲14発明の「水中油型エマルジョンアジュバントSB62」は、「スクアレン」を含むものであるから、本件発明1の「スクアレン含有水中油型エマルジョン」に相当する。
・甲14発明の「TWEEN80をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)注に溶解して形成したPBS注の2%の溶液にDLα-トコフェロール、スクアレンを撹拌し完全に混合し濃厚なエマルジョンを形成する工程」、「次いで、生ずるエマルジョンを注射器の針に通過させ、M110Sマイクロフラッディスク(Microfluidisc)装置を使用して微小流動化して、ほぼ145~180nmの大きさを有するエマルジョンとする工程」は、本件発明1の工程(i)、(ii)にそれぞれ相当する。
・両者は膜を使用して濾過する工程を含む点で共通する。
そうすると、両者は
「スクアレン含有水中油型エマルジョンを製造するための方法であって、
該方法は、
(i)第1の平均油滴サイズを有する第1のエマルジョンを提供する工程;
(ii)該第1のエマルジョンを微小流動化して、該第1の平均油滴サイズより小さな第2の平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程;
(iii)膜を使用して濾過する工程;
を包含する、方法」
の点で一致するが、次の相違点16で相違する。
(相違点16)
濾過工程について、本件発明1においては、「0.3μm以上の孔サイズを有する第1の層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の層とを含む親水性二重層ポリエーテルスルホン膜を使用して、濾過」する工程と特定されているのに対し、 甲14発明においては、「0.2μmのフィルターを通して滅菌濾過する工程」と特定されている点
B 判断
上記ア.(イ)Bで述べたとおり、本件製品の膜を用いて濾過することは、本件優先日当時の周知技術であったものと認められる。
そして、相違点16に係る本件発明1の構成と本件周知技術とを比較すると、本件周知技術は、相違点16に係る本件発明1の構成に相当するものであるから、以下、本件優先日当時の当業者において、甲14発明に本件周知技術を適用し、相違点16係る本件発明1の構成に容易に想到し得たか否かについて検討する。
(a)技術分野
甲14の記載によると、甲14発明は、ワクチンアジュバントのエマルジョンを製造する技術の分野に属する発明であると認められる。
他方、甲36の甲36-1~甲36-10の記載のとおりによると、甲36には、「導入」として、「合成ポリマーの微小多孔性膜を使用する通常のフローフィルタ等は、多種多様なバイオ医薬液体の濾過用途に広く使用され、これらのフィルタの主な目的は、製品中の細菌汚染の可能性を減らすことである」旨の記載、「濾過膜は、血液分画、血清の処理、大容量非経口剤(LVP)等の従来の製薬用途でも日常的に使用され、ここでの目標は、バイオ医薬品プロセスと同じであり、製品の細菌汚染の可能性を低減させることである」 旨の記載等があり、甲36は、これらの膜を備えた具体的な製品として、本件製品に言及している。また、甲15の甲15―2のとおりに示されるように、本件製品が「広範囲の医薬製品を濾過できるように設計されたものであり、広範囲の化学的適合性を備えるものである」旨の記載がある。これらによると、本件製品は、少なくとも上記の「従来の製薬」に該当すると解されるワクチンアジュバントのエマルジョンの製造にも 当然に適用し得るものであると認められるから(なお、甲15-2には、本件製品の用途の例として「バルク医薬品」が挙げられている。)、本件周知技術は、甲14発明が属する技術分野を包む技術分野に属する技術であると認められる。
以上のとおりであるから、甲14発明と本件周知技術とは、その属する技術分野を共通にするといえる。
(b)甲14発明が有する課題
甲14には、本件適用を動機付けるような課題の記載はみられない。
しかしながら、甲20(日本ワクチン学会編「ワクチンの事典」(平成16年))の「無菌性の保証ワクチンは通常、...無菌製造、無菌充填が行われる。」との記載、甲36の記載(「プレフィルタと最終フィルタの組合せを正しく選択することで、流速、濾過時間及び全体的な濾過コストの最適なバランスが得られる」旨の記載、「膜濾過の主な目標である滅菌濾液の提供を評価する基準として1)細菌の効果的な保持がされること、2)高い総処理量を有することによる濾過コストの削減がされること、3)許容可能な範囲の流速による妥当な時間枠におけるバッチ全体の濾過がされることなどが挙げられる」旨の記載、「本件製品の製造業者が製造する本件製品と同種の製品のプレフィルタ層は、非常に高い処理量を実現し、10インチエレメント当たりの有効濾過面積を30%以上向上させ、0.2μmの最終フィルタ層は、本件製品の組合せと同じで、信頼性の高い細菌保持を 提供する」旨の記載等)に加え、甲14発明と本件周知技術とがその属する技術分野を共通にすること(前記(a))に照らすと、ワクチンアジュバントのエマ ルジョンの製造に用いられる濾過膜については、その品質を向上させるため1)細菌を効果的に保持すること、2)総処理量が大きいこと及び3)流速が妥当なものであることが求められているものと認められる。それのみならず、そもそもワクチンアジュバントのエマルジョンの製造に用いられる濾過膜において、上記1)から3)までの要請が達成されることにより当該濾過膜の品質の向上につながることは、これらの要請の内容に照らし、本件優先日の当業者にとって自明であったというべきである。したがって、甲14発明には、これらの要請を達成するとの課題(以下「本件課題」という。)が内在しており、甲14発明に接した本件優先日当時の当業者は、甲14発明が本件課題を有していると認識したものと認められる。
(c)本件課題の解決手段
甲15の甲15-1~15-7のとおりの記載(「本件製品のフィルタカートリッジは、現 存する滅菌フィルタカートリッジのいずれと比較しても優れた特性を持ち、広範囲の化学的適合性、高耐熱性、高処理量、高流速の特性を全て備えている」旨の記載、「本件製品のカートリッジは、0.45μm膜を用いた「組み込み予備濾過」による分画濾過のため、非常に高い総処理能力を持ち合わせている。ポリエーテルスルホン膜の非対称的孔構造は、低い圧力下で、高い流速を提供する」旨の記載、「本件製品のフィルタカートリッジは、HIMAやASTM F-838-83ガイドラインに従う滅菌グレードのフィルタエレメントとして十分検証されている」旨の 記載、95%閉塞時における総処理量において本件製品が最も優れている旨のグラフ等)、甲36の記載(「本件製品の製造業者が製造する本件製品と同種の製品の0.2μmの最終フィルタ層は、本件製品の0.45μm/0.2μmの組合せと同じで、信頼性の高い細菌保持を提供する」旨の記載等)によると、本件製品が備える親水性異質二重層ポリエーテルスルホン膜をワクチンアジュバントのエマルジョンの製造(濾過)に用いることにより、本件課題をいずれも解決することができるものと認められる。
以上のとおりであるから、本件優先日当時の当業者においては、甲14発明に本件周知技術を適用する動機付けがあったものと認められ、本件適用に係る阻害要因もないから、本件優先日当時の当業者は、甲14発明に本件周知技術を適用することによりことにより、相違点16に係る本件発明1の構成に容易に想到し得たものと認められる。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
C 本件発明1の進歩性についての小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、本件優先日当時の当業者において甲14発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものとは認められず、進歩性を欠くものである。
(ウ)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1における、工程(i)、工程(ii)の平均油滴サイズを特定の数値範囲とし、エマルジョンアジュバントと抗原とを合わせる工程(iv)を追加し、「スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を製造するための方法」に係る発明としたものである。
ここで、甲14発明の「生ずるエマルジョンを注射器の針に通過させ、M110Sマイクロフラッディスク(Microfluidisc)装置を使用して微小流動化して、ほぼ145~180nmの大きさを有するエマルジョンとする工程」は、本件発明2の工程(ii)の「500nm以下である平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程」に相当する。
そうすると、本件発明2と甲11発明を対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点16と同様の相違点に加えて、以下の相違点17、18において相違する。
(相違点17)
工程(i)の第1エマルジョンが、本件発明2においては、「5000nm以下の平均油滴サイズを有する」ものであるのに対し、甲14発明においてはその特定がない点
(相違点18)
本件発明2においては、工程(iv)として「該エマルジョンアジュバントと抗原とを合わせる工程」を特定された、「スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を製造するための方法」であるのに対し、甲14発明においてはその特定がない点
上記相違点について検討する。
相違点16についての判断は上記(イ)Bで述べたとおりである。
(相違点17について)
甲14発明は、「生ずるエマルジョンを注射器の針に通過させ、M110Sマイクロフラッディスク(Microfluidisc)装置を使用して微小流動化して、ほぼ145~180nmの大きさを有するエマルジョンとする工程」で「ほぼ145~180nmの大きさを有するエマルジョン」を取得することを発明特定事項として含むものであるから、その段階の前のエマルジョンである「濃厚なエマルジョン」の平均油滴サイズは、「微小流動化して」得られるエマルジョンの平均粒径である145~180nmよりも大きい粒径であることは、甲14にその明示がなくとも明らかであり、またその上限を「5000nm以下」と決定することは当業者が適宜為し得たことである。
(相違点18について)
甲14には、甲14-1に示されるとおり、水中油型エマルジョンアジュバントSB62を抗原と合わせてワクチンを製造することが記載されているから、甲14発明において、「エマルジョンアジュバントと抗原とを合わせる工程」をさらに付加して、「スクアレン含有水中油型エマルジョンワクチンアジュバントを含むワクチン組成物を製造するための方法」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明2は、本件優先日当時の当業者において甲14発明及び周知技術に基づき容易に発明することができたものであり、進歩性を欠くものである。
(エ)本件発明7について
本件発明7は、本件発明1の工程(i)を発明特定事項として備えず、本件発明1における工程(ii)、(iii)を改めて工程(i)、(ii)とした上で、当該(i)のエマルジョンの平均油滴サイズを特定の数値範囲とした発明である。
ここで、甲14発明の「生ずるエマルジョンを注射器の針に通過させ、M110Sマイクロフラッディスク(Microfluidisc)装置を使用して微小流動化して、ほぼ145~180nmの大きさを有するエマルジョンとする工程」は、本件発明7の工程(i)の「500nm以下である平均油滴サイズを有する第2のエマルジョンを形成する工程」に相当する。
そうすると、本件発明7と甲13発明を対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点16と同様の相違点において相違する。そして、相違点についての判断は上記(イ)Bで述べたとおりである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明7は、本件優先日当時の当業者において甲14発明及び周知技術に基づき容易に発明することができたものであり、進歩性を欠くものである。
(オ)本件発明31について
本件発明31と甲14発明を対比する。
・甲14発明の「水中油型エマルジョンアジュバントSB62」は、「リン酸緩衝生理食塩水(PBS)」、「TWEEN80」を含むところ、甲14発明の「リン酸緩衝生理食塩水(PBS)」、「TWEEN80」は、本件発明31の「水性成分」、「界面活性剤」にそれぞれ相当するところ、甲14発明の「水中油型エマルジョンアジュバントSB62の製造」は、本件発明31の「水性成分、スクアレンおよび界面活性剤を含有する水中油型エマルジョン」の「調製」に相当する。そして、甲14発明の「0.2μmのフィルターを通して滅菌濾過する」とは、「水中油型エマルジョンアジュバントSB62」を「製造」するための「フィルター」の使用に他ならず、また「フィルタ」と「フィルター」は同義であることは自明であるところ、本件発明31と甲14発明は、「水性成分、スクアレンおよび界面活性剤を含有する水中油型エマルジョンを調製するための、フィルタの使用」という点で共通するものである。
・甲14発明の「水中油型エマルジョンアジュバントSB62」は、「5%のスクアレン」、「5%のα-トコフェロール」を含有するところ、本件発明31の「2体積%~20体積%の間の油を含」む「水中油型エマルジョン」に相当する。
そうすると、両者は、
「水性成分、スクアレンおよび界面活性剤を含有する水中エマルジョンを調製するための、フィルタの使用であって、該水中油型エマルジョンが、2体積%~20体積%の間の油を含む、使用」
の点で一致し、以下の相違点19において相違する。
(相違点19)
濾過膜について、本件発明31においては「0.3μm以下の孔サイズを有する第1の膜の層と0.3μmより小さい孔サイズを有する第2の膜の層とを含む親水性二重層ポリエーテルスルホンフィルタ」であるのに対し、甲14発明においてはそのことについて特定がない点
上記相違点について検討する。
(相違点19について)
相違点19は、上記(イ)Aの相違点16と同等な相違点であり、その判断については上記(イ)Bで述べたとおりである。
(カ)本件発明33について
本件発明33は、本件発明1の水中油型エマルジョンが「均質な」ものであることを発明特定事項として含み、「該水中油型エマルジョン」が含む「油」の「体積%」の数値範囲を特定のものとした発明である。
ここで、本件発明33の「均質な」「水中油型エマルジョン」とは、本件明細書の記載をみると、段落【0044】、【0045】、【0050】、【0056】等においてホモジナイザーによる処理を「均質化」と表現しているところ、甲14発明の「水中油型エマルジョンアジュバントSB62」もまた「撹拌し完全に混合し濃厚なエマルジョンを形成」した後「M110Sマイクロフラッディスク(Microfluidisc)装置を使用して微小流動化」されるものであるから、甲14発明の「水中油型エマルジョンアジュバントSB62」は「均質」であるといえる。
また、上記(オ)で述べたとおり、甲14発明の「水中油型エマルジョンアジュバントSB62」は、本件発明31の「2体積%~20体積%の間の油を含」む「水中油型エマルジョン」に相当する。
そうすると、本件発明33と甲14発明とを対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点16と同様の相違点において相違する。そして、相違点16についての判断は上記(イ)Bでそれぞれ述べたとおりである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明33は、本件優先日当時の当業者において甲14発明及び周知技術に基づき容易に発明することができたものであり、進歩性を欠くものである。
(キ) 本件発明43について
本件発明43は、本件発明1の水中油型エマルジョンが「均質な」ものであることを発明特定事項として含み、「1つ以上の成分を添加して、該水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程」を追加して、「均質な水中油が型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法」に係る発明としたものである。
ここで、は上記(カ)で述べたとおり、甲14発明の「水中油型エマルジョンアジュバントSB62」は「均質」であるものといえる。
そうすると、本件発明43と甲14発明を対比すると、両者の相違点は、上記(イ)Aの相違点16と同様の相違点に加えて、相違点20において相違する。
(相違点20)
本件発明43においては「均質な水中油型エマルジョンに1つ以上の成分を添加して、該水中エマルジョンを含有する薬学的組成物を形成する工程」を特定した、「均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法」であるのに対し、甲14発明においてはでその特定がない点
上記相違点について検討する。
相違点16についての判断は(イ)Bで述べたとおりである。
(相違点20について)
甲14には、甲14-4に示されるとおり、水中油型エマルジョンアジュバントSB62を抗原と組み合わせてワクチンを製造することが記載されており、甲14発明において、エマルジョンアジュバントに抗原等他の1つ以上の成分を添加してワクチン、すなわち薬学的組成物を形成する工程を設けて、「均質な水中油型エマルジョンを含有する薬学的組成物を製造するための方法」とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、その効果も当業者の予測を超える格別なものとは認められない。
したがって、本件発明43は、本件優先日当時の当業者において甲14発明及び周知技術に基づき容易に発明することができたものであり、進歩性を欠くものである。
(ク)本件発明3~6、8~30、32、34~36、38~42、44~54について
本件発明3~6、8~30、32、34~36、38~42、44~54は、(ア)~(キ)の上記独立請求項を直接的又は間接的に引用し、油滴の数、膜の状態、エマルジョンの組成、キット形態、保存剤の配合等について具体的態様として特定するものであるが、それらの技術的事項は、当業者が最適化のために適宜なし得たことか、適宜採用し得る周知慣用技術に過ぎず、それらの技術的事項を採用することにより格別顕著な効果を奏するものでもないから、本件発明3~6、8~30、32、34~36、38~42、44~54は、本件優先日当時の当業者において甲14発明及び周知技術に基づき容易に発明をすることができたものであり、進歩性を欠くものである。
(ケ)無効理由4(4)についての小括
以上、(ア)~(ク)で述べたとおりであるから、無効理由4(4)は、理由がある。
(6)無効理由5について
ア. 請求人の主張の概要
無効理由5についての審判請求書における請求人の主張は、概要次のとおりのものである:
「本件に係る特許出願(特願2012-541594号)の特許請求の範囲は、平成26年8月27日付けの手続補正書で補正され(甲26)、「均質な水中油型エマルジョンを滅菌濾過する工程を
さらに
包含する」という特定事項を有する
請求項37
、「水中エマルジョンが、約
10%(w/v)以下の油含量
を有する」という特定事項を有する
請求項39
が追加され、本件発明37、39には依然としてこれらの特定事項が記載されている。
しかしながら、これらの特定事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。甲第25号証.PCT/IB2010/003273号の明細書、請求の範囲、図面の中の説明の翻訳文、並びに図面が、特許法第184条の62項の規定により当初明細書等とみなされる)には記載されておらず、また、当初明細書等の全ての記載を総合しても導き出されない新たな技術的事項である。
そうすると、上述の手続補正書でした補正は、新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、本件発明37、39に係る特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、同法第17条第1項第1号に該当し、無効とすべきである。」
イ.上記請求人の主張に対する合議体の判断
(ア)請求項37について
本件訂正により、請求項37は削除された(第3の1.(3)、第4の1.)。
そうすると、本件訂正後の特許請求の範囲には、請求人のいう上記「均質な水中油型エマルジョンを滅菌濾過する工程を
さらに
包含する」という発明特定事項を有する請求項37は存在せず、当該請求項37に係る無効理由5はもはやその無効請求の対象を欠くものとなっている。
よって、請求項37を対象とした無効理由5は、理由がない。
(イ)請求項39について
本件訂正により、請求項39において、引用請求項から請求項37が除外された(第3の1.(3)、第4の1.)。
併せて、本件訂正により、訂正前の請求項39における
「前記水中油型エマルジョンが、
約10%(w/v)以下の
油含量を有する・・・」
は、
「前記水中油型エマルジョンが
2~
10
体積%
の油含量を有する・・・」
と訂正されたところ、かかる訂正が特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであって新規事項の追加に該当しないことも、既に述べたとおりである(第3の2.(4))。
よって、請求項39を対象とした無効理由5は、理由がない。
以上のとおり、請求人の主張する無効理由4は理由があるから、特許法第123条第1項第2号に該当し、本件の請求項1~36、38~54に係る特許を無効とする。
また、本件の請求項37に係る特許についての本件審判の請求は、これを却下する。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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