sokuhyo

Trademark Appeal Case

数値限定発明のサポート要件

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023015722
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯及び本願発明

本願は、2018年(平成30年) 9月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年 7月18日(US)アメリカ合衆国 2017年 9月12日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。

令和 3年 8月31日 :手続補正書及び上申書の提出

令和 4年 5月 9日付け:拒絶理由通知書

同年 9月29日 :意見書及び手続補正書の提出

同年10月25日付け:拒絶理由通知書

令和 5年 4月20日 :意見書の提出

同年 5月 8日付け:拒絶査定

令和 5年 9月19日 :審判請求書の提出

令和 6年 8月15日付け:拒絶理由通知書

令和 7年 2月20日 :意見書及び手続補正書の提出

そして、本願の請求項1~16に係る発明は、令和 7年 2月20日提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1~16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】

組織に接触するよう構成された器具であって、

(a)前記器具の組織接触表面を提供するよう構成された粘弾性発泡体を含む組織境界部分であって、前記粘弾性発泡体は、以下の特性、すなわち、

Standard Test Method for Rubber Property-Durometer Hardness ASTM D2240-15を使用して測定された、1~40のショア000、

0.2~0.7g/cm

3

の密度(比重)、

0.3~7mJ/cm

2

の、Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives ASTM D2979-16を使用して測定された粘性のレベル、

1kPa~15kPaの範囲の貯蔵弾性率、および

0.8kPa~7kPaの範囲の損失弾性率、

を含む、組織境界部分と、

(b)前記組織境界部分を支持するよう、かつ、前記組織境界部分により前記組織から離間されるよう、構成された非接触部分と、

を含む、器具。」

第2 当審で通知した拒絶理由

当審において、令和 6年 8月15日付けで通知した拒絶理由のうち、特許法第36条第6項第1号については、以下の理由を含むものである。

この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

「本願明細書【0009】-【0011】によれば、請求項1の構成を採用することにより解決しようとする課題は、装着者の顔面にマスク等を密着させる際の顔面密閉漏出は、ヒトの顔面の解剖学的組織の顕著な相違から低減化が困難であるところ、マスク等の器具の組織境界領域を、密閉ならびに組織に対する摺動に対する抵抗を改善し、かつ、適正な密閉および嵌合が確保される解剖学的差異の幅を拡げるよう構成することで、器具と組織との間に形状一致する密閉が形成されるよう適応させて、マスクのフィルタ部分等の周囲から漏れ出ることを回避しながら生体組織に対して接触するよう設計された器具を提供することである。

これに対し、本願の請求項1に係る発明の具体的な裏付けとされているものは、同【0150】-【0152】に記載された、1:1の比で手動混合された2成分白金触媒シリコーンエラストマーである10ショアAデュロメータ硬度の液状シリコーンゴムおよびアンモニウムバイカルボナート発泡剤からなる液体の薄いコーティングが連続的ポリマーウェブ基材上で形成され、アンモニウムバイカルボナートの発泡化と液状シリコーンゴムの硬化のため150°Cの熱に5分間曝露され、生成されたエラストマー発泡体シートが、シリコーンゴム接着剤の均一な薄いコーティングを介して、負圧器具の組織接触フランジ上の定位置に押圧されることで形成された、組織境界部分を備えた器具、という実施例1のみであって、この実施例1では、請求項1に係るパラメータの条件が充足され、かつ、当該課題が解決されるのかが判然とせず、更に、請求項1に係る数値範囲の全域において当該課題が解決できることが裏付けられているともいえない。また、当該数値範囲に係るパラメータやその上下限値が、何を根拠に導き出されたのかも理解することができない。

よって、発明の詳細な説明には、どのような作用機序に基づいて、当該数値範囲のものが上記課題を解決するのか、十分に記載されておらず、出願時の技術常識に照らしても、請求項1に係る発明がどのような構成により上記課題のマスクのフィルタ部分等の周囲から漏れ出ることを回避しながら生体組織に対して接触するよう設計された器具を実現するのか理解することができない。

また、当該数値範囲内であれば上記課題を解決できると当業者が認識できる程度に、具体例又は説明が記載されていない。

よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」

第3 当審の判断(特許法第36条第6項第1号について)

1 判断基準

特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件(特許法第36条第6項第1号)に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

2 本願明細書の記載

本願明細書(令和 7年 2月20日提出の手続補正書により補正されたもの。以下、単に「本願明細書」という。)の発明の詳細な説明には、次の記載がある。なお、下線は当審にて付したものである。

(1)「【背景技術】

...

【0004】

患者上の所望の位置における負圧差(例えば大気圧に対する)を作りかつ維持するために係る装置と患者との間の適切かつ快適な嵌合を獲得することは困難であり得る。長時間にわたり日常的に使用することが意図された装置の場合には、

ユーザの組織上における装置の密閉に起因する高接触圧力を受ける任意の点は、継続的な使用に対しては、すぐに快適性が大きく損なわれてしまう。

さらに、

これらの負圧療法の成功は、

変動する解剖学的特徴を吸収(湾曲、屈曲、流動、その他)する能力(すなわち

装置追従性)により決定され得る。

治療に関するユーザコンプライアンスは、装置とユーザとの間の良好な快適性境界面により、および、装置が取り外された時に、隠そうとしても表れる治療後の赤い瘢を最少化または解消する境界面により、最大化される。最終的に、

装置は、密閉を損なうことなく、無精ひげが伸びること、および/または、異なる睡眠姿勢への身動きを、最適な状態で吸収するべきである。

【0005】

同様に、

流体(例えば気体)を患者

(特に閉塞性睡眠時無呼吸(OSA:obstructive sleep apnea)を患う患者)

に注入するよう適応されたマスクは、

好適には、流体を送達するのみではなく、

患者の顔面に対して良好な密閉状態を保ち、患者のいかなる動きにも適応可能であり、快適性が保たれるよう設計される。快適性および追従性を有するが最適な密閉性を有さないマスクは効果的ではない。

マスクのためのフレームが硬質プラスチックである場合、密閉性および追従性は顔面クッションにより提供されなければならない。密閉が通常は配置される顔面の非常に敏感なエリアは、鼻橋領域である。圧力におけるいかなる増加も鼻橋領域に直接的に伝達され得、嵌合が、不快感のみならず痛みさえをも生じさせることとなる。いくつかのマスクは流動性ゲルを皮膚境界面に有した。係るマスクは重く、膜が破れた際には破断が生じ、ゲルが気道内に漏出してしまい、潜在的な健康上の危険要因をもたらし得るものであった。

【0006】

封入されたゲルは圧力を良好に吸収する(例えば高接触圧力のエリアは再分配される)一方で、特に「追従性」に欠ける(例えば、自然な身体の動きにより経験されるものなどの軽微な相対運動のために患者の皮膚に対する密接接触状態に留まることができないことにより)場合には、必ずしも良好な密閉媒体であるとはかぎらない。

追従性は、患者の顔面とクッションとの間で達成可能である移動のレベルであり、および/または、快適な密閉を維持するマスクの能力である。

ResMed’s Activa(登録商標)クッションは非常に良好な追従性を提供するクッションの一例である。追従性および復元力の欠如は密閉性能に影響を及ぼし得、局部加圧点が、例えばより高い顔面上の目印となる箇所(特に鼻橋領域)に、作られ得る。

...

【0009】

装着者の顔面にマスクを密着させることに関して、係る密閉を達成するための主要な理由は、フィルタ部分からではなくマスクのフィルタ部分の周囲から漏れ出ることを回避することである。

このことは、吸入される粒子状物質および/またはユーザから出る発散される粒子状物質の両方に対して成り立つ。顔面密閉内部漏出(FSIL:Face Seal Inner Leakage)および顔面密閉外部漏出(FSOL:Face Seal Outer Leakage)(

顔面密閉漏出

(FSL:Face Seal Leakage)と総称される)

は、ヒトの顔面の解剖学的組織に顕著な相違が存在するため、低減化が困難である。

人体測定学に関する研究によれば、ヒトの顔面の解剖学的組織における多数の変数において実質的な相違が存在することが明らかにされている。

これらは、顔面密閉漏出が発生しがちである3つのエリア、すなわち、1)鼻橋ならびに頬骨、2)頬骨から下あごの縁部まで、および、3)顎の角に向かって戻る下顎の下面との間のエリアの周囲ならびに下方、において、顕著である。

顔面密閉漏出の問題は、FFRが、全般的な「スモール、ミディアム、ラージ」サイズで、さらに多くの場合には「フリーサイズ」のデザインで、作られていることによっても悪化され得る。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0010】

本発明の目的は、生体組織に対して接触するよう設計された器具を提供することである。なお、

この器具の組織境界領域は、器具と組織との間に形状一致する密閉が形成されるよう適応されている。

特定的な態様では、

この器具は、顔面

、頚部、創傷の周囲エリア

などの患者の外部組織

または内部組織

に取り付けられ、かつ密着するよう構成されている。

【0011】

後に説明されるように、

組織境界領域は、密閉を、ならびに組織に対する摺動に対する抵抗を改善し、かつ、適正な密閉および/または嵌合が確保されるよう治療装置が適応するであろう解剖学的差異の幅を拡げるために、固有の粘着性または接着性の特質(本明細書では「粘性」と呼ぶこととする)を含み得る。

(2)「【課題を解決するための手段】

【0012】

第1の態様では、本発明は、

(a)以下の特性、すなわち、

約0以下のショアA、および、好適には、約30以下、より好適には約20以下、さらに好適には約10以下のショア00デュロメータ硬度(いずれの場合においても Standard Test Method for Rubber Property-Durometer Hardness ASTM D2240-15を使用して測定された値である)、

約0.9g/cm

3

以下の密度(比重)、および/または、

約9mJ/cm

2

以下、好適には約7mJ/cm

2

以下、最も好適には約5mJ/cm

2

以下の、Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives ASTM D2979-16を使用して測定された粘性のレベル、

約0.3kPa~約30kPaの範囲、および好適には約1kPa~約15kPaの範囲の弾性(貯蔵)係数、

約0.4kPa~約7kPaの範囲、および、好適には約0.8kPa~約7kPaの範囲の粘性(損失)係数、

のうちの1つまたは複数を含む器具の組織接触表面を提供するよう構成された粘弾性発泡体を含む組織境界部分と、

(b)組織境界部分を支持するよう、かつ、組織境界部分により組織から離間されるよう、構成された非接触部分と、

を含む、動物(好適には哺乳動物、および最も好適にはヒト)の皮膚に接触するよう構成された器具を提供する。

【0013】

「粘弾性」という用語は、本明細書では、変形中に粘性特性および弾性特性の両方を示す物質を指すために使用される。

純粋な弾性物質とは異なり、粘弾性物質は弾性成分および粘性成分を有する。粘弾性物質の粘性は、歪み速度時間依存性を物質に与える。純粋な弾性物質は、負荷が印加された後に除去されたとき、エネルギー(熱)を放出しない。しかし

粘弾性物質は、負荷が印加された後に除去されたとき、エネルギーを損失する。

【0014】

粘弾性物質における貯蔵係数および損失係数は、貯蔵されたエネルギー(弾性部分を表す)と、熱として散逸されたエネルギー(粘性部分を表す)と、を示す。貯蔵(E’)係数および損失(E’)係数は、当該技術分野において周知の動的機械分析(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)法を使用してKPaを単位として測定される。

特定的な実施形態では、粘弾性発泡体は、10kPa~約15kPaの範囲の弾性(貯蔵)係数、および、約2kPa~約7kPaの範囲の粘性(損失)係数、の一方または両方を含む。

...

【0016】

特定的な実施形態では、

粘弾性発泡体は、

約10以下、好適には約5以下、および、さらに好適には約1以下のショアAデュロメータ硬度、または、約30以下、より好適には約20以下、およびさらに好適には約10以下のショア00デュロメータ硬度、または、

50以下、および最も好適には30以下のショア000デュロメータ硬度を示す。

【0017】

特定的な実施形態では、

粘弾性発泡体は、

少なくとも0.1mJ/cm

2

、好適には

少なくとも0.3mJ/cm

2

、最も好適には少なくとも0.5mJ/cm

2

の、Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives ASTM D2979-16を使用して測定された粘性を示す。

したがって多様な実施形態では、

粘性は、

0.1~9mJ/cm

2

の範囲、

0.3~7mJ/cm

2

の範囲

、および0.5~5mJ/cm

2

の範囲

である。

...

【0019】

特定的な実施形態では、

粘弾性発泡体は、高粘度ゴム(「HCR」)または液状シリコーンゴム(「LSR」)などの発泡シリコーンゴムを含むか、または係る発泡シリコーンゴムから構成される。係る粘弾性発泡体は、一緒に混合されたシリコーンゴムおよび発泡剤から形成され、硬化された後、追従性および耐久性を有するヒト境界層が生成される。

粘弾性発泡体は、単一層として提供されてもよく、または、器具の組織境界部分の全部または一部上に配置された物質積層体の1構成要素として提供されてもよい。積層体の場合、粘弾性発泡体は、好適には、積層体の最外部層を提供する(したがって組織接触層を提供する)。

...

【0022】

特定的な実施形態では、

粘弾性発泡体はシリコーン基部、発泡剤、および触媒を使用して形成される。

係る

発泡剤の例としては、アンモニウム塩

、ナトリウム塩、またはカリウム塩

が挙げられる

が、多様な市販の化学発泡剤が当該技術分野で周知である。通常、これらの発泡剤は発泡過程の際にガス(例えば、N2、CO2)を放出する。

触媒は、

鉄触媒、コバルト触媒、亜鉛触媒、チタン酸塩触媒、スズ触媒、

白金触媒

、または酸触媒からなる群より選択され得る。

...

【0031】

特定の実施形態では、

粘弾性発泡体は、

0.9g/cm

3

以下、より好適には0.8g/cm

3

以下、さらに好適には

0.7g/cm

3

以下

、最も好適には0.5g/cm

3

以下

の密度を有する。

(3)「【発明を実施するための形態】

...

【0052】

本発明では、

粘弾性発泡体を含む器具は生体組織

または同様の表面

に接触するよう構成される。

理想的には、

器具の接触表面は、物質が個人間の解剖学的差異に適応することを可能にする粘弾性特性と、所与の個人による動きの結果として発生し得る変化と、の間の適切なバランスを提供する。なお前者の粘弾性特性は、物質が流動/適応することを可能にする低い粘性係数を指し、後者の変化は、物質が回復することを可能にする低い弾性係数を指す。000スケール範囲まで延長する非常に低い(組織のように)デュロメータ硬度、固有の粘性

、独立気泡表面、強化された洗浄可能性、および、強化された耐久性

について、様々な実施形態において特に注目すべきである。

【0053】

加えて、

接触表面は理想的には、器具が生体組織上で摺動し、その結果、皮膚に摩耗または擦傷が生じることを防止し、かつ、静的状態および動的状態の両方において器具と生体組織との間に気密性密閉が維持されることを支援するレベルの粘性を含む。接触表面は、硬さの点において組織に類似し

、皮膚の敏感さまたはアレルギー反応の点において極めて低く、かつ、微生物の成長を適度に防止するべきである。最終的に、反復使用される用途で使用された場合、洗浄は、境界面物質が劣化しないのみではなく、表面粘性が維持される状態で、汚損、汚れ、無精ひげ、化粧、および/または汗が除去されるよう、支援されるべきである。

【0054】

本発明の目的(すなわち、

器具と生体組織との間の追従性境界面

)

を達成することに関して、弾性発泡体のデュロメータ硬度を減少させると、それに対応して粘弾性係数(貯蔵係数および損失係数により測定された係数)も減少することが確認されている。

発泡剤濃度が増加すると、その結果として、粘弾性係数は、デュロメータ硬度ほどの影響はないにせよ、減少する。

...

【0057】

以下は、本発明において使用するための粘弾性発泡体の好適な粘弾性特性である。

【表1】

187

153

0001430422000001.jpg

...

【0061】

特定の実施形態では、

粘弾性発泡体要素は以下に示す密度、デュロメータ硬度、およびプローブ粘性特性を含む。

【表2】

92

153

0001430422000002.jpg

【0062】

(EFMFP)は

弾性発泡物質製造プロセス

(elastomeric foam Material Fabrication Process)であり、

粘弾性発泡体が硬化される様式により定義される。

EFMFPは

「開キャビティ」処理または「閉キャビティ」処理により分類される。

本明細書で使用される

開キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスは、成形機能の外部で硬化するために物質上に粘弾性発泡体要素を塗布することにより定義される。

開キャビティ処理では、粘弾性発泡体は、物質上に単に貼り付けられ、任意の所望の様式で(例えば、室温で、熱、UVが印加される状況下で、または、これらの組み合わせで)硬化されることが許可される。本明細書で使用される

閉キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスは、鋳型内の物質に対して粘弾性発泡体要素を硬化させるために物質を含む閉じられた鋳型に粘弾性発泡体要素を略真空下で塗布または注入すること(例えばオーバーモールド加工)により定義される。

これらの処理における硬化は、任意の好適な様式で(例えば、触媒、熱、UV、またはこれらの組み合わせを適用することにより)達成されることが可能である。

【0063】

密度は、単位体積あたりの物質の質量により測定される密度の度合い(例えば、立方センチメートルあたりのグラム数(g/cm

3

))として定義される。開キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスでは、

粘弾性発泡化物質の密度は

好適には0.1~0.8g/cm

3

の範囲、より好適には

0.2~0.7g/cm

3

の範囲

、および最も好適には0.3~0.5g/cm

3

の範囲

である。

閉キャビティ粘弾性発泡化物質製造プロセスでは、

粘弾性発泡化物質の密度は

好適には0.4~0.9g/cm

3

の範囲、より好適には0.5~0.8g/cm

3

の範囲、および最も好適には

0.6~0.7g/cm

3

の範囲である。

【0064】

デュロメータ硬度は、ASTM D2240スケールにより測定された硬さの測定値として定義される。開キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスでは、デュロメータ硬度は、約10ショア00未満、より好適には約50ショア000未満、最も好適には約5~30ショア000の範囲である。閉キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスでは、デュロメータ硬度は、約10ショア00未満、より好適には約80ショア000未満、および最も好適には約20~40ショア000の範囲である。

【0065】

プローブ粘性は、ASTM D2979 Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesivesにより測定された、接着剤状の要素と接着されたプローブとを分離させるにあたり要求される力として定義される。

開キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスでは、

プローブ粘性は、

好適には約9mJ/cm

2

未満、より好適には

7mJ/cm

2

未満

、および最も好適には約5mJ/cm

2

の範囲である。

閉キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスでは、

プローブ粘性は、

好適には約9mJ/cm

2

未満、より好適には

7mJ/cm

2

未満

、および最も好適には約5mJ/cm

2

の範囲である。

【0066】

特定の実施形態では、

粘弾性発泡化物質要素は、シリコーンゴムと発泡剤との組み合わせを混合させ、それにより発泡細胞構造が発生し

、硬化時に、好適には50~300%の範囲、より好適には75~250%の範囲、最も好適には100~200%の範囲で厚さが増加することにより

生成される発泡シリコーンゴム物質である。

...

【0071】

特定の実施形態では、

組織境界部分は、

組み合わされた状態でまたは部分的に、好適にはHCR物質であり、さらに好適には

LSR物質である、シリコーンゴム物質を含む。

シリコーンゴムのデュロメータ硬度は、好適にはおよそ1~20ショアAデュロメータ硬度の範囲、およびより好適にはおよそ1~10ショアAデュロメータ硬度の範囲である。さらにシリコーンゴムを発泡化させると、物理的または化学的に架橋結合され得る3次元網状組織の疎水性ポリマー鎖が作られ得る。

発泡化されたLSR物質の顕著なガス含有量のために、発泡化されたLSRは天然の軟組織に細密に類似し得る。発泡化特性は、シリコーンゴム物質に加えられる発泡体の添加

(

例えば

ビニルジメチル末端ポリジメチルシロキサンポリマーに分散される

アンモニウムバイカルボナート

)

により達成される

ことが可能である。これらの事例では、

発泡剤とシリコーンゴムとの重量比率は、

好適にはおよそ0.1%~10%の範囲、より好適にはおよそ0.5%~5%の範囲、および最も好適には

およそ1.5%~3%の範囲である。発泡化されたLSRの形成において用いられる追加的な薬剤は、白金触媒

および有機スズ化合物触媒

を含み得る

が、これらに限定されない。

...

【0074】

比重は、物質の密度と基準物質の密度との比(例えば、エラストマー物質と水の密度の比)として定義される。本装置の様々な実施形態では、

粘弾性発泡化物質の比重は約0.49g/cm(当審注:「g/cm

3

」の誤りと認める。)~約0.72g/cm(同)の範囲である。

...

【0090】

特定の実施形態では、本発明の発泡シリコーンゴムは、必要な治療的境界面密閉性が損なわれることなく、予め存在する無精ひげまたは無精ひげが夜間に成長することを楽にするよう、十分な柔軟性および形状適合性を有するであろう。

粘弾性発泡化物質において、好適なシリコーンゴムのデュロメータ硬度および発泡剤濃度の範囲はそれぞれ、1~10ショアAの範囲、および、1.5~3%の範囲である。結果的に生成される粘弾性発泡体は、

10ショア00以下の最終的なデュロメータ硬度を有し、好適にはおよそ

1~40ショア000の範囲の最終的なデュロメータ硬度範囲を有する。

...

【0137】

接着層物質は、

治療装置がユーザの組織から取り外されたときに装置に対する接着状態が保持されるよう、治療装置に対して十分に接着しなければならず、加えて、

ユーザの組織境界面における適切な性能のために選択された粘性レベルを有さなければならない。

すなわち、

粘性レベルが過剰に大きい場合は、組織から装置を取り外すことが困難となり、痛みまたは創傷が生じ得る。

一方、

粘性が不十分である場合、使用中に装置が動いてしまい、または組織に対する密閉が開かれてしまい、それにより真空が損なわれることとなり得る。

粘性レベルは、テクスチャアナライザにより測定可能である。例えば、7mm半径および1インチ直径球形ヘッドを有するTA.XT plusを使用すると、ピーク接着値は、200~400グラムピーク力、より好適には250~350グラムピーク力、最も好適には275~325グラムピーク力の範囲となり得る。」

(4)「【0150】

実施例1

物質の準備は、10ショアAデュロメータ硬度の液状シリコーンゴム(Silbione(登録商標)LSR4310、Elkem Silicones、米国)およびアンモニウムバイカルボナート発泡剤(Med4-4900、Nusil Technology LLC)を使用して実施された。使用された液状シリコーンゴムは1:1の比で手動混合された2成分白金触媒シリコーンエラストマーである。アンモニウムバイカルボナートが、液状シリコーンゴム混合物から1.5重量%において計り取られ、次に、それと組み合わされ、手動で混合された。

【0151】

物質形成はナイフコーティング機を使用して実施された。ナイフコーティングは、過剰なコーティング液が塗布された後、ウェブが前進する際に固定的に支持されたウェブに対してごく近傍に保持された硬いナイフにより測定されることにより、薄い液体コーティングが連続的ポリマーウェブ基材上で形成される処理である。コーティングの厚さは、主に、ナイフとウェブとの間の隙間または間隙に、および、間隙の幾何学的形状(ベベル角、長さ、その他)に、依存する。この実施形態では、上述の過剰な

液状シリコーンゴムおよびアンモニウムバイカルボナートの混合物が、

2.16mmの隙間に設定されたナイフの上流側で、

前進するウェブに塗布された。ウェブが前進するにつれて、ウェブの測定された2.16mm厚さ部分が、

発泡化の作動と、液状シリコーンゴムの硬化と、が同時に意図された

150°Cの熱に曝露された。

加熱は5分の最小期間にわたり維持された。その期間の間、アンモニウムバイカルボナート発泡化により、物質は厚さにおいて膨張した。5分間の加熱期間の後、硬化されたエラストマー発泡体は室温に戻され、室温において、結果的に生成された発泡体の厚さは公称3.05mmへと落ち着いた。

【0152】

物質塗布は、エラストマー発泡体シートを、負圧器具の組織接触フランジの3次元形状に対応する好適な2次元形状へと(すなわち、およそ25mm幅の環形を有する114mmx190mmの楕円形ドーナツ形状)型抜きすることにより達成された。形状へと型抜きされた後、

ポリマーウェブ裏材が、エラストマー発泡体ドーナツの背面から取り外され、

シリコーンゴム接着剤

(Sil-Poxy(登録商標),Smooth-On,Inc)の均一な薄いコーティング

が、環形全体に沿って定位置に手動で塗布された。

コーティングされたエラストマー発泡体ドーナツは、位置合わせするために手動で操作され、

負圧器具の組織接触フランジ上の定位置に押圧された。

シリコーンゴム接着剤は少なくとも12分間にわたり室温で硬化された。」

3 検討

(1)本願発明の課題について

前記2(1)及び(2)によれば、本願発明は、従来、ヒトの顔面の解剖学的組織の顕著な相違から、マスクの快適性及び追従性を保ちつつ、密閉性を損なわないこと、すなわち、装着者の顔面に密着させる際の顔面密閉漏出を低減化することが困難であったところ、マスク等の器具の組織境界領域を、密閉及び組織に対する摺動に対する抵抗を改善し、かつ、適正な密閉及び嵌合が確保される解剖学的差異の幅を拡げるよう構成することで、器具と組織との形状一致する密閉が形成されるよう適応させて、マスクのフィルタ部分等の周囲から漏れ出ることを回避しながら生体組織に対して接触するよう設計された器具を提供することを課題とする。

(2)本願発明の課題を解決する手段について

本願発明は、「組織に接触するよう構成された器具」「の組織接触表面を提供するよう構成された」「組織境界部分」が含む「粘弾性発泡体」が、「以下の特性、すなわち、

Standard Test Method for Rubber Property-Durometer Hardness ASTM D2240-15を使用して測定された、1~40のショア000、

0.2~0.7g/cm

3

の密度(比重)、

0.3~7mJ/cm

2

の、Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives ASTM D2979-16を使用して測定された粘性のレベル、

1kPa~15kPaの範囲の貯蔵弾性率、および

0.8kPa~7kPaの範囲の損失弾性率、

を含む」ものである(以下、粘弾性発泡体が含む上記5つの「特性」に係るそれぞれのパラメータを総称して「本願5パラメータ」という。)。

ア 本願明細書の記載(「実施例」以外)

前記2(2)及び(3)によれば、本願明細書には、本願5パラメータについて、段落【0012】に特許請求の範囲と概ね同じ記載があるほか、段落【0057】及び【0061】に、各パラメータ(弾性係数、粘性係数、密度、デュロメータ硬度、粘性)の「好適な範囲、より好適な範囲及び最も好適な範囲」が表形式(【表1】、【表2】)で記載され、段落【0061】~【0065】には、一部のパラメータ(粘弾性発泡体要素の密度、デュロメータ硬度及びプローブ粘性特性)について、開キャビティ粘弾性発泡体物質作製プロセス又は閉キャビティ粘弾性発泡体物質作製プロセスとの関連での好適な数値範囲に関する記載があり、段落【0071】には、組織に接触するよう構成された器具の組織境界部分が含む粘弾性発泡体を製造する際の材料やその特性、添加する発泡剤の重量比率等に関する記載がある(後記イの「実施例」に基づく記載と理解される)。

また、本願5パラメータを含む課題解決手段の作用機序に関して、段落【0052】には、「器具の接触表面は、物質が個人間の解剖学的差異に適応することを可能にする粘弾性特性と、所与の個人による動きの結果として発生し得る変化と、の間の適切なバランスを提供する。」との記載がある。

具体的に、パラメータ毎等に整理すると、次のとおりである。

(ア)貯蔵係数及び損失係数に関して

a 粘弾性物質は、弾性成分及び粘性成分を有し、負荷が印加された後に除去されたときにエネルギー(熱)を放出しない(貯蔵する)弾性と、エネルギーを放出する(損失する)粘性とを有する。そして、これらの性状を定量的に表す貯蔵係数及び損失係数は、KPaを単位として周知の分析法により測定される。

本願発明に係る粘弾性発泡体は、10kPa~約15kPaの範囲の弾性(貯蔵)係数及び約2kPa~約7kPaの範囲の粘性(損失)係数を含む。(段落【0013】、【0014】)

b 器具の接触表面が器具の使用者毎の解剖学的差異に適応することを可能にするような粘弾性特性は、物質が流動/適応することを可能にする低い粘性係数設定とすることにより達成される。

また、器具の接触表面の、使用者毎の動きの結果として発生する変化は、物質が回復することを可能にする低い弾性係数設定とすることにより達成される。(段落【0052】)

(イ)デュロメータ硬度に関して

a 器具が含む粘弾性発泡体は、硬さの点において生体組織に類似するように、000スケール範囲まで延長する非常に低いデュロメータ硬度を示す。具体的には、50以下、及び最も好適には30以下のショア000デュロメータ硬度を示す。(段落【0016】、【0052】、【0053】)

b 開キャビティ粘弾性発泡体物質作製プロセスでは、約10ショア00未満、より好適には約50ショア000未満、最も好適には約5~30ショア000の範囲であり、閉キャビティ粘弾性発泡体物質作製プロセスでは、約10ショア00未満、より好適には約80ショア000未満、及び最も好適には約20~40ショア000の範囲である。(段落【0064】)

(ウ)デュロメータ硬度と粘弾性係数との関係に関して

器具と生体組織との間の追従性境界面を達成する弾性発泡体において、そのデュロメータ硬度を減少させると、それに対応して粘弾性係数(貯蔵係数及び損失係数により測定される係数)も減少することが確認されている。(段落【0054】)

(エ)粘性のレベルに関して

a 器具の接触表面は、器具が生体組織上で摺動することにより生じる皮膚の摩耗又は擦傷を防止し、かつ、静的状態及び動的状態の両方において器具と生体組織との間に気密性密閉が維持されることを支援するレベルの粘性を含むことが理想である。(段落【0053】)

b 接着層物質は、ユーザの組織境界面における適切な性能のために選択された粘性レベルを有さなければならない。すなわち、

粘性レベルが過剰に大きい場合は、組織から装置を取り外すことが困難となり、痛み又は創傷が生じ得る。一方、粘性が不十分である場合、使用中に装置が動いてしまい、又は組織に対する密閉が開かれてしまい、それにより真空が損なわれることとなり得る。

(段落【0137】)

c 具体的に、粘弾性発泡体は、Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives ASTM D2979-16を使用して測定される粘性として、少なくとも0.1mJ/cm

2

、好適には少なくとも0.3mJ/cm

2

、最も好適には少なくとも0.5mJ/cm

2

であり、多様な実施形態において、0.1~9mJ/cm

2

の範囲、0.3~7mJ/cm

2

の範囲、及び0.5~5mJ/cm

2

の範囲である。(段落【0017】)

d ASTM D2979 Standard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesivesにより測定された、接着剤状の要素とこれに接着されたプローブとを分離させるにあたり要求される力として定義される「プローブ粘性」として、開キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスでは、好適には約9mJ/cm

2

未満、より好適には7mJ/cm

2

未満、及び最も好適には約5mJ/cm

2

の範囲であり、閉キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスでは、好適には約9mJ/cm

2

未満、より好適には7mJ/cm

2

未満、及び最も好適には約5mJ/cm

2

の範囲である。(段落【0065】)

(オ)密度(比重)に関して

様々な実施形態において、粘弾性発泡化物質の比重は、約0.49g/cm

3

~約0.72g/cm

3

の範囲である。

粘弾性発泡化物質の密度は、開キャビティ粘弾性発泡体物質製造プロセスでは、好適には0.1~0.8g/cm

3

の範囲、より好適には0.2~0.7g/cm

3

の範囲、及び最も好適には0.3~0.5g/cm

3

の範囲であり、閉キャビティ粘弾性発泡化物質製造プロセスでは、好適には0.4~0.9g/cm

3

の範囲、より好適には0.5~0.8g/cm

3

の範囲、及び最も好適には0.6~0.7g/cm

3

の範囲である。(段落【0063】、【0074】)

(カ)粘弾性発泡体の組成に関して

a 器具の組織協会部分が含む粘弾性発泡体は、高粘度ゴム(「HCR」)又は液状シリコーンゴム(「LSR」)などのシリコーンゴムと、これと一緒に混合された発泡剤とから触媒下に形成され、硬化された後、追従性及び耐久性を有するヒト境界層が生成される。

発泡剤の例としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩、又はカリウム塩が挙げられ、通常、これらの発泡剤は発泡過程の際にガス(例えば、N

2

、CO

2

)を放出する。

触媒は、鉄触媒、コバルト触媒、亜鉛触媒、チタン酸塩触媒、スズ触媒、白金触媒、又は酸触媒からなる群より選択され得る。(段落【0019】、【0022】、【0066】)

b より具体的には、組織境界部分は、好適にはHCR物質であり、更に好適にはLSR物質である、好適にはおよそ1~20ショアAデュロメータ硬度の範囲、及びより好適にはおよそ1~10ショアAデュロメータ硬度の範囲であるデュロメータ硬度を有するシリコーンゴム物質を含む。

追加的な薬剤として白金触媒及び有機スズ化合物触媒を用いてLSRを発泡化させると、顕著なガス含有量のために、天然の軟組織に細密に類似させることができる。

発泡化特性は、シリコーンゴム物質に加えられる発泡体、例えばアンモニウムバイカルボナートの添加により達成される。発泡剤とシリコーンゴムとの重量比率は、好適にはおよそ0.1%~10%の範囲、より好適にはおよそ0.5%~5%の範囲、及び最も好適にはおよそ1.5%~3%の範囲である。(段落【0071】)

(キ)本願5パラメータと課題との関係について

前記(1)によれば、マスクの快適性、追従性及び密閉性の3つの能力を実現することが課題とされているところ、前記(ア)によれば、粘性係数は追従性と、弾性係数は快適性とそれぞれ関係があることが記載ないし示唆されている。また、前記(ア)~(ウ)によれば、デュロメータ硬度は、快適性及び追従性と関係があることが、前記(エ)によれば、粘性のレベルは、快適性及び密閉性と関係があることが、それぞれ記載ないし示唆されている。しかし、密度(比重)については、前記(オ)に示すとおり、マスクの快適性、追従性及び密閉性との関係、すなわち本願発明の課題との関係は特段見出せない。

このように、本願明細書においては、本願発明の粘弾性発泡体の組成や本願5パラメータについては前記(ア)~(エ)及び(カ)の記載にとどまり、前提となる粘弾性発泡体ないし化合物の粘弾性の詳細、及び、各特性の相関関係については、それ以上の具体的な記載は見当たらない。

イ 「実施例」の記載

前記2(4)によれば、まず、段落【0150】に、「物質の準備は、10ショアAデュロメータ硬度の液状シリコーンゴム(Silbione(登録商標)LSR4310、Elkem Silicones、米国)およびアンモニウムバイカルボナート発泡剤(Med4-4900、Nusil Technology LLC)を使用して実施された。使用された液状シリコーンゴムは1:1の比で手動混合された2成分白金触媒シリコーンエラストマーである。アンモニウムバイカルボナートが、液状シリコーンゴム混合物から1.5重量%において計り取られ、次に、それと組み合わされ、手動で混合された。」との記載がある。

次に、段落【0151】、【0152】に、上記の混合物をポリマーウェブ基材上に塗布し、熱曝露して得られたエラストマー発泡体シートを型抜きして、負圧器具の組織接触フランジ上に設置したことが記載されている。

ウ そして、本願明細書には、実施例を含め、前記説示した記載のほかに、本願発明の課題解決手段に特に関連する記載は見当たらない。

(3)サポート要件の適合性について

ア 本願発明の作用機序

本願発明は、器具の組織境界部分の粘弾性発泡体について、本願5パラメータのみで特定するものである。そして、前記(2)アによっても、粘弾性発泡体が本願5パラメータの全てにおいて所定の数値範囲を満たすことで前記(1)の課題を解決することは理解できない。

本願明細書の段落【0137】の記載(前記2(3))によれば、本願5パラメータのうち粘性のレベルは、本願発明の課題に関係するマスクの快適性及び密閉性を保つために、その上限と下限との間の所定の範囲内に設定する必要があるものと一応理解できる。

しかし、本願発明における特定のように、器具の組織境界表面を提供するよう構成された粘弾性発泡体の「粘性のレベル」をStandard Test Method for Pressure-Sensitive Tack of Adhesives ASTM D2979-16を使用して測定された0.3~7mJ/cm

2

の範囲内に設定することで、本願の課題を解決することは、本願明細書に記載されていない。

そして、本願5パラメータが各々所定の数値範囲の値である場合の粘弾性発泡体が本願発明の課題を解決することができるとする技術常識は、何ら提示されていない。

したがって、前記(2)アによっても、粘弾性発泡体が本願5パラメータの全てにおいて所定の数値範囲を満たすことで前記(1)の課題を解決することは理解できない。

イ 「実施例」について

前記(2)イに「実施例1」として具体的に記載されている粘弾性発泡体は、上記の1種類のみであるところ、当該粘弾性発泡体の組成は、本願5パラメータを満たすものに該当するのか不明である。

そして、当該粘弾性発泡体を含む組織境界部分を備えた負圧器具の使用感の検証や効果の確認等について、本願明細書に一切記載されていない。

以上のとおり、実施例1が前記(1)の課題を解決することについては、実験的に裏付けられていない。

(4)小括

したがって、本願明細書の発明の詳細な記載及び技術常識により、当業者は、本願発明が前記(1)の課題を解決することができるとは理解できないから、本願発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

第4 むすび

以上のとおり、本願は、特許請求の範囲の請求項1の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしてない。

したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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