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Trademark Appeal Case

補正却下と独立特許要件

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023017320
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成29年4月19日(パリ条約による優先権主張 2016年4月19日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする特願2018-555682号の一部を令和3年12月10日に新たな特許出願としたものであって、その手続の概要は次のとおりである。

令和3年12月22日 :手続補正書の提出

令和4年11月 8日付け:拒絶理由通知

令和5年 5月 2日 :意見書、手続補正書の提出

令和5年 5月29日付け:拒絶査定

令和5年10月12日 :審判請求書、手続補正書の提出

令和5年11月 2日 :上申書の提出

第2 令和 5年 10月12日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和 5年 10月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]

1 補正の内容

令和5年10月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前の

「【請求項1】 医薬の製造のための、[FWYHT]-

X(2)

-[VILM]-

X(2)

-[FWYHT][配列番号60]配列モチーフを有する抗原のCD1d結合ペプチドエピトープと、前記エピトープに直接接している

又は前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた

[HW]-

X(2)

-C-

X(2)

-[CST][配列番号3]、[HW]-X-C-

X(2)

-[CST][配列番号2]、[HW]-C-

X(2)

-[CST][配列番号1]、[CST]-

X(2)

-C-

X(2)

-[HW][配列番号6]、[CST]-

X(2)

-C-X-[HW][配列番号5]、若しくは[CST]-

X(2)

-C-[HW][配列番号4]レドックスモチーフ配列とを含む、12~100アミノ酸の単離免疫原性ペプチドの使用。」

との記載から、

「【請求項1】

多発性硬化症の治療に使用するための

医薬の製造のための、[FWYHT]-

X-X

-[VILM]-

X-X

-[FWYHT][配列番号60]配列モチーフを有する抗原のCD1d結合ペプチドエピトープと、前記エピトープに直接接してい

る[

HW]-

X-X

-C-

X-X

-[CST][配列番号3]、[HW]-X-C-

X-X

-[CST][配列番号2]、[HW]-C-

X-X

-[CST][配列番号1]、[CST]-

X-X

-C-

X-X

-[HW][配列番号6]、[CST]-

X-X

-C-X-[HW][配列番号5]、若しくは[CST]-

X-X

-C-[HW][配列番号4]レドックスモチーフ配列とを含む、12~100アミノ酸の単離免疫原性ペプチドの使用

であって、記号Xは、任意のアミノ酸が許容される位置に対して使用され、大括弧([ ])の中のアミノ酸は、所与の位置に対するいずれか一つの許容可能なアミノ酸を列挙して示される、使用

。」(以下、「本件補正発明」という。下線は、補正箇所を示す。)

との記載に変更するものである。

2 補正の目的

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、「医薬」について限定を付加するものであって、また、「エピトープ」と「レドックスモチーフ配列」の関係について、「直接接している又は前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた」という2つの選択肢のうち、後者の選択肢である「前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた」を削除する補正事項からなるものであり、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると解することができる。

3 独立特許要件について

そこで、本件補正発明が、特許法第17条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

4 本件補正発明

本件補正発明は、前記1に記載したとおりのものである。

5 特許法第36条第6項第1号について

(1)発明の詳細な説明等の記載内容

本願の発明の詳細な説明には以下の記載がある。(下線は合議体が付与した。)

ア.「【発明が解決しようとする課題】

【0009】

序論で言及された4アミノ酸レドックスモチーフ配列の異なる代替物は、[CST]-X(2)-C[配列番号54]又はC-X(2)-[CST][配列番号55]と書くこともできる。本発明は、該モチーフの外側で直接接している(モチーフのN末端(-1位)又はモチーフのC末端(+5位))追加のヒスチジン又はトリプトファンアミノ酸の存在が、レドックスモチーフの安定性を向上させることを明らかにする。

【課題を解決するための手段】

【0010】

故に、本発明は、一般的構造[HW]-C-X(2)-[CST][配列番号1]又は[CST]-X(2)-C-[HW][配列番号4]を有する修飾レドックスモチーフに関する。

【0011】

この改善された安定性により、追加のヒスチジン又はトリプトファンが存在しないペプチドと比べて、例えば少ないペプチドが使用され得、又は注射の回数が減るというように、ペプチドの特異的還元活性は増加する。」

イ.「【0094】

したがって、

最も広い意味において、本発明は、免疫反応を引き起こす可能性を有する抗原(自己又は非自己)の少なくとも1つのCD1d結合ペプチドエピトープと、ペプチドジスルフィド結合に対する還元活性を有する修飾チオレダクターゼ配列モチーフとを含むペプチドに関する。

CD1d結合エピトープ及び修飾レドックスモチーフ配列は、ペプチド中で互いに直接接していてもよく、又は場合により1つ若しくは複数のアミノ酸(いわゆるリンカー配列)により隔てられていてもよい。場合によりペプチドは、エンドソーム標的化配列及び/又は追加の「フランキング」配列を更に含む。」

ウ.「【0096】

修飾レドックスモチーフは、CD1d結合ペプチドエピトープのアミノ末端側、又はCD1d結合ペプチドエピトープのカルボキシ末端に配置されてもよい。」

エ.「【0099】

本発明のペプチドの「修飾」レドックスモチーフは、直接接しているシステイン、及びモチーフの外側にヒスチジン又はトリプトファンが存在している点で先行技術と異なる。換言すれば、修飾レドックスモチーフは、[HW]-X(0,2)-C-X(2)-[CST]([配列番号1]、[配列番号2]、[配列番号3])又は[CST]-X(2)-C-X(0,2)-[HW]([配列番号4]、[配列番号5]、[配列番号6])と書かれる。」

オ.「【0190】

(実施例1)

ペプチドの還元活性を評価するための方法論

ペプチドのレダクターゼ活性は、Tomazzolliら(2006) Anal. Biochem. 350、105~112頁に記載された蛍光を用いて決定する。FITC標識を有する2つのペプチドは、ジスルフィド架橋を介して互いに共有結合すると自己消光になる。本発明によるペプチドにより還元すると、還元された個々のペプチドは再び蛍光になる。

【0191】

対照実験を「通常の」還元ペプチドを含むペプチド、すなわちレドックスモチーフを含むが追加のヒスチジン又はトリプトファンを含まないペプチド、及びレドックスモチーフを含まないペプチドで行った。

【0192】

実際には、FITC-NH-Gly-Cys-Asp-COOHペプチドを合成し(Eurogentec社、ベルギー)、DMSOに可溶化して自己消光させた((FITC-Gly-Cys-Asp)ox)。続いて、2.5μM(FITC-Gly-Cys-Asp)oxの還元を、添付の表に列挙したペプチド(25μM)、又は2mMジチオスレイトール(DTT)とPBS中でインキュベーション後、96ウェルプレートで40分間(25°C)行った。還元を、CytoFluor(登録商標)マルチプレートリーダー(Applied Biosystems社)を用いて494nmで励起後、530nmで読み取った蛍光の増加の関数として測定した。」

カ.「【0206】

(実施例7)

MOG-特異的CD4+ NKTリンパ球の検出のためのCD1d分子の四量体の使用

多発性硬化症

は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)等の自己抗原に対するCD4+ NKT細胞が重要な役割を果たしている可能性がある慢性脱髄疾患である。その実験上の同等物、EAE(実験上の自己免疫脳脊髄炎)は、ヒト疾患の特徴のほとんどを模倣しており、発病機構を理解し、新たな治療を描くのに使用される。したがって、MOG特異的CD4+ NKT細胞を計数することは、疾患転帰を予測し得る。CD1d結合エピトープを、上記のアルゴリズム及び機能アッセイの組み合わせによりマウスMOGタンパク質で同定する。これは、配列200~206に対応する。CD4+ NKT細胞を、EAEが既に誘導されているC57BL/6マウスの脾臓から調製する。CD4(-)細胞を先ず磁性ビーズを用いて脾臓細胞懸濁液から除去する。フィコエリトリン等の蛍光標識を含むCD1d分子(H-2b)の四量体を、当技術分野で知られているように作成する。CD1d拘束MOG NKT細胞エピトープを包含する合成ペプチドを作製する。

【0207】

使用するペプチドは、

GG FLRVPCWKI[配列番号85]

CGPC GG FLRVPCWKI[配列番号86]

HCGPC GG FLRVPCWKI[配列番号87]

WCGPC GG FLRVPCWKI[配列番号88]

である。

【0208】

四量体を、室温で一晩ペプチドでローディングする。ローディングされた四量体を次いで洗浄し、CD4+ T細胞と37°Cで2時間インキュベートする。懸濁液を次いで蛍光活性化細胞選別システムで読みとり、MOGペプチドに特異的なNKT細胞の比率を評価する。」

キ.「【0213】

(実施例9)

CD1d結合及びチオレダクターゼモチーフを含有するペプチドでの予備免疫化によるEAEの予防

EAE(実験上の自己免疫脳脊髄炎)は、中枢神経系の脱髄が生じ、

多発性硬化症

の実験上の同等物と見なされるモデル疾患である。少数の自己抗原が、疾患の誘発及び維持に関与すると考えられており、そのうちの1つがMOG(ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質)である。疾患は、MOGアミノ酸35~55個を包含するCD1d結合ペプチドエピトープを用いて、MOG免疫化によりC57BL/6マウスで誘発することができる。MOGはCD1dに結合し、NKT細胞を活性化する配列を含有する。

【0214】

使用するペプチドは、

GG FLRVPCWKI[配列番号85]

CHGC GG FLRVPCWKI[配列番号86]

HCHGC GG FLRVPCWKI[配列番号87]

WCHGC GG FLRVPCWKI[配列番号88]

である。

【0215】

C57BL/6マウス群を、配列番号86、87若しくは88のペプチド、又は対照として天然配列中のペプチドで皮下に4回(50μg)免疫化する。最終免疫化の10日後、ナイーブの非免疫化動物群を含む全てのマウスを、CFA中100μg MOG 35~55ペプチド/400μgウシ型結核死菌(Mycobacterium butyricum)の皮下注射、及びNaCl中300ng百日咳菌(Bortetella pertussis)のip注射により疾患に誘導する。+2日目、百日咳菌の2回目の注射を与える。EAEの徴候を経時的に追跡する。」

(2)サポート要件についての検討

ア 本件補正発明の課題

本願明細書の記載事項ア.「【発明が解決しようとする課題】

【0009】

序論で言及された4アミノ酸レドックスモチーフ配列の異なる代替物は、[CST]-X(2)-C[配列番号54]又はC-X(2)-[CST][配列番号55]と書くこともできる。本発明は、

該モチーフの外側で直接接している(モチーフのN末端(-1位)又はモチーフのC末端(+5位))追加のヒスチジン又はトリプトファンアミノ酸の存在が、レドックスモチーフの安定性を向上させることを明らかにする。

」との記載より、本件補正発明の解決しようとする課題は、「医薬の製造のための、CD1d結合ペプチドエピトープとレドックスモチーフ配列とを含む免疫原性ペプチドにおいて、レドックスモチーフの安定性が向上させたペプチドの使用を提供すること」であると認められる。

イ 判断

本件補正発明は、CD1d結合ペプチドエピトープと、前記エピトープに直接接している[HW]-X-X-C-X-X-[CST][配列番号3]、[HW]-X-C-X-X-[CST][配列番号2]、[HW]-C-X-X-[CST][配列番号1]、[CST]-X-X-C-X-X-[HW][配列番号6]、[CST]-X-X-C-X-[HW][配列番号5]、若しくは[CST]-X-X-C-[HW][配列番号4]レドックスモチーフ配列とを含む、12~100アミノ酸の単離免疫原性ペプチドの使用であるところ、本願明細書には、記載事項イ.「【0094】

したがって、

最も広い意味において

、本発明は、免疫反応を引き起こす可能性を有する抗原(自己又は非自己)の少なくとも1つのCD1d結合ペプチドエピトープと、ペプチドジスルフィド結合に対する還元活性を有する修飾チオレダクターゼ配列モチーフとを含むペプチドに関する」と、本発明は最も広い意味において解釈されるペプチドに関する旨が記載されている。

そうすると、[FWYHT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYHT][配列番号60]配列モチーフを有する抗原のCD1d結合ペプチドエピトープと修飾チオレダクターゼ配列との関係について、左側をN末端側、右側をC末端側として書き下すと、

ア)[HW]-X-X-C-X-X-[CST][配列番号3]-CD1d結合ペプチドエピトープ

イ)[HW]-X-C-X-X-[CST][配列番号2]-CD1d結合ペプチドエピトープ

ウ)[HW]-C-X-X-[CST][配列番号1]-CD1d結合ペプチドエピトープ

エ)[CST]-X-X-C-X-X-[HW][配列番号6]-CD1d結合ペプチドエピトープ

オ)[CST]-X-X-C-X-[HW][配列番号5]-CD1d結合ペプチドエピトープ

カ)[CST]-X-X-C-[HW][配列番号4]-CD1d結合ペプチドエピトープ

キ)CD1d結合ペプチドエピトープ-[HW]-X-X-C-X-X-[CST][配列番号3]

ク)CD1d結合ペプチドエピトープ-[HW]-X-C-X-X-[CST][配列番号2]

ケ)CD1d結合ペプチドエピトープ-[HW]-C-X-X-[CST][配列番号1]

コ)CD1d結合ペプチドエピトープ-[CST]-X-X-C-X-X-[HW][配列番号6]

サ)CD1d結合ペプチドエピトープ-[CST]-X-X-C-X-[HW][配列番号5]

シ)CD1d結合ペプチドエピトープ-[CST]-X-X-C-[HW][配列番号4]

という12の構造が、本件補正発明のペプチドに含まれるものと認められる。

そのうえ、本件補正発明は「12~100アミノ酸の単離免疫原性ペプチドの使用」である。しかし、7アミノ酸からなることが特定される上記配列番号60で規定されるCD1d結合ペプチドエピトープと、修飾チオレダクターゼ配列とから構成されるアミノ酸配列は、せいぜい12~14アミノ酸が規定されているにすぎず、例えば単離免疫原性ペプチドのアミノ酸配列長が100アミノ酸である発明は、上記のア)~シ)の末端に86~88個の任意のアミノ酸配列が付加された諸々のペプチドが、本件補正発明における「単離免疫原性ペプチド」に包含されるものと解される。

このように、本件補正発明に係るペプチドは、アミノ酸配列長が12~100アミノ酸であって、そのうちのCD1d結合ペプチドエピトープと配列番号1~6のいずれかのレドックスモチーフ配列を直接接して備えていることが特定されているだけであって、本件補正発明は、CD1d結合ペプチドエピトープと配列番号1~6のいずれかのレドックスモチーフ配列の相対的な配置すら特定されていない12~14アミノ酸配列長のペプチドに対し、最長86~88アミノ酸の任意のアミノ酸配列の付加を許容する様々な構造の単離免疫原性ペプチドを、医薬の製造のために使用する方法に係るものである。

しかしながら、発明の詳細な説明の記載は、上記5(1)で指摘したとおりであって、追加のヒスチジン又はトリプトファンで修飾することで、レドックスモチーフが安定化したことを裏付ける具体的な記載は全くなされておらず、またそのことについて、合理的に推認できる作用機序等についての説明もなされていない。

ところで、「安定化」とは、熱、化学物質、光、温度、pH及び時間といった様々な事物・事象に対する安定化が幅広く該当するものであるが、本願の発明の詳細な説明の記載を参照しても、本件補正発明に係る安定化とは、何に関する安定化を意味するのか、定義も説明もなされていない。

ここで、アミノ酸は、その種類によって側鎖の化学構造が様々に異なり、その性質も互いに異なるものであるところ、機能が知られたペプチドを改変するに際し、改変するアミノ酸の位置や改変後の種類によって、改変による変化は異なり得ること、その変化は、実際に実験してみないとわからないことが、当業者の技術常識であったと認められる。

そうしてみると、本願の発明の詳細な説明に、それに含まれるアミノ酸配列が記載されることすらなされていないエ)~ケ)が、レドックスモチーフを、ヒスチジン又はトリプトファンで修飾することで、何らかの安定性を向上できることを当業者は把握することができない。なお仮に、エ)~ケ)に示されるペプチドが、ヒスチジン又はトリプトファンで修飾されたことで何らかの安定性が向上したとしても、様々な意味での安定性(熱、化学物質、光、温度、pH及び時間等々)のうち、当該特定の安定性(例えば経時安定性)が向上することを意味すると、当業者は理解することはできない。

またさらに、本願の実施例でアミノ酸配列が開示されるにすぎないHCGPC GG FLRVPCWKI[配列番号87]、及び、WCGPC GG FLRVPCWKI[配列番号88]が、H及びWのないCGPC GG FLRVPCWKI[配列番号86]に比して、何らかの安定性が向上できるとしても、それに任意のアミノ酸配列を付加してなる最長100アミノ酸配列長のペプチドが、受容体CD1dとT細胞の相互作用という極微小な環境において奏功することを要する状況下において、配列番号87ないし配列番号88のアミノ酸配列からなるペプチドと同等に機能すると認めることはできない。

以上のとおりであるから、当業者の技術常識に照らしても、本件補正発明は、本願発明の課題を解決できるものとして、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

(3)請求人の主張について

ア 請求人の主張

ア)請求人は、令和5年10月12日付け審判請求書において、以下の主張をしている。

「上記の「又は前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた」の記載を削除する補正により、審査官殿ご指摘のサポート要件違反の拒絶理由(理由3 )はもはや解消されたものと思料いたします。

更に、補正前の請求項20は削除し、「-X(2)-」の記載を「-X-X-」と明瞭でない記載を修正し、且つ「記号Xは、任意のアミノ酸が許容される位置に対して使用され、大括弧([ ])の中のアミノ酸は、所与の位置に対するいずれか一つの許容可能なアミノ酸を列挙して示される、使用」との記載を導入する補正により、審査官殿ご指摘の明確性要件違反の拒絶理由(付記理由)ももはや解消されたものと思料いたします。」

イ)請求人は、令和5年11月 2日付け上申書において、以下のとおり述べている。

「出願人は、本願に係る前置報告書に対する上申書を2024年1月30日までに提出することを予定しております。つきましては、本件の審理に当たり、上記上申書の内容を参酌していただきますよう、お願い申し上げます。

しかしながら、上記期限までに上申書が提出されない場合は、審判請求時の主張に基づいて審理頂きたくお願い申し上げます。」

イ 判断

ア)について

上記のサポート要件の判断は、「又は前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた」の記載のない本件補正発明に対してなされたものであるところ、「又は前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた」という記載のない本件補正発明が、サポート要件違反の拒絶理由を有することは、上述のとおりである。

また、「-X(2)-」の記載を「-X-X-」と修正し、且つ「記号X」及び大括弧([ ])の意味を明確化した補正は、上記理由を左右するものではない。

イ)について

前置報告書に対する上申書を2024年1月30日までに提出することはなされなかった。

6 補正却下の決定の小括

よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1~24に係る発明は、令和5年 5月 2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~24に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、

「【請求項1】

医薬の製造のための、[FWYHT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYHT][配列番号60]配列モチーフを有する抗原のCD1d結合ペプチドエピトープと、前記エピトープに直接接している又は前記エピトープから最大で7アミノ酸により隔てられた[HW]-X(2)-C-X(2)-[CST][配列番号3]、[HW]-X-C-X(2)-[CST][配列番号2]、[HW]-C-X(2)-[CST][配列番号1]、[CST]-X(2)-C-X(2)-[HW][配列番号6]、[CST]-X(2)-C-X-[HW][配列番号5]、若しくは[CST]-X(2)-C-[HW][配列番号4]レドックスモチーフ配列とを含む、12~100アミノ酸の単離免疫原性ペプチドの使用。」(以下、「本願発明」という。)である。

第4 原査定の拒絶理由

原査定の拒絶の理由は、この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない、というものである。

第5 発明の詳細な説明の記載内容・判断

本願発明は、本件補正発明を包含するものであるところ、本願の発明の詳細な説明の記載は、上記第2の5(1)で述べたとおりである。

そして、上記第4 原査定の拒絶理由は、第2の5で検討・判断したと同趣旨のものであるが、第2の5で判断したとおり、本件補正発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。

そして、本件補正発明を含む本願発明は、本件補正発明と同じ理由により、発明の詳細な説明に記載したものと認めることはできない。

第6 請求人の主張・判断

1 請求人の主張

請求人は、令和5年5月2日付け意見書において、以下のとおりの主張をしている。

「一般に、エピトープへのオキシドレダクターゼモチーフの付加は、モジュラー設計原理(即ち、エピトープ+オキシドレダクターゼモチーフ)に基づくものです。これは、本出願人/発明者の以前の特許出願で何度も実証されており、さらにMiao W等 Human Gene Therapy 2016;Abrahimians EM等 Frontiers in Immunology 2016;Abrahimians EM等 Frontiers in Immunology 2015;及びCarlier V等 PLOS ONE 2012などの学術文献でレビューされているものでございます。

本願発明は、上記の設計原理に別のモジュラーブロックを追加することによって、そのようなペプチドのチオレドックス活性を改善することによって上記に追加する技術的事項を提供するものです(即ち、エピトープ+(オキシドレダクターゼモチーフ

+HまたはW

))。したがって、上述の通り、本願発明の主題は、チオレドックスドメインの改善(HまたはW残基の付加)にございます。本願発明は、チオレドックスモチーフをCD1d結合エピトープと組み合わせて、エピトープが由来する抗原に対する免疫応答を減少させるという、以前に公開され、成功裏に特許取得された概念(すなわち、引用文献1)に対する改善を構成するものです。

上記の以前の特許(日本で登録された特許第6763832号及び第6173915号)では、最初の概念が、Gad65や第VIII因子などの自己免疫抗原、Ad5アデノウイルスのHexタンパク質などのウイルス抗原、Derp1などのアレルゲン、並びにALK などの腫瘍抗原を含む、多くの異なる抗原由来のエピトープと、チオレドックスモチーフ (CGHC、CHGC、CGPC)で有効であることが証明されております。

本願発明のサポート要件充足を立証するために、本出願人は、本書に添付しました参考資料1及び2を提出したいと考えております。改善されたチオレドックスモチーフ [HW]CXXCに融合された[FWYHT]-X(2)-[VILM]-X(2)-[FWYHT]モチーフは、ヒスチジンまたはトリプトファンを含まない直接の対応物と比較して改善された結果を示しております。参考資料1の実験1は、出願当初明細書の実施例5に関するものであり、実験2は、MOGエピトープの追加の実施例を提供しております (このエピトープは、出願当初明細書の実施例7及び9でも議論されております)。

参考資料2は、本願発明に規定された単離された免疫原性ペプチドが、溶解特性を有する特定のCD4+T細胞を誘導できることを示しております。

従いまして、参考資料1及び2は、出願当初明細書に記載された調査結果のさらなる実験的確認を提供するものであり、本願発明は、出願当初明細書によってサポートされていないと見なすことはできません。実際、本願発明の主題は、出願時に本出願人のみに知られており、ここに提出された参考資料1及び2は、出願当初明細書に含まれるものの単なる検証である点にご留意ください。

結論として、この度の参考資料1及び2の提出により、審査官殿ご指摘の理由3に係る拒絶理由も解消したものと思料いたします。」

2 判断

参考資料1に記載される実験に用いられているペプチドのアミノ酸配列は、本願の実施例5に記載されているものであり、参考資料2に記載される実験に用いられているペプチドのアミノ酸配列は本願明細書に記載されていないものである。

よって、参考資料2のペプチドの評価結果を、本願発明の課題を解決できたことを示すものとして参酌することはできない。念のためその記載内容を検討するに、参考資料2の評価結果は、ヒスチジン又はトリプトファンによる修飾があるペプチドと、当該修飾がないペプチドとの比較がなされているわけではないから、当該参考資料2を根拠に、本願発明が、本願発明の課題を解決できることを把握することはできない。

次に、参考資料1について検討するに、当該資料はヒスチジン又はトリプトファンによる修飾の有無による比較がなされているものではあるものの、参考資料1で用いられているレダクターゼ活性を評価する実験系が、本願の当初明細書の実施例5、7、9に記載されたマウスの抗Ad5抗体応答の検出によるものやNKT細胞の比率等と同一のものとは認められない。また、本願における「安定化」といえば、参考資料1に示される実験系を用いて確定される意味での安定化に他ならないと解することもできない。

また仮に、本願における「安定化」とは、参考資料1で示すような経時安定化を意味するものであるとしても、CD1d結合ペプチドエピトープのN末端側にアミノ酸配列リンカーGGによってレドックスモチーフCHGCを配置してなるペプチドは、CD1d結合ペプチドエピトープにレドックスモチーフが直接接しているものではないし、さらにそのN末端にヒスチジン又はトリプトファンの付加する修飾によって安定化されていることを根拠に、CD1d結合ペプチドエピトープとレドックスモチーフの間にヒスチジン又はトリプトファンを備えたエ)~ケ)の態様についても、安定化されていると推認できないことは、第2 5(2)イで述べたとおりであるから、請求人の主張を採用することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、本願は、本願発明について、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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