結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024000328 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、2019年(平成31年)1月11日〔パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年1月12日 米国(US)〕を国際出願日とする出願であって、令和4年1月7日に手続補正書が提出され、令和5年1月27日付け拒絶理由通知に対し、同年8月1日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年9月27日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和6年1月10日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出され、同年8月30日に上申書が提出されたものである。
〔補正の却下の決定の結論〕
令和6年1月10日にされた手続補正を却下する。
〔理由〕
令和6年1月10日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下の(A)の本件補正前の(令和5年8月1日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の)記載から、以下の(B)の本件補正後の記載とする、補正事項を含むものである(以下の(A)及び(B)の摘記における下線は、当審合議体が付したものであり、本件補正の前後における記載の変更箇所を示す。)。
(A) 本件補正前の請求項1の記載
「【請求項1】
以下の構造(Ia)を有する、化合物。
【化1】
47
75
0001430505000001.jpg
(Ia)
(式中、
Mは、出現毎に独立して、NSAID
、キナーゼ阻害剤、アントラサイクリン、上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、アルキル化剤、
及び抗がん薬から選択される生物学的に活性な部分、または蛍光色素であり、ただし、出現するMの少なくとも1つは、蛍光色素ではないことを条件とし、
Lは、アミド結合
、エステル結合、ジスルフィド結合、ヒドラゾン、ホスホトリエステル、ジエステル、β-グルクロニド、二重結合、三重結合、エーテル結合、ケトンもしくはオキソ、ビビナールジオールまたはそれらの組合せ
を含む生理的に開裂可能なリンカーであり、
L
1
は、出現毎に独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
L
2
は、出現毎に独立して、ヘテロアルキレンリンカーであり、
R
1
は、出現毎に独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、
R
2
は、電子対、H、
アルキル、
アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、
アミノアルキル、
ヒドロキシルアルキルエーテル、
スルフヒドリルアルキル、スルフヒドリルアルキルエーテル、シアノアルキル、
ホスホ、
チオホスホ、
アルキルホスホ、アルキルチオホスホ、アルキルエーテルホスホ、アルキルエーテルチオホスホ、ホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル、チオホスホアルキル、チオホスホアルキルエーテル、
Q、
またはL’であり、
アルキル、
アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、
アミノアルキル、
ヒドロキシルアルキルエーテル、
スルフヒドリルアルキル、スルフヒドリルアルキルエーテル、シアノアルキル、
アルキルホスホ、
アルキルチオホスホ、
アルキルエーテルホスホ、
アルキルエーテルチオホスホ、
ホスホアルキル
、
ホスホアルキルエーテル
、チオホスホアルキルおよびチオホスホアルキルエーテル
は、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、
チオホスフェート、
ホスホアルキル、
チオホスホアルキル、
ホスホアルキルエーテル
もしくはチオホスホアルキルエーテル
またはそれらの組合せにより置換されていてもよく、
R
3
は、H、OH、
SH、-NH
2
、アルキル、アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシルアルキルエーテル、スルフヒドリルアルキル、スルフヒドリルアルキルエーテル、シアノアルキル、-Oアラルキル、
ホスフェート、チオホスフェート、アルキルホスホ、
アルキルチオホスホ、
-Oアルキルホスホ、-Oアルキルチオホスホ、アルキルエーテルホスホ、
アルキルエーテルチオホスホ、
-Oアルキルエーテルホスホ、-Oアルキルエーテルチオホスホ、ホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル、
チオホスホアルキル、チオホスホアルキルエーテル、
-Oホスホアルキル、-Oホスホアルキルエーテル、-Oチオホスホアルキル、-Oチオホスホアルキルエーテル、
Q、
またはL’であり、
アルキル、アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシルアルキルエーテル、スルフヒドリルアルキル、スルフヒドリルアルキルエーテル、シアノアルキル、-Oアラルキル、
アルキルホスホ、
アルキルチオホスホ、
-Oアルキルホスホ、
-Oアルキルチオホスホ、
アルキルエーテルホスホ、
アルキルエーテルチオホスホ、
-Oアルキルエーテルホスホ、-Oアルキルエーテルチオホスホ、ホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル、
チオホスホアルキル、チオホスホアルキルエーテル、
-Oホスホアルキル、-Oホスホアルキルエーテル、-Oチオホスホアルキル
、
-Oチオホスホアルキルエーテルは、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート、
チオホスフェート、
ホスホアルキル、
チオホスホアルキル、
ホスホアルキルエーテル
もしくはチオホスホアルキルエーテル
またはそれらの組合せにより置換されていてもよく、
R
4
は、出現毎に独立して、O
-
、S
-
、OZ、SZまたはN(R
6
)
2
であり、Zは、陽イオンであり、R
6
はそれぞれ、独立して、Hまたはアルキルであり、
R
5
は、出現毎に独立して、オキソ、チオキソであるか、または存在せず、
Qは、
出現毎に独立して、スルフヒドリル、イソチオシアネート、イミドエステル、アシルアジド、N-スクシンイミドエステル、ポリフルオロフェニルエステル、ハロゲン化スルホニル、マレイミド、α-ハロイミド、ジスルフィド、ホスフィン、アジド、アルキン、ジエン、酸ハロゲン化物、アルケン、求ジエン体、アミノ、またはビオチンを含む部分であり、
L’は、出現毎に独立して、Qへのアルキレンまたはヘテロアルキレンリンカー、抗体および細胞表面受容体アンタゴニストから選択される標的指向性部分、抗体および細胞表面受容体アンタゴニストから選択される標的指向性部分へのアルキレンまたはヘテロアルキレンリンカー、ポリマー製ビーズおよび非ポリマー製ビーズから選択される固体支持体、ポリマー製ビーズおよび非ポリマー製ビーズから選択される固体支持体へのアルキレンまたはヘテロアルキレンリンカー、または構造(Ia)の他の化合物への
、
アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
nは、1~10の整数であり、
ただし、nが1より大きい場合、出現するLの少なくとも1つは、酸素および3個以下の炭素を含むことを条件とする)」
(B) 本件補正後の請求項1の記載
「【請求項1】
以下の構造(Ia)を有する、化合物。
【化1】
47
75
0001430505000002.jpg
(Ia)
(式中、
Mは、出現毎に独立して、NSAI
D及
び抗がん薬から選択される生物学的に活性な部分、または蛍光色素であり、ただし、出現するMの少なくとも1つは、蛍光色素ではないことを条件とし、
Lは、アミド結
合を
含む生理的に開裂可能なリンカーであり、
L
1
は、出現毎に独立して、アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
L
2
は、出現毎に独立して、ヘテロアルキレンリンカーであり、
R
1
は、出現毎に独立して、H、アルキルまたはアルコキシであり、
R
2
は、電子対、H
、ア
ルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル
、ヒ
ドロキシルアルキルエーテル
、ホ
スホ
、ア
ルキルホスホ、アルキルチオホスホ、アルキルエーテルホスホ、アルキルエーテルチオホスホ、ホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル、チオホスホアルキル、チオホスホアルキルエーテル
、ま
たはL’であり
、ア
ルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル
、ヒ
ドロキシルアルキルエーテル
、ア
ルキルホスホ
、ア
ルキルエーテルホスホ
、ホ
スホアルキル
、及びホ
スホアルキルエーテ
ルは
、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート
、ホ
スホアルキル
、もしくは
ホスホアルキルエーテ
ルま
たはそれらの組合せにより置換されていてもよく、
R
3
は、H、OH
、ホ
スフェート、チオホスフェート、アルキルホスホ
、-
Oアルキルホスホ、-Oアルキルチオホスホ、アルキルエーテルホスホ
、-
Oアルキルエーテルホスホ、-Oアルキルエーテルチオホスホ、ホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル
、-
Oホスホアルキル、-Oホスホアルキルエーテル、-Oチオホスホアルキル、-Oチオホスホアルキルエーテル
、ま
たはL’であり
、ア
ルキルホスホ
、-
Oアルキルホスホ
、ア
ルキルエーテルホスホ
、-
Oアルキルエーテルホスホ、-Oアルキルエーテルチオホスホ、ホスホアルキル、ホスホアルキルエーテル
、-
Oホスホアルキル、-Oホスホアルキルエーテル、-Oチオホスホアルキル
、及び-
Oチオホスホアルキルエーテルは、ヒドロキシル、アミノ、スルフヒドリル、ホスフェート
、ホ
スホアルキル
、もしくはホ
スホアルキルエーテ
ルま
たはそれらの組合せにより置換されていてもよく、
R
4
は、出現毎に独立して、O
-
、S
-
、OZ、SZまたはN(R
6
)
2
であり、Zは、陽イオンであり、R
6
はそれぞれ、独立して、Hまたはアルキルであり、
R
5
は、出現毎に独立して、オキソ、チオキソであるか、または存在せず、
Qは、
以下の構造のうちの1つを有し、
23
143
0001430505000003.jpg
34
143
0001430505000004.jpg
29
143
0001430505000005.jpg
30
143
0001430505000006.jpg
36
143
0001430505000007.jpg
34
143
0001430505000008.jpg
35
143
0001430505000009.jpg
14
143
0001430505000010.jpg
(ここで、Xはハロであり、及び、EWGは電子求引基である)
L’は、出現毎に独立して、Qへのアルキレンまたはヘテロアルキレンリンカー、抗体および細胞表面受容体アンタゴニストから選択される標的指向性部分、抗体および細胞表面受容体アンタゴニストから選択される標的指向性部分へのアルキレンまたはヘテロアルキレンリンカー、ポリマー製ビーズおよび非ポリマー製ビーズから選択される固体支持体、ポリマー製ビーズおよび非ポリマー製ビーズから選択される固体支持体へのアルキレンまたはヘテロアルキレンリンカー、または構造(Ia)の他の化合物へ
のア
ルキレンまたはヘテロアルキレンリンカーであり、
nは、1~10の整数であり、
ただし、nが1より大きい場合、出現するLの少なくとも1つは、酸素および3個以下の炭素を含むことを条件とする)」
(1) 請求項1についての補正事項
本件補正のうち、請求項1についての補正事項は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「構造(Ia)を有する、化合物」における複数の可変基(M、L、R
2
及びR
3
)について、各可変基が取り得る選択肢の一部を削除するとともに、「R
2
」及び「R
3
」が取り得る選択肢の一つであるリンカー「L’」が「Qへのアルキレンまたはヘテロアルキレンリンカー」である場合における可変基「Q」の選択肢を変更する補正事項を含むものである。
具体的には、当該補正事項は、請求項1に記載された「構造(Ia)を有する、化合物」における各可変基「M」、「L」、「R
2
」及び「R
3
」について、それぞれ、以下のア~エの選択肢を削除するとともに、上記の可変基「Q」の選択肢を、以下のオからカに変更することにより、「構造(Ia)を有する、化合物」の構造に含まれ得るリンカー「L’」の構造を変更する補正事項を含むものである。
ア 可変基「M」について削除された選択肢:
「キナーゼ阻害剤」、「アントラサイクリン」、「上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤」及び「アルキル化剤」から選択される生物学的に活性な部分
イ 可変基「L」について削除された選択肢:
「エステル結合」、「ジスルフィド結合」、「ヒドラゾン」、「ホスホトリエステル」、「ジエステル」、「β-グルクロニド」、「二重結合」、「三重結合」、「エーテル結合」、「ケトン」、「オキソ」、「ビビナールジオール」及び「それらの組み合わせ」を含む生理的に開裂可能なリンカー
ウ 可変基「R
2
」について削除された選択肢:
「アルキル」、「アミノアルキル」、「スルフヒドリルアルキル」、「スルフヒドリルアルキルエーテル」、「シアノアルキル」、「チオホスホ」及び「Q」
(更に置換してもよい基の選択肢の削除については省略する。)
エ 可変基「R
3
」について削除された選択肢:
「SH」、「-NH
2
」、「アルキル」、「アルキルエーテル」、「ヒドロキシルアルキル」、「アミノアルキル」、「ヒドロキシルアルキルエーテル」、「スルフヒドリルアルキル」、「スルフヒドリルアルキルエーテル」、「シアノアルキル」、「-Oアラルキル」、「アルキルチオホスホ」、「アルキルエーテルチオホスホ」、「チオホスホアルキル」、「チオホスホアルキルエーテル」又は「Q」
(更に置換してもよい基の選択肢の削除については省略する。)
オ 本件補正前の可変基「Q」の選択肢:
「スルフヒドリル、イソチオシアネート、イミドエステル、アシルアジド、N-スクシンイミドエステル、ポリフルオロフェニルエステル、ハロゲン化スルホニル、マレイミド、α-ハロイミド、ジスルフィド、ホスフィン、アジド、アルキン、ジエン、酸ハロゲン化物、アルケン、求ジエン体、アミノ、またはビオチンを含む部分」
カ 本件補正後の可変基「Q」の選択肢:
「以下の構造のうちの1つを有し、
23
143
0001430505000011.jpg
34
143
0001430505000012.jpg
29
143
0001430505000013.jpg
30
143
0001430505000014.jpg
36
143
0001430505000015.jpg
34
143
0001430505000016.jpg
35
143
0001430505000017.jpg
14
143
0001430505000018.jpg
(ここで、Xはハロであり、及び、EWGは電子求引基である)」
(2) 請求項1についての補正事項の目的の検討
上記ア~エの選択肢の削除は、「構造(Ia)を有する、化合物」が取り得る化学構造の範囲を減縮するものである。
しかしながら、上記カの本件補正後の可変基「Q」の選択肢のうち、
「
28
44
0001430505000019.jpg
」
については、上記オの本件補正前の可変基「Q」のいずれの選択肢にも該当せず、また、それらの選択肢のいずれかを限定したものにも該当しない。
そうすると、本件補正後の請求項1においては、リンカー「L’」の末端に結合して含まれ得る可変基「Q」の選択肢の一部が、本件補正前の請求項1に対して拡張されているから、請求項1についての補正事項のうち、当該可変基「Q」の選択肢についての補正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当せず、また、当該可変基「Q」の選択肢に、
「
28
44
0001430505000020.jpg
」
を追加する補正事項は、「請求項の削除」、「誤記の訂正」及び「明りようでない記載の釈明」のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。
(3) 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において、「拒絶査定の指摘を受け、さらに請求項の記載を減縮補正」した旨を主張するが、上記のとおり、請求項1についての補正事項は、発明を特定するための事項の一部の拡張を含むものであるから、請求人の当該主張は採用できない。
(4) 補正の目的についてのまとめ
したがって、請求項1についての補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同項の規定に違反するものである。
(5) 請求項1についての補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」のみを目的とするものと仮定した場合について
請求項1についての補正は、上記(1)~(4)のとおり、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当しない補正事項を含むものであるが、可変基「Q」の選択肢以外の補正事項については、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そこで、念のため、請求項1についての補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる事項のみを目的とした補正であると仮定した場合について、本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか。いわゆる「独立特許要件」。)について、以下、検討する。
(1) 本願補正発明及びその独立特許要件の判断について
本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)は、上記1(B)に摘記した本件補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、当審合議体は、本願補正発明については、以下の理由A(実施可能要件)及び理由B(サポート要件)の点で、独立特許要件を満たしていないと判断する。
以下詳述する。
(2) 理由A(実施可能要件)について
ア 実施可能要件の判断の前提
明細書の発明の詳細な説明の記載が、物の発明についての実施可能要件を満たすためには、当業者が、その記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、当該発明に係る物を作り、使用することができる程度のものでなければならない。
イ 本願明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明には、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」の製造(調製)及び使用に関係する事項として、以下の摘記(A)~摘記(H)の事項が記載されている(下線は当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を表す。)。
摘記(A)
「【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、
生物学的に活性なポリマー化合物
、ならびにその調製方法および様々な治療方法における使用方法を一般に対象とする。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
標的化薬物コンジュゲートは
、例えば化学療法とは異なり、
罹患細胞しか標的とせず、かつ健常な細胞を害さないよう意図されている
。通常、コンジュゲートは、生物学的に活性なペイロードまたは薬物に連結されている標的指向性分子から構成される。
コンジュゲートは、固有の標的能力と生物学的に活性な薬物の治療有効性とを組み合わせることにより、意図する標的だけに薬物を送達し、潜在的な副作用を最小化することができる
。
抗体-薬物コンジュゲート(ADC)は、がん処置に特に関心がもたれる標的化薬物コンジュゲートのクラスの1つである。ADCは、モノクローナル抗体の標的指向性特徴と、細胞毒性剤のがん死滅能とを組み合わせて、他の化学療法剤よりもいくつかの利点を有する治療を実現する。しかし、ADC構築の複雑さ、具体的には、抗体と薬物との間の化学リンカーに関わる難題により、新規かつ有効な治療剤の開発はかなり困難である。・・・
したがって、
大きな治療指数を有する強力な標的薬物コンジュゲートが当分野において必要とされている
。理想的には、
このような薬物コンジュゲートは、健常な組織と罹患組織(例えば、腫瘍細胞)との間の微妙な区別を実現すべきである
。
本発明は、この必要性に応え、さらなる関連する利点を実現する
。
【発明の概要】
【0003】
手短に述べると、本発明の実施形態は、
腫瘍細胞などの標的への選択的送達を可能にする蛍光色素および/または着色色素を含んでもよい、標的化薬物コンジュゲートとして有用な化合物、ならびにその調製のための試薬を一般に対象とする
。このような分子を調製する方法、およびそれを必要とする患者に治療処置を提供するための該分子の使用方法も記載されている。
現在開示されている化合物の実施形態は、
リンカー(「L」)によって共有結合により連結されている、1つまたは複数の生物学的に活性な部分を含む
。有利には、本発明の実施形態は、ポリマー合成の間に組み込まれ得るか、または合成後に結合され得る化合物を提供する。さらに、本明細書に記載されている実施形態は、同一化合物内の複数の生物学的に活性な部分の取り込み、および標的指向性部分の任意の含有を可能にする。
一実施形態では、以下の
構造(I)
を有する化合物:
【化1】
54
142
0001430505000021.jpg
(I)
または、立体異性体、互変異性体もしくはその塩が提供される(・・・)。構造(I)の化合物は、様々な処置法の治療剤としての使用を含めた、いくつかの用途における利用が見いだされる。
別の実施形態では、それを必要とする対象に、治療有効量の構造(I)の化合物または構造(I)の化合物を含む組成物を投与するステップを含む、疾患を処置する方法であって、Mはそれぞれ、独立して、疾患を処置するのに有効な生物活性部分を含む、方法が提供される。」
摘記(B)
「【発明を実施するための形態】
【0004】
以下の記載において、ある種の具体的な詳細は、本発明の様々な実施形態の完全な理解をもたらすために記載されている。・・・
・・・
【0006】
・・・
「
アルキレン
」または「アルキレン鎖」とは、不飽和を含まず、1~12個の炭素原子を有する、炭素および水素のみからなる、分子の残りをラジカル基に連結する、二価の直鎖状または分岐状炭化水素鎖、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン、エテニレン、プロペニレン、n-ブテニレン、プロピニレン、n-ブチニレンなどを指す。・・・
・・・
【0012】
「
ヘテロアルキレン
」とは、アルキレン鎖内、またはアルキレン鎖の末端において、少なくとも1個のヘテロ原子(例えば、Si、N、O、PまたはS)を含む、上で定義したアルキレン基を指す。・・・。本明細書において特に具体的に明記しない限り、ヘテロアルキレン基は、置換されていてもよい。
例示的なヘテロアルキレン基には、エチレンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド)、ならびに以下に例示されている「C」、「HEG」および「PEG 1K」連結基が含まれる。
【化2】
72
131
0001430505000022.jpg
ヘテロアルキレンリンカーの様々な実施形態において、上記のC-リンカー、HEGリンカーおよび/またはPEG 1Kリンカーの多量体が含まれる。PEG 1Kリンカーの一部の実施形態では、nは25である。多量体は、例えば、以下の構造:
【化3】
33
102
0001430505000023.jpg
(式中、xは、0または0より大きい整数であり、例えばxは、0~100(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10)の範囲である)
を含むことができる。
・・・
【0026】
・・・
「
Oアラルキル
」は、酸素連結基を介して分子の残りに結合しているアラルキル基である。「
ODMT
」とは、
O原子を介して分子の残りに結合しているジメトキシトリチル
を指す。・・・
・・・
【0035】
「
リンカー
」とは、炭素、酸素、窒素、硫黄、リンおよびそれらの組合せなどの少なくとも1個の原子の連続鎖であって、分子のある部分を同一分子の別の部分に、または異なる分子に、部分または固体支持体(例えば、マイクロ粒子)に連結させる連続鎖を指す。リンカーは、イオン性相互作用または水素結合相互作用などの、共有結合または他の手段を介して分子に結合することができる。
・・・
【0036】
用語「
生体分子
」とは、核酸、炭水化物、アミノ酸、ポリペプチド、グリコタンパク質、ホルモン、アプタマーおよびそれらの混合物を含めた、様々な生体物質のいずれかを指す。より詳細には、用語は、非限定的に、RNA、DNA、オリゴヌクレオチド、修飾または誘導化ヌクレオチド、酵素、受容体、プリオン、受容体リガンド(ホルモンを含む)、抗体、抗原および毒素、ならびに細菌、ウイルス、血液細胞および組織細胞を含むことが意図されている。
本発明の目視により検出可能な生体分子(例えば、化合物に連結した生体分子を有する化合物)は
、本明細書にさらに記載されている通り、
生体分子上のアミノ、ヒドロキシ、カルボキシルまたはスルフヒドリル基などの任意の利用可能な原子または官能基を介して
、
生体分子の化合物への結合を可能にする反応性基を有する上記の化合物
に
生体分子を接触させることによって調製される
。
「
反応性基
」は、例えば、置換、酸化、還元、付加または環化付加反応によって、
第2の反応性基
(例えば、「
相補性反応性基
」)と反応して、1つまたは複数の共有結合を形成することが可能な部分である。
例示的な反応性基が、表1に提示されており
、例えば、求核剤、求電子剤、ジエン、求ジエン体、アルデヒド、オキシム、ヒドラゾン、アルキン、アミン、アジド、アシルアジド、アシルハライド、ニトリル、ニトロン、スルフヒドリル、ジスルフィド、ハロゲン化スルホニル、イソチオシアネート、イミドエステル、活性化エステル、ケトン、α,β-不飽和カルボニル、アルケン、マレイミド、α-ハロイミド、エポキシド、アジリジン、テトラジン、テトラゾール、ホスフィン、ビオチン、チイランなどを含む。
・・・
【0039】
・・・
「
固体支持体
」とは、分子の固定相支持体に関して、当分野で公知の任意の固体基材を指し、例えば、「マイクロ粒子」とは、以下に限定されないが、ガラス製ビーズ、磁気ビーズ、
ポリマー製ビーズ
、
非ポリマー製ビーズ
などを含めた、本発明の化合物への結合に有用ないくつかの小型粒子のいずれかを指す。ある種の実施形態では、マイクロ粒子は、ポリスチレン製ビーズまたは孔制御ガラスを含む。
「
固体支持体残基
」とは、分子が固体支持体から開裂されると、分子に結合した状態のままである官能基を指す。
固体支持体残基は、当分野で公知であり
、
固体支持体の構造、および分子を固体支持体に連結する基に基づいて容易に誘導体化され得る
。
【0040】
「
標的指向性部分
」とは、腫瘍細胞抗原などの特定の標的に選択的に結合するか、またはこれと会合する部分である。・・・。一部の実施形態では、本明細書において開示されている化合物は、この化合物を腫瘍細胞抗原(すなわち、標的指向性部分の標的)に選択的に結合または会合させる目的のための標的指向性部分への連結基を含み、こうして、腫瘍細胞への生物活性部分の送達が可能になる。例示的な標的指向性部分は、以下に限定されないが、抗体、抗原、核酸配列、酵素、タンパク質、細胞表面受容体アンタゴニストなどを含む。一部の実施形態では、標的指向性部分は、細胞表面または細胞中の標的特徴、例えば細胞膜表面または他の細胞構造表面の標的特徴に選択的に結合または会合する、抗体などの部分であり、こうして目的の細胞またはその内部に生物活性部分を送達することが可能となる。・・・
【0041】
「
生理的に開裂可能なリンカー
」とは、生物または細胞系のインビボまたはインビトロ環境に存在している間に、規定の方法で分裂または分離されて、2つ以上の個別の分子をもたらすことができる分子連結基を指す。一般に、このような開裂事象または切断事象を含む生理的条件は、約20~40°Cの範囲の温度、約1atm(101kPaまたは14.7psi)の大気圧、約6~8のpH、約1~20mMのグルコース濃度、大気酸素濃度および地球の重力を含むことができる。一部の実施形態では、生理的条件は、酵素条件(すなわち、酵素による開裂)を含む。・・・」
摘記(C)
「【0047】
上記の通り、本発明の一実施形態では、
生物学的に活性な部分
と
標的指向性部分
との
間
の
共有結合性リンカーとして有用な化合物
が提供される。他の実施形態では、1つまたは複数の
生物学的に活性な部分を含む化合物の調製のための合成中間体として有用な化合物
が提供される。一般用語では、本発明の実施形態は、
生物学的に活性な部分側鎖を有するポリマー
を対象としている。
生物学的に活性な部分
は、化合物が投与されるpHにおいて、親水性部分を含んでもよい、
ホスホアルキルまたは他の連結基を有するリンカーによって連結
されている。理論によって拘束されることを望むものではないが、リンカーの長さおよび特定の性質(例えば、親水性、電荷など)は、所望の標的に薬物が放出されるまで、生物活性を保護または保留する一助になると考えられる。別の態様では、リンカーは、所望の標的における生物学的に活性な部分の蓄積を増大するように作用する、生物学的に活性な部分と標的指向性部分との間の連結をもたらす。すなわち、生物活性は、もっぱら、所期の標的において蓄積するために生物活性に効力があるか、または生物活性が増大するのであり、これは、治療の潜在的な副作用(例えば、細胞毒性)を最小化する。
【0048】
したがって、一部の実施形態は、以下の
構造(I)
を有する化合物:
【化4】
54
142
0001430505000024.jpg
(I)
またはその立体異性体、薬学的に許容される塩もしくは互変異性体を提供する(式中、
・・・
【0052】
・・・
n
は、
1以上の整数
であり、
q
は、
nの少なくとも1つの整数値に対して
、
1以上の整数
であり、
w
は、
nの各整数値に対して
、
0以上の整数
であり、
・・・とする)。
・・・
【0054】
ある種の実施形態では、本化合物は、以下の
構造(Ia)
:
【化5】
47
75
0001430505000025.jpg
(Ia)
(式中、
【0055】
Mは
、出現毎に独立して、
生物学的に活性な部分
もしくはその断片、生物学的に活性な部分のプロドラッグもしくはその断片、
蛍光色素
、イメージング剤または放射性同位体結合部位であり、ただし、出現するMの少なくとも1つは、蛍光色素ではないことを条件とし、
L
は、
生理的に開裂可能なリンカー
であり、
L
1
および
L
2
は、出現毎に独立して、任意選択の
アルキレンリンカー
または
ヘテロアルキレンリンカー
であり、
R
1
は、出現毎に独立して、
H
、
アルキル
または
アルコキシ
であり、
【0056】
R
2
は、
電子対
、
H
、アルキル、
アルキルエーテル
、
ヒドロキシルアルキル
、アミノアルキル、
ヒドロキシルアルキルエーテル
、スルフヒドリルアルキル、スルフィドリルアルキルエーテル、シアノアルキル、
ホスホ
、チオホスホ、
アルキルホスホ
、
アルキルチオホスホ
、
アルキルエーテルホスホ
、
アルキルエーテルチオホスホ
、
ホスホアルキル
、
ホスホアルキルエーテル
、
チオホスホアルキル
、
チオホスホアルキルエーテル
、Qもしくはそれらの保護形態、または
L’
であり、アルキル、
アルキルエーテル
、
ヒドロキシルアルキル
、アミノアルキル、
ヒドロキシルアルキルエーテル
、スルフヒドリルアルキル、スルフィドリルアルキルエーテル、シアノアルキル、
アルキルホスホ
、アルキルチオホスホ、
アルキルエーテルホスホ
、アルキルエーテルチオホスホ、
ホスホアルキル
、
ホスホアルキルエーテル
、チオホスホアルキルおよびチオホスホアルキルエーテルは、
ヒドロキシル
、
アミノ
、
スルフヒドリル
、
ホスフェート
、チオホスフェート、
ホスホアルキル
、チオホスホアルキル、
ホスホアルキルエーテル
またはチオホスホアルキルエーテルまたはそれらの組合せにより置換されていてもよく、
【0057】
R
3
は、
H
、
OH
、SH、-NH2、アルキル、アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシルアルキルエーテル、スルフヒドリルアルキル、スルフィドリルアルキルエーテル、シアノアルキル、-Oアラルキル、
ホスフェート
、
チオホスフェート
、
アルキルホスホ
、アルキルチオホスホ、
-Oアルキルホスホ
、
-Oアルキルチオホスホ
、
アルキルエーテルホスホ
、アルキルエーテルチオホスホ、
-Oアルキルエーテルホスホ
、
-Oアルキルエーテルチオホスホ
ホスホアルキル
、
ホスホアルキルエーテル
、チオホスホアルキル、チオホスホアルキルエーテル、
-Oホスホアルキル
、
-Oホスホアルキルエーテル
、
-Oチオホスホアルキル
、
-Oチオホスホアルキルエーテル
、Qもしくはそれらの保護形態、または
L’
であり、アルキル、アルキルエーテル、ヒドロキシルアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシルアルキルエーテル、スルフヒドリルアルキル、スルフィドリルアルキルエーテル、シアノアルキル、-Oアラルキル、
アルキルホスホ
、アルキルチオホスホ、
-Oアルキルホスホ
、-Oアルキルチオホスホ、
アルキルエーテルホスホ
、アルキルエーテルチオホスホ、
-Oアルキルエーテルホスホ
、
-Oアルキルエーテルチオホスホ
ホスホアルキル
、
ホスホアルキルエーテル
、チオホスホアルキル、チオホスホアルキルエーテル、
-Oホスホアルキル
、
-Oホスホアルキルエーテル
、
-Oチオホスホアルキル
、
-Oチオホスホアルキルエーテル
は、
ヒドロキシル
、
アミノ
、
スルフヒドリル
、
ホスフェート
、チオホスフェート、
ホスホアルキル
、チオホスホアルキル、
ホスホアルキルエーテル
またはチオホスホアルキルエーテルまたはそれらの組合せにより置換されていてもよく、
R
4
は、出現毎に独立して、
O
-
、
S
-
、
OZ
、
SZ
または
N(R
6
)
2
であり、
Z
は、
陽イオン
であり、
R
6
はそれぞれ、独立して、
H
または
アルキル
であり、
R
5
は、出現毎に独立して、
オキソ
、
チオキソ
であるか、または
存在せず
、
Q
は、出現毎に独立して、
標的指向性部分の相補性反応性基Q’と共有結合の形成が可能な、反応性基
、または
その保護形態
を
含む部分
であり、
L’
は、出現毎に独立して、
Qへの共有結合を含むリンカー
、
標的指向性部分
、
標的指向性部分への共有結合を含むリンカー
、
固体支持体もしくは固体支持体残基
、
固体支持体もしくは固体支持体残基への共有結合を含むリンカー
、または構造(I)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカーであり、
n
は、
1~10の整数
である)を有する。
【0058】
構造(Ia)の一部のさらに具体的な実施形態では、nが1より大きい場合、出現するLの少なくとも1つは、酸素および3個以下の炭素を含む。
・・・
【0065】
・・・
一実施形態は、以下の
構造(II)
を有する化合物:
【化12】
47
76
0001430505000026.jpg
(II)
またはその立体異性体、薬学的に許容される塩もしくは互変異性体を提供する(式中、
・・・である)。
・・・
【0077】
具体的な一実施形態は、以下の
構造(III)
を有する化合物:
【化19】
35
78
0001430505000027.jpg
(III)
またはその立体異性体、薬学的に許容される塩もしくは互変異性体を提供する(式中、
・・・である)。
・・・
【0079】
一実施形態は、以下の
構造(IV)
を有する化合物:
【化20】
53
85
0001430505000028.jpg
(IV)
またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩を提供する(式中、
・・・である)。
【0083】
・・・
・・・。例えば、ある種の実施形態では、本化合物は、以下の
構造(V)
:
【化21】
41
44
0001430505000029.jpg
(V)
またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩を有する(式中、
・・・である)。
【0087】
・・・
・・・。例えば、一部の実施形態では、本化合物は、以下の
構造(VI)
:
【化22】
52
85
0001430505000030.jpg
(VI)
またはその立体異性体、互変異性体もしくは塩を有する(式中、
・・・である)。
・・・
【0092】
・・・
さらに別の実施形態は、以下の
構造(VII)
を有する化合物:
【化23】
35
75
0001430505000031.jpg
(VII)
(式中、
・・・である)を提供する。
・・・
【0094】
他の実施形態は、以下の
構造(VIII)
を有する化合物:
【化24】
27
61
0001430505000032.jpg
(VIII)
(式中、
・・・である)を対象とする。
・・・
【0095】
・・・
・・・。他の実施形態は、以下の
構造(IX)
を有するジスルフィド二量体:
【化25】
24
142
0001430505000033.jpg
(IX)
またはその塩もしくは立体異性体を対象とする(式中、
・・・である)。
・・・
【0097】
様々な他の実施形態では、以下の
構造(X)
を有する化合物:
【化26】
29
106
0001430505000034.jpg
(X)
またはその塩もしくは立体異性体が提供される(式中、
・・・である)。
【0098】
・・・
他の実施形態は、以下の
構造(XI)
を有するジスルフィド二量体:
【化27】
36
143
0001430505000035.jpg
(XI)
またはその塩もしくは立体異性体を提供する(式中、
・・・である)。」
摘記(D)
「【0100】
リンカーLは、化合物の残りへのM部分の結合点として使用され得る
。例えば、一部の実施形態では、
構造(I)~(XI)の化合物への合成前駆体が調製され、M部分は、任意の数の、当分野において公知の容易に利用可能な方法、例えば、「クリックケミストリー」と称される方法を使用して合成前駆体に結合される
。この目的の場合、
迅速かつ実質的に不可逆な反応のいずれかを使用して、構造(I)~(XI)の化合物を形成するための合成前駆体にMを結合することができる
。例示的な反応には、アジドとアルキンとのトリアゾールを形成する銅触媒反応(Huisgen 1,3-双極子付加環化)、ジエンと求ジエンとの反応(Diels-Alder)、歪みにより促進されるアルキン-ニトロン環化付加、歪アルケンとアジド、テトラジンまたはテトラゾールとの反応、アルケンとアジドの[3+2]環化付加、アルケンとテトラジンの逆需要Diels-Alder、アルケンとテトラゾールの光反応、および求電子性原子への求核攻撃による脱離基の置換などの様々な置換反応が含まれる。例示的な置換反応は、
活性化エステル
(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル)、イソシアネート、イソチオシアネートなどとのアミンの反応を含む。一部の実施形態では、Lを形成する反応は、水性環境で行われてもよい。
【0101】
したがって、一部の実施形態では、
L
は、出現毎に、
2つの相補性反応性基の反応によって形成可能な官能基
、例えば、上述の
「クリック」反応の1つの生成物である官能基を含むリンカー
である。・・・
・・・
【0102】
・・・
一部の実施形態は、
適切な条件(例えば、生理的条件)下で、開裂可能
な
L
を提供する。したがって、一部の実施形態では、
L
は、
アミド結合
、エステル結合、ジスルフィド結合、ヒドラゾン、ホスホトリエステル、ジエステル、β-グルクロニド、二重結合、三重結合、エーテル結合、ケトンもしくはオキソ、ジオール、シアノ、ニトロまたはそれらの組合せ
を含む
。
・・・
【0112】
・・・
リンカーL’
は、
Q
、
標的指向性部分
、分析対象(例えば、分析対象分子)、
固体支持体
、固体支持体残基、ヌクレオシドまたは構造(I)のさらなる化合物
を
、
構造(I)の化合物に結合させるのに好適な任意のリンカー
とすることができる。・・・。ある種の実施形態では、
L’
は、
ヘテロアルキレン部分
である。一部の他のある種の実施形態では、L’は、アルキレンオキシドもしくはホスホジエステル部分、またはそれらの組合せを含む。
・・・
【0115】
一部の実施形態では、
L’
は、Q
への共有結合を含むリンカー
であり、
Q
は、
スルフヒドリル
、
ジスルフィド
、
活性化エステル
、
イソチオシアネート
、
アジド
、
アルキン
、
アルケン
、
ジエン
、
求ジエン体
、
酸ハロゲン化物
、
ハロゲン化スルホニル
、
ホスフィン
、
α-ハロアミド
、
ビオチン
、
アミノ
または
マレイミド
である。
ある種の実施形態では、
L’
は、
固体支持体への共有結合を含むリンカー
である。そのような実施形態の一部では、
固体支持体
は、
ポリマー製ビーズまたは非ポリマー製ビーズ
である。
【0116】
ある種の他の実施形態では、
L’
は、
標的指向性部分
または
標的指向性部分へのリンカー
である。ある種の実施形態では、
標的指向性部分
は、
抗体
または
細胞表面受容体アンタゴニスト
である。・・・」
摘記(E)
「【0118】
構造(I)~(XI)の化合物のある種の実施形態は
、
ペプチドの調製に当分野で公知の合成法に類似した固相合成法に準拠して調製することができる
。したがって、一部の実施形態では、
L’
は、
固体支持体
または
固体支持体残基への連結基
である。様々な
固体支持体(例えば、ポリスチレン、ポリアミド、PEGをベースとする)
、
保護基(例えば、Fmoc、Boc、トリフェニルメチル)
、
活性基(例えば、カルボジイミド、トリアゾール)
、および
他の物質
が、容易に入手可能であり、一部の実施形態では、
構造(I)の化合物の調製に使用することができる
。固体支持体残基は、合成後に除去または修飾され得る。
【0119】
さらに他の実施形態では、
Q
は、出現毎に独立して、分析対象分子または
固体支持体と共有結合を形成する
ことが可能な
反応性基
を
含む部分
である。他の実施形態では、
Q
は、出現毎に独立して、
相補性反応性基Q’と共有結合を形成する
ことが可能な
反応性基
を
含む部分
である。例えば、一部の実施形態では、Q’は、構造(I)~(XI)のさらなる化合物に存在し(例えば、R
2
またはR
3
位における)、
QおよびQ’は相補性反応性基を含み
、その結果、構造(I)~(XI)の化合物と構造(I)~(XI)のさらなる化合物との反応により、構造(I)~(XI)の化合物の共有結合による二量体をもたらす。構造(I)~(XI)の多量体化合物もまた、類似の方法で調製することができ、本発明の実施形態の範囲内に含まれる。
【0120】
Q基のタイプ、および構造(I)~(XI)の化合物の残りへのQ基の結合性は、特に限定されないが、ただし、
Q
は、
所望の結合を形成するために適切な反応性を有する部分を含む
ことを条件とする。
ある種の実施形態では、Qは、水性条件下で加水分解を受けにくいが、分析対象分子または固体支持体に対応する基と結合を形成するのに十分な反応性のある部分(例えば、アミン、アジドまたはアルキン)である。
構造(I)~(XI)の化合物のある種の実施形態は、バイオコンジュゲーションの分野において、一般に使用されているQ基を含む
。例えば、一部の実施形態では、Qは、求核性反応性基、求電子性反応性基または環化付加反応性基を含む。一部のより具体的な実施形態では、
Q
は、
スルフヒドリル
、
ジスルフィド
、
活性化エステル
、
イソチオシアネート
、
アジド
、
アルキン
、
アルケン
、
ジエン
、
求ジエン体
、
酸ハロゲン化物
、
ハロゲン化スルホニル
、
ホスフィン
、
α-ハロアミド
、
ビオチン
、
アミノ
または
マレイミド官能基
を含む。一部の実施形態では、
活性化エステルは
、
N-スクシンイミドエステル
、
イミドエステル
または
ポリフルオロフェニル(polyfluorophenyl)エステル
である。・・・
(合議体注:令和5年8月1日にされた手続補正により、出願当初の「ポリフルオ
ウ
ロフェニル(polyfl
ou
rophenyl)」との記載は、「ポリフル
オロ
フェニル(polyfl
uo
rophenyl)」との記載に、誤記の訂正がされた。)
【0121】
Q基は、保存安定性または他の所望の特性を増大させる保護形態で都合よく提供され得
、次に、この保護基は、例えば、標的指向性部分または分析対象とのカップリングにとって適切な時に除去され得る。したがって、Q基は、上記および以下の表1中の反応性基のいずれかを含めた、反応性基の「保護形態」を含む。
Qの「保護形態」
とは、Qに対して所定の反応条件下で、一層低い反応性を有するが、好ましくは分解しない、または構造(I)~(XI)の化合物の他の部分と反応しない条件下でQへと変換され得る部分を指す。
当業者は、特定のQ、ならびに所望の最終使用および貯蔵条件に基づいて、Qの適切な保護形態を誘導することができる
。例えば、Qが-SHである場合、Qの保護形態はジスルフィドを含み、ジスルフィドは、一般的な公知技法および試薬(例えば、TCEP)を使用して還元すると、-SH部分が現れ得る。
【0122】
例示的なQ部分
が、以下の
表1に提示
されている。
【表1-1】
195
105
0001430505000036.jpg
【表1-2】
201
94
0001430505000037.jpg
【表1-3】
171
99
0001430505000038.jpg
・・・
【0124】
一部の実施形態では、Qが-SHである場合、-SH部分は、例えば、構造(I)~(XI)の別の化合物の別のスルフヒドリル基とジスルフィド結合を形成する傾向があることに留意すべきである。したがって、一部の実施形態は、ジスルフィド二量体の形態にある、構造(I)~(XI)の化合物を含み、ジスルフィド結合は、-SHであるQ基から誘導される。
他の実施形態では、Q部分は、ジスルフィド部分として都合よく隠され(例えば、保護されている)、この部分は、後に還元されて、所望の標的指向性部分への結合のために活性化されたQ部分をもたらすことができる。例えば、Q部分は、以下の構造:
【化39】
12
32
0001430505000039.jpg
(式中、Rは、置換されていてもよいアルキル基である)を有するジスルフィドとして隠され得る。例えば、一部の実施形態では、Qは、以下の構造:
【化40】
16
45
0001430505000040.jpg
(式中、n’は、1~10の整数、例えば6である)を有するジスルフィド部分として提供される。
【0125】
同様に、
構造(I)~(XI)の化合物
が、ある種の実施形態の範囲内に含まれ、この場合、
R
2
およびR
3
の一方またはどちらも、構造(I)~(XI)のさらなる化合物への連結基を含む
。例えば、R
2
およびR
3
の1つまたはどちらも、-OP(=R
a
)(R
b
)R
c
であり、R
c
はOL’であり、
L’
は、
構造(I)~(XI)のさらなる化合物への共有結合を含むリンカー
である。
このような化合物
は、
例えば、約10の「M」部分(すなわち、n=9)を有しており
、かつ
構造(I)~(XI)の第2の化合物上の相補性Q’基との反応にとって適切な「Q」を有する
、構造(I)~(XI)の第1の化合物を調製することにより調製され得る。この方法では、任意の数、例えば100以上の「M」部分を有する、
構造(I)~(XI)の化合物は、各モノマーを逐次にカップリングする必要なしに調製することができる
。・・・」
「【0146】
一部の具体的な実施形態では、本化合物は、
表2
から選択される化合物である。
【表2-1】
17
142
0001430505000041.jpg
・・・
【表2-10】
92
142
0001430505000042.jpg
【表2-11】
89
142
0001430505000043.jpg
【表2-12】
94
142
0001430505000044.jpg
【表2-13】
88
142
0001430505000045.jpg
【表2-14】
97
142
0001430505000046.jpg
【表2-15】
58
142
0001430505000047.jpg
表2
に使用されている通り、および本出願の全体にわたり、R
2
、R
3
、L、QおよびMは、特に示さない限り、
構造(I)
の化合物に対して提示されている定義を有する。一部の実施形態では、
Mは
、出現毎に独立して、
F
、
F’
、
F”
、E、Y、
N’
、
I’
、D’またはD”であり、ただし、
少なくとも1つのMは
、
N’
、
I’
、D’またはD”であることを条件とする。
F
、
F’
および
F’’
は、以下の構造:
【化52】
84
92
0001430505000048.jpg
を有する
フルオレセイン部分
をそれぞれ指す。
【0147】
「E」とは、以下の構造:
【化53】
32
24
0001430505000049.jpg
を指す。
【0148】
「Y」とは、以下の構造:
【化54】
22
25
0001430505000050.jpg
を指す。
「
N’
」とは、以下の構造:
【化55】
21
48
0001430505000051.jpg
を指す。
【0149】
「
I’
」とは、以下の構造:
【化56】
20
45
0001430505000052.jpg
を指す。
「D’」とは、以下の構造:
【化57】
44
84
0001430505000053.jpg
を指す。
【0150】
「D”」とは、以下の構造:
【化58】
44
131
0001430505000054.jpg
を指す。
【0151】
「dT」とは、以下の構造:
【化59】
43
31
0001430505000055.jpg
(式中、
Rは、Hまたは直接結合である)を指す。一部の実施形態では、
L’
、
R
2
または
R
3
は、
dT
を含む。・・・
【0152】
一部の実施形態は、
表2
に提示されており、
抗体などの標的指向性部分にコンジュゲートされている具体的な化合物
を含む、上述の化合物のいずれかを含む。一部の実施形態では、
構造(I)の化合物
の1つが、
抗体にコンジュゲートされている
。・・・
・・・
【0154】
様々な実施形態では、
反応性ポリマー
は、
構造(I)
~(XI)
の化合物
を
調製するために使用することができる
。ある種の実施形態では、これらの
反応性ポリマー
は、任意の数の合成方法論により、相補性部分と反応して、
M
と
反応性ポリマー
との間に
共有結合を形成する
のに有用な部分を含む
合成中間体
であり(例えば、上記の「クリック」反応)、こうして、
構造(I)
~(XI)
の化合物
を形成する。したがって、様々な実施形態では、
構造(I)の化合物は
、以下の
構造(I’)
を有する
反応性ポリマー
:
【化61】
54
142
0001430505000056.jpg
(I')
またはその立体異性体、塩もしくは互変異性体
を使用して形成される
(式中、
【0155】
Gは
、出現毎に独立して、
相補性反応性基と共有結合を形成することが可能な、反応性基またはその保護類似体を含む部分
であり、
・・・
・・・である)。
【0158】
一部の他の関連する実施形態では、構造(II)~(VIII)の化合物は、類似の方法で調製される。
一部の実施形態では、
反応性ポリマー
は、以下の
表3
から選択される。
【表3-1】
110
142
0001430505000057.jpg
【表3-2】
119
142
0001430505000058.jpg
【表3-3】
113
142
0001430505000059.jpg
【表3-4】
118
142
0001430505000060.jpg
【表3-5】
97
142
0001430505000061.jpg
【表3-6】
86
142
0001430505000062.jpg
【表3-7】
100
142
0001430505000063.jpg
【表3-8】
122
142
0001430505000064.jpg
様々な実施形態では、
表3
の化合物中の
G
は、
エチニルなどのアルキニル
である。他の実施形態では、
表3
の化合物中の
G
は、
アジド
である。他の実施形態では、
表3
の化合物中の
G
は、
アミノ(NH
2
)
である。他の実施形態では、
表3
の化合物中の
G
は、
イソチオシアネート
である。他の実施形態では、
表3
の化合物中の
G
は、
N-ヒドロキシスクシンイミドのエステルなどの活性化エステル
である。
ある種の実施形態は、
治療的に有効な蛍光化合物
を対象とし、ただし、出現する
Mの少なくとも1つが蛍光色素ではなく
、
出現するMの少なくとも1つが蛍光色素である
。治療的に有効な蛍光化合物には、少なくとも1つの生物活性部分もしくはその断片、または生物活性部分のプロドラッグもしくはその断片を含む化合物が含まれ、これらは、紫外線光などの光により励起されると、蛍光シグナルを発する。」
摘記(F)
「【0189】
調製方法
上記の構造(I)の化合物の実施形態、ならびに上記の構造(I)~(XI)の化合物中の可変因子R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
、L、L
1
、L
2
、L
3
、L
4
、M、q、wおよび/またはnに関して本明細書に記載されている任意の具体的な選択は、構造(I)~(XI)の化合物の他の実施形態および/または可変因子と独立して組み合わされて、上記に具体的に記載されていない本発明の実施形態を形成してもよいことが理解される。さらに、最適なリストが、特定の実施形態および/または特許請求の範囲における任意の特定のR
1
、R
2
、R
3
、R
4
、R
5
、L、L
1
、L
2
、L
3
、L
4
、M、q、wおよび/またはnの可変因子に関して一覧表示されている事例では、個々の選択はそれぞれ、特定の実施形態および/または特許請求の範囲から除かれ得ること、および最適な残りのリストは、本発明の範囲内にあると見なされることが理解される。
本記載では、図示されている式の置換基および/または可変因子の組合せは、このような寄与が安定な化合物をもたらす場合に許容可能となることが理解される。
【0190】
本明細書に記載されている方法では、
中間化合物の官能基が好適な保護基によって保護される必要があり得ることが当業者によってやはり理解されよう
。このような官能基には、ヒドロキシ、アミノ、メルカプトおよびカルボン酸が含まれる。ヒドロキシに好適な保護基には、トリアルキルシリルまたはジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリルまたはトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジルなどが含まれる。アミノ、アミジノおよびグアニジノに好適な保護基には、t-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニルなどが含まれる。メルカプトに好適な保護基には、-C(O)-R”(式中、R”は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルである)、p-メトキシベンジル、トリチルなどが含まれる。カルボン酸用の好適な保護基は、アルキル、アリールまたはアリールアルキルエステルを含む。保護基は、当業者に公知で、本明細書に記載されている、標準技法に従い付加または除去することができる。
保護基の使用は、Green, T.W. and P.G.M. Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis (1999), 3rd Ed., Wileyに詳述されている
。当業者が理解しているように、これらの保護基は、Wang樹脂、Rink樹脂または塩化2-クロロトリチル樹脂などのポリマー樹脂とすることもできる。
さらに、遊離塩基形態または遊離酸形態で存在する本発明の化合物はすべて、当業者に公知の方法によって、適切な無機塩基もしくは有機塩基または無機酸もしくは有機酸による処理によってその塩に変換することができる。本発明の化合物の塩は、標準技法によってその遊離塩基形態または酸形態に変換することができる。
【0191】
以下の反応スキームは、本発明の化合物を作製する例示的な方法を例示している
。
当業者は、類似の方法によって、または当業者に公知の他の方法を組み合わせることにより、これらの化合物を作製することが可能となり得ることが理解される
。本明細書において開示されている
化合物(例えば、構造(I)~(XI))の実施形態を調製する方法は
、
例えば、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれている、PCT公開番号WO2015/027176およびWO2016/138461に見出すことができる
。
当業者は、適切な出発構成成分を使用し、必要に応じて合成パラメータを修正することにより、以下に具体的に例示されていない、構造(I)~(XI)の他の化合物を、以下に記載されているような類似方法で作製することが可能になることがやはり理解される
。一般に、
出発構成成分は、Sigma Aldrich、Lancaster Synthesis,Inc.、Maybridge、Matrix Scientific、TCIおよびFluorochem USAなどの供給元から得ることができるか、または当業者に公知(例えば、Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th edition (Wiley, December 2000)を参照されたい)の情報源に従い合成され得るか、または本発明において記載されている通り調製され得る
。
【0192】
反応スキームI
【化62】
58
114
0001430505000065.jpg
反応スキームIは
、R
1
、L
1a
、L
1
、L
2
およびMが、上で定義した通りであり、R
2
およびR
3
は、上で定義した通りであるか、またはそれらの保護変形体であり、L
1a’
が、それが結合している隣接炭素と一緒になった場合、上で定義したLである、
構造(I)~(XI)の化合物の調製に有用な中間体を調製する例示的な方法を例示
している。反応スキーム1を参照すると、
構造aの化合物は、購入することができるか、または当業者に周知の方法により調製することができる
。当分野で公知のSuzukiカップリング条件下でのM-X(Xは、ブロモなどのハロゲンである)との反応により、構造bの化合物をもたらす。
構造bの化合物は、以下に記載されている、構造(I)~(XI)の化合物の調製に使用する
ことができる。
【0193】
反応スキームII
【化63】
47
116
0001430505000066.jpg
反応スキームIIは
、
構造(I)~(XI)の化合物の調製に有用な中間体化合物の調製の代替法を例示
している。R
1
、L、L
1a
、L
1
、L
2
およびMが、上で定義した通りであり、R
2
およびR
3
が、上で定義した通りであるか、またはそれらの保護変形体である、
反応スキームIIを参照すると、購入することができるか、または周知技法によって調製することができる構造cの化合物を、M-G’と反応させて、構造dの化合物を生成
させる。ここで、
GおよびG’は
、
相補性反応性を有する官能基
(すなわち、反応して共有結合を形成する官能基)を表す。
G’は
、
M、またはMの構造上の主鎖の一部、例えば、環式無水物への側鎖であり得る
。
Gは
、
アミノなどの、任意の数の官能基であってもよい
。
【0194】
ある種の実施形態では、
構造(I)~(XI)の化合物は、2~100の繰り返し単位を含むオリゴマーである
。このような
オリゴマーは、周知の自動化DNA合成方法に類似する方法を使用して調製することができる
。DNA合成法は、当分野において周知である。手短に述べると、
2つのアルコール基、例えば上の中間体bまたはd中のR
2
およびR
3
は
、
それぞれ、ジメトキシトリチル(DMT)基および2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノホスホロアミダイト基により官能基化されている
。
ホスホロアミダイト基は、通常、テトラゾールなどの活性化剤の存在下で、アルコール基に結合させて、次に、ヨウ素によるリン原子の酸化を行う
。
ジメトキシトリチル基は
、
酸(例えば、クロロ酢酸)により除去して、遊離アルコールを露出させることができ
、
この遊離アルコールは
、
ホスホロアミダイト基と反応させることができる
。
2-シアノエチル基は
、
アンモニア水による処理によってオリゴマー化した後に除去することができる
。
オリゴマー化法に使用されるホスホロアミダイトの調製もまた、当分野で周知である
。例えば、一級アルコール(例えば、R
3
)は、DMT-Clとの反応によってDMT基として保護され得る。次に、二級アルコール(例えば、R
2
)は、2-シアノエチルN,N-ジイソプロピルクロロホスホロアミダイトなどの適切な試薬との反応によって、ホスホロアミダイトとして官能基化される。
ホスホロアミダイトの調製およびそのオリゴマー化の方法は、当分野において周知である
。
【0195】
中間体bまたはdのオリゴマーは、上記の周知のホスホロアミダイト(phophoramidite)化学に従い調製される。繰り返し単位mの所望の数は、ホスホロアミダイトのカップリングを、適切な中間体、例えば、以下の構造を有する中間体
:
【化64】
49
72
0001430505000067.jpg
と、所望の回数、繰り返すことにより分子に取り込まれる
。」
摘記(G)
「【
実施例
】
【0196】
一般方法
1
Hおよび
31
P NMRスペクトルは、JEOL400MHz分光計で得る。
31
P NMRスペクトルは、85%水性リン酸を参照し、
1
H NMRは、TMSを参照する。逆相HPLC色素分析は、45°Cに保持した2.1mm×50mm Acquity BEH-C
18
カラムを備えるWaters Acquity UHPLCシステムを使用して行う。質量スペクトル分析は、MassLynx4.1アクイジョンソフトウェアを使用する、Waters/Micromass QuattroマイクロMS/システムMS(MSモードのみ)で行う。LC/MSに使用した移動相は、100mMの1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)、8.6mMのトリエチルアミン(TEA)、pH8である。ホスホロアミダイトおよび前駆体分子は、Aapptec(著作権)Spirit(商標)ペプチドC18カラム(4.6mmx100mm、5μmの粒子サイズ)を使用する、ダイオードアレイ検出器および高性能オートサンプラーを備えるAgilent Infinity1260 UHPLCシステムを使用して分析する。励起および発光プロファイル実験は、Cary Eclipseスペクトル光度計で記録する。
【0197】
反応はすべて、特に明記しない限り、窒素雰囲気下、オーブン乾燥したガラス器具中で行った。市販のDNA合成試薬は、Glen Research(Sterling、VA)から購入する。無水ピリジン、トルエン、ジクロロメタン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、酢酸、ピリジンおよびTHFは、Aldrichから購入する。他の化学品はすべて、AldrichまたはTCIから購入し、さらに精製することなく、そのまま使用する。
すべてのオリゴマー(すなわち、二量体以上)化合物は、ホスホロアミダイトに基づくカップリング手法に関する標準プロトコルを使用するABI394 DNA合成装置で合成する。オリゴマーの合成に関する鎖の組立てサイクルは、以下である:(i)脱トリチル化、ジクロロメタン中の3%トリクロロ酢酸、1分間、(ii)カップリング、アセトニトリル中の0.1Mホスホロアミダイトおよび0.45Mテトラゾール、10分間、(iii)THF/ルチジン、1/1中の0.5M無水酢酸、15秒、(iv)酸化、THF/ピリジン/水、10/10/1中の0.1Mヨウ素、30秒。
このサイクル内の化学工程の後に、アセトニトリルによる洗浄、および0.2~0.4分間の乾燥アルゴンの吹込みが続く。塩基およびホスホロアミデート保護基の支持および除去に起因する開裂は、室温で1時間、アンモニアで処理することによって実現される。次に、オリゴマー色素を、上記の逆相HPLCにより分析する。
【0198】
(
実施例1
)
イブプロフェン-NHS
および
ナプロキセン-NHS
の合成
【化65】
60
144
0001430505000068.jpg
イブプロフェン-NHSおよびナプロキセン-NHSは、標準カップリング条件を使用して合成した。すなわち、イブプロフェンおよびナプロキセンを、ジクロロメタンに個別に溶解し、この混合物に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を加えた。次に、生成物を必要に応じて精製し、次の合成工程に使用した。イブプロフェン-NHSは、多グラムスケールで1工程で容易に合成される。
【0199】
(
実施例2
)
イブプロフェンポリマー
の合成
【化66】
71
145
0001430505000069.jpg
上の反応順序に示されている通り、例示的なポリマー(例えば、アミン官能基側鎖を有する)をイブプロフェン-NHSと連結する。この反応は、塩化マグネシウムを含むホウ酸緩衝化H
2
O/DMSO混合物を使用して行われる。この反応は、アミン官能基の各々にイブプロフェン部分を首尾よく付加して、所望の生成物を与える。
【0200】
(
実施例3
)
ナプロキセンポリマー
の合成
【化67】
72
142
0001430505000070.jpg
上の反応順序に示されている通り、例示的なポリマー(例えば、アミン官能基側鎖を有する)をナプロキセン-NHSに連結する。この反応は、塩化マグネシウムを含むホウ酸緩衝化H
2
O/DMSO混合物を使用して行われる。この反応は、アミン官能基の各々にイブプロフェン部分を首尾よく付加して、所望の生成物を与える。
【0201】
(
実施例4
)
ドキソルビシン-NHS
の合成
【化68】
42
143
0001430505000071.jpg
ドキソルビシンをジヒドロフラン-2,5-ジオンと反応させて、カルボン酸含有中間体を得る。この中間体を、TFA-NHSおよびピリジンを使用して活性化し、ドキソルビシン-NHSが得られる。
【0202】
(
実施例5
)
ドキソルビシンポリマー
の合成
【化69】
109
147
0001430505000072.jpg
例示的なポリマーをドキソルビシン-NHSに連結する。この反応条件は、ドキソルビシン誘導体の溶解度に限界があるので、異なる溶媒混合物を使用する実験を必要とする。反応条件の代替肢は、有機溶媒の含有量を増量すること、反応温度を高くすること、および反応を支援するためドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加することを含む。
【0203】
(
実施例6
)
ドキソルビシン-PEG-アジド
の合成
【化70】
146
140
0001430505000073.jpg
【0204】
ドキソルビシン-PEG-アジドは、50mgスケールで、上に示した反応順序に従い合成した。アジド6-1は、ジヒドロフラン-2,5-ジオンと反応させて、中間体6-2を得て、これをパーフルオロフェノールと反応させて、中間体6-3を得た。中間体6-3をドキソルビシンに連結させて、所望の生成物である、ドキソルビシン-PEG-アジドが良好な収率(74%)で得られた。所望の生成物の存在は、LC-MSによって確認した。
【0205】
(
実施例7
)
ドキソルビシンポリマー
の合成
【化71】
128
132
0001430505000074.jpg
例示的なアルキニル含有ポリマーをドキソルビシン-PEG-アジドに連結する。反応条件は、CuSO
4
、トリス(3-ヒドロキシプロピルトリアゾリルメチル)アミン(THPTA)およびアスコルビン酸ナトリウムを含む。60%DMSを含む、pHが7.6のリン酸緩衝水性溶媒中でこの反応を行う。この反応を室温で行い、所望の生成物の存在をLC-MSによって確認する。
【0206】
(
実施例8
)
イブプロフェン-ホスホロアミダイト
の合成
【化72】
107
149
0001430505000075.jpg
【0207】
イブプロフェンの展開可能な誘導体は、本明細書において記載されている化合物の実施形態に組み込まれることになる、代表的な誘導体として上に示されている反応に従って合成した。
イブプロフェン-NHS
は、
8-1
(
2-アミノ-1,3-プロパンジオール
)
と反応
させて、次いで、
トリチル保護基を付与
することにより、
中間体2-3
を得た。次に、
保護生成物8-3
を、
8-4
と
反応
させて、
最終生成物8-5
である
イブプロフェン-ホスホロアミダイト
(79%)を得た。次に、イブプロフェン-ホスホロアミダイトを、自動化DNA合成に使用し、
イブプロフェン
を
代表的な生物学的に活性な部分
として、本明細書において記載されている化合物の実施形態に組み込んだ。
代替的に、
イブプロフェン-NHS
を、
4-(アミノメトキシ)ブタン-1,2,-ジオール
と
反応
させて、上で示されている反応手順に従って誘導体化した。この反応順序の得られた最終生成物は、上で示した、イブプロフェン-ホスホロアミダイトに比べて
リンカーの延びた、代替的なイブプロフェンホスホロアミダイト
をもたらした。
【0208】
(
実施例9
)
ナプロキセン-ホスホロアミダイト
の合成
【化73】
101
142
0001430505000076.jpg
【0209】
ナプロキセン-ホスホロアミダイト
(
9-5
)は、
実施例8
に示されている、イブプロフェン-ホスホロアミダイトの合成に関して記載されている、
類似の反応条件および試薬を使用して合成
した。所望の生成物が、良好な収率(79%)で得られ、代表的な生物学的に活性な部分として、本開示の化合物の実施形態に組み込んだ。
代替的に、
ナプロキセン-NHS
を
4-(アミノメトキシ)ブタン-1,2,-ジオール
と
反応
させて、上で示されている反応手順に従って誘導体化した。この反応順序の得られた最終生成物は、上で示した、ナプロキセンホスホロアミダイトに比べて
リンカーの延びた、代替的なナプロキセンホスホロアミダイト
をもたらした。
【0210】
(
実施例10
)
自動化DNA合成法を使用して調製した例示的な化合物
ポリマー配列は、それぞれ、
実施例8および9
に記載されている、
イブプロフェン-ホスホロアミダイト
および/または
ナプロキセン-ホスホロアミダイト
を用いて調製する。
配列は、当分野において公知である、自動化DNA合成技法を使用して首尾よく調製
される。この戦略に準拠して合成した化合物は、均質(すなわち、たった1種の生物学的に活性な部分しか含まない)である一方、他の化合物は、不均質(すなわち、2種の組合せ物が含まれる)となる。」
摘記(H)
「
他の有利な構造的特徴は
、本方法に準拠して
合成した実施形態に含まれる
。例えば、
フルオレセインは
、
構築物の一部に、容易にかつ都合良く含まれる
。合成される化合物は、
保護されているチオール部分(C6SS)
を含み、この部分は、次に、本明細書に記載されている通り、
標的指向性部分
(例えば、
抗体
)
への結合
に使用される。
【0211】
ポリマー、およびその後にいずれかの標的指向性部分に連結される生物活性部分または蛍光色素部分の数を制御することが可能であることを含めた、多数の利点が本明細書に開示されている実施形態によってもたらされる
。ポリマー主鎖の組成はまた、例えば、電荷部分(例えば、数、頻度、間隔など)の組み込みを制御することによって、所望の溶解度特性を実現するように選択することができる。側鎖は、主鎖の組成によってもたらされる特性に加え、本明細書において開示されている化合物の溶解度を調節するための根本を提供するよう選択され得る。
【0212】
本明細書において開示されている実施形態はまた
、例えば、無料(complimentary)のまたは相乗的な治療的戦略のために、
複数の治療剤を有利に含むことができる化合物を提供する
。さらに、
本開示の実施形態は、標的化、処置および検出を同時に行うために使用することができる
、
治療剤、標的指向性部分および色素部分(例えば、フルオロフォア)の組合せを提供する
。
ポリマー-薬物構築体を、抗体、抗体断片、タンパク質または他の臨床的に関心の高い薬剤などの標的剤にカップリングすることが容易であるため、幅広い関心の持たれる用途(例えば、表面化学、アッセイ開発など)に対して有用性がある
。
【0213】
ある種の実施形態の化合物はまた、透過性の増強および保持作用を含めた、他の所望の特性を実現する。必要な溶解性の実現に加えて、
本化合物の実施形態の化学的特徴は、本化合物が罹患細胞/組織を透過する能力およびこれらの内部に保持される能力をモジュレートするよう調節され得る
。これらの特徴により、
浸透度の増強による生物活性剤の効果的な送達、および保持の増強による有効性の増大が可能になる
。」
ウ 検討
(ア) 「物の発明」としての「構造(Ia)を有する、化合物」について
本願補正発明は、「構造(Ia)を有する、化合物」という「物の発明」であるから、上記アで述べたように、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が、本願補正発明について実施可能要件を満たすためには、当業者が、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」を、製造することができ、使用することができることを要する。
(イ) 「構造(Ia)を有する、化合物」の部分構造について
本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」については、両末端の可変基「R
2
」及び「R
3
」に加えて、以下のa~cに示す部分構造〔A〕~〔C〕を有することが必須である(これらの部分構造中に存在する可変基「R
1
」、「R
5
」及び「R
4
」の定義の記載は省略する。)。
a リン酸構造〔A〕:
「
24
22
0001430505000077.jpg
」
(以下「-O-P(R
5
)(R
4
)-」とも表記する。)
b 生物学的活性アミドヘテロアルキレン構造〔B〕:
「
26
40
0001430505000078.jpg
」
(以下「-O-L
2
-C(R
1
)(L-M)-L
1
-」とも表記する。)
ここで、「L
1
」は「アルキレンまたはヘテロアルキレンリンカー」であり、「L
2
」は「ヘテロアルキレンリンカー」であり、「L」は「アミド結合を含む生理的に開裂可能なリンカー」であり、「M」は「NSAID及び抗がん薬から選択される生物学的に活性な部分、または蛍光色素」であり、出現する「M」の少なくとも1つは蛍光色素ではない。
c 繰り返し構造〔C〕:
上記a及びbの構造〔A〕及び構造〔B〕を、その順番に連結した構造を繰り返し構造の単位とし、その繰り返し数を表す「n」が、「1~10」の整数である、繰り返し構造。
(ウ) 化合物の製造についての一般的な説明について
本願明細書には、化合物の製造についての一般的な説明として、「反応性基」を有する化合物に「生体分子」を接触させることによって、「本発明の目視により検出可能な生体分子」を調製すること、及び、分子を「固体支持体」に「連結」する基に基づいて誘導体化され得ることが、「用語」の説明において記載され(摘記(B)の【0036】~【0039】)、「リンカーL」が、化合物の「M」部分の結合点として使用され得ること、「M」部分が、「公知の容易に利用可能な方法」である「クリックケミストリー」と称される方法等を使用して、「構造(I)~(XI)の化合物」の合成前駆体に結合されること、が記載されており(摘記(D)の【0100】~【0102】)、「構造(I)~(XI)の化合物」のある種の実施形態について、「ペプチドの調製に当分野で公知の合成法に類似した固相合成法に準拠して調製することができる」こと、「バイオコンジュゲーションの分野において、一般に使用されているQ基」が用いられ、「特定のQ、ならびに所望の最終使用および貯蔵条件に基づいて、Qの適切な保護形態を誘導することすることができる」こと、が記載されている(摘記(E)の【0118】~【0122】)。
しかしながら、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」については、「構造(I)~(XI)の化合物」(摘記(C)の【0048】~【0098】)という11種の一般式で表される化合物のうち、「構造(I)の化合物」の一部(qが1でwが0であるものの一部)に該当するが、各可変基には、不特定な膨大な数の部分構造の選択肢が含まれ、特に、「L
1
」、「L
2
」、並びに、「R
2
」及び「R
3
」の選択肢である「L’」は、「ヘテロアルキレンリンカー」なるものが選択肢とされているところ、「ヘテロアルキレン」は、アルキレン鎖内又はアルキレン鎖の末端に少なくとも1個のヘテロ原子を含むアルキレン基であって、さらに置換されていてもよいとされており(摘記 (C)の【0012】)、不特定で多種多様な部分構造を取り得るものである。
そして、具体的な化合物の特定の部分構造や化合物の全体構造を製造するためには、いかなる公知の「技法」及び「合成法」であっても、単純に適用できるものではなく、各部分構造の製造工程の順序や反応の際の他の置換基への影響も考慮した、具体的な説明や現実に製造を行った実施例の裏付けが必要であるから、当業者が、本願明細書に記載された、上記の化合物の製造についての一般的な説明に基づいて、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」を、その全体にわたって、実際に製造できるとはいえない。
(エ) 「調製方法」の項目の記載について
本願明細書には、「調製方法」という項目の記載があるところ(摘記(F)の【0189】~【0195】)、
「反応スキームI
58
114
0001430505000079.jpg
」
及び
「反応スキームII
47
116
0001430505000080.jpg
」
について、「本発明の化合物を作製する例示的な方法を例示」したもので、「当業者は、類似の方法によって、または当業者に公知の他の方法を組み合わせることにより、これらの化合物を作製することが可能となり得ることが理解される」とされている。
さらに、「構造aの化合物は、購入することができるか、または当業者に周知の方法により調製することができる」ことが前提とされ、「構造bの化合物は、・・・、構造(I)~(XI)の化合物の調製に使用すること」とされ、「中間体bまたはdのオリゴマー」は「ホスホロアミダイト」に従い調製されるとされており、
「繰り返し単位mの所望の数は、ホスホロアミダイトのカップリングを、適切な中間体、例えば、以下の構造を有する中間体:
43
63
0001430505000081.jpg
と、所望の回数、繰り返すことにより分子に取り込まれる」
ことが記載されている。
しかしながら、上記「構造bの化合物」及び「ホスホロアミダイト」に対して、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」の部分構造が如何なる対応関係にあるのか明らかでなく、また、当該「構造bの化合物」及び「ホスホロアミダイト」から、どのように構造を改変して、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」を製造するのか、各反応の工程及びその順序に関する説明について、本願明細書には具体的かつ十分な記載は見出せない。
すなわち、上記「ホスホロアミダイト」及び「構造bの化合物」は、上記(イ)で認定した本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」における「リン酸構造〔A〕」及び「生物活性アミドヘテロアルキレン構造〔B〕」を有する化合物及びその製造中間体であるとはいえず、かつ、「繰り返し構造〔C〕」の「n」が「2~10」の場合の化合物及びその製造中間体ではなく、それらを示唆するものでもないから、摘記(F)の「調製方法」の記載に基づいて、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」に該当する具体的な化合物を、どのように製造するのか理解することができない。
(オ) 実施例の記載について
a 実施例1~7について
本願明細書には、化合物の合成についての実施例1~10が記載されているが(摘記(G))、そのうち、実施例1~7で得られた化合物は、いずれも上記「リン酸構造〔A〕」を有するものでなく、ポリマーの主鎖を構成する繰り返し構造単位中に、上記「リン酸構造〔A〕」を後から挿入することはできないから、実施例1~7は、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」に直接関係する具体例ではなく、実際、本願明細書には、実施例1~7で得た化合物から、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」を得ることに関する記載や示唆は一切ないし、実施例1~7の化合物を得る工程を参考にしても、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」を得ることができるとはいえない。
b 実施例8及び9について
本願明細書に記載の実施例8及び9では、それぞれ、
「イブプロフェン-ホスホロアミダイト」:
「
54
105
0001430505000082.jpg
」
及び
「ナプロキセン-ホスホロアミダイト」:
「
56
114
0001430505000083.jpg
」
が最終生成物として得られているところ、いずれの化合物も、上記「リン酸構造〔A〕」である「-O-P(R
5
)(R
4
)-」に対応する構造部分:
「
24
25
0001430505000084.jpg
」
(「R
4
」が「N(R
6
)
2
」であって、「R
6
」が「イソプロピル」であり、「R
5
」が存在しない場合に相当する。)
を有する「ホスホロアミダイト」の合成に関する実施例であるが、いずれの化合物も、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」に該当しないものであり、上記「イブプロフェン-ホスホロアミダイト」及び「ナプロキセン-ホスホロアミダイト」から、どのように複数の構造を改変して、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」を製造するのか、各反応工程やその順序を伴う説明が、具体的かつ十分に記載されているとはいえない。
すなわち、実施例8の「イブプロフェン-ホスホロアミダイト」は、上記のとおり「リン酸構造〔A〕」に対応する構造部分を有し、上記「生物活性アミドヘテロアルキレン構造〔B〕」である「-O-L
2
-C(R
1
)(L-M)-L
1
-」のうち、「生物活性基」及び「アミド結合」からなる「L-M」に対応する部分については、
「
24
50
0001430505000085.jpg
」
として有しているものの、「L
2
」に対応する部分は、「メチレン」:
「
9
11
0001430505000086.jpg
」
であって、「ヘテロアルキレンリンカー」に該当するものではなく、また、上記「イブプロフェン-ホスホロアミダイト」における
「
12
29
0001430505000087.jpg
」
の構造部分のうち、
「
10
8
0001430505000088.jpg
」
の部分については、上記「生物活性アミドヘテロアルキレン構造〔B〕」における「アルキレンリンカー」である場合の「-L
1
-」に該当するが、
「ODMTr」
の部分については、「O原子を介して分子の残りに結合しているジメトキシトリチル」の略称と解されるところ(摘記(B)の【0026】)、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」における末端基である「R
3
」のいずれの選択肢にも該当せず、さらに、
「
12
24
0001430505000089.jpg
」
の構造部分も、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」における末端基である「R
2
」のいずれの選択肢にも該当しない。また、上記「イブプロフェン-ホスホロアミダイト」は、「n=2~10」の繰り返し構造を有する化合物ではない。
これらの点は、実施例9の「ナプロキセン-ホスホロアミダイト」についても、上記「生物活性アミドヘテロアルキレン構造〔B〕」の「-O-L
2
-C(L-M)(R
1
)-」に対応する構造部分のうち、「生物活性基」と「アミド結合」からなる「L-M」に対応する部分が、
「
25
55
0001430505000090.jpg
」
であること以外は、実施例8の「イブプロフェン-ホスホロアミダイト」と同様である。
また、実施例8及び9には、最初の反応において、「2-アミノ-1,3-プロパンジオール」に代え、「4-(アミノメトキシ)ブタン-1,2,-ジオール」を用い、最終化合物としてリンカーの延びた代替的な「イブプロフェンホスホロアミダイト」又は「ナプロキセンホスホロアミダイト」を得た旨の記載もあるが、これらの化合物も、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」に該当しないものであって、特に、上記「生物学的活性アミドヘテロアルキレン構造〔B〕」のうち、
「
18
34
0001430505000091.jpg
」
に対応する構造部分が存在しないという点で、上記「8-5」の「イブプロフェンホスホロアミダイト」及び「9-5」の「ナプロキセンホスホロアミダイト」よりも、さらに本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」とは構造が異なった化合物である。
そうすると、実施例8及び9の最終化合物は、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」に該当するものではないし、また、仮に、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」の製造における中間体であるとしても、具体的な構造変換の工程が不明であるから、これらの実施例の記載を参照しても、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」に該当する化合物を、全体にわたって製造することができるとはいえない。
c 実施例10について
実施例10は、実施例8の「イブプロフェン-ホスホロアミダイト」及び実施例9の「ナプロキセン-ホスホロアミダイト」を用いた「自動化DNA合成法を使用して調製した例示的な化合物」を説明するものであるが、「イブプロフェン-ホスホロアミダイト」又は「ナプロキセン-ホスホロアミダイト」以外にどのような原料を用いているのか不明であるだけでなく、実際に得られた「ポリマー配列」も不明であるから、具体的にどのような工程を経て、どのような最終生成物であるポリマーが得られているのか、当業者であっても把握が不可能である。
よって、「n=2~10」である繰り返し構造(ポリマー配列)を有する本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」については、なおさら、当業者が当該化合物を製造できるとはいえない。
(カ) 付加的な説明について
本願明細書には、実施例の記載に続き、本願明細書に開示された化合物の他の有利な構造的特徴や有用性、用途について、付加的な説明が記載されているが(摘記(H))、いずれも、化合物の具体的な構造の特定部位に応じた具体的な製造工程等についての説明ではないし、実際に開示された化合物を使用して標的化薬物コンジュゲート等としての有用性を確認した結果を示すものでもなく、公知の一般的な技術を適用した場合に想定され得る抽象的な記述にすぎない。
(キ) 技術常識について
本願明細書には、文献を引用するなどして公知の技術等を適用することが示唆されているが(摘記(D)~(F))、実際に特定の化合物が調製できるかどうかは、各種反応の選択性(優先的な反応)や保護・脱保護等の点から、各種反応の工程及びそれらの順序が重要であるところ、本願明細書に適用が抽象的に示唆された技術常識は、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」を、全体にわたって実際に調製できることを補完するほどのものがあるとはいえない。
(ク) まとめ
以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明に、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」に該当する化合物は、実施例として全く記載されていないし、本願出願時の技術常識を考慮しても、本願明細書における、化合物の製造についての一般的な記載や「調製方法」の項目の記載、及び、実施例として記載された「構造(Ia)」に該当しない化合物の製造に関する記載に基づいて、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」を、全体にわたって、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、製造することができ、使用することができるとはいえない。
エ 請求人の主張について
(ア) 請求人の主張の概要
請求人は審判請求書において、審判請求時の補正後の本願発明について、概略、次の主張をしている。
「M」が「イブプロフェン」又は「ナプロキセン」である実施例が、本願明細書に明示され、これらは「NSAID」として知られており、実施例に明示された「ドキソルビシン」は、「抗がん薬」として知られているから、当業者であれば、補正後の本願発明を十分に実施することができ、請求項に記載された「生物学的に活性な部分」は、請求項に記載された化合物の主鎖に結合したものであり、このような「生物学的に活性な部分」は、「イブプロフェン」、「ナプロキセン」及び「ドキソルビシン」など、目的の治療用化合物として機能することが周知の部分であり、実際の使用例がなくとも、本願明細書の開示等から十分に予見可能である。
(イ) 請求人の主張についての当審合議体の判断
上記ウ(オ)で述べたとおり、本願明細書に記載された実施例の化合物は、いずれも本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」に該当するものではないし、これらの実施例の記載を参照しても、本願出願時の技術常識を考慮し、本願明細書における化合物の製造についての一般的な記載や「調製方法」の項目の記載に基づいて、
本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」
を、全体にわたって、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、製造することができ、使用することができるとはいえないことは、上記ウで述べたとおりである。
したがって、請求人の主張は採用できない。
オ 理由A(実施可能要件)についてのまとめ
以上のとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願補正発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3) 理由B(サポート要件)について
ア サポート要件の判断の前提
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。
イ 本願補正発明の課題
本願明細書の発明の詳細な説明には、上記(2)イに摘記した事項が記載されているところ、本件補正後の請求項1の記載、及び、摘記(A)の【0002】~【0003】の記載によれば、本願補正発明が解決しようとする課題は、
「腫瘍細胞などの標的への選択的送達を可能にする蛍光色素および/または着色色素を含んでもよい、標的化薬物コンジュゲートとして有用な化合物、ならびにその調製のための試薬」を提供すること
であると認められる。
ウ 検討
上記(2)ウ~オで詳述したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明には、本願出願時の技術常識に照らし、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」を、全体にわたって、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、製造することができ、使用することができるように記載されていないから、本願補正発明は、本願明細書の発明の詳細な説明の記載により、上記アで認定した本願補正発明の課題を解決できると、当業者が認識できる範囲のものとはいえず、また、その記載や示唆がなくとも、本願出願時の技術常識に照らし、当該課題を解決できると、当業者が認識できる範囲のものであるとはいえない。
エ 理由B(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおり、本願補正発明は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(4) 独立特許要件についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおり、本願補正発明について、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、また、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項各号に掲げるいずれの事項を目的とするものにも該当せず、同項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであり、また、仮に、本件補正が、同法第17条の2第5項第2号に掲げる事項のみを目的とした補正であったとしても、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなく、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記〔補正の却下の決定の結論〕のとおり決定する。
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願に係る発明は、令和5年8月1日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、上記第2の1(A)に摘記したとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
原査定は、
「この出願については、令和 5年 1月27日付け拒絶理由通知書に記載した理由3-5によって、拒絶をすべきものです。」
というものであり、その理由3及び4は、
「3.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。」
「4.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」
というものである。
そして、令和5年1月27日付け拒絶理由通知書では、上記理由3及び4について、次の点が指摘されている(下線は当審合議体が付した。)。
「●理由3(実施可能要件)、理由4(サポート要件)について
・・・
しかしながら、本願の発明の詳細な説明には、化合物I-38~I-53については、・・・、
当該化合物の製造例、使用例は記載されておらず
、また、イブプロフェン-ホスホロアミダイト、ナプロキセン-ホスホロアミダイトについては、・・・、
実際に使用できたことを示す例は記載されていない
。
・・・、構造(Ia)を有する全ての化合物を製造し、使用するためには、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤が必要であると認められる。
したがって、
発明の詳細な説明は、本願請求項1-14に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない
。
また、本願請求項1-14に係る発明が解決しようとする課題は、「腫瘍細胞などの標的への選択的送達を可能にする蛍光色素および/または着色色素を含んでもよい、標的化薬物コンジュゲートとして有用な化合物、ならびにその調整のための試薬」を提供することと認める([0003])。
しかしながら、
上記のような発明の詳細な説明の記載及び技術常識を考慮しても、本願請求項1-14に係るあらゆる発明が、上記課題を解決できるとは認められない
。
よって、
本願請求項1-14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない
。」
また、原査定では、上記理由3及び4ついて、次の点が指摘されている(下線は当審合議体が付した。)。
「●理由3(特許法第36条第4項第1号)、理由4(特許法第36条第6項第1号)について
・・・
しかしながら、補正後の本願請求項1-14に係る発明は、減縮されたものの依然として膨大な数の選択肢を有する構造の化合物であるところ、
本願実施例には、補正後の本願請求項1-14に係る発明における化合物の製造例は記載されておらず
、
当該化合物に類似した化合物
であるイブプロフェン-ホスホロアミダイト、ナプロキセン-ホスホロアミダイト(Mがイブプロフェン、ナプロキセンであり、Lがアミド結合である化合物)
の製造例が記載されているのみ
であり(実施例8-9)、本願明細書[0189]-[0195]には、
一般的な合成方法が記載されているに過ぎず
、本願明細書[0191]に引用されているPCT公開番号WO2015/027176・・・を参酌しても同様である。
・・・
また、
発明の詳細な説明には、補正後の本願請求項1-14に係る発明を実際に使用できたことを示す例が記載されておらず
、その点について、出願人は上記意見書において主張していない。
したがって、依然として、
発明の詳細な説明は、本願請求項1-14に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、また、本願請求項1-14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものではない
。」
(1) 理由3(実施可能要件)について
上記第2の2で説示したとおり、本願補正発明は、本願発明における「構造(Ia)を有する、化合物」の複数の可変基(M、L、R
2
及びR
3
)について、各可変基が取り得る選択肢の一部を削除するとともに、「R
2
」及び「R
3
」が取り得る選択肢の一つであるリンカー「L’」が「Qへのアルキレンまたはヘテロアルキレンリンカー」である場合における可変基「Q」の選択肢について、
「
28
44
0001430505000092.jpg
」
を追加したものである。
そうすると、本願発明と比べて、「Q」の選択肢を一部拡張するものの、多数の可変基の選択肢が限定された化合物に係る、本願補正発明について、上記第2の3(2)ウ~オで説示したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、本願発明についても、本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
(2) 理由2(サポート要件)について
本願発明と本願補正発明との関係は、上記(1)で述べたとおりである。
そうすると、本願発明と比べて、「Q」の選択肢を一部拡張するものの、多数の置換基が限定された化合物に係る、本願補正発明について、上記第2の3(3)で説示したとおり、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願発明についても、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(3) 請求人の上申書における主張について
ア 請求人の主張の概要
請求人は、令和6年8月30日提出の上申書において、補正案を提示し、概略、次の主張をしている(下線は当審合議体が付した。)。
(主張ア) 請求項1において、Lの定義を「Lは、アミド結合を含む生理的に開裂可能な
ヘテロアルキレン
リンカー」と補正し、R
2
の定義を「R
2
は、電子対、H、
-OP(=R
a
)(R
b
)R
c
、アルキルエーテル、またはL’であり」と補正し、R
3
の定義を「R
3
は、H、OH、
-OP(=R
a
)(R
b
)R
c
、またはL’であり」と補正し、R
4
の定義を「R
4
は、出現毎に独立して、
O
-
で
あり」と補正し、R
5
の定義を「R
5
は、出現毎に独立して、オキ
ソで
あり」と補正する、ことを提案する。
(主張イ) 本願明細書には、本願の化合物を、「
反応性ポリマー
」を中間体として利用し合成することが開示されており、例示的な「
反応性ポリマー
」は、
表3
に開示され、本願の化合物と同一又は類似の「
主鎖
」を有しており(
表2
も参照)、「
反応性ポリマー
」は、
構造(I’)
を有しており、「
ペンダント反応性部分
」の「
G
」が、「
生物学的に活性な部分
」の「
M
」との共有結合を形成する。
(主張ウ) 本願明細書には、「
反応スキームII
」が開示されており、「
反応性ポリマー
」と「
M-G’
」(「
生物学的に活性な部分M
」及び「
Gに相補的反応性を有する官能基
」)が反応して、「
リンを含有する主鎖
」と共有結合する「生物学的に活性な部分」を有する本願の化合物を形成することが開示されている(
実施例2、3及び7
を参照)、
実施例2及び3
は「
ペンダントアミン官能基を有する反応性ポリマー
」の例であり、
実施例7
は「
ペンダントアルキニル官能基を有する反応性ポリマー
」の例であり、「生物学的に活性な部分」、すなわち、「イブプロフェン」、「ナプロキセン」、「ドキソルビシン」と反応する(各実施例を参照)。
当業者であれば、これらの実施例に示された「
ポリマー主鎖
」は、
表3
に例示された「反応性ポリマー」のように、本願明細書で教示された特定の構造を代表するものとして例示されているものであると容易に理解でき、得られた生成物は、補正案の化合物のように、「アミド結合を含むリンカー」を介して「主鎖」に結合した「生物学的に活性な部分」を含むものである。
(主張エ) 実施例から理解できるように、「生物学的に活性な部分」と「主鎖」の結合は、補正案の化合物において変わりがなく、開裂後、この「生物学的に活性な部分」は、意図されたのと同じ生物学的活性を維持し、当業者は、過度の負担なく、補正案の化合物等が明細書に十分記載され、本願発明の課題を解決できるものであることを容易に理解することができる。
イ 請求人の主張についての当審合議体の判断
(ア) (主張ア)について
特許法においては、拒絶査定不服審判の請求と同時に特許請求の範囲等の補正をすることができることを定めているから、それ以外に特段の理由なく補正の機会を設けることは、法律の規定するところではないうえ、本願に係る発明の実施可能要件違反及びサポート要件違反については、原審における拒絶理由通知から一貫して指摘されていたことであり、請求人(出願人)には、特許請求の範囲を補正する機会が既に十分に与えられていたといえるから、審判請求時の特許請求の範囲の補正によっても、原査定の理由が解消していない場合にまで、あえて新たに特許請求の範囲を補正する機会を設けるべきものとすることはできない。
なお、上申書で提示された補正案を検討したとしても、補正案の請求項1の「構造(Ia)を有する、化合物」に該当する化合物は、依然として本願明細書に実施例として全く記載されていないものである。
すなわち、上記第2の3(2)ウ(オ)で述べたとおり、実施例1~7で得られた化合物は、いずれも「リン酸構造〔A〕」を有するものではなく、このことは、補正案の請求項1の「構造(Ia)を有する、化合物」についても同様であり、また、実施例8~10の化合物も、補正案の請求項1の「構造(Ia)を有する、化合物」における、「L
2
」、「R
2
」及び「R
3
」の選択肢に該当する構造部分を有するものでなく、「n=2~10」の繰り返し構造を有する化合物ではない。
(イ) (主張イ)について
本願明細書の表2に記載された「例示的な化合物」及び表3に記載された「反応性ポリマー」は、いずれも単に化学構造式が示されているにとどまり、その具体的な製造方法が、原料や一連の反応の工程とともに説明されているものではなく、また、このような化学構造式が示されただけで、実際に新規な化合物を製造できるといった技術常識が、本願出願時に存在したとも認められない。
(ウ) (主張ウ)及び(主張エ)について
上記第2の3(2)ウ(エ)で述べたとおり、「
反応スキームII
」の説明を含めた「調製方法」(摘記(F))の記載に基づいて、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」に該当する具体的な化合物を、どのようにして製造するのか理解することができず、このことは、補正案の請求項1の「構造(Ia)を有する、化合物」についても同様である。
そして、上記第2の3(2)ウで詳述したとおり、本願出願時の技術常識を考慮しても、本願明細書における、化合物の製造についての一般的な記載や「調製方法」の項目の記載、及び、実施例1~10として記載された「構造(Ia)」には該当しない化合物の製造に関する記載に基づいて、本願補正発明の「構造(Ia)を有する、化合物」を、全体にわたって、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、製造することができ、使用することができるとはいえず、このことは、補正案の請求項1の「構造(Ia)を有する、化合物」についても同様である。
(エ) まとめ
したがって、請求人の主張は、いずれも採用できない。
以上のとおり、本願は、明細書の発明の詳細な説明の記載が、当業者が請求項1に係る発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、また、請求項1に係る発明が、明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許請求の範囲の記載が同法同条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、その余の理由及び請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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