sokuhyo

Trademark Appeal Case

ソーラパネルの視認性抑制

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024008490
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

1 手続の経緯

本願は、令和2年8月14日の特許出願であって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和5年10月10日付け:拒絶理由通知書

同年12月12日 :意見書、手続補正書の提出

令和6年 2月19日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

(同月27日 :原査定の謄本の送達)

同年 5月22日 :審判請求書の提出

令和7年 5月 9日付け:拒絶理由通知書

同年 7月 2日 :意見書、手続補正書の提出

なお、令和7年5月9日付けで当審において通知した拒絶理由通知を、以下「当審拒絶理由通知」という。

また、令和7年7月2日付けで請求人が提出した意見書を、以下「意見書」という。

2 本願発明について

(1) 本願発明の認定

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年7月2日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】

透過する光に位相差を与える位相差板と、該位相差板の上方に配置され、特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板と、を含む文字板と、

半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含み、平面視において前記半導体層を含む領域である発電領域に光が入射されることで発電するソーラパネルと、

を有し、

前記偏光板及び前記位相差板を透過して前記ソーラパネルに入射された光は前記ソーラパネルの上面で反射され、当該反射された光は前記位相差板を透過して前記偏光板で吸収され、

前記発電領域における前記上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下である、

ソーラパネル付き時計。」

(2) 本願発明の分説

検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成Xと構成Aから構成Dまでに分説する。また、参考図として、本願の【図4】を元に部材名を記入したものを掲載する。

<本願発明の分説>

A 透過する光に位相差を与える位相差板と、該位相差板の上方に配置され、特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板と、を含む文字板と、

B 半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含み、平面視において前記半導体層を含む領域である発電領域に光が入射されることで発電するソーラパネルと、を有し、

C 前記偏光板及び前記位相差板を透過して前記ソーラパネルに入射された光は前記ソーラパネルの上面で反射され、当該反射された光は前記位相差板を透過して前記偏光板で吸収され、

D 前記発電領域における前記上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下である、

X ソーラパネル付き時計。

<参考図>

【図4】

77

147

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(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載

本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。

「【技術分野】

【0001】

本発明は、ソーラパネル付き時計に関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献1には、ソーラセルの手前に配設されており、光を透過する円偏光板を有する時計が開示されている。この構成によると、ソーラセル表面で反射してきた光を円偏光板で遮断できる。その結果、ソーラセルが外部から視認されることを抑制できる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】国際公開第2001/037350号

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ここで、

円偏光板は、特定の位相の光を吸収することができるが、当該特定の位相から位相がずれた光を透過することとなる。そのため、ソーラパネルの表面で光散乱が生じることにより光の位相が特定の位相からずれてしまった場合、反射光が外部に漏れ出してしまう場合がある。

その結果、ソーラセルが外部から視認されることとなり、時計のデザイン性が低下してしまうおそれがある。

【0005】

本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、ソーラパネルが外部から視認されてしまうことを抑制することである。

...(中略)...

【0022】

[ソーラパネル付き時計1の概要]

図1は、第1の実施形態に係るソーラパネル付き時計(以下、単に時計という)1を示す平面図である。図1には、時計1の外装ケース(時計ケース)である胴10、胴10内に配置された文字板3、時刻を示す指針である時針15、分針16、秒針17が示されている。また、文字板3には所定の位置に時字18が設けられている。また、胴10の12時側及び6時側の側面からは、バンドを固定するためのバンド固定部11が伸びている。また、胴10の3時側の側面にはユーザが種々の操作を行うためのボタン12、竜頭13が配置されている。なお、図1に示した時計のデザインは一例である。」

「【図1】

109

113

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「【0026】

文字板3の下側には、ソーラパネル2が配置されている。ソーラパネル2は、文字板3を透過して入射される光により発電する。そのため、文字板3はある程度光を透過する材質で形成される。図1に示すように、第1の実施形態においては、外形が略円形のソーラパネル2を文字板3の下側に配置した例を示す。

...(中略)...

【0042】

[文字板3]

次に、図4を参照して、文字板3の構成について説明する。文字板3は、位相差板31と、位相差板31上に設けられる偏光板32とを含む。」

「【図4】

79

125

0001430647000003.jpg

「【0043】

位相差板31は、入射光に位相差を与える機能を備える板である。第1の実施形態においては、位相差板31として、位相差板31に対して直交する方向から入射された入射光にπ/2(λ/4)の位相差を与える機能を備える板を採用する。

【0044】

偏光板32は、特定方向に偏光した光だけを透過させる直線偏光板である。第1の実施形態においては、偏光板32が、進行方向に対して直交する第1の軸方向に振動する直線偏光のみを透過させ、進行方向及び第1の軸方向に対して直交する第2の軸方向に振動する直線偏光を吸収する例について説明する。

【0045】

位相差板31と偏光板32とは、互いに重ねて設けられることにより、いわゆる円偏光板として機能している。

...(中略)...

【0048】

[発電領域に入射される入射光]

ここで、図4を参照して、文字板3を透過して、ソーラパネル2の発電領域に入射される入射光L1ついて説明する。なお、第1の実施形態においては、ソーラパネル2のうち、分割周辺領域P及び分割領域D以外の領域が、発電に寄与する発電領域であるとする。なお、図4においては、光の進行方向を矢印で示している。

【0049】

まず、入射光L1は、偏光板32の上面に入射される。偏光板32へ入射された入射光L1のうち第2の軸方向に振動する直線偏光は、偏光板32において吸収される。一方、偏光板32に入射された入射光L1のうち第1の軸方向に振動する直線偏光は、偏光板32を透過する。偏光板32を透過した第1の軸方向に振動する直線偏光L11は、位相差板31の上面に入射される。

【0050】

位相差板31の上面に入射された直線偏光L11は、位相差板31を透過すると共に、π/2(λ/4)の位相差が与えられる。これにより、位相差板31を透過した光は、円偏光となる。第1の実施形態においては、位相差板31を透過した光は右回り円偏光であるとする。位相差板31を透過した右回り円偏光L12は、ソーラパネル2へ入射される。

【0051】

右回り円偏光L12は、第2の封止層26、第1の封止層25、及び上部電極層24を透過して、半導体層23に入射される。半導体層23に入射された右回り円偏光L12の一部はソーラパネル2に吸収されて発電に寄与し、他の一部は半導体層23の上面で反射される。半導体層23で反射された反射光は、左周り円偏光L13となる。

【0052】

半導体層23で反射された左回り円偏光L13は、上部電極層24、第1の封止層25、及び第2の封止層26を透過して、位相差板31の下面に入射される。位相差板31へ入射された左回り円偏光L13は、位相差板31を透過すると共に、π/2(λ/4)の位相差が与えられて、第2の軸方向に振動する直線偏光L14となる。

【0053】

さらに、位相差板31を透過した直線偏光L14は、偏光板32の下面に入射される。偏光板32は第2の軸方向に振動する直線偏光を吸収するため、位相差板31を透過して偏光板32の下面に入射された直線偏光L14は、偏光板32に吸収される。すなわち、ソーラパネル2で反射された光は、文字板3の外部へ漏れ出さない。そのため、ユーザは、ソーラパネル2の発電領域を、文字板3を介して黒色として視認することとなる。

【0054】

以上、入射光L1を例に挙げて、文字板3及びソーラパネル2において理想的な入射及び反射が行われた場合を説明した。しかしながら、

実際には、ソーラパネル2の各層の上面は平面ではなく、微小な凹凸を有している、この凹凸により入射光が光散乱を生じる場合がある。光散乱が生じると、光の位相がずれて、所望の位相とならない場合がある。反射光の位相がずれることにより、ソーラパネル2で反射された反射光が円偏光ではなく、楕円偏光となってしまう。これにより、ソーラパネル2で反射された反射光の一部が偏光板32を透過して外部に漏れ出してしまう場合がある。その結果、ソーラパネル2が文字板3を介して外部から透けて見え、デザイン性が低下するという問題が生じ得る。

【0055】

なお、ソーラパネル2において光散乱が生じる原因はいくつか考えられるが、例えば、フィルム基板である基板21上に、塗膜や塗布により各層を形成する構成においては、基板21の上面の表面粗さが各層の上面の表面粗さとなって現れてしまうことが挙げられる。また、従来のソーラパネルにおいて、上部電極層24の上面に形成される封止層として、光散乱材を含有する材料を用いていることが挙げられる。

【0056】

そこで、第1の実施形態においては、

ソーラパネル2の上面のうち発電領域の表面粗さRaを小さくすることにより、光散乱が生じることを抑制する

構成を採用した。

【0057】

具体的には、ソーラパネル2の上面を構成する第2の封止層26の上面の算術平均粗さ(以下、単に表面粗さRaという)を、0.01μm以上であって1μm以下とした。

このような範囲の表面粗さを実現するためには、例えば、第2の封止層26として、光散乱材を含有しない樹脂材料を用いるとよい。なお、第1の封止層25においても同様に、光散乱材を含有しない樹脂材料を用いるとよい。

なお、算術平均粗さとは、表面の凸凹の平均値を基準線として、基準線からの距離の平均値を表すものである。算術平均粗さが小さいほど、凹凸が少なく、滑らかな平面であるといえる。

3 当審拒絶理由通知における拒絶の理由の概要

当審拒絶理由通知における拒絶の理由のうち、本願の請求項1に係る発明に対する理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。

なお、当審拒絶理由通知においては、引用文献5、2のそれぞれを主たる引用文献とした拒絶の理由が示されている。

本願の請求項1に係る発明は、出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献5.特許第4948730号公報(主たる引用文献)

引用文献2.特開2020-101380号公報(主たる引用文献)

引用文献6.特開平11-74548号公報(周知技術を示す文献)

4 引用文献5、2の記載事項及び引用発明の認定

(1) 引用文献5

ア 引用文献5に記載された事項

当審拒絶理由通知における拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特許第4948730号公報(以下「引用文献5」という。)には、次の記載がある。

なお、当合議体により、後記ウの引用発明5の認定に直接用いる記載に下線を付した。

(ア) 2頁18行~4頁31行、【図26(a)】、【図26(b)】

「技術分野

本発明は、ソーラーセルを備えた電子機器、例えば、腕時計、電卓、ラジオ、バッテリー充電器等の電子機器、特に腕時計の表示装置に関するものである。

背景技術

図26を用いて、ソーラーセル305を有する腕時計の構造の従来例について詳しく説明する。図26(a)に腕時計ケース内部を上方より見た正面図、(b)に腕時計ケース内部の概略断面図を示す。」

「【図26(a)】

73

97

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【図26(b)】

73

127

0001430647000005.jpg

「図26に示すように、外部から光が腕時計のソーラー表示板301に入射すると、このソーラー表示板301を光が透過し、ソーラーセル305に到達する。そして、ソーラセル305では、その光エネルギーが電気エネルギーに変換され、モジュール307の内部に存在する二次電池と呼ばれる蓄電可能な電池やコンデンサに充電されると同時に、モジュール307に通電されて、中心軸308に固定された長針310および短針309が動く機構となっている。

...(中略)...

図26(a)に示すように、通常ソーラーセル305と中枠306との境界線303は、時計組み立て作業上隙間が必要であり、その隙間がソーラー表示板301を通して黒く見えてしまう。また、中枠306は、通常成形のしやすさ・コスト・衝撃吸収等を考慮し、プラスチック材料が多用されており、様々な外装ケースに対応させなければならないため射出成形により作製されるので、その上面には射出成形によるゲート跡304が存在し、そのゲート跡304もソーラー表示板301を通して見えてしまう。さらに、所定の電圧・電流を確保するため太陽電池がいくつかの素子に分割されている場合は、電池部分と分割線部分の材質の違いから、光の屈折率が異なり、太陽電池素子分割線302もソーラー表示板301を通して見えてしまう。

...(中略)...

ところで、通常、ソーラー表示板301によりさまざまなデザインを施しているが、上記したような境界線303、ゲート跡304ならびに太陽電池素子分割線302が見える現象が存在すると、時計としてのデザイン品質に悪影響を及ぼすことになる。すなわち、この場合には、ソーラー表示板301の一部または全面に、上記したような現象を覆い隠すべく装飾等を行わなければならず、ソーラー表示板301へのデザインに制約が発生し、時計としての高級感が消失してしまう。

上記したようなデザイン品質に悪影響を及ぼす3つの現象のうち、太陽電池素子分割線302は、SiO

2

微粒子を分散したエポキシ樹脂による保護コートをソーラーセル305の全面に行うことでかなり改善できる。また、中枠306の射出成形時に生ずるゲート跡304も、ゲート位置を変更することで改善する可能性がある。しかしながら、ソーラーセル305と中枠306との境界線303、つまり隙間は、時計組み立て作業上回避できず、最も有害であり対策も困難であった。

本発明者等が行った実験では、黒色と青色のソーラー表示板の色を濃くしていったところ、商品として見た場合、濃くしたことによる高級感が出るとともに、上記したようなソーラー表示板を通して見えてしまう不具合は解決する方向である。しかしながら、今度はソーラーセル自身に十分な透過光が到達せず、発電効率が低下し、腕時計の動作が停止した。

また、中枠の色調をソーラーセルの色調に合わせ込んでみたところ、やはり上記したようなソーラー表示板を通して見えてしまう不具合は解決する方向であるが、ソーラーセルと中枠との境界線は見えてしまい解決できない。さらに、青色樹脂を練り込んだ青色のソーラー表示板のソーラーセル側に白い塗料を薄く塗ってみたところ、ソーラーセル305と中枠306との境界線303、および中枠306の射出成形によるゲート跡304、さらに太陽電池素子分割線302が、ソーラー表示板301を通して見える現象は無くなった。しかしながら、白い塗料の拡散作用によりソーラー表示板301の色の深みが無くなり、ソーラー表示板単体では存在した高級感が消失した。すなわち、拡散層を形成するだけでは効果は十分ではない。

また、時計用文字盤などの表示板にあっては、高級感(付加価値)を付与するために、表示板の表面、裏面あるいはこの両者に、種々の着色・模様を付けられることがある。着色は、たとえば表示板となる素材の表面に印刷を施したり、あるいは、顔料を含む樹脂から表示板を製造することにより行われる。また、表示板表面の模様は、金属製の表示板の場合には、エッチングやマット処理などにより形成されている。樹脂製の表示板の場合には、模様が形成された金型内に樹脂を射出成形することで形成される。

しかしながら、上記のような表示板では、模様の深み、立体感等の点で、まだまだ満足できるものではなかった。

本発明の目的は、このような現状に鑑みて、ソーラーセルおよびソーラーセルとモジュールを外装ケースに固定するための中枠を備えた電子機器において、ソーラーセルに必要十分な光を到達させつつ、高級感があり、しかも、装飾性が豊かで、模様の深み、立体感に優れたデザインの幅を広げることが可能なソーラーセルを備えた電子機器の表示装置を提供することにある。」

(イ) 4頁32行~5頁4行

「発明の開示

本発明は、前述したような従来技術における課題および目的を達成するために発明なされたものであって、本発明のソーラセルを備えた電子機器の表示装置は、ソーラーセルを備えた電子機器の表示装置において、

光の入射方向に対しソーラーセルの手前に光を透過する円偏光板を配設した

ことを特徴とする。

直線偏光板と位相差板から構成される円偏光板を、

光の入射方向に対して、直線偏光板、位相差板の順序で積層して配設することにより、ソーラーセル表面で反射してきた光を遮断

でき、ソーラーセルと中枠との境界線および中枠の射出成形によるゲート跡、太陽電池素子分割線が円偏光板を通して見えなくなる。

そのことにより、ソーラー表示板の色調への影響が無くなり、また筋状の模様等により前記3つの不具合を隠す必要も無くなり、ソーラー表示板のデザインの幅が広がる。さらに、色の濃いソーラー表示板を用いることが可能となり、商品として見た目に高級感がでてくる。直線偏光板に直接、印刷等により数字等のマーキングを行うことにより、直線偏光板自身にソーラー表示板としての機能を付与することもできる。

また、本発明では、このような円偏光板の表面に、模様を有する樹脂基板、模様を有する無機基板、装飾用薄膜部材のいずれか、またはその組み合わせによって構成されるソーラ表示板を有することを特徴とする。

従って、装飾性が豊かで、模様の深み、立体感に優れ、また、2種以上の模様あるいは2以上の素材を組合せることで、今までにはない美感の表示板を製造でき、デザインバリエーションの拡大が図られる。

このように構成することにより、必要十分なソーラーセルの発電効率を確保しつつ、高級感を出し、なおかつデザインの幅を広げることが可能なソーラーセルを備えた電子機器の表示装置を提供することができる。」

(ウ) 5頁5~21行、【図27】

「発明を実施するための最良の形態

以下、本発明による実施例を以下に説明する。

まず、円偏光板の作用について図27から図29を用いて詳しく説明する。

円偏光板は、通常フィルム材よりなる直線偏光板111とフィルム材よりなる1/4λ板112を粘着層により貼り合せて作製する。

...(中略)...

直線偏光板

111には吸収型または反射型が存在し、

吸収軸または反射軸と透過軸が直交して存在し、

図27に示すように、

あらゆる方向に振動する自然光が

、直線偏光板111に

入射すると、前記透過軸と同じ振動方向の光のみが透過する

。吸収型は、直線偏光板111に入射した光が偏光板内部で吸収される。また反射型は、直線偏光板111に入射した光が偏光板表面で反射される作用を有する。

本出願の実施例には直線偏光板および位相差板として、特別な説明をしない限り、吸収型直線偏光板および1/4λ板を用いて説明する。」

「【図27】

119

147

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(エ) 5頁22~47行、【図28】~【図29】

「一方向に偏光された透過光を位相差板の遅延軸に対して45°の角度で入射する。この場合、位相差板は

1/4λ板

112を意味し、図28に示すように45°で

入射した光を

いま、便宜上

x方向とy方向

に分け、両者の最大振幅を1

として考える。

横軸は角度、縦軸は振幅を示し、波長と位相の関係は、1波長が360°(λ)となる。位相差板の

遅延軸がy方向とすると、

位相差板が存在することにより、位相差板を

通過した光は、y方向のみ1/4λ位相が遅れる

そこで、1/4λ板112を通過して3/4波長進んだ場合を考えてみると、x方向は遅延せず、y方向は、一点鎖線で示した波形よりも実線で示したように、1/4λ遅れるので、図28および図29の図中A(-1,0)点となる。また、さらに1/4λ進むと、同様に考えて、図28および図29の図中B(0,1)点となる。」

「【図28】

118

105

0001430647000007.jpg

【図29】

82

92

0001430647000008.jpg

「そして、図29に示すように、さらに時間が経過すると、同様に考えてC(1,0)点→D(0,-1)点と進むので、1/4λ板112を通過した光は、図27および図29に示すように直線偏光から円偏光に変換される。

このように円偏光した光は、図27に示すように、中枠113およびソーラーセル114の表面で反射し、今度は進行方向に対して逆回転となり、再度1/4λ板112に入射する。前述と同様にして考えると、行きの1/4λ板112に入射した時と垂直方向の振動面を有する光に変換され、その光は、直線偏光板111の透過軸と垂直となるので、直線偏光板111を通過できず、その結果反射光は遮断される。

このような直線偏光板111と1/4板112を組み合わせて構成したものを円偏光板という。

この場合、一般的に、屈折率の異なる境界面が存在すると、一つの境界面につき数%程度入射光が反射することが知られており、空気とガラスの場合は、約4%であるので、境界面の数は極力減らした方がよい。従って、直線偏光板111と1/4板112との間は、密着状態で積層するか、粘着剤、接着剤で貼合するのが好ましい。

図27では直線偏光板111、1/4λ板112および中枠113を四角形とし、ソーラーセル114を円形としたが、これ以外にも、デザインに応じた種々の形状とできる。」

(オ) 5頁48行~6頁4行、【図1】

「(実施例1)

円偏光機能の説明はここで終わり、以下に図1を用いて第1の実施例について詳細に説明する。

図1に示すように、

ソーラーセルを有する腕時計

では、

ソーラーセル13が、モジュール14と電気的に接続されており、中心軸15に固定された長針17と短針16とを備えている。

これらの

針16、17とソーラーセル13との間に、直線偏光板11および1/4λ板12から構成される円偏光板Aが配設されている。

「【図1】

54

118

0001430647000009.jpg

(カ) 6頁5~17行

「このように構成することにより、ソーラーセル13の太陽電池素子分割線が、直線偏光板11と1/4λ板12から構成される円偏光板を通して見えなくなる。また、反射光は無くなるので、直線偏光板11表面の色が濃くなり、商品として見た場合に高級感がでてきた。

本実施例では、

直線偏光板11に直接、印刷により数字等のマーキングを行い、ソーラー表示板としての機能を付与した。

また、直線偏光板11と1/4λ板12から構成される円偏光板Aは、時計組み立て作業上、図示していない外装ケースに平面方向を位置決めされていることが望ましい。以下の実施例では、効果には影響を与えないので、特別断らない限り、長針および短針の記載は省略する。

なお、以下の実施例の場合も同様であるが、図面では、

構成部材を

説明の便宜上離間した状態で示しているが、実際の組み込みには、

密着状態で、例えば、適宜、粘着剤、接着剤などで粘着、接着、溶着した状態で実施される

ものである。」

イ 引用文献5の図1から読み取れる事項

引用文献5の図1から、「ソーラーセル13」は「モジュール14」と一体化されていることが看て取れるから、以下の事項(以下「引用文献5図1認定事項」という。)が読み取れる。

<引用文献5図1認定事項>

「ソーラーセル13は、モジュール14と一体化された構成であること。」

ウ 引用発明5の認定

前記イで認定した事項と前記アに摘記した引用文献5の記載事項を総合すると、引用文献5には、実施例1(【図1】)に係る次の発明(以下「引用発明5」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。

<引用発明5>

「ソーラーセル13と、

モジュール14と、

長針17と短針16と、

円偏光板Aを備え、(摘記事項(オ))

ソーラーセル13は、モジュール14と一体化された構成であり、(引用文献5図1認定事項)

ソーラーセル13が、モジュール14と電気的に接続されており、中心軸15に固定された長針17と短針16とを備え、(摘記事項(オ))

針16、17とソーラーセル13との間に、直線偏光板11および1/4λ板12から構成される円偏光板Aが配設され、(摘記事項(オ))

ここで、直線偏光板は、吸収軸または反射軸と透過軸が直交して存在し、あらゆる方向に振動する自然光が入射すると、前記透過軸と同じ振動方向の光のみが透過するものであり、(摘記事項(ウ))

1/4λ板は、入射した光をx方向とy方向として考えると、遅延軸がy方向とすると、通過した光は、y方向のみ1/4λ位相が遅れるものであり、(摘記事項(エ))

光の入射方向に対しソーラーセルの手前に光を透過する円偏光板を配設したことで、光の入射方向に対して、直線偏光板、位相差板の順序で積層して配設することにより、ソーラーセル表面で反射してきた光を遮断するものであり、(摘記事項(イ))

直線偏光板11に直接、印刷により数字等のマーキングを行い、ソーラー表示板としての機能を付与し、(摘記事項(カ))

構成部材を密着状態で、例えば、適宜、粘着剤、接着剤などで粘着、接着、溶着した状態で実施される、(摘記事項(カ))

ソーラーセルを有する腕時計。(摘記事項(オ))」

(2) 引用文献2

ア 引用文献2に記載された事項

当審拒絶理由通知における拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2020-101380号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。

なお、当合議体により、後記ウの引用発明2の認定に直接用いる記載に下線を付した。

(ア) 【0001】~【0006】

「【技術分野】

【0001】

本発明は、太陽電池付き発電装置、及び太陽電池付き時計に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、文字板を透過した光が入射されることにより発電する太陽電池を備える腕時計が知られている。また、色の特性として、淡色である白色は光を反射しやすく、濃色である黒色は光を吸収しやすいことが知られている。そのため、文字板は、白色等の淡色の領域においては光を反射しやすい一方で、黒色等の濃色の領域においては光を吸収しやすい。例えば、文字板に設けられる時字を黒色の物質で構成した場合、時字に入射された光の多くは吸収され、太陽電池に到達しない。特許文献1には、文字板上の時字部分に孔を設け、その孔を封止めするように、顔料等を含む光透過材料を設ける構成が開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開2000-131463号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献1の構成においては、時字部分において光が透過するため、太陽電池に入射される光の光量を増加させることができ、発電量を向上できる。しかしながら、時字部分において、太陽電池が透けて見え、審美性が低下してしまうおそれがある。一方で、太陽電池が透けて見えないよう、光透過材料に含まれる顔料の割合を増加させると、審美性は向上するが、時字部分において反射される光の光量が増加し、太陽電池に入射される光の光量が減少してしまう。

【0005】

また、特許文献1に示すような腕時計に用いる太陽電池においては、可視光のうち青色及び緑色の光成分を吸収しやすく、赤色の光成分を吸収しにくい性質を有することが知られている。そのため、文字板を透過して太陽電池に入射された赤色の光成分は、太陽電池の発電に寄与されることなく、太陽電池の表面で反射される。このように、赤色の光成分が太陽電池で反射されることにより、文字板の透過領域から赤味を帯びた色の光が漏れ出し、審美性が低下するおそれがある。

【0006】

本発明は上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、太陽電池の発電効率の向上を図ると共に、審美性が低下することを抑制することにある。」

(イ) 【0021】~【0023】、【図1】

「【0021】

図1は、第1の実施形態に係る腕時計の文字板を視認面側から見た平面図である。なお、視認面側とは、ユーザが腕時計1の使用時に視認する側である。また、以下の説明において、視認面側の反対側を裏面側と呼ぶこととする。また、腕時計1が備える各基板、各層等における視認面側の面を視認面又は上面、その反対側の面を裏面又は下面と呼ぶこととする。」

「【図1】

112

102

0001430647000010.jpg

「【0022】

腕時計1は、視認部材である文字板10と、太陽電池30とを含む。図1の二点鎖線は、文字板10の裏面側に配置される太陽電池30の外形及び分割線Dを示している。図1においては図示を省略するが、文字板10上には指針が運針するように配置されるとよい。

【0023】

文字板10の視認面側には、時刻を示す時字50や、ブランド名、製品名等を示すロゴマーク、その他の模様等を表示する表示部60が設けられている。図1においては、時字50としてローマ字のI~XIIが示されており、表示部60として、ブランド名を示す「ABCDEFG」と、黒抜きの三角形と四角形からなるマークが表示されている。」

(ウ) 【0077】~【0083】、【図9】

「【0077】

次に、図9を参照して、本発明の第2の実施形態について説明する。図9は、第2の実施形態に係る

腕時計

の断面の一部を模式的に示す模式断面図である。第2の実施形態の文字板210においては、第1の実施形態で示した吸収層11の代わりに位相差板付き偏光板211を採用した。」

「【図9】

81

109

0001430647000011.jpg

「【0078】

位相差板付き偏光板211は、偏光板211aと、偏光板211aの裏面に貼り付けられる位相差板211bとを含む

偏光板とは、入射光のうち特定方向に偏光した光だけを透過させる板である

位相差板とは、入射光に位相差を与える機能を有する板である

。第2の実施形態においては、位相差板211bとして、π/2(λ/4)の位相差を与える機能を備え基板を採用した。

【0079】

図9に示すように、

文字板210は、位相差板付き偏光板211と、位相差板付き偏光板211の視認面側に設けられる淡色層12を有する

。文字板210のうち、淡色層12が設けられる領域が淡色部Wに対応し、淡色層12が設けられず、位相差板付き偏光板211が露出する領域が濃色部BKに対応する。

【0080】

図9に示すように、

位相差板付き偏光板211に入射された入射光のうち、右回り円偏光のみが透過することとなる

。これは、上述のように、

偏光板211aが入射光の直線偏光の光成分のうち特定方向に偏光した光だけを透過させると共に、位相差板211bが偏光板211aを透過した直線偏光の光成分にπ/2(λ/4)の位相差を与えて、右回りの円偏光に

したためである。なお、直線偏光の光成分のうち特定方向に対して垂直な方向に偏光した光成分は、偏光板211aにおいて吸収される。

【0081】

第1の実施形態と同様に、

位相差板付き偏光板211を透過した右回り円偏光のうち、青色の光成分B及び緑色の光成分Gは太陽電池30に吸収されやすく、太陽電池30の発電に寄与することとなる

。一方で、

位相差板付き偏光板211を透過した右回り円偏光のうち、赤色の光成分Rは、太陽電池30において吸収されにくく、太陽電池30の上面で反射される

【0082】

太陽電池30に入射された右回り円偏光は、太陽電池30の上面で

反射することにより、左回り円偏光となる

。そして、

左回り円偏光となった赤色の光成分Rは、位相差板211bの裏面に入射される

位相差板211bは、入射光にπ/2の位相差を与えるため、入射された左回り円偏光の赤色の光成分Rは特定方向に対して垂直な方向に偏光した直線偏光となる

偏光板211aは、

上述のように

直線偏光の光成分のうち特定方向に偏光した光成分のみを透過するため、特定方向に対して垂直な方向に偏光した直線偏光である赤色の光成分Rを透過しない

。すなわち、

偏光板211aの裏面側から入射された赤色の光成分Rは、偏光板211aにおいて吸収される

。このように、太陽電池30で反射された光は文字板210の外部へ漏れ出さないため、ユーザは、濃色部BKを黒色として認識することとなる。

【0083】

以上説明したように、第2の実施形態においては、第1の実施形態と同様に、太陽電池30の発電効率を向上すると共に、審美性が低下することを抑制することができる。」

イ 引用文献2の図9から読み取れる事項

引用文献2の図9から以下の事項(以下「引用文献2図9認定事項」という。)が読み取れる。

<引用文献2図9認定事項>

「太陽電池30は、文字板210に沿って設けられた板状であること。」

ウ 引用発明2の認定

前記イで認定した事項と前記アに摘記した引用文献2の記載事項を総合すると、引用文献2には、実施例2(【図9】)に係る次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。

<引用発明2>

「文字板210と、(【0079】)

太陽電池30を、備え、(【0081】)

太陽電池30は、文字板210に沿って設けられた板状であり、(引用文献2図9認定事項)

文字板210は、位相差板付き偏光板211と、位相差板付き偏光板211の視認面側に設けられる淡色層12を有し、(【0079】)

位相差板付き偏光板211は、偏光板211aと、偏光板211aの裏面に貼り付けられる位相差板211bとを含み、(【0078】)

ここで、偏光板とは、入射光のうち特定方向に偏光した光だけを透過させる板であり、(【0078】)

位相差板とは、入射光に位相差を与える機能を有する板であり、(【0078】)

偏光板211aが入射光の直線偏光の光成分のうち特定方向に偏光した光だけを透過させると共に、位相差板211bが偏光板211aを透過した直線偏光の光成分にπ/2(λ/4)の位相差を与えて、右回りの円偏光にするため、(【0080】)

位相差板付き偏光板211に入射された入射光のうち、右回り円偏光のみが透過することとなり、(【0080】)

位相差板付き偏光板211を透過した右回り円偏光のうち、青色の光成分B及び緑色の光成分Gは太陽電池30に吸収されやすく、太陽電池30の発電に寄与することとなり、(【0081】)

位相差板付き偏光板211を透過した右回り円偏光のうち、赤色の光成分Rは、太陽電池30において吸収されにくく、太陽電池30の上面で反射され、(【0081】)

反射することにより、左回り円偏光となり、(【0082】)

左回り円偏光となった赤色の光成分Rは、位相差板211bの裏面に入射され、(【0082】)

位相差板211bは、入射光にπ/2の位相差を与えるため、入射された左回り円偏光の赤色の光成分Rは特定方向に対して垂直な方向に偏光した直線偏光となり、(【0082】)

偏光板211aは、直線偏光の光成分のうち特定方向に偏光した光成分のみを透過するため、特定方向に対して垂直な方向に偏光した直線偏光である赤色の光成分Rを透過しないから、(【0082】)

偏光板211aの裏面側から入射された赤色の光成分Rは、偏光板211aにおいて吸収される、(【0082】)

腕時計。(【0077】)」

5 引用文献6~8の記載事項及び周知技術の認定

(1) 引用文献6に記載された事項及び周知技術1の認定

ア 引用文献6に記載された事項

当審拒絶理由通知における拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である前記特開平11-74548号公報(以下「引用文献6」という。)には、次の記載がある。

「【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、太陽電池基板上に電極と非晶質シリコン膜を積層してなる太陽電池とその製造方法に関し、更に詳しくは、この太陽電池を用いた電子機器や、時計に関するものである。

...(中略)...

【0003】太陽電池が効率よく発電するには、太陽電池基板21からの入射光が失われることなくa-Si膜に達して、光電作用を行うことが必要である。しかし、

太陽電池基板21と透明導電膜22の接合面、あるいは透明導電膜22とa-Si膜23の接合面等は光学特性の異なる層の境界面であるから、入射光の一部にこれらの接合面で反射されてa-Si膜23に達せず、発電に寄与しない部分が生じる。接合面が平であると、光の入射角度によっては全反射を起こしやすい。そこで接合面を凹凸の多い面、すなわち粗面にすることが光の利用効率を高めるのに有効である。

接合面を粗面にすることによって、反射されずに接合面を通り抜ける光の分量が多くなるとともに、一旦接合面を通り抜けた光が次の接合面で反射されて外部に放出されそうになっても、再度接合面で反射されて内部に留まる率が高まる。いわゆる光の閉じ込め効果を有することとなる。

...(中略)...

【0008】

【発明の実施の形態】本発明による太陽電池によれば、図1に示す

拡散反射面5を形成するに当たり、太陽電池基板1の透明導電膜側の表面を液体ホーニングして形成してなることを特徴としている。これは、研磨剤を含む水をノズルから加工物に吹き付ける加工で、これにより平坦だった太陽電池基板表面を所望の凹凸のついた粗面にする。

このとき、研磨剤は所定の種類、粒度等のものを選択し、その他の加工条件を選択制御する事により、充分な光閉じこめ効果を奏することが可能となる。

...(中略)...

【0011】

【実施例】以下に、本発明における一実施例を図1を用いて説明する。まず、図1に示す拡散反射面5を形成するに当たり、太陽電池基板1の透明導電膜2側の表面を液体ホーニング法により形成するわけであるが、本実施例においては、太陽電池基板として、ホウケイ酸系のガラス基板を用いた。また、

研磨剤としてアルミナA#2000(最大粒子径19μm)を使用し、加工条件は、エアー圧を1.2~1.8Kgf/cm2、ポンプ圧を0.8~1.0Kgf/cm2、投射角を90度、処理回数を1~5回とした。

「【図1】

27

95

0001430647000012.jpg

「【0012】

その結果の一例を図3に示す。縦軸に平均粗さ(Ra)をとり

、横軸に吐出圧であるところのポンプ圧及びエアー圧との関係を図示した。この図から明らかなように、処理回数と吐出圧力を制御する事により、従来と比較して有効な光閉じこめ効果を有する拡散反射面5を形成することができた。なお、研磨剤として、アルミナを用いたが、所望の光閉じ込め効果を有するもので有ればこれに限定されるものではないことはいうまでもない。」

「【図3】

78

111

0001430647000013.jpg

「【0013】次いで、

粗面化した太陽電池基板

上に形成された拡散反射面5の上にスパッタリング法により、透明導電膜2であるところの酸化インジウム・錫(ITO)膜を形成する。さらに、その上にCVD法によってa-Si膜3を形成し、金属電極膜4を真空蒸着やスパッタリングで形成する。この後、必要に応じて保護膜の塗布等を行って太陽電池を完成させる。

【0014】以上、本発明による太陽電池を評価するに当たり、発電特性のうち、変換効率を測定したところ絶対値で12~13%(ITO上)および、18~20%(SnO2上)の特性の改善がみられた。このことから、本発明による太陽電池によれば、発電特性が従来の太陽電池と比較して、著しい効果が得られることとなる。」

イ 引用文献6の図3から読み取れる事項

引用文献6の図3から、以下の事項が読み取れる。

「平均粗さRaがサブミクロンオーダーとなるよう粗面化する。」

ウ 周知技術1の認定

前記イにて認定した事項と前記アに摘記した引用文献6の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知であったと認められる。(以下「周知技術1」という。)

<周知技術1>

「太陽電池の発電効率の向上のために平均粗さRaがサブミクロンオーダーとなるよう粗面化すること。」

(2) 引用文献7、8に記載された事項及び周知技術2の認定

ア 引用文献7に記載された事項

当審拒絶理由通知において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2017-26454号公報(以下「引用文献7」という。)には、次の記載がある。

「【0019】

[時計1の概略構成]

図1は、

時計1

を時計表面側から見た正面図であり、図2は、時計1の概略を示す断面図である。

時計1は、図1および図2に示すように、外装ケース30と、カバーガラス33と、裏蓋34とを備えている。外装ケース30は、金属で形成された円筒状のケース31に、セラミックで形成されたベゼル32が嵌合されて構成されている。このベゼル32の内周側に、プラスチックで形成されたリング状のダイヤルリング35を介して、

円盤状の文字板11が配置されている。

外装ケース30の側面には、Aボタン41と、Bボタン42と、リューズ43とが設けられている。」

「【図1】

118

93

0001430647000014.jpg

【図2】

53

108

0001430647000015.jpg

「【0022】

文字板11は、外装ケース30の内側で時刻を表示する円形の板材であり、ポリカーボネートなどの光透過性の材料で形成され、カバーガラス33との間に各指針を備え、ダイヤルリング35の内側に配置されている。

文字板11と、駆動機構140が取り付けられている地板125との間には、光発電を行うソーラーパネル300が備えられている。

ソーラーパネル300の詳細な構成については後述する。

...(中略)...

【0036】

[ソーラーパネル本体300Aの構成]

ソーラーパネル本体300Aの外周径は、ダイヤルリング35の内周径と、ほぼ同じ大きさで形成され、ソーラーパネル本体300Aの外周縁は、平面視においてダイヤルリング35の内周縁とほぼ一致している。

ソーラーパネル本体300Aは、外周に沿って設けられた複数の接続部331~337および電極引出部338と、それ以外の部分である発電部320とにより構成されている。

発電部320は、8個のソーラーセル321~328によって構成されている。ソーラーセル321~328は、基材310の表面上に、下部電極層、半導体層、絶縁層、上部電極層、透光性の封止樹脂層などを積層することによって構成されている。

ソーラーセル321~328は、アモルファスシリコン系のソーラーセルである。

...(後略)...

イ 引用文献8に記載された事項

当審拒絶理由通知において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開2018-54598号公報(以下「引用文献8」という。)には、次の記載がある。

「【0029】

以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。

図1は、実施形態の

時計

の外観図である。

図1に示すように、

時計1は、アナログ式電子時計であって、時計ケース2内に、文字板ユニット20を有するムーブメント10を備えている。

時計ケース2は、ケース本体3、ケース裏蓋(不図示)およびガラス4により形成されている。時計1は、例えばBluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)規格や、Wi-Fi(Wireless Fidelity)規格の通信方式を用いて、時計外部の機器(例えばスマートフォン等)との間で通信可能となっている。」

「【0041】

以下、文字板ユニット20の具体的な構成について説明する。

文字板ユニット20は、外部から光を受けて発電可能なソーラーパネル40と、ソーラーパネル40の受光面41(図2参照)に対向して配置された文字板50と、を備えている。

文字板50は、ソーラーパネル40の受光面側に配置されている。文字板50は、円板状に形成された本体部51と、本体部51の文字板側に配置された上述した複数の目盛り23、文字列24、第1リング部材25、第2リング部材28、複数の小目盛り29、および複数の記号体31~35と、を有する。以下の説明では、文字列24、第1リング部材25、第2リング部材28、小目盛り29、および複数の記号体31~35をまとめて「遮光部」と称する。

...(中略)...

【0043】

図2は、実施形態のソーラーパネルを文字板側から見た平面図である。なお、図2では、ソーラーパネル40の受光面41上に、目盛り23、遮光部および副指針を投影して2点鎖線で示している。

図2に示すように、ソーラーパネル40は、受光面41を文字板側に向けた状態で配置されている。ソーラーパネル40は、文字板50(図1参照)と略同径の円板状に形成されている。

ソーラーパネル40は、太陽電池からなる直列接続された複数(本実施形態では6個)のセル42A~42Fと、セル42A~42Fを互いに電気的に接続する複数(本実施形態では5個)の接続部43と、を有する。

「【図2】

110

115

0001430647000016.jpg

「【0050】

図3は、図2のIII-III線における断面図である。

図2および図3に示すように、

各セル42A~42Fは、反射電極層44と、光電変換層45と、上部電極層46と、がこの順に基材47上に積層されることにより形成されている。

基材47は、例えばポリエチレンナフタレートやポリイミド等の樹脂フィルムにより形成されている。反射電極層44は、例えばアルミニウムや銀、チタン等の金属材料により形成されている。

光電変換層45は、n型アモルファスシリコン層45aと、i型アモルファスシリコン層45bと、p型アモルファスシリコン層45cと、がこの順に反射電極層44上に積層されることにより形成されている。

上部電極層46は、例えばITO等により形成された透明導電膜である。」

「【図3】

59

124

0001430647000017.jpg

ウ 周知技術2の認定

前記アに摘記した引用文献7の記載事項と前記イに摘記した引用文献8の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって周知であったと認められる。(以下「周知技術2」という。)

<周知技術2>

「アナログ時計に設けるソーラーパネルとして、半導体層を含む複数の層が積層されてなるソーラーパネルを用いること。」

6 引用文献5を主たる引用文献とする場合の検討

(1) 本願発明と引用発明5の対比

ア 対比分析

本願発明と引用発明5を対比する。

(ア) 構成Xの観点(ソーラパネル付き時計)

a 構成Xは、「ソーラパネル付き時計」の発明であることを特定するものである。

b 引用発明5の「ソーラーセル13」は、「モジュール14と一体化された構成であり」、「モジュール14と電気的に接続されており、中心軸15に固定された長針17と短針16とを備え[る]」ものであることを踏まえると、「ソーラーセル13」は、ソーラパネルであるといえる。

c そうすると、「ソーラパネル付き時計」の発明である本願発明と、「ソーラーセルを有する腕時計」の発明である引用発明5は、「ソーラパネル付き時計」の発明である点において一致する。

(イ) 構成Aの観点(文字板)

a 構成Aは、「透過する光に位相差を与える位相差板と、該位相差板の上方に配置され、特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板と、を含む文字板」を備えることである。

b 引用発明5は「1/4λ板12」を有し、「1/4λ板は、入射した光をx方向とy方向として考えると、遅延軸がy方向とすると、通過した光は、y方向のみ1/4λ位相が遅れるものであ」るから、引用発明5の「通過した光」の「x方向とy方向」において、「y方向のみ1/4λ位相が遅れる」「1/4λ板12」は、本願発明の「透過する光に位相差を与える位相差板」に相当する。

c 引用発明5は「直線偏光板11」を有し、「直線偏光板は、吸収軸または反射軸と透過軸が直交して存在し、あらゆる方向に振動する自然光が入射すると、前記透過軸と同じ振動方向の光のみが透過するものであ」るから、引用発明5の「透過軸と同じ振動方向の光のみが透過する」「直線偏光板11」は、本願発明の「特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板」に相当する。

d 引用発明5では、「光の入射方向に対して、直線偏光板、位相差板の順序で積層し」ているから、直線偏光板は位相差板の上方に配置されていることは明らかである。

e 引用発明5では、「直線偏光板11に直接、印刷により数字等のマーキングを行い、ソーラー表示板としての機能を付与」しているから、「積層」した「直線偏光板」と「位相差板」は、本願発明の「文字板」に相当するといえる。

f そうすると、引用発明5の「光の入射方向に対して、直線偏光板、位相差板の順序で積層し」、「直線偏光板11に直接、印刷により数字等のマーキングを行い、ソーラー表示板としての機能を付与」したものは、本願発明の「位相差板と、該位相差板の上方に配置され」た「偏光板と、を含む文字板」に相当する。

g 前記b~fの検討から、本願発明と引用発明5は、構成Aの観点において、以下の点で一致する。

「透過する光に位相差を与える位相差板と、該位相差板の上方に配置され、特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板と、を含む文字板」を備える点。

(ウ) 構成Bの観点(ソーラパネル)

a 構成Bは、「半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含み、平面視において前記半導体層を含む領域である発電領域に光が入射されることで発電するソーラパネル」を備えることである。

b 引用発明5の「ソーラーセル13」が発電領域を有し、当該発電領域に光が入射されることで発電することは明らかであり、また、前記(ア)において検討したとおり、「ソーラーセル13」はソーラパネルであるといえることを踏まえると、本願発明と引用発明5は「平面視において」「発電領域に光が入射されることで発電するソーラパネル」を備える点で一致する。

c 他方、引用発明5では、「ソーラーセル13」の具体的構成が不明であり、半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含むものであるのか不明である。

d 前記b、cの検討から、本願発明と引用発明5の構成Bの観点における一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)のとおりである。

(a) 構成Bの観点における一致点

「平面視において発電領域に光が入射されることで発電するソーラパネル」を備える点。

(b) 構成Bの観点における相違点(以下「相違点1」という。)

<相違点1>

「ソーラパネル」の具体的構成について、

本願発明においては、「半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含」むものであるのに対して、

引用発明5においては、「ソーラーセル13」の具体的構成が不明であり、半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含むものであるのか不明である点。

(エ) 構成Cの観点(光の反射と吸収)

a 構成Cは、「前記偏光板及び前記位相差板を透過して前記ソーラパネルに入射された光は前記ソーラパネルの上面で反射され、当該反射された光は前記位相差板を透過して前記偏光板で吸収され」ることである。

b (a) 引用発明5は、「光の入射方向に対しソーラーセルの手前に光を透過する円偏光板を配設したことで、光の入射方向に対して、直線偏光板、位相差板の順序で積層して配設することにより、ソーラーセル表面で反射してきた光を遮断するものであ」るから、入射した光は直線偏光板、位相差板の順序で透過した後にソーラーセル表面で反射し、反射された光は位相差板を透過して直線偏光板で遮断(吸収)される。

(b) ここで、前記(ア)において検討したとおり、引用発明5の「ソーラーセル13」はソーラパネルであるといえることを踏まえると、引用発明5の「ソーラーセル表面で反射」することは本願発明の「ソーラパネルの上面で反射」することに相当する。

c 前記bの検討から、本願発明と引用発明5は、構成Cの観点において、以下の点で一致する。

「前記偏光板及び前記位相差板を透過して前記ソーラパネルに入射された光は前記ソーラパネルの上面で反射され、当該反射された光は前記位相差板を透過して前記偏光板で吸収され」る点。

(オ) 構成Dの観点(発電領域上面の算術平均粗さ)

a 構成Dは、「ソーラパネル」について、「前記発電領域における前記上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下である」ことである。

b 引用発明5の「ソーラーセル13」の発電領域における上面の具体的な算術平均粗さは不明であり、上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下であるか不明である。

c 前記bの検討から、本願発明と引用発明5の構成Dの観点における相違点(以下「相違点2」という。)は、以下のとおりである。

<相違点2>

本願発明においては、「ソーラパネル」の「発電領域における」「上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下である」のに対して、

引用発明5においては、「ソーラーセル13」の発電領域における上面の具体的な算術平均粗さは不明であり、上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下であるか不明である点。

イ 一致点及び相違点

前記アの対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明5は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。

(ア) 一致点

「透過する光に位相差を与える位相差板と、該位相差板の上方に配置され、特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板と、を含む文字板と、

平面視において発電領域に光が入射されることで発電するソーラパネルと、

を有し、

前記偏光板及び前記位相差板を透過して前記ソーラパネルに入射された光は前記ソーラパネルの上面で反射され、当該反射された光は前記位相差板を透過して前記偏光板で吸収される、

ソーラパネル付き時計」

である点。

(イ) 相違点

a 相違点1

「ソーラパネル」の具体的構成について、

本願発明においては、「半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含」むものであるのに対して、

引用発明5においては、「ソーラーセル13」の具体的構成が不明であり、半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含むものであるのか不明である点。

b 相違点2

本願発明においては、「ソーラパネル」の「発電領域における」「上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下である」のに対して、

引用発明5においては、「ソーラーセル13」の発電領域における上面の具体的な算術平均粗さは不明であり、上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下であるか不明である点。

(2) 判断

ア 相違点1について

「アナログ時計に設けるソーラーパネルとして、半導体層を含む複数の層が積層されてなるソーラーパネルを用いること」は周知技術であるところ(前記5(2)ウの「周知技術2」を参照。)、引用発明5において、当該周知技術を適用し、「ソーラーセル13」を半導体層を含む複数の層が積層されてなるソーラーパネルとすることにより、前記相違点1に係る本願発明の構成を備えることは、当業者にとって容易になし得たことである。

イ 相違点2について

(ア) 幾何光学・波動光学の観点

a 引用発明5は「光の入射方向に対しソーラーセルの手前に光を透過する円偏光板を配設した」ものであるところ、上記「円偏光板」は、「光の入射方向に対して、直線偏光板、位相差板の順序で積層して配設」されているため、「ソーラーセル表面で反射してきた光を遮断する」ことができるものであり、「ソーラーセル表面」にはソーラーセルの発電領域の上面が含まれる。

b ここで、引用発明5において、「ソーラーセル表面で反射してきた光を遮断する」ため、当該表面の状態が反射光に対してどのような影響を与えるかを検討し評価をすることは、当業者にとって当然考慮すべき事項である。

そして、その際、「ソーラーセル表面」の状態を光の波長と比較して、幾何光学的に検討すべきか、それとも波動光学的に検討すべきかを考えた上で検討すべきことも、また、当然のことにすぎない。

c 幾何光学的な検討

まず、幾何光学的に検討すると、引用発明5のソーラーセル13の表面に可視光の波長よりも十分大きな凹凸が存在した場合、外部から入射した可視光について、当該凹凸面で幾何光学的な散乱(乱反射)が生じてしまい、乱反射した光は非偏光となってしまって、円偏光板を通過すると直線偏光板11において吸収されずに反射光が漏れ出てしまうことは、自明のことである。

そのような不都合を回避すべく、ソーラーセル13の表面においてできるかぎり鏡面反射となるように、ソーラーセル13の表面の算術平均粗さを可視光の波長(0.4~0.8μm程度)以下とすることは、当然の配慮事項にすぎない。

d 波動光学的な検討

また、光の散乱現象を波動光学に基づいて解析した場合、散乱体とその周囲の境界面に係る境界条件を設定して電磁波動方程式を解く境界値問題に帰着することになるところ、ソーラーセル13の表面の粗さが光の波長よりも十分小さいと、光にとっては媒質の不均一性がない状態に近づき、境界値問題としての散乱を考慮する必要がなくなることは技術常識である。

したがって、散乱を抑制するために許容する表面の算術平均粗さの下限を、可視光の波長のサブミクロンオーダーよりも1桁小さい0.01μm~0.09μm程度とすることは、当業者にとっては適宜決定し得る程度の事項にすぎない。

e (ア)の検討のまとめ

前記a~dの検討から、引用発明5の、発電領域の上面を含むソーラーセル13表面において、算術平均粗さを可視光の波長(0.4~0.8μm程度)以下として乱反射による不都合を回避し、算術平均粗さの下限を、散乱を抑制するために許容する表面の可視光の波長のサブミクロンオーダーよりも1桁小さい0.01μm~0.09μm程度とすることにより、前記相違点2に係る本願発明の構成を備えることは、当業者にとって容易に想到し得た事項である。

(イ) 発電効率の観点

a 「太陽電池の発電効率の向上のために平均粗さRaがサブミクロンオーダーとなるよう粗面化すること」は、当業者にとって周知技術である(前記5(1)ウで認定した「周知技術1」を参照。)。

b 引用発明5は、「ソーラーセル13」の発電で駆動する「腕時計」であるから、ソーラーセル13の発電効率を向上させることは、当業者が当然考慮すべき課題であるところ、かかる課題を解決するために引用発明5のソーラーセル13に周知技術1を適用し、平均粗さRaがサブミクロンオーダーとなるよう粗面化することは、当業者にとって容易である。

c この場合、光が入射するソーラーセル13の発電領域の上面を粗面化の対象とするのが自然であるところ、ソーラーセル13の発電領域の上面の平均粗さRaがサブミクロンオーダーであることは、相違点2の「ソーラパネル」の「発電領域における」「上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下である」ことに含まれる。

d 前記a~cの検討から、引用発明5のソーラーセル13に周知技術1を適用し、ソーラーセル13の発電領域の上面の平均粗さRaがサブミクロンオーダーとなるよう粗面化することで、前記相違点2に係る本願発明の構成を備えることは、当業者にとって容易に想到し得た事項である。

ウ 総合評価

前記ア、イにおいて検討したとおり、引用発明5において、前記相違点1、2に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明5及び周知技術2、又は、引用発明5及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

そして、相違点1、2を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

したがって、本願発明は、引用発明5及び周知技術2、又は、引用発明5及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 請求人の主張について

ア 請求人の引用発明5に関する主張内容

請求人は意見書において、以下(ア)~(ウ)を主張する。

(ア) 周知技術1は、発電特性を上げるためにソーラパネルの表面を粗くする(凹凸を大きくする)技術に関するものであり、ソーラパネルの表面を粗くすることは、円偏光板から光が漏れ出しにくくすることと相反するものだから、円偏光板からの光の漏れを抑制するという課題を持った当業者が、引用発明5に周知技術1を組み合わせることの動機が無い。

(イ) 幾何光学の観点から算術平均粗さを本願発明の範囲に設定することについて、当業者がどのようなソーラパネルを採用するかを検討する際、まずは発電に適したソーラパネルを採用することを検討するのが通常だから、発電に適したソーラパネルを採用するにあたり、当業者はいかに算術平均粗さを大きくするかを検討するのであって、算術平均粗さを小さくするという発想には至らないから、引用発明5のソーラパネルの上面の算術平均粗さを0.01μm~1μmにすることは当然の配慮事項とはいえない。

(ウ) 引用発明5は、目立ちやすい各部の境界が視認されることを抑制することを課題とするものであり、本願発明の、ソーラパネルの発電領域が文字板から透けて、文字板と異なった色味で視認されてしまうことを抑制する課題については開示されていない。

イ 請求人の主張についての検討

(ア) 前記ア(ア)の主張について、前記(2)イ(イ)で検討したとおり、引用発明5はソーラーセル13の発電で駆動する腕時計であり、ソーラーセル13の発電効率の向上は、当業者が当然考慮すべき課題であるから、円偏光板からの光の漏れを抑制するという課題を持った当業者であっても、周知技術1を組み合わせる動機はあるというべきである。

(イ) 前記ア(イ)の主張について、前記(2)イ(ア)で検討したとおり、引用発明5には、ソーラーセル表面で反射してきた光を遮断するという課題があるから、光が遮断できるよう、算術平均粗さを可視光の波長(0.4~0.8μm程度)以下で、下限が0.01μm~0.09μm程度の範囲とすることは、当業者が適宜決定し得る程度の事項である。

(ウ) 前記ア(ウ)の主張について、引用発明5のように、ソーラーセルを有する腕時計において目立ちやすい部位の視認を抑制する課題があるのであれば、たとえ明記がなくても、ソーラーセルの発電領域を含む各部位も目立たないようにすべきことは当然考慮する課題である。

(エ) 以上のとおりであるから、請求人の主張は、前記(2)ウの結論を左右するものではない。

7 引用文献2を主たる引用文献とする場合の検討

(1) 本願発明と引用発明2の対比

ア 対比分析

(ア) 構成Xの観点(ソーラパネル付き時計)

a 構成Xは、「ソーラパネル付き時計」の発明であることを特定するものである。

b 引用発明2の「太陽電池30」は、「文字板210に沿って設けられた板状であ[る]」ところ、「文字板210」と合わせてみれば、太陽光により発電する機能を有するソーラパネルであるといえる。

c そうすると、「ソーラパネル付き時計」の発明である本願発明と、「文字板210に沿って設けられた板状」の「太陽電池30」を備える「腕時計」の発明である引用発明2は、「ソーラパネル付き時計」の発明である点において一致する。

(イ) 構成Aの観点(文字板)

a 構成Aは、「透過する光に位相差を与える位相差板と、該位相差板の上方に配置され、特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板と、を含む文字板」を備えることである。

b 引用発明2において、「文字板210は、位相差板付き偏光板211」を有し、「位相差板付き偏光板211は、偏光板211aと、偏光板211aの裏面に貼り付けられる位相差板211bとを含み」、「偏光板とは、入射光のうち特定方向に偏光した光だけを透過させる板であり」、「位相差板とは、入射光に位相差を与える機能を有する板であ」るから、引用発明2の「位相差板211b」、「偏光板211a」及び「文字板210」は、それぞれ本願発明の「透過する光に位相差を与える位相差板」、「該位相差板の上方に配置され、特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板」及び「文字板」に相当する。

c したがって、本願発明と引用発明2は、構成Aの観点において、以下の点で一致する。

「透過する光に位相差を与える位相差板と、該位相差板の上方に配置され、特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板と、を含む文字板」を備える点。

(ウ) 構成Bの観点(ソーラパネル)

a 構成Bは、「半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含み、平面視において前記半導体層を含む領域である発電領域に光が入射されることで発電するソーラパネル」を備えることである。

b 引用発明2の「太陽電池30」が発電領域を有し、当該発電領域に光が入射されることで発電することは明らかであり、また、前記(ア)において述べたとおり、「太陽電池30」は、「文字板210」と合わせてみれば、太陽光により発電する機能を有するソーラパネルであるといえるから、本願発明と引用発明2は「平面視において」「発電領域に光が入射されることで発電するソーラパネル」を備える点で一致する。

c 引用発明2では、「太陽電池30」の具体的構成が不明であり、半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含むものであるのか不明である。

d 前記b、cの検討から、本願発明と引用発明2の構成Bの観点における一致点及び相違点は、次の(a)及び(b)のとおりである。

(a) 構成Bの観点における一致点

「平面視において発電領域に光が入射されることで発電するソーラパネル」を備える点。

(b) 構成Bの観点における相違点(以下「相違点3」という。)

<相違点3>

「ソーラパネル」の具体的構成について、

本願発明においては、「半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含」むものであるのに対して、

引用発明2においては、「太陽電池30」の具体的構成が不明であり、半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含むものであるのか不明である点。

(エ) 構成Cの観点(光の反射と吸収)

a 構成Cは、「前記偏光板及び前記位相差板を透過して前記ソーラパネルに入射された光は前記ソーラパネルの上面で反射され、当該反射された光は前記位相差板を透過して前記偏光板で吸収され」ることである。

b (a) 引用発明2では、「偏光板211aが入射光の直線偏光の光成分のうち特定方向に偏光した光だけを透過させ」、「位相差板付き偏光板211に入射された入射光のうち、右回り円偏光のみが透過」し、「太陽電池30の上面で反射され」、「位相差板211bの裏面に入射され」、「位相差板211b」により「特定方向に対して垂直な方向に偏光した直線偏光となり」、「偏光板211aにおいて吸収される」。

(b) ここで、前記(ア)において述べたとおり、「太陽電池30」は、「文字板210」と合わせてみれば、太陽光により発電する機能を有するソーラパネルであるといえるから、引用発明2の「太陽電池30の上面で反射」することは本願発明の「ソーラパネルの上面で反射」することに相当する。

c 前記bの検討から、本願発明と引用発明2は、構成Cの観点において、以下の点で一致する。

「前記偏光板及び前記位相差板を透過して前記ソーラパネルに入射された光は前記ソーラパネルの上面で反射され、当該反射された光は前記位相差板を透過して前記偏光板で吸収され」る点。

(オ) 構成Dの観点(発電領域上面の算術平均粗さ)

a 構成Dは、「ソーラパネル」について、「前記発電領域における前記上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下である」ことである。

b 引用発明2の「太陽電池30」の発電領域における上面の具体的な算術平均粗さは不明であり、上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下であるか不明である。

c 前記bの検討から、本願発明と引用発明2の構成Dの観点における相違点(以下「相違点4」という。)は、以下のとおりである。

<相違点4>

本願発明においては、「ソーラパネル」の「発電領域における」「上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下である」のに対して、

引用発明2においては、「太陽電池30」の発電領域における上面の具体的な算術平均粗さは不明であり、上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下であるか不明である点。

イ 一致点及び相違点

前記アの対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明2は、次の(ア)に示す一致点において一致し、後記(イ)に示す相違点において相違すると認められる。

(ア) 一致点

「透過する光に位相差を与える位相差板と、該位相差板の上方に配置され、特定方向に偏光した光成分を透過する偏光板と、を含む文字板と、

平面視において発電領域に光が入射されることで発電するソーラパネルと、を有し、

前記偏光板及び前記位相差板を透過して前記ソーラパネルに入射された光は前記ソーラパネルの上面で反射され、当該反射された光は前記位相差板を透過して前記偏光板で吸収される、

ソーラパネル付き時計」

である点。

(イ) 相違点

a 相違点3

「ソーラパネル」の具体的構成について、

本願発明においては、「半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含」むものであるのに対して、

引用発明2においては、「太陽電池30」の具体的構成が不明であり、半導体層を含む各層が上下方向に積層される積層構造を含むものであるのか不明である点。

b 相違点4

本願発明においては、「ソーラパネル」の「発電領域における」「上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下である」のに対して、

引用発明2においては、「太陽電池30」の発電領域における上面の具体的な算術平均粗さは不明であり、上面の算術平均粗さが0.01μm以上であって1μm以下であるか不明である点。

(2) 判断

ア 相違点3について

相違点3は前記相違点1と同様であり、前記6(2)アでの検討と同様、引用発明2に周知技術2を適用し、「太陽電池30」を半導体層を含む複数の層が積層されてなるソーラーパネルとすることで、前記相違点3に係る本願発明の構成を備えることは、当業者にとって容易になし得たことである。

イ 相違点4について

(ア) 相違点4は前記相違点2と同様であり、前記6(2)イ(ア)での検討と同様、引用発明2の、発電領域の上面を含む太陽電池30の上面において、算術平均粗さを可視光の波長(0.4~0.8μm程度)以下として乱反射による不都合を回避し、算術平均粗さの下限を、散乱を抑制するために許容する表面の可視光の波長のサブミクロンオーダーよりも1桁小さい0.01μm~0.09μm程度とすることにより、前記相違点4に係る本願発明の構成を備えることは、当業者にとって容易に想到し得た事項である。

(イ) また、前記6(2)イ(イ)での検討と同様、引用発明2の太陽電池30に周知技術1を適用し、太陽電池30の発電領域の上面の平均粗さRaがサブミクロンオーダーとなるよう粗面化することで、前記相違点4に係る本願発明の構成を備えることは、当業者にとって容易に想到し得た事項である。

ウ 総合評価

前記ア、イにおいて検討したとおり、引用発明2において、前記相違点3、4に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明2及び周知技術2、又は、引用発明2及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。

そして、相違点3、4を総合的に勘案しても、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。

したがって、本願発明は、引用発明2及び周知技術2、又は、引用発明2及び周知技術1、2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3) 請求人の主張について

ア 請求人の引用発明2に関する主張内容

請求人は意見書において、引用発明2についても引用発明5と同様、ソーラパネルの発電領域の上面の算術平均粗さに関する相違点が認められ、かつ周知技術1を組み合わせる動機が無いこと等が明らかである旨主張するから、引用発明2についても、前記6(3)アで示した引用発明5に係る請求人の主張内容と同様の以下(ア)、(イ)の主張がなされたものとして検討する。

なお、前記6(3)ア(ウ)の主張は、引用発明2についてされた主張ではないため、ここでは検討の対象としない。

(ア) 周知技術1は、発電特性を上げるためにソーラパネルの表面を粗くする(凹凸を大きくする)技術に関するものであり、ソーラパネルの表面を粗くすることは、円偏光板から光が漏れ出しにくくすることと相反するものだから、円偏光板からの光の漏れを抑制するという課題を持った当業者が、引用発明2に周知技術1を組み合わせることの動機が無い。

(イ) 幾何光学の観点から算術平均粗さを本願発明の範囲に設定することについて、当業者がどのようなソーラパネルを採用するかを検討する際、まずは発電に適したソーラパネルを採用することを検討するのが通常だから、発電に適したソーラパネルを採用するにあたり、当業者はいかに算術平均粗さを大きくするかを検討するのであって、算術平均粗さを小さくするという発想には至らないから、引用発明2のソーラパネルの上面の算術平均粗さを0.01μm~1μmにすることは当然の配慮事項とはいえない。

イ 請求人の主張についての検討

(ア) 前記ア(ア)の主張について、引用発明2は太陽電池30の発電で駆動する時計であり、太陽電池30の発電効率の向上は当業者が当然考慮すべき課題であるから、円偏光板からの光の漏れを抑制するという課題を持った当業者であっても、周知技術1を組み合わせる動機はあるというべきである。

(イ) 前記ア(イ)の主張について、引用発明2には、太陽電池30の上面で反射された光を偏光板211aにおいて吸収して審美性が低下することを抑制するという課題があるから、審美性が低下することを抑制するために光を偏光板211aで吸収できるよう、算術平均粗さを可視光の波長(0.4~0.8μm程度)以下で、下限が0.01μm~0.09μm程度の範囲とすることは、当業者が適宜決定し得る程度の事項である。

(ウ) 以上のとおりであるから、請求人の主張は、前記(2)ウの結論を左右するものではない。

8 むすび

以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。

したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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