sokuhyo

Trademark Appeal Case

遮光膜シリカ分布の特許性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024018741
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

第1 事案の概要

1 手続等の経緯

特願2020-158820号(以下「本件出願」という。)は、令和2年 9月23日の出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。

令和6年 2月19日付け:拒絶理由通知

令和6年 6月24日 :意見書・手続補正書の提出

令和6年 8月13日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)

令和6年11月25日 :審判請求書・手続補正書の提出

2 本願発明

本件出願の請求項1~2に係る発明は、令和6年11月25日にした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1~2に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のものである。

「感光性樹脂組成物の光硬化物からなる膜であり、

平均厚みが0.5μm~2.5μmであり、

前記感光性樹脂組成物が、

下記成分(A)~(E):

(A)アルカリ可溶性樹脂、

(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、

(C)光重合開始剤、

(D)遮光剤、

(E)シリカ粒子、

を含有し、かつ、

ガラス基板上に平均膜厚が0.5~2.5μmの範囲にありかつ前記感光性樹脂組成物の硬化物からなる膜を成膜して、該膜の断面に対してSTEM-EDSを用いてエネルギー分散型X線分析法で元素分析を行うことにより下記原子比(X)、(Y)及び(Z):

[原子比(X)]該膜中に存在するC、O及びSi元素の合計量に対する該膜中のSi元素の原子比、

[原子比(Y)]前記ガラス基板と前記膜との界面から厚み200nmまでの間の前記膜のガラス基板近傍の領域中に存在するC、O及びSi元素の合計量に対する該膜のガラス基板近傍の領域中のSi元素の原子比、

[原子比(Z)]前記ガラス基板と接していない側の前記膜の表面から厚み200nmまでの間の前記膜の表面近傍の領域中に存在するC、O及びSi元素の合計量に対する該膜の表面近傍の領域中のSi元素の原子比、

を求めた場合に、前記原子比(Y)の値が前記原子比(X)の値の1.1~10倍の大きさとなり、かつ、前記原子比(Z)の値が前記原子比(X)の値の0.5~2.8倍の大きさとなる

、遮光膜形成用の感光性樹脂組成物であり、

前記成分(E)が平均粒子径が10~180nmのシリカ粒子であり、かつ、

前記成分(D)が平均粒子径が50~180nmのカーボンブラックであること、

を特徴とする遮光膜。」

(当合議体注:以下、上記下線部の原子比(X)、(Y)及び(Z)に係る条件を「本願シリカ分布条件」ということがある。)

3 原査定の拒絶の理由

本願発明に対する原査定の拒絶の理由は、(新規性・進歩性)本願発明は、本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない、あるいは、本願発明は、本 件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、本件出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献1.特開2016-161926号公報

引用文献2.特開2011-39404号公報

引用文献3.国際公開第2012/086610号

第2 当合議体の判断

1 引用文献の記載及び引用発明

(1)引用文献1の記載

原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2016-161926号公報)は、本件出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。

なお、下線は、当合議体が付したものであり、引用発明の認定及び判断等に活用した箇所を示す(以下同様。)。

ア 「【請求項1】

(A)光若しくは熱による硬化性樹脂、及び/又は光若しくは熱による硬化性単量体、(B)分散媒中に黒色遮光性粒子が分散されてなる黒色遮光性粒子含有分散液、並びに(C)透明粒子を分散媒中に分散されてなる透明粒子含有分散液を必須成分とし、(C)成分中の透明粒子の平均二次粒子径D

C

と、(B)成分中の黒色遮光性粒子の平均二次粒子径D

B

との比D

C

/D

B

が0.2~1.0の範囲であり、且つ(C)成分中の透明粒子の質量m

C

と、(B)成分の黒色遮光性粒子の質量m

B

との質量比m

C

/m

B

が0.015~0.20の範囲であり、また、前記透明粒子の屈折率が、前記(A)成分の硬化物の屈折率以下であることを特徴とする遮光膜用黒色樹脂組成物。

...省略...

【請求項3】

前記(B)成分中の黒色遮光性粒子がカーボンブラックであり、また、前記(C)成分中の透明粒子が、分子内に反応性(メタ)アクリロイル基を有するシランカップリング剤により表面処理されたシリカであることを特徴とする請求項1又は2に記載の遮光膜用黒色樹脂組成物。

...省略...

【請求項7】

前記遮光膜用黒色樹脂組成物は、前記(A)成分として光硬化性アルカリ可溶性樹脂及び/又は(E)アルカリ可溶性樹脂を含有することにより、フォトリソグラフィー法用の遮光膜用黒色樹脂組成物として使用されるものであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の遮光膜用黒色樹脂組成物。

【請求項8】

請求項1~7のいずれかに記載の遮光膜用黒色樹脂組成物を透明基板上の片面に塗布又は印刷し、更に硬化させて得られる遮光膜付基板であり、硬化後の遮光膜の膜厚が1~3μmであることを特徴とする遮光膜付基板。

...省略...

【請求項10】

請求項8に記載の遮光膜付基板を有するタッチパネル。」

イ 「【技術分野】

【0001】

本発明は、遮光膜用黒色樹脂組成物、当該組成物を硬化させた遮光膜をガラス等の透明基板上に有した遮光膜付基板、並びに当該遮光膜付基板を構成要素とするLCD等のディスプレイ用カラーフィルター及び表示装置用タッチパネルに関する。

...省略...

【背景技術】

【0002】

タッチパネル外枠には背面の液晶パネル周辺部の光漏れを遮光するために遮光膜(ベゼル)が設けられ、また液晶パネルにはカラーフィルター内にTFT素子を遮光するブラックマトリックスが設けられている。

...省略...」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】

【0010】

本発明は、かかる技術の諸欠点に鑑み、創案されたものであり、その目的とするところは、遮光性が高い黒色の遮光膜であり、かつ反射光をカラーフィルターの彩色(着色)部分並みに低減させることができる遮光膜を形成できる遮光膜用の黒色樹脂組成物及び当該遮光膜を提供することにある。さらに、当該遮光膜形成用の黒色樹脂組成物は、粘度安定性に優れ、また形成されたパターン遮光膜の表面平滑性に優れる。

...省略...

【0016】

本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物によれば、黒色遮光性粒子の分散媒中での平均二次粒子径に対して、一定レベルの平均二次粒子径の透明粒子を、黒色遮光性粒子に対して比較的少量添加することにより、透明粒子を添加しない場合と比較して遮光膜の反射率を低減させることができる。ここで、透明粒子としては、屈折率が黒色遮光性粒子よりも小さい粒子を用いることが有効であり、特にシリカのような無機粒子を使用する場合は、特定の表面処理を行うことにより、有機溶剤中や、光又は熱により硬化する硬化性単量体中で所望の平均二次粒子径を有するように分散させることが有効である。このような遮光膜用黒色樹脂組成物を用いることにより、カラーフィルターやタッチパネル用の遮光膜として、高遮光率で意匠性にも優れた遮光膜を提供することができる。

【発明を実施するための形態】

【0017】

以下に、本発明を詳細に説明する。

本発明の遮光膜用黒色樹脂組成物における(A)成分である光若しくは熱による硬化性樹脂及び/又は光若しくは熱による硬化性単量体としては、光若しくは熱により硬化反応を生じる官能基、即ち(メタ)アクリロイル基、ビニル基などのエチレン性不飽和二重結合、又はエポキシ基、オキセタン基などの環状反応性基を分子内に少なくとも1個以上有する樹脂又は単量体が好ましく用いられる。

...省略...

【0024】

(B)成分中の黒色遮光性粒子としては、その屈折率が1.6を超えるもので、可視光を吸収する黒色顔料が、目的とする薄膜における遮光率及び遮光膜用組成物の保存安定性の観点で主体的に用いられる。本発明に用いられる黒色顔料としては、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックとしては、ランプブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等のいずれのものを用いても良い。その他黒色染料などの遮光性を調製する目的で1種もしくは複数種混合して用いてもよいが、黒色遮光性粒子は全遮光材中の60質量%以上が好ましい。例えば、有機顔料系/染料系の遮光材を多く用いると、遮光率が低下する。

【0025】

これら遮光材を、例えば、高分子分散剤や溶剤などの分散媒と共にビーズミル中で分散し、黒色遮光性粒子を含有する分散液とし、前記(A)成分及び後述の(C)成分と混合することにより本目的の遮光膜用黒色樹脂組成物を調製する。分散液中の黒色遮光性粒子の平均二次粒径D

B

は、60nm~150nmに調製することが好ましく、より好ましくは80nm~120nmに調製する。本発明において、「平均二次粒子径」とは、分散溶媒又は相当の溶媒にて希釈し、動的光散乱法で測定され、キュムラント法により求められる平均粒子径値を言う。例えば、カーボンブラックではPGMEA溶媒中0.1質量%粒子濃度で測定した値である。平均二次粒子径D

B

が60nm未満であると、高遮光率を達成するために黒色遮光性粒子の濃度を高くするのに必要な高分子分散剤の添加が増えるか、また保存時に粘度増加が生じやすい。平均二次粒子径D

B

が150nmを超えると、形成された遮光膜の表面平滑性の好ましくなく、またフォトリソグラフィー法で形成した際のパターンエッジの直線性が損なわれる。

【0026】

因みに、タッチパネル用遮光膜及びカラーフィルター用ブラックマトリックスにおける遮光度(OD=‐log[透過度])はOD4以上が要求され、一方で膜厚は3μm以下、好ましくは2μm以下の薄膜化が要求されている。

...省略...

【0027】

一方で、組成物の全固形分(硬化後に基板上に残存する全成分)中の黒色遮光性粒子の濃度を高くしていくと、透明基板上に形成した遮光膜と透明基板間における反射が増加し、遮光膜上の映り込みや、カラーフィルター着色部との反射率の差異で境界が目立つという課題があった。即ち、後述の(C)成分を含まない、硬化樹脂成分(A)と遮光材成分(B)だけの場合、硬化・形成された遮光膜における遮光膜と透明基板間における反射率は、専ら(A)成分と(B)成分中の黒色遮光性粒子との質量比に専ら依存し、質量比率が一定であれば遮光膜の膜厚を厚くしても反射率の低下は顕著ではなかった。

【0028】

以上のような事実に鑑み、本発明者らは(A)成分の硬化物中に、(A)成分の硬化物の屈折率以下の屈折率を有する透明粒子を共存させることで、組成物の全固形分中の黒色遮光性粒子の濃度を同一にしながら(遮光度を維持しながら)反射率を低減可能なことを見出した。

...省略...

【0030】

...省略...

また、D

C

/D

B

...省略...

0.20を超えると遮光膜の遮光率(OD/μm)が低下する。なお、特に、遮光率(OD/μm)を大きくするために(B)成分を多く用いる場合には、(A)の光若しくは熱により硬化する成分の構成比率が減少することになり、マトリックスの硬化物性が所望のレベルに達しないとか、フォトリソグラフィー法でのパターン形成が十分にできないといった問題が生じやすくなるので、本発明においては、(C)成分中の透明粒子の添加量が少なくても反射率を低減でき非常に有用である。

【0031】

本組成物を硬化した遮光膜として構成される遮光膜付基板において反射低減効果を発現するするメカニズムとして以下が推測される。すなわち、遮光膜は溶剤を含む遮光性樹脂組成物を透明基板上片面に塗布し、乾燥後、硬化させて遮光膜を作成する。

乾燥後の塗膜において、ムラがなく、また表面が平滑である場合、

塗膜内部では低粘性体である(A)成分がマトリックスとなって、弾性体である(B)成分中の黒色遮光性粒子がそれに分散した形態となる。乾燥過程においては、塗膜内では溶剤が揮発するに従い、膜厚方向に体積収縮していくが、分散している粒子間の溶剤が排除されて粒子間距離が縮んでいく。透明基板と塗布された組成物との界面においても同様である。この時の硬化性樹脂及びモノマー成分は弾性体である黒色遮光性粒子に比較すると粘性が高い粘性体であるために分散している粒子間で変形・収縮し、最終的に硬化によって黒色遮光性粒子の位置が固定化される。このような遮光膜付基板において透明基板側から入射した光の一部は、専ら透明基板界面とその近傍の遮光膜内では黒色遮光性粒子

〔カーボンブラックの屈折率は約2で(A)成分の硬化物の屈折率より十分に高い〕により反射及び散乱されて透明基板側に出てくる。

したがって、組成物中の黒色遮光性粒子濃度を高めていくと、この黒色遮光性粒子による反射/散乱が増加していくことになる。一方、透明粒子を共存させると、黒色遮光性粒子と同様な弾性をもった透明粒子は(A)成分に比較して変形することなく黒色遮光性粒子間及び透明基板と黒色遮光性粒子間とに存在すると考える。したがって、黒色遮光性粒子よりも屈折率の低い透明粒子による反射/散乱は少なくなり

、また透明基板界面に存在する透明粒子に入射した光はさらに周辺の黒色遮光性粒子により吸収されていくことになり、この吸収はある程度の膜厚が厚いほうが有効と想定される。」

エ 「【実施例】

...省略...

【0052】

[

平均二次粒子径測定

]

得られた黒色遮光性粒子含有分散液又は透明粒子含有分散液について、動的光散乱法の粒度分布計(大塚電子株式会社製、粒径アナライザーFPAR-1000)により、キュムラント法により求められる平均二次粒子径をそれぞれ測定した。

...省略...

【0059】

[現像特性評価]

遮光膜用黒色樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのガラス基板上に、ポストベーク後の膜厚が1.2μmとなるように塗布し、80°Cで1分間プリベークした。その後、露光ギャップを80μmに調整し乾燥塗膜の上に、ライン/スペース=20μm/20μmのネガ型フォトマスクを被せ、I線照度30mW/cm

2

の超高圧水銀ランプで100mJ/cm

2

の紫外線を照射し感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を0.05%水酸化カリウム水溶液中、23°Cにて1kgf/cm

2

圧シャワー現像を行い、パターンが観察された時間を現像抜け時間(BT秒)とし、さらに20秒の現像を行った後、5kgf/cm

2

圧のスプレー水洗を行い、塗膜の未露光部を除去しガラス基板上に画素パターンを形成し、その後、熱風乾燥機を用いて230°Cにて30分間熱ポストベークした。各実施例、及び比較例における得られた遮光膜の評価項目と方法は以下の通りである。

パターン直線性ならびに塗膜表面の平滑性:ポストベーク後の20μmラインを顕微鏡ならびにSEMで観察し、ギザツキが観測された場合を×、ない場合を○とした。また、粗大粒子によるライン膜厚にばらつきがある場合は、平滑性×と判定した。

【0060】

次に、実施例で用いた樹脂の合成例を示すが、まず、以下の合成例、実施例中で用いる略号について示す。

BPFE:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物。

BPDA:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物

THPA:1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物

TPP:トリフェニルホスフィン

PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート

BDGAC:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート

DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物

〔日本化薬(株)製商品名DPHA〕

HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート

TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート

【0061】

[合成例1]

還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中に、

BPFE78.63g(0.17mol)、アクリル酸24.50g(0.34mol)、TPP0.45g、及びPGMEA114gを仕込み、100~105°Cの加熱下で12hr撹拌し、反応生成物を得た。

次いで、得られた反応生成物にBPDA25.01g(0.085mol)及びTHPA12.93g(0.085mol)を仕込み、120~125°Cの加熱下で6hr撹拌し、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)-1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.8wt%であり、酸価(固形分換算)は103mgKOH/gであり、GPC分析によるMwは2600であった

【0062】

[

樹脂溶液の調製:A成分溶液

]

以下の(A)成分を含有する樹脂溶液A1~A3を調製した。

この樹脂溶液A1~A3をそれぞれ乾燥・硬化させた硬化物の屈折率は、いずれも1.50~1.55であった。

...省略...

【0065】

(3)

樹脂溶液A3(フォトリソグラフィー用):光硬化型樹脂組成物

PGMEA78.7質量部、合成例1で得られた重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)-1 12.3質量部、DPHA 2.41質量部、光重合開始剤OXE-02(BASF製)0.81質量部、ビックケミー・ジャパン(株)製商品名BYK(登録商標)-333の10%BDGAC希釈溶液を1.24質量部、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン〔信越化学工業(株)製商品名KBE-585〕2.95質量部を混合し、樹脂溶液A3を調製した。

【0066】

[

黒色遮光性粒子含有分散液の調製:B成分

]

...省略...

(2)カーボンブラック分散液B2(フォトリソグラフィー用):PGMEA中でカーボンブラック濃度25質量%、分散樹脂〔樹脂溶液(A)-1中の樹脂成分〕8質量%、高分子分散剤2質量%となるようにしてビーズミル中にて分散を行い、カーボンブラック分散液B2とした。

得られた分散液中のカーボンブラック平均二次粒子径は98nmであった。

【0067】

[

透明粒子含有分散液の調製:C成分

]

シリカの屈折率は1.45(文献値)、アルミナの屈折率は1.74(文献値)を用いた。

調製した分散液の特性を表1に示した。

(1)

シリカ分散液C1:日産化学工業(株)製コロイダルシリカをγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランにて表面処理し、この表面処理されたシリカが50質量%濃度になるように高分子分散剤5質量%と共にHDDA中にビーズミルにて分散を行い、シリカ分散液C1とした。

...省略...

【0068】

[遮光膜用黒色樹脂組成物およびその遮光膜の調製ならびに評価]

[実施例1]

...省略...

【0073】

[実施例8及び比較例9~10]

樹脂溶液A3及びカーボンブラック分散液B2としてフォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物を調製し

、同様に粘度測定を行った。

この遮光膜用黒色樹脂組成物を無アルカリガラス上にスピンコートにて塗布し、80°Cにて5分間乾燥、石英マスクを通して紫外線露光100mJ(365nm基準)を行い、0.05%KOH水溶液中23°Cにて40秒間浸漬/浸透し、更に230°Cにて30分ポストベークして遮光膜付ガラス基板を作成した。

結果を表4に示す。

実施例8における遮光膜付基板では、透明粒子を含まない比較例9に比べ、同じカーボンブラック濃度にもかかわらず反射率が低下した。一方、平均二次粒子径がカーボンブラック粒子のそれよりも大きいシリカ粒子を用いた比較例10においては、遮光膜付基板の反射率は低減するものの、硬化膜表面をSEMで観察したところ凝集粒子によるところの硬化膜表面の突起物が観察され、好ましくなく膜厚にばらつきがみられた。さらに20μmラインのエッジ形状に、実施例8及び比較例9では観察されないギザツキが見られた。また遮光膜用黒色樹脂組成物においてはその40°C保管時の粘度が初期値に比較して増粘が見られた。

...省略...

【0076】

【表1】

28

78

0001430844000001.jpg

...省略...

【0079】

【表4】

78

72

0001430844000002.jpg

(2)引用発明1

ア 上記(1)の記載によれば、引用文献1に記載された、実施例8に係る「フォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物」を用いて作成された遮光膜について、次の事実が認められる。

(ア)「フォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物」が、「樹脂溶液A3」、「カーボンブラック分散液B2」及び「透明粒子含有分散液C1」を用いて調製したものであり、「樹脂溶液A3」は【0061】~【0062】及び【0065】(3)に、「カーボンブラック分散液B2」は【0066】(2)に、「透明粒子含有分散液C1」は【0067】(1)に、それぞれ記載された要領で調製したものであること。(【0076】【表1】、【0079】【表4】)

(イ)「カーボンブラック分散液B2」に含まれる「カーボンブラック」及び「シリカ分散液C1」に含まれる「表面処理シリカ」の動的光散乱法の粒度分布計(大塚電子株式会社製、粒径アナライザーFPAR-1000)により、キュムラント法により求められる平均二次粒子径が、それぞれ、106nm及び42nmであること。(【0052】、【0076】【表1】)

(ウ)「遮光性粒子」及び「透明粒子」の固形分に対する粒子濃度が、それぞれ、44.0%及び3.5%であり、「遮光性粒子」及び「透明粒子」が、それぞれ「カーボンブラック」及び「表面処理シリカ」であること。(【0076】【表1】)

(エ)「遮光膜」が、「樹脂溶液A3」及び「カーボンブラック分散液B2」としてフォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物を調製し、この遮光膜用黒色樹脂組成物を無アルカリガラス上にスピンコートにて塗布し、80°Cにて5分間乾燥、石英マスクを通して紫外線露光100mJ(365nm基準)を行い、0.05%KOH水溶液中23°Cにて40秒間浸漬/浸透し、更に230°Cにて30分ポストベークして、ガラス基板上に作成された遮光膜であって、膜厚が1.3μmであること。(【0073】、【0079】【表4】)

イ 上記アで認定した事実を総合すると、引用文献1には、実施例8の「フォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物」を光硬化して得た、次に示す「遮光膜」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

(当合議体注:引用発明1の組成物の原料名の略号は【0060】の化合物名に置き換えたもの、括弧内は上記アに示した事実との関係又は引用文献1における認定根拠箇所を示したもの、また、「(A)成分:」~「(C)成分:」等の用語は、引用発明1の構成の理解し易くするために用いたものである。)

「(A)成分:

9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物78.63g(0.17mol)、アクリル酸24.50g(0.34mol)、トリフェニルホスフィン0.45g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート114gを仕込み、100~105°Cの加熱下で12hr撹拌し、反応生成物を得、次いで、得られた反応生成物に3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物25.01g(0.085mol)及び1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物12.93g(0.085mol)を仕込み、120~125°Cの加熱下で6hr撹拌し、固形分濃度が55.8wt%であり、酸価(固形分換算)が103mgKOH/gであり、GPC分析によるMwが2600である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)-1を得、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート78.7質量部、重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)-1 12.3質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物 2.41質量部、光重合開始剤OXE-02(BASF製)0.81質量部、ビックケミー・ジャパン(株)製商品名BYK(登録商標)-333の10%ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート希釈溶液を1.24質量部、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン〔信越化学工業(株)製商品名KBE-585〕2.95質量部を混合し、樹脂溶液A3を調製し、(上記ア(ア)【0061】~【0062】、【0065】)

(B)成分:

プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中でカーボンブラック濃度25質量%、分散樹脂〔樹脂溶液(A)-1中の樹脂成分〕8質量%、高分子分散剤2質量%となるようにしてビーズミル中にて分散を行い、カーボンブラック分散液B2とし、(上記ア(ア)【0066】(2))

(C)成分:

日産化学工業(株)製コロイダルシリカをγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランにて表面処理し、この表面処理されたシリカが50質量%濃度になるように高分子分散剤5質量%と共に1,6-ヘキサンジオールジアクリレート中にビーズミルにて分散を行い、シリカ分散液C1とし、

樹脂溶液A3、カーボンブラック分散液B2及びシリカ分散液C1を用いて、フォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物を調製し、(上記ア(ア)(ウ))

この遮光膜用黒色樹脂組成物を無アルカリガラス上にスピンコートにて塗布し、80°Cにて5分間乾燥、石英マスクを通して紫外線露光100mJ(365nm基準)を行い、0.05%KOH水溶液中23°Cにて40秒間浸漬/浸透し、更に230°Cにて30分ポストベークして、ガラス基板上に作成された、膜厚が1.3μmである遮光膜であって、(上記ア(エ))

カーボンブラック分散液B2に含まれるカーボンブラック及びシリカ分散液C1に含まれる表面処理シリカの動的光散乱法の粒度分布計(大塚電子株式会社製、粒径アナライザーFPAR-1000)により、キュムラント法により求められる平均二次粒子径が、それぞれ、106nm及び42nmであり、(上記ア(イ))

カーボンブラック及び表面処理シリカの固形分に対する粒子濃度が、それぞれ、44.0%及び3.5%である、(上記ア(ウ))

遮光膜。」

(3)引用文献2の記載

原査定の拒絶の理由において引用された引用文献2(特開2011-39404号公報)は,本件出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明が記載されたものであるところ、そこには、以下の記載がある。

ア 「【請求項1】

光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、光重合開始剤(B)、リン酸(メタ)アクリレート化合物(C)、光硬化性の官能基を有さないリン酸化合物(D)、および黒色顔料(E)を含む光学素子の隔壁形成用感光性組成物であって、

組成物中の全固形分に対する前記リン酸(メタ)アクリレート化合物(C)の含有量が0.1~5質量%であり、かつ、前記光硬化性の官能基を有さないリン酸化合物(D)の含有量が10~100ppmであることを特徴とする隔壁形成用感光性組成物。

...省略...

【請求項5】

請求項1~4のいずれか1項に記載の隔壁形成用感光性組成物の塗膜硬化物からなるブラックマトリックス」

イ 「【技術分野】

【0001】

本発明は、光学素子の隔壁形成用感光性組成物、これを用いたブラックマトリックスおよびその製造方法、並びにこのブラックマトリックスを有するカラーフィルタの製造方法に関する。

【背景技術】

【0002】

近年、カラーフィルタの画素間の隔壁、有機EL(Electro-Luminescence)表示素子の画素間の隔壁、有機TFT(ThinFilmTransistor:薄膜トランジスタ)アレイの各TFTを仕切る隔壁、液晶表示素子のITO電極の隔壁、回路配線基板の隔壁等の永久膜を形成する材料として、感光性組成物が注目されている。

【0003】

このような感光性組成物を用いて光学素子の隔壁を形成する場合には、隔壁はガラス等の透明基板上にフォトリソグラフィ法によりパターン形成される。その後、基板上に形成された隔壁間の開口部に画素を形成することで光学素子が製造される。」

ウ 「【発明が解決しようとする課題】

【0008】

本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、光学素子として使用する際に基板との密着耐久性に優れる隔壁が形成可能であり、かつ貯蔵安定性のよい光学素子の隔壁形成用感光性組成物を提供することを目的とする。さらに、これにより得られる基板との密着耐久性に優れるブラックマトリックスおよびその製造方法、並びにこのブラックマトリックスを有するカラーフィルタの製造方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0009】

本発明の隔壁形成用感光性組成物は、光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、光重合開始剤(B)、リン酸(メタ)アクリレート化合物(C)、光硬化性の官能基を有さないリン酸化合物(D)、および黒色顔料(E)を含む光学素子の隔壁形成用感光性組成物であって、組成物中の全固形分に対する前記リン酸(メタ)アクリレート化合物(C)の含有量が0.1~5質量%であり、かつ、前記光硬化性の官能基を有さないリン酸化合物(D)の含有量が10~100ppmであることを特徴とする。

...省略...

【0011】

本発明は、上記本発明の隔壁形成用感光性組成物の塗膜硬化物からなるブラックマトリックスを提供する。

...省略...

【発明の効果】

【0014】

本発明の光学素子の隔壁形成用感光性組成物を用いれば、光学素子として使用する際に基板との密着耐久性に優れるブラックマトリックス(隔壁)が製造可能であり、したがってこのブラックマトリックスを有するカラーフィルタは耐久性を有するものである。また、本発明の隔壁形成用感光性組成物は貯蔵安定性がよい。

...省略...

【発明を実施するための形態】

【0016】

以下、本発明の実施の形態を説明する。

[隔壁形成用感光性組成物]

本発明の隔壁形成用感光性組成物は、光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(A)、光重合開始剤(B)、リン酸(メタ)アクリレート化合物(C):組成物全固形分に対して0.1~5質量%、光硬化性の官能基を有さないリン酸化合物(D):組成物全固形分に対して10~100ppm、および黒色顔料(E)を含有する。

【0017】

(1)光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂(A)(以下、単に「アルカリ可溶性樹脂(A)」という場合もある)

本発明の隔壁形成用感光性組成物が含有するアルカリ可溶性樹脂(A)は、1分子内に光硬化性のエチレン性不飽和二重結合、およびアルカリ可溶性の基、すなわち、酸性基を有する感光性樹脂である。アルカリ可溶性樹脂(A)が光硬化性のエチレン性不飽和二重結合を有することにより、隔壁形成時、フォトリソグラフィにおける露光に際して、これを含む隔壁形成用感光性組成物塗膜の露光部は、後述の光重合開始剤(B)の作用によりラジカル重合し硬化が促進され、露光に次いで行われる現像に際しては、アルカリ現像液にて除去されずに塗膜面に残って、光学素子の隔壁を形成することができる。また、アルカリ可溶性樹脂(A)がアルカリ可溶性の基、すなわち酸性基を有することにより、隔壁形成時、フォトリソグラフィにおける露光後の現像に際して、これを含む隔壁形成用感光性組成物塗膜の未露光部すなわち未硬化の部分はアルカリ現像液にて容易に除去することができる。なお、アルカリ可溶性樹脂(A)は実質的にペルフルオロアルキル基を含有しないことが好ましい。

...省略...

【0054】

さらに、本発明に用いるカーボンブラックとしては、透過型電子顕微鏡観察による平均1次粒子径が、20~50nmであるものが好ましい。平均1次粒子径が小さすぎると、高濃度に分散させることが困難になるおそれがあり、経時安定性の良好な感光性組成物が得られ難く、平均1次粒子径が大きすぎると、ブラックマトリックス形状の劣化を招くことがあるためである。また、透過型電子顕微鏡観察による平均2次粒子径としては、80~200nmが好ましい。

...省略...

【0074】

(6-4)その他任意成分

本発明の隔壁形成用感光性組成物においては、さらに必要に応じて、上記以外の任意成分として、架橋剤、硬化促進剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、紫外線吸収剤、フィラー等を含有することができる。

...省略...

【0099】

本発明の隔壁形成用感光性組成物は、隔壁(ブラックマトリックス)の幅の平均が、好ましくは100μm以下、より好ましくは20μm以下のパターン形成に用いることができる。また、隣接する隔壁(ブラックマトリックス)間の距離(ドットの幅)の平均が、好ましくは300μm以下、より好ましくは100μm以下のパターン形成に用いることができる。また、

隔壁

(ブラックマトリックス)の高さの平均が、好ましくは0.05~50μm、より好ましくは0.2~10μmのパターン形成に用いることができる。」

エ 「【実施例】

...省略...

【0112】

また、以下の各例に用いた化合物の略号を次に示す。

(i)撥インク剤の調製に用いた化合物

C6FMA:CH

2

=C(CH

3

)COOCH

2

CH

2

(CF

2

)

6

F

MAA:メタクリル酸

MMA:メタクリル酸メチル

2-HEMA:2-ヒドロキシエチルメタクリレート

V-70:V-70(商品名、和光純薬社製、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル))

2-ME:2-メルカプトエタノール

MOI:カレンズMOI(商品名、昭和電工社製、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート)

DBTDL:ジブチル錫ジラウレート

BHT:2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール

(ii)感光性樹脂組成物塗布液の調製に用いた成分

OXE02:OXE02(商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾイル-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)

ZCR1569:KAYARAD ZCR-1569H(商品名、日本化薬社製、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した樹脂の溶液;固形分70%、重量平均分子量4710)

DPHA:KAYARAD DPHA(商品名、日本化薬社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)

PGMEA:プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート

CB:カーボンブラック分散液(平均2次粒径120nm、分散媒PGMEA、カーボンブラック20%、アミン価が18mgKOH/gのポリウレタン系高分子分散剤5%)

シリカ分散液:シリカ分散液(平均粒径20nm、分散媒PGMEA、固形分30%、シリカは負に帯電している。)

157S70:157S70(商品名、ジャパンエポキシレジン社製、ノボラック型エポキシ樹脂)

KBM403:KBM-403(商品名、信越化学工業社製、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)

PA:リン酸とモノメタクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジメタクリロイルオキシエチルフォスフェートの2:1(質量比)混合物(混合物中のリン酸の濃度は0.3質量%である。)

【0113】

[合成例]撥インク剤の調製

撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトン(556g)、C6FMA(96g)、MAA(4.8g)、2-HEMA(96g)、MMA(43.2g)、連鎖移動剤2-ME(6.2g)および重合開始剤V-70(4.5g)を仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40°Cで18時間重合させ、重合体(1)の溶液を得た。得られた重合体(1)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルで再沈精製し、真空乾燥し、重合体(1)

の237g

を得た。

重合体(1)の重量平均分子量は5600であった。

【0114】

上記で得られた重合体(1)(100g)、MOI(47.7g)、DBTDL(0.19g)、BHT(2.4g)およびアセトン(100g)を、温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量500mLのガラス製フラスコに仕込み、撹拌しながら、30°Cで18時間重合させ、重合体(2)の溶液を得た。得られた重合体(2)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルで再沈精製し、真空乾燥し、重合体(2)

の135g

を得た。

重量平均分子量は8800であった。得られた重合体(2)を撥インク剤として実施例の隔壁形成用感光性組成物の製造に用いた。

【0115】

[実施例1]

(隔壁形成用感光性組成物希釈液の調製)

アルカリ可溶性樹脂(A)を含むZCR1569(13.37部)、光重合開始剤(B)としてのOXE02(0.94部)、リン酸(メタ)アクリレート化合物(C)とリン酸化合物(D)の混合物を含むPA(0.07部)、リン酸化合物(D)としてリン酸を1質量%の割合で含むリン酸PGMEA溶液(0.13部)、黒色顔料(E)の分散液としてのCB(40.11部)、シランカップリング剤(F)としてのKBM403(1.34部)、熱硬化性樹脂(G)としての157S70(1.14部)、架橋剤としてのDPHA(4.01部)、撥インク剤としての重合体(2)(0.05部)、フィラーとしてのシリカを含むシリカ分散液(8.91部)、溶剤としてのPGMEA(29.94部)を混合して、隔壁形成用感光性組成物(1)の希釈液を得た。

表1に得られた隔壁形成用感光性組成物(1)の固形分の組成(質量%)を示す。

なお、リン酸化合物(D)については、含有量をppmで示した。表1に示す通り隔壁形成用感光性組成物の全固形分中のリン酸(メタ)アクリレート化合物の含有量は0.22質量%であり、リン酸の含有量は51.3ppmである。

【0116】

(ブラックマトリックスの製造)

スピンナーを用いて、基材となるガラス基板AN100(旭硝子製、100mm×100mm、0.7mm厚)上に、上記で調製した隔壁形成用感光性組成物(1)の希釈液を塗布した後、ホットプレート上で、100°Cで2分間乾燥させ、2.0μmの隔壁形成用感光性組成物(1)の塗膜を形成した。

【0117】

上記で得られたガラス基板上の隔壁形成用感光性組成物(1)の塗膜に、超高圧水銀灯を用いて、露光量がi線(365nm)基準で100mJ/cm

2

の光を、マスクを通して照射し、露光した。

なお、マスクは、遮光部が100μm×200μm、光透過部が20μmの格子状パターンであり、ガラス基板上に形成される隔壁で仕切られた領域すなわち開口部(ドット)の容積が40pLとなる設計であった。

【0118】

上記露光後のガラス基板を、無機アルカリタイプの現像液セミクリーンDL-A4(商品名、横浜油脂工業社製)の10倍希釈水溶液に浸漬して現像を行い、未露光部を水により洗い流し、乾燥させた。

【0119】

現像~乾燥後のガラス基板を、ホットプレート上で、220°Cで30分間、加熱することにより、隔壁(ブラックマトリックス)が形成されたガラス基板(1)を得た。

...省略...

【0131】

【表1】

62

89

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(4)引用発明2

ア 上記(1)の記載によれば、引用文献2に記載された、実施例1に係る「隔壁形成用感光性組成物(1)」を用いて作成された隔膜(ブラックマトリックス)について、次の事実が認められる。

(ア)「カーボンブラック分散液」に含まれる「カーボンブラック」及び「シリカ分散液」に含まれる「シリカ」の質量%は、それぞれ、34.76質量%及び8.91質量%であること。(【0115】、【0131】【表1】)

(イ)「隔膜(ブラックマトリックス)」が、「隔壁形成用感光性組成物(1)」の「希釈液」を、スピンナーを用いて、基材となるガラス基板AN100(旭硝子製、100mm×100mm、0.7mm厚)上に、上記で調製した隔壁形成用感光性組成物(1)の希釈液を塗布した後、ホットプレート上で、100°Cで2分間乾燥させ、2.0μmの隔壁形成用感光性組成物(1)の塗膜を形成し、上記で得られたガラス基板上の隔壁形成用感光性組成物(1)の塗膜に、超高圧水銀灯を用いて、露光量がi線(365nm)基準で100mJ/cm

2

の光を、マスクを通して照射し、露光し、上記露光後のガラス基板を、無機アルカリタイプの現像液セミクリーンDL-A4(商品名、横浜油脂工業社製)の10倍希釈水溶液に浸漬して現像を行い、未露光部を水により洗い流し、乾燥させ、現像~乾燥後のガラス基板を、ホットプレート上で、220°Cで30分間、加熱することにより、ガラス基板上に得た、膜厚が2.0μmであるものであること。(【0115】~【0119】)

イ 上記アで認定した事実を総合すると、引用文献2には、実施例1としての「隔壁形成用感光性組成物(1)」を露光、現像、乾燥及び加熱して得た、次に示す「隔膜(ブラックマトリックス)」の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。

(当合議体注:引用発明2の組成物の原料名は、【0115】の記載を【0112】の製品名や化合物名等に置き換えたもの、括弧内は上記アに示した事実との関係又は引用文献1における認定根拠箇所を示したものである。)

「撹拌機を備えた内容積1Lのオートクレーブに、アセトン(556g)、C6FMA(96g)、MAA(4.8g)、2-HEMA(96g)、MMA(43.2g)、連鎖移動剤2-ME(6.2g)および重合開始剤V-70(4.5g)を仕込み、窒素雰囲気下に撹拌しながら、40°Cで18時間重合させ、重合体(1)の溶液を得、得られた重合体(1)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルで再沈精製し、真空乾燥し、重合体(1)を得、(【0113】)

上記で得られた重合体(1)(100g)、MOI(47.7g)、DBTDL(0.19g)、BHT(2.4g)およびアセトン(100g)を、温度計、撹拌機、加熱装置を備えた内容量500mLのガラス製フラスコに仕込み、撹拌しながら、30°Cで18時間重合させ、重合体(2)の溶液を得、得られた重合体(2)のアセトン溶液に水を加え再沈精製し、次いで石油エーテルで再沈精製し、真空乾燥し、重合体(2)を得、(【0114】)

アルカリ可溶性樹脂(A)を含むKAYARAD ZCR-1569H(商品名、日本化薬社製、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した樹脂の溶液;固形分70%、重量平均分子量4710)(13.37部)、光重合開始剤(B)としてのOXE02(商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾイル-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)(0.94部)、リン酸(メタ)アクリレート化合物(C)とリン酸化合物(D)の混合物を含むリン酸とモノメタクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジメタクリロイルオキシエチルフォスフェートの2:1(質量比)混合物(混合物中のリン酸の濃度は0.3質量%である。)(0.07部)、リン酸化合物(D)としてリン酸を1質量%の割合で含むリン酸プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート溶液(0.13部)、黒色顔料(E)の分散液としてのカーボンブラック分散液(平均2次粒径120nm、分散媒プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテートPGMEA、カーボンブラック20%、アミン価が18mgKOH/gのポリウレタン系高分子分散剤5%)(40.11部)、シランカップリング剤(F)としてのKBM403(商品名、信越化学工業社製、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)(1.34部)、熱硬化性樹脂(G)としての157S70(商品名、ジャパンエポキシレジン社製、ノボラック型エポキシ樹脂)(1.14部)、架橋剤としてのKAYARAD DPHA(商品名、日本化薬社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)(4.01部)、撥インク剤としての重合体(2)(0.05部)、フィラーとしてのシリカを含むシリカ分散液(平均粒径20nm、分散媒プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート、固形分30%、シリカは負に帯電している。)(8.91部)、溶剤としてのプロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセテート(29.94部)を混合して、隔壁形成用感光性組成物(1)の希釈液を得、(【0112】、【0115】)

隔壁形成用感光性組成物(1)の希釈液を、スピンナーを用いて、基材となるガラス基板AN100(旭硝子製、100mm×100mm、0.7mm厚)上に、上記で調製した隔壁形成用感光性組成物(1)の希釈液を塗布した後、ホットプレート上で、100°Cで2分間乾燥させ、2.0μmの隔壁形成用感光性組成物(1)の塗膜を形成し、上記で得られたガラス基板上の隔壁形成用感光性組成物(1)の塗膜に、超高圧水銀灯を用いて、露光量がi線(365nm)基準で100mJ/cm

2

の光を、マスクを通して照射し、露光し、上記露光後のガラス基板を、無機アルカリタイプの現像液セミクリーンDL-A4(商品名、横浜油脂工業社製)の10倍希釈水溶液に浸漬して現像を行い、未露光部を水により洗い流し、乾燥させ、現像~乾燥後のガラス基板を、ホットプレート上で、220°Cで30分間、加熱することにより、ガラス基板上に得た、膜厚が2.0μmであり、(上記ア(イ))

カーボンブラック分散液に含まれるカーボンブラック及びシリカ分散液に含まれるシリカの質量%は、それぞれ、34.76質量%及び8.91質量%である、(上記ア(ア))

隔膜(ブラックマトリックス)。」

2 引用発明1についての新規性及び進歩性の判断

(1)対比

本願発明と引用発明1を対比すると、以下のとおりとなる。

ア 感光性樹脂組成物

引用発明1の「フォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物」は、その組成から、技術的にみて、本願発明の「感光性樹脂組成物」及び「遮光膜形成用の感光性樹脂組成物」に相当する。

イ 遮光膜

引用発明1の「遮光膜」は、技術的にみて、本願発明の「遮光膜」に相当する。

また、引用発明1の「遮光膜」は「膜厚が1.3μmである」から、本願発明の「遮光膜」における、「平均厚みが0.5μm~2.5μmであ」るという要件を満たすものである。

ウ 成分(A)

引用発明1の「重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)-1」に含まれる樹脂は、「酸価(固形分換算)が103mgKOH/gであ」る。

ここで、本件明細書の【0023】において「より好ましい」とされるアルカリ可溶性樹脂の酸価が40~110mgKOH/gであることから、引用発明1の「重合性不飽和基含有アルカリ可溶性樹脂溶液(A)-1」は、本願発明の「(A)アルカリ可溶性樹脂」に相当する。

エ 成分(B)

引用発明1の「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレート」は、その化学構造からみて、本願発明の「(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物」に相当する。

オ 成分(C)

引用発明1の「光重合開始剤OXE-02(BASF製)」は、技術的にみて、「(C)光重合開始剤」に相当する。

カ 成分(D)

引用発明1の「カーボンブラック」は、技術的にみて、本願発明の「(D)遮光剤」に相当する。

また、引用発明1の「カーボンブラック」は、「動的光散乱法の粒度分布計(大塚電子株式会社製、粒径アナライザーFPAR-1000)により、キュムラント法により求められる平均二次粒子径が」「106nm」であること及び本件明細書の【0065】の平均二次粒子径の測定方法についての記載に照らせば、引用発明1の「カーボンブラック」は、本願発明の「(D)遮光剤」における、「成分(D)が平均粒子径が50~180nmのカーボンブラックである」という要件を満たす。

キ 成分(E)

引用発明1の「シリカ分散液C1に含まれる表面処理シリカの動的光散乱法の粒度分布計(大塚電子株式会社製、粒径アナライザーFPAR-1000)により、キュムラント法により求められる平均二次粒子径が」「42nmであ」る。

上記エと同様の理由により、引用発明1の「表面処理シリカ」は、本願発明において、「成分(E)が平均粒子径が10~180nmであ」るとされる「シリカ粒子」に相当する。

(2)一致点及び相違点

ア 一致点

上記(1)より、本願発明と引用発明は、以下の構成において一致する。

「感光性樹脂組成物の光硬化物からなる膜であり、

平均厚みが0.5μm~2.5μmであり、

前記感光性樹脂組成物が、

下記成分(A)~(E):

(A)アルカリ可溶性樹脂、

(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、

(C)光重合開始剤、

(D)遮光剤、

(E)シリカ粒子、

を含有し、かつ、遮光膜形成用の感光性樹脂組成物であり、

前記成分(E)が平均粒子径が10~180nmのシリカ粒子であり、かつ、

前記成分(D)が平均粒子径が50~180nmのカーボンブラックである、遮光膜。」

イ 相違点

本願発明と引用発明1は、以下の点で一応相違する。

(相違点1)

本願発明の「感光性樹脂組成物」が、本願シリカ分布条件を満たすのに対して、引用発明1は当該条件を満たすか明らかでない点。

(3)新規性の判断

上記一応の相違点1について検討する。

当合議体は、[A]本件明細書における記載(本願シリカ分布条件を満たすための条件及び実施例を用いた測定結果に係る記載)から理解される、感光性樹脂組成物の組成と本願シリカ分布条件との関係及び[B]本件明細書で開示された各実施例における感光性樹脂組成物の組成と引用発明1の「遮光膜用黒色樹脂組成物」の組成の類似性からみて、引用発明1の「遮光膜」が、本願シリカ分布条件を満たす蓋然性は高いと判断する。

その理由は、以下に示すとおりである。

ア 感光性樹脂組成物の組成の類似性について

(ア)本件明細書における本願シリカ分布条件を満たすための条件に関する記載について

本件明細書には、本願シリカ分布条件を満たすための条件について、以下の記載がある(当合議体注:下線は、当合議体が付したものである。以下同様。)。

「【0049】

なお、本発明の感光性樹脂組成物は、上述のように、

ガラス基板上に平均膜厚が0.5~2.5μmの範囲にありかつ前記感光性樹脂組成物の硬化物からなる膜を成膜した場合に、前記原子比(Y)の値が前記原子比(X)の値の1.1~10倍の大きさとなり、かつ、前記原子比(Z)の値が前記原子比(X)の値の0.5~2.8倍の大きさとなるという条件(以下、便宜上、かかる条件を場合により「シリカ粒子の分布条件(I)」と称する)

を満たす。

【0050】

また、

このようなシリカ粒子の分布条件(I)は、例えば、組成物中に含有させるシリカ粒子(前記成分(E))として平均粒子径が10~170nmのシリカ粒子を用い、かつ、組成物中に含有させる遮光剤(前記成分(D))として平均粒子径が50~180nmのもの(より好ましくはカーボンブラック)を用いることによっても達成させることが可能である。

このように、成分(D)と成分(E)の平均粒子径をそれぞれ前記範囲内としつつ、これらを組み合わせて利用することで、シリカ粒子の分布条件(I)を満たすものとすることが可能であり、この場合には、前記成分(A)のアルカリ可溶性樹脂としてカルド樹脂を用い、前記成分(B)として(メタ)アクリル酸エステル類を用い、成分(D)の含有量を感光性樹脂組成物中の固形成分の総量に対して20~80質量%とし、成分(E)の含有量を感光性樹脂組成物中の固形成分の総量に対して1~10質量%とすることが好ましく、更に、組成物中に成分(F)を含有せしめ(その成分(F)としてはグリコールエーテル類、グリコールアセテート類が好ましい)、その成分(F)の含有量を感光性樹脂組成物の総量(全体量)に対して50~90質量%とすることが好ましい。なお、分散剤を更に含む場合には、分散剤の種類をウレタン系またはアクリル系とし、かつ、その含有量を感光性樹脂組成物中の固形成分の総量に対して3~12質量%とすることが好ましい)。このように、各成分を組み合わせることによってもシリカ粒子の分布条件(I)を満たすようにすることも可能である。」

(イ)本件明細書における実施例・比較例に関する記載について

本件明細書の【実施例】(特に【0082】【表1】、【0083】【表2】)には、平均粒子径が本願発明の数値範囲外にある、シリカ粒子を用いた比較例2及び平均粒子径が本願発明の数値範囲外にある、カーボンブラックを用いた比較例3は、その原子比(Y)/原子比(X)が本願発明の下限値未満であること、及び、シリカ粒子の感光性樹脂組成物中の固形成分の総量に対する含有量が、6.9質量%(1.13質量部/15質量部(3.6質量部+1.54質量部+0.52質量部+6.75質量部+1.35質量部+0.11質量部)×100%)である比較例4は、その原子比(Z)/原子比(X)が本願発明の上限値を超えることが示されている。

また、本件明細書に記載された全実施例(実施例1~12)は、本願シリカ分散条件を満たすものであるところ、成分(A)のアルカリ可溶性樹脂としてカルド樹脂を用い、成分(B)として「DPHA:ペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物(日本化薬株式会社製の商品名「DPHA」)。」を用い、平均粒子径が120nmであるカーボンブラック、平均粒子径が110nmであるシリカ粒子を用い、カーボンブラックの感光性樹脂組成物中の固形成分の総量に対する含有量は質量40%(6質量部/15質量部×100%)~55.0%(8.25質量部/15質量部×100%)であり、シリカ粒子の感光性樹脂組成物中の固形成分の総量に対する含有量は2.0質量%(0.3質量部/15質量部×100%)~5.0%(0.75質量部/15質量部×100%)であり、成分(F)として「PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート」を85質量%用いたものである。

(ウ)感光性樹脂組成物の組成と本願シリカ分布条件との関係について

上記(ア)及び(イ)によれば、感光性樹脂組成物の組成と本願シリカ分布条件との関係について、以下に示す事項を理解することができる。

すなわち、感光性樹脂組成物に含有させるシリカ粒子(成分(E))として平均粒子径が10~170nmのシリカ粒子を用い、かつ、当該感光性樹脂組成物に含有させる遮光剤(前記成分(D))として平均粒子径が50~180nmのカーボンブラックを用いた遮光膜は、本願シリカ分散条件を満たす蓋然性が高いこと。これに加え、成分(A)のアルカリ可溶性樹脂としてカルド樹脂を用い、前記成分(B)として(メタ)アクリル酸エステル類を用い、成分(D)の含有量を感光性樹脂組成物中の固形成分の総量に対して40~55質量%とし、成分(E)の含有量を感光性樹脂組成物中の固形成分の総量に対して2.0~5.0質量%とし、成分(F)としてPGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを感光性樹脂組成物の総量(全体量)に対して50~90質量%とした場合に得られる遮光膜であれば、本願シリカ分布条件を満たす蓋然性がなおさら高いこと。

(エ)引用発明1の遮光膜用黒色樹脂組成物の組成について

引用発明1の「フォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物」は、「平均二次粒子径」が「106nm」である「カーボンブラック」及び「平均二次粒子径」が「42nm」である「表面処理シリカ」を含むものである。

また、引用発明1の「アルカリ可溶性樹脂溶液(A)-1」は、その原料(9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物、アクリル酸、3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物)が、本件明細書に記載された実施例の感光性樹脂組成物に含有されるアルカリ可溶性樹脂と同一のカルド樹脂である。

さらに、引用発明1の「フォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物」は、本件明細書に記載された実施例の感光性樹脂組成物と同様に「ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの混合物」を含むものである。

加えて、引用発明1の「フォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物」における「カーボンブラック及び表面処理シリカの固形分に対する粒子濃度がそれぞれ、44.0%及び3.5%」である。

さらに加えて、引用発明1の「フォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物」は、本件明細書に記載された実施例と同様に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用い、その総量(全体量)は、約72質量%([(12.3質量部×85.5質量%)+(17.0質量部×65質量%)]/(12.3+17.0+0.7))である。

(オ)感光性樹脂組成物の組成の類似性についての小括

上記(エ)によれば、引用発明1の「フォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物」に含有される「表面処理シリカ」(シリカ粒子)及び「カーボンブラック」の平均粒子径は、いずれも上記(ウ)で示した本願シリカ分布条件を満たすための要件を十分に満たすものであり、かつ、「蓋然性がなおさら高い」といえる要件(成分(A)~成分(B)、成分(D)~成分(F)の成分及び含有量に係る要件)も優に満たすものである。

したがって、本願シリカ分布条件を満たす本件明細書において実施例として開示された「感光性樹脂組成物」の組成と引用発明1の「フォトリソグラフィー向け遮光膜用黒色樹脂組成物」の組成はきわめて類似性が高い。

イ 小括

上記アに示した組成の類似性に照らせば、引用発明1の「遮光膜」は、本願シリカ分散条件を満たす蓋然性がきわめて高いことから、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。

したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。

(4)進歩性の判断

ア 構成の容易想到性について

仮に、引用発明1が、本願シリカ分布条件を満たさないものであったとしても(本願発明が仮に新規性を有していたとしても)、以下に示すとおり、本願発明は引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(ア)原子比(Y)及び(Z)の下限値について

引用文献1の【0031】の記載(上記1(1)ウの同段落の下線部を参照)によれば、溶剤を含む遮光性樹脂組成物を透明基板の片面に塗布し、乾燥後、硬化させて遮光膜を作成する際、溶媒が揮発する空気と塗膜との界面、及び塗膜と基板との界面において、黒色遮光性粒子(カーボンブラック)粒子間距離が縮んでいき、最終的に硬化により位置が固定される。このとき、透明粒子(シリカ粒子)を共存させると、透明粒子は黒色遮光性粒子と同様、前記界面近くに固定される(透明粒子が界面近くに集まって固定される)。そして、黒色遮光性粒子よりも屈折率の低い透明粒子による反射、散乱は少なくなる。すなわち、

シリカ粒子のように低い屈折率の透明粒子が、空気と塗膜との界面、及び塗膜と基板との界面に集まっている状態は反射防止という点から有利であると考えられる

。このことは、屈折率が異なる媒体界面に光が入射した場合における、媒体間の屈折率差が小さければ、当該界面における反射率が小さくなるという、光学分野の技術常識とも整合する。

(イ)原子比(Y)及び(Z)の上限値について

他方、引用文献1の【0030】の記載(上記(1)ウ)からは、

透明粒子の添加量をある程度の値以下に留めておくことは、遮光膜の遮光性及びパターン形成性の観点から、もとより必要とされている技術事項といえる。

(ウ)検討

ここで、本願発明にいう原子比(X)の値とは、遮光膜全体におけるC、O及びSi原子中のSi原子の割合、原子比(Y)の値とは、遮光膜の基板付近における同割合、原子比(Z)の値とは、遮光膜の基板とは反対側の界面における同割合のことであるから、上述のような、遮光膜の前記2つの界面にシリカ粒子が集まっている状態(上記下線部の状態)は、原子比(Y)の値あるいは原子比(Z)の値と原子比(X)の値との比が1より大きいことを意味し、透明粒子の添加量をある程度の値以下に留めておくことは、原子比(Y)の値及び原子比(Z)の値をある上限値以下に留めておくことを意味する。

そうすると、遮光膜の遮光性及びパターン形成性を維持しながら、表示装置の反射防止(反射率の低減)という課題を解決するために、引用発明1において、シリカ粒子の添加量を調製して、遮光膜の上記2つの界面にシリカ粒子が集まっている状態とし、前記原子比(Y)の値を前記原子比(X)の値の1.1~10倍、かつ、前記原子比(Z)の値を前記原子比(X)の値の1~2.8倍の範囲内に設定することは、引用文献1の上記各記載に接した当業者にとって格別困難なことではない。

したがって、引用発明1において、前記原子比(Y)の値が前記原子比(X)の値の1.1~10倍の大きさ、かつ、前記原子比(Z)の値が前記原子比(X)の値の1~2.8倍の大きさとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 本願発明の効果の予測性・顕著性について

本件明細書には、本願発明の効果について「前記原子比(Y)の値が前記原子比(X)の値に対して前記倍率の範囲内にある場合には・・・シリカ粒子の濃度が厚み方向で異なり、かつ、ガラス基板近傍の領域においてシリカ粒子がより多く存在する状態となると、ガラスと感光性樹脂組成物硬化膜との界面の屈折率差が小さくなるため、反射率を低減することが可能となる。」(【0046】)及び「前記原子比(Z)の値が前記原子比(X)の値に対して前記倍率の範囲内にある場合には、塗膜上部でのシリカの凝集を妨げるため、反射率低減効果とパターンの直線性を両立することが可能となる。」(【0047】)と記載されている。

しかしながら、上記効果は、いずれも上記ア(ア)及び(イ)(特に下線部)に示した引用文献1に記載された技術的知見及び本件出願時の技術常識に照らして、当業者が予測可能なものであって、その程度も格別顕著なものではない。

(5)小括

以上によれば、本願発明は、引用文献1に記載された発明である。

あるいは,本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)他の実施例に基づいて引用発明を認定した場合について

上記(1)~(5)では、引用文献1の実施例8の「遮光膜」の発明に基づき、引用発明1を認定し、対比、新規性、進歩性についての判断を行ったが、これに替えて、実施例11及び12の「遮光膜」の発明に基づき、引用発明を認定しても、判断結果は同じである。

(当合議体注:上記1(1)において、実施例8以外の実施例に関する記載の摘記は省略した。

3 引用発明2についての新規性及び進歩性の判断

(1)対比

本願発明と引用発明2を対比すると、以下のとおりとなる。

ア 感光性樹脂組成物

引用発明2の「隔壁形成用感光性組成物(1)」は、その組成から、技術的にみて、本願発明の「感光性樹脂組成物」及び「遮光膜形成用の感光性樹脂組成物」に相当する。

イ 遮光膜

引用発明2の「隔膜(ブラックマトリックス)」は、技術的にみて、本願発明の「遮光膜」に相当する。

また、引用発明2の「隔膜(ブラックマトリックス)」は「膜厚が2.0μmであ」るから、本願発明の「遮光膜」における、「平均厚みが0.5μm~2.5μmであ」るという要件を満たすものである。

ウ 成分(A)

引用発明2の「KAYARAD ZCR-1569H(商品名、日本化薬社製、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂にエチレン性不飽和二重結合と酸性基とを導入した樹脂の溶液;固形分70%、重量平均分子量4710)」に含まれる「アルカリ可溶性樹脂(A)を含む」は、その文言からみて、本願発明の「(A)アルカリ可溶性樹脂」に相当する。

エ 成分(B)

引用発明2の「KAYARAD DPHA(商品名、日本化薬社製、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物)」は、その化学構造からみて、本願発明の「(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物」に相当する。

オ 成分(C)

引用発明2の「OXE02(商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製、エタノン1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾイル-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム))は、「光重合開始剤(B)」であるから、技術的にみて、本願発明の「(C)光重合開始剤」に相当する。

カ 成分(D)

引用発明2の「カーボンブラック」は、技術的にみて、本願発明の「(D)遮光剤」に相当する。

また、引用発明2の「カーボンブラック」は、「平均2次粒径120nm」であり、平均2次粒子径の測定方法は、引用文献2の【0054】の記載によれば、透過型電子顕微鏡観察によるものであって、本件明細書の【0028】及び【0065】に記載の動的光散乱法によるものとは異なるものの、技術的にみて、本願発明の「(D)遮光剤」における、「成分(D)が平均粒子径が50~180nmのカーボンブラックである」という要件を満たす蓋然性が高い。

キ 成分(E)

引用発明2の「シリカ」は、「平均粒径20nm」であるから、本願発明の「(E)シリカ粒子」に相当する。

また、引用発明2の「シリカ」の平均粒径の測定方法は不明であるものの、技術的にみて、本願発明の(E)シリカ粒子」における、「成分(E)が平均粒子径が10~180nmのシリカ粒子である」という要件を満たす蓋然性が高い。

(2)一致点及び相違点

ア 一致点

本願発明と引用発明2は、以下の構成において一致する。

「感光性樹脂組成物の光硬化物からなる膜であり、

平均厚みが0.5μm~2.5μmであり、

前記感光性樹脂組成物が、

下記成分(A)~(E):

(A)アルカリ可溶性樹脂、

(B)少なくとも1個のエチレン性不飽和結合を有する光重合性化合物、

(C)光重合開始剤、

(D)遮光剤、

(E)シリカ粒子、

を含有し、かつ、遮光膜形成用の感光性樹脂組成物であり、

前記成分(E)が平均粒子径が10~180nmのシリカ粒子であり、かつ、

前記成分(D)が平均粒子径が50~180nmのカーボンブラックである遮光膜。」

イ 相違点

本願発明と引用発明2は、以下の点で一応相違する。

(相違点2)

本願発明の「感光性樹脂組成物」が、本願シリカ分布条件を満たすのに対して、引用発明2は当該条件を満たすか明らかでない点。

(3)判断

上記「2 引用発明1についての新規性及び進歩性の判断(3)新規性の判断」の項と同様の理由により、引用発明2もまた、本願シリカ分布条件を満たしている蓋然性が高い。

したがって、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。

(4)小括

以上によれば、本願発明は、引用文献2に記載された発明である。

(5)他の実施例に基づいて引用発明を認定した場合について

上記(1)~(5)では、引用文献2の実施例1の「隔膜(ブラックマトリックス)」の発明に基づき、引用発明2を認定し、対比、新規性についての判断を行ったが、これに替えて、実施例2の「隔膜(ブラックマトリックス)」の発明に基づき、引用発明を認定しても、判断結果は同じである。

(当合議体注:上記1(3)において、実施例1以外の実施例に関する記載の摘記は省略した。

第3 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用文献1又は2に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。あるいは、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、本件出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許受けることができない。

したがって、ほかの請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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