sokuhyo

Trademark Appeal Case

請求項訂正の適否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023700825
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7222361号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第7222361号の請求項1~3、5、9~12に係る特許を維持する。
特許第7222361号の請求項4、6~8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

1 本件特許についての手続の経緯

特許第7222361号(請求項の数12。以下「本件特許」という。)の出願日、特許権の設定登録日及び特許掲載公報の発行日は、次のとおりである。

出願日 平成31年1月30日

(優先権主張:平成30年2月5日)

特許権の設定登録日 令和 5年2月 7日

特許掲載公報の発行日 同月15日

2 本件特許異議の申立てについての手続の経緯

令和5年 8月10日 :特許異議の申立て

(特許異議申立人:平居 博美 全請求項1~12に対して)

同年11月24日付け:取消理由通知書

令和6年 1月26日 :意見書の提出(特許権者)

同年 2月20日 :上申書の提出(特許異議申立人)

同年 3月22日付け:取消理由通知書(決定の予告)

同年 4月23日 :面接

同年 5月17日 :電話応対(特許権者の5/13付け訂正特許

の請求の範囲(案)に対する回答)

同月27日 :意見書、訂正請求書の提出(特許権者)

同年 7月25日 :意見書の提出(特許異議申立人)

令和7年 1月17日付け:取消理由通知書(決定の予告)

同年 3月25日 :意見書、訂正請求書の提出(特許権者)

同年 5月 7日付け:通知書(訂正請求があった旨の通知)

令和7年5月7日付けの通知書により、特許異議申立人に対して期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人は応答しなかった。

第2 本件訂正について

1 請求の趣旨

(1) 先にした訂正の請求について

令和6年5月27日に提出された訂正請求書による訂正の請求(先にした訂正の請求)は、令和7年3月25日に提出された訂正請求書による訂正の請求がされたため、取り下げられたものとみなされる(特許法120条の5第7項)。

以下、令和7年3月25日に提出された訂正請求書を、「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。

(2) 本件訂正の請求の趣旨

本件訂正に係る請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求めるものである。

2 本件訂正前の特許請求の範囲の記載

本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1~12の記載(登録時における特許請求の範囲の記載)は、次のとおりである。

「【請求項1】

下記(i-1)~(i-3)を満足する近赤外線吸収色素(A)と、前記近赤外線吸収色素(A)との関係において下記(i-3)を満足する透明樹脂とを含有する吸収層と、誘電体多層膜からなる反射層とを有する光学フィルタ。

(i-1)ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ

max(A)DCM

が850~1100nmの波長領域にある。

(i-2)ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ

max(A)DCM

における吸光度をABS

λmax(A)DCM

、波長400nmにおける吸光度をABS

400(A)DCM

、波長550nmにおける吸光度をABS

550(A)DCM

としたときに、下記式(1)および(2)を満足する。

ABS

400(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.10 ...(1)

ABS

550(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.04 ...(2)

(i-3)前記透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λmax(A)TRが850~1100nmの波長領域にあり、最大吸収波長λ

max(A)TR

における吸光度をABS

λmax(A)TR

、波長400nmにおける吸光度をABS

400(A)TR

、波長550nmにおける吸光度をABS

550(A)TR

としたときに、下記式(3)および(4)を満足する。

ABS

400(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

<0.15 ...(3)

ABS

550(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

<0.10 ...(4)

【請求項2】

前記近赤外線吸収色素(A)は、さらに下記(i-4)を満足する請求項1記載の光学フィルタ。

(i-4)下式(5)および(6)を満足する。

ABS

400(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

-ABS

400(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.10 ...(5)

ABS

550(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

-ABS

550(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.08 ...(6)

【請求項3】

前記近赤外線吸収色素(A)は、さらに下記(i-4)を満足する請求項1記載の光学フィルタ。

(i-4)下式(5)および(6)を満足する。

ABS

400(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

-ABS

400(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.06 ...(5)

ABS

550(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

-ABS

550(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.08 ...(6)

【請求項4】

前記近赤外線吸収色素(A)は下記式(ACi)~(ACiv)のいずれかで表されるシアニン系化合物を含む請求項1~3のいずれか1項記載の光学フィルタ。

【化1】

116

133

0001431088000001.jpg

【化2】

100

132

0001431088000002.jpg

ただし、式(ACi)~(ACiv)中の記号は以下のとおりである。

R

101

~R

107

、R

121

~R

127

、R

141

およびR

151

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、-NR

112

R

113

基、-NHSO

2

R

114

基、-NHCOR

115

基、-SR

116

基、-SO

2

R

117

基、-OSO

2

R

118

基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。R

102

~R

107

およびR

122

~R

127

は隣り合う2つが互いに連結して5員環、6員環、または7員環を形成していてもよい。

R

142

とR

143

は水素原子または互いに結合して員数が6の芳香環Dを形成していてもよい。R

145

とR

144

は水素原子または互いに結合して員数が6の芳香環Eを形成していてもよい。ただし、芳香環Dと芳香環Eは両方が形成されることはない。

R

109

~R

111

、R

129

~R

131

、R

146

~R

148

、およびR

152

~R

154

はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、-NR

112

R

113

基、炭素数3~14のシクロアルキル基、または炭素数6~14のアリール基である。

R

109

とR

111

、R

129

とR

131

、R

146

とR

148

、およびR

152

とR

154

は、互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。環を形成する場合、環に結合する水素原子は炭素数1~6のアルキル基に置換されていてもよく、環の構成原子の2つがメチレン基で架橋されていてもよい。

R

112

~R

118

は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。

各式に含まれる複数のR

101

~R

107

、R

121

~R

127

、R

141

~R

145

、R

151

、D、及びEは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。

X

-

は一価のアニオンを示す。

【請求項5】

前記近赤外線吸収色素(A)は下記式(ACi1)~(ACii2)のいずれかで表されるシアニン色素を含む請求項1~3のいずれか1項記載の光学フィルタ。

【化3】

193

148

0001431088000003.jpg

ただし、式(ACi1)~(ACii2)中の記号は以下のとおりである。

R

101

~R

107

およびR

121

~R

127

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、-NR

112

R

113

基、-NHSO

2

R

114

基、-NHCOR

115

基、-SR

116

基、-SO

2

R

117

基、-OSO

2

R

118

基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。R

102

~R

107

およびR

122

~R

127

は隣り合う2つが互いに連結して5員環、6員環、または7員環を形成していてもよい。

R

130a

は、水素原子、メチル基またはフェニル基である。

R

130b

は、水素原子、メチル基、フェニル基またはジフェニルアミノ基である。

R

112

~R

118

は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。

各式に含まれる複数のR

101

~R

107

、およびR

121

~R

127

は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。

X

-

は一価のアニオンを示す。

【請求項6】

前記近赤外線吸収色素(A)は下記式(ASi)または(ASii)で表されるスクアリリウム色素を含む請求項1~5のいずれか1項記載の光学フィルタ。

【化4】

142

135

0001431088000004.jpg

ただし、式(ASi)および(ASii)中の記号は以下のとおりである。

R

161

は、炭素数3~20の分岐アルキル基、または炭素数13~20の直鎖アルキル基である。

Y

3

はC-R

179

またはNである。

R

162

~R

167

およびR

171

~R

179

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、-NR

112

R

113

基、-NHSO

2

R

114

基、-NHCOR

115

基、-SR

116

基、-SO

2

R

117

基、-OSO

2

R

118

基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。

R

112

~R

118

は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。

各式に含まれる複数のR

161

~R

167

、R

171

~R

178

およびY

3

は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。

【請求項7】

前記透明樹脂は、主鎖にエステル結合、カーボネート結合およびイミド結合から選ばれる少なくとも1種の結合を有する樹脂を含む請求項1~6のいずれか1項記載の光学フィルタ。

【請求項8】

前記透明樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂およびアクリルイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1~7のいずれか1項に記載の光学フィルタ。

【請求項9】

前記吸収層は、さらに、前記透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において最大吸収波長λ

max(D)TR

が650~750nmの波長領域にあり、下式(I)~(III)のいずれかで示される近赤外線吸収色素(D)を含む請求項1~8のいずれか1項に記載の光学フィルタ。

【化5】

57

136

0001431088000005.jpg

ただし、式(I)中の記号は以下のとおりである。

R

24

およびR

26

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、-NR

27

R

28

(R

27

およびR

28

は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、-C(=O)-R

29

(R

29

は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基もしくは炭素数6~11のアリール基または、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基)、-NHR

30

、または、-SO

2

-R

30

(R

30

は、それぞれ1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~25の炭化水素基)を示す。)、または、下記式(S)で示される基(R

41

、R

42

は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。kは2または3である。)を示す。

【化6】

51

133

0001431088000006.jpg

R

21

とR

22

、R

22

とR

25

、およびR

21

とR

23

は、互いに連結して窒素原子と共に員数が5または6のそれぞれ複素環A、複素環B、および複素環Cを形成してもよい。

複素環Aが形成される場合のR

21

とR

22

は、これらが結合した2価の基-Q-として、水素原子が炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアシルオキシ基で置換されてもよいアルキレン基、またはアルキレンオキシ基を示す。

複素環Bが形成される場合のR

22

とR

25

、および複素環Cが形成される場合のR

21

とR

23

は、これらが結合したそれぞれ2価の基-X

1

-Y

1

-および-X

2

-Y

2

-(窒素に結合する側がX

1

およびX

2

)として、X

1

およびX

2

がそれぞれ下記式(1x)または(2x)で示される基であり、Y

1

およびY

2

がそれぞれ下記式(1y)~(5y)から選ばれるいずれかで示される基である。X

1

およびX

2

が、それぞれ下記式(2x)で示される基の場合、Y

1

およびY

2

はそれぞれ単結合であってもよく、その場合、炭素原子間に酸素原子を有してもよい。

【化7】

67

129

0001431088000007.jpg

式(1x)中、4個のZは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、または-NR

38

R

39

(R

38

およびR

39

は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す)を示す。R

31

~R

36

はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を、R

37

は炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。

R

27

、R

28

、R

29

、R

31

~R

37

、複素環を形成していない場合のR

21

~R

23

、およびR

25

は、これらのうちの他のいずれかと互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。R

31

とR

36

、R

31

とR

37

は直接結合してもよい。

複素環を形成していない場合の、R

21

およびR

22

は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基もしくはアリル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~11のアリール基もしくはアルアリール基を示す。複素環を形成していない場合の、R

23

およびR

25

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。

【化8】

52

132

0001431088000008.jpg

ただし、式(II)中の記号は以下のとおりである。

環Zは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を環中に0~3個有し、かつ置換されていてもよい、5員または6員環であり、

R

1

とR

2

、R

2

とR

3

、およびR

1

と環Zを構成する炭素原子またはヘテロ原子は、互いに連結して窒素原子とともにそれぞれヘテロ環A1、ヘテロ環B1およびヘテロ環C1を形成していてもよく、ヘテロ環を形成していない場合、R

1

およびR

2

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、置換基を有してもよい炭化水素基を示し、R

3

およびR

4

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。

【化9】

61

132

0001431088000009.jpg

ただし、式(III)中の記号は以下のとおりである。

R

51

は、それぞれ独立にハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、

R

52

~R

58

は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示す。

R

52

とR

53

は、互いに連結して、炭素数5~15の飽和または不飽和の炭化水素環B2を形成していてもよく、炭化水素環B2の水素原子は炭素数1~10のアルキル基に置換されていてもよく、

R

54

とR

55

は、互いに連結してベンゼン環A2を形成していてもよく、ベンゼン環A2の水素原子は炭素数1~10のアルキル基に置換されていてもよい。

【請求項10】

前記吸収層は入射角0度の分光透過率曲線において下記(ii-1)~(ii-3)を満足し、前記反射層は下記(iii-1)を満足し、前記光学フィルタは下記(iv-1)を満足する請求項9記載の光学フィルタ。

(ii-1)透過率が20%を示す波長の短波長側の波長が655~675nmの波長領域にある。

(ii-2)波長435~630nmの光の平均透過率が65%以上である。

(ii-3)波長850~1100nmの光の平均透過率が70%以下である。

(iii-1)入射角0度の分光透過率曲線において、波長850~1100nmの光の平均透過率が0.2%以下である。

(iv-1)波長615~725nmにおいて、入射角0度および入射角30度の分光透過率曲線における透過率の差分の絶対値を平均した値が2%/nm以下である。

【請求項11】

前記近赤外線吸収色素(A)は、最大吸収波長λ

max(A)TR

が異なる少なくとも2種を含む請求項1~10のいずれか1項記載の光学フィルタ。

【請求項12】

請求項1~11のいずれか1項記載の光学フィルタを備える撮像装置。」

3 本件訂正後の特許請求の範囲の記載

本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~12の記載は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示す。

「【請求項1】

下記(i-1)~(i-3)を満足する近赤外線吸収色素(A)と、前記近赤外線吸収色素(A)との関係において下記(i-3)を満足する透明樹脂とを含有する吸収層と、

誘電体多層膜からなる反射層とを有する光学フィルタ

であって、

前記近赤外線吸収色素(A)は、下記式(ASi)で表されるスクアリリウム色素を含み、

前記透明樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み、

前記吸収層の厚さが0.3~10μmである、光学フィルタ

(i-1)ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ

max(A)DCM

883

~1100nmの波長領域にある。

(i-2)ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ

max(A)DCM

における吸光度をABS

λmax(A)DCM

、波長400nmにおける吸光度をABS

400(A)DCM

、波長550nmにおける吸光度をABS

550(A)DCM

としたときに、下記式(1)および(2)を満足する。

ABS

400(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.10 ...(1)

ABS

550(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.04 ...(2)

(i-3)前記透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ

max(A)TR

が850~1100nmの波長領域にあり、最大吸収波長λ

max(A)TR

における吸光度をABS

λmax(A)TR

、波長400nmにおける吸光度をABS

400(A)TR

、波長550nmにおける吸光度をABS

550(A)TR

としたときに、下記式(3)および(4)を満足する。

ABS

400(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

<0.15 ...(3)

ABS

550(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

<0.10 ...(4)

【化1】

65

135

0001431088000010.jpg

ただし、式(ASi)中の記号は以下のとおりである。

R

161

は、炭素数8~20の分岐アルキル基である。

Y

3

はC-R

179

またはNである。

R

162

~R

167

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、-NR

112

R

113

基、-NHSO

2

R

114

基、-NHCOR

115

基、-SR

116

基、-SO

2

R

117

基、-OSO

2

R

118

基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。

R

112

~R

118

は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。

各式に含まれる複数のR

161

~R

167

は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。

【請求項2】

前記近赤外線吸収色素(A)は、さらに下記(i-4)を満足する請求項1記載の光学フィルタ。

(i-4)下式(5)および(6)を満足する。

ABS

400(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

-ABS

400(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.10 ...(5)

ABS

550(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

-ABS

550(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.08 ...(6)

【請求項3】

前記近赤外線吸収色素(A)は、さらに下記(i-4)を満足する請求項1記載の光学フィルタ。

(i-4)下式(5)および(6)を満足する。

ABS

400(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

-ABS

400(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.06 ...(5)

ABS

550(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

-ABS

550(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.08 ...(6)

【請求項4】

(削除)

【請求項5】

前記近赤外線吸収色素(A)は下記式(ACi1)~(ACii2)のいずれかで表されるシアニン色素を含む請求項1~3のいずれか1項記載の光学フィルタ。

【化3】

193

148

0001431088000011.jpg

ただし、式(ACi1)~(ACii2)中の記号は以下のとおりである。

R

101

~R

107

R

121

~R

127

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、-NR

112

R

113

基、-NHSO

2

R

114

基、-NHCOR

115

基、-SR

116

基、-SO

2

R

117

基、-OSO

2

R

118

基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。R

102

~R

107

およびR

122

~R

127

は隣り合う2つが互いに連結して5員環、6員環、または7員環を形成していてもよい。

R

130a

は、水素原子、メチル基またはフェニル基である。

R

130b

は、水素原子、メチル基、フェニル基またはジフェニルアミノ基である。

R

112

~R

118

は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。

各式に含まれる複数のR

101

~R

107

、R

121

~R

127

は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。

X

-

は一価のアニオンを示す。

【請求項6】

(削除)

【請求項7】

(削除)

【請求項8】

(削除)

【請求項9】

前記吸収層は、さらに、前記透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において最大吸収波長λ

max(D)TR

が650~750nmの波長領域にあり、下式(I)~(III)のいずれかで示される近赤外線吸収色素(D)を含む請求項1~

3、5

のいずれか1項に記載の光学フィルタ。

【化5】

57

136

0001431088000012.jpg

ただし、式(I)中の記号は以下のとおりである。

R

24

およびR

26

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、炭素数1~10のアシルオキシ基、-NR

27

R

28

(R

27

およびR

28

は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、-C(=O)-R

29

(R

29

は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルキル基もしくは炭素数6~11のアリール基または、置換基を有していてもよく、炭素原子間に酸素原子を有していてもよい炭素数7~18のアルアリール基)、-NHR

30

、または、-SO

2

-R

30

(R

30

は、それぞれ1つ以上の水素原子がハロゲン原子、水酸基、カルボキシ基、スルホ基、またはシアノ基で置換されていてもよく、炭素原子間に不飽和結合、酸素原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよい炭素数1~25の炭化水素基)を示す。)、または、下記式(S)で示される基(R

41

、R

42

は、独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1~10のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。kは2または3である。)を示す。

【化6】

51

133

0001431088000013.jpg

R

21

とR

22

、R

22

とR

25

、およびR

21

とR

23

は、互いに連結して窒素原子と共に員数が5または6のそれぞれ複素環A、複素環B、および複素環Cを形成してもよい。

複素環Aが形成される場合のR

21

とR

22

は、これらが結合した2価の基-Q-として、水素原子が炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~10のアリール基または置換基を有していてもよい炭素数1~10のアシルオキシ基で置換されてもよいアルキレン基、またはアルキレンオキシ基を示す。

複素環Bが形成される場合のR

22

とR

25

、および複素環Cが形成される場合のR

21

とR

23

は、これらが結合したそれぞれ2価の基-X

1

-Y

1

-および-X

2

-Y

2

-(窒素に結合する側がX

1

およびX

2

)として、X

1

およびX

2

がそれぞれ下記式(1x)または(2x)で示される基であり、Y

1

およびY

2

がそれぞれ下記式(1y)~(5y)から選ばれるいずれかで示される基である。X

1

およびX

2

が、それぞれ下記式(2x)で示される基の場合、Y

1

およびY

2

はそれぞれ単結合であってもよく、その場合、炭素原子間に酸素原子を有してもよい。

【化7】

67

129

0001431088000014.jpg

式(1x)中、4個のZは、それぞれ独立して水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基、または-NR

38

R

39

(R

38

およびR

39

は、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~20のアルキル基を示す)を示す。R

31

~R

36

はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を、R

37

は炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~10のアリール基を示す。

R

27

、R

28

、R

29

、R

31

~R

37

、複素環を形成していない場合のR

21

~R

23

、およびR

25

は、これらのうちの他のいずれかと互いに結合して5員環または6員環を形成してもよい。R

31

とR

36

、R

31

とR

37

は直接結合してもよい。

複素環を形成していない場合の、R

21

およびR

22

は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1~6のアルキル基もしくはアリル基、または置換基を有していてもよい炭素数6~11のアリール基もしくはアルアリール基を示す。複素環を形成していない場合の、R

23

およびR

25

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素数1~6のアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。

【化8】

52

132

0001431088000015.jpg

ただし、式(II)中の記号は以下のとおりである。

環Zは、それぞれ独立して、ヘテロ原子を環中に0~3個有し、かつ置換されていてもよい、5員または6員環であり、

R

1

とR

2

、R

2

とR

3

、およびR

1

と環Zを構成する炭素原子またはヘテロ原子は、互いに連結して窒素原子とともにそれぞれヘテロ環A1、ヘテロ環B1およびヘテロ環C1を形成していてもよく、ヘテロ環を形成していない場合、R

1

およびR

2

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または、炭素原子間に不飽和結合、ヘテロ原子、飽和もしくは不飽和の環構造を含んでよく、置換基を有してもよい炭化水素基を示し、R

3

およびR

4

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、または炭素原子間にヘテロ原子を含んでもよいアルキル基もしくはアルコキシ基を示す。

【化9】

61

132

0001431088000016.jpg

ただし、式(III)中の記号は以下のとおりである。

R

51

は、それぞれ独立にハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~3のアルキル基を示し、

R

52

~R

58

は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、または、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基を示す。

R

52

とR

53

は、互いに連結して、炭素数5~15の飽和または不飽和の炭化水素環B2を形成していてもよく、炭化水素環B2の水素原子は炭素数1~10のアルキル基に置換されていてもよく、

R

54

とR

55

は、互いに連結してベンゼン環A2を形成していてもよく、ベンゼン環A2の水素原子は炭素数1~10のアルキル基に置換されていてもよい。

【請求項10】

前記吸収層は入射角0度の分光透過率曲線において下記(ii-1)~(ii-3)を満足し、前記反射層は下記(iii-1)を満足し、前記光学フィルタは下記(iv-1)を満足する請求項9記載の光学フィルタ。

(ii-1)透過率が20%を示す波長の短波長側の波長が655~675nmの波長領域にある。

(ii-2)波長435~630nmの光の平均透過率が65%以上である。

(ii-3)波長850~1100nmの光の平均透過率が70%以下である。

(iii-1)入射角0度の分光透過率曲線において、波長850~1100nmの光の平均透過率が0.2%以下である。

(iv-1)波長615~725nmにおいて、入射角0度および入射角30度の分光透過率曲線における透過率の差分の絶対値を平均した値が2%/nm以下である。

【請求項11】

前記近赤外線吸収色素(A)は、最大吸収波長λ

max(A)TR

が異なる少なくとも2種を含む請求項1~

3、5、9、

10のいずれか1項記載の光学フィルタ。

【請求項12】

請求項1~

3、5、9~

11のいずれか1項記載の光学フィルタを備える撮像装置。」

4 本件訂正の内容

本件訂正は、一群の請求項〔1~12〕について訂正するものであるところ、本件訂正の内容を訂正される記載のある請求項ごとに整理すると、以下の(1)から(9)に示す訂正事項1~訂正事項9から構成される。

(1) 訂正事項1(請求項1の記載に係る訂正)

ア 訂正事項1-1

特許請求の範囲の請求項1における

「誘電体多層膜からなる反射層とを有する光学フィルタ。」

との記載を、後記訂正事項1-3による訂正は措くとして、

「誘電体多層膜からなる反射層とを有する光学フィルタ

であって、

前記透明樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み、

前記吸収層の厚さが0.3~10μmである、光学フィルタ

。」

に訂正する。

(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5、9~12も同様に訂正する。)

イ 訂正事項1-2

特許請求の範囲の請求項1における

「(i-1)ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ

max(A)DCM

が850~1100nmの波長領域にある。」

との記載を、

「(i-1)ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ

max(A)DCM

883

~1100nmの波長領域にある。」

に訂正する。

(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5、9~12も同様に訂正する。)

ウ 訂正事項1-3

前記訂正事項1-1による訂正を前提にして、

「光学フィルタ

であって、

」の後に、

前記近赤外線吸収色素(A)は、下記式(ASi)で表されるスクアリリウム色素を含み、

」を挿入するとともに、

特許請求の範囲の請求項1の末尾に次の記載を挿入する。

(請求項1の記載を引用する請求項2、3、5、9~12も同様に訂正する。)

【化1】

65

135

0001431088000017.jpg

ただし、式(ASi)中の記号は以下のとおりである。

R

161

は、炭素数8~20の分岐アルキル基である。

Y

3

はC-R

179

またはNである。

R

162

~R

167

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、-NR

112

R

113

基、-NHSO

2

R

114

基、-NHCOR

115

基、-SR

116

基、-SO

2

R

117

基、-OSO

2

R

118

基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。

R

112

~R

118

は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。

各式に含まれる複数のR

161

~R

167

は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。

(2) 訂正事項2(請求項4の記載に係る訂正)

特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(3) 訂正事項3(請求項5の記載に係る訂正)

請求項5の記載に係る訂正事項3は、次の二つの訂正事項3-1及び訂正事項3-2よりなる。

ア 訂正事項3-1

特許請求の範囲の請求項5における

「R

101

~R

107

およびR

121

~R

127

は、それぞれ独立して、...」

との記載を、

「R

101

~R

107

R

121

~R

127

は、それぞれ独立して、...」

に訂正する。

(請求項5の記載を引用する請求項9~12も同様に訂正する。)

イ 訂正事項3-2

特許請求の範囲の請求項5における

「各式に含まれる複数のR

101

~R

107

、およびR

121

~R

127

は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。」

との記載を、

「各式に含まれる複数のR

101

~R

107

、R

121

~R

127

は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。」に訂正する。

(請求項5の記載を引用する請求項9~12も同様に訂正する。)

(4) 訂正事項4(請求項6の記載に係る訂正)

特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(5) 訂正事項5(請求項7の記載に係る訂正)

特許請求の範囲の請求項7を削除する。

(6) 訂正事項6(請求項8の記載に係る訂正)

特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(7) 訂正事項7(請求項9の記載に係る訂正)

特許請求の範囲の請求項9における

「請求項1~8のいずれか1項」

との記載を、

「請求項1~

3、5

のいずれか1項」

に訂正する。

(請求項9の記載を引用する請求項10~12も同様に訂正する。)

(8) 訂正事項8(請求項11の記載に係る訂正)

特許請求の範囲の請求項11における

「請求項1~10のいずれか1項」

との記載を、

「請求項1~

3、5、9、10

のいずれか1項」

に訂正する。

(請求項11の記載を引用する請求項12も同様に訂正する。)

(9) 訂正事項9(請求項12の記載に係る訂正)

特許請求の範囲の請求項12における

「請求項1~11のいずれか1項」

との記載を、

「請求項1~

3、5、9~11

のいずれか1項」

に訂正する。

5 本件訂正の適否についての当合議体の判断

(1) 訂正の目的

ア 訂正事項1

(ア) 訂正事項1-1の訂正は、次のaとbに示す限定をするものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする。

a 本件訂正前の「透明樹脂」が「ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含[む]」とする限定

b 本件訂正前の「吸収層」が「0.3~10μm」の「厚さ」であるとする限定

(イ) 訂正事項1-2の訂正は、本件訂正前の「近赤外線吸収色素(A)」について、「ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線」における「最大吸収波長λ

max(A)DCM

」のとり得る数値範囲の下限を引き上げて当該数値範囲を限定するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする。

(ウ) 訂正事項1-3の訂正は、本件訂正前の「近赤外線吸収色素(A)」を「式(ASi)で表されるスクアリリウム色素」に限定するものであり、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする。

(エ) したがって、訂正事項1-1から訂正事項1-3までよりなる訂正事項1の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

イ 訂正事項2、4~6

訂正事項2、4~6の訂正は、それぞれ請求項4、6~8を削除するものであるから、いずれも特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

ウ 訂正事項7~9

訂正事項7~9の訂正は、以下の(ア)~(ウ)に示すとおり、いずれも多数項を引用している請求項において、訂正事項2、4~6により請求項4、6~8を削除することに伴い、削除された請求項との引用関係を解消して引用請求項数を削減するものであるから、いずれも特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」又は同3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当する。

(ア) 訂正事項7

請求項9の引用請求項を「請求項1~8のいずれか1項」から「請求項1~3、5のいずれか1項」に訂正する。

(イ) 訂正事項8

請求項11の引用請求項を「請求項1~10のいずれか1項」から「請求項1~3、5、9、10のいずれか1項」に訂正する。

(ウ) 訂正事項9

請求項12の引用請求項を「請求項1~11のいずれか1項」から「請求項1~3、5、9~11のいずれか1項」に訂正する。

エ 訂正事項3

(ア) 訂正事項3-1の訂正は、特許請求の範囲の請求項5における

「R

101

~R

107

およびR

121

~R

127

は、それぞれ独立して、...」

との記載を、

「R

101

~R

107

R

121

~R

127

は、それぞれ独立して、...」

に訂正するものであり、「および」という語句を「、」に変更するものである。

(イ) 訂正事項3-2の訂正は、特許請求の範囲の請求項5における

「各式に含まれる複数のR

101

~R

107

、およびR

121

~R

127

は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。」

との記載を、

「各式に含まれる複数のR

101

~R

107

、R

121

~R

127

は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。」に訂正するものであり、「および」という語句を削除するものである。

(ウ) これらの訂正については、訂正前の「および」が無い方が明瞭といえないこともなく、また、極めて軽微な訂正であり、かかる訂正を認めても第三者に不測の不利益を及ぼすおそれもないことから、合議体は、厳格に要件を問うことなく、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものに該当するものとして扱う。

(2) 新規事項の追加、特許請求の範囲の実質的拡張・変更

訂正事項1~9の訂正は、特許法120条の5第2項ただし書2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものに該当しないから、これらの訂正における新規事項の追加の有無を判断する際の基準となる明細書等は、特許権の設定の登録がされた時点での願書に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面である。

ア 訂正事項1

(ア) 訂正事項1-1の訂正は、次のa及びbに示す明細書の記載を踏まえると、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。

a 「透明樹脂」について

「【0175】

透明樹脂は、これらのなかでも、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂

、およびアクリルイミド樹脂

が好ましい

。これらの樹脂は1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。色素(A)が色素(ACi)~色素(ACiv)、色素(ASi)または色素(ASii)である場合、特に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、およびアクリルイミド樹脂が好ましい。」

b 「吸収層の厚さ」について

「【0189】

本フィルタにおいて、吸収層の厚さは、0.1~100μmが好ましい。吸収層が複数層からなる場合、各層の合計の厚さは、0.1~100μmが好ましい。厚さが0.1μm未満では、所望の光学特性を十分に発現できないおそれがあり、厚さが100μm超では、層の平坦性が低下し、吸収率の面内バラツキが生じるおそれがある。吸収層の厚さは、0.3~50μmがより好ましい。また、反射層や、反射防止層等の他の機能層を備えた場合、その材質によっては、吸収層が厚すぎると割れ等が生ずるおそれがある。そのため、

吸収層の厚さは、0.3~10μmがより好ましい

。」

(イ) 訂正事項1-2の訂正は、以下に示す明細書の記載(【表17】の色素略号ASi-1のλ

max(A)DCM

が883nmであること)を踏まえると、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。

「【0256】

【表17】

139

127

0001431088000018.jpg

(ウ) 訂正事項1-3の訂正は、以下に示す「スクアリリウム色素」についての明細書の記載を踏まえると、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであると認められる。

「【0090】

色素(A)であるスクアリリウム色素としては、下記式(ASi)

または(ASii)

で表されるスクアリリウム色素が好ましい

【0091】

【化8】

124

137

0001431088000019.jpg

【0092】

ただし、式(ASi)および(ASii)中の記号は以下のとおりである。

R

161

は、炭素数3~20の分岐アルキル基、または炭素数13~20の直鎖アルキル基である。R

161

は、透明樹脂やホスト溶媒への溶解性の観点から、炭素数8~20の分岐アルキル基が好ましく、炭素数16~20の直鎖アルキル基がより好ましい。R

161

は、透明樹脂中での高透過率維持の観点から炭素数8~20の分岐アルキル基がより好ましい。

【0093】

Y

3

はC-R

179

またはNである。

R

162

~R

167

およびR

171

~R

179

は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホ基、ヒドロキシ基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、リン酸基、-NR

112

R

113

基、-NHSO

2

R

114

基、-NHCOR

115

基、-SR

116

基、-SO

2

R

117

基、-OSO

2

R

118

基、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。

【0094】

員数が3~14の複素環基としては、ヘテロ原子として、N、OおよびSから選ばれる少なくとも1種を含む複素環基が挙げられる。R

171

は、透明樹脂やホスト溶媒への溶解性の観点から、炭素数8~20の直鎖アルキル基および炭素数8~20の分岐アルキル基が好ましい。R

171

は、透明樹脂中での高透過率維持の観点から炭素数16~20の分岐アルキル基がより好ましい。R

162

~R

167

およびR

172

~R

178

は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、-NHSO

2

R

114

基、または-NHCOR

115

基が好ましく、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、または-NHCOR

115

基がより好ましい。R

179

は、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基が好ましく、炭素数1~8のアルキル基またはアルコキシ基がより好ましい。

各式に含まれる複数のR

161

~R

167

、R

171

~R

178

およびY

3

は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。

【0095】

R

112

~R

118

は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン置換アルキル基、炭素数3~14のシクロアルキル基、炭素数6~14のアリール基、もしくは員数が3~14の複素環基である。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子および塩素原子が好ましい。

【0096】

R

112

~R

118

は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基またはアルコキシ基が好ましく、炭素数1~16のアルキル基またはアルコキシ基がより好ましい。」

(エ) 前記(ア)~(ウ)の検討結果を踏まえると、訂正事項1の訂正は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。

また、訂正事項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

イ 訂正事項2、4~6

訂正事項2、4~6の訂正は、それぞれ請求項4、6~8を削除するものであるから、いずれも本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。

また、訂正事項2、4~6の訂正は、いずれも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

ウ 訂正事項7~9

訂正事項7~9の訂正は、多数項を引用している請求項において、引用請求項数を削減するものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合する。

また、訂正事項7~9の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合する。

エ 訂正事項3

訂正事項3の訂正が、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法120条の5第9項において準用する同法126条5項の規定に適合することは明らかである。

また、訂正事項3の訂正が、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項において準用する同法126条6項の規定に適合することも明らかである。

(3) 独立特許要件

本件特許異議の申立てにおいては請求項1~12について特許異議の申立てがされているから、本件訂正後の請求項1~12について、特許法120条の5第9項において読み替えて準用する同法126条7項に規定する独立特許要件は課されない。

(4) 本件訂正の適否についての当合議体の判断のまとめ

前記(1)~(3)において検討したとおり、訂正事項1~2、4~9の訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書1号又は3号に掲げる事項を目的とするものであって同項の規定に適合し、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するから、本件訂正は適法なものである。

また、訂正事項3の訂正については、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項を目的とするものであって同項の規定に適合し、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するから、本件訂正は適法なものである。

よって、前記結論のとおり、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。

第3 取消理由の概要

令和7年1月17日付け取消理由通知書(決定の予告)において、当合議体は、以下の(1)~(4)に示す取消理由1~4により、請求項1~3、9~12に係る特許は、取り消されるべきものであると判断し、その旨通知した。

(1) 取消理由1(進歩性の欠如)

本件特許の請求項1~3、9~12に係る発明は、下記の甲4号証に記載された発明、周知技術1及び技術常識1~3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

(2) 取消理由2(進歩性の欠如)

本件特許の請求項1~3、9~12に係る発明は、下記の甲23号証に記載された発明、周知技術1及び技術常識1~3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、前記請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

<主引用文献>

甲4号証 :国際公開第2017/094858号

甲23号証 :国際公開第2017/094672号

<周知技術1を示す文献>

甲14号証:FEW CHEMICALS社カタログ「FEW FUNCTIONAL DYES」2017年2月現在、55~62頁

甲13号証:特開2011-16879号公報

甲17号証:国際公開第2012/063964号

甲1号証 :特開2012-117030号公報

<技術常識1を示す文献>

引用文献1:特開2013-218312号公報

引用文献2:中澄博行ほか、「様々な分野で応用可能な広範囲波長領域の光を吸収するスクアリリウム系機能性色素」有機合成化学協会誌66巻5号(2008)53-63ページ

<技術常識2を示す文献>

引用文献3:国際公開第2016/114363号

<技術常識3を示す文献>

引用文献4:国際公開第2016/031810号

引用文献5:特開2014-149514号公報

なお、引用文献1~5は当審の職権調査により発見した文献である。

以下、各甲号証の文献を単に「甲4」等という。

(3) 取消理由3(サポート要件違反)

本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記に示す点で不備のため、請求項1~3、9~12に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

請求項1の「透明樹脂」については、「ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含[む]」と規定されているところ、一般に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂としては多様なものが存在するから、請求項1の「近赤外線吸収色素(A)」について、「式(ACi1)、(ACii1)、(ACii2)のいずれかで表されるシアニン系化合物」及び「式(ASi)で表されるスクアリリウム色素」の少なくとも一方を含むと限定したとしても、請求項1における「近赤外線吸収色素(A)」と「透明樹脂」の組合せは、様々な組合せが存在することになる。

しかしながら、本件特許の明細書の発明の詳細な説明においては、「透明樹脂」として市販品(透明樹脂R1~R3)を用いた組合せしか開示されておらず、「近赤外線吸収色素(A)」と「透明樹脂」の様々な組合せを含むような請求項1の範囲にまで拡張することは、当業者は認識できないというべきである。

(4) 取消理由4(実施可能要件違反)

本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記に示す点で不備のため、請求項1~3、9~12に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

請求項1の「透明樹脂」については、「ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含[む]」と規定されているところ、一般に、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂としては多様なものが存在するから、請求項1の「近赤外線吸収色素(A)」について、「式(ACi1)、(ACii1)、(ACii2)のいずれかで表されるシアニン系化合物」及び「式(ASi)で表されるスクアリリウム色素」の少なくとも一方を含むと限定したとしても、請求項1における「近赤外線吸収色素(A)」と「透明樹脂」の組合せは、様々な組合せが存在することになる。

しかしながら、本件特許の明細書の発明の詳細な説明においては、「透明樹脂」として上記市販品を用いた組合せしか開示されておらず、それ以外にどのような組合せにすれば、条件(i-1)~(i-3)を同時に満足させることができるのか開示されておらず、かかる組合せを発見するには当業者といえども過度の試行錯誤を要することになる。

第4 当合議体の判断

1 本件訂正発明について

前記第2のとおり、本件訂正は認められたから、本件特許の請求項1~3、5、9~12に係る発明(以下、請求項の番号に従い「本件訂正発明1」等といい、これらを総称して「本件訂正発明」という。)は、それぞれ、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~3、5、9~12に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~3、5、9~12の記載は、前記第2の3に示したとおりである。

2 甲4発明、甲23発明、周知技術1及び技術常識1~3の認定等

(1) 甲4発明の認定

甲4には次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されている。

<甲4発明>

「 吸収層および反射層を有し、下記(i-1)、(i-2)および(i-3)の要件を満たす光学フィルタであって、([請求項1])

(i-1)入射角0°の分光透過率曲線において、波長430~620nmの光の平均透過率が65%以上であり、かつ、波長600~700nmに透過率50%を示す波長を有する。

(i-2)波長615~725nmにおいて、入射角0°および入射角30°の分光透過率曲線における透過率の差分の絶対値を平均した値が8%/nm以下である。

(i-3)入射角60°の分光透過率曲線において波長730~1000nmの光の最大透過率が15%以下である。

前記吸収層は、ジクロロメタンに溶解して測定される光吸収スペクトルにおいて、下記(ii-1)および(ii-2)を満たす色素(D1)を含むものであり、([請求項2])

(ii-1)波長760~875nmに少なくとも一つの吸収極大波長を有する。

(ii-2)波長760~875nmにおける最大吸収波長の透過率を10%としたとき、波長650~800nmに透過率80%を示す波長を有する。

前記色素(D1)はシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、フタロシアニン系化合物、スクアリリウム系化合物およびジケトピロロピロール系化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものであり、([請求項3])

前記吸収層は、さらに下記(iii-1)を満たす色素(D2)を含むものであり、([請求項7])

(iii-1)ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~800nmの光吸収スペクトルにおいて、波長600~750nmに最大吸収波長を有する。

前記吸収層は、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリパラフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルフォスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の透明樹脂を含有するものであり、([請求項10])

ポリエステル樹脂の市販品として、OKP4HT、OKP4、B-OKP2、OKP-850(以上、いずれも大坂ガスケミカル(株)製、商品名)、バイロン(登録商標)103(東洋紡(株)製、商品名)等が挙げられ、([0145])

ポリカーボネート樹脂の市販品として、LeXan(登録商標)ML9103(sabic社製、商品名)、EP5000(三菱ガス化学(株)社製、商品名)、SP3810(帝人化成(株)製、商品名)、SP1516(帝人化成(株)製、商品名)、TS2020(帝人化成(株)製、商品名)、xylex(登録商標)7507(sabic社製、商品名)等が挙げられ、([0146])

ポリイミド樹脂の市販品として、ネオプリム(登録商標)C3650(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同C3G30(三菱ガス化学(株)製、商品名)、同C3450(三菱ガス化学(株)製、商品名)、JL-20(新日本理化製、商品名)(これらのポリイミド樹脂には、シリカが含まれていてもよい)等が挙げられ、([0147])

光学フィルタは、撮像装置に備えられるものであり、([請求項20])

色素(D2)として、(D2-1)で表されるスクアリリウム系化合物が用いられ、([0082])

吸収層の厚さは1.1~1.3μmであり、([0198])

反射層として、厚さ0.3mmのガラス(D263)基板に蒸着法により、TiO

2

膜とSiO

2

膜を交互に積層して、合計積層数が52層の誘電体多層膜からなる反射層Xが形成され、([0204])

反射層Xの膜表面で測定される、それぞれ入射角0°、60°の場合の波長730~1000nmの光の分光反射率曲線は図4に示されるものである、([0205])

光学フィルタ。

<スクアリリウム系化合物(D2-1)>([0084]の[化7])

52

124

0001431088000020.jpg

82

124

0001431088000021.jpg

(2) 甲23発明の認定

甲23には次の発明(以下「甲23発明」という。)が記載されている。

<甲23発明>

「光吸収層を含む基材(i)を有し、かつ、可視光を透過する光学フィルターであって、

前記光吸収層が波長750~1150nmの領域に吸収極大を有し、

波長850~1050nmの領域において、前記光学フィルターの垂直方向から測定した場合の平均OD値が2.0以上であり、かつ、前記光学フィルターの垂直方向に対して60°の角度から測定した場合の平均OD値が2.0以上であり、([請求項1])

波長430~580nmの領域において、前記光学フィルターの垂直方向から測定した場合の透過率の平均値が30%以上80%以下であり、([請求項2])

前記光吸収層が、波長750~1150nmの領域に吸収極大を有する化合物(S)を含み、([請求項3])

前記化合物(S)が、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物、シアニン系化合物、ジイモニウム系化合物、金属ジチオラート系化合物、リン酸銅錯体系化合物およびピロロピロール系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、([請求項4])

前記光吸収層が、波長650~750nmの領域に吸収極大を有する化合物(A)をさらに含み、([請求項6])

前記化合物(A)が、スクアリリウム系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、クロコニウム系化合物およびシアニン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、([請求項7])

前記スクアリリウム系化合物としては、下記式(I)で表されるスクアリリウム系化合物および下記式(II)で表されるスクアリリウム系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、([0085])

前記光吸収層が、環状ポリオレフィン系樹脂、芳香族ポリエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、フルオレンポリカーボネート系樹脂、フルオレンポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリエーテルサルホン系樹脂、ポリパラフェニレン系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、フッ素化芳香族ポリマー系樹脂、(変性)アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、アリルエステル系硬化型樹脂、シルセスキオキサン系紫外線硬化型樹脂、アクリル系紫外線硬化型樹脂、ビニル系紫外線硬化型樹脂およびゾルゲル法により形成されたシリカを主成分とする樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の透明樹脂を含み、

([請求項8]、[0163])

ポリイミド系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製ネオプリムLなどを挙げることができ、ポリカーボネート系樹脂の市販品としては、帝人(株)製ピュアエースなどを挙げることができ、フルオレンポリカーボネート系樹脂の市販品としては、三菱ガス化学(株)製ユピゼータEP-5000などを挙げることができ、フルオレンポリエステル系樹脂の市販品としては、大阪ガスケミカル(株)製OKP4HTなどを挙げることができ、([0179])

前記基材(i)の少なくとも一方の面に誘電体多層膜を有し、誘電体多層膜は、近赤外線を反射する能力を有する膜または可視域における反射防止効果を有する膜であり、誘電体多層膜を有することでより優れた可視光透過率と近赤外線カット特性を達成することができ、([請求項9]、[0194])

近赤外線吸収色素含有樹脂層を、透明ガラス基板あるいは透明樹脂基板上に設ける場合、近赤外線吸収色素含有樹脂層の厚みは、好ましくは0.5~150μm、より好ましくは0.7~100μm、さらに好ましくは1~50μm、特に好ましくは2~30μmである、([0255])

光学フィルター。

45

108

0001431088000022.jpg

44

114

0001431088000023.jpg

(3) 甲14、甲13、甲17、甲1の記載事項と周知技術1の認定

ア 甲14の記載事項

(ア) 甲14の55~62頁には、以下に示すとおり、近赤外吸収剤(NEAR-INFRARED ABSORBERS、表紙参照)として用いられる次のシアニン系染料について、400~1100nmの範囲の吸収スペクトルが開示されている(溶媒はメタノール)。λ

max

は極大吸収ピーク波長を表す。

(イ) ここで、縦軸のAbsorbance(吸光度)については、極大吸収ピーク波長λ

max

における大きさを5マス分に統一規格化して、その相対的強度として示されているから、縦軸の1マス分は、極大吸収ピーク波長λ

max

における大きさの20%に相当すると認められる。

(ウ) 甲14のシアニン系染料と本件特許の近赤外線吸収色素(A)の対応関係は以下のとおりである。

S2437(λ

max

=916nm):(ACi1-2B)に相当

S2007(λ

max

=996nm):(ACii2-2B)に相当

S0889(λ

max

=997nm):(ACii1-1B)に相当

S0813(λ

max

=1024nm):(ACii2-1B)に相当

S2544(λ

max

=1024nm):(ACii2-1X1)に相当

182

135

0001431088000024.jpg

199

136

0001431088000025.jpg

192

136

0001431088000026.jpg

189

134

0001431088000027.jpg

185

128

0001431088000028.jpg

イ 甲13の記載事項

甲13には、次の記載がある。下線は当審において付した(以下同様である)。

なお、前記アに摘記した甲14のシアニン系染料のうち、S0813は、甲13の段落【0116】のNo.6と同一であり、光学フィルターにおいて用いられるものである。

「【0115】

〔実施例1〕本発明の

蛍光消光材料を用いた光学フィルター

の作成及び蛍光消光能評価

本発明の

蛍光消光材料の成分としての下記化合物No.1~No.6

について、上記一般式(IV)で表されるシアニン陽イオンとpAnq

-

で表されるq価の陰イオンとからなるシアニン化合物である下記化合物Aに対する蛍光消光能を、以下の手順で評価した。

デービーボンド5541(ダイヤボンド社製アクリル系粘着剤)5g、メチルエチルケトン0.999g、下記化合物Aの0.05質量%メチルエチルケトン溶液0.5g、本発明の蛍光消光材料の成分としてのシアニン化合物を〔表1〕の配合で0.5gのメチルエチルケトンに溶解したもの、及び本発明の蛍光消光材料の成分としてのルーセンタイトSTN(コープケミカル社製親油性スメクタイト)を〔表1〕の配合で混合して、フィルム形成用組成物(塗工液)を調製した。該塗工液を、易密着処理した188μm厚のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、該塗工液をバーコーター#90により塗布した後、100°Cで10分間乾燥させ、塗工面に0.9mm厚のガラスを貼り合わせて試験片(光学フィルター)を得た。該試験片について、透過スペクトル及び蛍光スペクトル並びに化合物Aの蛍光のλmaxにおける蛍光強度を測定した。結果を〔表1〕に示す。

【0116】

【化19】

64

126

0001431088000029.jpg

ウ 甲17の記載事項

甲17の段落[0044]~[0047]には、994nm付近に吸収極大を有する近赤外吸収シアニン染料(化学式1)について、図1に吸収スペクトルが開示されている(溶媒はメタノール)。

なお、甲17の化学式1で表される化合物は、甲14のS2007と同一のカチオン骨格を有するものである。

<化学式1>([0022]の[化5])

48

95

0001431088000030.jpg

「[図1]

89

142

0001431088000031.jpg

エ 甲1の記載事項

甲1には、次の記載がある。

ここで、甲1の段落【0096】の【化44】に示された「Dye-H」はシアニン系染料であり、そのカチオン骨格は、本件特許の色素(ACii2-2)のカチオン骨格と同じであるから、その吸収特性は、本件特許の段落【0256】~【0265】の【表17】~【表21】の色素番号ACii2-2Bの吸収特性と大差がないものと認められる。

また、甲1の段落【0098】の【化45】に示された「Dye-I」はシアニン系染料であり、そのカチオン骨格は、本件特許の色素(ACii1-1)のカチオン骨格と同じであるから、その吸収特性は、本件特許の段落【0256】~【0265】の【表17】~【表21】の色素番号ACii2-2Pの吸収特性と大差がないものと認められる。

「【0001】

本発明は、新規な近赤外光吸収色素化合物及びこれを用いた近赤外光吸収膜形成材料、更に該材料を用いて形成された近赤外光吸収膜に関する。更に詳述すると、本発明は、

近赤外光吸収剤を用いた光学フィルター

、また半導体素子などの製造工程における微細加工に用いられる近赤外光吸収色素化合物、該近赤外光吸収色素化合物を用いた近赤外光吸収膜形成材料に関し、更には該材料を用いて形成された近赤外光吸収膜に関する。」

「【0004】

CCDカメラに近赤外光吸収フィルターを光学フィルターとして用いること

により、入射する近赤外線を遮断し、その撮影素子の分光感度を視感度に近づけることができる。この目的における光学フィルターとしては、シアニン色素、フタロシアニン化合物、ジイモニウム塩化合物等の近赤外光吸収色素化合物が用いられている。CCDカメラに近赤外光吸収色素化合物を含有した光学フィルターに関しては、例えば特許文献2:特開平11-23837号公報に記載されている。」

「【0079】

本発明の近赤外光吸収膜形成材料を塗布することにより形成される膜は、波長500~1,200nm、

特に800~1,200nmの光を吸収する色素を含有し、該波長領域の近赤外光を吸収する膜として機能する

。」

「【0096】

[合成例1-8]1-ブチル-2-(2-{3-[2-(1-ブチル-1H-ベンゾ[cd]インドール-2-イリデン)エチリデン]-2-(N,N-ジフェニルアミノ)シクロペンタ-1-エン-1-イル}エテニル)-ベンゾ[cd]インドール-1-イウム=1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成

(Dye-H)

【化44】

33

135

0001431088000032.jpg

「【0098】

[合成例1-9]1-ブチル-2-(2-{3-[2-(1-ブチル-1H-ベンゾ[cd]インドール-2-イリデン)エチリデン]-2-フェニルシクロヘキサ-1-エン-1-イル}エテニル)-ベンゾ[cd]インドール-1-イウム=1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-(ピバロイルオキシ)プロパンスルホネートの合成

(Dye-I)

【化45】

33

133

0001431088000033.jpg

オ 周知技術1の認定

前記ア~エにおいて摘記した事項に例示されるように、次の技術事項は周知技術である(以下「周知技術1」という。)。

<周知技術1>

「883~1100nmの範囲に吸収極大を有するシアニン系染料(S2437、S2007、S0889、S0813、S2544)であって、有機溶剤に溶解して測定される吸光度曲線において、最大吸収波長における吸光度に対する、波長400nmにおける吸光度が10%程度以下であり、波長550nmにおける吸光度が5%程度以下であるシアニン系染料を光学フィルターに赤外吸収剤として含有させること。」

(4) 引用文献1、2の記載事項と技術常識1の認定

ア 引用文献1の記載事項

引用文献1には、次の記載がある。

「【背景技術】

【0002】

ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、カメラ機能付き携帯電話などの固体撮像装置にはカラー画像の固体撮像素子であるCCDやCMOSイメージセンサーが使用されているが、これら固体撮像素子は、その受光部において人間の目では感知できない近赤外線に感度を有するシリコンフォトダイオードが使用されている。これらの固体撮像素子では、人間の目で見て自然な色合いにさせる視感度補正を行うことが必要であり、特定の波長領域を選択的に透過する近赤外線カットフィルターを用いることが多い。

【0003】

このような近赤外線カットフィルターとしては、従来から、各種方法で製造されたものが使用されており、たとえば、透明樹脂中に近赤外線に吸収をもつ染料や顔料を含有させたものが使用されている。

...(中略)...

【0007】

さらに、特開平6-200113号公報(特許文献6)などには、有機系色素であるにもかかわらず耐熱性および耐候性に優れるフタロシアニン系色素を使用することが提案されている。しかしながら、通常のフタロシアニン系色素は、色素の会合が強いことから、溶媒への溶解性が悪く、顔料としての利用が多い。

【0008】

特許2664630号公報(特許文献7)および特許3959143号公報(特許文献8)には、フタロシアニン系色素の上記のような課題を解決する為に、フタロシアニン系色素に特定の官能基を導入することで樹脂への相溶性を改善する方法が提案されている。しかしながら、これらにおいても樹脂への相溶性を改善するだけであり、フタロシアニン系色素の会合を抑制するには至っていない。

【0009】

樹脂中において、フタロシアニン系色素同士が会合すると、吸収強度や可視光透過率の低下、吸収帯域のブロードニングが生じてしまい、高い可視光透過率と目的とする波長域の効率的な光線カット性能との両立が難しいという問題があった。」

イ 引用文献2の記載事項

引用文献2には、次の記載がある。

60ページ左欄24-29行

「一般的なスクアリリウム系色素は,

四角酸の1,3-位に同じ複素環や芳香環が導入される対称型スクアリリウム色素として得られる。これら色素は,色素問の会合や凝集を起こしやすく,それらを抑制し,任意の吸収波長に分子設計するためには,四角酸部分に異なる成分を導入することが必要となる。」

61ページ左欄28-43行

「色素分子が会合体を形成する場合,分子間の遷移モーメントの相互作用により吸収特性は大きく変化する。色素の二量体の相互作用は,主に平行配列とhead-to-tail配列の2通りの配列に起因する。平行配列では,単量体よりも短波長側に,平行配列による会合体の吸収帯が現れ,この会合体をH会合体(HypsochomicのH),'吸収帯をH-バンドと呼ぶ。一方,head-to-tail配列では,単量体よりも長波長側に,会合体の吸収帯が現れる。この会合体は発見者の名を取ってJ会合体と呼ばれている。また,この吸収帯をJ-バンドと呼ぶ。色素の中心を結ぶ直線と遷移モーメントのなす角が,0-90° の間の角度で変化すれば,この角度に応じて吸収帯のシフト量が変化し,H-またはJ-会合に由来する分裂したピークが現れることになる。」

ウ 技術常識1の認定

前記ア及びイにおいて摘記した事項を踏まえると、次の技術事項は当業者にとって技術常識であるといえる(以下「技術常識1」という。)

<技術常識1>

「樹脂中においては色素同士が会合することがあり、色素が会合すると、吸収強度や可視光透過率の低下、吸収帯域のブロードニングや吸収帯のシフトが生じてしまうので、抑制すべきこと。」

(5) 引用文献3の記載事項と技術常識2の認定

ア 引用文献3の記載事項

引用文献3には、次の記載がある。

「[0045][吸収層]

吸収層は、近赤外線吸収材(A)と、透明樹脂(B)とを含有する層であり、典型的には、透明樹脂(B)中に近赤外線吸収材(A)が均一に分散した層である。吸収層は、さらに紫外線吸収材(U)を含有することが好ましい。

吸収層は、例えば、近赤外線吸収材(A)を含む層と、紫外線吸収材(U)を含む層を別の層として複数の吸収層を設けるようにしてもよい。」

「[0107](紫外線吸収色素(U))

紫外線吸収色素(U)(以下、色素(U)ともいう。)は、波長430nm以下の光を吸収する化合物である。

色素(U)としては、下記(iv-1)および(iv-2)の要件を満たす化合物が好ましい

[0108] (iv-1)

ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~800nmの光吸収スペクトル

において、波長415nm以下に、少なくとも一つの吸収極大波長を有し、波長415nm以下における吸収極大のうち、最も長波長側の吸収極大波長λ

max

(UV)は、波長360~415nmにある。

(iv-2)

ジクロロメタンに溶解して測定される分光透過率曲線

において、前記吸収極大波長λ

max

(UV)における透過率を10%としたとき、前記吸収極大波長λ

max

(UV)より長波長で透過率が90%となる波長λ

L90

と、前記吸収極大波長λ

max

(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λ

L50

との差λ

L90

L50

が13nm以下である。

[0109]

(iv-1)の要件を満たす色素(U)の吸収極大波長は、透明樹脂中においても大きく変化しない

。すなわち、(iv-1)を満たす色素(U)は、該色素(U)を

透明樹脂に溶解または分散した場合にも

、樹脂中吸収スペクトルにおける吸収極大波長λ

max・P

(UV)が概ね波長360~415nm内に存在するため、

好ましい

[0110]

(iv-2)の要件を満たす色素(U)は、透明樹脂に含まれる場合にも優れた急峻性を示す

。すなわち、(iv-2)を満たす色素(U)は、該色素(U)を、

透明樹脂に溶解または分散した場合にも

、吸収極大波長λ

max

(UV)より長波長で透過率が50%となる波長λ

P50

と透過率90%となる波長λ

P90

の差(λ

P90

P50

)が概ね14nm以下となり、

ジクロロメタン中と同等の急峻性を示し、好ましい

。なお、色素(U)を透明樹脂に溶解または分散した場合の、λ

P90

P50

は13nm以下がより好ましく、12nm以下がより一層好ましい。

[0111]

(iv-1)の要件を満たす色素(U)を使用すれば、透明樹脂中に溶解または分散して近赤外線吸収層として得られる実施形態のNIRフィルタ

の波長λ

0

(UV)と波長λ

30

(UV)を、いずれも波長450nmより短い波長領域、好ましくは波長400~425nmに存在させることができる。

(iv-2)の要件を満たす色素(U)を使用すれば、透明樹脂中に溶解または分散して近赤外線吸収層として得られる実施形態のNIRフィルタ

において、色素(U)による吸収極大波長の長波長側での透過率が50%となる波長と透過率が90%となる波長の差を小さくできる。すなわち、該波長領域において、分光透過率曲線の変化を急峻にできる。

[0112] (iv-1)および(iv-2)を満たす色素(U1)を使用すれば、実施形態のNIRフィルタにおいて、波長450nmより短い領域、好ましくは波長400~425nmに波長λ

0

(UV)と波長λ

30

(UV)を存在させやすく、かつ波長450nmより短い領域における分光透過率曲線の急峻な変化が得られやすい。」

イ 技術常識2の認定

前記アにおいて摘記した事項を踏まえると、次の技術事項は当業者にとって技術常識であるといえる(以下「技術常識2」という。)

<技術常識2>

「光吸収層に含まれる吸収色素を選択してNIRフィルタの設計をする際には、色素が透明樹脂に溶解又は分散したときに測定される光学特性が、ジクロロメタンに溶解したときに測定される光学特性から大きく変化しないような色素を材料として選択することが好ましいこと。」

(6) 引用文献4、5の記載事項と技術常識3の認定

ア 引用文献4の記載事項

引用文献4には、次の記載がある。

「[0005] 近年においては、

近赤外線吸収物質における可視透明性のさらなる改善が求められている

よって、本発明の目的は、

近赤外域に吸収を有し、可視透明性に優れた膜を形成できる組成物を提供すること

にある。また、硬化膜、

近赤外線吸収フィルタ

固体撮像素子

、赤外線センサおよび化合物を提供することにある。

[0006] かかる状況のもと、本発明者らが鋭意検討を行った結果、

波長700~1000nmの範囲に極大吸収波長を有し、波長550nmの吸光度を、極大吸収波長の吸光度で割った値が0.015以下である近赤外線吸収物質を用いること

により、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。(以下省略)」

「[0076]-極大吸収波長、半値幅、吸光度比の評価-

各化合物を、下記表に記載の測定溶媒に溶かし(濃度2.5×10

-6

mol/L)、吸収スペクトルを測定した(光路長10mm)。

各化合物の吸収スペクトルの極大吸収波長(λmax)、極大吸収波長の半値幅、

波長500nm(合議体注:誤記であり、正しくは「550nm」と認められる。)の吸光度を、極大吸収波長の吸光度で割った値である吸光度比(550nm/λmax)

を下記表1に示す。また、図3に、化合物D-1のクロロホルム中での吸収スペクトルを示す。

[0077][表1]

105

138

0001431088000034.jpg

[0078] 上記結果より、実施例の化合物は、

吸光度比が0.015以下であり、可視透明性に優れていた

。これに対し、比較例の化合物は、0.015を超えており、可視透明性が実施例の化合物よりも劣っていた。

また、図3に化合物D-1のクロロホルム中での吸収スペクトルを示す。」

イ 引用文献5の記載事項

引用文献5には、次の記載がある。

「【0011】

本発明者等は、基材(基板とも称す)上に層を形成する材料としての積層用樹脂組成物について種々検討したところ、樹脂組成物が、分子内に1以上のオキシラン環を有し、更に水酸基及び/又はエステル基を有するオキシラン化合物と、色素として600~900nmの波長域に吸収極大を有する色素とを含むものであると、該樹脂組成物が耐熱性に優れ、基材上に高温蒸着により層を形成するための材料として好適に用いることができることを見いだした。また、このような樹脂組成物を基材上に積層して得られた積層構造の硬化物(積層体又は積層物とも称す)が、リフロー工程に耐え得る耐熱性を有するものとなることを見いだした。そして、

このような積層体を含む光選択透過フィルター及び撮像素子が、光学分野やオプトデバイス分野に極めて有用であること

を見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達した。

【0012】

すなわち本発明は、基材上に層を形成する材料として用いられる樹脂組成物であって、該樹脂組成物は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物、及び、色素を含み、該オキシラン化合物は、水酸基及び/又はエステル基を有する化合物を含み、該色素は、600~900nmの波長域に吸収極大を有する色素を含む積層用樹脂組成物である。

本発明はまた、上記積層用樹脂組成物からなる層を基材上に形成して得られる積層体でもある。

本発明は更に、

上記積層体を含む光選択透過フィルターでもある。

本発明はそして、

上記積層体を含む撮像素子でもある

以下に本発明を詳述する。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。

【0013】

本明細書中、「吸収極大」とは、波長と吸光度との関係を、X軸とY軸との2次元グラフ(但し、X軸を波長とし、Y軸を吸光度とする)で表した場合に、吸光度が増加から減少に転じる頂点を意味し、この頂点の波長を「吸収極大波長」という。また、吸収極大波長(吸収ピーク波長とも称す)の中で、吸光度が最大のものを、「最大吸収波長」又は「最大吸収ピーク波長」と称す。

「吸収幅(吸収帯幅とも称す)」とは、任意の透過強度における波長幅である。吸収幅が広い(大きい)と、光選択透過性により優れ、また、反射膜の設計条件が広がるために

光選択透過フィルター(赤外線カットフィルター等)

の製造が容易になる。

【0014】

〔積層用樹脂組成物〕

本発明の積層用樹脂組成物(単に「樹脂組成物」とも称す)は、分子内に1以上のオキシラン環を有するオキシラン化合物、及び、色素を必須成分とするが、本発明の効果を妨げない範囲でその他の成分を含有してもよく、これらの成分はそれぞれ1種又は2種以上を用いることができる。

【0015】

-色素-

本発明の積層用樹脂組成物において、

色素は、600~900nmの波長域に吸収極大を有する色素(以下、特定色素とも称す)を含む

このような色素を含むことで、特に780nm~10μmの赤外線を低減でき、これに起因する光学ノイズを除去することが可能となる

。本発明では、このように吸収極大が600~900nmと、従来の近赤外線吸収剤の中でも短波長側に吸収極大を有する色素を必須とするが、これによって、

可視光透過率が高く、かつ近赤外領域の遮断性能に優れるという、光学ノイズ低減のために好適な性能が得られることになる

。上記特定色素として好ましくは、600~800nmの波長域に吸収極大を有する色素であり、より好ましくは650~750nmの波長域に吸収極大を有する色素である。

【0016】

上記特定色素は、600~900nmの波長域に吸収極大を複数有していてもよい。600~900nmの波長域における吸収極大のうち、最も短波長側の吸収極大が650~750nmの波長域にあることが好ましい。

【0017】

上記特定色素はまた、400nm以上、600nm未満の波長域に実質的に吸収極大を持たないものであることが好ましい

【0018】

上記樹脂組成物において、色素は、樹脂組成物中に分散又は溶解されていることが好ましい。より好ましくは、樹脂組成物中に色素が溶解して含有されてなる形態である。すなわち、色素が樹脂組成物に含まれる樹脂成分や溶媒に溶解するものであることが好ましい。色素は、1種又は2種以上を使用することができる。」

「【0275】

4、硬化物の透過率(着色の有無)

吸光度計(島津製作所社製、分光光度計UV-3100)を用いて、最終硬化後の時点で、可視光の短波長領域である波長400nm、及び、可視光の中心領域である550nmにおける硬化物の透過率を測定し、着色の有無を評価した

。」

ウ 技術常識3の認定

前記ア及びイにおいて摘記した事項を踏まえると、次の技術事項は当業者にとって技術常識であるといえる(以下「技術常識3」という。)

<技術常識3>

「撮像装置の近赤外吸収フィルタの可視光透過率を評価するために、可視光の短波長領域である波長400nm、及び、可視光の中心領域である550nmにおける透過率を測定すること。

また、近赤外吸収フィルタに含まれる色素の光学特性を評価するために、特定波長の吸光度を極大吸収波長の吸光度で割った値である吸光度比(例えば、550nm/λ

max

)という指標を用いること。」

3 甲4発明に基づく本件訂正発明1の進歩性の判断について

(1) 対比

本件訂正発明1と甲4発明を対比する。

ア 甲4発明の「光学フィルタ」は、本件訂正発明1の「光学フィルタ」に相当し、本件訂正発明1と甲4発明は、「光学フィルタ」の発明である点において一致する。

イ(ア) 甲4発明の「波長760~875nmに少なくとも一つの吸収極大波長を有する」「色素(D1)」は、本件訂正発明1の「近赤外線吸収色素(A)」に相当する。

そして、甲4発明の「吸収層」は、「色素(D1)」と「透明樹脂」を含有するものであるから、本件訂正発明1の「近赤外線吸収色素(A)」と「透明樹脂」とを含有する「吸収層」に相当する。

(イ) 甲4発明の「反射層」は、「TiO

2

膜とSiO

2

膜を交互に積層して、合計積層数が52層の誘電体多層膜からなる反射層X」であるから、本件訂正発明1の「誘電体多層膜からなる反射層」に相当する。

(ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、本件訂正発明1と甲4発明は、「近赤外線吸収色素と、透明樹脂とを含有する吸収層と、誘電体多層膜からなる反射層とを有する」点において共通する。

ウ 甲4発明において、「吸収層の厚さ」は「1.1~1.3μm」であるから、本件訂正発明1と甲4発明は、「前記吸収層の厚さが1μm程度である」点において共通する。

(2) 一致点及び相違点の認定

前記(1)の対比の結果より、本件訂正発明1と甲4発明は、次のアに示す一致点Aにおいて一致し、以下のイに示す相違点Aにおいて相違する。

ア 一致点A

「近赤外線吸収色素と、透明樹脂とを含有する吸収層と、誘電体多層膜からなる反射層とを有する光学フィルタであって、

前記吸収層の厚さが1μm程度である、光学フィルタ。」

イ 相違点A

(ア) 相違点A1

本件訂正発明1においては、

「近赤外線吸収色素(A)」が「式(ASi)で表されるスクアリリウム色素を含み」、

「透明樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み」、

「近赤外線吸収色素(A)」が「下記の条件(i-1)~(i-3)を満足」し、「透明樹脂」が「前記近赤外線吸収色素(A)との関係において下記(i-3)を満足する」ものであるのに対して、

甲4発明においては、

「色素(D1)」として、「スクアリリウム系化合物」は選択肢としてあるものの、本件訂正発明1のように「式(ASi)で表されるスクアリリウム色素」は採用されてはおらず、

「透明樹脂」として、「ポリエステル系樹脂」、「ポリカーボネート系樹脂」、「ポリイミド系樹脂」は選択肢としてあるものの、上記「色素(D1)」が「シアニン系化合物」や「スクアリリウム系化合物」である場合の組合せとして、これらの選択肢が示されてはおらず、

「色素(D1)」が、条件(i-1)~(i-2)を満足するものではなく、「色素(D1)」との関係において「透明樹脂」が、条件(i-3)を満足するか不明である点。

<条件(i-1)>

「ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ

max(A)DCM

が883~1100nmの波長領域にある。」

<条件(i-2)>

「ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ

max(A)DCM

における吸光度をABS

λmax(A)DCM

、波長400nmにおける吸光度をABS

400(A)DCM

、波長550nmにおける吸光度をABS

550(A)DCM

としたときに、下記式(1)および(2)を満足する。

ABS

400(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.10 ...(1)

ABS

550(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.04 ...(2)」

<条件(i-3)>

「前記透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ

max(A)TR

が850~1100nmの波長領域にあり、最大吸収波長λ

max(A)TR

における吸光度をABS

λmax(A)TR

、波長400nmにおける吸光度をABS

400(A)TR

、波長550nmにおける吸光度をABS

550(A)TR

としたときに、下記式(3)および(4)を満足する。

ABS

400(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

<0.15 ...(3)

ABS

550(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

<0.10 ...(4)」

(イ) 相違点A2

本件訂正発明1においては、「前記吸収層の厚さが0.3~10μmである」のに対して、

甲4発明においては、「吸収層の厚さは1.1~1.3μmであり」、「0.3~10μm」ではない点。

(3) 相違点Aの判断

ア 甲4発明において、「反射層Xの膜表面で測定される、それぞれ入射角0°、60°の場合の波長730~1000nmの光の分光反射率曲線は図4に示されるものである」ところ、図4の入射角60°の場合の分光反射率(実線)をみると、波長850nm~990nmの領域において反射率が100%に至らない領域があることが認められる(下図参照)。

したがって、甲4発明において、波長850~990nmの領域において透過率がゼロとなるようにすべきことは、当業者には自明の設計指針である。

82

124

0001431088000035.jpg

イ ここで、「883~1100nmの範囲に吸収極大を有するシアニン系染料(S2437、S2007、S0889、S0813、S2544)であって、有機溶剤に溶解して測定される吸光度曲線において、最大吸収波長における吸光度に対する、波長400nmにおける吸光度が10%程度以下であり、波長550nmにおける吸光度が5%程度以下であるシアニン系染料を光学フィルターに赤外吸収剤として含有させること」は、当業者にとって周知技術である(前記周知技術1を参照)。

ウ しかしながら、上記周知技術1は、シアニン系染料に関するものであって、スクアリリウム系染料に関するものではないから、甲4発明において、前記アの自明の設計指針に基づいて、「色素(D1)」として上記周知技術1を採用したとしても、本件訂正発明1のような「式(ASi)で表されるスクアリリウム色素」とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことであるとはいえない。

エ また、「(i-1)~(i-3)を満足する」「式(ASi)で表されるスクアリリウム色素」については、特許異議申立人が提出した他の文献のほか、当審の職権調査により発見した文献まで含めても、いずれの文献にも記載も示唆もされていない。

オ そうすると、甲4発明に基づいては、前記相違点A1に係る本件訂正発明1の構成とすることは当業者にとって容易に想到し得たことではない。

カ したがって、相違点A2についての検討を行うまでもなく、本件訂正発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4 甲4発明に基づく本件訂正発明2~3、5、9~12の進歩性の判断についてについて

本件訂正発明2~3、5、9~12は、本件訂正発明1の全ての構成を含むから、前記3において説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明2~3、5、9~12は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5 甲23発明に基づく本件訂正発明1の進歩性の判断について

(1) 対比

本件訂正発明1と甲23発明を対比する。

ア 甲23発明の「光学フィルター」は、本件訂正発明1の「光学フィルタ」に相当し、本件訂正発明1と甲23発明は、「光学フィルタ」の発明である点において一致する。

イ(ア) 甲23発明の「波長750~1150nmの領域に吸収極大を有する化合物(S)」及び「透明樹脂」は、それぞれ本件訂正発明1の「近赤外線吸収色素(A)」及び「透明樹脂」に相当するから、甲23発明の「化合物(S)」と「透明樹脂」を含む「光吸収層」は、本件訂正発明1の「近赤外線吸収色素(A)」と「透明樹脂」とを含有する「吸収層」に相当する。

(イ) 甲23発明の「近赤外線を反射する能力を有する膜または可視域における反射防止効果を有する」「誘電体多層膜」は、本件訂正発明1の「誘電体多層膜からなる反射層」に相当する。

(ウ) 前記(ア)及び(イ)を踏まえると、本件訂正発明1と甲23発明は、「近赤外線吸収色素と、透明樹脂とを含有する吸収層と、誘電体多層膜からなる反射層とを有する光学フィルタ」という点において共通する。

ウ 甲23発明において、「近赤外線吸収色素含有樹脂層の厚み」は、「好ましくは0.5~150μm、より好ましくは0.7~100μm、さらに好ましくは1~50μm、特に好ましくは2~30μmである」から、本件訂正発明1と甲23発明は、「前記吸収層の厚さが数μm~10μmの範囲である」ことを含む点において共通する。

(2) 一致点及び相違点の認定

前記(1)の対比の結果より、本件訂正発明1と甲23発明は、次のアに示す一致点Bにおいて一致し、以下のイに示す相違点Bにおいて相違する。

ア 一致点B

「近赤外線吸収色素と、透明樹脂とを含有する吸収層と、誘電体多層膜からなる反射層とを有する光学フィルタであって、

前記吸収層の厚さが数μm~10μmの範囲である、光学フィルタ。」

イ 相違点B

(ア) 相違点B1

本件訂正発明1においては、

「近赤外線吸収色素(A)」が「式(ASi)で表されるスクアリリウム色素を含み」、

「透明樹脂は、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含み」、

「近赤外線吸収色素(A)」が下記の条件(i-1)~(i-3)を満足し、「透明樹脂」が「前記近赤外線吸収色素(A)との関係において下記(i-3)を満足する」ものであるのに対して、

甲23発明においては、

「化合物(S)」として、「シアニン系化合物」や「スクアリリウム系化合物」は選択肢としてあるものの、本件訂正発明1のように「式(ASi)で表されるスクアリリウム色素」は採用されてはおらず、

「透明樹脂」として、「ポリイミド系樹脂」、「フルオレンポリカーボネート系樹脂」、「フルオレンポリエステル系樹脂」、「ポリカーボネート系樹脂」は選択肢としてあるものの、上記「化合物(S)」が「スクアリリウム系化合物」である場合の組合せとして、これらの選択肢が示されてはおらず、

「化合物(S)」が、条件(i-1)~(i-3)を満足するものではなく、「化合物(S)」との関係において「透明樹脂」が、条件(i-3)を満足するか不明である点。

<条件(i-1)>

「ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ

max(A)DCM

が883~1100nmの波長領域にある。」

<条件(i-2)>

「ジクロロメタンに溶解して測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ

max(A)DCM

における吸光度をABS

λmax(A)DCM

、波長400nmにおける吸光度をABS

400(A)DCM

、波長550nmにおける吸光度をABS

550(A)DCM

としたときに、下記式(1)および(2)を満足する。

ABS

400(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.10 ...(1)

ABS

550(A)DCM

/ABS

λmax(A)DCM

<0.04 ...(2)」

<条件(i-3)>

「前記透明樹脂に含有させて測定される波長350~1200nmの吸光度曲線において、最大吸収波長λ

max(A)TR

が850~1100nmの波長領域にあり、最大吸収波長λ

max(A)TR

における吸光度をABS

λmax(A)TR

、波長400nmにおける吸光度をABS

400(A)TR

、波長550nmにおける吸光度をABS

550(A)TR

としたときに、下記式(3)および(4)を満足する。

ABS

400(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

<0.15 ...(3)

ABS

550(A)TR

/ABS

λmax(A)TR

<0.10 ...(4)」

(イ) 相違点B2

本件訂正発明1においては、「前記吸収層の厚さが0.3~10μmである」のに対して、

甲23発明においては、「近赤外線吸収色素含有樹脂層の厚み」を「0.3~10μm」であると限定していない点。

(3) 相違点Bの判断

ア 甲23発明の「平均OD値」については、段落[0044]において以下の式(1)のように定義されており、「指定の波長範囲の平均OD値が高いと、光学フィルターはその波長領域の光のカット特性が高いことを表す」ものである(段落[0043])。

「ある波長域における平均OD値=-Log

10

(ある波長域における平均透過率(%)/100)・・・式(1)」

イ 甲23発明においては、「波長850~1050nmの領域において、前記光学フィルターの垂直方向から測定した場合の平均OD値が2.0以上であり、かつ、前記光学フィルターの垂直方向に対して60°の角度から測定した場合の平均OD値が2.0以上」であるから、上記式(1)に基づくと「波長850~1050nmの領域」における光学フィルターの平均透過率が1%以下になるように「化合物(S)」が選択されているといえる。

ウ 前記イを踏まえると、甲23発明において、波長850~1050nmの領域において透過率がゼロとなるようにすべきことは、当業者には自明の設計指針である。

エ しかしながら、前記3の(3)において説示したことと同様に、甲23発明において、前記ウの自明の設計指針に基づいて、「化合物(S)」として、前記周知技術1を採用したとしても、本件訂正発明1のような「式(ASi)で表されるスクアリリウム色素」とすることは、当業者といえども容易に想到し得たことであるとはいえない。

オ また、「(i-1)~(i-3)を満足する」「式(ASi)で表されるスクアリリウム色素」については、特許異議申立人が提出した他の文献のほか、当審の職権調査により発見した文献まで含めても、いずれの文献にも記載も示唆もされていない。

カ そうすると、甲23発明に基づいては、前記相違点B1に係る本件訂正発明1の構成とすることは当業者にとって容易に想到し得たことではない。

キ したがって、相違点B2についての検討を行うまでもなく、本件訂正発明1は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

6 甲23発明に基づく本件訂正発明2~3、5、9~12の進歩性の判断についてについて

本件訂正発明2~3、5、9~12は、本件訂正発明1の全ての構成を含むから、前記5において説示した理由と同様の理由により、本件訂正発明2~3、5、9~12は、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

7 サポート要件及び実施可能要件について

(1) 本件訂正発明が解決しようとする課題について

ア 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には次の記載がある。

「【発明が解決しようとする課題】

【0006】

しかしながら、上記いずれの近赤外カットフィルタにおいても、可視光の高い透過性と波長850~1100nmの長波長域における高い遮蔽性を両立できるものはない。

【0007】

本発明は、可視光の透過性を良好に維持しながら、近赤外光の遮蔽性において、特に長波長近赤外光の遮蔽性に優れる光学フィルタ、および該光学フィルタを用いた色再現性に優れる撮像装置の提供を目的とする。」

イ 前記アにおいて摘記した記載によれば、本件訂正発明が解決しようとする課題は、次のとおりであると認められる。

<本件訂正発明の課題>

「可視光の透過性を良好に維持しながら(すなわち可視光の透過性に悪影響を与えることなく)、波長850~1100nmの長波長域の近赤外光の遮蔽性に優れる光学フィルタ、および該光学フィルタを用いた色再現性に優れる撮像装置を提供すること。」

(2) 課題解決手段について

本件特許発明の要点は、条件(i-1)~(i-3)を満たす「式(ASi)で表されるスクアリリウム色素を含む近赤外線吸収色素(A)とポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種の透明樹脂の組合せ」を、0.3~10μmの厚さの吸収層に含有させたことにあると認められる。

この条件を満たせば、可視光の透過性を良好に維持しながら(すなわち可視光の透過性に悪影響を与えることなく)、波長850~1100nmの長波長域の近赤外光の遮蔽性に優れる光学フィルタを提供できることは明らかであるから、請求項1の範囲にまで拡張ないし一般化することは、当業者は認識できるというべきであり、請求項1~3、5、9~12に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていると考える。

また、式(ASi)で表されるスクアリリウム色素は、実施例として記載された色素ASi-1に対応するものであり、樹脂についてもポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種の透明樹脂に限定されていることを考慮すると、本件特許の発明の詳細な説明は、本件訂正発明について、その実施をするために当業者に過度の試行錯誤を要するものではないから、請求項1~3、5、9~12に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていると考える。

第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由について

1 申立理由の概要

特許異議申立人は、次の(1)~(7)に示す申立理由1~7を主張している。

(1) 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性欠如)

ア 新規性欠如

請求項1~5、7~8、11~12に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1~5、7~8、11~12に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。

イ 進歩性欠如

(ア) 請求項1~5、7~8、11~12に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲1の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~5、7~8、11~12に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。

(イ) 請求項9に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲4、6の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項9に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。

(2) 申立理由2(甲7に基づく新規性・進歩性欠如)

ア 新規性欠如

請求項1~4、7~8、11に係る発明は、甲7に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、請求項1~4、7~8、11に係る特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。

イ 進歩性欠如

請求項1~4、7~8、11に係る発明は、甲7に記載された発明及び甲7の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~4、7~8、11に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。

(3) 申立理由3(甲6に基づく進歩性欠如その1)

請求項1~3、6~9、11~12に係る発明は、甲6に記載された発明及び甲6の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~3、6~9、11~12に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。

(4) 申立理由4(甲6に基づく進歩性欠如その2)

請求項1~5、7~9、11~12に係る発明は、甲6に記載された発明及び甲12~14の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~5、7~9、11~12に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。

(5) 申立理由5(甲6に基づく進歩性欠如その3)

請求項1~5、7~9、11~12に係る発明は、甲6に記載された発明及び甲1、14の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~5、7~9、11~12に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。

(6) 申立理由6(甲16に基づく進歩性欠如その3)

請求項1~5、7~9、11~12に係る発明は、甲16に記載された発明及び甲17、4~6の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、請求項1~5、7~9、11~12に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し取り消すべきものである。

(7) 申立理由7(サポート要件違反)

以下のア~キに示すことを踏まえると、発明の詳細な説明に記載されたものを請求項1~12の範囲にまで拡張することはできないから、請求項1~12に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法113条4号に該当し取り消すべきものである。(以下、それぞれ「申立理由ア」などという。)

ア 請求項1~12について、条件(i-3)を充足するものを、実施例に具体的に示された色素と樹脂の組み合わせ以外のものにまで拡張できない。

イ 請求項1~6、9~12について、透明樹脂を、実施例に具体的に示された樹脂以外の樹脂、例えばアクリル樹脂にまで拡張できない。

ウ 請求項1,4,5について、式(ACi1)に係る化合物は、ポリカーボネート樹脂中で条件(i-3)を充足することが示されていない。

エ 請求項1、4~6について、

(ア) 式(ACiii1)に係る化合物は、アクリルイミド樹脂中で条件(i-3)を充足することが示されていない。

(イ) 式(ACiii2)に係る化合物は、アクリルイミド樹脂中で条件(i-3)を充足することが示されていない。

(ウ) 式(ACiii3)に係る化合物はポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びアクリルイミド樹脂中で条件(i-3)を充足することが示されていない。

(エ) 式(ACiv)に係る化合物はポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びアクリルイミド樹脂中で条件(i-3)を充足することが示されていない。

(オ) 式(ASii)に係る化合物は、樹脂の種類を問わず条件(i-3)を充足することが示されていない。

オ 請求項1~12について、本件特許発明は、「可視光の透過性を良好に維持しながら、近赤外光の遮蔽性において、特に長波長近赤外光の遮蔽性に優れる光学フィルタ、および該光学フィルタを用いた色再現性に優れる撮像装置の提供」を解決課題とするものであり、この課題解決には極大吸収波長が650~750nmである色素の制御が不可欠であるところ、この点が特定されていない。

カ 請求項1~12について、近赤外吸収色素(D)としてのスクアリリウム色素が可視光域の透過率に大きな影響を与え、かつそれが樹脂に応じて異なるところ、本件特許発明は近赤外吸収色素(D)としてのスクアリリウム色素と樹脂との関係を特定してないから、課題を解決することができない。

キ 近赤外吸収色素(D)として(I-12-24)のみが吸収層に使用されているところ(例1~11)、該(I-12-24)は近赤外吸収色素(A)とは異なる化合物であるから、樹脂との関係が常に同じであるとはいえないことは技術常識であり、本件特許発明は(I-12-24)以外の近赤外吸収色素(D)に拡張することはできない。

2 申立理由の検討

(1) 申立理由1~6について

特許異議申立人の主張する申立理由1~6について検討すると、「(i-1)~(i-3)を満足する」「式(ASi)で表されるスクアリリウム色素」については、特許異議申立人が提出したいずれの文献にも記載も示唆もされていないから、本件訂正発明は、甲1、6、7、16号証のいずれを出発点として検討しても、新規性又は進歩性が欠如しているとはいえない。

(2) 申立理由7について

ア 申立理由アから申立理由エについて

また、申立理由7について検討すると、特許異議申立人は、特許異議申立書の116ページから126ページにかけて、サポート要件違反の具体的な理由として前記1(7)に概要を示した申立理由アから申立理由キを主張しているところ、このうち申立理由アから申立理由エについては、前記第3の(3)に示した当審において通知したサポート要件違反の取消理由がこれらを包摂する取消理由となっている。

そうすると、当審において通知したサポート要件違反の取消理由が無いことは前記第4の7に示したとおりであるから、合議体は、申立理由アから申立理由エについては、理由が無く、本件訂正発明に係る特許は特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていると考える。

イ 申立理由オについて

特許異議申立人は、本件特許発明は、可視光域の透過性に課題のあるスクアリリウム色素(近赤外吸収色素(D)に相当)の使用を前提としており、スクアリリウム色素(近赤外吸収色素(D))が存在しないと、解決すべき課題自体が存在しなくなる旨主張している。

しかしながら、近赤外線吸収色素(A)は、可視光の透過性に悪影響を与えることなく波長850~1100nmの長波長域の近赤外域の光を吸収するものであるから、スクアリリウム色素(近赤外吸収色素(D)に相当)の有無に関わらず、近赤外線吸収色素(A)の使用自体により「可視光の透過性を良好に維持しながら(すなわち可視光の透過性に悪影響を与えることなく)、波長850~1100nmの長波長域の近赤外光の遮蔽性に優れる」という課題を解決することができるというべきである。

したがって、「スクアリリウム色素(近赤外吸収色素(D)に相当)」の使用は必須なものではなく、請求項1に近赤外吸収色素(D)の特定がなくとも、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしており、申立理由オは理由がない。

ウ 申立理由カについて

特許異議申立人は、近赤外吸収色素(D)としてのスクアリリウム色素(以下「スクアリリウム色素(D)」という。)が可視光域の透過率に大きな影響を与えており、スクアリリウム色素(D)の吸収スペクトルは樹脂によって異なるから、近赤外吸収色素(A)と樹脂との関係を特定しても、スクアリリウム色素(D)と樹脂との関係を特定しないと、発明の課題を解決できず、サポート要件を充足しない旨主張している。

しかしながら、前記イにおいて述べたように、発明が解決しようとする課題は、「可視光の透過性を良好に維持しながら(可視光の透過性に悪影響を与えることなく)、波長850~1100nmの長波長域における遮蔽性を提供できる」ことであるところ、当該課題は、スクアリリウム色素(D)が光学フィルタに追加的に含有されたとしても、近赤外線吸収色素(A)自体が可視光の透過性に悪影響を与えることなく波長850~1100nmの長波長域における近赤外域の光を吸収するのであるから、「可視光の透過性を良好に維持しながら(可視光の透過性に悪影響を与えることなく)、波長850~1100nmの長波長域における高い遮蔽性を提供できる」という課題は、近赤外線吸収色素(A)の使用に対応する課題であって、当該課題は近赤外線吸収色素(A)の使用により解決されるというべきである。

したがって、スクアリリウム色素(D)と樹脂との関係の特定に不足がある旨の申立理由カは理由がない。

エ 申立理由キ について

特許異議申立人は、近赤外吸収色素(D)は近赤外吸収色素(A)とは異なる化合物であるから、樹脂に対する相性が近赤外吸収色素(A)の場合と同じであるとはいえないことは技術常識から明らかであるところ、本件特許明細書には、樹脂に対する相性が近赤外吸収色素(A)と同様になる近赤外吸収色素(D)として、(I-12-24)のみが開示されているにすぎないから、これ以外の近赤外吸収色素(D)を含む本件特許発明は課題を解決することができず、サポート要件を充足しない旨主張している。

しかしながら、前記ウのとおり、「可視光の透過性を良好に維持しながら(可視光の透過性に悪影響を与えることなく)、波長850~1100nmの長波長域における高い遮蔽性を提供できる」という課題は、近赤外線吸収色素(A)の使用に対応する課題であって、当該課題は近赤外線吸収色素(A)の使用により解決されるというべきであるから、可視光域の透過率に影響を与える近赤外吸収色素(D)がどのようなものでも、問題にならないというべきである。

したがって、近赤外吸収色素(D)が(I-12-24)であることの特定のない発明は明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではない旨の申立理由キは、理由がない。

(3) 申立理由の検討のまとめ

前記(1)、(2)に検討のとおり、申立理由1~7はいずれも理由がない。

なお、前記第1に示したとおり、令和7年5月7日付けの通知書により特許異議申立人に対して期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許異議申立人は応答しなかった。

第6 むすび

前記第4において検討したとおり、請求項1~3、5、9~12に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由により取り消すことはできない。

また、前記第5において検討したとおり、請求項1~3、5、9~12に係る特許は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっても、取り消すことができない。

そして、他に請求項1~3、5、9~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

請求項4、6~8に係る特許についての特許異議の申立てについては、これらの請求項4、6~8は本件訂正により削除され、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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