結論テキスト
特許第7446503号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、〔1-4、7-9〕について訂正することを認める。
特許第7446503号の請求項1~6及び9に係る特許を維持する。
特許第7446503号の請求項7及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024700850 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7446503号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、
令和4年12月26日(優先権主張 令和4年11月30日)に出願された特願2022-208582号の一部を令和5年 4月 6日に新たな特許出願としたものであって、
令和6年 2月29日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、
令和6年 3月 8日に特許掲載公報が発行され、
その後、その特許に対し、
令和6年 9月 6日に特許異議申立人 山内 慶子(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立てがされ、
令和6年12月 5日に手続補正書(方式)が提出され、
令和7年 3月 3日付けで取消理由通知が通知され、
令和7年 5月 2日に特許権者 江崎グリコ株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされると共に意見書が提出され、
令和7年 5月19日付けで手続補正指令書(方式)が通知され、
令和7年 5月30日に特許権者から訂正請求書の手続補正書(方式)が提出され、
令和7年 6月20日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、
令和7年 7月22日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
令和7年5月2日に提出され、同年同月30日に提出された手続補正書(方式)により補正された訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程」
と記載されているのを
「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料
であって、アーモンドに由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合が2.5質量部以上であり、かつ当該原料100質量部に対しアーモンドに由来するタンパク質を1.0質量部以上含む原料
を、40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程」
に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2及び9も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「ナッツ類」と記載されているのを「
アーモンド
」に訂正する。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項2及び9も同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、3箇所「ナッツ類」と記載されているのをいずれも「
アーモンド
」に訂正する。
請求項3の記載を直接又は間接的に引用して特定する請求項4及び9も同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項9に、「請求項1、2、5~8のいずれか一項」と記載されているのを「請求項1、2、
3~6
のいずれか一項」に訂正する。
(7)一群の請求項について
訂正前の請求項2及び9は、訂正前の請求項1を直接引用しており、訂正事項1及び訂正事項2によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項l、2及び9に対応する訂正後の請求項1、2及び9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
また、訂正前の請求項4及び7~9は、訂正前の請求項3を直接又は間接的に引用しており、訂正事項3によって記載が訂正される請求項3に連動して訂正され、訂正前の請求項9は、訂正前の請求項7及び8を引用しており、訂正事項4及び5により請求項7及び8が削除されることに伴い、訂正事項6に従い訂正される。したがって、訂正前の請求項3、4及び7~9に対応する訂正後の請求項3、4及び7~9は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に該当する。
ここで、上記「一群の請求項」は請求項9を共有するから、これらは一体として1つの「一群の請求項」を構成するものである。
したがって、訂正前の請求項1~4及び7~9を、対応する訂正後の請求項1~4及び7~9に訂正する本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項について訂正するものである。
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載されていた「油脂」及び「アーモンドに由来するタンパク質」という発明特定事項に対して、願書に添付した明細書の【0049】及び【0050】等の記載に基づいて、発明特定事項を直列的に付加することにより、特許請求の範囲を減縮するものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。さらに、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び9の訂正も同様である。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
<特許異議申立人の主張について>
特許異議申立人は、令和7年7月22日に提出された意見書の第3~4ページにおいて、訂正前の明細書には「「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」において、ナッツ類に由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合は、1.5~6.0質量部が好ましく、より好ましくは2.5~5.0質量部である。」(【0049】)とする発明は記載されているものの、「アーモンドに由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合が2.5質量部以上」とする発明は何ら記載されておらず、同様に、「「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」100質量部に対し、ナッツ類に由来するタンパク質0.3~3.0質量部が好ましく、1.0~2.0質量部がより好ましい。」(【0050】)とする発明は記載されているものの、「当該原料100質量部に対しアーモンドに由来するタンパク質を1.0質量部以上含む」という発明は何ら記載されていないから、訂正事項1については、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであるということができず、訂正要件違反である旨を主張している。
しかしながら、訂正事項1は、訂正前の請求項1の「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を、含有される「アーモンドに由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合」及び「当該原料100質量部に対しアーモンドに由来するタンパク質」の割合を特定することによって、原料の範囲を訂正前の記載より狭めるものである。また、特許異議申立人が引用する【0049】及び【0050】に記載された「ナッツ類」は【0021】の記載を参酌すると「アーモンド」と読み替えることができるものである。そうすると、訂正事項1は願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、特許異議申立人の主張は採用できない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に記載されていた「ナッツ類」という発明特定事項について、願書に添付した明細書の【0018】等の記載に基づいて、「アーモンド」に特定することにより特許請求の範囲を減縮するものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。さらに、請求項2の記載を引用する請求項9の訂正も同様である。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、本件訂正前の請求項3に記載されていた「ナッツ類」という発明特定事項について、願書に添付した明細書の【0018】等の記載に基づいて、「アーモンド」に特定することにより特許請求の範囲を減縮するものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。さらに、請求項3の記載を引用する請求項4及び9の訂正も同様である。
よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4は、請求項7を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項5について
訂正事項5は、請求項8を削除する訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(6)訂正事項6について
訂正事項6は、本件訂正前の請求項9の引用先が「請求項1、2、5~8のいずれか一項」であったところ、訂正前の請求項7及び8における「ナッツ類がアーモンドである」請求項3又は請求項4に記載の方法という特定事項が、訂正事項3によりそれぞれ訂正後の請求項3及び4において特定されることとなり、訂正事項4及び5により請求項7及び8が削除されることに伴い、訂正前の請求項7及び8に対応する請求項3及び4を引用するよう変更し、引用先から請求項7及び8を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。また、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
よって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(7)独立特許要件について
本件においては、訂正前の全ての請求項に対して特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~6については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4、7-9〕について訂正することを認める。
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
アーモンドに由来するタンパク質及び油脂を合計1.8~7.5質量%含む飲食品の製造方法であって、
アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料であって、アーモンドに由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合が2.5質量部以上であり、かつ当該原料100質量部に対しアーモンドに由来するタンパク質を1.0質量部以上含む原料を、40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程、
アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を120°C~150°Cで流動させる工程
を含む、方法。
【請求項2】
飲食品が飲料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アーモンドに由来するタンパク質及び油脂を合計4.0~15.0質量%含む飲食品の製造方法であって、
アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、80°C以上、100°C未満の温度で混合する工程、
アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を85°C以上、120°C末満で加熱する工程
を含む、方法(ただし、アーモンドに粉砕及び抽出処理をして不溶性固形分を取り除いた液状飲食品の製造方法を除く)。
【請求項4】
飲食品が冷菓である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
アーモンドに由来するタンパク質及び油脂を合計7.0~95.0質量%含む飲食品の製造方法であって、
アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、35°C以上、80°C未満の温度で混合する工程、
アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を85°C以上で静置する工程を含む、方法(ただし、アーモンドに粉砕及び抽出処理をして不溶性固形分を取り除いた液状飲食品の製造方法を除く)。
【請求項6】
飲食品がゲル状食品である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】(削除)
【請求項8】(削除)
【請求項9】
アーモンドが焙煎アーモンドである、請求項1、2、3~6のいずれか一項に記載の方法。」
令和6年9月6日に特許異議申立人が提出し、同年12月5日に提出された手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書(以下「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
なお、判断の便宜上、新規性又は進歩性に関する申立理由については、主引用文献なる証拠毎に申立理由を整理した。
本件特許発明1、2及び9は、本件特許の優先日前に日本国又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明1、2及び9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明1、2及び9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第11号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明1、2及び9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第12号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明1、2及び9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第13号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明1、2及び9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第14号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明1、2及び9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第15号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
本件特許の請求項1~9に係る特許は、以下のとおり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明1~9は、その構成要件として、「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計質量%」を備えるが、タンパク質と油脂は性質の全く異なる成分であるにも関わらず、その含量を単純に和した数値に技術的意義があることを理解できない。また、「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計質量%」で規定される成分組成は、タンパク質を全く含有しないものから油脂を全く含有しないものまで多様であり、それらが凝集、沈殿、乳化などへ与える影響も全く異なるから、アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の和を発明の構成要件とすることについて、本件発明における技術上の意義を理解できない。
(2)本件明細書には限定的な実施例のみが記載されており、本件特許発明1~9における数値範囲の全範囲について、原材料、処理工程、生産物などの所定の事項が明細書に記載されているとはいえず、また、本件特許発明1~9における数値範囲の全範囲において、本件特許発明の課題が解決できるとはいえないから、物を生産する方法の発明である本件特許発明1~9が、発明の詳細な説明の記載から読み取れるとはいえない。
本件特許の請求項1~9に係る特許は、以下のとおり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許発明の課題は、「乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、それぞれの飲食品に応じて求められる物性を示す」(【0006】)ことであるが、以下の理由により、本件特許発明1~9は、当該課題を解決できると認識できず、本件特許の請求の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できない。
(1)発明特定事項以外の原材料による奏効の蓋然性
本件特許発明1、2及び9の根拠となる実施例は、実施例1(【0076】~【0079】)のみであり、当該実施例1は、アーモンドペースト6.0%の他に食物繊維を3.1%含有する。
ここで、食物繊維は、ナッツ由来のタンパク質の分散性を高めることが記載されており(【0034】)、食物繊維の中には、乳化効果を有するものも知られている。
また、本件特許明細書の実施例では、実施例1に対する比較例が存在せず、食物繊維を添加した場合としなかった場合との比較検証や、本件特許の各発明特定事項の有無による本件発明の効果の比較検証がなされていない。
そうすると、当業者は、実施例1の結果は、ナッツ由来のタンパク質の分散性を高める原材料である、食物繊維を3.1%含有していたからこそ得られた結果であることを認識する。
よって、本件特許発明1、2及び9において、当該発明で特定された構成要件のみによっても、本件特許発明に係る課題を解決できると認識することはできない。
本件特許発明3、4、7及び8についても同様である。
(2)アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計の数値範囲における奏効の裏付け不足
本件特許発明1~9において、「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計が1.8~7.5質量%」となることが特定されているが、アーモンドに由来するタンパク質は、飲食品における凝集に寄与することが記載されており(【0033】)、アーモンドに由来するタンパク質の含量が高くなる程、凝集・沈殿が発生しやすくなることが理解でき、また、油脂の含量は、乳化状態に影響を与えること、油脂の含量が多い場合と少ない場合とで、乳化の安定性が異なることが一般に知られている。
ここで、「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計が1.8~7.5質量%」で規定される成分組成は、油脂をほとんど含有しないものから、アーモンド由来のタンパク質をほとんど含有しないものなど、様々な状況が含まれる。
そうすると、「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計が1.8~7.5質量%」の範囲内であっても、タンパク質と油脂の含有割合によって、タンパク質の凝集性や乳化安定性が全く異なるものと理解できるから、実施例1で示された以外の状況においても、「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計が1.8~7.5質量%」でありさえすれば、本件特許発明の課題を実施例1と同様に解決できることを、当業者は理解できない。
本件特許発明3~8についても同様である。
(3)アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計の数値以外の構成要件の未特定よる課題解決の認識困難性
食品における乳化においては、油脂の量だけでなく、タンパク質、デンプン、糖など乳化に影響する因子が複数あるところ、タンパク質と油脂の合計量のみで本件課題が解決されるとは当業者は認識することができない。特に、後述する物性要件については、本件特許出願時の技術常識、及び本件特許明細書に記載の事項から、他の凝集、乳化に影響する因子を問わず、これを任意とする全範囲にわたって、本件特許発明の課題を解決できると認識することはできない。
ア アーモンドに由来するタンパク質の濃度の未特定による課題解決の認識困難性
本件明細書の【0033】には、「保存中にナッツ類由来のタンパク質が凝集し、分離・沈殿が発生し、なめらかで均一な物性が得られないという問題があった。」と記載されており、すなわち、乳化安定性が劣り、分離・沈殿が発生する原因は、ナッツ類由来のタンパク質が一因であることが記載されている。また、タンパク質のような、分離・沈殿に起因する物質の濃度が変われば、分離・沈殿の発生有無が変わることは技術常識である。
しかしながら、本件特許の請求項1、2及び9で特定されているのは、「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計」のみであり、タンパク質の濃度は規定されておらず、当該合計値は、数値範囲が広いため、前記のとおり、アーモンド由来のタンパク質をほとんど含まない場合や、多く含む場合も想定される(委任省令要件違反)。一方、本件特許明細書の実施例で示されているのは、アーモンド由来のタンパク質量が1.1質量%のもののみである。
そうすると、アーモンド由来のタンパク質量が1.1質量%以外であるときにおいても、本件特許発明の課題を解決できることを理解できない。
本件特許発明3~8も同様である。
イ アーモンド以外の原材料に由来するタンパク質の濃度の未特定による課題解決の認識困難性
前述のとおり、飲食品において分離・沈殿が発生する原因の一つとして、タンパク質が挙げられ、これは、ナッツ類やアーモンド由来のタンパク質に特有ではなく、その他のタンパク質においても同様であることが技術常識である。
一方で、本件特許の請求項1、2及び9で特定されているのは、「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計」のみであり、アーモンド由来するタンパク質以外のタンパク質濃度は規定されていない。また、本件特許明細書の実施例で示されているのは、アーモンド由来のタンパク質量が1.1質量%のもののみであり、用いられた原料としてタンパク質を含有するものは、アーモンドペーストのみである。
そうすると、アーモンドに由来するタンパク質以外のタンパク質を含有する場合、例えば大豆タンパク質を10質量%含有する飲料では、当然凝集・沈殿に関わる安定性は低くなり、凝集・沈殿が発生する蓋然性が高い。そのため、アーモンドに由来するタンパク質以外のタンパク質をも含有する場合において、本件特許発明の課題を解決できることを理解できない。
本件特許発明3~8も同様である。
ウ 油脂の濃度の未特定による課題解決の認識困難性
本件特許発明の課題に関わる乳化とは、油相と水相の混和により生じるものであり、乳化やその安定性には、油相と水相の割合、すなわち、油脂の含有量が一つの要因であることは技術常識である。
しかしながら、本件特許の請求項1、2及び9で特定されているのは、「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計」のみであり、前記のとおり、油脂をほとんど含まない場合や、多く含む場合も想定される(委任省令要件違反)。一方、本件特許明細書の実施例で示されているのは、油脂量が3.4質量%のもののみである。
また、前記のとおり、例えば油脂のような、乳化に起因する物質の濃度が変われば、分離・沈殿の発生有無が変わることは技術常識である。そうすると、油脂量が3.4質量%以外のときにおいて、本件特許発明の課題を解決できることを理解できない。
本件特許発明3~8についても同様である。
エ pHの未特定による課題解決の認識困難性
前述のとおり、飲食品において分離・沈殿が発生する原因の一つとして、タンパク質が挙げられ、タンパク質の凝集は、pHに大きく影響されることは技術常識であり、対象となるタンパク質の等電点付近では、最も安定性が低く、凝集・沈殿が発生することが知られている。
しかしながら、本件特許の請求項1、2及び9では、pHは規定されていなおらず、本件特許明細書の実施例で示されているのは、実施例1のみであり、これはpH調整剤や、pHが変化し得る原材料を含有しないもののみである。
このため、pH調整剤や、pHが変化し得る原材料を含有する場合において、本件特許発明の課題を解決できることを理解できない。
本件特許発明3~8についても同様である。
本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、以下のとおり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許発明1を構成する要件として、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂、及び水を含む混合物を120°C~150°Cで流動させる工程」が含まれる。
ここで、当該「流動させる工程」の構成要件の前に記載されているのは、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程」であり、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂、及び水を含む混合物」については記載されていない。
そのため、本特許発明1において、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂、及び水を含む混合物」が指すものが明確ではない。
また、本特許発明1における「流動させる工程」の対象には、「アーモンド」以外の「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂」も含まれるため(例えば本件特許の明細書の段落[0002]など参照)、このような「流動させる工程」と、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」に関する「混合する工程」との関係が明確ではない。特に、「アーモンド」以外の「ナッツ類」に由来する成分のみを流動させる場合において、両工程の関係が明確であるとはいえない。本件特許発明2、9についても同様である。
(1)特許異議申立人が提出した証拠方法
・甲第1号証:特開昭58-152447号公報
・甲第2号証:特表2013-535208号公報
・甲第3号証:日本食品標準成分表2015年版(七訂)、文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会、種実類、アーモンド欄、https://www.mext.go.jp/a_menu/syokuhinseibun/1365297.htm、公開日2015年12月25日
・甲第4号証:特表2002-501765号公報
・甲第5号証:欧州特許出願公開第2476317号明細書
・甲第6号証:欧州特許出願公開第776165号明細書
・甲第7号証:米国特許第4,639,374号明細書
・甲第8号証:Long-Life Products: Heat-Treated, Aseptically Packed:AGuide to Quality ロングライフ製品、1998年8月公開
・甲第9号証:FMK Morning Glory「日本テトラパック株式会社」 インターネットウェブページ、http://blog.fmk.fm/glory-old/2014/09/post-3532.php、公開日2014年9月18日
・甲第10号証:国際公開第2021/200163号
・甲第11号証:江崎グリコ株式会社 インターネットウェブページ、アーモンド効果オリジナル200ml、https://www.glico.com/jp/product/drink/almondkoka/39445、公開日2022年7月25日(同日更新との記載あり)
・甲第12号証:江崎グリコ株式会社 インターネットウェブページ、アーモンド効果砂糖不使用200ml、https://www.glico.com/jp/product/drink/almondkoka/39449、公開日2022年7月25日(同日更新との記載あり)
・甲第13の1号証:Amazon.co.jp商品販売インターネットウェブページ、アーモンド効果香ばしコーヒー200ml×24本、パッケージ正面写真、https://www.amazon.co.jp/アーモンド効果-グリコ-香ばしコーヒー-200ml×24本/dp/B077G9RXG1?th=1、取り扱い開始日2017年11月14日
・甲第13の2号証:Amazon.co.jp商品販売インターネットウェブページ、アーモンド効果香ばしコーヒー200ml×24本、パッケージ展開写真、https://www.amazon.co.jp/アーモンド効果-グリコ-香ばしコーヒー-200ml×24本/dp/B077G9RXG1?th=1
・甲第14の1号証:Amazon.co.jp商品販売インターネットウェブページ、マルサン毎日おいしいローストアーモンドミルクオリジナル1000ml×6本 紙パック、パッケージ正面写真、https://www.amazon.co.jp//dp/B07WFMJK4Z?th=1、取り扱い開始日2019年8月22日
・甲第14の2号証:Amazon.co.jp商品販売インターネットウェブページ、マルサン毎日おいしいローストアーモンドミルクオリジナル1000ml×6本 紙パック、パッケージ側面栄養成分表示、https://www.amazon.co.jp/dp/B07WFMJK4Z?th=1
・甲第15の1号証:Amazon.co.jp商品販売インターネットウェブページ、ハルナプロデュースHARUNA 137degree アーモンドミルク(甘味不使用)1L、パッケージ正面写真、https://www.amazon.co.jp/HARUNA-137degrees-/dp/B081RJP69J?th=1、取り扱い開始日2022年7月12日
・甲第15の2号証:Amazon.co.jp商品販売インターネットウェブページ、ハルナプロデュースHARUNA 137degree アーモンドミルク(甘味不使用)1L、パッケージ拡大側面写真、https://www.amazon.co.jp/HARUNA-137degrees-/dp/B081RJP69J?th=1
・甲第16号証:特許第5834114号公報
・甲第17号証:日高徹、食品用乳化剤、初版第1版、幸書房、1987年7月25日、p.79~89
・甲第18号証:藤田哲、食品の乳化-基礎と応用-、初版第1版、幸書房、2006年2月10日、p.8~11
・甲第19号証:永田恭介他、実験医学別冊 目的別で選べるタンパク質発現プロトコール 発現系の選択から精製までの原理と操作、第2刷、羊土社、2013年4月5日、p.16~21
・甲第20号証:国際公開第2022/248601号
・甲第21号証:神山匡、タンパク質凝集系の熱量測定、熱測定47巻(2020)1号、熱測定学会、2020年、p.8~13
・甲第22号証:白木賢太郎、タンパク質溶液の理解と凝集体の形成の制御、2022年32巻3号、MEDCHEM NEWS、2022年、p.132~135
・甲第23号証:筑波乳業株式会社 インターネットウェブページ、今話題のアーモンドミルクは濃さが重要!「濃いアーモンドミルク」4商品を新発売!、2016年9月26日、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000021607.html
・甲第24号証:筑波乳業株式会社 インターネットウェブページ、さらにヘルシー&ナチュラルになった待望の新製品 「無添加 濃いアーモンドミルク 砂糖不使用」を新発売、2019年6月28日、https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000021607.html
・甲第25号証:Amazon インターネットウェブページ、筑波乳業株式会社、無添加 濃いアーモンドミルク 砂糖不使用 125ml【2箱:30本】、Amazon.co.jpでの取扱い開始日、2019年10月10日、https://www.amazon.co.jp/dp/B07YZC83WJ?language=ja_JP
甲第23~25号証は、令和7年7月22日に特許異議申立人から提出された意見書に添付されたものである。
証拠の表記は当審による。
以下、順に「甲1」のようにいう。なお、甲第13の1号証及び甲第13の2号証は、同じ商品を異なる方向から写した写真を示すものであるから、まとめて「甲13」のようにいう。甲第14の1号証及び甲第14の2号証並びに甲第15の1号証及び甲第15の2号証についても同様である。
(2)特許権者が令和7年5月2日に提出した意見書に添付した証拠方法
乙第1号証:実験成績証明書、令和7年4月30日、特許権者従業員 飯塚 裕之
乙第2号証:実験成績証明書、令和7年4月30日、特許権者従業員 飯塚 裕之
証拠の表記は意見書の記載に従った。
本件特許発明1、2及び9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明1、2及び9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
本件特許の請求項3及び4に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
・本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、 それぞれの飲食品に応じて求められる物性を示す、ナッツ由来成分を含有する飲食品を提供すること」(【0006】)であり、また、本件発明の課題を解決する手段として、「本発明者らは、ナッツ類を用いて多種多様な製法にて飲食品を作製し、その物性を確認するという試行錯誤を何度も繰り返した結果、飲料及び食品のそれぞれについて、ナッツ類に由来するタンパク質、油脂等の組成が特定の要件を満たす飲食品により、当該課題を解決し得ることを見出した。本発明者らは、かかる飲食品を得るために好適な製造工程、具体的にはナッツ類に由来するタンパク質の乳化、ゲル化に適した工程の条件等についてさらに鋭意研究をつづけた結果、本発明を完成するに至った。」(【0007】)と記載されている。
ここで、本件特許明細書の【0021】には、ナッツ類として種々のナッツを用い得ることが記載されているものの、【0075】~【0089】の実施例において、「ナッツ類」に由来するタンパク質及び油脂等の組成が特定の要件を満たし、「ナッツ類」に由来するタンパク質の乳化及び飲食品の製造に適した工程の好適な条件等を示し、本件発明の課題を解決できるものとして示されているのは、アーモンドペーストを用いた場合のみであり、アーモンド以外のナッツ類を用いて本件発明の課題を解決した例は示されていない。
そして、本件特許明細書の記載及び出願時の技術常識を参照しても、任意のナッツ類に由来するタンパク質及び油脂の合計質量%と、本件発明の課題との間に因果関係があるかは不明であり、相関があることについて当業者は理解できるものではないから、アーモンド以外のナッツ類においても、本件特許発明3に特定されたタンパク質及び油脂等の組成とし、かつ、本件特許発明3に特定された工程を施すことで、本件発明の課題が解決し得るとは認識できない。
そうすると、本件特許発明3の範囲には、本件発明の課題を解決できるのか不明な、アーモンド以外のナッツ類に由来するタンパク質を含む飲食品の製造方法が含まれるから、本件特許発明3は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものではなく、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでもない。
同様の取消理由が本件特許発明4にも存する。
本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
具体的理由はおおむね次のとおりである。
・本件特許発明1には、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂、及び水を含む混合物を120°C~150°Cで流動させる工程」が記載されているが、当該「流動させる工程」の記載よりも前に記載されているのは、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程」であり、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂、及び水を含む混合物」については記載されていない。
そのため、本特許発明1において、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂、及び水を含む混合物を120°C~150°Cで流動させる工程」と、それ以前に特定されている工程との間に関係があるのか否かを理解することができず、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。
同様の取消理由が本件特許発明2、9にも存する。
当審は、以下のとおり、取消理由1~4及び申立理由1~10の理由では、本件特許の請求項1~9に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。
なお、取消理由1及び2は、それぞれ申立理由1及び2に包含されるから、以下においては、申立理由1及び2についての判断としてまとめて示す。
また、取消理由4は、申立理由10と同旨であるから、以下においては、申立理由10についての判断としてまとめて示す。
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「ナッツ類入りコーヒー飲料」について、おおむね次の事項が記載されている。
・「1. 焙煎したコーヒー豆より抽出したコーヒー抽出液と、焙煎したナッツ類を粉砕してペースト状にしたものを混合して、水中油型に乳化させることを特徴とするナッツ類入りコーヒー飲料。
・・・
3. ナッツ類としてアーモンド、ヘーゼルナッツ、カシューナッツ、ピーナッツ等を単独又は混合して用いる特許請求範囲第1項、第2項の飲料。」(第1頁 特許請求の範囲)
・「この天然ナッツペーストを単独又は混合し、場合によっては油脂類(バター、マーガリン、ショートニング、クリーム類等の油脂加工品も含む)をも加えて乳化する。」(第2頁左上欄第16行~第19行)
・「ナッツペーストを必要に応じて乳化剤、安定剤を加え、水と混合し60~70°Cに加熱、かくはんして乳化体としたものをコーヒー抽出液に加えて乳化体としてもよい。油脂類を加える時は、ナッツペーストと一緒に加えて乳化してもよいわけである。」(第2頁右上欄第3行~第7行)
・「市販の焙煎コーヒー豆を用いて熱水で抽出し、抽出物質濃度1.1%と8.8%の2種類を作った。これをI及びIIとする。別に、アーモンドを強く焙煎したものを除皮し、これをロールで30ミクロン以下に微粉砕してペースト状とした。
ナッツ乳化体としては、
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以上のA,Bの配合について常法により60~70°Cに加熱して3000r.p.mで乳化してから均質機を通過させた。このA、Bをコーヒー抽出液I,IIに加えて、安定剤を追加して、60~70°Cでさらに乳化してから、10°Cに急冷却した。その乳化配合は次の通り。
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即ち合計4種類作り、これらを缶詰として120°Cで滅菌し、急冷却して90日間保存した。」(第2頁左下欄第4行~第2頁右下欄第5行)
・「例2 例1の混合乳化体をさらに60~70°Cでホモミックスしてから、缶詰とし、120°Cで滅菌してから急冷却した。
・・・
例6 例2において缶詰滅菌の代りに、140°Cで滅菌し、無菌充填をした。」(第3頁左上欄第19行~右上欄第17行)
イ 甲1に記載された発明
上記アに記載された内容のうち、特にコーヒー抽出液IIとアーモンドペーストA又はBを用いた試験例II-A、Bを中心に整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「
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アーモンドを強く焙煎したものを除皮し、これをロールで30ミクロン以下に微粉砕してペースト状としたものを用い、以上のA、Bの配合について常法により60~70°Cに加熱して3000r.p.m.で乳化してから均質機を通過させ、このA、Bを、コーヒー抽出液I、IIに対して、以下の乳化配合で加え、安定剤を追加して、60~70°Cでさらに乳化してから、10°Cに急冷却し、これらを缶詰として120°Cで滅菌し、急冷却して90日間保存したコーヒー飲料の製造方法。
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」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明のうち、試験例II-Bは、アーモンドペースト及ナタネ油を含むコーヒー飲料の製造方法であるから、本件特許発明1における「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂」を「含む飲食品の製造方法」に相当する。
また、甲1発明の「このA、Bを、コーヒー抽出液I、IIに対して、以下の乳化配合で加え、・・・60~70°Cでさらに乳化」する工程は、本件特許発明1における「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を、「40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程」に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂を含む飲食品の製造方法であって、アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程、
を含む、方法。」
<相違点1-1>
本件特許発明1の製造方法においては、「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂を合計1.8~7.5質量%含む」ことが特定されているのに対し、甲1発明では、そのようには特定されていない点。
<相違点1-2>
本件特許発明1の製造方法においては、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を120°C~150°Cで流動させる工程」を含むことが特定されているのに対し、甲1発明では、そのようには特定されていない点。
<相違点1-3>
本件特許発明1の原料について、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料であって、アーモンドに由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合が2.5質量部以上であり、かつ当該原料100質量部に対しアーモンドに由来するタンパク質を1.0質量部以上含む原料」であることが特定されているのに対し、甲1発明ではそのようには特定されていない点。
事案に鑑み、相違点1-3について検討する。
甲3より、煎りアーモンドに含まれるタンパク質量は、20.3g/100g、及びアーモンドに含まれる油脂量は、54.1g/100gであるから、甲1発明(試験例II-A、B)におけるアーモンドに由来するタンパク質量、油脂量及びアーモンドに由来するタンパク質量と油脂量の合計値を算出すると、以下のとおりである。
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そうすると、甲1発明の原料100質量部に対するアーモンドに由来するタンパク質は0.92質量%又は0.65質量%であり、共に1.0質量部未満であるから、上記相違点1-3は実質的な相違点である。
また、甲1において、甲1発明の原料100質量部に対しアーモンドに由来するタンパク質を増やして1.0質量部以上とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
そして、本件特許発明1が「乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、飲食品の種類に応じて求められる物性を示す、ナッツ由来成分を含有する飲食品を提供することができる」(【0020】)という効果を発揮することは、当業者が予測できないことである。
したがって、甲1発明において、相違点1-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明でないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
<特許異議申立人の主張について>
相違点1-3に関し、特許異議申立人は、令和7年7月22日に提出された意見書第5~7ページにおいて、甲1発明のアーモンドに由来するタンパク質の含有量は0.92重量%であり、本件特許発明1に記載の1.0重量%以上との差は微差であり、また、本件特許出願時において、甲23~25に示されるように飲料におけるアーモンドペーストの含有量を高くしたものが製造され、市場において販売されていたため、甲1発明に基づき、アーモンドペースト含有量を高めることで、アーモンドに由来するタンパク質含有量を1.0重量%以上とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるし、当該タンパク質含有量が1.0重量%以上であることに、臨界的意義はない蓋然性が高いと主張している。
しかしながら、甲1発明は、「コーヒー抽出液に対して、天然のナッツ類を焙煎して・・・ペースト状とし、これを適当な方法によって乳化した状態に混合することによって、コーヒーの風味が著しく向上し、さらにコーヒーのフレーバーが長期に渡って保存される」(第1ページ右欄下から2行目~第2ページ左上欄5行)ことを課題としたコーヒー飲料の発明であるのに対し、甲23~25はアーモンド以外の添加物の使用を減らしたことが強調されているアーモンドミルクの発明であるから、甲1発明と甲23~25とを組み合わせる動機はなく、他の証拠の記載を参照しても、甲1発明において甲23~25に記載された高いアーモンド含有率を採用する動機となる記載はない。よって、乙第1号証の実験成績証明書を参酌するまでもなく、甲1発明において相違点1-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たこととはいえない。なお、乙第1号証の実験成績証明書に記載された官能評価の結果は、本件特許発明1が「当該原料100質量部に対しアーモンドに由来するタンパク質を1.0質量部以上含む原料」を用いることで「乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、飲食品の種類に応じて求められる物性を示す、ナッツ由来成分を含有する飲食品を提供することができる」という効果を発揮する旨の本件明細書の記載と整合しており、本件特許発明1の効果はいずれの証拠の記載から見ても当業者が予測できないものである。
したがって、上記主張は採用できない。
イ 本件特許発明2及び9について
本件特許発明2及び9は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由1についてのまとめ
したがって、本件特許発明1、2及び9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
(1)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「非乳タンパク質飲料製品」について、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項9】
非乳性飲料を製造する方法であって、
a)5.5~6.5、好ましくは5.6~6.1のpHを有し、0.5~10重量%のタンパク質と、酸性成分と、を含み、さらに、任意選択で脂肪を好ましくは0~10重量%含み、任意選択で甘味料を好ましくは0~30重量%含み、任意選択で安定剤系を好ましくは0~1重量%含む飲料組成物を提供するステップと、
b)68~93°Cで3~90分間熱処理するステップと、
c)前記飲料を均質化するステップと、
d)73~80°Cで15秒間低温殺菌するか、又は136~150°CのUHT条件で3~15秒間滅菌するか、又は121°Cで5分間若しくはそれと同等の条件でレトルト処理するステップと、
e)柔軟な紙パック又はPET又は類似の容器中のUHT飲料の場合は無菌的に充填し、缶飲料の場合はレトルト処理する前に充填するステップと、
を含む方法。」
・「【0018】
他の一実施形態において、本発明は、非乳性飲料製品、特にレディ・トゥ・ドリンク(「RTD」)飲料を製造する方法であって、
a)5.5~6.5、好ましくは5.8~6.1のpHの成分混合物(タンパク質、水、酸性成分)であって、タンパク質を好ましくは0.5~10重量%含み、さらに酸性成分(例えば、クエン酸又はリン酸)を含む混合物を提供するステップと、
b)上記組成物を68~93°Cで3~90分間熱処理するステップと、
c)ステップb)の後に他の成分を、例えば、脂肪を好ましくは0~10重量%、甘味料を好ましくは0~30%、安定剤系を好ましくは0~2%、及び着色料、香味料、ビタミン、ミネラル又は他の機能性成分を任意選択で添加するステップと、
d)1又は2ステップの高圧ホモジナイザーを用いて液体飲料を均質化するステップと、
e)最終飲料を低温殺菌(73~80°C、15秒間)/滅菌(136~150°CのUHTで3~15秒間、又は121°Cで5分間若しくはそれと同等の条件のレトルト処理)するステップと、
f)柔軟な紙パック又はPET又は類似の容器中でのUHTの場合は無菌的に充填し、缶飲料の場合はレトルト処理する前に充填するステップと、
を含む方法に関する。」
・「【0075】
本発明は、酸性環境におけるタンパク質の特定時間の特定の熱処理によって部分的に変性したタンパク質系を対象とする。タンパク質は、例えば、牛乳、大豆、アーモンド、米、小麦、卵、ライ麦である。この処理は、液体飲料の口当たり及びボディをかなり改善する。」
・「【0084】
本発明の非乳性飲料製品の一般的な組成物は下記のものを含有する。
0~10重量%の脂肪含有量
0.5~10重量%のタンパク質系(好ましくは、大豆、米、アーモンド、小麦又は卵から選択される。)
【0085】
本発明の非乳性飲料製品は、5.5~6.5、好ましくは5.8~6.1のpHを有する。
【0086】
pHは、リン酸等の無機酸、クエン酸等の有機酸、果実由来の酸及び発酵由来の酸からなる群からの成分を用いて調整されてもよい。」
・「【0102】
実施例4:風味付けされたアーモンドミルク飲料
【表5】
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【0103】
第1の例(「対照4」という。)では通常の飲料調製手順に従った。すなわち
、水900gが入ったタンク内に、攪拌下、脂肪10g、糖80g、アーモンドタンパク質10g及び香味料2gを加え、さらに水を加えて1000gの液体にした。そして、この液体を170°Fで3分間予熱処理した。その後、液体を190°Fで25秒間低温殺菌し、次いで全圧170barで均質化した。」
イ 甲2に記載された発明
上記アに記載された内容のうち、特に実施例4を中心に整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。
<甲2発明>
「【表5】
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水900gが入ったタンク内に、攪拌下、脂肪10g、糖80g、アーモンドタンパク質10g及び香味料2gを加え、さらに水を加えて1000gの液体にし、この液体を170°Fで3分間予熱処理した後、液体を190°Fで25秒間低温殺菌し、次いで全圧170barで均質化した、【表5】の成分配合比からなるアーモンドミルク飲料の製造方法。」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明とを対比する。
甲2発明は、アーモンドタンパク質及び植物油を含むアーモンドミルク飲料の製造方法であり、アーモンドタンパク質及び植物油を合計5.0(=4.0+1.0)質量%含むものであるから、本件特許発明1における「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂を合計1.8~7.5質量%含む飲食品の製造方法」に相当する。
また、甲2発明の「この液体を170°Fで3分間予熱処理した後、液体を190°Fで25秒間低温殺菌」する工程は、170°F(=約77°C)及び190°F(=約87°C)で熱処理する工程であるから、本件特許発明1の「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を、「40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程」のうち「混合する」を除いた部分に相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂を合計1.8~7.5質量%含む飲食品の製造方法であって、
アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、40°C以上、80°C未満の温度とする工程、
を含む、方法。」
<相違点2―1>
本件特許発明1の製造方法は、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を、「40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程」を含むことが特定されているのに対し、甲2発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点2-2>
本件特許発明1の製造方法は、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を120°C~150°Cで流動させる工程」を含むことが特定されているのに対し、甲2発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点2-3>
本件特許発明1の原料について、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料であって、アーモンドに由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合が2.5質量部以上であり、かつ当該原料100質量部に対しアーモンドに由来するタンパク質を1.0質量部以上含む原料」であることが特定されているのに対し、甲2発明ではそのようには特定されていない点。
事案に鑑みて、相違点2-3について検討する。
甲2の【表5】を参照すると、甲2発明におけるアーモンドに由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合は0.25量部(=1.0/4.0)となり、実質的な相違点である。
また、甲2において、甲2発明のアーモンドに由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合を五倍以上にも増やして、2.5質量部以上とする動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもそのような記載はない。
そして、本件特許発明1が「乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、飲食品の種類に応じて求められる物性を示す、ナッツ由来成分を含有する飲食品を提供することができる」という効果を発揮することは、当業者が予測できないことである。
したがって、甲2発明において、相違点2-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に相当し得たことであるとはいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明でないし、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
<特許異議申立人の主張について>
相違点2-3に関し、特許異議申立人は、令和7年7月22日に提出された意見書第9~12ページにおいて、甲2には、「0.5~10質量%のタンパク質と、0~10重量%の脂肪と、(中略)を含む(中略)飲料」(請求項2)等が開示されているから、甲2発明の飲料においては、「タンパク質」および「脂肪」の含有量が、「タンパク質1質量部に対する油脂(脂肪)の含有割合が2.5質量部以上」である範囲を包含することが明らかであり、また、本件特許発明1における「アーモンドに由来するタンパク質1質量部」に対する「油脂の含有割合が2.5質量部以上」であるとする値の臨界的意義は示されていない旨を主張している。
しかしながら、甲2には「アーモンドに由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合」に着目して調整することを動機付ける記載も示唆もないから、甲2発明においても「アーモンドに由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合」に着目し、さらに、2.5質量部以上という特定の割合に調整する動機はないし、他の証拠にもそのような調製を行う動機となる記載はない。そうすると、乙第2号証の実験成績証明書を参酌するまでもなく、相違点2-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。なお、乙第2号証の実験成績証明書に記載された官能評価の結果は、本件特許発明1が「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料であって、アーモンドに由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合が2.5質量部以上」とすることで「乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、飲食品の種類に応じて求められる物性を示す、ナッツ由来成分を含有する飲食品を提供することができる」という効果を発揮する旨の本件明細書の記載と整合しており、本件特許発明1の効果はいずれの証拠の記載から見ても、当業者が予測できないものである。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
イ 本件特許発明2及び9について
本件特許発明2及び9は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲2発明ではないし、甲2発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由2についてのまとめ
したがって、本件特許発明1、2及び9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、また、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
(1)甲11に記載された事項等
ア 甲11に記載された事項
甲11には、「アーモンド効果 オリジナル 200ml」について、記載されている。
・「
110
73
0001431116000008.jpg
」
・「
140
110
0001431116000009.jpg
」
イ 甲11に記載された発明
上記アに記載された内容をまとめると、甲11には次の発明(以下、「甲11発明」という。)が記載されていると認める。
<甲11発明>
「アーモンドペースト(国内製造)、砂糖、食物繊維(イヌリン)、果糖ぶどう糖液糖、デキストリン、ハチミツ、植物油脂、食塩、アーモンドオイル加工品/セルロース、香料、pH調整剤、乳化剤、炭酸Ca及びビタミンE、(一部にアーモンドを含む)からなり、200mlあたり、たんぱく質1.1g、脂質3.2gを含むアーモンドミルク。」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲11発明とを対比する。
甲11発明は、アーモンドペースト及び植物油脂等を含む飲食用のアーモンドミルクであるから、本件特許発明1における「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂」を「含む飲食品」に相当する。
また、甲11発明は、100mlあたり、アーモンド由来のたんぱく質0.55g、脂質1.6gを含有するものであり、甲11発明の原材料を参酌すると、含有されるたんぱく質はアーモンド由来のものと認められるから、甲11発明にはアーモンド由来のタンパク質と油脂の合計値が2.15gのアーモンド飲料が記載されていると認められ、本件特許発明1の「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂を合計1.8~7.5質量%含む」ことを満たす。
そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
<一致点>
「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂を合計1.8~7.5質量%含む飲食品。」
<相違点11-1>
本件特許発明1は、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料であって、アーモンドに由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合が2.5量部以上であり、かつ当該原料100質量部に対しアーモンドに由来するタンパク質を1.0質量部以上含む原料」であることが特定されているのに対し、甲11発明ではそのようには特定されていない点。
<相違点11―2>
本件特許発明1は、「飲食品の製造方法」であって、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を、「40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程、アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を120°C~150°Cで流動させる工程」を含むことが特定されているのに対し、甲11発明ではそのようには特定されていない点。
事案に鑑みて、相違点11-2について検討する。
甲11には、物としてのアーモンドミルクしか記載されておらず、本件特許発明1の製造方法における混合工程及び流動工程については記載も示唆もない。
ここで、甲1又は甲2には混合工程及び流動工程が記載されているものの、甲1に記載された発明はコーヒー飲料の発明であり、甲2に記載された発明は特定の時間の特定の熱処理工程を施すことにより部分的に変性させたタンパク質系を含む飲料の発明であって、甲11発明のアーモンドミルクとは技術分野や課題が異なるものであり、甲11及びその他の証拠に、甲11発明に甲1又は甲2に記載された工程を採用する動機付けや示唆となる記載はない。
そして、本件特許発明1は、相違点11-2に係る上記工程を採用することにより、「乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、飲食品の種類に応じて求められる物性を示す、ナッツ由来成分を含有する飲食品を提供することができる」という顕著な効果を奏するものである。
したがって、甲11発明において、相違点11-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に相当し得たことであるとはいえない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件特許発明1は甲11発明並びに甲11及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
<特許異議申立人の主張について>
相違点11-2に関し、特許異議申立人は、特許異議申立書第32~33ページにおいて、以下のとおり主張している。
(ア)「まず、明記のない点に関して、甲第11号証に記載の製品においては、テトラ・ブリック(登録商標)アセプティック容器が採用されており、無菌充填がなされていることが認められる。また、当該容器を用いることは本件特許の出願日の以前から、周知技術であったといえるため(例えば、甲第8号証のP2、P7参照)、少なくとも、甲第11号証に記載の製品において当該容器の技術を採用することは、当業者にとって容易であったといえる。
飲料の製造において、原材料を混合することは、技術常識である。また前述のとおり、テトラ・ブリック(登録商標)アセプティック容器の無菌充填飲料において、130°C~150°Cで、流動させた状態で連続的に加熱を行うことは、技術常識であったといえる(例えば、甲第4号証乃至甲第9号証参照)。そうすると、甲第11号証を参照した当業者は、当該飲料が「原材料を混合する工程」、及び「流動させた状態で加熱殺菌を行う工程」を経て製造され得ることを理解できる。
よって、上述のように甲第11号証にて明記のないことにより認められ得る相違点は、実質的な相違点とはいえないものと考えられる。」
(イ)「また、相違点1C、及び相違点2C(当審注:「相違点1C、及び相違点2C」は、相違点11-2に相当。以下、同様。)に関して、甲第1号証には、アーモンド含有飲料において、「焙煎したアーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、60°C~70°Cの温度で混合する工程」、並びに「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を120°Cで缶詰滅菌、又は140°C滅菌し無菌充填する工程」が記載されている。
なお、相違点1C、及び相違点2Cについて、甲第2号証においても、「攪拌下、脂肪10g、糖80g、アーモンドタンパク質10g及び香味料2gを加え、さらに水を加えて1000gの液体にした。そして、この液体を170°Fで3分間予熱処理した」こと(段落[0095])「136~150°CのUHT条件で3~15秒間滅菌する」こと、などが開示されている(請求項9等)。
そのため、甲第11号証に、甲第1号証または甲第2号証を適用することで、前記相違点1C、及び相違点2Cに想到することができる。
本件特許発明2、及び9についても同様である。」
上記主張について検討する。
・主張(ア)について
甲11に記載された製品にテトラ・ブリック(登録商標)アセプティック容器が採用されているかは、甲11に明記されてない。そして、仮に、甲11に記載された製品がテトラ・ブリック(登録商標)アセプティック容器を採用していたとしても、甲8にはテトラ・ブリック(登録商標)アセプティック容器に無菌充填熱処理を行う際、食品の種類や、間接式UHT方式か直接式UHTかによって処理温度及び保持時間が種々異なることが記載されているから、甲11発明において成分組成が一致しない甲4~9に示された流動工程を採用することが当業者にとって容易であったとはいえない。他方で、本件特許発明1は、相違点11-2に係る混合工程及び流動工程を組み合わせて採用することにより、「乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、飲食品の種類に応じて求められる物性を示す、ナッツ由来成分を含有する飲食品を提供することができる」という顕著な効果を奏するものである。
したがって、特許異議申立人の上記主張(ア)は採用できない。
・主張(イ)について
甲1に記載された発明は上記1(1)イに記載したとおりのコーヒー飲料に係る発明であり、甲2に記載された発明は上記2(1)に記載したとおりのアーモンドミルク飲料の製造方法に係る発明であって、いずれも甲11発明のアーモンドミルクとは成分組成が異なる飲料であるから、甲11発明に甲1又は甲2に記載された工程を適用する動機付けはない。
したがって、特許異議申立人の上記主張(イ)は採用できない。
イ 本件特許発明2及び9について
本件特許発明2及び9は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲11発明及び甲11に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由3についてのまとめ
したがって、本件特許発明1、2及び9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
(1)甲12に記載された事項等
ア 甲12に記載された事項
甲12には、「アーモンド効果 砂糖不使用 200ml」について、記載されている。
・「
111
73
0001431116000010.jpg
197
153
0001431116000011.jpg
」
イ 甲12に記載された発明
上記アに記載された内容をまとめると、甲12には次の発明(以下、「甲12発明」という。)が記載されていると認める。
<甲12発明>
「アーモンドペースト(国内製造)、食物繊維(イヌリン)、食塩、アーモンドオイル加工品/セルロース、pH調整剤、クエン酸Ca、乳化剤、香料及びビタミンE、(一部にアーモンドを含む)からなり、200mlあたり、たんぱく質1.0g、脂質2.9gを含むアーモンドミルク。」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲12発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点12>
本件特許発明1は、「飲食品の製造方法」であって、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を、「40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程、アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を120°C~150°Cで流動させる工程」を含むことが特定されているのに対し、甲12発明ではそのようには特定されていない点。
相違点12は相違点11-2と同旨であるから、相違点12の判断は上記3(2)アと同様である。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件特許発明1は甲12発明並びに甲12及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2及び9について
本件特許発明2及び9は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲12発明及び甲12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由4についてのまとめ
したがって、本件特許発明1、2及び9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
(1)甲13に記載された事項等
ア 甲13に記載された事項
甲13には、「アーモンド効果 香ばしコーヒー 200ml」について、記載されている。
・「
72
73
0001431116000012.jpg
・・・
93
152
0001431116000013.jpg
」
・「
155
138
0001431116000014.jpg
」
イ 甲13に記載された発明
上記アに記載された内容をまとめると、甲13には次の発明(以下、「甲13発明」という。)が記載されていると認める。
<甲13発明>
「アーモンドペースト(国内製造)、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、食物繊維(イヌリン)、コーヒーエキス、食塩、コーヒーエキス加工品、アーモンドオイル加工品/セルロース、香料、pH調整剤、クエン酸Ca、乳化剤及びビタミンE、(一部にアーモンドを含む)からなり、200mlあたり、たんぱく質1.1g、脂質2.9gを含むアーモンドミルク。」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲13発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点13>
本件特許発明1は、「飲食品の製造方法」であって、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を、「40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程、アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を120°C~150°Cで流動させる工程」を含むことが特定されているのに対し、甲13発明ではそのようには特定されていない点。
相違点13は相違点11-2と同旨であるから、相違点13の判断は上記3(2)アと同様である。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件特許発明1は甲13発明並びに甲13及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2及び9について
本件特許発明2及び9は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲13発明及び甲13に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由5についてのまとめ
したがって、本件特許発明1、2及び9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
(1)甲14に記載された事項等
ア 甲14に記載された事項
甲14には、「マルサン 毎日おいしいローストアーモンドミルク オリジナル1000ml」について記載されている。
・「
75
72
0001431116000015.jpg
・・・
74
139
0001431116000016.jpg
」
・「
76
73
0001431116000017.jpg
」
イ 甲14に記載された発明
上記アに記載された内容をまとめると、甲14には次の発明(以下、「甲14発明」という。)が記載されていると認める。
<甲14発明>
「アーモンドペースト(国内製造)、果糖、ぶどう糖果糖液糖、食物繊維(ポリデキストロース)、植物油脂、食塩/乳化剤、香料、pH調整剤、安定剤(ジェラン)、ビタミンEからなり、200mlあたり、たんぱく質1.4g、脂質4.5gを含むアーモンドミルク。」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲14発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点14>
本件特許発明1は、「飲食品の製造方法」であって、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を、「40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程、アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を120°C~150°Cで流動させる工程」を含むことが特定されているのに対し、甲14発明ではそのようには特定されていない点。
相違点14は相違点11-2と同旨であるから、相違点14の判断は上記3(2)アと同様である。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件特許発明1は甲14発明並びに甲14及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2及び9について
本件特許発明2及び9は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲14発明及び甲14に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由6についてのまとめ
したがって、本件特許発明1、2及び9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
(1)甲15に記載された事項等
ア 甲15に記載された事項
甲15には、「ハルナプロデュースHARUNA 137degreesアーモンドミルク(甘味不使用)1L」について、記載されている。
・「
181
108
0001431116000018.jpg
・・・
77
147
0001431116000019.jpg
」
・「
118
49
0001431116000020.jpg
」
イ 甲15に記載された発明
上記アに記載された内容をまとめると、甲15には次の発明(以下、「甲15発明」という。)が記載されていると認める。
<甲15発明>
「アーモンドミルク、ひまわり種からなり、100mlあたり、たんぱく質0.9g、脂質2.9gを含むアーモンドミルク。」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲15発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。
<相違点15>
本件特許発明1は、「飲食品の製造方法」であって、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を、「40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程、アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を120°C~150°Cで流動させる工程」を含むことが特定されているのに対し、甲15発明ではそのようには特定されていない点。
相違点15は相違点11-2と同旨であるから、相違点15の判断は上記3(2)アと同様である。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件特許発明1は甲15発明並びに甲15及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本件特許発明2及び9について
本件特許発明2及び9は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由により、甲15発明及び甲15に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由7についてのまとめ
したがって、本件特許発明1、2及び9は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取り消すことはできない。
(1)実施可能要件について
ア 実施可能要件の判断手法
本件特許発明1~6及び9は、上記第3のとおり「物を生産する方法」の発明であるところ、物を生産する方法の発明における実施とは、その物を生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができること及びその方法により生産した物の使用等をすることができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができ、かつその方法により生産した物の使用等をすることができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
そこで、検討する。
イ 本件特許明細書の記載事項
本件特許明細書の【0006】には、「本発明は、乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、それぞれの飲食品に応じて求められる物性を示す、ナッツ由来成分を含有する飲食品を提供すること」を本件特許発明の課題とすることが記載されており、同【0007】には、当該課題の解決手段として、「本発明者らは、ナッツ類を用いて多種多様な製法にて飲食品を作製し、その物性を確認するという試行錯誤を何度も繰り返した結果、飲料及び食品のそれぞれについて、ナッツ類に由来するタンパク質、油脂等の組成が特定の要件を満たす飲食品により、当該課題を解決し得ることを見出した。本発明者らは、かかる飲食品を得るために好適な製造工程、具体的にはナッツ類に由来するタンパク質の乳化、ゲル化に適した工程の条件等についてさらに鋭意研究をつづけた結果、本発明を完成するに至った。」と記載され、特定の要件を満たすナッツ類に由来するタンパク質、油脂等の組成からなる原料に対して、好適な製造工程、具体的にはナッツ類に由来するタンパク質の乳化、ゲル化に適した条件の工程を施すことで飲食品を製造することが記載されている。
また、課題の解決手段に関し、【0047】~【0074】には、本件特許発明1~6及び9の発明特定事項に対応する各材料の含有割合及び各工程に関する説明が温度等の例示とともに記載されている。
具体的には、本件特許発明1に対応する第四の実施形態として、同【0048】~【0050】には、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」におけるタンパク質及び油脂の含有割合を合計1.8~7.5質量部とすることが記載され、同【0052】及び【0053】には混合工程について、「上記「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を混合する際の温度は、4°C以上、80°C未満である。・・・当該混合工程の時間は限定されないが、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を80°C以上に加熱すると、当該原料はゲル化する。そのため、本工程ではゲル化を抑えた状態でまずは原料をより均一に混合する。」と記載され、同【0054】には流動工程について、「上記工程で得られた混合物を120°C~150°Cで流動させる工程(加熱流動工程)を行う。・・・ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料の混合物を120°C以上に加熱するとナッツ類に由来するタンパク質が熱変性し、乳化安定力が向上する。また、当該加熱工程を上記混合物を静置した状態で行うと、加熱条件によっては混合物のゲル化が生じるところ、本実施形態においては、当該加熱工程を混合物を流動させた状態で行うことにより、混合物を液状のままタンパク質の乳化安定力を向上させることができる。」と記載され、同【0055】には、当該方法を用いることにより、「ナッツ類に由来するタンパク質を含有する従来の飲料と比較して、ナッツ類由来のタンパク質の凝集および、それによる分離・沈殿が抑制され、なめらかで均一な物性を有する飲料を得ることができる」ことが記載されている。
また、本件特許発明3に対応する第五の実施形態として、同【0057】~【0059】には、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」におけるタンパク質及び油脂の含有割合を4.0~15.0質量部とすることが記載され、同【0060】及び【0061】には混合工程について、「上記「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を混合する際の温度は、80°C以上、100°C未満である。・・・「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を80°C以上に加熱すると、当該原料はゲル化する。そのため、本工程ではゲル化した状態で原料を混合する。これにより、増粘安定剤を使用せずとも粘度を付与し、空気を抱き込みやすい物性が得られる。」と記載され、同【0062】~【0064】には加熱工程について、「上記工程で得られた混合物を80°C以上、120°C以下で加熱する工程(加熱工程)を行う。・・・ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料の混合物を120°C以上に加熱するとナッツ類に由来するタンパク質が熱変性し、低粘度化が生じる。本実施形態では、120°C未満で加熱することにより、ゲル化による増粘が生じ、オーバーラン性が向上し、滑らかな物性を得ることができるため好ましい。」と記載され、同【0065】には、当該方法を用いることにより、「ナッツ類に由来するタンパク質を含有する従来の食品(冷菓等)と比較して、乳化剤、安定剤を使用しないか、使用してもより少ない量で、フリージングの際のオーバーラン性向が向上し、十分に空気を含ませることが可能となり、その結果、なめらかで高品質な物性を実現することができる」ことが記載されている。
さらに、本件特許発明5に対応する第六の実施形態として、同【0067】~【0069】には、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」におけるタンパク質及び油脂の含有割合を7.0~95.0質量部とすることが記載され、同【0070】及び【0071】には混合工程について、「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を混合する際の温度は、0°C以上、80°C未満である。・・・「ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を80°C以上に加熱すると、当該原料はゲル化する。そのため、本工程ではゲル化を抑えた状態でまずは原料をより均一に混合する。」と記載され、同【0072】及び【0073】には静置工程について、「次に、上記工程で得られた混合物を80°C以上で静置する工程(静置加熱工程)を行う。・・・ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料の混合物を80°C以上に加熱するとゲル化し、120°C以上に静置加熱するとナッツ類に由来するタンパク質がゲル化する。」と記載され、同【0074】には、当該方法を用いることにより、「ナッツ類に由来するタンパク質を含有する従来の食品(ゲル状食品等)と比較して、食品添加物を使用しないかもしくは使用しても少量で、なめらかで弾性のある物性を有する食品を提供することができる」ことが記載されている。
そして、同【0076】~【0089】には、第四~六の実施形態に対応した、具体的な実施例1~3としてアーモンドペーストを用いて製造された飲食品が記載されている。
ウ 実施可能要件についての判断
上記イに示した本件特許明細書の記載事項は、本件特許明細書における飲食品の製造方法における各工程についての例示を含む具体的な説明、飲食品の成分及び配合量の例示、及び「乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、それぞれの飲食品に応じて求められる物性を示す」という本件特許発明の課題解決につながる技術的思想の説明を含んでいるから、当業者はそれらの記載及び本件特許に係る出願の出願時における技術常識を参酌することにより、本件特許発明1~6及び9に係る製造方法をいずれも使用することができ、かつそれらの方法により製造した物は飲食品として使用することができると理解することができる。
よって、本件特許明細書には本件特許発明1~6及び9の発明特定事項に対応した説明の記載や実施例の記載があり、当業者が本件発明1~6及び9の製造方法を使用することができ、かつ、その方法により製造された物を使用することができる程度に具体的な記載があるといえる。
(2)委任省令要件について
ア 委任省令要件の判断基準
特許法第36条第4項第1号で委任する経済産業省令(特許法施行規則第24条の2)では、発明がどのような技術的貢献をもたらすものであるかが理解でき、また審査及び調査に役立つように、発明が解決しようとする課題、その解決手段などの、「当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項」を、発明の詳細な説明に記載することが規定されている。
そこで、検討する。
イ 判断
本件特許明細書の【0001】には「本発明は、ナッツ由来成分を含有する飲食品及びその製法に関する。」と記載されており、発明の属する技術分野の記載がある。
また、上記(1)イに記載したとおり、本件特許明細書には、本件特許発明が解決しようとする課題及びその解決手段の記載がある。
さらに、本件特許発明1~6及び9はそれぞれ、アーモンドに由来するたんぱく質及び油脂の含有割合、並びに、混合する工程及び加熱する工程(流動させる工程、静置する工程)の処理温度の発明特定事項を有するものであるが、当業者であれば、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、本件特許発明の課題と上記発明特定事項との実質的な関係を理解することができ、その結果として、発明の技術上の意義を理解することができる。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明の記載は委任省令要件に違反するものとはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記第3 8(1)及び(2)のように主張しているが、以下のとおり、いずれの主張も採用することはできない。
ア 上記第3 8(1)の主張について
特許異議申立人は、本件特許発明は、「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計質量%」を備えるが、当該「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計質量%」で規定される成分組成は、タンパク質を全く含有しないものから油脂を全く含有しないものまで多様であり、それらが凝集、沈殿、乳化などへ与える影響も全く異なるから、アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の和を発明の構成要件とすることについて、本件発明における技術上の意義を理解できないと主張している。
しかしながら、本件特許明細書の【0003】~【0007】等にも記載されているとおり、本件特許発明は、ガゼイン等の乳タンパク質よりも乳化安定性が劣るナッツ類に由来するタンパク質を含む飲食品について、タンパク質及び油脂の組成が特定の要件を満たし、ナッツ類に由来するタンパク質の乳化、ゲル化に適した工程の条件を見出したことにより、乳化剤・安定剤等の食品添加物を使用しないか、使用したとしても少量で、飲食品に応じて求められる物性を示すナッツ由来成分を含有する飲食品を提供するという課題を解決するものであり、当業者は発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、本件特許発明における「アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計質量%」はアーモンドに由来するタンパク質の乳化、ゲル化能力と、それにより乳化される油脂とのバランスが取れる範囲を特定したものであるということを理解することができるから、本件特許発明の課題と上記発明特定事項との実質的な関係を理解することができ、その結果として、発明の技術上の意義を理解することができるといえる。
よって、特許異議申立人の上記第3 8(1)の主張は採用することができない。
イ 上記第3 8(2)の主張について
上記(1)ウの判断のとおり、本件特許明細書には、本件特許発明において好ましく用いられる具体的な原材料及び処理工程が記載されており、当業者は実施例で用いられたものと同等のものとして説明されている原料及び処理条件の範囲で、実施例に準ずる性質を備えた生産物を得ることができると理解することができる。また、下記9(3)のとおり、得られた生産物は本件特許発明の課題を解決できると認識することができる。よって、当業者は、本件特許発明1~6及び9の製造方法を使用することができ、かつ、製造された物を飲食品として使用することができるものと理解することができる。
また、特許異議申立人は、本件特許発明1~6及び9に実施できない範囲があることを具体的な証拠や理論的な根拠に基づいて証明していない。
よって、特許異議申立人の上記第3 8(2)の主張は採用することができない。
(4)申立理由8についてのまとめ
上記(1)~(3)のとおりであるから、本件特許発明1~6及び9は、いずれも特許法第36条第4項第1号の規定を満たしている特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当せず、申立理由8の理由では、本件特許の請求項1~6及び9に係る特許を取り消すことはできない。
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(3)サポート要件の判断
本件特許明細書には、上記8(1)イで述べたとおりの事項が記載されている。
そうすると、当業者はこれらの記載事項から、ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計1.8~7.5質量%含む飲食品の製造方法であって、ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、4°C以上、80°C未満の温度で混合する工程、ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を120°C~150°Cで流動させる工程を含む方法であれば、本件特許発明の課題を解決できると認識できる。また、ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計4.0~15.0質量%含む飲食品の製造方法であって、ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、80°C以上、100°C未満の温度で混合する工程、ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を80°C以上、120°C未満で加熱する工程を含む方法であれば、本件特許発明の課題を解決できると認識できる。さらに、ナッツ類に由来するタンパク質及び油脂を合計7.0~95.0質量% 含む飲食品の製造方法であって、ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料を、0°C以上、80°C未満の温度で混合する工程、ナッツ類に由来するタンパク質、油脂及び水を含む混合物を80°C~150°Cで静置する工程を含む方法であれば、本件特許発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1~6及び9は、当該発明の課題を解決できると認識できる飲食品の製造方法をさらに限定したものであるから、本件特許発明1~6及び9は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された発明であって、本件特許の発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1~6及び9に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するといえる。
(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記第4 9及び令和7年7月22日に提出された意見書の第10~12ページにおいて、本件特許発明における発明特定事項以外の原材料による奏効の蓋然性、アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計の数値範囲における奏効の裏付け不足、アーモンドに由来するタンパク質及び油脂の合計の数値以外の構成要件(アーモンド由来のタンパク質の濃度、アーモンド以外の原材料に由来するタンパク質の濃度、油脂の濃度、pH)の未特定よる課題解決の認識困難性、本件特許発明の範囲における実施例外の数値範囲における奏功の裏付け不足など縷々主張するが、それらは実施可能要件(委任省令)についての特許異議申立人の主張と実質的に同旨の主張をしているものであるから、上記8(3)と同様の理由により、いずれの主張も採用することができにない。
(5)申立理由9及び取消理由3についてのまとめ
上記(3)及び(4)のとおりであるから、本件特許発明1~6及び9は、いずれも特許法第36条第6項第1号の規定を満たしている特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当せず、申立理由9及び取消理由3の理由では、本件特許の請求項1~6及び9に係る特許を取り消すことはできない。
(1)明確性要件の判断手法
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
上記第3のとおり、本件特許発明1には、「アーモンドに由来するタンパク質、油脂、及び水を含む混合物を120°C~150°Cで流動させる工程」の前の工程として「アーモンドに由来するタンパク質、油脂及び水を含む原料」を「40°C以上、80°C未満の温度で混合する工程」が記載されているから、請求項の記載自体に不整合はなく、明細書の記載によって請求項の記載が不明確になることもない。
したがって、本件特許発明1、2及び9に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和7年7月22日に提出された意見書の第12ページにおいて、本件特許発明1において、「アーモンドに由来するタンパク質1質量部に対する油脂の含有割合」及び「原料100質量部に対しアーモンドに由来するタンパク質」の割合について、上限値が定められていないため、発明の範囲が不明確である旨を主張している。
しかしながら、本件特許の請求項1における「2.5部以上」及び「1.0質量部以上」という記載は、下限値が明確に特定されていることから、数値範囲の記載は明確であり、また、発明の詳細な説明の記載とも整合しているから、第三者に不測の不利益を及ぼすおそれはない。
したがって、特許異議申立人の上記主張によって、上記(2)が覆ることはない。
(4)申立理由10についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、本件特許発明1、2及び9は、いずれも特許法第36条第6項第2号の規定を満たしている特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当せず、申立理由10の理由では、本件特許の請求項1、2及び9に係る特許を取り消すことはできない。
以上のとおりであるから、取消理由通知書に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した申立理由及び特許異議申立人が意見書で主張した申立理由並びに証拠によっては、本件特許の請求項1~6及び9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~6及び9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項7及び8は訂正により削除され、これにより本件特許の請求項7及び8に係る特許に対する特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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