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Trademark Appeal Case

水性塗料組成物の特許性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025700801
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7628072号の請求項1~11に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7628072号(以下「本件特許」という。)の請求項1~11に係る特許は、令和3年12月24日に出願され、令和7年1月30日にその特許権の設定登録がされ、同年2月7日に特許掲載公報が発行された。その後、令和7年8月6日に特許異議申立人 清水 真美子(以下「申立人」という。)により全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明

本件特許の特許請求の範囲の請求項1~11に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明11」といい、これらをまとめて「本件発明」ともいう。)は、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】

一液型の水性塗料組成物であって、

(A)水酸基およびカルボキシ基を有する水性樹脂と、

(B)親水化変性カルボジイミド化合物と、

(C)塩基性化合物と、を含み、

前記(A)水性樹脂のガラス転移点は、0°C以上20°C以下であり、

前記(B)親水化変性カルボジイミド化合物は、分子内に、少なくとも1個のカルボジイミド基およびポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルから水酸基を除いた構造を有し、

前記水性塗料組成物のpHは、8.5以上10未満であり、

前記水性塗料組成物は、ポリイソシアネート硬化剤を含まないか、あるいは、前記水性塗料組成物の固形分100質量部に対して1質量部未満含む、水性塗料組成物。

【請求項2】

前記(C)塩基性化合物の含有量は、前記水性塗料組成物の固形分100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である、請求項1に記載の水性塗料組成物。

【請求項3】

前記(C)塩基性化合物の沸点は、180°C以下である、請求項1または2に記載の水性塗料組成物。

【請求項4】

前記(C)塩基性化合物は、アンモニアおよびアミン化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。

【請求項5】

前記(A)水性樹脂は、樹脂固形分換算で、20mgKOH/g以上100mgKOH/g以下の水酸基価、および、5mgKOH/g以上80mgKOH/g以下の酸価を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。

【請求項6】

前記(A)水性樹脂の酸基の当量Eaに対する、前記(B)親水化変性カルボジイミド化合物のカルボジイミド基の当量Ecの比:Ec/Eaは、0.1以上1.5以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。

【請求項7】

前記(A)水性樹脂の含有量は、前記水性塗料組成物の固形分100質量部に対して、30質量部以上75質量部以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。

【請求項8】

前記(B)親水化変性カルボジイミド化合物の含有量は、前記水性塗料組成物の固形分100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。

【請求項9】

前記(B)親水化変性カルボジイミド化合物は、下記一般式(α):

-OCONH-X-Q-Y (α)

(式中、Xは、それぞれ独立して、少なくとも1個のカルボジイミド基を含有する2官能性有機基であり、Yは、それぞれ独立して、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルから水酸基を除いた構造を有し、Qは、-NHCOO-またはNHCONH-である。)

で表される構造単位を1以上有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。

【請求項10】

前記(B)親水化変性カルボジイミド化合物は、

下記一般式(I):

【化1】

7

89

0001431162000001.jpg

(式中、Xは、それぞれ独立して、少なくとも1個のカルボジイミド基を含有する2官能性有機基であり、Yは、それぞれ独立して、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルから水酸基を除いた構造を有し、Zは、数平均分子量200以上5,000以下の2官能ポリオールから水酸基を除いた構造を有する。)、

下記一般式(II):

【化2】

14

89

0001431162000002.jpg

(式中、Xは、それぞれ独立して、少なくとも1個のカルボジイミド基を含有する2官能性有機基であり、Yは、それぞれ独立して、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルから水酸基を除いた構造を有し、R0は、水素、メチル基、またはエチル基であり、R1は、それぞれ独立して、炭素数4以下のアルキレン基であり、nは0または1であり、mは0~60である。)、および、

下記一般式(III):

【化3】

7

89

0001431162000003.jpg

(式中、Xは、それぞれ独立して、少なくとも1個のカルボジイミド基を含有する2官能性有機基であり、Yは、それぞれ独立して、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルから水酸基を除いた構造を有する。)

で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の水性塗料組成物。

【請求項11】

請求項1~10のいずれかに記載の水性塗料組成物を被塗物に塗装して、未硬化の塗膜を形成する工程と、

前記未硬化の塗膜を75°C以上100°C以下の温度で加熱して、硬化された塗膜を得る工程と、を備える、塗装物の製造方法。」

第3 特許異議の申立ての理由

1 特許異議申立書に記載された理由の概要

(1)申立理由1(新規性及び進歩性)

本件発明1~8、11は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

本件発明1~11は、甲1に記載された発明、並びに甲1及び甲2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(2)申立理由2(サポート要件)

本件発明1~11は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないものに対してされたものであるから、本件発明1~11に係る特許は、同法第113条第4号に該当し取り消されるべきものである。

本件発明1には、「前記(A)水性樹脂のガラス転移点は、0°C以上20°C以下」であることが記載されている。

また、本件特許の明細書の【0011】には、「加えて、水性樹脂のガラス転移点(Tg)を0°C以上20°C以下にする。これにより、カルボジイミド化合物を硬化剤として使用する系において、低温硬化性を確保しながら得られる塗膜の物性を向上することができる。例えば、本実施形態に係る水性塗料組成物は、低温(例えば、100°C以下)で硬化させることができ、かつ、得られる塗膜は、優れた耐水性を有する。」ことが記載されている。

しかしながら、「水性樹脂」といっても、水性アクリル樹脂、水性エポキシ樹脂、水性ウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂など、様々な種類が存在する。

また、「水性樹脂のガラス転移点」としては0°C付近の水性樹脂と、20°Cの水性樹脂では、その物性が大きく異なることは、技術常識である。例えば、ガラス転移点が0°C(又は0°Cを下回る場合)であれば、柔軟性や接着性などに優れるが、水分による影響が大きく、一方で、ガラス転移点が20°C(又は20°C以上の場合)であれば、柔軟性は低く、接着性にも劣るが、水分による影響が小さく、耐水性に優れるなど、ガラス転移点の違いが、物性の違いに影響を与える。

また、発明の詳細な説明の【実施例】で使用される水性樹脂のガラス転移点は、「10°C」の水性樹脂1種類のみであり、10°C以外のガラス転移点を有する水性樹脂については、評価されておらず(本件発明の効果を得られない可能性有り)、ガラス転移点が「10°C」以外における効果の証明はなされていない。

そうすると、水性樹脂が特定されず、ガラス転移点が0°C付近や20°C付近であっても、本件発明の課題を解決できることまでは、立証されていないことは、明らかである。

すなわち、本件発明1は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとは言えない。本件特許発明1を引用する本件特許発明2~11についても同様である。

2 証拠方法

甲1:特表2015-523429号公報

甲2:特開2003-306476号公報

第4 甲号証の記載について

1 甲1には、次の記載がある。

「【請求項1】

水性結合剤組成物であって、

a)分散されたポリマー粒子の水性多段ポリマー分散液の形態のポリマーPにおいて、該ポリマー粒子が、少なくとも30°Cのガラス転移温度を有し、エチレン性不飽和モノマーM-Aから構成される第一ポリマーと、20°C以下のガラス転移温度を有し、エチレン性不飽和モノマーM-Bから構成される第二ポリマーとを含んでおり、

ここで、前記エチレン性不飽和モノマーM-AおよびM-Bが共に:

i.25°Cおよび1barでの水中での溶解度が高くても50g/lである、少なくとも1種の中性のモノエチレン性不飽和モノマーM1を、モノマーM-AとM-Bとの総量に対して85~99.45質量%;

ii.25°Cおよび1barでの水中での溶解度が少なくとも100g/lである、少なくとも1種の中性のモノエチレン性不飽和モノマーM2を、モノマーM-AとM-Bとの総量に対して0.5~10質量%;

iii.酸性基を有する、1種または複数のモノエチレン性不飽和モノマーM3を、モノマーM-AとM-Bとの総量に対して0.05~0.5質量%;および

iv.任意に、少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有する1種または複数のモノマーM4を、モノマーM-AとM-Bとの総量に対して0~5質量%;

含む、前記ポリマーPと、

b)脂肪族炭素原子に結合されている、少なくとも2つのカルボジイミド部分を有する、少なくとも1つのカルボジイミド

とを含む前記組成物。」

「【請求項12】

前記モノマーM2が、モノエチレン性不飽和C

3

~C

8

モノカルボン酸のヒドロキシ-C

2

~C

4

アルキルエステル、モノエチレン性不飽和C

3

~C

8

モノカルボン酸の第一級アミド、ヒドロキシ-C

3

~C

10

アルキルケトンのモノエチレン性不飽和C

3

~C

8

モノカルボン酸とのエステル、アミノ-C

3

~C

10

アルキルケトンのモノエチレン性不飽和C

3

~C

8

モノカルボン酸とのアミド、モノエチレン性不飽和C

3

~C

8

カルボン酸のポリオキシ-C

2

~C

4

アルキレンエーテルとのモノエステル、および少なくとも1つのウレア基を有するモノエチレン性不飽和モノマーからなる群から選択される、請求項1から11までのいずれか1項に記載の水性結合剤組成物。」

「【請求項16】

前記カルボジイミドが、ポリ-C2~C3アルキレンオキシド基を含む、請求項1から15までのいずれか1項に記載の水性結合剤組成物。」

「【請求項32】

請求項1から18までのいずれか1項に記載の結合剤組成物、または請求項19から29までのいずれか1項に記載のポリマー分散液を含むコーティング組成物。」

「【0001】

本発明は、水性多段ポリマー分散液を基とする水性結合剤組成物、この結合剤組成物の使用、およびこれを含むコーティング組成物に関する。」

「【0014】

それに応じて、本発明は、第一に、水性結合剤組成物であって、

a)分散されたポリマー粒子の水性多段ポリマー分散液の形態のポリマーPにおいて、前記ポリマー粒子が、少なくとも30°Cのガラス転移温度を有し、エチレン性不飽和モノマーM-Aから構成される第一ポリマーと、20°C以下のガラス転移温度を有し、エチレン性不飽和モノマーM-Bから構成される第二ポリマーとを含んでおり、

ここで、前記エチレン性不飽和モノマーM-AおよびM-Bが共に:

i.25°Cおよび1barでの水中での溶解度が高くても50g/lである、少なくとも1種の中性のモノエチレン性不飽和モノマーM1を、モノマーM-AとM-Bとの総量に対してそれぞれ85~99.45質量%、好ましくは87.5~97質量%、特に90~95.5質量%;

ii.25°Cおよび1barでの水中での溶解度が少なくとも100g/lである、少なくとも1種の中性のモノエチレン性不飽和モノマーM2を、モノマーM-AとM-Bとの総量に対してそれぞれ0.5~10質量%、好ましくは1~7.5質量%、特に1.5~6.5質量%;

iii.酸性基を有する、1種または複数のモノエチレン性不飽和モノマーM3を、モノマーM-AとM-Bとの総量に対してそれぞれ0.05~0.5質量%、好ましくは0.15~0.5質量%、特に0.3~0.5質量%;および

iv.任意に、少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有する1種または複数のモノマーM4を、モノマーM-AとM-Bとの総量に対してそれぞれ0~5質量%、特に0~4.5質量%;

を含む、前記ポリマーPと、

b)脂肪族炭素原子に結合されている、少なくとも2つのカルボジイミド部分を有する、少なくとも1つのカルボジイミド

とを含む前記組成物を提供する。

【0015】

この関連において、「中性」とは、モノマーM1およびM2が、どちらもプロトン化されておらず、水性の環境で酸として作用しないことを意味する。

【0016】

本発明の水性結合剤組成物は、分散されたポリマー粒子の水性多段ポリマー分散液の形態のポリマーPを含んでいるのが好ましく(本願では分散液Dとも呼ばれる)、前記ポリマー粒子は、少なくとも30°Cのガラス転移温度を有し、エチレン性不飽和モノマーM-Aから構成される第一ポリマーと、20°C以下のガラス転移温度を有し、エチレン性不飽和モノマーM-Bから構成される第二ポリマーとを含んでおり、ここで、前記ポリマー粒子は、以下:

a)前記第一ポリマーを、該第一ポリマーと前記第二ポリマーとの総量に対してそれぞれ5~50質量%、より好ましくは15~50質量%、特に20~45質量%、ここで、前記第一ポリマーを形成するモノマーM-Aは、以下からなる:

i.25°Cおよび1barでの水中での溶解度が高くても50g/lである、少なくとも1種の中性のモノエチレン性不飽和モノマーM1を、モノマーM-Aの総量に対してそれぞれ80~99.4質量%、好ましくは81~95質量%、特に82.5~93質量%;

ii.25°Cおよび1barでの水中での溶解度が少なくとも100g/lである、少なくとも1種の中性のモノエチレン性不飽和モノマーM2を、モノマーM-Aの総量に対してそれぞれ0.5~20質量%、好ましくは2.5~18質量%、特に5~16質量%、

iii.酸性基を有する、1種または複数のモノエチレン性不飽和モノマーM3を、モノマーM-Aの総量に対してそれぞれ0.1~2質量%、好ましくは0.5~1.75質量%、特に1~1.6質量%;

b)前記第二ポリマーを、前記第一ポリマーと該第二ポリマーとの総量に対してそれぞれ50~95質量%、より好ましくは52~85質量%、特に55~80質量%、ここで、前記第二ポリマーを形成するモノマーM-Bは、以下を含んでいる

iv.25°Cおよび1barでの水中での溶解度が高くても50g/lである、少なくとも1種の中性のモノエチレン性不飽和モノマーM1を、モノマーM-Bの総量に対してそれぞれ90~100質量%、好ましくは91.5~100質量%、特に92.5~98質量%、ならびに

v.任意に、少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有する1種または複数のモノマーM4を、モノマーM-Bの総量に対してそれぞれ0~10質量%、好ましくは0~8質量%、特に0~6.5質量%;

を含んでおり、

前記ポリマーPは、前述の通りであり、特に、前述のモノマーM-AおよびM-Bと同一の全体組成を有している。」

「【0019】

本発明は、前述の通り、分散されたポリマー粒子の水性多段ポリマー分散液をさらに提供するものであり、この分散液は、連続的な水性ラジカル乳化重合によって得られ、この重合は、

(1)モノマーM-Aを水性乳化重合して、前記第一ポリマーの水性分散液を得ることと、

(2)前記第一ポリマーの水性分散液中でモノマーM-Bを水性乳化重合すること

とを含んでいる。」

「【0032】

前記詳細に述べられた通り、本発明による水性結合剤組成物中に含まれるポリマーPのポリマー粒子は、エチレン性不飽和モノマーM-Aで構成される第一ポリマー、およびエチレン性不飽和モノマーM-Bで構成される第二ポリマーを含んでいる。

【0033】

本発明の好ましい実施態様によれば、前記水性結合剤組成物は、前記第一ポリマーおよび前記第二ポリマーからなるポリマーPのポリマー粒子を含んでいる。

【0034】

前記第一ポリマーの量は、一般的に、この第一ポリマーと前記第二ポリマーとの総質量に対してそれぞれ2~60質量%、好ましくは5~50質量%、より好ましくは15~50質量%、特に20~45質量%の範囲にある。

【0035】

本発明によるポリマーPの第一ポリマーは、以下を含むモノマーM-Aから形成されているのが好ましい:

i.25°Cおよび1barでの水中での溶解度が高くても50g/lである、少なくとも1種の中性のモノエチレン性不飽和モノマーM1を、モノマーM-Aの総量に対してそれぞれ80~99.4質量%、より好ましくは81~95質量%、特に82.5~93質量%;

ii.25°Cおよび1barでの水中での溶解度が少なくとも100g/lである、少なくとも1種の中性のモノエチレン性不飽和モノマーM2を、モノマーM-Aの総量に対してそれぞれ0.5~20質量%、より好ましくは2.5~18質量%、特に5~16質量%;

iii.酸性基を有する、1種または複数のモノエチレン性不飽和モノマーM3を、モノマーM-Aの総量に対してそれぞれ0.1~2質量%、より好ましくは0.5~1.75質量%、特に1~1.6質量%。

【0036】

本発明によるポリマーPの第二ポリマーは、25°Cおよび1barでの水中の溶解度が高くても50g/lである、少なくとも1種の中性のモノエチレン性不飽和モノマーM1を、モノマーM-Bの総量に対してそれぞれ90~100質量%、より好ましくは91~100質量%、特に92.5~100質量%含むモノマーM-Aから形成されているのが好ましい。

【0037】

本発明の実施態様によれば、本発明の結合剤組成物中か、または本発明の分散液D中に含まれるポリマーPの第二ポリマーを形成するモノマーM-Bは、少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有する、1種または複数のモノマーM4を、モノマーM-Bの総量に対してそれぞれ0.1~10質量%、好ましくは2~8質量%、特に3~6.5質量%含んでいる。

【0038】

本発明による好ましい実施態様によれば、本発明の結合剤組成物中か、または本発明の分散液D中に含まれるポリマーPの第二ポリマーを形成するモノマーM-Bは、モノマーM4を含んでいないか、または少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーM4をモノマーM-Bの質量に対して0.01質量%未満含んでいる。」

「【0043】

本発明の結合剤組成物中か、または本発明の分散液D中に含まれるポリマーPは、共重合加された形で、25°Cおよび1barでの脱イオン水での溶解度が高くても50g/lである、少なくとも1種の中性モノエチレン性不飽和モノマーM1を含んでいる。好ましくは、モノマーM1の水中での溶解度は、40g/lを超過しない、特に30g/lを超過せず、一般的に、0.1~50g/lの範囲、好ましくは0.1~40g/lの範囲、特に0.1~50g/lの範囲にある(25°C、1bar)。

【0044】

モノマーM1は、モノエチレン性不飽和である、つまり、正確に1つのエチレン性不飽和C=C二重結合を有している。モノマーM1は、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸およびモノエチレン性不飽和C4~C8ジカルボン酸のC1~C30アルカノール、特にC1~C10アルカノールとのエステルおよびジエステル、ビニルアルコールまたはアリルアルコールのC1~C30モノカルボン酸とのエステル、ビニル芳香族炭化水素、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸およびモノエチレン性不飽和C4~C8ジカルボン酸のC1~C30アルキルアミンまたはジ-C1~C30アルキルアミン、特にC1~C10アルキルアミンまたはジ-C1~C10アルキルアミンとのアミドおよびジアミド、ならびにそれらの混合物から選択されるのが好ましい。

【0045】

「モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸」という表現は、エチレン性不飽和C=C二重結合を有する、3~8個の炭素原子を有する一価カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニルまたはクロトン酸を表している。

【0046】

「モノエチレン性不飽和C4~C8ジカルボン酸」という表現は、エチレン性不飽和C=C二重結合を有する、4~8個の炭素原子を有する二価カルボン酸、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸またはシトラコン酸を表している。

【0047】

さらに好適なモノマーM1は、例えば、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、およびそれらの混合物である。

【0048】

好適な、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸およびモノエチレン性不飽和C4~C8ジカルボン酸のC1~C30アルカノール、特にC1~C10アルカノールとのエステルおよびジエステルは、特に、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸のエステル、特に、アクリル酸のC1~C30アルカノール、特にC1~C10アルカノールとのエステルおよびメタクリル酸のC1~C30アルカノール、特にC1~C10アルカノールとのエステル、例えば、メチル(メタ)アクリレート、メチルエタクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチルエタクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルエタクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、1,1,3,3-テトラメチルブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-ウンデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、アラキジル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、リグノセリル(メタ)アクリレート、セロチル(メタ)アクリレート、メリシル(メタ)アクリレート、パルミトレイル(メタ)アクリレート、オレイル(メタ)アクリレート、リノリル(メタ)アクリレート、リノレニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートおよびラウリル(メタ)アクリレート、しかし、また、モノエチレン性不飽和C4~C8ジカルボン酸のジエステル、特にマレイン酸のC1~C30アルカノールとのジエステル、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ(n-プロピル)、マレイン酸ジイイソプロピル、マレイン酸ジ(n-ブチル)、マレイン酸ジ(n-ヘキシル)、マレイン酸ジ(1,1,3,3-テトラメチルブチル)、マレイン酸ジ(n-ノニル)、マレイン酸ジトリデシル、マレイン酸ジミリスチル、マレイン酸ジペンタデシル、マレイン酸ジパルミチル、マレイン酸ジアラキジルおよびそれらの混合物である。ここで「(メタ)アクリレート」という表現は、アクリル酸のエステルに相当するもの、およびメタクリル酸のエステルに相当するものの両方を含んでいる。

【0049】

好適な、ビニルアルコールおよびアリルアルコールのC1~C30モノカルボン酸とのエステルは、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、バーサチック酸のビニルエステル、ギ酸アリル、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、酪酸アリル、ラウリン酸アリル、およびそれらの混合物である。

【0050】

好適なビニル芳香族炭化水素は、スチレン、2-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-n-ブチルスチレン、4-n-ブチルスチレン、4-n-デシルスチレンであり、特にスチレンである。

【0051】

好適な、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸およびモノエチレン性不飽和C4~C8ジカルボン酸のC1~C30アルキルアミンまたはジ-C1~C30アルキルアミン、特にC1~C10アルキルアミンまたはジ-C1~C10アルキルアミンとのアミドおよびジアミドは、特に、アクリル酸およびメタクリル酸のC1~C30アルキルアミンまたはジ-C1~C30アルキルアミン、特にC1~C10アルキルアミンまたはジ-C1~C10アルキルアミンとのアミドであり、例えば、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(tert-ブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(n-オクチル)(メタ)アクリルアミド、N-(1,1,3,3-テトラメチルブチル(メタ)アクリルアミド、N-エチルヘキシル)(メタ)アクリルアミド、N-(n-ノニル)(メタ)アクリルアミド、N-(n-デシル)(メタ)アクリルアミド、N-(n-ウンデシル)(メタ)アクリルアミド、N-トリデシル(メタ)アクリルアミド、N-ミリスチル(メタ)アクリルアミド、N-ペンタデシル(メタ)アクリルアミド、N-パルミチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘプタデシル(メタ)アクリルアミド、N-ノナデシル(メタ)アクリルアミド、N-アラキジル(メタ)アクリルアミド、N-ベヘニル(メタ)アクリルアミド、N-リグノセリル(メタ)アクリルアミド、N-セロチル(メタ)アクリルアミド、N-メリシル(メタ)アクリルアミド、N-パルミトレイル(メタ)アクリルアミド、N-オレイル(メタ)アクリルアミド、N-リノリル(メタ)アクリルアミド、N-リノレニル(メタ)アクリルアミド、N-ステアリル(メタ)アクリルアミド、N-ラウリル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、しかし、また、マレイン酸のC1~C30アルキルアミンまたはジ-C1~C30アルキルアミン、特にC1~C10アルキルアミンまたはジ-C1~C10アルキルアミンとのジアミドおよびイミド、例えば、N,N’-ジメチルマレアミド、N,N’-ジエチルマレアミド、N,N’-ジプロピルマレアミド、N,N’-ジ-(tert-ブチル)マレアミド、N,N’-ジ-(n-オクチル)マレアミド、N,N’-ジ-(n-ノニル)マレアミド、N,N’-ジトリデシルマレアミド、N,N’-ジミリスチルマレアミド、N,N,N’,N’-テトラメチルマレアミド、N,N,N’,N’-テトラエチルマレアミド、およびそれらの混合物である。ここで「(メタ)アクリルアミド」という表現は、アクリル酸のアミドに相当するもの、およびメタクリル酸のアミドに相当するものの両方を含んでいる。

【0052】

好適なハロゲン化ビニルおよびハロゲン化ビニリデンは、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、およびそれらの混合物である。

【0053】

前記少なくとも1種のモノマーM1は、好ましくはモノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸のエステル、特に、アクリル酸のC1~C10アルカノールとのエステル(アクリレート)およびメタクリル酸のC1~C10アルカノールとのエステル(メタクリレート)、およびビニル芳香族炭化水素から、特に、C1~C10アルキルアクリレートおよびC1~C10アルキルメタクリレート、およびビニル芳香族炭化水素から、殊に、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレートおよびスチレンから選択される。

【0054】

本発明の1つの好ましい実施態様によれば、ポリマーPは、共重合された形で、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸のエステル、特にアクリル酸およびメタクリル酸のC1~C30アルカノール、殊にC1~C10アルカノールとのエステル、およびビニル芳香族炭化水素から選択される、少なくとも2種のモノマーM1を含んでいる。1つの特に好ましい実施態様によれば、ポリマーPは、共重合された形で、少なくとも1種のモノマーM1.1、少なくとも1種のモノマーM1.2を含んでおり、前記少なくとも1種のモノマーM1.1は、C1~C10アルキルアクリレートおよび好ましくはメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、tert-ブチルアクリレートおよび2-エチルヘキシルアクリレートから選択されており、前記少なくとも1種のモノマーM1.2は、C1~C10アルキルメタクリレートおよびビニル芳香族、好ましくは、メチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、tert-ブチルメタクリレートおよびスチレンから選択される。

【0055】

本発明によれば、モノマーM1の割合は、モノマーM-AとM-Bとの総量に対して85~99.45質量%の範囲、好ましくは87.5~97質量%の範囲、特に90~95.5質量%の範囲である。さらに、モノマーM1の割合は、モノマーM-Aの総量に対して80~99.4質量%、好ましくは81~95質量%、特に82.5~93質量%である一方、モノマーM1の割合は、モノマーM-Bの総量に対して90~100質量%、好ましくは91.5~100質量%、特に92.5~98質量%である。

【0056】

さらに、適用の数に関して、共重合された形で、モノマーM1.1およびM1.2を、モノマーM1.1のモノマーM1.2に対する質量比、7.5:1~1:15の範囲、好ましくは3:1~1:10の範囲、特に2:1~1:5.5の範囲で含むポリマーPが好ましい。本願の関連において、共重合されたモノマーM1.1を5~80質量%、好ましくは10~60質量%、および共重合されたモノマーM1.2を20~95質量%、好ましくは40~90質量%含むポリマーPが特に好ましい。」

「【0057】

本発明の結合剤組成物中か、または本発明の分散液D中に含まれるポリマーPは、共重合された形で、25°Cおよび1barでの脱イオン水中での溶解度が少なくとも100g/lである、少なくとも1種の中性のモノエチレン性不飽和モノマーM2を含んでいる。好ましくは、モノマーM2の水中での溶解度は、少なくとも150g/l、より好ましくは少なくとも250g/l、特に少なくとも500g/lである(25°C、1bar)。

【0058】

本発明の好ましい実施態様によれば、少なくとも1種のモノマーM2は、25°Cおよび1barで、いずれの比率でも水と混和する。

【0059】

モノマーM2は、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸のヒドロキシ-C2~C4アルキルエステル、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸の第一級アミド、ヒドロキシ-C3~C10アルキルケトンのモノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸とのエステル、アミノ-C3~C10アルキルケトンのモノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸とのアミド、モノエチレン性不飽和C3~C8カルボン酸のポリオキシ-C2~C4アルキレンエーテルとのモノエステル、および少なくとも1つのウレア基を有するモノエチレン性不飽和モノマー、およびそれらの混合物から選択されるのが好ましい。

【0060】

M2として好適な、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸のヒドロキシ-C2~C4アルキルエステルは、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のヒドロキシ-C2~C4アルキルエステル、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルエタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、およびそれらの混合物である。

【0061】

M2として好適な、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸の第一級アミドは、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、およびそれらの混合物である。

【0062】

M2として好適な、ヒドロキシ-C3~C10アルキルケトンのモノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸とのエステルは、例えば、N-(2-オキソプロピル)アクリルエステル、N-(2-オキソプロピル)メタクリルエステル、N-(1-メチル-2-オキソプロピル)アクリルエステル、N-(3-オキソブチル)アクリルエステル、N-(3-オキソブチル)メタクリルエステル、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルエステル、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)メタクリルエステル、N-(4-オキソヘキシル)アクリルエステル、およびその混合物である。

【0063】

M2として好適な、アミノ-C3~C10アルキルケトンのモノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸とのアミドは、例えば、N-(2-オキソプロピル)アクリルアミド、N-(2-オキソプロピル)メタクリルアミド、N-(1-メチル-2-オキソプロピル)アクリルアミド、N-(3-オキソブチル)アクリルアミド、N-(3-オキソブチル)メタクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルアミド(ジアセトンアクリルアミドとも呼ばれる)、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)メタクリルアミド、N-(4-オキソヘキシル)アクリルアミド、およびそれらの混合物である。

【0064】

モノエチレン性不飽和C3~C8カルボン酸のポリオキシ-C2~C4アルキレンエーテルとのモノエステルの群からの好適なモノマーM2は、例えば、モノエチレン性不飽和C3~C8カルボン酸のモノエステル、さらに特に、一般式(A)

【化1】

18

91

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[式中、

アルキレンオキシド単位の順序は任意であり、

kおよびlは、互いに独立してそれぞれ0~100の範囲、特に0~50の範囲の整数であり、kおよびlの合計は、少なくとも3、特に4、例えば、3~200、特に、4~100であり、

Raは、水素、C1~C30アルキル、C5~C8シクロアルキルまたはC6~C14アリールであり、および

Rbは、水素またはC1~C8アルキル、特に水素またはメチルである]

のアクリル酸およびメタクリル酸のポリ-C2~C4アルキレンエーテルとのモノエステルである。

【0065】

kは、好ましくは、3~50、特に4~30の整数である。lは、好ましくは、0~30、特に0~20の整数である。lは、0であるのがより好ましい。kおよびlの合計は、3~50の範囲、特に4~40の範囲にあるのが好ましい。

【0066】

一般式(A)のRaは、水素、C1~C20アルキルであるのが好ましく、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチルまたはsec-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、オクチル、2-エチルヘキシル、デシル、ラウリル、パルミチルまたはステアリルである。Raは、水素またはC1~C4アルキルであるのがより好ましい。

【0067】

Rbは、水素またはメチルであるのが好ましい。

【0068】

少なくとも1つのウレア基を有する好適なモノマーM2は、例えば、N-ビニルウレア、N-(2-アクリロイルオキシエチル)イミダゾリジン-2-オンおよびN-(2-メタクリロイルオキシエチル)イミダゾリジン-2-オン(2-ウレイドメタクリレート、UMA)である。

【0069】

前記少なくとも1種のモノマーM2は、アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシ-C2~C4アルキルエステル、ヒドロキシ-C3~C10アルキルケトンのアクリル酸またはメタクリル酸とのエステル、ヒドロキシ-C3~C10アルキルケトンのアクリル酸またはメタクリル酸とのアミド、2-ウレイドメタクリレート、および一般式(A’)

【化2】

12

87

0001431162000005.jpg

[式中、kは、4~40の整数であり、Raは、水素またはC1~C4アルキルであり、Rbは、水素またはメチルである]のポリ-C2~C4アルキレンエーテルから選択されるのが好ましい。前記少なくとも1種のモノマーM2は、アクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシ-C2~C4アルキルエステル、およびヒドロキシ-C3~C10アルキルケトンのアクリル酸またはメタクリル酸とのアミド、特にN-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)アクリルアミド、N-(1,1-ジメチル-3-オキソブチル)メタクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリレートおよび2-ヒドロキシエチルメタクリレートから選択されるのがより好ましい。

【0070】

本発明の実施態様によれば、ポリマーPは、共重合加された形で、本願に挙げられるモノマーM2、特に、好ましいとして挙げられるモノマーM2から選択される1種のモノマーM2のみを含んでいる。

【0071】

本発明の好ましい実施態様によれば、ポリマーPは、共重合された形で、少なくとも2種のモノマーM2を含んでおり、特に、本願で挙げられるモノマーM2、特に好ましいとして挙げられるモノマーM2から選択される2種のモノマーM2のみを含んでいる。

【0072】

本発明によれば、モノマーM2の割合は、モノマーM-AとM-Bとの総量に対して5~10質量%の範囲、好ましくは1~7.5質量%の範囲、特に1.5~6.5質量%の範囲にある。さらに、モノマーM2の割合は、モノマーM-Aの総量に対して0.5~20質量%、好ましくは2.5~18質量%、特に5~16質量%である。

【0073】

本発明の別の好ましい実施態様によれば、一般的に、共重合された形のポリマーPを含むモノマーM2の総量の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%、特に少なくとも99質量%は、ポリマーPの第一ポリマーを形成するモノマーM-Aの一部である。」

「【0074】

本発明の結合剤組成物中か、または本発明の分散液D中に含まれるポリマーPは、共重合された形で、酸性基を有する1種または複数のモノエチレン性不飽和モノマーM3を含んでいる。モノマーM3の酸性基は、一般的に、カルボン酸基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、リン酸基(-PO3H2)、相応のモノエステル基、リン酸モノエステル基(-OP(=O)(OH)2)およびリン酸ジエステル基((-O)2P(=O)(OH))からなる群から選択される。

【0075】

カルボン酸基を有する好適なモノマーM3は、例えば、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸、例えば、特にアクリル酸およびメタクリル酸、モノエチレン性不飽和C4~C8ジカルボン酸、例えば、特にマレイン酸、フマル酸およびイタコン酸、およびそれらの混合物である。

【0076】

スルホン酸基を有する好適なモノマーM3は、例えば、不飽和スルホン酸、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、スルホエチルアクリレート、スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸、スチレンスルホン酸、およびそれらの誘導体、例えば、スチレン-4-スルホン酸およびスチレン-3-スルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロペンスルホン酸、およびそれらの混合物である。

【0077】

ホスホン酸基を有する好適なモノマーM3は、例えば、不飽和ホスホン酸、例えば、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、およびそれらの混合物である。

【0078】

リン酸モノエステル基またはリン酸ジエステル基を有する好適なモノマーM3は、例えば、リン酸のヒドロキシ-C2~C4アルキルアクリレートまたはヒドロキシ-C2~C4アルキルメタクリレートとのモノエステルおよびジエステル、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートまたはヒドロキシブチルメタクリレート、ならびにこれらのモノエステルおよび/またはジエステルの混合物である。

【0079】

モノマーM3は、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸、例えば、特にアクリル酸およびメタクリル酸、モノエチレン性不飽和C4~C8ジカルボン酸、例えば、特にマレイン酸、フマル酸およびイタコン酸、ならびにそれらの混合物から選択されるのが好ましい。モノマーM3は、アクリル酸およびメタクリル酸から選択されるのがより好ましく、特にアクリル酸である。

【0080】

本発明の好ましい実施態様によれば、ポリマーPは、共重合された形で、本願で挙げられるモノマーM3、特に好ましいとして挙げられるモノマーM3から選択される1種のモノマーM3のみを含んでおり、これは、特に好ましい実施態様によれば、アクリル酸である。

【0081】

本発明によれば、モノマーM3の割合は、モノマーM-AとM-Bとの総量に対して0.05~0.5質量%の範囲、好ましくは0.15~0.5質量%の範囲、特に0.3~0.5質量%の範囲にある。さらに、モノマー3の割合は、モノマーM-Aの総量に対して0.1~2質量%、好ましくは0.5~1.75質量%、特に1~1.6質量%である。

【0082】

本発明の好ましい実施態様によれば、一般的に、ポリマーP中に共重合された形で含まれるモノマーM3の総量の少なくとも95質量%。好ましくは少なくとも98質量%、特に少なくとも99質量%は、ポリマーPの第一ポリマーを形成するモノマーM-Aの一部である。」

「【0083】

本発明の結合剤組成物中か、または本発明の分散液D中に含まれるポリマーPは、共重合された形で、少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有する1種または複数のモノマーM4を含んでいる。

【0084】

本発明の別の好ましい実施態様によれば、モノマーM4は、2つの非共役エチレン性不飽和二重結合のみを有している。

【0085】

モノマーM4は、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸の飽和脂肪族ジオールまたは飽和脂環式ジオールとのヒドロキシジエステル、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸のモノエチレン性不飽和脂肪族モノヒドロキシ化合物またはモノエチレン性不飽和脂環式モノヒドロキシ化合物とのモノエステル、およびビニル芳香族化合物、およびそれらの混合物から選択されるのが好ましい。

【0086】

M4として好適な、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸の飽和脂肪族ジオールまたは飽和脂環式ジオールとのヒドロキシジエステルは、例えば、飽和脂肪族ジオールまたは飽和脂環式ジオールのジアクリレートおよびジメタクリレート、例えば、エチレングリコールのジアクリレートおよびジメタクリレート(1,2-エタンジオール)、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール)または1,2-シクロヘキサンジオール、およびそれらの混合物である。

【0087】

M4として好適な、モノエチレン性不飽和C3~C8モノカルボン酸のモノエチレン性不飽和脂肪族モノヒドロキシ化合物またはモノエチレン性不飽和脂環式モノヒドロキシ化合物とのモノエステルは、例えば、モノエチレン性不飽和脂肪族モノヒドロキシ化合物またはモノエチレン性不飽和脂環式モノヒドロキシ化合物のアクリレートおよびメタクリレート、例えば、ビニルアルコール(エタノール)、アリルアルコール(2-プロペン-1-オール)または2-シクロヘキセン-1-オールのアクリレートおよびメタクリレート、ならびにそれらの混合物である。

【0088】

ジビニル芳香族化合物の群からの好適なモノマーM4は、例えば、1,3-ジビニルベンゼン、1,4-ジビニルベンゼン、およびそれらの混合物である。

【0089】

モノマーM4は、好ましくは飽和脂肪族ジオールまたは飽和脂環式ジオールのジアクリレートおよびジメタクリレートから、より好ましくは飽和脂肪族ジオールのジアクリレートおよびジメタクリレートから、特に飽和脂肪族ジオールのジアクリレート、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオールおよび1,4-ブタンジオールのジアクリレートから選択される。

【0090】

本発明の好ましい実施態様によれば、ポリマーPは、共重合された形で、本願で挙げられるモノマーM4、特に、好ましいとして挙げられるモノマーM4から選択される1種のモノマーM4のみを含んでおり、特に好ましい実施態様によれば、1,4-ブタンジオールのジアクリレートである。

【0091】

本発明によれば、モノマーM4の割合は、モノマーM-AとM-Bとの総量に対して0~5質量%の範囲、特に0~4.5質量%の範囲である。さらに、モノマーM4の割合は、モノマーM-Bの総量に対して0~10質量%、好ましくは0~8質量%、特に0~6.5質量%である。

【0092】

本発明の別の好ましい実施態様によれば、一般的に、ポリマーPに共重合された形で含まれるモノマーM4の総量の少なくとも95質量%、好ましくは少なくとも98質量%、特に少なくとも99質量%は、ポリマーPの第一ポリマーを形成するモノマーM-Bの一部である。」

「【0097】

好適な陰イオン性乳化剤の例は、以下の通りである:スルホコハク酸のジアルキルエステルのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、アルキル硫酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩(アルキル基:C8~C18)、エトキシ化アルカノールを有する硫酸モノエステルのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩(EO度:4~30、アルキル基:C8~C18)、エトキシ化アルキルフェノールを有する硫酸モノエステルのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩(EO度:3~50、アルキル基:C4~C16)、アルキルスルホン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩(アルキル基:C8~C18)、およびアルキルアリールスルホン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩(アルキル基:C4~C18)。好適な陰イオン性乳化剤の例は、以下に記載される一般式

【化3】

22

83

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[式中、R1およびR2は、水素またはC4~C14アルキルであり、同時に水素ではなく、XおよびYは、アルカリ金属イオンおよび/またはアンモニウムイオンであってよい]の化合物でもある。R1およびR2は、水素または6~18個の炭素原子、特に6個、12個および16個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基であり、R1およびR2は両方同時に水素ではない。XおよびYは、ナトリウムイオン、カリウムイオンまたはアンモニウムイオンであるのが好ましく、ナトリウムが特に好ましい。特に有利な化合物は、XおよびYがナトリウムであり、R1が12個の炭素原子を有する分岐鎖アルキル基であり、R2が水素であるか、またはR1に記載の水素ではない定義のうちの1つを有する化合物である。多くの場合、モノアルキル化生成物50~90質量%の割合を含む工業的混合物、例えば、Dowfax(登録商標)2A1(Dow Chemical Company社)が使用される。」

「【0100】

本発明による水性結合剤組成物および水性ポリマー分散液において、ポリマーPは、均一な水相中に分散または懸濁されている、微細に分配された粒子の形で不均一相として存在している。前記均一な水相は、水および同じく一般的に製造に使用される助剤、例えば、界面活性物質、酸、塩基、および重合反応からの分解生成物の他に、少量の水混和性の有機溶媒をさらに含んでいてよい。最後に挙げられた成分の割合は、前記分散液の総量に対して、一般的に1質量%を超過しない。」

「【0113】

前記重合において、調整剤を、例えば、重合されるモノマーに対して0~1質量%の量で使用することが可能である。このようにして、ポリマーのモル質量が減少される。好適であるのは、チオール基、例えば、tert-ブチルメルカプタン、メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸エチル、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、およびtert-ドデシルメルカプタンを有する化合物により好適さが有される。任意に、調整剤を重合の過程で、比較的長期間にわたり、同時並行に、例えば、モノマーを添加して、添加することは有利である。前記添加は、連続供り速度で、または送り速度を増加もしくは減少させて行われてよい。」

「【0118】

一般的に、段階AでのモノマーM-Aの重合、および段階BでのモノマーM-Bの重合の量補が完了した後、一般に7.5~10.5、好ましくは8.5~10の塩基の範囲のpH値を達成するために、個々の重合混合物に塩基を添加する。さらに、この塩基は、モノマーM-AまたはM-Bを含む供給の1つまたは両方と同時に既に供給されてよい。本関連における好ましい塩基は、アンモニア水(つまり、水酸化アンモニウム)および有機アミン、例えば、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンまたはポリエチレンアミン、例えば、Jeffamines(登録商標)から選択される。段階Aおよび段階Bの重合が完了した後に添加する他に、塩基がモノマーM-Bの供給に同時に供給されるのが好ましい。」

「【0126】

前述の通り、本発明による結合剤組成物は、ポリマーPの水性多段分散液の他に、脂肪族炭素原子に結合されている、少なくとも2つのカルボジイミド部分を有する、少なくとも1つのカルボジイミドも含んでいる。このようなカルボジイミドは、本願では、カルボジイミドCとも呼ばれる。」

「【0128】

本発明の好ましい実施態様によれば、カルボジイミドCは、水溶性または水分散性である。したがって、特に好ましいカルボジイミドCは、エチレンオキシド繰り返し単位を2~50、特に5~20有する、ポリ-C2~C3アルキレンオキシド基、特にポリエチレンオキシド基を含んでいる。

【0129】

さらに、脂肪族であるカルボジイミドCが好ましい、つまり、カルボジイミドCのカルボジイミド部分が、脂肪族ジラジカルにより、より好ましくは飽和脂肪族ジラジカルにより、特に、1~5個のC1~C5アルキル基で置換することができる分岐鎖または直鎖のC2~C15アルカンジイルおよびC4~C8シクロアルカンジイルから選択されるジラジカルにより架橋されている。

【0130】

別の好ましい実施態様によれば、カルボジイミドCは、一般式(B)

【化4】

21

89

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[式中、*は、カルボジイミド部分またはウレタン部分の窒素原子に結合しており、♯は、炭素原子に結合している]の繰り返し単位を含んでいる脂肪族カルボジイミドである。これらの化合物は、イソホロンジイソシアネート(1-イソシアネート-3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン)の自己縮合により、ヒドロキシル基を有する化合物の存在下に二酸化炭素を失って得られるものである。このヒドロキシル基を有する化合物は、一般的に、前記ウレタン部分を介して結合している前述のポリ-C2~C3アルキレンオキシド基を構成するポリ-C2~C3アルキレンオキシドである。

【0131】

カルボジイミドCおよび特に一般式(B)のカルボジイミドCは、以下の方法により製造することができる:ジイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネート、およびモノヒドロキシポリ-C2~C3アルキレンオキシド(例えば、メタノール開始ポリエチレンオキシド)を、非プロトン性溶媒中で混合して、約100~150°Cに加熱する。次に、触媒、例えば、1-メチル-2-ホスホレン-1-オキシドを添加して、この混合物を、複数時間、約130~160°Cで加熱する。その後、捕捉剤、例えば、エタノールを、残りのイソシアネート基をクエンチするため前記反応混合物に添加する。このようにして得られる生成物は、本発明の結合剤組成物中のカルボジイミドCとして直接使用することができる。

【0132】

本発明の結合剤組成物中に含まれるカルボジイミドCの量は、一般に、ポリマーPに対して0.1~30質量%、好ましくは0.2~20質量%、特に0.1~10質量%である。

【0133】

カルボジイミドCの有利な効果の場合、本発明の結合剤組成物のpH値は、一般的に7.5~10.5の範囲、8.5~10の範囲、特に8.5~10の範囲に設定される。この塩基性pH値は、アミン、例えば、特に含水水酸化アンモニウムを、前記水性多段ポリマー分散液に添加することにより達成されるのが好ましい。」

「【0166】

本発明の結合剤組成物が、大気水分と反応せず(例えば、イソシアネートを基とするコーティングは反応する)、したがって、コーティング内の気泡(「ポッピング(popping)」としても知られている)を生じさせる二酸化炭素を放出しないことが、前記結合剤組成物の利点である。」

「【0182】

II ポリマー分散液の製造

例1(分散液D1)

計測装置、撹拌器、および温度調節装置を備える重合容器に、20~25°C(室温)で、窒素雰囲気下に、初期装入分(下記参照)を装入し、次に、これを撹拌しながら(150rpm)80°Cに加熱した。この温度に達成したところで、7質量%濃度のペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液25.71gを加えて、このバッチを2分間撹拌した。その後、前記温度を維持して、供給Z1を、40分の間、一定の流量で連続的に計量供給した。供給Z1の添加終了後、洗浄水1を前記重合混合物に加えた。次に、この重合混合物を、80°Cで10分間後反応させた。続いて、供給Z3を、10分の間に、一定の流量で連続的に前記重合混合物に計量供給した。その後、90分の間に、一定流量で、供給Z2を連続的に計量供給した。供給Z2の開始40分後および進行中の供給Z2と同時並行して、10分の間に、連続的に、一定流量で供給Z4を前記重合混合物に計量供給した。供給Z2の終了後、洗浄水2を前記重合混合物に加えた。その後、前記重合混合物を80°Cでさらに90分、後反応させた。その後、供給Z5を10分の間に、連続的に一定流量で、前記重合混合物に計量供給した。室温に冷却した後、得られた前記水性ポリマー分散液を、次に、洗浄水3と混合して、125μmのフィルターに通してろ過した。」

「【0205】

例3(分散液D3)

室温への冷却後に、供給Z5に続いて追加供給Z6を計量供給したのを除いて、例1に記載の通りに製造を行い、次に、こうして得られた水性ポリマー分散液を洗浄水3と混合して、125μmのフィルターに通してろ過した。例1に示される供給および洗浄水の代わりに、以下のものを使用した。

【0206】

初期装入分:

脱イオン水290.93g

15質量%濃度ラウリル硫酸水溶液12.00g。

【0207】

供給Z1(以下を含む均一な混合物):

脱イオン水33.00g

15質量%濃度ラウリル硫酸ナトリウム水溶液3.00g

2-エチルヘキシルチオグリコレート2.16g

20質量濃度ジアセトンアクリルアミド水溶液54.00g

アクリル酸2.03g

ヒドロキシエチルメタクリレート8.78g

n-ブチルアクリレート13.50g

スチレン13.50g

メチルメタクリレート86.40g。

【0208】

洗浄水1:

脱イオン水12.00g。

【0209】

供給Z2(以下を含む均一な混合物):

脱イオン水124.42g

15質量%濃度ラウリル硫酸ナトリウム水溶液6.00g

1,4-ブタンジオールジアクリレート18.00g

n-ブチルアクリレート162.00g

メチルメタクリレート135.00g。

【0210】

供給Z3:

3質量%濃度アンモニア水溶液1.80g。

【0211】

供給Z4:

3質量%濃度アンモニア水溶液2.40g。

【0212】

洗浄水2:

脱イオン水12.00g。

【0213】

供給Z5:

5質量%濃度アンモニア水溶液28.08g。

【0214】

供給Z6:

12質量%濃度アジピン酸ジヒドラジド水溶液45.00g。

【0215】

洗浄水3:

脱イオン水6.62g。

【0216】

これによって、固体含有量42.2質量%、pH9.5、平均粒子径69nm(HPPSを用いて測定)、および重量平均粒子径56nm(HDCを用いて測定)を有するポリマー分散液が生じた。ブルックフィールド粘度は、それぞれ100s

-1

で148mPa・sおよび250s

-1

で95mPa・sであった。 ガラス転移温度は、15°Cおよび86°C(DSCにより測定)であり、塗膜形成最低温度は、24°Cであった。」

「【0264】

例8:カルボジイミド溶液の製造

イソホロンジイソシアネート(IPDI)300質量割合(1.35モル)を、メトキシプロピルアセテート(MPA)300gと、還流冷却器およびサーモメータを備える丸底フラスコで混合した。この混合物を90°Cに加熱して、その後、メタノール開始ポリエチレンオキシド(モル質量760g/mol)92.8質量割合(0.12モル)を加えた。270分後、イソシアネートの含有量を測定して、16.1質量%であった。前記反応を145°Cに加熱して、次に、1-メチル-2-ホスホレン-1-オキシド(MPO)0.6質量割合を加えて、この混合物を145°Cで24時間撹拌して、その後、100°Cに冷却した。その後、イソシアネートの含有量を測定し、1.9質量%であった。エタノール11質量割合を加えて、前記混合物を100°Cで24時間撹拌した。前記時間後、イソシアネート含有量を測定することはできなかった。」

「【0288】

III 結合剤組成物の評価

例2および例3、ならびに比較例1および比較例2で得られた分散液D2、D3、CD1およびCD2を、それぞれ第1表に示される量のブチルグリコールおよび脱イオン水と混合した。「質量%」の数字は、それぞれの分散液の質量に対している。生じる希釈分散液を2つの部分に分けた。次に、各分散液の一部に、カルボジイミドを、分散液中に含まれるポリマー(%(固体/固体))の質量に対してそれぞれ、CD1およびCD2の場合は10質量%の量、ならびにD2およびD3の場合は5質量%の量で加えた。前記カルボジイミドは、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル(Dow Chemicals社Dawanol DMM)中の50質量%溶液として使用した。前記カルボジイミドは、イソホロンジイソシアネートおよびモノメチルポリエチレングリコールを基としており、例8に記載のものと類似した合成物として製造することができる。得られた混合物、カルボジイミドで処理したもの、および比較のために未処理のものを、いくつかの化学薬品および成分に対する耐性ならびに水および水蒸気に対する耐性の測定のために、下記の通りに使用した。さらに、すべての混合物の試料を23°Cで5分間撹拌して、その後、それらの粘度を第1表に記載の通り測定した。

【0289】

【表1】

127

89

0001431162000008.jpg

2 甲2には、次の記載がある。

「【請求項1】

下記一般式(1);

【化1】

25

88

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(式中、Xは、少なくとも1個のカルボジイミド基を含有する2官能の有機基を表わす。Yは、親水性基を表わす。R1は、炭素数4以下のアルキレン基を表わす。nは0又は1を表わす。mは0~10の数を表わす。)で表わされることを特徴とする3鎖型親水性カルボジイミド化合物。

【請求項2】

Yは、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルから水酸基を除いた構造を有する請求項1記載の3鎖型親水性カルボジイミド化合物。」

「【請求項10】

カルボキシル基含有水性樹脂及び硬化剤からなる水性塗料組成物であって、前記硬化剤は、請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載の3鎖型親水性カルボジイミド化合物であることを特徴とする水性塗料組成物。」

「【0007】

【発明が解決しようとする課題】

本発明は、上記現状に鑑み、比較的低温での硬化が可能であり、耐水性等の特性が優れた水性塗料組成物の硬化剤として使用することができる3鎖型親水性カルボジイミド化合物及びこれからなる水性塗料組成物を提供することを目的とするものである。」

「【0069】

【発明の効果】

本発明の3鎖型親水性カルボジイミド化合物を硬化剤として使用することによって得られた水性塗料組成物は、比較的低温での硬化が可能であり、耐水性等の特性に優れており、特に自動車補修様塗料として有用である。」

第5 申立理由1(新規性及び進歩性)についての判断

1 甲1に記載された発明

甲1(前記第4の1参照。)の【0289】【表1】の「D3+CDI」に着目し、D3について、同【0182】、【0205】~【0216】の記載を、CDIについて、同【0288】の記載を参酌すれば、甲1には次の発明(以下「甲1発明」)が記載されているものと認められる。

(甲1発明)

「ポリマー分散液D3に、イソホロンジイソシアネートおよびモノメチルポリエチレングリコールを基とするカルボジイミドを、前記ポリマー分散液D3中に含まれるポリマー(%(固体/固体)の質量に対して、5質量%の量で加えた結合剤組成物であって、

前記ポリマー分散液D3は、

A.初期挿入分(脱イオン水290.93g及び15質量%濃度ラウリル硫酸水溶液12.00g)を撹拌加熱し、7質量%濃度のペルオキソ二硫酸ナトリウム水溶液25.71gを加え撹拌し、

B.その後、供給Z1(以下を含む均一な混合物:脱イオン水33.00g、15質量%濃度ラウリル硫酸ナトリウム水溶液3.00g、2-エチルヘキシルチオグリコレート2.16g、20質量濃度ジアセトンアクリルアミド水溶液54.00g、アクリル酸2.03g、ヒドロキシエチルメタクリレート8.78g、n-ブチルアクリレート13.50g、スチレン13.50g、メチルメタクリレート86.40g)を一定の流量で供給し、供給Z1の終了後、この重合混合物に洗浄水1(脱イオン水12.00g)を加えた後反応させ、続いて、供給Z3(3質量%濃度アンモニア水溶液1.80g)を一定の流量で供給し、

C.その後、供給Z2(以下を含む均一な混合物:脱イオン水124.42g、15質量%濃度ラウリル硫酸ナトリウム水溶液6.00g、1,4-ブタンジオールジアクリレート18.00g、n-ブチルアクリレート162.00g、メチルメタクリレート135.00g)を一定の流量で供給し、途中から、供給Z4(3質量%濃度アンモニア水溶液2.40g)を並行して一定の流量で供給し、供給Z2の終了後、この重合混合物に洗浄水2(脱イオン水12.00g)を加えた後反応させ、その後、供給Z5(5質量%濃度アンモニア水溶液28.08g)を一定の流量で供給し、室温に冷却し、

D.続いて、供給Z6(12質量%濃度アジピン酸ジヒドラジド水溶液45.00g)を供給し、

E.得られた水性ポリマー分散液を、洗浄水3(脱イオン水6.62g)と混合して、125μmのフィルターに通してろ過して得られ、

また、前記ポリマー分散液D3は、固体含有量42.2質量%、pH9.5、ガラス転移温度が15°Cおよび86°C(DSCにより測定)である、

結合剤組成物。」

2 対比・判断

(1)本件発明1

ア 本件発明1と甲1発明を対比する。

甲1発明の「ポリマー分散液D3」は、甲1の【0116】を参酌すると、供給Z1含有モノマーの反応による共重合ポリマー(以下「第一ポリマー」という。)及び供給Z2含有モノマーの反応による共重合ポリマー(以下「第二ポリマー」という。)を含むことは明らかであるし、供給Z1及び供給Z2の組成からみて、第一ポリマーは、ヒロドキシエチルメタクリレートに由来する水酸基、アクリル酸に由来するカルボキシ基を有し、第二ポリマーは、それらの官能基を有しないことも明らかである。そうすると、甲1発明の「ポリマー分散液D3」に含まれる「第一ポリマー」は、本願発明1の「(A)水酸基およびカルボキシ基を有する水性樹脂」に相当する。

また、ポリマー分散液D3は、15°Cおよび86°C(DSCにより測定)の2点のガラス転移温度を有しており、その一方が第一ポリマーのガラス転移温度で、他方が第二ポリマーのガラス転移温度であると考えられる。しかしながら、その対応関係については明らかでない。

甲1発明の「イソホロンジイソシアネートおよびモノメチルポリエチレングリコールを基とするカルボジイミド」は、本件発明1の「(B)親水化変性カルボジイミド化合物」及び「(B)親水化変性カルボジイミド化合物は、分子内に、少なくとも1個のカルボジイミド基およびポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルから水酸基を除いた構造を有し」に相当する。

甲1発明の「供給Z3(3質量%濃度アンモニア水溶液1.80g)」、「供給Z4(3質量%濃度アンモニア水溶液2.40g)」及び「供給Z5(5質量%濃度アンモニア水溶液28.08g)」は、前記甲1発明の工程B、Cにおいて「ポリマー分散液D3」に添加されており、甲1の【0118】の記載を考慮すると、いずれも塩基として添加されたものであることは明らかであるから、本件発明1の「塩基性化合物」相当する。

甲1発明の「結合剤組成物」は、ポリイソシアネート硬化剤を含まないため、本件発明1の「ポリイソシアネート硬化剤を含まないか、あるいは、水性塗料組成物の固形分100質量部に対して1質量部未満含む」を充足する。

そうすると、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。

<一致点>

「(A)水酸基およびカルボキシ基を有する水性樹脂と、

(B)親水化変性カルボジイミド化合物と、

(C)塩基性化合物と、を含み、

前記(B)親水化変性カルボジイミド化合物は、分子内に、少なくとも1個のカルボジイミド基およびポリアルキレングリコールモノアルキルエーテルから水酸基を除いた構造を有し、

前記水性塗料組成物は、ポリイソシアネート硬化剤を含まないか、あるいは、前記水性塗料組成物の固形分100質量部に対して1質量部未満含む、組成物。」

<相違点1-1>

本件発明1は、「一液型の水性塗料組成物」であるのに対し、甲1発明は、「結合剤組成物」である点。

<相違点1-2>

本件発明1は、「(A)水酸基およびカルボキシ基を有する水性樹脂」のガラス転移点が「0°C以上20°C以下であ」るのに対し、甲1発明の「第一ポリマー」のガラス転移点は、「15°C」又は「86°C」のどちらであるか不明である点。

<相違点1-3>

本件発明1は、「水性塗料組成物のpHは、8.5以上10未満であ」るのに対し、甲1発明は、「ポリマー分散液D3」は「pH9.5」であるものの、「結合剤組成物」のpHが不明である点。

イ 事案に鑑み、相違点1-2について検討する。

(ア)「第一ポリマー」と「第二ポリマー」のガラス転移点について

a 甲1発明の「第一ポリマー」のガラス転移点について、FOXの式から概算する。

なお、FOXの式は、以下の式により定義され、共重合体のガラス転移点を、各モノマーの重量分率及びホモポリマーのガラス転移点から算出する式である(特開平3-24145号公報の第8頁右下欄8行~16行参照)。

1/Tg=ΣMn/Tgn

Tg:共重合体のガラス転移点

Mn:各モノマーの重量分率

Tgn:各モノマーのホモポリマーのガラス転移点

(a)前提事項

第一ポリマーを構成する各モノマーのホモポリマーのTgとして、次の値を用いた。

ジアセトンアクリルアミド:65°C(338K)(特開2003-266613号公報の【0018】参照)

アクリル酸:106°C(379K)(特開2015-040237号公報の【0058】参照)

ヒドロキシエチルメタクリレート:57°C(330K)(特表2017-518397号公報の【0026】参照)

n―ブチルアクリレート:-50°C(223K)(特開2015-040237号公報の【0058】参照)

スチレン:100°C(373K)(特開2015-040237号公報の【0058】参照)

メチルメタクリレート:105°C(378K)(特開2015-040237号公報の【0058】参照)として算出した。

また、ジアセトンアクリルアミドは、20質量濃度水溶液54.00gを用いているため、54.00×(20/100)=10.8gを供給したものとして算出した。

さらに、15質量%濃度ラウリル硫酸ナトリウム水溶液については、甲1の【0097】の記載から、乳化剤として、2-エチルヘキシルチオグリコレートについては、甲1の【0113】の記載から、調整剤として用いられていると解されるため、「第一ポリマー」のガラス転移点を算出する際の計算からは除外している。

(b)ガラス転移点Tg(第一ポリマー)の計算

前記(a)から、ジアセトンアクリルアミド、アクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、n―ブチルアクリレート、スチレン、メチルメタクリレートの総重量は、10.08+2.03+8.78+13.50+13.50+86.40=135.01(g)となり、「第一ポリマー」のガラス転移点Tg(第一ポリマー)は以下のとおりに算出でき、

1/Tg(第一ポリマー)=(10.08/135.01)/338+(2.03/135.01)/379+(8.78/135.01)/330+(13.50/135.01)/223+(13.50/135.01)/373+(86.40/135.01)/378

Tg(第一ポリマー)は約74°C(約347K)となる。

b 次に、甲1発明の「第二ポリマー」のガラス転移点について、FOXの式から概算する。

(a)前提事項

第二ポリマーを構成する各モノマーのホモポリマーのTgとして、次の値を用いた。

1,4-ブタンジオールジアクリレート:45°C(318K)(特開2013-141967号公報の【0042】参照)

また、15質量%濃度ラウリル硫酸ナトリウム水溶液については、甲1の【0097】の記載から、乳化剤として用いられていると解されるため、「第二ポリマー」のガラス転移点を算出する際の計算からは除外している。

(b)ガラス転移点Tg(第二ポリマー)の計算

前記(a)から、1,4-ブタンジオールジアクリレート、n―ブチルアクリレート、メチルメタクリレートの総重量は、18.00+162.00+135.00=315.00(g)となり、「第二ポリマー」のガラス転移点Tg(第二ポリマー)は以下のとおりに算出でき、

1/Tg(第二ポリマー)=(18.00/315.00)/318+(162.00/315.00)/223+(135.00/315.00)/378

Tg(第二ポリマー)は約3°C(約276K)となる。

c 以上から、甲1発明の「第一ポリマー」のガラス転移点は、甲1発明の「第二ポリマー」のガラス転移点よりも明らかに高いことが把握でき、前者のガラス転移点は、「15°C」又は「86°C」のうち、「86°C」であり、後者は、「15°C」である蓋然性が高いといえる。

そうすると、相違点1-2については、相違点1-2’として、整理できる。

<相違点1-2’>

本件発明1は、「(A)水酸基およびカルボキシ基を有する水性樹脂」のガラス転移点が「0°C以上20°C以下であ」るのに対し、甲1発明の「第一ポリマー」は、ガラス転移点が「86°C」である点。

(イ)相違点1-2’についての判断

a 「第一ポリマー」のガラス転移点の調整

甲1の【請求項1】に「・・・a)分散されたポリマー粒子の水性多段ポリマー分散液の形態のポリマーPにおいて、該ポリマー粒子が、少なくとも30°Cのガラス転移温度を有し、エチレン性不飽和モノマーM-Aから構成される第一ポリマーと、20°C以下のガラス転移温度を有し、エチレン性不飽和モノマーM-Bから構成される第二ポリマーとを含んでおり」と記載されているとおり、甲1発明において、少なくとも30°Cのガラス転移点を有する第一ポリマー及び20°C以下のガラス転移点を有する第二ポリマーの2種類のポリマーを有することは必須の構成である。

そうすると、甲1発明において、甲1発明の「第一ポリマー」のガラス転移点を「86°C」から「20°C以下」に調整することには阻害要因がある。

b 「第二ポリマー」の官能基の転換

次に、甲1発明の「第二ポリマー」のガラス転移点は「15°C」であるため、当該「第二ポリマー」の官能基として、水酸基及びカルボキシ基を付与し得るかについて検討する。

甲1の【0015】、【0016】、【0032】~【0038】には、「第二ポリマー」を形成するモノマーM-Bは、少なくとも1種の中性のモノエチレン性不飽和モノマーM1及び少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーM4の2種類を含むことが記載されており、同【0043】~【0056】、【0083】~【0092】には、モノマーM1、モノマーM4の構造、それらのモノマーM-Bの総量に対する割合(質量%)等について詳細に記載されているものの、それらの構造には、官能基として水酸基又はカルボキシ基を有する構造は含まれていない。

また、甲1の【0057】~【0082】(特に、【0060】、【0075】)には、中性のモノエチレン性不飽和モノマーM2、酸性基を有するモノエチレン性不飽和モノマーM3の構造等について詳細に記載されており、モノマーM2にはヒドロキシ(水酸基)を有する構造、モノマーM3にはカルボン酸基(カルボキシ基)を有する構造が含まれることが記載されているものの、モノマーM-Bの総量に対する割合(質量%)についての記載はなく、「第一モノマー」を形成するモノマーM-Aの総量に対する割合(質量%)とモノマーM-AとモノマーM-Bとの総量に対する割合(質量%)のみが記載されており、これらの記載から、「第二ポリマー」を形成するモノマーM-BにモノマーM2、モノマーM3を含むことが想定されているとは考えにくい。

一方、甲1の【請求項1】、【0014】には、「第一ポリマー」を形成するモノマーM-A、「第二ポリマー」を形成するモノマーM-Bが共に、モノマーM1~モノマーM4までの4種類のモノマーを含み得ることも一応記載されているものの、甲1の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載全体を参酌しても、モノマーM-BがモノマーM2及びモノマーM3を含む態様についての具体的な記載はなく、むしろ、モノマーM-BにはモノマーM1、M4のみを含むことが想定され、モノマーM-BにモノマーM2、モノマーM3を含むことが想定されているとは考えにくいことは、前記のとおりである。

そうすると、甲1の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載全体に接した当業者が、甲1発明において、「第二ポリマー」を形成する供給Z2のモノマーとして、水酸基を有するモノマーM2及びカルボキシ基を有するモノマーM3を用い、「第二ポリマー」が水酸基及びカルボキシ基を有する構造とするに至る、十分な動機付けがあるとはいえない。

ウ してみると、相違点1-1及び相違点1-3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1に記載された発明でないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(2)本件発明2~11

本件発明2~11は、いずれも本件発明1を全て包含し、それぞれ個別の技術事項を追加したものである。そうすると、本件発明2~11は、前記(1)に示した理由と同様の理由により、甲2に記載された発明でないし、甲2に記載された発明並びに甲1及び甲2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 申立人の主張

申立人は、特許異議申立書23頁8行~24頁4行において、本件発明1の「(A)水酸基およびカルボキシ基を有する水性樹脂」及び「(A)水性樹脂のガラス転移点は0°C以上20°C以下」について、

「A2:「水性結合剤組成物であって、a)分散されたポリマー粒子の水性多段ポリマー分散液の形態のポリマーPにおいて、該ポリマー粒子が、少なくとも30°Cのガラス転移温度を有し、エチレン性不飽和モノマーM-Aから構成される第一ポリマーと、20°C以下のガラス転移温度を有し、エチレン性不飽和モノマーM-Bから構成される第二ポリマーとを含んでおり、ここで、前記エチレン性不飽和モノマーM-AおよびM-Bが共に:i.・・・モノエチレン性不飽和モノマーM1・・・

ii.・・・モノエチレン性不飽和モノマーM2・・・・iii.酸性基を有する、1種または複数のモノエチレン性不飽和モノマーM3を・・・含む、前記ポリマーP・・・を含む前記組成物。」との記載(請求項1)、「前記モノマーM2が、モノエチレン性不飽和C

3

~C

8

モノカルボン酸のヒドロキシ-C

2

~C

4

アルキルエステル・・・からなる群から選択される・・・水性結合剤組成物。」との記載(請求項12等)、「M2として好適な、モノエチレン性不飽和C

3

~C

8

モノカルボン酸のヒドロキシ-C

2

~C

4

アルキルエステルは、例えば、アクリル酸およびメタクリル酸のヒドロキシ-C

2

~C

4

アルキルエステル、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルエタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3-ヒドロキシブチルアクリレート、3-ヒドロキシブチルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、4-ヒドロキシブチルメタクリレート、およびそれらの混合物である。」との記載(【0060】)、及び、「モノマーM3は、モノエチレン性不飽和C

3

~C

8

モノカルボン酸、例えば、特にアクリル酸およびメタクリル酸、モノエチレン性不飽和C

4

~C

8

ジカルボン酸、例えば、特にマレイン酸、フマル酸およびイタコン酸、ならびにそれらの混合物から選択されるのが好ましい。モノマーM3は、アクリル酸およびメタクリル酸から選択されるのがより好ましく、特にアクリル酸である。」との記載(【0079】)がある。そうすると、甲第1号証には、水酸基およびカルボキシ基を有する水性のポリマー(水性樹脂)が記載されている。」と主張し、また、「A5:「水性結合剤組成物であって・・・20°C以下のガラス転移温度を有し、エチレン性不飽和モノマーM-Bから構成される第二ポリマーとを含んでおり・・・」との記載(請求項1)、及び、「・・・ポリマーPに含まれる第二ポリマーのTgは・・・例えば、第二ポリマーのTgは、-25~35°Cの範囲、好ましくは-20~30°Cの範囲、特に-15~25°Cの範囲にあってよい。」との記載(【0018】)などがある。そうすると、甲第1号証には、ガラス転移点が20°C以下のポリマーが記載され、本件特許発明1の構成A5で規定する数値限定範囲と重複する。」と主張している。

そこで検討すると、確かに、第二ポリマーが20°C以下のガラス転移温度を有し、第一ポリマーを形成するモノマーM-A、第二ポリマーを形成するモノマーM-Bが共に、モノマーM1~モノマーM4までの4種類のモノマーを含み、モノマーM2にはヒドロキシ(水酸基)を有する構造、モノマーM3にはカルボン酸基(カルボキシル基)を有する構造が含まれることが一応記載されている。

しかしながら、前記2(1)イ(イ)bに示したとおり、甲1の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載全体を参酌しても、モノマーM-BがモノマーM2及びモノマーM3を含む態様についての具体的な記載はなく、むしろ、モノマーM-BにはモノマーM1、M4のみを含むことが想定され、モノマーM-BにモノマーM2、モノマーM3を含むことが想定されているとは考えにくい。

そうすると、甲1の特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載全体に接した当業者が、甲1発明において、「第二ポリマー」を形成する供給Z2のモノマーとして、水酸基を有するモノマーM2及びカルボキシ基を有するモノマーM3を用い、「第二ポリマー」が水酸基及びカルボキシ基を有する構造とするに至る、十分な動機付けがあるとはいえない。

したがって、前記申立人の主張は採用できない。

第6 申立理由2(サポート要件)についての判断

1 本件発明1の「前記(A)水性樹脂のガラス転移点は、0°C以上20°C以下」について

(1)サポート要件の判断基準

特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)当審における判断

本件発明は、「貯蔵安定性に優れる、低温硬化可能な一液型の水性塗料組成物、および耐水性に優れる塗装物の製造方法を提供すること」(本件特許の明細書の【0005】参照。)を課題とするものと認められる。

そして、(A)水性樹脂のガラス転移点について、本件特許の明細書の【0022】には、「(A)水性樹脂のTgは、0°C以上20°C以下である。(A)水性樹脂のTgが過度に低いと、塗膜に水などの分子量の小さい成分が浸透し易くなって、耐水性が低下する。さらに、得られる塗膜の強度が小さくなったり、塗膜を成形することが困難になったりする。(A)水性樹脂のTgが過度に高いと、硬化後の冷却工程における体積収縮が大きくなって、内部応力が発生する。内部応力は、塗膜の密着性を低下させる。特に、(A)水性樹脂のTgが硬化温度より高いと、応力が緩和され難いため、塗膜が割れる原因になり得る。そのため、低温硬化性の水性塗料組成物において、塗膜形成樹脂のTgの設定は重要である。(A)水性樹脂のTgが0°C以上20°C以下であると、低温硬化が可能であって、かつ、優れた耐水性を有する塗膜が得られる。」と記載されている。

また、本件特許の明細書の【0159】【表1】の実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4には、(A)水性樹脂のTgが10°Cである場合に、塗膜の耐水性が「良」であり、同【表1】の比較例4には、(A)水性樹脂のTgが0°Cを下回る-10°Cである場合に、塗膜の耐水性が「不良」であり、さらに同【表1】の比較例5には、(A)水性樹脂のTgが20°Cを上回る30°Cである場合に、塗膜の耐水性が「不良」であることが記載されている。

前記のとおり、(A)水性樹脂のTgが10°Cである場合の塗膜の耐水性について立証がされており、前記【0022】には、Tgが過度に低い場合には、塗膜に水が浸透し易くなって、耐水性が低下すること、Tgが過度に高い場合には、硬化後の冷却工程における体積収縮が大きくなって、内部応力が発生し、塗膜の密着性を低下させることが記載されており、塗膜の密着性が低下した場合に、塗膜に水が浸透し易くなって、耐水性が低下することは明らかである。

そうすると、(A)水性樹脂のTgが0°C以上20°C以下の場合において、所望の耐水性が得られることは、当業者が把握できるものである。

また、本件発明1は、前記水性樹脂の種類や構造について「(A)水酸基およびカルボキシ基を有する水性樹脂」であることと、「ガラス転移点は、0°C以上20°C以下」であることを特定するのみであるが、水性樹脂の種類や構造によらず、前記のとおり、(A)水性樹脂のTgが0°C以上20°C以下の場合において、所望の耐水性が得られることは、当業者が把握できるものである。

そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された事項及び本件出願時の技術常識に基づき、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。

また、本件発明1の記載を引用する形式で記載された本件発明2~11の記載についても、前記したのと同様の理由で、発明の詳細な説明に記載された事項及び本件出願時の技術常識に基づき、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。

第7 むすび

以上のとおりであるから、申立人による特許異議申立書の理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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