結論テキスト
登録第1806869号商標の指定商品「第1類 化学品,植物成長調整剤類」についての商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2023300071 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理 由
本件登録第1806869号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、昭和58年2月18日に登録出願、第1類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同60年9月27日に設定登録されたものである。
その後、平成18年3月1日に第1類ないし第5類、第8類ないし第10類、第16類、第19類、第21類及び第30類に属する商標登録原簿に記載の商品を指定商品とする指定商品の書換登録がされ、同27年9月8日に指定商品を第1類「化学品,のり及び接着剤(事務用又は家庭用のものを除く。),植物成長調整剤類」とする更新登録がされたものであり、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判請求の登録日は、令和5年2月13日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の期間である同2年(2020年)2月13日から同5年(2023年)2月12日までを、以下「要証期間」という場合がある。
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び令和5年5月16日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年7月28日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)において、要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第12号証を提出した。
本件商標は、その指定商品中、「化学品,植物成長調整剤類」(以下「請求に係る指定商品」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
(1)乙第1号証に係る本件商標の書誌情報は使用を立証するものではない。乙第2号証について、商標使用許諾契約のみでは使用権者の確認はできたとしても、被請求人の当該請求に係る指定商品の要証期間における使用を直接証明できない(甲3)。
よって、乙第1号証及び乙第2号証は、商標法第50条第2項の使用立証資料として考慮することができない。
乙第3号証及び乙第4号証について、使用に係る商標の態様は、消費者の見やすい外箱正面及び上部に記載されており、本件商標とは完全にその態様が異なり、本件商標と社会通念上同一と認められる範囲を逸脱した使用であり、商品についても「化学品,植物成長調整剤」には属さない。
(2)社会通念上同一について
本件商標は、黒と白抜きの文字を直線的にデザイン化した商標であり、特に一文字目は「パ」なのか「ペ」なのかを認識するに困難なほどにデザインされた文字である。続く二文字目についても片仮名の「ワ」であれば本来曲線で表現すべき左はらいが直線になっていること、一画目はまっすぐに下に書かれておらず斜めに表現されていることから、通常の片仮名表現とは異なり、当然に「ワ」とは認識不可能である。ある人は「ク」と読むであろうし、またある人は数字「7」と読むかもしれない。
よって、被請求人がいう一般的な書体と“ほぼ同じ”とは認識できない。
この点、特許庁が公開する審判便覧においては、活字体及び筆記体による相互間の使用を登録商標の使用と認めるとしており(審判便覧53-01)、これには清朝、明朝、ゴシック、かい書、行書、草書等の一般的なフォントのみが挙げられる。
本件商標は、上記フォントのいずれにも該当せず、本件商標の形態と使用に係る商標とが顕著に異なることから、片仮名の使用態様2(別掲3)と本件商標とは、社会通念上同一の商標と認められない場合に該当し、かかる考えは、過去の審決においても踏襲されている。
百歩譲り、本件商標を「パワーズ」と認識したとしても、「パワーズ」には、「力、権力」を意味する“Powers”以外に、「ぎごちなく、馴れ馴れしく手で触れてなでる人」を意味する“pawer”の複数形“pawers”や、「オランダ・ドイツ系の姓」としての“Pauers”等、別異の観念が含まれる(甲4~甲6)。かかる場合の片仮名とローマ字の相互間の使用について登録商標の使用と認められないと上記審判便覧に例示されていることから、ローマ字の使用態様1(別掲2)及び使用態様3(別掲4)の使用は社会通念上同一の商標とは認められない。
さらに、使用態様2(別掲3)及び使用態様3(別掲4)は、共に「パワーズオイルチューン」であり、「パワーズ」と省略して使用されていない。これは、乙第3号証、乙第4号証、乙第6号証及び乙第7号証においてもすべて通常のフォントで「パワーズオイルチューン」と書されていることからも確認することができる。
この点、被請求人は、「「パワーズ」を冠した一連の商品群「オイルチューン」「ガスチューン」「エアコンチューン」を販売している事実は、「パワーズ」の部分が事業者、一般顧客から信用を獲得した登録商標の使用であり、・・・」等と持論を展開しているが、乙第8号証ないし乙第10号証で「パワーズ」が殊更目立って使用されている事実はなく、「パワーズオイルチューン」として使用されている事実のみ認識できることから、本件商標の使用とはいい得ない。
ここで、本件商標と指定商品又は指定役務は類似するものの、商標は非類似と判断された登録商標の公報を提出する(甲7~甲9)。
被請求人は「オイルチューン」部分を捨象する理由として、答弁書において識別力が無いか若しくは極めて弱いとの持論を述べている。
しかし、「オイルチューン」は識別力のある造語であり、「パワーズオイルチューン」は、一連一体の商標として十分認識可能である。これは、過去に「エアチューン」「ヘアチューン」「ネイルチューン」等が登録されていることからも明らかである(甲10~甲12)。
また、被請求人が許諾した使用者自らが「オイルチューン」部分を含めて商標として使用している事実は明白であり、外観において同視できるものではない。
かかる外観等における社会通念上の同一の考え方は、過去の特許庁の判断を踏襲するものでもある。
(3)被請求人商品について
乙第3号証ないし乙第4号証等に示される商品は、あくまでも化学品には属さない油性の燃料としてのエンジンオイル用添加剤である。
この点、特許情報プラットフォームの商品・役務検索において、「エンジンオイル添加剤」は以下のように分けられている。
第1類「エンジンオイル用添加剤(化学品に属するものに限る。)」(01A01)
第4類「エンジンオイル用添加剤(化学品を除く。)」(05B01)
被請求人が使用していると主張する商品(以下「被請求人商品」という場合がある。)は、乙第3号証の外箱裏面の商品名称として「自動車エンジンオイル添加剤」と書かれていることからも「エンジンオイル添加剤」であることに争いはない。しかし、被請求人は、これを「化学品」と判断している点に誤りがある。
ここで、「特許庁商標課編 商品及び役務の区分解説」において、第1類「化学品」とは「一般に、無機工業薬品、有機工業薬品、「界面活性剤」「化学剤」の大部分が含まれます。なお、この商品と類似群は同じですが、第2類(カナダバルサム コパール等)、第3類(家庭用帯電防止剤 家庭用脱脂剤等)、第4類(固形潤滑剤)、第19類(タール ピッチ)及び第30類(アイスクリーム用凝固剤 家庭用食肉軟化剤 ホイップクリーム用安定剤)に属する商品も存在します。」とある。
また、第4類の「「工業用油」(05B01)は、原油を精製して得られる精油のうち、主として「燃料」として用いられるもの以外のものが該当し、この商品には鉱物性油が含まれるのに対し、この商品とは類似群の異なる本類「工業用油脂」には、動物性又は植物性油脂が含まれます。また、この商品に含まれる「潤滑油」には石油系のもののみではなく、合成潤滑油も含まれます。」と規定されている。
まず、被請求人商品は、乙第4号証の「FUEL/OIL燃料」に分類されている。
被請求人の使用者は「オイル性能強化剤」との表現も用いているが、その原材料は固形潤滑剤である有機モルブデンと超微粒子の固形潤滑剤としての特殊フッ素が配合された高度精製基油(ベースオイル)からなるものである。
エンジンオイルに添加される非油性のグラファイトや、硫黄やリン酸エステル、ジオチオリン酸亜鉛等の化学品は含まれていない(無リンタイプと書かれている)。しかも、乙第3号証の外箱側面には「火気厳禁 第四類第四石油類 危険等級3」(審決注:「3」はローマ数字。)と記されていることからも、被請求人商品は工業用油としての油性添加剤であることは明白である。
例えば、「床の汚れを吸着するための油性微粒子吸着剤」は、第1類ではなく第4類に該当していることからも第4類に該当する商品であることは明白である。このことから、被請求人商品は、「エンジンオイル用添加剤(化学品を除く。)(05B01))」に該当し、請求に係る指定商品の使用ではない。
(4)使用時期について
乙第4号証は、2021年12月に印刷されたことは確認できるが、その配布は証明できない。
乙第5号証は、カタログ制作費及びその請求時を確認できるもののその配布は証明できない。
乙第6号証は、2022年11月の奈交自動車整備株式会社との取引であることは確認できるものの本件商標の使用は確認できない。
乙第7号証は、第4号証のカタログ製品の価格表であるが本件商標の使用を示すものではない。
乙第8号証ないし乙第9号証も要証期間内の使用を立証できていない。
乙第10号証は、ネット上の投稿日を示すために提出されているようであるが、本件商標の使用が確認できない。
乙第11号証ないし乙第13号証もネット上の記事であるが要証期間内の使用を証明できておらず、そもそも本件商標の使用は確認できない。
(5)まとめ
以上のとおり、被請求人の提出する証拠は、本件商標とは非類似と判断される商標を使用していること(いわゆる社会通念上同一とはかい離すること)、商品「化学品」の使用に係る証拠とはいえないから、被請求人の答弁には理由がない。
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を答弁書及び令和6年10月24日付け審尋に対する同年12月5日付け回答書において要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証を提出した。
(1)本件商標の使用事実の要点
本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)から正当に使用許諾を受けた通常使用権者であるパワーアップジャパン株式会社(以下「パワーアップジャパン社」という。)は、要証期間において、カタログ、全国ガソリンスタンド、商品販売各所、通常使用権者本社、インターネットサイト(使用権者HP通販サイト、インスタグラム、LINE等のSNS)など、日本国内において、商品「自動車用化学品」である「自動車用エンジンオイル添加剤」に本件商標と社会通念上同一性のある商標を使用している。
(2)本件商標について
本件商標は、片仮名の「パ」片仮名の「ワ」長音の「ー」片仮名の「ズ」をそれぞれ明瞭にする太い白抜き文字の輪郭であり、色彩が濃い部分を交互に配していて力強い印象を与える「パワーズ」となっている。
部分着色された色彩はアクセントになっているし、文字間隔を詰めているが4文字の片仮名の白抜き文字それ自体のフォント形状であるので、特に読みにくいこともない片仮名である。
装飾性はあるが特殊な図形ではなく、文字印象のみで図形には見えないので、商標の図形分類が付与されるものでもなく、片仮名白抜き輪郭の太い文字の印象である(乙1)。
フォントでいうと、HGPゴシックEの白抜き文字パワーズに近い文字である。観念は、欧米の人名に例があるが、普通にそのままの「パワーズ」を直観する。
(3)使用の事実
ア 使用者
商標の使用者は、パワーアップジャパン社で、本件商標権者と通常使用権許諾契約を締結している(乙2)。本件商標権者が住所変更登録した後の、2023年4月以降に改定した契約書は省略する。
イ 本件商標権者と通常使用権者との関係
本件商標権者がパワーアップジャパン社の代表取締役である。
ウ 使用商標
パワーアップジャパン社は、許諾契約に基づき、商標を自動車用化学品に使用している(乙3)。カタログの12頁に「パワーズ オイルチューン」が記載されている(乙4)。
パッケージ表面やカタログの全体写真から、商標を視認でき、パッケージ表面3段記載の「パワーズ オイルチューン」全体とともに、上段の「パワーズ」(別掲5。以下「被請求人使用商標1」という。)も個別の商標として印象深く感得できる。
エ 被請求人商品
被請求人使用商標1の使用に係る商品について、パッケージの表面には上段に「パワーズ」その下に「オイル」その下に「チューン」と表示し、さらにその下に「オイル性能強化剤」と記載している。さらにパッケージ裏面には「自動車用エンジンオイル添加剤」の記載がある。被請求人使用商標1は、自動車用化学品である「自動車用エンジンオイル添加剤」に使用している。
その他、その商品パッケージ表面には、パワーズの類似商標を表記している。上面に「POWERS」が記載され、側面には同商標の下に「POWERS OIL TUNE」と二段に表記し、その下に「オイル性能強化剤」と表示している。
「オイルチューン」は、自動車関連では、チューンアップ=Tune upやチューニング=Tuningなどのように、チューンは調整の意味で使用されていて、「オイルチューン」は「オイル性能の調整剤や強化剤」を直観し、識別力がない語句である。「オイルチューン」は識別力がないか若しくは極めて弱いこともあり、被請求人使用商標1の部分で、商標として認識できる。
「チューン」は、日本ではチューニングを単にチューンということ(出典:「大車林」三栄書房)もあり、エンジンオイル添加剤での使用では、その意味は「性能向上剤」として通用している。なお、「自動車用エンジンオイル添加剤」「オイル性能強化剤」「オイルチューン」とも、第1類の化学品(類似群コード 01A01)に属する。
また、被請求人商品のパッケージには、「第四石油類」と表示している。第4石油類の表示があるからといって、化学品でないということではない。第4石油類にも属するので表示している。第4石油類は、引火点が200°C以上250°C未満の非水溶性の油類を指すものにすぎない。表示に関しては、危険物としての取り扱いが必要であることを示すためのものであり、化学品であることを否定するものではない。
例えば、英語の「Lubricants」は、潤滑剤・潤滑油を意味するが、潤滑油であり、潤滑剤である。被請求人商品は「オイル」ではなく、「オイルチューン」として販売している。容器の中に第4石油類「オイル」に該当する成分があるので、危険物としての取り扱いをするために「第4石油類」と明記しているものである。
商品「オイルチューン」は、エンジンオイルや潤滑油に添加することで性能を向上させるための製品である。化学的な成分を含んでおり、化学品の一種である。
オ 本件商標と被請求人使用商標の比較
両商標を比較すると、第一に両者とも片仮名「パ」「ワ」「ー」「ズ」の同一の文字である。
書体も、両者とも白抜き書体の片仮名4文字で、HGPゴシックEタイプに近い書体で、「ズ」の濁点の位置などは非常に近い。
両商標は、全く同一というものではないが、同じ片仮名であるので輪郭はほぼ同じである。
本件商標は、色彩が濃い部分を交互に配していてアクセントにした部分着色文字である。文字間隔を詰めて一部つながっている。ただ、そのつながりも、重なってもいないし、字形を加工しているものではなく、4文字の片仮名それ自体のフォント独立性を直観できる形状のままでの部分着色片仮名である。
部分着色と文字間を詰めた構成での態様ではあるが、特段の変形や美的変形に加工した文字ではないので、他の文字や他の図形に見えるものではない。
部分着色片仮名印象のみであるので、当然、図形には見えないし、もとより図形分類付与はない。
部分着色したそのまま片仮名輪郭の片仮名である。
被請求人使用商標1及び被請求人使用商標1から背景の濃紺色を除いた商標(別掲6。以下「被請求人使用商標2」といい、被請求人使用商標1と被請求人使用商標2を合わせていうときは「被請求人使用商標」という。)は、白抜き書体の片仮名4文字で、白抜きのHGPゴシックEタイプパワーズに近い書体であるが、むしろ「ズ」の濁点の位置などは、本件商標に沿った書体である。
このような構成であるので、本件商標と被請求人使用商標は、特に読みにくいこともない片仮名の商標で、全体の輪郭もほぼ同じであるし、両方から「パワーズ」の称呼と「パワーズ」の観念しか感得できない。
需要者・取引者は、片仮名の外観共通性、称呼観念「パワーズ」の一致から、部分着色はあるものの、あくまで片仮名であるので、ほぼ同じと認識でき社会通念上の同一性がある。
本件商標と被請求人使用商標は、一見して両商標とも片仮名で、部分着色した文字と部分着色しない文字にすぎないので、取引実情や社会通念上同一性商標の先例にみられる使用実情に照らしても、むしろ先例よりはずっと社会通念上の同一性を確信できる。ほぼ同じと感得できる。
一部着色の有無でも、片仮名の「パワーズ」であり、称呼観念は「パワーズ」であるので、社会通念上の同一性がある。
第一に、本件商標は、片仮名の「パ」「ワ」「ー」「ズ」、そのままであり、文字構成部位を交互に黒白にしたにすぎず、特にデザイン化された文字でもない。 極めて安易にできる単なる横詰め文字列で、著しいデザイン文字ではない。
著しいデザイン文字と判断するのは誤りである。平易なカタカナ文字にしか見えない。本件商標権者が、本件商標を使用するに当たって、さらにあえて被請求人使用商標2を登録しなければ守られないとするのはあまりに自由選択の幅が狭く商標法の精神に反する。商標法の活用意欲を阻害するものでしかない。
社会通念上の同一性の概念は、机上の空論ではなく、具体的には取引の実情や永年の使用による使用者の使用継続によって醸成される側面もある。永年使用継続していれば、営業的事情で多少の文字変更はあるものの称呼の同一性や使用の歴史で伝播され同一性を認識させて取引継続されるものである。
本件商標は、ほぼ40年前に登録を受けている。40年前であるので、当時使用された「ゆらゆらポップ」(商品に貼って揺らすポップ)に続いて継続使用された被請求人使用商標1に社会通念上の同一性がないとの判断は、取消審判制度における登録商標の使用自由性を異常に縮小するもので、産業発展の根を摘むもので容認できるものではない。
本件商標及び被請求人使用商標は、パワーアップジャパン社の会社名に一部通じる音感を持った商標であり、請求人関係会社のメイン標語「POWERS」(乙4下部に表記)と同じ音でもある。重要な企業標識であり、重要な商標である。
本件商標と被請求人使用商標は、片仮名であり、文字として大差はない。両商標を先入観なく視認すれば、社会取引通念上の同一性は直観できることは明白である。その商業的使用の段階において取引者やユーザーから出所の同一性において、当該会社の商標として違和感を持たれずに継続使用している被請求人使用商標は、社会通念上の同一性を確保維持している。
顧客との間で築きあげられた信頼があり、現実の取引実情において社会通念上の同一性は維持認容されている。具体的な取引実情からも社会通念上同一性があるからこそ信頼を得ている。
カ 使用時期
被請求人使用商標は、要証期間の全期間中商品を発売し、商品パッケージ自体に使用している(乙4~乙7)。
(ア)乙第4号証について
General Catalog(パワーアップジャパン社の製品カタログ2021-2022年版は、その表面に2021-2022の商品カタログであることを表示し、また裏面に制作の2021年12月と表示している。12頁には、商品「パワーズ オイルチューン」を紹介している。
上記カタログの制作ないし頒布の時期は、制作会社の納品書・請求書(乙6)で、2021年12月に制作されたことを立証でき、納品と同時に頒布している。
一例では、パワーアップジャパン社と顧客との2022年3月30日のメールでのやりとりで、上記カタログの商品「パワーズ オイルチューン」を含む価格表の送信を記録している。
(イ)乙第8号証について
パワーアップジャパン社が、「感動 体感性能」という表題で、「パワーズ ガスチューン」という商品、や、「パワーズ エアコン チューン」という商品を販売していたことを示すものであり、そのチラシのデータ数枚をプリントアウトしたものである。データのプロパティから少なくとも2007年にデータ入力されたもので長年使用し販売しているものである。
「パワーズ」を冠しその下に「ガスチューン」という「ガソリン燃料強化剤」を記載した商品、「パワーズ」を冠しその下に「エアコンチューン」という「エアコンパワー強化剤」を記載した商品、などを販売していた事実がある。
「パワーズ」を冠したこの一連の商品群「オイルチューン」「ガスチューン」「エアコンチューン」を販売している事実は、「パワーズ」の部分が、事業者、一般顧客から信頼を獲得した登録商標の使用であり、識別力のある商標として使用され、広く認識されていることを示している。
(ウ)乙第9号証ないし乙第13号証について
乙第3号証の「パワーズ オイルチューン」のインターネットでの広告や使用を示すものである。カタログほかで使用時期は立証しているので、特に要証期間での使用時期のデータは示さないが、現時点でもネットで当該記事は確認できる。
乙第9号証は、パワーアップジャパン社の従前のホームページに掲載された「パワーズ オイルチューン」の記事と写真そしてアドレスである。
乙第10号証は、パワーアップジャパン社の一般消費者向けの公式ネットショップのホームページの開設の告知と、「いいね」の返信記録が2022年11月9日にあったことを示すもので、その時期に「パワーズ オイルチューン」を掲載していた事実を立証するものである。
乙第11号証は、インターネット自動車カー用品サイトの「みんカラ」に掲載された記事とそのHPアドレスである。
乙第12号証は、Google検索で検索できるスクリーンショットとそのアドレスである。
乙第13号証は、LINEショッピングに掲載された記事のスクリーンショットとアドレスである。
乙第10号証で開示のように、パワーアップジャパン社は、BtoBの企業間取引が多く、各地の事業者(自動車用品取扱い業者、各地自動車用化学品販売店舗 量販店 全国ガソリンスタンド、自動車工場など)が顧客でもある。
キ 使用場所
パワーアップジャパン社の本社、支店営業所、各事業者所在地などの国内である。インターネットでの広告、HPでの使用になる。
(4)むすび
以上のとおり、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、指定商品中「化学品」に属する「自動車用オイル添加剤=オイルチューン」について、適法に許諾を受けた通常使用権者であるパワーアップジャパン社が、本件商標と社会通念上の同一性がある被請求人使用商標を使用していることは明らかである。
(1)被請求人提出の乙各号証について
ア 登録商標使用許諾契約書(乙2)
乙第2号証は、日付けを平成25年10月7日とする「登録商標使用許諾契約書」というタイトルの書類であり、本件商標の登録番号の記載、「通常使用権の範囲」として、「期間 有効期間中全期間」「内容 指定商品の全部」及び「地域 全国」等の記載、「甲(権利者)」として本件商標権者の氏名及び住所の記載、また、「乙(使用権者)」として、「パワーアップジャパン株式会社」の名称、その住所及び代表者の氏名の記載があり、さらに、本件商標権者からパワーアップジャパン社に対し、本件商標の通常使用権を許諾する旨が記載されており、両者の押印がされている。
イ 包装箱(乙3)
乙第3号証は、包装箱であり、当該包装箱表面の中央付近には「オイル性能強化剤」の記載があり、その上部には、ひときわ大きく目立つ態様で「パワーズ/オイル/チューン」(以下「使用商標」という場合がある。「/」は改行を表す。以下同じ。別掲7)及び表面下部には、小さく「W1009」と記載されている。
また、当該包装箱側面には「第四類第四石油類」の記載並びに裏面には「名称」として「自動車用エンジンオイル添加剤」(以下「使用商品」という場合がある。)の記載、「成分」として「極圧剤、高精製基油」の記載及び「表示者及び所在地」として、「パワーアップジャパン株式会社」及びその住所の記載がある。
ウ 「General Catalog/2021-2022」(乙4)
乙第4号証は、「General Catalog/2021-2022」をタイトルとする商品カタログであり、第12ページに「W-1009 パワーズオイルチューン」と記載された商品について、「オイル性能強化剤」の記載及び「用途」として「エンジンオイル添加剤」の記載があり、当該商品の包装箱と考えられる写真の中央付近には、「オイル性能強化剤」の記載があり、その上部には、ひときわ大きく目立つ態様で「パワーズ/オイル/チューン」の記載がある。
また、同カタログの裏表紙には、「パワーアップジャパン株式会社」、その住所及び「2021年12月」の記載がある。
エ 請求書及び納品書(乙6)
乙第6号証の第1葉は、パワーアップジャパン社の大阪駐在所から奈良県奈良市在の奈交自動車整備(株)に宛てた「御請求書(控)」をタイトルとする書類であり、「日付」を「2022年11月07日」とする欄には、「商品名」として「パワーズオイルチューン」の記載、「数量」として「30本」等の記載がある。
また、同号証の第2葉は、パワーアップジャパン社の大阪駐在所から奈良県奈良市在の奈交自動車整備(株)に宛てた「納品書」及び「納品書(控)」をタイトルとする書類であり、双方の書類には、それぞれ「出荷日(受注日)」として「2022年11月07日」の記載、「商品名」として「パワーズオイルチューン/W1009」の記載、「数量」として「30」等の記載がある。
オ 使用商品
乙第8号証の第2葉ないし第4葉に使用商品(パワーズオイルチューン)が掲載されており、「オイル性能強化剤」として「特徴・効果」に「摩擦係数が70%減少することにより加速性能と燃費が向上します。」「エンジン内部に特殊な保護膜を作り磨耗を防ぎエンジン寿命を伸ばします。」「エンジンオイルの消費を節約します。」と記載されている。また、同第5葉には使用商品(パワーズオイルチューン)の掲載部分に「エンジン機能回復剤」「エンジンからの異音が減少します。」「燃費改善効果があります。」と記載され、同第6葉には、「エンジン機能回復剤【エンジンオイル添加剤】」「耐摩擦・再磨耗に優れエンジン始動時の金属磨耗を低減します!」「低温時の流動性を向上させエンジン内部を強力に保護します!」と記載されている。
(2)上記(1)によれば、以下のとおり判断できる。
ア 使用権者
上記(1)アのとおり本件商標権者は、パワーアップジャパン社と本件商標の使用許諾の契約をしているものと認められる。
また、上記(1)イのとおり、使用商品の包装箱に、商品の製造販売者としてパワーアップジャパン社の記載がある。
そうすると、使用商標を付した使用商品の製造販売者であるパワーアップジャパン社は、本件商標の通常使用権者であるといえる。
イ 本件商標と使用商標の社会通念上の同一性について
本件商標は、別掲1のとおり、商標全体を極太で角張った直線基調の書体で「パワーズ」の片仮名を表してなるものと看取されるところ、各文字は密接し、文字の一部が重なり合っている。また、構成中「パ」の文字の第1画目及び半濁点、長音「ー」並びに「ズ」の文字の濁点のみを黒色で塗りつぶし、その余の部分は黒色輪郭の白抜きで表わされているなど、著しくデザイン化されており、その程度は高いといえるものである。
他方、使用商標は、別掲7のとおり、「パワーズ/オイル/チューン」の片仮名を三段書きしてなるところ、二段目及び三段目の「オイルチューン」の文字は、「オイル」及び「チューン」の各語の意味から、「オイルの調整」ほどの意味合いを想起させるものであり、被請求人商品との関係において、識別力が弱い、又は有さない部分といい得るものである。そうすると、自他商品識別標識としての機能を果たすのは一段目の「パワーズ」の文字部分であるところ、該文字部分は黒色輪郭の白抜きで一般的な書体であるゴシック体により、普通に用いられる方法で表されているといえるものである。
そこで、本件商標と使用商標の「パワーズ」の文字部分を比較すると、両者は「パワーズ」の文字からなる点において共通するものの、本件商標のデザイン化の程度は高く、他方、使用商標は一般的な書体であるゴシック体で表されていることから、外観において著しく相違し、看者に対して別異の印象を与えるといえるものである。
したがって、本件商標と使用商標は、書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標とは認められないことから、社会通念上同一の商標とはいえない。
ウ 使用商品について
使用商品は、上記(1)オのとおり、エンジンオイルの性能を向上させる機能を有する商品であり、エンジンオイルに添加され利用される商品である。このような一般に商品の機能向上に供する添加剤は化学品とみるのが相当である。
したがって、使用商品は、請求に係る指定商品中「化学品」の範ちゅうに属する商品とみて差し支えないといえるものである。
なお、請求人は、被請求人商品は化学品が含まれていない「工業用油」をベースとする「エンジンオイル添加剤」であるから、第4類「工業用油」の範ちゅうに属する商品であって、第1類の「化学品」の範ちゅうに属する商品ではないと主張するが、当該商品には、請求人が認めるように化学品である有機モルブデンやフッ素が含まれ、それらの化学品を混合した添加剤の作用により、エンジンオイルの性能を向上するもの又はエンジン性能を改善するもの、すなわち、このような化学作用をもたらす添加剤であると考えられることから、工業用油であるというよりは一種の化学品であるというのが相当であり、この商品の基礎となる物質が油であるからといって、第1類「化学品」の範ちゅうに属する商品であることが否定されるものではない。
小括
上記(1)及び(2)からすれば、パワーアップジャパン社は、本件商標の通常使用権者と認められ、使用商品が請求に係る指定商品の範ちゅうに属するものといえるとしても、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標とはいえないものである。
その他、被請求人が提出した証拠からは、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者が、要証期間に、日本国内において、本件商標(社会通念上同一と認められるものを含む。)を請求に係る指定商品について使用したことを認めるに足る証拠を見いだせない。
以上のとおりであるから、被請求人が提出した証拠によっては、被請求人は、要証期間に、日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標(社会通念上同一と認められるものを含む。)を、請求に係る指定商品のいずれかについて、商標法第2条第3号各号に規定する態様で使用する行為を行ったことを証明したということはできない。
また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により指定商品中「結論掲記の指定商品」についての登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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