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Trademark Appeal Case

不動産広告表現の識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024007180
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

【理 由】

第1 手続の経緯

本願は、令和5年2月7日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和5年 8月17日付け:拒絶理由通知書

令和5年10月 4日 :意見書の提出

令和6年 1月23日付け:拒絶査定

令和6年 4月26日 :審判請求書の提出

令和6年 6月 7日 :手続補正書の提出

令和7年 7月14日付け:審尋

令和7年 8月26日 :回答書の提出

第2 本願商標

本願商標は、「便利地、好立地。」の文字を横書きしてなり、第36類、第37類及び第42類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として登録出願されたものであり、その後、指定役務については、当審における上記第1の手続補正書により、第36類、第37類及び第42類に属する別掲1のとおりの役務に補正されたものである。

第3 原査定の拒絶の理由の要点

1 商標法第3条第1項第6号

本願商標は、「便利地、好立地。」の文字を横書きし、普通に用いられる方法で表してなるものである。

そして、本願商標の指定役務を取り扱う業界において、建物等の立地が良く、便利なところであることを表す宣伝広告として、「便利地」「好立地」等の語が一般的に使用されている実情が認められる。

そうすると、本願商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、役務の宣伝広告等を表示したものと理解するにすぎず、自他役務の識別標識として認識するとはいえないものであるから、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標と判断するのが相当である。

したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。

2 商標法第6条第1項

本願商標の指定役務中には、その内容及び範囲を明確に指定したものとはいえないものが含まれている。

したがって、本願は、商標法第6条第1項の要件を具備しない。

第4 当審による審尋

当審において、商標法第3条第1項第6号該当性について、請求人に対し、審尋で、別掲2及び別掲3の事実を示すとともに、当審における合議体の暫定的見解について通知し、相当の期間を指定して、これに対する意見を求めた。

第5 審尋に対する請求人の意見(要旨)

1 「本願商標の本来的な識別力について」に対する反論

本願商標は、句読点を含む一体の表現として把握されるべきであり、全体として独創性を有するものであって、不動産に関連する役務の質等を直接的に表示するものではない。

2 「使用による識別力の獲得について」に対する反論

(1)本願商標と使用商標の差異は装飾的又は付随的にすぎず、本願商標が独立して識別力を発揮し得ないとの認定、判断は妥当ではない。

(2)使用商標の使用期間の評価においては、「永年性」ではなく、短期間であっても取引者、需要者の間に浸透して識別標識としての機能を発揮しているかどうかで判断すべきである。

(3)売上高・広告宣伝費に関する評価において、実務上、売上高や広告宣伝費が商標の使用と数値対応することまでは要求されておらず、重要なのは、請求人が継続的、かつ、大規模に本願商標を使用している実態があるか否かである。この点、請求人は業界大手であり、全国規模で大量のテレビコマーシャルを展開していることから、取引者、需要者は、本願商標を、請求人の役務と結びつけて理解している。

(4)第三者による本願商標と類似する標章の使用例は、文章中で使用されているものであり、本願商標の識別標識としての機能を否定する根拠とはならない。

第6 当審の判断

1 商標法第6条第1項の要件を具備するかについて

本願の指定役務は、前記第2のとおり補正された結果、その内容及び範囲が明確なものになった。

その結果、本願は、商標法第6条第1項の要件を具備するものとなった。

2 商標法第3条第1項第6号該当性について

(1)本願商標の本来的な識別力について

本願商標は、「便利地、好立地。」の文字を明朝体で横書きしてなるところ、その構成中の「便利」の文字は、「都合のよいこと。うまく役立つこと。」等の意味を、「地」の文字は、「ところ。場所。」等の意味を、「好」の文字は、「よいこと。」等の意味を、「立地」の文字は、「人間の行為を営む場所、特に産業を営む場所を選択して定めること。」等の意味をそれぞれ有する語であって(いずれも「広辞苑第7版」株式会社岩波書店)、いずれも我が国において広く一般的に親しまれているものである。

そして、本願の指定役務に関連する不動産業界においては、土地や建物が便利な場所にあることを表すための宣伝広告等として「便利地」の文字が、また、土地や建物の立地がよいことを表すための宣伝広告等として「好立地」の文字が一般的に使用されている実情が見受けられ(別掲2)、さらに、両語を読点等を介して並列させた「便利地、好立地」や「好立地、便利地。」等の文字が使用されている実情も見受けられる(別掲3)。

そうすると、本願商標をその指定役務中、不動産に関連する役務(別掲4)に使用しても、これに接する需要者は、「土地や建物が便利な場所にあること」や「土地や建物の立地がよいこと」といった、役務の特性又は優位性等を表すための宣伝広告等として認識するにとどまり、自他役務の識別標識としては認識し得ないものである。

したがって、本願商標は、その指定役務中、不動産に関連する役務(別掲4)との関係において、本来的に自他役務の識別機能ないし自他役務識別力を有しているものと認めることはできない。

(2)使用による識別力の獲得について

請求人は、当審において、本願商標は、特にテレビコマーシャルを中心とする各メディア媒体において頻繁に露出しているため、本願商標に接する需要者及び取引者は、請求人及び請求人の業務に係る役務を表示するものと、即座に認識、把握するものである旨主張し、その証拠として参考資料7ないし参考資料15を提出しているため、以下検討する。

ア 請求人による本願商標の使用状況について

請求人の主張及び同人提出の証拠(参考資料)によれば、以下の事実が認められる。

(ア)請求人について

請求人は、主に不動産業務を行う日本の企業であり(参考資料11)、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、群馬県、愛知県、大阪府、兵庫県及び福岡県に70弱の営業センターを展開している(参考資料10)。

(イ)請求人による本願商標の使用について

a 請求人は、左側に扇形の図形を有し、色彩を有する複数の異なる大きさの四角形等を内包する略四角形からなる図形(以下「請求人図形」という。)を左側に配し、請求人図形の右側にゴシック体で書された「便利地、好立地。」の文字を上段に、同書体で書された「OPEN」及び「HOUSE」の欧文字を中段及び下段に、それぞれの文字のサイズを変え横幅を合わせるように三段に表してなる態様(別掲5参照。以下「使用商標」という。)で使用している(参考資料9)。

b 請求人は、令和5年1月ないし同年12月、令和6年2月ないし令和7年6月(参考資料12ないし参考資料15)に複数のバリエーションからなるテレビコマーシャルを放映した。テレビコマーシャルの動画では、使用商標が使用されている(参考資料12)。

(ウ)売上高等について

請求人は、2023年(令和5年)9月時点において、連結売上高1兆1484億8400万円、連結営業利益1423億3000万円を有する(参考資料11)。

(エ)広告宣伝費について

請求人の広告宣伝費は、2022年(令和4年)が38億7400万円、2023年(令和5年)が47億1800万円である(参考資料11)。

イ 判断

(ア)上記アの認定事実によれば、請求人が、令和5年1月ないし同年12月及び令和6年2月ないし令和7年6月のテレビコマーシャルにおいて、「便利地、好立地。」の文字を使用したことは認められる。

(イ)しかしながら、本願商標は、「便利地、好立地。」の文字を明朝体で書してなるのに対し、使用商標は、請求人図形及びゴシック体で書された「便利地、好立地。」の文字、同書体で書された「OPEN」及び「HOUSE」の欧文字を組み合わせてなるところ、本願商標と使用商標とは、図形の有無並びに「OPEN」及び「HOUSE」の文字の有無において相違するものであるから、本願商標が独立して、請求人の役務を表示するものとして認識されるものと認めることはできない。

(ウ)そして、テレビコマーシャルにおける使用商標の使用については、令和5年1月に放送が開始されたものであり、仮に現在も使用されているとしても、3年間にも満たない短期間であり、永年使用されてきたとはいえないものである。

(エ)また、請求人の主張する売上高等が事実であるとしても、そのうち、どの程度、使用商標を使用した役務が占めているかは不明であり、さらに、不動産を取り扱う業界における、他者の提供に係る同種役務の実績が不明であり、使用商標を付した役務の市場全体における占有率の程度について、客観的な評価をすることができない。

(オ)さらに、請求人の主張する広告宣伝費が事実であるとしても、その内訳は不明であって、使用商標を使用した役務に係る広告宣伝費を確認することはできないから、使用商標を使用した役務の広告宣伝の規模等について、客観的な評価をすることができない。

(カ)加えて、上記(1)で述べたとおり、請求人以外の複数の者により、本願商標と類似する標章が使用されている事実が存在することからすれば、請求人が、本願商標を、他人に使用されることなく、独占排他的に継続使用した実績を有するものとはいえないものである。

(キ)以上(ア)ないし(カ)によれば、本願商標は、その使用により需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものと認めることはできない。

(3)小括

以上のとおり、本願商標は、本来的に自他役務の識別機能ないし自他役務識別力を有しているものと認めることはできず、使用により需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものと認めることもできないことから、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であると判断するのが相当であり、商標法第3条第1項第6号に該当する。

3 請求人の主張について

(1)請求人は、本願商標は、句読点を含む一体の表現として把握されるべきであり、全体として独創性を有するものであって、不動産に関連する役務の質等を直接的に表示するものではない旨主張する。

しかしながら、句読点の有無により本願商標から生じる意味合いが変わるものではなく、また、上記2(1)のとおり、本願の指定役務に関連する不動産業界においては、「便利地」及び「好立地」の文字を読点等を介して並列させた「便利地、好立地」や「好立地、便利地。」等の文字が宣伝広告等として使用されている実情が見受けられることからすれば、本願商標は、句読点を含む全体として、宣伝広告等を表したものと認識されるにすぎないとみるのが相当である。

(2)請求人は、本願商標と使用商標の差異は装飾的又は付随的にすぎず、本願商標が独立して識別力を発揮し得ないとの認定、判断は妥当ではない旨主張する。

しかしながら、本願商標は、上記2(2)アのとおり、識別力を有すると考えられる請求人図形並びに「OPEN」及び「HOUSE」の文字との組み合わせで常に使用されていること、また、本願商標を構成する文字が宣伝広告等として一般的に使用されており、その態様も特徴あるものではないことからすれば、本願商標のみがその需要者、取引者の印象に残るとは考えられない。

(3)請求人は、使用商標の使用期間の評価においては、短期間であっても需要者、取引者の間に浸透して識別標識としての機能を発揮しているかどうかで判断すべきであること、また、売上高・広告宣伝費に関する評価においては、請求人が継続的、かつ、大規模に本願商標を使用している実態があるか否かで判断すべきである旨主張する。

しかしながら、使用商標の使用期間は3年未満と短期間であり、かつ、使用商標を使用した役務の売上高、広告宣伝費、市場全体における占有率はいずれも不明なのであるから、具体的な事実に基づいて、本願商標の周知性の程度を客観的に推し量ることができず、本願商標が短期間で需要者、取引者の間に浸透したものと判断することはできない。

(4)請求人は、第三者による本願商標と類似する標章の使用例は、文章中で使用されているものであり、本願商標の識別標識としての機能を否定する根拠とはならない旨主張する。

しかしながら、第三者の使用例(別掲2及び別掲3)は、本願の指定役務に関連する不動産業界において、「便利地」及び「好立地」の文字並びにこれらを読点等を介して並列させた「便利地、好立地」や「好立地、便利地。」等の文字が宣伝広告等として一般的に使用されている実情を示しているのであるから、本願商標も一種の宣伝広告として認識されるにすぎず、自他役務の識別標識として機能しないものと判断するのが相当である。

(5)したがって、請求人の上記(1)ないし(4)の主張は、いずれも採用することができない。

4 まとめ

以上のとおり、本願商標は、原査定の拒絶の理由のうち、商標法第6条第1項の要件を具備しないとする理由は、上記1のとおり解消したが、上記2のとおり、本願商標は、同法第3条第1項第6号に該当するから、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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