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Trademark Appeal Case

はじめてのNISAの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024010833
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由テキスト

理 由

1 手続の経緯

本願は、令和5年5月23日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

令和5年12月 4日付け:拒絶理由通知書

令和6年 2月20日 :意見書の提出

令和6年 2月21日 :手続補足書の提出

令和6年 3月28日付け:拒絶査定

令和6年 7月 1日 :審判請求書の提出

令和6年 7月 2日 :手続補足書の提出

令和7年 6月 5日付け:証拠調べ通知書

令和7年 7月22日 :意見書の提出

令和7年 7月24日 :手続補足書の提出

2 本願商標

本願商標は、「はじめてのNISA」の文字を標準文字で表してなり、第36類に属する別掲1のとおりの役務を指定役務として登録出願されたものである。

3 原査定の拒絶の理由の要点

原査定は、「本願商標は、「はじめてのNISA」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「NISA」の文字は、「株式や投資信託に少額を投資して得られた配当や譲渡益に一定期間税金がかからない少額投資非課税制度の愛称。」の意味を有する語である。ところで、「はじめての〇〇(商品・役務名)」の語句は、初めてその商品・役務を利用することを指称する語として、広く一般的に使用されており、また、その商品・役務が、それを初めて利用する者に向けて製作・企画等されたものであることを表現する際や、その商品・役務を初めて利用する者のための情報提供を行う際にも、しばしば使用されている実情がある。そして、本願の指定役務に関連する業界においても、そのような状況が見受けられることよりすれば、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「初めて利用するNISA(少額投資非課税制度)」程の意味合いを容易に看取し、それがNISA(少額投資非課税制度)を初めて利用する者に適した役務であることを表現するための、宣伝・広告用の文句であると認識するにとどまり、結局、本願商標は、何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものといえる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

4 当審による証拠調べ通知

当審において、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するか否か、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲2(1)ないし(16)及び別掲3(1)ないし(11)のとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき通知し、請求人の意見を求めた。

5 上記通知に対する意見

(1)証拠調べ通知で示された証拠は、制度や用語を解説する記事のタイトル、口座開設への誘導、他の語との結合による使用等であって、NISA等を初めて利用する者を対象とした役務であることを表現するための宣伝広告用の語句として使用されているものとはいえない。

(2)「はじめてのNISA」を第三者が使用しているとしても、本願商標の出願公開後の使用例を証拠として採用すべきではない。

(3)「はじめてのNISA」は、請求人が投資信託の銘柄として使用し、同業者及び制度利用者間で投資対象の識別標識として認識されているものである。

6 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第6号該当性について

本願商標は、「はじめてのNISA」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「はじめて」の文字は、「今までに経験していない事が起こるさま。最初に。」の意味を、「NISA」の文字は、「少額投資非課税制度の愛称。」の意味を有する語であって(いずれも「デジタル大辞泉」株式会社小学館)、これらの語は、いずれも広く一般に親しまれた語である。

そして、別掲2のとおり、本願の指定役務を取り扱う業界において、「はじめての○○」(○○には資産運用に関する任意の語が入る。)の文字が、当該資産運用を初めて利用する者を対象とした役務であることを表現するための宣伝広告用の語句として使用されている実情が見受けられる。

また、別掲3のとおり、同業界において、「はじめて(初めて)のNISA」の文字が、NISA(少額投資非課税制度)を初めて利用する者を対象とした役務であることを表現するための宣伝広告用の語句として使用されている実情が見受けられる。

そうすると、本願商標をその指定役務に使用しても、これに接する需要者は、「初めて利用するNISA(少額投資非課税制度)」ほどの意味を理解し、NISA(少額投資非課税制度)を初めて利用する者を対象とした役務であることを表現するための宣伝広告用の語句として認識するにとどまり、自他役務の識別標識としては認識し得ないものである。

したがって、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標であるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。

(2)請求人の主張について

ア 請求人は、証拠調べ通知で示された「はじめての○○」や「はじめてのNISA」等の使用例は、制度や用語を解説する記事のタイトル、口座開設への誘導、他の語との結合による使用等であって、NISA等を初めて利用する者を対象とした役務であることを表現するための宣伝広告用の語句として使用されているものではない旨主張する。

しかしながら、別掲2及び別掲3のとおり、本願の指定役務を取り扱う業界においては、「はじめての○○」や「はじめてのNISA」等と称して、制度やサービスについて初心者向けの説明を行った上で、証券口座の開設や金融商品の選択に導く手法が用いられている実情があることからすれば、本願商標は、NISA等を初めて利用する者を対象とした役務であることを表現するための宣伝広告用の語句として使用されているものと判断するのが相当である。

イ 請求人は、「はじめてのNISA」を第三者が使用しているとしても、本願商標の出願公開後の使用例を証拠として採用すべきではないと主張する。

しかしながら、出願された商標が、商標法第3条第1項各号に該当するか否かの判断は、査定時又は審決時を基準としてすべきものと解するのが相当であるから、出願公開後の使用例も証拠となり得るものである。なお、本願商標の出願公開後の使用例が、請求人の出願に影響を受けたものとみるべき特段の事情は発見できない。

ウ 請求人は、「はじめてのNISA」は、請求人が投資信託の銘柄として使用し、同業者及び制度利用者間で投資対象の識別標識として認識されているものである旨主張する。

しかしながら、請求人が本願商標を投資信託の銘柄として使用し、これが複数の証券会社により取り扱われている事実(甲第10号証、甲第12号証、甲第27号証ないし甲第29号証)や一部ランキングに掲載されている事実(甲第30号証ないし甲第34号証)は確認できるものの、本願商標を使用した役務の提供実績や広告宣伝実績を具体的に示す証拠の提出はなく、また、職権において調査するも、本願商標が請求人の役務を表すものとして、本願の指定役務の分野における我が国の需要者の間に広く認識されていると認めるに足る事実は、見いだせなかった。

エ したがって、請求人の上記アないしウの主張は、いずれも採用できない。

オ なお、請求人は、本願の指定役務をより適正な範囲に調整することも検討され得ると述べているが、上記(1)のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであって、指定役務の補正によって上記理由が解消するものではないから、補正の機会を設けることなく、本件審判の審理を進めた。

カ また、請求人は、原査定において、商標法第3条第1項第6号の条文に記載のない「周知性」の文言をもって同号に該当する根拠とされたことの可否について合議体の見解を示してほしいと述べている。

そこでみるに、例えば、平成19年(行ケ)第10127号審決取消請求事件では、商標法第3条第1項第6号に該当する商標について、同法第3条第2項該当性の有無が争われた事案について、「法3条は,商標登録の要件を定めたものであって、同条1項は「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については,次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。」とした上で、同項1号から5号まで自己の業務に係る商品又は役務についての識別力あるいは出所表示機能を欠く商標を列挙し、同項6号では「前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標」と総括的な規定を置いている。そして同条2項では「前項第3号から第5号までに該当する商標であっても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。」として、同条1項3号から5号までに該当する商標についても、使用により識別力を取得したものにつき登録を受けることができるとされている。上記の規定振りからすると、法3条2項にいう「需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」とは、法3条1項3号ないし5号に該当する出所表示機能を欠く商標であっても,永年使用されることにより、特定の者の出所表示としてその商品又は役務の需要者の間で全国的に認識されるに至っている(特別顕著性がある)をいうと解される。そこで、以上の見地に立って本件について検討する。」と判示されているように、商標法第3条第1項第6号に該当する商標について、同法第3条第2項の見地に立った検討が裁判実務上で行われている。

そうすると、出願された商標の商標法第3条第1項第6号該当性については、当該商標が使用をされた結果、特定の者の出所表示としてその商品又は役務の需要者の間で全国的に認識されるに至っているか否かが判断され得るものと認められる。

そして、原査定において、「周知性」に言及したのは、これを商標法第3条第1項第6号該当性の要件と捉える趣旨ではなく、使用をされた結果、特定の者の出所表示としてその役務の需要者の間で全国的に認識されるに至っているか否かを判断するための考慮事由の一として言及したものである。

(3)まとめ

以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当し、登録することができない。

よって、結論のとおり審決する。

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