結論テキスト
登録第6720210号商標の指定商品及び指定役務中、第28類「ゲーム用具及びおもちゃ,テレビゲーム機,体操用具及び運動用具」及び第41類「全指定役務」についての商標登録を取り消す。
本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2023900214 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件登録第6720210号商標(以下「本件商標」という。)は、「モルック」の文字を標準文字で表してなり、令和3年4月28日に登録出願、第28類「ゲーム用具及びおもちゃ,テレビゲーム機,体操用具及び運動用具,クリスマスツリー用装飾品」及び第41類「教育,訓練の提供,娯楽の提供,スポーツ及び文化に関する会議・イベントの運営,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」を指定商品及び指定役務として、同5年6月29日に登録査定、同年7月25日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第7号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、同法第43条の2第1号の規定により、その登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証を提出した。
申立人は2022年4月から、他社との侵害調査を予め行った上で侵害は生じていないと判断したうえでモルック商品(甲4)を販売していたところ、令和5年2月に本件商標の権利者からの警告書を受けた(甲5)。
なお、申立人の商品には「MOLLKY」の文字は一切使用しておらず、商品名を「WOOD STICK」とし、商品の箱に「モルック」の文字を使用している(甲4)。
「MOLKKY」からは「モルキー」の称呼のみが生じることは明らかであって(異議2022-900112)、申立人が商品に使用している「モルック」と「MOLKKY」とは一見して非類似であることが明らかであるのに、本件商標権者は、申立人の行為が国際登録第1318995号商標、登録第6519171号商標(甲6)などの侵害である旨の警告をし、申立人の日本におけるビジネス展開を阻害してきた。
そのような経緯に基づき、申立人は商標登録異議申立をするという判断に至ったものである。
(1)「モルック」及びその使用実態について
ア 「モルック」について
本件の審査時の拒絶理由通知(甲10、以下「拒絶理由通知」という。)に対する意見書(以下「審査時意見書」という。)において、本件商標権者は、「「MOLKKY(「O」文字にはウムラウトが付してある、以下同じ。)」というゲーム名の由来には諸説あります。まず一つ目は、「MOLKKY」の語は、創作者である「Lahden Paikka」社による完全な造語であるというものです。」と主張している。
しかしながら、日本においては「MOLKKY」からは「モルキー」の称呼のみが生ずるものであって、「MOLKKY」と「モルック」とは非類似の関係にあり(異議2022-900112)、本件商標権者が既に「MOLKKY」(国際登録第1318995号)の商標権を有しているとしても、それは本件商標の登録の判断に一切影響するものではない。
仮に「MOLKKY」の語が創作者である「Lahden Paikka」社による完全な造語であるとしても、カタカナ文字の「モルック」は日本においては上述のようにあくまで一のスポーツ競技の名称であって(投てき競技の名称の一種、甲1)であって、「MOLKKY」が造語か否かも本件商標権の登録の判断に一切影響するものではない。
イ 「モルック」の使用実態について
「モルック」という投てき競技のスポーツは非常に新しい投てき競技の一種としてNHKなどのテレビ局やyoutubeなどのSNSサイト等々において4年前の2019年頃より度々大きく紹介されており(甲2、甲3)、本件商標の登録査定時において、木製の非常に特徴的な形の道具を用いる新たな投てき競技のスポーツ名として日本の需要者の間に広く認知されている。
また「モルック」の文字を含んでなる商標出願も2021年度より多く出願されている(甲7~甲9)。
このことは、日本におけるスポーツ競技としてのモルックの普及が2021年頃より明らかに急上昇していることを示している。
また、拒絶理由通知においてもモルックの普及に関する他の事実が示されている。
ウ 「モルック」の競技人口の推移
ウィキペディアのモルックの項には「・・・2018年時点では約1,000人であったのが、2020年時点では5,000~8,000人まで増加している。」と記載されている(甲1)。
したがって、2018ないし2020年の約3年で約5ないし8倍にも競技人口は増えており、モルックという投てきスポーツの普及スピードが非常に速いことが伺い知れる。この普及スピードを鑑みると、2023年10月時点においては日本全国において少なくとも数万人程度の競技人口が在るものと推定される。
特に、モルックは子供から老人まで老若男女が共に楽しむことができるスポーツであって、高齢化社会を迎えている日本ではその親和性の高いスポーツの一種と解される。
(2)本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当すること
ア 以上のように、少なくとも、本件商標の登録査定時には、本件商標は、木製の非常に特徴的な形の道具を用いる新たな投てき競技のスポーツ名として日本の需要者の間に広く認知されていた。
したがって、本件商標をその指定商品又は指定役務に使用しても、これに接する需要者は、当該商品又は役務がスポーツ競技の一種であるモルックに関連するものであること、すなわち商品の品質又は役務の質を表したものとして認識するにすぎない。
また、本件商標は、何人も使用をする必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであるから、一私人に独占を認めるのは妥当ではなく、既にモルックが新たな投てき競技のスポーツ名として一般的に使用がされているものであるから、自他商品等の識別力を認めることは妥当ではない。
したがって、本件商標は、その指定商品中、「ゲーム用具及びおもちゃ,体操用具及び運動用具」や、その指定役務に関しては、一私人に独占させるに適さない商標又は自他商品識別力を欠く商標であり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
イ 本件商標の登録査定時に、本件商標は、投てき競技のスポーツ名として日本の需要者の間に広く認知まではされていないと判断されたとしても、商標法第3条第1項第3号などの制度趣旨からすれば、本件商標の登録査定時において需要者の間に広く認知されていた/されていなかったは本件商標権の商標法第3条第1項第3号の該当性を判断する上で大きく影響するものでは無い。
すなわち、モルックというスポーツ名は将来必ず一般的に使用されるものであるから、自他商品等の識別力を認めることは妥当ではない。
本件商標は、前記2(1)イのメディアなどにおける放送、SNSでの開示などに基づき、本件商標の登録査定日において投てきスポーツの一般名称として既に日本全国において知られていると考えるのが妥当である。
そうすると、本件商標はその指定商品及び指定役務との関係で自他商品等の識別力を有せず、需要者が何人の業務に係る商品等であることを認識できない商標であることは明らかであるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
前記2(2)アのとおり、本件商標はその登録査定時において投てきスポーツの一般名称として既に日本全国において知られている。
商標法第4条第1項第7号の規定は、指定商品及び指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般道徳観念に反するような場合も含まれる。
そして、モルックは現在スポーツの一般名称と使用され、あるいは将来必ず一般的に使用されるものであるから、商標権を与えることは公正な商取引の秩序を乱すものであって、商標法第4条第1項第7号に該当する。
また、本件商標権者は、正規品/非正規品の識別は所有する「MOLLKY(国際登録第1318995号)」に基づいて行えば良いにもかかわらず、審査時意見書で述べているように「モルック(標準文字)」のみを表示している同業他社に数多くの警告書を既に送付している。そして、本件商標が登録のあかつきには、多くの需要者から使用料名目で金銭を請求できるとの不正の目的をもって本件商標を出願したことは明らかであり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
当審において、本件商標権者に対し、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第28類「ゲーム用具及びおもちゃ,テレビゲーム機,体操用具及び運動用具」及び第41類「全指定役務」(以下「取消対象商品及び役務」という。)について、商標法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第43条の3第2項の規定に基づいて、その登録を取り消すべき旨の取消理由を、令和6年2月27日付けの取消理由通知書で通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。
本件商標権者は、本件商標は、取消対象商品及び役務についての登録は、商標法第3条第1項第3号の規定に違反してされたものではないと主張し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第134号証を提出した。
(1)「モルック」ゲームの歴史及びその名称の由来
ゲーム「モルック」は、1996年に「Lahden Paikka」という名のフィンランドの会社(以下「Lahden社」という。)によって創作された。フィンランドのカレリア地方にルーツを持つ「kyykka(「a」にはウムラウトが付してある、以下同じ。)」(キイッカ)と呼ばれる投てきゲームがベースとなっているが、年齢や体力に関係なくあらゆる人が楽しくプレーすることができるように、元となった「kyykka」に比べて、プレーの際にフィジカルの要素が必要とならないようにアレンジが加えられたものである(乙1、乙2)。
「モルック」の元となった欧文字表記のゲーム名「MOLKKY」の由来は、Lahden社による完全な造語というもの(乙2)と、カレリア地方の方言で「子供のお尻」を意味する「MOLKKY」を採用した、というものである(乙3、乙4)。
「モルック」ゲームの発売当初は、本件商標権者が、Lahden社の下で「モルック」ゲームの販売を国内外ともに担っていたが、2016年に、本件商標権者は、Lahden社から「モルック」の製造販売に係る権利を譲り受けた。その中には「モルック」ゲームに係る商標権も含まれている。
そして、現在は、本件商標権者が自身の名の下で「モルック」ゲームの製造販売を行っている(乙1、乙2)。
以上のとおり、「モルック」の元となった欧文字「MOLKKY」は、フィンランドにあるLahden社が独自に開発したゲームの名称であり、ゲーム発祥の地であるフィンランドにおいて、フィンランドの伝統的な投てきゲームの一般名称として使用されているものではない。「MOLKKY」という語は、商品との関係においては、識別力を十分に発揮する語であり、それに相応する日本語表記として採用された「モルック」の語も新奇な造語である。
(2)本件商標権者の有する商標登録
本件商標権者は、我が国において、ゲーム「モルック」に関連して、国際登録第1318995号商標(乙5)、国際登録第1621350号商標(乙6)、登録第6519171号商標(立体商標)(乙7)、第6717678号商標(乙8)の複数の商標登録を有している。
さらに、本件商標権者は、我が国以外にも、世界各国において、ゲーム「モルック」に係る商標登録を有している(乙9)。
(3)「モルック」が「MOLKKY」に相応する日本語表記として「MOLKKY」と等価に使用されていること
ゲーム「モルック」について紹介する記事や書籍では、「モルック」と「MOLKKY」が併記されている、又は「MOLKKY」の読みが「モルック」であると説明されており、「MOLKKY」に相応する日本語表記が「モルック」であることは明らかである(乙10~乙12)。
上記以外にも、欧文字「MOLKKY」又は「MOLKKY」(ウムラウト付きの「O」をウムラウトなしの「O」で代替表記したもの。)と、その片仮名表記である「モルック」とを併記する記事、大会ポスター等の掲示物、YouTube上に投稿される動画が多数存在する(乙14~乙33)。
また、国際モルック連盟の傘下にあり、我が国での「モルック」ゲームの普及活動を統括する団体である「一般社団法人日本モルック協会」(以下「日本モルック協会」という。)のウェブページにおいて、「MOLKKY」に対応する語として「モルック」の語が使用されている(乙34)。
そして、日本モルック協会が発行する公式ルールガイドブックの表紙には「Molkky」の文字のすぐ下に、片仮名「モルック」の文字が表示されており、当該ルールブックを使用する者をして「Molkky」の日本語表記が「モルック」であると直ちに認識させる態様となっている(乙35)。
さらに、日本モルック協会が不定期に発行しているニュースレター「The Molkky Times」においても、左上隅の「日本モルック協会」の名称のすぐ下に欧文字「Japan Molkky Association」が表示してあり、片仮名の「モルック」に「Molkky」が対応することが明らかな態様で表示してあり、その他にも「Molkky」と「モルック」の文字が同一のニュースレター内で併記されていることで、「モルック」が「Molkky」に相応するものであることは明らかである(乙36~乙39)。
以上のとおり、「モルック」の語は、本件商標権者の商品及び役務の識別標識である「MOLKKY」に相応するものとして使用されている。
(4)本件商標権者と国際モルック連盟、日本モルック協会との関係
国際モルック連盟は、2016年に設立され、各国や各連盟、選手の仲介をし、適切な大会運営と正しいルールを推進し、もって「モルック」を広めることを目的としている(乙40)。
本件商標権者と国際モルック連盟とは協力関係にあり、本件商標権者は、国際モルック連盟に対して、「モルック」大会・競技会その他イベントを開催する際の「MOLKKY」の文字及びその翻訳の使用について使用許諾を与えている(乙41)。
国際モルック連盟は、世界各国のモルック組織団体を統括する団体として存在しており、日本モルック協会もその傘下にある。国際モルック連盟及び各国の加盟団体は、「モルック」ゲームの大会その他普及活動において、そして、発行する公式の書面等において、「MOLKKY」が本件商標権者の登録商標であることを明確に表明しており、大会・競技会等においては、本件商標権者の提供する「モルック」正規品(以下「正規品」という。)のみを使用することとされている(乙42~乙44)。
国際モルック連盟は、毎年モルック世界大会を主催しており、また、各国のモルック連盟・協会も、それぞれの国で多くの大会を開催している。現在では、世界各国から、計400以上もの「モルック」公認団体・組織が国際モルック連盟のデータベースに登録されている(乙45)。
我が国においては、2011年に日本モルック協会が創設され、2014年には、初の日本大会も開催された。さらに、2024年のモルック世界大会は、函館で開催されることが国際モルック連盟の会議で正式に決定された(乙46)ところ、当該大会では、国際モルック連盟の大会規則に則り、正規品のみが使用される。
日本モルック協会の傘下には、全国各地に280を超える公認団体があり(乙47)、これら公認団体による公認大会や日本モルック協会による公式大会が一年を通じて開催されている(乙48~乙50)。その他、日本モルック協会は、積極的に「モルック」ゲームの普及活動を行っている(乙36~乙39、乙51~乙53)ところ、日本モルック協会による上記活動には国際モルック連盟の規約に則り、全て正規品のみが使用されている。
本件商標権者と日本モルック協会とは協力関係にあり、本件商標権者は、日本モルック協会に対して、「モルック」大会・競技会その他各種イベント・普及活動における「モルック」の語の使用について使用許諾を与えている(乙54)。
以上のとおり、日本モルック協会の活動においては、本件商標権者がゲーム「モルック」に関して有する商標登録に鑑みて、正規品のみを大会で使用することとしている(乙34)。
そして、「モルック」ゲームに関する大会情報等が多数発見されるという事実のみによっては、「モルック」という語が投てきゲームの一般名称であることは何ら証明されない。これらの使用例は、そのほとんどが、本件商標権者から「モルック」の文字の使用の許諾を受けている日本モルック協会又はその公認団体・友好団体による大会・イベント等に関するものであり、本件商標権者がゲーム「モルック」に関して有する商標登録に鑑みて、これらの大会・イベント等においては、正規品のみが使用されているからである(乙56~乙61)。
したがって、これらの大会・イベントは、「モルック」が、本件商標権者の提供に係るゲームの固有の名称であることを前提として成り立っている。
(5)「モルック」の文字の商品への使用及び商品の広告宣伝・販売
本件商標権者の製造、販売に係る商品(以下「本件商標権者商品」という。)のデザインはグローバルに統一されているが、日本用の商品については特別にローカライズが行われており、パッケージに欧文字「MOLKKY」と共に、片仮名表記の「モルック」が併記されている(乙62)。
我が国では、「OHSサプライ合同会社」(以下「OHSサプライ」という。)が輸入総代理店となり、「モルック」ゲームの宣伝広告活動を行っているところ(乙63)、OHSサプライのウェブページ(乙63)では、オンラインショッピングも可能であり、本件商標権者商品を購入することができる。これらの商品は、そのパッケージに「MOLKKY」と共に片仮名「モルック」が併記されており、商品の購入者にとって、「MOLKKY」に相応する日本語表記が「モルック」であることは明らかである(乙64)。
仮に「モルック」が「MOLKKY」に相応する日本語表記であることが認識されなかったとしても、新奇な造語である「モルック」が、商品の出所識別標識として機能することは明らかである。本件商標権者商品は、オンラインショッピングサイトの「Amazon」、「楽天市場」でも販売されている(乙65、乙66)。これらのウェブページにおいても、新奇な造語である「モルック」は、本件商標権者商品の出所を表示するものとして機能している。
なお、オンラインショッピングサイトでは、本件商標権者商品に類似した商品に別の商品名(「Finska」や「Klop」)が付されて販売されている実情が認められる(乙67、乙68)。このような実情からも、逆説的に「MOLKKY」及びその片仮名表記「モルック」が本件商標権者商品の出所を識別するための標識として機能するものである。
(6)本件商標権者商品の販売個数及び輸出個数
現在、本件商標権者商品は、フィンランド、スウェーデン、日本等25カ国及びラテン・アメリカ、香港、EU域内の免税店において販売されている。
2018年ないし2022年における、本件商標権者商品(付属品を含む。)の各国における販売個数は387個(ノルウェー、2022年)ないし146,983個(フランス、2018年)であり輸出個数は24個(ラトビア)ないし84,781個(日本)である。
さらに、2023年以降の本件商標権者商品の我が国における販売量は、2023年には、一年間で総計45,680個である。そのうち、最も人気のあった(販売数が多かった)のは、「モルックオリジナル」と呼ばれる木枠入りのもので、20,160個販売された。その他に、「モルックミニ」と呼ばれる小型のものが、7,920個販売された。
我が国の2024年の本件商標権者商品の販売個数は、現時点で既に総計22,522個を計上しており、うち8,637個が「モルックオリジナル」である。
本件商標権者商品は、一つの商品を複数人で使用するものであり、かつ、消耗品ではなく、一度購入すると、その後は頻繁に買い換えることは少ないという取引の実情を有するものであることを勘案すれば、近年の販売数は極めて高いといえる。上述のとおり、我が国で販売される本件商標権者商品の包装には、本件商標権者のゲームの名称として「モルック」の文字が顕著に目立つ態様で表示してあり、我が国において、相当数の需要者、及び、「モルック」大会その他イベントの参加者が、「モルック」の文字を本件商標権者商品の出所識別標識として目にするところとなり、そのように認識・把握されたであろうことがうかがえる。
(7)展示会や見本市
本件商標権者は、「モルック」ゲームについて、世界各地の展示会や見本市に出展し、その発展・普及に努めてきた。我が国については、本件商標権者は、2016年、「東京おもちゃショー」に、「モルック」ゲームを出展して以来(乙69、乙70)、毎年、我が国の展示会・見本市に本件商標権者商品を出展している。2017年以降は、輸入総代理店であるOHSサプライ社が「東京おもちゃショー」及び「レジャー&アウトドアジャパン」に本件商標権者商品を出店している(乙72、乙73、乙74)。その出展ブースには、いずれも、本件商標権者商品のポスターに「MOLKKY」と共に片仮名「モルック」も併記されている。
(8)本件商標「モルック」の独占適応性
本件商標は、新奇な造語であり、本件商標権者のゲームの出所を表示する態様で使用されている。仮に、本件商標権者以外の第三者が「モルック」という商標を付して「モルック」ゲームに類似のゲームを販売した場合、それに接した需要者は、あたかもその商品が本件商標権者が販売したものであると誤認するおそれがある。現にこのような模倣品が市場に出回ることもあり、本件商標権者は、その都度、模倣品の製造・販売業者に対して、警告書を送付する等の対策を講じており、模倣品の市場からの排除に努めている(乙75、乙76)。
我が国においては、「MOLKKY」に相応する日本語表記として「モルック」が使用されており、また、「モルック」の語自体がそもそも新奇な造語であるので、「モルック」について、本件商標権者が、本件商標権者の承諾を得ていない第三者が使用できないように商標登録することに何ら問題はない。つまり、本件商標には、独占適応性がある。
申立人が提出した証拠及び合議体の職権調査により発見された新聞記事で紹介された大会等(乙33、乙80、乙83の1、乙84、乙85、乙87、乙89の1、乙91の1、乙92~乙97、乙99、乙101、乙104~乙110、乙114、乙116、乙118、乙121の1、乙123、乙125、乙128)は、一部を除き、日本モルック協会による公式大会又は日本モルック協会の公認団体若しくは友好団体が主催する大会であるか、本件商標権者が製造販売する正規品を使用しており、そのような大会等が多数紹介されている事実自体によって直ちに「モルック」が一般名称であるということはできない(乙11、乙13~乙16、乙20、乙21,乙26、乙27、乙31~乙33、乙35、乙43、乙44、乙63、乙77、乙81、乙82、乙83の2、乙86、乙88、乙89の2、乙90、乙91の2、乙92~乙96、乙98~乙100、乙102、乙103、乙105~乙109、乙111~乙113、乙115、乙117、乙119~乙121、乙122の2、乙124、乙126、乙127、乙129~乙131)。
(1)商標法第3条の自他商品・役務識別力は、登録商標の指定商品・役務の需要者・取引者を基準に判断すべきである(知的財産高等裁判所令和2年(行ケ)第10116号同3年4月21日判決、知的財産高等裁判所平成31年(行ケ)第10017号令和元年7月24日判決等。乙132、乙133)。
そうすると、商標法第3条第1項第3号に該当することを理由として本件商標を取り消すには、本件商標の指定商品及び指定役務を含む幅広い需要者層及び取引者層を基準に商標法第3条第1項第3号の自他商品・役務識別力を具備していなかったことが立証される必要がある。
それにもかかわらず、本件取消理由通知書においては、一部のウェブページやNHK、新聞記事に「モルック」が紹介されたことがあることが示されているにすぎず、本件取消理由通知書に示された証拠によっては、登録査定時において、上記のような幅広い需要者層及び取引者層において「モルック」が広く知られるに至ったことは、何ら立証されていない。
しかも、前記2のとおり、本件取消理由通知書で示された証拠は、そのほとんどが、本件商標権者から「モルック」の文字の使用の許諾を受けている日本モルック協会による公式大会又は日本モルック協会の公認団体若しくは友好団体が主催する大会であるか、正規品を使用しているものに係る記事等であり、このような証拠によっては、「モルック」が一般名称として使用されていることは、何ら立証されていない。
したがって、取消理由通知書の判断は失当である。
(2)仮に「モルック」が商標法第3条第1項に該当するとしても、前記1(3)ないし(7)のとおり、「モルック」は本件商標権者の業務に係る用具を用いたスポーツないしゲームを指すことが広く知られているから、「モルック」が使用された結果、需要者は、「モルック」が本件商標権者の業務に係る商品又は役務であることを認識することができた。
したがって、「モルック」は、同法第3条第2項の規定により商標登録を受けることができたので、取消理由通知書の判断はいずれにせよ失当である。
(1)申立人の挙げている「モルック」ゲームに関する情報は、本件商標権者から「モルック」の文字の使用の許諾を受けている日本モルック協会若しくはその公認団体・友好団体の活動に関するもの、又は、正規品に係るものである。したがって、申立人による「モルック」の語の使用例は、本件商標「モルック」が、本件商標権者の出所識別標識としては認識・使用されていないことの証左にはなり得ない。
(2)商標法第3条該当性の判断基準時は、登録査定時であり(東京高昭和45年(行ケ)第5号同46年9月9日判決)、事後的に同法第3条の要件に該当するとの主張は、異議申立てにおいて考慮すべき事項ではない。
(3)申立人は、本件商標に関して、本件商標権者による独占使用を認めるのは公益上適当ではないと主張しているが、「モルック」の語は投てきゲームの一般名称ではなく、本件商標権者の商標、すなわち、出所を表示するものであることをそもそもの前提としている。さらに、ゲームの名称が登録商標であることが、直ちに当該ゲームの大会やイベントの開催に特段の不都合を生じることにはつながらない。
(4)申立人は、商品の他者との差別化は、欧文字「MOLKKY」によって図ればよいのであって、片仮名「モルック」にまで権利を拡張する必要性は一切ない、及び「MOLKKY」が登録されているとしても、非類似の関係にある「モルック」は登録するべきではない旨主張しているが、前記1(3)のとおり、「モルック」の語は、「MOLKKY」に対応する日本語表記であることが明らかな態様で使用されており、「MOLKKY」との関係をおいておいても、「モルック」の語は新奇な造語であり、それ自体で出所識別標識として機能するので、登録要件を備えるものである。
逆に、「MOLKKY」については商標登録による権利を付与し、それに対応する日本語表記「モルック」には権利を付与しないというのでは、権利保護の在り方に不均衡が生じてしまい、商標法の趣旨に反する。
(5)申立人は、「申立人の商品には「MOLKKY」の文字は一切使用しておらず~」と主張しているが、申立人は、警告書を送付するにあたり、オンラインショッピングサイトにおいて、申立人の商品が、「モルック」の文字以外に「MOLKKY」の文字を使用して販売されていることを確認している(乙134)。
(6)申立人は、「本件商標は本件商標の登録査定時において投てきスポーツの一般名称として既に日本全国において知られている」旨を主張しているが、前記3(1)のとおり、本件商標の自他商品等識別力の判断をするにあたっては、取引者・需要者の範囲の基準とすべきは、本件において指定されている商品及び役務の需要者層・取引者層であり、本件指定商品及び指定役務が比較的広範で包括的な商品及び役務であることを鑑みると、特定な範囲の狭い需要者層・取引者層ではなく、幅広い需要者層・取引者層を判断の基準とすべきである。
そして、このような広範な需要者層・取引者層において「モルック」が広く知られていることは、申立人提出の証拠によっては何ら立証されていない。
したがって、申立人の主張は失当である。
仮に本件商標が商標法第3条第1項に該当しても、前記1(3)ないし(7)のとおり、本件商標は本件商標権者の業務に係るゲームを指称するものとして広く知られていたということであり、同法第3条第2項の規定により商標登録を受けることができる。
以上のとおり、本件商標は、取消対象商品及び役務について、商標法第3条第1項第3号に該当するものではなく、仮に同号に該当するとしても、同条第2項の規定により商標登録を受けることができる。
(1)申立人の提出に係る証拠によれば以下のとおりである。
ア ウィキペディアには、「モルック」について、「モルックは、フィンランド発祥の投てき競技である。」の記載、「日本での普及」の項には、「日本大会は2014年から毎年開催されている。日本モルック協会によると、2011年に協会が設立された時点での日本における競技人口は100人未満だった。・・・メディアでPRしたことをきっかけに競技人口が増え、2018年時点では約1,000人であったのが、2020年時点では、5,000~8,000人まで増加している。」の記載がある(甲1)。
イ googleにおける「モルック NHK」の検索によれば、遅くとも本件商標の登録査定前の2021年(令和3年)4月以降、2023年(令和5年)9月までの間に、NHKを通じて「モルック」がフィンランド発祥のスポーツとして紹介されている(甲2)。
ウ 拒絶理由通知に示された参考情報(甲10)
(ア)「コトバンク」のウェブサイト
「知恵蔵mini『モルック』の解説」の見出しの下、「フィンランドで1996年に生まれたスポーツ。同国東部カレリア地方の伝統的な競技をもとに考案された。2人または2チーム以上で約20センチメートルある木製の棒『モルック』を交代で投げ合い、12本の木製ピン『スキットル』を倒して得点を競う。」との記載がある。
https://kotobank.jp/word/%E3%83%A2%E3%83%AB%E3%83%83%E3%82%AF-2133573(2021年12月15日最終閲覧)
(イ)「日本モルック協会」のウェブサイト
「モルックとは」の見出しの下、「フィンランドはカレリア地方の伝統的なkyykkaというゲームを元に開発されたスポーツ それがモルックです。」との記載がある。
https://molkky.jp/molkky(2021年12月15日最終閲覧)
(ウ)「一般社団法人公園からの健康づくりネット」のウェブサイト
「モルック体験できます!」の見出しの下、「令和3年11月14日(日)12:30~16:00 淀川河川公園 枚方地区 淀川スタジアム(大阪府枚方市)でモルックを体験できます。ぜひ気軽に遊びに来てください!」との記載があり、「『モルック普及員』の派遣をします」の見出しの下、「地域や組織で『楽しく健康づくりをしたい』『コミュニケーションを活性化したい』『老若男女ができるイベントをひらきたい』と考えている方へ。当法人のモルック普及員(森、他)がおうかがいして、組織のリーダーや健康づくりをされている方にモルックの遊び方をお伝えします。」との記載がある。
https://parkhealth.jp/molkky(2021年12月15日最終閲覧)
(エ)「愛知県蒲郡市」のウェブサイト
「さがらの森 モルック体験会実施!!」の見出しの下、「10月17日日曜日、市内のさがらの森でモルック体験会が実施されました。モルックはアウトドアと相性が良く、キャンプ場利用者の皆様に楽しんでいただけました!」との記載がある。
https://www.city.gamagori.lg.jp/site/spo-sui/sagara-morukku.html(2021年12月15日最終閲覧)
(2)当審における職権調査(新聞記事情報)
ア 「25日にフィンランド由来の「夏至まつり」」(2017年6月23日 北海道新聞朝刊地方(北見・オホーツク)19ページ)の見出しの下、「・・・木の棒を投げピンを倒すフィンランド発祥の競技「モルック」の大会がある。」の記載がある。
イ 「北欧発祥、木のピン倒すスポーツ 県内をモルック聖地に 高山の家具職人、企業などタッグ」(2019年7月25日 中日新聞朝刊 地方版(飛騨総合版)15ページ)の見出しの下、「【岐阜県】県内を北欧発祥の「森のスポーツ」の聖地にする。木製の棒、ピンを使うフォンランド生まれの競技「モルック」を広めようと、岐阜大の教員や高山市の家具製作師、企業が連携。」の記載がある。
ウ 「[笑う門には・・・]ネタも未来も「予測不能」 さらば青春の光」(2020年5月25日 東京読売新聞夕刊8ページ)の見出しの下、「森田は、フィンランド発祥の投てき(とうてき)競技「モルック」の日本代表だ。」の記載がある。
エ 「◎フィンランド発祥のスポーツ モルック大会、県内初誘致 大津町で第1回九州大会」(2020年11月24日 熊本日日新聞朝刊13ページ)の見出しの下、「フィンランド発祥のスポーツ「モルック」の第1回九州大会が22日、大津町運動公園で開かれ、全国各地から参加した99チームの約300人が競った。」の記載がある。
オ 「天童市 モルック大会 県内外の48人参加、和やかにプレー楽しむ」(2021年11月28日 山形新聞朝刊12ページ)の見出しの下、「モルックは、木製の「モルック(棒)」を投げ、3~4メートル先に置いた12本の木製ピン「スキットル」を倒す。老若男女が楽しめる新たな生涯スポーツとして注目されている。」の記載がある。
カ 「狙い定めピン倒せ! フィンランド発祥 モルック 君津で初大会=千葉」(2021年12月5日 東京読売新聞朝刊25ページ)の見出しの下、「木製の棒を投げてピンを倒すモルックはフィンランド発祥のニュースポーツで、年齢や性別などを問わずに楽しめるのが特徴だ。来年3月には同じ会場で第2回アジア大会が行われる予定で、関係者が普及に努めている。」の記載がある。
キ 「モルック大会で8チームが熱戦/沖縄、城前公民館」(2022年1月7日 琉球新報朝刊22ページ)の見出しの下、「【沖縄】モルックと呼ばれる木の棒を投げて、数字の書かれた木のピン(スキットル)を倒す、フィンランド発祥のスポーツ「モルック大会」がこのほど、沖縄市の城前公民館隣の公園で開催された。」の記載がある。
ク 「MIKAWA 人もよう「モルック」の普及を目指す 板倉左京さん(32) 単純なルールに奥深さ」(2022年1月25日 中日新聞朝刊 地方版(西三河版)14ページ)の見出しの下、「北欧フィンランド生まれの競技「モルック」。・・・近年、日本でも人気が高まっているモルックは、重さ四百グラムほどの木の棒を交互に投げて、地面に並べた木製のピンを倒す。」の記載がある。
ケ 「モルック:モルック人気、じわり フィンランド発祥の新スポーツ 誰でも気軽にプレー 県協会、普及に力/山形」(2022年3月7日 毎日新聞 地方版24ページ)の見出しの下、「フィンランド発祥で、木の棒を投げて得点を競うスポーツ「モルック」の人気が、県内でじわりと広がっている。・・・2021年12月、東北地方で初めて普及などを目的に「県モルック協会」が設立されており、協会は競技の輪を広げていく。」の記載がある。
コ 「モルック大会 目指せ50点 北広島で4日=広島」(2022年8月31日 大阪読売新聞朝刊23ページ)の見出しの下、「フィンランド発祥のニュースポーツ「モルック」の大会が9月4日、北広島町都志見の豊平総合運動公園で開催される。主催者によると、大規模な大会は県内初という。」の記載がある。
サ 「簡単ルール 道南で「モルック」人気*各地で体験会 24年函館で世界大会」(2022年11月17日 北海道新聞朝刊地方(函館・渡島・桧山)17ページ)の見出しの下、「道南でフィンランド発祥のスポーツ「モルック」の人気が高まっている。・・・今年8月にフランスで開かれた世界大会には日本を含む17カ国から167チームが出場。」の記載がある。
シ 「モルック 高根を聖地に 全国250チーム熱戦 世界最大規模の大会 御殿場」(2023年1月10日 静岡新聞朝刊17ページ)の見出しの下、「木の棒を投げてピンを倒し得点を競うスポーツ「モルック」の大会が8、9の両日、御殿場市山之尻の高根ふれあい広場で開かれた。日本モルック協会公認大会で、全国から250のチーム(ペア)が出場。」の記載がある。
ス 「モルック普及へ3チーム対抗戦 千代田でイベント」(2023年5月21日 東京新聞朝刊 地方版(下町版)18ページ)の見出しの下、「【東京都】北欧フィンランド発祥のスポーツ「モルック」の魅力を知ってもらおうと、千代田区の富国生命ビル内で十九日、モルック競技会が開かれた。」の記載がある。
(3)本件商標権者の提出に係る証拠にも以下の記載がある
ア 「パラスポーツマガジンVol.11 2022年8月28日発行」には「誰でもすぐに競えて日本代表にもなれちゃう?! モルックって、お、おもしろいっ!」の見出しの下「Molkky。「モルック」と読む。フィンランドで生まれたスポーツで、世界大会も開かれている。」の記載がある(乙10)。
イ 「伝統ゲーム大事典-子供から大人まであそべる世界の遊戯- 2000年2月1日発行」には「モルック」の見出しの下「解説 地面に置かれた木製の標的に対し、バトン(木製の円柱)を当てて倒すことを競うゲーム・・・ゲームの準備・・ゲームの進行・・・ゲームの終了と勝敗」の記載がある(乙12)。
ウ NHKのウェブサイトにおける「島根NEWS WEB フィンランド発祥「モルック」通じて交流 松江の特別支援学校」の見出しの下「フィンランド発祥の「モルック」は、長さ20センチほどの木の棒を投げて倒したピンの種類や数に応じて得点するスポーツで・・・」の記載がある(乙83の1)。
エ その他、本件商標権者の提出した乙各号証には「モルック大会」、「モルック○○大会」(○○は地名等。)等の記載があるものが認められる(乙15、乙16、乙18、乙81ほか)。
(4)上記(1)ないし(3)からすると、「モルック」の片仮名は、「Molkky」の読みを表す場合があるとしても、我が国においては、フィンランド発祥の投てき競技を表す語(競技名)として本件商標の登録査定時前には、NHK、ウェブサイト等において紹介され、各地大会及び全国大会等が行われていることが新聞記事となっていることが認められる。
また、当該大会を告知するためのポスター、ウェブサイト等では「モルック大会」「モルック○○大会(○○には地名等)」のように「モルック」の文字自体が競技名を表す態様で表示されている。
そうすると、我が国の取引者、需要者において、「モルック」の片仮名は、本件商標の登録査定時にはフィンランド発祥の投てき競技の名称として広く知られているといえる。
本件商標は、前記第1のとおり、「モルック」の文字を標準文字で表してなるものである。
そして、「モルック」の片仮名は、前記1(4)のとおり、フィンランド発祥の投てき競技の名称を表す語として、本件商標の登録査定時には我が国の取引者、需要者の間に広く知られているといえる。
してみれば、本件商標をその指定商品及び指定役務中、取消対象商品及び役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、フィンランド発祥の投てき競技の名称を認識し、その商品が当該「モルック」という投てき競技に使用する商品又は「モルック」という投てき競技を内容とする商品及び「モルック」という投てき競技に関する又は内容とする役務であることを理解するにとどまるというべきである。
そうすると、本件商標は、商品の品質及び用途、役務の質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、自他商品及び自他役務を識別する機能を果たし得ないと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は、その取消対象商品及び役務について商標法第3条第1項第3号に該当する。
しかしながら、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、取消対象商品及び役務以外の商品に使用しても、商品の品質及び用途を表示したものとはいい難いから、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
本件商標の指定商品及び指定役務中、取消対象商品及び役務以外の商品については、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標とは認められないから、商標法第3条第1項第6号に該当しない。
申立人は、モルックは現在スポーツの一般名称と使用され、あるいは将来必ず一般的に使用されるものであるから、商標権を与えることは公正な商取引の秩序を乱すものであって、商標法第4条第1項第7号に該当する旨を主張する。
しかしながら、本件商標の登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがあり、本件商標の登録を認めることが公正な取引秩序を乱し、社会一般の道徳観念に反するものというべきことを裏付ける証拠の提出はない。
その他、本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(1)本件商標権者は、我が国においては、「モルック」の日本語表記は「MOLKKY」に相応する文字として使用されており、また、「モルック」の語自体がそもそも新奇な造語であるので、登録要件を備えている旨述べ、「MOLKKY」については商標登録による権利を付与し、それに対応する日本語表記「モルック」には権利を付与しないというのでは、権利保護の在り方に不均衡が生じてしまい、商標法の趣旨に反する旨を主張する。
しかしながら、「モルック」の片仮名が「MOLKKY」に相応する日本語表記として使用されているとしても、前記2のとおり、我が国において「モルック」の片仮名はこれに接する取引者、需要者をして、フィンランド発祥の投てき競技の名称を認識し、これを、取消対象商品及び役務に使用しても、その商品が当該「モルック」という投てき競技に使用する商品又は「モルック」という投てき競技を内容とする商品及び「モルック」という投てき競技に関する又は内容とする役務であることを理解するにとどまるというべきである。
また、「モルック」の語は、本件商標権者の製造販売に係る商品「MOLKKY」に相応する文字又は「MOLKKY」の読みであったとしても、当初は造語であったものが、それまで存在しなかった競技を示す場合には、その競技の名称であるかのように認識されるに至ることはあり得るところ、当該商品を使用する競技名として一定期間使用された結果、本件商標の登録査定時には、当該競技名を示す名称となり自他商品を識別する標章としての機能を喪失するにいたったというべきであるから、「モルック」が造語であったとしても、本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当すると解し得ないことにはならない。
そして、「MOLKKY」と「モルック」の片仮名は別異のものであるから、我が国において投てき競技の競技名として認識されている「モルック」の片仮名に、商標権を与えないことによって、権利保護に不均衡が生じるということはない。
(2)本件商標権者は、本件商標の自他商品等識別力の判断をするにあたっては、取引者・需要者の範囲の基準とすべきは、本件において指定されている商品及び役務の需要者層・取引者層であり、本件指定商品及び指定役務が比較的広範で包括的な商品及び役務であることを鑑みると、特定な範囲の狭い需要者層・取引者層ではなく、幅広い需要者層・取引者層を判断の基準とすべきであって、このような広範な需要者層・取引者層において「モルック」が広く知られていることは、取消理由通知書に記載された証拠によっては何ら立証されていない旨を主張する。
しかしながら、取消対象商品及び役務の需要者は一般需要者であると考えられるところ、一般需要者が日頃目にする、テレビ、新聞、雑誌、ウェブサイト等において「モルック」の片仮名がフィンランド発祥の投てき競技の名称として相当数紹介されているのは前記1(1)ないし1(3)のとおりであって、これらの記事によって「モルック」の片仮名が当該競技の名称として一般需要者に知られていることは十分に認められるものである。
(3)本件商標権者は、本件取消理由通知書で示された証拠は、そのほとんどが、本件商標権者から「モルック」の文字の使用の許諾を受けている日本モルック協会による公式大会又は日本モルック協会の公認団体若しくは友好団体が主催する大会であるか、競技に正規品を使用しているものに係る記事等である旨主張する。
しかしながら、前記1(1)及び1(2)で挙げた証拠には本件商標権者の名称が記載されているものもあるが、「モルック」の片仮名自体は投てき競技の名称という態様で表示されており、それらの競技の主催が、日本モルック協会の公認団体若しくは友好団体が主催する大会であるか、当該競技に正規品を使用しているものであったとしても、上記認定が左右されるものではない。
(4)本件商標権者は、仮に本件商標が商標法第3条第1項に該当しても、本件商標は本件商標権者の業務に係るゲームを指称するものとして広く知られていたということであり、同条第2項の規定により商標登録を受けることができる旨を主張する。
そこで、本件商標の商標法第3条第2号該当性について検討する
我が国で販売されている、本件商標権者商品には「モルック」の片仮名が付されていることが認められる(乙62)。
しかしながら、本件商標権者の主張によれば、本件商標権者商品の本件商標の登録査定前である2018年ないし2022年における日本への輸出数は合計で84,781個であるところ、当該主張のとおりの輸出数であったとしても、その数は多いものとはいえない。
また、本件商標権者及びOHSサプライにおいて、本件商標権者商品が展示会や見本市に出展されていたとしても、その出展ブース等を目にする人数は不明である。
さらに、本件商標権者が国際モルック連盟及び日本モルック連盟に商標「Molkky」およびその翻訳(「モルック」の片仮名を含む。)の使用について使用許諾を与えている(乙41、乙54)としても、我が国において「モルック」の片仮名は、前記1のとおりフィンランド発祥の投てき競技の名称として広く知られているものといえるから、本件商標が使用をされた結果、本件商標権者の業務に係る商品又は役務であることを認識するに至っていたとはいい難く、本件商標が商標法第3条第2項の要件を満たすものとは認められない。
(5)したがって、本件商標権者の主張はいずれも認めることができない。
以上のとおり、本件商標は、その指定商品及び指定役務中、第28類「ゲーム用具及びおもちゃ,テレビゲーム機,体操用具及び運動用具」及び第41類「全指定役務」について、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、商標法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録は取り消されるべきものである。
そして、本件商標のその余の指定商品については、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第7号に違反して登録されたものではなく、他にその登録を取り消す理由はないから、商標法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。