結論テキスト
登録第6895307号商標の商標登録を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025900083 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本件登録第6895307号商標(以下「本件商標」という。)は、「波乗りレモン」の文字を標準文字で表してなり、第30類「レモンを加味したアイスクリーム用凝固剤,レモンを加味した家庭用食肉軟化剤,レモンを加味したホイップクリーム用安定剤,レモンを加味した食品香料(精油のものを除く。),レモンティー,レモンを加味した茶飲料,レモンを加味したコーヒー,レモンを加味したコーヒー飲料,レモンを加味したココア,レモンを加味した氷,レモンを加味した氷(凍結水),レモンを加味した菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),レモンを加味したパン,レモンを加味したペストリー,レモンを加味したコンフェクショナリー,レモンを加味したチョコレート,レモンを加味したアイスクリーム,レモンを加味したシャーベット,その他のレモンを加味した氷菓,チョコレートで覆われたレモンを加味したナッツ菓子,レモンを加味したサンドイッチ,レモンを加味した中華まんじゅう,レモンを加味したハンバーガー,レモンを加味したピザ,レモンを加味したホットドッグ,レモンを加味したミートパイ,レモンを加味したみそ,レモンを加味したウースターソース,レモンを加味したグレービーソース,レモンを加味したケチャップソース,レモンを加味したしょうゆ,レモンを加味した食酢,レモンを加味した酢の素,レモンを加味したそばつゆ,レモンを加味したドレッシング,レモンを加味したホワイトソース,レモンを加味したマヨネーズソース,レモンを加味した焼肉のたれ,レモンを加味した角砂糖,レモンを加味した果糖,レモンを加味した氷砂糖(調味料),その他のレモンを加味した調味料,レモンを加味した砂糖,レモンを加味した麦芽糖,レモンを加味したはちみつ,レモンを加味したぶどう糖,レモンを加味した粉末あめ,レモンを加味した水あめ,レモンを加味したごま塩,レモンを加味した食塩,レモンを加味したすりごま,レモンを加味したセロリーソルト,レモンを加味したうま味調味料,レモンを加味した香辛料,レモンを加味したアイスクリームのもと,レモンを加味したシャーベットのもと,レモンを加味したコーヒー豆,レモンを加味した穀物の加工品,レモンを加味したチョコレートスプレッド,レモンを加味したぎょうざ,レモンを加味したしゅうまい,レモンを加味したすし,レモンを加味したたこ焼き,レモンを加味した弁当,レモンを加味したラビオリ,レモンを加味したイーストパウダー,レモンを加味したこうじ,レモンを加味した酵母,レモンを加味したベーキングパウダー,レモンを加味した即席菓子のもと,レモンを加味したパスタソース,レモンを加味した食用酒かす,レモンを加味した米,レモンを加味したパスタ,レモンを加味しためん類,レモンを加味した脱穀済みのえん麦,レモンを加味した脱穀済みの大麦,レモンを加味した食用グルテン,レモンを加味した食用粉類,レモンを加味した穀物の加工品,ナッツ及び乾燥果実を主原料とするレモンを加味した穀物の加工品」を指定商品として、令和6年5月1日に登録出願、同7年1月9日に登録査定、同年2月12日に設定登録されたものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、以下のとおりであり、登録商標である(1)については、現に有効に存続している。
(1)登録第6812228号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲のとおり
指定商品:第31類「静岡県牧之原市地域で生産されたレモン,レモンの苗,レモンの種子」
登録出願日:令和5年11月7日
設定登録日:令和6年6月7日
(2)「静岡県牧之原市地域で生産されたレモン」(以下「使用商品」という場合がある。)に使用する商標「波乗りレモン」の文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)
以下、引用商標1及び2をまとめて「引用商標」という場合がある。
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第37号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
(1)申立人及び静岡県牧之原市について
申立人は、2021年に創業され、有機農業を基軸とした農業プロジェクトなどを推進している企業である(甲3の1・2)。申立人は、取組のひとつとして、静岡県牧之原市において、耕作放棄茶園を脱炭素型レモン農場に転換する事業を行っている(甲3の1・3)。同事業は、牧之原市からの委託により2022年に開始された「荒廃農地の収益化」と「環境にやさしい農業」を推進し、農業経営の安定化を目指しつつ、農業を起点とした新しい産業の創出を図ることで、牧之原市の持つ魅力を向上させ、併せてゼロカーボンシティの実現を目指すことを目的としている「オーガニックまきのはら推進事業」の一環として行われているものである(甲3の3~5)。これらの様子については、2022年11月9日及び同年12月22日付中日新聞でも報道されている(甲4)。2023年1月にはクラウドファンディングも実施され、地域との連携を強化しながら取組が進められている(甲5)。なお、申立人は、牧之原市の地域資源を活用したビジネスプランを全国及び海外から募集する「まきチャレ2023」において、同取組について、エムスクエア・ラボ賞を受賞している(甲6)。また、同取組は、温室効果ガス排出削減を目指す国の「J-クレジット制度」の登録認証を受けており(甲7の1~3)、株式会社伊藤園にも賛同され、支援が表明されている(甲7の4)。
耕作放棄茶園を脱炭素型レモン農場に転換する事業が行われている背景には、お茶の名産地である牧之原市において、茶農家の高齢化、茶価の低迷、加工の高コスト化、消費者のお茶離れ、転作の難しさなどから茶農家の離農と耕作放棄茶畑の増加が問題となっていることが挙げられる(甲5、甲8、甲9の1)。かかる状況下、レモンはお茶と同じ急斜面でも生育することができ、レモンの収穫時期は茶栽培の繁忙期と重ならないことから、お茶の栽培をしながら、レモンも栽培でき、農業を長く続けられるメリットがある(甲5、甲8、甲9の1)。そのため、牧之原市により、お茶に次ぐ市の特産品とすべく、後述する引用商標を使用したレモンのブランド化が推進されている(甲7の2・3、甲8)。また、同取組は、単にレモンの特産品化のみを狙いとしているのではなく、「耕作放棄地を減らし、働きたい人が働き続ける環境を整えること」、「魅力ある産地づくりで新たな農業担い手を増やすこと」、「地元のレストランや商品とコラボして、地域の産品・土産品をつくる」ことなどを目的としており、広く地域に貢献することを志向している(甲9の1、甲11、甲24の1)。
(2)引用商標について
上述した牧之原市の「オーガニックまきのはら推進事業」傘下の組織として、レモン栽培農家を構成員とする「牧之原市レモン部会」が2023年8月に設立された(申立人も構成員の一員である)(甲8の1・3・4、甲10の1、甲11)。なお、2024年1月には、「牧之原市レモン部会」は後述する引用商標の採択にともない「波乗りレモン部会」に改名されている(甲10の2)(以下、「牧之原市レモン部会」及び「波乗りレモン部会」を「レモン部会」という)。その後、レモン部会の構成員によりアイデアを出し合い、牧之原市はサーフポイントが多数点在し、サーフィンをする場所として有名であることにちなみ、牧之原のおいしいレモンを波にのせて届けていきたいという想いから、生産レモンについて「波乗りレモン」というブランド名が採択された(甲8の3・4、甲9の1)。同年10月19日、20日には、「べったら市」(東京日本橋の宝田恵比寿神社周辺で毎年10月19日・20日に開催される伝統行事)にて、「波乗りレモン」というブランド名として、レモンを初出店、初販売している(同初出店には、牧之原市長も参加している)(甲12)。そして、同年10月23日に引用商標1が登録出願されている(申立人がレモン部会を代表して商標権を管理すべく、申立人名義にて登録出願している)。これらの様子について、本件商標の登録出願日前である2023年11月27日には、SBSテレビ(静岡テレビ)の番組で既に報道され、「牧之原市をあげて、地元のレモンをPRしようと2023年の夏「波乗りレモン」というブランド名を決めました。サーフィンが盛んな土地柄から名付けました。」、「雑草や害虫の発生など何かとトラブルにつながる耕作放棄地を減らし収入も得られるレモンの栽培。お茶のまちでSDGSにかなった新たな名産が生まれようとしています」と紹介されている。また、地元の飲食店とコラボレーションした新メニューづくり(牧之原地域産のレモンを使ったケーキ)についても報道されている(甲13、甲14)。さらに、同番組で牧之原市長が同取組について、支援していく旨の発言をしている(甲14)。上述した引用商標1だけではなく、引用商標2も2023年から継続して使用されている(甲14、甲19の1、甲20の1・2・12)。
本件商標の登録出願日前である2023年11月2日から同年12月31日まで、「まちづくり・地域活性化」をカテゴリーとして、牧之原地域産のレモンを引用商標「波乗りレモン」としてご当地ブランド化を進めることをうたい、第1回目のクラウドファンディングを行っている(134人の支援により、658,000円の資金を集めた)(甲9の1)。返礼品として、レモンやレモンを使用したケーキを提供し、同ケーキにも本件商標の登録出願日前に引用商標1と同一の商標を使用している(甲9の1、甲15)。さらに、レモンの収穫イベントや苗植えイベントも行った(甲16)。そして、第2回目のクラウドファンディングも、「まちづくり・地域活性化」をカテゴリーとして、2024年10月23日から2025年1月10日まで行われた(139人の支援により、695,800円の資金を集めた)(甲17)。返礼品として、レモンを使用した「レモン緑茶」、「ケーキ」、「はちみつレモンビスケット」、「はちみつレモンチーズケーキ」、「シュトーレン」等様々なコラボ商品を用意した(甲17)。同クラウドファンディングについては、牧之原市の定例記者懇談会の資料にて紹介されている(甲11、甲18)。
上記2回のクラウドファンディングは、「地域おこし協力隊」として、牧之原市から委嘱を受けた人物が中心となってプロジェクトを進めている(甲9、甲17、甲23の3)。
レモンを使用した加工品はクラウドファンディングの返礼品以外にも、本件登録出願日前にキッチンカーで「波乗りレモネード」、「波乗りレモンビール」、「ホット波乗りレモンティー」を販売するなどしている(甲19の1)。また、2024年7月16日から18日に東京ビッグサイトで開催された「CAFERESJAPAN2024」の申立人ブースにて、上述したクラウドファンディングの返礼品としても用意された「レモン緑茶」も展示された(甲19の2)。その他、クラウドファンディング経由に限らず、「レモンケーキ」や「スフレ」等の販売や広告もされている(甲19の3~7、甲23の2)。
主に市場を通さず、飲食店や菓子メーカーに直接販売している場合が多いものの、上述した「べったら市」を皮切りに(甲12の1)、2023年11月3日に東京都根津の朝市(甲20の1)、同年11月12日に茨城県つくば市のマルシェ(甲20の2)、同年11月19日に牧之原市のイベント(甲20の3)、同年12月8日から12月10日に東京都渋谷区のマーケット(カフェ)(甲20の4)、同年12月24日に静岡県浜松市のイベント(甲20の5)にて、販売を行っている。その後も、名古屋金山駅の物産展(甲20の6)、千葉県山武市のイベント(甲20の7)、東京農業大学のイベント(甲20の8・9)、東京都日本橋のイベント(甲20の10・11)、東京都日本橋のべったら市(甲20の12)、福島県南相馬市の交流イベント(甲20の13)、富士山静岡空港の物産展等(甲20の14・15)など全国各地で販売している(甲10の2~4)。名古屋の物産展、千葉県山武市のイベント、東京都日本橋のイベントにおいては、レモンを使用した加工品も販売しており、これらの商品について、引用商標1と同一の商標も使用した場合もある(甲20の6・7・10・11)。さらに、静岡県内のイオンリテール8店舗でも販売が行われた(甲8の2、甲21)。
また、「地域の魅力発信」「地域貢献活動の充実」「地域人材の育成」を狙いとし、地域でのボランティア活動を展開している牧之原市内にある相良高等学校が2024年8月に生産者として「レモン部会」に加入した(甲22の1、甲10の3)。生徒は実際に畑を持ち、レモン栽培に取り組む他、レモン部会農家への農作業実習や商品開発といった実践的な授業を実施しており(甲22の1~5)、同校がつくる紅茶と引用商標とのコラボも図っている(甲8の3)。これらの取組は、生徒の発表資料としてまとめられている(甲22の6)。さらに、牧之原市内にある勝間田小学校でも授業を行っている(甲22の7)。
これらの取組については、2024年7月24日付日本経済新聞(甲8の4)、同年9月3日付、同年12月18日付中日新聞(甲8の2、甲23の1)、同年9月18日付、同年10月16日付、同年10月31日付、同年12月6日付、2025年1月31日付静岡新聞(甲7の2、甲8の1、甲21、甲23の2・3)、2024年12月22日付、2025年2月8日付毎日新聞(甲7の3、甲8の3)でも報道がされている。 また、2023年11月27日付SBSテレビ(静岡放送)(甲13、甲14)、2024年6月11日付、同年11月5日付、同年11月28日付、同年12月10日付静岡第一テレビ(甲24の1・2・5・6・7~9、甲14)、同年10月17付、同年12月21日付テレビ静岡(甲24の3・4・10・11)でも放映がされている。
さらに、農林水産省の地方支分部局である関東農政局が「茶業の発展・課題解決のために国の補助事業を活用している取組」の事例をまとめた資料に引用商標に関する事業が一例として紹介されている(甲25)。
上述した事実を考慮すると、引用商標に関する取組は、牧之原地域の地域活性化を目的とするものとして極めて公益性の高いものであるといえる。また、引用商標の登録出願日前に、SBSテレビ(静岡放送)でも報道され、本件商標の登録出願日から3月も経過しない2024年7月24日付で全国紙である日本経済新聞に報道されていること、さらには、後述する国産レモン、とりわけ生産量の少ない静岡県産のレモンが取引需要者の注意を引くと考えられる事情を鑑みると、本件商標の登録出願日時点において、取引需要者の間で引用商標は広く認識されていたといえる。また、本件商標の登録査定時までに数々の新聞等で報道されているとおり、登録査定時においては、取引需要者の間で引用商標はさらに広く認識されていた状態であったことは明らかである。また、2023年のレモン部会の発足から、牧之原市の近隣の市区町村の農家の加入の受け入れも行い、栽培面積は当初から、6倍以上に拡大した(甲8の3・4、甲23の1・3)。周辺の自治体も含め全国トップクラスのレモンの産地化を目指していることから(甲8の4)、これから益々、引用商標の周知性は高まり、引用商標に関する事業は牧之原地域の活性化に貢献していくことは容易に推認される。
(3)取引の実情等について
日本におけるレモンの消費量のうち、輸入品が大部分を占めており、約80%以上が輸入品で賄われている。また、広島県、愛媛県、和歌山県の3県で、国内生産量の約80%以上を占めている。このことから、取引の実情として、国産レモン、さらにいえば、静岡県産のレモンは、出荷数が限られていることがわかる。また、近年輸入品と比べて輸送時間が短く収穫後の防カビ剤を使わない国産品は、皮ごと食べる際の安心感があることなどから需要が増大していることも考慮すると、静岡県産のレモンは取引需要者の注目を集めると考えることが相当である(甲26)。
また、レモンを用いた地域活性化の先例ともいえる広島県又は瀬戸内沿岸の地域で生産されているレモン「広島レモン(瀬戸内広島レモン、瀬戸内レモン)」においては、生産者と地元企業や地元以外の企業ともコラボレーションした加工品が多数販売されており、地域活性化に寄与している(甲27の1~6)。さらに、レモン以外の果実において、果実ブランド名を生鮮果実と加工品に一貫使用し、ブランドとして保護している例は多数存在する(甲27の7~16)。
そうすると、これらの果実ブランド名は、加工品も含めて、地域社会の共有財産的な性格を帯びており、その育成・維持には自治体や地元農家らの長年の努力と公的支援が投じられており、品質保証と信用の積み重ねによって初めて成立しているといえる。そのため、果実ブランドと無関係な第三者が横取り的に果実の加工品にかかる指定商品を商標登録する行為は、社会的妥当性を欠くといえる。また、以上の事例から明らかなように、果実のブランド名は生鮮果実とその加工品とで共通に使用され、市場において一体のブランドイメージを形成している。取引需要者は、例えば「スカイベリーケーキ」や「夕張メロンゼリー」といった商品名を見れば、それらが元の生鮮果実と何らかの関係(原料・使用許諾など)を有する商品だと認識する。これは果実とその加工食品との間に強い連携があることを意味する。
牧之原地域においても、レモンそのものだけではなく、「波乗りレモン」ブランドにかかるレモンを活用した加工品も含めた特産品化、地域活性化を志向している(甲8の4、甲11)。そうすると、同取組に無関係の第三者が「波乗りレモン」の語をレモンの加工品に独占して使用することは、牧之原地域の地域活性化にかかる公益を害することにつながると考えることが相当である。また、レモン部会を中心とする引用商標の出所識別機能及び品質保証機能を保護発展させるという共通の目的のもとに結束している引用商標の使用主体の管理外で無関係の第三者が「波乗りレモン」をレモンの加工品に使用することは、取引需要者にこれらの出所が同一であると誤認されることや、上記使用主体と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務にかかる商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずる可能性があると考えることが相当である。
(4)本件商標権者及び異議申立の経緯について
本件商標権者は、牧之原市に隣接する静岡県島田市を所在地とする日本茶OEM製造等を行う企業である(甲29の1・2)。また、代表取締役を共通とするお茶の観光施設であるグリンピア牧之原は牧之原市に所在している(甲29の3・4)。2024年9月3日にレモン部会の構成員である農家から、本件商標権者が本件商標を登録出願していることを発見し、牧之原市役所に問い合わせをした。そこで、関係者が一度本件商標権者と話し合いの場を設けた方がよい、という結論になり、2024年9月25日に市役所職員と本件商標権者で打ち合わせすることが決定した。また、その他できることがないか検討し、「波乗りレモン」(標準文字)を2024年9月6日付で、第32類、第33類、第43類を指定区分として登録出願した。同9月25日付の打ち合わせにて、「なぜ、登録出願をしたのか」という市役所職員の問いに対して、本件商標権者は「波乗りレモンの商標が申請されてなかったからお茶だけは先にとりあえず取っておいてで、なんなら共有しましょうっていうつもりですよ」という発言をした(甲30)。しかし、その後に開かれた申立人と市役所職員と本件商標権者が参加した2024年10月10日付の打合せにおいて、申立人が、本件商標に関する使用許諾を申し出、本件商標権者から了承する旨の回答があったものの、その後具体的な進展はなかった(甲31)。さらに、2025年1月16日には、牧之原市職員により、本件商標が商標登録された場合、商標権の買い取りができないか口頭で相談し(甲32の1)、本件商標権者から前向きに検討しますと回答があったものの具体的な進展はなかった。そして、本件商標の商標登録後である2025年2月20日に、地域農産物の普及の観点と販売における混乱を防ぐ観点から、本件商標をレモン部会(代表として商標権を管理している申立人)に移転して欲しい旨を申立人からメールにより申出をした(甲32の1・2)。しかし、2月21日付で本件商標権者の代表取締役よりメールによる返信があり「ご主旨了解しました。弊社担当と確認してみます。」と回答があったもののその後の進展はなかった(甲32の3)。
さらに、2025年3月17日には、申立人の代理人を通じて、本件商標権者に対して、「本件商標に対して異議申立の準備をしているものの、可能な限り穏便に話し合いにて解決したいと考えていると記載したうえで、具体的な話し合いに応じてくれる場合には、2025年3月31日までに連絡して欲しい」旨を記載した書面を内容証明郵便にて送付した(甲33)。しかし、それをもってしても、本件商標権者からの回答・連絡はなく、本異議申立をした次第である。上述した事実を考慮すると、本件商標権者は明確に牧之原地域で地域活性化のために行われている「波乗りレモン」の存在を知ったうえで、本件商標の登録出願を行い、商標権を共有するつもりであるという旨の発言をしていたものの、そのつもりはなく独占するつもりだったといえ、本登録出願行為は、剽窃的なものであるといえる。牧之原市長も「波乗りレモン」のブランド名が第30類にかかる商品について、独占されることを憂慮しており、本件が関係者にとって利益となるように解決されることを望んでいる(甲34)。
(5)商標法第4条第1項第7号について
牧之原市をあげて、牧之原地域産のレモンを特産品にすべくブランド化を進めている。また、地域活性化のために、申立人は「オーガニックまきのはら推進事業」として牧之原市から委託をうけ、引用商標に関する事業を進めている。一方、本件商標権者は、上述の2024年9月25日付の打合せにおける発言等を考慮すれば、牧之原市をあげて地域活性化のために引用商標のブランド化が進められていたことを周知していたことは明らかである。また、後に共有するつもりである旨の発言をしていたにも関わらず、使用許諾や移転や話し合いの申し出にも対応しなかった(甲31)。
つまり、本件商標権者は、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、引用商標にかかる事業の遂行を阻止し、また、話題と人気を博していた同事業に便乗し、第30類にかかる「波乗りレモン」が登録出願されていないことを奇貨として、本件商標を登録出願したものといわざるをえない。
そうすると、これらの登録出願の経緯には、著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることは、公正な競業秩序を害するものであって、公序良俗を害するおそれがある商標というべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(6)商標法第4条第1項第19号について
引用商標は、本件商標の登録査定時はもとより、本件商標の登録出願時において、本件商標権者にとって他人の業務にかかる少なくとも「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」を表示するものとして、日本国内において、取引需要者に広く認識されていたといえる。また、本件商標と引用商標は同一又は類似であるといえる。他方、上述のとおり、引用商標の要部となる文字部分「波乗りレモン」はレモン部会の構成員により考案された極めて造語性の高いものである(甲8の3・4、甲9の1)。そして、引用商標を使用した商品は、これから牧之原地域の特産品として益々展開していくことを計画していたものである(甲8の4)。
さらに、上述のとおり、本件商標権者は、引用商標の存在を知っており、使用許諾や移転や話し合いの申し出にも応じなかった。
そうすると、本件商標権者が、引用商標にかかる事業の遂行を阻止し、また、話題と人気を博していた同事業に便乗して登録出願したことは明らかであって、本件商標権者が引用商標を使用した場合、引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力を毀損させるおそれがあるといえる。そのため、本件商標権者は、本件商標を不正の目的をもって使用するものと推認せざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(7)商標法第4条第1項第11号について
引用商標1は、本件商標との関係において、他人の先願登録商標であるところ、本件商標と引用商標1とは類似する。そして、後述するとおり、引用商標1の指定商品「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」は、本件商標の指定商品「レモンティー,レモンを加味した茶飲料,レモンを加味した菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)」など第30類の全ての商品と類似するものといえる。そのため、本件商標は、他人の先願登録商標である引用商標1と類似の関係にある。
引用商標1の指定商品「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」は、本件商標の指定商品とは原材料と加工品の関係にあたり、近年では、6次産業化の進展により、農作物の生産者自らが加工・販売まで行う傾向が高まっており、レモンを生産・販売する農家が、レモンケーキ等の加工食品を一貫して製造・販売している事例が全国で数多く存在する(甲28)。また、これらの商品は、いずれも清涼感や香り、味わいを楽しむ飲食品であり、用途が共通する。さらに、一般消費者が日常的に購入・摂取するものである点において需要者層が共通する。
以上によれば、「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」は、本件商標の指定商品とは製造・販売とが、同一事業者によって行われている例が多数みられ、これらの用途は共通し、販売場所と提供場所は同一である場合が多く、需要者の範囲は実質的に重なっているということができる。さらに、取引の実情として、果実のブランド名は生鮮果実とその加工品とで共通に使用され、市場において一体のブランドイメージを形成している。
これらを踏まえると、引用商標1の指定商品「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」と、本件商標の指定商品に、同一又は類似の構成の商標を使用する場合には、同一の営業主体の製造・販売又は提供する商品・役務と取引者、需要者に誤認されるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
(8)商標法第4条第1項第10号について
引用商標は、本件商標の登録査定時はもとより、本件商標の登録出願時において、本件商標権者にとって他人の業務にかかる少なくとも「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」を表示するものとして、取引需要者の間に広く認識されていたといえる。また、本件商標と引用商標は同一又は類似であるといえ、上述のとおり、引用商標の使用商品「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」と、本件商標の指定商品とは類似する商品であるといえる。さらに、本件商標の登録出願日前から、第30類に属する商品「ケーキ」に引用商標1と同一の商標が使用されており(甲15の2)、取引の実情として、果実のブランド名は生鮮果実とその加工品とに共通に使用され、市場において一体のブランドイメージを形成していることを考慮すると、第30類に属する商品「ケーキ」等についても、引用商標と同一の商標は、本件商標の登録査定時及び登録出願時において、他人の業務にかかる商品を表示するものとして取引需要者の間に広く認識されていたといえる。
そうすると、本件商標は、他人の業務に係る「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」や「静岡県牧之原地域で生産されたレモンを使用した第30類に属するケーキ等の商品」を表示するものとして取引需要者の間に広く認識されている引用商標に類似する商標であり、かつ、その商品に類似する商品について使用するものといえる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(9)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」を表示するものとして、取引需要者に広く認識され、本件商標と引用商標とは、類似する商標であるといえ、文字部分の要部が完全に同一の構成文字からなるものであることから類似性の程度は非常に高いといえる。また、引用商標を構成する「波乗りレモン」の文字は、レモン部会が独自に考案した造語であり、独創性の程度は非常に高い。
また、引用商標の使用商品「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」と本件商標の指定商品とは原材料と加工品の関係にあたり、現実に「牧之原地域で生産されたレモン」を加工した第30類にかかる商品を販売等している実情がある(甲15、甲17、甲19の2~6、甲20の6・7・10・11)。
さらに、本件商標の登録出願日前においても第30類に属する商品「ケーキ」に引用商標1と同一の商標が使用されている(甲15の2)。また、果実のブランド名は生鮮果実とその加工品とに共通に使用され、市場において一体のブランドイメージを形成している実情も存在する。
そうすると、本件商標権者によって本件商標が本件商標の指定商品に使用された場合には、その商品に接する取引需要者は、取引上要求される一般的な注意をもってしても、その商品がレモン部会を中心とする引用商標の出所識別機能及び品質保証機能を保護発展させるという共通の目的のもとに結束している引用商標の使用主体の業務にかかる商品であるとか、同使用主体と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるなどと誤認し、商品の出所について混同を生ずる可能性は十分に予想され、また、引用商標の指定商品と本件商標の指定商品が、原材料と加工品との関係にある場合であって、商標法第4条第1項第15号該当性が認められた判断があり、本件商標のみが別異に取り扱われる理由はないといえる(甲37)。
したがって、本件商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(1)引用商標の周知著名性について
ア 申立人の提出に係る証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。
(ア)申立人は、2021年に創業され、有機農業を基軸とした農業プロジェクトを推進している企業であり、その取組のひとつとして、静岡県牧之原市からの委託により2022年に開始された「荒廃農地の収益化」と「環境にやさしい農業」を推進し、農業経営の安定化を目指しつつ、農業を起点とした新しい産業の創出を図ることで、牧之原市の持つ魅力を向上させ、併せてゼロカーボンシティの実現を目指すことを目的としている「オーガニックまきのはら推進事業」の一環として、耕作放棄茶園を脱炭素型レモン農場に転換する事業を行っている(甲3、甲4)。
(イ)広報まきのはら(2024年12月:甲6の2)には、「まきチャレから生まれた牧之原市の新しいビジネス」のページに「株式会社シンコムアグリテック」の記載の下、「現在40軒以上の農家が、市のご当地ブランド「波乗りレモン」を栽培しています。」の記載があるが、本件商標の登録出願後のものである。
(ウ)静岡新聞DIGITAL(2025年1月31日:甲7の2)には、「レモン栽培でJ-クレジット「バイオ炭」活用農法に認証 売却で農家の収益増へ 牧之原市」の見出しの下、「栽培したレモンは環境に配慮したブランド「波乗りレモン」として全国展開を目指す。」の記載、毎日新聞(2025年2月8日:甲7の3)には、「バイオ炭でCO2削減へ 「波乗りレモン」オーガニックまきのはら 「Jクレジット制度」登録認証/静岡」の見出しの下、「転作に取り組む「レモン部会」には市内外の50軒を越える農家が参加し、「波乗りレモン」の名称で既に出荷を始めている。」の記載があるが、いずれも本件商標の登録出願後のものである。
(エ)中日新聞(2024年12月18日)、毎日新聞(2024年12月22日)、日本経済新聞(2024年7月24日)には、「波乗りレモン」に関する記事があるが、いずれも本件商標の登録出願後のものである(甲8の2~4)。
(オ)牧之原市の「オーガニックまきのはら推進事業」傘下の組織として、レモン栽培農家を構成員とする「牧之原市レモン部会」が2023年8月に設立された(申立人も構成員の一員である)(甲8の1・3・4、甲10の1、甲11)。その後、2024年1月17日に開催された「牧之原市レモン部会 第2回総会」において、「牧之原市レモン部会」を「波乗りレモン部会」に改正することが議論され、本件商標の登録出願後である2024年9月20日に名称を変更した「波乗りレモン部会」として、第3回総会が開催された(甲10)。
(カ)CAMPFIREのウェブサイトには、引用商標1を表示したクラウドファンディング(第1回目)について、「このプロジェクトは、2023年11月2日に募集を開始し、2023年12月31日に募集を終了しました。」の記載がある。また、同活動報告ページには、「波乗りレモンのデビュー戦!」(2023年11月2日)として、東京都中央区日本橋の宝田恵比寿神社における「べったら市」(10月19日・20日)に出店、「波乗りレモンがTVデビュー!」(2023年11月22日)として「11/27(月)のSBSテレビ(静岡放送)のLIVEしずおかにて牧之原市のレモンが特集されます!(予定)」の記載、「リターン品が追加されました!初の波乗りレモンコラボ商品です。」(2023年12月4日)の記載、「ウィークエンドシトロン完成!!」(2024年2月23日)として、「古民家カフェとこ十和さんとの商品、ウィークエンドシトロンが完成しました!」の記載とともに当該商品の写真に引用商標1が表示され、「リターン品のレモン収穫イベントを実施しました!」(2024年1月14日)としてイベントの紹介、「苗植えイベント第2回目開催!」(2024年4月l7日)の紹介、「キッチンカーKALTENAさんとのコラボメニュ-を販売しました!」(2023年12月12日)として、「波乗りレモンmenu」が表示、「なりきり波乗りレモン!根津の朝市出店中!」(2023年11月4日)として、「波乗りレモン売ってます」の記載とともに引用商標1が表示されている写真が掲載され(甲12、甲13の2、甲15、甲16、甲19の1、甲20の1~5)、本件商標の登録出願前にこれらのイベントが牧之原市地域おこし協力隊により開催されている。
なお、第2回の波乗りレモンクラウドファンディングは、本件商標の登録出願後である(甲17)。
(キ)SBS 静岡放送(2023年11月28日)に、牧之原市について、「市をあげて、地元のレモンをPRしようと2023年の夏「波乗りレモン」というブランド名を決めました。」とするナレーション及び引用商標が表示された画像が放映された(甲13の1、甲14)。他の静岡放送及び静岡第一テレビで放映されたものは、本件商標の登録出願後のものである(甲14、甲24の1~11)。
(ク)上記(オ)の一部、(カ)及び(キ)以外の申立人の提出に係る証拠は、本件商標の登録出願後のものといえる。
イ 上記ア(ア)ないし(ク)の事実によれば、レモン栽培農家を構成員とする「牧之原市レモン部会」は本件商標の登録出願前に設立され、2024年1月17日に開催された「牧之原市レモン部会 第2回総会」において、「牧之原市レモン部会」を「波乗りレモン部会」に改正することが議論されたが、名称を「波乗りレモン部会」に変更した第3回の総会が開催されたのは、本件商標の登録出願後である。
そして、本件商標の登録出願前に、引用商標1を表示し、波乗りレモンに関するクラウドファンディング(第1回目)の募集を行い、各種イベントについては、牧之原市地域おこし協力隊が各所で活動をし、そのイベントに引用商標1を付した菓子等を提供しているものの、当該商品の製造、販売者は、特定できないものであって、また、引用商標に係るテレビ放映、新聞記事などは、本件商標の登録出願後のものがほとんどである。
また、引用商標に係る広告宣伝の方法や範囲、販売数量、売上額、市場シェアを示す証拠の提出はされていない。
さらに、引用商標は、波乗りレモン部会(申立人は、同部会の代表として商標権を管理していると主張している。)、牧之原市と関わりがあるものだとしても、具体的に何れの者の業務に係る商品を表示する商標であるのかは、判断できない。
そうすると、本件商標の登録査定時に牧之原地域で生産されたレモンについて、引用商標が使用されているとしても、引用商標は、本件商標の登録出願時に当該レモンについて、申立人あるいは何れの者の商標として、我が国及び外国における需要者の間に広く認識されていたとは認めることができない。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標について
本件商標は、「波乗りレモン」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「波乗り」の文字は「波に乗ること。板などを使って波頭に乗るあそび。サーフィン。」を、「レモン」の文字は「ミカン科シトロン類の常緑低木。」等(いずれも出典は「広辞苑 第七版」株式会社岩波書店)をそれぞれ意味する語であるから、その構成文字に相応して、「ナミノリレモン」の称呼を生じ、「サーフィンのレモン」の観念を生じるものである。
イ 引用商標1について
引用商標1は、別掲のとおり、波の上に乗っているレモンをモチーフとしたと思しき図形内に「波乗り」及び「レモン」の文字を上下二段に横書きし、その図形の左上部分に沿って「makinohara」の文字を、その図形の下部に「Surfing Lemon」の文字を配した構成よりなる図形と文字の結合商標である。
そして、その構成中、「波乗り」及び「レモン」の文字部分は、図形内中央に大きく目立つように表されており、他の文字とも分離して配置されているものであるから、外観上、看者の注意を引きやすいものといえる。
そうすると、引用商標1は、その構成全体として捉えられる場合のほか、「波乗り」及び「レモン」の文字部分が取引者、需要者に対して商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから、当該部分に着目し、他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することも許されるというべきである。
したがって、引用商標1は、その要部である「波乗り」及び「レモン」の文字部分(以下「引用商標1の要部」という。)に相応して、本件商標と同様に、「ナミノリレモン」の称呼を生じ、「サーフィンのレモン」の観念を生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標1との類否について
本件商標と引用商標1とを比較するに、両者は、上記ア及びイのとおりの構成よりなるところ、全体の外観において、図形部分、「makinohara」及び「Surfing Lemon」の文字の有無においての差異、及び一段書きと二段書きの差異があるものの、「波乗りレモン」の文字を共通にするから近似した印象を与え、本件商標と引用商標1の要部の比較においては、「ナミノリレモン」の称呼及び「サーフィンのレモン」の観念を共通にするものである。
そうすると、本件商標と引用商標1とは、全体の外観において近似した印象を与え、本件商標と引用商標1の要部との比較においては、「ナミノリレモン」の称呼及び「サーフィンのレモン」の観念を共通にするものであるから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、商品の出所について誤認混同を生じるおそれのある、互いに類似の商標というのが相当である。
エ 本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品との類否
本件商標の指定商品は、上記1のとおり、第30類に属する「レモンを加味した飲料・菓子」等「レモンを加味した商品」であり、他方、引用商標1の指定商品は、上記2(1)のとおり、第31類に属する「静岡県牧之原地域で生産されたレモン,レモンの苗,レモンの種子」である。
申立人は、「引用商標1の指定商品中「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」は、本件商標の指定商品とは原材料と加工品の関係にあたり、近年では、6次産業化の進展により、農作物の生産者自らが加工・販売まで行う傾向が高まっており、レモンを生産・販売する農家が、レモンケーキ等の加工食品を一貫して製造・販売している事例が全国で数多く存在し(甲28)、これらの商品は、いずれも清涼感や香り、味わいを楽しむ飲食品であり、用途が共通する。さらに、一般消費者が日常的に購入・摂取するものである点において需要者層が共通する。また、一般消費者が日常的に購入・摂取するものである点において需要者層が共通する。以上によれば、「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」は、本件商標の指定商品とは製造・販売とが、同一事業者によって行われている例が多数みられ、これらの用途は共通し、販売場所と提供場所は同一である場合が多く、需要者の範囲は実質的に重なっているということができる。さらに、取引の実情として、果実のブランド名は生鮮果実とその加工品とで共通に使用され、市場において一体のブランドイメージを形成している。これらを踏まえると、引用商標1の指定商品中「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」と、本件商標の指定商品に、同一又は類似の構成の商標を使用する場合には、同一の営業主体の製造・販売又は提供する商品・役務と取引者、需要者に誤認されるおそれがあるというべきである」旨述べ、引用商標1の指定商品中「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」は、本件商標の指定商品「レモンティー,レモンを加味した茶飲料,レモンを加味した菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。)」など第30類の全ての商品と類似する旨主張する。
しかしながら、果実の生産者が、果実を加工した商品を製造から販売まで一貫して行っている例が存在し、果実と加工食品は、原材料と完成品との関係にあるとしても、果実とその加工した商品は、その生産者、生産場所を異にし、一般的には、流通経路、販売経路等も異にするものであるから、本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品とは、類似するとはいえない。
オ 小括
以上よりすれば、本件商標と引用商標1の商標が類似する商標であるとしても、本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品とは類似しないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 引用商標の周知性
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人あるいは何れの者の業務に係る商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているとはいえないものである。
イ 本件商標と引用商標との類否について
上記(2)のとおり、本件商標と引用商標1は、互いに類似の商標である。
また、本件商標と引用商標2を比較するに、本件商標は、上記(2)アのとおりの構成よりなり、引用商標2は、「波乗りレモン」の文字を横書きしてなるところ、外観において構成文字を共通にするから近似した印象を与え、「ナミノリレモン」の称呼及び「サーフィンのレモン」の観念を共通にするものであるから、これらの外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、商品の出所について誤認混同を生じるおそれのある、互いに類似の商標である。
ウ 本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品及び引用商標2の使用商品との類否
本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品は、上記(1)エのとおり、類似しない商品である。
また、引用商標2の使用商品は、引用商標1の指定商品中「静岡県牧之原地域で生産されたレモン」と同一であるところ、引用商標1の該指定商品が、本件商標の指定商品と類似しない商品であると同様に、本件商標の指定商品と類似しない商品である。
エ 小括
以上よりすれば、本件商標と引用商標とは、類似の商標であるとしても、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人あるいは何れの者の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものとはいえず、また、引用商標1の指定商品及び引用商標2の使用商品は、本件商標の指定商品と類似しない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(4)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 引用商標の周知性の程度
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人あるいは何れの者の業務に係る商品を表示するものとして、我が国における需要者の間に広く認識されているとはいえないものである。
イ 本件商標と引用商標の類似性の程度
上記(3)イのとおり、本件商標と引用商標は、類似の商標であるから、その類似性の程度は高いものである。
ウ 本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品及び引用商標2の使用商品の関連性
上記(2)エ及び上記(3)ウのとおり、本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品及び引用商標2の使用商品は、類似しない商品であるから、商品の関連性は低いものである。
エ 小括
以上よりすれば、本件商標と引用商標の類似性の程度は高いとしても、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人あるいは何れの者の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものとはいえず、本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品及び引用商標2の使用商品の関連性は低い。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、需要者等が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が引用商標の使用者あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないとするのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(5)商標法第4条第1項第19号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人あるいは何れの者の商標として、我が国又は外国における需要者等の間に広く認識されているとはいえないものである。
そして、申立人が提出した証拠からは、本件商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他不正の目的をもって使用するものと認めるに足りなく、ほかに具体的証拠も見いだせない。
したがって、本件商標と引用商標とは、類似の商標であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(6)商標法第4条第1項第7号該当性について
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人あるいはいずれの者の業務に係る商品を表示するものとして、需要者等の間に広く認識されている商標とはいえないものである。
そして、申立人は、本件商標権者の2024年9月25日付の打合せにおける発言等を考慮すれば、牧之原市をあげて地域活性化のために引用商標のブランド化が進められていたことを周知していたことは明らかであり、後に共有するつもりである旨の発言をしていたにも関わらず、使用許諾や移転や話し合いの申し出にも対応しなかったことより、公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、引用商標にかかる事業の遂行を阻止し、また、話題と人気を博していた同事業に便乗するものである旨主張し、申立人及び牧之原市職員と商標権者との打ち合わせ音声データから文字を起こしたもの等、打ち合わせしたときの資料を提出している。
しかしながら、提出された証拠は商標権者の発言を記録したのみで、その発言を補強する客観的な証拠や、商標権者が公共的利益を損なう結果に至ることを知りながら、引用商標にかかる事業の遂行を阻止したことを裏付ける客観的な証拠の提出もないことから、申立人の主張を認めることはできない。
以上からすると、申立人が提出した証拠からは、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く等の事実は見当たらず、本件商標をその指定商品について使用することが、社会の一般道徳観念に反するものともいえず、その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる証拠の提出はない。
してみると、本件商標は、引用商標の周知性にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできず、また、本件商標が、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないというべき事情は見いだせないものであるから、本件商標権者が、本件商標の登録出願をし、登録を受ける行為が「公の秩序や善良の風俗を害する」という公益に反する事情に該当するものということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(7)むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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