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Trademark Appeal Case

ライドシェアクルーの識別力

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900088
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6900162号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

1 本件商標

本件登録第6900162号商標(以下「本件商標」という。)は、「ライドシェアクルー」の文字を普通に用いられる方法で表してなり、令和6年4月11日に登録出願、第35類、第36類、第39類及び第42類に属する別掲のとおりの役務を指定役務として、同7年1月31日に登録査定され、同年2月25日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由

登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標はその指定役務中、第35類「自動車運転手のあっせん」及び第39類「相乗り方式による自動車による輸送」等(以下「申立役務」という。)について、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであり、また、本件商標はその指定役務について、同法第3条第1項第6号に該当するものであるから、本件商標は、同法第43条の2第1号の規定により、取り消されるべきである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証(枝番号を含む。以下「甲○」と表記する。)を提出した。

(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号違反について

ア 本件商標から生じる意味合いについて

本件商標は、「ライドシェアクルー」の文字を普通に用いられる方法で表してなり、その構成中の「ライドシェア」の文字は「自動車に相乗りすること」を意味し、最近では国土交通省が推進するライドシェアサービスの意味で広く認識されている。また、「クルー」の文字は「船や飛行機の乗組員・搭乗員」等を意味し、昨今では、船や飛行機に限らず、タクシー・自動車を始めとした乗物の運転手(乗務員)を意味する言葉として使用されている実情がある。

そのため、本件商標は全体として、「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」程の意味合いを需要者に認識させるものである。

イ 「ライドシェア」及び「クルー」の語の実際の使用状況について

(ア)「ライドシェア」の語の実際の使用状況

我が国におけるライドシェアサービスは、国土交通省により、特に公共交通空白地や高齢化地域での移動手段の確保を目的とし、現在は、省令により「交通空白地有償運送」及び「福祉有償運送」のみが認められている地方自治体や公共交通機関が関わる「公共ライドシェア(自家用車活用事業)」と、法人タクシー会社(及び国土交通省が認可した企業)のみが運営に参加できる「日本版ライドシェア(自家用車活用事業)」との2種類が存在する(甲3)。

「自家用車活用事業」に関しては、2024年4月から限定的に解禁されており、「日本版ライドシェア」の名称で一般に認識されている。また、「自家用車活用事業」に関しては従前より存在していたものの、ライドシェアサービスの普及により昨今では「公共ライドシェア」の名称で一般に認識されている。これらはそれぞれ道路運送法第78条第2号及び同条第3号において規定されており、公益性の高い事業といえる。

このように「ライドシェア」の語は国土交通省が推進するライドシェアサービスの意味として広く認識されている。

(イ)「クルー」の語の実際の使用状況

「クルー」の語は「船や飛行機の乗組員・搭乗員」等を意味し、昨今では、船や飛行機に限らず、タクシー・自動車を始めとした乗物の運転手(乗務員)を意味する言葉として使用されている実情がある。

甲4は、本件の指定役務の分野において、「クルー」の語が「乗物の運転手(乗務員)」程の意味で使用されていることを示すインターネット情報の写しである。

甲4の1は、モビリティ関連事業を展開するGO株式会社のウェブサイトの写しである。GO株式会社は、自社のタクシーアプリ「GO」専用のライドシェアのドライバーを「GO Crew(GOクルー)」と称して、広く事業を展開している。同様に、甲4の2は、タクシー会社「つばめタクシーグループ」の求人・採用サイトの写しである。当該サイトでは、「日本版ライドシェア」の運転手を「クルー」と称して、ライドシェアサービスに係る運転手の募集を行っている。甲4の3及び甲4の4についても、ライドシェアサービスに係る運転手を「クルー」と称していることを示すウェブサイトの写しである。

また、甲4の5は、株式会社プロトコーポレーションが運営するグーネットの自動車用語集のウェブサイトの写しである。当該サイトでは、「クルーとは、自動車や航空機など、各種車両に乗る乗員のことを指す。そのほかのラリー競技でも用いられる場合、ドライバーのほか、ナビゲーターも含まれる。」と記載されている。

甲4の6ないし甲4の15は、タクシーを含めた乗物の運転手を「クルー」と称しているウェブサイトの写しである。

(ウ)小括

以上より、本件商標を構成する「ライドシェア」及び「クルー」の語の実際の使用状況等から、両語は「ライドシェアサービス」及び「乗物の運転手(乗務員)」程の意味合いで需要者に広く認識されており、本件商標からは全体として「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」程の意味合いが想起される。

ウ 「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」の意味合いが広く一般に認識されていることについて

本件商標から「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」程の意味合いが想起されるとしても、これが本件の申立役務との関係において、直接的ではなく、抽象的な意味合いしか生じない場合は、自他役務識別機能を発揮することになる。

しかしながら、本件の申立役務の分野において「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」は広く一般に認識されており、本件の申立役務との関係において「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)によって提供される役務」であることを直接的、かつ、具体的に認識することは明らかである。

また、甲5は、本件商標と同じ「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」程の意味合いが想起される「ライドシェアドライバー」に関するインターネット情報の写しである。例えば、甲5の1は、タクシー事業を内容とする「エムケイ株式会社」のウェブサイトの写しである。当該サイトでは、「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」程の意味合いで「ライドシェアドライバー」の語が使用されている。

甲5に示す使用例は、本件商標と異なる「ライドシェアドライバー」に関するものではあるものの、「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」の意味合いが広く一般に認識されていることを十分に裏付けるものである。

このように甲4の1ないし甲4の4及び甲5に示す実情から、本件の申立役務に本件商標が使用された場合、需要者が「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」程の意味合いを容易に想起し、本件の申立役務との関係において「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)によって提供される役務」であることを直接的、かつ、具体的に認識することは明らかである。

エ 過去の審査例について

特許庁においても、「ライドシェアサービスに係る連転手(乗務員)」程の意味合いを認識させる商標について、商標法第3条第1項第3号や同項第6号に該当することを理由に拒絶査定がされている。

甲6は、令和6年1月に第39類「車両による輸送」を指定役務とした商標登録出願について、同法第3条第1項第3号や同項第6号に該当する旨の拒絶理由通知書の写しである。

甲6の1の「ライドシェアドライバー」(商願2024-001681)では次のように判断されている。

「そのため、本願商標を、その指定役務中、「車両による輸送」等に使用した場合、これに接する需要者は、「ライドシェアサービスに係るドライバーによって提供される車両による輸送」等、「ライドシェアサービスに係るドライバーによって提供される役務」であること、すなわち、役務の質を表示したものとして認識するものとみるのが相当です。」

甲6に示すとおり、広義で「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」程の意味を想起させる語が各指定役務との関係で役務の質を表示するものと判断され拒絶査定となっている。

このような審査例が存在するにもかかわらず、本件商標について自他商品役務識別機能を発揮すると判断されることは審査の公平性から著しく不合理であると思料する。

オ 商標法第3条第1項第3号についてのまとめ

以上のとおり、本件商標は、「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」程の意味合いを容易に想起させ、需要者が申立役務の内容を直接的、かつ、具体的に認識することは明らかである。加えて、本件の申立役務を取り扱う業界において、「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」によって提供される役務は普通に行われており、また、本件商標と同様の意味合いが生じる上記エの審査例が存在するにもかかわらず、本件商標が登録を認められる合理的な理由は存在しない。

なお、現在において、「ライドシェアクルー」の語そのものが需要者の間で普通に使用されているとはいえないことは申立人も承知している。

しかしながら、商標法第3条第1項第3号は、審査基準において「一般に認識する場合とは、商標が商品又は役務の特徴等を表示するものとして、現実に用いられていることを要するものではない。」ことが規定されている。また、工業所有権法(産業財産権法)逐条解説〔第22版〕において、「これら本号に列挙したものを不登録とするのは、これらは通常、商品又は役務を流通過程又は取引過程におく場合に必要な表示であるから何人も使用をする必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであるから一私人に独占を認めるのは妥当ではなく、また、多くの場合に既に一般的に使用がされ、あるいは将来的に必ず一般的に使用がされるものであるから、これらのものに自他商品又は自他役務の識別力を認めることはできないという理由によるものである。」旨が規定されている。

公益性の保護を目的とする商標法第3条第1項第3号の趣旨に鑑みれば、国土交通省により推し進められるライドシェアサービスを想起させる本件商標に関しては現実的な面よりも将来的な面を考慮して厳格な識別力の判断が求められるものと思料する。

カ 商標法第4条第1項第16号について

本件商標からは、「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」という意味合いが生じることは上記のとおりであり、本件商標を申立役務中、「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)によって提供される役務」以外の役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当する。

キ 小括

以上より、本件商標から「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」の意味合いを認識できるのであれば、申立役務との関係において、本件商標は役務の用途、質を表示するにすぎない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)によって提供される役務」以外の申立役務に使用するときは、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるため、同法第4条第1項第16号に該当する。

(2)商標法第3条第1項第6号違反について

本件商標は、「ライドシェアクルー」の文字を普通に用いられる方法で表してなり、これは、上記(1)で説明したとおり、「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」程の意味合いを認識させるものである。

そして、上記(1)で述べたとおり、我が国におけるライドシェアサービスとして自家用車活用事業が創設され、世間の注目を集めているところ、当該ライドシェアサービスの提供を担う連転手(乗務員)が「ライドシェアドライバー」と指称され、「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」は広く一般に認知されている実情が存在する。

そのため、本件商標を構成する標章が実際に使用されていないとしても、使用される蓋然性が高い標章に該当するものといえる。

以上より、本件商標を、その指定役務に使用した場合、これに接する需要者は、「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」を表した語句であることや、このような世間の耳目を集める「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」と何らかの関連性がある役務であることを理解するにとどまり、それを超えて、自他役務の識別標識であると認識することができないというのが相当である。

さらに、上記のように「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」が広く一般に認知されている現状において、本件商標を特定人に独占させてしまえば、輸送・あっせん分野の事業者の使用を不当に阻害することにつながり、公益上適切ではないことは明らかであり、独占適応性の観点からしても商標登録は認められるべきものではない。

したがって、本件商標は、「需要者が何人かの業務に係る役務であるかを認識することができない商標」にあたるため、商標法第3条第1項第6号に該当する。

(3)まとめ

上記のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同項第6号、同法第4条第1項第16号に該当する商標であって、これらの規定に違反して登録されたものであるから、同法第43条の2第1号の規定によりその登録は取り消されるべきものである。

3 当審の判断

(1)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について

本件商標は、上記1のとおり「ライドシェアクルー」の文字を普通に用いられる方法で表してなるところ、その構成中の「ライドシェア」及び「クルー」の各文字は、同じ書体及び同じ大きさをもって、横一連に表されており、視覚上、全体としてまとまりよく一体的に看取されるものである。

また、その構成文字全体から生じる「ライドシェアクルー」の称呼は、無理なく一連に称呼し得るものである。

そして、本件商標の構成中「ライドシェア」の文字は、「自動車の運転者とそれに相乗りする人、または相乗りする人同士を引き合わせるサービス。」の意味を有し、また、「クルー」の文字は、「船・航空機・列車などの乗組員。」等を意味する語(いずれも「デジタル大辞泉」小学館)であるとしても、両語を結合して具体的な意味を有する成語となるものではなく、また、各語の語義を結合した意味合いからは、具体的な意味合いを認識させるとはいい難いことから、その構成文字全体として一種の造語として把握されるというのが相当である。

また、申立人の提出した証拠によれば、国土交通省により、自家用車・一般ドライバーを活用した運送サービスの提供を可能とする自家用車活用事業が創設されており、「日本版ライドシェア」や「公共ライドシェア」の文字が使用されていることが確認できる(甲3)。

さらに、「クルー(Crew)」の文字は、申立役務を提供する業界において、「乗物の運転手」程の意味で使用されている例が散見されるとしても(甲4)、タクシーや自動車等の運転手を表す語として広く一般に認識されているとまでは認められないことに加え、「ライドシェアクルー」の文字の使用例は、1件にすぎない(甲4の2)ことからすると、当該証拠によっては、「ライドシェアクルー」の文字が、取引者、需要者にどのように看取されるのかを具体的に把握することができない。

加えて、本件商標の申立役務を提供する業界において、「ライドシェアクルー」の文字が役務の質等を直接的に表すものと認めるに足りる事実及び取引者、需要者が、役務の質を表すものと認識し得るという特段の事情も見いだせない。

そうすると、本件商標を申立役務について使用した場合、これに接する取引者、需要者が申立役務の具体的な質等を表すものとして認識するとはいえず、本件商標は、申立役務について、自他役務の識別標識として機能し得るとみるのが相当である。

してみると、本件商標は、申立役務との関係において、役務の質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものとはいえず、かつ、役務の質について誤認を生ずるおそれもないものである。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。

(2)商標法第3条第1項第6号該当性について

本件商標は、上記1のとおり、「ライドシェアクルー」の文字を普通に用いられる方法で表してなるところ、申立人は、当該文字は「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」程の意味合いを認識させるものであり、本件商標をその指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「ライドシェアサービスに係る運転手(乗務員)」と何らかの関連性がある役務であることを理解するにとどまり、それを超えて、自他役務の識別標識であると認識することができない旨主張する。

しかしながら、申立人の提出した証拠によれば、上記(1)のとおり「ライドシェア」及び「クルー(Crew)」の文字がそれぞれ使用されていることはうかがえるとしても、上記(1)のとおり、本件商標は、具体的な意味合いを認識させるとはいい難いことから、その構成文字全体として一種の造語として把握されるとみるのが相当である。

そうすると、本件商標は、その指定役務との関係において、自他役務の出所識別標識としての機能を有しないものとはいえず、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができない商標とは認められない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に該当しない。

(3)まとめ

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号、同項第6号及び同法第4条第1項第16号のいずれにも該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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