結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024003636 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、2019年(令和1年)5月1日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2018年(平成30年)5月4日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、以降の手続の経緯は次のとおりである。
令和2年12月23日 手続補正書の提出
令和3年12月 9日付け 拒絶理由通知
令和4年 3月14日 意見書及び手続補正書の提出
同年 同月24日付け 拒絶理由通知
同年 8月29日 意見書及び手続補正書の提出
同年 9月 2日 刊行物等提出書の提出
同年10月 4日付け 拒絶理由通知
令和5年 3月13日 意見書及び手続補正書の提出
同年 同月28日 刊行物等提出書の提出
同年 4月26日付け 拒絶理由通知
同年10月10日 意見書及び手続補正書の提出
同年 同月19日 刊行物等提出書の提出
同年 同月23日付け 拒絶査定
令和6年 2月29日 審判請求書の提出
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和5年10月10日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「タイヤトレッドゴム組成物であって、
a.100部のエラストマー成分であって、
i.スチレンの含有量が25~35%であり、-40~-50°CのTgを有する、40~60部の非官能化溶液重合スチレン-ブタジエンゴムと、
ii.少なくとも95%のシス結合含量及び-101°C未満のTgを有する40~54部のポリブタジエンゴムと、を含む、100部のエラストマー成分と、
b.81~99phrの量の少なくとも1種の補強シリカ充填剤と、
c.1~15phrのカーボンブラック充填剤と、
d.30~50°CのTgを有する15~30phrの少なくとも1種の炭化水素樹脂、ここで前記少なくとも1種の炭化水素樹脂は、少なくとも1種の芳香族炭化水素樹脂からなる、と、
e.10~25phrの油と、
f.硬化パッケージと、を含み、
(d)及び(e)の総量が44phr以下であり、
前記エラストマー成分は天然ゴム及びポリイソプレンを含まず、
前記非官能化溶液重合スチレン-ブタジエンゴムのTg、前記ポリブタジエンゴムのTg、及び前記少なくとも1種の炭化水素樹脂のTgは、示差走査熱量測定(DSC)による値であり、
前記ゴム組成物は、60°Cにおけるtanδ値が0.18~0.25であり、
a.-30°Cにおけるtanδ値が、前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.5倍であること、
b.0°Cにおけるtanδ値が、前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.4倍であること、又は
c.30°Cにおけるtanδ値が、前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.1倍であること、のうち
の少なくとも1つを満たす、タイヤトレッドゴム組成物。」
令和5年10月23日付け拒絶査定における拒絶の理由は、この出願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願発明は特許を受けることができない、というものである。
本願発明は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、以下この考え方に基づいて検討する。
本願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明(以下単に「発明の詳細な説明」という。)には、【0002】に次の記載がある(下線は当審において付した。以下同様)。
「タイヤは、路面に接触するトレッドを含めて多くの構成要素を含んでいる。タイヤトレッドを含むゴム組成物に使用される特定の成分は、様々であり得る。
タイヤトレッドゴム組成物の配合は、1つの特性(例えば、転がり抵抗)に改善をもたらす配合への変更が、別の特性(例えば、乾燥牽引力)の劣化をもたらし得るので、複雑な科学である。
」
そして、【0003】~【0008】に発明の概要が記載され、【0009】~【0024】に第1~第5の実施形態及び用語の説明が記載され、【0026】にゴム組成物のTgについて、【0027】~【0061】に「エラストマー成分」について、【0062】~【0078】に補強シリカ充填剤やカーボンブラック充填剤等について、【0079】~【0092】に炭化水素樹脂について、【0093】~【0096】に油について、【0098】に炭化水素樹脂と油の総量について、【0099】~【0103】に硬化パッケージについて、【0104】~【0107】にはゴム組成物の調製についての記載がある。
ここで、【0010】~【0012】には、第1~第3の実施形態として、次の記載がある。
「【0010】
第1の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物が開示される。組成物は、(a)(i)30~60部のスチレン-ブタジエンゴムと、(ii)少なくとも95%のシス結合含量及び-101°C未満のTgを有する30~60部のポリブタジエンゴムと、を含む、100部のエラストマー成分と、(b)81~120phrの量の少なくとも1種の補強シリカ充填剤と、(c)15phr以下のカーボンブラック充填剤と、(d)約30~約50°CのTgを有する11~35phrの少なくとも1種の炭化水素樹脂と、(e)0~40phrの油と、(f)硬化パッケージと、を含む。第1の実施形態によると、(d)及び(e)の総量は、59phr以下である。
【0011】
第2の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物が開示される。組成物は、(a)100部のエラストマー成分であって、(i)20%以下のビニル結合含量及び約-40~約-50°CのTgを有する40~60部のスチレン-ブタジエンゴムと、(ii)少なくとも95%のシス結合含量及び-101°C未満のTgを有する40~60部のポリブタジエンゴムと、を含み、(i)及び(ii)の総量が90~100部である、100部のエラストマー成分と、(b)81~120phrの量の少なくとも1種の補強シリカ充填剤と、(c)15phr以下のカーボンブラック充填剤と、(d)約30~約50°CのTgを有する11~35phrの少なくとも1種の炭化水素樹脂と、(e)0~40phrの油と、(f)硬化パッケージと、を含む。第2の実施形態によると、(d)及び(e)の総量は、59phr以下である。
【0012】
第3の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物が開示される。組成物は、(a)100部のエラストマー成分であって、(i)20%以下のビニル結合含量及び約-40~約-50°CのTgを有する40~60部のスチレン-ブタジエンゴムと、(ii)少なくとも95%のシス結合含量及び-101°C未満のTgを有する40~60部のポリブタジエンゴムと、を含み、(i)及び(ii)の総量が90~100部である、100部のエラストマー成分と、(b)81~120phrの量の少なくとも1種の補強シリカ充填剤と、(c)15phr以下のカーボンブラック充填剤と、(d)約30~約50°CのTgを有する11~30phrの少なくとも1種の芳香族炭化水素樹脂と、(e)0~30phrの油と、(f)硬化パッケージと、を含む。第3の実施形態によると、(d)及び(e)の総量は、49phr以下である。」
また、発明の詳細な説明には、次の記載もある。
「【0029】
上述のように、第2及び第3の実施形態によれば、100部のエラストマー成分は、(i)20%以下(例えば、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、10%又はそれより下)のビニル結合含量及び約-40~約-50°C(例えば、-40、-41、-42、-43、-44、-45、-46、-47、-48、-49、又は-50°C)のTgを有する40~60部(例えば、40、45、50、55、又は60部)のスチレン-ブタジエンゴムと、(ii)少なくとも95%のシス結合含量及び-101°C未満のTgを有する40~60部(例えば、40、45、50、55、又は60部)のポリブタジエンゴムと、を含み、(i)及び(ii)の総量は、90~100部(例えば、90、95、99、又は100部)である。エラストマーについて本明細書で言及されるTg値は、油展を全く伴わずにエラストマー上で行われたTg測定を表す。言い換えれば、油展エラストマーでは、上記のTg値は、油展前のTg、又は同じエラストマーの非油展バージョンを指す。エラストマー又はポリマーTg値は、TA Instruments(New Castle,Delaware)製などの示差走査熱量測定(DSC)計器を使用して測定され得、測定は、-120°Cで冷却してから10°C/分の温度上昇を使用して実施する。その後、正接をDSC曲線の急上昇前後のベースラインに引く。DSC曲線上の温度(2つの接点の中間に対応する点で読み取る)をTgとして使用することができる。第2及び第3の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー成分は、天然ゴム又はポリイソプレンを含まない(すなわち、0phrのそれを含有する)ものとして理解することができる。第2及び第3の実施形態の好ましい実施形態では、トレッドゴム組成物中に存在する任意の天然ゴム及び/又はポリイソプレンは、エポキシ化されておらず、特定のそのような実施形態では、トレッドゴム組成物は、10phr以下のエポキシ化天然ゴム又はエポキシ化ポリイソプレン、好ましくは5phr以下のエポキシ化天然ゴム又はエポキシ化ポリイソプレン、より好ましくは0phrのエポキシ化天然ゴム又はエポキシ化ポリイソプレンを含有する。第2及び第3の実施形態の特定の実施形態では、(i)は、45~55部(例えば、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、又は55部)の量で存在し、(ii)は、45~55部(例えば、45、46、47、48、49、50、51、52、53、
54
、又は55部)の量で存在する。第2及び第3の実施形態の特定の実施形態では、(i)のスチレン-ブタジエンゴムは、15%以下のビニル結合含量を有する。第2及び第3の実施形態の特定の実施形態では、100部のエラストマー成分は、上記の量で(i)及び(ii)から(のみ)なる。第2及び第3の実施形態の他の実施形態では、100部のエラストマー成分は、(i)及び(ii)に加えて、1種又は複数種の追加のゴムを10部未満(例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1部)の量で含む。第2及び第3の実施形態によれば、1種又は複数種の追加のゴムが存在する場合、その量は、10未満に、又は更に5部以下に限定される。第2及び第3の実施形態の特定の実施形態では、1種又は複数種の追加のゴムがジエンモノマー含有ゴムから選択され、特定のそのような実施形態では、1種又は複数種の追加のゴムは、天然ゴム、ポリイソプレン、スチレン-イソプレンゴム、ブタジエン-イソプレン-ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、ブチルゴム(ハロゲン化及び非ハロゲン化の両方)、エチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-ブチレンゴム(EBR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。第2及び第3の実施形態の更に他の実施形態では、1種又は複数種の追加のゴムは、スチレン-ブタジエンゴム(i)以外の1種若しくは複数種のスチレン-ブタジエンゴム、例えば、-40°C超若しくは-50°C未満のTg及び/若しくは20%超(例えば、25%、30%、35%、40%、45%、50%、20~50%など)のビニル結合含量を有するSBRから、ポリブタジエンゴム(ii)以外の1種若しくは複数種のポリブタジエンゴム、例えば、95%未満のシス結合含量を有するBR、例えば、低いシス1,4結合含量(例えば、50%未満、45%未満、40%未満などのシス1,4結合含量を有するポリブタジエン)及び/若しくは-101°C未満のTgを有するポリブタジエンから、
天然ゴム若しくはポリイソプレン(iii)以外のゴムを含有するジエンモノマーから
、又はこれらの組み合わせから選択される。
【0030】
第1~第4の実施形態によれば、エラストマー成分は、(i)としてスチレン-ブタジエンゴムを含む。第1~第4の実施形態によれば、エラストマー成分の(i)はスチレン-ブタジエンゴムからなる。1種又は2種以上(例えば、2種、3種、又はそれより上)のスチレン-ブタジエンゴムが(i)として使用され得る。(i)のスチレン-ブタジエンゴムは、溶液重合又は乳化重合のいずれかによって調製され得る。
第1~第4の実施形態の特定の好ましい実施形態では、(i)で使用されるスチレン-ブタジエンゴムは、溶液重合によって調製されるものだけである。
第1~第4の実施形態の他の実施形態では、(i)で使用されるスチレン-ブタジエンゴムは、乳化重合によって調製されるものだけである。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、2種以上のスチレン-ブタジエンゴムが(i)のために使用される場合、ゴムは、溶液重合SBRと乳化重合SBRとの組み合わせである(例えば、1種の溶液SBRと1種の乳化SBR)。第1~第4の実施形態の特定の好ましい実施形態では、エラストマー成分は、20部未満(例えば、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0部)の乳化SBR、15部未満の乳化SBR、10部未満の乳化SBR、5部以下の乳化SBR(例えば、5、4、3、2、1又は0部)、又は0部の乳化SBRを含有する。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、(上述したような)乳化SBRの量の制限は、ゴム組成物の剛性に、及び良好な転がり抵抗性能を達成するのに有利であり得る。」
「【0059】
本明細書に開示される第1の実施形態によれば、(i)の少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムのビニル結合含量(すなわち、1,2-ミクロ構造)は様々であり得る。上述のように、第2及び第3の実施形態によれば(並びに第1及び第4の実施形態の特定の実施形態では)、(i)のスチレン-ブタジエンゴムは、20%以下(例えば、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、又はそれより下)のビニル結合含量を有する。第1及び第4の実施形態の他の実施形態では、(i)のスチレン-ブタジエンゴムは、30%以下(例えば、30%、25%、20%、15%、又はそれより下)、又は25%以下(例えば、25%、24%、23%、22%、21%、20%、15%又はそれより下)のビニル結合含量を有する。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、(i)のスチレン-ブタジエンゴムは、10~20%(例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20%)、又は10~15%(例えば、10、11、12、13、14、又は15%)のビニル結合含量を有する。(i)のスチレン-ブタジエンゴムは、前述の範囲のうちの1つの範囲内のビニル結合含量を、任意選択的に上記のMw、Mn、Mw/Mn、Tg、及び/又はスチレンモノマー含量の範囲のうちの1つ又は複数と組み合わせて、有し得る。本明細書で言及されるビニル結合含量は、SBRポリマー鎖のブタジエン部分におけるビニル結合含量ではなく、SBRポリマー鎖中の総ビニル結合含量についてであるものとして理解されるべきであり、H1-NMR及びC13-NMRによって(例えば、300MHz Gemini 300 NMR Spectrometer System(Varian)を使用して)測定することができる。
本明細書に開示される第1~第4の実施形態によれば、(i)で使用されるスチレン-ブタジエンゴムのスチレンモノマー含量(すなわち、ブタジエン単位とは対照的にスチレン単位を含むポリマー鎖の重量パーセント)は様々であり得る。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、(i)のスチレン-ブタジエンゴムは、約15~約45重量%、15~45重量%(例えば、15%、20%、25%、30%、35%、40%、又は45%)、20~40重量%(例えば、20%、25%、30%、35%、又は40%)、又は25~35重量%(例えば、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、又は35%)のスチレンモノマー含量を有する。
(i)のスチレン-ブタジエンゴムは、前述の範囲のうちの1つの範囲内のスチレンモノマー含量を、任意選択的に、以下に記載されるMw、Mn、及び/又はMw/Mnの範囲のうちの1つ又は複数と組み合わせて、並びに特定の実施形態では、任意選択的に、上に記載したTgの範囲及び/又は以下に記載されるビニル結合含量のうちの1つと組み合わせて、有し得る。」
「【0063】
上述のように、第1~第4の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、少なくとも1種の補強シリカ充填剤を81~120phr(例えば、81、84、85、89、90、91、94、95、
99
、100、101、104、105、109、110、111、114、115、119、又は120、phr)の量で含む。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、少なくとも1種の補強シリカ充填剤を90~110phr(例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、又は110phr)の量で含む。第1~第4の実施形態によれば、1種又は2種以上の補強シリカ充填剤が利用され得、2種以上の補強シリカ充填剤が利用されるそれらの実施形態では、前述の量は、全ての補強シリカ充填剤の総量を指す。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、補強シリカ充填剤が1種のみ利用される。」
「カーボンブラック充填剤
【0074】
第1~第4の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、限られた量(存在する場合)のカーボンブラック充填剤、すなわち、15phr以下のカーボンブラック充填剤(例えば、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、
1
又は更に0phr)、10phr以下(例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は更に0phr)のカーボンブラック充填剤、又は5phr以下(例えば、5、4、3、2、1又は更に0phr)のカーボンブラック充填剤を含有する。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、0phrのカーボンブラック充填剤を含有する。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、前述の限られた量のカーボンブラック充填剤は、補強カーボンブラック充填剤を指すと理解されるべきである。第1~第4の実施形態の他の実施形態では、前述の限られた量のカーボンブラック充填剤は、非補強カーボンブラック充填剤を指すと理解されるべきである。第1~第4の実施形態の更に他の実施形態では、前述の限られた量のカーボンブラック充填剤は、全てのカーボンブラック充填剤(すなわち、補強及び非補強カーボンブラック充填剤の両方)を指すと理解されるべきである。」
「炭化水素樹脂
【0079】
上述のように、第1及び第2の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、(d)約30~約50°C、又は30~50°C(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、42、44、45、46、48、又は50°C)のTgを有する、11~35phr(例えば、11、12、13、14、
15
、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、
30
、31、32、33、34、又は35phr)の少なくとも1種の炭化水素樹脂を含む。同じく上述のように、第3の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、(d)約30~約50°C、又は30~50°C(例えば、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、42、44、45、46、48、又は50°C)のTgを有する、20~35phr(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35phr)の少なくとも1種の炭化水素樹脂を含む。炭化水素樹脂のTgは、エラストマーのTg測定について上述した手順に従って、DSCによって測定することができる。第1の実施形態の特定の実施形態では、(d)の少なくとも1種の炭化水素樹脂は、約35~約50°C、35~50°C(例えば、30、32、34、35、36、38、40、42、44、45、46、48、又は50°C)、約35~約45°C、又は35~45°C(例えば、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、又は45°C)のTgを有する。第1の実施形態の特定の実施形態では、(d)は、15~30phr(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30phr)、又は20~25phr(例えば、20、21、22、23、24、又は25phr)の量で存在する。以下でより詳細に記載されるように、第1及び第2の実施形態の特定の好ましい実施形態では、(d)の少なくとも1種の炭化水素樹脂は、芳香族樹脂を含む。」
「油
【0093】
上述のように、第1及び第2の実施形態によれば、並びに第4の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、0~40phr(例えば、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、
25
、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、
10
、9、8、7、6、5、4、3、2、1又は0phr)の油を含む。第1、第2、及び第4の実施形態の特定の実施形態では、並びに第3の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、30phr以下の油(例えば、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1又は0phr)、24phr以下の油(例えば、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1又は0phr)を含む。第1~第4の実施形態の他の実施形態では、トレッドゴム組成物は、10~40phr(例えば、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、又は10phr)、10~30(例えば、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、又は10phr)、15~40(例えば、40、39、38、37、36、35、34、33、32、31、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15phr)、又は15~30phr(例えば、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15phr)の油を含む。用語「油」は、遊離油(通常、配合プロセス中に添加される)及び伸展油(ゴムを伸展させために使用される)の両方を包含することを意味する。したがって、例えば、特定の実施形態においてトレッドゴム組成物が30phr以下の油を含むことを主張することにより、任意の遊離油及び任意の伸展油の総量が30phr以下であると理解されるべきである。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、前述の量(例えば、0~40phr、30phr以下、24phr以下など)のうちの1つで遊離油のみを含有する。第1~第4の実施形態の他の実施形態では、トレッドゴム組成物は、前述の量(例えば、0~40phr、30phr以下、24phr以下など)のうちの1つで伸展油のみを含有する。油展ゴムが使用される、第1~第4の実施形態のそれらの実施形態では、油展ゴムを調製するために使用される油の量は、様々であり得、そのような実施形態では、油展ゴム(ポリマー)中に存在する伸展油の量は、ゴム100部あたり10~50部の油(例えば、ゴム100部あたり10、15、20、25、30、35、40、45又は50部の油)、好ましくはゴム100部あたり10~40部の油又はゴム100部あたり20~40部のゴムである。非限定例として、伸展油は、トレッドゴム組成物全体でSBRが40部の量で使用されている(i)のSBR中にゴム100部あたり油40部の量で使用され得、したがって、油展SBRによってトレッドゴム組成物に寄与する油の量は、16phrとして記載され得る。油展ゴムが、本明細書に開示されるトレッドゴム組成物のエラストマー成分中に使用されている場合、(i)、(ii)及び(iii)について指定された量は、油展ゴムの量ではなく、ゴムのみの量を指すと理解されるべきである。本明細書で使用されるとき、油は、石油系油(例えば、芳香油、ナフテン油、及び低PCA油)及び植物油(野菜、木の実、及び種子から採取することができるものなど)の両方を指す。植物油は一般にトリグリセリドを含み、この用語は、合成トリグリセリド、及び実際に植物から供給されたものを含むと理解されるべきである。」
「【0098】
上述のように、第1及び第2の実施形態によれば(及び第4の実施形態の特定の実施形態では)、炭化水素樹脂(d)及び油(e)の総量は、59phr以下(例えば、59、55、54、50、49、45、
44
、40、39、35、34、30、29、25、24、若しくは20phr、又はそれより下)である。第1、第2、及び第4の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂(d)及び油(e)の総量は、50phr以下(例えば、50、49、45、44、40、39、35、34、30、29、25、24、若しくは20phr、又はそれより下)である。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂(d)及び油(e)の総量は、45phr以下(例えば、45、44、40、39、35、34、30、29、25、24、若しくは20phr、又はそれより下)、40phr以下(例えば、40、39、35、34、30、29、25、24、若しくは20phr、又はそれより下)、35phr以下(例えば、35、34、30、29、25、24、若しくは20phr、又はそれより下)、又は30phr以下(例えば、30、29、25、24、若しくは20phr、又はそれより下)である。第1、第2、及び第4の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂(d)及び油(e)の総量は、15~59phr(例えば、15、19、20、24、25、29、30、34、35、39、40、44、45、49、50、54、55、又は59phr)又は15~50phr(例えば、15、19、20、24、25、29、30、34、35、39、40、44、45、49、又は50phr)である。上述のように、第3の実施形態によれば(及び第4の実施形態の特定の実施形態では)、炭化水素樹脂(d)及び油(e)の総量は、49phr以下である。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂(d)及び油(e)の総量は、15~45phr(例えば、15、19、20、24、25、29、30、34、35、39、40、44、又は45phr)、15~40phr(例えば、15、19、20、24、25、29、30、34、35、39、又は40phr)、15~35phr(例えば、15、19、20、24、25、29、30、34、又は35phr)、15~30phr(例えば、15、19、20、24、25、29、又は30phr)、20~59phr(例えば、20、24、25、29、30、34、35、39、40、44、45、49、50、54、55、又は59phr)、20~50phr(例えば、20、24、25、29、30、34、35、39、40、44、45、49、又は50phr)、20~45phr(例えば、20、24、25、29、30、34、35、39、40、44、又は45phr)、20~40phr(例えば、20、24、25、29、30、34、35、39、又は40phr)、20~35phr(例えば、20、24、25、29、30、34、又は35phr)、又は20~30phr(例えば、20、24、25、29、又は30phr)である。」
また、【0108】、【0109】には「タイヤトレッド特性」について次の記載がある。
「【0108】
タイヤにおける第1~第3の実施形態のタイヤトレッドゴム組成物の使用は、改善された又は望ましいトレッド特性を有するタイヤをもたらし得る。これらの改善された又は望ましい特性としては、転がり抵抗、雪若しくは氷牽引摩擦、湿潤牽引摩擦、又は乾燥操縦性のうちの1つ又は複数を挙げることができる。これらの特性は、様々な方法によって測定され得るが、
転がり抵抗、雪又は氷牽引摩擦、湿潤牽引摩擦、及び乾燥操縦性について本明細書で言及される値は、以下の温度において以下の手順に従って測定されるtanδ値を指す。
tanδ値は、動的機械熱分光計(Gabo Qualimeter Testanlagen GmbH(Ahiden,Germany)のEplexor(登録商標)500N)を用いて以下の条件下で測定することができる:測定モード:引張試験モード、測定周波数:52Hz、50~-5°Cの0.2%ひずみ及び-5~65°Cの1%ひずみを適用、-30°C、0°C、30°C、及び60°Cの測定温度、試料形状:幅4.75mm×長さ29mm×厚さ2.0mm。測定は、硬化したゴムの試料(170°Cで15分間硬化)に対して行われる。
-30°Cにおけるゴム組成物のtanδは、タイヤトレッド内に組み込まれているときのその雪又は氷牽引摩擦を示し、0°Cにおけるtanδは、タイヤトレッド内に組み込まれているときのその湿潤牽引摩擦を示し、30°Cにおけるtanδは、タイヤトレッド内に組み込まれているときのその乾燥操縦性を示し、60°Cにおけるそのtanδは、タイヤトレッド内に組み込まれているときのその転がり抵抗を示す。
【0109】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、0.18~0.25
(例えば、0.18、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、0.24、又は0.25)、0.19~0.24(例えば、0.19、0.2、0.21、0.22、0.23、又は0.24)、又は0.2~0.23(例えば、0.2、0.21、0.22、0.23、又は0.24)
の60°Cにおけるtanδの値を有する。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの値は、(a)60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.5倍
(例えば、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、又はそれより上)、好ましくは60°Cにおけるtanδ値の1.5倍~2倍
の-30°Cにおけるtanδの値
、
(b)60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.4倍
(例えば、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、又はそれより上)、好ましくは60°Cにおけるtanδ値の1.4倍~2倍
の0°Cにおけるtanδの値
、又は
(c)60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.1倍
(例えば、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、又はそれより上)、好ましくは60°Cにおけるtanδ値の1.1倍~2倍
の30°Cにおけるtanδの値、のうちの少なくとも1つと組み合わされ、特定のそのような実施形態では、60°Cにおけるtanδの値は、(a)、(b)、及び(c)のそれぞれと組み合わされる。
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ(例えば、0.18~0.25、0.19~0.24、又は0.2~0.23)は、(a)60°Cにおけるtanδ値の1.5倍~2倍(例えば、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、又は2倍)、又は60°Cにおけるtanδ値の1.6~1.9倍(例えば、1.6倍、1.7倍、1.8倍、又は1.9倍)の-30°Cにおけるtanδの値と組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ(例えば、0.18~0.25、0.19~0.24、又は0.2~0.23)は、(b)60°Cにおけるtanδ値の1.4倍~2倍(例えば、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、又は2倍)、又は1.6~1.8倍(例えば、1.6倍、1.7倍、又は1.8倍)の0°Cにおけるδについての値と組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ(例えば、0.18~0.25、0.19~0.24、又は0.2~0.23)は、(c)60°Cにおけるtanδ値の1.1~2倍(例えば、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、又は2倍)の30°Cにおけるδについての値と組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ(例えば、0.18~0.25、0.19~0.24、又は0.2~0.23)は、-30°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ、0°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ、及び30°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つと組み合わされる。」
(1)本願発明は第2で示したとおりであり、要件a~fを満たし、かつ、「(d)及び(e)の総量が44phr以下」であり、エラストマー成分が天然ゴム及びポリイソプレンを含まず、各TgはDSCによる値であること(以下、これらをまとめて「組成要件」という。)に加えて、「前記ゴム組成物は、60°Cにおけるtanδ値が0.18~0.25であり」、かつ、tanδに関するa~cの特性のうちの少なくとも1つを満たすこと(以下、これらをまとめて「特性要件」という。)を満たすものである。
そこで、そのような本願発明について、実施可能要件を満たすか否かについて検討する。
(2)発明の詳細な説明には、上記「組成要件」を満たすと、それだけで「60°Cにおけるtanδ値が0.18~0.25であり」、かつ、tanδに関するa~cのうちの少なくとも1つを満たす、という「特性要件」を満たすようになることについて、論理的な説明はなされておらず、また、そのことが本願出願時における技術常識から当業者に自明な事項であるとも認められない。
ここで、発明の詳細な説明の【0109】には「
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では
、ゴム組成物は、0.18~0.25・・・の60°Cにおけるtanδの値を有する。
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では
、60°Cにおけるtanδの値は、(a)60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.5倍・・・の-30°Cにおけるtanδの値、(b)60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.4倍・・・の0°Cにおけるtanδの値、又は(c)60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.1倍・・・の30°Cにおけるtanδの値、のうちの少なくとも1つと組み合わされ」と記載され、「第1~第3の実施形態」は【0010】~【0012】に記載されるように、本願発明の「組成要件」に関するものである。
そして、【0019】に「第1~第3の実施形態の「特定の実施形態」では・・・」と記載されていることからみて、「第1~第3の実施形態」であれば、必ず本願発明の「特性要件」を満たすことが発明の詳細な説明に記載されているわけではなく、「第1~第3の実施形態」のうち「特定の実施形態」のものが本願発明の特性要件を満たすことが記載されているにすぎない。
さらに、「第1~第3の実施形態」では特定されていない本願発明の「組成要件」に関して、スチレンの含有量に関する【0059】の記載、スチレン-ブタジエンゴムが溶液重合によって得られたものに関する【0030】の記載、ポリブタジエンゴムの配合量の上限を「54部」とすることに関する【0029】の記載、補強シリカ充填剤の配合量の上限を「99phr」とすることに関する【0063】の記載、カーボンブラック充填剤の配合量の下限を「1phr」とすることに関する【0074】の記載、炭化水素樹脂の配合量の下限を「15phr」とすることに関する【0079】の記載、油の配合量を「10~25phr」とすることに関する【0093】の記載、(d)及び(e)の総量を「44phr以下」とすることに関する【0098】の記載、エラストマー成分が天然ゴム及びポリイソプレンを含まないことに関する【0029】の記載をみても、これらの要件を特定することと、本願発明の「特性要件」を満たすこととの関係は何ら明らかにされていない。
これらのことからみて、本願発明の「組成要件」を満たせば、必ず本願発明の「特性要件」を満たすことが発明の詳細な説明に記載されているのではなく、本願発明の「組成要件」を満たすもののうち、「特定の実施形態」のものが本願発明の「特性要件」を満たすことが記載されているにすぎない。
(3)したがって、当業者が本願発明のタイヤトレッドゴム組成物を実施(生産及び使用)するためには、本願発明の「組成要件」に加えて、「特性要件」を満たすものを製造しなければならないところ、その具体的な指針及び具体的な製造例(実施例)は発明の詳細な説明に記載されていない。
(4)そして、例えば本願発明の構成成分である「スチレンの含有量が25~35%であり、-40~-50°CのTgを有する」「非官能化溶液重合スチレン-ブタジエンゴム」には、「スチレン」や「ブタジエン」の含有割合、ブタジエンのミクロ構造(1,4-結合及び1,2-結合の含有割合)、分子量等によって、様々な種類のものが含まれ、それらによって「非官能化溶液重合スチレン-ブタジエンゴム」の特性も異なるものと認められる。
また、「少なくとも95%のシス結合含量及び-101°C未満のTgを有する」「ポリブタジエンゴム」についても、その分子量等によりその特性は異なるものと認められ、「補強シリカ充填剤」や「カーボンブラック充填剤」についても、その窒素吸着比表面積、粒径、その表面を処理するシリカカップリング剤の種類や有無等(発明の詳細な説明の【0062】、【0066】の記載も参照のこと。)によりその特性は異なるものと認められる。
そして、発明の詳細な説明の【0002】に「タイヤトレッドゴム組成物の配合は、1つの特性(例えば、転がり抵抗)に改善をもたらす配合への変更が、別の特性(例えば、乾燥牽引力)の劣化をもたらし得るので、複雑な科学である。」と記載されるように、ゴム組成物の分野においては、物の構造(組成物の組成)からその物の特性を特定することが困難であることが本願出願時の技術常識である。
(5)そうすると、当業者は本願発明のタイヤトレッドゴム組成物を製造するためには、本願発明の「組成要件」を満たすもののうち、組成物を構成する各成分について、様々な選択肢の中から、「特性要件」を満たすものとなるようにその種類や配合割合を選択する必要があるところ、具体的にどのようなものをどの程度の量で用いればよいのかの指針及び具体例(実施例)が発明の詳細な説明には記載がないし、どのようなものをどの程度の量で用いれば「特性要件」を満たすようになるのかが、本願出願時における技術常識から当業者に自明な事項であるとも認められない。
(6)このように、発明の詳細な説明には、本願発明のタイヤトレッドゴム組成物を製造するための指針が記載されているとはいえず、本願発明の実施にあたり、当業者であってもやみくもに各成分について様々な選択肢のものを調製し、本願発明の組成要件を満たすか否かを確認するという、過度の試行錯誤を要するものと認められる。
(7)よって、発明の詳細な説明の記載は、本願発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。
審判請求人は、令和5年3月13日提出の意見書において、本願発明の組成要件を満たす「発明例組成物」及びそれを満たさない「対照組成物」についての参考資料1(実験結果)を示し、前者は本願発明の特性要件を満たし、後者は本願発明の特性要件を満たさないことを主張する。。
また、審判請求書において、発明の詳細な説明の0108~0109には、本願発明の組成物によって、tanδを用いて表現されうる所望の特性を達成することができることが記載され、当業者はこれらの記載及び技術常識に基づいて、本願発明の組成物を作製し、使用することができること、上記意見書に添付した参考資料1の試験結果は、本願の出願当初明細書の発明の詳細な説明等にすでに記載されていた事項について、補強的に示したものであり、発明の詳細な説明から理解される事項を裏付けるものであること、本願発明の各成分について発明の詳細な説明において詳しく説明され、充填剤の例や適切なグレード、炭化水素樹脂の説明やメーカーの例、硬化パッケージの成分の種類、具体例、量、エラストマー成分の特徴、ポリマー種の詳しい説明が記載されており、本願発明に使用される成分は発明の詳細な説明から明確に把握することができること、本願発明の成分組成は具体的に特定されており、特定の温度におけるtanδ値の測定方法も具体的に説明されており、当業者は本願発明の組成を有するタイヤトレッドゴム組成物を調製して、tanδを用いて表現されうる所望の特性を達成することができることを主張する。
上記主張について検討すると、上記3(3)で述べたとおり、発明の詳細な説明には、本願発明の組成要件を満たせば、それだけで本願発明の特性要件を満たすことが記載されているわけではなく、その特性要件を満たすための具体的な指針が発明の詳細な説明の記載及び本願出願時の技術常識から当業者に自明なものでもない。したがって、「特性要件」を満たすようにするためには、本願発明の各成分について、発明の詳細な説明に記載されている、どの市販品をどの程度の量用いて組み合わせればよいのか何ら明らかでない。
そして、参考資料1を参酌しても、そこに記載された「発明例組成物」は、本願発明の構成要件を満たすか否かがYes又はNoで示されているのみであり、本願発明を構成する各成分について、具体的にどの市販品をどの程度の量用いて組み合わせたのかについて、何ら明らかにするものではないから、そのような「発明例組成物」の開示によって当業者が本願発明を実施できるようになるとはいえない。
したがって、審判請求人の主張は採用することができない。
よって、発明の詳細な説明の記載は、本願発明について当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本願は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
以上のとおり、本願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本願発明以外の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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