結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024011311 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、2018年(平成30年)5月15日を国際出願日とする外国語特許出願(特願2020-563941号)の一部を、令和4年10月3日に新たな外国語書面出願としたものであって、その手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和4年10月 4日 :翻訳文の提出
同年11月 1日 :上申書、手続補正書の提出
令和5年12月 4日付け:拒絶理由通知書
令和6年 3月11日 :意見書、手続補正書の提出
同月15日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
(同月26日 :原査定の謄本の送達)
同年 7月 9日 :審判請求書、手続補正書の提出
(1) 本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和6年7月9日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された次に示す事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
高温用のコイル変換器(200)であって、
導電性ワイヤ(212a)からなるコイル(212)を含むコイル部分(210)と、
導電性ワイヤ(212a)に近接して配置された電気絶縁体とを備え、
コイル(212)は、350°Cよりも大きい温度範囲を少なくとも含む複数の温度サイクルにわたって再現性がある導電性を有するように構成される、コイル変換器(200)。」
(2) 本願発明の分説
検討の便宜上、本願発明の構成を次のように構成X’(X)と構成Aから構成Cまでに分説する。また、参考図として、本願の【図2】及び【図3】を元に部材名を記入したものを掲載する。
<本願発明の分説>
X’高温用のコイル変換器(200)であって、
A 導電性ワイヤ(212a)からなるコイル(212)を含むコイル部分(210)と、
B 導電性ワイヤ(212a)に近接して配置された電気絶縁体とを備え、
C コイル(212)は、350°Cよりも大きい温度範囲を少なくとも含む複数の温度サイクルにわたって再現性がある導電性を有するように構成される、
X コイル変換器(200)。
<参考図>
【図2】
89
137
0001431753000001.jpg
【図3】
98
106
0001431753000002.jpg
(3) 課題・作用効果等に関連する明細書の発明の詳細な説明の記載
本願明細書の発明の詳細な説明の記載のうち、発明が解決しようとする課題及び作用効果等に関連する記載を抜粋すると、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。
「【技術分野】
【0001】
以下に記載された実施形態は、コイル変換器に関し、特に高温用のコイル変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
...(中略)...
【0004】
流体が流量計を流れていない場合、振動力が導管に加えられると、導管に沿った全ての部位が、同一の位相で振動するか又は小さな「ゼロオフセット」で振動する。この「ゼロオフセット」はゼロ流量において測定される時間遅れである。物質が流量計を流れ始めると、コリオリ力により導管に沿った各部位が異なる位相を有するようになる。たとえば、流量計の入口端部の位相は中央のドライバの位置の位相より遅れ、出口の位相は中央のドライバの位置の位相よりも進んでいる。導管上のピックオフは当該導管の運動を表す正弦波信号を生じる。2つ以上のピックオフから出力される信号が処理されて、ピックオフ間の時間遅延が求められる。2つ以上のピックオフ間の時間遅延は導管を流れる物質の質量流量に比例する。ピックオフから出力される信号は、メータ検証のためにドライバに提供された駆動信号と比較され、導管内の被覆、亀裂、侵食などの状態が検出される。
【0005】
ドライバとピックオフはコイル変換器で構成されていてもよい。コイル変換器は、コイル内の電気エネルギーを機械的運動に変換することができ、従って、上記のドライバになり得る。コイル変換器はまた、機械的運動を電気エネルギーに変換することができ、従って、上記のピックオフとなり得る。その結果、機械的運動(例えば、導管の振動)と電気エネルギーとの間の定量的関係は、コイル変換器内の構成要素の電気的特性に依存する。
【0006】
コイル変換器の電気的特性は、変化するが、温度に関して再現性がある
。例えば、コイル変換器内のコイルの抵抗は、コイルは100°Cのときに常にほぼ所定の値になる。従って、
振動式メータの電子機器は、コイルの温度の変動を補償することができる
。
しかし、高温(350°Cを超えるなど)では、様々な理由で電気的特性を再現できない場合がある
。例えば、一部の絶縁体は、350°Cを超える温度で導体として動作する場合がある。
その結果、要素の電気的特性の再現性の不可能な変動により、例えば、ゼロ流れのオフセットが変動したり、メータの検証結果が不正確になる
。
その結果、高温用のコイル変換器を求めるニーズがある
。
【発明の概要】
【0007】
概要
高温用のコイル変換器が提供される。実施形態に従って、コイル変換器は、導電性ワイヤからなるコイルを含むコイル部分と、導電性ワイヤに近接して配置された電気絶縁体とを備える。
コイルは、350°Cよりも大きい温度範囲にて再現性がある電気的特性を有するように構成される
。」
「【0031】
ゼロ流れオフセットの変化は、350°Cを超える温度などの高温でのみ発生する。ゼロ流れオフセットの変化は、従来技術の振動式メータにおけるピックオフの再現不可能な電気的特性に起因する。例えば、
従来技術の振動式メータにおけるピックオフの導電性ワイヤは、ピックオフが高温にあるときに存在する機械的応力のために機械的クリープを被る可能性がある
。
機械的クリープ故に、導電性ワイヤの抵抗が時間の経過とともに増加するか、導電性ワイヤが単に破損する可能性がある。その結果、導電性ワイヤの抵抗は、高温範囲では再現不可能である
。更に又は或いは、導電性ワイヤ又は他の電気絶縁体のセラミック被覆は、高温で導電する可能性がある。これは、振動式メータのピックオフの導電性ワイヤからの電流の漏れに繋がる。
【0032】
導電性ワイヤ内の機械的応力は、高温におけるピックオフ内の要素の熱膨張が原因である可能性がある。例えば、要素の材料は、異なる又は互換性のない熱膨張係数を有し、それにより、近接する(例えば、接する、隣接するなどの)要素を異なる速度で膨張させる。例えば、導電性ワイヤは、導電性ワイヤとは異なる割合で膨張するセラミック被覆を有する場合がある。この差により、350°C未満の温度では導電性ワイヤに大きな機械的応力が発生しない。しかし、350°Cを超える温度では、セラミック被覆が導電性ワイヤほど膨張していない可能性があり、それによって導電性ワイヤに機械的応力が発生する。同様に、導電性ワイヤが巻き付けられているボビンも、導電性ワイヤに機械的応力を引き起こす可能性がある。
【0033】
上記の記載から理解されるように、ピックオフの電気的特性は、ピックオフが暫くの間、高温になった後にのみ再現できない場合がある。即ち、電気的特性は、例えば、温度が例えば室温から350°Cを超えるまで上昇したときに、所与の温度で再現可能な公称値を有する。しかし、電気的特性はピックオフが一定期間高温に留まった後、電気的特性が公称値から逸脱し始める場合がある。例えば、上記の如く、
ピックオフ内の導電性ワイヤは、温度が上昇するために機械的なクリープが発生する可能性がある
。従って、
電気的特性は、クリープがコイルの機械的特性(例えば、電気抵抗を変化させるのに十分な疲労)または寸法(例えば、断面積の変化)に大きな変化を引き起こすように十分な時間が経過するまで、実質的に再現性を維持する(例えば、公称値の特定の範囲内に留まる)ことができる
。
これらの変化は、ピックオフの温度サイクルによっても発生する可能性がある
。例えば、疲労は、一定期間にわたる温度サイクルが原因でのみ発生する可能性がある。」
「【0046】
材料の動作限界は、文献レビュー(「(est)」で示される)から推定されるか、テストによって定量的に確立される。例えば、白金の410°Cの動作限界は、文献レビューから推定される。文献レビューは、白金の引張強度が410°Cの温度で著しく低いことを示している。従って、白金は410°Cを超える温度で導電性を有し、弾性変形することができるが、白金の導電性ワイヤは、例えば410°Cを超える温度範囲で実質的に再現不可能な導電性を有する。従って、
文献レビューでは、振動式メータで正確な測定値を取得するために、410°Cを超える温度では白金の導電体を使用できないことが示されている
。
【0047】
動作限界の一部には、例えば温度範囲全体で公称値からの大幅な偏差がない再現性のある導電率などの再現性のある電気的特性により、最大500°Cと推定される場合がある。従って、電気的特性は500°Cまで再現可能であるため、プラス記号が使用される。例として、
文献レビューは、ニオブ-タンタル-タングステン合金で構成される導電性ワイヤが、定格500°Cのコリオリ流量計で使用できることを示している
。
【0048】
しかし、
動作限界は高温範囲での導電性ワイヤのテストの結果として確立される場合もある
。例えば、
白金-ロジウム合金の動作限界は430°Cまで確立されている
。動作限界は、導電性ワイヤに近接する電気絶縁体で導電性ワイヤをテストすることによって確立される。」
「【0051】
CTE比較
上記の如く、導電性ワイヤ及び/又は電気絶縁体の熱膨張は、導電性ワイヤ上の機械的応力を引き起こす。その結果、導電性ワイヤの電気的特性は、温度範囲にわたって変化するか、再現性が無い場合がある。この機械的応力は、実質的に同じCTEを持つ導電性ワイヤと電気絶縁体の材料を選択するなど、様々な方法で軽減または排除することができる。例えば、上記の例示的な導電性ワイヤ及びび電気絶縁体を参照することにより、Macor(商標)、Aremco512N(商標)、及び白金-ロジウム合金がほぼ同じCTEを有することが決定され得る。従って、これらの材料から構成されたコイル変換器は、以下でより詳細に説明するように、所与の振動式メータの仕様を満たす動作限界を有する。
【0052】
熱膨張の互換性
熱膨張の互換性がある部品は、高温に晒されても互いの電気的特性に悪影響を及ぼさない。従って、部品は高温用の振動式メータのコイル変換器の一部である。Macor、Aremco512N(商標)、及び白金ロジウム合金が特定の振動式メータで熱膨張に対応するかどうかは、材料の選択だけでなく、コイル変換器の部品の構成(形状、寸法、断面プロファイル、巻線方法、組み立て方法など)によって、部品が互いに熱膨張に対応しているかどうかが決定される。例えば、白金のCTEがMacorのCTEに近い場合でも、この近さは、コイルが所定のMacorのボビンの構成に所定の張力で巻き付けられている場合に不利になる可能性がある。従って、所定のMacorのボビンの構成の材料として白金-ロジウム合金を選択することは、材料の他の利点とともに有利である可能性がある(例えば、白金-ロジウム合金の引張強度は白金よりも大幅に高い)。
【0053】
一例として、Macor(商標)のボビンは、0.830インチの外径を有する円筒形及び0.708インチの直径を有する円周方向の溝を有するように特定され得る。ボビンはまた、0.628インチの内径を有する同軸の穴を有する。これらの仕様では、
導電性ワイヤがボビンの円周方向の溝に巻き付けられているため、白金の動作制限は最大410°Cではなく、350°Cに制限される
。
これは、導電性ワイヤをボビンに巻き付けた後の導電性ワイヤの張力が原因である可能性がある
。反対に、直径0.0050インチ、長さ約33フィートの
白金-ロジウム合金で構成された導電性ワイヤは、文献レビュー後、最大500°Cの推定動作限界を持つ
、
何故なら例えば500°Cまでは機械的クリープが発生しない場合があるからである
。例えば、0.0025-0.0050インチの直径及び/又は33フィート以外の長さなど他の寸法が使用されて、この動作限界を達成することができるが、これらの寸法に限定されない。上記の如く、有効な動作限界は、材料と部品の構成の様々な組み合わせのシミュレーション、テスト工程などを通じて確立することができる。例示的なテスト工程を以下により詳細に説明する。」
「【0058】
図4は、高温が如何に質量流量測定に影響を与えるかを示すグラフ400である。」
「
82
120
0001431753000003.jpg
」
「【0061】
質量流量プロット450を生成するようにテストされた振動式メータのピックオフセンサは、例えば、ニッケル導電性ワイヤ及び金属注入セラミックボビンを含むセラミックから構成されていた。
質量流量の増加は、導電性の金属注入セラミックボビンが350°Cを超えたことが原因である
。」
「【0063】
図5は、高温に対するコイル変換器から生じる安定した質量流量測定を示すグラフ500を示す。」
「
86
119
0001431753000004.jpg
」
「 【0065】
安定した質量流量の測定は、350°Cを超える温度では導電しないボビンが原因である
。例えば、グラフ500を生成するためにテストされた振動式メータで使用されるボビンは、上記のMacorから構成される。グラフ500は、
Macorで構成されたボビンは、コイルが20°Cから430°Cの温度範囲で再現可能な電気的特性を持つことを保証できることを示している
。しかし、判るように、3つの温度サイクルが示される。従って、3つの温度サイクルについて、430°Cまでの有効な動作限界のみが示される。上記の振動式メータ5のような振動式メータの中には、多くの温度サイクルにて電気的特性が再現可能であることを要求するものがある。」
「【0066】
図6は高温を含む温度サイクル中の故障を示すグラフ600を示している。」
「
81
115
0001431753000005.jpg
」
「【0068】
流量スパイク650aは、テストされた振動式メータのコイル変換器の導電性ワイヤの故障が原因である可能性がある。例えば、故障は破損であった可能性があり、それによってコイルの導電性ワイヤが電気的に開いた状態になる。その結果、メータ電子機器は流量スパイク650aで示される、質量流量のスパイクとして解釈される信号をもはや受信しなくなった。この故障は、ボビンと導電性ワイヤが最大430°Cの温度範囲で再現可能な電気的特性を持っていたにもかかわらず、2回の温度サイクル後に導電性が再現可能な電気的特性を持たなかったことを示している。導電性ワイヤは銀で構成されていた。
故障は銀製ワイヤの機械的クリープに依るものであった
、
【0069】
従って、文献レビュー及び/又は他のテストは、350°Cを超える温度範囲にて再現可能な電気的特性を有するが、温度範囲を含む複数の温度サイクルにわたって再現可能な電気的特性を有するコイルを確立するために、導電性ワイヤ及び/又は電気絶縁体のために選択される材料及び/又は構成を提案する。例えば、
文献レビューは純粋な白金が銀と同じかそれより少ない温度サイクルの後に故障することを示している(例えば、白金は銀よりも降伏強度が低い)
。しかし、
白金-ロジウムのような他の材料はそのような故障を受けていない
。」
「【0070】
図7は、高温用のコイル変換器から生じる抵抗測定値を示すグラフである。...(中略)...グラフ700に示されるように、導電性ワイヤは白金-ロジウム合金から構成される。」
「
87
128
0001431753000006.jpg
」
「【0071】
グラフ700は、温度プロット740と抵抗プロット750を含む(第1のコイル及び第2のコイルの測定された抵抗値を備える)。温度プロット740は、約20°Cから約430°Cの範囲として示されているが、20°C未満及び430°Cを超える温度を含む、任意の適切な範囲を使用することができる。抵抗プロット750は、約188オームから約285オームの範囲である。抵抗プロット750は、第1のコイル及び第2のコイルの抵抗が、20°Cから430°Cの全温度範囲にわたって再現可能であることを示している。抵抗プロット750はまた、350°Cから430°Cの高温範囲を含む複数の温度サイクルに亘って抵抗が(故障することなく)再現可能であることを示している。即ち、
白金-ロジウム合金を含む導電性ワイヤは、複数の温度サイクルに亘って再現可能な電気的特性を有する
。」
「【0075】
図9は、高温用のコイル変換器から生じる安定した質量流量測定を示すグラフ900を示す。
コイル変換器は、
図7及び図8に関して記載された
白金-ロジウム合金の導電性ワイヤから構成される
。」
「
87
125
0001431753000007.jpg
」
「【0076】
グラフ900は、温度プロット940及び質量流量プロット950を含む。温度プロット940及び質量流量プロット950は、テストが一時停止されたギャップを含む。温度プロット940は、約20°Cから約430°Cの範囲として示されているが、20°C未満及び430°Cを超える温度を含む任意の適切な範囲を使用することができる。質量流量プロット650は、約0lbm/分から約-2lbm/分の範囲として示されている。温度プロット640と質量流量プロット650を比較することにより、
温度プロット640が増加しても、質量流量プロット650が大きく変化しないことを理解することができる
。
理解されるように、質量流量プロット650は複数の温度サイクルに亘って、約ゼロlbm/分のままである
。」
「【0082】
方法1000は種々お材料を用いる。例えば、導電性ワイヤは磁性材を含む。更に又は或いは、導電性ワイヤはニッケル、白金-ロジウム合金、白金-イリジウム合金、及びニオブ-タンタル-タングステン合金の何れかを含む材料を含む。」
原査定の拒絶の理由のうち、本願発明に対する理由2(進歩性の欠如)の概要は、次の理由を含むものである。
理由2(進歩性の欠如) 本願発明は、出願前に発行された下記の引用文献に記載された発明に基づいて、出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開平2-150724号公報
(1) 引用文献1に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用された、本願の出願前に発行された文献である特開平2-150724号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の記載がある(なお、当合議体により、後記(2)の引用発明の認定に直接用いる記載に下線を付した。)。
ア 特許請求の範囲
「(1) 処理手段に電気的に接続可能で、駆動信号を該流量計と該流量計に生じた変歪信号を処理して流体流の質量流量率を表す出力を与える手段とに与える手段を含んでおり、該流量計は下限が260°C以上の温度範囲で作動可能の高温コリオリ質量流量計にして、
該流量計を水密的に包囲する手段と、
該包囲手段内に配置された不活性ガスと、
質量流量率が測定される流体の通過を受入れ、前記温度範囲において生ずるカーバイド沈殿を実質的に生じない流管手段と、
該流管手段を装架する手段と、
前記駆動信号に応答して前記流管を装架手段に対して振動せしめる高温駆動手段と、
前記流管手段を通る流体流によって生ずる該流管手段の変歪を検知し該変歪を表す変歪信号を発生する高温検知手段と、を含み、
前記駆動および検知手段が、
高温マグネット手段と、
高温コイル手段と、
複数の導体を有し前記高温コイル手段に隣接して装架され、前記包囲手段に対して静止関係にある端子ブロック手段と、
1つ以上の非絶縁電導体を有し、前記駆動手段のコイル手段と前記検知手段とを隣接する端子ブロック手段に接続し、前記コイル手段を隣接する端子ブロック手段に電気的に接続したときU字形の形状をなすような寸法を有している高温支持構造手段と、
前記包囲手段を通して信号を導く水密的に封止された通路を与えるために複数の貫通電導体を有し、該信号が前記駆動手段と検知手段とからの前記駆動信号と変歪信号とを含んでいる、差込み接続手段と、
前記端子ブロック手段のそれぞれの導体を前記差込み接続手段のそれぞれの導体の対応する内方端に電気的に接続する複数の内部絶縁リード線と、前記差込み接続手段と処理手段とのそれぞれの導体の前記外方端の前記導体のそれぞれの間に電気的接続を少くとも部分的に与える複数の外部絶縁リード線とを含む高温コリオリ質量流量計。
...(中略)...
(6) 前記
コイルが、
金属のワイヤポストと金属の取付インサートとを有し、射出成型セラミック材料から形成され、前記マグネットを収容する環状開口を長手方向軸線に沿って有する
中空円筒形ボビンと、
ボビンの外部の中間部の周りに位置し、多数巻回のワイヤコイルを有し、各巻回が互いにセラミック材料で絶縁され、その端部が前記ワイヤポストに接続されている、
コイルマトリックスと、を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の高温コリオリ質量流量計。」
イ 2ページ左下欄13行~16行
「〔産業上の利用分野〕
本発明はコリオリ質量流量計に関し、特に比較的高温、例えば約摂氏260度以上で使用するに適した質量流量計に関する。」
ウ 2ページ右下欄1行~3ページ右上欄3行
「一般的に、例えば米国特許第4,491,025号明細書に記載されたコリオリ質量流量計はそれぞれ典型的にはU字形をなす1または2の平行な流管を含む、各流管は磁気的駆動組立体によって駆動されて軸線の周りに振動して回転基準フレームを生ずる。
...(中略)...
上述コリオリ流量計は磁気的速度センサと磁気的駆動組立体とに別個のワイヤコイルを使用している。一般的に2管式コリオリ流量計は2つの流管の側部の対向位置に2つの磁気的速度センサを有し両流管に対して単一の磁気的駆動組立体を両流管の対応する端部から等距離にある位置の対向する点に設ける。特に、各磁気的速度センサは2つの流管の一方に装架された検知コイルを具えて製造される。検知コイルと同軸に運動するマグネットが他方の流管に装架される。
マグネットと検知コイルとがそれぞれの差動的サイン波状流管運動によって相対的に差動的サイン波状に運動すると、マグネットは検知コイルにサイン波状電圧を発生する
。各検知コイルに発生した電圧は配線を経由して外部電子回路に導かれ、ここで2つの電圧の関数として処理流体の質量流量率が決定される。駆動組立体検知コイルと類似の構造を有する。2管式流量計の場合、駆動組立体の一部を構成する駆動コイルは流管の一方に装架され、同様に駆動組立体の一部を構成するマグネットはコイル内で同軸に運動可能に他方の流管の対応する位置に装架される。外部電子回路に発生したサイン波状電圧は同様に配線を介して駆動コイルに印加される。この電圧によって駆動組立体のマグネットと駆動コイルとの双方に差動的サイン波状の振動が生じ、両流管にそれぞれの曲げ軸線の周りに対抗する振動運動を生ずる。」
エ 4ページ左下欄9行~13行
「従ってコリオリ質量流量計を温度約260°C以上望ましくは約427°Cまでの範囲で冷却系統の必要なしに確実に作動せしめる必要性がある。流量計は構造が簡単で、安価で製造容易であることが要求される。」
オ 5ページ左上欄10行~16行
「〔作 用〕
本発明によれば比較的高温、例えば
約260°Cないし427°C
(華氏500~800度)
で高い信頼性で作動するコリオリ質量流量計
が得られる。
この流量計は冷却系統を必要としない。
この流量計は構造が簡単で、安価で、製造が容易である。」
カ 5ページ右上欄2行~左下欄17行、第1図
「〔実 施 例〕
以下に、図面を引用して本発明の詳細な説明する。第1図、第2図に本発明による望ましい実施例として高温コリオリ質量流量計10を示す。」
「第1図
120
126
0001431753000008.jpg
」
「詳細には
流量計10は、対応するマニフォルド12、12’に固定された2重流管11、11’を含む
。マニフォルド12、12’は中空のシリンダであるスペーサ13によって整合保持される。マニフォルド12、12’とスペーサ13とはそれぞれ、316Lおよび304L型のステンレス鋼製とする。マニフォルド12、12’は流量計10を通る流れをつくる。図において、”L”と記載した左側が入口側で、”R”と記載した右側が出口側となされている。左側マニフォルド12は入力流を2分割して流管11、11’に導く。右側マニフォルド12’は2つの流管からの流れを統合して出口流をつくる。詳細は後述するハウジング14が流管11、11’を完全に囲む。2重流管の場合1両流管の間にプレース15が設けられる。プレース15はマニフォルド12、12’に近接して等距離に設けられる。さらに、流量計には磁気的駆動部組立体16が設けられて流管11、11’を音叉の両フォークと同様な対向するサイン波状に共鳴振動せしめる。
所望の温度範囲で作動可能とするために、流管11、11’は望ましくはニッケル・クロム・モリブデン合金(ハステロイ:キャボット社の商標)または同等品製とする。これらの合金は所望の前述温度範囲でカーバイド沈殿を生じない。すなわち、用語「流管」は流量計の所望の作動温度範囲でカーバイド沈殿を生ずることのないもので、ハステロイ合金C22またはC276または同等品を含む、また、用語「高温」は約260°Cないし427°C(華氏500~800度)を意味する。勿論本発明の流量計は常温でも完全に良好に作動するが、高温状態での使用が望ましい。」
キ 5ページ右下欄20行~6ページ左下欄16行、第2図、第3A図~3D図
「
流量計10は速度センサを含む
。
速度センサは流管11、11’の実際の差動運動を全運動経路について直線的に代表するアナログ信号を与えるアナログ速度センサである
。流管11、11’が振動し、流体が内部に流れると、流管は運動する流体によるコリオリ力によりそれぞれ軸線A-A、A’-A’(第2図参照)の周りに偏歪する。」
「第2図
124
58
0001431753000009.jpg
」
「この偏歪は速度センサ17、18によって監視される。流量計10の作動、特にコリオリ力の発生と流量率の測定は米国特許第4,491,025号明細書に記載されている。速度センサ17、18と磁気的駆動組立体16との構成について、特に高温での作動についての付加的要求は後述する。
第3A図~第3C図に示すように、速度センサ17、18と磁気的駆動組立体16とは流管11、11’にV字形の2又金属支持クリップ20を介して装架される。クリップは流管11、11’に真空溶着される。」
「第3A図~3D図
107
135
0001431753000010.jpg
」
「
速度センサ
17、18と磁気的駆動組立体16と
を構成する
各
コイル22および
各
マグネット24
に対して別個の支持クリップが設けられる。構造と取付けとを簡略化するために各支持クリップ20は同等で垂直方向に整合する開口26を両脚を貫通して有し、316Lまたは304Lステンレス鋼から製造する。支持クリップは2つの流管について同等に位置する。...(中略)...単一管または2重管コリオリ質量流量計に使用する速度センサ17、18の作動は前述米国特許第4,491,025号明細書に記載されている。」
ク 6ページ右下欄3行~5行
「磁気的駆動組立体16と速度センサ17、18とが前述
高温温度範囲で満足に作動するためには、そ
れら
の材料を慎重に選択する必要がある
。」
ケ 6ページ右下欄14行~7ページ右上欄6行
「第3A図、第3B図および第3D図に示す
コイル22はその長手方向軸線に同軸に延長する開口34を有する円筒形セラミックボビン40から成る組立体を含む
。各速度センサのボビンも適当な材料製とする必要があるが、磁気的駆動組立体のボビンはステンレス鋼などの適当な金属物質から製造することができる。
コイルマトリックス41がボビン40の外部に且つボビン40の両端の中間位置に設けられ
る。
コイルマトリックスは細い銀線のコイルで各巻回は硬化セラミックスラリによって
(第3B図参照)
分離されている
。
銀に代えて金または白金も使用可能である
が、銀は安価である。望ましくはボビン40を射出成型セラミック製とし、金属インサートすなわち取付インサート44と、平坦な金属ワイヤ端子ポスト46とを含む。インサート44とポスト46とはステンレス鋼製とすることが望ましい。射出成型セラミックの使用はボビンの製造を単純化する。第1に金属インサートを型内に正確に位置決めすることが炉内成形セラミックに対応するインサートを配置するに比して容易である。第2に射出成型セラミックは炉内成形セラミックに対比して寸法精度が高い。銀線42は直径約5ミルでボビン40の間隔をおかれたフランジ48間に巻かれる。
線42をボビンに巻くと
線は珪酸ナトリュームセラミックスラリによって被覆され
る。次にボビンを空気中または炉内で乾燥させる。スラリは乾燥すると、スラリと線とは固体マトリックスを形成する。スラリは線の有効直径を増加させボビン上の巻回の数を制限するが、
スラリの使用によって線の巻回をセラミックマトリックス内に確実に位置決めし、高温での作動中に巻回が互いに電気的に短絡することを確実に防止
する。」
コ 7ページ右上欄16行~右下欄1行
「さらに、本発明によれば
ボビンおよびセラミックスラリの材料は高温で金属酸化物を含まないものとする
。詳細には約427°Cにおいて自由酸素を含む厳しい還元性雰囲気が存在して大部分の金属酸化物が構成金属に還元される。こうしてボビン内の酸化物内の金属はコイル上に沈積してコイルを電導性とし、過剰な信号、少くとも誤差信号を与える。また、室温でボビン内に金属酸化物があるときはこれら酸化物は化学的に結合したもので高温で還元しないものである必要がある。なお、本発明の用語「コイル」とはセラミックボビン上に巻かれてセラミックスラリで絶縁された金属線を含み、所望の作動温度範囲においてを含む厳しい還元性雰囲気が存在して大部分の金属酸化物が構成金属に還元される。こうしてボビン内の酸化物内の金属はコイル上に沈積してコイルを電導性とし、過剰な信号、少くとも誤差信号を与える。
また、室温でボビン内に金属酸化物があるときはこれら酸化物は化学的に結合したもので高温で還元しないものである必要がある。なお本発明の用語「コイル」とはセラミックボビン上に巻かれてセラミックスラリで絶縁された金属線を含み、所望の作動温度範囲において還元される金属酸化物を含まないものをいう。同様に、用語「駆動組立体」および「速度センサ」は高温マグネットおよびコイルを含む。」
(2) 引用発明の認定
ア 前記(1)キの摘記事項において、流量計10が含む、第3A図~第3D図に記載された速度センサ17、18の詳細が開示されているところ、「速度センサ17、18の作動は前述米国特許第4,491,025号明細書に記載されている」との記載を踏まえると、第3A図~第3D図に記載された速度センサ17、18は、米国特許第4,491,025号明細書に記載されたものであると認められる。
他方で、前記(1)ウの摘記事項において、「米国特許第4,491,025号明細書に記載されたコリオリ質量流量計」とあるから、「米国特許第4,491,025号明細書に記載されたコリオリ質量流量計」に関する前記(1)ウの記載は、前記(1)キの第3A図~第3D図に記載された速度センサを含む流量計10にも当てはまるといえる。
そうすると、第3A図~第3D図に係る発明を認定するに当たって、前記(1)ウの摘記事項を援用することは許容されるといえる。
イ 前記アを踏まえて前記(1)に摘記した引用文献1の記載事項を総合すると、引用文献1には、第3A図~第3D図に係る次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。なお、認定の根拠となる記載箇所を括弧内に示した。
<引用発明>
「約260°Cないし427°Cで高い信頼性で作動する、対応するマニフォルド12、12’に固定された2重流管11、11’を含むコリオリ質量流量計が含む速度センサであって、((1)オ、カ、キ)
速度センサは、流管11、11’の実際の差動運動を全運動経路について直線的に代表するアナログ信号を与えるアナログ速度センサであり、((1)キ)
コイル22およびマグネット24により構成され、((1)キ)
コイル22は、中空円筒形ボビン40と、コイルマトリックス41と、を含み、((1)ア、ケ)
高温温度範囲で満足に作動するためには、その材料を慎重に選択する必要があるものであり、((1)ク)
マグネット24とコイル22とがそれぞれの差動的サイン波状流管運動によって相対的に差動的サイン波状に運動すると、マグネット24はコイル22にサイン波状電圧を発生するものであり、(ア、(1)ウ、キ)
コイル22はその長手方向軸線に同軸に延長する開口34を有する円筒形セラミックボビン40から成る組立体を含んでおり、((1)ケ)
コイルマトリックス41がボビン40の外部に且つボビン40の両端の中間位置に設けられ、コイルマトリックスは細い銀線のコイルで各巻回は硬化セラミックスラリによって分離されており、銀に代えて金または白金も使用可能であり、((1)ケ)
線は珪酸ナトリュームセラミックスラリによって被覆され、スラリの使用によって線の巻回をセラミックマトリックス内に確実に位置決めし、高温での作動中に巻回が互いに電気的に短絡することを確実に防止し、((1)ケ)
ボビンおよびセラミックスラリの材料は高温で金属酸化物を含まないものとした、((1)コ)
速度センサ。」
(1) 引用文献2に記載された事項及び技術常識1の認定
ア 引用文献2に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である特開2017-187455号公報(以下「引用文献2」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「【0019】
<ヒーター線の断線について>
TGとDTA、又はTGとDSCを組み合わせた同時熱分析装置においては、加熱対象の試料を収容する保護管を加熱する手段として
ヒーター線(保護管に巻き付けられている)
を用いている。試料の最高温度を1500°Cにするため、酸化雰囲気(空気中)での使用を考慮して加熱手段としてのヒーター線の材料に白金合金を用いることが多い。試料とヒーター線は10mm以上の距離を離して設置されており、この間にアルミナ製の保護管やヒーター線を保持するボビンがあり熱抵抗となっている。この熱抵抗により、ヒーター線は試料の温度よりも高くなり、例えば、試料温度を20°C/分で昇温させて試料温度を最高1500°Cにするとき、ヒーター線の温度は1600°Cを超えてしまう。
【0020】
図1は、ヒーター線の温度とその引張強度の関係を示す図である(出典:金属データブック、日本金属学会編、丸善出版(株)発行)
。
図1を参照すると、白金をヒーター線としたもの(実線11)は、温度が1400°Cを超えると引張強度は小さくなり、僅かの引張力で断線してしまう
。
これを断線しにくくするために、白金とロジウムの合金をヒーター線としたものがある
が(図1における破線13と一点鎖線14)、ヒーター線の温度が1600°Cを超えると引張強度は小さくなり、僅かの引張力で断線することが多い。」
「
87
109
0001431753000011.jpg
」
イ 技術常識1の認定
前記アに摘記した引用文献2の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識1」という。)
<技術常識1>
「巻回され張力がかかる状況下において、白金よりも白金ロジウムの方が、耐熱性が高いこと。」
(2) 引用文献3に記載された事項及び技術常識2の認定
ア 引用文献3に記載された事項
当審において新たに引用する、本願の出願前に発行された文献である「井上達雄、金属材料の実働条件下における熱疲労に関する研究、第1章 緒論、京都大学学位論文、1970年1月23日発行、p.1-5」(以下「引用文献3」という。)には、次の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものであり、以下同様である。
「
高温で使用される各種構造物
,たとえはジェットエンジン
(1)
,内燃機関
(2)
,熱間圧延ロール
(3)
,原子炉
(4)
など
においては,その始動休止または運転中に,温度の急激な変化をうけることが多い
。このような温度変動をうけて生ずる熱膨脹あるいは収縮が何らかの原因で拘束されると,材料内部には妨げられた変形に対応する熱応力が発生し,
これが繰返されることによって材料は熱疲労損傷を受ける
。
構造物における熱応力・熱ひずみの発生の原因
には,種々のものが挙げられるが,大別すると次のようになる。
(i) 構造物の一要素内の温度こう配
(ii) 構造物の要素間の温度差
(iii)
線膨張係数の異なる材料の組合せ
」(1ページ2~12行)」
イ 技術常識2の認定
前記アに摘記した引用文献3の記載事項に例示されているように、次の技術事項は、当業者にとって技術常識であったと認められる。(以下「技術常識2」という。)
<技術常識2>
「高温で使用される金属材料は、金属材料が使用される機器の運転や運転休止等に際して温度の急激な変化を受けることが多く、このような温度変動が繰返されることによって、線膨張係数の異なる材料の組合せであること等を原因とした熱疲労損傷を受けるおそれがあること。」
(1) 対比分析
本願発明と引用発明を対比する。
ア 構成X’(X)の観点
(ア) 構成X’は、「高温用のコイル変換器(200)」の発明であることを特定するものである。
(イ) 引用発明の「速度センサ」は、「約260°Cないし427°Cで高い信頼性で作動する」「コリオリ質量流量計が含む」ものであって、「高温温度範囲で満足に作動する」ものであるから、高温用のものであるといえる。
(ウ)a 本願明細書の発明の詳細な説明における「ドライバとピックオフはコイル変換器で構成されていてもよい。...(中略)...。コイル変換器はまた、機械的運動を電気エネルギーに変換することができ、従って、上記のピックオフとなり得る。」(【0005】)との記載を踏まえると、本願発明における「コイル変換器」には、機械的運動を電気エネルギーに変換するものが含まれると解するのが相当である。
b そして、引用発明の「速度センサ」は、「コイル22およびマグネット24により構成され」、「マグネット24とコイル22とがそれぞれの差動的サイン波状流管運動によって相対的に差動的サイン波状に
運動する
と、マグネット24はコイル22にサイン波状
電圧を発生する
ものであ[る]」ため、コイル22のマグネット24に対する運動をコイル22に発生する電圧に変換するものといえるから、前記aを踏まえると、引用発明の「速度センサ」は、本願発明の「コイル変換器(200)」に相当する。
(エ) したがって、「高温用のコイル変換器(200)」の発明である本願発明と「速度センサ」の発明である引用発明は、「高温用のコイル変換器」の発明である点において一致する。
イ 構成Aの観点
(ア) 構成Aは、「導電性ワイヤ(212a)からなるコイル(212)を含むコイル部分(210)」を備えることである。
(イ) 引用発明における「銀線」又は「銀に代えて金または白金」を「使用」した「線」は、本願発明における「導電性ワイヤ(212a)」に相当する。
(ウ) 引用発明における「コイルマトリックス41」は、「銀線」又は「銀に代えて金または白金」を「使用」した「線」と「硬化セラミックスラリ」を含むことが明らかである。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明における「コイル212は導電性ワイヤ212aとセラミック被覆212bを含む」(【0038】)との記載を踏まえると、本願発明において「コイル(212)」が「導電性ワイヤ(212a)からなる」ことは、「コイル(212)」が「導電性ワイヤ(212a)」を
含む
ことを包摂すると解するのが相当であるから、引用発明における「コイルマトリックス41」は、前記(イ)も踏まえると、本願発明における「導電性ワイヤ(212a)からなるコイル(212)」に相当する。
(エ) 引用発明における「コイル22」は、「中空円筒形ボビン40と、コイルマトリックス41と、を含」むから、前記(ウ)も踏まえると、本願発明における「導電性ワイヤ(212a)からなるコイル(212)を含むコイル部分(210)」に相当する。
(オ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Aの観点に関し、次の点において一致する。
「導電性ワイヤからなるコイルを含むコイル部分」を備える点。
ウ 構成Bの観点
(ア) 構成Bは、「導電性ワイヤ(212a)に近接して配置された電気絶縁体」を備えることである。
(イ)a 引用発明における「硬化セラミックスラリ」は、「コイル22」における「線」を「被覆」する「珪酸ナトリュームセラミックスラリ」であるから、「細い銀線」又は「銀に代えて金または白金」を「使用」した「線」の近傍に配置されている電気絶縁体であるといえる。
b また、引用発明における「円筒形セラミックボビン40」は、「セラミック」であって、「コイルマトリックス41」がその「外部に」「設けられ」るから、「細い銀線」又は「銀に代えて金または白金」を「使用」した「線」の近傍に配置されている電気絶縁体であるといえる。
c そのため、引用発明における「硬化セラミックスラリ」又は「円筒形セラミックボビン40」は、本願発明における「導電性ワイヤ(212a)に近接して配置された電気絶縁体」に相当する。
(ウ) したがって、本願発明と引用発明は、構成Bの観点に関し、次の点において一致する。
「導電性ワイヤに近接して配置された電気絶縁体」を備える点。
エ 構成Cの観点
(ア) 構成Cは、「コイル(212)は、350°Cよりも大きい温度範囲を少なくとも含む複数の温度サイクルにわたって再現性がある導電性を有するように構成される」ことである。
(イ) 引用発明は、本願発明の構成Cに相当する構成を備えるかどうかが明らかでないから、本願発明と引用発明は、構成Cの観点に関し、次の点において相違する。
導電性ワイヤからなるコイルについて、
本願発明においては、「350°Cよりも大きい温度範囲を少なくとも含む複数の温度サイクルにわたって再現性がある導電性を有するように構成される」のに対して、
引用発明においては、「細い銀線のコイルでは硬化セラミックスラリによって分離されており、銀に代えて金または白金も使用可能であ[る]」点。
(2) 一致点及び相違点
前記(1)の対比分析の結果をまとめると、本願発明と引用発明は、次のアに示す一致点において一致し、後記イに示す相違点において相違すると認められる。
ア 一致点
「高温用のコイル変換器であって、
導電性ワイヤからなるコイルを含むコイル部分と、
導電性ワイヤに近接して配置された電気絶縁体とを備える、
コイル変換器」である点。
イ 相違点
導電性ワイヤからなるコイルについて、
本願発明においては、「350°Cよりも大きい温度範囲を少なくとも含む複数の温度サイクルにわたって再現性がある導電性を有するように構成される」のに対して、
引用発明においては、「細い銀線のコイルでは硬化セラミックスラリによって分離されており、銀に代えて金または白金も使用可能であ[る]」点。
(1) 技術常識について
前記5(1)イにおいて技術常識1として認定したとおり、「巻回され張力がかかる状況下において、白金よりも白金ロジウムの方が、耐熱性が高いこと」は技術常識である。
また、前記5(2)イにおいて技術常識2として認定したとおり、「高温で使用される金属材料は、金属材料が使用される機器の運転や運転休止等に際して温度の急激な変化を受けることが多く、このような温度変動が繰返されることによって、線膨張係数の異なる材料の組合せであること等を原因とした熱疲労損傷を受けるおそれがあること」は技術常識である。
(2) 技術常識1を踏まえた「線」の材料選択について
ここで、引用発明において、「高温温度範囲で満足に作動するためには、その材料を慎重に選択する必要がある」としており、高温の温度範囲においても作動するように耐熱性のある材料を選択すべきという設計指針が示されている。
引用発明においては、「コイルマトリックス41」における「線」(本願発明における「導電性ワイヤ(212a)」に相当する。前記6(1)イ(イ)参照。)の材料として「白金」が例示されているところ、上記設計指針に従って、前記技術常識1を踏まえ、「白金」よりも高い耐熱性を期待できる「白金ロジウム」を「線」の材料として採用することは、当業者にとって自明な設計事項にすぎない。
そして、本願明細書の発明の詳細な説明における【0053】、【0069】~【0076】等の記載を参酌すると、「白金ロジウム」を採用した引用発明における「線」は、結果的に、「350°Cよりも大きい温度範囲を少なくとも含む複数の温度サイクルにわたって再現性がある導電性を有する」ことになるといえる。
(3) 技術常識2を踏まえた「コイル」に係る構成の導出
また、引用発明における「コイルマトリックス41」(本願発明における「コイル(212)」に相当する。前記6(1)イ(ウ)参照。)は、金属材料を含み高温(427°C)での使用が想定されているところ、前記技術常識2を踏まえると、材料間の線膨張係数が異なることによって、温度の急激な変化が繰返された場合に熱疲労損傷を受けるおそれがあることは、当業者にとって自明な課題である。
したがって、前記(2)に説示したとおり、「高温温度範囲で満足に作動するためには、その材料を慎重に選択する必要がある」とする設計指針に従って、引用発明において、「線」の材料として「白金ロジウム」を採用した場合に、上記自明な課題を解決すべく、「硬化セラミックスラリ」として、それ自体が427°Cでの使用に耐えうるものであり、「白金ロジウム」との線膨張係数の差ができるだけ小さい材料を選定することで、「コイルマトリックス41」を、427°Cを含む温度の急激な変化の繰返しに耐え得るものとして、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、技術常識に基づく材料の好適化であって、当業者が備える通常の創作能力の発揮にすぎない。
(4) 総合評価
前記(1)~(3)において検討したとおり、引用発明において、前記相違点に係る本願発明の構成を備えるようにすることは、引用発明並びに技術常識1及び2に基づいて当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本願発明が奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測・発見困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。
したがって、本願発明は、引用発明並びに技術常識1及び2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
請求人は審判請求書において、引用文献1では、単に包括的な化合物の名前が開示されているのみで、十分に有効な特定の化合物が開示されておらず、260~427°Cの間で「還元されない」特定の珪酸ナトリウム組成物を製造するのに十分な情報を、ましてやこの温度範囲で確実に動作するとされる速度センサ17、18を製造するのに十分な情報を、当業者に提供していないから、引用文献1が、350°Cを超える温度範囲にわたって再現可能な電気的特性を有するように構成されたコイルを開示しているとはいえない旨主張している。
しかしながら、引用発明における「硬化セラミックスラリ」として、必ずしも請求人が主張するような珪酸ナトリウム組成物を採用する必要がない上、引用文献1に具体的な材料の示唆がないとしても、周知である様々な絶縁材料の中から適切な材料を選択しようとすることは、当業者が備える通常の創作能力の発揮にすぎないから、請求人の主張は、前記7(4)の結論を左右するものでない。
以上検討のとおり、本願発明は、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。