sokuhyo

Trademark Appeal Case

請求項訂正の適否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023701378
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7298151号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、〔9-17〕について訂正することを認める。
特許第7298151号の請求項1、3、7、9、11、13及び16に係る特許を維持する。
特許第7298151号の請求項2、4~6、8、10、12、14、15及び17に係る特許異議の申立てを却下する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯の概要

特許第7298151号の請求項1~17に係る特許についての出願は、平成30年12月26日(優先権主張 平成29年12月26日)に出願され、令和5年6月19日にその特許権の設定登録がされ、同月27日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年12月27日に特許異議申立人 井上憲介(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。

以降の手続きの経緯は次のとおりである。

令和6年 3月19日付け 取消理由通知

同年 5月22日 訂正請求書、意見書の提出(権利者)

同年 7月19日 意見書の提出(申立人)

同年10月 9日付け 取消理由通知(決定の予告)

同年12月17日 訂正請求書、意見書の提出(権利者)

令和7年 2月21日 意見書の提出(申立人)

同年 5月21日付け 取消理由通知(決定の予告)

同年 7月25日 訂正請求書、意見書の提出(権利者)

以下、令和7年7月25日に提出された訂正請求書を「本件訂正請求書」といい、本件訂正請求書による訂正を「本件訂正」という。

なお、申立人に令和7年8月7日に訂正請求があった旨の通知を送付し期間を指定して意見を求めたが、申立人は意見書を提出しなかった。

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

本件訂正請求における請求の趣旨は、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-8〕、〔9-17〕について訂正することを求めるものであり、その具体的内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示す)。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に

「異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置において生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差を低減する方法であって、少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を用いることを特徴とし、

ここで、該少なくとも一種の非イオン性界面活性剤は、

(a)酵素を含有する生化学検査試薬を用いた生化学自動分析装置における操作の場面で、金属製試薬プローブに接触するように用いられるか、又は、

(b)金属製試薬プローブに接触する溶液中に非イオン性界面活性剤を含有させて用いられる、測定誤差の低減方法。」

と記載されているのを

「異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置において生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差を低減する方法であって、

前記生化学検査試薬は、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬であって、第一試薬及び第二試薬を含み、

前記第一試薬は、pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び

少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含み、

ここで、該少なくとも一種の非イオン性界面活性剤は、

素を含有する生化学検査試薬を用いた生化学自動分析装置における操作の場面で、金属製試薬プローブに接触するように用いられ

前記非イオン性界面活性剤は、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1 種の非イオン性界面活性剤である、

測定誤差の低減方法

(但し、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体を使用する方法を除く)

。」

に訂正する。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に

「前記試薬プローブの少なくとも一部がステンレス製である、請求項1又は2に記載の測定誤差の低減方法。」

と記載されているのを

「前記試薬プローブの少なくとも一部がステンレス製である、請求項

1に

記載の測定誤差の低減方法。」

に訂正する。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項5を削除する。

(6)訂正事項6

特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(7)訂正事項7

特許請求の範囲の請求項7に

「前記生化学検査試薬のpHが5~10である、請求項1~6のいずれかに記載の測定誤差の低減方法。」

と記載されているのを

「前記生化学検査試薬のpHが

6.0

~10である、請求項

1又は3

に記載の測定誤差の低減方法。」

に訂正する。

(8)訂正事項8

特許請求の範囲の請求項8を削除する。

(9)訂正事項9

特許請求の範囲の請求項9に

「異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置に用いられる場合に生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差が低減された生化学検査試薬であって、酵素と共に少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含み、且つ、金属製試薬プローブに接触するように用いられることを特徴とする、生化学検査試薬。」

と記載されているのを

「異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置に用いられる場合に生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差

低減

するための

生化学検査試薬であって、

前記生化学検査試薬は、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬であって、第一試薬及び第二試薬を含み、

前記第一試薬は、pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び

少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含み、

前記非イオン性界面活性剤は、金属製試薬プローブに接触するように用いられることを特徴とし、

前記非イオン性界面活性剤が、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン( 登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、

生化学検査試薬

(但し、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体と組みわせて使用される生化学検査試薬を除く)

。」

に訂正する。

(10)訂正事項10

特許請求の範囲の請求項10を削除する。

(11)訂正事項11

特許請求の範囲の請求項11に

「前記試薬プローブの少なくとも一部がステンレス製である、請求項9又は10に記載の試薬。」

と記載されているのを

「前記試薬プローブの少なくとも一部がステンレス製である、請求項

9に

記載の試薬。」

に訂正する。

(12)訂正事項12

特許請求の範囲の請求項12を削除する。

(13)訂正事項13

特許請求の範囲の請求項13に

「前記生化学検査が、コレステロール測定検査である、請求項9~12のいずれかに記載の試薬。」

と記載されているのを

「前記生化学検査が、コレステロール測定検査である、請求項9

又は11

に記載の試薬。」

に訂正する。

(14)訂正事項14

特許請求の範囲の請求項14を削除する。

(15)訂正事項15

特許請求の範囲の請求項15を削除する。

(16)訂正事項16

特許請求の範囲の請求項16に

「前記生化学検査試薬のpH が5~10である、請求項9~15のいずれかに記載の試薬。」

と記載されているのを

「前記生化学検査試薬のpH が

6.0

~10である請求項9

、11及び13

のいずれかに記載の試薬。」

に訂正する。

(17)訂正事項17

特許請求の範囲の請求項17を削除する。

2 一群の請求項

訂正前の請求項1~8について、請求項2~8はいずれも請求項1を直接引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~8に対応する訂正後の1~8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

訂正前の請求項9~17について、請求項10~17はいずれも請求項9を直接引用するものであって、訂正事項9によって記載が訂正される請求項9に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項9~17に対応する訂正後の9~17は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1

ア 訂正の目的

訂正前の請求項1に係る発明においては、「生化学検査試薬」について、酵素が含まれることだけが特定されている。これに対し、訂正後の請求項1に係る発明においては、

「前記生化学検査試薬は、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬であって、第一試薬及び第二試薬を含み、

前記第一試薬は、pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含み」

との記載により、生化学検査試薬の測定対象を特定するとともに、生化学検査試薬が、第一試薬と第二試薬を含むこと、第一試薬中の酵素の種類及び濃度、pHを特定するとともに、非イオン性界面活性剤が含まれることを限定する。

訂正前の請求項1には、

「(a)酵素を含有する生化学検査試薬を用いた生化学自動分析装置における操作の場面で、金属製試薬プローブに接触するように用いられるか、又は、

(b)金属製試薬プローブに接触する溶液中に非イオン性界面活性剤を含有させて用いられる、」

と記載され、「少なくとも一種の非イオン性界面活性剤」の使用態様に関し、代替的な二通りの記載がある。これに対して、訂正後の請求項1には、当該二通りの使用態様のうち、前者(「酵素を含有する生化学検査試薬を用いた生化学自動分析装置における操作の場面で、金属製試薬プローブに接触するように用いられ、」)だけを記載することにより、訂正後の請求項1に係る発明において、「少なくとも一種の非イオン性界面活性剤」の使用態様を特定し、限定する。

訂正前の請求項1に係る発明において、「少なくとも一種の非イオン性界面活性剤」の種類は特定されていない。これに対し、訂正後の請求項1に係る発明は、

「前記非イオン性界面活性剤が、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン( 登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、」との記載により、「少なくとも一種の非イオン性界面活性剤」の種類を特定し、限定する。

訂正前の請求項1に係る発明においては、抗体の使用については特定されていない。これに対し、訂正後の請求項1に係る発明においては、「但し、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体を使用する方法を除く」との記載により、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体を使用しないことを特定し、限定する。

よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする。

イ 新規事項追加の有無

訂正事項1のうち、訂正後の「前記生化学検査試薬は、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬であって、」との記載は、訂正前の請求項5の「前記生化学検査試薬が、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬である」との記載に基づくものである。

訂正事項1のうち、訂正後の「第一試薬及び第二試薬を含み、」との記載は、明細書の段落0013の「生化学検査試薬が複数の試薬から構成される場合(例えば、第一試薬と第二試薬、第一試薬と第二試薬と第三試薬とから構成される場合)、」との記載、段落0054~0060、0064~0073、0077~0082に記載されている実施例2~4の「高密度リポタンパク(HDL)コレステロール測定試薬」の組成についての記載(例えば、段落0054の「(1)試薬の調製

<組成G-1>

第一試薬

80.0mM ADA緩衝液(pH 6.50)

1.00U/mL コレステロールエステラーゼ(東洋紡製COE-301)

3.00U/mL コレステロールオキシダーゼ(東洋紡製COO-321)

2.00U/mL ペルオキシダーゼ(東洋紡製)

0.200g/L N-エチル-N-スルホプロピル-m-アニシジン

0.900g/L コール酸

1.000g/L エマルゲンA60(花王社製)

第二試薬

100.0mM MOPS緩衝液(pH 7.50)

7.00U/mL リポプロテインリパーゼ(東洋紡製)

8.00U/mL ペルオキシダーゼ(東洋紡製)

0.200g/L 4-アミノアンチピリン

9.000g/L ポリオキシエチレンラウリルエーテル」という記載に基づくものである。

訂正事項1のうち、訂正後の「前記第一試薬は、pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含み」との記載は、訂正前の請求項1の「少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を用いる」という記載、明細書の段落0032の「酵素として、コレステロールオキシダーゼ、又はコレステロールエステラーゼを用いる場合の各酵素の好ましい濃度は、以下の通りである。(a) コレステロールオキシダーゼを用いる場合:溶液中の全量に対して、範囲の上限が、好ましくは、5U/ml程度、より好ましくは3U/ml程度であり、」との記載、明細書の段落0035の「本発明の測定誤差の低減方法又はコンタミネーションの回避方法では、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、組成のpHが5~10の範囲が好ましく、pH6.0~8.0の範囲が特に好ましい。本発明で用いる生化学検査試薬の溶液中のpHは、後述の試験例の結果に示されるように、pHを高くすることで測定誤差をより効果的に低減できる傾向が認められている。」、及び、明細書の段落0077の「2.00U/mL コレステロールオキシダーゼ」との記載から導き出されるものである。

訂正事項1のうち、訂正後の「酵素を含有する生化学検査試薬を用いた生化学自動分析装置における操作の場面で、金属製試薬プローブに接触するように用いられ、」との記載は、訂正前の請求項1の「酵素を含有する生化学検査試薬を用いた生化学自動分析装置における操作の場面で、金属製試薬プローブに接触するように用いられる」との記載に基づくものである。

訂正事項1のうち、訂正後の「前記非イオン性界面活性剤が、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン( 登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、」との記載は、訂正前の請求項8の「前記非イオン性界面活性剤が、Triton(登録商標)X-100、Triton(登録商標)X-114,Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80、エマルゲン(登録商標)404、エマルゲン(登録商標)408、エマルゲン(登録商標)409PV、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)430、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、エマルゲン(登録商標)A500、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である」との記載に基づくものである。

訂正事項1のうち、訂正後の「但し、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体を使用する方法を除く」との記載は、訂正後の請求項1に係る発明から高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体を使用する方法を除くことを規定するものであり、本件特許の出願当初の明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載から導き出される技術的事項に対して何ら新たな技術的事項を導入するものではない。

よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無

上記アの理由から明らかなように、訂正事項1は、発明特定事項を下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(2)訂正事項2、4~6、8、10、12、14、15、17

ア 訂正の目的

訂正事項2、4、5、6、8、10、12、14、15、17は、それぞれ請求項2、4、5、6、8、10、12、14、15、17を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

訂正事項2、4、5、6、8、10、12、14、15、17は、それぞれ請求項2、4、5、6、8、10、12、14、15、17を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無

訂正事項2、4、5、6、8、10、12、14、15、17は、それぞれ請求項2、4、5、6、8、10、12、14、15、17を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(3)訂正事項3、11、13

ア 訂正の目的

訂正事項3、11、13は、引用請求項数を削減するものであるから、当該訂正事項3、11、13は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

訂正事項3、11、13は、引用請求項数を削減するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無

訂正事項3、11、13は、引用請求項数を削減するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(4)訂正事項7、16

ア 訂正の目的

訂正前の請求項7、16に係る発明においては、「前記生化学検査試薬のpHが5~10である」と規定されている。これに対し、訂正後の請求項7、16に係る発明においては、「前記生化学検査試薬のpHが6.0~10である」との記載により、生化学検査試薬のpHの範囲を限定する。

また、訂正事項7は、訂正前の請求項7が、請求項1~6を引用する記載であるところ、引用請求項数を削減し、請求項1又は3を引用するものに訂正するものである。訂正事項16は、訂正前の請求項16が、請求項9~15を引用する記載であるところ、引用請求項数を削減し、請求項9、11及び13を引用するものに訂正するものである。

よって、当該訂正事項7、16は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無

訂正事項7、16は、明細書の段落0035の「本発明の測定誤差の低減方法又はコンタミネーションの回避方法では、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、組成のpHが5~10の範囲が好ましく、pH6.0~8.0の範囲が特に好ましい。本発明で用いる生化学検査試薬の溶液中のpHは、後述の試験例の結果に示されるように、pHを高くすることで測定誤差をより効果的に低減できる傾向が認められている。」との記載から導き出されるものである。

また、訂正事項7、16は、引用請求項数を削減するというものでもある。

よって、訂正事項7、16は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無

上記アの理由から明らかなように、訂正事項7及び16は、発明特定事項を下位概念にし、引用請求項数を削減するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

(5)訂正事項9

ア 訂正の目的

訂正前の請求項9には、「測定誤差が低減された生化学検査試薬であって」と記載されている。これに対して、訂正後の請求項9には、「測定誤差を低減するための生化学検査試薬であって」と記載され、「生化学検査試薬」の用途が測定誤差を低減することであることを明確にする。

よって、訂正事項9のうち、上記の部分は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とする。

訂正前の請求項9に係る発明においては、「生化学検査試薬」について、酵素が含まれることだけが特定されている。これに対し、訂正後の請求項9に係る発明においては、

「前記生化学検査試薬は、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬であって、第一試薬及び第二試薬を含み、

前記第一試薬は、pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含み」

との記載により、生化学検査試薬の測定対象を特定するとともに、生化学検査試薬が、第一試薬と第二試薬を含むこと、第一試薬中の酵素の種類及び濃度、pHを特定するとともに、非イオン性界面活性剤が含まれることを限定する。

また、訂正前の請求項9に係る発明において、「少なくとも一種の非イオン性界面活性剤」の種類は特定されていない。これに対し、訂正後の請求項9に係る発明は、「前記非イオン性界面活性剤が、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン( 登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、」との記載により、「少なくとも一種の非イオン性界面活性剤」の種類を特定し、限定する。

更に、訂正前の請求項9に係る発明においては、抗体の使用との組み合わせについては特定されていない。これに対し、訂正後の請求項9に係る発明においては、「但し、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体と組みわせて使用される生化学検査試薬を除く」との記載により、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体と組み合わせて使用される「生化学検査試薬」は請求項9の範囲に含まないことを特定し、限定する。

よって、これらの訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする。

イ 新規事項の有無

訂正事項9のうち、訂正後の「測定誤差を低減するための生化学検査試薬であって」との記載は、例えば、訂正前の請求項9の「異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置に用いられる場合に生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差が低減された生化学検査試薬であって、」との記載及び明細書の段落0011の「本発明の実施態様の一つは、異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置において酵素を含有する生化学検査試薬を使用することにより発生する測定誤差を低減する方法であって、少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を用いることを特徴とする、測定誤差の低減方法である。」との記載に基づく。

訂正事項9のうち、訂正後の「前記生化学検査試薬は、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬であって、」との記載は、訂正前の請求項14の「前記生化学検査試薬が、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬である」との記載に基づくものである。

訂正事項9のうち、訂正後の「第一試薬及び第二試薬を含み、」との記載は、明細書の段落0013の「生化学検査試薬が複数の試薬から構成される場合(例えば、第一試薬と第二試薬、第一試薬と第二試薬と第三試薬とから構成される場合)、」との記載、段落0054~0060、0064~0073、0077~0082に記載されている実施例2~4の「高密度リポタンパク(HDL)コレステロール測定試薬」の組成についての記載(例えば、段落0054の「(1)試薬の調製

<組成G-1>

第一試薬

80.0mM ADA緩衝液(pH 6.50)

1.00U/mL コレステロールエステラーゼ(東洋紡製COE-301)

3.00U/mL コレステロールオキシダーゼ(東洋紡製COO-321)

2.00U/mL ペルオキシダーゼ(東洋紡製)

0.200g/L N-エチル-N-スルホプロピル-m-アニシジン

0.900g/L コール酸

1.000g/L エマルゲンA60(花王社製)

第二試薬

100.0mM MOPS緩衝液(pH 7.50)

7.00U/mL リポプロテインリパーゼ(東洋紡製)

8.00U/mL ペルオキシダーゼ(東洋紡製)

0.200g/L 4-アミノアンチピリン

9.000g/L ポリオキシエチレンラウリルエーテル」という記載に基づくものである。

訂正事項9のうち、訂正後の「前記第一試薬は、pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含み」との記載は、訂正前の請求項1の「少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を用いる」という記載、明細書の段落0032の「酵素として、コレステロールオキシダーゼ、又はコレステロールエステラーゼを用いる場合の各酵素の好ましい濃度は、以下の通りである。(a) コレステロールオキシダーゼを用いる場合:溶液中の全量に対して、範囲の上限が、好ましくは、5U/ml程度、より好ましくは3U/ml程度であり、」との記載、明細書の段落0035の「本発明の測定誤差の低減方法又はコンタミネーションの回避方法では、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、組成のpHが5~10の範囲が好ましく、pH6.0~8.0の範囲が特に好ましい。本発明で用いる生化学検査試薬の溶液中のpHは、後述の試験例の結果に示されるように、pHを高くすることで測定誤差をより効果的に低減できる傾向が認められている。」、及び、明細書の段落0077の「2.00U/mL コレステロールオキシダーゼ」との記載から導き出されるものである。

訂正事項9のうち、訂正後の「前記非イオン性界面活性剤が、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン( 登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、」との記載は、訂正前の請求項17の「前記非イオン性界面活性剤が、Triton(登録商標)X-100、Triton(登録商標)X-114,Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80、エマルゲン(登録商標)404、エマルゲン(登録商標)408、エマルゲン(登録商標)409PV、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)430、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、エマルゲン(登録商標)A500、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である」との記載に基づくものである。

訂正事項9のうち、訂正後の「前記酵素は、コレステロールオキシダーゼであり、」との記載は、訂正前の請求項12の「前記生化学検査が、コレステロール測定検査である」との記載に基づくものである。

訂正事項9のうち、訂正後の「但し、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体を含む生化学検査試薬を除く」との記載は、訂正後の請求項9に係る発明から「生化学検査試薬」が高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体を含む場合を除くことを規定するものであり、本件特許の出願当初の明細書、特許請求の範囲、及び図面の記載から導き出される技術的事項に対して何ら新たな技術的事項を導入するものではない。

よって、訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項に適合するものである。

ウ 特許請求の範囲の拡張又は変更の有無

上記アの理由から明らかなように、訂正事項9は、発明特定事項を下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

請求項9を直接的に引用する訂正後の請求項11、13及び16についても、訂正前の請求項9に記載されていた発明特定事項を下位概念にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。

4 独立特許要件

本件においては、訂正前の全ての請求項について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~17に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

5 本件訂正の適否のまとめ

以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕〔9~17〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明

上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1、3、7、9、11、13及び16に係る発明(以下、請求項番に従い「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、3、7、9、11、13及び16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】

異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置において生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差を低減する方法であって、

前記生化学検査試薬は、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬であって、第一試薬及び第二試薬を含み、

前記第一試薬は、pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含み、

ここで、該少なくとも一種の非イオン性界面活性剤は、

酵素を含有する生化学検査試薬を用いた生化学自動分析装置における操作の場面で、金属製試薬プローブに接触するように用いられ、

前記非イオン性界面活性剤は、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、

測定誤差の低減方法(但し、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体を使用する方法を除く)。

【請求項3】

前記試薬プローブの少なくとも一部がステンレス製である、請求項1に記載の測定誤差の低減方法。

【請求項7】

前記生化学検査試薬のpHが6.0~10である、請求項1又は3に記載の測定誤差の低減方法。

【請求項9】

異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置に用いられる場合に生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差を低減するための生化学検査試薬であって、

前記生化学検査試薬は、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬であって、第一試薬及び第二試薬を含み、

前記第一試薬は、pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含み、

前記非イオン性界面活性剤は、金属製試薬プローブに接触するように用いられることを特徴とし、

前記非イオン性界面活性剤が、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、

生化学検査試薬(但し、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体と組みわせて

使用される生化学検査試薬を除く)。

【請求項11】

前記試薬プローブの少なくとも一部がステンレス製である、請求項9に記載の試薬。

【請求項13】

前記生化学検査が、コレステロール測定検査である、請求項9又は11に記載の試薬。

【請求項16】

前記生化学検査試薬のpHが6.0~10である、請求項9、11及び13のいずれかに記載の試薬。」

第4 証拠方法、特許異議申立理由の概要、及び、先の取消理由通知書に記載した取消理由の概要

1 証拠方法

申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。

甲第1号証:特開平11-56395号公報

甲第2号証:特開平9-299号公報

甲第3号証:特開平9-96637号公報

甲第4号証:特開平11-106798号公報

甲第5号証:特開2009-14410号公報

甲第6号証:特開2003-302410号公報

甲第7号証:特開2008-224245号公報

甲第8号証:特開2001-305145号公報

甲第9号証:特開2000-287700号公報

甲第10号証:日本臨床検査自動化学会会誌「臨床化学検査に用いる測定試薬の成り立ちと特徴及び適正な使用方法」第42巻 Suppl.1(通巻第232号)(表紙、裏表紙、6~7頁、64~73頁、118~119頁、奥付)、2017年8月15日

甲第11号証:日立自動分析装置 7150カタログ(https://www.hitachi-hightech.com/jp/ja/be_bold/generations_machine/#slide4)、2023年12月6日(出力日)

甲第12号証:日立ニュースリリース(検体処理の信頼性向上を図った中型生化学自動分析装置「7180形」を製品化)(https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/2001/0904a/index.html)、2001年9月4日

甲第13号証:ダイヤカラー・リキッドTG-S添付文書(https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ivd/PDF/480210_18A2X00005000001_A_01_05.pdf),2015年6月1日

甲第14号証:クイックオートネオ TGII(A) 添付文書(https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ivd/pdf/340066_14A2X00015000037_A_06_05.pdf),2020年11月

甲第15号証:シカリキッド UA 添付文書(https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ivd/PDF/200197_21200AMZ00311000_B_01_02.pdf),2021年8月

甲第16号証:URIC ACID 添付文書(https://www.spinreact.com/assets/files/Inserts/uric-acid-acido-urico.pdf),2023年12月26日(出力日)

甲第17号証:「非イオン性界面活性剤による測定誤差の低減効果の検討」,2023年12月22日

(以下、甲第18号証~甲第24号証は、令和6年7月19日に意見書と共に提出されたものである。)

甲第18号証:特開平7-280813号公報

甲第19号証:特開2002-323504号公報

甲第20号証:特開2001-29091号公報

甲第21号証:再公表第2013/161676号

甲第22号証:「非イオン性界面活性剤による測定誤差の低減効果の検討」2024年7月11日作成

甲第23号証:新版界面活性剤ハンドブック第2版(表紙、1~3頁、100~101頁、226~227頁、234~237頁、奥付)、1991年1月20日2版発行、

甲第24号証:NIKKOL2008(表紙、目次、41~44頁、奥付)、2008年5月30日

(以下、甲第25号証~甲第32号証は、令和7年2月21日に意見書と共に提出されたものである。)

甲第25号証:特開2012-191953号公報

甲第26号証:特開2007-325587号公報

甲第27号証:再公表特許第00/17388号

甲第28号証:再公表特許第2008/087895号

甲第29号証:「多目的用途に迅速に対応できる小形血液自動分析装置」、日立評論、VOL.73、No.11、995頁~1002頁、1991年

甲第30号証:「花王の界面活性剤」、7頁及び9頁、2001年

甲第31号証:特開2016-179615号公報

甲第32号証:特開2005-350599号公報

なお、以下では、甲第1号証~甲第32号証のそれぞれを、甲1~甲32という。

2 異議申立理由の概要

(1)理由1(新規性及び予備的に進歩性)

ア 理由1-1

本件特許発明1~17は、甲1に記載された発明であって、 特許法第29条第1項第3号に該当する発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである

仮に、本件特許発明3及び11については、甲1に記載された発明でないとしても、甲1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

イ 理由1-2

本件特許発明1~17は、甲2に記載された発明であって、 特許法第29条第1項第3号に該当する発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである

仮に、本件特許発明3及び11については、甲2に記載された発明でないとしても、甲2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

ウ 理由1-3

本件特許発明1~17は、甲3に記載された発明であって、 特許法第29条第1項第3号に該当する発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである

仮に、本件特許発明3及び11については、甲3に記載された発明でないとしても、甲3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(2)理由2(新規性及び進歩性)

本件特許発明1~3は、甲4に記載された発明であって、 特許法第29条第1項第3号に該当する発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである

また、本件特許発明1~17については、甲4に記載された発明及び界面活性剤を試薬に添加する周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。

(3)理由3(明確性)

本件特許発明1の「少なくとも一種の非イオン性界面活性剤は、(a)酵素を含有する生化学検査試薬を用いた生化学自動分析装置における操作の場面で、金属製試薬プローブに接触するように用いられるか、又は、

(b)金属製試薬プローブに接触する溶液中に非イオン性界面活性剤を含有させて用いられる」という特定事項は、発明の詳細な説明において、「生化学自動分析装置における操作の場面」が何を意味するのか、「溶液」とは何かについては説明されておらず、明確でない。

よって、本件特許発明1及び本件特許発明1の従属項である本件特許発明2~8は明確でないから、本件特許発明1~8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(4)理由4(サポート要件)

ア 理由4-1

本件特許発明1~3、5~11、13~17には酵素についての限定がなく、本件特許発明1~3、5~11、13~17は、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えているので、本件特許発明1~3、5~11、13~17についての特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

イ 理由4-2

本件特許発明1~17には測定誤差についての限定がなく、本件特許発明1~17は、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えているので、本件特許発明1~17についての特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

ウ 理由4-3

本件特許発明1~4、6~13、15~17には生化学検査試薬についての限定がなく、本件特許発明1~4、6~13、15~17は、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えているので、本件特許発明1~4、6~13、15~17についての特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

エ 理由4-4

本件特許発明1~17には、生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定感度の低下を抑制できない非イオン性界面活性剤が含まれ、本件特許発明1~17は、当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えているので、本件特許発明1~17についての特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(5)理由5(実施可能要件)

ア 理由5-1

発明の詳細な説明には、コレステロールオキシダーゼ以外の酵素の場合に、コンタミネーションの問題が生じることや、当該課題を解決することができることは何ら記載されておらず、発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野に属する通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

よって、本件特許発明1~17に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

イ 理由5-2

発明の詳細な説明には、過酸化水素を発生させる酵素であるコレステロールオキシダーゼを含む試薬を用いた後に別の試薬で過酸化水素の吸光度をもとに生体成分を測定した際に生じるとされる測定誤差以外において測定誤差が低減されたことについての記載はなく、当該課題を解決することができることは何ら記載されておらず、発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野に属する通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないので、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

よって、本件特許発明1~17に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

ウ 理由5-3

本発明を利用した生化学検査試薬について、任意の検査項目に用いられる生化学検査試薬であり得ると記載されている。しかしながら、本件特許明細書の実施例で用いられている試薬は、高密度リポタンパク(HDL)コレステロール測定試薬のみである。

従って、生化学検査試薬を高密度リポタンパク(HDL)コレステロールとする場合以外の記載のない本件特許明細書は、その発明の属する技術分野に属する通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであることを求める特許法第36条第4項第1号に違反してなされたものである。

よって、本件特許発明1~17に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

エ 理由5-4

発明の詳細な説明の実施例に記載と同様の条件で実験を行っても、生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差を低減することができないから、当業者は、どのような場合に、非イオン性界面活性剤を含有することにより、生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差を低減できるのかについて発明の詳細な説明から理解することができない。

よって、発明の詳細な説明は、その発明の属する技術分野に属する通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでなく、本件特許発明1~17に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

3 取消理由通知に記載した取消理由の概要

(1)令和6年3月19日付け取消理由通知

当審が令和6年3月19日付けで通知した取消理由の概要は、次のとおりである。

ア 理由1(新規性)(申立理由の理由1)

本件特許の請求項9~17に係る発明は、甲1、甲2、甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項9~17についての特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

イ 理由2(進歩性)(申立理由の理由1、理由2)

本件特許の請求項1~8に係る発明は甲1、甲2、甲3、甲4に記載された発明及び周知事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。

本件特許の請求項9~17に係る発明は、甲1、甲2、甲3に記載された発明(及び周知事項)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。

よって、本件特許の請求項1~17に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~17に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

ウ 理由3(サポート要件)(申立理由の理由4-4)

本件特許の請求項1~17に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(2)令和6年10月9日付け取消理由通知

当審が令和6年10月9日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

ア 理由2(進歩性)

本件特許の請求項1、3、5~9、11、13~17に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって、本件特許の請求項1、3、5~9、11、13~17に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、5~9、11、13~17に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

イ 理由3(サポート要件)

本件特許の請求項1、3、5~9、11、13~17に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(3)令和7年5月21日付け取消理由通知

当審が令和7年5月21日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。

ア 理由2(進歩性)

本件特許の請求項1、3、7、9、11、13及び16に係る発明は、甲25に記載された発明及び周知事項、又は、甲27に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

よって、本件特許の請求項1、3、7、9、11、13及び16に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、7、9、11、13及び16に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。

イ 理由3(サポート要件)

本件特許の請求項1、3、7、9、11、13及び16に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

第5 当審の判断

1 理由1(新規性)及び理由2(進歩性)

(1)各甲号証の記載事項及び甲号証に記載された発明の認定

ア 甲25について

(ア)甲25の記載事項

(甲25-ア)

「【0036】

本発明においては、

上記前処理によりリポ蛋白質中の遊離型コレステロールを消費させた後、試料中の特定のリポ蛋白中に存在するコレステロールを測定する

【0037】

試料中の特定のリポ蛋白中に存在するコレステロールを測定する方法としては、

特定のリポ蛋白のみに作用する物質を利用して当該リポ蛋白中に存在するコレステロールを測定する

ことができる方法であれば何れの方法をも利用することができる。

【0038】

その方法の一例としては、例えば、特開平11-56395号に開示のポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル及び

ポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルから選ばれる界面活性剤を特定のリポ蛋白のみに作用する物質

とし、

その存在下、コレステロール測定用酵素試薬を添加し、リポ蛋白のうち、高比重リポ蛋白中のコレステロールが優先的にコレステロール測定用酵素試薬と反応する時間内にそのコレステロールの反応量を測定する方法

が挙げられる。

【0039】

このうち前者の

ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテルの市販品の例としてはエマルゲンA-60(花王社製)などが、後者のポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルの市販品の例としてはエマルゲンB66(花王社製)等があげられる。

」(下線は当審が付したものである。以下同様。)

(甲25-イ)

「【0041】

特定のリポ蛋白中に存在するコレステロールを測定する方法は、特定のリポ蛋白のみに作用する物質を利用する以外は、通常のコレステロールの測定方法に用いる試薬により実施することができる。用いられる試薬に含まれる成分としては、例えば、コレステロールエステラーゼ、

コレステロールオキシダーゼ

、コレステロールデヒドロゲナーゼ、イソクエン酸デヒドロゲーゼ、ジアホラーゼ、パーオキシダーゼなどの酵素類、発色剤、補酵素、電子受容体、蛋白質(アルブミン等)、防腐剤、界面活性剤、塩、酸、pH調整のための緩衝剤等が挙げられる。

【0042】

上記成分のうち、

界面活性剤としては、イオン性、非イオン性のいずれのものも使用することができ、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル

、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、胆汁酸類等が挙げられる。この界面活性剤の使用量は化合物によって異なり、特に制限されるものではないが0.0001%~5%で、好ましくは0.001%~5%で使用される。」

(甲25-ウ)

「【0046】

特定のリポ蛋白画分中のコレステロールを測定する方法としては、

公知の酵素的測定法のいずれも用いる事ができるが、

例えば酵素試薬としてコレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを組み合わせて用いる方法

、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールデヒドロゲナーゼを組み合わせて用いる方法

等が挙げられる。

(甲25-エ)

「【0059】

実 施 例 1

下記に示す本発明法および沈殿法により、リポ蛋白を含む30例の血清検体について、下記のようにHDL中のコレステロールを定量し、これらの測定値を比較した。

【0060】

(本発明法)

検体3μlに、

0.1単位/mlのコレステロールデヒドロゲナーゼ(天野製薬製)、2.5mMのNADおよび4-アミノアンチピリン0.03%を含む10mMのりん酸緩衝液(第1試薬;pH8.5)

300μlを添加した(前処理)。約5分後、

エマルゲンB-66

1%、コレステロールエステラーゼ(旭化成)1.3単位/ml、コレステロールオキシダーゼ(旭化成)2単位/ml、パーオキシダーゼ(東洋紡)5単位/ml及びジスルホブチルメタトルイジン0.04%を含む100mMのMES緩衝液(pH6)からなるコレステロール測定試薬(第2試薬)

100μlを加えた。

【0061】

第2試薬添加直前と添加後5分後の600nmにおける吸光度を測定し、その差より

血清検体中のHDLコレステロール濃度を求めた

(2ポイント法)。また、較正用物質として濃度既知のコントロール血清を用いた。なお、以上の操作は、

日立7150型自動分析装置を用いて行った。

【0062】

(沈殿法)

HDLC2「第一」分画試薬(第一化学薬品株式会社製)200μlを検体200μlと混和し、3000rpmで10分間遠心分離を行った。この上清50μlを採取し、TritonX-100 1%、コレステロールエステラーゼ1単位/ml、コレステロールオキシダーゼ1単位/ml、パーオキシダーゼ5単位/ml及びジスルホブチルメタトルイジン0.04%、4-アミノアンチピリン0.04%を含む100mMのMES緩衝液(pH6.5)からなるコレステロール測定試薬3mlと混合し、37°Cで10分間インキュベートした後、600nmにおける吸光度を測定し、HDL中のコレステロール濃度を求めた。

【0063】

(結果) 結果を表1および図1に示す。

【表1】

103

151

0001432016000001.jpg

【0064】

この結果より明らかなごとく、本発明方法はポリアニオン等を使用しないにもかかわらず、従来の沈澱法と極めて良好な相関を示していた。」

(甲25-オ)

「【0065】

実施例2

実施例1の第1試薬のコレステロールデヒドロゲナーゼ、NADおよびりん酸緩衝液を

5単位/mlのコレステロールオキシダーゼ(東洋紡)

、5単位/mlのパーオキシダーゼ(東洋紡製)および100mMMES(pH6)に代え、測定値を比較した。

【0066】

( 結 果 ) 結果を表2および図2に示す。

【表2】

102

151

0001432016000002.jpg

【0067】

この結果より明らかなごとく、本発明方法はポリアニオン等を使用しないにもかかわらず、従来の沈澱法と極めて良好な相関を示していた。」

(イ)甲25発明の認定

前記(ア)の各記載事項から、甲25には以下の各発明が記載されていると認められる。参考のため、認定の根拠となった箇所をかっこ内に示す。

「日立7150型自動分析装置により(甲25-エ(【0061】))、

0.1単位/mlのコレステロールデヒドロゲナーゼ(天野製薬製)、2.5mMのNADおよび4-アミノアンチピリン0.03%を含む10mMのりん酸緩衝液(第1試薬;pH8.5)と、エマルゲンB-66 1%、コレステロールエステラーゼ(旭化成)1.3単位/ml、コレステロールオキシダーゼ(旭化成)2単位/ml、パーオキシダーゼ(東洋紡)5単位/ml及びジスルホブチルメタトルイジン0.04%を含む100mMのMES緩衝液(pH6)からなるコレステロール測定試薬(第2試薬)を用いて(甲25-エ(【0060】))、

血清検体中のHDLコレステロール濃度を求める(甲25-エ(【0061】))

方法。」(以下「甲25発明1」という。)

「日立7150型自動分析装置による血清検体中のHDLコレステロール濃度を求める方法に用いられる試薬であって、(甲25-エ(【0060】及び【0061】))

0.1単位/mlのコレステロールデヒドロゲナーゼ(天野製薬製)、2.5mMのNADおよび4-アミノアンチピリン0.03%を含む10mMのりん酸緩衝液(第1試薬;pH8.5)とエマルゲンB-66 1%、コレステロールエステラーゼ(旭化成)1.3単位/ml、コレステロールオキシダーゼ(旭化成)2単位/ml、パーオキシダーゼ(東洋紡)5単位/ml及びジスルホブチルメタトルイジン0.04%を含む100mMのMES緩衝液(pH6)からなるコレステロール測定試薬(第2試薬)の組み合わせ。」(以下「甲25発明2」という。)

イ 甲26について

(ア)甲26の記載事項

(甲26-ア)

「【0015】

本発明によれば、

体液試料中の高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の測定方法において、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを用いてHDL-Cから過酸化水素を生成させることによってHDL-Cを選択的に測定することを特徴とするHDL-Cの測定方法

が提供される。

【0016】

好ましくは、

高密度リポ蛋白(HDL)を優先的に溶解する界面活性剤

を用いる。

好ましくは、

HDLを優先的に溶解する界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルである。

好ましくは、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテルがポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルがポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルである。

好ましくは、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルがポリオキシエチレンモノまたはジまたはトリスチリルフェニルエーテルである。

好ましくは、高密度リポ蛋白(HDL)以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性剤、及び/又はHDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤を用いる。

【0017】

好ましくは、HDL以外のリポ蛋白の溶解を阻害する界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、又はポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合体である。

好ましくは、HDL以外のリポ蛋白を凝集させる凝集剤が、リンタングステン酸又はその塩と2価の金属イオン、デキストラン硫酸と2価の金属イオン、ヘパリンと2価の金属イオン、又はポリオキシエチレンである。」

(甲26-イ)

「【0030】

特に好ましい(一般式2)は、ポリオキシアルキレン付加モル数m=0であるポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルである。ポリオキシエチレン付加モル数の平均値nは5~100が好ましく、さらにn=5~50、特にn=10~50が好ましい。nの数は単一でなくある幅を持った混合物でもよい。

例えばポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルの市販品としてエマルゲンB66(花王社製)が挙げられ

、ポリオキシエチレン付加モル数平均値は16であるが、n=約5~約30の幅を持った混合物となっている。

【0031】

このような界面活性剤の市販品の例としては、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルとしてパイオニンD-6512(竹本油脂社製)、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルとしてノイゲンEA-157の他、エマルゲンA90(花王社製)、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとしてソルポールT-20(東邦化学工業社製)、ニューコール2609(日本乳化剤社製)、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルとしてエマルゲンB66の他、ペグノール005(東邦化学工業社製)などが挙げられる。

これら界面活性剤を単独で用いることもできるし、混合物として用いることもできる。」

(甲26-ウ)

「【0038】

前記緩衝剤のpHは、用いる酵素の指摘pHに応じて決定され、好ましくは、pH5.0~8.0に調整される。

より好ましくは、pH6.0~7.0に調整される。

【0039】

次に、測定系が溶液の場合における、本発明の測定方法について説明する。試薬液の組成としては、次の(1)~(6)を含む組成の溶液が好ましい。

(1)Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ

(2)

Pseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼ

(3)

HDLを優先的に溶解する界面活性剤

(4)パーオキシダーゼ

(5)色原体(4-AA及びトリンダー試薬)

(6)

pH緩衝剤

・・・

【0041】

必要な酵素量として、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、パーオキシダーゼのいずれの酵素も

、0.2~20U/mLの範囲で用いるのが好ましい。

より好ましくは、1~10U/mLで用いる。

(甲26-エ)

「【実施例】

【0064】

実施例1:本発明の酵素を用いた溶液系の測定例

次に示す組成の試薬液を調整した。

MES緩衝剤(pH7.0)

700mmlo/L

コレステロールエステラーゼ(Schizophyllum commune由来) 4.5U/mL

コレステロールオキシダーゼ(Pseudomonas sp.由来) 2.8U/mL

パーオキシダーゼ 4.8U/mL

4-アミノアンチピリン(和光純薬社製) 4.0mmol/L

DAOS(同仁研究所社製) 4.0mmol/L

エマルゲンB66(花王社製) 0.62mg/mL

【0065】

HDL、LDLの精製品をのコレステロール濃度100mg/dLになるように調整した試料、及び7%HSA水溶液を検体とした。前記試薬液245μLを予め37°C3分間インキュベートしておき、そこに前記検体5μLを加え、600nmの発色の様子を測定した。その結果、図1に示すように、前記方法によれば、HDLはおよそ5分で完全に発色するが、LDLは殆ど変化しなかった。」

(イ)甲26の認定事項

a 甲26の【0015】の「体液試料中の高密度リポ蛋白コレステロール(HDL-C)の測定方法において、Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを用いてHDL-Cから過酸化水素を生成させることによってHDL-Cを選択的に測定することを特徴とするHDL-Cの測定方法」(甲26-ア)という記載、及び、【0016】の「好ましくは、高密度リポ蛋白(HDL)を優先的に溶解する界面活性剤を用いる。

好ましくは、HDLを優先的に溶解する界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルである。

好ましくは、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテルがポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルがポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルである。

好ましくは、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルがポリオキシエチレンモノまたはジまたはトリスチリルフェニルエーテルである。」(甲26-ア)との記載から、「Schizophyllum commune由来又はPseudomonas sp.由来のコレステロールエステラーゼ、及びPseudomonas sp.由来のコレステロールオキシダーゼを用いてHDL-Cから過酸化水素を生成させることによってHDL-Cを選択的に測定することを特徴とするHDL-Cの測定方法」において、「ポリオキシエチレンモノ、ジ若しくはトリスチリルフェニルエーテル、又はポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテル」を「HDLを優先的に溶解する界面活性剤」として用いることが把握され、具体的な界面活性剤を例示する記載として、【0030】に「例えばポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルの市販品としてエマルゲンB66(花王社製)が挙げられ」(甲26-イ)、【0031】に「このような界面活性剤の市販品の例としては、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルとしてパイオニンD-6512(竹本油脂社製)、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルとしてノイゲンEA-157の他、エマルゲンA90(花王社製)、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルとしてソルポールT-20(東邦化学工業社製)、ニューコール2609(日本乳化剤社製)、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルとしてエマルゲンB66の他、ペグノール005(東邦化学工業社製)などが挙げられる」(甲26-イ)との記載が存在するので、甲26には、「高密度リポ蛋白の選択的な測定に使用するための、HDLを優先的に溶解する界面活性剤である、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルであるパイオニンD-6512(竹本油脂社製)、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルであるノイゲンEA-157の他、エマルゲンA90(花王社製)、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテルであるソルポールT-20(東邦化学工業社製)、ニューコール2609(日本乳化剤社製)、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテルであるエマルゲンB66の他、ペグノール005(東邦化学工業社製)」(以下「甲26認定事項1」という。)が開示されていると認められる。

b 甲26の【0041】には、「必要な酵素量として、コレステロールエステラーゼ、コレステロールオキシダーゼ、パーオキシダーゼのいずれの酵素も、0.2~20U/mLの範囲で用いるのが好ましい。より好ましくは、1~10U/mLで用いる。」(甲26-ウ)との記載があり、具体的に【0064】には、「実施例1:本発明の酵素を用いた溶液系の測定例

次に示す組成の試薬液を調整した。

MES緩衝剤(pH7.0) 700mmlo/L

・・・

コレステロールオキシダーゼ(Pseudomonas sp.由来) 2.8U/mL

・・・

エマルゲンB66(花王社製) 0.62mg/mL」(甲26-エ)との記載があることから、甲26には、「高密度リポ蛋白を測定する試薬に、コレステロールオキシダーゼを4.5U/mlを含有させること、及び、該試薬中のコレステロールオキシダーゼの濃度を1~10U/ml」の範囲で調整すること」(以下「甲26認定事項2」という。)が開示されていると認められる。

ウ 甲27について

(ア)甲27の記載事項

(甲27-ア)

「背景技術

HDLは動脈壁のコレステロールを除去し肝臓へ運ぶ働きがあるため、通称善玉と呼ばれており、またLDLは動脈壁などの末梢組織にコレステロールを運搬する働きがあるため通称悪玉と呼ばれている。臨床検査分野においてHDLコレステロール濃度、LDLコレステロール濃度および総コレステロール濃度は、動脈硬化症等の脂質に関する疾病の総合判断の指標として利用されている。

これらコレステロール濃度は、それぞれのコレステロールに特異性がある専用の試薬で個別に定量されており、自動分析機も別々に定量するように設定されているが、それぞれのコレステロールに対する特異性のさらなる向上が望まれている。また、同一検出系においてHDLコレステロール、LDLコレステロール、総コレステロール等を連続して分別定量する簡便で自動分析可能な方法は知られていない。

」(7頁13~24行)

(甲27-イ)

「また本発明は、上記のごとく各種リポ蛋白を含む生体試料に

HDLコレステロールのみにCH酵素類を作用させる特定の試薬(以下、試薬Bという)を添加してHDLコレステロールを定量し

、次いで試薬Aを添加してLDLコレステロールを定量する

分別定量方法およびそれに用いる試薬キット

に関する。」(12頁15~18行)

(甲27-ウ)

「HDLコレステロールのみにCH酵素類を作用させる試薬Bとしては、HDL以外のリポ蛋白を凝集させる試薬、およびHDL以外のリポ蛋白に対する抗体等があげられる。」(14頁15~17行)

(甲27-エ)

「HDL以外のリポ蛋白を凝集させる試薬には凝集したリポ蛋白を溶解しない非イオン性界面活性剤を含有させるのが好ましい。

凝集したリポ蛋白を溶解しない非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩等があげられる。これらのうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンエーテル[エマルゲン220(花王社製)等]が、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテルとしては、市販品として

エマルゲンB66

等が、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン縮合物としては、市販品としてプルロニックF88(旭電化社製)等が、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム[市販品としては、エマール20C(花王社製)等]が、アルキルベンゼンスルホン酸塩としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが好ましい。」(15頁20行~16頁3行)

(甲27-オ)

「発明を実施するための最良の形態

実施例1 (HDLコレステロールとLDLコレステロールの定量)

・・・

検体として、健常人の血清30検体を用意し、下記の操作により検体中のHDLコレステロールとLDLコレステロールの定量を行った。試薬1、2.25mlに検体30μlを添加、攪拌し、直後585nmの吸光度E1を測定した。続いて37°Cで5分間反応後同じ吸収波長の吸光度E2を測定した。

これにさらに試薬2、0.75mlを添加、攪拌し、直後の585nmの吸光度E3を測定した。続いて37°Cで5分間反応後同じ吸収波長の吸光度E4を測定した。

一方、コレステロール既知濃度の血清を同様な操作をして、各吸光度E1std、E2std、E3stdおよびE4stdを求めた。

HDLコレステロール濃度は上記吸光度から、(E2-E1)÷(E2std-E1std)×(既知HDLコレステロール濃度)の式により求めた。

同様にLDLコレステロール濃度も上記吸光度から、(E4-E3)÷(E4std-E3std)×(既知LDLコレステロール濃度)の式により求めた。」(22頁6行~23頁15行)

(甲27-カ)

「実施例2 (HDLコレステロールとLDLコレステロールの定量)

試薬1(

pH=7

)

MES(ナカライテスク社製) 20mM

リンタングステン酸(和光純薬社製) 7.5mg/ml

硫酸マグネシウム(和光純薬社製) 1.5mg/ml

TOOS(同仁化学社製) 0.5mg/ml

エマルゲンB66

(花王社製) 10mg/ml

4-アミノアンチピリン(埼京化成社製) 0.5mg/ml

コレステロールエステラーゼ(LPBP、旭化成社製) 4U/ml

コレステロールオキシダーゼ(rCO、オリエンタル酵母社製) 2U/ml

パーオキシダーゼ(東洋紡社製) 10U/ml

試薬2(pH=7)

MES(ナカライテスク) 50mM

コレステロールエステラーゼ(リポプロテインリパーゼ、東洋紡社製) 3U/ml

コレステロールオキシダーゼ(協和醗酵工業社製) 2U/ml

プルロニックL-121(旭電化社製) 0.7%

エマルゲンL-40(花王社製) 0.5%

塩化カルシウム(和光純薬社製) 0.1mg/ml

実施例1と同じ検体を用い、測定波長を555nmにした他は実施例1と同様な操作を行ってHDLコレステロール

とLDLコレステロール

の定量を行った。

市販キット(前述の、デタミナーL HDL-CおよびデタミナーL HDL-C)で得られた定量値と本発明方法で得られた定量値の相関係数を計算したところ、HDLコレステロールでは0.929、LDLコレステロールでは0.911であった。」(23頁29行~24頁24行)

(甲27-キ)

「実施例4

・・・

第1試薬300μLに各検体4μLを混合し5分間、37°Cで保温した。このときの吸光度を測定し、次いで第2試薬100μLを添加し反応させ、5分後の吸光度を測定した。

日立7070自動分析装置を用い、

主波長600nm、副波長700nmを用いた。」(26頁11行~27頁7行)

(甲27-ク)

「実施例10

・・・

検体として患者の血清88検体を用意し、下記の操作により検体中のLDLコレステロールの定量を行った。第1試薬300μLに各検体4μLに混合し5分間、37°Cで保温した。このときの吸光度を測定し、次いで第2試薬100μLを添加し反応させ、5分後の吸光度を測定した。一方LDLコレステロール既知濃度の血清を同様な操作をして吸光度を測定することにより、検体中のコレステロールを定量した。測定には、

日立7070自動分析装置を用い、

主波長600nm、副波長700nmとした。」(33頁32行~34頁16行)

(イ)甲27発明の認定

前記(甲27-オ)で摘記したように「試薬1、2.25mlに検体30μlを添加、攪拌し、直後585nmの吸光度E1を測定した。続いて37°Cで5分間反応後同じ吸収波長の吸光度E2を測定した。」(23頁5から7行)及び「HDLコレステロール濃度は上記吸光度から、(E2-E1)÷(E2std-E1std)×(既知HDLコレステロール濃度)の式により求めた。」(23頁12~13行)との記載があり、前記(甲27-カ)に「実施例1と同じ検体を用い、測定波長を555nmにした他は実施例1と同様な操作を行ってHDLコレステロール・・・の定量を行った。」(24頁19~20行)との記載があることから、前記(甲27-カ)の「実施例2」は、「試薬1、2.25mlに検体30μlを添加、攪拌し、直後555nmの吸光度E1を測定した。続いて37°Cで5分間反応後同じ吸収波長の吸光度E2を測定し、HDLコレステロール濃度を、(E2-E1)÷(E2std-E1std)×(既知HDLコレステロール濃度)の式により求める」ものであると認められる。

前記(ア)の各記載事項及び上記認定事項から、甲27には以下の各発明が記載されていると認められる。参考のため、認定の根拠となった箇所をかっこ内に示す。

「試薬1、2.25mlに検体30μlを添加、攪拌し、直後555nmの吸光度E1を測定した。続いて37°Cで5分間反応後同じ吸収波長の吸光度E2を測定し、HDLコレステロール濃度を、(E2-E1)÷(E2std-E1std)×(既知HDLコレステロール濃度)の式により求める方法であって、(上記認定事項)

試薬1は、pH=7であり、((甲27-カ))

MES(ナカライテスク社製) 20mM

リンタングステン酸(和光純薬社製) 7.5mg/ml

硫酸マグネシウム(和光純薬社製) 1.5mg/ml

TOOS(同仁化学社製) 0.5mg/ml

エマルゲンB66(花王社製) 10mg/ml

4-アミノアンチピリン(埼京化成社製) 0.5mg/ml

コレステロールエステラーゼ(LPBP、旭化成社製) 4U/ml

コレステロールオキシダーゼ(rCO、オリエンタル酵母社製) 2U/ml

パーオキシダーゼ(東洋紡社製) 10U/ml

を含むものである、(甲27-カ)

方法。」(以下「甲27発明1」という。)

「HDLコレステロール濃度の定量に用いる試薬であって、

pH=7であり、((甲27-カ))

MES(ナカライテスク社製) 20mM

リンタングステン酸(和光純薬社製) 7.5mg/ml

硫酸マグネシウム(和光純薬社製) 1.5mg/ml

TOOS(同仁化学社製) 0.5mg/ml

エマルゲンB66(花王社製) 10mg/ml

4-アミノアンチピリン(埼京化成社製) 0.5mg/ml

コレステロールエステラーゼ(LPBP、旭化成社製) 4U/ml

コレステロールオキシダーゼ(rCO、オリエンタル酵母社製) 2U/ml

パーオキシダーゼ(東洋紡社製) 10U/ml

を含む(甲27-カ)、

試薬。」(以下「甲27発明2」という。)

エ 甲28について

(ア)甲28の記載事項

甲28には、次の事項が記載されている。

(甲28-ア)

「【請求項1】

試料中の特定のリポ蛋白中のコレステロールを酵素反応を利用して測定する方法であって、

第一反応で、以下の(a)~(c)を含む緩衝液中で、試料中の低密度リポ蛋白、超低密度リポ蛋白及びカイロミクロン中のコレステロールを優先的に消去した後、

第二反応で、以下の(a)~(d)を含む緩衝液中で、高密度リポ蛋白中のコレステロールを測定する

高密度リポ蛋白中のコレステロール測定方法。

(a)コレステロールエステラーゼ

(b)コレステロールオキシダーゼ

(c)コレステロールエステラーゼおよびコレステロールオキシダーゼの高密度リポ蛋白に対する反応性を阻害する物質

(d)第一反応におけるコレステロールエステラーゼおよびコレステロールオキシダーゼの高密度リポ蛋白中のコレステロールに対する阻害作用を、軽減または消失せしめる物質」

(甲28-イ)

「【0016】

また、

第二反応時に、第一試薬と同起源または異なる起源のコレステロールオキシダーゼ、または、これらのアミノ酸配列を改変したコレステロールオキシダーゼ、または、化学修飾したコレステロールオキシダーゼを添加してもよい。酵素の使用量は特に限定されるものではないが、好ましくは第二反応中で0~5U/mLで用いられる。

(イ)甲28の認定事項

甲28の請求項1の「第二反応で、以下の(a)~(d)を含む緩衝液中で、高密度リポ蛋白中のコレステロールを測定する、

高密度リポ蛋白中のコレステロール測定方法。

(a)コレステロールエステラーゼ

(b)コレステロールオキシダーゼ

(c)コレステロールエステラーゼおよびコレステロールオキシダーゼの高密度リポ蛋白に対する反応性を阻害する物質

(d)第一反応におけるコレステロールエステラーゼおよびコレステロールオキシダーゼの高密度リポ蛋白中のコレステロールに対する阻害作用を、軽減または消失せしめる物質」(甲28-ア)という記載、及び「第二反応時に、第一試薬と同起源または異なる起源のコレステロールオキシダーゼ、または、これらのアミノ酸配列を改変したコレステロールオキシダーゼ、または、化学修飾したコレステロールオキシダーゼを添加してもよい。酵素の使用量は特に限定されるものではないが、好ましくは第二反応中で0~5U/mLで用いられる。」(甲28-イ)という記載から、甲28には、「高密度リポ蛋白中のコレステルール測定において、コレステロールオキシダーゼの濃度を0~5U/mLとすること」(以下「甲28認定事項」という。)が開示されていると認められる。

オ 甲1について

(ア)甲1の記載事項

甲1には、次の事項が記載されている。

(甲1-ア)

「【0004】現在臨床検査の領域で一般に広く用いられている、HDL中のコレステロールの測定方法は、検体に沈殿剤を加えてHDL以外のリポタンパクを凝集させ、これを遠心分離によって取り除き、分離されたHDLのみを含む上清中のコレステロールを測定する沈殿法である。この方法は、超遠心法や電気泳動法に比較して簡便であるものの、沈殿剤を加えて分離する操作を含むために、比較的多量の検体量を要し、又、分析誤差を生じる可能性も高く、全分析工程を完全に自動化することはできなかった。」

(甲1-イ)

「【0008】

【発明が解決しようとする問題】したがって、本発明の目的は、遠心分離などの前処理の必要がなく、簡便な操作で効率よく測定することができ、種々の自動分析装置に適用できるHDL中のコレステロールの定量法を提供することにある。

【0009】

【課題を解決するための手段】本発明者等は血清中のリポタンパク中のコレステロールの測定について種々検討していたところ、リポタンパクを溶解する特定の界面活性剤の存在下で血清とコレステロール測定用酵素試薬との反応を行えば、まず最初にHDLコレステロールのみが反応し、次いでHDLの反応に遅れてVLDL中のコレステロールが反応し、最後にかなり遅れてLDL中のコレステロールが反応することを知った。」

(甲1-ウ)

「【0011】すなわち、本発明は、血清に対し、ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル及びポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルから選ばれる界面活性剤、ならびにコレステロール測定用酵素試薬を添加し、リポタンパク質のうち、HDL中のコレステロールが優先的にコレステロール測定用酵素試薬と反応する時間内にそのコレステロールの反応量を測定することを特徴とするHDLコレステロールの定量法を提供するものである。」

(甲1-エ)

「【0013】

【発明の実施の形態】本発明方法で用いられるポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル及びポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルから選ばれる界面活性剤(以下、「溶解促進性活性剤」という)は、リポタンパク質を溶解する作用を有する界面活性剤である。 このうち前者の市販品の例としてはエマルゲンA-60(花王社製)などが、後者の市販品の例としてはエマルゲンB66(花王社製)等があげられる。 かかる界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いる事ができる。 またその使用量は化合物によって異なり、特に制限されるものではないが、試薬を適用すべき分析装置毎に、望ましい測定時間内にHDLコレステロールが検出できる感度となるよう、実験的に定めることができ、通常は0.01-5重量%の濃度にて使用するのが好ましい。」

(甲1-オ)

「【0021】本発明のコレステロールの測定のために用いるコレステロール試薬としては、公知の酵素試薬、例えばコレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼの組み合わせ、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールデヒドロゲナーゼの組み合わせ等が挙げられる。これらのうち、コレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼの組み合わせが好ましい。」

(甲1-カ)

「【0028】実 施 例 1

リポタンパク質を含む50例の血清検体について、以下の本発明方法及び従来の沈殿法により、HDL中のコレステロールを定量し、これらの測定値を比較した。本発明方法は、各血清検体3μlに、100mMのMES緩衝液(第一試薬;pH6.5)300μlを添加し、約5分後に、エマルゲンB-66 1%、コレステロールエステラーゼ 1U/ml、コレステロールオキシダーゼ 1U/ml、パーオキシダーゼ 5U/ml及びジスルフホブチルメタトルイジン 0.04%、4-アミノアンチピリン 0.004%を含む100mMのMES緩衝液(pH6.5)からなるコレステロール測定試薬(第二試薬)100μlを加え、第二試薬直前と添加後5分後の600nm(副波長 700nm)における吸光度を測定し、その差より血清検体中のHDLコレステロール濃度を求めた(2ポイント法)。 また、較正用物質として濃度既知のコントロール血清を用いた。 なお、以上の操作は、日立7150型自動分析装置を用いて行った。」

(甲1-キ)

「【0031】実 施 例 2

第二試薬中のエマルゲンB-66の代わりにエマルゲンA-60 1%を添加した以外は実施例1と同一の試薬を用い、同一の方法でリポタンパク質を含む50例の血清検体について、HDL中のコレステロールを定量した。即ち、検体3μlに第一試薬300μlを添加し、約5分後、第二試薬100μlを加えた。 第2試薬添加後、12秒後から24秒後までの546nm(副波長 660nm)における吸光度変化を測定し、血清検体中のHDLコレステロール濃度を求めた。 また、較正用物質としては濃度既知の2種類のコントロール血清(低濃度と高濃度)を使用した。 なお、以上の操作は、日立7150型自動分析装置を用いて行った。また、同じ検体について、従来の沈殿法で実施例1と同様に、HDL中のコレステロールを定量し、これらの測定値を比較した。 この結果を図2に示す。」

カ 甲4について

(ア)甲4の記載事項

甲4には、次の事項が記載されている。

(甲4-ア)

「【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、自動分析装置用洗浄剤、さらに詳しくはピペットによる液体分注システムを有する自動分析装置用の洗浄剤に関する。本発明はまた、自動分析装置で同時多項目測定を行う場合の分注用ピペットの洗浄方法に関する。

【0002】

【従来の技術】現在、臨床検査では、検査の自動化が進み、1台の装置で多種多様の試薬を用い、複数の項目が同時に測定できるようになっている。例えば、止血血栓分野の検査項目は単に血液凝固時間の測定に止まらず、凝固線溶系の各因子の定量、フィブリン分解産物の定量等多岐にわたり、これらの測定が1台の装置で測定可能となっている。

【0003】このような自動分析装置では、測定用試薬や検体試料をピペットのような吸引機構により採取し、反応容器へ吐出させる。このとき使用されるピペットは、各測定試薬専用あるいは検体専用といったように用途に応じで用意するのが好ましいが、コストや装置の大きさ等の制限から、1本のピペットを共有して用いることもある。この場合、ピペットの洗浄を充分に行わないと、

前に残ったものが次に吸引した試薬等に混入し測定結果に影響を及ぼしてしまう(キャリーオーバー)という問題が生じる

。とくに、止血血栓分野の検査方法には、凝固法、合成基質法、免疫法があり、

使用される試薬は酵素活性を持つものあるいは基質のようなタンパク質やペプチドを含むものが多い。タンパク質やペプチドはピペットに吸着されやすいため、このような試薬を用いるとキャリーオーバーの問題が起こりやすく、

ピペットを充分に洗浄する必要がある。そこで、従来は次亜塩素酸系の物質を含む洗浄液でピペットを洗浄していた。」

(甲4-イ)

「【0005】本発明は、上記の事情を鑑みなされたもので、

キャリーオーバーを引き起こさず、

瞬時にピペットを洗浄できる自動分析装置用の洗浄剤を提供することを目的とする。

【0006】

【課題を解決するための手段】本発明の自動分析装置用洗浄剤は、

pH5.0以下の酸性水溶液中に、(1)1級アミノ基を有する物質及び(2)ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステルからなる群より選択される1つ以上の非イオン性界面活性剤、を含む

ことを特徴とする。」

(甲4-ウ)

「【0009】さらに少量のノニオン性界面活性剤は洗浄効果を向上させる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエステルが使用できる。水溶性であればポリオキシエチレンの付加モル数は特に制限されないが、2~100モル、さらには5~60モルが好ましく、最も好ましいのは5~12モルである。また、低付加モル数のものと高付加モル数のものを混合して使用することでも、洗浄効果はさらに向上する。ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルエステルにおけるアルキル基としては炭素数8~20のものが使用でき、炭素数8~18のものが好ましい。例えば、種々の付加モル数のポリオキシエチレンアルキルエーテルがアクチノールL(松本油脂製薬株式会社)、ノイゲンET(第一工業製薬株式会社)等として入手でき、種々の付加モル数のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルがエマルジット(第一工業製薬株式会社)、ノニポールTM(三洋化成工業株式会社)等として入手でき、種々の付加モル数のポリオキシエチレンソルビタンエステルがスパン(Atlas Powder Co.)、ソルボン(東邦化学工業株式会社)等として入手でき、また種々の付加モル数のポリオキシエチレンアルキルエステルがノイゲンESTM(第一工業製薬株式会社)等として入手できる。さらに、ノニオン性界面活性剤の濃度は使用する界面活性剤に応じて適宜決定すればよいが、0.001~2.0 W/V%の範囲で使用でき、0.10~1.00W/V%の範囲がより好ましい。

【0010】本発明の洗浄剤は

ピペットによる液体分注システムを有する自動分析装置で同時多項目測定を行う場合の分注用ピペットを瞬時に洗浄するのに極めて有効である。1つの検査項目を測定する過程における試薬分注の後、試料、試薬あるいはこれらの反応液を吸引、吐出したピペットを本発明の洗浄剤で洗浄し、

所望によりすすぎを行い、

次いで別の検査項目の測定を行う。

本発明の洗浄剤とピペットを接触させる時間はごく短時間で十分であり、0.1~20秒、好ましくは0.2~1.0秒である。また、本発明の洗浄剤を他の洗浄剤、例えば次亜塩素酸系の洗浄剤と組み合わせて使用してもよい。」

(イ)甲4の認定事項

甲4の【0003】の「前に残ったものが次に吸引した試薬等に混入し測定結果に影響を及ぼしてしまう(キャリーオーバー)という問題が生じる。」という記載及び【0003】の「使用される試薬は酵素活性を持つものあるいは基質のようなタンパク質やペプチドを含むものが多い。タンパク質やペプチドはピペットに吸着されやすいため、このような試薬を用いるとキャリーオーバーの問題が起こりやすく」という記載から、甲4には、試薬中に含まれる酵素やタンパク質のピペットへの残留によりコンタミネーションが引き起こされるという課題(以下「甲4認定事項」という。)が開示されていると認められる。

キ 甲5について

(ア)甲5の記載事項

甲5には、次の事項が記載されている。

(甲5-ア)

「【0001】

本発明は、

プローブ内に液体を吸引し、プローブ内の液体を吐出して所定量の液体を分注する分注装置およびこの分注装置を備えた自動分析装置に関する

ものである。」

「【0004】

このプローブ間差の一因として、プローブの形状の誤差が挙げられる。

分注装置で使用されるプローブは、金属製の細管を加工して製造される

ため、プローブの加工精度には限界がある。このため、プローブの形状の誤差を抑えることは困難である。そこで、プローブの各部分の寸法について一定の範囲を規格として規定し、分注装置ではプローブの各部分の寸法が規格で規定する範囲内であるプローブを用いることによって、分注誤差を許容範囲内に収めていた。」

(甲5-イ)

「【0060】

まず、測定機構101について説明する。測定機構101は、検体が収容された検体容器111を保持する複数のラック112を順次移送する検体移送部110と、一般検体以外の各種検体(検量線作成用のスタンダード検体、精度管理検体、緊急検体、STAT検体、再検査用検体等)を収容する検体容器121を保持する検体容器保持部120と、試薬容器131を保持する試薬容器保持部130と、検体と試薬とを反応させる反応容器141を保持する反応容器保持部140とを備える。検体容器保持部120と試薬容器保持部130と反応容器保持部140とは、検体容器121と試薬容器131と反応容器141とをそれぞれ収容保持するホイールと、このホイールの底面中心に取り付けられ、その中心を通る鉛直線を回転軸としてホイールを回転させる駆動手段とを有する。

【0061】

なお、検体容器111または121には、内部に収容する検体を識別する情報を所定の情報コード(バーコード、2次元バーコード等)にコード化して記録した情報コード記録媒体がそれぞれ貼付されている。同様に、試薬容器131にも内部に収容する試薬を識別する情報を所定の情報コードにコード化して記録した情報コード記録媒体が貼付されている。このため、測定機構101には、検体容器111に貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR4、検体容器121に貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR5、および試薬容器131に貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR6が設けられている。

【0062】

さらに、測定機構101は、検体移送部110上の検体容器111または検体容器保持部120上の検体容器121に収容された検体を反応容器141に分注する検体分注部150と、

試薬容器保持部130上の試薬容器131に収容された試薬を反応容器141に分注する試薬分注部160とを有する。

なお、検体分注部150および試薬分注部160は、上述の実施の形態3にかかる分注装置3を備える。したがって、検体分注部150および試薬分注部160が有するプローブには、それぞれのプローブを識別する識別情報を所定の情報コードにコード化して記録した情報コード記録媒体が貼付されている。また、測定機構101は、検体分注部150のプローブに貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR7、および試薬分注部160に貼付された情報コードを読み取る情報コード読取部CR8を備える。」

(甲5-ウ)

図12

213

151

0001432016000003.jpg

(イ)甲5の認定事項

甲5の【0001】及び【0004】の記載から、甲5には、「金属製のプローブを備えた自動分析装置」(以下「甲5認定事項1」という。)が開示されていると認められる。

また、甲5の【0062】(甲5-イ)の記載及び図12(甲5-ウ)から、試薬容器保持部130上の複数の試薬容器131に収容された試薬を反応容器141にプローブを用いて分注する試薬分注部16が開示されており、上記甲5認定事項1を合わせると、甲5には、「複数の試薬容器に収容された試薬を1つの金属製プローブで分注すること」(以下「甲5認定事項2」という。)が開示されていると認められる。

ク 甲7について

(ア)甲7の記載事項

甲7には、次の事項が記載されている。

「【0002】

従来から、血液や体液等の検体を、生化学的あるいは免疫学的に分析する自動分析装置が知られている。この自動分析装置は、検体や試薬を分注するための分注ノズルを備えており、検体または試薬を吸引し吐出することによって分注を行う。

分注を行った分注ノズルは、検体間や試薬間のコンタミネーションを防止するため、その都度洗浄される。

また、検体を免疫学的に分析する装置では、免疫反応を利用した測定を行うが、

微量の検体間汚染(キャリーオーバー)

が測定結果に影響を及ぼすため、洗剤を用いて分注ノズルの洗浄を行うものも知られている。例えば、試薬を収容する試薬収容部と、この試薬に対応する洗剤を収容する洗剤収容部とが一体にまとめられた試薬容器ユニットを試薬ディスクに収納するとともに、プローブ(分注ノズル)を洗浄する洗浄槽を別途設け、プローブを一旦試薬ディスク上に移動させて洗剤を吸引した後、洗浄槽に移動させて洗浄するものが知られている(特許文献1参照)。」

(イ)甲7の認定事項

甲7の【0002】の記載から、「分注ノズルを用いる自動分析装置において、コンタミネーションの発生を防止するという課題」が存在すると認められる。

ケ 甲8について

(ア)甲8の記載事項

甲8には、次の事項が記載されている。

「【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、試薬プローブ汚染防止および反応管からの汚染防止が可能な自動分析装置に関する。

【0002】

【従来の技術】近年、測定項目に応じた試薬プローブで反応管にピペットしながら多項目の測定項目を同時に測定するランダム方式の自動分析装置が可能になった。この自動分析装置においては、サイクル毎に試薬をピペットした後に試薬プローブを水洗浄することにより、前に試薬分注した測定項目の影響を除く方法がとられている。

【0003】しかし、

試薬プローブを水洗浄しても、前に試薬分注した測定項目の影響(クロスコンタミネーション)が測定結果に現れる

ため、予め試薬が干渉する測定項目の組み合わせと洗浄方法を設定することで、前に試薬分注をした測定項目の影響を取り除く方法が取られている。洗浄方法には、試薬プローブを水洗浄する方法(水洗い)と、影響を受ける測定項目の試薬をダミーで空き反応管に吐出して試薬プローブの内壁をなじませる洗浄方法(試薬とも洗い)と、洗剤を試薬プローブに吸入して空き反応管に吐出する洗浄方法(洗剤洗浄)がある。また、前の測定項目の試薬の影響が出ないように測定項目の順序を自動的に切り換える方法も考案されている。」

(イ)甲8の認定事項

甲8の【0003】の記載から、「自動分析装置において、コンタミネーションの発生を防止するという課題が存在する」と認められる。

コ 甲9について

(ア)甲9の記載事項

甲9には、次の事項が記載されている。

「【0018】臨床検査用の自動分析装置での測定操作は、通常以下のように行われる。試料がピペット(プローブ)又はチューブ等により吸い上げられた後に反応セル(反応キュベット)に分注され、その後これに1種類又は複数種類の試薬がピペット又はチューブ等により吸い上げられた後分注され、反応セルの中で測定反応が行われる。そして、反応セル中の反応液の吸光度の測定を行い、この値より試料中の活性値又は濃度が算出される。

【0019】しかしながら、「リパーゼ活性値の測定とコレステロール濃度の測定」、「リパーゼ活性値の測定と中性脂肪濃度の測定」、又は「リパーゼ活性値の測定とコレステロール濃度の測定と中性脂肪濃度の測定」を、同一の測定装置を使用して測定を行う場合、下記のようなことが起こり、正確な測定が行えないため問題となっていた。

【0020】その問題点とは、

コレステロール測定試薬中のコレステロールエステラーゼ、及び/又は中性脂肪測定試薬中のリポタンパク質リパーゼが、測定時に測定装置の ピペット(プローブ)若しくはチューブ、及び/又は反応セル(反応キュベット)等に吸着し、通常の洗浄操作を行っても残存してしまい、試料中のリパーゼ活性値の測定を行った際に、先の測定時に吸着、残存したコレステロールエステラーゼ及び/又はリポタンパク質リパーゼが、リパーゼ活性測定用の基質をリパーゼに代わって加水分解してしまい、本来の値よりも吸光度を増加させてしまうことである。

つまり、測定を行った試料中のリパーゼ活性値が本来の値よりも高く示されてしまい、つまり、正の誤差を受けてしまい、疾患、病状の診断を誤らせることにもなる。」

(イ)甲9の認定事項

前記(ア)で摘記した甲9の記載から、甲9には、「自動分析装置に、ピペットにコレステロールエステラーゼやリポタンパク質リパーゼの酵素がプローブに吸着して残留することにより、測定に誤差が生じる問題があること」(以下「甲9認定事項」という。)が記載されていると認められる。

サ 甲10について

(ア)甲10の記載事項

甲10には、次の事項が記載されている。

(甲10-ア)

「本書は臨床化学検査領域で使用する測定試薬の主な構成成分、汎用自動分析装置へのアプリケーション法、適正な校正方法、試薬の保管管理などについて、全体を網羅した学習ができるように構成されている。まず総説として、臨床化学検査試薬の開発と発展に関する歴史的な経緯を俯瞰し、検査試薬の組み立て方の基本について詳しく説明している。各論では、臨床化学検査試薬に共通に使用される成分として、緩衝液、発色剤、酸化・還元剤、保存・安定剤、界面活性剤についてそれぞれ詳述した。・・・さらに、試薬の保管管理とロット管理法について取り上げ、汎用自動分析装置で問題となる試薬間コンタミネーションの確認方法についても解説している。・・・

本マニュアルは、日常検査の基礎的な部分を教育することに活用できるように配慮して作成した。個々の検査担当者と検査室のレベルアップにお役に立つことを期待している。」(6頁、前書き2~3段落)

(甲10-イ)

「b.再現性の向上

最近の検体測定のほとんどは自動分析装置で行われる。検体や試薬の分注、攪拌、洗浄などが全て自動で行われるが、分注精度、攪拌効率、セル内に残留する反応液や洗浄液の有無が再現性に大きく影響する。これらの多くは装置側に依存するものであるが、試薬側でもある程度の制御が可能である。特に最近の自動分析装置は微量化が進んでおり、試薬の分注プローブへの馴染みが分注精度に、第一試薬と第二試薬の混ざりやすさが攪拌効率に、反応セルへの馴染みが攪拌や洗浄効率に影響することがある。

ア.界面活性剤

界面活性剤を添加することで試薬の表面張力が下がり、濡れ性が高まる。これにより、プローブからの試薬の切れがよくなったり、セル内の気泡の発生を抑えるなどの効果が得られ、結果的に精度が上がる。また、セル洗浄時の試薬の残留を抑えてクロスコンタミの抑制効果も得られる。界面活性剤は洗剤であることから、セルの洗浄効果を発揮するものもある。」(66頁下から15~2行)

(甲10-ウ)

「4)主な界面活性剤

臨床化学検査に用いる測定試薬には、測定結果の信頼性を高めるために様々な構成成分による工夫が多く盛り込まれている。その中でも、界面活性剤が担っている役割は多岐にわたり、最も重要な成分の1つと言える。」(69頁1~4行)

(甲10-エ)

「3)試薬間コンタミネーション

(1)はじめに

「コンタミネーション(contamination)」は科学実験の場において“汚染”を意味する語として使われ、略して「コンタミ」とも呼ばれる。また、「キャリーオーバー(carryover)」は“繰り返し”や“持ち越し”を意味している。臨床化学分析では、コンタミは一般的にキャリーオーバーによって生じた患者試料間や試薬間も持ち越しによる汚染を意味する。臨床化学分野の汎用自動分析装置はサンプルプローブや反応セルが共通で、シングルマルチ型自動分析装置では、試薬プローブも全ての試薬に共通で使用されており、コンタミの要因となる。」(118頁1~9行)

(イ)甲10の認定事項

(ア)で摘記した甲10の記載を総合すると、甲10には、「キャリーオーバーがコンタミの要因となること、及び、界面活性剤によって試薬の残留を抑えることによるクロスコンタミ抑制効果が得られること」(以下、「甲10認定事項」という。)が記載されていると認められる。

前記(ア)で摘記したように、試薬に界面活性剤を試薬に添加することは広く行われており、特に、界面活性剤を試薬に添加することで、プローブからの試薬の切れが良くなること、すなわち、界面活性剤を試薬に添加することにより、試薬がプローブに吸着・残留することを防ぐことが記載されており(甲10-イ)、甲10が、臨床科学検査におけるマニュアルである(甲10-ア参照。)ことを踏まえれば、これらの事項は本件優先日前において周知であったと認められる。

シ 甲11について

(ア)甲11の記載事項

甲11には、次の事項が記載されている。

126

151

0001432016000004.jpg

」(第6頁右上欄)

(イ)甲11の看取事項

甲11は、日立自動分析装置7150のカタログであり、上記(ア)の摘記のとおり、図11の第6頁右上欄の写真から、「日立自動分析装置7150が金属製のピペットを用いる分注機構を備えるものであること」が看取される(以下「甲11看取事項」という。)。

ス 甲29について

(ア)甲29の記載事項

甲29には、次の事項が記載されている。

107

151

0001432016000005.jpg

」(998頁)

(イ)甲29の認定事項

前記(ア)で摘記したように、甲29の図6の7070形血液自動分析装置は、試薬ピペッティング機構を備えるものである。

セ 甲2の記載事項

甲2には、次の事項が記載されている。

(甲2-ア)

「【0001】

【産業上の利用分野】本発明は、

高比重リポ蛋白(HDL)分画中のコレステロール(以下「HDLコレステロール」ともいう。)の定量方法及び定量用試薬キット

に関し、とりわけ臨床検査の分野において、血清などの生体試料中のHDLコレステロールの定量方法、及びHDLコレステロール定量用試薬キットに関する。」

(甲2-イ)

「【0006】本発明は、上述の課題を解決し、

HDLコレステロールを効率良く測定することを目的とし、とりわけ臨床検査において自動分析装置を用いて測定できる有用な方法及びそのための試薬キットを提供することを目的

とする。」

(甲2-ウ)

「【0008】すなわち、本発明は、

界面活性剤アシルポリオキシエチレンソルビタンエステル

により、HDL以外のリポ蛋白分画中のコレステロールに酵素を優先的に作用させて得られる反応生成物を反応系外に導き、次に界面活性剤アルキルポリオキシエチレンエーテルにより、HDL以外のリポ蛋白分画中の残存するコレステロールに対する酵素による作用を抑制させるとともに、HDLコレステロールに酵素を作用させて反応を進行させることを特徴とするHDLコレステロールの定量方法に関するものである。

【0009】また、本発明は、

界面活性剤アシルポリオキシエチレンソルビタンエステル及び酵素を含む第1試薬

と、界面活性剤アルキルポリオキシエチレンエーテルを含む第2試薬とからなることを特徴とするHDLコレステロール定量用試薬キットに関するものである。

【0010】本発明の試薬キットにおける、

コレステロールに作用する酵素としては、コレステロールエステラーゼ(CE)、コレステロールオキシダーゼ(CO)

などが例示される。リポ蛋白分画中には、コレステロールの他にコレステロールエステルも含まれているので、通常、コレステロールエステルを加水分解させてコレステロールに変換させるために、コレステロールエステラーゼ(CE)をコレステロールオキシダーゼ(CO)と共存させる。

【0011】本発明の試薬キットにおける第1試薬中の酵素は、例えばCEの場合には、1単位/ml~100単位/ml、好ましくは1単位/ml~50単位/ml、COの場合には、0.5単位/ml~100単位/ml、好ましくは1単位/ml~50単位/mlとなるように配合するが、試料の種類などに応じて適宜決定される。

【0012】HDL以外のリポ蛋白分画であるLDL、VLDL、カイロミクロンなどに含まれるコレステロールに対して、上記酵素を優先的に作用させる

界面活性剤アシルポリオキシエチレンソルビタンエステルは、

通常Cn ソルビタンEx と略記される、

親水性部分にポリオキシエチレンを持つ非イオン性界面活性剤であり、

本発明の目的に適合するものであれば全て用いることができる。具体的な商品名としては、Tween 21(C

12

ソルビタンE

4

)、Tween 81(C

12

ソルビタンE

5

)、

Tween 20

(C

12

ソルビタンE

20

)、Tween 40(C

16

ソルビタンE

20

)、Tween 60(C

18

ソルビタンE

20

)、

Tween 80

(C

18:1

ソルビタンE

20

)、Emasol4130(C

18

ソルビタンE

x

)、Tween 85(C

17:1

ソルビタンE

20

)などが例示される。」

(甲2-エ)

「【0027】〔実施例1〕

界面活性剤アシルポリオキシエチレンソルビタンエステルとして商品名がTween85

、また界面活性剤アルキルポリオキシエチレンエーテルとして商品名がBrij98の界面活性剤を

それぞれ使用して、次の第1及び第2試薬を準備した

【0028】〈第1試薬〉

10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)、0.12mg/mlのHDAOS、0.6単位/mlのPOD、10単位/mlのCO、10単位/mlのCE、0.01w/v%のTween85

【0029】〈第2試薬〉10mMのリン酸緩衝液(pH7.0)、0.15mg/mlの4-アミノアンチピリン、1.5w/v%のBrij98

【0030】

日立7170型自動分析装置を用いて

、試料4μlに第1試薬250μlを加え、5分後に第2試薬50μlを加え、5分後に波長600nm/700nmで

測定した

。試料としてHDLコレステロール濃度が150mg/dlの血清を10段階に希釈したものを用いたところ、表1に示すように、良好な直線性が得られた。」

ソ 甲3の記載事項

甲3には、次の事項が記載されている。

(甲3-ア)

「【0001】

【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】本発明は、血清、血漿などの生体試料中の特定のリポタンパク中の測定対象成分を測定する方法に関するものであり、特に、臨床検査で測定が広く普及している

高比重リポタンパク(High Density Lipoprotein。以下、HDLと略記する。)中のコレステロールの自動化定量に有利に応用できる測定方法

に関する。」

(甲3-イ)

「【0005】

【発明が解決しようとする課題】上記した如き状況に鑑み本発明が解決しようとする課題は、生体試料中の特定のリポタンパク中の測定対象成分を、従来汎用されていた沈殿法に於て必要であった特定のリポタンパクを分離する為の前処理操作なしで直接

自動分析装置等を用いて測定

することを可能とする方法を提供することにある。」

(甲3-ウ)

「【0019】例えば、

リポタンパク中のコレステロールを測定するための試薬としては、例えばコレステロール オキシダーゼ(COD)、コレステロール エステラーゼ(CHE)

、ペルオキシダーゼ(POD)、被酸化性発色剤等を含有する酸化呈色法用試薬、例えばCHE、コレステロール脱水素酵素(CHD)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)等を含有する紫外部測定法用試薬

等の自体公知の測定方法に於て用いられる試薬が挙げられる。

また、リポタンパク中のトリグリセライドを測定するための試薬としては、例えばグリセロキナーゼ-グリセロール-3-ホスフェート オキシダーゼ法、グリセロールデヒドロゲナーゼ法、グリセロキナーゼ-グリセロール-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ法等の自体公知の測定方法に於て用いられる試薬が挙げられ、リポタンパク中のリン脂質を測定するための方法としては、例えば有機溶媒抽出法、ホスホリパーゼDとコリンオキシダーゼを用いた方法等の自体公知の測定方法に於て用いられる試薬が挙げらる。

【0020】尚、

これら各測定用試薬は、通常抗体を含有しない試薬(第2液)中に含有される

が、これらの一部、例えばPOD、被酸化性発色剤、NAD等は抗体を含有する試薬(第1液)中に含有させておいても良い。また、これら測定試薬の各成分の使用濃度としては、通常この分野で測定の際に使用される濃度範囲から適宜選択して用いれば足りる。

【0021】界面活性剤には測定対象成分(特にコレステロール)の測定反応速度を促進し測定に要する時間を短縮することを可能とするという効果があるので、

本発明に於て用いられる抗体を含まない試液(第2液)中には界面活性剤が含まれていても良い

。このような目的で添加し得る界面活性剤としては、特定のリポタンパク中の測定対象成分の測定反応を阻害するような性質を有さないものであれば、

非イオン界面活性剤

、両性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤の何れにてもよく、特に限定されない。このような界面活性剤としては、例えば、

ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル

、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、

ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル

(例えばポリオキシエチレンイソオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等)、ポリエチレングリコールモノラウレート等の非イオン性界面活性剤、例えば、ステアリルベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等の両性界面活性剤、例えば、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、アルキルベンジルジメチル等の陽イオン性界面活性剤、例えば、コール酸、デオキシコール酸、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸ナトリウム等の陰イオン性界面活性剤が挙げられる。尚、本発明の方法を自動分析装置へ適用する場合には、第2液中に上記の如き界面活性剤を添加しておくことが望ましい。また、測定精度の面を考慮すると中でもHLB12~17の非イオン性界面活性剤がより好ましい。特にHDL中のコレステロールを測定する場合に用いられる非イオン性界面活性剤としてはHLB12~17のものが好ましい。尚、これら界面活性剤は単独で用いても、或は適宜混合して用いても何れにてもよい。」

(甲3-エ)

「【0029】

【実施例】

実施例1

日立7150形自動分析装置((株)日立製作所製)を使用して、

本発明の測定法により血清中のHDL中のコレステロール量を測定した。

〔試料〕新鮮ヒト血清10検体を試料とした。

〔試薬〕

試液1(R-1):抗βリポタンパク抗血清(12mgAb/ml:和光純薬工業(株)製) 1w/v%

4-アミノアンチピリン 1mM

BES-NaOH緩衝液(pH7.0) 100mM

試液2(R-2):

COD 3単位/ml

CHE 3単位/ml

POD 1単位/ml

DAOS 1mM

TritonX-100 0.05w/v%

BES-NaOH緩衝液(pH7.0) 100mM

〔測定パラメータ(測定条件)〕

測定方法;2ポイントエンド法 [24]-[50]

試料量;4μl

R-1;270μl

R-2;90μl

測定波長;700/600nm

測定温度;37°C

〔結果〕測定結果を表1に示す。

【0030】実施例2

日立7150形自動分析装置((株)日立製作所製)を使用して、

本発明の測定法により血清中の

HDL中のコレステロール量を測定した

〔試料〕実施例1と同じ。

〔試薬〕

試液1(R-1):抗βリポタンパク抗血清(12mgAb/ml:和光純薬工業(株)製) 1w/v%

4-アミノアンチピリン 1mM

ACES-NaOH緩衝液(pH7.0) 100mM

試液2(R-2):

COD 3単位/ml

CHE 3単位/ml

POD 1単位/ml

DAOS 1mM

TritonX-100 0.05w/v%

ACES-NaOH緩衝液(pH7.0) 100mM

〔測定パラメータ(測定条件)〕実施例1と同じ。

〔結果〕測定結果を表1に併せて示す。」

タ 甲12

(甲12-ア)

「当社は、1993年に、多種の分析機能を搭載し、多様な検査(化学検査・免疫検査・電解質測定・薬物検査)が可能な中型生化学自動分析装置「7170形」「7170S形」を製品化しており、その信頼性の高さから、同一セグメントの装置では業界トップの販売実績を持っています。そして、このたび、従来からのコンセプトや基本的な構造・性能は継承しつつ、さらに検体処理の信頼性の向上やランニングコストの低減を図った中型生化学自動分析装置「7180形」を製品化しました。」(3段落)

(2)対比・判断

ア 甲25を主引用例とした場合の進歩性について

(ア)本件特許発明1と甲25発明1との対比・判断

a 対比

(a)生化学自動分析装置は、一般に金属製の試薬プローブを備え、一本の試薬プローブで複数の異なる試薬を分注する機構を有するものであり(例えば、(1)キ(イ)の甲5認定事項2を参照。)、甲25で用いられている「日立7150型自動分析装置」も、そのカタログ(甲11)の前記看取事項から把握されるように、試薬ディスクにセットされた複数の試薬を試薬ピペッティング機構で分注する機構を備えたものであり、試薬プローブは金属製であるから、甲25発明1の「日立7150型自動分析装置」は、本件特許発明1の「異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置」に相当する。

(b)甲25発明1の「エマルゲンB-66」は、本件特許発明1の「前記非イオン性界面活性剤が、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン( 登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤」に相当する。そして、甲25発明1の「エマルゲンB-66 1%、コレステロールエステラーゼ(旭化成)1.3単位/ml、コレステロールオキシダーゼ(旭化成)2単位/ml、パーオキシダーゼ(東洋紡)5単位/ml及びジスルホブチルメタトルイジン0.04%を含む100mMのMES緩衝液(pH6)からなるコレステロール測定試薬(第2試薬)」が、「血清検体中のHDLコレステロール濃度を求める方法。」において、「日立7150型自動分析装置」の試薬ピペッティング機構の試薬プローブに接触することは自明であるから、甲25発明1において、「コレステロール測定試薬(第2試薬)」は、本件特許発明1の「金属製試薬プローブに接触する溶液」に相当するものであり、また、甲25発明1において、「コレステロール測定試薬(第2試薬)」は、酵素である「コレステロールオキシダーゼ」と非イオン界面活性剤である「エマルゲンB66」を含むものであるから、甲25発明1は、本件特許発明1の「酵素を含有する生化学検査試薬を用いた生化学自動分析装置における操作の場面で、金属製試薬プローブに接触する溶液中に非イオン性界面活性剤を含有させて用いられ」ることに相当する構成を具備するものである。

(c)甲25発明1の「第1試薬」と「コレステロール測定試薬(第2試薬)」は、「血清検体中のHDLコレステロール濃度を求める」ために用いられる試薬であるから、本件特許発明1の「高密度リポタンパクコレステロール測定試薬」に相当する。

(d)甲25発明1の「第1試薬」は、「pH8.5」であり、本件補正発明1の「第一試薬」とは、「pH6.0以上」であることで共通する。

(e)甲25発明1は、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体を使用するものではないから、本件特許発明1の「(但し、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体を使用する方法を除く)」に相当する構成を具備している。

(f)そうすると、本件特許発明1と甲25発明1は、以下の各点で一致し、相違する。

(一致点)

「異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置において実行される方法であって、

生化学検査試薬は、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬であって、第一試薬及び第二試薬を含み、

第一試薬は、pH6.0以上であり、

生化学検査試薬は、少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含み、

ここで、該少なくとも一種の非イオン性界面活性剤は、

酵素を含有する生化学検査試薬を用いた生化学自動分析装置における操作の場面で、金属製試薬プローブに接触するように用いられ、

前記非イオン性界面活性剤は、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、

測定誤差の低減方法(但し、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体を使用する方法を除く)。」

(相違点1)

本件特許発明1は、「生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差を低減する方法」であるのに対して、甲25発明1は、そのような事項が特定されていない方法である点。

(相違点2)

第一試薬について、本件特許発明1は、「2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含」むのに対して、甲25発明1は、第1試薬がコレステロールオキシダーゼ及び界面活性剤を含まない点。

b 判断

相違点2についての判断

事案に鑑み、まず相違点2について検討する。

甲25には、「上記前処理によりリポ蛋白質中の遊離型コレステロールを消費させた後、試料中の特定のリポ蛋白中に存在するコレステロールを測定する」(【0036】)、「ポリオキシエチレンアルキレンフェニルエーテル及びポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルから選ばれる界面活性剤を特定のリポ蛋白のみに作用する物質とし、その存在下、コレステロール測定用酵素試薬を添加し、リポ蛋白のうち、高比重リポ蛋白中のコレステロールが優先的にコレステロール測定用酵素試薬と反応する時間内にそのコレステロールの反応量を測定する方法」(【0038】)、「ポリオキシエチレンアルキレントリベンジルフェニルエーテルの市販品の例としてはエマルゲンB66(花王社製)等があげられる。」(【0039】)との記載があり、甲25発明1の第二試薬に含まれるエマルゲンB-66は、第二反応で使用する特定のリポ蛋白のみに作用する物質であって、その存在下でコレステロール測定用試薬を添加することで、高比重リポ蛋白中のコレステロールが優先的にコレステロール測定用酵素試薬と反応することが把握される。このようなエマルゲンB-66等の非イオン性界面活性剤を甲25に記載される第一試薬に配合すれば、第一反応の目的であるリポタンパク表面に存在する少量の遊離型コレステロールのみを消費させることができなくなるため、このような変更には阻害要因が存在する。よって、甲25発明1を変更し本件特許発明1の上記相違点2に係る構成を具備させることは容易ではない。

また、第一試薬と第二試薬を含む高密度リポタンパクコレステロール測定試薬において、「pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び」「Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤」を含む第一試薬は、本件特許の優先日前に公知であった文献である甲1~13、18~21、23~32のいずれにも記載も示唆もされておらず、また、本件特許の優先日前に周知であったとも認められない。

c 小括

よって、相違点1について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲25発明1及び、甲1~13、18~21、23~32の記載事項又は周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件特許発明3、7について

本件特許発明3、7は、本件特許発明1の特定事項を全て含むものであるから、上記(ア)bで本件特許発明1について検討した結果と同様の理由で、本件特許発明3、7は、甲25発明1及び、甲1~13、18~21、23~32の記載事項又は周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)本件特許発明9と甲25発明2との対比、判断

a 対比

(a)上記(ア)a(a)の説示のとおり、甲25発明2の「日立7150型自動分析装置」は、本件特許発明9の「異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置」に相当する。そして、甲25発明2の「コレステロール測定試薬」が「日立7150型自動分析装置」の金属製試薬プローブで分注されることは明らかであるから、甲25発明2の「コレステロール測定試薬」は、本件特許発明9の「金属製試薬プローブに接触するように用いられる」に相当する構成を備えるものである。

(b)甲25発明2の「エマルゲンB-66」は、本件特許発明9の「前記非イオン性界面活性剤が、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤」に相当する。

(c)甲25発明2の「HDLコレステロール濃度を求める方法に用いられる試薬」は、本件特許発明9の「高密度リポタンパクコレステロール測定試薬」に相当し、甲25発明2の「第1試薬」、「第2試薬」は、本件特許発明9の「第一試薬」、「第二試薬」にそれぞれ相当する。そして、甲25発明2の「第1試薬」は、「pH8.5」であるから、本件特許発明9の「第一試薬」とは、「pH6.0以上」であることで共通する。

(d)また、甲25発明2は、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体と組み合わせて使用されることを前提とするものではない。

(e)そうすると、本件特許発明9と甲25発明2は、以下の各点で一致し、相違する。

(一致点)

「異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置に用いられる生化学検査試薬であって、酵素と共に少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含み、

前記生化学検査試薬は、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬であって、第一試薬及び第二試薬を含み、

前記第一試薬は、pH6.0以上であり、

前記非イオン性界面活性剤は、金属製試薬プローブに接触するように用いられることを特徴とし、

前記非イオン性界面活性剤が、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、

生化学検査試薬(但し、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体と組みわせて

使用される生化学検査試薬を除く)。」

(相違点3)

本件特許発明9は、「生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差を低減するための生化学検査試薬」であるのに対して、甲25発明2は、「コレステロール測定試薬」について、そのような事項が特定されていない点。

(相違点4)

第一試薬について、本件特許発明9は、「2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含」むのに対して、甲25発明2は、第1試薬がコレステロールオキシダーゼ及び界面活性剤を含まない点。

b 判断

事案に鑑み、まず相違点4について検討する。

相違点4は、実質的に相違点2と同じであり、上記(ア)bの検討結果と同様の理由で、甲25発明2において、第1試薬にエマルゲンB66等の非イオン性界面活性剤を第1試薬に配合するよう変更することには阻害要因がある。

c 小括

よって、相違点3について検討するまでもなく、本件特許発明9は、甲25発明2及び、甲1~13、18~21、23~32の記載事項又は周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)本件特許発明11、13、16について

本件特許発明11、13、16は、本件特許発明9の特定事項を全て含むものであるから、上記(ウ)bで本件特許発明9について検討した結果と同様の理由で、本件特許発明11、13、16は、甲25発明2及び、甲1~13、18~21、23~32の記載事項又は周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

イ 甲27を主引用例とした場合の進歩性について

(ア)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲27発明1とは、以下の、一致点及び相違点を有する。

(一致点)

「生化学検査試薬を用いる方法であって、

前記生化学検査試薬は、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬であって、第一試薬を含み、

前記第一試薬は、pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含み、

前記非イオン性界面活性剤は、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、

測定誤差の低減方法(但し、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体を使用する方法を除く)。」

(相違点5)

本件特許発明1が、「異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置において生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差を低減する方法」であり、「該少なくとも一種の非イオン性界面活性剤は、酵素を含有する生化学検査試薬を用いた生化学自動分析装置における操作の場面で、金属製試薬プローブに接触するように用いられ」るのに対して、甲27発明1は、そのような事項が特定されていない方法である点。

(相違点6)

高密度リポタンパクコレステロール測定試薬について、本件特許発明1が、「第一試薬及び第二試薬を含」むのに対して、甲27発明1は、「試薬1」からなる点。

事案に鑑み、まず上記相違点6について検討する。

甲27の24頁11~13行には、試薬2として、「試薬2(pH=7)

MES(ナカライテスク) 50mM

コレステロールエステラーゼ(リポプロテインリパーゼ、東洋紡社製) 3U/ml

コレステロールオキシダーゼ(協和醗酵工業社製) 2U/ml

プルロニックL-121(旭電化社製) 0.7%

エマルゲンL-40(花王社製) 0.5%

塩化カルシウム(和光純薬社製) 0.1mg/ml」との記載がある。しかし、試薬1及び試薬2に関して、甲27の23頁4~15行に記載されるように、検体への試薬1の添加・攪拌後の吸光度E1と、5分反応後の吸光度E2からHDLコレステロール濃度を求め、その後、試薬2の添加・攪拌直後の吸光度E3と5分経過後の吸光後E4からLDLコレステロール濃度を求めるから、試薬1のみがHDLコレステロール測定試薬であり、試薬2は、LDLコレステロール測定試薬である。そうすると、甲27発明において、HDLコレステロール測定試薬である試薬1を2つの試薬で構成するように変更し、先だって使用される第一試薬に、「pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び」「Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤」を含むように構成することが容易か否かを検討する必要がある。

第一試薬と第二試薬を含む高密度リポタンパクコレステロール測定試薬において、「pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び」「Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤」を含む第一試薬は、本件特許の優先日前に公知であった文献である甲1~13、18~21、23~32のいずれにも記載されておらず、また、本件特許の優先日前に周知であったとも認められない。そうすると、甲27発明1において、HDLコレステロール測定試薬である試薬1を2つの試薬で構成するように変更し、先だって使用される第一試薬に、「pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び」「Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤」を含むように変更することが当業者にとって容易であったとはいえない。

よって、相違点5について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲27発明1及び、甲1~13、18~21、23~32の記載事項又は周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件特許発明3、7について

本件特許発明3、7は、本件特許発明1の特定事項を全て含むものであるから、上記(ア)で本件特許発明1について検討した結果と同様の理由で、本件特許発明3、7は、甲27発明1及び、甲1~13、18~21、23~32の記載事項又は周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)本件特許発明9について

本件特許発明9と甲27発明2とは、以下の一致点及び相違点を有する。

(一致点)

「生化学検査試薬であって、

前記生化学検査試薬は、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬であって、第一試薬を含み、

前記第一試薬は、pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び少なくとも一種の非イオン性界面活性剤を含み、

前記非イオン性界面活性剤が、Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤である、

生化学検査試薬(但し、高比重リポタンパク以外のリポタンパクに対する抗体と組みわせて

使用される生化学検査試薬を除く)。」

(相違点7)

本件特許発明9は「異なる試薬を同一の金属製試薬プローブで分注する機構を備えた生化学自動分析装置に用いられる場合に生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差を低減するため」のものであるのに対して、甲27発明2は、そのような特定がなされていない点。

(相違点8)

本件特許発明9は、「金属製試薬プローブに接触するように用いられる」のに対して、甲27発明2は、そのような特定がなされていない点。

(相違点9)

高密度リポタンパクコレステロール測定試薬について、本件特許発明9が、「第一試薬及び第二試薬を含」むのに対して、甲27発明2は、「試薬1」からなる点。

事案に鑑み、まず上記相違点9について検討する。

上記相違点9は、実質的に上記(ア)で検討した相違点6と同じであり、その検討結果も、上記(ア)に説示したとおりであり、甲27発明2において、本件特許発明9の上記相違点9に係る構成を具備させることは当業者にとって容易ではない。

よって、相違点7、8について検討するまでもなく、本件特許発明9は、甲27発明2及び、甲1~13、18~21、23~32の記載事項又は周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(エ)本件特許発明11、13、16について

本件特許発明11、13、16は、本件特許発明9の特定事項を全て含むものであるから、上記(ウ)で本件特許発明9について検討した結果と同様の理由で、本件特許発明11、13、16は、甲27発明2及び、甲1~13、18~21、23~32の記載事項又は周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(オ)小括

本件特許発明1、3、7は、甲27発明1及び、甲1~13、18~21、23~32の記載事項又は周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではなく、また、本件特許発明9、11、13、16は、甲27発明2及び、甲1~13、18~21、23~32の記載事項又は周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

ウ 甲1~4のいずれかを主引用例とした場合の新規性及び進歩性について

甲1~4のいずれにも、本件特許発明1、3、7、9、11、13、16の発明特定事項である「第一試薬と第二試薬を含む」「高密度リポタンパクコレステロール測定試薬」における、「pH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼ、及び」「Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤」「を含」む「第一試薬」について記載も示唆もされていない。また、このような第一試薬が、本件特許の優先日前に周知であったとは認められず、本件特許の優先日前の公知文献である甲1~13、18~21、23~32にも記載も示唆もされていない。

よって、本件特許発明1、3、7、9、11、13、16は、甲1~4に記載の発明と同一ではなく、また、甲1~4に記載の発明及び、甲1~13、18~21、23~32の記載事項又は周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

エ まとめ

以上のとおり、特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)についての特許異議申立理由及び取消理由はいずれも理由がない。

2 理由3(サポート要件)

本件の明細書に記載の実施例2~4で用いられている具体的な非イオン性界面活性剤は、Triton X-114、エマルゲンA60、エマルゲンA90、エマルゲンB66、エマルゲン420であり、これらの非イオン性界面活性剤を、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬の第一試薬に使用することにより、コンタミネーションにより発生する測定誤差を低減する効果を奏することが明細書の段落0052~0053、0062~0063、0075~0076、0084~0085実施例における分析結果で示されている。また、これらの実施例には、第1試薬がpH6.0以上であり、2U/ml以上5U/ml以下のコレステロールオキシダーゼと上記いずれかの非イオン性界面活性剤を含むものが記載されている。

本件特許発明1、3、7、9、13、16は、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬の第一試薬に含まれる非イオン性界面活性剤が「Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤」に特定され、第一試薬に含まれる酵素も「コレステロールオキシダーゼ」に特定されるものであり、いずれも実施例2~4により、コンタミネーションにより発生する測定誤差を低減する効果が裏付けられたものである。

申立人は、申立理由において、酵素についての限定がないこと、測定誤差についての限定がないこと、生化学検査試薬についての限定がないこと、測定感度の低下を抑制できない非イオン性界面活性剤が含まれることを主張している。しかし、本件特許発明1、3、7,9、11、13、16は、酵素が「コレステロールオキシダーゼ」に限定され、この限定により、測定誤差についても間接的に特定され、生化学検査試薬についても「高密度コレステロール測定試薬」に限定されており、非イオン性界面活性剤についても上述したように実施例でその効果が示されているものに限定されているので、上記主張はいずれも採用できない。

よって、本件特許発明1、3、7、9、11、13、16は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、特許法第36条第6項第1号に違反してなされたものではないので、サポート要件についての特許異議申立理由及び取消理由はいずれも理由がない。

3 申立理由の理由3(明確性)

本件訂正後の請求項1の「該少なくとも一種の非イオン性界面活性剤は、

酵素を含有する生化学検査試薬を用いた生化学自動分析装置における操作の場面で、金属製試薬プローブに接触するように用いられ、」という記載の「生化学自動分析装置における操作の場面」は、生化学自動分析装置による分析作業における試薬の注入・排出などの操作が行われる時のことであることは、技術常識を踏まえれば当業者にとって明らかであるので、上記記載は明確である。

よって、本件特許発明1、3、7は明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たすものであるから、申立理由の理由3は理由がない。

4 申立理由の理由5(実施可能要件)

申立人は、申立理由において、

主張1:コレステロールオキシダーゼ以外の酵素についてのコンタミネーションの影響についての記載がないこと、

主張2:過酸化水素を発生させる酵素であるコレステロールオキシダーゼを含む試薬を用いた後に別の試薬で過酸化水素の吸光度を元に生体成分を測定した際に生じるとされる測定誤差以外の測定誤差の低減を確かめた例が記載されていないこと、

主張3:高密度リポタンパク(HDL)コレステロール測定試薬を使用した生化学検査試薬以外について測定誤差の低減を確かめた例が記載されていないこと、

主張4:実施例の記載と同様の条件で実験を行っても、生化学検査試薬中に含まれる酵素が金属製試薬プローブに吸着又は残留して発生するコンタミネーションにより発生する測定誤差を低減することができないこと

を主張しており、特に、主張4については、実験データを記載した甲17を提出して、その主張の根拠としている。

上記主張を踏まえて、実施可能要件について検討する。

本件特許発明は、酵素が「コレステロールオキシダーゼ」、生化学検査試薬が、「高密度リポタンパクコレステロール測定試薬」に限定されることで、上記主張1、3は、その理由がない。また、主張2についても、これらの限定により、測定誤差についても間接的に特定され、本件の明細書に記載の実施例2~4の分析結果から、高密度リポタンパクコレステロール測定試薬の第一試薬に含まれる「Triton(登録商標)X-114、エマルゲン(登録商標)420、エマルゲン(登録商標)A60、エマルゲン(登録商標)A90、およびエマルゲン(登録商標)B66からなる群より選ばれる少なくとも1種の非イオン性界面活性剤」により、金属製試薬プローブに吸着又は残留することが低減されると認められるので、その後に行われる測定誤差の低減の効果は、特定の測定に限定されるものではない。よって、上記主張1~3は採用できない。

甲17には、本件特許と同様の条件で実験を行い、種々の非イオン性界面活性剤を添加することにより、試薬プローブでのコンタミネーションが抑制されるかどうかを検証したことが記載されている。そこで、甲17に示された各試験と本件特許の実施例の試験とを対比すると、第一試薬に含まれるコレステロールオキシダーゼの量について、本件の明細書の実施例では3.00U/ml又は2.00U/mlであるのに対し、甲17ではすべての試験で30.0U/mlであり、甲17において10倍以上高い量のコレステロールオキシダーゼが使用されている点が顕著に本件特許の実施例と異なる。本件の明細書には、「コレステロールオキシダーゼの濃度が高いほど、金属製試薬プローブへの吸着を招きやすく測定誤差を生じさせ易い傾向が認められている。」(【0032】)との記載があり、この記載を踏まえれば、甲17において、測定誤差が認められたのは、コレステロールオキシダーゼの濃度が高いことが原因であると理解される。他方、本件特許発明においては、コレステロールオキシダーゼの濃度が、「2U/ml以上5U/ml以下」に特定されているので、本件特許発明が測定誤差を低減できることは当業者が十分に理解できる。よって、主張4も採用できない。

以上のとおり、本件の明細書は、当業者が本件特許発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものであるから申立理由の理由5は理由がない。

第6 むすび

本件特許の請求項1、3、7、9、11、13、16に係る特許は、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、取り消すことはできない。

また、他に本件特許の請求項1、3、7、9、11、13、16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

本件特許の請求項2、4~6、8、10、12、14、15及び17に係る特許は、本件訂正請求により削除され、特許異議の申立ての対象が存在しなくなったため、当該特許に係る申立ては、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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