結論テキスト
特許第7308223号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第7308223号の請求項1~4、6~7、9~12に係る特許を維持する。
特許第7308223号の請求項5及び8に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2023701410 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7308223号の請求項1~12に係る特許についての出願(特願2020-552634号)は、2019年(令和元年)10月25日(優先権主張 平成30年10月25日)を国際出願日とする出願であって、令和5年7月5日にその特許権の設定登録がされ、令和5年7月13日に特許掲載公報が発行された。
本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。
令和5年12月28日 :特許異議申立人村上兄(以下「申立人」という。)による請求項1~12に係る特許に対する特許異議の申立て
令和6年 4月18日付け:取消理由通知書
令和6年 6月24日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 7月12日 :令和6年6月24日に提出した訂正請求書に対する手続補正書(方式)の提出
令和6年 9月10日 :申立人による意見書の提出
令和6年11月12日付け:訂正拒絶理由通知書
令和6年12月16日 :特許権者による意見書及び令和6年6月24日に提出した訂正請求書に対する手続補正書(方式)の提出
令和7年 1月 7日 :令和6年12月16日に提出した手続補正書(方式)に対する手続補正書(方式)の提出
令和7年 3月14日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和7年 5月19日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年 7月 2日 :令和7年5月19日に提出した訂正請求書に対する手続補正書(方式)の提出(以下、この手続補正書(方式)により補正された訂正請求書を「本件訂正請求書」、本件訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」及び訂正自体を「本件訂正」とそれぞれいう。)
令和7年 8月 7日 :申立人による意見書の提出
令和6年6月24日に提出された訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7308223号の特許請求の範囲を、本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲の通り、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の請求項1に記載された
「前記α-オレフィン共重合体の前記23°Cにおける貯蔵弾性率E23が30MPa以下である不織布積層体。」を、
「前記α-オレフィン共重合体の前記23°Cにおける貯蔵弾性率E23が30MPa以下であ
り、
前記弾性不織布は、弾性スパンボンド不織布であり、
前記弾性不織布と前記伸長性スパンボンド不織布との目付比(弾性不織布:伸長性スパンボンド不織布)が20:80~80:20の範囲にあり、
不織布積層体の目付が80g/m
2
~20g/m
2
であ
る不織布積層体。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、6~7、9~12も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
請求項5を削除する。
(3)訂正事項3
本件訂正前の請求項6に記載された
「請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の不織布積層体。」を、
「請求項1~請求項
4
のいずれか1項に記載の不織布積層体。」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、9~12も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
本件訂正前の請求項7に記載された
「請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の不織布積層体。」を、
「請求項1~
請求項4及び
請求項6のいずれか1項に記載の不織布積層体。」に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9~12も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
請求項8を削除する。
(6)訂正事項6
本件訂正前の請求項9に記載された
「請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の不織布積層体の」を、
「請求項1~請求項
4、請求項6及び請求項7
のいずれか1項に記載の不織布積層体の」に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10~12も同様に訂正する)。
(7)訂正事項7
本件訂正前の請求項10に記載された
「請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の不織布積層体又は」を、
「請求項1~請求項
4、請求項6及び請求項7
のいずれか1項に記載の不織布積層体又は」に訂正する。
(8)訂正事項8
本件訂正前の請求項11に記載された
「請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の不織布積層体又は」を、
「請求項1~請求項
4、請求項6及び請求項7
のいずれか1項に記載の不織布積層体又は」に訂正する。
(9)訂正事項9
本件訂正前の請求項12に記載された
「請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の不織布積層体又は」を、
「請求項1~請求項
4、請求項6及び請求項7
のいずれか1項に記載の不織布積層体又は」に訂正する。
本件訂正前の請求項1~12は、請求項2~12が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項であり、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~12〕について請求されたものである。
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、本件訂正前の請求項1の「弾性不織布」を、弾性スパンボンド不織布と限定し、「不織布積層体」について、「弾性不織布」と「伸長性スパンボンド不織布」との目付比(弾性不織布:伸長性スパンボンド不織布)の範囲を20:80~80:20と限定し、さらに目付が80g/m
2
~20g/m
2
と限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1のうち、「弾性不織布」を、弾性スパンボンド不織布と限定することは、本件特許の明細書の【0039】の記載に基づくものであり、「弾性不織布」と「伸長性スパンボンド不織布」との目付比(弾性不織布:伸長性スパンボンド不織布)の範囲を20:80~80:20と限定することは、本件特許の明細書の【0032】の記載に基づくものであり、さらに目付が80g/m
2
~20g/m
2
と限定することは、本件特許の明細書の【0031】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は請求項5を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3及び4について
訂正事項3は、請求項6の引用請求項から請求項5を削除するものであり、訂正事項4は、請求項7の引用請求項から請求項5を削除するものであり、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項2によって削除された請求項5を引用するという明瞭でない状態を解消するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項3及び4は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項3及び4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項5について
訂正事項5は請求項8を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項6~9について
訂正事項6は、請求項9の引用請求項から請求項8を削除するものであり、訂正事項7は、請求項10の引用請求項から請求項8を削除するものであり、訂正事項8は、請求項11の引用請求項から請求項8を削除するものであり、さらに訂正事項9は、請求項12の引用請求項から請求項8を削除するものであり、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正事項5によって削除された請求項8を引用するという明瞭でない状態を解消するものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
訂正事項6~9は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、訂正事項6~9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~4、6~7、9~12に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4、6~7、9~12に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
40°Cにおける貯蔵弾性率E40と23°Cにおける貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)が37%以上であるα-オレフィン共重合体を含む弾性不織布(但し、プロピレン単独重合体を含む弾性不織布を除く)と、
前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置される伸長性スパンボンド不織布と、
を有し、
前記弾性不織布の総量に対する前記α-オレフィン共重合体の割合は、90質量%~100質量%であり、前記α-オレフィン共重合体は、エチレン及びプロピレンの共重合体であり、かつα-オレフィン共重合体の融点は、130°C以下であり、
前記α-オレフィン共重合体の前記23°Cにおける貯蔵弾性率E23が30MPa以下であり、
前記弾性不織布は、弾性スパンボンド不織布であり、
前記弾性不織布と前記伸長性スパンボンド不織布との目付比(弾性不織布:伸長性スパンボンド不織布)が20:80~80:20の範囲にあり、
不織布積層体の目付が80g/m
2
~20g/m
2
である不織布積層体。 【請求項2】
前記α-オレフィン共重合体の引張弾性率が30MPa以下である請求項1に記載の不織布積層体。
【請求項3】
前記弾性不織布の両面側に前記伸長性スパンボンド不織布が配置されている請求項1又は請求項2に記載の不織布積層体。
【請求項4】
前記伸長性スパンボンド不織布は、少なくとも一方向の最大荷重伸度が45%以上である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の不織布積層体。」
「【請求項6】
前記伸長性スパンボンド不織布が、芯部をMFRが1g/10分~1000g/10分の範囲にある低MFRのオレフィン系重合体とし、鞘部をMFRが1g/10分~1000g/10分の範囲にある高MFRのオレフィン系重合体とし、且つ、前記低MFRのオレフィン系重合体と前記高MFRのオレフィン系重合体のMFRの差が1g/10分以上である、同芯の芯鞘型複合繊維からなる伸長性スパンボンド不織布である請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の不織布積層体。
【請求項7】
前記伸長性スパンボンド不織布が、80質量%~99質量%の結晶性プロピレン系重合体と、1質量%~20質量%の高密度ポリエチレンと、を含むオレフィン系重合体組成物を含有する請求項1~請求項4及び請求項6のいずれか1項に記載の不織布積層体。」
「【請求項9】
請求項1~請求項4、請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の不織布積層体の延伸加工物である伸縮性不織布積層体。
【請求項10】
請求項1~請求項4、請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の不織布積層体又は請求項9に記載の伸縮性不織布積層体を含む繊維製品。
【請求項11】
請求項1~請求項4、請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の不織布積層体又は請求項9に記載の伸縮性不織布積層体を含む吸収性物品。
【請求項12】
請求項1~請求項4、請求項6及び請求項7のいずれか1項に記載の不織布積層体又は請求項9に記載の伸縮性不織布積層体を含む衛生マスク。」
本件訂正前の請求項1~12に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1)取消理由1(甲1を主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、以下の甲1に記載された発明に基いて、請求項4~12に係る発明は、以下の甲1及び甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由2(甲3を主引用例とする進歩性)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、以下の甲3に記載された発明に基いて、請求項6~12に係る発明は、以下の甲3及び甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲1:特開2007-277755号公報(申立人が提出した甲第1号証)
甲2:国際公開第2016/143834号(同甲第2号証)
甲3:特開2015-4158号公報(同甲第3号証)
当審合議体は、上記取消理由通知(決定の予告)で通知した取消理由1及び2によっては、本件発明1~4、6~7、9~12に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
(1)甲号証の記載について
ア 甲1について
(ア)甲1の記載
甲1には以下の記載がある。(下線は当審で付した。「・・・」は省略を示す。以下同様。)
「【請求項1】
プロピレンポリマー組成物を含む弾性繊維であって、該プロピレンポリマー組成物は、示差走査熱量計(DSC)によって測定される融解熱において、30~110°C(第1ピーク)及び120~170(第2ピーク)°Cの範囲にそれぞれ1つ以上のピークを有し、かつ、60~120°Cの範囲において結晶化温度の単一ピークを有し、かつゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求められる分子量分布が(Mw/Mn)が2.0以下であることを特徴とする弾性繊維。」
「【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の弾性繊維を用いて得られる弾性不織布。」
「【請求項9】
請求項5~8のいずれか1項記載の弾性不織布に、該弾性不織布以外のウェブ、不織布、フィルム、編み物、織物およびトウから選ばれた少なくとも1種の物品を積層して得られる複合化不織布。」
「【請求項11】
請求項5~8のいずれか1項記載の弾性不織布、または請求項9記載の複合化不織布を用いた繊維製品。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、プロピレンポリマー組成物を用いて得られる弾性繊維、ならびに該弾性繊維を用いて得られる弾性不織布およびそれを用いた繊維製品を提供することにある。詳しくは、弾性特性に優れ、安価で、耐熱性を兼ね備えた不織布を提供することにある。」
「【0011】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物は、プロピレンとエチレンもしくは炭素数4~10のα・オレフィンとのプロピレンコポリマーを含むことが好ましい。・・・」
「【0018】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物に含まれる総エチレン含有量はプロピレンポリマー組成物基準で1~25wt%であるのが好ましい。より好ましくは5~25wt%であり、更に好ましくは、5~20wt%である。」
「【0028】
本発明に係る弾性繊維および弾性不織布は、上述したプロピレンポリマー組成物を含む弾性繊維および弾性不織布である。弾性繊維は、該プロピレンポリマー組成物を含むレギュラー繊維構造でもよく、また他の熱可塑性ポリマーとの組み合わせである複合繊維構造、混合繊維構造を用いてもよい。」
「【0037】
本発明の弾性繊維を用いて得られる弾性不織布の製造方法は特に限定されないが、ステープルファイバーやチョップ等の短繊維を得る方法、ならびにメルトブロー法、スパンボンド法、トウ開繊法等の長繊維を得る方法が例示できる。・・・なかでも、生産性、製造コスト、生産の容易性、風合の点から本発明ではスパンボンド法とメルトブロー法が好ましい。」
「【0040】
本発明の弾性不織布は、その効果を妨げない範囲で、その少なくとも片面に、該弾性不織布以外のフィルム、不織布、ウェブ、織物、編み物、およびトウから選ばれる少なくとも1種を積層した複合化不織布として利用できる。
積層に使用される材料は、特に限定されないが、メルトブロー不織布、スパンレース不織布、エアレイド不織布、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム、エラストマーフィルム、スパンボンドポイントボンド不織布、ポイントスルーエア不織布、汎用スルーエア不織布等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
・・・
【0042】
本発明の弾性繊維、弾性不織布、および複合化不織布を用いた繊維製品としては、例えば使い捨てオムツ用伸縮性部材、オムツ用伸縮性部材、生理用品用伸縮性部材、オムツカバー用伸縮性部材等の衛生材料の伸縮性部材、伸縮性テープ、絆創膏、衣服用伸縮性部材等の他に、衣料用芯地、衣料用絶縁材や保温材、防護服、帽子、マスク、手袋、サポーター、伸縮性包帯、湿布材の基布、プラスター材の基布、スベリ止め基布、振動吸収材、指サック、クリーンルーム用エアフィルター、血液フィルター、油水分離フィルター等の各種フィルター、エレクトレット加工をほどこしたエレクトレットフィルター、セパレーター、断熱材、コーヒーバッグ、食品包装材料、自動車用天井表皮材、防音材、基材、クッション材、スピーカー防塵材、エア・クリーナー材、インシュレーター表皮、バッキング材、接着不織布シート、ドアトリム等の各種自動車用部材、複写機のクリーニング材等の各種クリーニング材、カーペットの表材・裏材、農業捲布、木材ドレーン材、スポーツシューズ表皮等の靴用部材、カバン用部材、工業用シール材、ワイピング材、シーツ等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
」
「【0055】
本発明を構成するプロピレンポリマー組成物は以下の方法にて製造した。
【0056】
メチルアルモキサンとジメチルシリルビス(2-メチル-インデニル)ジルコニウムジクロリドとをシリカに担持した触媒系を用い、反応器温度を第1反応器においては64°Cに設定し、第2反応器においては59°Cに設定し、鉱油溶液としてヘキサン溶媒中のトリエチルアルミニウムと共に供給した後、プロピレンを第1反応器および第2反応器に供給した。水素を分子量制御のために第1反応器に添加し、第2反応器には水素の添加をせず、エチレンを添加した。上記重合より、プロピレンポリマー組成物を得た。
【0057】
なお、
プロピレンポリマー組成物の組成変更は、エチレンのプロピレンに対する比率を変えることによって得られた。また、プロピレンポリマー組成物の分子量は、重合触媒の量と比較してエチレンとプロピレンの量を多くすることによって増加することができた。
【0058】
本発明において使用した材料と略号は以下の通りである。
【表1】
73
153
0001432017000001.jpg
」
「【0063】
実施例3
樹脂P-1を原料樹脂として用いた。
スクリュー(40mm径)、加熱体及びギアポンプを有する押出機、紡糸口金(孔径0.4mm、120ホール)、エアーサッカー、帯電法開繊機、ポリエステル製ネットを備えた捕集コンベアー、ポイントボンド加工機及び巻取機からなる装置を用いて
スパンボンド不織布の製造を行った。
樹脂P-1を押出機に投入し、加熱体により樹脂P-1を230°Cで加熱溶融させ、ギアポンプで紡糸口金から単孔当たり0.57g/分の紡糸速度で溶融樹脂を吐出させ、吐出した繊維をエアーサッカーに導入し直後に帯電法開繊機で開繊させ、捕集コンベアー上に捕集した。エアーサッカーの空気圧は、196kPaとした。捕集コンベアー上のウェブを上下ロール温度70°Cに加熱したポイントボンド加工機(圧着面積率15%)に投入し、加工後の不織布を巻取機でロール状に巻取った。得られた弾性不織布の物性は前述の方法によって測定した。
その結果を表4に示す。
得られた弾性不織布
は、優れた弾性と耐熱性を有していた。」
「【0065】
実施例5
樹脂P-3を原料樹脂として用いた以外は、実施例3と同様の方法で弾性不織布を得た。
その結果を表4に示す。得られた弾性不織布は、優れた弾性と耐熱性を有していた。」
「【0084】
実施例19
立体捲縮ポリオレフィンステープルファイバーからなる目付100g/m
2
の伸縮性不織布を、実施例3の弾性不織布と積層してウォータージェットを用いて交絡させ、積層化不織布を作成した。
得られた積層化不織布からサポーターを作成し、5人のモニターの膝に24時間巻いていたが、締め付けに不足によるサポーターのズレや脱げもなかった。
・・・
【表3】
246
30
0001432017000002.jpg
」
(イ)甲1に記載されていると認められる事項
a 【0065】の「プロピレンポリマー組成物」は、【0056】より、「プレピレンが供給された反応器にエチレンを添加して、重合より得たもの」であることは明らかである。
b 【0065】の実施例5では原料樹脂の「プロピレンポリマー組成物」として樹脂P-3を用いたものであるところ、樹脂P-3のプロピレンポリマー組成物におけるエチレンの含有割合は、【0058】の【表1】より、15.5質量%であることは明らかである。
c 【0063】及び【0065】の記載より、実施例5では、弾性不織布の総量に対するプロピレンポリマー組成物の割合は100質量%であることは明らかである。
d 【0058】の【表1】より樹脂P-3の「プロピレンポリマー組成物」の融点の第1ピークは45°Cであることは明らかである。
(ウ)引用発明
上記(ア)及び(イ)により、特に段落【0065】の実施例5により、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「プレピレンが供給された反応器にエチレンを添加して、重合より得たもので、プロピレンポリマー組成物におけるエチレンの含有割合が15.5質量%であるプロピレンポリマー組成物を含む弾性不織布であり、
前記弾性不織布の総量に対する前記プロピレンポリマー組成物の割合は、100質量%であり、前記プロピレンポリマー組成物の融点の第1ピークは45°Cであり、
前記弾性不織布はスパンボンド不織布である、
弾性不織布。」
イ 甲2について
甲2には以下の記載がある。
「[請求項1]
弾性不織布と、前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置され、少なくとも一方向の最大荷重伸度が50%以上である伸長性スパンボンド不織布と、を有し、下記(1)及び(2)を満たす不織布積層体。
(1)前記弾性不織布は、下記(a)~(f)を満たす低結晶性ポリプロピレンと、エチレンに由来する構成単位及びプロピレンに由来する構成単位を含み、融点が100°C以上であり、結晶化度が15%以下であるαオレフィン共重合体Aと、を含む樹脂組成物からなる。
(2)前記樹脂組成物は、前記樹脂組成物100質量部に対してαオレフィン共重合体Aを5質量部~50質量部含む。
(a)[mmmm]=20~60モル%
(b)[rrrr]/(1-[mmmm])≦0.1
(c)[rmrm]>2.5モル%
(d)[mm]×[rr]/[mr]2≦2.0
(e)重量平均分子量(Mw)=10,000~200,000
(f)分子量分布(Mw/Mn)<4
(a)~(d)中、[mmmm]はメソペンタッド分率であり、[rrrr]はラセミペンタッド分率であり、[rmrm]はラセミメソラセミメソペンタッド分率であり、[mm]、[rr]及び[mr]はそれぞれトリアッド分率である。
」
「[請求項8]
前記伸長性スパンボンド不織布が、結晶性プロピレン系重合体80質量%~99質量%と、高密度ポリエチレン20質量%~1質量%と、を含むオレフィン系重合体組成物からなる請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の不織布積層体。
」
「[0008]
本発明は上記課題に鑑み、製造の際の成形性、伸縮性、触感、装着性及び耐ロールブロッキング性に優れる不織布積層体、並びにこれを用いた伸縮性不織布積層体、繊維製品、吸収性物品及び衛生マスクを提供することを目的とする。
」
「[0065]〔伸長性スパンボンド不織布〕
本発明の不織布積層体を構成する伸長性スパンボンド不織布は、少なくとも一方向の最大荷重伸度が50%以上であり、好ましくは70%以上であり、より好ましくは100%以上であり、更に好ましくは弾性回復が殆どない性質を有する不織布である。」
「[0068] 伸長性スパンボンド不織布としては、例えば、後述するオレフィン系重合体の1種又は2種以上を用いて得られる不織布が挙げられる。
オレフィン系重合体を用いて得られる不織布としては、(1)流動誘起結晶化誘導期の差が100秒以上の二種以上のオレフィン系重合体(高融点のプロピレン系重合体と低融点のプロピレン系重合体)からなる芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維(サイド・バイ・サイド型複合繊維)又は捲縮複合繊維からなるスパンボンド不織布、(2)プロピレン系重合体とエチレン系重合体とからなる芯鞘型複合繊維、並列型複合繊維又は捲縮複合繊維からなるスパンボンド不織布、(3)
芯部をメルトフローレート(以下MFRともいう。ASTMD-1238、230°C、荷重2160g)が1g/10分~1000g/10分の範囲にある低MFRのプロピレン系重合体とし、鞘部をMFRが1g/10分~1000g/10分の範囲にある高MFRのプロピレン系重合体とし、且つ、MFRの差が1g/10分以上、好ましくは15g/10分以上、より好ましくは30g/10分以上、更に好ましくは40g/10分以上である同芯の芯鞘複合繊維からなるスパンボンド不織布等が挙げられる。
」
ウ 甲3について
(ア)甲3の記載
「【請求項1】
メルトスパン布地の2つ以上の層を含むメルトスパンin situラミネートであって、互いに隣接している層が互いにin situで絡み合って前記層の間に混合繊維の界面領域を画定しており、in situラミネートの少なくとも1つの布地層は弾性層であり、前記弾性層は、80dg/分未満のMFRと、80J/g未満のH
f
と、プロピレン-α-オレフィンエラストマーの質量の5~30質量%の範囲内のコモノマー由来の含量とを有するプロピレン-α-オレフィンエラストマーを含む、in situラミネート。
」
「【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のin situラミネートまたは複合体を含み、物品には、パーソナルケア製品、乳児用おむつ、トレーニングパンツ、吸収剤アンダーパッド、水着、拭取り用の布、女性用衛生用品、包帯、創傷ケア製品、医療用の衣類、手術衣、フィルタ、成人用尿漏れ防止製品、手術用ドレープ、カバー、衣類、防護用衣服、衣料服飾、およびクリーニング物品および装置が含まれる、吸収剤またはバリア製品。
」
「【背景技術】
【0002】
使い捨て衛生用品市場では、必要な審美的品質を備えた、高弾性で通気性のある不織布が求められており、好ましくは機械的活性化の形を必要としない布地であって、しかし全ては費用効果のあるものが求められている。・・・」
「【0010】
本明細書で使用される「メルトスパン布地」は、ポリマーメルトまたは溶液を1個または複数のダイから小さな穴または紡糸口金を通して押し出して細いフィラメントを形成し、
次いでこのフィラメントを高圧空気などの適切な手段によって細長化し、移動しているスクリーン、ドラム、またはその他の適切なデバイス上に置くことにより繊維のウェブを形成する方法によって作製された、布地を指す。
「溶融紡糸」プロセスには、スパンボンド(spunbonding)、
溶液紡糸、コフォーミング(coforming)、およびメルトブロー
が含まれる
が、これらに限定するものではない。メルトスパン繊維は、典型的には250または150または60または40μm未満の平均直径を有する。メルトスパン繊維の作製で使用するのに適したポリマーの非限定的な例は、ポリプロピレン(例えば、ホモポリマー、コポリマー、耐衝撃性コポリマー)、ポリエステル(例えば、PET)、ポリアミド、ポリウレタン(例えば、Lycra(商標))、ポリエチレン(例えば、LDPE、LLDPE、HDPE、プラストマー)、ポリカーボネート、およびこれらのブレンドである。」
「【0015】
本明細書で使用される
「in situラミネート」(または「ISL」)
は、以下にさらに記述されるin situ溶融紡糸プロセスによって作製された、少なくとも2つの布地層を含む構造を指す。・・・」
「【0018】
ISLに関する記述
この開示には、メルトスパン布地の2つ以上の層を含むメルトスパンISLであって、有限界面ゾーンが生成されるように、隣接する層が互いにin situで絡み合っているISLが提示されている。
「in situで絡み合っている」が意味するところは、隣接する層の繊維が、互いを包み込むように隣接する布地層の一縁に少なくとも沿って互いに係合しており、および/または隣接する層から繊維内を少なくとも1回通過することである。好ましくは、ISLにおいて、層状化構造の様々な層は、当技術分野で知られるように空気または水流交絡プロセス下に置かれておらず、これらの層を接合するのに使用される接着剤でもない。
本明細書に記述されるISLは、メルトスパン布地の層を含み、隣接する層からの個々の繊維が互いに絡み合いまたは撚り合わされており、そのような配置構成は、溶融紡糸装置からメルトスパンされた形成フィラメントの絡み合いから得られるものである。これは、2つ以上の層を、単一のダイから同時にまたはほぼ同時にかつ互いに隣接させて溶融紡糸することにより、ある実施形態で実現される。
」
「【0049】
In situラミネート
化学的、物理的、またはその両方で明確に異なっていてもよいフィラメントの隣接ゾーンは、in situで絡み合う層状化構造(またはラミネート)が形成されるように、または言い換えれば「in situラミネート」が形成されるように、スパンすることができる。
ある実施形態では、本明細書に開示されるISLは、少なくとも1つの弾性層を含むが、当技術分野で知られるような「対向層(facing layer)」など、任意の数のその他の層も含むことができる。そのような層は、柔らかな感触を布地に付加することができ、および/または延伸性を提供して弾性布地層を延伸させ収縮させることができる。しかし、弾性層に隣接する2、3、4またはそれ以上の層の布地を存在させることができる。
特定の実施形態では、2つ以上の層のメルトスパン布地は、少なくとも2つの対向層および弾性層を含み、この弾性布地層は、2つの対向層の間に位置付けられている。
【0050】
対向層は、一構成成分または二構成成分の繊維からなるものにすることができ、メルトスパンすることができる延伸性の任意の材料から作製することができ
、または機械的手段を通して延伸性にすることができる任意の材料から作製することができる。・・・
【0051】
ある実施形態では、弾性層は、熱可塑性タイプの材料(非弾性)および弾性材料のブレンドを含んでいてもよい。したがって、例えば弾性層は、プロピレン-α-オレフィンエラストマーおよびポリプロピレンホモポリマーまたはポリエチレンが任意の適切な割合にあるブレンドであってもよい。・・・
【0052】
ある例示的なISLでは、ISLは、ポリプロピレンから作製された少なくとも2種の対向層(例えば、ExxonMobil SFT 315)と、プロピレン-α-オレフィンエラストマーから作製された1つの弾性層(例えば、Vistamaxx特製エラストマー6202、MFR 18dg/分)とを含み、対向層が弾性層を挟んでいる。
・・・」
「【0087】
15.弾性布地層が、5または10または20または30~40または50または60または70または80または100または150または200g/m
2
の範囲内の基本質量を有する、番号付き実施形態1から14のいずれか1つのin situラミネート。
16.対向層が、0.1または1または5または10~20または30または40または50g/m
2
の範囲内の基本質量を有し、対向層の基本質量が、弾性層の基本質量より少なくとも5または10または20または30または40%少ない、番号付き実施形態12のin situラミネート。
17.対向層が、0.1または1または5または10~20または30または40または50g/m
2
の範囲内の基本質量を有し、各対向層の基本質量が、少なくとも5または10または20または30または40%異なる、番号付き実施形態12のin situラミネート。」
(イ)甲3に記載されていると認められる事項
上記(ア)の【0018】の「この開示には、メルトスパン布地の2つ以上の層を含むメルトスパンISLであって、有限界面ゾーンが生成されるように、隣接する層が互いにin situで絡み合っているISLが提示されている。」の記載は、【0052】の「ある例示的なISLでは、ISLは、ポリプロピレンから作製された少なくとも2種の対向層(例えば、ExxonMobil SFT 315)と、プロピレン-α-オレフィンエラストマーから作製された1つの弾性層(例えば、Vistamaxx特製エラストマー6202、MFR 18dg/分)とを含み、対向層が弾性層を挟んでいる。」における、「ある例示的なISL」について説明していることは明らかである。
(ウ)引用発明
上記(ア)及び(イ)より、特に【0052】に記載の「ある例示的なISL」を参照すると、甲3には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
「メルトスパン布地の2つ以上の層を含むメルトスパンISLであって、
ポリプロピレンから作製された少なくとも2種の対向層(例えば、ExxonMobil SFT 315)と、プロピレン-α-オレフィンエラストマーから作製された1つの弾性層(例えば、Vistamaxx特製エラストマー6202、MFR 18dg/分)とを含み、対向層が弾性層を挟んでいる、ISL。」
(2)取消理由1(甲第1号証を主引用例とする進歩性)
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
エチレン及びプロピレンの共重合体は「α-オレフィン共重合体」であることが技術常識であるから、甲1発明の「プレピレンが供給された反応器にエチレンを添加して、重合より得た」「プロピレンポリマー組成物」は、本件発明1の「α-オレフィン共重合体」に相当する。また、甲1発明の「プロピレンポリマー組成物」は「エチレン及びプロピレンの共重合体であ」ることも明らかである。
また、甲1発明の「プロピレンポリマー組成物を含む弾性不織布」は、本件発明1の「α-オレフィン共重合体を含む弾性不織布(但し、プロピレン単独重合体を含む弾性不織布を除く)」と、「α-オレフィン共重合体を含む弾性不織布」である限りにおいて一致する。
そして、甲1発明の「前記弾性不織布の総量に対する前記プロピレンポリマー組成物の割合は、100質量%であ」ることは、100質量%が、「90質量%~100質量%」の範囲内であることより、本件発明1の「前記弾性不織布の総量に対する前記α-オレフィン共重合体の割合は、90質量%~100質量%であ」ることに相当する。
さらに、甲1発明の「前記弾性不織布は、スパンボンド不織布であ」ることは、本件発明1の「前記弾性不織布は、弾性スパンボンド不織布であ」ることに相当する。
以上より、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点1>
「α-オレフィン共重合体を含む弾性不織布であり、
前記弾性不織布の総量に対する前記α-オレフィン共重合体の割合は、90質量%~100質量%であり、α-オレフィン共重合体は、エチレン及びプロピレンの共重合体であり、
前記弾性不織布は、弾性スパンボンド不織布である、弾性不織布。」
<相違点1-1>
本件発明1では、「40°Cにおける貯蔵弾性率E40と23°Cにおける貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)が37%以上であるα-オレフィン共重合体」であり、「前記α-オレフィン共重合体の前記23°Cにおける貯蔵弾性率E23が30MPa以下である」のに対して、甲1発明の「プロピレンポリマー組成物」は、貯蔵弾性率に係る上記本件発明1の構成については不明である点。
<相違点1-2>
弾性不織布において、本件発明1が「(但し、プロピレン単独重合体を含む弾性不織布を除く)」ものであるのに対し、甲1発明では、当該特定はしていない点。
<相違点1-3>
本件発明1が、「弾性不織布」と、「前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置される伸長性スパンボンド不織布と、を有」する「不織布積層体」であり、「前記弾性不織布と前記伸長性スパンボンド不織布との目付比(弾性不織布:伸長性スパンボンド不織布)が20:80~80:20の範囲にあり、不織布積層体の目付が80g/m
2
~20g/m
2
である」のに対し、甲1発明は「弾性不織布」であり、当該「不織布積層体」の構成を有しておらず、本件発明1のような規定を有しない点。
<相違点1-4>
本件発明1が、「α-オレフィン共重合体の融点は、130°C以下であ」るのに対し、甲1発明では「プロピレンポリマー組成物の融点の第1ピークは45°Cである」点。
(イ) 判断
事案に鑑み、<相違点1-3>から検討する
甲1の【請求項1】、【請求項4】、【請求項9】、【0040】及び【0084】の記載より、特に【0084】の実施例19を参照して、甲1発明に係る弾性不織布に、物品を積層し不織布積層体とすることは困難なことではない。また、【0084】の実施例19では、立体捲縮ポリオレフィンステープルファイバーからなる伸縮性不織布を積層しているものであるが、積層する物品として、【0040】に例示されるスパンボンドポイントボンド不織布を選択することも当業者であれば適宜なし得たことである。
しかしながら、弾性不織布とスパンボンドポイントボンド不織布である弾性不織布(伸長性スパンボンド不織布)との目付比を20:80~80:20の範囲とし、不織布積層体の目付を80g/m
2
~20g/m
2
とすることについて、甲1には記載も示唆もされていない。そして、「立体捲縮ポリオレフィンステープルファイバーからなる伸縮性不織布」と「スパンボンドポイントボンド不織布である弾性不織布」とは、不織布の製造方法に違いがあることから、その性状に有為な差異が存在していることが技術常識であるところ、【0084】の実施例19では、弾性不織布の目付が60g/m
2
(【0084】【表3】実施例3)であり、積層する物品が、立体捲縮ポリオレフィンステープルファイバーからなる目付100g/m
2
の伸縮性不織布が採用されており、積層する物品についてスパンボンドポイントボンド不織布と設計変更した上で、目付についてさらに設計変更し、不織布積層体の目付を80g/m
2
~20g/m
2
とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。
よって、甲1発明に基づいて、<相違点1-3>における本件発明1の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことではない。
(ウ) まとめ
以上により、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~4、6~7、9~12について
本件発明2~4、6~7、9~12は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記アに示したことと同様に、本件発明2~4、6~7、9~12は、甲1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)取消理由2(甲第3号証を主引用例とする進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明を対比する。
甲3発明の「プロピレン-α-オレフィンエラストマー」は、本件発明1の「α-オレフィン共重合体」に相当し、甲3発明の「弾性層」は、不織布であることは明らかであるから、本件発明1の「弾性不織布」に相当し、甲3発明の「プロピレン-α-オレフィンエラストマーから作製された1つの弾性層(例えば、Vistamaxx特製エラストマー6202、MFR 18dg/分)」は、本件発明1の「40°Cにおける貯蔵弾性率E40と23°Cにおける貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)が37%以上であるα-オレフィン共重合体を含む弾性不織布(但し、プロピレン単独重合体を含む弾性不織布を除く)」と、「α-オレフィン共重合体を含む弾性不織布」である限りにおいて一致する。
甲3発明の「対向層」は、不織布であることは明らかであるから、甲3発明において「対向層が弾性層を挟んでいる」ことより、本件発明1の「前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置される伸長性スパンボンド不織布」と、「前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置される不織布」である限りにおいて一致する。
甲3発明の「ISL」は、「メルトスパン布地の2つ以上の層を含むメルトスパンISL」であり、「メルトスパン布地」は不織布であることから、本件発明1の「不織布積層体」に相当する。
以上より、本件発明1と甲3発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点3>
「α-オレフィン共重合体を含む弾性不織布と、
前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置される不織布と、
を有する、
不織布積層体。」
<相違点3-1>
「不織布積層体」を構成する「弾性不織布」に含まれる「α-オレフィン共重合体」について、本件発明1では、「40°Cにおける貯蔵弾性率E40と23°Cにおける貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)が37%以上であ」り、「前記弾性不織布の総量に対する前記α-オレフィン共重合体の割合は、90質量%~100質量%であり、前記α-オレフィン共重合体は、エチレン及びプロピレンの共重合体であり、かつα-オレフィン共重合体の融点は、130°C以下であり、前記α-オレフィン共重合体の前記23°Cにおける貯蔵弾性率E23が30MPa以下である」のに対して、甲3発明の「プロピレン-α-オレフィンエラストマー」は「Vistamaxx特製エラストマー6202」からなるものであるが、本件発明1のような特定はなされていない点。
<相違点3-2>
「弾性不織布」において、本件発明1が「(但し、プロピレン単独重合体を含む弾性不織布を除く)」ものであるのに対し、甲3発明では、当該特定はしていない点。
<相違点3-3>
前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置される不織布について、本件発明1が、「伸長性スパンボンド不織布」であり、「前記弾性不織布と前記伸長性スパンボンド不織布との目付比(弾性不織布:伸長性スパンボンド不織布)が20:80~80:20の範囲にあり、不織布積層体の目付が80g/m
2
~20g/m
2
である」のに対し、甲3発明は「対向層」は「メルトスパン布地」であるものの、本件発明1のような特定はなされていない点。
<相違点3-4>
「弾性不織布」において、本件発明1が、「前記弾性不織布は、弾性スパンボンド不織布であ」るのに対し、甲3発明は、「弾性層」が「メルトスパン布地」である点。
(イ)判断
事案に鑑み、<相違点3-3>から検討する
甲3の【0010】の記載を参照すると、甲3発明の「メルトスパン布地」が、スパンボンドを含むことが把握できる。そして、甲3の【0050】に「対向層は、一構成成分または二構成成分の繊維からなるものにすることができ、メルトスパンすることができる延伸性の任意の材料から作製することができ、」と記載されていることから、甲3発明の「メルトスパン布地」である「対向層」を、「伸長性スパンボンド不織布」とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。
しかしながら、メルトスパン布地である弾性層(弾性不織布)とメルトスパン布地である対向層(伸長性スパンボンド不織布)との目付比を20:80~80:20の範囲とし、in situラミネート(不織布積層体)の目付を80g/m
2
~20g/m
2
とすることについて、甲3には記載も示唆もされていない。甲3の【0087】には、メルトスパン布地である弾性層としての弾性布地層、及びメルトスパン布地である対向層としての対向層の基本質量(g/m
2
)について、様々な態様について記載があり、メルトスパン布地である弾性層とメルトスパン布地である対向層との基本質量(g/m
2
)の比についても、種々の態様が含まれるものであるが、メルトスパン布地である弾性層とメルトスパン布地である対向層との目付比を20:80~80:20の範囲となっているものが実施例として示されているものでもなく、【0087】の記載に基づいて、当該目付比を当該数値範囲とすることは当業者が容易に想到し得たことでもない。同様に弾性布地層と対向層の基本質量(g/m
2
)の合計についても種々の態様が含まれるものであるが、メルトスパン布地である弾性層とメルトスパン布地である対向層との合計の目付が80g/m
2
~20g/m
2
の範囲となっているものが実施例として示されているものでもなく、【0087】の記載に基づいて、当該目付を当該数値範囲とすることは当業者が容易に想到し得たことでもない。
よって、甲3発明に基づいて、<相違点3-3>における本件発明1の構成とすることは当業者であれば容易に想到し得たことではない。
(ウ)まとめ
以上により、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~4、6~7、9~12について
本件発明2~4、6~7、9~12は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記アに示したことと同様に、本件発明2~4、6~7、9~12は、甲3発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)小括
以上により、本件の請求項1~4、6~7、9~12に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、又は甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1~4、6~7、9~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(1)申立理由1(甲1を引用例とする新規性)
本件特許の請求項1~3、5、8、10~12に係る発明は甲1に記載の発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項1~12では発明の詳細な説明において直接性能が確認できたα-オレフフィン共重合体に特定せず、あらゆる組成のα-オレフフィン共重合体であってもよいものとして記載されており、技術常識に照らしても、本件発明1~12の範囲まで発明の詳細な説明で開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
請求項1~12では発明の詳細な説明において直接性能が確認できた伸長性スパンボンド不織布に特定せず、あらゆる伸長性スパンボンド不織布であってもよいものとして記載されており、技術常識に照らしても、本件発明1~12の範囲まで、発明の詳細な説明で開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(1)申立理由1(甲1を引用例とする新規性)について
ア 本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比すると上記第4の2(2)ア(ア)で示した<相違点1-1>、<相違点1-2>、<相違点1-3>及び<相違点1-4>で相違する。そして上記第4の2(2)ア(イ)で検討したとおり、<相違点1-3>は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明ではない。
イ 本件発明2、3、10~12について
本件発明2、3、10~12は、本件発明1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て有したうえでさらに限定する発明である。
したがって、上記アに示したことと同様に、本件発明2、3、10~12は、甲1発明ではない。
(2)申立理由2(サポート要件)について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下検討する。
ア 発明の課題
本件特許の【0009】の記載から、本件特許に係る発明が解決しようとする課題は「伸縮特性に優れ、かつ、応力維持に優れる不織布積層体、並びに、伸縮性不織布積層体、繊維製品、吸収性物品及び衛生マスクを提供すること」である。
イ 発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か
本件特許の請求項1に係る発明は「40°Cにおける貯蔵弾性率E40と23°Cにおける貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)が37%以上であるα-オレフィン共重合体を含む弾性不織布(但し、プロピレン単独重合体を含む弾性不織布を除く)と、
前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置される伸長性スパンボンド不織布と、
を有し、
前記弾性不織布の総量に対する前記α-オレフィン共重合体の割合は、90質量%~100質量%であり、前記α-オレフィン共重合体は、エチレン及びプロピレンの共重合体であり、かつα-オレフィン共重合体の融点は、130°C以下であり、
前記α-オレフィン共重合体の前記23°Cにおける貯蔵弾性率E23が30MPa以下であり、
前記弾性不織布は、弾性スパンボンド不織布であり、
前記弾性不織布と前記伸長性スパンボンド不織布との目付比(弾性不織布:伸長性スパンボンド不織布)が20:80~80:20の範囲にあり、
不織布積層体の目付が80g/m
2
~20g/m
2
である不織布積層体。」と規定している。
ここで、【0027】~【0030】には「40°Cにおける貯蔵弾性率E40と23°Cにおける貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)が37%以上であるα-オレフィン共重合体を含む弾性不織布」を有すること、及び「前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置される伸長性スパンボンド不織布」を有することにより、伸縮特性に優れ、かつ応力維持に優れたものとなることについて説明されており、【0110】~【0124】では、請求項1に規定する構成を有する実施例1~6が、不織布積層体として好適なものであることが説明されている。
そうすると、請求項1の記載は、発明の詳細な説明の記載により、上記発明が解決しようとする課題を解決できると認識できる範囲のものであると判断できる。
ウ 申立人の主張について
申立人は、請求項1では発明の詳細な説明において直接性能が確認できたα-オレフフィン共重合体に特定せず、あらゆる組成のα-オレフフィン共重合体であってもよいものとして記載されており、技術常識に照らしても、本件発明1の範囲まで発明の詳細な説明で開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないと、及び請求項1では発明の詳細な説明において直接性能が確認できた伸長性スパンボンド不織布に特定せず、あらゆる伸長性スパンボンド不織布であってもよいものとして記載されており、技術常識に照らしても、本件発明1の範囲まで、発明の詳細な説明で開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないと主張する。
しかしながら、【0027】~【0030】の記載を参酌すれば、「40°Cにおける貯蔵弾性率E40と23°Cにおける貯蔵弾性率E23との比(E40/E23)が37%以上であるα-オレフィン共重合体を含む弾性不織布」を有することにより、及び「前記弾性不織布の少なくとも片面側に配置される伸長性スパンボンド不織布」を有することにより、伸縮特性に優れ、かつ応力維持に優れたものとなることについて、当業者であれば理解できるものである。そして、【0110】~【0124】では、請求項1に規定する構成のうち、発明が解決しようとする課題との関係で、性能が確認できたα-オレフィン共重合体及び伸長性スパンボンド不織布を有するものを実施例1~6として説明しているものであって、実施例1~6に該当する態様のもののみが、上記発明が解決しようとする課題を解決できるものとは限らないことはいうまでもない。
以上、申立人の上記主張は採用することができない。
(3)小括
以上により、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~4、6~7、9~12の記載に不備はなく、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
また、本件の請求項1~3、10~12に係る発明は、本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号には該当せず、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。
なお、請求項5及び8は本件訂正により削除されたため、請求項5及び8に係る特許についての申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。
以上のとおり、請求項1~4、6~7、9~12に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1~4、6~7、9~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項5及び8は、本件訂正により削除されたため、請求項5及び8に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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