sokuhyo

Trademark Appeal Case

請求項訂正の適否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024700253
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7346010号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
特許第7346010号の請求項1に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7346010号(以下「本件特許」という。)は、平成29年9月7日を出願日とする出願(特願2017-172076号、優先権主張 平成28年9月15日、日本国)についてのものであって、令和5年9月8日にその特許権の設定登録(請求項の数1)がされ、同年9月19日に特許掲載公報が発行された。

その後、令和6年3月19日に、本件特許の請求項1に係る特許に対し、特許異議申立人 浅利陽子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされた。

以降の手続の経緯の概要は次のとおりである。

令和6年 6月14日付け 取消理由通知書

同年 9月13日付け 訂正請求書及び意見書(特許権者)

同年 9月18日付け 証拠説明書(特許権者)

同年10月23日付け 訂正請求書についての手続補正書(方式)

(特許権者)

意見書についての手続補正書(方式)

(特許権者)

同年12月11日付け 意見書(申立人)

令和7年 3月31日付け 取消理由通知書(決定の予告)

同年 5月28日付け 訂正請求書及び意見書(特許権者)

同年 6月24日付け 訂正請求書及び訂正請求書に添付された

訂正特許請求の範囲についての

手続補正書(方式)(特許権者)

なお、令和6年9月13日に提出された訂正請求書による訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定より、取り下げられたものとみなされる。

また、令和7年7月14日付けで、申立人に対し期間を指定して訂正の請求があった旨の通知をしたが(特許法120条の5第5項)、期間内に申立人からの応答はなかった。

第2 訂正の適否についての判断

1 請求の趣旨及び訂正の内容

(1)請求の趣旨

令和7年5月28日付けの訂正請求書、並びに訂正請求書及び訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲についての、令和7年6月24日付けの手続補正書(方式)によれば、特許権者が行った訂正請求の趣旨は、「特許第7346010号の特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求める」というものである。

そして、上記訂正請求書及び手続補正書(方式)によれば、上記訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(下線は訂正箇所を示し、合議体が付した。)

(2)訂正の内容

ア 訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「c)プロピレングリコール」とあるのを「c)

5~35w/w%の

プロピレングリコール」に訂正する。

イ 訂正事項2

特許請求の範囲の請求項1に「e)酸」とあるのを「e)

リン酸、クエン酸、乳酸及び酒石酸よりなる群から選ばれる1種または2種以上の

酸」に訂正する。

ウ 訂正事項3

特許請求の範囲の請求項1に「を含有することを特徴とするpH5.9~7.0の外用組成物」とあるのを「を含有

し、多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含有

することを特徴とするpH5.9~7.0の外用組成物」に訂正する。

エ 訂正事項4

特許請求の範囲の請求項1に

「(但し、

(1)ステロイド系抗炎症薬を含む外用組成物、及び

(2)以下の組成の外用組成物

ミノキシジルを3~10重量%を含み、ミノキシジル:プロピレングリコールの重量比が1:3~1:9となるようにプロピレングリコールを含み、かつ組成物のpHが6.5~7.5である外用組成物、

を除く)」。」とあるのを、

「(但し、

(1)ステロイド系抗炎症薬を含む外用組成物、及び

(2)以下の組成の外用組成物

ミノキシジルを3~10重量%を含み、ミノキシジル:プロピレングリコールの重量比が1:3~1:9となるようにプロピレングリコールを含み、かつ組成物のpHが6.5~7.5である外用組成物、

を除く

)。

」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び新規事項の有無

(1)訂正事項1について

訂正事項1は、訂正前の請求項1では、外用組成物に含まれる「c)プロピレングリコール」の配合割合が特定されていなかったのを、「c)5~35w/w%のプロピレングリコール」に訂正して、請求項1の外用組成物を、「c)」成分の「プロピレングリコール」の含有割合が「5~35w/w%」であるものに限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるし、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

そして、本件特許の願書に添付した明細書には、「プロピレングリコールの配合量は、全組成物中・・・より好ましくは5~35w/w%」(【0009】)と記載されているから、訂正事項1による訂正は、新規事項の追加にも該当しない。

(2)訂正事項2について

訂正事項2は、訂正前の請求項1の「e)」成分の「酸」を、「リン酸、クエン酸、乳酸及び酒石酸よりなる群から選ばれる1種または2種以上の酸」に限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるし、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

そして、本件特許の願書に添付した明細書には「本発明の外用組成物において用いる酸としては、・・・無機酸もしくは炭素数6以下の有機酸が挙げられる。・・・好ましくはリン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸である。これら酸を1種又は2種以上組み合わせてもよい」(【0010】)と記載されているから、訂正事項2による訂正は、新規事項の追加にも該当しない。

(3)訂正事項3について

訂正事項3は、訂正前の請求項1の外用組成物を「多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含有する」ものに限定するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正であるし、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

そして、本件特許の願書に添付した明細書には「本発明の外用組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲でプロピレングリコール以外の他の多価アルコールを含んでもよいが、・・・プロピレングリコールのみ配合することが本発明の効果の点から最も好ましい。」(【0009】)と記載されているから、訂正事項3による訂正は、新規事項の追加にも該当しない。

(4)訂正事項4について

訂正事項4は、訂正前の請求項1の但書に、請求項1の記載上明らかに必要がない「閉じ右かぎ括弧」が記載されていた点で、訂正前の請求項1には誤記が存在していたのを、当該記載を削除して誤記を解消するものであるから、「誤記の訂正」を目的とするものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないし、この訂正が、新規事項の追加にも該当しないことは明らかである。

(5)独立特許要件について

特許異議申立てのなされた請求項1については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。

3 まとめ

以上のとおりであるから、特許請求の範囲(請求項1)についての本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。

第3 本件発明

上記第2で述べたとおり、本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1に係る発明は、令和7年6月24日付けの手続補正書(方式)より補正された、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】

a)5w/w%以上のミノキシジル、

b)0.01~0.1w/w%のトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステル、且つ、ミノキシジル5gに対してトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステルを0.08g、

c)5~35w/w%のプロピレングリコール、

d)30w/w%以上のエタノール、及び

e)リン酸、クエン酸、乳酸及び酒石酸よりなる群から選ばれる1種または2種以上の酸

を含有し、多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含有することを特徴とするpH5.9~7.0の外用組成物

(但し、

(1)ステロイド系抗炎症薬を含む外用組成物、及び

(2)以下の組成の外用組成物

ミノキシジルを3~10重量%を含み、ミノキシジル:プロピレングリコールの重量比が1:3~1:9となるようにプロピレングリコールを含み、かつ組成物のpHが6.5~7.5である外用組成物、

を除く)。」(以下「本件発明」ともいう。)

第4 特許異議の申立ての理由の概要並びに取消理由(決定の予告)及び令和6年6月14日付け取消理由の概要

1 特許異議の申立ての理由の概要

特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)の概要及び申立人が提出した証拠方法は以下のとおりである。なお、以下の申立理由は設定登録時の請求項に係る発明に対してのものである。

(1)申立理由1(甲第1号証~甲第3号証のいずれかに記載の発明に基づく進歩性欠如)

請求項1に係る発明は、本件特許の優先日前日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、甲第1号証~甲第3号証のいずれかに記載された発明、及び、甲第1号証~甲第8号証に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、同法第113条第2号に該当し、請求項1に係る発明についての特許は取り消されるべきものである。

・申立理由1-1:主引例は甲第1号証、副引例は甲第1号証~甲第8号証

・申立理由1-2:主引例は甲第2号証、副引例は甲第1号証~甲第8号証

・申立理由1-3:主引例は甲第3号証、副引例は甲第1号証~甲第8号証

(2)申立理由2(サポート要件違反)

本件特許は、特許請求の範囲の記載が、以下の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

・請求項1に係る発明に関し、トコフェロール酢酸エステル等によりミノキシジル含有外用組成物の着色が進行するという課題が存在しない点(申立理由2A)

・課題が存在したとしても、請求項1に係る発明は、課題を解決できるものとは認識し得ない様々な態様を包含する点(申立理由2B)

(3)申立理由3(明確性要件違反)

本件特許は、以下の点で特許請求の範囲の記載に不備があり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

・請求項1の「ステロイド系抗炎症薬」の外延が不明である点(申立理由3A)

・請求項1に、対応する左括弧のない右括弧“」”が記載されている点(申立理由3B)

<証拠方法>

・甲第1号証:特開2014-214098号公報

・甲第2号証:国際公開第01/76540号

・甲第3号証:特開2002-326913号公報

・甲第4号証:特開2016-138094号公報(公開日2016年8月4日)

・甲第5号証:特開2001-288090号公報

・甲第6-1号証:大正製薬株式会社による、「3つの発毛サポート成分をプラス 強く・太く・発毛「リアップX5プラスローション」新発売 ミノキシジル5%配合のリアップX5がさらに進化」と題するウェブページの、WayBackMachineによるアーカイブ、アーカイブされた日:2015年10月8日、[2024年3月13日検索](合議体注:検索日は、申立書65頁5.証拠方法(6)による。)

インターネット<URL:

https://web.archive.org/web/20151008023114/https:/www.taisho.co.jp/company/release/2015/2015100501.html>

・甲第6-2号証:大正製薬株式会社による、販売名「リアップX5プラスローション」についての説明書(合議体注:公知日は不明)

甲第7号証:特開2014-214097号公報

甲第8号証:特開2010-18555号公報

以下、各甲号証について、例えば、「甲第1号証」であれば「甲1」のように記載する。

なお、特許権者は、令和6年9月13日付けの意見書に添付して、以下の乙号証を提出した。

・乙第1号証:Comparison of the Photochemical Behaviors of α-Tocopherol and its Acetate in Organic and Aqueous Micellar Solutions,The Journal of Physical Chemistry A,2011,Vol.115,No.29,p.8242-8247

・乙第2号証(合議体注:本願の優先日後に公知となった文献である。):「ユベラ(登録商標)軟膏」添付文書、2023年9月改訂(第1版)、エーザイ株式会社(合議体注:上記の「(登録商標)」は、原文では上付きの○の中にRが記載されている。)

・乙第3号証:財団法人 日本医薬情報センター編集・発行「JAPIC 医療用医薬品集2009」、平成20年9月1日、1622-1623頁

・乙第4号証:大正製薬株式会社 製剤第3研究室 竹内 伸之氏が令和6年9月9日付けで作成した実験成績証明書

以下、各乙号証について、例えば、「乙第1号証」であれば「乙1」のように記載する。

2 取消理由(決定の予告)の概要

令和6年10月23日付け手続補正書(方式)により補正された同年9月13日付けの訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1に対し、令和7年3月31日付けで通知された取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。

(1)取消理由1(甲1~甲3のいずれかに記載の発明に基づく進歩性欠如)

請求項1に係る発明は、下記のとおり、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である、下記の甲1~8に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。

・取消理由1-1:主引例は甲1、副引例は甲1~甲8

・取消理由1-2:主引例は甲2、副引例は甲1~甲8

・取消理由1-3:主引例は甲3、副引例は甲1~甲8

(2)取消理由2(サポート要件違反)

請求項1に係る発明についての特許は、以下の取消理由2A及び2Bに示すとおり、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

・取消理由2A

発明の詳細な説明には、トコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステルを配合したミノキシジル含有外用組成物に、経時的な着色が生じるという問題があったことは示されておらず、当業者は、発明の詳細な説明の記載から、本件発明の課題が存在すること自体を認識できないから、そのような発明の詳細な説明の記載に基づいて、請求項1に係る発明について、サポート要件を満足するものであるとはいえない。

・取消理由2B

当業者は、発明の詳細な説明の記載からは、本件実施例1に記載される特定の組成からなるミノキシジル含有外用組成物の場合には本件発明の課題を解決できることが理解できるものの、(i)本件発明の組成物が、プロピレングリコール以外に、ジプロピレングリコールやグリセリンを含む場合、(ii)ミノキシジルとプロピレングリコールの重量比が1:3~1:9を充足しない場合、(iii)組成物のpHが6.5未満の場合、(iv)組成物に含まれる酸がリン酸以外の酸である場合を含む本件発明全体についてまで、本件発明の課題を解決できることは理解できない。

3 令和6年6月14日付け取消理由の概要

本件特許の設定登録時の特許請求の範囲の請求項1に対し、令和6年6月14日付けで通知された取消理由(以下「先の取消理由」という。)は、以下の取消理由1~3であるが、このうち、取消理由1は、取消理由1-2において、複数ある引用発明としてさらに後述の「甲2発明5」が追加されている点、及び、取消理由1-3において、複数ある引用発明としてさらに後述の「甲3発明2」、「甲3発明3」が追加されている点を除いて、決定の予告における取消理由1と同旨であるし、また、取消理由2(取消理由2A、取消理由2B)は、取消理由(決定の予告)における取消理由2(取消理由2A、取消理由2B)と同旨であるので、以下においては、これらの取消理由を簡略して記載する。

(1)取消理由1(甲1~甲3のいずれかに記載の発明に基づく進歩性欠如)

・取消理由1-1:主引例は甲1、副引例は甲1~甲8

・取消理由1-2:主引例は甲2、副引例は甲1~甲8

・取消理由1-3:主引例は甲3、副引例は甲1~甲8

(2)取消理由2(サポート要件違反)

・取消理由2A

・取消理由2B

(3)取消理由3(明確性要件違反)

本件特許は、以下の点で特許請求の範囲の記載に不備があり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。

・請求項1に、対応する左括弧のない右括弧“」”が記載されている点

なお、決定の予告及び先の取消理由における取消理由1(取消理由1-1、取消理由1-2、取消理由1-3)は、申立理由1(申立理由1-1、申立理由1-2、申立理由1-3)と同旨であり、取消理由2(取消理由2A、取消理由2B)は、申立理由2(申立理由2A、申立理由2B)と同旨である。

また、先の取消理由における取消理由3は申立理由3Bと同旨である。

第5 決定の予告及び先の取消理由における取消理由1及び2についての判断並びに先の取消理由における取消理由3についての判断

以下、本件特許の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。また、以下において、下線は、原文に記載されているものを除き、合議体が強調のために付した。さらに、引用文献の摘記にあたり、表記は原則全角表記とし、読みやすくなるように改行等を入れて形式を変更している部分がある。

第5-1 本件発明、本件明細書の記載及び本件発明の技術的意義について

1 本件発明

本件発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載の事項によって特定される、上記第3において記載したとおりのものである。

なお、請求項1の但書において除かれている(1)の組成物を「条件(1)の組成物」、同(2)の組成物を「条件(2)の組成物」ともいう。

2 本件明細書の記載及び本件発明の技術的意義について

ア 本件明細書の記載

本件明細書には以下の記載がある。

「【技術分野】

【0001】

本発明は、ミノキシジルを有効成分とする外用組成物に関する。更に詳細には、トコフェロール及び/又はその誘導体を配合したミノキシジル含有外用組成物の

経時的な着色を抑制する技術

に関する。

【背景技術】

【0002】

ミノキシジルは化学名を6-(1-ピペリジニル)-2,4-ピリミジンジアミン-3-オキサイドと称し、育毛剤としての適応が知られており(特許文献1)、優れた育毛・発毛効果を発揮する薬剤として多数の報告がある。

また、トコフェロール誘導体の一つであるトコフェロール酢酸エステルには抗酸化作用があること(特許文献2)や育毛作用があること(特許文献3)が知られており、多くの育毛剤に用いられている。

・・・

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

本発明者らは、優れた育毛剤を開発するため、

ミノキシジルと酸を含有する組成物に、トコフェロール及び/又はその誘導体を配合したミノキシジル含有外用組成物を製造し、安定性を評価したところ,意外にも製剤の着色が進行することが判明した

本発明は、トコフェロール及び/又はその誘導体を配合したミノキシジル含有外用組成物において、製剤の着色を抑制したミノキシジル含有外用組成物を提供すること

を課題とする。

【課題を解決するための手段】

【0005】

本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、

トコフェロール及び/又はその誘導体を配合したミノキシジル含有外用組成物を製造する場合は、特定の多価アルコールを選択することにより、経時的な製剤の着色を抑制したミノキシジル含有外用組成物が製造できることを見出し、本発明を完成するに至った

・・・

【発明の効果】

【0007】

本発明により、トコフェロール及び/又はその誘導体を配合した2w/w%以上のミノキシジル含有外用組成物において、製剤の経時的な着色を抑制したミノキシジル含有外用組成物を提供することが可能になった

【発明を実施するための形態】

【0008】

本発明によれば、2w/w%以上のミノキシジル、トコフェロール及び/又はその誘導体、プロピレングリコール、30w/w%以上の低級アルコール及び酸を含有する外用組成物は、ミノキシジル製剤の着色を抑制したものとなる。

本発明の外用組成物において用いるミノキシジルは、通常医薬品に用いられる品質のものを適宜使用することができる。また、本発明によれば、ミノキシジルの含有量は2w/w%以上であり、・・・さらにより好ましくは5w/w%以上である。

5w/w%以上となると、より製剤の着色が進行するため、本発明ではこの範囲で実施する意義が大きい

【0009】

本発明の外用組成物において用いる多価アルコールは、本発明の効果である、製剤の経時的な着色を抑制する点からプロピレングリコールである

プロピレングリコールの配合量は

、全組成物中好ましくは2~55w/w%であり、

より好ましくは5~35w/w%

であり、さらに好ましくは5~15w/w%である。本発明の外用組成物中には、本発明の効果を損なわない範囲でプロピレングリコール以外の他の多価アルコールを含んでもよいが、グリセリン、ポリエチレングリコールは配合しない方が本発明の効果の点から好ましく、

プロピレングリコールのみ配合することが本発明の効果の点から最も好ましい

【0010】

ミノキシジルを基剤中に溶解させるためには酸を用いることが知られている。本発明の外用組成物において用いる酸としては、本発明の外用組成物の液性を7以下に調節する成分が好ましく、無機酸もしくは炭素数が6以下の有機酸が挙げられる。具体的にはリン酸、クエン酸、乳酸、塩酸、酢酸、硫酸、硝酸、酒石酸、マレイン酸、リンゴ酸、グルコン酸であり、好ましくはリン酸、クエン酸、乳酸、酒石酸である。これら酸を1種又は2種以上組み合わせてもよい。

【0011】

また、本発明の外用組成物は、主薬成分のミノキシジルの安定性、使用時の肌への刺激感、薬物の浸透性、使用感等の点から、そのpHを4.0~9.5の範囲に調整することが好ましく、5.0~7.0の範囲がさらに好ましい。さらに、pHの上限としては、好ましくは6.5未満であり、より好ましくは6.3以下、さらに好ましくは6.1以下である。

【0012】

本発明の外用組成物において用いるトコフェロール及び/又はその誘導体の配合量は、本発明の着色を抑制するとの課題の点から外用組成物中0.01~1w/w%が好ましく、0.02~0.5w/w%がより好ましく、0.05~0.1w/w%が更に好ましく、また、ミノキシジル1質量部に対して0.01質量部以上が好ましい。

・・・

【0014】

本発明の外用組成物には、更に必要により低級アルコールや水を配合することができる。低級アルコールとしては、・・・例えばエタノールやイソプロパノールなどが好ましく、これらを組み合わせて使用しても良い。低級アルコールの含有量は、全組成物中30w/w%以上とする必要がある。好ましくは35w/w%以上・・・更に好ましくは50w/w%以上である。水の配合量は、2~75w/w%が好ましく、より好ましくは5~50w/w%である。」

「【実施例】

【0021】

(実施例1及び比較例1、2)

実施例1及び比較例1、2の処方を表1に示す。表1記載の各成分を混合、撹拌して溶解し、エタノールを加えて全量100gとして製剤を調製した。

【0022】

69

132

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【0023】

(試験方法1:熱安定性試験)

実施例1及び比較例1、2の試験液を65°C(相対湿度成り行き)で7日間保管後、製剤を目視で観察し、色調を確認した。

【0024】

31

106

0001432019000002.jpg

【0025】

(結果)

表2から明らかなように、多価アルコールとしてプロピレングリコールを配合したミノキシジル含有製剤(実施例1)の着色は経時的に進行しなかった(無色)が、多価アルコールにプロピレングリコール以外を配合したミノキシジル含有製剤(比較例1及び比較例2)の着色は経時的に進行した(微黄色)

【0026】

(実施例2~4及び比較例3~5)

実施例2~4及び比較例3~5の処方を表3~4に示す。表3~4記載の各成分を混合、撹拌して溶解し、エタノールもしくは精製水を加えて全量100gとした。

【0027】

62

108

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【0028】

49

125

0001432019000004.jpg

【0029】

(試験方法2:熱安定性試験)

実施例2~4及び比較例3~5の試験液を65°C(相対湿度成り行き)で5日間保管後、製剤を目視で観察し、色調を確認した。

【0030】

29

145

0001432019000005.jpg

【0031】

表5から明らかなように、

多価アルコールとしてプロピレングリコールを配合したミノキシジル含有製剤(実施例2)の着色は経時的に進行しなかった(無色)が、多価アルコールにプロピレングリコール以外を配合したミノキシジル含有製剤(比較例3)の着色は経時的に進行した(微黄色)。

【0032】

また、エタノール20w/w%を配合したミノキシジル含有製剤(比較例4)は、調製直後に白濁した。さらに、エタノールが30w/w%以上のミノキシジル含有製剤(実施例3、4)の着色は経時的に進行しなかった(無色)が、エタノール25w/w%のミノキシジル含有製剤(比較例5)の着色は経時的に進行した(微黄色)。」

イ 本件発明の技術的意義

(ア) 上記アによれば、本件発明は、ミノキシジルと酸を含有する組成物に、トコフェロール及び/又はその誘導体を配合したミノキシジル含有外用組成物では着色が進行することが判明したことから、

トコフェロール及び/又はその誘導体を配合したミノキシジル含有外用組成物において、製剤の着色を抑制したミノキシジル含有外用組成物を提供すること

を課題としてなされた発明であり(【0004】)、特定の多価アルコールを選択することにより、経時的な製剤の着色を抑制したミノキシジル含有外用組成物が製造できることを見出したことによりなされた発明である(【0005】)。

そして、外用組成物において用いる多価アルコールは、製剤の経時的な着色を抑制する点からプロピレングリコールであり、その配合量は、全組成物中、より好ましくは5~35w/w%である(【0009】)。

また、本件発明は、5w/w%以上のミノキシジルを含む発明であるから、本件発明により、トコフェロール及び/又はその誘導体を含む5w/w%以上のミノキシジル含有外用組成物において、製剤の経時的な着色を抑制したミノキシジル含有外用組成物を提供できる、という効果を奏する(【0007】~【0008】)。

さらに、本件明細書の実施例(【0021】~【0032】)には、トコフェロール酢酸エステル0.08w/w%を含むミノキシジル5w/w%配合製剤であって、多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを配合した製剤(実施例1)では着色は経時的に進行しなかった(無色)が、多価アルコールとして、プロピレングリコールに換えてグリセリン(比較例1)やポリエチレングリコール400(比較例2)を配合した製剤の場合には、着色が経時的に進行した(微黄色)こと(【0025】)が示されている。

(イ) そうすると、本件発明は、トコフェロール及び/又は(トコフェロールの誘導体である)トコフェロール酢酸エステルを含む5w/w%以上のミノキシジル含有外用組成物であって、多価アルコールとして5~35w/w%のプロピレングリコールのみを含むものとすることで、多価アルコールとしてポリエチレングリコール又はグリセリンを含むミノキシジル含有外用組成物とする場合に生じる製剤の経時的な着色の抑制された、ミノキシジル含有外用組成物を提供できる、という技術的意義を有する発明といえる。

第5-2 取消理由1(進歩性欠如)について

決定の予告及び先の取消理由における取消理由1及び2は同旨であるので、これらの取消理由についてはまとめて判断する。

1 取消理由1-1(甲1を主引例とする進歩性欠如)について

(1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明について

ア 甲1に記載された事項

甲1には、以下の事項が記載されている。

・特許請求の範囲

「【請求項1】

ミノキシジルを3~10重量%含み、プロピレングリコールに対するブチレングリコールの重量比(プロピレングリコール:ブチレングリコール)が1:3.5~3.5:1となるようにプロピレングリコール及びブチレングリコールを含む外用組成物

【請求項2】

プロピレングリコールの含有量が、ミノキシジルの1重量部に対して、1~8重量部である請求項1に記載の外用組成物。

【請求項3】

プロピレングリコールの含有量が、組成物の全量に対して、5~35重量%である請求項1又は2に記載の外用組成物。

【請求項4】

さらに、水を含む請求項1~3の何れかに記載の外用組成物。

【請求項5】

水の含有量が、組成物の全量に対して、5~30重量%である請求項4に記載の外用組成物。

【請求項6】

さらに、低級アルコールを含む請求項1~5の何れかに記載の外用組成物。

【請求項7】

低級アルコールの含有量が、組成物の全量に対して、30~80重量%である請求項6に記載の外用組成物。

【請求項8】

育毛、養毛、又は発毛用である請求項1~7の何れかに記載の外用組成物。

【請求項9】

外用組成物に接する面の一部又は全部が、ポリオレフィン、及びガラスからなる群より選ばれる少なくとも1種の材料で構成されている容器に請求項1~7の何れかに記載の外用組成物が収容された容器入り外用組成物。」

・実施例の【0029】~【0036】

「【0029】

以下、本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。

【0030】

結晶析出・着色・使用感の評価

(合議体注:下線は原文のママ)

後掲の表1~3に示す組成に従い、各成分を混合溶解し、50ml容量の容器に充填した。容器材質は、原則、ガラスとし、容器材質の影響を検討する場合は、ガラス、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はポリエチレンテレフタレート製の容器を用いた。なお、表1~3に示す実施例及び比較例の

pHは全て6.8

である。

【0031】

低温安定性の評価は、各組成物を4°Cの恒温器で約1か月静置した後、目視で結晶析出を観察することにより行った。結晶の析出が認められなかった場合を〇、認められた場合を×とした。

【0032】

熱安定性の評価は、各組成物を40°Cの恒温器で約2か月静置した後、目視で黄色の着色の程度を観察することにより行った。着色が認められない場合を-、僅かな着色が認められた場合を+、着色がより強く認められるごとに、+の数を増やして表示した

【0033】

光安定性の評価は、SUNTESTER XLS+(東洋精機社)を用いて、30°C以下で、350W/m

2

を72時間照射し、目視で黄色の着色の程度を観察することにより行った。着色が認められない場合を-、僅かな着色が認められた場合を+、着色がより強く認められるごとに、+の数を増やして表示した。

【0034】

使用感の評価は、5名の社内の男性パネリストが、毛髪のある頭部に1ml塗布し、ベタツキ、きしみ、製剤の皮膚へのなじみ、臭い、及び塗布後の感触を総合的に判定することで行った。5名中3名以上が使用上の問題がないと判定した場合を〇、5名中1~2名が使用上の問題がないと判定した場合を△、使用上の問題がないと判定したパネリストが無かった場合を×とした。

結果を、表1~3に併せて示す。表1~3の

各成分の含有量の単位は重量%

である。

【0035】

【表1】

75

144

0001432019000006.jpg

【0036】

【表2】

81

145

0001432019000007.jpg

表1が示すように、多価アルコールとして、プロピレングリコールとブチレングリコールとを組み合わせて含む場合、低温での結晶析出及び経時的な着色の両方が抑制され、しかも良好な使用感が得られた

。これに対して、

一方の多価アルコールがグリセリン又はジプロピレングリコールである場合

、ベタツキやきしみを感じる使用感の悪い製剤となり、また

熱により着色が認められた

。」

イ 甲1に記載された発明

上記アの甲1の記載、特に、請求項1に係る発明の具体的態様に相当する実施例2及び3の組成物の組成に着目すると、甲1には、以下の組成からなる、「甲1発明1」及び「甲1発明2」が記載されていると認められる。

また、以下、甲1発明1と甲1発明2をまとめて「甲1発明」ともいう。

・甲1発明1

5重量%のミノキシジル、13重量%のプロピレングリコール、15重量%のブチレングリコール、0.16重量%の酒石酸、50重量%のエタノール、及び16.84重量%の精製水を含有し、プロピレングリコール:ブチレングリコール(重量比)は1:1.15である、pHが6.8の外用組成物。

・甲1発明2

5重量%のミノキシジル、10重量%のプロピレングリコール、18重量%のブチレングリコール、0.16重量%の酒石酸、50重量%のエタノール、及び16.84重量%の精製水を含有し、プロピレングリコール:ブチレングリコール(重量比)は1:1.8である、pHが6.8の外用組成物。

(2)対比

本件発明と甲1発明を対比すると、甲1発明の「5重量%のミノキシジル」、「50重量%のエタノール」、「酒石酸」、「pHが6.8」は、それぞれ、本件発明の「a)5w/w%以上のミノキシジル」、「d)30w/w%以上のエタノール」、「e)リン酸、クエン酸、乳酸及び酒石酸よりなる群から選ばれる1種または2種以上の酸」、「pHが5.9~7.0」に相当する。

また、甲1発明の「13重量%のプロピレングリコール」(甲1発明1)及び「10重量%のプロピレングリコール」(甲1発明2)は、本件発明の「c)5~35w/w%のプロピレングリコール」に相当する。

さらに、甲1発明の上記外用組成物はステロイド系抗炎症薬を含まないものであるから、本件発明の条件(1)の組成物には該当しない。

加えて、甲1発明1の外用組成物におけるミノキシジル:プロピレングリコールの重量比は、5重量%:13重量%=1:2.6であり、甲1発明2の外用組成物におけるミノキシジル:プロピレングリコールの重量比は、5重量%:10重量%=1:2であるから、本件発明の条件(2)の組成物には該当しない。

そして、甲1発明の「プロピレングリコール」及び「ブチレングリコール」が「多価アルコール」に相当するものであることは当業者に自明である。

そうすると、本件発明と甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>

a)5w/w%以上のミノキシジル、

c)5~35w/w%のプロピレングリコール、

d)30w/w%以上のエタノール、及び

e)リン酸、クエン酸、乳酸及び酒石酸よりなる群から選ばれる1種または2種以上の酸

を含有し、多価アルコールを含有するpH5.9~7.0の外用組成物

(但し、

(1)ステロイド系抗炎症薬を含む外用組成物、及び

(2)以下の組成の外用組成物

ミノキシジルを3~10重量%を含み、ミノキシジル:プロピレングリコールの重量比が1:3~1:9となるようにプロピレングリコールを含み、かつ組成物のpHが6.5~7.5である外用組成物、

を除く)。

<相違点1>

本件発明は、多価アルコールとして「プロピレングリコールのみを含有することを特徴とする」ものであるのに対し、甲1発明は、多価アルコールとして、プロピレングリコールに加え、ブチレングリコールも含有する点。

<相違点2>

本件発明には、「b)0.01~0.1w/w%のトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステル、且つ、ミノキシジル5gに対してトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステルを0.08g」を含むことが特定されているのに対し、甲1発明には、そのような特定がされていない点。

(3)判断

ア まず、相違点1について検討する。

(ア) 甲1の特許請求の範囲には、「ミノキシジルを3~10重量%含み、プロピレングリコールとブチレングリコールとを1:3.5~3.5:1の重量比で含有する外用組成物。」(請求項1)等の発明が記載されている。

そして、甲1は「ミノキシジルを配合した外用組成物であって、ミノキシジルの結晶析出、及び経時的な着色が抑制されており、しかも使用感に優れたミノキシジル配合外用組成物を提供することを課題とする」(【0006】)ものであるところ、甲1には、課題解決手段に関し、「本発明者は、上記課題を解決するために研究を重ね、ミノキシジルを3~10重量%含有する外用組成物に、プロピレングリコール:ブチレングリコールの重量比が1:3.5~3.5:1となるようにプロピレングリコール及びブチレングリコールを配合することにより、ミノキシジルの結晶析出が抑制されており、熱や光に曝されても着色し難く、さらにベタツキやきしみ等の使用時の違和感が抑制された組成物になることを見出した。」(【0007】)、「本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり」(【0008】)と記載され、また、「プロピレングリコールとブチレングリコールを組み合わせて含むことにより、ミノキシジルの結晶析出、及び経時的な着色が抑制され、かつ使用感の良好な組成物となる」(【0012】)と記載されている。

すなわち、甲1においては、甲1に記載の課題を、特許請求の範囲に記載の「ミノキシジルを3~10重量%含み、プロピレングリコールとブチレングリコールとを1:3.5~3.5:1の重量比で含有する外用組成物。」により解決するものである。

(イ) また、甲1には、【実施例】の【0036】【表2】に、多価アルコールとしてプロピレングリコールを含むが、ブチレングリコールを含有しない外用組成物の場合には、経時的な着色が生じ、使用感の点でも問題があるものであったことが具体的な試験結果として示されている(比較例1及び比較例3)。

(ウ) 上記(ア)及び(イ)の甲1の記載によれば、当業者は、甲1の特許請求の範囲に記載の発明の具体的態様に相当する甲1発明から、ブチレングリコールを取り除いて「多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含有することを特徴とする」ものとした場合には、甲1において解決しようとする課題が解決できなくなると理解するといえるから、当業者は、甲1発明を、「多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含有することを特徴とする」ものとして、相違点1に係る本件発明の構成を備えたものとすることを動機付けられない。

(エ) また、申立人が提出した甲2~8を検討しても、甲1発明を、相違点1に係る本件発明の構成を備えたものとすることを当業者に動機付けるような記載や示唆は見当たらない。

(オ) そうすると、甲1発明及び甲1~8に記載の事項に基づいて、甲1発明を、「多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含有することを特徴とする」ものとして、相違点1に係る本件発明の構成を備えたものとすることを当業者が容易に想到し得るとはいえない。

イ 以上のとおりであるから、相違点2について検討するまでもなく、相違点1に係る構成を備えた本件発明について、甲1発明及び甲1~甲8の記載から当業者が容易に発明し得たものであるとはいえない。

ウ そして、本件明細書には、上記第5-1の2のアのとおりの記載があり、同2のイ(ア)でも指摘したとおり、本件明細書の実施例(【0021】~【0032】)には、トコフェロール酢酸エステル0.08w/w%を含むミノキシジル5w/w%配合製剤であって、多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを配合した製剤(実施例1)では着色は経時的に進行しなかった(無色)が、多価アルコールとして、プロピレングリコールに換えてグリセリン(比較例1)やポリエチレングリコール400(比較例2)を配合した製剤の場合には、着色が経時的に進行した(微黄色)こと(【0025】)が示されており、多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含む本件発明の外用組成物は、多価アルコールとしてポリエチレングリコール又はグリセリンを含むミノキシジル含有外用組成物とする場合に生じる製剤の経時的な着色の抑制された、ミノキシジル含有外用組成物を提供できるという、効果を奏するものであり、この効果は、甲1~甲8の記載からは予期できない効果である。

エ 小括

したがって、本件発明は、甲1発明及び甲1~8に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、取消理由1-1には理由がない。

2 取消理由1-2(甲2を主引例とする進歩性欠如)について

(1)甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明について

ア 甲2に記載された事項

甲2には、以下の事項が記載されている。

・請求の範囲

「1.

1~6質量%のミノキシジル、多価アルコール、エタノール及び水を含み、さらにメントール、ビタミンEアセテート、パントテニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフェンヒドラミンから成る群より選ばれる成分の1種又は2種以上を含有してなる育毛組成物

2. 1~6質量%のミノキシジル、多価アルコール、エタノール、メントール及び水を含み、さらにビタミンEアセテート、パントテニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフェンヒドラミンから成る群より選ばれる成分の1種又は2種以上を含有してなる育毛組成物。

3. 1~6質量%のミノキシジル、多価アルコール、エタノール、ビタミンEアセテート及び水を含み、さらにメントール、パントテニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフェンヒドラミンから成る群より選ばれる成分の1種又は2種以上を含有してなる育毛組成物。

4. 1~6質量%のミノキシジル、多価アルコール、エタノール、パントテニルエチルエーテル及び水を含み、さらにメントール、ビタミンEアセテート、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフェンヒドラミンから成る群より選ばれる成分の1種又は2種以上を含有してなる育毛組成物。

5. 多価アルコールの配合量が5~30質量%である請求項1~4の何れかの項記載の育毛組成物。

6. 水の配合量が5~30質量%である請求項1~5の何れかの項記載の育毛組成物。

7. エタノールの配合量が25~75質量%である請求項1~6の何れかの項記載の育毛組成物。

8. ミノキシジルの配合量が2~6質量%である請求項1~7の何れかの項記載の育毛組成物。

9. 組成物のpHが5.5~9.5である請求項1~8の何れかの項記載の育毛組成物。

10. 実質的に界面活性剤を含有しない請求項1~9の何れかの項記載の育毛組成物。

11.

多価アルコールが1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600からなる群から選ばれたものである

請求項1~10の何れかの項記載の育毛組成物。

・・・

18. 更にpH調整剤として酸および/または塩基を配合した請求項1~17の何れかの項記載の育毛組成物。

19. pH調整剤が、クエン酸、塩酸、乳酸、リン酸、酒石酸またはグルコン酸である請求項18項記載の育毛組成物。

20.

外用ローション剤

である請求項1~19の何れかの項記載の育毛組成物。

21. 外用エアゾール剤である請求項1~19の何れかの項記載の育毛組成物。

22. ゲル剤である請求項1~19の何れかの項記載の育毛組成物。」

・明細書1頁4行~5頁8行

「技 術 分 野

本発明は、ミノキシジルを有効成分とする育毛組成物に関し、更に詳細には、使用感を高めた育毛組成物に関する。

背 景 技 術

ミノキシジルは化学名を6-(1-ピペリジニル)-2,4-ピリミジンジアミン-3-オキサイドと称し、米国特許第4,139,619号に育毛剤としての適応が記載されている。そして、ミノキシジルは、外用により優れた育毛、養毛作用があるため、ミノキシジルを配合した育毛剤(以下、「ミノキシジル製剤」という)は広く受け入れられ、その販売高も記録的である。

ミノキシジル製剤は、頭部に長期間にわたって毎日使用するものであるから、使用感においても優れた製剤が求められている。特に、ミノキシジルの濃度を高めた育毛剤にあってはその使用感は重要となる。

従って本発明の目的は、現在提供されているミノキシジル製剤よりも、その使用感を高めたミノキシジル含有の育毛組成物を提供することにある。

発 明 の 開 示

本発明者らは、上記課題を解決すべく、

ミノキシジル製剤の

溶剤組成や添加配合物について、鋭意研究を行った結果、

溶剤として、多価アルコール/エタノール/水の三成分系を選択し、これに特定の化合物を選択、添加することにより、高い濃度でミノキシジルを配合した場合においても、安定で、しかも優れた使用感が得られることを見出し、本発明を完成した

・・・

発明を実施するための最良の形態

本発明の育毛組成物において、有効成分であるミノキシジルは、1~6

質量%(以下、単に「%」で示す)

の範囲であるが、ミノキシジルを2%以上配合した育毛組成物において本発明の効果が著しいものとなる。

この

ミノキシジルを溶解するための溶剤系は、多価アルコール、エタノールおよび水で構成される三成分系である。

この溶剤系の各成分の配合量には、特に制約はないが、最終組成物中で、エタノールの配合量が25~75%程度、水の配合量が5~30%程度とすることが好ましい。

多価アルコールは溶解補助剤としては5~30%が好ましく、使用感の点からは8~20%が好ましい

また、上記の

多価アルコールとしては、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600等を使用することができる

が、特にこれらを2種以上組み合わせて用いることが好ましい。

一方、本発明の育毛組成物に添加、配合される成分としては、メントール、ビタミンEアセテート、パントテニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフェンヒドラミンから成る群より選ばれた成分(以下、

「選択成分」

という)が挙げられる。この選択成分のうち、

特に有効性が高いものとしては、メントール、ビタミンEアセテート及びパントテニルエチルエーテルが挙げられ、これらを必須成分として加えておくことがより好まし

い。

これら

選択活性成分の添加量は、特に制約はなく、使用感やミノキシジルの安定性あるいは溶剤系組成等を考慮しながら実験的に定めることができる

。例えば、特に好ましい選択成分であるメントールは、最終組成物中で0.2~0.4%程度となるよう配合することが好ましい。

また、

ビタミンEアセテートは0.016~0.15%

、パントテニルエチルエーテルは0.5~1.5%、ヒノキチオールは0.02~0.08%、グリチルレチン酸は0.02~0.15%、塩酸ジフェンヒドラミンは0.02~0.15%程度

となるよう配合することが好ましい

本発明の育毛剤組成物においては、上記した成分の他、一般の外用剤に使用される種々の成分、例えば、賦形剤、血管拡張剤(塩化カルプロニウム、ニコチン酸ベンジル、センブリ抽出液、オタネニンジンエキス、トウガラシチンキなど)、抗ヒスタミン剤(塩酸イソチペンジルなど)、抗炎症剤(グアイアズレンなど)、・・・ビタミン類(酢酸レチノール、アスコルビン酸、硝酸チアミン、シアノコバラミン、ビオチンなど)、・・・

ビタミン類

(酢酸レチノール、アスコルビン酸、硝酸チアミン、シアノコバラミン、ビオチンなど)、

抗酸化剤

(ジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、

トコフェロール

、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソプロピルガレートなど)・・・などの通常使用される成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。

しかしながら、界面活性剤の添加は、ミノキシジルの皮膚吸収に影響を与え、また使用感を低下させるため、本発明の育毛組成物は実質的に界面活性剤を含まないものとすることが好ましい。

本発明の育毛組成物の調製は、常法に従い、上記各成分を配合することにより調製される。この場合、育毛組成物のpHは、5.5~9.5程度の範囲とすることが望ましく、特に、弱酸性である5.5~6.5程度の範囲とすることがより望ましい。

上記のpH調整に当たっては、適当な酸および/または塩基をpH調整剤として使用することができ、そのようなpH調整剤の例としては、クエン酸、塩酸、乳酸、リン酸等を挙げることができる。

かくして得られる本発明の育毛組成物は、ローション剤・・・などの適当な外用製剤とし、使用することができる。」

・実施例1~3(明細書5頁13行~7頁13行、12頁、13頁)

「実 施 例 1

ミノキシジル1.0g、L-メントール0.3g、パントテニルエチルエーテル0.08g、1,3-ブチレングリコール10.0gおよびエタノール60.0gを混合、攪拌して溶解し、さらに精製水を加えて100mLとし、ローション剤(本発明品1)を得た。このローション剤のpHは、8.5であった。

実 施 例 2

実施例1と同様にして、表1に示す本発明品2~9および表2に示す比較品1~3のローション剤を調製した。本発明品と比較品について髪の手触りの良さについて検討したところ、本発明品の方が優れていた。

(組 成)

61

147

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48

99

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実 施 例 3

実施例1と同様にして、表3~表8に示す本発明品10~46のローション剤を調製した。

(組 成)

・・・

74

144

0001432019000010.jpg

表8

75

144

0001432019000011.jpg

・試験例(明細書14頁4行~18頁9行)

「試 験 例

20~40代の専門パネラー4名により、表5に示した育毛ローションの使用感を官能試験により評価した。

評価方法としては、ハーフヘッドによる左右一対比較により実施した。すなわち、頭部の右側は非投与部位とし、左側をローション投与部位として、1日2回1mLの塗布を3週間行い、1週間後と3週間後に頭髪の状態を表6に示した評価基準に従い評価した。パネラー4名の平均点を表12に示す。

65

128

0001432019000012.jpg

68

153

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57

153

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95

153

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美しく健康な頭髪の重要な要素としてハリ・コシ、ツヤ及びしっとり感が挙げられる。本発明の育毛ローションがこれらの要素に及ぼす影響について、3週間の使用感試験により判定した。

その結果、実施例の育毛ローションは、比較品のローションに比較し、早い時期から高い効果が認めらた。さらに、選択成分を複数組み合せることによりこれまでにない使用感を得ることが見出された。また、使用感向上の効果は、3つの要素の全てについてバランス良く得られており、頭髪用剤として総合的に使用感を向上させる効果を有することが判明した。」

イ 甲2に記載された発明

上記アの甲2の記載、特に、請求項1を引用する請求項19に係る発明の具体的態様に相当する実施例3の表7の本発明品35~37、40及び表8の本発明品42、46のローション剤の組成によれば、甲2には、以下の組成からなる、ローション剤である外用育毛組成物の発明(以下、本発明品35~37、40、42、46の育毛組成物を、順に、「甲2発明1」等といい、これらをまとめて「甲2発明」ともいう。)が記載されていると認められる。

・「甲2発明1」

5.0gのミノキシジルと、0.3gのL-メントールと、0.08gのビタミンEアセテートと、10.0gの1,3-ブチレングリコールと、60.0gのエタノールと、適量のクエン酸と、精製水(全量100mL)を含み、pH6.0であるローション剤である外用育毛組成物。

・「甲2発明2」

5.0gのミノキシジルと、0.3gのL-メントールと、0.08gのビタミンEアセテートと、20.0gの1,3-ブチレングリコールと、50.0gのエタノールと、適量の乳酸と、精製水(全量100mL)を含み、pH6.0であるローション剤である外用育毛組成物。

・「甲2発明3」

5.0gのミノキシジルと、0.3gのL-メントールと、0.08gのビタミンEアセテートと、1.0gのパントテニルエチルエーテルと、10.0gの1,3-ブチレングリコールと、60.0gのエタノールと、適量のリン酸と、精製水(全量100mL)を含み、pH6.5であるローション剤である外用育毛組成物。

・「甲2発明4」

5.0gのミノキシジルと、0.3gのL-メントールと、0.08gのビタミンEアセテートと、1.0gのパントテニルエチルエーテルと、0.05gのヒノキチオールと、0.1gのグリチルレチン酸と、0.1gの塩酸ジフェンヒドラミンと、10.0gの1,3-ブチレングリコールと、60.0gのエタノールと、適量のクエン酸と、精製水(全量100mL)を含み、pH6.0であるローション剤である外用育毛組成物。

・「甲2発明5」

5.0gのミノキシジルと、0.3gのL-メントールと、0.08gのビタミンEアセテートと、5.0gの1,3-ブチレングリコールと、5.0gのグリセリンと、60.0gのエタノールと、1.5gの乳酸と、精製水(全量100mL)を含み、pH6.0であるローション剤である外用育毛組成物。

・「甲2発明6」

5.0gのミノキシジルと、0.3gのL-メントールと、0.08gのビタミンEアセテートと、1.0gのパントテニルエチルエーテルと、10.0gの1,3-ブチレングリコールと、60.0gのエタノールと、適量のクエン酸と、精製水(全量100mL)を含み、pH6.5であるローション剤である外用育毛組成物。

(2)対比

本件発明と甲2発明を対比する。

ア エタノールの比重は0.789g/mL (https://www.chemicalbook.com/ProductList_En.aspx?kwd=Ethanol)であるから、甲2発明の100mL外用育毛組成物中に60gあるいは50g含まれるエタノールの組成物中のエタノールの容積は、換算すると約76mLあるいは63.4mL(≒60g/(0.789g/mL)あるいは50g/(0.789g/mL))である。

また、ミノキシジルの比重は約1.1651g/mL(https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB7383531.htm1.1651)であり、5gの容積は約4.3mL(≒5g/(1.1651g/mL))である。

1,3―ブチレングリコールの比重は1.005g/mLであり(https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB7758265.htm)、10.0gの容積は9.95mLである。

グリセリンの比重は1.25g/mL(https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB5339206.htm)であり、5gの容積は4mLである。

メントールの比重は0.89g/mL(https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB7390694.htm)であり、0.3gの容積は約0.33mLである。

乳酸の比重は1.2g/mLであり(https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/W01W0112-0266.html)1.5gの容積は1.25mLである。

パントテニルエチルエーテルの比重は1.073g/mLであり(https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB2140252.htm)、1gの容積は約1.1mLである。

イ そして、少量成分の組成物の全容積に対する影響は少ないことから、例えば、甲2発明1において、上記成分のみを考慮して水の含有量(g)を計算すると、水は全量が100mLとなる量で含まれるから、甲2発明1の組成物に含まれる水は、約9.42mL(≒100-76-4.3-9.95-0.33)、つまり、水の比重を1として、約9.4gとなる。

同様に、甲2発明2~6についても、水の含有量(g)は、約12g(甲2発明2)、約8.3g(甲2発明3、6)、約9.4g(甲2発明4)、約9.1g(甲2発明5)となる。

そして、組成物全量を100mLとした場合の組成物の全重量は、例えば、甲2発明1では、約84.8g(60+5+0.08+0.3+10=84.78g)となる。

そうすると、

甲2発明1の外用組成物中のミノキシジルの濃度は、組成物の全重量84.78gに対して、ミノキシジル5.0gが含まれているのであるから、組成物の全重量100gに対する割合とした場合に、本件発明の「5w/w%以上」を満足する

同様に、甲2発明2~6についても、ミノキシジルの濃度は、本件発明の「5w/w%以上」を満足する。

ウ 甲2発明の「ビタミンEアセテート」は、本件発明の「トコフェロール酢酸エステル」と同義であり、これは、ミノキシジル5gに対して0.08g含まれている。また、上記のとおり組成物の全重量は、例えば、甲2発明1は約84.8gなので、「ビタミンEアセテート」の濃度は、約0.09w%(≒0.08g/84.8g×100)となり、甲2発明の「ビタミンEアセテート」の濃度は、本件発明の「b)0.01~0.1w/w%のトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステル」との条件も満足する。

同様に、甲2発明2~6についても、「ビタミンEアセテート」の濃度は、本件発明の「b)0.01~0.1w/w%のトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステル」との条件を満足する。

エ さらに、甲2発明は、いずれも、本件発明の「d)30w/w%以上のエタノール」、「e)リン酸、クエン酸、乳酸及び酒石酸よりなる群から選ばれる1種または2種以上の酸」、「pH5.9~7.0」との特定を満足するし、甲2発明は、本件発明の条件(1)及び(2)の組成物には該当しない。

オ 甲2発明の「1,3-ブチレングリコール」(甲2発明1~4、6)、あるいは「1,3-ブチレングリコール」及び「グリセリン」(甲2発明5)が、「多価アルコール」に相当するものであることは当業者に自明である。

そうすると、本件発明と甲2発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>

a)5w/w%以上のミノキシジル、

b)0.01~0.1w/w%のトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステル、且つ、ミノキシジル5gに対してトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステルを0.08g、

d)30w/w%以上のエタノール、及び

e)リン酸、クエン酸、乳酸及び酒石酸よりなる群から選ばれる1種または2種以上の酸

を含有し、多価アルコールを含有するpH5.9~7.0の外用組成物

(但し、

(1)ステロイド系抗炎症薬を含む外用組成物、及び

(2)以下の組成の外用組成物

ミノキシジルを3~10重量%を含み、ミノキシジル:プロピレングリコールの重量比が1:3~1:9となるようにプロピレングリコールを含み、かつ組成物のpHが6.5~7.5である外用組成物、

を除く)。

<相違点3>

本件発明は、「c)5~35w/w%のプロピレングリコール」を含有し、多価アルコールとして「プロピレングリコールのみを含有することを特徴とする」ものであるのに対し、甲2発明は、多価アルコールとして、「1,3-ブチレングリコール」(甲2発明1~4、6)、あるいは、「1,3-ブチレングリコール」及び「グリセリン」(甲2発明5)を含有する点。

(3)判断

ア 相違点3について

上記相違点3について検討する。

(ア) 甲2には、甲2に記載の発明の目的は、現在提供されているミノキシジル製剤よりも、その使用感を高めたミノキシジル含有育毛組成物を提供することであること(背景技術の最終段落)、甲2に記載のミノキシジル含有外用育毛剤組成物(ミノキシジル製剤)において、多価アルコールが必須成分であること(請求項1)、ミノキシジル製剤の溶剤として、多価アルコール/エタノール/水の三成分系を選択し、これに特定の化合物を選択、添加することにより、高い濃度でミノキシジルを配合した場合においても、安定で、しかも優れた使用感が得られることを見出したこと(発明の開示の欄)、ミノキシジル含有外用育毛剤組成物に添加、配合される「選択成分」としては、メントール、ビタミンEアセテート、パントテニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸及び塩酸ジフェンヒドラミンから成る群より選ばれた成分が挙げられ、メントール、ビタミンEアセテート及びパントテニルエチルエーテルを必須成分として加えておくことがより好ましいことが記載されている(発明を実施するための最良の形態の欄の5段落)。

しかしながら、甲2には、ミノキシジル含有外用育毛剤組成物に含有させる「多価アルコール」に関し、「1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600等を使用することができる」(発明を実施するための最良の形態の欄の4段落)と記載されているのみであり、「多価アルコール」として「プロピレングリコール」を採用することを直接示唆する記載はない。

(イ) ここで、外用組成物に配合可能な多価アルコールとしてプロピレングリコールは周知であり(例えば、甲1の【0012】、【0013】、甲5の【0016】、甲7の【0012】、甲8の【0018】)、当業者は、甲2発明の外用育毛組成物に含まれる多価アルコールとして「プロピレングリコール」も使用し得ることを認識することはできるといえる。

しかしながら、甲2は、安定で、優れた使用感が得られるミノキシジル含有製剤に関するものであるところ(発明の開示の欄の冒頭)、甲2発明と同様、多価アルコール/エタノール/水の三成分系の溶剤からなり、高い濃度でミノキシジルを含む外用育毛組成物に関する文献である甲1の請求項1には、「ミノキシジルを3~10重量%含み、プロピレングリコールに対するブチレングリコールの重量比(プロピレングリコール:ブチレングリコール)が1:3.5~3.5:1となるようにプロピレングリコール及びブチレングリコールを含む外用組成物」が記載され、【0012】には、「プロピレングリコールとブチレングリコールとを組み合わせて含むことにより、ミノキシジルの結晶析出、及び経時的な組成物の着色が抑制され、かつ使用感の良好な組成物となる」ことが記載されているし、甲1の【実施例】の【0036】【表2】には、多価アルコールとしてプロピレングリコールを含むが、ブチレングリコールを含有しない外用組成物の場合には、経時的な着色が生じ、使用感の点でも問題があるものであったことが具体的な試験結果として示されている(比較例1及び比較例3)。

(ウ) そうすると、甲1の記載も合わせ見た当業者は、現在提供されているミノキシジル製剤よりも使用感を高めたミノキシジル含有育毛組成物を提供することを目的とする甲2発明において、当該目的を達成するためのミノキシジル含有外用組成物に含まれる多価アルコールとして、甲2には記載のない周知のプロプレングリコールを採用する際には、甲1に記載される、プロピレングリコールに対するブチレングリコールの重量比が1:3.5~3.5:1の混合溶剤を採用することを強く動機付けられるといえ、甲1に使用感や経時的な着色の点で問題があったことが具体的に示されている、プロピレングリコールを単独で採用して、甲2発明を、「c)5~35w/w%のプロピレングリコール」を含有し、「多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含有する」ものとすることは動機付けられない。

(エ) また、申立人が提出した他の証拠を検討しても、甲2発明を、「c)5~35w/w%のプロピレングリコール」を含有し、「多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含有する」ものとすることを当業者に動機付けるような記載や示唆は見当たらない。

(オ) そうすると、甲2発明及び甲1~8に記載の事項に基づいて、甲2発明を、「c)5~35w/w%のプロピレングリコール」を含有し、「多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含有することを特徴とする」ものとし、甲2発明を、相違点3に係る本件発明の構成を備えたものとすることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。

イ そして、本件明細書には、上記第5-1の2のアのとおりの記載があり、同2のイ(ア)で指摘したとおり、本件明細書の実施例(【0021】~【0032】)には、トコフェロール酢酸エステル0.08w/w%を含むミノキシジル5w/w%配合製剤であって、多価アルコールとして15w/w%のプロピレングリコールのみを配合した製剤(実施例1)では着色は経時的に進行しなかった(無色)が、多価アルコールとして、プロピレングリコールに換えてグリセリン(比較例1)やポリエチレングリコール400(比較例2)を配合した製剤の場合には、着色が経時的に進行した(微黄色)こと(【0025】)が示されており、多価アルコールとして5~35w/w%のプロピレングリコールのみを含む本件発明の外用組成物は、多価アルコールとしてポリエチレングリコール又はグリセリンを含むミノキシジル含有外用組成物とする場合に生じる製剤の経時的な着色の抑制された、ミノキシジル含有外用組成物を提供できるという、効果を奏するものであり、この効果は、甲1~甲8の記載からは予期できない効果である。

ウ 小括

したがって、本件発明は、甲2発明及び甲1~8に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、取消理由1-2にも理由がない。

3 取消理由1-3(甲3を主引例とする進歩性欠如)について

(1)甲3に記載された事項及び甲3に記載された発明について

ア 甲3に記載された事項

甲3には、以下の事項が記載されている。

・特許請求の範囲

「【請求項1】

1~6質量%のミノキシジル、多価アルコール、エタノール、塩酸ピリドキシン及び水を含有してなる育毛組成物

【請求項2】

さらにメントール、ビタミンEアセテート、パントテニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフエンヒドラミンから成る群より選ばれる成分の1種以上を含有してなる請求項1記載の育毛組成物

【請求項3】1~6質量%のミノキシジル、多価アルコール、エタノール、塩酸ピリドキシン、メントール及び水を含み、さらにビタミンEアセテート、パントテニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフエンヒドラミンから成る群より選ばれる成分の1種以上を含有してなる育毛組成物。

【請求項4】

1~6質量%のミノキシジル、多価アルコール、エタノール、塩酸ピリドキシン、ビタミンEアセテート及び水を含み、さらにメントール、パントテニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフエンヒドラミンから成る群より選ばれる成分の1種以上を含有してなる育毛組成物

【請求項5】1~6質量%のミノキシジル、多価アルコール、エタノール、塩酸ピリドキシン、パントテニルエチルエーテル及び水を含み、さらにメントール、ビタミンEアセテート、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフエンヒドラミンから成る群より選ばれる成分の1種以上を含有してなる育毛組成物。

【請求項6】多価アルコールの配合量が5~30%である請求項1~5の何れか項記載の育毛組成物。

【請求項7】水の配合量が5~30質量%である請求項1~6の何れかの項記載の育毛組成物。

【請求項8】エタノールの配合量が25~75質量%である請求項1~7の何れかの項記載の育毛組成物。

【請求項9】ミノキシジルの配合量が2~6質量%である請求項1~8の何れかの項記載の育毛組成物。

【請求項10】組成物のpHが5.5~9.5である請求項1~9の何れかの項記載の育毛組成物。

【請求項11】実質的に界面活性剤を含有しない請求項1~10の何れかの項記載の育毛組成物。

【請求項12】多価アルコールが1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジブロピレングリコーリレ、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600からなる群から選ばれたものである請求項1~11の何れかの項記載の育毛組成物。

【請求項13】多価アルコールが1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジブロピレングリコール、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600からなる群から選ばれたものの2種以上である請求項1~11の何れかの項記載の育毛組成物。

【請求項14】更にpH調整剤として酸およぴ/または塩基を配合した請求項1~13の何れかの項記載の育毛組成物。

【請求項15】pH調整剤が、クエン酸、塩酸、乳酸、リン酸、酒石酸またはグルコン酸である請求項14項記載の育毛組成物.

【請求項16】外用ローション剤である請求項1~15の何れかの項記載の育毛組成物。

【請求項17】外用エアゾール剤である請求項1~15の何れかの項記載の育毛組成物。

【請求項18】外用ゲル剤である請求項1~15の何れかの項記載の育毛組成物。」

・従来の技術、発明が解決しようとする課題、課題を解決するための手段

「【0002】

【従来の技術】ミノキシジルは化学名を6-(1-ピペリジニル)-2,4-ピリミジンジアミン-3-オキサイドと称し、米国特許第4,139,619号に育毛剤としての適応が記載されている。そして、ミノキシジルは外用により優れた育毛、養毛作用があるため、ミノキシジルを配合した育毛剤(以下、「ミノキシジル製剤」という)は広く受け入れられ、その販売高も記録的である。

【0003】ミノキシジル製剤は、頭部に長期間にわたって毎日使用するものであるから、使用感においても優れた製剤が求められている。特に、

ミノキシジルの濃度を高めた育毛剤にあってはその使用感は重要となる

【0004】

【発明が解決しようとする課題】

本発明は、現在提供されているミノキシジル製剤よりも、その使用感を高めたミノキシジル含有の育毛組成物を提供することをその課題とする

ものである。

【0005】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく、ミノキシジル製剤の溶剤組成や添加配含物について、鋭意研究を行った結呆、溶剤として、

多価アルコール/エタノール/水の三成分系を選択し、特定の化合物を選択、添加することにより、高い濃度でミノキシジルを配合した場合においても、安定で、しかも優れた使用感が得られることを見出し、本発明を完成した

。」

・発明の実施の形態

「【0011】

【発明の実施の形態】本発明の育毛組成物において、有効成分であるミノキシジルは、1~6

質量%(以下、単に「%」で示す)

の範囲であるが、ミノキシジルを2%以上配合した育毛組成物において本発明の効果が著しいものとなる。

【0012】このミノキシジルを溶解するための溶剤系は、多価アルコール、エタノールおよび水で構成される三成分系である。この溶剤系の各成分の配合量には、特に制約はないが、最終組成物中で、エタノールの配合量が25~75%程度、水の配合量が5~30%程度とすることが好ましい。

多価アルコールの配合量は、溶解剤としては5~30%程度が好ましく、使用感の点からは8~20%程度が好ましい

【0013】また、上記の

多価アルコールとしては、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600

等を使用することができるが、特にこれらを2種以上組み合わせて用いることが好ましい。

【0014】本発明の育毛組成物は、塩酸ピリドキシンが必須成分であり、その配合量は0.01~0.07%が好ましい。

【0015】一方、本発明の育毛組成物に添加、配合される成分としては、塩酸ピリドキシンの他、

メントール、ビタミンEアセテート、パントテニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸および塩酸ジフェンヒドラミンから成る群より選ばれた成分(以下、「選択成分」という

)が挙げられる。この選択成分のうち、特に有効性が高いものとしては、メントールが挙げられ、このメントールを必須成分として加えておくことがより好ましい。

【0016】これら選択成分の添加量は、特に制約はなく、使用感やミノキシジルの安定性あるいは溶剤系組成等を考慮しながら実験的に定めることができる。例えば、特に好ましい選択成分であるメントールは、最終組成物中で0.2~0.4%程度となるように配合することが好ましい。また、

ビタミンEアセテートは0.016~0.15%

、パントテニルエチルエーテルは0.5~1.5%、パンテノールは0.5~1.5%、ヒノキチオールは0.02~0.08%、グリチルレチン酸は0.02~0.15%、塩酸ジフェンヒドラミンは0.02~0.15%、程度となるよう配合することが好ましい。

【0017】本発明の育毛剤組成物においては、上記した成分の他、一般の外用剤に使用される種々の成分、例えば、賦形剤、血管拡張剤(塩化カルプロニウム、ニコチン酸ベンジル、センブリ抽出液、オタネニンジンエキス、トウガラシチンキなど)、抗ヒスタミン剤(塩酸イソチペンジルなど)、抗炎症剤(グアイアズレンなど)・・・

ビタミン類

(酢酸レチノール、アスコルビン酸、硝酸チアミン、シアノコバラミン、ビオチンなど)、

抗酸化剤

(ジブチルヒドロキシトルエン、ピロ亜硫酸ナトリウム、

トコフェロール

、エデト酸ナトリウム、アスコルビン酸、イソプロピルガレートなど)・・・などの通常使用される成分を本発明の効呆を損なわない範囲で配合することができる。

【0018】しかしながら、界面活性剤の添加は、ミノキシジルの皮膚吸収に影響を与え、また使用感を低下させるため、本発明の育毛組成物は実質的に界面活性剤を含まないものとすることが好ましい。

【0019】本発明の育毛組成物の調製は、常法に従い、上記各成分を配合することにより調製される。この場合、育毛組成物のpHは、5.5~9.5程度の範囲とすることが好ましく、特に、弱酸性である5.5~6.5程度の範囲とすることがより望ましい。

【0020】上記のpH調整に当たっては、適当な酸および/または塩基をpH調整剤として使用することができ、そのようなpH調整剤の例としては、クエン酸、塩酸、乳酸、リン酸、酒石酸、グルコン酸等を使用することができる。

【0021】かくして得られる本発明の育毛組成物は、ローション剤・・・などの適当な外用製剤とし、使用することができる以下に実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら制約されるものではない。」

・実施例

「【0022】実施例1

ミノキシジル1.0g、L-メントール0.17g、ビタミンEアセテート0.02g、パントテニルエチルエーテル0.44g、パンテノール0.44g、塩酸ピリドキシン0.02g、ヒノキチオール0.02g、グルチルレチン酸0.02g、塩酸ジフェンヒドラミン0.01g、マクロゴール300 10.0gおよぴエタノール60.0gを混合、撹枠して溶解し、リン酸を適量添加しpHを6.0に調整した後、精製水を加えて100mLとし、ローション剤(本発明品1)を得た。

【0023】

実施例2

実施例1と同様にして、表1

(合議体注:表1~4の誤記と解される。)

に示す本発明品2~30のロ一ション剤を調製した。本発明品は、ふけやかゆみの発生、頭皮のうるおい感、髪の手触りの良さ、頭皮、髪の清潔感、櫛通りの良さ等をパネラーにより試験したところ、優れていた使用感が認められた

(組成)

・・・

【0025】

【表2】

72

151

0001432019000016.jpg

【0026】

【表3】

95

151

0001432019000017.jpg

【0027】

【表4】

92

144

0001432019000018.jpg

・試験例

「【0028】試験例

20~40代の専門パネラー4名により、表5に示した育毛ローションの使用感を官能試験により評価した。評価方法としては、ハーフヘッドによる左右一対比較により実施した。すなわち、頭部の右側は非投与部位とし、左側をローション投与部位として、1日2回 1mLの塗布を3週間行い、1週間後と3週間後に頭髪の状態を表6に示した評価基準に従い評価した。

【0029】

【表5】

56

100

0001432019000019.jpg

【0030】

【表6】

26

106

0001432019000020.jpg

【0031】その結果を表7に示した。実施例の育毛ローションは、比較品のローションに比較し、早い時期から高い効果が認めら、さらに効果が投与期間維持されていることが明らかになった。さらに,選択成分を複数組み合せることにより,これまでにない使用感を得ることが見出された。使用感向上の効果は、3つの要素の全てについてバランス良く選られており、頭髪用剤として総合的に使用感を向上させる効果を有することが判明した。

【0032】

【表7】

26

108

0001432019000021.jpg

イ 甲3に記載された発明

上記アの甲3の記載、特に、請求項1を引用する請求項2に係る発明の具体的態様に相当する実施例2の表4の本発明品25、請求項4に係る発明の具体的態様に相当する実施例2の表2の本発明品10、同表3の本発明品24、同表4の本発明品30のローション剤の組成によれば、甲3には、以下の組成からなる、ローション剤である外用育毛組成物の発明(以下、本発明品10、24、25、30の育毛組成物を、順に、「甲3発明1」~「甲3発明4」といい、これらまとめて「甲3発明」ともいう。)が記載されていると認められる。

・「甲3発明1」

5.0gのミノキシジルと、0.3gのメントールと、0.08gのビタミンEアセテートと、1.0gのパントテニルエチルエーテルと、1.0gのパンテノールと、0.05gの塩酸ピリドキシンと、0.05gのヒノキチオールと、0.1gのグリチルレチン酸と、0.1gの塩酸ジフェンヒドラミンと、10.0gのジプロピレングリコールと、60.0gのエタノールと、適量のリン酸と、適量の水酸化ナトリウムと、精製水(全量100mL)を含み、pH6.5の外用組成物。

・「甲3発明2」

5.0gのミノキシジルと、0.3gのメントールと、0.08gのビタミンEアセテートと、1.0gのパントテニルエチルエーテルと、0.05gの塩酸ピリドキシンと、2.0gのグリセリンと、3.0gのマクロゴール300と、60.0gのエタノールと、適量のクエン酸と、精製水(全量100mL)を含み、pH6.1の外用組成物。

・「甲3発明3」

5.0gのミノキシジルと、0.08gのビタミンEアセテートと、0.05gの塩酸ピリドキシンと、5.0gのグリセリンと、15.0gの1,3-ブチレングリコールと、51.5gのエタノールと、適量の乳酸と、精製水(全量100mL)を含み、pH6.4の外用組成物。

・「甲3発明4」

5.0gのミノキシジルと、0.3gのメントールと、0.08gのビタミンEアセテートと、1.0gのパンテノールと、0.05gの塩酸ピリドキシンと、0.05gのヒノキチオールと、0.1gのグリチルレチン酸と、0.1gの塩酸ジフェンヒドラミンと、5.0gの1,3-ブチレングリコールと、65.0gのエタノールと、適量のクエン酸と、精製水(全量100mL)を含み、pH6.0の外用組成物。

(2)対比

上記2(2)における本件発明と甲2発明との対比を踏まえて本件発明と甲3発明を対比する。

甲3発明において「ビタミンEアセテート」(本件発明の「トコフェロール酢酸エステル」と同義)は、ミノキシジル5.0gに対して0.08g含まれているところ、上記2(2)ア~ウにおいて、各成分の比重に基づいて行った検討と同様の検討によれば、甲3発明の外用組成物中のミノキシジルの濃度は、組成物の全重量100gに対する割合とした場合に、本件発明の「5w/w%以上」を満足するし、また、甲3発明の「ビタミンEアセテート」の濃度は、本件発明の「b)0.01~0.1w/w%のトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステル」との条件も満足する。

さらに、甲3発明は、いずれも、本件発明の「d)30w/w%以上のエタノール」、「e)リン酸、クエン酸、乳酸及び酒石酸よりなる群から選ばれる1種または2種以上の酸」、「pH5.9~7.0」との特定を満足するし、本件発明の条件(1)及び(2)の組成物には該当しない。

さらに、甲3発明の「ジプロピレングリコール」(甲3発明1)、「グリセリン」及び「マクロゴール300」(甲3発明2)、「グリセリン」及び「1,3-ブチレングリコール」(甲3発明3)、あるいは「1,3-ブチレングリコール」(甲3発明4)が、「多価アルコール」に相当するものであることは当業者に自明である。

そうすると、本件発明と甲3発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>

a)5w/w%以上のミノキシジル、

b)0.01~0.1w/w%のトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステル、且つ、ミノキシジル5gに対してトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステルを0.08g、

d)30w/w%以上のエタノール、及び

e)リン酸、クエン酸、乳酸及び酒石酸よりなる群から選ばれる1種または2種以上の酸

を含有し、多価アルコールを含有するpH5.9~7.0の外用組成物

(但し、

(1)ステロイド系抗炎症薬を含む外用組成物、及び

(2)以下の組成の外用組成物

ミノキシジルを3~10重量%を含み、ミノキシジル:プロピレングリコールの重量比が1:3~1:9となるようにプロピレングリコールを含み、かつ組成物のpHが6.5~7.5である外用組成物、

を除く)。

<相違点4>

本件発明は、「c)5~35w/w%のプロピレングリコール」を含有し、多価アルコールとして「プロピレングリコールのみを含有することを特徴とする」ものであるのに対し、甲3発明は、「ジプロピレングリコール」(甲3発明1)、「グリセリン」及び「マクロゴール300」(甲3発明2)、「グリセリン」及び「1,3-ブチレングリコール」(甲3発明3)、あるいは、「1,3-ブチレングリコール」(甲3発明4)を含む点。

(3)判断

ア 相違点4について

上記相違点4について検討する。

(ア) 甲3には、甲3に記載の発明が解決しようとする課題は、現在提供されているミノキシジル製剤よりも、その使用感を高めたミノキシジル含有育毛組成物を提供することであること(【0004】)、甲3に記載のミノキシジル含有外用育毛剤組成物(ミノキシジル製剤)において、多価アルコールが必須成分であることが記載されており(請求項1、4)、ミノキシジル製剤の溶剤として、多価アルコール/エタノール/水の三成分系を選択し、これに特定の化合物を選択、添加配合することにより、高い濃度でミノキシジルを配合した場合においても、安定で、しかも優れた使用感が得られることを見出したこと(【0005】)、育毛組成物に添加、配合される「選択成分」としては、メントール、ビタミンEアセテート、パントテニルエチルエーテル、ヒノキチオール、グリチルレチン酸及び塩酸ジフェンヒドラミンから成る群より選ばれた成分が挙げられること(【0015】)が記載されている。

しかしながら、甲3には、ミノキシジル含有外用育毛剤組成物に含有させる「多価アルコール」に関し、「1,3-ブチレングリコール、グリセリン、ジプロピレングリコール、マクロゴール300、マクロゴール400、マクロゴール600等を使用することができる」(【0013】)と記載されているのみであり、「多価アルコール」として「プロピレングリコール」を採用することを直接示唆する記載はない。

(イ) ここで、外用組成物に配合可能な多価アルコールとしてプロピレングリコールは周知であり(例えば、甲1の【0012】、【0013】、甲5の【0016】、甲7の【0012】、甲8の【0018】)、当業者は、甲3発明の外用育毛組成物含まれる多価アルコールとして「プロピレングリコール」も使用し得ることを認識することはできるといえる。

しかしながら、甲3は、安定で、優れた使用感が得られるミノキシジル含有製剤に関するものであるところ(【0005】)、甲3発明と同様、多価アルコール/エタノール/水の三成分系の溶剤からなり、高い濃度でミノキシジルを含む外用育毛組成物に関する文献である甲1の請求項1には、「ミノキシジルを3~10重量%含み、プロピレングリコールに対するブチレングリコールの重量比(プロピレングリコール:ブチレングリコール)が1:3.5~3.5:1となるようにプロピレングリコール及びブチレングリコールを含む外用組成物」が記載され、【0012】には、「プロピレングリコールとブチレングリコールとを組み合わせて含むことにより、ミノキシジルの結晶析出、及び経時的な組成物の着色が抑制され、かつ使用感の良好な組成物となる」ことが記載されているし、甲1の【実施例】の【0036】【表2】には、多価アルコールとしてプロピレングリコールを含むが、ブチレングリコールを含有しない外用組成物の場合には、経時的な着色が生じ、使用感の点でも問題があるものであったことが具体的な試験結果として示されている(比較例1及び比較例3)。

(ウ) そうすると、甲1の記載も合わせ見た当業者は、現在提供されているミノキシジル製剤よりも使用感を高めたミノキシジル含有育毛組成物を提供することを課題とする甲3発明において、当該課題を解決するためのミノキシジル含有育毛組成物に含まれる多価アルコールとして、甲3には記載のない周知のプロプレングリコールを採用する際には、甲1に記載される、プロピレングリコールに対するブチレングリコールの重量比が1:3.5~3.5:1の混合溶剤を採用することを強く動機付けられるといえ、甲1に使用感や経時的な着色の点で問題があったことが具体的に示されている、プロピレングリコールを単独で採用して、甲3発明を、「c)5~35w/w%のプロピレングリコール」を含有し、「多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含有する」ものとすることは動機付けられない。

(エ) また、申立人が提出した他の証拠を検討しても、甲3発明を、「c)5~35w/w%のプロピレングリコール」を含有し、「多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含有する」ものとすることを当業者に動機付けるような記載や示唆は見当たらない。

(オ) そうすると、甲3発明及び甲1~8に記載の事項に基づいて、甲3発明を、「c)5~35w/w%のプロピレングリコール」を含有し、「多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含有することを特徴とする」ものとして、甲3発明を、相違点4に係る本件発明の構成を備えたものとすることを当業者が容易に想到し得るとはいえない。

イ そして、本件明細書には、上記第5-1の2のアのとおりの記載があり、同2のイ(ア)で指摘したとおり、本件明細書の実施例(【0021】~【0032】)には、トコフェロール酢酸エステル0.08w/w%を含むミノキシジル5w/w%配合製剤であって、多価アルコールとして15w/w%のプロピレングリコールのみを配合した製剤(実施例1)では着色は経時的に進行しなかった(無色)が、多価アルコールとして、プロピレングリコールに換えてグリセリン(比較例1)やポリエチレングリコール400(比較例2)を配合した製剤の場合には、着色が経時的に進行した(微黄色)こと(【0025】)が示されており、多価アルコールとして5~35w/w%のプロピレングリコールのみを含む本件発明の外用組成物は、多価アルコールとしてポリエチレングリコール又はグリセリンを含むミノキシジル含有外用組成物とする場合に生じる製剤の経時的な着色の抑制された、ミノキシジル含有外用組成物を提供できるという、効果を奏するものであり、この効果は、甲1~甲8の記載からは予期できない効果である。

ウ 小括

したがって、本件発明は、甲3発明及び甲1~8に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、取消理由1-3にも理由がない。

第5-3 取消理由2(サポート要件違反)について

サポート要件違反についての取消理由2は、第4の2及び3で記載したとおり、取消理由2A及び取消理由2Bからなるが、以下、まとめて判断する。

1 特許法第36条第6項第1号の考え方について

特許法第36条第6項は、「第二項の特許請求の範囲の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。」と規定し、その第1号において「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。同号は、明細書のいわゆるサポート要件を規定したものであって、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

以下、この観点に立って検討する。

2 本件発明の課題について

上記第5-1の2のアの本件明細書の【0001】及び【0004】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題(以下、単に「本件発明の課題」という。)は、「トコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステルを配合したミノキシジル含有外用組成物において、製剤の経時的な着色を抑制したミノキシジル含有外用組成物を提供すること」であると認められる。

3 本件特許の出願時の技術常識等について

(1)ミノキシジルを含む液剤が経時的な着色を生じやすいことは本件特許の出願時の技術常識であった。

甲1の【0002】及び甲7の【0002】には、「ミノキシジルを含む液剤は、経時的に着色し」と記載されている。甲5の【0003】には、「ミノキシジルを溶液状態で保存すると経時的に着色しやすいという欠点があり」と記載されている。甲8の【0004】には、「ミノキシジルを液剤として使用した場合、経時的に着色しやすい欠点があり」と記載されている。

(2)ミノキシジル含有外用組成物にトコフェロール酢酸エステル(ビタミンEアセテート)を含有させることで、経時的な着色が抑制されることは、本件特許の出願時に既知であった。

甲4には、発毛・育毛のための外用剤(外用組成物)として、従来からミノキシジルやステロイド系抗炎症剤を含有する外用剤が市販されていること、ミノキシジル及びステロイド系抗炎症薬を含有する組成物において、経時的な着色が相乗的に進行することを抑制するために、トコフェロールやトコフェロール酢酸エステル等の脂溶性抗酸化剤を0.01~2w/v%配合することが記載されており、実施例において、トコフェロール酢酸エステルと配合することで着色が抑制されたことを示す結果が記載されている(特許請求の範囲、【0002】~【0010】、【0013】、実施例1、3、5、7、9、11、13等)。

なお、甲4の組成物はステロイド系抗炎症薬を含有するものではあるが、上記(1)のとおり、ミノキシジルを含む液剤自体に経時的な着色の問題があることは技術常識であり、甲4においても、かかる技術常識を踏まえた上で、「ミノキシジル及びステロイド系抗炎症薬を含有する溶液は、保存すると

経時的な着色が相乗的に進行

」(【0005】)する問題を解決したものである。そして、甲4には、トコフェロール酢酸エステル等の脂溶性抗酸化剤を含有する組成物とすることで、ステロイド系抗炎症薬を併用することで相乗的に生じたミノキシジルの着色が、トコフェロール酢酸エステル等の脂溶性抗酸化剤を含有する組成物とすることで抑制された結果が記載されているところ、当該記載から、当業者は、トコフェロール酢酸エステル等の脂溶性抗酸化剤は、ステロイド系抗炎症薬を併用することで相乗的に生じたミノキシジルの経時的な着色の抑制のみならず、ステロイド系抗炎症薬が存在しない場合に生じるミノキシジルの経時的な着色の抑制にも有用であると理解すると解される。

(3)多価アルコールとしてプロピレングリコールを配合したミノキシジル含有液剤であっても、多価アルコールとして他の多価アルコール(ジプロピレングリコール、グリセリン)を含む場合には、ミノキシジル含有液剤の経時的な着色が生じてくる場合があることは、本件特許の出願時に既知であった。(甲1の比較例1、3)

(4)多価アルコールとして

プロピレングリコールのみを配合

したミノキシジル含有液剤(外用組成物)であっても、

ミノキシジルとプロピレングリコールとの重量比、pH、酸の種類

によっては、ミノキシジル含有液剤の経時的な着色が生じてくる場合があることが本件特許の出願時に既知であった。

ア ミノキシジルとプロピレングリコールの重量比が1:3~1:9を充足しない場合やpHが6.5~7.5を外れる場合に、ミノキシジル含有液剤の経時的な着色が生じてくる場合があることが本件特許の出願時に既知であった。

(ア) 甲7は、ミノキシジルの結晶析出、経時的な着色が抑制された使用感に優れたミノキシジル配合外用組成物に関するものであるが(【0006】)、実施例の表1、2に以下の記載がある。

「【0032】

【表1】

64

144

0001432019000022.jpg

表1が示すように、

ミノキシジル1重量部に対して、プロピレングリコールの含有量が3重量部未満の場合、組成物のpHにかかわらず

、結晶析出又は

経時的な着色が認められた

【0033】

【表2】

66

145

0001432019000023.jpg

表2が示すように、

ミノキシジル1重量部に対して、プロピレングリコールの含有量が3重量部の場合、組成物のpHが6.5~7.5の範囲で

、低温での結晶析出及び

経時的な着色の両方が抑制された

。これに対して、

組成物のpHが6.5未満の場合、熱により着色が認められ

、pHが7.5を超える場合、低温で結晶析出が認められた。」

なお、上記の表における各成分の含有量の単位は重量%である(【0031】)。また、熱安定性の評価は、各組成物を40°Cの恒温器で約2か月静置した後、目視で黄色の着色の程度を観察することにより行われており、着色が認められない場合を-、僅かな着色が認められた場合を+、着色がより強く認められるごとに、+の数を増やして表示されている(【0029】)。

さらに、甲7に記載された比較例1、2、6、実施例1の組成物は、トコフェロール酢酸エステルを配合していること以外、組成(ミノキシジルの含有割合、エタノールの含有割合、所定の酸の存在、pH範囲)が、本件発明の組成物と共通している(但し、実施例1の組成物は条件(2)で除かれている。)。

(イ) 上記(ア)の表1の比較例1、2の試験結果及び表の説明の記載によれば、多価アルコーとしてプロピレングリコールのみを配合したミノキシジル含有外用組成物であっても、ミノキシジルとプロピレングリコールとの重量比が1:3~1:9を充足しない場合には、ミノキシジル含有液剤の経時着色が生じてくる場合があることが本件特許の出願時に既知であったことが理解できる。

(ウ) 上記(ア)の表2の比較例6と実施例1の比較によれば、ミノキシジルとプロピレングリコールとの重量比が1:3~1:9を充足する場合であっても、組成物のpHが6.5未満の場合には、40°Cで保存した場合には、着色が生じてくる場合があることが本件特許の出願時に既知であったことが理解できる。

イ 酸の種類の違いによりミノキシジル含有液剤の経時的な着色が生じてくる場合があることが本件特許の出願時に既知であった。

(ア) 甲8は、ミノキシジルと塩化カルプロニウム又はその水和物を含有する液剤の経時的着色及び結晶の析出が抑制された、保存安定性が改善されたミノキシジル含有液剤に関するものであるが(【0008】)、実施例に以下の記載がある。

「【実施例】

【0023】

実施例1

ミノキシジル5g、塩化カルプロニウム2g、1,3-ブチレングリコール10g、ジブチルヒドロキシトルエン0.2g及びエタノール60gを混合し、

リン酸

を適量添加しpHを6に調整した後、精製水を加えて100mLとし、液剤を得た。

【0024】

比較例1

ミノキシジル5g、塩化カルプロニウム2g、1,3-ブチレングリコール10g及びエタノール60gを混合し、リン酸を適量添加しpHを6に調整した後、精製水を加えて100mLとし、液剤を得た。

【0025】

比較例2

ミノキシジル5g、塩化カルプロニウム2g、1,3-ブチレングリコール10g、ジブチルヒドロキシトルエン0.2g及びエタノール60gを混合し、

塩酸

を適量添加しpHを6に調整した後、精製水を加えて100mLとし、液剤を得た。

【0026】

試験例1

実施例1、比較例1~2の液剤を使用し、これをプラスチック製容器に充填してサンプルとした。このサンプルを50°Cにて2箇月間静置後、外観の確認及び波長420nmにてその吸光度を測定した。結果を表1に示した。

・・・

【0028】

【表1】

29

119

0001432019000024.jpg

【0029】

【表2】

33

107

0001432019000025.jpg

【0030】

表2から明らかなように、液剤に対して5w/v%以上のミノキシジルと塩化カルプロニウム、及びジブチルヒドロキシトルエンを配合した処方に対して、塩酸を配合した処方では結晶の析出が見られるが、リン酸を使用することで結晶の析出を防止することができた。また表1から明らかなように、

ジブチルヒドロキシトルエンを配合しないと液剤が経時的に着色してしまうが、ジブチルヒドロキシトルエンの配合量を一定にした場合には、塩酸を配合するより、リン酸を配合する方が、液剤の経時的着色を抑える効果が大きいことがわかった

。」

(イ)上記(ア)の表1の実施例1と比較例2は、いずれも、ミノキシジルと塩化カルプロニウム又はその水和物の他に、ミノキシジルを含有する液剤の経時着色を改善することが知られている成分であるジブチルヒドロキシトルエンを含むものであり、含有されている酸の種類がリン酸か塩酸かの違いのみであるが、酸が塩酸の場合(比較例2)には、リン酸の場合(実施例1)とは異なり、50°Cで2箇月間保存した場合に経時着色が生じてくることが示されている。

4 取消理由2A及び2Bについて

(1)取消理由2A及び2Bの概要

取消理由2(サポート要件違反)の概略は、上記第4の2(2)及び同3(2)に記載したとおりであり、上記3で指摘した本件特許の出願時の技術常識及び既知の知見の存在を前提として、以下の取消理由2A及び2Bが指摘されていた。

(再掲)

・取消理由2A

発明の詳細な説明には、トコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステルを配合したミノキシジル含有外用組成物に、経時的な着色が生じるという問題があったことは示されておらず、当業者は、発明の詳細な説明の記載から、本件発明の課題が存在すること自体を認識できないから、そのような発明の詳細な説明の記載に基づいて、請求項1に係る発明について、サポート要件を満足するものであるとはいえない。

・取消理由2B

当業者は、発明の詳細な説明の記載からは、本件実施例1に記載される特定の組成からなるミノキシジル含有外用組成物の場合には本件発明の課題を解決できることが理解できるものの、(i)本件発明の組成物が、プロピレングリコール以外に、ジプロピレングリコールやグリセリンを含む場合、(ii)ミノキシジルとプロピレングリコールの重量比が1:3~1:9を充足しない場合、(iii)組成物のpHが6.5未満の場合、(iv)組成物に含まれる酸がリン酸以外の酸である場合を含む本件発明全体についてまで、本件発明の課題を解決できることは理解できない。

(なお、取消理由2A及び取消理由2Bは、それぞれ、サポート要件に違反しているとする具体的な理由として、トコフェロール酢酸エステル等によりミノキシジル含有外用組成物の着色が進行するという課題が存在しない点(申立理由2A)、及び、請求項1に係る発明は、課題を解決できるものとは認識しえない様々な態様を包含する点(申立理由2B)を指摘する申立理由2と同旨である。)

以下、取消理由2A及び取消理由2Bを含め、取消理由2について、まとめて判断する。

(2)サポート要件についての判断

ア(ア) 本件明細書の発明の詳細な説明には、上記第5-1の2(1)アで指摘した記載があるところ、上記2で記載したとおり、本件発明は、「トコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステルを配合したミノキシジル含有外用組成物において、製剤の着色を抑制したミノキシジル含有外用組成物を提供すること」を課題としてなされた発明である(【0004】)。

(イ) そして、上記課題の解決手段に関し、発明の詳細な説明には、本件発明が「特定の多価アルコールを選択することにより、経時的な製剤の着色を抑制したミノキシジル含有外用組成物が製造できることを見出したことによりなされた発明であることが記載され(【0005】)、実施例(【0021】~【0032】)には、ミノキシジルを5w/w%、トコフェロール酢酸エステルを0.08w/w%、多価アルコールを15w/w%を含み、全体で100gとなるようにエタノールを含む、リン酸適量でpHを6.1に調整された、多価アルコールの種類を除いて組成が一致しているミノキシジル含有製剤(外用組成物)の場合に、多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを配合した製剤(実施例1)では着色は経時的に進行しなかった(無色)が、多価アルコールとして、グリセリン(比較例1)やポリエチレングリコール400(比較例2)を配合した製剤の場合には、着色が経時的に進行した(微黄色)ことが示されている。

(ウ) そうすると、発明の詳細な説明の記載から、当業者は、ミノキシジルを5w/w%、トコフェロール酢酸エステルを0.08w/w%含む含水エタノール溶液であるミノキシジル含有製剤であって、多価アルコールを含有する製剤の経時的な着色には、製剤中に含まれる多価アルコールが関係しており、多価アルコールがグリセリンやポリエチレングリコールの場合には経時的な着色が起きるという問題が生じるが、ミノキシジル含有製剤に含まれる多価アルコールが5~35w/w%のプロピレングリコールのみの場合には、多価アルコールがグリセリン等である場合に生じる経時的な着色は起こらないと認識するといえる。

イ また、実施例2において、類似した組成の、pHが5.9の製剤でも同様に経時的な着色が起こらなかったとの結果が示されていること、【0032】に、トコフェロール酢酸エステル及びプロピレングリコールの配合割合は本件発明の特定範囲を外れる例ではあるが、ミノキシジルを5w/w%、トコフェロール酢酸エステルを0.02w/w%、エタノールを30w/w%又は40w/w%、適量のリン酸、製剤全量が100gとなる量の精製水を含む製剤であって、多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含むものにおいて、エタノールが30w/w%以上の場合(実施例3、4)には、経時的な着色は進行せず無色のままであったことが示されていることからすれば、発明の詳細な説明の記載から、当業者は、プロピレングリコールやエタノールの配合割合や、pHの違いにより、経時的な着色の程度に多少の違いが生じる可能性はあるにせよ、本件発明の、

「a) 5w/w%以上のミノキシジル、

b)0.01~0.1w/w%のトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステル、 且つ、ミノキシジル5gに対してトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステルを0.08g、

c)5~35w/w%のプロピレングリコール、

d)30w/w%以上の エタノール、及び

e)リン酸、クエン酸、乳酸及び酒石酸よりなる群から選ばれる1種または2種以上の酸

を含有し、多価アルコールとしてプロピレングリコールのみを含有することを特徴とするpH5.9~7.0の外用組成物」

であれば、少なくとも、多価アルコールとしてグリセリンやポリエチレングリコールが含まれている場合に観察されるような経時的な着色は起こらず、「トコフェロール及び/又はその誘導体を配合したミノキシジル含有外用組成物において、製剤の経時的な着色を抑制したミノキシジル含有外用組成物を提供する」という本件発明の課題を解決できることを認識できるといえる。

ウ(ア) ここで、ミノキシジル含有液剤の経時的な着色に関し、上記3の(3)、(4)に記載した知見について検討すると、まず、上記3の(3)の知見については、甲1の比較例1、3によれば、多価アルコールとしてプロピレングリコールを配合したミノキシジル含有液剤であっても、ジプロピレングリコールやグリセリンを含む場合には、ミノキシジル含有液剤の着色が生じてくる場合があることは既知であったが、本件発明は、多価アルコールとして5~35w/w%のプロピレングリコールのみを配合するものであるから、甲1に示される知見から、本件発明により本件発明の課題が解決できないと当業者が認識するとはいえない。

また、本件発明の組成物は、「b)0.01~0.1w/w%のトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステル、 且つ、ミノキシジル5gに対してトコフェロール及び/又はトコフェロール酢酸エステルを0.08g」(以下「所定量のb)成分」という。)」を含むものであり、上記3の(2)で記載したとおり、b)成分は、ミノキシジル含有外用組成物の経時的な着色を抑制する作用が期待できるトコフェロール酢酸エステル(ビタミンEアセテート)等の脂溶性抗酸化剤に相当するものであるから、その点からも、甲1に示される知見から、本件発明により本件発明の課題が解決できないと当業者が認識するとはいえない。

(イ) 上記3の(4)の知見について検討すると、ミノキシジルとプロピレングリコールの重量比が1:3~1:9を充足しない場合やpHが6.5~7.5を外れる場合に、ミノキシジル含有液剤の経時的な着色が生じてくる場合があることが本件特許の出願時に既知であった根拠として示される甲7の表1、2に記載の組成物には、本件発明の「所定量のb)成分」は含まれていないところ、上記(ア)で記載したとおり、b)成分は、ミノキシジル含有外用組成物の経時的な着色を抑制する作用が期待できるものであるし、本件明細書の発明の詳細な説明には、pHが6.5~7.5を外れるpH5.9のミノキシジル含有製剤(実施例2)であっても、経時的な着色が生じてこなかったことが具体的に示されている。

そうすると、甲7に示される知見から、本件発明により本件発明の課題が解決できないと当業者が認識するとはいえない。

(ウ) 次に、酸の種類の違いによりミノキシジル含有液剤の経時的な着色が生じてくる場合があることが本件特許の出願時に既知であった根拠として示される甲8について検討すると、甲8の実施例及び比較例の液剤には、ミノキシジルに加えて塩化カルプロニウムも含まれているところ、甲8の【0030】に「表2から明らかなように、液剤に対して5w/v%以上のミノキシジルと塩化カルプロニウム、及びジブチルヒドロキシトルエンを配合した処方に対して、塩酸を配合した処方では結晶の析出が見られるが、リン酸を使用することで結晶の析出を防止することができた。」とあることからすると、甲8で確認されている現象は、「塩化カルプロニウム」を含有する場合に特有の現象であると解し得、「塩化カルプロニウム」を含有する液剤の場合には、これを溶解し得るリン酸が特に好適であるといえるが、「塩化カルプロニウム」を含有しない液剤の場合にも酸の種類の影響が大きいとまではいえない。また、同段落には、「ジブチルヒドロキシトルエンを配合しないと液剤が経時的に着色してしまうが、ジブチルヒドロキシトルエンの配合量を一定にした場合には、塩酸を配合するより、リン酸を配合する方が、液剤の経時的着色を抑える効果が大きいことがわかった。」との記載もあり、酸の違いにより液剤の経時的着色を抑える効果に程度の違いは生じるにせよ、「抗酸化剤」であるジブチルヒドロキシトルエンによりミノキシジルを含有する液剤の経時的着色が抑制できたことが示されている。

加えて、本件明細書の発明の詳細な説明の記載から、当業者は、ミノキシジルを5w/w%、トコフェロール酢酸エステルを0.08w/w%含む含水エタノール溶液であるミノキシジル含有製剤であって、多価アルコールを含有する製剤の経時的な着色には、製剤中に含まれる多価アルコールが関係しており、多価アルコールがグリセリン等の場合に生じる経時的な着色の問題が、多価アルコールがプロピレングリコールのみの場合には、生じないと認識するといえる。

そうすると、ミノキシジル含有外用組成物の経時的な着色を抑制する作用が期待できる成分であるトコフェロール酢酸エステル等の脂溶性抗酸化剤を「b)成分」として含有し、かつ多価アルコールとして所定量のプロピレングリコールのみを含有する本件発明の組成物の場合に、酸の種類の違いで着色の抑制効果の程度に多少の差が生じる可能性があるとしても、少なくとも、多価アルコールとしてグリセリン等を含有する製剤で生じる経時的な着色よりは、着色が抑制されると認識できるから、甲8に示される知見を参酌しても、本件発明により本件発明の課題が解決できないと当業者が認識するとまではいえない。

エ 以上のとおり、上記3の(3)、(4)に記載した知見が本件特許の出願時に既知であることを考慮した場合であっても、当業者は、発明の詳細な説明の記載から、本件発明のミノキシジル含有外用組成物により、組成物がミノキシジルとプロピレングリコールの重量比が1:3~1:9を充足しない場合、pHが6.5未満の場合、酸がリン酸以外の酸である場合を含め、本件発明全体について、本件発明の課題を解決できることを認識できるといえる。

オ 小括

したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであるといえ、本件発明について、特許請求の範囲の記載はサポート要件を満足するといえる。

よって、取消理由2(取消理由2A、取消理由2B)には理由がない、

第5-4 先の取消理由における取消理由3(申立理由3Bと同旨)について

・先の取消理由における取消理由3(明確性要件違反)は、設定登録時の請求項1に、

「(但し、

(1)・・・(略)・・・、及び

(2)以下の組成の外用組成物

・・・(略)・・・である外用組成物、

を除く)

。」

と記載されているのに、上記で下線を引いた閉じ右かぎ括弧"」"に対応する左かぎ括弧 "「"がない点で、請求項1の記載には不備があるというものであるが、本件訂正により、本来不要であることが明らかであった上記の閉じ右かぎ括弧"」"の誤記が削除され、上記の記載不備は解消しているから、本件発明は明確である。

よって、取消理由3には理由がない。

第6 取消理由(決定の予告)及び先の取消理由で採用しなかった申立理由について

ア 取消理由(決定の予告)及び先の取消理由で採用しなかった申立理由は申立理由3A(明確性要件違反)のみであり、申立理由3Aは、上記第4の1で記載したとおり、請求項1の「ステロイド系抗炎症薬」の外延が不明である点で請求項1に係る発明が不明確というものである。

イ しかしながら、「ステロイド系抗炎症薬」が、ステロイド骨格を有する副腎皮質ホルモンのうち糖質コルチコステロイドを医薬品としたものであることは当業者の技術常識であり(「南山堂 医学大事典、2006年5月10日、19版2刷、株式会社南山堂、p.1330の「ステロイド系抗炎症薬」の項目の頁」参照。)、「ステロイド系抗炎症薬」の外延は明確であるといえる。

したがって、申立理由3Aには理由がない。

第7 むすび

以上のとおりであるから、令和7年3月31日付けで通知した取消理由(決定の予告)に記載した取消理由、先の取消理由、及び特許異議申立書に記載した申立理由には、理由がなく、これらの理由によって本件訂正後の請求項1についての特許を取り消すことはできない。

また、他に本件訂正後の請求項1についての特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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