sokuhyo

Trademark Appeal Case

特許訂正の可否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024700862
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7462724号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7462724号の請求項1、5及び6に係る特許を維持する。
特許第7462724号の請求項2~4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7462724号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願(特願2022-199885号)は、2018年(平成30年)11月29日(優先権主張 平成29年12月6日)を国際出願日とする特願2019-558172号の一部を令和4年12月15日に新たな特許出願としたものであって、令和6年3月28日にその特許権の設定登録がされ、令和6年4月5日に特許掲載公報が発行された。

本件特許について、特許掲載公報発行の日から6月以内である令和6年9月10日に特許異議申立人 竹口 美穂(以下「異議申立人」という。)から全請求項に対して特許異議の申立てがされた。その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和7年 2月 3日付け:取消理由通知書

令和7年 4月 3日 :意見書、訂正請求書の提出(特許権者)

(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。)

令和7年 5月21日 :意見書の提出(異議申立人)

第2 本件訂正請求について

1 訂正の趣旨及び訂正の内容

(1) 訂正の趣旨

本件訂正請求の趣旨は、「特許第7462724号の特許請求の範囲を本請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」というものである。

(2) 訂正の内容

本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は当合議体が付したものであり、訂正箇所を示す。

ア 訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に、「(A)光カチオン重合開始剤および(B)エポキシ化合物を含むネガ型レジスト用感光性樹脂組成物であって、

該(A)光カチオン重合開始剤(A)が、下記式(1)

【化1】

42

80

0001432042000001.jpg

(式(1)中、R

1

乃至R

4

はそれぞれ独立に炭素数1乃至18のアルキル基又は炭素数6乃至14のアリール基を表す。但し、R

1

乃至R

4

の少なくとも一つは炭素数6乃至14のアリール基を表す。)

で表されるアニオンとカチオンからなる塩を含有し、かつ

該(B)エポキシ化合物が、

・・・(略)・・・

下記式(13)

【化11】

47

89

0001432042000002.jpg

(式(13)中、qは平均繰り返し数であって0乃至5の範囲にある実数を表す。)

で表されるエポキシ化合物(b-7)、

・・・(略)・・・

からなる群より選択される1種類又は2種類以上のエポキシ化合物を含有する、ネガ型レジスト用感光性樹脂組成物。」とあるのを、

「(A)光カチオン重合開始剤および(B)エポキシ化合物を含むネガ型レジスト用感光性樹脂組成物であって、

該(A)光カチオン重合開始剤(A)が、下記式(1)

【化1】

42

80

0001432042000003.jpg

(式(1)中、R

1

乃至R

4

はそれぞれ独立に

ペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基

を表す。)

で表されるアニオンと

、スルホニウムイオンまたはヨードニウムイオンである

カチオンからなる塩を含有し、かつ

該(B)エポキシ化合物が、

・・・(略)・・・

下記式(13)

【化11】

47

89

0001432042000004.jpg

(式(13)中、qは平均繰り返し数であって

1

乃至5の範囲にある実数を表す。)

で表されるエポキシ化合物(b-7)、

・・・(略)・・・

で表されるエポキシ化合物(b-10)からなる群より選択される1種類又は2種類以上のエポキシ化合物

からなり、

(A)光カチオン重合開始剤の含有量は、(B)エポキシ化合物の含有量に対して0.1乃至10質量%である

、ネガ型レジスト用感光性樹脂組成物。」に訂正する。

イ 訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する訂正を行う。

ウ 訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3を削除する訂正を行う。

エ 訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4を削除する訂正を行う。

オ 訂正事項5

特許請求の範囲の請求項5に「請求項1乃至4のいずれか一項に記載のネガ型レジスト用感光性樹脂組成物を基材で挟み込んで得られるドライフィルムレジスト。」とあるのを、「請求項

1

に記載のネガ型レジスト用感光性樹脂組成物を基材で挟み込んで得られるドライフィルムレジスト。」に訂正する。

カ 訂正事項6

特許請求の範囲の請求項6に「請求項1乃至4のいずれか一項に記載のネガ型レジスト用感光性樹脂組成物又は請求項5に記載のドライフィルムレジストの硬化物。」とあるのを、「請求項

1

に記載のネガ型レジスト用感光性樹脂組成物又は請求項5に記載のドライフィルムレジストの硬化物。」に訂正する。

(3) 一群の請求項について

訂正前の請求項1~6について、請求項2~6はそれぞれ請求項1を直接又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、訂正前の請求項1~6に対応する訂正後の請求項1~6は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 訂正の適否

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的の適否

訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1の「式(1)」における「R

1

乃至R

4

」を、「それぞれ独立に炭素数1乃至18のアルキル基又は炭素数6乃至14のアリール基(R

1

乃至R

4

の少なくとも一つは炭素数6乃至14のアリール基)」から「それぞれ独立にペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基」に限定するものである。

また、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1の「カチオン」を「スルホニウムイオンまたはヨードニウムイオン」に限定するものである。

加えて、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1の「式(13)」における「q」を、「0乃至5」から「1乃至5」に限定するものである。

さらに、訂正事項1に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項1の「(A)光カチオン重合開始剤の含有量」を、「(B)エポキシ化合物の含有量に対して0.1乃至10質量%」に限定するものである。

したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。

請求項1の記載を引用して特定する請求項5及び6についても、同様である。

イ 新規事項の有無

本件特許の明細書の段落【0025】及び【0027】には、「式(1)」における「R

1

乃至R

4

」が「それぞれ独立にペンタフルオロフェニル基」である「アニオン」が記載されているから、訂正事項1のうち、「式(1)」中の、「R

1

乃至R

4

」が、「それぞれ独立にペンタフルオロフェニル基」であることは、本件特許の明細書に記載された事項である。また、本件特許の明細書の段落【0026】には、「式(1)」における「R

1

乃至R

4

」が「それぞれ独立に」「ビス(トリフルオロメチル)フェニル基」である「アニオン」が記載されているから、訂正事項1のうち、「式(1)」中の、「R

1

乃至R

4

」が、「それぞれ独立に」「ビス(トリフルオロメチル)フェニル基」であることは、本件特許の明細書に記載された事項である。

加えて、本件特許の明細書の段落【0025】には、「カチオン」として、「

39

60

0001432042000005.jpg

」、段落【0027】には、「

15

37

0001432042000006.jpg

」が例示されているから、訂正事項1のうち、「カチオン」が「スルホニウムイオンまたはヨードニウムイオンである」ことは、本件特許の明細書に記載された事項である。

さらに、本件特許の明細書の段落【0007】には、「式(13)中、qは平均繰り返し数であって0乃至5の範囲にある実数を表す。」と記載され、段落【0060】及び【0061】には、実施例11として、「(B-8):商品名 EPPN-502H(式(13)で表されるエポキシ化合物(b-7)、qは

1

、エポキシ当量170g/eq.、日本化薬社製)」を使用することが記載されているから、訂正事項1のうち、「式(13)中、qは平均繰り返し数であって1乃至5の範囲にある実数を表す」ことは、本件特許の明細書に記載された事項である。

なお、申立人は意見書において、「本件特許明細書には、qの平均繰り返し数につき「「1乃至5」の範囲の実数」という、数値範囲としての発明特定事項は記載されていない」(7ページ)と主張しているが、上記のとおり、本件特許の明細書の段落【0060】及び【0061】には、実施例11として、qが1である、「(B-8):商品名 EPPN-502H(式(13)で表されるエポキシ化合物(b-7))」を使用することが記載されているから、本件特許明細書に、qの平均繰り返し数につき「「1乃至5」の範囲の実数」という、数値範囲としての発明特定事項が記載されているといえる。

また、本件明細書の段落【0028】には、「本発明の感光性樹脂組成物における(A)光カチオン重合開始剤の含有量は、(B)エポキシ化合物の含有量に対して好ましくは0.05乃至15質量%、より好ましくは0.07乃至

10

質量%、更に好ましくは

0.1

乃至8質量%、最も好ましくは0.5乃至5質量%である。」と記載されているから、訂正事項1のうち、「(A)光カチオン重合開始剤の含有量」を、「(B)エポキシ化合物の含有量に対して0.1乃至10質量%」とすることは、本件特許の明細書に記載された事項である。

したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものである。

請求項1の記載を直接または間接的に引用して特定する請求項5及び6についても、同様である。

ウ 特許請求の範囲の拡張、変更の存否

訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しないことが明らかである。よって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合する。

請求項1の記載を引用して特定する請求項5及び6についても、同様である。

(2) 訂正事項2~4について

訂正事項2~訂正事項4に係る訂正は、特許請求の範囲から請求項2~4を削除する訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、訂正事項2~訂正事項4に係る訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、明らかである。

(3) 訂正事項5及び6について

訂正事項5による訂正は、訂正事項2~訂正事項4に係る訂正により請求項2~請求項4が削除されたことに伴い、訂正後の請求項5が、削除された請求項2~請求項4を引用する記載となることを回避する訂正である。

そうしてみると,訂正事項5に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書3号に掲げる事項(明瞭でない記載の釈明)を目的とする訂正に該当する。

また、訂正事項5に係る訂正が、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであること、及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは、明らかである。

訂正事項6についても同様である。

(4) むすび

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法120条の5第2項ただし書、同法同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するので、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明

上記「第2」のとおり、本件訂正請求による訂正は認められるので、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ、「本件特許発明1」などといい、これらの発明を総称して「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のものである。

「【請求項1】

(A)光カチオン重合開始剤および(B)エポキシ化合物を含むネガ型レジスト用感光性樹脂組成物であって、

該(A)光カチオン重合開始剤(A)が、下記式(1)

【化1】

42

80

0001432042000007.jpg

(式(1)中、R

1

乃至R

4

はそれぞれ独立にペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基を表す。)

で表されるアニオンと、スルホニウムイオンまたはヨードニウムイオンであるカチオンからなる塩を含有し、かつ

該(B)エポキシ化合物が、

下記式(4)

【化4】

47

145

0001432042000008.jpg

(式(4)中、R

8

はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。nは平均繰り返し数であって0乃至30の範囲にある実数を表す。)

で表されるエポキシ化合物(b-3)、

下記式(5)乃至(7)

【化5】

47

145

0001432042000009.jpg

【化6】

123

145

0001432042000010.jpg

(式(6)中、R

9

はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を表す。)

【化7-1】

85

145

0001432042000011.jpg

【化7-2】

77

145

0001432042000012.jpg

(式(7)中、R

10

はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を表す。)

で表されるエポキシ化合物の群より選択される一種以上のエポキシ化合物(b-4)、

下記式(8)及び/又は式(9)

【化8】

45

145

0001432042000013.jpg

で示される化合物と、

下記式(10)及び/又は式(11)

【化9】

51

145

0001432042000014.jpg

で示される化合物との共縮合物であるエポキシ化合物(b-5)、

下記式(13)

【化11】

50

87

0001432042000015.jpg

(式(13)中、qは平均繰り返し数であって1乃至5の範囲にある実数を表す。)

で表されるエポキシ化合物(b-7)、

下記式(15)

【化13】

61

145

0001432042000016.jpg

(式(15)中、R

13

はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。sは平均繰り返し数であって0乃至30の範囲にある実数を表す。)

で表されるエポキシ化合物(b-9)、及び

下記式(16)

【化14】

74

145

0001432042000017.jpg

(式(16)中、t、u及びvは平均繰り返し数であって2≦t+u+v≦60の関係を満たす実数をそれぞれ表す。)

で表されるエポキシ化合物(b-10)からなる群より選択される1種類又は2種類以上のエポキシ化合物からなり、

(A)光カチオン重合開始剤の含有量は、(B)エポキシ化合物の含有量に対して0.1乃至10質量%である、ネガ型レジスト用感光性樹脂組成物。

【請求項2】(削除)

【請求項3】(削除)

【請求項4】(削除)

【請求項5】

請求項1に記載のネガ型レジスト用感光性樹脂組成物を基材で狭み込んで得られるドライフィルムレジスト。

【請求項6】

請求項1に記載のネガ型レジスト用感光性樹脂組成物又は請求項5に記載のドライフィルムレジストの硬化物。

第4 申立ての理由及び証拠方法

1 申立ての理由の概要

(1) 甲第1号証を主引例とする進歩性欠如

本件訂正前特許発明1~6は、甲第1号証を主引例として、甲第2号証及び甲第3号証を組み合わせることにより進歩性がない。

(2) 甲第4号証を主引例とする進歩性欠如

本件訂正前特許発明1~6は、甲第4号証を主引例として、甲第2号証及び甲第3号証を組み合わせることにより進歩性がない。

(3) 甲第2号証又は甲第3号証を主引例とする進歩性欠如

本件訂正前特許発明1~6は、甲第2号証又は甲第3号証を主引例として、甲第1号証又は甲第4号証を組み合わせることにより進歩性がない。

(4) サポート要件違反

本件訂正前特許発明1~6は、発明の詳細な説明に記載されていない。

2 証拠方法

当事者が提出した証拠方法は、次のとおりである。

(1) 異議申立人が提出した証拠方法

甲第1号証:国際公開第02/08309号(以下、「甲1」という。)

甲第2号証:特開2010-32991号公報(以下、「甲2」という。)

甲第3号証:特開2014-85626号公報(以下、「甲3」という。)

甲第4号証:特開2017-48325号公報(以下、「甲4」という。)

甲第5号証:仲島厚志ら、「硬化性と熱安定性に優れる光カチオン重合開始剤の設計」、KONICA MINOLTA TECHNOLOGY REPORT、Vol.3、2006年、p.76-79

甲第6号証 :サンアプロ株式会社のウェブページ「技術情報」:https://www.san-apro.co.jp/tech/acid-uv/

(2) 特許権者が提出した証拠方法

乙第1号証:特許第6205522号公報

乙第2号証:特許第5020646号公報

乙第3号証:国際公開第2005/116038号

乙第4号証:サンアプロ株式会社のウェブページ「製品情報」:https://www.san-apro.co.jp/products/acid-uv/

乙第5号証:松本幸三他、「エポキシドの開環重合における各種スルホニウム塩の熱潜在性カチオン重合開始剤としての特性」、ネットワークポリマー、Vol.33 No.6(2012)

第5 取消理由の概要

令和7年2月3日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由は、概略、以下のとおりである。

理由1:(同日出願 特許法120条の2に基づく職権による取消理由)特許第7462724号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る発明は、本件特許と同日の出願である特願2019-558172号(特許第7241695号)(以下「同日出願」という。)の請求項1~6に係る発明と同一であり、かつ、同日出願の請求項1~6に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、特許法39条2項の規定に違反してされたものである。

理由2:(進歩性)本件特許の請求項1~6に係る発明は、本件特許の優先権主張の基礎とされた出願(以下「先の出願」という。)の出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲1に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項1~6に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。

したがって、本件特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。

理由3:(サポート要件)本件特許の請求項1~6に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものである。

したがって、本件特許は、特許法113条4号に該当し、取り消されるべきである。

第6 取消理由についての当合議体の判断

令和7年2月3日付け取消理由通知書により特許権者に通知した取消理由についての当合議体の判断は、以下のとおりである。

1 理由1(同日出願 特許法120条の2に基づく職権による取消理由)について

(1)同日出願発明

同日出願の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれを「同日出願発明1」~「同日出願発明6」という。)は、令和6年3月28日提出の訂正請求書により訂正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項によって特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】

(A)光カチオン重合開始剤および(B)エポキシ化合物を含む感光性樹脂組成物であって、

該(A)光カチオン重合開始剤(A)が、下記式(1)

【化1】

28

144

0001432042000018.jpg

(式(1)中、R

1

乃至R

4

はそれぞれ独立に炭素数1乃至18のアルキル基又は炭素数6乃至14のアリール基を表す。但し、R

1

乃至R

4

の少なくとも一つは炭素数6乃至14のアリール基を表す。)

で表されるアニオンとカチオンからなる塩を含有し、かつ

該(B)エポキシ化合物が、

下記式(4)

【化4】

39

144

0001432042000019.jpg

(式(4)中、R

8

はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。

nは平均繰り返し数であって0乃至30の範囲にある実数を表す。)

で表されるエポキシ化合物(b-3)、

下記式(5)乃至(7)

【化5】

38

144

0001432042000020.jpg

【化6】

71

144

0001432042000021.jpg

(式(6)中、R

9

はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を表す。)

【化7-1】

63

144

0001432042000022.jpg

【化7-2】

55

144

0001432042000023.jpg

(式(7)中、R

10

はそれぞれ独立に水素原子又はグリシジル基を表す。)

で表されるエポキシ化合物の群より選択される一種以上のエポキシ化合物(b-4)、

下記式(8)及び/又は式(9)

【化8】

30

144

0001432042000024.jpg

で示される化合物と、

下記式(10)及び/又は式(11)

【化9】

33

144

0001432042000025.jpg

で示される化合物との共縮合物であるエポキシ化合物(b-5)、

下記式(13)

【化11】

51

144

0001432042000026.jpg

(式(13)中、qは平均繰り返し数であって1乃至5の範囲にある実数を表す。)

で表されるエポキシ化合物(b-7)、

下記式(15)

【化13】

42

144

0001432042000027.jpg

(式(15)中、R

13

はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1乃至4のアルキル基を表す。sは平均繰り返し数であって0乃至30の範囲にある実数を表す。)

で表されるエポキシ化合物(b-9)、及び

下記式(16)

【化14】

56

144

0001432042000028.jpg

(式(16)中、t、u及びvは平均繰り返し数であって2≦t+u+v≦60の関係を満たす実数をそれぞれ表す。)

で表されるエポキシ化合物(b-10)からなる群より選択される1種類又は2種類以上のエポキシ化合物を含有する、感光性樹脂組成物。

【請求項2】

R

1

乃至R

4

がそれぞれ独立にパーフルオロアルキル基を置換基として有するフェニル基又はフッ素原子を置換基として有するフェニル基である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。

【請求項3】

R

1

乃至R

4

がそれぞれ独立にペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基である、請求項2に記載の感光性樹脂組成物。

【請求項4】

(A)光カチオン重合開始剤が、式(1)で表されるアニオンとヨウ素原子又は硫黄原子を有するカチオンからなる塩を含有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。

【請求項5】請求項1乃至4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を基材で挟み込んで得られるドライフィルムレジスト。

【請求項6】請求項1乃至4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物又は請求項5に記載のドライフィルムレジストの硬化物。」

(2) 対比

本件特許発明1及び同日出願発明1は、発明特定事項である「(B)エポキシ化合物」に関して、いずれも選択肢を有する発明であるところ、当該「(B)エポキシ化合物」として、共に上記「式(4)で表されるエポキシ化合物(b-3)」をその選択肢に係る発明特定事項と仮定したときの本件特許発明1と同日出願発明1を対比すると、両者は以下の点で相違し、その余の点で一致する。

(相違点A-1)

「(A)光カチオン重合開始剤」の「アニオン」が、「式(1)で表され」るものであって、本件特許発明1は、当該式(1)が「式(1)中、R

1

乃至R

4

はそれぞれ独立にペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基を表す。」と特定されているのに対し、同日出願発明1は、「式(1)中、R

1

乃至R

4

はそれぞれ独立に炭素数1乃至18のアルキル基又は炭素数6乃至14のアリール基を表す。但し、R

1

乃至R

4

の少なくとも一つは炭素数6乃至14のアリール基を表す。」と特定されている点。

(相違点A-2)

「(A)光カチオン重合開始剤」の「カチオン」が、本件特許発明1は、「スルホニウムイオンまたはヨードニウムイオンである」のに対し、同日出願発明1は、そのように特定されていない点。

(相違点A-3)

「(A)光カチオン重合開始剤の含有量」が、本件特許発明1は、「(B)エポキシ化合物の含有量に対して0.1乃至10質量%である」のに対し、同日出願発明1は、そのように特定されていない点。

(相違点A-4)

「感光性樹脂組成物」が、本件特許発明1は、「ネガ型レジスト用」であるのに対し、同日出願発明1は、その用途が限定されていない点。

(3) 判断

事案に鑑み、相違点A-1~A-3について検討する。

本件特許発明1と同日出願発明1は、相違点A-1~A-3の点で相違する。

そして、上記発明特定事項は、課題解決のための具体化手段における微差、発明特定事項を上位概念として表現したことによる差異及び単なるカテゴリー表現上の差異のいずれでもない。

したがって、本件特許発明1は同日出願発明1と同一であるとはいえない。

また、本件特許発明5及び6についても同様である。

さらに、発明特定事項である「(B)エポキシ化合物」として、「エポキシ化合物(b-4)」、「エポキシ化合物(b-5)」、「エポキシ化合物(b-7)」、「エポキシ化合物(b-9)」及び「エポキシ化合物(b-10)」をその選択肢に含む発明についても同様である。

(4) 小括

したがって、本件特許発明1、5及び6は、同日出願発明、すなわち本件特許に係る出願と同日に出願された特願2019-558172号(特許第7241695号、本件特許の分割出願)に係る発明と同一であるとはいえず、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、5及び6に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しない。

2 理由2(進歩性)について

(1) 甲号証について

ア 甲1の記載事項

令和7年2月3日付けで特許権者に通知した取消理由で引用した甲1は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明が記載された文献であるところ、以下の記載事項がある。(当合議体注:下線は当合議体が付したものであり、引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。)

(ア) 「(1ページ3~6行)

24

144

0001432042000029.jpg

(合議体訳:本発明は、架橋剤およびそれから製造された組成物の使用、特に、複合材料およびフォトレジスト組成物において、電子ビームを介してカチオン性活性成分を重合および/または架橋するためのオニウムガレート開始剤の使用に関する。)

(1ページ8~16行)

44

145

0001432042000030.jpg

(合議体訳:強酸の存在下で重合または架橋する成分を含むカチオン硬化システムは、過去15~20年にわたって開発および改良されてきた。最近の開発では、これらのシステムの開始剤としてオニウム塩が使用されている。これらのオニウム塩開始剤は、熱や電磁放射線(化学線、電子線、X線、ガンマ線など)などのエネルギー源にさらされると強酸を生成する。生成された強酸は、カチオン硬化システムの重合または架橋を引き起こす。)」

(1ページ32行~2ページ4行)

39

145

0001432042000031.jpg

23

145

0001432042000032.jpg

(合議体訳:また、写真画像やレリーフ画像を形成するためのフォトレジスト組成物には、酸発生剤や架橋開始剤としてオニウム塩型開始剤が使用されている。このような画像を形成する場合、樹脂材料を含む組成物は、酸の存在下で架橋されるか(いわゆるネガレジスト)、または酸の存在下で分解される(いわゆるポジレジスト)。一部のオニウム塩型開始剤は、熱や、紫外線、電子線、ガンマ線といった光エネルギーなどのエネルギー源にさらされると酸を生成することが知られている。どちらのタイプのフォトレジストシステムでも、フォトレジスト組成物には、樹脂をアルカリ水溶液に溶解させる成分を含む樹脂成分が含まれている必要がある。アルカリ水溶液がレジスト材料を現像するのに使用され、画像を形成する。)

(イ) 「(3ページ25~34行)

59

145

0001432042000033.jpg

(合議体訳:したがって、本発明によれば、カチオン重合性または架橋性成分を重合または架橋する方法が提供され、前記方法は、

a)カチオン重合またはカチオン架橋が可能な成分と、式GaX

a

R

b

-

のアニオンを有するオニウム塩とを含む組成物を形成し、式中、Xはハロゲン原子またはヒドロキシ基であり、Rはアリール基または置換アリール基であり、aおよびbはそれぞれ0から4までの整数を表すが、aとbの合計は4であること、

および、

b)組成物を、化学線、X線、ガンマ線、および/または電子ビームからなる群から選択される放射線にさらすことを含む。)

(3ページ36行~4ページ9行)

6

144

0001432042000034.jpg

113

145

0001432042000035.jpg

(合議体訳:本発明の方法において、好ましい条件は、重合性成分が、ダウケミカル社から商標 DER 332として市販されているビスフェノールAのジグリシジルエーテルのマトリックスであり、オニウム塩が組成物の重量の1%の量で存在し、次のいずれか

37

144

0001432042000036.jpg

または

46

150

0001432042000037.jpg

であり、ステップ(b)で使用される放射線は、ビーム電圧200mV、線量10Mradの電子ビーム以外のものである。)

(7ページ9~12行)

24

145

0001432042000038.jpg

(合議体訳:

本発明で使用される特に好ましいカチオン重合性または架橋性成分は、エポキシ含有モノマー

、オリゴマーおよびポリマー、ビニルエーテル含有モノマー、オリゴマーおよびポリマー、および環状エーテル含有モノマー、オリゴマーおよびポリマー

である。

)

(7ページ14~26行及び10ページ6~9行)

90

145

0001432042000039.jpg

・・・(略)・・・

76

144

0001432042000040.jpg

(合議体訳:

特に、エポキシ樹脂には、以下のグリシジルエーテルのいずれかから得られるものが含まれる。

1.

下記式で表されるビスフェノールAのジグリシジルエーテル

:

24

145

0001432042000041.jpg

式中、nは0~10である。

これらの樹脂は、Shell Chemical Company、

DOW Chemical Company

、Ciba Specialty Chemicals Corporation などの多くのメーカーから、さまざまな分子量と粘度のものが販売されている。例としては、

DER 332

、DER 330、DER 331、DER. 383(

DOW

の商標)、Epon 825、Epon 826、Epon 828(Shell の商標)、Tactix 123、Tactix 138、Tactix 177、Araldite GY 6008、Araldite GY 6010、Araldite GY 2600(Ciba Specialty Chemicals Corporationの商標)などがある。

・・・(略)・・・

5.以下の式で表されるトリス(ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル

74

84

0001432042000042.jpg

この製品は、Tactix 742 (Ciba Specialty Chemicals Corporation の登録商標)として入手可能である。)

(ウ) 「(22ページ6~20行)

118

144

0001432042000043.jpg

(合議体訳:

参考例2

(ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートの製造)

50ml丸底フラスコに、参考例1に従って製造したリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートを15mlのCH

2

Cl

2

に溶解する。次の式で表され、15mlのCH

2

Cl

2

に溶解した等モル量の塩化ヨードニウム:

36

135

0001432042000044.jpg

を室温で撹拌しながら滴下した。 反応混合物は濁った。2時間撹拌した後、溶媒を除去して粘着性の残留物を得た。中性アルミナクロマトグラフィー(長さ3~5cmのカラムを使用)を用いてCH

2

Cl

2

で溶出させ、

以下の式で表されるヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート

を、黄色い粘着性の液体として得た。

32

102

0001432042000045.jpg

収率は約70~約85%と判定された。構造は、

1

H-NMRと

19

F-NMRにより特定された。)

(22ページ22行~23ページ6行)

44

145

0001432042000046.jpg

111

145

0001432042000047.jpg

(合議体訳:実施例1~6および比較例1~2

分子量が約340g/モル、エポキシ当量が約170gであるビスフェノールAエポキシ樹脂(ダウケミカル社製DER-332)

のバッチの一部を8つのアリコートに分割した。各アリコート

を表1に示す量の開始剤と混合して

試験サンプルを形成した

開始剤Aは

、上記

参考例2に従って調製された開始剤である

。開始剤Bは、GEシリコーン社から入手可能なオクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート(OPPI)であり、式は以下のとおりである。

37

135

0001432042000048.jpg

サンプルを約60°Cで約2時間加熱し、開始剤をエポキシ樹脂に溶解した。

表1

62

86

0001432042000049.jpg

)」

イ 甲1発明

上記アによれば、甲1には、実施例1として、次の発明が記載されているものと認められる。

「カチオン重合性又はカチオン架橋性成分と、開始剤として式GaX

a

R

b

(式中、Xはハロゲン原子又はヒドロキシ基であり、Rはアリール基又は置換アリール基であり、a、bはそれぞれ0~4の整数を表す。ただし、aとbの和は4となる。)で表されるアニオンを有するオニウム塩とを含む組成物であって、

前記カチオン重合性又はカチオン架橋性成分として、約340g/モルの分子量及び約170gのエポキシ当量を有し、下記[式A]で表されるビスフェノールAエポキシ樹脂(DowChemical社製のDER-332)を用い、

前記オニウム塩として、下記[式B]で表されるヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートを用い、

前記ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートの含有量が1.0重量%である、

組成物。

[式A]

21

140

0001432042000050.jpg

[式B]

32

135

0001432042000051.jpg

ウ 甲2の記載事項

甲2は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であるところ、以下の記載事項がある。

(ア) 「【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、感光画像形成性エポキシ樹脂組成物及びその永久硬化生成物であって、紫外(UV)リソグラフィにより加工したり、又は熱エンボスを使用してインプリントすることの出来る、MEMS(微小電子機械システム)部品、マイクロマシン部品、マイクロ流体部品、μ-TAS(微小全分析システム)部品、インクジェットプリンター部品、マイクロ反応器部品、導電性層、LIGA部品、微小射出成形及び熱エンボス向け型及びスタンプ、微細印刷用途向けスクリーン又はステンシル、MEMSパッケージ部品、半導体パッケージ部品、BioMEMS及びバイオフォトニックデバイス、並びにプリント配線板の製作において有用である組成物及びその積層体並びにそれらの硬化物に関する。

・・・(略)・・・

【0009】

本発明は、以上のような従来の事情に鑑みてなされたものであって、その課題は、良好な画像解像度、熱安定性、耐薬品性及び溶媒溶解性を有し、高感度でかつプレッシャークッカー試験(PCT)後の基板への密着性が低下しない感光性樹脂組成物を提供することを目的する。」

(イ) 「【0011】

即ち、本発明は、

(1)

光カチオン重合開始剤(A)と

1分子中に2個以上のエポキシ基を有する

エポキシ樹脂(B)を含有してなるMEMS用感光性樹脂組成物

であって、光カチオン重合開始剤(A)が下記式(1)

【0012】

【化1】

60

145

0001432042000052.jpg

【0013】

で表される光カチオン重合開始剤(A-1)であるMEMS用感光性樹脂組成物、

(2)MEMS用感光性樹脂組成物がパッケージ用である前項(1)に記載のMEMS用感光性樹脂組成物、

(3)エポキシ樹脂(B)の軟化点が40°C以上120°C以下かつエポキシ当量が150~500/eq.である前項(1)または(2)に記載のMEMS用感光性樹脂組成物、

(4)

エポキシ樹脂(B)が

下記式(3)

【0014】

【化2】

64

143

0001432042000053.jpg

【0015】

(式(3)において、Rはそれぞれ独立にグリシジル基又は水素原子を示す。kは平均値

を示し、0~30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B-1)、

下記式(4)

【0016】

【化3】

46

135

0001432042000054.jpg

【0017】

(式(4)において、各R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子1~4個を有するアルキル基を示す。pは平均値を示し1~30の範囲にある実数である。)で表される

エポキシ樹脂(B-2)

下記式(5)

【0018】

【化4】

39

135

0001432042000055.jpg

【0019】

(式(5)において、n及びmは平均値を示し、独立に1~30の範囲にある実数であり、R

4

及びR

5

は、それぞれ独立に水素原子、炭素原子1~4個を有するアルキル基又はトリフルオロメチルを示す。)で表されるエポキシ樹脂(B-3)、

下記式(6)

【0020】

【化5】

40

135

0001432042000056.jpg

【0021】

(式(6)において、nは平均値を示し、1~30の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B-4)、

下記式(7)

【0022】

【化6】

61

135

0001432042000057.jpg

【0023】

で表されるエポキシ樹脂(B-5)、

1分子中に少なくとも2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と1分子中に少なくとも1個以上の水酸基と1個のカルボキシル基を有する化合物との反応物に、多塩基酸無水物を反応させることにより得られるエポキシ樹脂(B-6)、

下記式(9)

【0024】

【化7】

50

135

0001432042000058.jpg

【0025】

(式(9)において、nは平均値を示し、1~10の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B-7)、

下記式(10)

【0026】

【化8】

73

135

0001432042000059.jpg

【0027】

(式(10)において、nは平均値を示し、0.1~5の範囲にある実数である。)で表される

エポキシ樹脂(B-8)

下記式(11)

【0028】

【化9】

75

141

0001432042000060.jpg

【0029】

(式(11)において、l、m及びnは平均値を示し、l+m+n=2~60の範囲にある実数である。)で表される

エポキシ樹脂(B-9)

下記式(12)

【0030】

【化10】

38

135

0001432042000061.jpg

【0031】

(式(12)において、nは平均値を示し、0.1~6の範囲にある実数である。)で表されるエポキシ樹脂(B-10)並びに

下記式(13)及び/又は式(14)

【0032】

【化11】

42

135

0001432042000062.jpg

【0033】

で示される化合物と、下記式(15)及び/又は式(16)

【0034】

【化12】

44

135

0001432042000063.jpg

【0035】

で示される化合物との共縮合物である

エポキシ樹脂(B-11)からなる群から選択される

1種類又は2種類以上の

エポキシ樹脂である

前項(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の

MEMS用感光性樹脂組成物

(5)前項(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のMEMS用感光性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物、

(6)前項(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のMEMS用感光性樹脂組成物を基材で挟み込んだ積層体、

(7)前項(6)に記載の積層体を硬化して得られる硬化物、

に関する。」

(ウ) 「【実施例】

【0063】

以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、なんら本発明を限定するものではない。

【0064】

実施例1~3及び比較例1

(感光性樹脂組成物の調製)

表2に記載の配合量

(単位は質量部)

に従って

多官能エポキシ樹脂

光カチオン重合開始剤

、およびその他の成分

を攪拌機付きフラスコで60°C、1時間攪拌混合し

、本発明及び比較用の

感光性樹脂組成物を得た

・・・(略)・・・

【0069】

【表1】

85

144

0001432042000064.jpg

【0070】

尚、表2における(A-1)~(F)はそれぞれ下記を示す。

(A-1):前記

式(1)で示される光カチオン重合開始剤

(商品名 GSID26-1、チバスペシャルティケミカルズ製)

(B-1):前記

式(3)で表されるエポキシ樹脂

(商品名 EPON SU-8、レゾリューション・パフォーマンス・プロダクツ製、エポキシ当量210g/eq.、軟化点85°C)

(B-2):前記

式(4)で表されるエポキシ樹脂

(商品名 NC-3000H、日本化薬社製、エポキシ当量285g/eq.、軟化点65°C)

(B-3):前記

式(5)で表されるエポキシ樹脂

(商品名 NER-7604、日本化薬社製、エポキシ当量347g/eq.、軟化点71°C)

(PAG-1):光カチオン重合開始剤(ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム=ヘキサフルオロアンチモナート、商品名 CPI-101A、サンアプロ社製、50%炭酸プロピレン溶液)

(C):

反応性エポキシモノマー

(商品名 EX-321L、ナガセケムテックス社製)

(D):溶剤シクロペンタノン(CP)

(E):フッ素系レベリング剤(商品名 メガファックF-470、DIC社製)

(F):シランカップリング剤(商品名 S-510、チッソ社製)

【0071】

表2に示すとおり、本発明の感光性樹脂組成物(実施例1~実施例3)は比較例1に比べ、高感度でPCT耐性(基板への密着性が低下しない)が高いことが判った。」

エ 甲3の記載事項

甲3は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であるところ、以下の記載事項がある。

(ア) 「【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、MEMS(微小電子機械システム)部品、μ-TAS(微小全分析システム)部品、マイクロリアクター部品、コンデンサやインダクタ等の電子部品の絶縁層、LIGA部品、微小射出成形及び熱エンボス向け型及びスタンプ、微細印刷用途向けスクリーン又はステンシル、MEMS及び半導体パッケージ部品、BioMEMS及びバイオフォトニックデバイス、並びに、プリント配線板の製作において有用な、良好な側壁形状および解像度に優れた画像形成性、硬化後の内部応力が小さく、湿熱試験後の基板密着性に優れた感光性樹脂組成物とその硬化物に関する。

・・・(略)・・・

【発明が解決しようとする課題】

【0008】

本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであって、半導体やMEMS・マイクロマシンアプリケーション分野において、カチオン重合により硬化するエポキシ樹脂組成物であって、垂直な側壁形状で微細な解像性、低応力、耐湿熱性を有する感光画像形成性の樹脂組成物、及び/又はその積層体、並びにその硬化物を提供することを目的する。」

(イ) 「【課題を解決するための手段】

【0009】

本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、本発明の感光性樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出した。

【0010】

即ち、本発明は、

(1)

(A)エポキシ樹脂

、(B)多価フェノール化合物、(

C)光カチオン重合開始剤

及び(D)エポキシ基含有シラン化合物

を含有する感光性樹脂組成物

であって、

該(

A)エポキシ樹脂が下記式(1)

【0011】

【化1】

30

89

0001432042000065.jpg

【0012】

で表されるフェノール誘導体と、エピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ樹脂(a)

及び下記式(2)

【0013】

【化2】

23

89

0001432042000066.jpg

【0014】

(式中、mは平均値であり、2~30の範囲にある実数を表す。R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基またはトリフルオロメチル基を表す。Xはそれぞれ独立に水素原子またはグリシジル基を表し、複数存在するXの少なくとも1つはグリシジル基である。)で表されるエポキシ樹脂(b)を必須成分として含有し、かつ

該(B)多価フェノール化合物が下記式(3)乃至(6)

【0015】

【化3】

21

89

0001432042000067.jpg

【0016】

(式中、nは平均値であり、1~10の範囲にある実数を表す。Rはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。)

【0017】

【化4】

32

89

0001432042000068.jpg

【0018】

(式中、nは平均値であり、1~10の範囲にある実数を表す。)

【0019】

【化5】

22

89

0001432042000069.jpg

【0020】

(式中、nは平均値であり、1~10の範囲にある実数を表す。)

【0021】

【化6】

17

89

0001432042000070.jpg

【0022】

(式中、nは平均値であり、1~10の範囲にある実数を表す。R

1

及びR

2

はそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。)で表されるフェノール化合物からなる群より選ばれる一種以上

を必須成分として含有する

感光性樹脂組成物、

・・・(略)・・・

【0027】

以下に、

式(1)で表されるフェノール誘導体の単量体エポキシ樹脂(a)の具体的な構造を式(7)に示した

【0028】

【化7】

27

89

0001432042000071.jpg

【0029】

以下に、

式(1)で表されるフェノール誘導体の2量体のエポキシ樹脂(a)の具体的な構造を下記式(8)に示した

【0030】

【化8】

121

135

0001432042000072.jpg

【0031】

以下に、

式(1)で表されるフェノール誘導体の3量体のエポキシ樹脂(a)の具体的な構造を下記式(9)に示した

【0032】

【化9】

143

125

0001432042000073.jpg

88

125

0001432042000074.jpg

(ウ) 「【実施例】

【0060】

以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明を好適に説明するための例示に過ぎず、何ら本発明を限定するものではない。

【0061】

実施例1~7及び比較例1~5

(感光性樹脂組成物溶液(液状レジスト)の調整)

表1に記載の配合量(単位は質量部、溶液品は本体の固形分質量部とした)に従って、(A)エポキシ樹脂、(B)多価フェノール化合物、(C)光カチオン重合開始剤及び(D)エポキシ基含有シラン化合物を、シクロペンタノンによって濃度が65質量%となるように希釈し、攪拌機付きフラスコで60°C、1時間攪拌混合溶解し、放冷後、孔径1.0μmのメンブランフィルターによって濾過を施し、本発明及び比較用の感光性樹脂組成物溶液(液状レジスト)を得た。

【0065】

【表1】

109

144

0001432042000075.jpg

【0066】

尚、表1における(A-1)~(D-2)はそれぞれ以下のものを示す。

(A-1):NC-6300H(商品名、日本化薬社製、エポキシ樹脂(a)、エポキシ当量225g/eq.)

(A-2):NER-7604(商品名、日本化薬社製、エポキシ樹脂(b)、エポキシ当量330g/eq.)

(A-3):NER-7403(商品名、日本化薬社製、エポキシ樹脂(b)、エポキシ当量250g/eq.)

(A-4):EPON SU-8(商品名、モーメンティブ社製、エポキシ当量213g/eq.)

(A-5):EOCN-1020(商品名、日本化薬社製、エポキシ当量197g/eq.)

(A-6):セロキサイド2021P(商品名、ダイセル社製、エポキシ当量126g/eq.)

(A-7):jERYL-983U(商品名、三菱化学社製、エポキシ当量170g/eq.)

(B-1):PN-152(商品名、明和化成社製、式(3)で表される多価フェノール化合物、軟化点50°C、水酸基当量105g/eq.)

(B-2):H-1(商品名、明和化成社製、式(3)で表される多価フェノール化合物、軟化点80°C、水酸基当量104g/eq.)

(B-3):ミレックスXLC-3L(商品名、三井化学社製、式(6)で表される多価フェノール化合物、軟化点70°C、水酸基当量176g/eq.)

(B-4):GPH-65(商品名、日本化薬社製、式(5)で表される多価フェノール化合物、軟化点65°C、水酸基当量200g/eq.)

(B-5):MEP-6309E(商品名、明和化成社製、式(4)で表される多価フェノール化合物、軟化点80°C、水酸基当量116g/eq.)

(C-1):SP-172(商品名、ADEKA社製、50wt%炭酸プロピレン溶液、但し表中記載配合量は固形分値を表記した)

(C-2):CPI-6976(商品名、ACETO社製、50wt%炭酸プロピレン溶液、但し表中記載配合量は固形分値を表記した)

(C-3):イルガキュアPAG290(商品名、BASF社製)

(C-4):SP-170(商品名、ADEKA社製、50wt%炭酸プロピレン溶液、但し表中記載配合量は固形分値を表記した)

(D-1):3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン

(D-2):3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン」

オ 甲4の記載事項

甲4は、先の出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献であるところ、以下の記載事項がある。

(ア) 「【技術分野】

【0001】

本発明は、第1に、特定の構造を有するオニウムガレート塩を含有する、光学特性が求められる部材用の、熱あるいはエネルギー線硬化性組成物及びこれを硬化させて得られる硬化体に関する。

本発明は、第2に、特定の構造を有するオニウムガレート塩を含有する光学特性が求められる部材用の、化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物及びこれを硬化させて得られる硬化体に関する。

・・・(略)・・・

【発明が解決しようとする課題】

【0008】

上記の背景において、本発明の第1 の目的は、毒性金属を含まず、テトラキス(Fペンタフルオロフェニル)ボレート塩以上のカチオン重合性能や架橋反応性能を有し、かつこのものを使用した硬化物は特に耐熱試験後に強酸が残存しないため、部材の腐食がなく、樹脂の腐食により透明性が低下する問題がないカチオン重合開始剤(酸発生剤)を利用した、熱あるいはエネルギー線硬化性組成物及び硬化体を提供することである。

本発明の第2の目的は、上記酸発生剤を利用した化学増幅型ネガ型フォトレジスト組成物及び硬化体を提供することである。」

(イ) 「【課題を解決するための手段】

【0009】

本発明者は、上記目的に好適な酸発生剤を見出した。

すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表されるオニウムガレート塩を含む酸発生剤とカチオン重合性化合物とを含有してなる、熱あるいはエネルギー線硬化性組成物及びこれらを硬化してなる硬化体である。

・・・(略)・・・

【0015】

本発明のオニウムガレート塩系酸発生剤としては、下記一般式(1)で表される。

【0016】

【化2】

27

88

0001432042000076.jpg

【0017】

[式(1)中、R

1

~R

4

は、互いに独立して、炭素数1~18のアルキル基またはArであるが、但し、少なくとも1つが、Arであり、

Arは、炭素数6~14(以下の置換基の炭素数は含まない)のアリール基であって、アリール基中の水素原子の一部が、炭素数1~18のアルキル基、ハロゲン原子が置換した炭素数1~8のアルキル基、炭素数2~18のアルケニル基、炭素数2~18のアルキニル基、炭素数6~14のアリール基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、-OR

6

で表されるアルコキシ基若しくはアリールオキシ基、R

7

CO-で表されるアシル基、R

8

COO-で表されるアシロキシ基、-SR

9

で表されるアルキルチオ基若しくはアリールチオ基、-NR

10

R

11

で表されるアミノ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよく、

R

6

~R

9

は炭素数1~8のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基、

R

10

及びR

11

は水素原子、炭素数1~8のアルキル基又は炭素数6~14のアリール基であり;

Eは15族~17族(IUPAC表記)の原子価nの元素を表し、

nは1~3の整数であり、

R

5

はEに結合している有機基であり、R

5

の個数はn+1であり、(n+1)個のR

5

はそれぞれ互いに同一であっても異なっても良く、2個以上のR

5

が互いに直接または-O-、-S-、-SO-、-SO

2

-、-NH-、-CO-、-COO-、-CONH-、アルキレン基もしくはフェニレン基を介して元素Eを含む環構造を形成しても良い。]

・・・(略)・・・

【0030】

式(1)中のEは、15族~17族(IUPAC表記)の原子価nの元素を表し、有機基R

5

と結合してオニウムイオン[E

+

]を形成する。15族~17族の元素のうち好ましいのは、O(酸素)、N(窒素)、P(リン)、S(硫黄)またはI(ヨウ素)であり、対応するオニウムイオンとしてはオキソニウム、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、ヨードニウムである。中でも、安定で取り扱いが容易な、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、ヨードニウムが好ましく、カチオン重合性能や架橋反応性能に優れるスルホニウム、ヨードニウムがさらに好ましい。nは元素Eの原子価を表し、1~3の整数である。

・・・(略)・・・

【0036】

一般式(1)で表される酸発生剤のアニオン構造としては、たとえば、以下化学式(A-1)~(A-5)で表されるものが好ましく例示できる。

【0037】

【化3】

107

135

0001432042000077.jpg

・・・(略)・・・

【0044】

本発明の熱または活性エネルギー線硬化性組成物(以下硬化性組成物という)は、上記酸発生剤とカチオン重合性化合物とを含んでなる。

【0045】

硬化性組成物の構成成分であるカチオン重合性化合物としては、環状エーテル(エポキシド及びオキセタン等)、エチレン性不飽和化合物(ビニルエーテル及びスチレン等)、ビシクロオルトエステル、スピロオルトカーボネート及びスピロオルトエステル等が挙げられる

・・・(略)・・・

【0046】

エポキシドとしては、公知のもの等が使用でき、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシドが含まれる。

【0047】

芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香環を有する1価又は多価のフェノール(フェノール、ビスフェノールA、フェノールノボラック及びこれらのこれらのアルキレンオキシド付加体した化合物)のグリシジルエーテル等が挙げられる。

【0048】

脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロヘキセンやシクロペンテン環を有する化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる化合物(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、等)が挙げられる。

【0049】

脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコール又はこのアルキレンオキシド付加体のポリグリシジルエーテル(1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等)、脂肪族多塩基酸のポリグリシジルエステル(ジグリシジルテトラヒドロフタレート等)、長鎖不飽和化合物のエポキシ化物(エポキシ化大豆油及びエポキシ化ポリブタジエン等)が挙げられる。」

(ウ) 「【実施例】

【0127】

以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されることは意図するものではない。

・・・(略)・・・

【0141】

実施例14 ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートの合成

ジフェニルスルホキシド1.6g(8mmol)、ジフェニルスルフィド1.5g(8mmol)、無水酢酸2.5g(24mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸1.5g(10mmol)及びアセトニトリル13gを均一混合し、40°Cで6時間反応させた。反応溶液を室温まで冷却し、蒸留水60g中に投入し、ジクロロメタン60gで抽出し、水層のpHが中性になるまで水で洗浄した。ジクロロメタン層をロータリーエバポレーターに移して、溶媒を留去し,褐色液状の生成物を得た。これに酢酸エチル20gを加え、60°Cの水浴中で溶解させた後、ヘキサン60gを加え撹拌した後、5°Cまで冷却し30分間静置してから上澄みを除く操作を2回行い,生成物を洗浄した。これをロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより,純度98%のジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムトリフレート(トリフレート=トリフルオロメタンスルホン酸アニオン)を収率85%で得た。

(複分解法)

このトリフレートをジクロロメタン50gに溶かし,等モルのリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートむ水溶液66gを室温下で混合し,そのまま3時間撹拌し,ジクロロメタン層を分液操作にて水で2回洗浄した後,ロータリーエバポレーターに移して溶媒を留去することにより,純度99%の

ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート

を収率90%で得た。

・・・(略)・・・

【0151】

〔評価〕

(熱、エネルギー線硬化性組成物の調製)

実施例

2~12、

14

、比較例1~9

の酸発生剤

増感剤(2、4-ジエチルチオキサントン)

カチオン重合性化合物であるエポキシド(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製、セロキサイド2021P)を表1に示した配合量で均一混合して

、本発明の

熱あるいはエネルギー線硬化性組成物

1~11及び比較用の硬化性組成物12~20

を調整した

【0152】

【表1】

85

89

0001432042000078.jpg

(2) 本件特許発明1について

ア 対比

本件特許発明1と甲1発明とを対比する。

(ア) (A)光カチオン重合開始剤

甲1発明の「ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート」は、技術的にみて、本件特許発明1の「(A)光カチオン重合開始剤」に相当する。また、甲1発明の「ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート」は、その構造式([式B])からみて、本件特許発明1の「下記式(1)

【化1】

37

71

0001432042000079.jpg

(式(1)中、R

1

乃至R

4

はそれぞれ独立にペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基を表す。)で表されるアニオンと、」「ヨードニウムイオンであるカチオンからなる塩を含有し」という要件を満たす。

(イ) (B)エポキシ化合物

甲1発明の「ビスフェノールAエポキシ樹脂」は、その構造式([式A])からみて、本件特許発明1の「(B)エポキシ化合物」に相当する。

(ウ) 感光性樹脂組成物

甲1発明の「試験サンプル」は、その材料組成からみて、本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」に相当する。

(エ) (A)光カチオン重合開始剤の含有量

甲1発明の「試験サンプル」は、開始剤を1.0質量%含有するものであるから、本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」における「(A)光カチオン重合開始剤の含有量は、(B)エポキシ化合物の含有量に対して0.1乃至10質量%である」という要件を満たす。

イ 一致点及び相違点

本件特許発明1と甲1発明は、以下の点(ア)で一致し、以下の点(イ)で相違する。

(ア) 一致点

「 (A)光カチオン重合開始剤および(B)エポキシ化合物を含む感光性樹脂組成物であって、

該(A)光カチオン重合開始剤(A)が、下記式(1)

【化1】

37

71

0001432042000080.jpg

(式(1)中、R

1

乃至R

4

はそれぞれ独立にペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基を表す。)

で表されるアニオンと、スルホニウムイオンまたはヨードニウムイオンであるカチオンからなる塩を含有し、

(A)光カチオン重合開始剤の含有量は、(B)エポキシ化合物の含有量に対して0.1乃至10質量%である、感光性樹脂組成物。」

(イ) 相違点

(相違点1-1)

式(1)で表される(A)光カチオン重合開始剤および(B)エポキシ化合物を含む感光性樹脂組成物において、上記「(B)エポキシ化合物」が、本件特許発明1は、「エポキシ化合物(b-3)」、「エポキシ化合物(b-4)」、「エポキシ化合物(b-5)」、「エポキシ化合物(b-7)」、「エポキシ化合物(b-9)」及び「エポキシ化合物(b-10)」「からなる群より選択される1種類又は2種類以上のエポキシ化合物」であるのに対し、甲1発明は、「ビスフェノールAエポキシ樹脂(ダウケミカル社製DER-332)」である点。

(相違点1-2)

感光性樹脂組成物が、本件特許発明1は「ネガ型レジスト用」であるのに対し、甲1発明は、「ネガ型レジスト用」であることが一応明らかでない点。

ウ 判断

相違点1-1について検討する。

(ア) 本件特許発明1の技術的意義について

相違点1-1の判断に先立ち、本件特許発明1の技術的意義について検討しておく。

本件特許明細書の【0008】には、本件特許発明の作用効果について、「解像度に優れると共に、該組成物の硬化物は湿熱溶出汚染が極めて低く、しかも湿熱試験後の基板との接着性に優れる」と記載されている。上記作用効果は、本件特許明細書の実施例及び比較例における検証結果に示されるとおり、本件特許発明が奏する作用効果といえる。そして、上記検証結果に基づけば、上記作用効果は、特定の構造を備えた「(A)光カチオン重合開始剤」と特定の構造を備えた「(B)エポキシ樹脂」の組み合わせを採用したことによって奏されるものと認められる。そうすると、本件特許発明1の技術的意義は、上記組み合わせにあると理解するのが相当である。

上記を踏まえて、以下、検討する。

(イ)甲1には、本件特許発明1の「エポキシ化合物(b-3)」、「エポキシ化合物(b-4)」、「エポキシ化合物(b-5)」、「エポキシ化合物(b-7)」、「エポキシ化合物(b-9)」及び「エポキシ化合物(b-10)」を使用することは記載も示唆もされていない。

もっとも、甲1の7ページ14~15行及び10ページ6~9行には、甲1発明の「カチオン重合性又はカチオン架橋性成分」として採用できるエポキシ樹脂として、「[式A]で表されるビスフェノールAエポキシ樹脂(DowChemical社製のDER-332)」とともに、「次式のトリス(ヒドロキシフェニルメタンのトリグリシジルエーテル:

63

145

0001432042000081.jpg

」(以下「代替エポキシ樹脂」という。)が記載されている。しかしながら、上記代替エポキシ樹脂は、甲1において多数列挙された様々な分子量や粘度を有するエポキシ樹脂のうちの1つである。そうすると、甲1発明において、上記「[式A]で表されるビスフェノールAエポキシ樹脂(DowChemical社製のDER-332)」の代替エポキシ樹脂として、上記「トリス(ヒドロキシフェニルメタンのトリグリシジルエーテル)」を選択し、さらにその平均繰り返し単位に着目して調整し、「q=1~5」である本件特許発明1の「エポキシ化合物(b-7)」に想到することが容易であるとはいえない。そして、このことは、上記(ア)で述べた本件特許発明1の技術的意義に照らせばなおさらである。

したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲1に記載された事項から、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)甲2に記載された技術事項を踏まえた検討

次に、本件特許発明が、甲1発明及び甲2に記載された技術事項から、当業者が容易に想到し得たといえるかについて検討する。

上記(1)ウによれば、甲2には、次の技術事項が記載されていると認められる。

「本件特許発明1の「エポキシ化合物(b-3)」、「エポキシ化合物(b-5)」、「エポキシ化合物(b-7)」、及び「エポキシ化合物(b-10)」とそれぞれ基本骨格が同じ「エポキシ樹脂(B-2)」、「エポキシ樹脂(B-11)」、「エポキシ樹脂(B-8)」及び「エポキシ樹脂(B-9)」(以下、これらを総称して「甲2エポキシ樹脂」という。)を使用した感光性樹脂組成物」。

しかしながら、上記(1)ウ(イ)で述べたとおり、甲2に記載の「感光性樹脂組成物」は、「光カチオン重合開始剤」の「アニオン」が、

72

77

0001432042000082.jpg

であり、甲1発明と感光性樹脂組成物の材料組成の前提構成が異なる。ここで、上記(ア)で述べたとおり、本件特許発明1は、特定の構造(式(1))で表される「(A)光カチオン重合開始剤」及び特定の構造(式(4)~式(13)、式(15)~式(16))で表される「(B)エポキシ樹脂」を組み合わせて使用した点に技術的意義を有する発明であるから、甲2に相違点1-1に係るエポキシ化合物と構成が類似する化合物が開示されていたとしても、前提構成が異なる(組み合わせる重合開始剤が異なる)以上、甲1発明の「ビスフェノールAエポキシ樹脂」に替えて、「甲2エポキシ樹脂」を採用する動機付けはないし、また、採用することが設計事項であるともいえない。

したがって、本件特許発明1は、甲1発明及び甲2の記載事項(甲2エポキシ樹脂)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(ウ)甲3に記載された技術事項を踏まえた検討

また、甲3に記載された技術事項を検討しても、上記(ア)の結論は変わらない。

すなわち、上記(1)エによれば、甲3には、本件特許発明1の「エポキシ化合物(b-4)」と基本骨格が同じ「式(7)」、「式(8)」及び「式(9)」で表される「エポキシ樹脂(a)」を使用した感光性樹脂組成物が記載されている。

しかしながら、上記(1)エ(イ)で述べたとおり、甲3に記載の「感光性樹脂組成物」は、「光カチオン重合開始剤」の「アニオン」が「ガレイト」ではなく、甲1発明と感光性樹脂組成物の材料組成の前提構成が異なる。そうしてみると、上記(イ)と同様の理由により、甲1発明の「ビスフェノールAエポキシ樹脂」に替えて、甲3に記載の「エポキシ樹脂(a)」を採用する動機付けはない。また、設計変更ともいえない。

エ 令和7年5月21日提出の意見書(異議申立人)の主張についての判断

異議申立人は、令和7年5月21日に提出した意見書において、取消理由2(進歩性)について、概略次のように主張している。

・甲2の[0026]の一般式(10)に本件特許の式(13)の化学式が記載されており、この一般式で、q=0の化合物とq=1の化合物を類似した化合物として扱うことは本件特許の出願時に公知である。このことからも、本件特許発明の属する技術分野においてq=0の化合物とq=1の化合物を類似した化合物として扱うことは、特許権者を含む当業者が本件特許の出願時に当然に認識していたことであるといえる。

しかしながら、甲2の段落[0026]に記載の式(10)で表されるエポキシ樹脂は、本件特許発明1の「エポキシ化合物(b-7)」において、「式(13)」における「q」の値が「0.1~5」の場合に相当する化合物であるのに対し、甲1に記載の「トリス(ヒドロキシフェニル)メタンのトリグリシジルエーテル」は、本件特許発明1の「エポキシ化合物(b-7)」において、「式(13)」における「q」の値が「0」の場合に相当する化合物である。そうしてみると、甲1に記載のエポキシ化合物は、繰り返し単位

108

85

0001432042000083.jpg

」を有しないのに対し、甲2記載の上記「式(10)で表されるエポキシ樹脂」は、上記繰り返し単位を有する点で異なる。そして、エポキシ樹脂の繰り返し単位の有無、さらには、エポキシ樹脂の分子量分布が、エポキシ樹脂自体の物性(粘度等)や、その硬化物の特性に影響を及ぼすことは、同種のエポキシ樹脂であっても様々な分子量や粘度の製品が市販されていることに照らせば、先の出願時の技術常識といえる。したがって、甲1に記載の「トリス(ヒドロキシフェニル)メタントリグリシジルエーテル」と、甲2に記載の上記「式(10)で表されるエポキシ樹脂」が均等物であったとはいえない。さらに付言すると、特定の構造(式(1))を有する光カチオン重合開始剤と組み合わせて使用されるエポキシ樹脂という観点からみれば、なおさら均等物などとはいえない。したがって、式「

54

80

0001432042000084.jpg

」で表されるエポキシ樹脂について、「q=0の化合物とq=1の化合物を類似した化合物として扱うことは特許権者を含む当業者が本件特許の出願時に当然に認識していたことである」という異議申立人の上記主張は根拠がない。

したがって、異議申立人の上記主張は採用しない。

オ 小括

以上より、一応の相違点1-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(3) 本件特許発明5及び6について

本件特許発明5及び6は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを備え、さらに限定するものであるから、本件特許発明5及び6も、本件特許発明1と同じ理由により、当業者であっても、甲1発明並びに甲2及び甲3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

3 理由3(サポート要件)について

(1) サポート要件の判断基準

特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。

(2) サポート要件についての判断

本件特許明細書の【0006】には、課題として、「良好な画像解像性を保有し、且つ硬化物の湿熱溶出汚染を低減し、湿熱接着性の良好な感光性樹脂組成物を提供すること」と記載されている。

本件特許明細書の段落【0007】には、「(A)光カチオン重合開始剤(A)が、下記式(1)」かつ「該(B)エポキシ化合物が」、「下記式(2)」「で表されるエポキシ化合物(b-1)」、「下記式(3)」「で表されるエポキシ化合物(b-2)」、「下記式(4)」「で表されるエポキシ化合物(b-3)」、「下記式(5)乃至(7)」「で表されるエポキシ化合物の群より選択される一種以上のエポキシ化合物(b-4)」、「下記式(8)及び/又は式(9)」「で表される化合物と」、「下記式(10)及び/又は式(11)」「で示される化合物との共縮合物であるエポキシ化合物(b-5)」、「下記式(12)」「で表されるエポキシ化合物(b-6)」、「下記式(13)」「で表されるエポキシ化合物(b-7)」、「下記式(14)」「で表されるエポキシ化合物(b-8)」、「下記式(15)」「で表されるエポキシ化合物(b-9)」、「及び」「下記式(16)」「で表されるエポキシ化合物(b-10)」「からなる群より選択される1種類又は2種類以上のエポキシ化合物を含有する、感光性樹脂組成物」が記載されており、「(A)光カチオン重合開始剤」の具体例が段落【0025】~【0027】に、「(B)エポキシ化合物」の具体例が段落【0029】~【0032】に示されている。そして、この点について、段落【0058】【表1】及び【0059】【表2】には、上記式の要件を満たす「(A)光カチオン重合開始剤」と「(B)エポキシ化合物」を含有する感光性樹脂組成物の実施例が、段落【0060】【表3】には、上記式の要件を満たさない「(A)光カチオン重合開始剤」を含有する感光性樹脂組成物の比較例が記載され、段落【0058】~【0064】において、実施例のものが比較例のものに比べ、高感度に紫外線フォトリソグラフィーが可能であり、低溶出性で低汚染性の硬化物を得られ、湿熱試験後の基板への接着強度が強力であることが実証結果として示されている。

したがって、本件特許発明1は、課題を解決する手段が反映されているといえる。

そうすると、本件特許発明は、当業者が上記課題を解決できると認識できる特定事項の全てを有し、さらに限定するものであるから、当然発明の課題を解決できると認識できる。

したがって、本件特許の特許請求の範囲の記載は明細書のサポート要件に適合する。

(3) 異議申立人の主張についての判断

ア また、異議申立人は、申立書48~49ページ「(4-3-2)サポート要件違反2:(A)光カチオン重合開始剤のアニオンのサポートがない」欄、及び、申立書49~54ページ「(4-3-3)サポート要件違反3:(A)光カチオン重合開始剤のカチオンのサポートがない」欄において、取消理由3(サポート要件)について、概略次のように主張している。

・本件特許発明1の構成要件では、光カチオン重合開始剤として機能しないカチオンが含まれており、発明の課題を解決できない範囲が含まれている。

・本件特許明細書には、光カチオン重合開始剤のアニオンとして、実施例として「テトラキスペンタフルオロフェニルガレイト」しか記載されておらず、これ以外のアニオンを使用した場合に、実施例の結果と同程度の反応性を有するかが不明である。

・本件特許明細書では、スルホニウムイオン以外のカチオンを使用した例は実施例でサポートされていない。

イ しかしながら、当業者は、そもそも光カチオン重合開始剤として機能しない化合物を、本件特許発明における「光カチオン重合開始剤」と認識することはない。このことは、異議申立人が甲5に記載されていると主張する技術常識(申立書48ページ)を備えた当業者であればなおさらである。

そして、本件特許明細書には、段落【0025】~【0027】に、「R

1

乃至R

4

はそれぞれ独立にペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基を表す」「式(1)」で表されるアニオンと、「スルホニウムイオンまたはヨードニウムイオンである」「カチオン」からなる「(A)光カチオン重合開始剤」が例示されているから、当業者であれば、当該「(A)光カチオン重合開始剤」を使用することにより、上記課題を解決できると認識できる。

また、異議申立人は、テトラキスペンタフルオロフェニルガレイト以外のアニオンを使用した場合の効果が、テトラキスペンタフルオロフェニルガレイト使用した実施例の結果と同程度の結果が得られることが示されていない旨主張するが、本件特許発明1が本件発明の課題を解決できるように認識できる範囲のものであることは上述のとおりである。

ウ また、異議申立人は、令和7年5月21日に提出した意見書において、取消理由3(サポート要件)について、概略次のように主張している。

・(B)エポキシ化合物の絶対的な含有量が少ない場合は硬化物を形成することが困難であり、そもそも感光性樹脂組成物ということができない。また、本件特許の明細書に記載された化合物は、甲6によるとi線の吸収がないから、当該化合物を光カチオン重合開始剤とした用いた場合、組成物を硬化できない。そうすると、本件課題を解決することができない態様が本件訂正発明1の範囲に含まれていることは明白であり、本件訂正発明1はサポート要件を充足しない。

エ しかしながら、本件特許明細書の段落【0047】に、「本発明の感光性樹脂組成物を用いて硬化物を形成するための諸条件は、上記に限定されるわけではなく、必要に応じて適宜調整可能である。」と記載されているとおり、当業者であれば、本件特許発明1の感光性樹脂組成物の組成を適宜調整して硬化させることができるから、「本件課題を解決することができない態様が本件訂正発明1の範囲に含まれていることは明白」であるとはいえない。

また、そもそも、当業者がi線に吸収がない化合物を本件特許発明の「光カチオン重合開始剤」として認識することがないことは、上記イのとおりである。

したがって、上記主張は採用しない。

(4)小括

よって、特許権者が提示した各乙号証を検討するまでもなく、本件特許発明1、5及び6は、発明の詳細な説明に記載したものである。

4 まとめ

上述のとおり、本件特許発明1、5及び6は、同日出願発明1と同一であるとはいえず、特許法39条2項の規定に違反してされたものとはいえない。

また、上述のとおり、本件特許発明1、5及び6は、当業者であっても、甲1発明、甲2及び甲3の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえず、本件特許発明1、5及び6は、特許法29条の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1、5及び6に係る特許は、特許法113条2号に該当しない。

また、上述のとおり、本件特許の請求項1、5及び6に係る特許は、特許法36条6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、特許法113条4号に該当しない。

よって、本件特許の請求項1、5及び6に係る特許は、取消理由1~3によって取り消すことはできない。

第7 令和7年2月3日付け取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について

1 令和7年2月3日付け取消理由通知で採用しなかった異議申立理由の概要

異議申立人が申立書において主張する異議申立理由のうち、取消理由通知で採用しなかった異議申立理由は概略次のとおりである。

(1) 甲第4号証を主引例とする進歩性欠如

本件訂正前特許発明1~6は、甲第4号証を主引例として、甲第2号証及び甲第3号証を組み合わせることにより進歩性がない。

(2) 甲第2号証又は甲第3号証を主引例とする進歩性欠如

本件訂正前特許発明1~6は、甲第2号証又は甲第3号証を主引例として、甲第1号証又は甲第4号証を組み合わせることにより進歩性がない。

2 甲第4号証を主引例とする進歩性欠如に関する合議体の判断

(1) 甲4発明

上記第6の2(1)オの記載事項から、甲4には、次の発明が記載されているものと認められる。

「実施例14の酸発生剤、増感剤、カチオン重合性化合物であるエポキシド(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製、セロキサイド2021P)を均一混合して調整し、実施例14の酸発生剤がジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレートであり、酸発生剤の配合量を2部、増感剤の配合量を2部、エポキシドの配合量を100部とした、熱あるいはエネルギー線硬化性組成物No.11。」

(2) 本件特許発明1

ア 対比

(ア) (A)光カチオン重合開始剤

甲4発明の「ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート」は、本件特許発明1の「(A)光カチオン重合開始剤」に相当する。また、甲4発明の「ジフェニル[4-(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガレート」は、その構造式からみて、本件特許発明1の「下記式(1)

【化1】

37

71

0001432042000085.jpg

(式(1)中、R

1

乃至R

4

はそれぞれ独立にペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基を表す。)で表されるアニオン」という要件を満たす。

(イ) (B)エポキシ化合物

甲4発明の「エポキシド(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製、セロキサイド2021P)」は、本件特許発明1の「(B)エポキシ化合物」に相当する。

(ウ) 感光性樹脂組成物

甲4発明の「熱あるいはエネルギー線硬化性組成物No.11」は、その材料組成からみて、本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」に相当する。

(エ) (A)光カチオン重合開始剤の含有量

甲1発明の「熱あるいはエネルギー線硬化性組成物No.11」は、エポキシド100部に対して開始剤を2部含有するものであるから、本件特許発明1の「(A)光カチオン重合開始剤の含有量は、(B)エポキシ化合物の含有量に対して0.1乃至10質量%である」という要件を満たす。

イ 一致点及び相違点

本件特許発明1と甲4発明を対比すると、以下の点(ア)で一致し、以下の点(イ)で相違する。

(ア) 一致点

「 (A)光カチオン重合開始剤および(B)エポキシ化合物を含む感光性樹脂組成物であって、

該(A)光カチオン重合開始剤(A)が、下記式(1)

【化1】

37

71

0001432042000086.jpg

(式(1)中、R

1

乃至R

4

はそれぞれ独立にペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基を表す。)

で表されるアニオンと、スルホニウムイオンまたはヨードニウムイオンであるカチオンからなる塩を含有し、

(A)光カチオン重合開始剤の含有量は、(B)エポキシ化合物の含有量に対して0.1乃至10質量%である、感光性樹脂組成物。」

(イ) 相違点

(相違点4-1)

式(1)で表される(A)光カチオン重合開始剤および(B)エポキシ化合物を含む感光性樹脂組成物において、上記「(B)エポキシ化合物」が、本件特許発明1は、「エポキシ化合物(b-3)」、「エポキシ化合物(b-4)」、「エポキシ化合物(b-5)」、「エポキシ化合物(b-7)」、「エポキシ化合物(b-9)」及び「エポキシ化合物(b-10)」「からなる群より選択される1種類又は2種類以上のエポキシ化合物」であるのに対し、甲4発明は、「エポキシド(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製、セロキサイド2021P)」である点。

(相違点4-2)

感光性樹脂組成物が、本件特許発明1は「ネガ型レジスト用」であるのに対し、甲4発明は、「ネガ型レジスト用」であることが一応明らかでない点。

ウ 判断

相違点4-1について検討する。

(ア) 甲4には、本件特許発明1の「エポキシ化合物(b-3)」、「エポキシ化合物(b-4)」、「エポキシ化合物(b-5)」、「エポキシ化合物(b-7)」、「エポキシ化合物(b-9)」及び「エポキシ化合物(b-10)」を使用することが記載されていない。

(イ) また、甲4発明の「エポキシド(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製、セロキサイド2021P)」に替えて、甲2に記載の「甲2エポキシ樹脂」、及び甲3に記載の「エポキシ樹脂(a)」を使用する動機付けが存在しない。

(ウ) 仮に、一応の動機づけが認められたとしても、次のとおりである。

すなわち、本件特許明細書には、「(B)エポキシ化合物」として「エポキシ化合物(b-3)」、「エポキシ化合物(b-4)」、「エポキシ化合物(b-5)」、「エポキシ化合物(b-7)」、「エポキシ化合物(b-9)」及び「エポキシ化合物(b-10)」を使用した感光性樹脂組成物は実施例として記載されているのに対し、甲4発明の「エポキシド(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製、セロキサイド2021P)」を使用した感光性樹脂組成物は比較例として記載されており、実施例のものの方が、比較例のものよりも高感度に紫外線フォトリソグラフィーが可能であり、低溶出性で低汚染性の硬化物を得られ、湿熱試験後の基板への接着強度が強力であることが示されている。そうしてみると、本件特許発明1は、甲4発明に対し有利な効果を奏するものといえる。

エ 異議申立人の主張についての判断

(ア) 異議申立人は、申立書35~36ページ「(4-2-2-3)甲第4号証を主引例として、甲第2号証及び甲第3号証を組み合わせることによる進歩性無し」欄において、概略次のように主張している。

・甲第4号証で使用されるエポキシドについて、甲第2号証及び甲第3号証に記載されたエポキシ化合物に置換することに困難性はない。

(イ) しかしながら、上記ウで述べたとおり、甲4発明の「熱あるいはエネルギー線硬化性組成物No.11」の「エポキシド(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ダイセル化学工業株式会社製、セロキサイド2021P)」に替えて、甲2に記載の「甲2エポキシ樹脂」、及び甲3に記載の「エポキシ樹脂(a)」を使用する動機付けが存在しない。また、本件特許発明1は、甲4発明に対し有利な効果を奏するものといえる。

(ウ) したがって、異議申立人の主張は採用しない。

オ 小括

以上より、相違点4-2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明並びに甲2及び甲3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

3 甲第2号証または甲第3号証を主引例とする進歩性欠如に関する合議体の判断

(1) 甲2発明

上記第6の2(1)ウの記載から、甲2には、次の発明が記載されているものと認められる。

「式(3)で表されるエポキシ樹脂53.5部、式(4)で表されるエポキシ樹脂25.0部、式(5)で表されるエポキシ樹脂15.0部、式(1)で示される光カチオン重合開始剤3.0部、反応性エポキシモノマー5.0部、溶剤54.5部、レベリング剤0.15部、カップリング剤1.5部を攪拌機付きフラスコで60°C、1時間攪拌混合して得られ、式(1)が

69

145

0001432042000087.jpg

であり、式(3)が

58

135

0001432042000088.jpg

であり、式(4)が

45

135

0001432042000089.jpg

であり、式(5)が

40

135

0001432042000090.jpg

である、感光性樹脂組成物。」

(2) 本件特許発明1

ア 対比

(ア) (A)光カチオン重合開始剤

甲2発明の「式(1)で示される光カチオン重合開始剤」は、本件特許発明1の「(A)光カチオン重合開始剤」に相当する。また、甲2発明の「式(1)で示される光カチオン重合開始剤」は、その構造式からみて、本件特許発明1の「スルホニウムイオンまたはヨードニウムイオンであるカチオン」「を含有し」という要件を満たす。

(イ) (B)エポキシ化合物

甲2発明の「式(3)で表されるエポキシ樹脂」、「式(4)で表されるエポキシ樹脂」、及び「式(5)で表されるエポキシ樹脂」は、いずれも、本件特許発明1の「(B)エポキシ化合物」に相当する。

(ウ) 感光性樹脂組成物

甲2発明の「感光性樹脂組成物」は、本件特許発明1の「感光性樹脂組成物」に相当する。

(エ) (A)光カチオン重合開始剤の含有量

甲2発明の「感光性樹脂組成物」は、「式(3)で表されるエポキシ樹脂53.5部、式(4)で表されるエポキシ樹脂25.0部、式(5)で表されるエポキシ樹脂15.0部、式(1)で示される光カチオン重合開始剤3.0部」を含有するものであるから、本件特許発明1の「(A)光カチオン重合開始剤の含有量は、(B)エポキシ化合物の含有量に対して0.1乃至10質量%である」という要件を満たす。

イ 一致点及び相違点

本件特許発明1と甲2発明を対比すると、以下の点(ア)で一致し、以下の点(イ)で相違する。

(ア) 一致点

「 (A)光カチオン重合開始剤および(B)エポキシ化合物を含む感光性樹脂組成物であって、

該(A)光カチオン重合開始剤(A)が、アニオンとスルホニウムイオンまたはヨードニウムイオンであるカチオンからなる塩を含有し、

(A)光カチオン重合開始剤の含有量は、(B)エポキシ化合物の含有量に対して0.1乃至10質量%である、感光性樹脂組成物。」

(イ) 相違点

(相違点2-1)

(A)光カチオン重合開始剤のアニオンが、本件特許発明1は、「下記式(1)

【化1】

42

80

0001432042000091.jpg

(式(1)中、R

1

乃至R

4

はそれぞれ独立にペンタフルオロフェニル基又はビス(トリフルオロメチル)フェニル基を表す。)

で表されるアニオン」であるのに対し、甲2発明は、「

68

73

0001432042000092.jpg

である点。

(相違点2-2)

式(1)で表される(A)光カチオン重合開始剤および(B)エポキシ化合物を含む感光性樹脂組成物において、上記「(B)エポキシ化合物」が、本件特許発明1は、「エポキシ化合物(b-3)」、「エポキシ化合物(b-4)」、「エポキシ化合物(b-5)」、「エポキシ化合物(b-7)」、「エポキシ化合物(b-9)」及び「エポキシ化合物(b-10)」「からなる群より選択される1種類又は2種類以上のエポキシ化合物」であるのに対し、甲2発明は、「式(3)で表されるエポキシ樹脂」、「式(4)で表されるエポキシ樹脂」、及び「式(5)で表されるエポキシ樹脂」である点。

(相違点2-3)

感光性樹脂組成物が、本件特許発明1は「ネガ型レジスト用」であるのに対し、甲2発明は、「ネガ型レジスト用」であることが一応明らかでない点。

ウ 判断

相違点2-1について検討する。

甲2には、光カチオン重合開始剤のアニオンを「

42

80

0001432042000093.jpg

」とすることが記載されていない。また、甲2の段落【0037】に、「本発明の感光性樹脂組成物は、前記式(1)で表される光カチオン重合開始剤(A-1)と1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)を含有してなることを特徴とし、高感度でプレッシャークッカー試験後の基板への密着性が低下しないパターンを形成できる。」と記載されているとおり、甲2発明の光カチオン重合開始剤のアニオンは、「

68

73

0001432042000094.jpg

であることが前提である。そうしてみると、甲2発明の「式(1)で表される光カチオン重合開始剤(A-1)」に替えて、甲1及び甲4に記載の光カチオン重合開始剤を採用する動機付けはない(むしろ阻害要因がある。)。

そして、このことは、甲第3号証に記載の発明を主引用発明とした場合についても同様である。

エ 異議申立人の主張についての判断

(ア) 異議申立人は、申立書44~45ページ「(4-2-2-4)甲第2号証又は甲第3号証を主引例として、甲第1号証及び甲第4号証を組み合わせることによる進歩性無し」欄において、概略次のように主張している。

・甲第2号証または甲第3号証に記載された感光性樹脂組成物における光カチオン重合開始剤として、甲第1号証または甲第4号証に記載されたオニウムガレート塩を使用することにより、カチオン重合性能を損なうことなく「毒性の問題が無い感光性樹脂組成物を得る」ことができ、課題を解決でき、その結果本件特許発明1の構成に想到することができるため、本件特許発明1は進歩性がない。

(イ) しかしながら、上記ウで述べたとおり、甲2発明の光カチオン重合開始剤のアニオンは、「

68

73

0001432042000095.jpg

であることを前提としているから、特段の事情がない限り、甲2発明の「式(1)で表される光カチオン重合開始剤(A-1)」に替えて、甲1及び甲4に記載の光カチオン重合開始剤を採用する動機付けはない。

オ 小括

以上より、相違点2-2及び2-3について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲2発明並びに甲2及び甲3に記載の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

また、甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたともいえない。

第8 むすび

本件特許1、5及び6は、取消理由通知書に記載した取消理由及び申立書に記載された申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に本件特許1、5及び6を取り消すべき理由を発見しない。

加えて、請求項2~4は、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てのうち、請求項2~4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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