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Trademark Appeal Case

請求項減縮訂正の適否

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024701057
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7475771号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし6〕、〔7ないし12〕について訂正することを認める。
特許第7475771号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7475771号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)12月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2020年(令和2年)12月18日 (KR)大韓民国、2021年(令和3年)12月16日 (KR)大韓民国)を国際出願日とする出願であって、令和6年4月19日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年同月30日に特許掲載公報が発行されたものである。

その後、その特許に対し、令和6年10月30日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし12)がされ、同年12月2日付けで手続補正指令がされ、同年同月10日に手続補正書(方式)が提出され、令和7年3月27日付けで取消理由が通知され、同年6月20日に特許権者 エルジー・ケム・リミテッド(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年7月2日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、これに対し同年8月5日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。

第2 本件訂正について

1 訂正の内容

令和7年6月20日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「ii)24.0°Cでの吸収速度(vortex time)が60秒以下である、高吸水性樹脂」と記載されているのを、

「ii)24.0°Cでの吸収速度(vortex time)が60秒以下であ

り、150μm~850μmの粒径を有する、

高吸水性樹脂」に訂正する。請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし6も同様に訂正する。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項7に「ii)24.0°Cでの吸収速度(vortex time)が60秒以下である、高吸水性樹脂」と記載されているのを、

「ii)24.0°Cでの吸収速度(vortex time)が60秒以下であ

り、150μm~850μmの粒径を有する、

高吸水性樹脂」に訂正する。請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8ないし12も同様に訂正する。

(3)一群の請求項について

訂正前の請求項1ないし6について、請求項2ないし6は請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし6に対応する訂正後の請求項1ないし6は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。また、訂正前の請求項7ないし12について、請求項8ないし12は請求項7の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項7ないし12に対応する訂正後の請求項7ないし12は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

2 訂正の適否の判断

(1)訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(ア)訂正事項1について

訂正事項1に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項1に記載されていた高吸水性樹脂について、150μm~850μmの粒径を有することを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、訂正事項1の訂正により請求項1に追加された事項は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「本件特許の発明の詳細な説明」という。)の【0152】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

訂正事項1による、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし6の訂正についても同様である。

(イ)訂正事項2について

訂正事項2に係る請求項7の訂正は、訂正前の請求項7に記載されていた高吸水性樹脂の製造方法について、高吸水性樹脂が150μm~850μmの粒径を有することを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、訂正事項2の訂正により請求項7に追加された事項は、本件特許の発明の詳細な説明の【0152】の記載からみて、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。

訂正事項2による、請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8ないし12の訂正についても同様である。

(2)独立特許要件について

特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし12に対してされているので、訂正を認める要件として、訂正前の請求項1ないし12に対応する訂正後の請求項1ないし12に対しては、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。

3 訂正請求についてのまとめ

以上のとおり、本件訂正は特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。

よって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし6〕、〔7ないし12〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明

上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】

酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤の架橋重合体を含む粉末形態のベース樹脂;および

前記ベース樹脂上に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋した表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、

前記高吸水性樹脂は、

i)300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定した、粒子の最長直径に対する粒子の最短直径の比を意味する縦横比(Aspect ratio;A/R)の平均値が0.75以上であり、かつ下記式1により計算される凸性(convexity)の平均値が0.9以下であり、

ii)24.0°Cでの吸収速度(vortex time)が60秒以下であり、

150μm~850μmの粒径を有する、

高吸水性樹脂:

[式1]

凸性(convexity)=膨らんだ外表面の周囲/実際の粒子の周囲

前記式1において、

前記膨らんだ外表面の周囲(convex hull perimeter)は測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージを輪郭の周囲に伸びる仮想の弾性バンド(imaginary elastic band)で囲むと仮定した時の弾性バンドの長さで定義され、

前記実際の粒子の周囲は前記測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージの実際の周長を意味する。

【請求項2】

前記高吸水性樹脂はEDANA法WSP241.3の方法により測定した遠心分離保水能(CRC)が27g/g以上であり、EDANA法WSP242.3の方法により測定した0.7psiの加圧吸収能(AUP)が23.5g/g以上である、請求項1に記載の高吸水性樹脂。

【請求項3】

前記高吸水性樹脂は複数の気孔を含み、前記複数の気孔は平均直径が10μm~400μmである、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂。

【請求項4】

前記高吸水性樹脂は0.2μm~50μmの平均粒径を有する疎水性粒子を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂。

【請求項5】

前記疎水性粒子は疎水性シリカ、炭素数7~24の脂肪酸の金属塩および疎水性有機粒子で構成される群より選ばれる1種以上である、請求項4に記載の高吸水性樹脂。

【請求項6】

前記炭素数7~24の脂肪酸の金属塩はステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛およびステアリン酸カリウムで構成される群より選ばれる1種以上のステアリン酸の金属塩である、請求項5に記載の高吸水性樹脂。

【請求項7】

酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤を含む単量体組成物を準備する段階(段階1);

疎水性粒子水分散液および炭酸塩系発泡剤の存在下で、前記単量体組成物を架橋重合して含水ゲル重合体を製造する段階(段階2);

前記含水ゲル重合体を乾燥および粉砕して粉末形態のベース樹脂を形成する段階(段階3);および

表面架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂の表面を追加架橋して表面架橋層を形成して、高吸水性樹脂を製造する段階(段階4)を含み、

前記疎水性粒子水分散液は0.2μm~50μmの平均粒径を有する疎水性粒子が分散しているコロイド溶液であり、

前記高吸水性樹脂は、

i)300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定した、粒子の最長直径に対する粒子の最短直径の比を意味する縦横比(Aspect ratio;A/R)の平均値が0.75以上であり、かつ下記式1により計算される凸性(convexity)の平均値が0.9以下であり、

ii)24.0°Cでの吸収速度(vortex time)が60秒以下であり、

150μm~850μmの粒径を有する、

高吸水性樹脂の製造方法:

[式1]

凸性(convexity)=膨らんだ外表面の周囲/実際の粒子の周囲

前記式1において、

前記膨らんだ外表面の周囲(convex hull perimeter)は測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージを輪郭の周囲に伸びる仮想の弾性バンド(imaginary elastic band)で囲むと仮定した時の弾性バンドの長さで定義され、

前記実際の粒子の周囲は前記測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージの実際の周長を意味する。

【請求項8】

前記疎水性粒子は前記アクリル酸系単量体100重量部に対して0.001~5重量部で使用される、請求項7に記載の高吸水性樹脂の製造方法。

【請求項9】

前記炭酸塩系発泡剤は炭酸水素ナトリウム(sodium bicarbonate)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、炭酸水素カリウム(potassium bicarbonate)、炭酸カリウム(potassium carbonate)、炭酸水素カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸水素マグネシウム(magnesiumbicarbonate)および炭酸マグネシウム(magnesium carbonate)で構成される群より選ばれる1種以上である、請求項7または8に記載の高吸水性樹脂の製造方法。

【請求項10】

前記炭酸塩系発泡剤および前記疎水性粒子は1:0.1~1:4の重量比で使用される、請求項7から9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。

【請求項11】

前記疎水性粒子水分散液は界面活性剤の存在下で前記疎水性粒子として炭素数7~24の脂肪酸の金属塩が分散しているコロイド溶液である、請求項7から10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。

【請求項12】

前記界面活性剤は非イオン性界面活性剤およびアニオン性界面活性剤を含む、請求項11に記載の高吸水性樹脂の製造方法。」

第4 特許異議申立書等に記載した申立ての理由の概要

令和6年10月30日に特許異議申立人が提出し、同年12月10日に提出した手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)及び令和7年8月5日に提出した意見書に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。

なお、申立て理由の番号は、当審において新たに付したものであり、申立理由16及び17は、令和7年8月5日に特許異議申立人が提出した意見書に記載した理由である。

1 申立理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性)

本件特許発明1及び2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

2 申立理由1-2(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許発明1、2、4ないし6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、4ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

3 申立理由2-1(甲第2号証を主たる証拠とする新規性)

本件特許発明1及び2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

4 申立理由2-2(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許発明1及び2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

5 申立理由3-1(甲第3号証を主たる証拠とする新規性)

本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

6 申立理由3-2(甲第3号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許発明1ないし9、11及び12は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9、11及び12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

7 申立理由4-1(甲第4号証を主たる証拠とする新規性)

本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

8 申立理由4-2(甲第4号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

9 申立理由5-1(甲第6号証を主たる証拠とする新規性)

本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

10 申立理由5-2(甲第6号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許発明1ないし6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

11 申立理由6-1(甲第7号証を主たる証拠とする新規性)

本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

12 申立理由6-2(甲第7号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

13 申立理由7-1(甲第8号証を主たる証拠とする新規性)

本件特許発明1は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

14 申立理由7-2(甲第8号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許発明1は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

15 申立理由8-1(甲第12号証を主たる証拠とする新規性)

本件特許発明1及び2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第12号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

16 申立理由8-2(甲第12号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許発明1及び2は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第12号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

17 申立理由9-1(甲第13号証を主たる証拠とする新規性)

本件特許発明1及び3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第13号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

18 申立理由9-2(甲第13号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許発明1及び3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第13号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

19 申立理由10(甲第9号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第9号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

20 申立理由11(甲第10号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許発明1ないし12は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第10号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

21 申立理由12(甲第11号証を主たる証拠とする進歩性)

本件特許発明1ないし9、11及び12は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第11号証に記載された発明に基いて、本件特許の優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9、11及び12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

22 申立理由13(甲第5号証に基づく拡大先願)

本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件特許の出願日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開された甲第5号証に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許の発明者が甲第5号証に係る日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので(特許法第184条の13参照)、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。

23 申立理由14(サポート要件)

本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(1)具体的解決手段の欠如(請求項1-3)

高吸水性樹脂の分野において吸水速度の向上は従来から知られた課題であり(甲1、2、5-8、13、21)、本件発明は知られている課題を具体的なパラメータにしただけである。

そして、本件特許の明細書に上記課題を解決できる高吸水性樹脂として記載されているのは、通常使用される気泡安定剤の代わりに疎水性粒子が含まれている水分散液を気泡安定剤として使用することで製造された、大きさが小さくて均一な形態の気孔が架橋重合体全領域に均一に分布した気孔構造を有する高吸水性樹脂のみであり、それ以外の解決手段は記載されていない。

そうすると、特許請求の範囲に記載された発明のうち、上記の構成を有しないものは発明の詳細な説明に記載されたものとはいえない。

(2)特定粒度のもつ性質を粒子全体に一般化できない(請求項1-6)

本件特許の請求項1には高吸水性樹脂の粒度が規定されていないため、300μm~600μmの粒度区分を少量しか含有しない高吸水性樹脂を含む。本件請求項1において縦横比と凸性は300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定されているが、300μm~600μmの粒度区分を少量しか含有しない高吸水性樹脂の場合、この粒径の粒子に関する縦横比と凸性を請求項1に記載された範囲としても本件特許の課題が解決できることを当業者が認識することができない。

(3)特定粒度のもつ性質を粒子全体に一般化できない(請求項3)

本件特許の請求項3において、気孔は平均直径が10μm~400μmであることが規定されている。一方、本件の実施例にて、150μm~850μmの粒径を有する粒子のうち、600~710μmの粒径を有する粒子のみを用いて気孔の平均直径を求めている(本件明細書の【0163】~【0164】を参照)。 ここで、 発泡重合で得られた気泡を含有する重合ゲルを乾燥のためにゲル粉砕していく場合、ゲル粉砕によって粒子が細かくなるほど、気泡がつぶれていくため、気泡の数や形状が粒度区分の大小によって変化することは技術常識である。よって、気泡も粒度区分で変化するため、実験例1(【0163】~【0164】) が本件請求項3の、気孔の平均直径の測定方法であるならば、なぜ600~710μmの粒径を有する粒子のみで高吸水性樹脂全体の課題を解決できると言えるのかが不明である。

(4)全ての疎水性粒子にまで一般化できない(請求項4)

本件特許発明4における疎水性粒子は「水に対する接触角が50°以上であるか、 または水に溶けない水不溶性粒子」と定義されている(本件明細書の【0062】を参照)。よって、本件明細書の【0062】に示される定義からは、本件発明4における疎水性粒子は、水に対するなじみ性の意味にかぎらず「水不溶性」の粒子であればよく、一般に親水性とされる水不溶性粒子、例えば親水性シリカも本件特許発明4における疎水性粒子に含まれる。また、本件明細書の【0062】に示される定義からは、本件発明4における疎水性粒子としては、「水に対する接触角が50°以上である“水溶性”の粒子」も含み得る。

しかし、本件明細書には、「水に対する接触角が50°未満である粒子および水溶性(water-soluble)粒子は水溶液形態である単量体組成物に溶解することができ、 重合工程で発生する気泡を捕獲する役割をすることが難しい」と記載されている(本件明細書の【0062】を参照)。

したがって、本件明細書に具体的に開示された発明を、疎水性粒子として、水に対する接触角が50°未満である水不溶性粒子および/ または「水に対する接触角が50°以上である“水溶性”の粒子」 を使用する発明の範囲まで広く一般化できない。

24 申立理由15(明確性)

本件特許の請求項3ないし6に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

発泡重合で得られた気泡を含有する重合ゲルを乾燥のためにゲル粉砕していく場合、ゲル粉砕によって粒子が細かくなるほど、気泡がつぶれているため、気泡の数や形状が粒度区分の大小によって変化することは技術常識である。

よって、気泡も粒度区分で変化するため、本件明細書の【0163】~【0164】に示された測定方法が気孔の平均直径の測定方法の一例に過ぎない場合には、測定する粒子の粒径によって、存在しうる最大の気孔の直径が変わるので、測定方法によって気孔の平均直径が変わる。

さらに、気孔の平均孔径を測定するために、当該気孔を観察する際の拡大倍率は、 本件明細書の【0164】には20~24倍と記載されている一方、 本件明細書の【0079】では50倍ないし200倍と記載されている。そして、当該拡大倍率によって観察される気孔の下限が変化する。例えば、拡大倍率20倍で観察できなかったより小さな気孔(例: 0.1μm以下の気孔)が、拡大倍率200倍では観察できることは容易に予想できる。よって、本件発明3では、気孔の平均孔径の測定における当該気孔を観察する際の拡大倍率が規定されておらず、本件明細書の【0079】および【0164】の拡大倍率20~200倍において、より小さな気孔が観察される拡大倍率200倍での観察の方が請求項3で規定の気孔の平均直径が小さくなることは自明である。

したがって、本件特許発明3は、測定対象となる粒子の粒径が特定されていないこと並びに気孔を観察する際の拡大倍率が特定されていないことから、気孔の平均直径の測定方法を特定することができず、その結果、気孔の平均直径がどのような範囲の高吸水性樹脂まで包含するものであるのかが明確でない。請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4ないし6に係る発明も同様の理由で明確でない。

25 申立理由16(明確性)

本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(1)「850~150μm」について(請求項1ないし12)

訂正後の本件特許の請求項1及び請求項7には「150μm~850μmの粒径を有する」高吸水性樹脂と記載されている。

訂正請求書(3-4頁及び5-6頁)に記載されているとおり、本件特許の発明の詳細な説明の【0152】の記載を根拠として訂正されたものであるから、高吸水性樹脂の100重量%が「150μm~850μmの粒径を有する」ものであると解される一方で、本件特許の発明の詳細な説明の【0083】には、「高吸水性樹脂は、約150μm~850μmの粒径を有する粒子を総重量を基準として90重量%以上含み得」ることが記載されており、150μm未満または850μm超の粒径を有する高吸水性樹脂を10重量%以下で含有するものとも解される。

その結果、本件特許の請求項1及び7に記載された「150μm~850μmの粒径を有する」高吸水性樹脂という用語の意味が、2通りに解釈できるので、明確でない。

(2)「吸収速度(vortex time)」、「遠心分離保水能(CRC)」、「加圧吸収能(AUP)」について(請求項1ないし12)

訂正後の本件特許の請求項1、2及び7に記載された「吸収速度(vortex time)」、「遠心分離保水能(CRC)」及び「加圧吸収能(AUP)」という用語は、「150μm~850μmの粒径を有する」高吸水性樹脂を測定対象とする物性であるのか、本件特許の発明の詳細な説明の【0083】に記載された、150μm~850μm以外の粒径の粒子を含む高吸水性樹脂を測定対象とする物性であるのかが明確でない。

26 申立理由17(サポート要件)

本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。

(1)「吸収速度(vortex time)」について(請求項1ないし12)

本件特許の発明の詳細な説明の【0041】及び【0178】には、高吸水性樹脂の吸収速度(vortex time)の範囲及び測定法が記載されているが、いかなる粒度の高吸水性樹脂を測定した場合の範囲であるのかが記載されていない。そして、高吸水性樹脂の物性(特に、吸収速度)が粒度ごとに変化することは技術常識である。そうすると、「150μm~850μmの粒径を有する」高吸水性樹脂の吸収速度は、発明の詳細な説明に記載されていない。

(2)「遠心分離保水能(CRC)」、「加圧吸収能(AUP)」について(請求項2ないし6)

本件特許の発明の詳細な説明の【0080及~【0082】び【0169】~【0172】には、高吸水性樹脂の遠心分離保水能(CRC)、加圧吸収能(AUP)の範囲及び測定法が記載されているが、いかなる粒度の高吸水性樹脂を測定した場合の範囲であるのかが記載されていない。そして、CRC及びAUPを含めた高吸水性樹脂の物性が粒度ごとに変化することは技術常識である。そうすると、「150μm~850μmの粒径を有する」高吸水性樹脂の遠心分離保水能(CRC)及び加圧吸収能(AUP)は、発明の詳細な説明に記載されていない。

27 証拠方法

甲第1号証:国際公開第2020/144948号

甲第2号証:国際公開第2019/201668号

甲第3号証:国際公開第2011/078298号

甲第4号証:特表2020-520402号公報

甲第5号証:国際公開第2021/132266号

甲第6号証:国際公開第2019/117541号

甲第7号証:国際公開第2020/145548号

甲第8号証:住友精化「高吸水性樹脂 アクアキープ丸R(当審注:原文は「R」に丸囲い)」カタログ、作成日:2001年、住友精化株式会社

甲第9号証:国際公開第96/17884号

甲第10号証:欧州特許出願公開第1374919号明細書

甲第11号証:国際公開第2010/095427号

甲第12号証:国際公開第2012/033025号

甲第13号証:特開2006-342306号公報

甲第14号証:特表2013-521962号公報

甲第15号証:国際公開第2015/093594号

甲第16号証:特開平8-253615号公報

甲第17号証:福原元一編、日本工業規格 高吸水性樹脂の吸水速度試験方法 JIS K 7224-1996、平成8年3月31日、財団法人 日本規格協会

甲第18号証:特開平10-251310号公報

甲第19号証:特許第3657287号公報

甲第20号証:特開2004-261796号公報

甲第21号証:国際公開第2020/122559号

甲第22号証:特表2012-522880号公報

甲第23号証:特表2021-521924号公報

甲第24号証:特表2021-505716号公報

甲第25号証:特表2021-518874号公報

甲第26号証:特表2021-516720号公報

甲第27号証:特開平6-57010号公報

参考文献1:特表平6-507564号公報

参考文献2:特許第3768235号公報

なお、証拠の表記については、特許異議申立書及び上記意見書の記載に概ね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。

また、参考文献1及び2は、令和7年8月5日に提出された意見書に添付して提出されたものである。

第5 取消理由の概要

令和7年3月27日付けで通知された取消理由の概要は次のとおりである。なお、当該取消理由は、上記申立理由14(2)と同旨である。

取消理由(サポート要件):本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。

1 本件特許発明が解決しようとする課題

本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0008】によると、本件特許発明1ないし6が解決しようとする課題は、粒子の縦横比(Aspect ratio)が一定水準以上であり、かつ粗度(Roughness)が大きくて向上した吸収速度を示す高吸水性樹脂を提供することであり、本件特許発明7ないし12が解決しようとする課題は、粒子の縦横比が一定水準以上であり、かつ粗度が大きくて向上した吸収速度を示す高吸水性樹脂の製造方法を提供することであると認められる(以下、総称して「本発明の課題」という。)。

2 判断

本件特許の明細書の【0020】には、速い吸収速度を有する高吸水性樹脂を製造するためには高吸水性樹脂粒子内の比表面積が増加しなければならず、比表面積増加のためには同じ粒子の大きさでは縦横比が小さいことが有利であるが、縦横比がある水準以下に小さくなると、保水能および加圧吸水能などの他の物性バランスが悪化するので、一定水準以上の粒子の縦横比を達成しながらも、粒子の比表面積が広くなる発泡メカニズムを実現する必要があることが記載されており、同【0022】には、「高吸水性樹脂粒子が球形に近い形態であるかを判断できるパラメータとして縦横比(Aspect ratio)を考慮し、高吸水性樹脂粒子表面の粗度を判断できるパラメータとして凸性(convexity)を考慮し、かつこれらパラメータそれぞれが特定水準以上の値を有するようにする場合、高吸水性樹脂が速い吸収速度および向上した保水能と加圧吸水能のバランスを示し得ること」が記載されている。

本件特許の請求項1及び7には、300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して、縦横比及び凸性を測定することが記載されている。一方、本件特許の請求項1及び7には、高吸水性樹脂の粒径は何ら特定されていないので、本件特許発明1及び7は、任意の粒径を有する高吸水性樹脂(例えば、粒径が300μm~600μmの粒子を少量しか含有しない高吸水樹脂)及びその製造方法を含むものと認められる。

本件特許の明細書の【0140】ないし【0182】に記載された実施例において、分級して150μm~850μmの粒径を有する高吸水性樹脂について、300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定した縦横比及び凸性が本件特許発明の範囲内である場合に、本発明の課題が解決できることが示されているものの、任意の粒径を有する高吸水性樹脂(例えば、粒径が300μm~600μmの粒子を少量しか含有しない高吸水樹脂)についても同様に、300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定した縦横比及び凸性が本件特許発明の範囲内であれば本発明の課題が解決できることは示されていない。そして、例えば、粒径が300μm~600μmの粒子を少量しか含有しない高吸水樹脂については、300μm~600μmの粒径を有する粒子が高吸水性樹脂全体の性質を代表しているものとは認められないので、300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定した縦横比及び凸性が本件特許発明1及び7の範囲であれば、本発明の課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるとは、出願時の技術常識を参酌しても認められない。

よって、本件特許発明1及び7のすべての範囲にまで発明の詳細な説明に開示された発明を拡張ないし一般化できるものとは認められず、本件特許発明1及び7に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するものであるとはいえない。

請求項1及び請求項7を直接又は間接的に引用して特定する本件特許発明2ないし6、8ないし12についても同様である。

第6 当審の判断

当審は、上記取消理由並びに申立理由1ないし17には、以下のとおり理由がないと判断する。

1 取消理由(サポート要件)並びに申立理由14及び申立理由17について

取消理由、申立理由14及び申立理由17は、いずれもサポート要件に関するものであるから併せて検討する。

(1)サポート要件の判断基準

特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

(2)特許請求の範囲の記載

特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。

(3)本件特許発明が解決しようとする課題

上記第5 1に記載したとおりである。

(4)サポート要件の判断

本件特許の発明の詳細な説明の【0009】及び【0010】には訂正前の本件特許発明1及び7に対応する記載があり、同【0027】~【0029】には縦横比について記載され、同【0030】~【0034】には凸性について記載され、同【0039】には、縦横比と凸性の数値範囲がその理由とともに記載され、同【0041】には、吸収速度の数値範囲が記載され、同【0062】~【0073】には疎水性粒子について記載され、同【0074】~【0079】には高吸水性樹脂の気孔について記載され、同【0080】~【0082】には遠心分離保水能(CRC)及び加圧吸収能(AUP)について記載され、同【0084】~【0138】には本件特許発明の高吸水性樹脂の製造方法が記載され、特に、同【0102】~【0103】には製造方法の段階2で使用する界面活性剤が、同【0106】には前記段階2で使用する疎水性粒子の使用割合が、同【0107】には前記段階2で使用する炭酸塩系発泡剤が、同【0109】には炭酸塩系発泡剤と疎水性粒子の重量比が、それぞれ記載され、同【0152】には実施例1において表面架橋工程後の高吸水性樹脂を分級して150μm~850μmの粒径を有する実施例1の高吸水性樹脂を製造したことが記載されており、本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし12に対応する記載がある。

そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0020】には、速い吸収速度を有する高吸水性樹脂を製造するためには、高吸水性樹脂粒子内の比表面積が増加すればよく、同じ粒子の大きさでは縦横比が小さいことが有利であるが、縦横比がある水準以下では保水能および加圧吸収能などの他の物性バランスが悪化することが記載され、同【0021】には、一定水準以上の縦横比を有しながらも、粒子表面に効果的な大きさの気孔を形成することによって粒子表面の粗度を増大させて比表面積を同時に広げる場合、高吸水性樹脂の吸収速度及び吸収性能を同時に向上させ得ることが記載され、同【0022】には、高吸水性樹脂粒子が球形に近い形態であるかを判断できるパラメータとして縦横比を考慮し、高吸水性樹脂粒子表面の粗度を判断できるパラメータとして凸性を考慮し、これらパラメータそれぞれが特定水準以上の値を有するようにする場合、高吸水性樹脂が速い吸収速度および向上した保水能と加圧吸水能のバランスを示し得ることが記載され、同【0023】には、このような高吸水性樹脂が、疎水性粒子が含まれている水分散液を気泡安定剤として使用して製造できることが記載され、同【0139】~【0182】には、縦横比及び凸性が所定の範囲であり、かつ、吸収速度が60秒以下である、実施例1ないし7の高吸水性樹脂が、遠心分離保水能(CRC)及び加圧吸収能(AUP)を維持しながらも速い吸収速度を示すことが記載され、縦横比及び/又は凸性が所定の範囲から外れる比較例1ないし4の高吸水性樹脂が、速い吸収速度を示さない、あるいは、AUPなどの他の物性を維持できないことが示されている。

そうすると、縦横比の平均値が0.75以上及び凸性の平均値が0.9以下の条件を満たし、吸収速度が60秒以下である高吸水性樹脂であれば、CRCやAUPなどの基本的な吸収性能を維持しながらも、速い吸収速度を示すと当業者は認識する。

そして、本件特許発明1は、上記事項を全て満たし、さらに限定するものであるから、発明の詳細な説明の記載から当業者が本発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。また、本件特許発明7は、上記事項を全て満たす高吸水性樹脂を製造する方法であるから、発明の詳細な説明の記載から当業者が本発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。

したがって、本件特許の発明の詳細な説明の上記記載並びに出願時の技術常識を踏まえれば、当業者であれば本件特許発明1及び本件特許発明7の構成を満たせば本発明の課題が解決できるものと理解する。本件特許発明1の発明特定事項のすべてを有し、さらに限定するものである本件特許発明2ないし6並びに本件特許発明7の発明特定事項のすべてを有し、さらに限定するものである本件特許発明8ないし12についても同様である。したがって、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。

よって、本件特許発明1ないし12に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載されたものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を充足する。

(5)特許異議申立人の主張について

ア 取消理由について

(ア)特許異議申立人の主張

特許異議申立人は、特許異議申立書(177-178頁)において上記第4 23(2)のとおり主張し、令和7年8月5日に提出された意見書(2-10頁)において、以下のとおり主張している。

訂正後の請求項1及び請求項7に係る発明は、300μm~600μmの粒径を有する粒子の含有割合を何ら規定していないので、粒径が300μm~600μmの粒子を少量しか含有しない高吸水性樹脂を含むものである。そして、縦横比や凸性は粒度ごとに異なること、ごく少量の300μm~600μmの粒径を有する粒子が高吸水性樹脂全体の性質を代表することについて何ら反論及び反証をしていないことから、取消理由は解消していない。

具体的には、目的に応じて高吸水性樹脂の粒度分布は様々であり、例えば、粒径が600μm以上である粗粒が多い高吸水性樹脂(参考文献2の20頁表4の試料4-3)や粒径が300μm未満の細粒が多い高吸水性樹脂(参考文献1の請求項3)が存在する。

ゲル容量(本件でいうCRC)、PUP容量(参考文献2の20頁表4)、吸水速度(甲17の12頁解説表4)等の吸水性能は粒度区分によって異なり、ある粒度区分で吸水性能が向上するからといって粒子全体で必ずしも向上するとは限らない。参考文献2の20頁表4の試料4-3や参考文献1の請求項3のように、粒径が300μm~600μmの粒子を少量しか含有しない高吸水性樹脂であれば、なおさらである。

異議申立書(177頁15行~178頁1行)で指摘したとおり、粒子を粉砕していく場合、粉砕によって粒子が細かくなるほど、粒子は丸みを帯びていくため、粉砕後の粒子形状(縦横比や凸性)は粒度区分の大小によって大きく変化することは技術常識であり、縦横比や凸性が粒度区分ごとに異なることは自明であるから、ある粒度区分で縦横比が向上するとしても粒子全体で縦横比が向上し、さらには吸収性能が向上するとは限らない。参考文献2の20頁表4の試料4-3や参考文献1の請求項3のように、粒径が300μm~600μmの粒子を少量しか含有しない高吸水性樹脂であれば、粒径が300μm~600μmである粒子の縦横比及び凸性の測定結果が、樹脂全体の縦横比及び凸性を示していないことは自明である。

(イ)特許異議申立人の主張についての当審の判断

本件特許発明が課題を解決することができることは、上記(4)で検討したとおりである。そして、本件訂正により、高吸水性樹脂が150μm~850μmの粒径を有するものに限定されたところ、特許異議申立人が引用する参考文献1及び2にも記載されるとおり、高吸水性樹脂の粒度はある程度の幅をもって分布することが通常であるから、150μm~850μmの中央のかなりの部分をしめる300μm~600μmの粒子の性質は、高吸水性樹脂の全体の性質に相応の貢献をもたらし、発明の課題を解決すると当業者は認識することができる。また、特許異議申立人は、300μm~600μmの粒度区分を少量しか含有しない高吸水性樹脂では課題を解決することができないことを示す具体的な証拠を提示するものでもない。

よって、特許異議申立人の主張は採用することができない。

イ 申立理由14のうち、取消理由に採用されなかったものについて

特許異議申立人は、特許異議申立書(175-179頁)において上記第4 23(1)、(3)及び(4)のとおり主張し、令和7年8月5日に提出された意見書(10頁)において上記第4 23(3)と同旨の主張をしているので、以下で順に検討する。

(ア)具体的解決手段の欠如(第4 23(1))について

本件特許の発明の詳細な説明の【0021】に、一定水準以上の縦横比を有しながらも、粒子表面に効果的な大きさの気孔を形成することによって粒子表面の粗度を増大させて比表面積を同時に広げる場合、高吸水性樹脂の吸収速度及び吸収性能を同時に向上させ得ることが記載されているとおり、本件特許発明が気泡安定剤の種類に関わらず、粒子の縦横比及び凸性で表される粒子の形状に基づいて発明の課題を解決できることは、上記(4)に記載したとおりである。すなわち、「疎水性粒子が含まれている水分散液を気泡安定剤として使用することで製造され、大きさが小さくて均一な形態の気孔が架橋重合体全領域に均一に分布した気孔構造を有する」ことは、発明の課題解決手段として必須の構成ではない。

よって、特許異議申立人の主張は採用できない。

(イ)「特定粒度の持つ性質を粒子全体に一般化できない」(第4 23(3))及び「全ての疎水性粒子にまで一般化できない」(第4 23(4))について

本件特許発明1が本発明の課題を解決できることは、上記(4)で検討したとおりであり、仮に、気孔の直径や形状が粒度によって変化することがあるとしても、請求項1に記載された縦横比及び凸性の範囲を満たすものは、発明の課題を解決すると当業者は認識することができる。また、本件特許発明1が気泡安定剤(疎水性粒子)の種類に関わらず、発明の課題を解決できると認識できることは、上記(ア)に記載したとおりである。そして、本件特許発明3及び4は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有し、さらに限定するものであるから、本件特許発明1と同様に本発明の課題を解決できるものである。

よって、特許異議申立人の主張は採用することができない。

ウ 申立理由17について

特許異議申立人は、令和7年8月5日に提出された意見書において上記第4 26(1)及び(2)のとおり主張をしているので、以下で順に検討する。

(ア)「吸収速度(vortex time)」(第4 26(1))について

本件特許の発明の詳細な説明の【0152】には、「ASTM規格の標準網ふるいで分級して150μm~850μmの粒径を有する実施例1の高吸水性樹脂を製造した」ことが記載されており、同【0177】には、実施例の高吸水性樹脂の吸収速度を測定したことが記載されているのであるから、本件特許の発明の詳細な説明には、ASTM規格の標準網ふるいで分級して製造した150μm~850μmの粒径を有する実施例1の高吸水性樹脂の吸収速度が記載されているといえる。そして、上記(4)に記載したとおり、実施例1の吸収速度の記載等を参酌することにより、当業者は、本件特許発明が本発明の課題を解決し得ると認識することができる。

よって、特許異議申立人の主張は採用することができない。

(イ)「遠心分離保水能(CRC)」、「加圧吸収能(AUP)」(第4 26(2))について

上記(ア)の吸収速度と同様に、本件特許の発明の詳細な説明の【0169】及び【0172】には、実施例における各樹脂の無荷重下の吸収倍率による保水能(CRC)及び0.7psiの加圧吸収能(AUP)を測定したことが記載されているので、本件特許の発明の詳細な説明には、ASTM規格の標準網ふるいで分級して製造した150μm~850μmの粒径を有する実施例1の高吸水性樹脂の遠心分離保水能(CRC)及び加圧吸収能(AUP)が記載されているといえる。そして、上記(ア)と同様に、CRC、AUPの記載等を参酌することにより、当業者は、本件特許発明が本発明の課題を解決し得ると認識することができる。

よって、特許異議申立人の主張は採用することができない。

(6)取消理由並びに申立理由14及び申立理由17についてのまとめ

上記(4)及び(5)に記載したとおり、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取消理由、申立理由14及び申立理由17によって取り消すことはできない。

2 申立理由1-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性)及び申立理由1-2(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)について

(1)甲1に記載された事項等

ア 甲1に記載された事項

甲1には、「吸水性樹脂粒子及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は予め付されたものと、当審で付したものである。他の文献についても同様である。

・「[請求項1] 水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を必須構成単位とする架橋重合体(A)を含有する樹脂粒子が表面架橋剤(d)により表面架橋された構造を有する吸水性樹脂粒子であって、粒子形状が不定形破砕状であり、

平均真球度(SPHT)が0.800~0.900であり

、耐衝撃性試験後の平均真球度(SPHT)の変化幅が0~0.015である吸水性樹脂粒子。

[請求項2] 重量平均粒子径が200~450μmである請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。

[請求項3] 重量平均粒子径が200~370μmである請求項2に記載の吸水性樹脂粒子。

[請求項4] 無機微粒子及び/又は多価金属塩を含む請求項1~3のいずれかに記載の吸水性樹脂粒子。

[請求項5] 0.9重量%生理食塩水によるゲル通液速度が10ml/分以上である請求項1~4のいずれかに記載の吸水性樹脂粒子。

[請求項6]

Vortex法による吸収速度が45秒以下である

請求項1~5のいずれかに記載の吸水性樹脂粒子。

[請求項7] 0.9重量%生理食塩水の保水量が25~45g/gである請求項1~6のいずれかに記載の吸水性樹脂粒子。」

・「発明が解決しようとする課題

[0007] 本発明の課題は、吸水性樹脂粒子の製造直後から吸収性物品の使用に至るまで安定した吸収速度及び通液性能を維持し、かつ吸収性物品に使用したときに優れた風合いを発揮できる吸水性樹脂粒子及びその製造方法を提供することにある。」

・「[0013] 水溶性ビニルモノマー(a1)としては、吸収性能等の観点から、好ましくはアニオン性ビニルモノマー、より好ましくはカルボキシ(塩)基、スルホ(塩)基、アミノ基、カルバモイル基、アンモニオ基又はモノ-、ジ-若しくはトリ-アルキルアンモニオ基を有するビニルモノマーである。これらの中で、より好ましくはカルボキシ(塩)基又はカルバモイル基を有するビニルモノマー、更に好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)及び(メタ)アクリルアミド、特に好ましくは(メタ)アクリル酸(塩)、最も好ましくはアクリル酸(塩)である。」

・「[0015] 水溶性ビニルモノマー(a1)としてアクリル酸やメタクリル酸等の酸基含有モノマーを用いる場合、酸基含有モノマーの一部を塩基で中和することができる。中和する塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩を通常使用できる。中和は吸水性樹脂の製造工程において、酸基含有モノマーの重合前及び重合中のいずれで行っても良いし、後述する架橋重合体(A)を含む含水ゲルの状態で酸基含有ポリマーを中和することもできる。」

・「[0022] 本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法は、前述した水溶性ビニルモノマー(a1)及び架橋剤(b)を必須構成単位とする単量体組成物を重合し、架橋重合体(A)を含有する含水ゲルを得る重合工程と、前記含水ゲルを混練細断し、(A)を含有する含水ゲル粒子を得るゲル粉砕工程と、前記含水ゲル粒子を乾燥し、(A)を含有する乾燥粉体を得る乾燥工程と、前記乾燥粉体をさらに粉砕及び/又は分級して(A)を含有する樹脂粒子を得る工程と、前記樹脂粒子の表面を表面架橋剤(d)により表面架橋する工程を含む。」

・「[0027] 重合に触媒を用いる場合、従来公知のラジカル重合用触媒が使用可能であり、例えば、アゾ化合物[アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸及び2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ハイドロクロライド等]、無機過酸化物(過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等)、有機過酸化物[過酸化ベンゾイル、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド及びジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート等]及びレドックス触媒(アルカリ金属の亜硫酸塩又は重亜硫酸塩、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウム及びアスコルビン酸等の還元剤とアルカリ金属の過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素及び有機過酸化物等の酸化剤との組み合わせよりなるもの)等が挙げられる。これらの触媒は、単独で使用してもよく、これらの2種以上を併用しても良い。

ラジカル重合触媒の使用量(重量%)は、水溶性ビニルモノマー(a1)の、その他のビニルモノマー(a2)を用いる場合は(a1)~(a2)の、合計重量に基づいて、0.0005~5が好ましく、更に好ましくは0.001~2である。」

・「[0035]

本発明の吸水性樹脂粒子の製造方法は、後述する乾燥工程以前にゲルブロッキング防止剤(c)を添加する

。ゲルブロッキング防止剤(c)とは、前述したゲル粉砕工程で得られる含水ゲル粒子の同士の凝集によるブロッキングを抑制する添加剤である。

ゲルブロッキング防止剤(c)を添加することで、

乾燥後に得られる乾燥粉体中の粗大粒子(2.8mm以上の粒子径を有する粒子を粗大粒子と呼ぶ。)の発生を抑制し、

吸水性樹脂粒子の平均真球度を高くすることができる

とともに、耐衝撃性試験後の平均真球度の変化幅を小さくすることができる。

[0036]

ゲルブロッキング防止剤(c)としては、炭化水素基を含有する疎水性物質(c1)

及びポリシロキサンである疎水性物質(c2)等が含まれる。

[0037]

炭化水素基を含有する疎水性物質(c1)としては

、ポリオレフィン樹脂、ポリオレフィン樹脂誘導体、ポリスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂誘導体、ワックス、長鎖脂肪酸エステル、

長鎖脂肪酸及びその塩

、長鎖脂肪族アルコール、第四級アンモニウム塩型界面活性剤、及びこれらの2種以上の混合物等が含まれる。」

・「[0044] 長鎖脂肪酸及びその塩としては、炭素数8~25の脂肪酸{たとえば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びベヘニン酸等}が挙げられる。塩としてはカルシウム、マグネシウム又はアルミニウム(以下、Ca、Mg、Alと略す)との塩{たとえば、パルミチン酸Ca、パルミチン酸Al、ステアリン酸Ca、ステアリン酸Mg、ステアリン酸Al等}が挙げられる。」

・「[0091]

本発明の吸水性樹脂粒子の粒子形状は、不定形破砕状である。粒子形状が不定形破砕状であることで、吸水速度が高い(特にVortex法による吸水時間が短い)吸水性樹脂粒子が得られるだけでなく、紙おむつ用途等での繊維状物とのからみが良く、繊維状物からの脱落の心配がないという観点から好ましい

。また、粒子形状は不定形破砕状である限り、それらの凝集物(又は造粒物)であっても、それらの多孔構造物であっても良い。従って、例えば逆相懸濁重合法で製造されるような真球状の形状でないことが好ましい。なお、好ましい吸水性樹脂粒子の平均真球度については後述する。」

・「[0110]<Vortex法による吸収速度>

100mlビーカーに50gの生理食塩水を入れ、25±2°Cに温度調整を行った。次にスターラーピース(長さ30mm、中心部直径8mm、端部直径7mm)をビーカーの中央部に入れ、生理食塩水を600rpmで撹拌した。ビーカー壁面付近に測定試料2.000gを投入した。なお、使用する測定試料はその代表的粒子径の状態でサンプリングされるように、サンプルスプリッター等を用いて調整した。測定試料を投入し終わった時点から計測をスタートし、測定試料と生理食塩水とからなる混合液の液面が平らになる(液面からの乱反射光が消失する点)までの時間(秒)を吸収速度とした。なお、

試験は25±3°C、60±5RH%の条件下で行った

。」

・「[0115] <実施例1>

水溶性ビニルモノマー(a1-1){アクリル酸

、三菱化学株式会社製、純度100%}155部(2.15モル部)、

架橋剤(b1){ペンタエリスリトールトリアリルエーテル

、ダイソ-株式会社製}0.6225部(0.0024モル部)及び脱イオン水340.27部を攪拌・混合しながら3°Cに保った。この混合物中に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とした後、1%過酸化水素水溶液0.62部、2%アスコルビン酸水溶液1.1625部及び2%の

2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]水溶液

2.325部

を添加・混合して重合

を開始させた。混合物の温度が90°Cに達した後、90±2°Cで約5時間重合することにより

架橋重合体を含有する含水ゲル(1)を得た

[0116] 次に

含水ゲル(1)

200部

をミンチ機

(ROYAL社製12VR-400K)

で混練細断しながら

48.5%

水酸化ナトリウム水溶液

51.13部

を添加して混合し

、ミンチ機(ROYAL社製12VR-400K)で3回細断後、

細断ゲルを得た

。引き続き

ゲルブロッキング防止剤(c-1){ショ糖ステアリン酸エステル

}0.076部を

添加して混合し、更にミンチ機

(ROYAL社製12VR-400K)

1回

細断して、含水ゲル粒子を得た

。次に、

含水ゲル粒子を

シグマ型回転翼及び保温ジャケットを備えたニーダー(卓上型ニーダーPNV-1、株式会社入江商会)に全量投入し、回転数40rpm、ジャケット温度180°Cで60分間

乾燥し、架橋重合体を含有する乾燥粉体(1)を得た

。乾燥粉体(1)の全重量に対する2.8mm以上の粒子径を有する粒子の重量割合は41重量%であった。

続いて、乾燥粉体(1)を

ロールミル(RM-10型ロール式粉砕機、株式会社浅野鐵工所)でクリアランス0.35mmにて粉砕した後、

ふるい分けして、目開き710~150μmの粒子径範囲に調整し、架橋重合体を含む樹脂粒子(A-1)を得た

。粉砕分級後の、架橋重合体を含む樹脂粒子(A-1)の重量平均粒子径は、420μmであった。

[0117] 次に、

上記樹脂粒子(A-1)

30部

に表面架橋剤としての

15%

エチレングリコールジグリシジルエーテル

0.081部、溶剤としての50%プロピレングリコール水溶液0.90部、無機微粒子としてクレボゾール(登録商標)30CAL25(メルク製コロイダルシリカ)0.20部を混合した混合溶液

を添加して

、均一混合した後、130°Cで30分間

加熱して、表面架橋された樹脂粒子を得た

続いて、目開き850μmの篩を通過させることで、吸水性樹脂粒子(P-1)を得た

[0118] <実施例2>

実施例1において、ニーダーの回転数40rpmを30rpmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子(P-2)を得た。実施例2における乾燥粉体(2)の全重量に対する2.8mm以上の粒子径を有する粒子の重量割合は49重量%であり、粉砕分級後の、架橋重合体を含む樹脂粒子(A-2)の重量平均粒子径は、436μmであった。

[0119] <実施例3>

実施例1において、ニーダーの回転数40rpmを50rpmに変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子(P-3)を得た。実施例3における乾燥粉体(3)の全重量に対する2.8mm以上の粒子径を有する粒子の重量割合は35重量%であり、粉砕分級後の、架橋重合体を含む樹脂粒子(A-3)の重量平均粒子径は、400μmであった。

[0120] <実施例4>

実施例1において、ゲルブロッキング防止剤(c-1){ショ糖ステアリン酸エステル}0.076部を0.152部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子(P-4)を得た。実施例4における乾燥粉体(4)の全重量に対する2.8mm以上の粒子径を有する粒子の重量割合は33重量%であり、粉砕分級後の、架橋重合体を含む樹脂粒子(A-4)の重量平均粒子径は、393μmであった。

[0121] <実施例5>

実施例1において、ゲルブロッキング防止剤(c-1){ショ糖ステアリン酸エステル}0.076部を0.152部に変更し、同時にゲルブロッキング防止剤(c-2){ナロアクティ(登録商標)CL-20、三洋化成工業製アニオン界面活性剤(ノニルフェノールEOA(EO2モル付加))}0.113部を併用した以外は、実施例1と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子(P-5)を得た。実施例5における乾燥粉体(5)の全重量に対する2.8mm以上の粒子径を有する粒子の重量割合は27重量%であり、粉砕分級後の、架橋重合体を含む樹脂粒子(A-5)の重量平均粒子径は、385μmであった。

[0122] <実施例6>

実施例5において、乾燥粉体を粉砕した後のふるい分けの目開き710~150μmを500~150μmの粒子径範囲に変更した以外は、実施例5と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子(P-6)を得た。粉砕分級後の、架橋重合体を含む樹脂粒子(A-6)の重量平均粒子径は、365μmであった。

[0123] <実施例7>

実施例5において、乾燥粉体を粉砕した後のふるい分けの目開き710~150μmを300~150μmの粒子径範囲に変更した以外は、実施例5と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子(P-7)を得た。粉砕分級後の、架橋重合体を含む樹脂粒子(A-7)の重量平均粒子径は、202μmであった。

[0124] <実施例8>

実施例5において、ニーダーの回転数40rpmを50rpmとし、乾燥粉体を粉砕した後のふるい分けの目開き710~150μmを500~150μmの粒子径範囲に変更した以外は、実施例5と同様の操作を行い、吸水性樹脂粒子(P-8)を得た。実施例8における乾燥粉体(8)の全重量に対する2.8mm以上の粒子径を有する粒子の重量割合は、22重量%であり、粉砕分級後の、架橋重合体を含む樹脂粒子(A-8)の重量平均粒子径は、340μmであった。

[0125] <実施例9>

実施例6において、粉砕分級後の架橋重合体を含む樹脂粒子(A-6)に対する表面架橋剤としての15%エチレングリコールジグリシジルエーテル0.081部を0.200部に変更すること以外は、実施例6と同様の操作を行い、表面架橋された樹脂粒子を得た。続いて、高速攪拌(ホソカワミクロン株式会社製高速攪拌タービュライザー(登録商標、以下おなじ)、回転数2000rpm)しながら、無機微粒子としてシリカ(アエロジル(登録商標、以下おなじ)200)を0.045部添加して、80°Cで30分間加熱した後、目開き850μmの篩を通過させることで、吸水性樹脂粒子(P-9)を得た。

[0126] <実施例10>

実施例6において、粉砕分級後の架橋重合体を含む樹脂粒子(A-6)に対する表面架橋剤としての15%エチレングリコールジグリシジルエーテル0.081部を0.200部に変更し、別途溶剤としての50%プロピレングリコール水溶液0.51部、多価金属塩として硫酸アルミニウムナトリウム16水和物(富士フィルム和光純薬製)0.225部を混合した混合溶液を添加して表面架橋を行った以外は、実施例6と同様の操作を行い、表面架橋された樹脂粒子を得た。高速攪拌(ホソカワミクロン株式会社製高速攪拌タービュライザー、回転数2000rpm)しながら、無機微粒子としてシリカ(アエロジル200)を0.045部添加して、80°Cで30分間加熱した後、目開き850μmの篩を通過させることで、吸水性樹脂粒子(P-10)を得た。」

・「[0131] 実施例1~10で得られた吸水性樹脂粒子(P-1)~(P-10)および比較例1~4で得た比較用の吸水性樹脂粒子(R-1)~(R-4)について、保水量、重量平均粒子径、平均真球度、耐衝撃性試験後の平均真球度、ゲル通液速度、ゲル通液速度変化率、Vortex法による吸収速度、Vortex法による吸収速度変化率、及び異物感評価結果を表1に示す。

[0132]

[表1]

223

119

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イ 甲1に記載された発明

甲1に記載された事項を、特に実施例1について整理すると、甲1には、次の発明(以下、「甲1粒子発明」という。)が記載されていると認める。

<甲1粒子発明>

「水溶性ビニルモノマーとしてアクリル酸、架橋剤としてペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ラジカル重合用触媒として2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]を含む水溶液を撹拌・混合した後、重合することにより得られた架橋重合体を含有する含水ゲル(1)を、ミンチ機で混練細断しながら水酸化ナトリウム水溶液を添加して混合して細断ゲルを得、ゲルブロッキング防止剤としてショ糖ステアリン酸エステルを混合してさらにミンチ機で細断して得られた含水ゲル粒子を乾燥した乾燥粉体をロールミルで粉砕した後、ふるい分けして、目開き710~150μmの粒子径範囲に調整した架橋重合体を含む樹脂粒子に、表面架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して表面架橋された樹脂粒子を目開き850μmの篩を通過させることで得た、平均真球度が0.810であり、Vortex吸収速度が32秒である、実施例1の吸水性樹脂粒子。」

(当審注:実施例1については、上記アを参照。)

(2)本件特許発明1について

ア 対比

本件特許発明1と甲1粒子発明とを対比する。

甲1粒子発明の「アクリル酸」は、本件特許発明1の「アクリル酸系単量体」に相当し、甲1粒子発明の「ペンタエリスリトールトリアリルエーテル」は、本件特許発明1の「内部架橋剤」に相当し、甲1粒子発明の表面架橋する前の「架橋重合体を含む樹脂粒子」は、乾燥粉体を粉砕したものであるから「粉体」であるといえ、本件特許発明1の「粉末形態のベース樹脂」に相当し、甲1粒子発明の「エチレングリコールジグリシジルエーテル」は、本件特許発明1の「表面架橋剤」に相当し、甲1粒子発明の「Vortex吸収速度」は、その測定条件からみて、本件特許発明1の「24°Cでの吸収速度(vortex time)」に相当し、甲1粒子発明の「吸水性樹脂」は、本件特許発明1の「高吸水性樹脂」に相当する。

そして、甲1粒子発明の表面架橋する前の「架橋重合体を含む樹脂粒子」は、モノマーとしてアクリル酸を含み、これを架橋剤とともに重合したものであり、粉砕過程で細断ゲルを得る際に、水酸化ナトリウム水溶液を添加、混合しているので、少なくともアクリル酸の一部が中和したものになっているといえるから、「酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤の架橋重合体を含む粉末形態のベース樹脂」に相当する。さらに、甲1粒子発明の「表面架橋された樹脂粒子」は、「架橋重合体を含む樹脂粒子」に表面架橋剤を添加して表面架橋したものであるから、「架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋した表面架橋層を含む」ものであるといえる。また、甲1粒子発明の吸水性樹脂は、Vortex吸収速度が32秒であるから、本件特許発明1の「24°Cでの吸収速度(vortex time)が60秒以下である」という発明特定事項を満たすといえる。

そうすると、両者は、以下の点で一致する。

<一致点>

「酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤の架橋重合体を含む粉末形態のベース樹脂;および前記ベース樹脂上に形成されており、前記架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋した表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、24°Cでの吸収速度(vortex time)が60秒以下である、高吸水性樹脂。」

そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点1-1>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「300μm~600μmの粒径を有する粒子に対して測定した、粒子の最長直径に対する粒子の最短直径の比を意味する縦横比(Aspect ratio;A/R)の平均値(以下、「縦横比」という。)が0.75以上」であるのに対し、甲1粒子発明の高吸水性樹脂は縦横比が不明である点。

<相違点1-2>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は、「下記式1により計算される凸性(convexity)の平均値(以下、「凸性」という。)が0.9以下

[式1]

凸性(convexity)=膨らんだ外表面の周囲/実際の粒子の周囲

前記式1において、前記膨らんだ外表面の周囲(convex hull perimeter)は測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージを輪郭の周囲に伸びる仮想の弾性バンド(imaginary elastic band)で囲むと仮定した時の弾性バンドの長さで定義され、前記実際の粒子の周囲は前記測定しようとする3次元粒子の3Dイメージを2Dイメージでキャプチャーしたイメージの実際の周長を意味する。」であるのに対し、甲1粒子発明の高吸水性樹脂は凸性が不明である点。

<相違点1-3>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「150μm~850μmの粒径を有する」のに対し、甲1粒子発明の高吸水性樹脂は、目開き850μmの篩を通過させることで得たものであり、粒径の下限値が特定されていない点。

イ 判断

事案に鑑み、上記相違点1-2について検討する。

甲1には、甲1粒子発明の高吸水性樹脂の凸性が0.9以下であることは記載されていないし、甲1及び他の証拠をみても、甲1粒子発明の高吸水性樹脂の凸性が0.9以下である蓋然性が高いと判断する理由もない。したがって、上記相違点1-2は実質的な相違点である。

そして、甲1及び他の証拠をみても、甲1粒子発明において、高吸水性樹脂の凸性を0.9以下にする動機付けがない。

よって、甲1粒子発明において、相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1粒子発明ではないし、甲1粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

ウ 特許異議申立人の主張について

特許異議申立人は、特許異議申立書(109-111頁)において、以下の主張をしている。

(ア)新規性について

甲1粒子発明の高吸水性樹脂は、アゾ化合物を用いて製造されており、アゾ化合物は熱分解して窒素ガスを発生するため、当該高吸水性樹脂粒子には気孔が存在する蓋然性が高いこと、甲1粒子発明の高吸水性樹脂は、吸収速度が35秒以下であり、本件特許の明細書に記載された実施例1ないし7と比較例1ないし4の対比から、凸性が0.9以下なら吸収速度が60秒以下になっていること、並びに、甲1粒子発明の高吸水性樹脂は、本質的に不規則な粉砕形状であることからみて、大きな表面粗さを有することが明らかであり、したがって、甲1粒子発明の吸水性樹脂粒子は、凸性が0.9以下であると推定される。

(イ)進歩性について

甲27には、初期吸収速度の向上などを課題とする高吸収性ポリマーにおいて、不定形度Pを1.2以上とすることが記載されており、凸性は不定形度Pの逆数に近似できるから、高吸収性ポリマーにおいて、初期吸収速度を向上するために不定形度を1.2以上とした結果、凸性を0.9以下にすることは当業者であれば容易になしえることである。また、甲27には、比較例3として市販の3種の吸収性ポリマーの不定形度Pが、1.26~1.30であることが記載されており、これらの吸収性ポリマーの凸性は0.9以下であるといえるから、凸性が0.9以下であることは市販の高吸水性樹脂の不定形度に過ぎない。

(ウ)特許異議申立人の主張についての当審の判断

a 新規性について

甲1粒子発明の高吸水性樹脂に気孔が存在し、不規則な粉砕形状であるとしても、気孔の大きさや数、その分布が不明であり、粉砕形状がどの程度不規則であるのかも不明であるから、甲1粒子発明の高吸水性樹脂の凸性が0.9以下であると判断することはできない。そして、本件特許の実施例及び比較例は、凸性と吸収速度の関係を示すことを目的とするものではないし、吸収速度が60秒以上であるのは、比較例1の1例のみであるから、本件特許の実施例及び比較例の記載から凸性と吸収速度の関係を判断することはできない。

よって、特許異議申立人の主張は、採用することができない。

b 進歩性について

甲27に記載された発明は、水不溶性親水性架橋重合体粒子を構成粒子とする団粒化物からなる高吸収性ポリマーであり(甲27の請求項7)、膨潤後に、粒子の再配列や密着による空隙の減少を防止するために不定形度Pを1.2以上としているものであるから(甲27の【0042】)、このような団粒構造を有しない甲1粒子発明において、甲27の記載を参考に凸性を0.9以下にする動機付けがあるとはいえない。また、甲27の比較例3に記載された市販の吸収性ポリマーは甲1粒子発明とは異なるものであるから、その不定形度が1.26~1.30であるとしても、甲1粒子発明の凸性を0.9以下にする動機付けにはならない。

よって、特許異議申立人の主張は、採用することができない。

(3)本件特許発明2、4ないし6について

本件特許発明2、4ないし6は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲1粒子発明ではなく、甲1粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2もまた、甲1粒子発明ではなく、本件特許発明2、4ないし6も、甲1粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

なお、甲1に記載された発明を実施例2ないし10から認定した場合も、甲1粒子発明と同様の発明が認定され、上記と同様に判断される。

(4)申立理由1-1及び申立理由1-2についてのまとめ

したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1、2、4ないし6は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項1、2、4ないし6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由1-1及び申立理由1-2によっては取り消すことはできない。

3 申立理由2-1(甲2を主たる証拠とする新規性)及び申立理由2-2(甲2を主たる証拠とする進歩性)について

(1)甲2に記載された事項等

ア 甲2に記載された事項

甲2には、「薄い流体吸収性コア-吸収紙」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲2は外国語で記載された文献であるため、訳文(甲23)にて示す。

・「【請求項1】

少なくとも1つの吸収層を含む流体吸収性コア(80)であって、該層は、少なくとも80重量%の

吸水性ポリマー粒子

、0~10重量%の接着剤、及び0~10重量%の繊維状材料を含み、吸収層内の吸水性ポリマー粒子は、40s以下のボルテックスを有し、かつ0.79~0.85の真円度及び/又は38g/g~85g/gのCRCを有する吸水性ポリマー粒子Hである、流体吸収性コア(80)。」(69頁3-8行)

・「【発明が解決しようとする課題】

【0012】

したがって、本発明の目的は、ゲルブロッキングを防止して、繊維を全く含有しない又は少量しか含有しない場合(最大10重量%の繊維状材料)でさえ、改善された性能を有する流体吸収性製品のための流体吸収性コアを提供することである。」(2頁18-20行)

・「【0043】

吸水性ポリマー粒子

本発明による吸水性ポリマー粒子

は、

a)酸基を有し、少なくとも部分的に中和されていてもよい少なくとも1つのエチレン性不飽和モノマー、

b)1つ以上の架橋剤、

c)少なくとも1つの開始剤、

d)水

を含むモノマー溶液を、周囲の加熱された気相中で重合することによって吸水性ポリマー粒子を形成するステップ、吸水性ポリマー粒子を少なくとも1つの表面後架橋剤でコーティングするステップ、及びコーティングされた吸水性ポリマー粒子を熱表面後架橋するステップを含む方法によって調製される。」(6頁3-13行)

・「【0378】

実施例3(発明)

このプロセスは、図6に示されるように、統合された流動床(27)を有する並流噴霧乾燥プラントで実施した。反応ゾーン(5)は、22mの高さ及び3.4mの直径を有した。内部流動床(IFB)は、3mの直径及び0.25mの堰高さを有した。液滴化機カセット(49)は、120μmの直径及び8mmの穴間隔を有する508個の穴を有した。

【0379】

乾燥ガスを、噴霧乾燥機の最上部でガス分配器(3)を介して供給した。乾燥ガスを、ダスト分離ユニットとしてのサイクロン(9)及び凝縮器カラム(12)を介して部分的に再循環させた(乾燥ガスループ)。乾燥ガスは、1体積%~4体積%の残留酸素を含む窒素であった。重合を開始する前に、残留酸素が4体積%未満になるまで、乾燥ガスループを窒素で充填した。反応ゾーン(5)における乾燥ガスのガス速度は、0.79m/sであった。噴霧乾燥機内の圧力は、周囲圧力を4mbar下回った。

【0380】

反応ゾーン(5)を出るガスの温度を、図7に示されるように、噴霧乾燥機の円筒形部分の端部の円周の周りの3点で測定した。3つの個々の測定値(43)を使用して、平均温度(噴霧乾燥機出口温度)を計算した。乾燥ガスループを加熱し、モノマー溶液の投入を開始する。この時から、熱交換器(20)を介してガス入口温度を調整することによって、噴霧乾燥機の出口温度を118°Cに制御した。ガス入口温度は179°Cであり、乾燥ガスの蒸気含有量は表1に示される。

【0381】

堰高さに達するまで、生成物は内部流動床(27)に蓄積した。106°の温度を有する調整された内部流動床ガスを、ライン(25)を介して内部流動床(27)に供給した。内部流動床(27)における内部流動床ガスのガス速度は、0.65m/sであった。生成物の滞留時間は150分であった。内部流動床(27)中の超吸収性ポリマー粒子の温度は、78°Cであった。

【0382】

噴霧乾燥機のオフガスは、ダスト分離ユニットとしてのサイクロン(9)で濾過され、クエンチ/冷却のために凝縮器カラム(12)に送られた。余剰水は、凝縮器カラム(12)内の(一定の)充填レベルを制御することによって、凝縮器カラム(12)からポンプで排出された。凝縮器カラム(12)内の水は、熱交換器(13)によって冷却され、ガスに向流でポンプ輸送された。凝縮器カラム(12)を出るガスの温度及び蒸気含有量は、表5に示される。凝縮器カラム(12)内の水は、水酸化ナトリウム溶液を投入してアクリル酸蒸気を洗い流すことによって、アルカリ性pHに設定された。

【0383】

凝縮器カラム(12)を出るガスは、乾燥ガス入口パイプ(1)及び調整された内部流動床ガス(25)に分割された。ガス温度は、熱交換器(20)及び(22)を介して制御された。熱い乾燥ガスは、ガス分配器(3)を介して並流噴霧乾燥機に供給された。ガス分配器(3)は、乾燥ガス量に応じて、2~4mbarの圧力降下を提供するプレートのセットからなる。

【0384】

生成物は、回転バルブ(28)を介して内部流動床(27)からふるい(29)に排出された。ふるい(29)は、800μmを超える粒子直径を有する過大物/塊をふるい分けるために使用された。

【0385】

モノマー溶液は、第一にアクリル酸を3-tuplyエトキシル化グリセロールトリアクリレート(内部架橋剤)と混合し、第二に37.3重量%のアクリル酸ナトリウム溶液と混合し、第三に1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム(HDPA)水溶液と混合することによって調製した

。得られたモノマー溶液の温度は、熱交換器を使用し、ループにおいてポンプ輸送することによって、10°Cに制御した。ポンプ後のループに、250μmのメッシュサイズを有するフィルターユニットを使用した。図6に示されるように、静的ミキサー(31)及び(32)によってライン(33)及び(34)を介して液滴化機の

上流のモノマー溶液に、開始剤を計量導入した

。20°Cの温度を有するペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液を、ライン(33)を介して添加し、[2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩溶液を、一緒にライン(34)を介して添加した。それぞれの開始剤を、ループにおいてポンプ輸送し、制御バルブを介して各液滴化機ユニットに投入した。140μmのメッシュサイズを有する第2フィルターユニットを、静的ミキサー(32)の後に使用した。噴霧乾燥機の最上部にモノマー溶液を投入するために、WO 2016/134905 A1の図4に示されるように、3つの液滴化機ユニットを使用した。

【0386】

液滴化機ユニットは、WO 2016/134905 A1の図5に示されるように、液滴化機カセット(49)についての開口部を有する外側パイプ(47)からなった。液滴化機カセット(49)は、内側パイプ(48)と連結された。封止として端部にPTFEブロック(50)を有する内側パイプ(48)を、維持管理の目的でプロセスの操作の際に外側パイプ(47)の中に押し込む及び外に押し出すことができる。

【0387】

液滴化機カセット(49)は、120μmの直径及び8mmの穴間隔を有する508個の穴を有した。液滴化機カセット(49)は、予め混合されたモノマー及び開始剤溶液の均一な分布のための本質的に停滞した体積のない流路(56)、及び1つの液滴プレート(53)からなった。液滴プレート(53)は、3 ゚の角度で、角度のある構成を有した。液滴プレート(53)は、ステンレス鋼でできており、630mmの長さ、128mmの幅及び1mmの厚さを有した。

【0388】

噴霧乾燥機への供給物は、10.45重量%のアクリル酸、33.40重量%のアクリル酸ナトリウム、0.018重量%の3-tuplyエトキシル化グリセロールトリアクリレート、

0.108重量%の1-ヒドロキシエタン-1,1-ジホスホン酸二ナトリウム(HDPA)、0.072重量%の[2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、0.072重量%のペルオキソ二硫酸ナトリウム溶液(水中15重量%)及び水からなった。

中和度は71%であった。

穴1つあたりの供給量は1.4kg/hであった。」(50頁17行から52頁9行)

・「【0397】

実施例8~9(発明ではない)及び10~14(発明)

全てのベースポリマーは、WO 2015/110321 A1に記載されるように、

ベースポリマーに基づいて、2.0wt%の炭酸エチレン、5.0wt%の水、及び0.1wt%の硫酸アルミニウムで表面後架橋した

【0398】

2000rpmの速度を用いたSchugi Flexomix(登録商標)(モデルFlexomix 160、Hosokawa Micron B.V., Doetinchem, the Netherlandsによって製造)で、2又は3個の丸型スプレーノズルシステム(モデルGravity-Fed Spray Set-ups、External Mix Typ SU4、Fluid Cap 60100及びAir Cap SS-120、Spraying Systems Co, Wheaton, Illinois, USAによって製造)を使用することによって、ベースポリマーを表面後架橋剤溶液でコーティングし、次いで、ベースポリマー供給物(70)により充填し、6rpmのシャフト(76)の速度を用いた熱乾燥機(65)(モデルNPD 5W-18、GMF Gouda, Waddinxveen, the Netherlandsによって製造)で乾燥させた。熱乾燥機(65)は、90°のシャフトオフセット(80)を有する2つのパドル、及び2つの柔軟な堰プレート(73)を有する固定化排出ゾーン(71)を有する。それぞれの堰は、WO 2015/110321 A1の図15に示されるように、50%で最小堰高さ(75)を有し、100%で最大堰開口部(74)を有する堰開口部を有する。

【0399】

床板と熱乾燥機との間の傾斜角α(78)は、約3°であった。熱乾燥機の堰高さは、50~100%であり、約40~150分の滞留時間に対応した(約700~750kg/m

3

の生成物密度による)。熱乾燥機中の生成物温度は、120~165°Cの範囲であった。乾燥後、11rpmの速度及び145mmの堰高さを用いて、表面後架橋ポリマーを約60°Cまで冷却するために、表面後架橋ポリマーを、冷却機(モデルNPD 5W-18、GMF Gouda, Waddinxveen, the Netherlandsによって製造)中の排出コーン(77)上に移した。冷却後、材料を、150μmの最小カットサイズ及び850μmの最大カットサイズでふるいにかけた。

【0400】

表9に記載されるように、6.02wt%のAl-乳酸塩及びSpan(商標)20の水溶液を、冷却機の3分の1における2つのノズルを使用して冷却機にさらに添加した。ノズルは、生成物ベッドの下に配置した。

【0401】

条件及び結果を表4及び5にまとめる。得られた超吸収性ポリマー粒子を分析した。分析データを表6、7及び8にまとめる。

【0402】

実施例15(発明)

実施例10~14に類似しているが、6.02wt%のAl-乳酸塩及びSpan(商標)20の水溶液の代わりに、表9に記載されるように、3.17wt%のAl-乳酸塩及びSpan(商標)20の水溶液を、1つのノズルを使用して冷却機にさらに添加し、表5に記載されるように、3.35wt%の次亜リン酸ナトリウムの水溶液を、第2のノズルを使用して冷却機にさらに添加した。両方のノズルを、冷却機の3分の1に配置する。

【0403】

冷却後、材料を、850μmの最大カットサイズのみでふるいにかけた。さらなる最小カットふるいは使用しなかった。

【0404】

条件及び結果を表4及び5にまとめる。得られた超吸収性ポリマー粒子を分析した。分析データを表6、7及び8にまとめる。」(53頁12-41行)

・「【0405】

【表1】

186

65

0001432053000002.jpg

【0406】

【表2】

184

59

0001432053000003.jpg

【0407】

【表3】

182

58

0001432053000004.jpg

」(55-57頁、Table 1-3)

・「【0408】

【表4】

183

39

0001432053000005.jpg

【0409】

【表5】

178

100

0001432053000006.jpg

【0410】

【表6】

183

91

0001432053000007.jpg

」(58-60頁、Table 4-6)

・「【0411】

【表8】

182

70

0001432053000008.jpg

」(62頁、Table 8)

・「

【図6】

167

145

0001432053000009.jpg

」(Fig. 6)

(イ)甲2に記載された発明

甲2に記載された事項を、特に実施例10について整理すると、甲2の表5には実施例10は実施例3のベースポリマーを用いたことが記載されているので、甲2には、次の発明(以下、「甲2粒子発明」という。)が記載されていると認める。

<甲2粒子発明>

「アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、3-tuplyエトキシル化グリセロールトリアクリレートの架橋重合体を含むベースポリマー、および前記ベースポリマーを炭酸エチレンを含む水溶液で表面後架橋した吸水性ポリマー粒子であって、該吸水性ポリマー粒子は、ボルテックスが32秒であり、【表8】に記載された粒径分布を有する、実施例10の吸水性ポリマー粒子。」(当審注:実施例10については上記(ア)を参照。)

(2)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲2粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点2>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲2粒子発明の吸水性ポリマー粒子は凸性が不明である点。

上記相違点2について検討する。上記相違点2に関し、甲2の記載に基づく判断は、上記2(2)イに記載した甲1と同様である。また、特許異議申立人の相違点2についての主張は、上記相違点1-2と同旨であるから同様に判断される。

よって、本件特許発明1は、甲2粒子発明ではなく、甲2粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件特許発明2について

本件特許発明2は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲2粒子発明ではなく、甲2粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2もまた、甲2粒子発明ではなく、甲2粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

なお、甲2に記載された発明を実施例11ないし15から認定した場合も、甲2粒子発明と同様の発明が認定され、上記と同様に判断される。

(4)申立理由2-1及び申立理由2-2についてのまとめ

したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1及び2は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由2-1及び申立理由2-2によっては取り消すことはできない。

4 申立理由3-1(甲3を主たる証拠とする新規性)及び申立理由3-2(甲3を主たる証拠とする進歩性)について

(1)甲3に記載された事項等

ア 甲3に記載された事項

甲3には、「ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「[請求項1] 気泡を含有した

アクリル酸系単量体水溶液を重合する工程と

当該重合工程で得られた含水ゲル状架橋重合体を乾燥する工程とを含むポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の製造方法

であって、

界面活性剤及び/又は分散剤存在下で単量体水溶液中の溶存気体の溶解度を低下させることによって、該アクリル酸系単量体水溶液中に気泡を発生させ含有させる気泡発生含有工程を含むことを特徴とする製造方法。」

・「[請求項20] 含水ゲル状架橋重合体を乾燥する上記工程後に、

ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末を表面架橋する工程をさらに含む

、請求項1~19の何れか1項に記載の製造方法。」

・「[請求項22]

重合工程が連続ニーダー重合で行われ、重合中にゲル粉砕が行われ、更に必要により重合後にゲル粉砕が行われる

、請求項1~21の何れか1項に記載の製造方法。

[請求項23]

重合工程が連続ベルト重合で行われ、重合後にゲル粉砕が行われる

、請求項1~21の何れか1項に記載の製造方法。」

・「[請求項32] 粒度850~150μmの割合が95重量%以上であるポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末であって、下記式で規定される内部気泡率が2.8~6.6%であることを特徴とする、吸水性樹脂粉末。

(内部気泡率[%])={(真密度[g/cm

3

])-(見かけ密度[g/cm

3

])}/(真密度[g/cm

3

])×100」

・「[請求項35] 無荷重下吸水倍率(CRC)が25[g/g]以上であり、荷重50[g/cm

2

]での加圧下吸収倍率(AAP)が15[g/g]以上である、請求項32~34の何れか1項に記載の吸水性樹脂粉末。」

・「[0014] 本発明が解決しようとする課題は、吸水性樹脂の他の物性(通液性、嵩比重、表面張力、加圧下吸水倍率、耐衝撃性等)を維持又は殆ど損なうことなく、更に高価な原料や装置を用いずとも、吸水速度(例えば、FSR)が向上した白色の吸水性樹脂粉末を提供することである。特に、高い通液性(例えば、SFC)と吸水速度(例えば、FSR)とを両立した、白色の吸水性樹脂粉末を提供することである。」

・「[0305] [実施例2]

容量2リットルのポリプロピレン製容器に、

アクリル酸

351.6g

、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート

(分子量523)2.17g、キレート剤として0.1重量%ジエチレントリアミン5酢酸・3ナトリウム水溶液94.6g、48.5重量%

水酸化ナトリウム水溶液

144.9g、界面活性剤として1.0重量%ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)水溶液6.45g、脱イオン水(イオン交換水)236.0g

投入し、

溶解(混合)させて単量体水溶液(2’)を作製した

。該水溶液(2’)の温度は、作製直後の1段階目の中和熱によって65°Cまで上昇した。この温度上昇に伴う気体の溶解度低下によって、界面活性剤を含んだ

該水溶液(2’)は、非常に細かい気泡が導入されて白濁していた

[0306] 次に、

上記単量体水溶液(2’)を攪拌しながら冷却し

、液温が53°Cとなった時点で、30°Cに調温した48.5重量%

水酸化ナトリウム水溶液

148.9g

を加え、混合することで単量体水溶液(2)を作製した

。この際、該単量体水溶液(2)の温度は、作製直後の第2段階目の中和熱によって83.5°Cまで上昇した。この温度上昇に伴う気体の溶解度低下によって、界面活性剤を含んだ

単量体水溶液(2)は、非常に細かい気泡が導入されて白濁していた

[0307] 次に、上記単量体水溶液(2)の温度が83°Cに低下した時点で、3.8重量%過硫酸ナトリウム水溶液15.3gを攪拌しながら加えた後、すぐにステンレス製バット型容器(底面340×340mm、高さ25mm、内面;テフロン(登録商標)を貼り付け)に大気開放系で注いだ。なお、該バット型容器は、ホットプレート(株式会社井内盛栄堂社製;NEO HOTPLATE HI-1000)を用いて、表面温度が40°Cとなるまで加熱した。また、過硫酸ナトリウム水溶液を加える前の単量体水溶液(2)の溶存酸素量は、6.53[ml/L]であった。

[0308]

上記単量体水溶液(2)

がバット型容器に注がれて15秒後に

重合反応が開始

した。該重合反応は、水蒸気を発生しながら上下左右に膨張発泡して進行し、その後、バット型容器よりも若干大きなサイズにまで収縮した。この膨張、収縮は約1分以内に終了した。重合反応の開始から3分経過後に、

含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)を取り出した

。なお、これら一連の操作は、大気開放系で行い、重合時のピーク温度は108°Cであった。

[0309] 以降、得られた

含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)を実施例1と同様の解砕、乾燥、粉砕、分級の各操作を行った

[0310]

上記の操作により

、固形分97重量%、重量平均粒子径(D50)460μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.40の

不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(2)を得た

。得られた吸水性樹脂粉末(2)の諸物性を表1に示す。また吸水性樹脂粉末(2)の白色度を表2に示す。」

・「[0364] [実施例11]

実施例2で得られた吸水性樹脂粉末(2)

100重量部

に対して、1,4-ブタンジオール0.48重量部、プロピレングリコール0.75重量部

、脱イオン水4.0重量部からなる

表面架橋剤溶液を、該吸水性樹脂粉末(2)に均一にスプレーし、混合し

た。表面架橋剤溶液を混合した吸水性樹脂粒子を熱風乾燥機(温度:180°C)で45分間

加熱表面架橋処理した

。加熱処理後、得られた吸水性樹脂粒子を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで粉砕することで、表面が架橋された吸水性樹脂粒子を得た。

[0365]

得られた表面が架橋された吸水性樹脂粒子

100重量部

に対して、多価金属カチオンとして硫酸アルミニウム

27重量%水溶液(酸化アルミニウム換算で8重量%)0.80重量部、

α-ヒドロキシカルボン酸として乳酸ナトリウム

60重量%水溶液0.134重量部、

及び、プロピレングリコール

0.016重量部

からなる混合液を添加し

た。添加後、無風条件下、60°Cで1時間

乾燥した

。次いで、

得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩に通過させて、吸水性樹脂粉末(11)を得た

。得られた吸水性樹脂粉末(11)の諸物性を表3に示す。

[0366] [実施例12]

実施例2で得られた吸水性樹脂粉末(2)100重量部に対して、1,4-ブタンジオール0.48重量部、プロピレングリコール0.75重量部、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.001重量部(吸水性樹脂粉末に対して10ppm)、脱イオン水4.0重量部からなる表面架橋剤溶液を、該吸水性樹脂粉末(2)に均一にスプレーしたこと以外は、実施例11と同様にして吸水性樹脂粉末(12)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(12)の諸物性を表3に示す。

[0367] なお、実施例12で得られた吸水性樹脂粉末(12)は、界面活性剤150ppmを実質均一に内部に存在する吸水性樹脂粉末(2)の表面をさらに界面活性剤10ppmで被覆されたものであり、その表面張力は67.4[mN/m]であった。」

・「[0371][表3]

42

115

0001432053000010.jpg

(イ)甲3に記載された発明

甲3に記載された事項を、特に実施例11について整理すると、甲3には、次の発明(以下、順に「甲3粒子発明」、「甲3製法発明」という。)が記載されていると認める。

<甲3粒子発明>

「アクリル酸、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート、水酸化ナトリウム水溶液、界面活性剤としてポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートを含む単量体水溶液を重合した含水ゲル状架橋重合体を解砕、乾燥、粉砕、分級した吸水性樹脂粉末を得て、前記吸水性樹脂粉末に1,4-ブタンジオール及びプロピレングリコールを含む表面架橋剤溶液を混合した後、加熱処理した表面が架橋された吸水性樹脂粒子を得て、前記表面が架橋された吸水性樹脂粒子に対して、多価金属カチオンとして硫酸アルミニウム水溶液、α-ヒドロキシカルボン酸として乳酸ナトリウム水溶液、及び、プロピレングリコールからなる混合液を添加し、乾燥した後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩に通過させて製造される吸水性樹脂粉末であって、該吸水性樹脂粉末は、CRCが27.1g/g、FSRが0.39g/g/sec、AAPが24.6g/g、内部気泡率が3.93%である、実施例11の高吸水性樹脂。」(当審注:実施例11については上記(ア)を参照。)

<甲3製法発明>

「アクリル酸、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート、水酸化ナトリウム水溶液、界面活性剤としてポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレートを含む単量体水溶液(2)を作成し、前記単量体水溶液(2)を重合して含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)を製造し、前記含水ゲル状架橋重合体(含水ゲル)を解砕、乾燥、粉砕、分級して、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(2)を得て、前記吸水性樹脂粉末(2)に1,4ブタンジオール、プロピレングリコールを含む表面架橋剤溶液を均一に混合し、加熱表面架橋処理して、表面が架橋された吸水性樹脂粒子を得、前記表面が架橋された吸水性樹脂粒子に対して、多価金属カチオンとして硫酸アルミニウム水溶液、α-ヒドロキシカルボン酸として乳酸ナトリウム水溶液、及び、プロピレングリコールからなる混合液を添加し、乾燥した後、得られた粒子を目開き850μmのJIS標準篩に通過させる、吸水性樹脂粉末を製造する方法であって、吸水性樹脂粉末は、CRCが27.1g/g、FSRが0.39g/g/sec、AAPが24.6g/g、内部気泡率が3.93%である、実施例11の吸水性樹脂粉末の製造方法。」

(2)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲3粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点3-1>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲3粒子発明の高吸水性樹脂は凸性が不明である点。

上記相違点3-1について検討する。上記相違点3-1に関し、甲3の記載に基づく判断は、上記2(2)イに記載した甲1と同様である。また、特許異議申立人の相違点3-1についての主張は、上記相違点1-2と同旨であるから同様に判断される。

よって、本件特許発明1は、甲3粒子発明ではなく、甲3粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件特許発明2ないし6について

本件特許発明2ないし6は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲3粒子発明ではなく、甲3粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2及び3もまた、甲3粒子発明ではなく、本件特許発明2ないし6も甲3粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明7について

本件特許発明7と甲3製法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点3-7>

本件特許発明7は、製造する高吸水性樹脂が「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲3製法発明は、製造する高吸水性樹脂の凸性が不明である点。

上記相違点3-7について検討する。上記相違点3-7は、上記相違点3-1と同旨であるから同様に判断される。

よって、本件特許発明7は、甲3製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件特許発明8、9、11及び12について

本件特許発明8、9、11及び12は、請求項7の記載を直接または間接的に引用するものであり、本件特許発明7の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(4)のとおり、本件特許発明7は、甲3製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明8、9、11及び12もまた、甲3製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

なお、甲3に記載された発明を実施例12から認定した場合も、甲3粒子発明及び甲3製法発明と同様の発明が認定され、上記と同様に判断される。

(6)申立理由3-1及び申立理由3-2についてのまとめ

したがって、本件特許発明1ないし3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1ないし9、11及び12は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項1ないし9、11及び12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由3-1及び申立理由3-2によっては取り消すことはできない。

5 申立理由4-1(甲4を主たる証拠とする新規性)及び申立理由4-2(甲4を主たる証拠とする進歩性)について

(1)甲4に記載された事項等

ア 甲4に記載された事項

甲4には、「高吸水性樹脂およびその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。

・「【請求項1】

少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体がカプセル化された発泡剤存在下に架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および前記架橋重合体が追加架橋されて、前記ベース樹脂粉末上に形成されている表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、

粒径が300~425μmである高吸水性樹脂粒子(M

0

)に対する表面に20~200μm直径の気孔が3個以上存在する高吸水性樹脂粒子(M

1

)の比率(M

1

/M

0

×100)が10%以上であり、

蒸留水に対する吸収能が150g/g以上である高吸水性樹脂。

【請求項2】

生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が30~45g/gである、請求項1に記載の高吸水性樹脂。

【請求項3】

粒径が300~425μmである高吸水性樹脂粒子(M

0

)に対する表面に20~200μm直径の気孔が3個以上存在する高吸水性樹脂粒子(M

1

)の比率(M

1

/M

0

×100)が20~70%であり、蒸留水に対する吸収能が150~500g/gである、請求項1に記載の高吸水性樹脂。」

・「【発明が解決しようとする課題】

【0007】

本発明は、優れた初期吸収能を示す高吸水性樹脂を提供する。」

・「【0084】

【図1】実施例1によって製造された高吸水性樹脂のSEMイメージである。

【図2】実施例2によって製造された高吸水性樹脂のSEMイメージである。

・・・。」

・「【0086】

製造例1:カプセル化された発泡剤の準備

コア-シェル構造を有し、コアはiso-ブタンであり、シェルはアクリレートおよびアクリロニトリルの共重合体から形成されるカプセル化された発泡剤を準備した。全体カプセル化された発泡剤重量に対してiso-ブタンは25重量%で含まれた。

【0087】

前記カプセル化された発泡剤の平均直径は13μmであった。それぞれのカプセル化された発泡剤の直径は光学顕微鏡を通じて平均フェレ(Feret)径として測定された。そして、カプセル化された発泡剤の直径の平均値を求めてカプセル化された発泡剤の平均直径と規定した。

【0088】

ガラスペトリ皿(Glass Petri dish)の上にカプセル化された発泡剤0.2gを塗布した後、150°Cで予熱されたホットプレート(Hot Plate)の上に10分間放置した。カプセル化された発泡剤は熱によって徐々に膨張し、これを光学顕微鏡で観察してカプセル化された発泡剤の空気中での最大膨張比率および最大膨張大きさを測定した。

【0089】

カプセル化された発泡剤に熱を加えた後、多く膨張した粒子順に上位10重量%の直径を測定して最大膨張大きさと規定し、カプセル化された発泡剤に熱を加える前に測定された平均直径(D

0

)に対する熱を加えた後に多く膨張した粒子の上位10重量%の平均直径(D

M

)の比率(D

M

/D

0

)を求めて最大膨張比率と規定した。前記直径および平均直径は全てカプセル化された発泡剤の直径および平均直径と同様に測定した。

【0090】

前記カプセル化された発泡剤の空気中最大膨張比率は約9倍であり、最大膨張大きさは約80~150μmであった。」

・「【0097】

実施例1:高吸水性樹脂の製造

ガラス反応器に

アクリル酸

100gを注入し、32重量%

苛性ソーダ溶液

123.5g

徐々に滴加して

混合した

。前記苛性ソーダ溶液の滴加時には中和熱によって混合溶液の温度が上昇して混合溶液が冷却されるのを待った。前記混合溶液の温度が約45°Cに冷却されれば、

混合溶液に

過硫酸ナトリウム0.2g、Irgacure TPO(ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)0.008g、製造例1で準備した

カプセル化された発泡剤

0.3g、

トリエチレングリコールジアクリレート

0.18g、コカミドモノエタノールアミン(Cocamide monoethanolamine)0.1gおよび水47g

を添加して単量体混合物を製造した

【0098】

幅10cm、長さ2mのベルトが50cm/minの速度で回転するコンベヤーベルト上に単量体混合物を500~2000mL/minの速度で供給した。そして、

単量体混合物

の供給と同時

10mW/cm

2

の強さを有する

紫外線を照射して

60秒間

重合反応を行った

【0099】

そして、

前記重合反応を通じて得られた重合体をミートチョッパ

(meat chopper)

を用いて粉

(crump)

に製造した

。その次に、上下に風量転移が可能なオーブンを用いて185°Cの

ホットエアー

(hot air)を20分間下方から上方に流れるようにし、再び20分間上方から下方に流れるようにして前記粉(crump)を均一に

乾燥させた

乾燥された粉を粉砕機で粉砕した後に分級して150~850μm大きさのベース樹脂粉末を得た

【0100】

前記で製造したベース樹脂粉末

100g

超純水5.0g、メタノール6.0g、

エチレングリコールジグリシジルエーテル

0.04g、シリカ(商品名:Aerosil200)0.02g

を混合した溶液を投与して

1分間混合した後、180°Cで60分間

表面架橋反応を行わせた

【0101】

そして、

得られた生成物を粉砕し分級して粒径が150~850μmである高吸水性樹脂を得た

【0102】

実施例2:高吸水性樹脂の製造

製造例1で準備したカプセル化された発泡剤の代わりに製造例2で準備したカプセル化された発泡剤を使用したことを除いて、実施例1と同様な方法で高吸水性樹脂を製造した。」

・「【0123】

【表1】

38

145

0001432053000011.jpg

・「【図1】

51

64

0001432053000012.jpg

【図2】

38

50

0001432053000013.jpg

(イ)甲4に記載された発明

甲4に記載された事項を、特に実施例1について整理すると、甲4には、次の発明(以下、「甲4粒子発明」という。)が記載されていると認める。

<甲4粒子発明>

「アクリル酸、苛性ソーダ溶液、トリエチレングリコールジアクリレートを含む単量体混合物に紫外線を照射して重合した重合体をミートチョッパを用いて粉にし、ホットエアーで乾燥した後、分級してベース樹脂粉末を得て、前記ベース樹脂粉末にエチレングリコールジグリシジルエーテルを含む溶液を投与した後、表面架橋反応を行って、得られた生成物を粉砕し、分級した粒径が150~850μmである高吸水性樹脂であって、該高吸水性樹脂は、CRCが37.9g/g、気孔粒子比率が32%、蒸留水吸収能が231g/gである、実施例1の高吸水性樹脂。」(当審注:実施例1については上記(ア)を参照。)

(2)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲4粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点4>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲4粒子発明の高吸水性樹脂は凸性が不明である点。

上記相違点4について検討する。上記相違点4に関し、甲4の記載に基づく判断は、上記2(2)イに記載した甲1と同様である。また、特許異議申立人の相違点4についての主張は、上記相違点1-2と同旨であるから同様に判断される。

よって、本件特許発明1は、甲4粒子発明ではなく、甲4粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件特許発明2及び3について

本件特許発明2及び3は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲4粒子発明ではなく、甲4粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2及び3もまた、甲4粒子発明ではなく、甲4粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

なお、甲4に記載された発明を実施例2から認定した場合も、甲4粒子発明と同様の発明が認定され、上記と同様に判断される。

(6)申立理由4-1及び申立理由4-2についてのまとめ

したがって、本件特許発明1ないし3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1ないし3は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由4-1及び申立理由4-2によっては取り消すことはできない。

6 申立理由5-1(甲6を主たる証拠とする新規性)及び申立理由5-2(甲6を主たる証拠とする進歩性)について

(1)甲6に記載された事項等

ア 甲6に記載された事項

甲6には、「高吸水性樹脂およびその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲6は外国語で記載された文献なので、訳文(甲24)にて示す。

・「【請求項1】

コロイダルシリカの存在下に、

酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体および内部架橋剤が架橋重合されたベース樹脂(base resin)を準備する段階

(段階1);

前記ベース樹脂にHLBが0以上6以下である疎水性物質、および

表面架橋剤を混合する段階

(段階2);および

前記段階2の混合物を昇温して前記

ベース樹脂に対する表面改質を行う段階

(段階3);

を含む、

高吸水性樹脂の製造方法

【請求項2】

前記コロイダルシリカは、粒径が10~100nmである、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。

生理食塩水に対する遠心分離保水能(CRC)が30~45g/gである、請求項1に記載の高吸水性樹脂。」(31頁2-15行)

・「【請求項10】

前記段階1は、

酸性基を有して前記酸性基の少なくとも一部が中和したアクリル酸系単量体、内部架橋剤、コロイダルシリカ、および重合開始剤を含むモノマー組成物を重合して含水ゲル状重合体を形成する段階;

前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階;

前記乾燥した重合体を粉砕する段階;および

前記粉砕した重合体を分級する段階を含む、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。

【請求項11】

前記モノマー組成物は、発泡剤および気泡安定剤をさらに含む、請求項10に記載の高吸水性樹脂の製造方法。

【請求項12】

前記発泡剤は、重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、重炭酸カリウム(potassium bicarbonate)、炭酸カリウム(potassium carbonate)、重炭酸カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、重炭酸マグネシウム(magnesium bicarbonate)および炭酸マグネシウム(magnesium carbonate)からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項11に記載の高吸水性樹脂の製造方法。

【請求項13】

前記気泡安定剤は、ドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecyl sulfate)、ステアリン酸ナトリウム(sodium stearate)、ラウリル硫酸アンモニウム(ammonium lauryl sulfate)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(sodium lauryl ether sulfate;SLES)、およびミレス硫酸ナトリウム(sodium myreth sulfate)からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項11に記載の高吸水性樹脂の製造方法。

【請求項14】

前記高吸水性樹脂は、吸収速度(vortex time)が35秒以下である

、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。」(32頁27行から34頁3行)

・「【発明が解決しようとする課題】

【0009】

前記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、再湿潤および小便漏出現象が抑制される高吸水性樹脂およびその製造方法を提供することを目的とする。」(2頁19-21行)

・「【0113】

<実施例>

(高吸水性樹脂の製造)

(実施例1)

アクリル酸

100g、

架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート

(PEGDA,Mw=523)0.6g、光開始剤としてBis(2,4,6-trimethylbenzoyl)-phenylphosphineoxide 0.008g、熱開始剤として過硫酸ナトリウム(sodium persulfate;SPS)0.15g、発泡剤として重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate;SBC)0.08g、界面活性剤としてドデシル硫酸ナトリウム(sodium dodecylsulfate;SDS)0.035g、コロイダルシリカ(ST-O)0.4g、31.5%

苛性ソーダ(NaOH)

123.3g、水38.53gを混合して

モノマー水溶液組成物を製造した

前記モノマー水溶液組成物を

Trayに受けた後、重合雰囲気温度80°Cを維持しながらUV照射装置で1分間

紫外線を照射して

(照射量:10mW/cm2)、2分間agingして

UV重合を行って含水ゲル重合体シートを製造した

【0114】

重合されたシートを取り出して3cmx3cmの大きさに切った後、

ミートチョッパー

(meat chopper)

を用いて

チョッピング工程(chopping)を行い

(crumb)

を製造した

前記粉

(crumb)

上下に風量転移が可能なオーブンで

乾燥し

た。185°Cのホットエアー(hot air)を15分は下方から上方に、15分は上方から下方に流れるようにして均一に乾燥し、乾燥後乾燥体の

含水量は2%以下になるようにした

乾燥後、粉砕機で粉砕した後

、Amplitute 1.5mmで10分

分級

(分級mesh組み合わせ:#20-30/#30-50/#50-100)

、各分級分(10%/75%/15%)を収集して粒径が約150μm~850μmである

重合体を分級して得

、このような方法で

ベース樹脂粉末を得た

【0115】

以後、

前記製造したベース樹脂

100重量部

、グリセリルステアレート(glyceryl stearate)0.02重量部、

表面架橋液

(水7.6重量部、メタノール7.6重量部、

エチレングリコールジグリシジルエーテル

(EX-810)0.075重量部、メタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulfite)0.03重量部、アルミニウムスルフェート18水和物(aluminum sulfate 18 hydrate;Al-S)0.1重量部、およびアルミニウムオキシド(Alu 130)0.03重量部)

を均等に混合した後

、140°Cで35分間

表面架橋反応を行った

。前記表面処理完了後、

シーブ(sieve)を用いて平均粒径の大きさが150~850μmである高吸水性樹脂を得た

。」(19頁12行から20頁11行)

・「【0152】

【表1】

64

145

0001432053000014.jpg

」(29頁24行から30頁1行)

(イ)甲6に記載された発明

甲6に記載された事項を、特に実施例1について整理すると、甲6には、次の発明(以下、「甲6粒子発明」という。)が記載されていると認める。

<甲6粒子発明>

「アクリル酸、ポリエチレングリコールジアクリレート、苛性ソーダ(NaOH)を含むモノマー水溶液組成物に紫外線を照射して重合した含水ゲル重合体シートを、ミートチョッパを用いて粉を製造し、前記粉を含水量2%以下になるように乾燥した後、粉砕、分級してベース樹脂粉末を得て、前記ベース樹脂にエチレングリコールジグリシジルエーテルを含む表面架橋液を均等に混合した後、表面架橋反応を行い、シーブを用いて平均粒径の大きさを150~850μmとした高吸水性樹脂であって、該高吸水性樹脂は、CRCが32.7g/g、Vortex timeが34秒、0.7psi AUPが23.9g/gである、実施例1の高吸水性樹脂。」(当審注:実施例1については上記(ア)を参照。)

(2)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲6粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点6>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲6粒子発明の高吸水性樹脂は凸性が不明である点。

上記相違点6について検討する。上記相違点6に関し、甲6の記載に基づく判断は、上記2(2)イに記載した甲1と同様である。また、特許異議申立人の相違点6についての主張のうち、上記2(2)ウの主張と同旨の主張については、上記相違点1-2と同様に判断される。

また、特許異議申立人は特許異議申立書(128-130頁)において、上記2(2)ウの主張に加え、本件特許の明細書の実施例1ないし7及び比較例1ないし4の記載を根拠として、CRC及びAUPが本件特許の請求項2に記載された範囲であれば、本件特許の請求項1に記載された縦横比及び凸性を満たすと主張し、甲6粒子発明は本件特許の請求項2に記載されたCRC及びAUPを満たすので、縦横比及び凸性も本件特許発明1の発明特定事項を満たすと主張している。

しかし、本件特許の実施例及び比較例は、CRC及びAUPが請求項2の発明特定事項を満たせば、縦横比及び凸性が請求項1の発明特定事項を満たすことを示すことを目的とするものではないので(例えば、比較例1はCRC28.5g/g、AUPが23.7g/gであり、請求項2の発明特定事項(CRCが27g/g以上かつAUPが23.5g/g以上)を満たすが、縦横比は0.72、凸性は0.91で、ともに請求項1の発明特定事項を満たしていない。)、請求項2に記載されたCRC及びAUPを満たす高吸水性樹脂であれば、縦横比及び凸性が請求項1の発明特定事項を満たすということはできない。

したがって、特許異議申立人の主張は、採用することができない。

よって、本件特許発明1は、甲6粒子発明ではなく、甲6粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件特許発明2ないし6について

本件特許発明2ないし6は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲6粒子発明ではなく、甲6粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2及び3もまた、甲6粒子発明ではなく、本件特許発明2ないし6も、甲6粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

なお、甲6に記載された発明を実施例2ないし5から認定した場合も、甲6粒子発明と同様の発明が認定され、上記と同様に判断される。

(6)申立理由5-1及び申立理由5-2についてのまとめ

したがって、本件特許発明1ないし3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1ないし6は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由5-1及び申立理由5-2によっては取り消すことはできない。

7 申立理由6-1(甲7を主たる証拠とする新規性)及び申立理由6-2(甲7を主たる証拠とする進歩性)について

(1)甲7に記載された事項等

ア 甲7に記載された事項

甲7には、「高吸水性樹脂およびその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲7は外国語で記載された文献なので、訳文(甲25)にて示す。

・「【請求項1】

少なくとも一部が中和した酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体の第1架橋重合体を含むベース樹脂粉末;および

前記ベース樹脂粉末上に形成されており、前記第1架橋重合体が表面架橋剤を媒介に追加架橋された第2架橋重合体を含む表面架橋層を含む高吸水性樹脂であって、

前記高吸水性樹脂は、それぞれの高吸水性樹脂粒子の最短直径/最長直径で定義される縦横比が0.5未満の高吸水性樹脂粒子を9.9個数%未満で含み、

ボルテックス法による吸収速度が5~55秒であり、

表面張力(surface tension)が50~80mN/mである、高吸水性樹脂。

【請求項2】

下記式1で表される吸水度が46~63g/gである、請求項1に記載の高吸水性樹脂:

[式1]

吸水度=CRC+AUP

前記式1において、

CRCは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する30分間の遠心分離保持能を示し、

AUPは、前記高吸水性樹脂の生理食塩水(0.9重量%塩化ナトリウム水溶液)に対する0.7psi下で1時間の間の加圧吸収能を示す。

【請求項3】

前記CRCは、25~35g/gである、請求項2に記載の高吸水性樹脂。

【請求項4】

前記AUPは、22~28g/gである、請求項2に記載の高吸水性樹脂。」(30頁2-29行)

・「【0006】

一方、前記高吸水性樹脂がより高い吸収速度を示すためには、広い表面積を有し、内部に多数の微細気孔が形成された多孔性構造などを示す必要がある。そこで、以前から発泡剤や界面活性剤などを適用してこのような多孔性構造などを有する高吸水性樹脂が製造された。

【0007】

このような高吸水性樹脂は、粉砕後縦横比が小さい粒子が多量生成されるが、このような粒子はその形態などが不均一になる恐れが大きい。このために、粉砕後の表面架橋時または物性向上のための添加剤などの混合時に、表面架橋が不均一に行われたり、添加剤の塗布が不均一に行われる場合が多い。その結果、多孔性構造などを形成して高吸水性樹脂の高い吸収速度を実現した従来技術では、吸収性能などの他の物性が低下する場合が多かった。また、このような従来の方法による場合、樹脂粒子の粉砕、分級または移送過程で該当粒子が容易に壊れ得る。このようになると、微粉の発生が増加し、表面架橋以後の物性が低下し得る。また、粉砕、分級または移送過程で粒子が壊れることによって、高吸水性樹脂の表面積が減らされ得、その結果、吸収速度がかえって低下し得る。

【0008】

そこで発泡剤の使用量を減らし、縦横比が小さい粒子の生成を減らして吸収性能の低下を抑制しながらも、より向上した吸収速度を同時に示す高吸水性樹脂を提供できる技術の開発が継続的に求められている。

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0009】

そこで本発明は、基本的な吸収性能に優れるだけでなく、より向上した吸収速度および通液性などを共に示す高吸水性樹脂およびその製造方法を提供することにある。」(2頁1-23行)

・「【0116】

実施例1

高吸水性樹脂の製造装置としては重合工程、含水ゲル粉砕工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程、冷却工程、分級工程および各工程を連結する輸送工程で構成される連続製造装置を用いた。

【0117】

アクリル酸

100重量部

に内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート

(重量平均分子量:~500g/mol)0.4重量部、界面活性剤としてラウリル硫酸ナトリウム(Sodium Lauryl Sulfate)の0.01重量部および光開始剤としてフェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(Phenylbis(2,4,6-trimethylbenzoyl)phosphine oxide)0.01重量部

を混合して単量体溶液を製造した

次いで

、前記単量体溶液を定量ポンプで連続供給しながら、同時に24重量%

水酸化ナトリウム水溶液

160重量部

連続的に

ラインミキシングして単量体水溶液を製造した

。また、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液6重量部を連続的にラインミキシングして単量体混合物を製造した。

【0118】

このような単量体混合物を240kg/hの流量で一次的に0.015mの直径(最大直径区間)を有する単管を介して投入した後、2次的に0.008mの直径に変化した単管(最小直径区間)を介して連続移送した。このような移送過程で各区間の移送速度は下記表1に整理されたとおりである。

【0119】

このような移送により、移動するコンベヤーベルトからなる

重合反応器に単量体水溶液を投入し

、UV照射装置を介して

紫外線を照射

(照射量:2mW/cm

2

)

して

2分間

UV重合を行って含水ゲル重合体を製造した

【0120】

前記含水ゲルを

平均大きさが約300mm以下になるように切断した後に、

粉砕機

(10mmの直径を有する複数の穴を含む多孔板を備える)

に投入して粉砕した

【0121】

次いで、前記粉砕された含水ゲルを

上下に風量転移が可能な乾燥器で

乾燥させた

乾燥された粉の含水量が約2%以下になるように

180°Cのホットエア(hot air)を15分間下方から上方に流れるようにし、再び15分間上方から下方に流れるようにして

前記含水ゲルを均一に乾燥させた

【0122】

前記

乾燥された樹脂を粉砕機で粉砕した後分級して

150~850μmの大きさの

ベース樹脂を得た

【0123】

その後、

製造されたベース樹脂粉末

100重量部

に、エチレンカーボネート

3重量部

を含む表面架橋剤水溶液

6g

噴射して常温で攪拌してベース樹脂粉末上に表面架橋液が等しく分布するように

混合した

次いで、表面架橋液と混合されたベース樹脂粉末を表面架橋反応器に入れて表面架橋反応を行った

【0124】

このような表面架橋反応器内で、ベース樹脂粉末は80°C近辺の初期温度で漸進的に昇温されるものと確認され、30分経過後に190°Cの反応最高温度に到達するように操作した。このような反応最高温度に到達した後に、15分間追加反応させた後最終的に製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。

前記表面架橋工程後、ASTM規格の標準網ふるいで分級して150μm~850μmの粒径を有する実施例1の高吸水性樹脂を製造した

【0125】

上記方法により得られたベース樹脂および高吸水性樹脂を電子顕微鏡写真で分析して(図1など参照)、各ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子の縦横比(a/b)を算出し、全体ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子のうち縦横比が0.5未満の粒子比率(個数%)を測定した。測定結果、該当ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂粒子のうち、縦横比が0.5未満の粒子比率は下記表1に共に示した。

【0126】

実施例2

実施例1において、単量体混合物の移送時最小直径区間の単管(移送管)直径を0.006mに変化させ、該当区間での最大移送速度を下記表1のように調整したことを除いては実施例1と同様に実施して実施例2の高吸水性樹脂を製造した。

【0127】

実施例3

実施例1において、投入される単量体混合物の流量を400kg/hに調整して単量体混合物の各区間別移送速度を下記表1のように調整したことを除いては実施例1と同様に実施して実施例3の高吸水性樹脂を製造した。

【0128】

実施例4

単量体混合物中に前記界面活性剤を0.005重量部の含有量で含ませたことを除いては実施例1と同様の方法で実施例4の高吸水性樹脂を製造した。

【0129】

実施例5

実施例1において、前記単量体混合物を240kg/hの流量で一次的に0.015mの直径(最大直径区間)を有する単管を介して投入した後、2次的に0.002mの直径に変化した単管(最小直径区間)を介して連続移送したことを除いては実施例1と同様に実施して実施例5の高吸水性樹脂を製造した。このような移送過程で各区間の移送速度は下記表1に整理されたとおりである。」(22頁16行から24頁25行)

・「【0149】

上記方法で測定された実施例1~5および比較例1~3の各物性値を下記表1に整理して示した。

【0150】

【表1】

96

145

0001432053000015.jpg

」(27頁29行から28頁3行)

(イ)甲7に記載された発明

甲7に記載された事項を、特に実施例1について整理すると、甲7には、次の発明(以下、「甲7粒子発明」という。)が記載されていると認める。

<甲7粒子発明>

「アクリル酸、ポリエチレングリコールジアクリレート、水酸化ナトリウム水溶液を含む単量体水溶液に紫外線を照射して重合を行って含水ゲル重合体を製造し、前記含水ゲルを粉砕し、含水量が約2%以下になるように均一に乾燥させ、粉砕、分級してベース樹脂を得て、前記ベース樹脂にエチレンカーボネートを含む表面架橋剤水溶液を噴射して等しく分布するように混合して、表面架橋反応を行い、ASTM規格の標準網ふるいで分級して150μm~850μmの粒径とした高吸水性樹脂であって、該高吸水性樹脂は、CRCが30.5g/g、AUPが26.0g/g、吸水度が56.5g/g、Vortexが48秒である、実施例1の高吸水性樹脂。」(当審注:実施例1については上記(ア)を参照。)

(2)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲7粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点7>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲7粒子発明の高吸水性樹脂は凸性が不明である点。

上記相違点7について検討する。上記相違点7に関し、甲7の記載に基づく判断は、上記2(2)イに記載した甲1と同様である。また、特許異議申立人の相違点7についての主張のうち、上記2(2)ウの主張と同旨の主張については、上記相違点1-2と同様に判断される。

また、特許異議申立人は特許異議申立書(132-134頁)において、上記2(2)ウの主張に加え、甲7粒子発明は、水酸化ナトリウムで中和したアクリル酸、ポリエチレングリコールジアクリレートを重合し、表面架橋して得られた、Vortex(吸収速度)が48秒、CRCが30.5g/g、AUPが26.0g/gであり、発泡重合で得られた気孔を有している蓋然性が高いものであるから、縦横比及び凸性が本件特許発明1の発明特定事項を満たすと主張している。

しかし、CRC及びAUPの値から凸性を予測することができないことは、上記6(2)に記載したとおりであるから、Vortex(吸収速度)、CRC及びAUPの値等から、甲7粒子発明の縦横比及び凸性が請求項1の発明特定事項を満たすとする、特許異議申立人の主張は採用することができない。

よって、本件特許発明1は、甲7粒子発明ではなく、甲7粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件特許発明2及び3について

本件特許発明2及び3は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲7粒子発明ではなく、甲7粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2及び3もまた、甲7粒子発明ではなく、甲7粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

なお、甲7に記載された発明を実施例2ないし5から認定した場合も、甲7粒子発明と同様の発明が認定され、上記と同様に判断される。

(6)申立理由6-1及び申立理由6-2についてのまとめ

したがって、本件特許発明1ないし3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1ないし3は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由6-1及び申立理由6-2によっては取り消すことはできない。

8 申立理由7-1(甲8を主たる証拠とする新規性)及び申立理由7-2(甲8を主たる証拠とする進歩性)について

(1)甲8に記載された事項等

ア 甲8に記載された事項

甲8には、「高吸水性樹脂アクアキープ(登録商標)」に関して、次の事項が記載されている。

・「アクアキープは、ポリアクリル酸ソーダでできており、“-COO

-

イオン”と“Na

+

イオン”が高濃度で存在しております。」(2頁「吸水原理」の欄の4-5行)

・「

79

145

0001432053000016.jpg

」(3頁上部)

・「

125

145

0001432053000017.jpg

」(3頁下部)

・「

103

145

0001432053000018.jpg

」(5頁上部)

(イ)甲8に記載された発明

甲8に記載された事項を、特に、アクアキープ(登録商標)10SH-Pについて整理すると、甲8には、次の発明(以下、「甲8粒子発明」という。)が記載されていると認める。

<甲8粒子発明>

「ポリアクリル酸ソーダでできている高吸水性樹脂であって、該高吸水性樹脂は、吸水量が35g/g、吸水速度が2秒である、アクアキープ(登録商標)10SH-Pという商品名の高吸水性樹脂。」

(2)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲8粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点8>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲8粒子発明の高吸水性樹脂は凸性が不明である点。

上記相違点8について検討する。上記相違点8に関し、甲8の記載に基づく判断は、上記2(2)イに記載した甲1と同様である。また、特許異議申立人の相違点8についての主張のうち、上記2(2)ウの主張と同旨の主張については、上記相違点1-2と同様に判断される。

また、特許異議申立人は特許異議申立書(137頁)において、上記2(2)ウの主張に加え、甲8粒子発明は、電子顕微鏡写真を参照すると、粒子表面に非常に凹凸が発達した形状をしており、明らかに本件請求項1に記載の凸性が0.9以下である、と主張している。

しかし、電子顕微鏡写真から目視で凸性を正確に計算することはできないので、特許異議申立人の主張は採用することができない。

よって、本件特許発明1は、甲8粒子発明ではなく、甲8粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)申立理由7-1及び申立理由7-2についてのまとめ

したがって、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由7-1及び申立理由7-2によっては取り消すことはできない。

9 申立理由8-1(甲12を主たる証拠とする新規性)及び申立理由8-2(甲12を主たる証拠とする進歩性)について

(1)甲12に記載された事項等

ア 甲12に記載された事項

甲12には、「吸水性樹脂、およびその製造方法」に関して、次の事項が記載されている。

・「[請求項1]

アスペクト比が1.1~200で、且つ、中位粒子径(d)が50~600μmの1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂であって、該2次粒子が有する形態が、アスペクト比が1.0~3.0で、且つ、中位粒子径(D)が100~2000μmである、吸水性樹脂。」

・「[0016]

よって、薄型の吸収体製造に好適に用いられる要件を兼ね備えた吸水性樹脂、すなわち、一般的な吸水性能に優れるうえに、適度な粒子径を有しながらも強い粒子強度を有し、繊維との固着性に優れながらも、粉体流動性にも優れる吸水性樹脂の開発が待ち望まれている。」

・「[0100]

実施例1

還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン500mlをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS-370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80°Cまで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50°Cまで冷却した。

[0101] 一方、500mlの三角フラスコに80.5質量%の

アクリル酸水溶液

92gをとり、外部より冷却しつつ、18.4質量%の

水酸化ナトリウム水溶液

167.7g

を滴下して75モル%の中和を行ったのち

、ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業社製、品番:SP-600)2.30gを添加し、室温にて撹拌して完全に溶解させた。過硫酸カリウム0.11g、

N,N’-メチレンビスアクリルアミド

9.2mg

を加えて溶解し

第1段目の単量体水溶液を調製した

。(この水溶液の粘度は10000mPa・sであった。)

[0102]

攪拌機の回転数を600rpmとして、前記単量体水溶液を

前記セパブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35°Cで30分間保持した後、70°Cの水浴に浸漬して昇温し、

重合を行なうことにより、第1段目の重合後スラリーを得た

。(なお、この重合後スラリーを120°Cの油浴を用いて、水とn-ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、楕円球状の1次粒子の中位粒子径は190μm、アスペクト比は1.9であった。)

[0103]

一方、別の

500mlの三角フラスコに80.5質量%の

アクリル酸水溶液

110.4gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の

水酸化ナトリウム水溶液

149.3g

を滴下して75モル%の中和を行なったのち

、過硫酸カリウム0.13g、

N,N’-メチレンビスアクリルアミド

11.0mg

を加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製し

、温度を約24°Cに保持した。

[0104]

前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後

、24°Cに冷却し、

前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し

、窒素で置換しながら30分間保持したのち、再度、フラスコを70°Cの水浴に浸漬して昇温し、

重合を行なうことにより、第2段目の重合後スラリーを得た

[0105]

次いで

、120°Cの油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンを共沸することにより、n-ヘプタンを還流しながら、259.8gの水を系外へ抜き出した後、

エチレングリコールジグリシジルエーテル

の2%水溶液5.06g

を添加し

、80°Cで2時間保持した後、n-へプタンを蒸発させて乾燥することによって、

楕円球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂

212.5g

を得た

。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は600μm、水分率は6%であった。各性能の測定結果を表1に示す。

[0106]実施例2

実施例1において、第1段目の重合時の撹拌回転数を400rpmに変更し、共沸脱水後に添加するエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液の量を11.13gとする以外は、実施例1と同様の操作を行い、楕円球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂213.1gを得た

。(なお、第1段目の重合後スラリーを120°Cの油浴を用いて、水とn-ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、楕円球状の1次粒子の中位粒子径は280μm、アスペクト比は1.4であった。)得られた吸水性樹脂の中位粒子径は720μm、水分率は7%であった。各性能の測定結果を表1に示す。

[0107]実施例3

実施例1において、第1段目の重合時の撹拌回転数を700rpmに変更し、共沸脱水後に添加するエチレングリコールジグリシジルエーテルの2%水溶液の量を6.07gとする以外は、実施例1と同様の操作を行い、楕円球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂214.0gを得た。(なお、第1段目の重合後スラリーを120°Cの油浴を用いて、水とn-ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、楕円球状の1次粒子の中位粒子径は110μm、アスペクト比は1.6であった。)得られた吸水性樹脂の中位粒子径は470μm、水分率は7%であった。各性能の測定結果を表1に示す。」

・「[0123][表1]

92

137

0001432053000019.jpg

・「[図1]

85

108

0001432053000020.jpg

(イ)甲12に記載された発明

甲12に記載された事項を、特に実施例2について整理すると、甲12には、次の発明(以下、「甲12粒子発明」という。)が記載されていると認める。

<甲12粒子発明>

「アクリル酸水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を滴下して75モル%の中和を行なったのち、N,N’-メチレンビスアクリルアミドなどを加えて溶解した第1段目の単量体水溶液を、攪拌機の回転数を400rpmとして重合を行った第1段目の重合スラリーに、攪拌機の回転数を1000rpmに変更した後、アクリル酸水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を滴下して75モル%の中和を行なったのち、N,N’-メチレンビスアクリルアミドなどを加えて溶解した第2段目の単量体水溶液を添加し、重合を行って得た第2段目の重合スラリーに、エチレングリコールジグリシジルエーテルを添加して表面架橋した、楕円球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂であって、該吸水性樹脂は、吸水能が60g/g、荷重下の生理食塩水吸水能が18g/gである、実施例2の高吸水性樹脂。」(当審注:実施例2については上記(ア)を参照。)

(2)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲12粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点12>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲12粒子発明の高吸水性樹脂は凸性が不明である点。

上記相違点12について検討する。上記相違点12に関し、甲12の記載に基づく判断は、上記2(2)イに記載した甲1と同様である。また、特許異議申立人の相違点12についての主張は、上記相違点1-2と同旨であるから同様に判断される。

よって、本件特許発明1は、甲12粒子発明ではなく、甲12粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件特許発明2について

本件特許発明2は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲12粒子発明ではなく、甲12粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2もまた、甲12粒子発明ではなく、甲12粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

なお、甲12に記載された発明を実施例3から認定した場合も、甲12粒子発明と同様の発明が認定され、上記と同様に判断される。

(4)申立理由8-1及び申立理由8-2についてのまとめ

したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1及び2は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由8-1及び申立理由8-2によっては取り消すことはできない。

10 申立理由9-1(甲13を主たる証拠とする新規性)及び申立理由9-2(甲13を主たる証拠とする進歩性)について

(1)甲13に記載された事項等

ア 甲13に記載された事項

甲13には、「多孔質吸水性ポリマー粒子の製造法」に関して、次の事項が記載されている。

・「【請求項1】

水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を用いて吸水性ポリマー粒子を製造する方法であって、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液に、第1界面活性剤の存在下、第1疎水性有機溶媒を内包させ、O/Wエマルジョンを得る工程、及び得られたO/Wエマルジョンを、第2界面活性剤を含有する第2疎水性有機溶媒に分散させてO/W/Oエマルジョンを得る工程を有し、第1界面活性剤としてポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体を用いることを特徴とする嵩密度が0.30~0.50g/mLである多孔質吸水性ポリマー粒子の製造法。」

・「【発明が解決しようとする課題】

【0007】

本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、多数の連続空孔および適度な嵩密度を有し、吸水速度に優れた多孔質吸水性ポリマー粒子を効率よく製造しうる方法を提供することを課題とする。」

・「【0064】

実施例1

(1)O/Wエマルジョンの調製

攪拌機、冷却管、滴下ロート、窒素ガス吹き込み用フッ素樹脂製チューブおよび温度計を備えた1000mL容の五ツ口円筒形丸底フラスコに、80質量%

アクリル酸

92.0g(1.02モル)とイオン交換水8.02gを仕込み、内温が15~20°Cとなるようにフラスコを外部から冷却しつつ、滴下ロートより30質量%

水酸化ナトリウム

102.2g(0.77モル)

を攪拌しながら滴下して中和を行い、アクリル酸を中和度が75モル%となるように中和し

た。

【0065】

この中和したアクリル酸水溶液を

室温(23±2°C)に保ち、増粘剤のヒドロキシエチルセルロース1.8gを投入し、攪拌下で溶解した。さらに、この水溶液に第1界面活性剤としてポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体〔旭電化(株)製、商品名:アデカプルロニックF-108、質量平均分子量:15500、ポリオキシエチレンの含有量:80質量%〕1.8gをイオン交換水30.0gに溶解させた溶液、過硫酸カリウム0.1g(0.37ミリモル)、

エチレングリコールジグリシジルエーテル

0.02g(0.11ミリモル)およびイオン交換水10.06g

を加えて混合・溶解させ、単量体水溶液を調製した

。この単量体水溶液の25°Cにおける粘度は、1400mPa・sであった。

【0066】

次に、フラスコを外部から冷却しながら内温を15±2°Cに保ち、パドル型攪拌翼を用いて回転数400rpmで

この単量体水溶液を攪拌しながら、n-ヘプタン

266g(約400mL)

チューブポンプにて30mL/分の流量で

投入し、n-ヘプタンを上記単量体水溶液に内包させたO/Wエマルジョンを調製した

【0067】

(2)O/W/Oエマルジョンの調製

攪拌機、還流冷却管、窒素ガス吹き込み用フッ素樹脂製チューブ、O/Wエマルジョン投入用フッ素樹脂製チューブおよび温度計を備えた1000mL容の五ツ口円筒形丸底フラスコ内に、

n-ヘプタン

200g(約300mL)を注ぎ、

第2界面活性剤

としてショ糖脂肪酸エステル〔三菱化学フーズ(株)製、商品名:S-370〕0.9gと、

高分子分散安定剤

として無水マレイン酸変性ポリエチレン〔三井化学(株)、商品名:HI-WAX1105A〕0.9gとを添加し、攪拌しながら80°Cまで昇温し、溶解した後に60°Cまで放冷した。攪拌機の回転数を600rpmとし、60°Cになった時点でフラスコ系内の酸素を除去するために窒素ガスを50mL/分の流量で吹き込みながら、

前記(1)で得られたO/Wエマルジョンを

チューブポンプにて60mL/分の流量で

滴下し、O/W/Oエマルジョンを調製した

【0068】

(3)重合~乾燥

前記(2)で得られたO/W/Oエマルジョン

入りのフラスコを70°Cの湯浴に浸漬し

昇温させ、重合反応を1.5時間行った

。その後、窒素ガスの通気を止めて120°Cの油浴に切り換え、共沸蒸留により水のみを系外に除去し、脱水を行った。

【0069】

含水率が30質量%となるまで脱水した後

、2質量%

エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液

4.60g(0.53ミリモル)

を添加し

、内温を80°Cに保ちつつ2時間反応させた。再び120°Cの油浴にて

加熱し

、分散媒のn-ヘプタンおよび水を蒸留により除去して

乾燥し、得られた粒子を目開きが850μmの篩に通して粗粒子を取り除き

、平均粒子径が395μmの

多孔質吸水性ポリマー粒子

87g

を得た

。得られた多孔質吸水性ポリマー粒子の電子顕微鏡写真を図1に示す。なお、図1において、拡大の尺度は、図1の下欄外に示されている。」

・「【0076】

比較例4

実施例1において、第1界面活性剤としてポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体の代わりに、部分ケン化ポリビニルアルコール

〔日本合成化学工業(株)製、品番:GH-17〕

1.8gを用い、内包させるn-ヘプタンの量を133g(約200mL)に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行ったところ、内部に独立空孔を持つ球状粒子が得られた

。得られた球状粒子を目開きが850μmの篩に通して平均粒子径410μmの球状吸水性ポリマー粒子80gを得た。得られた球状吸水性ポリマー粒子の

電子顕微鏡写真を図5に示す

。なお、図5において、拡大の尺度は、図5の下欄外に示されている。」

・「【0093】【表1】

102

136

0001432053000021.jpg

・「【0097】

・・・

【図5】比較例4で得られた球状吸水性ポリマー粒子の粒子構造を示す電子顕微鏡写真である。

・・・」

・「【図5】

94

78

0001432053000022.jpg

(イ)甲13に記載された発明

甲13に記載された事項を、特に比較例4について整理すると、甲13には、次の発明(以下、「甲13粒子発明」という。)が記載されていると認める。

<甲13粒子発明>

「中和度75モル%となるように中和したアクリル酸、エチレングリコールジグリシジルエーテルを含む単量体水溶液にn-ヘプタンを内包させたO/Wエマルジョンを、界面活性剤と高分子分散剤を含むn-ヘプタンに滴下してO/W/Oエマルジョンを調整した後、重合を行い、エチレングリコールジグリシジルエーテルで表面架橋した後、目開き850μmの篩に通して粗粒子を取り除いた多孔質吸水性ポリマー粒子であって、該多孔質吸水性ポリマー粒子は、吸水能が42g/g、吸水速度が48秒である、比較例4の多孔質吸水性ポリマー粒子。」(当審注:比較例4については上記(ア)を参照。)

(2)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲13粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点13>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲13粒子発明の高吸水性樹脂は凸性が不明である点。

上記相違点13について検討する。上記相違点13に関し、甲13の記載に基づく判断は、上記2(2)イに記載した甲1と同様である。また、特許異議申立人の相違点13についての主張は、上記相違点1-2と同旨であるから同様に判断される。

よって、本件特許発明1は、甲13粒子発明ではなく、甲13粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件特許発明3について

本件特許発明3は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は甲13粒子発明ではなく、甲13粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明3もまた、甲13粒子発明ではなく、甲13粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(4)申立理由9-1及び申立理由9-2についてのまとめ

したがって、本件特許発明1及び3は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件特許発明1及び3は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項1及び3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由9-1及び申立理由9-2によっては取り消すことはできない。

11 申立理由10(甲9を主たる証拠とする進歩性)について

(1)甲9に記載された事項等

ア 甲9に記載された事項

甲9には、「吸水性樹脂およびその製造方法並びに吸水性樹脂組成物」に関して、次の事項が記載されている。

・「請求の範囲

1.吸水性樹脂脂の製造方法は、

不飽和単量体と架橋剤とを含む単量体水溶液に、平均粒子径が1μm~100μmの範囲内の固体の発泡剤を分散させた後、該不飽和単量体を重合させるステップを含んでいる。

2.クレーム1に記載の吸水性樹脂の製造方法であって、

不飽和単量体を重合させるステップは、 単量体水溶液を攬拌しながら行われる。

3.クレーム1に記載の吸水性樹脂の製造方法であって、

不飽和単量体を重合させるステップは、 単量体水溶液を攪拌することなく行われる。

4.クレーム1に記裁の吸水性樹脂の製造方法であって、

不飽和単量体を重合させるステップは、40°C~120°Cの範囲内で行われる。

5.クレーム1に記載の吸水性樹脂の製造方法であって、

上記不飽和単量体は、アクリル酸、および、アクリル酸の水溶性塩類からなる群より選ばれる少なくとも一種のアクリル酸塩系単量体を主成分として含んでいる。」(7頁1行から19行)

・「本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、水性液体の拡散性や吸水速度、保水能、およびドライタッチ性等の吸水特性に優れると共に、水可溶性成分量や残存単量体量が低減された吸水性樹脂およびその製造方法、並びに、該吸水性樹脂を用いた吸水性樹脂組成物を提供することにある。」(5頁下から3行から6頁2行)

・「得られた気泡含有含水ゲルを取り出し、約20mm~1mmの大きさに細分した後、熱風乾燥機を用いて150°Cで熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらにJIS規格の標準篩(850μm)で分級することにより、本発明にかかる吸水性樹脂を得た。」(48頁3-6行の実施例1の記載)

・「〔実施例11〕

先ず、

アクリル酸

216部、

アクリル酸ナトリウム

37%

水溶液

4321部、

ポリエチレングリコールジアクリレート

5.8部、および、水887部

を混合することにより、単量体水溶液を調製した

。つまり、該単量体水溶液は、

中和率が85モル%のアクリル酸塩系単量体

約33%

水溶液である

上記の単量体水溶液を温度25°Cに保ちながら、 液中に窒素ガスを吹き込むことにより、溶存酸素を追い出した。次いで、攪拌しながら、単量体水溶液に、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩の10%水溶液40部を添加した。その後、該水溶液を窒素気流下、温度25°Cで攪拌した。

攪拌を開始してから約6分後に水溶液は白濁し、平均拉子径7μmの白色微粒子状の2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二アクリル酸塩が生成した。2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二アクリル酸塩は単量体水溶液中に均一に分散していた。

この時点で、

単量体水溶液を攪拌しながら、過硫酸ナトリウム

10%水溶液28部と、L-アスコルビン酸1%水溶液1.3部と

を添加した

。添加後、単量体水溶液を攪拌し続けた。

過硫酸ナトリウゥム水溶液を添加してから約30秒後に

アクリル酸塩系単量体の重合が開始した。これにより、気泡含有含水ゲルを得た

得られた気泡含有含水ゲルを取り出し、実施例1の操作と同様の操作を行うことにより、吸水性樹脂を得た

。上記吸水性樹脂の平均孔径は150μmであった。また、吸水性樹脂の諸性能を上記の方法により測定した結果、保水量は39g/g、残存単量体量は240ppm、水可溶性成分量は8%、拡散速度は21秒、ドライタッチ性は4.0g、加圧下の吸水量は11g/gであった。上記の結果を表2に示す。また、粒子径が300μm~600μmの範囲内である吸水性樹脂の粒子構造を示す電子顕微鏡写真を図5に示す。」(60頁7行から61頁10行)

・「

144

145

0001432053000023.jpg

」(69頁表2)

・「図5

97

75

0001432053000024.jpg

(イ)甲9に記載された発明

甲9に記載された事項を、特に実施例11について整理すると、甲9には、次の発明(以下、「甲9粒子発明」という。)が記載されていると認める。

<甲9粒子発明>

「アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコールジアクリレートの架橋重合体を含む気泡含有含水ゲルを熱風乾燥し、粉砕し、分級することにより得た吸水性樹脂であって、該吸水性樹脂は、保水量が39g/g、拡散速度は21秒、ドライタッチ性は4.0g、加圧下の吸水量は11g/gである、実施例11の吸水性樹脂。」(当審注:実施例11については上記(ア)を参照。)

(2)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲9粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点9-1>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲9粒子発明の高吸水性樹脂は凸性が不明である点。

上記相違点9-1について検討する。上記相違点9-1に関し、甲9の記載に基づく判断は、上記2(2)イに記載した甲1と同様である。また、特許異議申立人の相違点9-1についての主張のうち、上記2(2)ウの主張と同旨の主張については、上記相違点1-2と同様に判断される。

また、特許異議申立人は特許異議申立書(146-147頁)において、上記2(2)ウの主張に加え、甲9粒子発明は、図5の電子顕微鏡写真が本件特許の明細書に添付された図1と非常に類似しているので、本件特許の請求項1に記載の凸性が0.9以下である、と主張している。

しかし、電子顕微鏡写真から目視で凸性を正確に計算することはできないし、電子顕微鏡写真を目視で比較することで凸性の異同を正確に判断することは困難であるから、特許異議申立人の主張は採用することができない。

よって、本件特許発明1は、甲9粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明2及び3について

本件特許発明2及び3は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は、甲9粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2及び3もまた、甲9粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)申立理由10についてのまとめ

したがって、本件特許発明1ないし3は、本件特許発明1ないし3は、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由10によっては取り消すことはできない。

12 申立理由11(甲10を主たる証拠とする進歩性)について

(1)甲10に記載された事項等

ア 甲10に記載された事項

甲10には、「吸水性樹脂およびその製造方法」に関して、次の事項が記載されている。なお、甲10は外国語で記載された文献なので、訳文にて示す。

・「特許請求の範囲

1. 水溶性不飽和モノマーと水溶性架橋モノマーとの混合物の水性モノマー溶液に不活性ガスの気泡を分散させ、不活性ガスが分散したモノマー溶液の体積が非分散状態の体積の1.02~5倍の範囲となる条件で前記混合物を共重合させることにより、速やかな吸水が可能な吸水性樹脂の製造方法。

2. 請求項1に記載の方法であって、不活性ガス気泡は、分散された不活性ガスの平均細孔径が 10~500μmの範囲となるように分散される。

3. 請求項1または請求項2に記載の方法であって、前記水性モノマー溶液は界面活性剤を含む。

・・・

10. 請求項1~8のいずれかに記載の方法であって、製造された吸水性樹脂を表面架橋剤で処理することをさらに含む方法。」

・「[0012] 従って、本発明の目的は、水を素早く吸収することができる吸水性樹脂及びその製造方法を提供することである。

[0013] 本発明の他の目的は、無負荷時及び負荷時の吸水速度が速く、乾燥しやすく、粉砕時の負荷が小さい吸水性樹脂及びその製造方法を提供することである。」

・「[0016] 本発明のさらに他の目的は、吸水速度または溶解速度が高い親水性ポリマーの製造方法を提供することである。

[0017] 本発明のさらに他の目的は、粒子径が小さいにも関わらず、荷重下での吸水による体積膨張率が極めて高く、粒子径が小さいため吸収速度が大きく、使い捨ておむつ、生理用ナプキン、失禁患者用パッド等の衛生材料として好適に用いられる吸水性樹脂およびその製造方法を提供することである。」

・「[0019] 本発明は、上記のように構成されているので、本発明の吸水性樹脂は、無荷重時及び荷重時の吸水速度が速く、吸水能力が顕著であり、水溶性成分の含有量が少ない。

そのため、生理用品や紙おむつなどの衛生材料分野、農業や園芸の分野、鮮度保持が必要な食品分野、結露防止や冷凍が必要な工業製品の分野など、水分の吸収や保持が求められる様々な用途に最適です。

[0020] 本発明の吸水性樹脂は、粒子径が微細であり、荷重下での吸水能力に優れている。

そのため、おむつや生理用コットンに使用した場合、膨潤したゲルによる閉塞を起こさず、尿を速やかに大量に吸収することができます。

[0021] また、本発明の製造方法によれば、吸水速度が速く、加圧下での吸水性に優れる吸水性樹脂を容易に製造することができる。」

・「[0022]

・・・

図4は、実施例11で得られた本発明の吸水性樹脂組成物の発泡状態を示す電子顕微鏡写真である。

図5は、実施例1で得られた本発明の吸水性樹脂組成物の発泡状態を示す電子顕微鏡写真である。

・・・」

・「[0068] 本発明が対象とする水溶液重合は、生成した共重合体を連続的に発泡させながら行うことができる。

例えば、カルボン酸モノマーまたはその水溶性塩と架橋剤とを含む溶液を調製し、この溶液に炭酸塩型発泡剤および重合開始剤を添加して炭酸化モノマー溶液を形成し、この炭酸化モノマー溶液を重合して微多孔性ハイドロゲルを形成し、この微多孔性ハイドロゲルを粉砕して乾燥し、乾燥した粉砕ハイドロゲルを架橋剤で表面処理することにより、極めて吸水性の優れたポリマーを得る方法(特開平5-237378号公報、特開平7-185331号公報)、トルエンなどの揮発性有機化合物の分散液の存在下で水溶性モノマーを重合して微多孔性吸水性樹脂を製造する方法(米国特許第5354290号)、水溶性モノマーと、吸水性樹脂の製造方法としては、例えば、水溶性モノマーと架橋剤とを混合し、発泡させ、さらにモノマーと架橋剤とを反応させる方法(米国特許第5,381,935号、同第 5,338,766号)、30°C~120°Cの範囲で10時間の半減期を有するアゾ開始剤を用いて水溶性モノマーと架橋剤とを共重合させて吸水性に優れた吸水性樹脂を得る方法(WO95/17455)、アゾ化合物のアクリル酸塩錯体からなる発泡剤の存在下で水溶性モノマーと架橋剤とを共重合させて吸水性樹脂を得る方法(WO96/17884)等が挙げられる。

[0069] 発泡は、例えば窒素、二酸化炭素、空気などの不活性ガスを水溶液に導入するか、または水溶液を高速で激しく撹拌することによって実施される。

あるいは、重合前に水溶液に発泡剤を添加することによって発泡が達成される。

[0070] 発泡剤の代表的な例としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム等の炭酸塩、アゾビスアミジノプロパンジクロリド等の水溶性アゾ重合開始剤、マロン酸等のジカルボン酸、トリクロロエタン、トリフルオロエタン等の揮発性有機溶剤等が挙げられる。

発泡剤を添加する場合、その使用量は、水溶性不飽和モノマーと水溶性架橋モノマーの合計量、または水溶性エチレン性不飽和モノマー100重量部に対して、0~5重量部、好ましくは0~1重量部である。」

・「[0075] 上記重合、すなわち上記製造方法により、速吸水性を有する吸水性樹脂や親水性ポリマーを安価かつ容易に得ることができる。

ほぼ独立した気泡構造を有する吸水性樹脂または親水性ポリマーの平均細孔径は、10~500μmの範囲であり、好ましくは20~400μmの範囲であり、さらに好ましくは 30~300μmの範囲であり、最も好ましくは40~200μmの範囲である。 上記細孔径は、吸水性樹脂または親水性ポリマーの乾燥状態の断面を電子顕微鏡で画像解析することにより求められる。具体的には、画像解析の結果、吸水性樹脂の細孔径の分布を表すヒストグラムを作成し、このヒストグラムに基づいて細孔径の数平均を算出することにより、平均細孔径が得られる。

[0076] 上記の方法により得られた吸水性樹脂または親水性ポリマーは、その内部および表面に多数の細孔を有する多孔質組織を呈するため、吸水性樹脂または親水性ポリマーへの水性液体の移行に必要な空隙を十分に確保することができる。

そのため、水性液体の通過性や拡散性に優れ、毛細管現象により吸水速度や保水性を向上させることができます。 本発明の吸水性樹脂または親水性ポリマーは多孔質組織を呈するため、粒子状に製造しても、粒子間を液体が通過する際に水性液体の通過性を保持することができる。上記平均細孔径が10μm未満であると、樹脂またはポリマーの水性液体の通過性や拡散性が不十分となる可能性がある。逆に、平均細孔径が500μmより大きい場合、吸水速度の向上が不十分となる可能性がある。」

・「例1

[0119]

アクリル酸

153部、37%

アクリル酸ナトリウム

1615部、

ポリエチレングリコール

(n=8)ジアクリレート4.9部、フッ素系カチオン界面活性剤(住友スリーエム社製、「フルオラードFC-135」の商標名で販売)0.75部、および脱イオン水710部

を含む水性モノマー溶液を調製した

この水溶液を窒素流下で激しく高速撹拌し

、水溶液中の溶存酸素を窒素で置換し、

多量の窒素気泡を水性モノマー溶液中に分散させた

窒素ガスがモノマー水溶液中に均一に分散し、溶液の体積が元の体積の1.58倍に増加したら、

得られた分散液に10%過硫酸ナトリウム水溶液

10部と5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液10部

を激しく撹拌しながら添加し、直ちに重合を開始した

気泡が分散した状態で、25°~75°Cの温度範囲で2時間静置重合を進行させた。

重合により得られた多量の気泡を含むスポンジ状のハイドロゲルポリマーを

10mm~50mmの立方体に切断し、熱風乾燥機で150°Cで1時間

乾燥させた

水和ゲルポリマー中の気泡の平均細孔径は90μmであった。

乾燥したハイドロゲルポリマー

のキューブ

を粉砕機で粉砕し、目開き850μmの篩を通過したポリマー粒子を分離して

、平均粒子径220μmの

本発明の吸水性樹脂(1)を得た

本発明の

吸水性樹脂(1)の吸水容量、吸水速度及び水溶性成分含有量は、それぞれ 31.1g/g、26秒及び5.5%であった

表面の平均細孔径は85μmでした。」

・「図5

204

145

0001432053000025.jpg

(イ)甲10に記載された発明

甲10に記載された事項を、特に実施例1について整理すると、甲10には、次の発明(以下、順に「甲10粒子発明」、「甲10製法発明」という。)が記載されていると認める。

<甲10粒子発明>

「アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコールジアクリレートの架橋重合体を含む多量の気泡を含むスポンジ状のハイドロゲルポリマーを乾燥し、粉砕し、目開き850μmの篩を通過させることにより得た吸水性樹脂であって、該吸水性樹脂は、吸水容量が31.1g/g、吸水速度が26秒、水溶性成分含有量が5.5%である、実施例1の吸水性樹脂。」(当審注:実施例1については上記(ア)を参照。)

<甲10製法発明>

「アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコールジアクリレートを含む水性モノマー溶液を調整し、多量の窒素気泡を水性モノマー溶液中に均一に分散させて、前記水性モノマー溶液を重合して多量の気泡を含むスポンジ状のハイドロゲルポリマーを得て、得られたハイドロゲルポリマーを乾燥し、粉砕した後、目開き850μmの篩を通過させる吸水性樹脂を得る方法であって、該吸水性樹脂は、吸水容量が31.1g/g、吸水速度が26秒、水溶性成分含有量が5.5%である、実施例1の吸水性樹脂の製造方法。」

(2)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲10粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点10-1>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲10粒子発明の高吸水性樹脂は凸性が不明である点。

上記相違点10-1について検討する。上記相違点10-1に関し、甲10の記載に基づく判断は、上記2(2)イに記載した甲1と同様である。また、特許異議申立人の相違点10-1についての主張のうち、上記2(2)ウの主張と同旨の主張については、上記相違点1-2と同様に判断される。

また、特許異議申立人は特許異議申立書(150-151頁)において、上記2(2)ウの主張に加え、甲10粒子発明は、図5の電子顕微鏡写真が本件特許の明細書に添付された図1と非常に類似しているので、本件特許の請求項1に記載の凸性が0.9以下である、と主張している。

しかし、電子顕微鏡写真から目視で凸性を正確に計算することはできないし、電子顕微鏡写真を目視で比較することで凸性の異同を正確に判断することは困難であるから、特許異議申立人の主張は採用することができない。

よって、本件特許発明1は、甲10粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件特許発明2ないし6について

本件特許発明2ないし6は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は、甲10粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし6も甲10粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明7について

本件特許発明7と甲10製法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点10-7>

本件特許発明7は、製造する高吸水性樹脂が「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲10製法発明は、製造する吸水性樹脂の凸性が不明である点。

上記相違点10-7について検討する。上記相違点10-7は、上記相違点10-1と同旨であるから同様に判断される。

よって、本件特許発明7は、甲10製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件特許発明8ないし12について

本件特許発明8ないし12は、請求項7の記載を直接または間接的に引用するものであり、本件特許発明7の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(4)のとおり、本件特許発明7は、甲10製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明8ないし12もまた、甲10製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

なお、甲10に記載された発明を実施例11、26又は27から認定した場合も、甲10粒子発明及び甲10製法発明と同様の発明が認定され、上記と同様に判断される。

(6)申立理由11についてのまとめ

したがって、本件特許発明1ないし12は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由11によっては取り消すことはできない。

13 申立理由12(甲11を主たる証拠とする進歩性)について

(1)甲11に記載された事項等

ア 甲11に記載された事項

甲11には、「ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末およびその製造方法」に関して、次の事項が記載されている。

・「請求の範囲

[請求項1] 気体を溶解および/または分散させたアクリル酸系単量体水溶液を得る工程と、

界面活性剤不存在下または300ppm以下の存在下で上記単量体水溶液を重合する工程と、

得られた含水ゲル状架橋重合体を重合時または重合後に細分化する工程と、

細分化した含水ゲル状架橋重合体を加熱乾燥する工程と、

を含む、ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の製造方法であって、

上記アクリル酸系単量体水溶液を得る工程における気体の溶解および/または分散方法が、下記の(a)~(c)

(a)単量体水溶液および気体の加圧による方法

(b)単量体水溶液および気体の旋回流の形成による方法

(c)細孔を通した気体の単量体水溶液への混合による方法

から選ばれる少なくともひとつの方法であることを特徴とする、ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末の製造方法。

・・・

[請求項23] 上記単量体水溶液を重合する工程において、単量体水溶液中に体積平均径50nm以上100μm以下のマイクロバブルまたはナノバブルを含有する、請求項1~22のいずれか1項に記載の製造方法。

・・・

[請求項27] さらに、加熱乾燥する工程後に、ポリアクリル酸系吸水性樹脂粉末を表面架橋する工程を含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の製造方法。」

・「[0010] そこで、本発明が解決しようとする課題は、衛生用品等の吸液特性を阻害することなく、嵩比重の過度の低下もなく、高吸水速度の吸水性樹脂を高効率で製造する方法を提供することにある。」

・「[0224] 測定装置;日本電色工業(株) 濁度色度計Water Analyzer-2000

セル長 ;10mm(濁度 0~ 500)、5mm(濁度500~)

[実施例1]

シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中に、

アクリル酸

461.5g、37重量%

アクリル酸ナトリウム水溶液

4401.4g、脱イオン水(イオン交換水)588.0g、

ポリエチレングリコールジアクリレート

(分子量523)11.16g

を投入し、溶解(混合)させて単量体水溶液とした

[0225] 次に、上記単量体水溶液を24.5°Cに調温しながら窒素ガス雰囲気下で20分間脱気した。続いて、

マイクロバブル発生装置

(株式会社オーラテック社製、型式:OM4-GP-040)

を用いて

、0.25~0.30Mpaの絶対圧力下で窒素ガスを導入気体として5分間

マイクロバブルを該単量体水溶液中に導入した

[0226] 続いて、

上記マイクロバブルが導入された単量体水溶液に

20重量%

過硫酸ナトリウム水溶液

14.2gおよび0.1重量%L-アスコルビン酸水溶液23.7g

攪拌しながら

添加したところ

、およそ30秒後に

重合が開始した

。このときの重合開始温度は24.7°Cであった。

[0227] そして、生成した含水ゲル状架橋重合体を解砕しながら、25~95°Cで重合を行い、重合が開始して30分経過後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。

得られた含水ゲル状架橋重合体

は、その径が約10mm以下に細分化されていた。

[0228] この細分化された

含水ゲル状架橋重合体を

目開き850μmのステンレス製金網上に広げ、180°Cで45分間

熱風乾燥を行った。該乾燥により得られた乾燥物をロールミル

(有限会社井ノ口技研社製、WML型ロール粉砕機)

を用いて粉砕した後、目開き850μmおよび目開き45μmのJIS標準篩を用いて分級した

[0229] 上記の操作により、固形分96重量%、重量平均粒子径(D50)453μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.36の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(1)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(1)の諸物性を表1に示す。

[0230] また、マイクロバブル導入後、過硫酸ナトリウム水溶液および%L-アスコルビン酸水溶液添加前の単量体水溶液の様子を図2(写真1)に示す。

[0231] [実施例2]

界面活性剤としてポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(花王株式会社製)0.042gを単量体水溶液中に溶解させたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、固形分96重量%、重量平均粒子径(D50)459μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.38の不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(2)を得た。得られた吸水性樹脂粉末(2)の諸物性を表1に示す。

[0232] また、得られた吸水性樹脂粉末(2)を目開き425μmおよび目開き300μmのJIS標準篩を用いて分級し、425μmを通過し300μmを通過しない粒子のSEM(走査電子顕微鏡)写真を図4(写真3)に示す。」

・「[0252]

[表1]

53

145

0001432053000026.jpg

・「[図4]

113

151

0001432053000027.jpg

(イ)甲11に記載された発明

甲11に記載された事項を、特に実施例2について整理すると、甲11には、次の発明(以下、順に「甲11粒子発明」、「甲11製法発明」という。)が記載されていると認める。

<甲11粒子発明>

「アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコールジアクリレートの架橋重合体を含む含水ゲル状架橋重合体を熱風乾燥し、粉砕し、分級することにより得た吸水性樹脂粉末であって、該吸水性樹脂は、CRCが34.9g/g、FSRが0.32g/g/sec、固形分が96wt%である、実施例2の吸水性樹脂粉末。」(当審注:実施例2については上記(ア)を参照。)

<甲11製法発明>

「アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコールジアクリレートを含む単量体水溶液を調整し、上記単量体水溶液にマイクロバブルを導入した後、前記単量体水溶液を重合して含水ゲル状架橋重合体を生成して、得られた含水ゲル状架橋重合体を熱風乾燥し、粉砕した後、分級して吸水性樹脂を得る方法であって、該吸水性樹脂は、CRCが34.9g/g、FSRが0.32g/g/sec、固形分が96wt%である、実施例2の吸水性樹脂粉末の製造方法。」

(2)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲11粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点11-1>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲11粒子発明の高吸水性樹脂は凸性が不明である点。

上記相違点11-1について検討する。上記相違点11-1に関し、甲11の記載に基づく判断は、上記2(2)イに記載した甲1と同様である。また、特許異議申立人の相違点11-1についての主張のうち、上記2(2)ウの主張と同旨の主張については、上記相違点1-2と同旨であるから同様に判断される。

また、特許異議申立人は特許異議申立書(159-160頁)において、上記2(2)ウの主張に加え、甲11粒子発明は、図4の電子顕微鏡写真が本件特許の明細書に添付された図1と非常に類似しているので、本件特許の請求項1に記載の凸性が0.9以下である、と主張している。

しかし、電子顕微鏡写真から目視で凸性を正確に計算することはできないし、電子顕微鏡写真を目視で比較することで凸性の異同を正確に判断することは困難であるから、特許異議申立人の主張は採用することができない。

よって、本件特許発明1は、甲11粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

(3)本件特許発明2ないし6について

本件特許発明2ないし6は、請求項1の記載を直接または間接的に引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は、甲11粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし6も甲11粒子発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(4)本件特許発明7について

本件特許発明7と甲11製法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点11-7>

本件特許発明7は、製造する高吸水性樹脂が「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲11製法発明は、製造する吸水性樹脂の凸性が不明である点。

上記相違点11-7について検討する。上記相違点11-7は、上記相違点11-1と同旨であるから同様に判断される。

よって、本件特許発明7は、甲11製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)本件特許発明8ないし12について

本件特許発明8、9、11及び12は、請求項7の記載を直接または間接的に引用するものであり、本件特許発明7の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(4)のとおり、本件特許発明7は、甲11製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明8、9、11及び12もまた、甲11製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(6)申立理由12についてのまとめ

したがって、本件特許発明1ないし9、11及び12は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項1ないし9、11及び12に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由12によっては取り消すことはできない。

14 申立理由13(甲5を主たる証拠とする拡大先願)について

(1)甲5に記載された事項等

ア 甲5に記載された事項

甲5の優先権主張の基礎とされた特願2019-231612号の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面には、「吸水性樹脂粒子、吸収体、吸水シート、吸収性物品、吸水性樹脂粒子の製造方法」に関して、次の事項が記載されている。

・「[請求項3] 一粒子の表面の少なくとも一部に、レーザー顕微鏡によって測定される凹凸度が1μm以上20μm以下である部分と、凹凸度が20μm超200μm以下である部分とを有する、請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子。

[請求項4] 一次粒子が凝集した形状を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子。

[請求項5] 一次粒子が凝集した形状の吸水性樹脂粒子であって、デジタルマイクロスコープによって測定される粒子の平均凹凸度が120~180μmである、吸水性樹脂粒子。

[請求項6] 中位粒子径が300~600μmであり、かつVortex法による吸水速度が5~20秒である、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子。

[請求項7] 生理食塩水保水量が20~60g/gであり、かつ4.14kPaにおける荷重下吸水量が10ml/g以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の吸水性樹脂粒子。」

・「発明が解決しようとする課題

[0004] 従来の吸水性樹脂粒子を用いた吸収性物品では、吸収対象の液が吸収性物品の外に漏れる点で改善の余地がある。

[0005] 本発明は、液体漏れが抑制された吸収性物品をもたらす吸水性樹脂粒子を提供することを目的とする。」

・「[0021]・・・

[図5]実施例3の吸水性樹脂粒子を示す走査型電子顕微鏡写真である。

・・・」

・「[0126] <実施例1>

[含水ゲル状重合体aの製造]

還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機として、翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する撹拌翼を備えた内径11cm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。該フラスコに、炭化水素分散媒としてn-ヘプタン293gを入れ、高分子系分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.736gを添加して混合した。フラスコ内の混合物を撹拌しつつ80°Cまで昇温することにより分散剤をn-ヘプタンに溶解させた後、50°Cまで冷却した。

[0127] 内容積300mLのビーカーに、

水溶性エチレン性不飽和単量体として

80.5質量%の

アクリル酸水溶液

92.0g(1.03モル)を入れ、外部より冷却しつつ、20.9質量%の

水酸化ナトリウム水溶液

147.7g

を滴下することにより75モル%の中和を行った

。その後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW-15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)、及び

内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル

0.010g(0.057ミリモル)

を加えて溶解することにより、第1段目の単量体水溶液を調製した

[0128]

第1段目の単量体水溶液を

上記フラスコに添加して、10分間撹拌した。別途、n-ヘプタン6.62gに界面活性剤としてショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370、HLB:3)0.736gを加熱溶解することにより界面活性剤溶液を調製した。該界面活性剤溶液を上記フラスコに更に添加して、

撹拌機の回転数を550rpmとして撹拌しながら

系内を窒素で十分に置換した。その後、上記フラスコを70°Cの水浴に浸漬して加温し、

重合を

60分間

行うことにより

真球状である含水ゲル状重合体aを含むスラリーを得た

[0129][含水ゲル状重合体bの製造]

還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機を備えた内径11cm、内容積2Lの、4箇所の側壁バッフル付き丸底円筒型セパラブルフラスコ(バッフル長さ:10cmバッフル幅:7mm)を準備した。撹拌機としては、翼径5cmの4枚傾斜パドル翼(フッ素樹脂にて表面処理したもの)を2段有する撹拌翼を有するものを用いた。該フラスコに、炭化水素分散媒としてn-ヘプタン451.4gを添加し、界面活性剤としてソルビタンモノラウレート(ノニオンLP-20R、HLB値:8.6、日油株式会社製)1.29gを添加することにより混合物を得た。該混合物を撹拌機の回転数300rpmで撹拌しつつ50°Cまで昇温することにより、ソルビタンモノラウレートをn-ヘプタンに溶解させた。その後、混合物を40°Cまで冷却した。

[0130] 次に、内容積500mLの三角フラスコに80.5質量%の

アクリル酸水溶液

92.0g(アクリル酸:1.03モル)を入れた。続いて、外部より氷冷しながら20.9質量%

水酸化ナトリウム水溶液

147.7g

を滴下することによってアクリル酸の中和を行うことによりアクリル酸部分中和物水溶液を得た

。次に、水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.1012g(0.374ミリモル)を

アクリル酸部分中和物水溶液に加えた後に溶解させることにより単量体水溶液を調製した

[0131]

上述の単量体水溶液を上記フラスコに添加した後

、系内を窒素で充分に置換した。その後、上記フラスコ内の混合物を

撹拌機の回転数700rpmで撹拌しつつ

、フラスコを70°Cの水浴に浸漬して60分間保持して

重合を完了させることにより、不定形状である含水ゲル状重合体bを含むスラリーを得た

[0132][造粒]

還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、撹拌機を備えた内径11cm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。撹拌機には、図4に概形を示す撹拌翼200を取り付けた。撹拌翼200は、軸200a及び平板部200bを備えている。平板部200bは、軸200aに溶接されるとともに、湾曲した先端を有している。平板部200bには、軸200aの軸方向に沿って延びる4つのスリットSが形成されている。4つのスリットSは平板部200bの幅方向に配列されており、内側の二つのスリットSの幅は1cmであり、外側二つのスリットSの幅は0.5cmである。平板部200bの長さは約10cmであり、平板部200bの幅は約6cmである。

[0133]

上記フラスコに

、n-ヘプタン220g、目開き75μmのJIS標準篩を用いてn-ヘプタンから濾別した

含水ゲル状重合体aを含むスラリー

125g、

及び

、目開き75μmのJIS標準篩を用いてn-ヘプタンから濾別した

含水ゲル状重合体bを含むスラリー

185g

を添加し

、撹拌機の回転数1000rpmで

撹拌しつつ

80°Cのオイルバスに浸漬した。別途、

粉末状無機凝集剤として非晶質シリカ

(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)0.092g

n-ヘプタン100gに

分散させることにより、分散液を調製した。該分散液を

上記フラスコに添加して10分間

混合することにより、含水ゲル状重合体aと含水ゲル状重合体bとを凝集させた

。含水ゲル状重合体a及び含水ゲル状重合体bの混合比(各スラリー中に含まれる吸水性樹脂固形分の含有量を別途加熱乾固して測定した結果に基づき算出した理論比、以下同様)は、50:50である。

[0134]

凝集後

、125°Cに設定した油浴に上記フラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、n-ヘプタンを還流しながら100.0gの水を系外へ抜き出した。その後、上記フラスコに表面架橋剤として2質量%の

エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液

4.14g(0.475ミリモル)

を添加し

、83°Cで2時間保持した。

[0135] その後、n-ヘプタン及び水を125°Cの油浴で

加熱して蒸発させて乾燥させることによって、重合体粒子の乾燥品を得た

この重合体粒子を目開き850μmの篩に通過させ、吸水性樹脂粒子Aを

59.9g

得た

。吸水性樹脂粒子Aの中位粒子径は486μmであった。吸水性樹脂粒子Aは、粒子それぞれが真球状部分及び不定形状部分を有していた。

[0136]<実施例2>

凝集後に添加する、表面架橋剤としての2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の量を8.28g(0.951ミリモル)に変更したこと、及びn-ヘプタンと水との共沸蒸留により抜き出す水の量を101.6gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子Bを51.8g得た。吸水性樹脂粒子Bの中位粒子径は517μmであった。吸水性樹脂粒子Bは、粒子それぞれが真球状部分及び不定形状部分を有していた。

[0137]<実施例3>

造粒の際に添加する含水ゲル状重合体aの量を100gに、含水ゲル状重合体bの量を222gに変更したこと、及び、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により抜き出す水の量を114.0gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子Cを75.6g得た。含水ゲル状重合体a及び含水ゲル状重合体bの混合比(質量基準)は40:60である。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は453μmであった。吸水性樹脂粒子Cは、粒子それぞれが真球状部分及び不定形状部分を有していた。吸水性樹脂粒子Cの走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。」

・「[0171]

[表2]

56

142

0001432053000028.jpg

・「[0183]

[表3]

105

144

0001432053000029.jpg

・「[図5]

163

123

0001432053000030.jpg

(イ)甲5に記載された発明

甲5に記載された事項を、特に実施例3について整理すると、甲5には、次の発明(以下、「甲5粒子発明」という。)が記載されていると認める。

<甲5粒子発明>

「水酸化ナトリウムで75モル%の中和を行ったアクリル酸、エチレングリコールジグリシジルエーテルを含む単量体水溶液を撹拌機の回転数を550rpmとして撹拌しながら重合した、真球状である含水ゲル状重合体aを含むスラリーと、アクリル酸部分中和物水溶液を撹拌機の回転数700rpmで撹拌しつつ重合した、不定形状である含水ゲル状重合体bを含むスラリーとをフラスコに添加して撹拌し、粉末状無機凝集剤として非晶質シリカの分散液を混合することにより凝集させた後、エチレングリコールジグリシジルエーテルで表面架橋し、乾燥し、目開き850μmの篩を通過させて得た分級することにより得た吸水性樹脂粒子であって、該吸水性樹脂粒子は、保水量40g/g、荷重下吸水量(4.14kPa)が16ml/g、吸水速度が7秒である、実施例3の吸水性樹脂粒子。」(当審注:実施例3については上記(ア)を参照。)

(2)本件特許発明1について

本件特許発明1と甲5粒子発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。

<相違点5>

本件特許発明1の高吸水性樹脂は「凸性が0.9以下」であるのに対し、甲5粒子発明の高吸水性樹脂は凸性が不明である点。

上記相違点5について検討する。上記相違点5に関し、甲5の記載に基づく判断は、甲1の新規性についての判断と同様であり、他の証拠の記載及び優先日当時における技術常識を参酌しても、本件特許発明1が甲5粒子発明と実質同一であるとはいえない。特許異議申立人の上記相違点5についての主張のうち、上記2(2)ウ(ア)と同旨の主張については、上記相違点1-2と同様に判断される。

また、特許異議申立人は特許異議申立書(173-174頁)において、上記2(2)ウの主張に加え、甲5粒子発明は、図5の電子顕微鏡写真から、本件特許の請求項1に記載の凸性が0.9以下である、と主張している。

しかし、電子顕微鏡写真から目視で凸性を正確に計算することはできないし、電子顕微鏡写真を目視で比較することで凸性の異同を正確に判断することは困難であるから、特許異議申立人の主張は採用することができない。

よって、本件特許発明1は、甲5粒子発明と実質同一であるとはいえない。

(3)本件特許発明2について

本件特許発明2は、請求項1の記載を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。

そして、上記(2)のとおり、本件特許発明1は、甲5粒子発明と実質同一であるとはいえないから、本件特許発明2も甲5粒子発明と実質同一であるとはいえない。

(4)申立理由13についてのまとめ

したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。

よって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第113条第2号に該当せず、申立理由13によっては取り消すことはできない。

14 申立理由15及び申立理由16(明確性)について

申立理由15及び申立理由16はいずれも、明確性に関する申立ての理由であるから、併せて検討する。

(1)明確性要件の判断基準

特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。

(2)明確性要件の判断

ア 申立理由15について

特許異議申立人は特許異議申立書(179-180頁)において、上記第4 24の主張をしているので、検討する。

本件特許の発明の詳細な説明の【0079】の記載からみて、請求項3における気孔の「平均直径」の用語の定義は明確であるから、請求項3の記載は明確である。

特許異議申立人は、ゲル粉砕によって気泡がつぶれていると主張しているが、本件特許の発明の詳細な説明の【0164】には分級後「粒子の損傷なく分離した試料」を測定対象としたことが記載されているから、気泡がつぶれていることを理由とした特許異議申立人の主張は、明細書の記載に基づくものではなく、妥当でない。

実施例1は、本件特許の発明の詳細な説明の【0077】に記載された高吸水性樹脂の表面に均一な直径を有する気孔が均一に形成されるという一実施形態の実施例であることを前提とするものであるから、「拡大倍率20倍で観察できなかったより小さな気孔」の割合は低いと理解でき、したがって、本件特許の発明の詳細な説明の【0164】において20~24倍での観察が行われていることは、同【0079】に記載された測定方法と同等の測定値が得られる必要十分な倍率での観察を行ったものと理解できる。

よって、本件特許の発明の詳細な説明の【0164】及び【0079】の記載によって、気孔の平均直径の測定方法を特定できないとはいえず、請求項3の記載は明確である。

請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4及び5についても同様である。

イ 申立理由16について

特許異議申立人は令和7年8月5日に提出された意見書(13、15-16頁)において、上記第4 25の主張をしているので、検討する。

(ア)「850~150μm」について

請求項1及び請求項7の記載自体は明確であるし、本件特許の発明の詳細な説明の記載(【0083】を含む)と矛盾するものでもないから、用語が2通りに解釈されることはない。

したがって、請求項1及び請求項7に記載された「150μm~850μmの粒径を有する」という記載が第三者に不測の不利益を与えるほど不明確であるとはいえない。

請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし6及び請求項7を直接又は間接的に引用する請求項8ないし12についても同様である。

(イ)「吸収速度(vortex time)」、「遠心分離保水能(CRC)」、「加圧吸収能(AUP)」について

請求項1及び請求項7には高吸水性樹脂は「150μm~850μmの粒径を有する」と記載されているから、上記の用語は、150μm~850μmの粒径を有する高吸水性樹脂を測定対象とする物性であると理解でき、したがって、請求項の記載は明確である。なお、仮に、粒径が上記の範囲外の高吸水性樹脂が測定対象に含まれているとしてもその量は限られたものと解され、「吸収速度(vortex time)」、「遠心分離保水能(CRC)」及び「加圧吸収能(AUP)」が多少変動するとしても大きく変動することは考えにくいので、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとまではいえない。

よって、本件特許の請求項1及び請求項7の記載は、明確性の要件を充足するといえる。

請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし6及び請求項7を直接又は間接的に引用する請求項8ないし12についても同様である。

(3)申立理由15及び申立理由16についてのまとめ

したがって、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしている出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由15及び申立理由16によっては取り消すことができない。

第7 結語

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した理由並びに特許異議申立書に記載した理由及び令和7年8月5日に特許異議申立人が提出した意見書に記載した理由によっては、本件特許の請求項1ないし12に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件特許の請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり決定する。

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