結論テキスト
特許第7543048号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-21〕、22について訂正することを認める。
特許第7543048号の請求項1~3及び6~22に係る特許を維持する。
特許第7543048号の請求項4及び5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025700247 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7543048号の請求項1~22に係る特許についての出願は、令和2年9月18日に出願され、令和6年8月23日にその特許権の設定登録がされ、同年9月2日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。
令和7年 2月28日 :特許異議申立人高橋豊(以下「申立人高橋」という。)による請求項1~22に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 同月 同日 :特許異議申立人山内慶子(以下「申立人山内」という。)による請求項1~22に係る特許に対する特許異議の申立て
同年 4月17日 :申立人高橋による手続補正書(方式)の提出
同年 6月17日付け:取消理由通知書
同年 7月17日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 同月28日付け:訂正請求があった旨の通知書
同年 8月 7日 :申立人山内による意見書の提出
なお、上記通知書は、両申立人に、取消理由通知の写し、訂正請求書及びこれに添付された訂正した特許請求の範囲の副本、取消理由通知に対応する特許権者の意見書の副本を送付し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えるものであるが、申立人高橋からは応答がなかった。
本件訂正請求書による請求の趣旨は、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~22について訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示している。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「検体を測定して前記検体に含まれる複数の細胞の各々に関するデータを取得する細胞測定装置と、前記細胞測定装置とネットワークを介して接続された細胞分析装置とを含むシステムにおいて、前記細胞測定装置が」と記載されているのを、「検体を測定して前記検体に含まれる複数の細胞の各々に関するデータを取得する細胞測定装置と、前記細胞測定装置とネットワークを介して接続された細胞分析装置とを含むシステムにおいて、
前記データは、細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データであり、
前記細胞測定装置が」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2、3、6~21についても同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4及び請求項5を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に「請求項1から5のいずれか1項に記載」と記載されているのを「請求項1から
3
のいずれか1項に記載」に、
請求項7に「請求項1から6のいずれか1項に記載」と記載されているのを「請求項1から
3、および
6のいずれか1項に記載」に、
請求項8に「請求項1から7のいずれか1項に記載」と記載されているのを「請求項1から
3、6、および
7のいずれか1項に記載」に、
請求項9に「請求項1から8のいずれか1項に記載」と記載されているのを「請求項1から
3、および6から
8のいずれか1項に記載」に、
請求項10に「請求項1から8のいずれか1項に記載」と記載されているのを「請求項1から
3、および6から
8のいずれか1項に記載」に、
請求項11に「請求項1から10のいずれか1項に記載」と記載されているのを「請求項1から
3、および6から
10のいずれか1項に記載」に、
請求項13に「請求項1から12のいずれか1項に記載」と記載されているのを「請求項1から
3、および6から
12のいずれか1項に記載」に、
請求項14に「請求項1から13のいずれか1項に記載」と記載されているのを「請求項1から
3、および6から
13のいずれか1項に記載」に、
請求項15に「請求項1から14のいずれか1項に記載と記載されているのを「請求項1から
3、および6から
14のいずれか1項に記載」に、
請求項16に「請求項1から15のいずれか1項に記載」と記載されているのを「請求項1から
3、および6から
15のいずれか1項に記載」に、
請求項17に「請求項1から16のいずれか1項に記載」と記載されているのをと記載されているのを「請求項1から
3、および6から
16のいずれか1項に記載」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項22に「検体を測定して前記検体に含まれる複数の細胞の各々に関するデータを取得する細胞測定装置と、前記細胞測定装置とネットワークを介して接続された細胞分析装置と、を備え、前記細胞分析装置は」と記載されているのを「検体を測定して前記検体に含まれる複数の細胞の各々に関するデータを取得する細胞測定装置と、前記細胞測定装置とネットワークを介して接続された細胞分析装置と、を備え、
前記データは、細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データであり、
前記細胞分析装置は」に訂正する。
(1)訂正事項1及び4について
訂正事項1及び4は、「検体を測定して前記検体に含まれる複数の細胞の各々に関するデータ」を「前記データは、細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データ」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、また、上記のように細胞に関するデータを限定することは、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
そして、「検体を測定して前記検体に含まれる複数の細胞の各々に関するデータ」が「細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データ」であることは、願書に添付した特許請求の範囲の請求項4に記載されていたことから、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、そして、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、訂正事項2によって請求項が削除されたことにともない、引用する請求項から削除された請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものといえ、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、そして、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。
訂正前の請求項2~21は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、請求項1~21は一群の請求項であり、上記訂正事項1~3は、当該一群の請求項に請求されているものである。また、訂正事項4は、当該一群の請求項ではない請求項22についてのみ請求されているものである。
よって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に適合するものである。
上記のとおり、訂正事項1~4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-21〕、22について訂正することを認める。
(1)本件発明について
本件訂正請求により訂正された請求項1~3及び6~22に係る発明(以下順に「本件発明○」といい、まとめて「本件発明」ともいう。なお、請求項4及び5については上記第2の1(2)のとおり削除されている。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~3及び6~22に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
検体を測定して前記検体に含まれる複数の細胞の各々に関するデータを取得する細胞測定装置と、前記細胞測定装置とネットワークを介して接続された細胞分析装置とを含むシステムにおいて、
前記データは、細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データであり、
前記細胞測定装置が取得した前記データを前記ネットワークを介して前記細胞分析装置に送信し、
前記細胞分析装置において、複数の細胞の各々に関するデータの入力に対して前記細胞の細胞種別に関する情報を出力する人工知能アルゴリズムを用いて前記データを解析することにより、前記検体に含まれる複数の前記細胞の各々について細胞種別に関する情報を生成し、
前記情報を解析結果として提供する、
ことを含む細胞分析方法。
【請求項2】
前記細胞測定装置は、フローサイトメータによって細胞を測定する、
請求項1に記載の細胞分析方法。
【請求項3】
前記データは、細胞に光を照射することにより検出される光学的信号に関するデータである、
請求項1または2に記載の細胞分析方法。」
「【請求項6】
前記細胞分析装置は、複数の前記細胞測定装置とネットワークを介して接続され、
前記ネットワーク経由で、複数の前記細胞測定装置から前記データを受信し、
前記ネットワーク経由で、複数の前記細胞測定装置のうちの一の細胞測定装置に前記情報を送信する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項7】
前記細胞分析装置と同一の施設に配置された前記細胞測定装置から、前記データを取得する、
請求項1から3、および6のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項8】
前記細胞分析装置と同一のネットワークドメインに配置された前記細胞測定装置から、前記データを取得する、
請求項1から3、6、および7のいずれか1項に記載の細胞分析方法。 【請求項9】
前記細胞分析装置と異なるネットワークドメインに配置された前記細胞測定装置から、前記データを取得する、
請求項1から3、および6から8のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項10】
前記細胞分析装置と異なるネットワークドメインに配置された前記細胞測定装置から、前記細胞測定装置の装置IDと対応付けて前記データを取得する、
請求項1から3、および6から8のいずれか1項に記載の細胞分析方法。【請求項11】
前記細胞分析装置は、ホストプロセッサと並列処理プロセッサとを備え、前記データを分析するための複数の演算処理を、前記並列処理プロセッサに並列に実行させる、
請求項1から3、および6から10のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項12】
前記並列処理プロセッサは、
前記データの分析に関する演算処理を実行可能な演算ユニットを複数有し、
並列処理として、前記演算ユニットの各々による前記演算処理を並列に実行する、
請求項11に記載の細胞分析方法。
【請求項13】
前記人工知能アルゴリズムは、深層学習アルゴリズムである、
請求項1から3、および6から12のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項14】
前記情報は、前記細胞種別を識別するための識別子を含む、
請求項1から3、および6から13のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項15】
前記情報は、前記細胞が複数の前記細胞種別の各々に属する確率を含む、 請求項1から3、および6から14のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項16】
前記細胞測定装置から取得されたデータには識別情報が付されており、
前記識別情報は、前記データに対応する検体の識別情報、前記データに対応する患者の識別情報、及び、前記データに対応する細胞測定装置の識別情報の少なくともいずれかを含む、
請求項1から3、および6から15のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項17】
前記人工知能アルゴリズムは、深層学習アルゴリズムであり、
前記細胞分析装置は、ホストプロセッサと並列処理プロセッサとを備え、
前記ホストプロセッサは、前記深層学習アルゴリズムにおける畳み込み層における複数の演算処理を前記並列処理プロセッサに並列に実行させる、
請求項1から3、および6から16のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
【請求項18】
前記並列処理プロセッサは、
前記データの分析に関する演算処理を実行可能な演算ユニットを少なくとも10個有し、
並列処理として、前記演算ユニットの各々による前記演算処理を並列に実行する、
請求項17に記載の細胞分析方法。
【請求項19】
前記並列処理プロセッサは、
前記データの分析に関する演算処理を実行可能な演算ユニットを少なくとも100個有し、
並列処理として、前記演算ユニットの各々による前記演算処理を並列に実行する、
請求項18に記載の細胞分析方法。
【請求項20】
前記並列処理プロセッサは、
前記データの分析に関する演算処理を実行可能な演算ユニットを少なくとも1000個有し、
並列処理として、前記演算ユニットの各々による前記演算処理を並列に実行する、
請求項19に記載の細胞分析方法。
【請求項21】
前記並列処理プロセッサは、少なくとも1ギガバイトの容量を有するメモリから読み出された前記データを入力とし、並列処理を実行する、
請求項20に記載の細胞分析方法。
【請求項22】
検体を測定して前記検体に含まれる複数の細胞の各々に関するデータを取得する細胞測定装置と、
前記細胞測定装置とネットワークを介して接続された細胞分析装置と、を備え、
前記データは、細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データであり、
前記細胞分析装置は、複数の細胞の各々に関するデータの入力に対して前記細胞の各々の細胞種別に関する情報を出力する人工知能アルゴリズムを用いて、前記細胞測定装置から前記ネットワークを介して送信された前記データを解析することにより、複数の前記細胞の各々について細胞種別に関する情報を生成し、前記情報を解析結果として提供する、システム。」
(2)本件明細書等
明細書及び図面には訂正がなかったことから、本件特許明細書を「本件明細書」(図面を含めて「本件明細書等」ともいう。)といい、本件発明を理解するうえで、本件明細書等には以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与したものである。
(本ア)「【0015】
図1を用いて、本実施形態の概要の例を説明する。図1(a)は従来法の白血球分類を模式的に表す図であり、図1(b)は本法の白血球分類を模式的に示す図である。図1(a)、図1(b)において、FSCは前方散乱光の信号強度を示すアナログ信号を示し、SSCは側方散乱光のアナログ信号を示し、SFLは側方蛍光の信号強度を示すアナログ信号を示す。
図1(a)に図示されるように、従来法では、検体に含まれる個々の細胞をフローサイトメータで測定し、前方散乱光、側方散乱光、側方蛍光のそれぞれのアナログ信号のパルスのピーク高さを前方散乱光強度、側方散乱光強度、側方蛍光強度として取得する
。次に、細胞を前方散乱光強度、側方散乱光強度、側方蛍光強度に基づき、特定の種別に分類する。
細胞を分類した結果は図1(a)に示すようなスキャッタグラムとして表示される
。図1(a)のスキャッタグラムにおいて、横軸は側方散乱光、縦軸は側方蛍光の強度を示す。
【0016】
従来の白血球分類は、図1(a)に示されるように、アナログ波形のピーク高さの情報のみに基づいて血球の種別を判定していた。これに対して、本実施形態の方法では、検体中の細胞に関するデータとして、
図1(b)に示されるように、1つの細胞からフローサイトメータによって取得されるアナログ信号の波形全体を解析対象のデータとして分析することで細胞を分類する。図1(b)にはフローサイトメータによって得られるアナログ信号を描画した波形を示している
が、後述するように、
本実施形態において検体中の細胞に関するデータは、このアナログ信号をA/D変換することによって得られる複数時点の信号強度を示す値を要素とするデジタルデータ(後述する波形データ)を意図している
。このデジタルデータ群は行列データであり、本実施形態では、例えば、一行複数列の行列データ(すなわち、一次元の配列データ)である。」
そして、図1(a)及び図1(b)として以下の図面が記載されている。
【図1】
「
82
107
0001432072000001.jpg
」
(本イ)「【0039】
<波形データ>
図2は、本分析方法において用いられる波形データ
を説明するための模式図である。図2(a)に示すように、細胞Cを含む検体をフローセルFCに流し、フローセルFCを流れる細胞Cに光を照射すると、光の進行方向に対して前方に前方散乱光FSCが生じる。同様に、光の進行方向に対して側方に側方散乱光SSCと側方蛍光SFLが生じる。前方散乱光は、第1受光部D1によって受光され、受光量に応じた信号が出力される。側方散乱光は、第2受光部D2によって受光され、受光量に応じた信号が出力される。側方蛍光は、第3受光部D3によって受光され、受光量に応じた信号が出力される。これにより、受光部D1~D3から、
時間経過に伴う信号の変化を表すアナログ信号が出力される
。前方散乱光に対応するアナログ信号を「前方散乱光信号」、側方散乱光に対応するアナログ信号を「側方散乱光信号」、側方蛍光に対応するアナログ信号を「蛍光信号」という。各アナログ信号の1つのパルスが一つの細胞に対応する。
【0040】
アナログ信号は、A/D変換部に入力され、デジタル信号に変換される。図2(b)はA/D変換部によるデジタル信号への変換を模式的に示す図である。ここでは説明を簡略化するためアナログ信号をA/D変換部に直接入力するような図としている。アナログ信号のレベルをそのままデジタル信号に変換してもよいが、必要に応じて、ノイズ除去、ベースライン補正、正規化等の処理を行ってもよい。図2(b)に示すように、A/D変換部は、
受光部D1~D3から入力されるアナログ信号のうち、前方散乱光信号のレベルが所定の閾値として設定されたレベルに至った時点を始点として、前方散乱光信号、側方散乱光信号、蛍光信号のサンプリングを行う
。A/D変換部は、
所定のサンプリングレート
(例えば、10ナノ秒間隔で1024ポイントのサンプリング、80ナノ秒間隔で128ポイントのサンプリング、又は160ナノ秒間隔で64ポイントのサンプリング等)
で、それぞれのアナログ信号をサンプリングする。
【0041】
図2(c)は、
サンプリングによって得られる波形データ
を模式的に示す図である。
サンプリングによって、一つの細胞に対応する波形データとして、複数の時点におけるアナログ信号レベルをデジタルに示す値を要素とする行列データが得られる。このようにしてA/D変換部は、一つの細胞に対応する前方散乱光のデジタル信号、側方散乱光のデジタル信号、側方蛍光のデジタル信号を生成する
。A/D変換は、デジタル信号化された細胞数が所定数に達するまで、または検体をフローセルに流し始めてから所定時間が経過するまで繰り返される。これにより、図2(c)に示すように、
一つの検体に含まれるN個の細胞の波形データ
を合体したデジタル信号が得られる。各細胞に対するサンプリングデータの集合(図1Aの例ではt=0nsからt=10240nsまで10ナノ秒毎に1024個のデジタル値の集合)を波形データと呼び、一つの検体から得られた波形データの集合をデジタル信号と呼ぶ。
【0042】
A/D変換部によって生成された各々の波形データには、各々の細胞を識別するためのインデックスが付与されてもよい。インデックスは、例えば、生成された波形データの順に1~Nの整数が付与され、同じ細胞から得られた前方散乱光の波形データ、側方散乱光の波形データ、側方蛍光の波形データには、それぞれ、同一のインデックスが付与される。
【0043】
一つの波形データは一つの細胞に対応するので、インデックスは測定された細胞に対応する。同じ細胞に対応する波形データに同一のインデックスが付与されることで、後述する深層学習アルゴリズムは、個々の細胞に対応する前方散乱光の波形データと、側方散乱光の波形データと、蛍光の波形データを1セットとして解析し、細胞の種別を分類できる。」
そして、図2として以下の図面が記載されている。
【図2】
「
137
105
0001432072000002.jpg
」
(本ウ)「【0046】
アナログ信号70a、70b、70cは、フローサイトメータによって好中球が測定されたときの前方散乱光信号、側方散乱光信号、側方蛍光信号をそれぞれ示す。
これらのアナログ信号が、上述したようにA/D変換されると、前方散乱光信号の波形データ72a、側方散乱光信号の波形データ72b、側方蛍光信号の波形データ72cが得られる
。波形データ72a、72b、72cそれぞれの内部で隣り合うセルは、サンプリングレートに対応する間隔、例えば10ナノ秒間隔での信号レベルを格納している。波形データ72a、72b、72cは、データの元となった細胞の種別を表すラベル値77と組み合わされて、
各細胞に対応する3つの波形データ、言い換えれば3つの信号強度(前方散乱光の信号強度、側方散乱光の信号強度、及び側方蛍光の信号強度)のデータがセットとなるように訓練データ75として深層学習アルゴリズム50に入力される
。図3の例では訓練データの元となった細胞が好中球であるため、波形データ72a、72b、72cに好中球であることを示すラベル値77として「1」が付与され、訓練データ75が生成される。
図4にラベル値77の例を示す。訓練データ75は、細胞種別毎に生成されるため、ラベル値は、細胞種別に応じて異なるラベル値77が付与される
。」
そして、図4として以下の図面が記載されている。
【図4】
「
50
93
0001432072000003.jpg
」
(本エ)「【0048】
<波形データの分析方法>
図5に分析対象である細胞の波形データを分析する方法の例を示す
。波形データの分析方法では、分析対象の細胞からフローサイトメータによって取得した前方散乱光のアナログ信号80a、側方散乱光のアナログ信号80b、及び側方蛍光のアナログ信号80cから、上述の方法によって得られる波形データからなる分析データ85が生成される。
【0049】
分析データ85と訓練データ75は、少なくとも取得条件を同じにすることが好ましい。取得条件とは、検体に含まれる細胞をフローサイトメータによって測定するための条件、例えば測定試料の調製条件、測定試料をフローセルに流すときの流速、フローセルに照射される光の強度、散乱光及び蛍光を受光する受光部の増幅率などを含む。取得条件は、さらに、アナログ信号をA/D変換するときのサンプリングレートも含む。
【0050】
分析対象の細胞がフローセルを流れると、
前方散乱光のアナログ信号80a、側方散乱光のアナログ信号80b、及び側方蛍光のアナログ信号80cが得られる。これらのアナログ信号80a、80b、80cが上述したようにA/D変換されると、
細胞毎に、信号強度を取得した時点が同期され、前方散乱光信号の波形データ82a、側方散乱光信号の波形データ82b、側方蛍光信号の波形データ82cとなる。波形データ82a、82b、82cは
、各細胞の3つの信号強度(前方散乱光の信号強度、側方散乱光の信号強度、及び側方蛍光の信号強度)のデータがセットとなるように組み合わされて、
分析データ85として深層学習アルゴリズム60に入力される
。
【0051】
分析データ85を訓練済みの深層学習アルゴリズム60を構成するニューラルネットワーク60の入力層60aに入力すると、出力層60bから、分析データ85に対応する細胞の種別に関する分類情報として分析結果83が出力される
。図5の符号60cは、中間層を示す。細胞種別に関する分類情報とは、例えば、細胞が複数の細胞種別の各々に属する確率である。さらに、この確率の中で、値が最も高い分類に、分析データ85を取得した分析対象の細胞が属すると判断し、その細胞種別を表す識別子であるラベル値82等が分析結果83に含まれてもよい。分析結果83は、ラベル値そのものの他、ラベル値を細胞種別を示す情報(例えば文字列)に置き換えたデータであってもよい。図5では分析データ85に基づいて、深層学習アルゴリズム60が分析データ85を取得した分析対象の細胞が属する確率が最も高かったラベル値「1」を出力し、さらに、このラベル値に対応する「好中球」という文字データが分析結果83として出力される例を示している。ラベル値の出力は、深層学習アルゴリズム60が行ってもよいが、他のコンピュータプログラムが、深層学習アルゴリズム60が算出した確率に基づいて、最も好ましいラベル値を出力してもよい。」
そして、図5として以下の図面が記載されている。
【図5】
「
123
96
0001432072000004.jpg
」
(本オ)「【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、細胞測定装置の処理能力を低下させることなく、細胞分類の精度を高めることが可能となる。」
令和7年6月17日付け取消理由通知書は、概略、次の取消理由を通知したものである。
訂正前の請求項1~3及び5~22に係る発明は、
申立人高橋が提示した甲第1号証に記載された発明
であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるか、あるいは、
同甲第1号証に記載された発明及び周知技術
に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1~3及び5~22に係る特許は、特許法第29条第1項に違反してされたものであるか、あるいは同条第2項の規定に違反してされたものである。
上記周知技術を示す文献としては、申立人高橋が提示した以下の甲第4号証~甲第11号証を採用して提示した。
< 甲号証一覧 >
申立人高橋が提示した甲第○号証は、以下「高甲○」といい、申立人山内 が提示した甲第○号証は、以下「山甲○」という。
高甲1:米国特許出願公開第2017/0052106号明細書
高甲4:米国特許出願公開第2018/0247195号明細書
高甲5:特開2019-195304号公報
高甲6:特開2002-139502号公報
高甲7:国際公開第2004/014228号
高甲8:国際公開第2020/021839号
高甲9:欧州特許出願公開第3620986号明細書
高甲10:国際公開第2020/004101号
高甲11:国際公開第2018/203568号
高甲12:特表2016-509845号公報
高甲13:「NVIDIA,「TITAN RTX」を発表。TU102コアのフルスペックで2499ドル」(更新日:2018年12月4日) <URL:https://www.4gamer.net/games/204/G020420/20181203130/>ウェブ出力物
以下では、上記第4の取消理由通知書で提示した甲号証以外にも、申立人高橋、申立人山内が提示した甲号証についても併せて記載することとする。また、外国語で記載されている甲号証の摘記については、原文の記載箇所と翻訳文のみを記載することとする。なお、下線は当審において付与したものである。
(1)記載事項
高甲1には、以下の事項が記載されている。なお、原文の記載箇所は、[4桁の番号](段落番号)で示されている。
(高甲1ア)「[0162] ・・・請求の範囲。
27.
イメージングサイトメトリーを用いた細胞の
ラベル無し
分類のための
コンピュータ実装
方法であって、当該方法は:
1つ又は複数のコンピューティングデバイスによって、細胞の1つ又は複数のラベルなし画像を受信し、
前記1つ又は複数のコンピューティングデバイスによって、各細胞の前記1つ又は複数の
ラベルなし
画像に機械学習分類器を適用することによって、各撮像された細胞の細胞分類を識別する、ことを含む。
28.
前記機械学習分類器は、深層学習を含む
、請求項27に記載の方法。」
(高甲1イ)「[0026] 検出可能なラベル:別の分子に直接的又は間接的に結合して、その分子又はその分子が結合している細胞の検出を容易にする化合物又は組成物。ラベルの具体的かつ非限定的な例としては、蛍光タグが挙げられる。」
「[0033] 本明細書で開示されるように、本方法は、明視野画像及び/又は暗視野画像のようなイメージングフローサイトメータから取得された画像を使用して、入力細胞を染色する必要なく、細胞を、細胞周期の様々な位相にある細胞や細胞種別のような特定の細胞分類に割り当てる。」
「[0039] いくつかの実施形態では、画像は、例えば、ユーザコンピューティングデバイス等のユーザインターフェースと統合または接続されるイメージングフローサイトメータを使用して取得される。例えば、ユーザは、
細胞の試料を分析する
ために、例えば、細胞周期の特定の位相におけるように試料中の細胞を分類するために、イメージングフローサイトメーターを設定することができる。いくつかの実施形態において、細胞は、細胞の分類標識に基づいて分類される。」
「[0041] 一例として、ImageStream(登録商標)システムは、市販のイメージングフローサイトメータであり、移動する細胞を電子的に追跡する正確な方法と高解像度のマルチスペクトルイメージングシステムとを組み合わせて、様々なイメージングモードで各細胞の複数の画像を取得する。現在市販されている実施形態では、各細胞の6つの画像を同時に取得し、従来のフローサイトメトリーに匹敵する蛍光感度と、40~60倍の顕微鏡の画質とを備えている。各細胞の6つの
画像は、側方散乱(暗視野)画像、透過光(明視野)画像、並びに
従来のフローサイトメータのFL1、FL2、FL3、およびFL4スペクトルバンドにほぼ対応する4つの
蛍光画像で構成される
。」
「[0049] 各ネットワーク105は、ネットワークデバイス(デバイス110及び130を含む)がデータ交換することができる有線または無線通信手段を含む。例えば、各ネットワーク105は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、イントラネット、インターネット、携帯電話ネットワーク、又はそれらの任意の組合せを含むことができる。」
「[0050] 適当な場合、
各ネットワークコンピューティングデバイス110及び130は、ネットワーク105を介してデータ
、例えば、細胞画像データ、細胞分類データ、細胞選別データ
を送信及び受信する
ことが可能な通信モジュールを含む。」
「[0068] ブロック220では、抽出された特徴に基づいて細胞の分類が決定される。ブロック220では、
機械学習分類器を使用して、抽出された特徴に基づいて細胞の分類ラベルを予測する
。」
「[0072] ブロック225において、
細胞分類ラベルが細胞に割り当てられる
。」
「[0090] 本明細書に開示されているように、ほとんど注目されていなかつた2つのチャネル(いずれもイメージングフローサイトメータによって容易に取得できる明視野および暗視野)の定量的画像解析を行うことで、蛍光バイオマーカを何ら必要とせずに細胞周期関連の解析が可能になる(図6A)。画像解析ソフトウェア(・・・)を用いて
明視野および暗視野画像から細胞形態に関する数値的測定値を抽出
し、その後、教師あり機械学習アルゴリズムを適用して、目的とする細胞表現型(本例では細胞周期位相)を識別した。」
(高甲1ウ)図1、図6Aとして、以下の図面が記載されている。
FIG.1(図1)
「
118
60
0001432072000005.jpg
」
FIG.6A(図6A)
「
45
153
0001432072000006.jpg
」
(2)記載事項の整理
ア (高甲1ア)の「細胞のラベル無し」における「ラベル」とは、(高甲1イ)の[0026]の「蛍光タグ」のことであるところ、同[0068]の「機械学習分類器を使用して、抽出された特徴に基づいて細胞の分類ラベルを予測する」ことにおける「ラベル」と混同をきたすことから、事案に鑑み、ここでは「ラベル無し」(蛍光タグがない)について略して、以下の高甲1発明を認定することとする。
イ (高甲1ア)の「細胞の1つ又は複数の」「画像を受信」する「コンピューティングデバイス」は、上記図1における「Image acquisition application 135」(画像取得アプリケーション135)を含む「Image Flow Cytometer 130」(イメージングサイトメトリー130)のことであり、同(高甲1ア)の「各細胞の前記1つ又は複数の」「画像に機械学習分類器を適用することによって、各撮像された細胞の細胞分類を識別する」「コンピューティングデバイス」は、上記図1における「Image processing application 112」(画像処理アプリケーション)を含む「User device 110」(ユーザデバイス110)のことであるから、前者を「画像取得アプリケーションを含むイメージングサイトメトリー」、後者を「画像処理アプリケーションを含むデバイス」ということとする。
ウ そうすると、(高甲1イ)の [0050]の「コンピューティングデバイス110及び130は、ネットワーク105を介してデータ」「を送信及び受信する」ことは、「画像取得アプリケーションを含むイメージングサイトメトリー」及び「画像処理アプリケーションを含むデバイス」がネットワークを介してデータを送信及び受信するということである。
(3)高甲1発明
上記(1)の摘記における下線部、及び上記(2)の記載事項の整理を踏まえると、高甲1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「イメージングサイトメトリーを用いた細胞の分類のための、細胞の試料を分析する方法であって、
1つ又は複数の画像取得アプリケーションを含むイメージングサイトメトリーによって、細胞の1つ又は複数の画像を受信し、
1つ又は複数の画像処理アプリケーションを含むデバイスによって、各細胞の前記1つ又は複数の画像に深層学習を含む機械学習分類器を適用することによって、各撮像された細胞の細胞分類を識別する、ことを含む方法であり、
画像取得アプリケーションを含むイメージングサイトメトリー及び画像処理アプリケーションを含むデバイスは、ネットワークを介してデータを送信及び受信するものであり、
画像は、側方散乱(暗視野)画像、透過光(明視野)画像、並びに蛍光画像で構成され、明視野及び暗視野画像から細胞形態に関する数値的測定値を抽出し、
上記機械学習分類器を使用して、抽出された特徴に基づいて細胞の分類ラベルを予測し、
細胞分類ラベルが細胞に割り当てられる、
方法。」(以下「高甲1発明」という。)
高甲2には、以下の事項が記載されている。なお、原文の記載箇所は、[4桁の番号](段落番号)、[claim]、「Summary」等で示されており、申立人高橋は、高甲2の訳文が記載されているものとして、高甲3(特表2022-510791号公報)を提示している。
(高甲2ア)「[claim1] 細胞からの光をセンシングした結果である第1のデータと、前記第1のデータを複数の蛍光に分離した結果である第2のデータとを対応付けて保持する情報保持部と、
前記第2のデータに基づいて、
前記細胞を複数のクラスタにクラスタリングするクラスタリング部と、
前記クラスタリング部によるクラスタリング結果を出力する出力部と
、
を備え、
前記出力部は、前記複数のクラスタのうちからユーザが選択したクラスタに含まれる前記細胞の前記第1のデータ又は前記第2のデータの少なくともいずれか1つ以上をさらに出力する、情報処理装置。」
(高甲2イ)Summary
「[0008] しかし、多次元データに対して次元圧縮を行った場合、次元圧縮に伴って測定データに含まれる情報の一部が欠落してしまう。そのため、例えば、多次元データのクラスタリング結果が適切ではない場合、ユーザは、フローサイトメータの測定データに遡って、クラスタリング結果の妥当性を検証することが困難となっていた。
[0009] そこで、本開示では、測定データを次元圧縮したデータを用いてクラスタリングを行うことが可能であり、かつクラスタリング結果に対して測定データに遡った検証も可能な、新規かつ改良された情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提案する。
[0010] 本開示によれば、細胞からの光をセンシングした結果である第1のデータと、前記第1のデータを複数の蛍光に分離した結果である第2のデータとを対応付けて保持する情報保持部と、前記第2のデータに基づいて、前記細胞を複数のクラスタにクラスタリングするクラスタリング部と、前記クラスタリング部によるクラスタリング結果を出力する出力部と、を備え、前記出力部は、前記複数のクラスタのうちからユーザが選択したクラスタに含まれる前記細胞の前記第1のデータ又は前記第2のデータの少なくともいずれか1つ以上をさらに出力する、情報処理装置が提供される。」
(高甲2ウ)「[0049] クラスタリング部207は、蛍光分離部203にて導出された
細胞の各蛍光物質の発現量に基づいて、細胞をクラスタリングする
。すなわち、クラスタリング部207は、情報保持部205が保持する第2のデータに基づいて、細胞をクラスタリングする。
細胞の各蛍光物質の発現量を示す第2のデータ
は、多次元データであるため、情報処理装置20は、
機械学習に基づくクラスタリング技術を用いることで、マニュアルよりも迅速に細胞を複数の集団(クラスタ)に分割することができる
。
[0050] クラスタリング部207で用いられるクラスタリング手法は、特に限定されず、公知のクラスタリング手法であってもよい。例えば、クラスタリング部207は、ward法、群平均法、単リンク法、若しくはk-means法などの一般的なクラスタリング手法を用いてクラスタリングしてもよく、又は自己組織化マップ(self-organization map)法を用いてクラスタリングしてもよい。」
山甲1には、以下の事項が記載されている。
(山甲1ア)2欄54行~3欄7行
「発明の概要
本発明は、3次元画像セグメンテーションを実行するシステム及び方法を提供し、それは
共焦点イメージング走査
内での表面追跡に基づいてオートフォーカスを制御するためのシステム及び方法とともにリアルタイムで実行され得る。それにより、本発明は、
高速3Dサイトメトリーを実行して3D構造体についての情報を収集するためのシステム及び方法を提供する
。本発明は、
イメージングオブジェクトが細胞構造体
である組織工学での使用に特に良好に適する。
本システムの用途は、分子生物学から全臓器レベルの研究を範囲とする生物学的階層の全領域に及ぶ。本発明の一態様は、フォーカス機構を有する顕微鏡のオートフォーカス処理を制御する方法であり、その方法は、(a)顕微鏡によってサンプルの体積走査のための初期焦点範囲を確立するステップと、(b)登録された光学特性に応じてサンプルの表面を検出するステップと、(C)サンプルの表面の位置に応じて光学平面のセットから画像をマッピングするステップと、を備える。」
(山甲1イ)4欄58~61行
「本発明の他の態様は、
画像分類を、ニューラルネットワーク又は計算による画像処理技術を利用する
などして実行可能な3Dイメージングのシステムを提供するものである。」
(山甲1ウ)6欄1~12行
「図4は、本発明の一態様に係る、
人工ニューラルネットによって画像データから分類された
G
0
/G
1
相、S/G
2
相及びM相における面積分布のヒストグラムである。図5は、本発明の一態様に係る、
人工ニューラルネットによって画像データから分類された
G
0
/G
1
相、S/G
2
相及びM相における平均輝度分布のヒストグラムである。 図6は、本発明の一態様に係る、
人工ニューラルネットによって画像データから分類された
G
0
/G
1
相、S/G
2
相及びM相についての面積に対する積分輝度のヒストグラムである。」
ここで、申立人高橋、申立人山内が、周知技術又は公知技術(副引用例)を示すものとして提示された甲号証に記載されている内容を、まとめて記載することとする。
(1)高甲4(米国特許出願公開第2018/0247195号明細書)、高甲5(特開2019-195304号公報)及び高甲9(欧州特許出願公開第3620986号明細書)について
高甲4の[0240]、高甲5の【0057】、及び高甲9の[0167]には、深層学習アルゴリズム等の機械学習の分野において、CPU(Central Processing Unit)とGPU(Graphics Processing Unit)とを組み合わせて用いて処理を行うこと、そして、GPUは、CPUと連携して並列処理プロセッサとして機能し、多数の演算ユニットのもと演算処理を並列に実行することができること記載されている。
(2)高甲6(特開2002-139502号公報)、高甲7(国際公開第2004/014228号)及び高甲8(国際公開第2020/021839号)について
高甲6の請求項3~5、高甲7の請求項3、7及び8、並びに高甲8の請求項1及び9には、複数のユーザー側の装置とホスト側の装置との間でデータの送受信をする際に、ユーザー側の装置に識別情報を付すことが記載されている。
(3)高甲10(国際公開第2020/004101号)、高甲11(国際公開第2018/203568号)及び高甲12(特表2016-509845号公報)について
高甲10の[0017]、高甲11の[0038]~ [0042]、高甲12の【0102】には、機械学習によって細胞の分類を行う際に、その細胞がその分類に属する確率を示すことが記載されている。
(4)高甲13(「NVIDIA,「TITAN RTX」を発表。TU102コアのフルスペックで2499ドル」(更新日:2018年12月4日)<URL:https://www.4gamer.net/games/204/G020420/20181203130/>ウェブ出力物について
高甲13の表(TITAN RTXとRTX 2080 Tiの主なスペック)には、GPUとして、少なくとも1ギガバイトの容量があるメモリを有するものが記載されている。
(5)山甲2(金山直樹、生物工学基礎講座バイオよもやま話「フローサイトメトリー~「前にならえ」並べて順に数えます~」、生物工学第90巻、2012年、第12号、pp.785-789)について
山甲2には、フローサイトメトリーの光学検出、データ処理について、以下の事項が記載されている。
「光学検出系
フローサイトメトリーのほとんどで,光源としてレーザー(light amplification by stimulated emission of radiation)を使用する.レーザー光が集光レンズを通してフローセル内のサンプルフローに照射されると,サンプル中の細胞にレーザー光があたった場合に散乱光や蛍光が生じる.散乱光には,レーザー入射とほぼ同じ方向に散乱する前方散乱光(forward scatter,FSC),垂直方向に散乱する側方散乱光(side scatter,SSC)がある.
FSCは細胞の大きさ,SSCは細胞の形態,核,顆粒などの細胞内部構造に関する情報を反映する.発生した散乱光や蛍光は
,集光レンズとピンホールを用いて迷光を除去した平行光線に変換された後,各種光学フィルターの組み合わせにより
さまざまな波長成分に分光され
,最終的にはフォトダイオードや高感度の光電子倍増管(photo-multiplier tube,PMT)などの検出器によって検出される.この光学検出系の部分は,共焦点レーザー走査顕微鏡と非常に類似している.」(786頁左欄24行~右欄12行)
「データ処理系
アナログ/デジタル変換して数値化された電圧パルスは,コンピュータに取り込んで処理することが可能になる.
個々の細胞の測定パラメータを数値にしたがってプロットしていくと,細胞数頻度分布が形成される.Y軸に細胞数,X軸に測定パラメータを取ったグラフをヒストグラム
と呼ぶ.X軸とY軸にそれぞれパラメータを割り当てたものを二次元ヒストグラムまたは二次元プロットと呼び,表示されたドットの一つ一つが個々の細胞の測定値である.たとえば,
ヒト末梢血から単離した白血球を測定したデータをFSCとSSCでプロットすると,リンパ球,単球,顆粒球の集団に分離することができる
(図4A).多重パラメータを測定した場合,そのすべてを分かりやすく同時に表示させることはできない.そこで,あるパラメータで表示した二次元プロットの中から,関心のある細胞集団のみを別のパラメータのヒストグラムあるいは二次元プロットで表示させる.たとえば,FSC/SSCで分離したヒト末梢血中のリンパ球集団を,特定のマーカー発現を指標とし,それを特異的な蛍光標識抗体によって検出することによってTリンパ球(CD3陽性CD19陰性)とBリンパ球(CD19陽性CD3陰性)などに,さらに分離することも可能である(図4B,4C).このようなデータ処理を「ゲーティング」と呼ぶ.最終的に,ヒストグラム上で分離された細胞集団のうち,関心のある細胞集団の割合やその集団のパラメータ値の平均値などを表示できる.近年のフローサイ トメーターの高機能化は,電気パルス処理のための電子回路や,データ処理のためのコンピュータ,ソフトウェ アの高度化によるところが大きい.」[H1] [W2] (787頁左欄9行~右欄11行)
(6)山甲3(米国特許出願公開第2020/0105376号明細書)について
山甲3には、以下の事項が記載されている。なお、原文の記載箇所は、[4桁の番号](段落番号)で示されている。
「[0006] 本明細書に記載されているのは、
細胞集団の実質的に自動化された分析
を行う技術である。後述するように、教師あり学習技術は、粒子分類に使用されていた以前のソフトウェアベースのツールを改善するために活用され得る。教師あり学習手法の例としては、ディープラーニングベースの手法、サポートベクターマシンなどがある。本明細書に記載の技術の使用を通じて、このようなノフトウェアベースのツールのユースビリティが向上することができる。例えば、本明細書に記載のツールは、細胞の集団のゲーティングを実行する異なるユーザに関連する分散を実質的に減少させることができる。したがつて、以前のソフトウェアベースのツールとは対照的に、これらのユーザは、細胞の入力集団について同じ、または実質的に類似した解析を受けることができる。」
「[0028] 深層学習は機械学習のサブセットである。ニューラルネットワークと他の機械学習の違いの1つは、アーキテクチャの深さと複雑さである。この深さと複雑さは、適切にトレーニングされると、ニューラルネットワークが複雑な相互作用を「学習」する方法になる。評価されるように、ニューラルネットワークは多数の層を含むことができる。層の例としては、畳み込みフィルタのボリュームが適用される畳み込み層や、全結合層(例えば、高密度)層が含まれる場合がある。各レイヤーは、少なくとも部分的に、特定のパラメーターによって定義できる。パラメータの例としては、バイアスやウェイトなどがある。さらに、ニューラルネットワークは、少なくとも部分的に、特定のハイパーパラメータによって定義される場合がある。ハイパーパラメータの例としては、層の数、層あたりのニューロンの数、活性化関数、ドロップアウト率などが含まれる。」
ア 高甲1発明の「細胞の試料」は、検体といえることから、高甲1発明の「試料」における「細胞」に対する「細胞の1つ又は複数の画像」は、「画像」が画素(ピクセル)の値など画像を構成するためのデータを有するという限りにおいて、本件発明1の「検体に含まれる複数の細胞の各々に関するデータ」に相当する。
そうすると、高甲1発明の「細胞の試料を分析」して「細胞の1つ又は複数の画像を受信」する「画像取得アプリケーションを含むイメージングサイトメトリー」は、本件発明1の「検体を測定して前記検体に含まれる複数の細胞の各々に関するデータを取得する細胞測定装置」に相当する。
イ 上記アを踏まえると、高甲1発明の「イメージングサイトメトリーによって」「受信」する「細胞の1つ又は複数の画像」と、本件発明1の「細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データ」とは、「細胞をフローサイトメータによって得られるデータ」という限りにおいて共通する。
ウ 高甲1発明の「ネットワークを介してデータを送信及び受信する」「画像取得アプリケーションを含むイメージングサイトメトリー及び画像処理アプリケーションを含むデバイス」は、本件発明1の「前記細胞測定装置とネットワークを介して接続された細胞分析装置とを含むシステム」に相当し、高甲1発明の「画像取得アプリケーションを含むイメージングサイトメトリー」から「ネットワークを介してデータを」「画像処理アプリケーションを含むデバイス」に「送信」することは、本件発明1の「前記細胞測定装置が取得した前記データを前記ネットワークを介して前記細胞分析装置に送信」することに相当する。
エ 高甲1発明の「深層学習を含む機械学習分類器」及び「細胞の分類ラベル」は、本件発明1の「人工知能アルゴリズム」及び「細胞種別に関する情報」に相当するから、高甲1発明の「画像処理アプリケーションを含むデバイスによって、各細胞の前記1つ又は複数の画像に深層学習を含む機械学習分類器を適用することによって」「画像から細胞形態に関する数値的測定値を抽出し」「抽出された特徴に基づいて細胞の分類ラベルを予測」することは、上記アで述べたとおり、「細胞の」「画像」が「細胞」「に関するデータ」ともいえるという限りにおいて、本件発明1の「前記細胞分析装置において、複数の細胞の各々に関するデータの入力に対して前記細胞の細胞種別に関する情報を出力する人工知能アルゴリズムを用いて前記データを解析することにより、前記検体に含まれる複数の前記細胞の各々について細胞種別に関する情報を生成」することに相当する。
オ 高甲1発明の「各撮像された細胞の細胞分類を識別する」ために「細胞分類ラベルが細胞に割り当てられる」ことは、本件発明1の「前記情報を解析結果として提供する」ことに相当する。
カ 高甲1発明の「細胞の分類のための」「細胞の試料を分析する方法」は、本件発明1の「細胞分析方法」に相当する。
キ 上記ア~カを踏まえると、本件発明1と高甲1発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。
(一致点)
「検体を測定して前記検体に含まれる複数の細胞の各々に関するデータを取得する細胞測定装置と、前記細胞測定装置とネットワークを介して接続された細胞分析装置とを含むシステムにおいて、
前記データは、細胞をフローサイトメータによって得られるデータであり、
前記細胞測定装置が取得した前記データを前記ネットワークを介して前記細胞分析装置に送信し、
前記細胞分析装置において、複数の細胞の各々に関するデータの入力に対して前記細胞の細胞種別に関する情報を出力する人工知能アルゴリズムを用いて前記データを解析することにより、前記検体に含まれる複数の前記細胞の各々について細胞種別に関する情報を生成し、
前記情報を解析結果として提供する、
ことを含む細胞分析方法。」
(相違点)
「フローサイトメータによって得られる」「
複数の細胞の各々に関するデータ
を取得」し、「
複数の細胞の各々に関するデータ
の入力に対して前記細胞の細胞種別に関する情報を出力する人工知能アルゴリズムを用いて前記データを解析する」「複数の細胞の各々に関するデータ」が、
本件発明1では、細胞をフローサイトメータによって「測定して」得られる「信号の波形をデジタル変換した波形データ」であるのに対し、高甲1発明では、イメージングサイトメトリーによって受信された細胞の1つ又は複数の「画像」である点。
(2)相違点の判断
ア まず、「画像」とは一般に画素(ピクセル)の値などのデータといえるものの、フローサイトメータによって測定して得られる信号の「波形」をデジタル変換した「波形データ」とはいえず、そして、高甲1発明における「画像」をそのようなものと解することができることを示した記載も高甲1にはない。さらに、上記第3の2で摘記した本件明細書においても、本件発明1の「フローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データ」を「画像」データと解することができる記載もない(なお、上記第2の1(2)で記載したとおり本件訂正によって「細胞の画像データ」について特定している請求項5は削除されている)ことから、上記相違点は実質的な相違点である。
そして、高甲1発明は、上記第5の1(3)で記載したとおり、「各細胞の前記1つ又は複数の
画像に深層学習を含む機械学習分類器を適用することによって、各撮像された細胞の細胞分類を識別する
」発明であるから、高甲1発明において、各撮像された細胞の細胞分類を識別する際に、深層学習を含む機械学習分類器を適用する「画像」に代えて、フローサイトメータによって「測定して」得られる「信号の波形をデジタル変換した波形データ」とする動機は全くない。
イ(ア)この点、さらに詳細に検討するに、本件明細書の上記第3の2で摘記した(本ア)に記載されているとおり、従来においては、検体に含まれる個々の細胞をフローサイトメータで測定し、前方散乱光、側方散乱光、側方蛍光のそれぞれのアナログ信号のパルスのピーク高さを前方散乱光強度、側方散乱光強度、側方蛍光強度として取得し、細胞を前方散乱光強度、側方散乱光強度、側方蛍光強度の「強度」のみに基づいて細胞を特定の種別に分類していたところ、本件発明では、検体中の細胞に関するデータとして、1つの細胞から
フローサイトメータによって測定して取得されるアナログ「信号の波形」全体を解析対象のデータとして分析する
ことで細胞を分類するものである。そして、同(本ア)に「このアナログ信号をA/D変換することによって得られる
複数時点の信号強度
を示す値を要素とするデジタルデータ(後述する
波形データ)を意図している
」と記載され、本件明細書の(本イ)には、前方散乱光信号、側方散乱光信号、蛍光信号のそれぞれのアナログ信号をA/D変換部によって所定のサンプリングレートでサンプリングし、一つの細胞に対応する前方散乱光のデジタル信号、側方散乱光のデジタル信号、側方蛍光のデジタル信号を生成することで、一つの細胞に対応する「波形データ」が得られることが記載されている。
したがって、本件発明1において、「細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した
波形データ
」「の入力に対して前記細胞の細胞種別に関する情報を出力する人工知能アルゴリズムを用いて前記データを解析する」という「波形データ」とは、上記技術的な意義を有するものであり、このような「波形データ」を入力して人工知能アルゴリズムを用いて「波形データ」解析することにより、本件明細書の(本オ)に記載されている「細胞測定装置の処理能力を低下させることなく、細胞分類の精度を高めることが可能となる。」というものである。
(イ)一方、上記第4の取消理由通知で提示した高甲4~11を含め、上記第5で記載した申立人高橋又は申立人山内が提示した甲号証には、「細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データ」を入力して人工知能アルゴリズムを用いて前記「波形データ」解析することにより、細胞測定装置の処理能力を低下させることなく、細胞分類の精度を高めるという技術的事項を示したものはない。
そうすると、データの入力に対して前記細胞の細胞種別に関する情報を出力する人工知能アルゴリズムを用いて前記データを解析する際の「複数の細胞の各々に関するデータ」が、「細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データ」であるという上記相違点に係る事項は、申立人高橋又は申立人山内が提示したいずれの甲号証にも記載されていないのであるから、上記相違点は当業者が容易になし得たこととはいえない。
(3)小括
よって、本件発明1は、高甲1発明ではなく、そして、高甲1発明において、各撮像された細胞の細胞分類を識別する際に、深層学習を含む機械学習分類器を適用する「画像」に代えて、フローサイトメータによって「測定して」得られる「信号の波形をデジタル変換した波形データ」とする動機は全くなく、さらに、データの入力に対して前記細胞の細胞種別に関する情報を出力する人工知能アルゴリズムを用いて前記データを解析する際の「複数の細胞の各々に関するデータ」が「細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データ」であることを示す甲号証はないのであるから、本件発明1は、上記第4で記載した取消理由通知で提示した甲号証を含め、申立人高橋又は申立人山内が提示した甲号証を参照しても、高甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立人の主張について
ア 申立人山内は、令和7年8月7日に意見書を提出し、おおむね以下のことを主張している。
「イメージングフローサイトメトリーの技術分野において、機械学習の処理対象のデータとして、細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データを用いることは周知技術です(例えば、米国特許第10593039号、図2A~2Cおよび関連する記載)。」(4頁2~6行)
「したがいまして、同じイメージングサイトメトリーの技術分野にある高甲1発明に上記周知技術を採用して、「細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データ」を機械学習分類器の処理対象とすることは、当業者が容易になし得たことです。」(11頁6~9行)
なお、申立人山内は、意見書において上記「関連する記載」として[0029]~[0034]を摘記しているが、米国特許第10593039号明細書には段落番号は付与されていない。
イ 申立人山内の主張に対する当審の判断
(ア)まず、上記第2の1で記載したように、訂正前の請求項1及び22に追加された事項は訂正前の請求項4に記載されていた事項そのものであり、その訂正前の請求項4に記載されていた事項に対して新たな文献である上記米国特許第10593039号明細書(以下「追加文献」という。)を提示することは、特許異議の申立て期間が特許掲載公報発行の日から6月以内に制限されている趣旨を踏まえると時期に逸したものであり、新たな証拠として採用することはできない(特許庁「審判便覧」67-05.4 P「特許異議申立人による意見書の提出」の1.(2)参照)。
(イ)しかしながら、一応検討する。
a まず、追加文献は、その「ABSTRACT」に
「A method and apparatus for using deep learning in label-free cell classification and machine vision extraction of particles. A time stretch quantitative phase imaging (TS-QPI) system is described which provides high-throughput quantitative imaging, and utilizing photonic time stretching. In at least one embodiment, TS-QPI is integrated with deep learning to achieve record high accuracies in label-free cell classification.」
(訳文:無標識の細胞分類及び粒子抽出の画像技術に深層学習を使用するための方法及び装置を提供する。
タイムストレッチ定量位相撮像(TS-QPI)システム
は、高い処理量の撮像を提供し、そして光学的タイムストレッチを利用することが記載されている。少なくとも1つの実施形態において、
TS-QPI
は、
高精度な無標識の細胞分類を達成するために、深層学習と一体化される
。)
と記載されているとおり、タイムストレッチ定量位相撮像(TS-QPI)を深層学習と一体化することにより、高精度な無標識の細胞分類を達成することができることを示した文献である。
ここで、申立人山内が指摘した箇所「図2A~2Cおよび関連する記載」である4欄17~19行には、
「FIG. 2A through FIG. 2C illustrate the time stretch quantitative phase imaging (TS-QPI) and analytics system separated into three figures to show additional details.」
(訳文:図2(A)~図2(C)は、
タイムストレッチ定量位相撮像(TS-QPI)及び分析システム
を詳細に開示するために3つの図に分けて示したものである。)
と記載され、特に、タイムストレッチ定量位相撮像(TS-QPI)した細胞を深層学習するFIG.2Cを摘記すると以下のとおりである。
「
115
68
0001432072000007.jpg
」
そして、上図の「72」及び「74」について、追加文献の5欄13~27行には、
「In block 72 feature extraction is performed by decoding phase shift in each pulse at each wavelength and remapping it into a pixel to reveal the protein concentration distribution within cells. The optical loss induced by the cells, embedded in the pulse intensity variations, is obtained from the amplitude of the slowly varying envelope of the spectral interferograms. Thus, quantitative optical phase shift and intensity loss images are captured simultaneously. Both images are calibrated based on the regions where the cells are absent. Cell features describing morphology, granularity, biomass, and so forth are extracted from the images. In block 74 these biophysical features are utilized in a machine learning algorithm for high-accuracy label-free classification of the cells.」
(訳文:ブロック72において、特徴抽出は、各波長における各パルスの位相シフトを復号し、それをピクセルに再マッピングして、細胞内のタンパク質濃度分布を明らかにすることによって実行される。細胞によって誘起されたパルス強度変動による光損失は、スペクトル干渉図形において遅延して変化するエンベロープの振幅から得られる。このようにして、定量的な光学的な位相シフトと強度損失画像を同時に捕捉する。
両方の画像
は、細胞が存在しない領域に基づいて較正される。
形態、粒度、バイオマスなどを記述する細胞の特徴が画像から抽出
される。ブロック74において、これらの生物物理学的特徴は、高精度な無標識の細胞分類のための機械学習アルゴリズムに利用される。)と記載されている。
なお、申立人山内が指摘した箇所には「フローサイトメータ」についての記載はないが、追加文献の6欄12~15行に、
「The application of time stretch quantitative phase imaging (TS-QPI) to imaging flow cytometry, as recently demonstrated in our group, is described below.」
(訳文:我々が最近実験的に行ったこととして、タイムストレッチ定量位相撮像(TS-QPI)をイメージングフローサイトメトリーに適用したことについて、以下記載する。)との記載が一応ある。
b しかしながら、追加文献において、深層機械学習に入力するものは、タイムストレッチ定量位相撮像(TS-QPI)した「画像」から抽出したもの(形態、粒度等)であり、本件発明1における「細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データ」ではない。そうすると、追加文献は、上記(1)で記載した相違点である「複数の細胞の各々に関するデータの入力に対して前記細胞の細胞種別に関する情報を出力する人工知能アルゴリズムを用いて前記データを解析する」「複数の細胞の各々に関するデータ」が、「フローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データ」である事項について何ら開示するものではないから、追加文献を参照しても、上記相違点は当業者が容易になし得たこととはいえない。
加えていうなら、申立人山内の主張する「イメージングフローサイトメトリーの技術分野において、機械学習の処理対象のデータとして、細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データを用いること」は追加文献から周知といえるものではなく、さらに、高甲1発明に追加文献1の技術を採用しても、本件発明1になるものでもない。
したがって、申立人山内の意見書における主張は、上記(2)及び(3)で記載した判断に影響を及ぼすものではない。
本件発明2、3及び6~21は、上記第3の1で記載したとおり、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明であるから、本件発明1と同様に、高甲1発明ではなく、申立人高橋又は申立人山内が提示した甲号証を参照しても、高甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
本件発明22は、上記第3の1で記載したとおり、本件発明1の「方法」の発明について、そのカテゴリーを変えて「システム」の発明としたものであるところ、本件発明1と同様に、上記1(1)で記載した相違点に係る「フローサイトメータによって得られる」「
複数の細胞の各々に関するデータ
を取得」し、「
複数の細胞の各々に関するデータ
の入力に対して前記細胞の細胞種別に関する情報を出力する人工知能アルゴリズムを用いて前記データを解析する」「複数の細胞の各々に関するデータ」が、「細胞をフローサイトメータによって測定して得られる信号の波形をデジタル変換した波形データ」であるという発明特定事項を有するものである。
したがって、高甲1発明をシステムの発明として認定したものを高甲1発明’とすると、本件発明22も、高甲1発明’ではなく、申立人高橋又は申立人山内が提示した甲号証を参照しても、高甲1発明’に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
以上のことから、本件発明1~3及び6~22は、高甲1に記載された発明ではなく、上記第4で記載した取消理由通知で提示した甲号証を含め、申立人高橋又は申立人山内が提示した甲号証を参照しても、高甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないことから、取消理由通知書に記載した理由によって、本件発明1~3及び6~22に係る特許を取り消すことはできない。
(1)取消理由通知において採用しなかった申立人高橋の申立理由(以下「申立理由1」という。)は、以下のとおりである。
訂正前の請求項1~22に係る発明は、高甲2に記載された発明、及び高甲4~13に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1~22に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由通知において採用しなかった申立人山内の申立理由(以下「申立理由2」という。)は、以下のとおりである。
訂正前の請求項1~3、5、6、11~16、18及び22に係る発明は、山甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるか、あるいは、訂正前の請求項1~22に係る発明は、山甲1に記載された発明に基いて、又は、山甲1に記載された発明及び山甲2もしくは山甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1~22に係る特許は、特許法第29条第1項あるいは第2項の規定に違反してされたものである。
(1)申立理由1について
ア 本件発明1について
(ア)高甲2は、上記(高甲2ウ)に「機械学習に基づくクラスタリング技術を用いることで、マニュアルよりも迅速に
細胞を複数の集団(クラスタ)に分割する
ことができる」と記載されているように、細胞のクラスタリングに関する技術であり、クラスタリングとはデータ間の類似度に基づいてデータをグループ分けしていく手法のことであるから、本件発明1で特定されている「複数の細胞の各々に関するデータの入力に対して前記細胞の
細胞種別に関する情報を出力する
人工知能アルゴリズムを用いて前記データを解析することにより、前記検体に含まれる複数の前記
細胞の各々について細胞種別に関する情報を生成
し、
前記情報を解析結果として提供
する」こととは、目的とする技術の前提において両者は異なるものであるから、そもそも、高甲2は、本件発明1に対して主引用例としての適格性があるものとはいえない。
(イ)さらに、高甲2において、細胞を複数の集団(クラスタ)に分割する際に機械学習に入力するものは、上記(高甲2ウ)に記載されているとおり「細胞の各
蛍光物質の発現量
」であり、これは本件明細書の上記(本ア)【0015】に記載されているとおり、本件発明の従来技術である「蛍光の信号強度」(ピーク高さ)に相当するものである。そうすると、高甲2において、機械学習に入力するものは、本件発明1で特定されるように「人工知能アルゴリズム」に「入力」する「複数の細胞の各々に関するデータ」が「細胞をフローサイトメータによって測定して得られる
信号の波形をデジタル変換した波形データ
」ではないことから、この事項においても相違するものである。そして、当該事項は、上記第5の1(1)で記載した「相違点」に係るものであるから、その判断は、上記第5の1(2)及び(3)で述べたとおりである。
(ウ)よって、本件発明1は、高甲2に記載された発明、及び高甲4~13に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明2、3及び6~22について
本件発明2、3及び6~21は、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明であり、本件発明22は、本件発明1の「方法」の発明について、そのカテゴリーを変えて「システム」の発明としたものであるから、本件発明2、3及び6~22も、高甲2に記載された発明、及び高甲4~13に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
したがって、申立理由1によって、本件発明1~3及び6~22に係る特許を取り消すことはできない。
(2)申立理由2について
ア 本件発明1について
(ア)山甲1に記載されて発明は、上記(山甲1ア)に記載されているとおり、共焦点イメージング走査による高速3Dサイトメトリーを実行して3D構造体についての情報を収集するためのシステム及び方法を提供するものであって、イメージングオブジェクトとして細胞構造体が適用され、
3D構造体としての画像データを人工ニューラルネットによって細胞を
G
0
/G
1
相、S/G
2
相及びM相に
分類する
ことが記載されている。ここで、G
0
/G
1
相、S/G
2
相及びM相とは、一つの細胞が細胞分裂して二つの細胞になるまでの一連の過程の状態である。
そうすると、細胞の「G
0
/G
1
相、S/G
2
相及びM相」が、本件発明1の「細胞の各々について細胞種別に関する情報」(本件発明1では具体的には上記(本ウ)の図4に記載されているような各々種類が異なる細胞の「種別」である)に厳密には相当するとまではいえないところであるが、そもそも、山甲1に記載されて発明では、細胞をG
0
/G
1
相、S/G
2
相及びM相に分類する際に、人工ニューラルネットに入力するものは「3D構造体としての
画像
データ」であり、本件発明1で特定される「人工知能アルゴリズム」に「入力」する「複数の細胞の各々に関するデータ」が「細胞をフローサイトメータによって測定して得られる
信号の波形をデジタル変換した波形データ
」ではないことで根本的に相違するものである。
そして、当該事項は、上記第5の1(1)で記載した「相違点」に係るものであるから、その判断は、上記第5の1(2)及び(3)で述べたとおりである。
(イ)よって、本件発明1は、山甲1に記載された発明ではなく、そして、山甲1に記載された発明に基づいて、又は、山甲1に記載された発明及び山甲2もしくは山甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
イ 本件発明2、3及び6~22について
本件発明2、3及び6~21は、本件発明1を直接的又は間接的に引用する発明であり、本件発明22は、本件発明1の「方法」の発明について、そのカテゴリーを変えて「システム」の発明としたものであるから、本件発明2~22も、山甲1に記載された発明ではなく、そして、山甲1に記載された発明に基づいて、又は、山甲1に記載された発明及び山甲2もしくは山甲3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 小括
したがって、申立理由2によって、本件発明1~3及び6~22に係る特許を取り消すことはできない。
以上のとおり、本件発明1~3及び6~22に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって、取り消すことはできない。また、他に本件発明1~3及び6~22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項4及び5係る特許は、訂正により削除された。これにより、特許異議の申立てについて、請求項4及び5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
商標の登録可能性を無料で確認するか、費用の目安を料金表・シミュレーターで把握できます。