結論テキスト
特許第7625070号の請求項1~6に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025700778 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7625070号の請求項1~22に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和4年3月29日(優先権主張 令和3年4月16日)を国際出願日とする特願2023-511377号として出願され、令和7年1月23日に特許権の設定登録がされ、特許掲載公報が令和7年1月31日に発行された。
その後本件特許につき令和7年7月30日に、本件特許の請求項1~6に係る特許に対して、特許異議申立人である町永玲子(以下、「申立人」という。)は特許異議の申立てを行った。
よって、本件特許異議申立てに係る審理対象は、請求項1~6に係る特許についてであり、請求項7~22に係る特許は、審理対象外である。
特許第7625070号の請求項1~6の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、請求項1に係る発明~請求項6に係る発明を、項番に従い、「本件発明1」~「本件発明6」といい、それらを総称して、「本件発明」という。また、本件特許の設定登録時の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
「 【請求項1】
2,3-デヒドロアジピル-CoAを還元してアジピルCoAに変換する酵素活性を有するタンパク質をコードする外来性遺伝子を含む組換え微生物であって、
前記外来性遺伝子が、
(i)配列番号8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(ii)配列番号8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すアミノ酸配列に対して1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(iii)配列番号57、58、59、60、61、62、63、64または65に示すポリヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列からなるDNA、
(iv)配列番号57、58、59、60、61、62、63、64または65に示すポリヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(v)配列番号57、58、59、60、61、62、63、64または65に示すポリヌクレオチド配列に相補的なポリヌクレオチド配列からなるDNAと、0.1xSSC、0.1%SDS、60°Cの緊縮条件下でハイブリダイズするDNA、または
(vi)配列番号57、58、59、60、61、62、63、64または65に示すポリヌクレオチド配列の縮重異性体からなるDNA
であり、
前記組換え微生物が、アジピルCoAを経由してC6化合物に到る生産経路を有し、
前記C6化合物が、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオール、6-アミノヘキサン酸、6-アミノ-1-ヘキサノールおよび6-ヒドロキシヘキサン酸からなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記組換え微生物が、大腸菌(Escherichia coli)であり、
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼをコードする外来性遺伝子をさらに含む、
組換え微生物。
【請求項2】
前記2,3-デヒドロアジピル-CoAを還元してアジピルCoAに変換する酵素活性を有するタンパク質をコードする外来性遺伝子が、
(xi)配列番号8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、または、
(xiii)配列番号57、58、59、60、61、62、63、64または65に示すポリヌクレオチド配列からなるDNA
である、請求項1に記載の組換え微生物。
【請求項3】
前記2,3-デヒドロアジピル-CoAを還元してアジピルCoAに変換する酵素活性を有するタンパク質をコードする外来性遺伝子が、Candida auris、Kluyveromyces marxianus、Pichia kudriavzevii、Thermothelomyces thermophilus、Thermothielavioides terrestris、Chaetomium thermophilum、Podospora anserina、Purpureocillium lilacinumおよびPyrenophora teresから選択される少なくとも1つに由来する、請求項1または2に記載の組換え微生物。
【請求項4】
前記組換え微生物が、アジピルCoAを経由してアジピン酸に到る生産経路を有する、 請求項1~3のいずれか1項に記載の組換え微生物。
【請求項5】
・3-オキソアジピルCoAチオラーゼをコードする遺伝子、
・3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、
・カルボン酸レダクターゼをコードする遺伝子、
・アルコールデヒドロゲナーゼをコードする遺伝子、および
・トランスアミナーゼ(アミノトランスフェラーゼ)をコードする遺伝子
からなる群より選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組換え微生物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の組換え微生物を培養する培養工程を含む、C6化合物の製造方法であって、
前記C6化合物が、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオール、6-アミノヘキサン酸、6-アミノ-1-ヘキサノールおよび6-ヒドロキシヘキサン酸からなる群から選択される少なくとも一つである、製造方法。」
申立人が申し立てた特許異議申立の理由(以下、「申立理由」という。)の概要及び証拠方法は以下のとおりである。
1.申立理由の概要
(1)申立理由1(進歩性)
本件発明1~6は、甲第1~10号証(主引例 甲第1号証)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(サポート要件)
本件発明の課題は、「C6化合物の効率的な製造方法を提供すること」であるが、本件発明のかなりの実施例には、比較例よりもアジピン酸の生産性が低く、本件発明には記載されている課題を達し得ない発明が包含されているから、本件発明は、明細書に記載された発明ではなく、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2.証拠方法
(1)甲第1号証: 国際公開第2019/107516号
(2)甲第2号証: Lockhart,S.R. et al., hypothetical protein B9J08_005027 [[Candida] auris], Genbank [online]; 15 Nov 2017, The National Center for Biotechnology Information, Bethesda, MD, USA, Retrieved from <https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/PIS48337.1?report=genpept>
(3)甲第3号証: Lertwattanasakul,N. et al., probable trans-2-enoyl-CoA reductase [Kluyveromyces marxianus DMKU3-1042], Genbank [online]; 14 Dec 2016, The National Center for Biotechnology Information, Bethesda, MD, USA, Retrieved from < https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/BAO41562.1>
(4)甲第4号証: Van Rijswijck,I., et al., Enoyl-[acyl-carrier-protein] reductase [NADPH, B-specific] 2, mitochondrial [Pichiakudriavzevii], Genbank [online]; 02 Feb 2017, The National Center for Biotechnology Information, Bethesda, MD, USA, Retrieved from <https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/ONH77302.1>
(5)甲第5号証: Jalan,N., et al., two-component system sensor histidine kinase-response regulator hybrid protein[Xanthomonas euvesicatoria pv. citrumelo F1], Genbank [online]; 25 Jul 2017, The National Center for Biotechnology Information, Bethesda, MD, USA, Retrieved from <https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AEO43815.1>
(6)甲第6号証: Berka,R.M., et al., hypothetical protein THITE_2111907 [Thermothielavioides terrestris NRRL 8126], Genbank [online]; 02 Sep 2014, The National Center for Biotechnology Information, Bethesda, MD, USA, Retrieved from < https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AEO65174.1>
(7)甲第7号証: Amlacher,S., et al., NONE-like protein [Thermochaetoides thermophila DSM 1495], Genbank [online]; 14 Mar 2015, The National Center for Biotechnology Information, Bethesda, MD, USA, Retrieved from < https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/EGS22849.1>
(8)甲第8号証: Espagne,E., et al., unnamed protein product [Podospora anserina S mat+], Genbank [online]; 21 Aug 2013, The National Center for Biotechnology Information, Bethesda, MD, USA, Retrieved from < https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/CAP68139.1>
(9)甲第9号証: Wang,G., et al., alcohol dehydrogenase superfamily, zinc-containing [Purpureocillium lilacinum], Genbank [online]; 27 May 2016, The National Center for Biotechnology Information, Bethesda, MD, USA, Retrieved from < https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/OAQ94168.1>
(10)甲第10号証: Syme A,R., et al., Enoyl-acyl-carrier-proteinreductase 1 [Pyrenophora teres f. teres], Genbank [online]; 20 Feb 2020, The National Center for Biotechnology Information, Bethesda, MD, USA, Retrieved from < https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/CAA9983373.1?report=genpept>
(11)甲第11号証: 特表2018-500911号公報
(12)甲第12号証: 特表2016-533162号公報
(以下、「甲第1号証」~「甲第12号証」を「甲1」~「甲12」という。)
当審は、申立人が主張する上記の申立理由1及び申立理由2は、いずれも理由がなく、ほかに各特許を取り消すべき理由も発見できないから、本件発明1~6に係る特許は、いずれも取り消すべきものではなく、維持すべきものと判断する。
1.本件明細書に記載された事項
本件明細書の発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されている。
本ア
「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、2,3-デヒドロアジピル-CoA還元酵素活性を有する組換え微生物、及び、C6化合物の効率的な製造方法を提供することにある。」
本イ
「【図面の簡単な説明】
【0021】
・・・
【図16】図16は、本発明に係る組換え微生物が有するアジピン酸、アジピン酸誘導体、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオールおよび6-アミノ-1-ヘキサノール生産経路の例を示す。」
本ウ
「【実施例】
【0167】
<1>発明A
以下、本発明Aを実施例に基づいて説明するが、本発明Aはこれらの実施例に限定されるものではない。
【0168】
実施例で用いた試料のアミノ酸配列および塩基配列を、図2~15に示す。
【0169】
<C6化合物生産経路酵素遺伝子発現プラスミドの構築>
PCR断片の増幅にはPrimeSTAR Max DNA Polymerase(製品名、タカラバイオ製)、または、KOD FX Neo(製品名、東洋紡製)、プラスミドの調製には大腸菌JM109株を用いた。塩基配列の最適化には、GeneArt GeneOptimizer(ソフトウェア名、サーモフィッシャーサイエンティフィック社)、または、ユーロフィンジェノミクス社の人工遺伝子合成サービスを用いた。
【0170】
Eshcherichia coliのPaaJ(Ec)(配列番号1)をコードするポリヌクレオチドは、Eshcherichia coli W3110株(NBRC12713)ゲノムDNAからクローニングを行って取得した。配列番号34および35のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、paaJ(Ec)遺伝子のコード領域(配列番号33)を含むPCR産物を得た。次に、pRSFDuet-1(製品名、Merck社製)を鋳型として、配列番号36および37のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、pRSFDuet-1断片を得た。paaJ(Ec)遺伝子コード領域を含むDNA断片とpRSFDuet-1断片とを、In-Fusion(登録商標。以下、省略。) HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて接続した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。PaaJ(Ec)発現プラスミドとして「paaJ(Ec)-pRSFDuet」を得た。
【0171】
Eshcherichia coliのPaaH(Ec)(配列番号2)をコードするポリヌクレオチドは、Eshcherichia coli W3110株(NBRC12713)のゲノムDNAからクローニングを行って取得した。配列番号39および40のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、paaH(Ec)遺伝子のコード領域(配列番号38)を含むPCR産物を得た。次に、「paaJ(Ec)-pRSFDuet」を鋳型とし、配列番号41および42のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、「paaJ(Ec)-pRSFDuet」断片を得た。paaH(Ec)遺伝子コード領域を含むDNA断片と「paaJ(Ec)-pRSFDuet」断片とを、In-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて接続した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体より、プラスミドを抽出した。PaaJ(Ec)、PaaH(Ec)共発現プラスミドとして「paaJ(Ec)-paaH(Ec)-pRSFDuet」を得た。
【0172】
Eshcherichia coliのPaaF(Ec)(配列番号3)をコードするポリヌクレオチドは、Eshcherichia coli W3110株(NBRC12713)ゲノムDNAからクローニングを行って取得した。配列番号44および45のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、paaF(Ec)遺伝子のコード領域(配列番号43)を含むPCR産物を得た。配列番号4に示すヌクレオチドおよび配列番号46に示すヌクレオチドをプライマーとして使用し、L3株の染色体DNAを鋳型としたPCR増幅物の塩基配列にコードされるL3株のPaaF(L3)をコードするヌクレオチドは、大腸菌発現用に塩基配列の最適化を行い、ユーロフィンジェノミクス社の人工遺伝子合成サービスを利用して取得した。配列番号47および48のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、paaF(L3)遺伝子のコード領域の最適化配列を含むPCR産物を得た。pETDuet-1(製品名、Merck社製)を鋳型として、配列番号49および50のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、pETDuet-1断片を得た。paaF(Ec)、paaF(L3)それぞれのコード領域を含むDNA断片とpETDuet-1断片とを、In-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて接続した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。PaaF(Ec)発現プラスミドとして「paaF(Ec)-pETDuet」を、PaaF(L3)発現プラスミドとして「paaF(L3)-pETDuet」を得た。
【0173】
Acinetobacter baylyiのdcaA(Ab)(配列番号5)をコードするポリヌクレオチドは、大腸菌発現用に塩基配列の最適化を行い、ユーロフィンジェノミクス社の人工遺伝子合成サービスを利用して取得した。配列番号52および53のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、dcaA(Ab)遺伝子のコード領域(配列番号51)を含むPCR産物を得た。「paaF(Ec)-pETDuet」を鋳型とし、配列番号84および85のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、「paaF(Ec)-pETDuet」断片を得た。dcaA(Ab)遺伝子のコード領域を含むDNA断片と、「paaF(Ec)-pETDuet」断片とをIn-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて接続した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体より、プラスミドを抽出した。PaaF(Ec)、DcaA(Ab)共発現プラスミドとして「paaF(Ec)-dcaA(Ab)-pETDuet」を得た。
【0174】
Candida tropicalisのTer(Ct)(配列番号6)は、N末端領域を22残基分除去した配列(配列番号7)としてクローニングされた。コードするポリヌクレオチドは、大腸菌発現用に塩基配列の最適化を行い、ユーロフィンジェノミクス社の人工遺伝子合成サービスを利用して取得した。配列番号55および56のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、ter(Ct)遺伝子のコード領域(配列番号54)を含むPCR産物を得た。「paaF(L3)-pETDuet」を鋳型とし、配列番号84および85のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、「paaF(L3)-pETDuet」断片を得た。ter(Ct)遺伝子のコード領域を含むDNA断片と、「paaF(L3)-pETDuet」断片とをIn-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて接続した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体より、プラスミドを抽出した。PaaF(L3)、Ter(Ct)共発現プラスミドとして「paaF(L3)-ter(Ct)-pETDuet」を得た。
【0175】
BLAST Search(https://www.genome.jp/tools/blast/)BLASTPを用いて、KEGG GENESデータベース中から、2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼの機能を有すると推測されるタンパク質を選択した。選択した候補酵素タンパク質を表A-1に示す。
【0176】
【表A-1】
93
118
0001432089000001.jpg
【0177】
選択した2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼ候補タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、大腸菌発現用に塩基配列の最適化を行い、ユーロフィンジェノミクス社の人工遺伝子合成サービスを利用して取得し、各酵素遺伝子のコード領域を含むDNA断片をPCRによって得た。各酵素遺伝子のコード領域の塩基配列と、PCRに用いたプライマーセットの塩基配列の配列番号を表2に示す。「paaF(L3)-pETDuet」を鋳型とし、配列番号84および85のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、「paaF(L3)-pETDuet」断片を得た。各遺伝子のコード領域を含むDNA断片と、「paaF(L3)-pETDuet」断片とをIn-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて接続した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体より、プラスミドを抽出した。PaaF(L3)と、各2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼ候補タンパク質の共発現プラスミドを得た。
【0178】
【表A-2】
(略)
【0179】
Mycobacterium abscessusのカルボン酸レダクターゼMaCar(配列番号20)は、アミノ酸配列の283番目のトリプトファン残基をアルギニン残基に、303番目のアラニン残基をメチオニン残基に置換した変異体MaCar(m)として使用した(配列番号22)。MaCar(m)をコードするポリヌクレオチドは、大腸菌発現用に塩基配列の最適化を行い、ユーロフィンジェノミクス社の人工遺伝子合成サービスを利用して取得した。配列番号87および88のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、Macar(m)遺伝子のコード領域(配列番号86)を含むPCR産物を得た。
【0180】
次に本PCR産物をIn-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて、pACYCDuet-1(製品名、Merck社製)の制限酵素NdeIおよびAvrII切断部位間に挿入した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。MaCar(m)発現プラスミドとして「Macar(m)-pACYCDuet」を得た。
【0181】
Nocardia iowensisのNpt(配列番号24)をコードするポリヌクレオチドは、Nocardia iowensis JCM18299株(文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクトを介して理研BRCから提供された。)のゲノムDNAからクローニングを行って取得した。配列番号90および91のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、npt遺伝子のコード領域(配列番号89)を含むPCR産物を得た。次に、「MaCar(m)-pACYCDuet」を鋳型とし、配列番号92および93のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、「Macar(m)-pACYCDuet」断片を得た。PCR産物同士をIn-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて接続した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体より、プラスミドを抽出した。MaCar(m)、Npt共発現プラスミドとして「Macar(m)-npt-pACYCDuet」を得た。
【0182】
Eshcherichia coliのAhr(配列番号32)をコードするポリヌクレオチドは、Eshcherichia coli W3110株(NBRC12713)ゲノムDNAからクローニングを行って取得した。配列番号95および96のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、ahr遺伝子(配列番号94)のコード領域を含むPCR産物を得た。次に「Macar(m)-npt-pACYCDuet」を鋳型とし、配列番号97および98のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、「macar(m)-npt-pACYCDuet」断片を得た。各遺伝子のコード領域を含むPCR産物と「macar(m)-npt-pACYCDuet」断片とをIn-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて接続した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体より、プラスミドを抽出した。Ahr、MaCar、Npt共発現プラスミドとして「ahr-macar(m)-npt-pACYCDuet」をそれぞれ得た。
【0183】
<C6化合物生産菌株の構築>
構築したプラスミドを大腸菌BL21(DE3)株コンピテントセル(ニッポンジーン社製)に形質転換し、アンピシリンナトリウム50mg/L、カナマイシン硫酸塩30mg/L、(菌株HDO1の構築はさらにクロラムフェニコール30mg/L)を含むLB寒天培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム5g/L、寒天末15g/L)に塗布し、37°Cで24時間インキュベートして形質転換体のシングルコロニーを得た。取得した形質転換体を表A-3に示す。
【0184】
【表A-3】
78
107
0001432089000002.jpg
【0185】
<組換え大腸菌培養によるアジピン酸生産試験>
形質転換体ADA1~11を、アンピシリンナトリウム50mg/L、カナマイシン硫酸塩30mg/Lを含むLB液体培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム5g/L)2mL(14mL容ラウンドボトムチューブ)に一白金耳植菌し、37°Cで24時間振盪培養を行い、前培養液を得た。得られた前培養液10μLを、アンピシリンナトリウム50mg/L、カナマイシン硫酸塩30mg/Lを含むMM培地1mL(96穴ディープウェルプレート)に植菌し、37°Cで48時間振盪培養を行った。
【0186】
【表A-4】
(略)
【0187】
培養終了後、培養液中のアジピン酸濃度を分析した。分析は、トリメチルシリル誘導体化を用いたGC/MS分析によって行った。培養液遠心上清40μL(内部標準としてセバシン酸二ナトリウムを終濃度10mMとなるように添加)に水:メタノール:クロロホルム=5:2:2(v/v/v)となるように混合された抽出液を360μL添加し、ボルテックスミキサーでよく攪拌した。遠心分離(16,000×g、5分)後、上清40μLを別のマイクロチューブに採取し、遠心エバポレータで1時間遠心乾固した。得られた乾固物にメトキシアミン塩酸塩20mg/mLピリジン溶液100μLを添加し、30°Cで90分振盪した。N-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセトアミド50μLを添加し、37°Cで30分振盪した。反応溶液をGC/MS測定試料とし、下記の条件で分析を行った。
【0188】
GC/MS分析条件
装置:GCMS-QP-2020NX(島津製作所製)
カラム:フューズドシリカキャピラリーチューブ 不活性処理チューブ(長さ1m、外径0.35mm、内径0.25mm、GLサイエンス社製)、InertCap 5MS/NP(長さ30m、内径0.25mm、膜厚0.25μm、GLサイエンス社製)
試料注入量:1μL
試料導入法:スプリット(スプリット比25:1)
気化室温度:230°C
キャリアガス:ヘリウム
キャリアガス線速度:39.0cm/秒
オーブン温度:80°C、2分保持→15°C/分昇温→325°C、13分保持
イオン化法:電子イオン化法(EI)
イオン化エネルギー:70eV
イオン源温度:230°C
スキャン範囲:m/z=50~500
【0189】
結果を表A-5に示す。形質転換体ADA1~ADA11は、図1のステップA、B、C、Dの反応を進行させ得る酵素遺伝子の発現プラスミドを導入した形質転換体である。ステップEの反応は、大腸菌の内因性酵素によって進行する。
【0190】
大腸菌由来のPaaJ(Ec)、PaaH(Ec)、PaaF(Ec)、及びAcinetobacter baylyi由来のdcaA(Ab)を発現させた形質転換体ADA1の培養(比較例1)では、アジピン酸が0.14g/L生成した。大腸菌由来のPaaJ(Ec)、PaaH(Ec)、L3株由来のPaaF(L3)、及びCandida tropicalisのTer(Ct)を発現させた形質転換体ADA2の培養(比較例2)では、アジピン酸が0.33g/L生成した。
【0191】
大腸菌由来のPaaJ(Ec)、PaaH(Ec)、L3株由来のPaaF(L3)、図1のステップDの反応を触媒させる酵素として、Ter(caur)、Ter(kmx)、Ter(pkz)、Ter(mtm)、Ter(ttt)、Ter(cthr)、Ter(pan)、Ter(plj)、またはTer(pte)を発現させた形質転換体ADA3~ADA11の培養(実施例1~9)では、それぞれアジピン酸を生成し、Ter(caur)、Ter(kmx)、Ter(pkz)、Ter(mtm)、Ter(ttt)、Ter(cthr)、Ter(pan)、Ter(plj)、またはTer(pte)が、アジピン酸生産経路反応を進行させる酵素活性を有することが示された。
【0192】
また、形質転換体ADA6(実施例4)、ADA7(実施例5)、ADA8(実施例6)、ADA9(実施例7)およびADA11(実施例9)の培養では、比較例を上回るアジピン酸を生成し、酵素Ter(mtm)、Ter(ttt)、Ter(cthr)、Ter(pan)、またはTer(pte)を発現させることによりC6化合物生成量が向上したことが示された。また、これらの結果から、実施例として示される微生物では、良好な2,3-デヒドロアジピル-CoA還元酵素活性を示すことがわかる。
【0193】
【表A-5】
59
103
0001432089000003.jpg
【0194】
<組換え大腸菌培養による1,6-ヘキサンジオールおよび6-ヒドロキシヘキサン酸生産試験>
形質転換体HDO1を、アンピシリンナトリウム50mg/L、カナマイシン硫酸塩30mg/L、クロラムフェニコール30mg/Lを含むLB液体培地2mL(14mL容ラウンドボトムチューブ)に一白金耳植菌し、37°Cで24時間振盪培養を行い、前培養液を得た。得られた前培養液10μLをアンピシリンナトリウム50mg/L、カナマイシン硫酸塩30mg/L、クロラムフェニコール30mg/Lを含むMM培地1mL(96穴ディープウェルプレート)に植菌し、37°Cで48時間振盪培養を行った。
【0195】
培養終了後、培養液中の1,6-ヘキサンジオール濃度、6-ヒドロキシヘキサン酸濃度を分析した。6-ヒドロキシヘキサン酸濃度はGC/MSを用いてアジピン酸濃度分析と同様の条件で分析した。1,6-ヘキサンジオール濃度の分析は、高速液体クロマトグラフProminenceシステム(島津製作所製)を用いて下記の条件で行った。
【0196】
高速液体クロマトグラフ(HPLC)分析条件
検出器:示差屈折率検出器
カラム:Shim-Pack Fast-OA(G)、Fast-OA(島津製作所製)
オーブン温度:40°C
移動相:8mMメタンスルホン酸水溶液
流速:0.6mL/min
注入量:10μL
【0197】
結果を表A-6に示す。形質転換体HDO1は、図1のステップA、B、C、Dの反応を進行させ得る酵素遺伝子の発現プラスミドに加え、カルボン酸レダクターゼ、アルコールデヒドロゲナーゼの発現プラスミドを導入した形質転換体である。形質転換体HDO1の培養(実施例10)では、6-ヒドロキシヘキサン酸および1,6-ヘキサンジオールを生成した。
【0198】
【表A-6】
18
115
0001432089000004.jpg
【0199】
<遺伝子破壊用プラスミドの構築>
大腸菌の遺伝子の破壊・挿入には、pHAK1(受領番号NITE P-02919として、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センター(NPMD)(住所:千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に2019年3月18日に寄託した。国際寄託番号:NITE BP-02919)を用いた相同組換え法により行った。pHAK1は温度感受性変異型repA遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、Bacillus subtilis由来レバンスクラーゼ遺伝子sacBを含む。レバンスクラーゼ遺伝子は、スクロース存在下において宿主微生物に対して致死的に作用する。PCR断片の増幅にはPrimeSTAR Max DNA Polymerase(製品名、タカラバイオ製)、または、KOD FX Neo(製品名、東洋紡製)、プラスミド調製は大腸菌HST08株を用いて行った。
【0200】
大腸菌BL21(DE3)株のゲノムDNAを鋳型とし、破壊標的遺伝子の5’相同領域、コード領域、および3’相同領域を含むPCR産物を得た。標的遺伝子とプライマー配列の組み合わせを下記表A-7に示した。
【0201】
【表A-7】
(略)
【0202】
次に本PCR産物をIn-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて、配列番号115及び116のプライマーを用いて増幅したpHAK1プラスミド断片に挿入し、環状化した。大腸菌HST08株に形質転換し、得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。
【0203】
上記で抽出した、破壊標的遺伝子の5’相同領域、コード領域、および3’相同領域のDNA断片が挿入されたpHAK1プラスミドを鋳型として、下記表A-8に記載するプライマーを用いてPCRを行い、破壊標的遺伝子のコード領域の一部領域または全領域が除かれ、5’相同領域および3’相同領域を内含するpHAK1プラスミド断片を得た。
【0204】
【表A-8】
(略)
【0205】
得られたプラスミド断片を末端リン酸化、セルフライゲーションにより環状化した。大腸菌HST08株に形質転換し、得られた形質転換体からプラスミドを抽出し、遺伝子破壊用プラスミドを得た。
【0206】
<ヘキサメチレンジアミン生産経路酵素遺伝子挿入用プラスミドの構築>
Eshcherichia coliのPaaJ(Ec)(配列番号1)をコードするポリヌクレオチド(配列番号33)は、Eshcherichia coli W3110株(NBRC12713)ゲノムDNAからクローニングを行った。Eshcherichia coliのPaaH(Ec)(配列番号2)をコードするポリヌクレオチド(配列番号38)は、Eshcherichia coli W3110株(NBRC12713)のゲノムDNAからクローニングを行って取得した。
【0207】
paaJ(Ec)およびpaaH(Ec)遺伝子は、発現カセットとしてpflB遺伝子領域に挿入されるよう、遺伝子挿入用プラスミドを設計した。先に構築したpflB遺伝子破壊用プラスミドに内含されるpflB遺伝子コード領域の5’相同領域と3’相同領域の間に、プロモーター領域(配列番号133)、paaJ(Ec)遺伝子コード領域、リンカー配列(配列番号134)、paaH遺伝子コード領域、ターミネーター領域(配列番号135)の順に配置した発現カセットを組み込んだ。
【0208】
配列番号4に示すヌクレオチドおよび配列番号46に示すヌクレオチドをプライマーとして使用し、L3株の染色体DNAを鋳型としたPCR増幅物の塩基配列にコードされるL3株のPaaF(L3)をコードするヌクレオチドは、大腸菌発現用に塩基配列の最適化を行い、ユーロフィンジェノミクス社の人工遺伝子合成サービスを利用して取得した。配列番号162に示すヌクレオチドおよび配列番号163に示すヌクレオチドをプライマーとして使用し、L3株の染色体DNAを鋳型としたPCR増幅物の塩基配列にコードされるL3株のMmgC(L3)をコードするポリヌクレオチド(1155bp)は、大腸菌発現用に塩基配列の最適化を行い、ユーロフィンジェノミクス社の人工遺伝子合成サービスを利用して取得した。
【0209】
paaF(L3)およびmmgC(L3)遺伝子のコード領域の最適化配列は、発現カセットとしてyahK遺伝子領域に挿入されるよう、遺伝子挿入用プラスミドを設計した。先に構築したyahK遺伝子破壊用プラスミドに内含されるyahK遺伝子コード領域の5’相同領域と3’相同領域の間に、プロモーター領域(配列番号136)、paaF(L3)遺伝子コード領域、リンカー配列(配列番号137)、mmgC(L3)遺伝子コード領域、ターミネーター領域(配列番号138)の順に配置した発現カセットを組み込んだ。
【0210】
Mycobacterium abscessusのカルボン酸レダクターゼMaCar(配列番号20)は、アミノ酸配列の283番目のトリプトファン残基をアルギニン残基に、303番目のアラニン残基をメチオニン残基に置換した変異体MaCar(m)を用いた(配列番号22)。MaCar(m)をコードするポリヌクレオチド(配列番号86)は、大腸菌発現用に塩基配列の最適化を行い、ユーロフィンジェノミクス社の人工遺伝子合成サービスを利用して取得した。Nocardia iowensisのNpt(配列番号24)をコードするポリヌクレオチド(配列番号89)は、Nocardia iowensis JCM18299株(文部科学省ナショナルバイオリソースプロジェクトを介して理研BRCから提供された。)のゲノムDNAからクローニングを行って取得した。
【0211】
macar(m)およびnpt遺伝子は、発現カセットとしてldhA遺伝子領域に挿入されるよう、遺伝子挿入用プラスミドを設計した。先に構築したldhA遺伝子破壊用プラスミドに内含されるldhA遺伝子コード領域の5’相同領域と3’相同領域の間に、プロモーター領域(配列番号139)、macar(m)遺伝子コード領域、リンカー配列(配列番号140)、npt遺伝子コード領域、ターミネーター領域(配列番号141)の順に配置した発現カセットを組み込んだ。
【0212】
<大腸菌改変株の構築>
エレクトロポレーション法(羊土社 遺伝子工学実験ノート 田村隆明著、参照)により、大腸菌BL21(DE3)株に所望の遺伝子の破壊または挿入のためのプラスミドを形質転換した後、カナマイシン硫酸塩100mg/Lを含有するLB寒天培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム5g/L、寒天末15g/L)に塗布し、30°Cで一晩インキュベートしてシングルコロニーを取得し、形質転換体を得た。本形質転換体をカナマイシン硫酸塩100mg/Lを含有するLB液体培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、塩化ナトリウム5g/L)1mLに一白金耳植菌し、30°Cで振盪培養を行った。得られた培養液を、カナマイシン硫酸塩100mg/Lを含有するLB寒天培地に塗布し、42°Cで一晩インキュベートし、コロニーを取得した。得られたコロニーをLB液体培地1mLに一白金耳植菌し、30°Cで振盪培養を行った。得られた培養液を、スクロース20%を含有するLB寒天培地に塗布し、30°Cで2日間インキュベートした。得られたコロニーについて、所望の遺伝子が破壊または挿入されていることを、表A-9に示すプライマーセットを用いたコロニーダイレクトPCRにより確認した。
【0213】
以上の操作を繰り返し、表A-10に示す、複数の遺伝子破壊および遺伝子挿入を含む大腸菌株「No.060」を構築した。表中、Δは該酵素遺伝子が欠損していることを示し、「遺伝子名A::遺伝子名B」は、遺伝子A領域が遺伝子Bを含む領域に置換されていることを示す。
【0214】
【表A-9】
(略)
【0215】
【表A-10】
(略)
【0216】
<ヘキサメチレンジアミン生産経路酵素遺伝子発現プラスミドの構築>
PCR断片の増幅にはPrimeSTAR Max DNA Polymerase(製品名、タカラバイオ製)、または、KOD FX Neo(製品名、東洋紡製)、プラスミドの調製には大腸菌JM109株を用いた。
【0217】
Eshcherichia coliのYgjG(配列番号27)は、一部のアミノ酸配列を置換した変異型YgjG(m)(配列番号158)を用いた。YgjG(m)をコードするポリヌクレオチドは、配列番号160および161のオリゴヌクレオチドをプライマーとしてPCRを行い、ygjG(m)遺伝子(配列番号159)のコード領域を含むPCR産物を得た。次に本PCR産物をIn-Fusion HD cloning kit(製品名、Clontech社製)を用いて、pACYCDuet-1(製品名、Merck社製)の制限酵素NcoIおよびHindIII切断部位間に挿入した。大腸菌JM109株に形質転換し、得られた形質転換体からプラスミドを抽出した。MaCar(m)発現プラスミドとして「ygjG(m)-pACYCDuet」を得た。
【0218】
<組換え大腸菌培養によるヘキサメチレンジアミン生産試験>
エレクトロポレーション法により、大腸菌改変株No.060に「paaF(L3)-ter(mtm)-pETDuet」および「ygjG(m)-pACYCDuet」を形質転換し、アンピシリンナトリウム50mg/L、クロラムフェニコール30mg/Lを含むLB寒天培地上で、37°C、一日間培養して、コロニーを形成させ、形質転換体HMD1を得た。アンピシリンナトリウム50mg/L、クロラムフェニコール30mg/Lを含むLB液体培地2mL(14mL容ラウンドボトムチューブ)に形質転換体HMD1のコロニーを一白金耳植菌し、37°C、3~5時間振盪培養を行い、前培養液を得た。250mL容のJar培養装置(機種名 バイオJr.8、バイオット社製)に、カルベニシリンナトリウム50mg/L、クロラムフェニコール30mg/L、IPTG0.02mMを含む合成培地(下表)に前培養液0.5mLを添加し、本培養を行った。培養条件は次の通り;培養温度 37°C;培養pH 7.0;pH調整 10%(w/v)アンモニア水;撹拌 750rpm;通気 1vvm。前培養液植菌から22時間経過時点でグルコースを終濃度35g/Lとなるよう追添し、41時間経過まで培養した。
【0219】
【表A-11】
(略)
【0220】
培養終了後、培養液を遠心分離により菌体と上清に分離し、上清中のヘキサメチレンジアミン濃度を分析した。ヘキサメチレンジアミン濃度の分析はイオンクロマトグラフを用いて下記の条件で行った。
【0221】
イオンクロマトグラフ分析条件
装置:ICS-3000(Dionex社製)
検出器:電気伝導度検出器
カラム:IonPac CG19(2×50mm)/CS19(2×250mm)(Thermo Scientific社製)
オーブン温度:30°C
移動相:8mMメタンスルホン酸水溶液(A)、70mMメタンスルホン酸水溶液(B)
グラジエント条件:(A:100%、B:0%)-(10min)-(A:0%、B:100%)-(1min保持)
流速:0.28mL/min
注入量:20μL
【0222】
結果を表A-12に示す。形質転換体HMD1は、図1のステップA、B、C、Dの反応を進行させ得る酵素遺伝子に加え、カルボン酸レダクターゼ、アミノトランスフェラーゼ遺伝子を導入した形質転換体である。形質転換体HMD1の培養(実施例11)でヘキサメチレンジアミンを生成した。
【0223】
【表A-12】
20
130
0001432089000005.jpg
」
本エ
「【図16】
126
123
0001432089000006.jpg
」
2.甲1の記載事項及び主引例となる甲1に記載された発明
ア.甲1の記載事項
甲1ア
「[0039]
46
139
0001432089000007.jpg
[0040] 上記スキーム1は、3-ヒドロキシアジピン酸、α-ヒドロムコン酸、および/またはアジピン酸を生産するために必要な反応経路の例を示している。ここで、反応Aは、アセチル-CoAおよびスクシニル-CoAから3-オキソアジピル-CoAおよび補酵素Aを生成する反応を示す。反応Bは、3-オキソアジピル-CoAから3-ヒドロキシアジピル-CoAを生成する反応を示す。反応Cは、3-ヒドロキシアジピル-CoAから2,3-デヒドロアジピル-CoAを生成する反応を示す。反応Dは、2,3-デヒドロアジピル-CoAからアジピル-CoAを生成する反応を示す。反応Eは3-ヒドロキシアジピル-CoAから3-ヒドロキシアジピン酸を生成する反応を示す。反応Fは、2,3-デヒドロアジピル-CoAからα-ヒドロムコン酸を生成する反応を示す。反応Gは、アジピル-CoAからアジピン酸を生成する反応を示す。」
甲1イ
「[0045] 反応Cを触媒する酵素をコードする核酸として、Pseudomonasputida KT2440株遺伝子paaF(NCBI Gene ID: 1046932、配列番号47)を用いる。」
甲1ウ
「[0070] 本発明で遺伝子改変微生物を得るための宿主として用いることができる微生物は、Escherichia属、Serratia属、Hafnia属、Psuedomonas属、Corynebacterium属、Bacillus属、Streptomyces属、Cupriavidus属、Acinetobacter属、Alcaligenes属、Brevibacterium属、Delftia属、Shimwellia属、Aerobacter属、Rhizobium属、Thermobifida属、Clostridium属、Schizosaccharomyces属、Kluyveromyces属、Pichia属およびCandida属に属する微生物が挙げられる。これらの中でも、Escherichia属、Serratia属、Hafnia属、Pseudomonas属に属する微生物が好ましい。
[0071] 本発明の遺伝子改変微生物を用いて3-ヒドロキシアジピン酸、α-ヒドロムコン酸および/またはアジピン酸を製造する方法を説明する。」
甲1エ
「[0076] 本発明の遺伝子改変微生物が、スクシニル-CoAから3-オキソアジピル-CoAおよび補酵素Aを生成(反応A)する能力、3-ヒドロキシアジピル-CoAを脱水して2,3-デヒドロアジピル-CoAを生成(反応C)する能力、2,3-デヒドロアジピル-CoAを還元してアジピル-CoAを生成(反応D)する能力、およびアジピル-CoAからアジピン酸を生成(反応G)する能力を有していれば、アジピン酸を製造することができる。これらの生成能力を有する微生物を宿主微生物とすれば、アジピン産を高生産することができる遺伝子改変微生物を取得することができる。これらの生成能力を元来有すると推定される微生物としては、Thermobifida fuscaなどのThermobifida属が挙げられる。
[0077] 本発明の遺伝子改変微生物が、スクシニル-CoAから3-オキソアジピル-CoAおよび補酵素Aを生成(反応A)する能力、3-ヒドロキシアジピル-CoAを脱水して2,3-デヒドロアジピル-CoAを生成(反応C)する能力、2,3-デヒドロアジピル-CoAを還元してアジピル-CoAを生成(反応D)する能力、およびアジピル-CoAからアジピン酸を生成(反応G)する能力を元来有していない場合には、反応A、C、D、Gを触媒する酵素をコードする核酸を適当に組み合わせて微生物に導入することで、これらの生成能を付与することができる。
[0078] 以下に反応A、C~Gを触媒する酵素の具体例を示す。」
甲1オ
「[0094] アジピル-CoAを生成する反応Dを触媒する酵素は、例えば、エノイル-CoAレダクターゼなどを用いることができる。エノイル-CoAレダクターゼとしては、EC番号による分類上の限定は特にないが、EC番号1.3.-.-に分類されるエノイル-CoAレダクターゼが好ましく、具体的にはtrans-2-エノイル-CoAレダクターゼとしてEC1.3.1.44に分類される酵素、アシル-CoAデヒドロゲナーゼとしてEC1.3.8.7に分類される酵素が挙げられる。これらの具体例は、例えば特表2011-515111、J Appl Microbiol. 2015Oct;119(4):1057-63.などに開示されているが、中でもEuglena gracilis Z株由来のTER(UniProtKB:Q5EU90)、Thermobifida fusca YX株由来のTfu_1647(NCBI-ProteinID:AAZ55682)、Acinetobacter baylyi ADP1株由来のDcaA(NCBI-ProteinID:AAL09094.1)などを好ましく用いることができる。
[0095] エノイル-CoAレダクターゼが、2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とした場合、アジピル-CoAが生成する活性を有することは、α-ヒドロムコン酸から酵素反応で調製した2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質として、精製エノイル-CoAレダクターゼを用いて2,3-デヒドロアジピル-CoAの還元に伴うNADHの減少量を測定することで確認できる。
[0096] α-ヒドロムコン酸の調製と、2,3-デヒドロアジピル-CoA溶液の調製は、上記と同様に行うことができる。
[0097] エノイル-CoAレダクターゼ活性の確認:
常法に従い対象とする微生物株のゲノムDNAを鋳型としたPCRを行い、エノイル-CoAレダクターゼをコードする核酸全長を増幅する。当該増幅断片を大腸菌用発現ベクターpET-16b(Novagen社製)のNdeIサイトに、ヒスチジンタグ配列と同じフレームとなるよう挿入する。当該プラスミドを大腸菌BL21(DE3)に導入し、常法に従いイソプロピル-β-チオガラクトピラノシド(IPTG)による当該酵素の発現誘導、続いて培養液からのヒスチジンタグを利用した精製を行い、エノイル-CoAレダクターゼ溶液を得る。
エノイル-CoAレダクターゼ活性は、本酵素溶液を用いて以下組成の酵素反応溶液を調製し、30°CにおけるNADHの酸化に伴う340nm吸収の減少を測定することで確認できる。
[0098] 100mM Tris-HCl(pH8.0)
10mM MgCl2
300μL/mL 2,3-dehydroadipyl-CoA solution0.2mM NADH
1mM dithiothreitol
20μg/mL enoyl-CoA reductase。
[0099] 本発明で用いる宿主微生物において元来発現する酵素がエノイル-CoAレダクターゼ活性を有しているかどうかは、精製エノイル-CoAレダクターゼの代わりにCFEを全量0.1mLの酵素反応溶液に対して0.05mL添加して上述の測定を行うことで確認できる。大腸菌を対象としたCFEの調製方法の具体例はアシルトランスフェラーゼ活性の確認方法に記載した通りである。」
甲1カ
「実施例
[0139] 以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
[0140] 参考例1
アセチル-CoAおよびスクシニル-CoAから3-オキソアジピル-CoAおよび補酵素Aを生成する反応(反応A)を触媒する酵素、及び3-ヒドロキシアジピル-CoAから3-ヒドロキシアジピン酸を生成する反応(反応E)かつ2,3-デヒドロアジピル-CoAからα-ヒドロムコン酸を生成する反応(反応F)を触媒する酵素を発現するプラスミドの作製
大腸菌内で自律複製可能なベクターpBBR1MCS-2(ME Kovach, (1995), Gene 166: 175-176)をXhoIで切断し、pBBR1MCS-2/XhoIを得た。当該ベクターに構成的な発現プロモーターを組み込むために、Escherichia coli K-12 MG1655のゲノムDNAを鋳型としてgapA(NCBI Gene ID: NC_000913.3)の上流域200b(配列番号17)をPCR増幅
するためのプライマーを設計し(配列番号18、19)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpBBR1MCS-2/XhoI を、In-Fusion HD CloningKit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え大腸菌株から当該プラスミドを抽出し、
常法により塩基配列を確認したプラスミドをpBBR1MCS-2::Pgapとした
。続いてpBBR1MCS-2::PgapをScaIで切断し、pBBR1MCS-2::Pgap/ScaI を得た。
反応Aを触媒する酵素をコードする遺伝子を増幅するために、Pseudomonas putidaT2440株のゲノムDNAを鋳型としてアシルトランスフェラーゼ遺伝子pcaF(NCBI Gene ID: 1041755、配列番号20)の全長をPCR増幅
するためのプライマーを設計し(配列番号21、22)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpBBR1MCS-2::Pgap/ScaIを、In-Fusion HD Cloning Kitを用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、
常法により塩基配列を確認したプラスミドをpBBR1MCS-2::ATとした
。続いてpBBR1MCS-2::ATをHpaIで切断し、pBBR1MCS-2::AT/HpaIを得た。反応Eおよび反応Fを触媒する酵素をコードする遺伝子を増幅するために、Pseudomonas putida KT2440株のゲノムDAを鋳型としてCoAトランスフェラーゼ遺伝子PcaIおよびPcaJ(NCBI Gene ID: 1046613、1046612、配列番号23、24)の全長を含む連続した配列をPCR増幅するためのプライマーを設計し(配列番号25、26)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpBBR1MCS-2::AT/HpaIを、In-Fusion HD Cloning Kitを用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認したプラスミドをpBBR1MCS-2::ATCTとした。
[0141] 参考例2
配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドの作製
大腸菌内で自律複製可能な発現ベクターpACYCDuet-1(Novagen社製)をBamHIで切断し、pACYCDuet-1/BamHIを得た。
配列番号1のポリペプチドをコードする核酸を増幅するために、Serratia marcescens ATCC13880株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号54に記載の核酸を増幅
するためのプライマーを設計し(配列番号31、32)、常法に従ってPCR反応を行った。
配列番号2のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratia nematodiphila DSM21420株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号55に記載の核酸を増幅
するためのプライマーを設計し(配列番号33,34)、常法に従ってPCR反応を行った。
配列番号3のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratiaplymuthica NBRC102599株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号56に記載の核酸を増幅
するためのプライマーを設計し(配列番号35,36)、常法に従ってPCR反応を行った。
配列番号4のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratia proteamaculans 568株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号57に記載の核酸を増幅
するためのプライマーを設計し(配列番号37,38)、常法に従ってPCR反応を行った。
配列番号5のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratia ureilyticaLr5/4株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号58に記載の核酸を増幅
するためのプライマーを設計し(配列番号215,216)、常法に従ってPCR反応を行った。
配列番号6のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratia sp. BW106株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号59に記載の核酸を増幅
するためのプライマーを設計し(配列番号217,218)、常法に従ってPCR反応を行った。
配列番号213のポリペプチドをコードする核酸を増幅させるために、Serratia liquefaciens FK01株のゲノムDNAを鋳型として、配列番号214に記載の核酸を増幅
するためのプライマーを設計し(配列番号219,220)、常法に従ってPCR反応を行った。得られたそれぞれの断片およびpACYCDuet-1/BamHI を、In-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認した。なお当該プラスミドに組み込まれた3-オキソアジピル-CoAレダクターゼの発現はIPTGで誘導され、N末端にヒスチジンタグを含む14個のアミノ酸が付加されている。
[0142]
配列番号1に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet-1::Smr1」、配列番号2に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet-1::Snm1」、配列番号3に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet-1::Spl1」、配列番号4に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet-1::Spe1」、配列番号5に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet-1::Sur1」、配列番号6に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet-1::Ssp1」、配列番号213に記載のポリペプチドを発現するためのプラスミドを「pACYCDuet-1::Slq1」とし
、これらのプラスミドについて表6に示す。」
甲1キ
「[0160] 参考例4
3-ヒドロキシアジピル-CoAから2,3-デヒドロアジピル-CoAを生成する反応(反応C)を触媒する酵素を発現するためのプラスミドの作製
大腸菌内で自律複製可能な発現ベクターpCDF-1b(Novagen社製)をKpnIで切断し、pCDF-1b/KpnIを得た。
反応Cを触媒する酵素をコードする遺伝子を増幅するために、Pseudomonasputida KT2440株のゲノムDNAを鋳型としてエノイル-CoAヒドラターゼ遺伝子paaF(NCBI Gene ID: 1046932、配列番号47)の全長をPCR増幅
するためのプライマーを設計し(配列番号48、49)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpCDF-1b/KpnI を、In-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認した。なお当該プラスミドに組み込まれたエノイル-CoAヒドラターゼの発現はIPTGで誘導され、N末端にヒスチジンタグを含む11個のアミノ酸が付加されている。
得られたプラスミドを「pCDF-1b::EHa」とした
。」
甲1ク
「[0181] 比較例7
配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドが、3-オキソアジピル-CoAを還元して3-ヒドロキシアジピル-CoAを生成する活性を有していることを確認するためのコントロール試験
反応Aと反応E、反応Fを触媒する酵素を発現させた組換え大腸菌を作製した。実施例1と同様の方法にて、pACYCDuet-1をBL21(DE3)/ pBBR1MCS-2::ATCTに導入した。得られた組換え株をEc/NC_3HAとした。
[0182] 反応A、反応E、反応F、反応Cを触媒する酵素を発現させた組換え大腸菌を作製した。実施例3と同様の方法にて、pACYCDuet-1をBL21(DE3)/ pBBR1MCS-2::ATCT/ pCDF-1b::EHaに導入した。得られた組換え株をEc/NC_HMAとした。
[0183] Ec/NC_3HA、Ec/NC_HMA、実施例1で作製した、組換え大腸菌7株(Ec/Smr1_3HA、Ec/Snm1_3HA、Ec/Ssp1_3HA、Ec/Spe1_3HA、Ec/Sur1_3HA、Ec/Ssp1_3HA、Ec/Slq1_3HA)、および実施例3で作製した組換え大腸菌7株(Ec/Smr1_HMA、Ec/Snm1_HMA、Ec/Spl1_HMA、Ec/Spe1_HMA、Ec/Sur1_HMA、Ec/Ssp1_HMA、Ec/Slq1_HMA)を用いて、実施例2および実施例4と同様の条件で培養を行い、培養液中の3-ヒドロキシアジピン酸またはα-ヒドロムコン酸を測定した。結果を表10に示す。
[0184] 表10の結果から、Ec/NC_3HAおよびEc/NC_HMAでは、3-ヒドロキシアジピン酸またはα-ヒドロムコン酸が検出されず、実施例2および4で生産された3-ヒドロキシアジピン酸およびα-ヒドロムコン酸は、配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドを発現させたことにより生産可能になったことが確認できた。また、Ec/Smr1_3HA、Ec/Snm1_3HA、Ec/Spl1_3HA、Ec/Spe1_3HA、Ec/Sur1_3HA、Ec/Ssp1_3HA、およびEc/Slq1_3HAではα-ヒドロムコン酸が検出されず、反応Cを触媒する酵素を発現させたEc/Smr1_HMA、Ec/Snm1_HMA、Ec/Spl1_HMA、Ec/Spe1_HMA、Ec/Sur1_HMA、Ec/Ssp1_HMA、およびEc/Slq1_HMAではα―ヒドロムコン酸の生産が確認された。このことから、Ec/Smr1_3HA、Ec/Snm1_3HA、Ec/Spl1_3HA、Ec/Spe1_3HA、Ec/Sur1_3HA、Ec/Ssp1_3HA、およびEc/Slq1_3HAが生産した3-ヒドロキシアジピン酸、およびEc/Smr1_HMA、Ec/Snm1_HMA、Ec/Spl1_HMA、Ec/Spe1_HMA、Ec/Sur1_HMA、Ec/Ssp1_HMA、およびEc/Slq1_HMAが生産したα-ヒドロムコン酸は、共に3-ヒドロキシアジピル-CoAを経由して生成されたことがわかった。従って、配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドは3-オキソアジピル-CoAを還元して3-ヒドロキシアジピル-CoAを生成する活性を有していることがわかった。
[0185] [表10]
87
102
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[0186] 参考例6
アセチル-CoAおよびスクシニル-CoAから3-オキソアジピル-CoAおよび補酵素Aを生成する反応(反応A)を触媒する酵素、及びアジピル-CoAからアジピン酸を生成する反応(反応G)を触媒する酵素を発現するプラスミドの作製
参考例1で作製したpBBR1MCS-2::ATをHpaIで切断して得られる6.6kbの断片をpBBR1MCS-2::AT/HpaIとした。
反応Gを触媒する酵素をコードする遺伝子を増幅するために、Acinetobacter baylyi ADP1株のゲノムDNAを鋳型としてCoAトランスフェラーゼ遺伝子dcaIおよびdcaJ(NCBI Gene ID:CR543861.1、配列番号221、222)の全長を含む連続した配列をPCR増幅
するためのプライマーを設計し(配列番号223、224)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpBBR1MCS-2::AT/HpaIを、In-Fusion HD Cloning Kitを用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、
常法により塩基配列を確認したプラスミドをpBBR1MCS-2::ATCT2とした
。
[0187] 参考例7
2,3-デヒドロアジピル-CoAからアジピル-CoAを生成する反応(反応D)を触媒する酵素を発現するためのプラスミドの作製
大腸菌内で自律複製可能な発現ベクターpMW119(ニッポンジーン社製)をSacIで切断し、pMW119/SacIを得た。当該ベクターに構成的な発現プロモーターを組み込むために、Escherichia coli K-12 MG1655のゲノムDNAを鋳型としてgapA(NCBI Gene ID: NC_000913.3)の上流域200b(配列番号17)をPCR増幅するためのプライマーを設計し(配列番号225、226)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpMW119/SacIを、In-Fusion HD Cloning Kit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え大腸菌株から当該プラスミドを抽出し、常法により塩基配列を確認したプラスミドをpMW119::Pgapとした。続いてpMW119::PgapをSphIで切断し、pMW119::Pgap/SphIを得た。
反応Dを触媒する酵素をコードする遺伝子を増幅するために、Acinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaA(NCBI-ProteinID:AAL09094.1、配列番号227)の全長をPCR増幅
するためのプライマーを設計し(配列番号228、229)、常法に従ってPCR反応を行った。得られた断片およびpMW119::Pgap/SphIを、In-Fusion HD CloningKit(Clontech社製)を用いて連結し、大腸菌株DH5αに導入した。得られた組換え株から当該プラスミドを抽出し、
常法により塩基配列を確認したプラスミドをpMW119::ERとした
。」
甲1ケ
「[0188] 実施例7
配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドをコードする核酸が導入されたアジピン酸生産能を有する大腸菌の作製
参考例6で作製したプラスミドpBBR1MCS-2::ATCT2を、大腸菌株BL21(DE3)に
エレクトロポレーション(NM Calvin, PC Hanawalt. J. Bacteriol, 170(1988), pp. 2796-2801)
で導入した。
導入後の当該株をカナマイシン25μg/mLを含有するLB寒天培地にて37°Cで培養した。
得られた組み換え株をBL21(DE3)/pBBR1MCS-2::ATCT2とした。
[0189]
参考例4で作製したプラスミドpCDF-1b::EHaをBL21(DE3)/pBBR1MCS-2::ATCT2に
エレクトロポレーションで
導入した
。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mLおよびストレプトマイシン50g/mLを含有するLB寒天培地にて37°Cで培養した。
得られた組み換え株をBL21(DE3)/pBBR1MCS-2::ATCT2/pCDF-1b::EHaとした。
[0190]
参考例7で作製したプラスミドpMW119::ERをBL21(DE3)/pBBR1MCS-2::ATCT2/pCDF-1b::EHaに
エレクトロポレーションで
導入した
。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mLおよびアンピシリン100μg/mLを含有するLB寒天培地にて37°Cで培養した。
得られた組み換え株をBL21(DE3)/pBBR1MCS-2::ATCT2/pCDF-1b::EHa/pMW119::ERとした
。
[0191]
参考例2で作製した7種類のプラスミドをそれぞれBL21(DE3)/pBBR1MCS-2::ATCT2/pCDF-1b::EHa/pMW119::ERに
エレクトロポレーションで
導入した
。導入後の当該株をカナマイシン25μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mL、アンピシリン100μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mLを含有するLB寒天培地にて、37°Cで培養した
。「pACYCDuet-1::Smr1」を導入した組換え株を「Ec/Smr1_ADA」、「pACYCDuet-1::Snm1」を導入した組換え株を「Ec/Snm1_ADA」、「pACYCDuet-1::Spl1」を導入した組換え株を「Ec/Spl1_ADA」、「pACYCDuet-1::Spe1」を導入した組換え株を「Ec/Spe1_ADA」、「pACYCDuet-1::Sur1」を導入した組換え株を「Ec/Sur1_ADA」、「pACYCDuet-1::Ssp1」を導入した組換え株を「Ec/Ssp1_ADA」、「pACYCDuet-1::Slq1」を導入した組換え株を「Ec/Slq1_ADA」とし、本実施例で得られた組換え株を表11に示す。
」
甲1コ
「[0194] 実施例8
配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドをコードする核酸が導入されたアジピン酸生産能を有する大腸菌を用いたアジピン酸の生産試験
実施例7で作製した大腸菌を用いてアジピン酸の生産試験を行った。pH7に調整した培地I(Bactoトリプトン(Difco Laboratories社製)10g/L、Bacto酵母エキス(Difco Laboratories社製)5g/L、塩化ナトリウム5g/L、カナマイシン25μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mL、アンピシリン100μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mL)5mLに、実施例3で作製した組換え大腸菌株を一白金耳植菌し、30°C、120min-1で18時間振とう培養した。当該培養液0.25mLをpH6.5に調整した培地II(コハク酸10g/L、グルコース10g/L、硫酸アンモニウム1g/L、リン酸カリウム50mM、硫酸マグネシウム0.025g/L、硫酸鉄0.0625mg/L、硫酸マンガン2.7mg/L、塩化カルシウム0.33mg/L、塩化ナトリウム1.25g/L、Bactoトリプトン2.5g/L、Bacto酵母エキス1.25g/L、カナマイシン25μg/mL、ストレプトマイシン50μg/mL、アンピシリン100μg/mLおよびクロラムフェニコール15μg/mLおよびIPTG0.01mM)5mLに添加し、30°C、120min-1で24時間振とう培養した。
[0195] アジピン酸および炭素源の定量分析
当該培養液より菌体を遠心分離した上清をMillex-GV(0.22μm、PVDF、Merck社製)を用いて膜処理し、透過液を実施例2と同様の条件でLC-MS/MSにて分析した。培養上清中に蓄積したアジピン酸の定量分析を行った結果、および式(3)を用いて算出したアジピン酸の収率を表11に示す。
[0197]
表11の結果から、実施例8で用いた組換え株は、
本比較例9で用いた組換え株よりも
アジピン酸収率が向上することが明らかとなった。
すなわち、
配列番号1、2、3、4、5、6、213に記載のポリペプチドをコードする核酸を微生物に導入することによって、アジピン酸の生産性が著しく向上することがわかった。
[0198] [表11]
74
114
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」
イ.甲1に記載された発明
甲1には、参考例4、6、7において、以下のプラスミドを作製したことが記載されており、各プラスミドに組み込まれた遺伝子を併せて記載すると次のとおりである。
参考例4([0160]):プラスミドpCDF-1b::EHa
3-ヒドロキシアジピル-CoAから2,3-デヒドロアジピル-CoAを生成する反応(反応C)を触媒するPseudomonasputida KT2440株のエノイル-CoAヒドラターゼ遺伝子paaF
参考例6([0186]):プラスミドpBBR1MCS-2::ATCT2
アセチル-CoAおよびスクシニル-CoAから3-オキソアジピル-CoAおよび補酵素Aを生成する反応(反応A)を触媒するPseudomonas putidaT2440株のアシルトランスフェラーゼ遺伝子pcaF([0140]参考例1)、及び、
アジピル-CoAからアジピン酸を生成する反応(反応G)を触媒するAcinetobacter baylyi ADP1株のCoAトランスフェラーゼ遺伝子dcaIおよびdcaJ
参考例7([0187]):プラスミドpMW119::ER
2,3-デヒドロアジピル-CoAからアジピル-CoAを生成する反応(反応D)を触媒するAcinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaA
また、甲1には、実施例7([0190])において、これら3つのプラスミドの全てが大腸菌株BL21(DE3)に導入された、組み換え株BL21(DE3)/pBBR1MCS-2::ATCT2/pCDF-1b::EHa/pMW119::ER を作製したことについても記載されており、さらに、この組み換え株に、これらのSerratia属各株由来で3-オキソアジピル-CoAを還元して3-ヒドロキシアジピル-CoAを生成する活性を有していることが確認された7つの遺伝子([0184][0185] 比較例7)のいずれかが組み込まれた以下のプラスミドを追加導入した7つの大腸菌組み換え株を作製したことが記載されている([0191] 実施例7)。
「pACYCDuet-1::Smr1」を導入した組換え株「Ec/Smr1_ADA」、
「pACYCDuet-1::Snm1」を導入した組換え株「Ec/Snm1_ADA」、
「pACYCDuet-1::Spl1」を導入した組換え株「Ec/Spl1_ADA」、
「pACYCDuet-1::Spe1」を導入した組換え株「Ec/Spe1_ADA」、
「pACYCDuet-1::Sur1」を導入した組換え株「Ec/Sur1_ADA」、
「pACYCDuet-1::Ssp1」を導入した組換え株「Ec/Ssp1_ADA」、
「pACYCDuet-1::Slq1」を導入した組換え株「Ec/Slq1_ADA」
そして、これらの7つの大腸菌組み換え株は、いずれもアジピン酸を産生することが記載されている([0198] 実施例8表11)。
したがって、甲1には、以下の発明が記載されている(以下、「甲1発明」という。)。
「アジピン酸を産生することができる大腸菌組換え株であって、以下の遺伝子:
大腸菌株BL21(DE3)にアセチル-CoAおよびスクシニル-CoAから3-オキソアジピル-CoAおよび補酵素Aを生成する反応(反応A)を触媒するPseudomonas putidaT2440株のアシルトランスフェラーゼ遺伝子pcaF、
Serratia属各株由来の3-オキソアジピル-CoAを還元して3-ヒドロキシアジピル-CoAを生成する酵素の遺伝子、
3-ヒドロキシアジピル-CoAから2,3-デヒドロアジピル-CoAを生成する反応(反応C)を触媒するPseudomonasputida KT2440株のエノイル-CoAヒドラターゼ遺伝子paaF、並びに、
2,3-デヒドロアジピル-CoAからアジピル-CoAを生成する反応(反応D)を触媒するAcinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaA、アジピル-CoAからアジピン酸を生成する反応(反応G)を触媒するAcinetobacter baylyi ADP1株のCoAトランスフェラーゼ遺伝子dcaIおよびdcaJ
を組み込んだ、
アジピン酸を産生することができる7つの大腸菌組換え株「Ec/Smr1_ADA」、「Ec/Snm1_ADA」、「Ec/Spl1_ADA」、「Ec/Spe1_ADA」、「Ec/Sur1_ADA」、「Ec/Ssp1_ADA」、「Ec/Slq1_ADA」。」
3.申立理由1(進歩性)の検討
(1)本件発明1と甲1発明の対比、判断
ア.本件発明1と甲1発明の対比
本件発明1と甲1発明(2.イ)を対比する。
甲1発明の「2,3-デヒドロアジピル-CoAからアジピル-CoAを生成する反応(反応D)を触媒するAcinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaA」は、本件発明1の「2,3-デヒドロアジピル-CoAを還元してアジピルCoAに変換する酵素活性を有するタンパク質をコードする外来性遺伝子」に相当し、
甲1発明の「アジピル-CoAからアジピン酸を生成する反応(反応G)」は、本件発明1の「アジピルCoAを経由してC6化合物に到る生産経路」に相当し、
甲1発明の「3-ヒドロキシアジピル-CoAから2,3-デヒドロアジピル-CoAを生成する反応(反応C)を触媒するPseudomonasputida KT2440株のエノイル-CoAヒドラターゼ遺伝子paaF」は、本件発明1の「3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼをコードする外来性遺伝子」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、
「2,3-デヒドロアジピル-CoAを還元してアジピルCoAに変換する酵素活性を有するタンパク質をコードする外来性遺伝子を含む組換え微生物であって、
前記組換え微生物が、アジピルCoAを経由してC6化合物に到る生産経路を有し、
前記C6化合物が、アジピン酸であり、
前記組換え微生物が、大腸菌(Escherichia coli)であり、
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼをコードする外来性遺伝子をさらに含む、
組換え微生物。」で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
本件発明1では、
2,3-デヒドロアジピル-CoAを還元してアジピルCoAに変換する酵素活性を有するタンパク質をコードする、
「前記外来性遺伝子が、
(i)配列番号8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(ii)配列番号8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すアミノ酸配列に対して1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(iii)配列番号57、58、59、60、61、62、63、64または65に示すポリヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列からなるDNA、
(iv)配列番号57、58、59、60、61、62、63、64または65に示すポリヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、
(v)配列番号57、58、59、60、61、62、63、64または65に示すポリヌクレオチド配列に相補的なポリヌクレオチド配列からなるDNAと、0.1xSSC、0.1%SDS、60°Cの緊縮条件下でハイブリダイズするDNA、または
(vi)配列番号57、58、59、60、61、62、63、64または65に示すポリヌクレオチド配列の縮重異性体からなるDNA
であ」ることが規定されているのに対し、
甲1発明では、2,3-デヒドロアジピル-CoAを還元してアジピルCoAに変換する酵素活性を有するタンパク質をコードする、外来性遺伝子として上記(i)~(vi)に規定された核酸配列番号57~65のいずれかによってコードされるアミノ酸配列番号8~16のいずれかとは、当審による職権調査により10%未満の配列同一性しか有さないことが明らかとなった「Acinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaA」をコードするDNAである点(相違点1)で相違する。
イ.相違点1の判断
甲1には、
「アジピル-CoAを生成する反応Dを触媒する酵素は、例えば、エノイル-CoAレダクターゼなどを用いることができる。エノイル-CoAレダクターゼとしては、EC番号による分類上の限定は特にないが、EC番号1.3.-.-に分類されるエノイル-CoAレダクターゼが好ましく、具体的にはtrans-2-エノイル-CoAレダクターゼとしてEC1.3.1.44に分類される酵素、アシル-CoAデヒドロゲナーゼとしてEC1.3.8.7に分類される酵素が挙げられる。これらの具体例は、例えば特表2011-515111、J Appl Microbiol. 2015Oct;119(4):1057-63.などに開示されているが、中でもEuglena gracilis Z株由来のTER(UniProtKB:Q5EU90)、Thermobifida fusca YX株由来のTfu_1647(NCBI-ProteinID:AAZ55682)、Acinetobacter baylyi ADP1株由来のDcaA(NCBI-ProteinID:AAL09094.1)などを好ましく用いることができる。
エノイル-CoAレダクターゼが、2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とした場合、アジピル-CoAが生成する活性を有することは、α-ヒドロムコン酸から酵素反応で調製した2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質として、精製エノイル-CoAレダクターゼを用いて2,3-デヒドロアジピル-CoAの還元に伴うNADHの減少量を測定することで確認できる。」([0094] [0095])と記載されている。
しかしながら、trans-2-エノイル-CoAレダクターゼとは、-COOH基から数えて2番目の炭素に二重結合があるエノイル-CoAに対して酸化還元酵素として働くという程度の意味しかなく、基質特異性の異なる膨大な酵素群を包含するものである。
そして、実際に個々のtrans-2-エノイル-CoAレダクターゼが2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とすることができ、アジピル-CoAが生成する活性を有することが明らかでない限り、当業者が2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とし、アジピル-CoAを生成させる工程におけるエノイル-CoAレダクターゼとして採用しようと動機付けられることはない。
そして、甲1に記載された特表2011-515111号公報、J Appl Microbiol.,2015 Oct;119(4):1057-63のいずれにも、配列番号8、9、10、11、12、13、14、15または16に示すアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質又は配列番号57、58、59、60、61、62、63、64または65に示すポリヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質を用いることは記載されていない。
甲2には、本件発明1に規定される配列番号8に示されるアミノ酸配列と100%の同一性を有する仮想タンパク質B9J08_005027(DEFINITION欄)が記載されており、当該配列はゲノムアセンブリによって得られた概念的翻訳(理論上の翻訳)によって得られたものであること(COMMENT Method欄)、2-エノイルチオエステルレダクターゼと予想されること(FEATURES Region 30..388欄)が記載されている。
甲2に記載されたアミノ酸配列は、DNAシーケンシングで得られた多数の短いヌクレオチド断片をコンピュータープログラム(アセンブラ)を使ってつなぎ合わせ、元のゲノムの塩基配列を、細胞内でのスプライシングなどの複雑な制御機構を無視して予想したことに基づくものであって、実際に当該仮想タンパク質が現実に転写され翻訳されるタンパク質であったこと、真に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことは記載されていないし、2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とできることも記載されておらず、甲1で用いられているAcinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaAとの化学構造の全体的な類似性もないから、甲1に接した当業者がアジピル-CoAを生成する反応Dを触媒する酵素として、実際に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことが明らかにされた酵素やそのように予想される極めて多数の酵素の中から甲2に記載の詳細な基質が明らかにされていない仮想タンパク質とされるものを採用しようと動機付けられるとはいえない。
甲3には、本件発明1に規定される配列番号9に示されるアミノ酸配列と100%の同一性を有するタンパク質が記載されており、トランスクリプトーム解析により、トランス-2-エノイル-CoAレダクターゼの可能性があるタンパク質であること(DEFINITION欄、REFERENCE TITLE欄)が記載されている。
甲3に記載されたアミノ酸配列は、トランスクリプトーム解析によって機能を予想したことに基づくものであって、実際に当該仮想タンパク質が現実に翻訳されるタンパク質であったこと、真にトランス-2-エノイル-CoAレダクターゼであったことは記載されていないし、2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とできることも記載されておらず、甲1で用いられているAcinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaAとの化学構造の全体的な類似性もないから、甲1に接した当業者がアジピル-CoAを生成する反応Dを触媒する酵素として、実際にトランス-2-エノイル-CoAレダクターゼであったことが明らかにされた酵素やそのように予想される極めて多数の酵素の中から甲3に記載の詳細な基質が明らかにされていない仮想タンパク質とされるものを採用しようと動機付けられるとはいえない。
甲4には、本件発明1に規定される配列番号10に示されるアミノ酸配列と100%の同一性を有するタンパク質が記載されており、当該配列はゲノムアセンブリによって得られた概念的翻訳(理論上の翻訳)によって得られたものであること(COMMENT Method欄)、2-エノイルチオエステルレダクターゼと予想されること(FEATURES Region 20..372欄)が記載されている。
甲4に記載されたアミノ酸配列は、DNAシーケンシングで得られた多数の短いヌクレオチド断片をコンピュータープログラム(アセンブラ)を使ってつなぎ合わせ、元のゲノムの塩基配列を予想した上、細胞内でのスプライシングなどの複雑な制御機構を無視して予想したことに基づくものであって、実際に当該仮想タンパク質が現実に転写され翻訳されるタンパク質であったこと、真に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことは記載されていないし、2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とできることも記載されておらず、甲1で用いられているAcinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaAとの化学構造の全体的な類似性もないから、甲1に接した当業者がアジピル-CoAを生成する反応Dを触媒する酵素として、実際に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことが明らかにされた酵素やそのように予想される極めて多数の酵素の中から甲4に記載の詳細な基質が明らかにされていない仮想タンパク質とされるものを採用しようと動機付けられるとはいえない。
甲5には、本件発明1に規定される配列番号11に示されるアミノ酸配列と100%の同一性を有するタンパク質が記載されており、当該配列は概念的翻訳(理論上の翻訳)によって得られたものであること(COMMENT Method欄)、ヒスチジンキナーゼレギュレーターハイブリッドプロテインと予想されること(DEFINITION欄)が記載されている。
甲5に記載されたアミノ酸配列は、細胞内でのスプライシングなどの複雑な制御機構を無視して予想したことに基づくものであって、実際に当該仮想タンパク質が現実に転写され翻訳されるタンパク質であったことは記載されておらず、2-エノイルチオエステルレダクターゼと予想されることも記載されていないし、2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とできることも記載されておらず、甲1で用いられているAcinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaAとの化学構造の全体的な類似性もないから、甲1に接した当業者がアジピル-CoAを生成する反応Dを触媒する酵素として、甲5に記載のヒスチジンキナーゼレギュレーターハイブリッドプロテインとされる仮想タンパク質を採用しようと動機付けられるとはいえない。
甲6には、本件発明1に規定される配列番号12に示されるアミノ酸配列と100%の同一性を有する仮想タンパク質THITE_2111907が記載されており(DEFINITION欄)、当該配列は概念的翻訳(理論上の翻訳)によって得られたものであること(COMMENT Method欄)、2-エノイルチオエステルレダクターゼと予想されること(FEATURES Region 62..440欄)が記載されている。
甲6に記載されたアミノ酸配列は、細胞内でのスプライシングなどの複雑な制御機構を無視して予想したことに基づくものであって、実際に当該仮想タンパク質が現実に転写され翻訳されるタンパク質であったこと、真に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことは記載されていないし、2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とできることも記載されておらず、甲1で用いられているAcinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaAとの化学構造の全体的な類似性もないから、甲1に接した当業者がアジピル-CoAを生成する反応Dを触媒する酵素として、実際に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことが明らかにされた酵素やそのように予想される極めて多数の酵素の中から甲6に記載の詳細な基質が明らかにされていない仮想タンパク質とされるものを採用しようと動機付けられるとはいえない。
甲7には、本件発明1に規定される配列番号13に示されるアミノ酸配列と100%の同一性を有するNONE様タンパク質が記載されており(DEFINITION欄)、当該配列は概念的翻訳(理論上の翻訳)によって得られたものであること(COMMENT Method欄)、2-エノイルチオエステルレダクターゼと予想されること(FEATURES Region 57..436欄)が記載されている。
甲7に記載されたアミノ酸配列は、細胞内でのスプライシングなどの複雑な制御機構を無視して予想したことに基づくものであって、実際に当該仮想タンパク質が現実に転写され翻訳されるタンパク質であったこと、真に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことは記載されていないし、2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とできることも記載されておらず、甲1で用いられているAcinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaAとの化学構造の全体的な類似性もないから、甲1に接した当業者がアジピル-CoAを生成する反応Dを触媒する酵素として、実際に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことが明らかにされた酵素やそのように予想される極めて多数の酵素の中から甲7に記載の詳細な基質が明らかにされていない仮想タンパク質とされるものを採用しようと動機付けられるとはいえない。
甲8には、本件発明1に規定される配列番号14に示されるアミノ酸配列と100%の同一性を有する無名のタンパク質製造物が記載されており(DEFINITION欄)、2-エノイルチオエステルレダクターゼと予想されること(FEATURES Region 49..419欄)が記載されている。
甲8に記載されたアミノ酸配列は、細胞内でのスプライシングなどの複雑な制御機構を無視して予想したことに基づくものであって、実際に当該仮想タンパク質が現実に転写され翻訳されるタンパク質であったこと、真に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことは記載されていないし、2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とできることも記載されておらず、甲1で用いられているAcinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaAとの化学構造の全体的な類似性もないから、甲1に接した当業者がアジピル-CoAを生成する反応Dを触媒する酵素として、実際に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことが明らかにされた酵素やそのように予想される極めて多数の酵素の中から甲8に記載の詳細な基質が明らかにされていない仮想タンパク質とされるものを採用しようと動機付けられるとはいえない。
甲9には、本件発明1に規定される配列番号15に示されるアミノ酸配列と100%の同一性を有するアルコールデヒドロゲナーゼスーパーファミリータンパク質が記載されており(DEFINITION欄)、当該配列はゲノムアセンブリによって得られた概念的翻訳(理論上の翻訳)によって得られたものであること(COMMENT Method欄)、2-エノイルチオエステルレダクターゼと予想されること(FEATURES Region 53..421欄)が記載されている。
甲9に記載されたアミノ酸配列は、DNAシーケンシングで得られた多数の短いヌクレオチド断片をコンピュータープログラム(アセンブラ)を使ってつなぎ合わせ、元のゲノムの塩基配列を予想した上、細胞内でのスプライシングなどの複雑な制御機構を無視して予想したことに基づくものであって、実際に当該仮想タンパク質が現実に転写され翻訳されるタンパク質であったこと、真に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことは記載されていないし、2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とできることも記載されておらず、甲1で用いられているAcinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaAとの化学構造の全体的な類似性もないから、甲1に接した当業者がアジピル-CoAを生成する反応Dを触媒する酵素として、実際に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことが明らかにされた酵素やそのように予想される極めて多数の酵素の中から甲9に記載の詳細な基質が明らかにされていない仮想タンパク質とされるものを採用しようと動機付けられるとはいえない。
甲10には、本件発明1に規定される配列番号16に示されるアミノ酸配列と100%の同一性を有するエノイルアシルキャリアタンパク質レダクターゼ(DEFINITION欄)が記載されており、2-エノイルチオエステルレダクターゼと予想されること(FEATURES Region 44..402欄)、DNA断片群を重ね合わせてできるコンセンサス配列であるコンティグに基づくものであること(FEATURES source /note欄)が記載されている。
甲10に記載されたアミノ酸配列は、DNAシーケンシングで得られた多数の短いヌクレオチド断片をコンピュータープログラム(アセンブラ)を使ってつなぎ合わせ、元のゲノムの塩基配列を予想した上、細胞内でのスプライシングなどの複雑な制御機構を無視して予想したことに基づくものであって、実実際に当該仮想タンパク質が現実に転写され翻訳されるタンパク質であったこと、真に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことは記載されていないし、2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とできることも記載されておらず、甲1で用いられているAcinetobacter baylyi ADP1株由来のdcaAとの化学構造の全体的な類似性もないから、甲1に接した当業者がアジピル-CoAを生成する反応Dを触媒する酵素として、実際に2-エノイルチオエステルレダクターゼであったことが明らかにされた酵素やそのように予想される極めて多数の酵素の中から甲10に記載の詳細な基質が明らかにされていない仮想タンパク質とされるものを採用しようと動機付けられるとはいえない。
甲11の請求項9には、ジアミンがヘキサメチレンジアミンであること、甲11の図10には、アジピルCoAからヘキサメチレンジアミンを生成する経路、甲11の請求項147には、宿主微生物が大腸菌であること、明細書第0020及び0021段落には3-オキソアジピルCoAチオラーゼを有する態様、請求項142及び143には、カルボン酸レダクターゼの一種であるアジピン酸レダクターゼを有する態様、請求項143~145にはトランスアミナーゼを有する態様、請求項144には3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼを有する態様、請求項144及び明細書0022、及び0154段落にはアルコールデヒドロゲナーゼを有する態様が、それぞれ記載されている。
しかしながら、甲11には(i)~(vi)に規定された核酸配列番号57~65のいずれかによってコードされるアミノ酸配列番号8~16及びこれらアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、これらアミノ酸配列に対して1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、これらポリヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列からなるDNA、これらポリヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、これらポリヌクレオチド配列に相補的なポリヌクレオチド配列からなるDNAと、0.1xSSC、0.1%SDS、60°Cの緊縮条件下でハイブリダイズするDNA、またはこれらポリヌクレオチド配列の縮重異性体からなるDNAのいずれも記載も示唆もない。
したがって、甲1及び甲11に接した当業者が相違点1に係るタンパク質をコードするDNAを採用しようと動機付けられるとはいえない。
甲12には、6-アミノヘキサン酸経路酵素、6-ヒドロキシヘキサン酸経路酵素、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)経路酵素、1,6-ヘキサンジオール経路酵素、1,6-ヘキサンジオール経路酵素の群からの酵素をコードする少なくとも1つの外来性核酸を含む天然に存在しない微生物が記載されている(甲12の請求項1)。そして、甲12の図5には、アジピルCoAを起点としてヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオール、6-アミノヘキサン酸、6-アミノ-1-ヘキサノールおよび6-ヒドロキシヘキサン酸を生成する経路が記載されている。
さらに、甲12の請求項51、52、54及び55には、第一級アルコールデヒドロゲナーゼ、第二級アルコールデヒドロゲナーゼ、カルボン酸レダクターゼ及びトランスアミナーゼを有する態様が記載されており、明細書第0252段落には、さらにアルコールデヒドロゲナーゼを有する態様におけるアルコールデヒドロゲナーゼの例として3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドロゲナーゼが記載されている。
しかしながら、甲12には(i)~(vi)に規定された核酸配列番号57~65のいずれかによってコードされるアミノ酸配列番号8~16及びこれらアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、これらアミノ酸配列に対して1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、これらポリヌクレオチド配列と90%以上の配列同一性を有するポリヌクレオチド配列からなるDNA、これらポリヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列に対して1~3個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA、これらポリヌクレオチド配列に相補的なポリヌクレオチド配列からなるDNAと、0.1xSSC、0.1%SDS、60°Cの緊縮条件下でハイブリダイズするDNA、またはこれらポリヌクレオチド配列の縮重異性体からなるDNAのいずれも記載も示唆もない。
したがって、甲1及び甲12に接した当業者が相違点1に係るタンパク質をコードするDNAを採用しようと動機付けられるとはいえない。
ウ.申立人の主張について
申立人は、上記相違点1は、全て甲第2号証~甲第10号証にそれぞれ記載されており、甲1に記載された反応Dの酵素を、甲第2号証~甲第10号証に記載された、同じ機能を有する酵素に置き換えることは、当業者が容易に行うことができる設計的事項にすぎないと主張する。
しかしながら、上記イで述べたとおり、甲第2号証~甲第10号証に記載されたものは、同じ機能を有すること、現実にタンパク質として存在していることが実験的に確認された酵素ではなく、DNAシーケンシングで得られた多数の短いヌクレオチド断片をコンピュータープログラム(アセンブラ)を使ってつなぎ合わせ、元のゲノムの塩基配列を予想した上、細胞内でのスプライシングなどの複雑な制御機構を無視して予想したに過ぎないものであって、かつ仮にtrans-2-エノイル-CoAレダクターゼであると予想されていたとしても、2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質とできるか否かは、甲1の[0095]段落に記載されるとおり、α-ヒドロムコン酸から酵素反応で調製した2,3-デヒドロアジピル-CoAを基質として、精製エノイル-CoAレダクターゼを用いて2,3-デヒドロアジピル-CoAの還元に伴うNADHの減少量を測定することといったスクリーニング手法を経ないと明らかにはならず、甲第2号証~甲第10号証の記載からでは明らかではないのであるから、甲1に記載された反応Dの酵素と、甲第2号証~甲第10号証に記載された仮想タンパク質とが基質を含め同じ機能を有する酵素であることは示されていないし、多数のtrans-2-エノイル-CoAレダクターゼであると予想されている仮想タンパク質を含めた多数のものからこれらを選択し置き換えることに動機付けがあったという根拠も見出すことはできない。
エ.小括
以上のとおり、本件発明1は、甲1発明、すなわち、甲1に記載された発明に甲2~甲12のいずれかの記載事項を組み合わせても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1に記載された発明に、それぞれ甲2~甲10の記載事項を組み合わせても当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5.申立理由2(サポート要件)の検討
(1)サポート要件の考え方
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件発明が解決しようとする課題
本件発明1~6の記載及び本件明細書の【0013】の記載によると、本件発明の課題は、2,3-デヒドロアジピル-CoA還元酵素活性を有する組換え微生物、及び、C6化合物の効率的な製造方法を提供することにあると認められる(本ア)。
(3)本件発明1のサポート要件の判断
本件明細書の実施例Aには、大腸菌株BL21(DE3)に、大腸菌ゲノムDNAからクローニングしたPaaJ(Ec)、PaaH(Ec)共発現プラスミドとして「paaJ(Ec)-paaH(Ec)-pRSFDuet」(【0170】)、大腸菌ゲノムDNAからクローニングしたPaaF(Ec)発現プラスミド「paaF(L3)-pETDuet」(【0172】)にアミノ酸配列番号8~16のいずれかをコードするDNAを含む2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼ候補タンパク質の共発現プラスミドを得て(【0177】)、表A-3のとおりに導入して、形質転換体ADA3~11を得たこと(【0184】)、いずれも2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼ酵素活性を示し、表A-5のとおりにアジピン酸が産生されたこと(【0193】)が記載されている。
組換え微生物として大腸菌(Escherichia coli)を用いることにより、本件明細書の図16のとおり大腸菌自体が産生し内在するスクシニル-CoAとアセチル-CoA、PaaJ、PaaHにより3-ヒドロキシアジピルCoAを製造できること、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼをコードする外来性遺伝子及び(i)~(vi)に特定された2,3-デヒドロアジピル-CoAを還元してアジピルCoAに変換する酵素活性を有するタンパク質をコードする外来性遺伝子、大腸菌に内在する酵素によって3-ヒドロキシアジピルCoAからアジピン酸を製造できることが理解できる。
また、形質転換体ADA3~11のうち、ADA6にさらにMycobacterium abscessusのカルボン酸レダクターゼMaCarの283番目のトリプトファン残基をアルギニン残基に、303番目のアラニン残基をメチオニン残基に置換した変異体MaCar(m)をコードするDNAを含むプラスミド、Eshcherichia coliのアルコールデヒドロゲナーゼAhr(配列番号32)をコードするプラスミドで形質転換したHDO1が表A-6のとおりに6-ヒドロキシヘキサン酸および1,6-ヘキサンジオールを生成したこと(【0198】)、ADA6にさらにカルボン酸レダクターゼ変異体MaCar(m)をコードするDNAを含むプラスミド、及びEshcherichia coliのプトレシンアミノトランスフェラーゼYgjG(配列番号27)の一部のアミノ酸配列を置換した変異型YgjG(m)をコードするプラスミドで形質転換したHMD1が表A-12のとおりにヘキサメチレンジアミンを生成したこと(【0223】)が記載されている。
また、ADA6にさらにカルボン酸レダクターゼ変異体MaCar(m)、変異型プトレシンアミノトランスフェラーゼYgjG(m)をコードするプラスミドで形質転換したHMD1が、ヘキサメチレンジアミンを生成したことは、本件明細書の図16を参酌すると、アジピン酸からカルボン酸レダクターゼによるステップGによりアジピン酸セミアルデヒド、アジピン酸セミアルデヒドからプトレシンアミノトランスフェラーゼによるステップMにより6-アミノヘキサン酸、6-アミノヘキサン酸からカルボン酸レダクターゼによるステップQにより6-アミノ-1ヘキサナール、6-アミノ-1ヘキサナールからプトレシンアミノトランスフェラーゼによるステップSによりヘキサメチレンジアミンが合成されたことを意味し、6-アミノヘキサン酸についてもステップMを経ることで中間体として合成されている蓋然性が高く、これを否定すべき根拠も見出すことができない。
また、ADA6にさらにカルボン酸レダクターゼ変異体MaCar(m)、アルコールデヒドロゲナーゼAhrをコードするプラスミドで形質転換したHDO1が、6-ヒドロキシヘキサン酸および1,6-ヘキサンジオールを生成したことは、本願明細書の図16を参酌すると、アジピン酸からカルボン酸レダクターゼによるステップGによりアジピン酸セミアルデヒド、アジピン酸セミアルデヒドからアルコールデヒドロゲナーゼによるステップHにより6-ヒドロキシヘキサン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸からカルボン酸レダクターゼによるステップJにより6-オキソ-1ヘキサナール、6-オキソ-1ヘキサナールからアルコールデヒドロゲナーゼによるステップLにより1,6-ヘキサンジオールが合成されたことを意味し、変異型プトレシンアミノトランスフェラーゼYgjG(m)が基質の異なる反応M及びSの双方を触媒すること、アルコールデヒドロゲナーゼAhrが基質の異なる反応H及びLの双方を触媒することを考慮すると、基質の異なる反応M及びSの双方を触媒する変異型プトレシンアミノトランスフェラーゼYgjG(m)が反応Nを触媒し、基質の異なる反応H及びLの双方を触媒するアルコールデヒドロゲナーゼAhrが反応Rについても触媒する蓋然性が高く、これを否定すべき根拠も見出すことができない。
以上の記載からすると、本件発明1において、大腸菌、3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼをコードする外来性遺伝子及び(i)~(vi)に特定された2,3-デヒドロアジピル-CoAを還元してアジピルCoAに変換する酵素活性を有するタンパク質をコードする外来性遺伝子を用い、アジピルCoAを経由してアジピン酸、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオール、6-アミノヘキサン酸、6-アミノ-1-ヘキサノールおよび6-ヒドロキシヘキサン酸からなる群から選択される少なくとも一つのC6化合物に到る生産経路を有するように内在酵素や形質転換手法を適宜組合わせることにより、大腸菌をアジピルCoAを経由してC6化合物に到る生産経路を有するようにしておくことができることが当業者に理解できるといえる。
そうすると、本件明細書には、(i)~(vi)に特定された「2,3-デヒドロアジピル-CoAを還元してアジピルCoAに変換する酵素活性を有するタンパク質をコードする外来性遺伝子を含む」組換え微生物であって、
前記組換え微生物が、大腸菌(Escherichia coli)であり、
3-ヒドロキシアジピルCoAデヒドラターゼをコードする外来性遺伝子をさらに含む、
組換え微生物。」であることにより、「アジピルCoAを経由してC6化合物に到る生産経路を有し、前記C6化合物が、アジピン酸、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオール、6-アミノヘキサン酸、6-アミノ-1-ヘキサノールおよび6-ヒドロキシヘキサン酸からなる群から選択される少なくとも一つ」であることができるような組換え微生物の効果も示されているといえ、本件発明1は、当業者が、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、上記(2)の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
(4)申立人の主張について
申立人は、本件発明の目的は、本件特許掲載公報第0013段落に記載されているとおり、「C6化合物の効率的な製造方法を提供すること」であるところ、本件発明のかなりの実施例は、比較例よりもアジピン酸の生産性が低く、記載されている目的を達成しない発明が包含されているから、本件発明は、明細書に記載された発明ではなく、アジピン酸生産での比較例1および2で2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼの比較対象として利用されたDcaA(Ab)およびTer(Ct)を利用した6-ヒドロキシヘキサン酸および1,6-ヘキサンジオールの生産の比較例がないため、実施例10および11の結果が、本件発明の目的を達成しているかどうか不明であると主張している(主張1)。
また、申立人は、C6化合物としては、アジピン酸の他に、ヘキサメチレンジアミン、1,6-ヘキサンジオール、6-アミノヘキサン酸、6-アミノ-1-ヘキサノールおよび6-ヒドロキシヘキサン酸が規定されており、本件発明に相当する発明Aとして本件特許掲載公報の実施例に記載があるのは、6-ヒドロキシヘキサン酸および1,6-ヘキサンジオールの生産に関する実施例10、ヘキサメチレンジアミンの生産に関する実施例11のみであって、これらの実施例にて2,3-デヒドロアジピル-CoAを還元してアジピルCoAに変換する酵素活性を有する2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼとして利用されているのは、構成要件2の配列番号11のアミノ酸配列を有するTer(mtm)のみであり、Ter(mtm)以外の2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼを利用した実施例がないから、発明AにおいてTer(mtm)以外の2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼを利用した場合にこれら物質を生産できるかどうか不明であると主張している(主張2)。
また、6-アミノヘキサン酸および6-アミノ-1-ヘキサノールについては発明Aとしての実施例はなく、発明Aとしてそもそもこれら物質を生産できるかどうか不明であると主張している(主張3)。
主張1について検討する。
本件組換え微生物に係る特許発明の目的は、本件特許掲載公報第0013段落に記載されているとおり、「2,3-デヒドロアジピル-CoA還元酵素活性を有する組換え微生物、及び、C6化合物の効率的な製造方法を提供すること」である。
本件発明の発明特定事項においても、形質転換体ADA1~2で示された特定の比較例よりも「アジピン酸の生産量」又はそれ以外のC6化合物の生産量が高いことを規定する事項は存在せず、これら比較例よりも「アジピン酸の生産量」が高いことを発明の課題とするものではないので、特許請求の範囲において、比較例よりも「アジピン酸の生産量」が高くなる「2,3-デヒドロアジピル-CoA還元酵素活性」を有するタンパク質を導入したものに限定されていないとしても、特許請求の範囲において過大な記載をしていることにはならず、本件発明がサポート要件を満たさないとすることはできない。
したがって、主張1を採用することはできない。
主張2について検討する。
Ter(mtm)以外の2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼの大腸菌への導入により大腸菌形質転換体ADA3~ADA5、ADA7~ADA11がアジピン酸を産生できるようになることは明細書【0193】表A-5に記載のとおりであり、ステップEの反応は、大腸菌の内因性酵素によって進行することも記載されているから大腸菌形質転換体ADA3~ADA5、ADA7~ADA11に導入されたTer(mtm)以外のいずれのものも2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼ活性を有していることは明らかであり、Ter(mtm)を用いたADA6と同様にアジピン酸を合成できることが確認できている。
そして、アジピン酸から6-ヒドロキシヘキサン酸および1,6-ヘキサンジオールの生産、ヘキサメチレンジアミンの生産は、図16の記載を踏まえるとカルボン酸レダクターゼ、アミノトランスフェラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ等を適宜組合わせることによって可能であると理解することができ、本件発明がサポート要件を満たさないとすることはできない。
したがって、主張2を採用することはできない。
主張3について検討する。
(2)で述べたとおり、6-アミノヘキサン酸はヘキサメチレンジアミンの産生経路上にあり、測定や確認されていないとしても、産生されている蓋然性は高いといえる。また6-アミノ-1-ヘキサノールについても実施例で用いられた酵素の導入を組合わせるだけで産生される蓋然性が高いといえる。
したがって、具体的に製造を確認した実施例として記載されていないとしてもこれら物質を生産できないと当業者が理解するとはいえず、主張3を採用することはできない。
したがって、上記の申立人の主張は、いずれも理由がない。
(5)小括
請求項1の記載はサポート要件を満たすものであるから、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2~6の記載も、同様の理由により、サポート要件を満たすものである。
したがって、申立理由2(サポート要件)は、理由がない。
以上のとおり、本件特許に係る特許異議申立てにおいて申立人が主張する申立理由は、いずれも理由がないから、本件発明1~6に係る特許は、取り消すことができない。
ほかに、本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由も発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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