結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2023001632 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、令和4年3月2日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和4年 7月28日付け:拒絶理由通知書
令和4年 9月12日 :意見書の提出
令和4年12月13日付け:拒絶査定
令和5年 1月31日 :審判請求書の提出
令和6年12月11日付け:審尋
本願商標は、「エアコン取付工事士」の文字を横書きしてなり、第16類、第37類及び第41類に属する別掲1に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として登録出願されたものである。
原査定は、「本願商標は、「エアコン取付工事士」の文字を普通に用いられる方法で表してなるところ、その構成中の「士」の文字は、「特別の資格・技術を身につけた人。」の意味を有する語であり、また、本願指定役務を扱う業界において、「エアコン取付」及びこれに通ずる「エアコン取り付け」の文字は、字義どおりエアコンを取り付けることを指す語として普通に用いられていることから(別掲2参照)、本願商標は、全体として「エアコンを取り付けることに関する特別の技術を身につけた人」ほどの意味合いを容易に理解、認識させるものといえる。そうすると、本願商標を、その指定役務に使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、「エアコンを取り付けることに関する特別の技術を身につけた人に関する役務」であることを認識するにとどまるから、本願商標は、単に役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標にすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、その指定商品及び上記意味合いに照応する役務以外の指定役務に使用するときは、商品の品質・役務の質の誤認を生じるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願商標を拒絶したものである。
当審において、令和6年12月11日付け審尋により、別掲3ないし別掲5の事実を示した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとの合議体の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、請求人に対し、意見を求めた。
しかしながら、相当の期間を経過するも、請求人からは、何らの応答もない。
(1)商標法第3条第1項第3号について
商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、指定役務に関する需要者又は取引者が当該商標に接した場合、これをどのように認識し理解するかが重要なのであるから、需要者又は取引者が、役務の質、すなわち、役務の内容を表示したものと一般に認識することをもって足り、それ以上に、現実にその役務が実施されていることまで必要ということはできないと解される(知財高裁平成22年5月19日判決同21年(行ケ)第10351号)。
(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号の該当性について
本願商標は、上記2のとおり「エアコン取付工事士」の文字を横書きしてなるところ、「エアコン取付」及びこれに通ずる「エアコン取り付け」の文字は、字義どおり「エアコンを取り付けること」を指す語として、理解されるにとどまるものである。
また、その構成中の「士」の文字は、「特別の資格・技術を身につけた人。」の意味を有する語として、資格名称等に使用されている語であることは、原審における拒絶理由において教示した証拠(別掲2参照)のとおりである。
そして、「エアコン」の取引にあたっては、その設置を、需要者が自ら行うことはほぼ皆無であり、購入した店を通じて、専門家に依頼するのが一般であり、別掲3のとおり、エアコン販売を取り扱う者においても、その作業を指称して「エアコン取付け」、「エアコン取り付け」又は「エアコン取付」などの表現で表している実情がある。また、エアコン取付けに当たっては、特別な資格を有さなくとも行うことができるとされる一方、繊細な部品や冷媒ガスの取扱いなど、エアコンに関する専門的な知識や技術を有した者又は専門業者が一般に取り扱っていることは、一般需要者においても、知られているところである。
また、別掲4によれば、本願商標の構成のように、「工事の対象機器名」、「工事の内容表記」及び「工事を行うものを表す語」を組み合わせて、「当該工事を行う者」を示す語として広く使用されている実情がみられる。
さらに、別掲5のとおり、出版を主とする業界において、「〇〇士」の語がタイトルに用いられている実情がみられる。
これらの実情を踏まえると、本願商標は、全体として「エアコンを取り付けることに関する特別の技術を身につけた人」ほどの意味合いを容易に理解、認識させるにすぎず、本願商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、「エアコンを取り付けることに関する特別の技術を身につけた人に関する商品」(例えば「エアコンを取り付けることに関する特別の技術を身につけた人に関する書籍」等)であることを認識するにとどまるから、本願商標は、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標にすぎず、本願商標をその指定役務に使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、「エアコンを取り付けることに関する特別の技術を身につけた人に関する役務」(例えば「エアコンを取り付けることに関する特別の技術を身につけた人によるエアコンの設置工事」、「エアコンを取り付けることに関する特別の技術を身につけた人による知識の教授」等)であることを認識するにとどまるから、本願商標は、役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標にすぎないと判断するのが相当である。
また、上記2のとおり、本願商標は、「エアコン取付工事士」の文字を横書きしてなるものであり、その態様上顕著な特徴は認められない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、上記意味合いに照応する商品及び役務以外の指定商品及び指定役務に使用するときは、商品の品質・役務の質の誤認を生じるおそれがあるため、同法第4条第1項第16号に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標は、辞書等の掲載もなく、請求人が新しく創作した造語(資格名)であり、また、当該業界において、当該文字が、役務の質を表示するものとして、取引上、普通に使用されていると認めるに足りる事実はなく、全体をもって、一種の造語を表したものとして認識されると主張する。
しかしながら、上記(2)のとおり、各語の語義及び別掲2ないし別掲5の取引の実情に鑑みれば、本願商標からは、「エアコンを取り付けることに関する特別の技術を身につけた人」の意味合いが理解、認識されるというべきであり、全体を持って一種の造語を表したということはできない。
イ 請求人は、本願の指定役務を取り扱う業界において、本願商標に類似する資格名が現存せず、また、請求人以外の者が、本願商標を使用している事実も存しない現況において、複数の既成語の組み合わせからなると認識、把握できる本願商標が、直ちに本願商標の指定役務の質を表示する根拠がないと主張する。
しかしながら、上記(1)のとおり、商標法第3条第1項第3号は、取引者、需要者に指定役務の質等を示すものとして認識され得る表示態様の商標につき、それ故に登録を受けることができないとしたものであって、当該表示態様が役務の質等を表すものとして必ず使用されるものであるとか、現実に使用されている等の事実は、同号の適用において必ずしも要求されないものと解されることからすれば、仮に本願商標に類似する資格名が存在しないことや請求人以外の者が本願商標を使用している事実が存しないとしても、本号の適用の判断は、取引者、需要者が本願指定役務との関係において、どのように認識するかをもって、判断すべきものといえる。そうすると、本願商標からは「エアコンを取り付けることに関する特別の技術を身につけた人」の意味合いが一般に認識されるというべきであるから、「エアコン取付工事士」の文字が請求人以外使用されている事実がないことをもって、本願商標が同号に該当しないとはいえないものである。
ウ 請求人は、商標法第3条第1項第3号が不登録事由とされているのは、対象商標を何人も使用をする必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであるから一私人に独占を認めるのは妥当ではない場合であり、本願商標は、請求人が新たに創作した造語(資格名)であり、請求人の指導の下、普及していくことを目指している資格名であるから、請求人以外の者が使用する必要があるものではなく、また、請求人以外の者がその使用を欲するとは考えられず、請求人に独占を認めたとしても何ら支障はないものと主張する。
しかしながら、上記ア及びイで述べたとおり、エアコンの取り付けに係る商品又は役務の取引の実情等を踏まえ、本願商標からは、「エアコンを取り付けることに関する特別の技術を身につけた人」の意味合いが理解、認識されるというべきであって、自他商品(役務)の識別標識として、機能しない以上、請求人に独占を認めたとしても問題ないとする主張はその前提を欠くというべきであり、採用することができない。
エ 請求人は、過去の審決例(甲第9号証ないし甲第19号証)及び登録例(甲第20号証ないし甲第34号証)を挙げ、本願商標も同様の判断をすべき旨主張する。
しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かの判断は、当該商標登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と指定商品及び指定役務との関係や、その商品及び役務の分野における取引の実情をも踏まえて、個別具体的に判断されるべきものであるところ、請求人の挙げた審決例及び登録例は、商標の構成文字が異なるものであり、取引の実情も異なる点において、本願商標とは、事案を異にするものというべきであるから、過去の審決例及び登録例が存在することをもって、本願商標の登録の適否の判断基準とするのは必ずしも適切ではない。
加えて、審決時の別掲2ないし別掲5の取引の実情を考慮すれば、本願商標からは、「エアコンを取り付けることに関する特別の技術を身につけた人」の意味合いが理解、認識されるというべきである。
オ したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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