sokuhyo

Trademark Appeal Case

商標の類否と著名性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2023890037
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6595964号商標(以下「本件商標」という。)は、「STARBOSS」の文字を標準文字で表した構成からなり、令和4年1月25日に登録出願、第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」を指定商品として、同年6月14日に登録査定、同年8月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標

本件審判請求人(以下「請求人」という。)が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとして引用する登録商標は、以下のとおりである。(なお、以下の引用商標1ないし引用商標4をまとめて「引用商標」といい、引用商標1ないし引用商標3は、現に有効に存続しているものである。)

1 登録第2200242号商標(以下「引用商標1」という。)は、「STARBUCKS」の欧文字をゴシック体で表した構成からなり、昭和62年12月22日に登録出願、第29類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年12月25日に設定登録され、その後、同21年12月24日に指定商品を第30類「茶,コーヒー,ココア,氷」及び第32類「清涼飲料,果実飲料」とする指定商品の書換登録がされたものである。

2 登録第2646499号商標(以下「引用商標2」という。)は、「STARBUCKS」の欧文字をゴシック体で表した構成からなり、平成3年9月27日に登録出願、第31類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同6年4月28日に設定登録され、その後、同17年8月17日に指定商品を第1類「人工甘味料」、第5類「乳糖,乳児用粉乳」、第29類「食用油脂,乳製品」、第30類「みそ,ウースターソース,グレービーソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖(調味料),砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ(調味料),ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと」、第31類「ホップ」及び第32類「ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」とする指定商品の書換登録がされたものである。

3 登録第4758376号商標(以下「引用商標3」という。)は、「STARBUCKS」の文字を標準文字で表した構成からなり、平成15年11月10日に登録出願、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒,アルコール飲料(ビールを除く)」を指定商品として、同16年3月26日に設定登録されたものである。

4 請求人の主張の全趣旨から、合議体が引用商標と認めたもの。

「STARBUCKS」の欧文字からなる商標であり、「コーヒー等の提供」の役務(以下「請求人役務」という。)に使用するもの(以下「引用商標4」という。)。

第3 請求人の主張

請求人は、「本件商標についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を審判請求書及び令和6年10月25日付け弁駁書において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第14号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効にすべきものである。

2 審判請求書による主張

(1)引用商標の周知・著名性

ア 世界における周知・著名性

請求人は、アメリカを拠点とするカフェサービスの世界的なリーディングカンパニーであり、コーヒーのほか茶飲料や、清涼飲料、果実飲料等の販売を行っている。全世界における請求人が運営する店舗における売り上げは、令和4年には、約322億5030万米ドル、令和3年には、約290億6060万米ドルの売上高となっており、純利益としては、令和4年には、32億8160万米ドルをあげている(甲3)。このように、請求人は世界的にも著名な企業であるところ、引用商標は、請求人のハウスマークであり、世界的にも著名な商標である。

イ 日本国内における周知・著名性

日本において請求人のハウスマークでもある引用商標1が登録に至ったのは、平成元年(1989年)12月25日であり、今から30年以上も前となる。平成7年(1995年)10月には、日本における法人としてスターバックスコーヒージャパン株式会社が設立され、同8年(1996年)8月には、日本で初めての店舗としてスターバックスコーヒー銀座松屋通り店がオープンした(甲4の1)。

請求人の代表的な商品としては、コーヒーやコーヒー豆があげられるが、それ以外にも、「フラペチーノ」という名称で清涼飲料・果実飲料等を販売している。このフラペチーノ飲料が日本において販売開始されたのは、平成13年(2001年)3月のことであり、今から20年以上前に遡る。なお、同年3月末時点で、日本におけるスターバックスの店舗数は345店舗となっていた(甲4の2)。その後、平成26年(2014年)3月末には、1096店舗を国内に展開するに至り、同27年(2015年)5月に鳥取県で初の店舗がオープンし(甲4の3)、これをもって全都道府県に請求人店舗が展開されている。2022年9月末には、1771店舗が日本において展開されており(甲4の4)、これらの全国の店舗の外観やカップ等において、引用商標が使用されている。このように、スターバックスの店舗は、47都道府県すべての都市で複数店舗出店されており、三大都市圏では、東京都で388店舗、愛知県で142店舗、大阪府では140店舗の出店となっている(甲4の5)。さらに、地方での販売にも力を入れており、令和3年(2021年)6月には、「JIMOTOフラペチーノ」と題して、全国47都道府県において、それぞれの都市の特色を生かしたフラペチーノの販売を行っており、全国的に高い知名度を誇っている(甲4の6)。

スターバックスコーヒージャパン株式会社(以下「請求人子会社」という。)は、2015年3月に、請求人の100%子会社となっているところ、2014年3月期時点で、約1257億円の売上高となり(甲5の1)、2022年度には、約2539億3000万円の売上高となっている(甲5の2)。

請求人子会社は、現在も日本において引用商標を使用して事業を行っており、コーヒー以外にも、紅茶やフラペチーノ飲料などの飲料、果実飲料及びアルコール等(以下「請求人商品」という。)も含め多くの種類が販売されている(甲6の1~4)。

なお、請求人は、2005年5月に引用商標を付したチルドカップコーヒー「スターバックス ディスカバリーズ」を始めとして(甲4の2)、全国のコンビニエンスストアで、コーヒーやその他の飲料の販売を行っている(甲6の5)。一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会によるコンビニエンスストア統計調査年間集計(2022年1月~12月)によれば、2022年末の全国のコンビニエンスストアの店舗数は、5万5838店、年間の来店客数は、約157億969万人とされている(甲7)。また、コンビニエンスストア以外にも、スーパーマーケットやオンラインストア等での販売もされており、それらの数を加えれば、請求人の店舗に訪れる需要者以外の需要者及び一般消費者にとっても、かなりの頻度で、引用商標を目にする機会が多いことは明白である。

ウ 国内における広告・宣伝等

請求人子会社は、ソーシャルネットワークサービス(SNS)を利用した宣伝活動を主に行っている。日本国内において、利用者数の多いSNSとしては、「LINE」、「Twitter」、「Facebook」、「Instagram」といったものが挙げられるが、このうち、各SNSにおけるスターバックスの公式アカウントの登録者・フォロワー数は、いずれも令和5年4月18日時点で、LINEでは約900万910人、Facebookでは約122万7370人、Twitterでは約698万9000人、Instagramでは約354万6000人となっている(甲8)。これらのSNSでスターバックスにより発信された情報は、当該サービス内の共有機能等により容易に拡散できるものであり、必ずしもスターバックスのアカウントに登録やフォローをしていない利用者にも拡散されることからすると、相当の数の需要者及び一般消費者の目に触れる機会が多いことは明らかである。

エ 小括

以上の事実関係に加えて、特許庁の審決においても、「その構成中、「スターバックス」「STARBUCKS」の文字部分は、請求人の取扱い商品、役務ないし商号の略称を表示する標章として著名である」と認定されている(甲9)。

したがって、引用商標は、日本国内において高い知名度を誇っており、請求人の事業、商品及び役務を示す商標として周知・著名性を獲得するに至っている。

(2)商標法第4条第1項第11号該当性

ア 本件商標と引用商標とが類似すること

引用商標は、「STRABUCKS」の欧文字からなるところ、同書・同大・等間隔で各文字の間にスペースなどの区切りがなく、外観上まとまりよく表されているものであり、また、引用商標は、「スターバックス」とよどみなく称呼することができることから、一連一体の商標であるということができる。

本件商標は「STARBOSS」の欧文字からなるところ、同書・同大・等間隔で各文字の間にスペースなどの区切りがなく、外観上一体的にまとまりよく表されている。そして、本件商標は、よどみなく「スターボス」と称呼される。このように、本件商標は、その全体をよどみなく称呼することができることから、一連一体の商標である。

本件商標と、引用商標とでは、その外観において、他の商標と識別するにあたり重要である冒頭の「STARB」の部分を共通にし、また末尾が「S」であることも共通する。そして、称呼については、需要者に強く認識される冒頭部分の「スター」の発音を共通にし、同じく強く認識される末尾の「ス」の音も共通にする。

引用商標と本件商標の称呼上の相違点は、「スター」と末尾の「ス」中間の語の発音に差があるに過ぎないが、スターに続く語は、いずれも「B」の子音を共通にする「バ」と「ボ」の違いがあるに過ぎない。また、引用商標には、「バ」の音に続いて「ック」の音があるものの、促音である「ツ」の音及び無声音である「ク」の音の組み合わせであり、大きな相違であるとはいえない。これらの相違は、語の中間に位置し、需要者に強く認識されるとまではいえず、「スターバックス」と「スターボス」では、全体をして、需要者に近似した印象を与える発音である。

なお、本件商標と引用商標で外観及び称呼上相違するのは、後半の「BOSS」及び「BUCKS」の部分である。いずれも、実際には英単語であるところ、便宜上、称呼する場合には、近い音を片仮名として振り分けてどのように発音するかを表示する。しかしながら、英語教育において、発音記号を伴って単語学習がなされているという実態に鑑みると、必ずしも片仮名表記のとおり発音がなされているという実情はなく、実際に発音する場面では、英語の発音に近い発音で発音される場合があるものと考えられる。そこで、外観、称呼の日本語表記、称呼の米国発音記号をみると、実際に発音するうえで両商標は、円唇後舌半広母音と非円唇後舌半広母音の相違があるのみである。上記の名称の相違からわかるとおり、両者の発音時の舌の位置は同じであり、口をすぼめるか否かの差異があるにすぎない。

また、前記の円唇後舌半広母音の発音記号については、「ア」にも聞こえるような「オ」と発音するとの説明がされている例もあることに照らすと、両者の称呼は極めて近似しているといえる。例えば、「award」という英単語は、実際の発音では「アウォード」のように聞こえる発音がなされるが、この単語を片仮名で表記する際は、「アワード」と表記する場合が多い。本件商標も、片仮名での表記上は、「スターボス」と記載されるが、これは、表記するにあたって「ア」とも「オ」とも振り分けることができる、円唇後舌半広母音の音を「ボ」に振り分けたに過ぎないのであって、実際に発音する際の「ボ」の音は、「バ」に近い「ボ」の音である(甲14)。

したがって、本件商標の称呼は、引用商標と類似するものであり、この点も合わせ考えれば、本件商標は商品の出所について引用商標と混同を生じさせるおそれがあり、引用商標と類似する。

イ 本件商標と引用商標の指定商品が類似すること

指定商品の類否については、本件商標は第32類「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」を指定しているところ、引用商標1が第32類「清涼飲料,果実飲料」を、引用商標2が第32類「ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」を指定しており、引用商標3が第33類「果実酒」等を指定している。これらは、原材料や需要者の範囲、業種等が共通し、同一営業主の製造・販売又は提供にかかる商品と誤認されるおそれがある。また、両商標の指定商品は、類似群コードを共通にし、類似するものと推定される。

したがって、両商標の指定商品は類似する。

ウ 小括

以上より、本件商標は引用商標と類似し、その指定商品も互いに同一又は類似である。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第15号該当性

ア 本件商標と引用商標の類似性

上記(2)アのとおり、本件商標は引用商標と類似する。

イ 引用商標の周知度

上記(1)のとおり、引用商標は本件商標の登録出願時点において周知・著名な商標であり、請求人の商品である特に飲食料品等を示すものとして需要者に広く認識されている。

ウ 引用商標の特徴等

引用商標は、ハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』に登場するスターバック一等航海士の名称と、アトル近くのレーニア山にあった採掘場であるスターボ(Starbo)という名称から創作された造語からなる商標であり(甲10)、特にこのような沿革を知る需要者や消費者はもちろん、そうでない需要者や消費者も、本件商標について、請求人の関連する事業を示すものであると誤認するおそれがある。

また、引用商標は、請求人のハウスマークであるところ、前述のとおり、本件商標の最も印象的な部分が引用商標と共通していることからすると、本件商標が使用された場合、需要者に、引用商標から派生した名称が請求人の商品や役務に付されているものと認識される。

エ 請求人における多角経営の可能性

請求人は、前述のとおり当初の事業であるコーヒー事業以外でも、日本国内において、茶飲料や、アルコール飲料、パンや菓子、食器やかばん等の製品の販売・提供について幅広く事業展開している。

また、2005年5月からサントリー株式会社と提携してチルドカップコーヒーの販売を開始し、現在もサントリーホールディングス株式会社と提携して販売するなど(甲11)、事業展開・多角化も図られている。

これらの請求人による事業展開の状況に鑑みれば、本件商標がその指定商品に使用された場合、その出所について、請求人の子会社や関連会社等といった経済的又は組織的に何らかの関係にある企業によって販売・提供された商品・役務であると需要者に誤認混同されるおそれがある。

なお、一般的に同じ企業グループに属する会社の商標はその特徴を共通にすることで、同一の出所であることを認識しやすいようブランド展開する例が多い(甲12)。

このような事実からも、前述のとおり引用商標と最も印象的な部分に共通する特徴を有する本件商標は、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係にあると需要者に誤信されるおそれのある商標であることが裏付けられる。

なお、サントリー株式会社は、「BOSS」ブランドで、コーヒーや茶飲料、清涼飲料等を販売しており(甲13)、請求人の事業の範囲と重なるところ、本件商標も清涼飲料を含む飲料を指定したうえで、「STARBOSS」を商標としており、サントリー株式会社と請求人又は請求人子会社が共同して販売する製品であるなどと需要者や消費者に誤認混同させる具体的危険も存在している。

オ 商品間の関連性、需要者の共通性及び取引の実情

上記(2)イのとおり、本件商標の指定商品は引用商標が使用される商品と同一又は類似であり、強い関連性がある。

需要者の共通性については、本件商標の指定商品は「ビール,清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料」であるところ、いずれも公衆に向け提供される商品である。請求人は主にカフェサービスを提供するものであるが、これに限らず前記のとおりアルコールの提供も行っている。そのため、両商標にかかる商品の需要者が重なっているといえる。

したがって、本件商標と引用商標は需要者が共通する。

カ その他

前述のとおり、引用商標は、請求人による多年にわたる努力の結果、需要者及び一般消費者の間で広く知られ、高い信用・名声・顧客吸引力を獲得するに至っている。本件商標の登録出願時には、日本に進出して約30年が経過しており、引用商標はすでに日本全国で広く知られていた。

このような状況に鑑みれば、被請求人は、本件商標の登録出願時には引用商標の存在を認識していたと強く推認され、偶然にも著名で独創的な引用商標と構成を同じくし類似する本件商標を出願したとは考えがたい。むしろ、引用商標に化体した高い信用・名声・顧客吸引力にフリーライドする目的で本件商標を出願したと考えられる。商標法第4条第1項第15号は、著名商標へのフリーライド等を防止し、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の保護を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであるが、このような不正の目的がある以上、本件商標は請求人の業務に係る商品等と誤認混同を生じさせるような態様で使用されるおそれがある。

キ 小括

上記の事情を考え併せると、本件商標をその指定商品に使用した場合、引用商標の周知性に鑑みれば、これに接する需要者は、特に「STARB」の部分に着目して、本件商標から引用商標を連想し、指定商品が同一又は類似であることも踏まえれば、商品の出所について需要者が混同するおそれがあり、又は請求人と経済的若しくは組織的に何らかの関係がある者による商品であると誤認混同するおそれがあり(広義の混同)、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。

3 令和6年10月25日付け弁駁書による主張

(1)商標法第4条第1項第11号について

ア 外観について

被請求人は、「OSS」と「UCKS」のスペル自体が全く異なり、「OSS」は非常に特徴的なスペルの文字列を有していると主張するが、当該文字列が特徴的であること等当該主張を裏付ける証拠はない。

また、被請求人は、「STARBOOONS」「STARBXXXS」「STARBEETS」「STARBIRDS」「STARBLUES」といった、「STARB」と「S」の中間に位置する文字を別の文字に置換した例を挙げている。

しかしながら、外観上、9文字とある程度長い文字列において中間の文字は目立たないものであり、また、引用商標の著名性も考慮すれば、被請求人が例として挙げるような構成の商標に接した需要者は、当該外観から引用商標を連想し、あるいは引用商標と混同する可能性が十分にある。

したがって、外観上の類似性が高いことは明らかである。

イ 称呼について

被請求人は、「ック」の音の有無が、称呼上大きな印象の相違を与えることを主張するが、本事案に即したものではなく理由は無いものである。すなわち、請求人は、いかなる場合にも「ック」の音が強く認識されないとは主張しておらず、ある程度長い文字列を有する引用商標を具体的に念頭において主張するものであり、短い語である「ボックス」と「ボス」を比較するなど被請求人の挙げる例は、本件とは大きく異なり、非類似の根拠となるものではない。

また、被請求人は「バックパック」及び「バックナンバー」といった例を挙げ、これらと「バパック」及び「バナンバー」において「ック」の有無の相違が称呼に大きな影響を与えると主張しているが、主観的な主張であり何ら根拠はないものである。

実際に「バックパック」や「バックナンバー」と発声してみると分かるように、促音の前の音が破裂音であることによって、「バ」の音が特に強調され、続けて無声音である「ク」の音が続くため、「バパック」や「バナンバー」と類似の称呼であるという印象を与えるものである。また、小声で「バパック」や「バナンバー」と発音すれば、聞いた方は容易にこれを「バックパック」や「バックナンバー」と認識する。これを引用商標についてみると、「バ」の音の前に「スター」の語があることから、さらに「ック」の音は認識されにくいこととなる。

さらに、被請求人は、英語発音記号の円唇後舌半広母音と非円唇後舌半広母音の発音の差異、舌の位置の差異を正しく理解できる日本人は皆無に等しいという主張をする。しかしながら、教育課程あるいは自習において英単語を学習する際には、CD等の音源を利用して学習が行われることからすると、その発音記号を明確に理解していなくとも、無意識化に発音方法は理解されているものである。

したがって、カタカナで「ボ」と表記されているとしても、上記のような実際の発音の可能性を考慮すると、称呼上の類似性も高いものである。

以上のとおり、「ボ」の音は「バ」の音に近いものとして称呼され、かつ「ック」の音はほとんど認識されない結果、「スターバックス」の称呼と「スターボス」の称呼は相紛らわしいほどに類似する。特に、引用商標の著名性に照らせば、語頭の「スター」の音と語尾の「ス」の音から引用商標が連想される可能性が高く、混同の危険性は極めて高いといわざるを得ない。

ウ 観念について

本件商標は「STAR」及び「BOSS」の語が結合してなるものであるが、一連一体で「STARBOSS」と表した場合、一種の造語として理解されるものであって、漠然とした意味合いしか有さず具体的な観念を生じさせない。また、引用商標も造語であり、当該商標自体からは具体的な観念を生じさせない。

この点、被請求人が主張するように「コーヒーチェーン店としての被請求人のブランド」という観念が生じうることは否定しないが、著名な商標について、商標権者の観念のみが生じるとしてしまうと、外観・称呼が明らかに類似する場合でも、観念が大きく相違することを理由に商標法第4条第1項第11号該当性が否定されることになり、明らかに妥当ではない。

したがって、本件商標及び引用商標のいずれも具体的な観念を生じさせないという点で比較できないか、あるいは仮に観念の相違があったとしても、特に重視すべきではない。

エ 小括

以上主張したとおり、その外観、称呼又は観念等によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に観察し、本件商標を指定商品又は指定役務に使用した場合に引用商標と出所混同のおそれがあることは明らかであるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものである。

(2)商標法第4条第1項第15号について

被請求人は、被請求人が販売する製品の画像(乙1)をもって、請求人の商品役務との間で混同が生じることはないと主張する。

しかしながら、乙第1号証の画像の態様でしか販売されないという保証はなく、被請求人の販売する製品のパッケージがこのような構成であることを重視すべきではない。

とりわけ請求人は、他社とのコラボレーションを行っており(甲15)、需要者において、被告製品が当社と何らかの関係のもと販売されていると理解される可能性は十分に考えられるものである。

本号についての被請求人の主張は、上記の他は、本件商標と引用商標と非類似であるということに尽きるが、その類似性が認められることは上述のとおりである。

仮に類似性が低いものであったとしても、引用商標が極めて高い著名性を有することからすれば、需要者に誤認混同を生じさせるおそれは高いものである。

したがって、被請求人は、請求人の主張する商標法第4条第1項第15号の主張に対して何ら有効に反論しないものであり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものである。

(3)本件商標の諸外国における審査結果について

被請求人は、本件商標を基礎出願とする国際登録出願の状況を根拠に非類似であることを主張する。

しかし、被請求人が挙げるうち、コロンビア、メキシコ、韓国、及びタイについては、既に、登録が拒絶され、または請求人の異議等の申立に基づき登録が取り消されている(甲16)。

コロンビアにおける決定(甲16の1)では、以下のように混同の可能性が詳細に論じられている。すなわち、「STARBUCKS」という表現が繰り返し使用されているところ「共通の接頭辞を有し、同一の生産者から出されている一連の商標に慣れ親しんでいる消費者は、類似又は関連する商品について同一の接頭辞を有する商標は、同一の事業起源を有すると考える」としたうえで、「全体として評価すると、本願商標は、識別性を与える追加要素を含まず、先の標章の関連要素の重要な部分を複製しているため、音韻的に類似していることが認められる。同様に、STARBOSSとSTARBUCKSは音節の長さが同じで、語根が同じSTARであり、子音BとSが同じ位置で使われていることから、正書法の面でも類似性が認められる。したがって、比較される標識は混同可能である。音韻の観点からは、発音されると、使用される音素の配置により、ほぼ同じ音の影響が生じる、BOSS/BUCKSの語尾の違いは、それぞれに異なるビジネス上の由来があると確信できるほどには知覚されないからである。」と続けている。ここで考慮されている要素は特殊なものではなく、日本においても、「STARBUCKS」が著名な商標であり、両商標は、前半の「STAR」及び後半が「B」と「S」の文字が同じ位置で使用されていること、前半の「スター」の語が音声的に強調され「BOSS」及び「BUCKS」の語がそれぞれ具体的な出所識別標識として機能していないことなどの共通性があり、本件無効審判でも妥当するものである。

(4)被請求人が挙げる裁判例について

被請求人は、令和3年(行ケ)10071号(乙7)を挙げて、「PUMA(ロゴマーク)が日本全国において周知著名に至っているがために、逆説的に需要者において両者は明確に区別されるため、誤認混同は生じ得ない」と判断されていると主張するが、そのような判断はされていない。上記判決は、商標法第4条第1項第11号の判断において「本件商標が造語であることから,特定の観念を生じないのに対し,引用商標が周知著名であることから,「原告のブランド」との観念を生じ,両者は明確に区別することができ,相紛れるおそれがない。」とは認定しているものの、同項第15号に係る判断においては、「本件商標と引用商標とは,引用商標の周知著名性を勘案しても,外観,称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標である」と判示しているに過ぎない。

この点、一般論としては、引用商標の著名性は、上記裁判例のように15号の趣旨から混同を肯定する方向で考慮すべきものである(甲17)。

なお、上記裁判例は、「PUMA」と「Pum’s」という非常に短い構成の商標を比較し、「Pum’s」の最初の音が数ある称呼の可能性うち「プ」と称呼された場合においてですら1音しか共通しないというケースにおいて、「周知著名性を勘案しても」誤認混同は生じないとしたものであって、本件とは明らかに事案が異なるものである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第8号証を提出した。

1 商標法第4条第1項第11号の主張について

(1)本件商標と引用商標の類否について

ア 外観について

本件商標は、欧文字「STARBOSS」によって構成されており、引用商標は、欧文字「STARBUCKS」によって構成されているところ、特に、共通するSTARBの箇所を除いた「OSS」と「UCKS」はスペル自体が全く異なり、特に本件商標の後半部「OSS」は非常に特徴的なスペルの文字列を有している。したがって、両者は充分区別し得る大きな差異があり、両者の視覚的印象は全く異なるものである。

また、これら本件商標と引用商標とを時と所を異にして離隔的に観察しても、外観において紛れるおそれは全くなく、したがって、需要者は外観上、本件商標を引用商標から明瞭に区別することができることは明白である。

なお、請求人は、「「STARB」と「S」の中間の文字は強く認識されない」という一方的な仮定に基づいて、本件商標と引用商標の類似を主張している。

しかしながら、「「STARB」と「S」の中間の文字が特徴的な文字列(例えば本件商標の「OSS」のような場合)を有する場合には外観に与える影響は非常に大きく、その文字列は看者に強く認識される」と解する。例えば、STARBOOONS、STARBXXXS、STARBEETS、STARBIRDS、STARBLUESなど挙げればきりがないが、これらは「「STARB」と「S」の中間の文字が非常に特徴的な文字列を有しており、その文字列は看者に強く認識される」ために、STARBUCKSとは外観上明らかに区別できると解すべきである。

また、仮に請求人のこのような主張がとおるとすれば、「STARB・・・S」という文字列は全て「STARBUCKS」に外観上類似となり、このような特許庁商標審査基準(以下「商標審査基準」という。)に一切記載も示唆もされていないような請求人の一方的な主張は到底受け入れることはできない。

イ 称呼について

本件商標は、全体として外観上まとまりよく一体不可分に表記されている。また、本件商標の全体の構成音数が4音と格別冗長ではなく、よどみなく一連に称呼され、「スターボス」と称呼される。

引用商標は、全体として外観上まとまりよく一体不可分に表記されている。また、本件商標の全体の構成音数が6音と格別冗長ではなく、よどみなく一連に称呼され、「スターバックス」と称呼される。

まず、請求人は「引用商標には、「バ」の音に続いて「ック」の音があるものの、促音である「ツ」の音及び無声音である「ク」の音の組み合わせであり、大きな相違であるとはいえない。」と主張している。

しかしながら、被請求人は「ック」の有無はその称呼に大きな影響を与えると考える。例えば、「スターボス」と「スターバス」であった場合、商標審査基準第三の十.3(2)アに照らして、相違する一音が50音図の同行に属しているために称呼が類似すると判断される可能性がある。

しかしながら、「スターボス」と「スターバックス」では当方が認識する限り、商標審査基準第三の十.3(2)に記載の称呼の類似に当てはまるようなケースがなく、「バ」と「ボ」の違いがあるのみではなく、「ック」の有無の相違もあり、この「ック」の有無は称呼に与える影響は大きいといえる。

例えば、「ボックス」と「ボス」、「ファックス」と「ファス」、「バ」の音に続いて「ック」の音があるものとして「バックパック」と「バパック」、「バックナンバー」と「バナンバー」など枚挙すればきりがないが、「ック」の有無の相違が称呼に大きな影響を与えることは疑いようがなく、その結果、本件商標と引用商標1とでは称呼においても明らかに異なるものと解することが極めて妥当である。

次に、請求人は、本件商標はネイティブであれば「スターボス」よりむしろ「スターバス」に近い発音をするため本件商標と引用商標の称呼は類似する、と主張している。

しかしながら、本件商標は我が国の一般的な需要者であれば、「スターボス」と一意に発音されることは疑いようがない。

また、ほとんどの日本人が到底区別して発音することができない発音記号を持ち出して、本件商標と引用商標との称呼の類似を主張することは説得力を欠く。

以上、「バ」と「ボ」の違い、「ック」の有無の相違はこのような構成音数が4ないし6個という比較的短い標章中では大きな差異として認識されるものであり、このため、本件商標の称呼「スターボス」は、引用商標の称呼「スターバックス」とは明らかに異なり、本件商標と引用商標とは称呼において相紛らわしいものではない。

ウ 観念について

本件商標の「STAR」の部分からは「星、スター、人気者」のような観念が生じ、「BOSS」の部分からは「ボス、親分、上司」のような観念が生じ、全体では「スターのようなボス、星のように輝く上司、輝く親分」のような観念のみが生じ得る。

一方、引用商標は、基本的には、ハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』に登場するスターバック一等航海士の名称に基づく造語である。

そして、引用商標から思いつく観念を想定した場合、英単語に基づく「Star」の星、スターと「Bucks」の牡鹿の意味とを併せた「スターの雄鹿」という観念が生じるというよりはむしろ、「STARBUCKS」というコーヒーチェーン店が47都道府県全てに出店し、すでに全国的に周知著名のレベルに到っていることに鑑み、「コーヒーチェーン店としての請求人のブランド」のような明白な観念のみが生じると解すべきである。STARBUCKS公式サイトを参照すると、事業内容:コーヒーストアの経営/コーヒー及び関連商品の販売、店舗数:1,811店舗(うちライセンス店舗148店舗)であり、コーヒーチェーンの店数比較サイトを参照すると、第1位スターバックスコーヒー(スタバ)、第2位 ドトールコーヒーショップ、第3位 コメダ珈琲、第4位 タリーズコーヒー、第5位 サンマルクカフェであり、請求人のコーヒーチェーン店は日本一の店舗数を誇っている。

上述のような理由からも、日本国においては、引用商標からは「請求人のブランド」の観念のみが生じると解するべきである。

したがって、本件商標と引用商標とは観念においても相紛らわしいものでないことは明らかである。

エ 小括

以上のとおり、本件商標は、引用商標とは外観上著しく相違し、称呼においても明らかに相違し、また、観念においても明らかに相違する。

したがって、本件商標と引用商標とは、本件商標の指定商品と同一又は類似する商品が引用商標の指定商品(使用商品)中に含まれているとしても、商標法第4条第1項第11号に該当せず、指定商品において出所混同を生じるおそれはなく、本件商標は自他商品の識別標識としての機能を充分に果たし得るものと考える。

2 商標法第4条第1項第15号の主張について

上記1のとおり、本件商標と引用商標とは、引用商標の周知著名性を勘案しても、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標であり、その類似性は極めて低いというべきである。

このような状況下において、本件商標に接する取引者及び需要者が、請求人又は引用商標を連想又は想起することは通常あり得ないと解するのが妥当である。

具体的には、被請求人の製品(乙1)、に接した需要者が、当該製品が日本全国で周知著名なコーヒーチェーン店のスターバックスが製造・販売している製品であると想起することは常識的に考えてあり得ない。

したがって、このような両商標が非類似であるために誤認混同のおそれがないという原理原則に反する請求人の主張は、いずれも大きく説得力を欠くものである。

そうすると、本件商標をその指定商品に使用をしても、その取引者及び需要者をして、当該商品が請求人の商品に係るものであると誤信させるおそれはなく、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

3 本件商標の諸外国における審査結果について

(1)本件商標は、これを基礎出願としてマドリッド協定議定書による国際登録出願(乙2)をしており、その指定国は40カ国であり、被請求人は今後、清涼飲料などを世界各国に販売する事業展開を予定している。

(2)諸外国の審査結果について

2023年(令和5年)6月27日現在において、欧州、イギリス、オーストラリア、ロシア、米国等から、保護決定通知を受けている(乙3)。

このように、母語語の文字をアルファベットとするほぼ全ての諸外国の特許庁において「STARBOSS」と「STARBUCKS」とは非類似と判断されているのに、母語語の文字をアルファベットとしない日本国特許庁が「STARBOSS」と「STARBUCKS」とが類似し出所の混同が生じると判断する道理はないと考える。

(3)米国での審査結果について

米国商標法においても、日本商標法における第4条第1項第11号及び同項第15号のような誤認混同を防止する条項があるにも関わらず、USPTOの審査官は「STARBUCKS」のUS登録番号3699649等の類似商標の存在を一切指摘せずに、本件商標の登録査定をし、現在は登録査定後の異議申立て期間に至っている(乙6)ことからも、日本国特許庁においても同様に「STARBOSS」と「STARBUCKS」とは非類似と判断されるべきであると考える。

(4)その他

ア 本件と類似する事案において、商標が日本全国において周知著名に至っており、逆説的に需要者において両者は明確に区別されるから、誤認混同は生じ得ないと判断されている(乙7)。

これと同様に、引用商標も日本全国において著しく周知著名に至っているため、逆説的に需要者において誤認混同は生じ得ないとする判断がされるべきと考える。

イ 請求人は2022年(令和4年)10月3日付けで、被請求人に対して、本件商標の放棄及び国際出願を取り下げることを申し立てた警告文を送付してきた。

その後、請求人は本件商標に対して異議申立てを行ったことから、被請求人は、ビジネスの進展を中断する状態が続いたが、当該異議申立ては取り下げられたため、被請求人は、請求人が本件商標を取り消すことを断念したものと考えていた(乙8)。

そして、被請求人は、「STARBOSS」のロゴマークの出願を基礎出願とするマドリッド協定謡定書による国際登録出願を行ったが、本件審判の審判請求書を受けた。

このような状況下において異議取下書を出した後に無効審判を請求したことは、悪意を感じざるを得ない。

(5)むすび

以上の理由から、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも該当しないものである。

第5 当審の判断

1 利害関係について

請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認めるので、本案に入って審理する。

2 引用商標の周知性について

請求人提出の甲各号証、同人の主張及び職権調査によれば、次の事実を認めることができる。

ア 世界における周知・著名性

請求人は、アメリカを拠点とするカフェサービス会社であり、コーヒーのほか茶飲料や、清涼飲料、果実飲料等の提供及び販売を行っている。

全世界における請求人が運営する店舗「スターバックスコーヒー」(以下「請求人店舗」という。)における売上げは、2022年(令和4年)には、約322億5,030万米ドル、純利益としては、32億8,160万米ドルであり、2021年(令和3年)には、約290億6,060万米ドルであり、純利益としては、41億9,930万米ドルであった(請求人主張、甲3)。

イ 日本における周知・著名性

請求人子会社は、1996年(平成8年)8月に、日本で初めての店舗をオープンして以来(甲4の1)、請求人商品及び請求人役務を取り扱っており(甲4、甲6)、その後、店舗数は、2001年(平成13年)3月末に345店舗(甲4の2)、2014年(平成26年)3月末に1,096店舗となり、2015年(平成27年)5月には、全都道府県に展開されるに至り、2022年(令和4年)9月末には、1,771店舗となった(甲4の4)。

2021年(令和3年)6月に、「JIMOTOフラペチーノ」と題して、全国47都道府県において、それぞれの都市の特色を生かしたフラペチーノを販売した(甲4の6)。

請求人子会社の売上げは、2014年(平成26年)3月期時点で、約1,257億円(甲5の1)、2022年度(令和4年度)には、約2,539億3,000万円であった(甲5の2)。

ウ 日本における広告・宣伝等

請求人子会社は、主としてソーシャルネットワークサービス(SNS)を利用した請求人役務の宣伝活動を行っており、公式アカウントの登録者・フォロワー数は、いずれも2023年(令和5年)4月18日時点で、LINEでは約900万910人、約Facebookでは122万7,370人、Twitterでは約698万9,000人、Instagramでは約354万6,000人である(甲8)。

上記(1)で認定した事実によれば、次のとおり判断することができる。

ア 引用商標4について

請求人は、米国のコーヒーチェーンであり、我が国においては、請求人子会社が1996年(平成8年)に「スターバックスコーヒー」第1号店をオープンして以来、現在に至るまで継続して「STARBUCKS」の文字を全国の店舗の看板やウェブサイト上の広告等に用いて請求人役務を提供していることが推認し得ることから、同文字は、本件商標の商標登録出願日(令和4年1月25日)前から、登録査定日(同年6月14日)においても、請求人役務の出所を表すものとして、我が国のコーヒーチェーンの需要者の間に広く認識されているものといい得るものである。

そうすると、請求人役務に使用する「STARBUCKS」の文字からなる引用商標4は、請求人役務(コーヒー等の提供)を表示するものとして、その需要者の間に広く認識されているものというべきである。

したがって、引用商標4は、本件商標の登録出願の日前から、請求人役務の出所を表示するものとして、需要者の間に広く認識されている商標であって、その状況は、本件商標の登録査定時においても継続していたものというのが相当である。

イ 引用商標1ないし引用商標3について

(ア)チルドカップコーヒー「スターバックスディスカバリーズ(R)」(「(R)」は○の中に「R」の文字。以下同じ。)が2005年(平成17年)9月に、1都3県(東京・神奈川・千葉・埼玉)のコンビニエンスストアで販売が開始された(甲4の2)。

また、甲第6号証の5によれば、コーヒーやその他の飲料が、全国のスーパー、コンビニエンスストア、ECサイトにおいて販売された。なお、同号証における「お問い合わせ先 サントリーお客様センター」との記載から、当該ページに示された商品の出所は「サントリー」と考えられ、請求人とは異なる者である。

(イ)「47JIMOTOフラペチーノ(R)」が2021年(令和3年)6月30日より、全国のスターバックス店舗で提供が開始され(甲4の6)、飲食料品についてのメニュー(甲6の1~4)及びSNSによる広告宣伝(甲8)がなされている。

(ウ)以上(ア)及び(イ)から判断すると、請求人はコーヒー飲料等の商品を2005年(平成17年)からコンビニエンスストア等において販売していることはうかがえるものの、当該商品についての販売実績(売上げ、販売数等)、広告宣伝状況、需要者の評価等が確認できず、客観的に需要者の認識を推し量ることができない。

また、甲第4号証の6、甲第6号証の1ないし4及び甲第8号証に示された写真その他の記載を見るに、それらは、請求人役務に係る飲食料品の提供に関するものと考えられ、請求人店舗において販売されている商品についての販売状況等を示すものとは認められない。

そうすると、引用商標1ないし引用商標3が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、その指定商品(請求人商品)の出所を表すものとして、需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。

3 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)本件商標

本件商標は、上記第1のとおり、「STARBOSS」の文字を標準文字で表したものであるところ、当該文字は一般的な辞書等に載録のない一種の造語といえるものであり、特定の語義を有しない欧文字からなる商標にあっては、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語風の読みに倣って称呼するのが自然であるから、該文字から「スターボス」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。

(2)引用商標1ないし3

ア 引用商標1及び2

引用商標1及び2は、上記第2の1及び2のとおり、「STARBUCKS」の欧文字をゴシック体で横書きした構成からなるものであるところ、該文字は一般的な辞書等に載録のない一種の造語といえるものであり、特定の語義を有しない欧文字からなる商標にあっては、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語風の読みに倣って称呼するのが自然であるから、該文字から「スターバックス」の称呼を生じるが、引用商標1及び2の指定商品の出所を表すものとして需要者の間に広く認識されている認めることはできないから、引用商標1及び2は、その指定商品との関係において特定の観念は生じないものである。

イ 引用商標3

引用商標3は、上記第2の3のとおり、「STARBUCKS」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は一般的な辞書等に載録のない一種の造語といえるものであり、特定の語義を有しない欧文字からなる商標にあっては、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語風の読みに倣って称呼するのが自然であるから、該文字から「スターバックス」の称呼を生じ、上記アと同様の理由で特定の観念は生じないものである。

(3)本件商標と引用商標1ないし3との類否について

本件商標と引用商標1ないし3は、それぞれ上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、両者の外観においては、欧文字の大文字により横書きした構成からなり、語頭の構成文字が「STARB」であり、語尾が「S」の文字である点において共通するものの、中間における「OS」と「UCK」の文字の差異を有するものであり、当該差異は8文字と9文字という比較的短い文字構成からなる両者の外観の視覚的印象に与える影響は小さいものとはいえないから、両者は、外観上、判然と区別し得るものである。

次に、称呼においては、本件商標から生じる「スターボス」の称呼と引用商標から生じる「スターバックス」の称呼とは、語頭から3音目までの「スター」の音及び語尾における「ス」の音を共通にし、中間に位置する「ボ」と「バック」の音の差異において相違するところ、「ボ」と「バ」の音は、ともに破裂音であり比較的強く発音され、また、母音において前者が(o)であるのに対し、後者が(a)であって比較的近似しない母音といえるものである上に、後者は促音を伴っていることから、一層強く発音され、聴取されるものである。

そうすると、全体で5音と6音と短い音構成からなる両称呼においては、当該相違音が称呼全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、それぞれを一連に称呼するときは語調、語感が異なり、両者は、称呼上、明瞭に聴別し得るものである。

さらに、観念においては、本件商標及び引用商標1ないし3からは、共に特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することができないものである。

そうすると、本件商標と引用商標とは、その外観において判然と区別できるものであり、称呼において明瞭に聴別できるものであり、また、観念において比較することができないものであるから、外観、称呼及び観念によって、取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。

したがって、本件商標の指定商品が、引用商標の指定商品と同一又は類似する商品を含有するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

4 商標法第4条第1項第15号該当性について

上記2(2)のとおり、引用商標4が、請求人の業務に係るコーヒーチェーンを表すものとして需要者の間に広く認識されているとしても、引用商標1ないし3と同一の文字構成からなる引用商標4は、上記3(3)と同様に本件商標とは非類似の商標である。

してみれば、本件商標は引用商標とは非類似の商標であり、別異の商標と認められる。

そうすると、本件商標に係る指定商品の取引者、需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すれば、本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用しても、取引者、需要者は、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が他人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

その他、本件商標が引用商標と出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

5 請求人の主張について

請求人は、コロンビア、メキシコ、韓国及びタイにおける審査・審判例を挙げて、本件審判においても妥当する旨主張するが、外国と我が国とでは、英語に対する発音・聴取の能力や認識の程度も異なることから、これらの外国における審査・審判例がそのまま我が国における商標の類否判断等に影響を及ぼすことにはならないものであって、本件商標については、上記のとおり判断するのが相当であるから、請求人の主張は採用することができない。

6 むすび

以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。

よって、結論のとおり審決する。

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