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Trademark Appeal Case

不使用取消と指定商品での使用

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024300178
審判種別記載はありません。
結論勝訴(請求認容)

結論テキスト

結 論
登録第5726343号商標の商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第5726343号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成24年8月31日に登録出願、同26年12月12日に第28類「スロットマシン,パチスロマシン,ぱちんこ器具」を指定商品として設定登録され、その商標権は現に有効に存続しているものである。

そして、本件審判の請求の登録は、令和6年4月5日になされたものであり、この登録前3年以内の期間(令和3年4月5日~令和6年4月4日)を、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張

請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び令和6年6月3日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年7月1日付け審判事件弁駁書にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出した。

1 請求の理由

本件商標は、その指定商品について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。

2 答弁に対する弁駁

(1)乙第1号証及び乙第2号証について

被請求人は、乙第1号証及び乙第2号証を提出し、商標権者は2013年10月に設立された会社であって、ぱちんこ/パチスロ事業に携わっていると述べる。

しかし、これらは商標権者の事業を説明しているにすぎず、本件商標を、その指定商品について使用していることを立証するものではない。

(2)乙第3号証について

被請求人は、業界特有の事情を説明する証拠として乙第3号証を提出し、遊技機の製造受託者の社名やロゴが公表されることは一般的にないことを主張する。

乙第3号証で示された同業他社の1例のみをもって上記主張が裏付けられるものではないが、仮に被請求人が主張する事情があるとしても、商標権者の社名が、委託者・受託者との関係において公表されることはない、という主張にすぎない。つまり、本件商標を、その指定商品について使用していることの立証にはならない。

また、被請求人は、上記事情は本件商標にも当てはまり、「受託開発した遊技機の筐体に本件商標が表示されることはなく、委託者である遊技機メーカーによる当該遊技機を紹介するウェブサイト上に本件商標が掲載されることもない。」と主張する。

つまり、スロットマシン、パチスロマシン、パチンコ器具といった遊技機の筐体に、本件商標が表示されることはない、と被請求人自ら主張している。

これは、本件商標が平成26年に登録されて以来、その指定商品である「スロットマシン,パチスロマシン,ぱちんこ器具」のいずれについても使用されていないことの証左である。

(3)乙第4号証について

被請求人は、乙第4号証を提出し、遊技機の開発の際に、本件商標が表示されたクリアファイルを使用していると主張する。また、被請求人は、同証拠をもって、「本件商標は指定商品「パチスロマシン、ぱちんこ器具」との具体的関係において使用されているといえる。」と述べる。

被請求人の上記主張の意義は不明確であるが、本件商標が「クリアファイル」について使用されていることを立証していると解される。そもそも「クリアファイル」は第16類の指定商品であり、類似群コードも「25B01」が付与されており、本件商標の指定商品とは非類似の商品であることは明らかである。

なお、商標が使用されている商品が本件商標の指定商品とは非類似であるため、要証期間について論ずるまでもないが、乙第4号証の写真がいつ撮影されたのかも不明であるため、同証拠は不使用取消審判の使用証拠として不適切であることを付言しておく。

(4)まとめ

以上のとおり、被請求人の提出した乙第1号証乃至乙第4号証は、いずれも本件商標が、その指定商品について使用されていることを立証していない。

商標法上の保護は、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるものである一方、不使用の登録商標に対して排他独占的な権利を与えておくのは国民一般の利益を不当に侵害し、かつ、商標選択の余地を狭めることとなるから、登録されてから不使用であると解される本件商標は取り消されて然るべきである。

したがって、本件商標は、その指定商品について継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。

第3 被請求人の主張

被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする旨の審決を求め、答弁書及び令和7年1月23日付け審尋に対する同年2月27日付け回答書(以下「回答書」という。)において、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証(枝番号を含む。)を提出した。

なお、以下、証拠の表記に当たっては、乙第1号証を「乙1」のように省略して表示する場合があり、枝番号を含む号証で、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。

1 答弁の理由

(1)乙第1号証に示すように、商標権者は、1987年に設立されたゲーム会社「ナツメ株式会社」(以下「ナツメ社」という。)と、2002年に設立された遊技機開発会社「株式会社アタリ」(以下「アタリ社」という。)とが、2013年10月に経営統合されたことにより設立された会社である。

(2)乙第2号証の「受託範囲」の欄に記載されているように、商標権者が行う遊技機の開発事業(ぱちんこ/パチスロ事業)は、企画、サンプル作成、素材作成、実機化、プログラムの作成、そして、実機に対する最終確認(検証(デバッグ))に至るまで多岐にわたる。また、本号証の「開発実績」の欄に記載されているように、商標権者は2005年から2023年まで毎年数機種の遊技機の開発に携わっており、2024年4月の時点(本件取消審判の請求の登録時)においても、商標権者は、ぱちんこやパチスロといった遊技機の開発に携わっている。

(3)ただし、商標権者が開発した遊技機は、たとえそれが企画当初から関わったものであったとしても、あくまで受託により開発したものであり、受託者である商標権者の名前が表に出ることはない。これは、遊技機の開発には、出玉設計といったような遊技機の機種性能に関わる高度な秘密情報の取り扱いが含まれるため、一般的に委託者である遊技機メーカーと受託者である開発会社との間では、受託者側から委託者名や機種名の公表を禁止する旨、或いは委託者側から受託者名の公表を禁止する旨など、開発業務に関わる略全ての情報の公表を禁止する旨の秘密保持契約が交わされていることによる。

このため、「遊技機メーカー(委託者)のXという機種の開発を担当した会社はY(受託者)」というような情報が世間に漏れることはないし、受託者自らが公表することもない。

実際、乙第2号証の「開発実績」の欄には、2005年から2023年までの間にぱちんこを全36種、パチスロを全42種開発した旨が記載されているが、いずれも「アニメ版権ぱちんこ」、「タレント版権ぱちんこ」、「ゲーム版権パチスロ」、或いは「映画版権パチスロ」のように、遊技機メーカー(委託者)名や具体的機種名は伏せられている。このことは、商標権者のみならず、他の遊技機開発会社においても同様である(乙3)。

このため、商標権者が受託開発した遊技機の筐体に、商標権者の名前やロゴが記載されることはなく、委託者である遊技機メーカーによる遊技機の紹介ページ(ウェブサイト)に受託開発者である商標権者の名前が載ることもない。

上記事情は、本件商標においても同様である。すなわち、受託開発した遊技機の筐体に本件商標が表示されることはなく、委託者である遊技機メーカーによる当該遊技機を紹介するウェブサイト上に本件商標が掲載されることもない。

(4)一方、商標権者の遊技機開発部門に属する従業員は、少なくとも2013年の経営統合時から現在に至るまで、乙第4号証に示すような本件商標が表示されたクリアファイルを使用して、遊技機の開発業務を行っている。つまり、商標権者は、2013年に経営統合したのち、2024年の現在に至るまで、パチスロマシン、ぱちんこ器具といった指定商品を開発する際に、本件商標が表示されたクリアファイルを使用している。

上記のように、商標権者は、ゲーム会社であるナツメ社と遊技機開発会社であるアタリ社の経営統合により設立された会社であるから、ゲーム開発部門はナツメ社をルーツとする部門であり、遊技機開発部門は、アタリ社をルーツとする部門であることは論をまたない。

また、本件商標は株式会社「アタリ」の「アタリ」をローマ字表記してなる「atari」をロゴ化してなるものであるから、アタリ社をルーツとする商標権者の遊技機開発部門に属する従業員が、現在においても乙第4号証のクリアファイルを使うことに不自然な点は一切ない。

一方、本件商標は遊技機開発会社である株式会社「アタリ」の「アタリ」をローマ字表記してなる「atari」をロゴ化してなるものであるから、本件商標が表示されたクリアファイルを商標権者のゲーム開発部門に属する従業員が使用する論理的必然性は皆無である。

以上のように、本件商標が表示された本号証のクリアファイルは、パチスロマシン、ぱちんこ器具といった指定商品の開発に携わる商標権者の遊技機開発部門に所属する従業員のみが使用するものであり、当該クリアファイルは、当該部門の従業員が委託者との打合せ時に、遊技機の企画資料や開発資料を収納するなど、指定商品の開発業務においてのみ使用されるものであるから、本件商標は指定商品「パチスロマシン、ぱちんこ器具」との具体的関係において使用されているといえる。

(5)以上のように、商標権者は2013年から2024年の現時点に至るまで、本件商標が表示された乙第4号証のクリアファイルを、パチスロマシン、ぱちんこ器具といった指定商品の開発業務において使用しており、商標権者は、指定商品「パチスロマシン、ぱちんこ器具」との具体的関係において本件商標を使用している。

また、2013年から2024年の期間は要証期間を含むから、商標権者は、要証期間内で指定商品「パチスロマシン、ぱちんこ器具」との具体的関係において本件商標を使用しているといえる。

(6)以上のとおり、商標権者は、要証期間内で指定商品「パチスロマシン、ぱちんこ器具」との具体的関係において本件商標を使用している。

2 回答書による主張

(1)商標権者の事業内容

ア 乙第2号証に記載されているように、商標権者が行う遊技機の開発事業(ぱちんこ/パチスロ事業)の受託範囲は、演出企画、映像企画、仕様設計、出玉設計(パチスロ)、配列設計(パチスロ)である。つまり、商標権者は、委託者である遊技機メーカーから、ぱちんこ、或いはパチスロを制作する際の上記範囲の業務を受託し、当該業務を行っている。

なお、乙第2号証に記載された受託者が委託者から受託する各業務については、多少の文言の違いこそあれ、既に提出済みの乙第3号証の受託開発の「企画から完成までのイメージ」の欄、或いは乙第5号証にも下記と略同様の説明がある。

イ 乙第2号証の受託範囲に記載された各業務の具体的内容について

(ア)演出企画

演出企画とは、プレイヤーに楽しんでもらうための「演出(エンターテインメント)」を考える業務であり、具体的には「ぱちんこ・パチスロの液晶画面で流れるアニメーション、キャラクター演出、リーチ演出などの考案」、「大当たりに繋がる演出のフローやストーリー性、演出の信頼度(期待度)の設計」、「筐体の役物(可動パーツ)の動きや、光・音を使った演出アイデアの設計」などが挙げられる。

(イ)映像企画

映像企画とは、液晶画面などに映し出される映像コンテンツそのものを企画・制作する業務であり、具体的には「アニメーション、CG映像、実写映像の製作方針の決定」、「リーチ演出や大当たり演出の際に使用される映像シーンの決定」、「上記映像シーンにおける絵コンテ作成」、「版権キャラクター(例、アニメ、映画、漫画)を使用する場合のデザイン調整や表現方法の検討」などが挙げられる。

(ウ)仕様設計

仕様設計とは、ぱちんこ・パチスロがどのように動作するかを細かく決める業務であり、具体的には「ハードウエア・ソフトウエアの連携方法の決定」、「ボタン操作やレバー操作に対する挙動の決定」、「「どの演出が、どのタイミングで、どの確率で出るか」といったような全体制御の決定」などが挙げられる。

(エ)出玉設計(パチスロ)

出玉設計(パチスロ)とは、パチスロにおいて、「どのくらいの確率で大当たりするか」、「1回の大当たりで何枚出るか」といった出玉性能を決定する業務であり、具体的には、「各ゲームモード(通常時、ボーナス、ARTなど)における払い出し量の決定」、「各ゲームモードにおける当選確率の決定」、「各ゲームモードにおける払い出しパターンの決定」などが挙げられる。

(オ)配列設計(パチスロ)

配列設計(パチスロ)とは、パチスロ台において、リールの図柄の配置を決定する業務であり、具体的には、「各リールにどのような図柄を配置するかの決定」、「図柄の組み合わせによるリーチ目や子役成立確率の調整」、「目押し要素やフラグ判別要素の決定」などが挙げられる。

ウ 商標権者が商品としての「ぱちんこ・パチスロ」の生産へ深く関与している事実について

(ア)まず、上記の演出企画、映像企画、仕様設計、出玉設計(パチスロ)、配列設計(パチスロ)といった業務を、委託者から商標権者が受託するということは、商標権者(受託者)と遊技機メーカー(委託者)との間で、遊技機メーカーが製造するぱちんこ・パチスロの開発過程における上記の各業務を商標権者が担当し、成果物を委託者に納品するという契約が結ばれるとともに、その納品の対価として、委託者から商標権者(受託者)に金銭が支払われることを意味するものである。

したがって、遊技機メーカーのぱちんこ・パチスロの開発プロジェクトにおいて、商標権者が演出面・映像面・仕様面・出玉面・配列面の一部又は全部を分担して作り上げるという役割を負うことは明らかである。

(イ)加えて、商標権者は、遊技機メーカーが製造するぱちんこ・パチスロにおいて、上記の各工程の受託業務を通じ、商品に不可欠な創作的・技術的要素を提供している。また、これら業務は、単なる下請け業務や付随的な作業に留まるものではなく、商品としてのぱちんこ・パチスロの生産過程の根幹をなす中核的な工程である。

したがって、例えば本件商標が遊技機メーカーが製造する最終製品の筐体や取扱説明書等に直接表示されていない場合であっても、これらの工程を通じた商標権者の商品への関与は、商品の生産プロセスにおいて極めて重要な役割を果たしていると認められるべきである。

(ウ)以上のように、商標権者は、委託契約に基づき、ぱちんこ・パチスロの企画設計業務及び/又は仕様設計業務といったような、ぱちんこ・パチスロの生産過程の根幹をなす中核的な工程を受託しており、これにより、ぱちんこ・パチスロの遊技性や収支バランスの形成に直接的に関与している。

そして、このような企画設計業務や仕様設計業務は、ぱちんこ・パチスロの生産過程における補助的な業務ではなく、ぱちんこ・パチスロの生産過程の根幹をなす中核的な工程であるから、商標権者が「業として商品(ぱちんこ・パチスロ)を生産」する者に該当することは明らかである。

(2)クリアファイルについて

ア 乙第6号証のメールについて

(ア)乙第6号証の1は、商標権者の従業員であり、商標権者のぱちんこ/パチスロ事業部門(乙7)に属するM氏が、A社の従業員(4名)に対して、2022年1月13日に送信したメール(タイトル「【サブ関連】御打ち合わせの御礼」)を紙媒体に印刷したものである。

また、乙第6号証の2は、A社の従業員が、上記メールを受けて、2022年1月13日にM氏に返信したメール(タイトル「Re:【サブ関連】御打ち合わせの御礼」を紙媒体に印刷したものである。

(イ)乙第6号証の1のメール本文の最上部の送り先に記載された会社名、宛先欄及びCC欄に表示された会社名、並びに乙第6号証の2のメール本文の最上部に記載された会社名には、全てA社の名称が記載されている。

また、乙第6号証の1の宛先欄及びCC欄のメールアドレスのドメイン部分、乙第6号証の2の差出人欄のメールアドレスのドメイン部分、並びに乙第6号証の2のCC欄のメールアドレスのドメイン部分には、A社の英語表記(「株式会社」に相当する部分を除く)が記載されている。

(ウ)A社が遊技機メーカーであることは顕著な事実である。

(エ)乙第6号証の1の送信日は2022年1月13日の15時19分であり、乙第6号証の2の送信日は同日の18時53分であり、いずれも要証期間内である。

また、乙第6号証の1の「昨日はお忙しいところ、お時間をいただきまして誠にありがとうございました。」の記載より、乙第6号証の1のメールの送信日(2022年1月13日)の前日(同月12日)に打合せがあったことが確認できるが、この打合せ日(2022年1月12日)も要証期間内である。

(オ)乙第6号証の2の「御社の評判は弊社・・・の担当からも伺っており、」の文言より、A社と商標権者との間に、既に取引実績があることが確認される。すなわち、2022年1月の以前に、商標権者はA社から、ぱちんこ又はパチスロの制作に係る上記範囲の業務を受託し、実際にその業務を遂行した実績があり、同年同月の時点では、既に両社の間には遊技機開発事業における委託者と受託者という関係が成立していることが確認できる。

また、同年同月の時点では、既に両社の間には遊技機開発事業に係る秘密保持契約が締結されていたことが推認できる。

(カ)乙第6号証の1及び乙第6号証の2の各メールのタイトルに記載された「サブ関連」、或いは乙第6号証の2のメール本文に記載された「サブ開発環境」の「サブ」とは、ぱちんこ、又はパチスロにおける液晶表示、ランプ、役物(可動ギミック)、音楽、効果音制御といったような、演出・映像・音響などの演出面を担う基板であるサブ基板(サブ制御基板)を意味する(乙5、乙8)。

したがって、乙第6号証の1は、前日に行われた遊技機の演出面を担うサブ制御基板の開発業務に関する打合せに対するお礼と再打合せの依頼メールであり、乙第6号証の2は、サブ開発環境の確認と、再打合せを承諾するメールである。

(キ)営業秘密について

a 乙第6号証の1及び乙第6号証の2の各メールは、委託者であるA社と受託者である商標権者との間で締結された秘密保持契約に基づくやりとりであり、両社は互いの機密情報(互いの会社名を含む)を厳密に管理する義務を負っている。また、受託者である商標権者は、社内規定や秘密保持契約に基づき、A社の名称を含む、全ての委託者に関する機密情報を外部に漏洩しないための合理的な管理措置を講じている。

したがって、A社の名称は勿論、A社の特定に繋がる当該A社の従業員名(4名)、従業員名に由来するメールアドレスのユーザー名の部分(アカウント名)と、A社に由来するメールアドレスのドメインの部分(以下、これらを合わせて「A社の名称等」と記す。)は、営業秘密の秘密管理性の要件を満たす。

b 繰り返すが、受託者である商標権者は、社内規定や秘密保持契約に基づき、A社の名称を含む、全ての委託者に関する機密情報を外部に淵洩しないための合理的な管理措置を講じている。

これにより、当該情報は一般に公知ではなく、保護されるべき営業秘密としての非公知性が確保されているものと解する。すなわち、委託者であるA社という名称は公知であったとしても、「商標権者が、A社の商品(ぱちんこ・パチスロ)の開発業務を受託している」という情報は、一般に公知の情報ではない。

したがって、A社の名称等は、営業秘密の非公知性の要件を満たす。

c 加えて、A社の名称、すなわち委託者名は、商標権者にとって取引先(受託者)としての信用や取引条件、取引実績など、競争上の優位性を左右する、事業活動に極めて重要な情報である。

したがって、A社の名称等は、営業秘密の有用性の要件を満たす。

d なお、乙第9号証は、同業他社のホームページに掲載された開発実績のウェブページを紙媒体に印刷したものであり、そこには各年度の遊技機開発状況が示されているものの、当該ウェブページ最上部に「※機密保持契約により、作品タイトルは掲載しておりません。」と記載されており、具体的な開発機種名(作品タイトル)や委託者の情報は一切伏せられている。

同様に、乙第10号証は、商標権者のX(旧ツィッター)の要証期間内である2021年12月7日付のポストであり、そこには「今日の社長のつぶやき ナツメアタリが2021年に開発した機種は、ぱちんこ+パチスロ合わせて13機種!! 本当に開発実績が公表できないのがもどかしいです。。。」と記載され、2021年に商標権者が13機種(13種の遊技装置)の開発に携わったことが公表されているものの、具体的な開発機種名や委託者の情報は一切伏せられている。

このように、乙第9号証に係る同業他社及び商標権者といった遊技開発の受託業者間では、委託者との間で機密保持契約が締結され、受託者が開発機種名や委託者の情報といった開発実績を公開することは基本的にない。

以上の点からも、A社の名称等は、営業秘密の秘密管理性、非公知性、有用性の要件を満たすと考えるべきである。

(ク)以上より、乙第6号証の1の2022年1月13日付のメールは、商標権者の従業者であるM氏が、秘密保持契約の下、取引先であり、且つ委託者であるA社の担当従業員(4名)に対して、遊技機の主要部品であるサブ制御基板の開発に関する打合せ後のお礼と再打合せを依頼したものであり、乙第6号証の2の同日付のメールは、サブ開発環境の確認と再打合せを承諾するものである。

また、乙第6号証の1の「昨日はお忙しいところ、お時間をいただきまして誠にありがとうございました。」の記載より、乙第6号証の1のメールの送信日(2022年1月13日)の前日(同月12日)に打合せがあったことが確認できる。

以上より、これらメールにより、打合せが要証期間内に行われたこと、かつ当該打合せの参加者が受託者である商標権者の従業員と、委託者であり遊技機メーカーであるA社の従業員であったことが裏付けられる。

(ケ)ファイルの使用事実について

a 打合せの際に遊技機の企画資料や開発資料が収納されたクリアファイルが使用された事実を確実に立証するためには、例えば、遊技機の企画資料や開発資料をクリアファイルに収容した状態で、そのクリアファイル内に資料が実際に収容されている様子が写された写真を提出することなどが必要になるものと解されるが、乙第6号証の1のメール送信の前日に行われたA社との打合せにおいて、資料が収容されたクリアファイルの写真撮影は行っておらず、上記のようなクリアファイル内に資料が実際に収容されている様子が写された写真も存在しない。打合せの様子を写した写真も存在しない。

b しかし、一般的に、打合せに先立って、打合せ資料をクリアファイルに収容した状態で、そのクリアファイル内に資料が実際に収容されている様子を写真撮影する行為は、遊技機業界内だけでなく、社会一般的な業務慣行及び社会通念上、想定されるものではない。

これは、第1に、打合せ資料には、企業の重要な機密情報が含まれる場合が多く、これらは厳重に管理されるべきものであり、資料の内容を第三者に露出させるリスクを伴う写真撮影を行うことは、通常行われるものではないこと、第2に、資料を収容したクリアファイルの状態を撮影することは、偶発的な情報漏洩のリスクを増大させるため、業務上の合理的な管理措置としても採用し得ないものであること、第3に、実務上、対面による打合せ時の打合せ資料の確認は、直接の対面を通じて行われるのが一般的であり、物理的な写真撮影によって資料の収容状態を記録するような手法は、通常採用されないことなどによる。

c したがって、打合せの際に遊技機の企画資料や開発資料が収納されたクリアファイルが使用されたことを、上記のような写真を用いて立証することは実質上不可能であるといわざるを得ない。

d 一方、遊技機の開発事業を受託する商標権者が、遊技機メーカーであるA社との打合せにおいて、企画資料や開発資料を提示していることは社会通念上明らかであり、これら資料を提示したことは容易に推認し得る。そして、打合せ時に商標権者である受託者から委託者に対し、これら企画資料や開発資料がクリアファイルに収容された状態で手渡されることは不自然ではなく、このことも容易に推認し得る事項である。加えて、乙第4号証に示すように、打合せの際に使用されたと推認し得るクリアファイルは実在している。

以上の点から、要証期間内の2022年1月12日に商標権者とA社との間で開催された打合せ時に、乙第4号証のクリアファイルが使用されたと推認されるべきである。

e なお、上記の見解は、被請求人独自の主張ではなく、取消2007-300774、及びその審決取消訴訟事件である平成20年(行ケ)10224号において、使用されたと推認される封筒の存在を根拠として商標の使用が認められた事例を踏まえたものである。

(コ)クリアファイルに収納された資料について

上記のとおり、委託者であるA社と受託者である商標権者との間には、秘密保持契約が締結されている。したがって、2022年1月12日の打合せにおいて、クリアファイル内に収容された資料を容易に開示することはできない。

もとより、同日に行われた打合せは、ぱちんこ、又はパチスロにおける液晶表示、ランプ、役物(可動ギミック)、音楽、効果音制御といったような、演出・映像・音響などの演出面を担う基板であるサブ基板(サブ制御基板)に関するものであるから、クリアファイル内には遊技機のサブ基板の開発に関する資料が収容されていたことは容易に推認できる。

もっとも、当該資料の提出を求める指示があった場合には、それを提出する用意がある。

(3)まとめ

以上のように、商標権者は、受託者であるA社との間で締結された秘密保持契約に基づき、演出企画、映像企画、仕様設計、出玉設計(パチスロ)、配列設計(パチスロ)といった、遊技機開発の中核工程の受託業務を行い、実質的に遊技機の生産プロセスに深く関与している。

また、乙第6号証に示されるメールより、要証期間内に委託者との間で打合せが開催されたことが確認され、また、当該打合せにおいて、商標権者がクリアファイルを用いて企画資料・開発資料を提示した事実(クリアファイル内に企画資料・開発資料を収容して、これら資料を提示した事実)は容易に推認される。

以上より、要証期間内における本件商標の使用の立証は十分である。

第4 当審の判断

1 被請求人の立証責任

商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、本件商標の指定商品について登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録の取消しを免れない。

すなわち、本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、その指定商品について、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることを全て証明する必要がある。

2 事実認定

(1)被請求人の提出した乙各号証によれば、以下の事実が確認できる。

ア 乙第1号証

乙第1号証は、被請求人が、商標権者の会社沿革に係るウェブページと主張するものであり、1葉目において、左上に、「DREAM CREATOR/NatsumeAtari」の記載、その下に、「COMPANY」の記載、その右下に、「会社沿革」の記載の表中、「2002年10月」の欄に、「大阪市北区に遊技機開発会社「株式会社アタリ」を設立」の記載及び別掲2に示す商標の記載、「2013年10月」の欄に、「ナツメ株式会社と株式会社アタリの経営統合により「ナツメアタリ株式会社」が誕生」の記載がある。

イ 乙第2号証

乙第2号証は、被請求人が、商標権者の実績紹介の「ぱちんこ/パチスロ事業」に係るウェブページと主張するものであり、1葉目において、左上に、「DREAM CREATOR/NatsumeAtari」の記載、その下に、「WORKS」の記載、その右下に、「ぱちんこ/パチスロ事業」の記載、その下に、「受託範囲」の記載、その下に、「【企画】:演出企画、映像企画、仕様設計、出玉設計(パチスロ)、配列設計(パチスロ)」、「【映像】:絵コンテ、Vコンテ、アニメ、キャラクターデザイン、3Dモデル、図柄、UI、テロップ、エフェクト、オーサリング」、「【プログラム】:メイン、サブ、液晶、ランプ、役物」及び「【その他】:サウンド・ランプ・役物データ制作、申請書類作成、検証(デバッグ)」の各記載がある。

さらに、その記載の下に、「開発実績」の記載があり、その記載の下以降、本号証の2葉目にかけて、見出しの記載が「ぱちんこ 全36機種」及び「スロット 全42機種」とされた2つの表が提示され、前者においては、2010年、2013年及び2016年を除く2005年から2023年までの各年について、年別に、例えば、2023年の「アニメ版権ぱちんこ」等、各種のぱちんこ器具の名称一覧が記載され、後者においては、2022年を除く2007年から2023年までの各年について、年別に、例えば、2023年の「ゲーム版権パチスロ」等、各種のパチスロマシンの名称一覧が記載されている。

ウ 乙第3号証

乙第3号証は、被請求人が、「ぱちんこ/パチスロ開発会社」であるB社の「パチンコ・パチスロ開発」に係るウェブページと主張するものであり、1葉目において、左上に、B社の社名の記載があり、2葉目において、左上に、「開発実績」の記載、その記載の下以降、3葉目にかけて、例えば「アニメ版権のパチンコ作品」等、各種「パチンコ作品」及び「パチスロ作品」の名称一覧が記載されている。

エ 乙第4号証

乙第4号証は、クリアファイルを撮影した写真であり、別掲3のとおり、クリアファイルに、別掲2に示す商標と同様の商標が表示されていることが見て取れる。

オ 乙第5号証

乙第5号証は、被請求人が、ブログの記事と主張するものであり、1葉目において、上部に、「ブログ」を含む表題の記載、2葉目ないし5葉目において、見出しの記載が「企画、プランナー」、「出玉設計」等とされた各項目についての記載があり、このうち、4葉目の「サブプログラマー」の項目については、「パチンコ・パチスロの液晶映像部分のプログラム設計を行います。サブ制御基板に関わるプログラマーなのでサブプログラマーと呼ばれます。企画や映像企画が考えたアイデアを実行役としてプログラムの開発を行う仕事です。」の記載がある。

カ 乙第6号証の1

乙第6号証の1は、被請求人が、商標権者の従業員がA社の従業員に対して送信したメールと主張するものであり、件名(Subject)欄に、「【サブ関連】御打ち合わせの御礼」の記載、送信者(From)欄に、ニックネームにM氏の氏名が含まれ、アットマーク以降に商標権者の社名(英字表記。以下同じ。)が含まれるメールアドレス(以下「M氏アドレス」という。)の記載、日付(Date)欄に、「2022/01/13 15:19」の記載、宛先(To)欄に、ニックネームにA社の社名及びK氏の氏名が含まれ、アットマーク以降にA社の社名(英字表記。以下同じ。)が含まれるメールアドレス(以下「K氏アドレス」という。)の記載がある。

また、宛先(To)欄には、この他に、アットマーク以降にA社の社名が含まれる1名分のメールアドレスの記載があり、さらに、CC欄に、同様にアットマーク以降にA社の社名が含まれる2名分のメールアドレス、及びアットマーク以降に商標権者の社名が含まれる2名分のメールアドレスの記載がある。

そして、これらの記載の下における、電子メールの本文を示すものと思われる領域に、「今後のサブトライアル機会をご検討いただき誠にありがとうございます。」及び「後日、弊社の設計担当およびプログラマーを交えて御打ち合わせをさせていただければと存じます。」の記載があり、その下の当該電子メールの送信者の所属、氏名等を記載したものと思われる領域において、商標権者の社名の記載、その下に、商標権者の社内のものと思われる部署名の記載、その右に、M氏の氏名の記載、その下に、商標権者のものと一致する住所の記載がある。

キ 乙第6号証の2

乙第6号証の2は、被請求人が、上記カのメールへの返信メールと主張するものであり、件名(Subject)欄に、「Re:【サブ関連】御打ち合わせの御礼」の記載、送信者(From)欄に、K氏アドレス(ニックネームは、A社の社名が含まれていない等、乙第6号証の1におけるものと一部が異なる。A社関連のメールアドレスに関して、以下同じ。)の記載、日付(Date)欄に、「2022/01/13 18:53」の記載、宛先(To)欄に、M氏アドレスの記載、CC欄に、M氏アドレス及びK氏アドレスを除く乙第6号証の1におけるものと同じA社関連及び商標権者関連の各メールアドレスの記載がある。

また、これらの記載の下における、電子メールの本文を示すものと思われる領域に、「トライアルの可否も含めて、1度御社のサブ開発環境を詳しくお聞きたいと思っております。」の記載がある。

ク 乙第7号証

乙第7号証は、被請求人が、商標権者のホームページと主張するものであり、中ほどに、「ナツメアタリのスタジオ」の記載、その右下に、乙第6号証の1における上記オの部署名の記載、その下に、「企画(演出企画、仕様設計)、CG(アニメ、図柄、UI、テロップ、エフェクト、オーサリング)、制○(サブ、液晶、ランプ、役物)、サウンド(制作、オーサリング)、検証など、【一貫した】ぱちんこ○発、回○式遊技機(パチスロ)の開発」の記載がある(審決注:不鮮明なため判読できない文字を「○」と表記している。)。

ケ 乙第8号証

乙第8号証は、被請求人が、ブログの記事と主張するものであり、1葉目において、上部に、「パチスロ開発」及び「独り言」を含む表題の記載、2葉目において、「・演出制御プログラム」の記載、その下に、「映像・サウンド・ランプなどによる演出は、周辺基板(サブ基板)で制御しています。」の記載がある。

コ 乙第9号証

乙第9号証は、被請求人が、同業他社であるC社のホームページに掲載された開発実績のウェブページと主張するものであり、1葉目において、左上に、C社の社名の記載、その右下に、「開発実績」、「パチンコ・パチスロ機を中心に、・・・開発実績をご紹介します。」及び「※機密保持契約により、作品タイトルは掲載しておりません。」の各記載があり、その下に、2022年の「パチンコ」、「パチスロ」等についての一覧表が掲載されている。

サ 乙第10号証

乙第10号証は、被請求人が、商標権者のX(旧ツィッター)における投稿と主張するものであり、「今日の社長のつぶやき ナツメアタリが2021年に開発した機種は、ぱちんこ+パチスロ合わせて13機種!! 本当に開発実績が公表できないのがもどかしいです。。。」及び「午後3:44 2022年12月7日」の各記載がある。

(2)上記(1)によれば、次の事実を認めることができる。

ア 商標権者は、2013年10月にナツメ社とアタリ社の経営統合により発足した、ぱちんこ器具及びパチスロマシンに関連する事業を行う会社であり、その受託範囲には、「演出企画、映像企画、仕様設計、出玉設計(パチスロ)、配列設計(パチスロ)」の「企画」に関する業務や、「メイン、サブ、液晶、ランプ、役物」の「プログラム」に関する業務が含まれ、ぱちんこ器具については、2021年ないし2023年の各年における開発実績、パチスロマシンについては、2021年及び2023年の各年における開発実績を有している(乙1、乙2)。

イ 商標権者のウェブサイトにおいて、アタリ社についての記載に添えて、別掲2に示す商標が表示されていた(乙1)一方、これと同様の商標が表示された別掲3のクリアファイル(以下「本件クリアファイル」という。)が存在する(乙4)。

ウ 商標権者の従業員とA社の従業員との間で、2022年1月13日に、電子メールのやりとりが行われた(乙6)。

ここで、当該電子メールの件名や本文の記載によれば、当該電子メールは、それが送受信された日の前日である2022年1月12日に、商標権者及びA社の双方の従業員を交えて、「サブ」に関する打合せ(以下「本件打合せ」という。)が行われたことを示すものと認められる。

エ 本件打合せに参加した商標権者の従業員は、商標権者における、「サブ、液晶、ランプ、役物」等を扱う部署に所属していた人物であり、本件打合せの後、商標権者の設計担当者及びプログラマーが参加の上、改めて打合せを行うことが予定された(乙6、乙7)。

オ ぱちんこ器具やパチスロマシンにおいては、「サブ基板」又は「サブ制御基板」と呼ばれる部品が用いられ、これにより、映像・サウンド・ランプなどによる演出が制御される(乙5、乙8)。

カ 上記ア及びウないしオによれば、本件打合せは、2022年1月12日に行われ、これには、ぱちんこ器具やパチスロマシンの部品であるサブ基板についての内容が含まれていたこと、また、商標権者は、A社から当該サブ基板の設計やプログラムに関する業務を委託されており、本件打ち合わせは、当該業務の一環として商標権者とA社との間で行われたことが認められる。

しかしながら、商標権者による上記業務の受託は、A社の商品としてのぱちんこ器具若しくはパチスロマシン又はそのいずれかの部品の生産等を行うA社に対する役務の提供として行われたものと推認できるにとどまり、商標権者が上記業務において自らの商品等の生産等を行い、A社にその販売等を行ったものとまでは明らかでない。

キ また、本件打ち合わせの際に本件クリアファイルが使用された事実が確認できる証拠は提出されておらず、また、具体的な使用の態様が確認できる証拠も提出されていない。

乙第4号証の写真からは、本件クリアファイルが主として打合せ等の際に取引先等に引き渡す書類等を収容することを目的としたものであることはうかがえないことからすれば、そのようなクリアファイルの使用態様は一般的にはあり得るとしても、この点が本件打合せについて当然に当てはまるものとはいえない。

ク 上記カ及びキによれば、本件打合せの際、商標権者がA社に、商標権者の商品としてのぱちんこ器具若しくはパチスロマシン又はそのいずれかの部品に関する広告又は取引書類を、本件クリアファイルに収容された状態で引き渡したものとは認められない。

3 判断

上記2(2)アないしクの事実認定からすれば、次のとおり判断できる。

(1)本件クリアファイルに表示された商標は、図案化された「当」様の文字を赤色の四角形内に配した図形の下に、「a」及び「R」が図案化された、黒色の「aTaRI」の欧文字を配してなるものであり、後者は、本件商標と同一視し得るものといえる。

また、本件打合せが行われた日付は、要証期間であり、本件打合せには、ぱちんこ器具やパチスロマシンの部品であるサブ基板についての内容が含まれていたことが認められ、ぱちんこ器具又はパチスロマシン専用のサブ基板は、第28類「スロットマシン,パチスロマシン,ぱちんこ器具」のいずれかの範ちゅうに属するものといえる。

(2)しかしながら、本件打合せの際、商標権者がA社に、商標権者の商品としてのぱちんこ器具若しくはパチスロマシン又はそのいずれかの部品に関する広告又は取引書類を、本件クリアファイルに収容された状態で引き渡した事実を認めることはできないから、被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者が、商品に関する広告又は取引書類に標章を付して頒布する、商標法第2条第3項第8号に該当する使用行為を行ったことを証明したものとは認められない。

なお、被請求人は、回答書において、本件クリアファイル内に収容された遊技機のサブ基板の開発に関する資料の提出を求める指示があった場合には、それを提出する用意がある旨述べているが、仮に当該資料が提出されてその内容が明らかにされたとしても、その内容のみをもって、商標権者の商品としてのぱちんこ器具若しくはパチスロマシン又はそのいずれかの部品に関する広告又は取引書類に商標を付して頒布した事実が認められるものではない以上、合議体は、当該資料の提出を求めることは不要と判断した。

(3)その他、被請求人が提出した全証拠及び同人の主張を総合してみても、被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、請求に係る指定商品について、商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する本件商標の使用行為を行ったことを証明したものとは認められない。

4 まとめ

以上のとおり、被請求人が提出した証拠によっては、被請求人は、要証期間に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を、本件商標の指定商品のいずれかについて、商標法第2条第3項各号の使用行為を行ったことを証明していない。

また、被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。

したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

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