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Trademark Appeal Case

称呼の類似性と要部抽出

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024890065
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6796456号商標(以下「本件商標」という。)は、「かけまるチャンネル」の文字を標準文字で表してなり、第41類「インターネット上で配信する動画・静止画の制作及びその指導・助言・情報の提供,インターネットによる通信を用いて行う動画・静止画の提供,インターネット上の静止画・動画の企画・制作,動画作成用スタジオの提供,インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,インターネットを利用して行う音楽の提供,演劇の演出又は上演,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),音響用又は映像用のスタジオの提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,電子出版物の提供」を指定役務として(以下「本件指定役務」という。)、令和3年7月30日に登録出願された商願2021-100589に係る商標法第10条第1項の規定による商標登録出願として、同6年3月12日に登録審決、同年4月16日に設定登録されたものである。

第2 商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標

請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第11号に該当するものとして引用する登録第6451419号商標(以下「引用商標」という。)は、「カケマル」の片仮名を標準文字で表してなり、令和3年7月16日に登録出願、第41類「オンラインによる音楽の提供(ダウンロードできないものに限る。),音楽の演奏,音楽のプロデュース(企画・制作),オンラインによる映像の提供(ダウンロードできないものに限る。),電子出版物の提供,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,音響用又は映像用のスタジオの提供」のほか、第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品及び指定役務として、同年10月4日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張

請求人は、本件商標の商標登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書において要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第41号証を提出した。

なお、以下、証拠の記載に当たっては、「甲(乙)第○号証」を「甲(乙)○」のように省略して記載する場合がある。

1 本件商標登録を無効とすべき理由

本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する商標であり、その登録は同法第46条第1項第1号の規定により無効にすべきものである。

(1)本件商標について

本件商標は、「かけまるチャンネル」の文字より構成されている。商標中の「チャンネル」の文字は、テレビ・ラジオの番号や表題のことを表す語として知られており、近時では、動画配信サービスに登録された内容や、同サービスでの管理・配信場所を表す語としても用いられている(甲3)。

さらに、動画配信サービスの分野において、「○○チャンネル(channel)」の文字が、同サービスの名称を表すものとして一般的に使用されている実情が多数見受けられる(甲8~甲26)。

特に、甲第21号証ないし甲第26号証に示す同サービスは、本件商標にかかる同サービス(甲27)と同様に、恋人同士で開設し、主に2人のやり取りなどを動画で配信するサービスである。このことより、恋人同士が出演する同サービスの界隈おいても、同サービスの名称を「○○チャンネル(channel)」とすることは一般的であることがわかる。そのため、需要者は、恋人同士が出演する同サービスに触れる際、「○○チャンネル(channel)」における「○○」部分に注目し、出所を識別しているものと思料する。

そうすると、仮に、「○○チャンネル」と「○○」が類似しないと判断される場合、需要者等が動画サイトにて、「○○チャンネル」又は「○○」の動画を検索した際に、本来の出所ではない動画がヒットしてしまい、需要者において混同が生じるものである。

したがって、木件商標中の「チャンネル」の文字は、本件指定役務との関係で、「テレビ・ラジオの番号や表題」や、「動画配信サービスに登録された内容や、同サービスでの管理・配信場所を表すもの」と認識されることは自然であり、本件商標の権利者が提供する役務との関係では、「チャンネル」の文字部分には識別力がなく、本件商標については、その構成中の「かけまる」の文字部分のみが識別力を有する文字部分と認識されるとするのが自然である。

また、「かけまる」の語は、辞書等に載録のない語であり、特定の観念を生じさせない独創的(造語的)商標と理解することができる。

それにより、本件商標は、「かけまる」の文字が自他役務の識別標識として認識され、かつ、強く支配的な印象を与える部分というのが相当である。そのため、「かけまる」を抽出して、引用商標と対比して、両商標の類否を判断することも許されるものである。

してみれば、本件商標は、その全体から「カケマルチャンネル」の称呼が生じるほかに、要部と認められる「かけまる」の文字部分から単に「カケマル」の称呼をも生じると判断するのが相当である。

(2)引用商標について

引用商標は、「カケマル」の文字で構成されているところ、これより「カケマル」の称呼が生じ、また、「カケマル」の語は、辞書等に載録のない語であり、特定の観念を生じさせない独創的(造語的)商標と理解することができる。

(3)本件商標と引用商標との類否について

ア 外観について

本件商標と引用商標とを比較するに、本件商標の要部である「かけまる」の文字と引用商標「カケマル」の文字は、平仮名と片仮名の違いはあるものの、商標の使用においては商標の構成文字と同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記されることが一般的に行われている実情からすると、本件商標の要部と引用商標との文字種の相違が取引者又は需要者に対して外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえないものである。

そうすると、本件商標と引用商標とは、「かけまる(カケマル)」の外観が類似するものである。

イ 称呼について

本件商標については、その商標中の「かけまる」の文字部分より「カケマル」の称呼が生ずるものである。

そして、引用商標については、「カケマル」の文字より「カケマル」の称呼が生ずるものである。

そうすると、本件商標と引用商標とは、「カケマル」の称呼を同じくするものである。

ウ 観念について

本件商標と引用商標とは、ともに辞書等に載録のない語であることから、特定の観念を生じさせないものであり、比較観察をすることはできない。

エ 指定役務について

本件商標の指定役務全てについて、引用商標の指定役務と類似する。

オ 両商標の取引の実情について

本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、「かけまるチャンネル」の名称にてYouTubeチャンネル(甲27)や、インスタグラム(甲28、甲29)、X(甲30)を運用しているものの、実際には、「かけまる」の語を単独で使用している実情が多数見受けられる。さらに、本件商標権者のウェブページ内のグッズ販売ページにおいても、「かけまる」の語でページが設けられていたり(甲31)、LINE STORE内において、「かけまるのLINEスタンプ1」の名称でLINEスタンプを提供していたり(甲32)、音楽配信ストアページにおいて、アーティスト名を「かけまる」と表記していたり(甲33)する実情も見受けられる。なお、音楽配信ストア内の本件商標権者のアルバムページにおいて、引用商標の権利者(以下「引用商標権者」という。)のアイコンが誤って紐づけられ、表示されていることからも(甲34)、実際に、両者間で混同が生じる状況にあるといえる。

これらのことより、本件商標権者は、「かけまるチャンネル」の名称にて動画配信サービスを行っているものの、上記のとおり、本件商標権者自身が「かけまる」の語を単独で使用している場面が多いこともあり、当該サービスにふれる需要者は、その出所を「かけまる」と認識することは自然であると考えられる。

なお、引用商標権者は、2009年頃より「kakemaru(カケマル)」名義で音楽の制作・販売を開始しており、2015年からは、多くの音楽配信サイトにて、継続的にアルバムを制作・発表している(甲35~甲40)。また、Google検索エンジンを使用して「カケマル」の語を検索したところ、本件商標権利者のYouTubeチャンネル「かけまるチャンネル」が検索結果の最上部に表示される(甲41)。

この点、商標法は「商標を保護することにより、商標の使用をする者の業務上の信用の維持を図り、もつて産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護することを目的とする。」(商標法第一条)ことに鑑みると、現状、本件商標の存在により、引用商標の保護が適切にされていないものであり、需要者は、本件商標と引用商標の出所混同のおそれがあるといえる。

カ 小括

本件商標と引用商標の類否について検討すると、本件商標と引用商標とは、外観については要部において類似するものであり、称呼については要部において同一であり、観念については比較ができないものである。また、その指定役務も類似するものであり、取引の実情を鑑みても、両商標は出所混同のおそれがあるものである。したがって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当する。

2 むすび

本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号の既定により、無効とすべきものである。

第4 被請求人の答弁

被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証を提出した。

1 本件商標は、引用商標と類似せず、商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものではないことから、本件審判の請求が成り立たないことは明らかであり、以下にその理由を詳述することとする。

2 本件商標について

本件商標は、「かけまるチャンネル」の標準文字をもって、同書・同大・等間隔で全体として極めてまとまりよく表されていることに鑑みると、その構成上、「かけまる」の文字部分と「チャンネル」の文字部分とに分離して認識されるものではなく、寧ろ一体的な商標としてのみ把握され、また、本件商標の全体より自然に生ずる称呼「カケマルチャンネル」は、格別冗長なものではなく、語呂が良く一気一連に淀みなく称呼されることからすると、称呼上においても、本件商標を「かけまる」と「チャンネル」の各文字部分に分離せねばならないとする特段の事情は存在せず、すなわち、本件商標は、「かけまる」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されているものではない。

また、本件商標中の「かけまる」の文字部分については、後述のとおり、被請求人会社に所属するカップルYoutuberを想起させ得ることは否定しないものの、本件商標の登録査定時、それを超えて、当該文字部分が、本件指定役務の取引者や需要者に対し、「引用商標の商標権者が本件指定役務の出所である」旨を示す識別標識として強く支配的な印象を与えるものであったとする事実を見出すことはできない。

さらに、本件商標中の「チャンネル」の文字部分に関しても、これに接した本件指定役務の取引者、需要者は、「テレビ・ラジオ放送で、適当な間隔をおいて並んだ各使用周波数に順次番号を付けたもの。」の意味を理解するとしても(乙1)、あくまでもテレビやラジオ放送との関係にとどまり、本件指定役務全般に密接に関連する一般的、普遍的な文字であるとまではいえず、自他役務を識別する機能がないとまではいえない。

これらに加え、本件商標「かけまるチャンネル」は、被請求人会社に所属するカップルYoutuberの出演する動画配信サービスの名称として、遅くとも2020年3月29日から現在に至るまで継続的に使用されており、YouTubeにおける登録者数は40.6万人、動画再生回数はのべ約2億回に達し(乙2~乙5)、インフォニア株式会社が運営するランキングサイト「みんなのランキング」におけるYouTuberの人気ランキングでは、カップルYouTuberによる動画配信サービスの中で第10位、また総合ランキングでも第397位と高い人気を博しているといった取引の実情がある(乙5~乙7)。

そして、本件商標について、その構成中の「かけまる」の文字部分を取り出して観察することを正当化するようなその他の事情は見いだせないことも考慮すると、本件商標と引用商標の類否を判断するにあたっては、その構成部分全体を対比するのが相当であり、本件商標の構成中の「かけまる」の文字部分だけを引用商標と比較して両商標の類否を判断することは許されないというべきである。

3 引用商標について

引用商標は、「カケマル」の標準文字をもって表されてなり、該文字より「カケマル」の称呼が生ずる。

4 本件商標と引用商標との類否について

上記の諸点を踏まえて本件商標「かけまるチャンネル」と引用商標「カケマル」の類否について検討すると、本件商標を構成する9文字中4文字において一定の共通性を見いだし得るにすぎず、その外観、称呼において両者が異なるものであることは明らかであるから、いずれの商標からも被請求人の会社に所属するカップルYoutuberに関係するものという観念が生じ得るとしても、全体として類似する商標であるということはできない。

5 請求人の主張について

(1)「チャンネル」の文字部分について

請求人は、本件商標中の「チャンネル」の文字部分について、テレビ・ラジオの番号や表題のことを表す語として知られているとしつつも、近時では、動画配信サービスに登録された内容や、同サービスでの管理・配信場所を表す語としても用いられていると述べた上で、恋人同士で開設し、主に2人のやり取りなどと動画で配信するサービスの界隈においても、同サービスの名称を「○○チャンネル(channel)」とすることが一般的であるため、需要者は、恋人同士が出演する同サービスに触れる際、「○○チャンネル(channel)」における「○○」部分に注目し、出所を識別すると主張する。

しかしながら、甲第8号証及び甲第15号証ないし甲第26号証からも明らかなとおり、動画配信サービスで使用される「○○チャンネル(channel)」の名称は、「○○」の文字等と「チャンネル(channel)」の文字とを結合させて初めて、動画配信サービスの名称であることを知らしめるものであり、換言すると、「〇〇」部分のみに接した需要者において、そもそもこれが動画配信サービスであると理解する術はなく、また、動画配信サービスの分野において、「○○チャンネル(channel)」の名称を「〇〇」と省略して同サービスの出所が識別されているといった実情もない。

すなわち、動画配信サービスの分野での名称の使用の実情からすると、「○○チャンネル(channel)」なる名称は、その構成全体をして出所識別機能を発揮し、殊更、「チャンネル(channel)」の文字が、動画配信サービスに登録された内容や、同サービスでの管理・配信場所等を表すに過ぎないと捉えられることは到底あり得ず、このことは、特許庁において、「チャンネル(channel)」の語を含んだ「○○チャンネル(channel)」といった構成の商標につき、動画配信以外の方法による映像や動画の提供の役務との関係でも、役務の質の誤認を生ずるおそれがあるものではない(商標法第4条第1項第16号に該当しない)として多くの登録を認められていることからも明白である。

さらには、本件商標と同じ、第41類の映像又は動画に関連する役務の属する類似群では、「チャンネル/ちゃんねる/CHANNEL」の文字と他の文字とを組み合わせた商標と、当該他の文字のみからなる商標との併存が少なからず認められており、このことから、「チャンネル(ちゃんねる/CHANNEL)」の文字部分が単なる識別力に欠けるものとして捉えられることはなく、商標の類否に大きな影響を及ぼすといった事実が理解できる。

(2)取引の実情について

次に、請求人は、被請求人(会社に所属するカップルYouTuber)が、実際には、「かけまる」の語を単独で使用している実情が多数見受けられるとともに、音楽配信ストア内のアルバムページにおいて、引用商標権者のアイコンが誤って紐づけられ、表示されていることから、両者間で混同が生じる状況にあると主張している(甲28~甲33)。

さらに、請求人は、引用商標権者は、2009年頃より「kakemaru(カケマル)」名義で音楽の制作・販売を開始し、2015年からは、多くの音楽配信サイトに継続的にアルバムを制作・発表している(甲35~甲40)と述べているところ、芸名やアーティスト名として、取引者、需要者に広く認識されている場合、引用商標に係る指定商品や指定役務との関係では、商品の品質や役務の質を表示する商標として、商標法第3条第1項第3号の規定に該当することを理由に拒絶されることとなり、引用商標「カケマル」が同号に該当することなく、また、同条第2項の適用も受けることなく登録を認められているということは、引用商標が取引者、需要者に広く認識されているものでないことを意味する。

他方、「かけまる」の文字については、本件商標の商標登録出願及び本件商標の原出願(商願2021-100589)の審査において認定されているとおり、被請求人会社に所属するカップルYouTuberが使用する「かけまる」は、著名な芸名である。

そうとすると、請求人が主張する、実際に混同が生じる状況というのは、「カケマル」を使用した音楽アルバムの制作・販売等の活動が、恰も被請求人会社に所属するカップルYouTuberである「かけまる」と何らかの関係性を有するとの混同が生じているとするのが自然であって、このことは、請求人の述べるとおり、Google検索エンジンを使用して「カケマル」の語を検索すると、「かけまるチャンネル」のYouTubeチャンネルが検索結果の最上部に表示されることからも裏付けられる(甲41)。

なお、甲第28号証ないし甲第33号証に示された「かけまる」の標章は、その使用態様からも一見して理解できるとおり、被請求人会社に所属するカップルYouTuberの著名な芸名であって、本件商標が省略して使用されている等の事象があることを何ら立証するものでなく、本件商標とは別異のものであり、このような芸名の使用が、本件商標と引用商標の類否を判断するに際して何ら影響を与えるものでないことは明らかであるものの、いずれにしても、本件商標は、その指定役務について使用されたとしても、これが引用商標権者の業務に係る役務であるかの如く、役務の出所の混同を生じさせるものではない。

したがって、取引の実情を勘案しても、本件商標は、引用商標との関係で役務の出所につき混同を生じさせるおそれはなく、両商標は非類似といえることから、請求人の主張は失当である。

6 むすび

以上詳述したように、本件商標は引用商標とは非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断

請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。

以下、本案に入って審理する。

1 商標法第4条第1項第11号該当性について

(1)商標法第4条第1項第11号について

商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の役務に使用された場合に、役務の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが、それには、そのような役務に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、しかもその役務の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする(最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日判決参照)。

また、複数の構成部分を組み合わせた結合商標については、商標の各構成部分がそれを分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合していると認められる場合においては、その構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して類否を判断することは、原則として許されないが、その場合であっても、商標の構成部分の一部が取引者又は需要者に対し、役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じない場合などには、商標の構成部分の一部だけを取り出して、他人の商標と比較し、その類否を判断することが許されるものと解される(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日判決、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日判決、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日判決参照)。

さらに、商標の類否判断に当たり考慮することができる取引の実情とは、その指定商品・役務全般についての一般的、恒常的なそれを指すものであって、単に該商標が現在使用されている商品・役務についてのみの特殊的、限定的なそれを指すものではないと解される(最高裁昭和47年(行ツ)第33号同49年4月25日判決参照)。

(2)商標法第4条第1項第11号該当性

ア 本件商標

本件商標は、上記第1のとおり、「かけまるチャンネル」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「かけまる」の文字は、辞書等に掲載のないものであって、特定の意味合いを認識させるものではない。

また、その構成中「チャンネル」の文字は、「テレビ・ラジオの各放送局および各放送事業者に割り当てられた周波数帯。また、それぞれの番号や表題のこと。」などの意味を有する語であって、「動画配信サービスに登録された内容」や、「動画共有サービスでの管理・配信場所」の意味でも用いられているものであるが(甲3)、本件商標「かけまるチャンネル」の文字は、辞書等に掲載のないものであって、特定の意味合いを認識させるものではない。

そして、本件商標を構成する各文字は、同じ書体、同じ大きさ、等しい間隔で横一列に表してなることから、外観上まとまりよく一体的に看取されるものである。

また、本件商標は、その構成文字に相応して、「カケマルチャンネル」の称呼が生じるものと認められるところ、当該称呼は決して長い称呼とはいえず、よどみなく一連に称呼し得るものである。

さらに、本件商標の構成中の「チャンネル」の文字は、上記のとおり、動画配信サービスに登録された内容や、動画共有サービスでの管理・配信場所の意味で用いられており、動画配信サービス及び動画共有サービス(以下、まとめて「動画配信サービス等」という場合がある。)は、本件指定役務の提供においても多く利用されているものであるところ、動画配信サービス等の分野では、例えば、「Jリーグ公式チャンネル」、「JPO Channel」、「はまいたちチャンネル」などのように、何らかの文字と「チャンネル(Channel)」の文字とを結合した、「○○チャンネル(Channel)」の文字が、動画配信サービス等のチャンネル名(名称)を表すものとして、一般的に使用されている実情があり(甲4~甲20)、また、恋人同士が出演する動画配信サービス等においても、同様に、同サービスのチャンネル名(名称)を表すものとして「○○チャンネル(channel)」の文字が一般的に使用されている実情があることからすれば(甲21~甲26)、本件指定役務の分野において、これら「○○チャンネル(Channel)」の文字に接する取引者、需要者は、「○○チャンネル(Channel)」の文字全体を一体的に把握して、動画配信サービス等のチャンネル名(名称)を表すものと認識するというのが相当である。

そうすると、上記のとおり、外観上まとまりよく一体的に看取されること、称呼においても、決して長い称呼とはいえず、よどみなく一連に称呼し得るものであることなども併せて考慮すると、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標の構成中の「チャンネル」の文字を捨象し、「かけまる」の文字のみに着目するというよりは、本件商標を一体的に把握して、一体不可分のものと認識、理解するとみるのが相当であるから、本件商標は、その構成文字に相応して「カケマルチャンネル」の称呼のみを生じ、また、「かけまるチャンネル」の文字が、一般の辞書等に掲載される成語とは認められず、当該文字が、本件指定役務との関係において、特定の意味合いを有するものと判断しなければならない特段の事情は有さないものであるから、特定の観念を生じないものである。

なお、請求人は、本件商標の構成中の「チャンネル」の文字は、本件指定役務との関係で、「テレビ・ラジオの番号や表題」や、「動画配信サービスに登録された内容や、同サービスでの管理・配信場所を表すもの」と認識されることは自然であり、本件商標の権利者が提供する役務との関係では、「チャンネル」の文字部分には識別力がなく、本件商標については、その構成中の「かけまる」の文字部分のみが識別力を有する文字部分と認識されるとするのが自然である旨主張する。

しかしながら、本件商標「かけまるチャンネル」の文字は、上記のとおり、本件指定役務の分野においては、その文字全体を一体的に把握され、動画配信サービス等のチャンネル名(名称)を表すものと認識されるというのが相当であって、「○○チャンネル」の構成からなる同サービス等のチャンネル名(名称)について、「○○」の部分のみが省略されて役務等の出所識別標識として取引者、需要者に認識されるのが一般的であるとする取引の実情も見いだせない。

また、請求人は、本件商標権者は、「かけまるチャンネル」の名称にて動画配信サービスを行っているものの、当該権利者自身が「かけまる」の語を単独で使用している場面が多いこともあり、当該サービスにふれる需要者は、その出所を「かけまる」と認識することが自然である旨主張する。

しかしながら、本件商標権者が「かけまる」の語を単独で使用している場合があるからといって、直ちに、本件商標の構成中の「かけまる」の文字部分のみが省略されて役務等の出所識別標識として取引者、需要者に認識されるものとはいえず、かつ、上記の請求人の主張は、単に本件商標が現在使用されている役務についてのみの特殊的、限定的な取引の実情を述べているにすぎないものであって、「○○チャンネル」の構成からなる同サービス等の名称について、「○○」の部分のみが省略されて役務等の出所識別標識として取引者、需要者に認識されるのが通常であるとする一般的、恒常的な取引の実情を示す証拠等も見いだせない。

したがって、これら請求人の主張は、採用することができない。

イ 引用商標

引用商標は、上記第2のとおり、「カケマル」の片仮名を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して、「カケマル」の称呼が生じるものである。

また、「カケマル」の文字は、辞書等に掲載のないものであって、特定の意味合いを認識させるものではない。

したがって、引用商標は、「カケマル」の称呼が生じるものの、特定の観念を生じないものである。

ウ 本件商標と引用商標の類否について

本件商標である「かけまるチャンネル」の文字と引用商標である「カケマル」の文字を比較するに、外観においては、片仮名と平仮名の文字種の違う語が含まれているほか、その構成文字数及び構成態様が明らかに異なり、外観上、判然と区別し得るものである。

次に、称呼においては、本件商標から生じる「カケマルチャンネル」の称呼と引用商標から生じる「カケマル」の称呼とは、「カケマル」の称呼の部分を共通にするものの、その後に続く「チャンネル」の音の有無に違いがあることから、音数及び音構成において明らかに異なり、明瞭に聴別できるものである。

そして、観念においては、本件商標及び引用商標は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、比較することができない。

したがって、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観上判然と区別できるものであり、称呼においても明瞭に聴別できるものであるから、両者の外観、称呼、観念によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は、相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。

エ 小括

上記のとおり、本件商標と引用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務が類似するとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

2 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項第1号に基づき、その登録を無効とすることはできない。

よって、結論のとおり審決する。

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