結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025005243 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、令和5年9月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和6年 3月12日付け:拒絶理由通知書
令和6年 8月28日 :意見書の提出
令和6年12月19日付け:拒絶査定
令和7年 4月 4日 :審判請求書の提出
令和7年 8月 8日付け:審尋
令和7年10月24日 :意見書の提出
本願商標は、別掲1のとおりの立体的形状からなり、第30類「釜めし」を指定商品とし、立体商標として登録出願されたものである。
(1)商標法第3条第1項第3号について
本願商標は、商標登録願に記載のとおりの立体的形状からなるところ、これは本願の指定商品「釜めし」との関係において、当該商品の容器の形状を立体的に表したものと認められる。
そして、本願の指定商品を取り扱う業界において、陶器製かつ釜形の容器に入った釜めしが一般に販売されている実情があるから、本願商標は、商品の容器の形状として採用し得る立体的形状の範囲を超えているとはいえないものである。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、それに接する取引者又は需要者は、その商品の容器の形状を表示したものと認識するにとどまり、商品の出所を表示する標識として認識することはできないとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、商品の容器の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項について
出願人が提出した証拠を全体的に考察したとしても、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできないから、本願商標が、商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない。
当審において、令和7年8月8日付け審尋により、別掲2及び別掲3に掲げる事実を提示した上で、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、商標法第3条第2項の要件を具備するということはできない旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、請求人に対し、意見を求めた。
請求人は、当該審尋に対し、要旨下記5(3)アないしウのとおりの意見を述べた。
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、蓋がされた陶器製の釜を表したと考えられる立体的形状よりなるものである。
ところで、本願の指定商品は「釜めし」(釜飯)であるところ、これは「魚介類・鶏肉・野菜などを米と共に小釜に入れ、醤油・酒などで味付けして炊き込んだ料理。」であって、「釜のまま供する。」(出典:「広辞苑 第七版」株式会社岩波書店)ものであることからすると、当該商品の販売に際して、商品の容器(包装)が釜の形状をしていることは、取引者、需要者において、当然に予想されるものである。
また、原審提示の情報や、別掲2の情報、更には請求人提出の第643号証(「釜めし特集」の部分)にあるように、釜めしを取り扱う分野においては、本願商標のような、陶器製の釜めし用容器(陶器製のごとき外観を有するものを含む。以下同じ。)が、商品の包装として採用されている事実が認められる。
加えて、別掲3の情報にあるように、調理用具を取り扱う分野において、本願商標のような、蓋付きの陶器製の釜めし用容器が、一般に製造、販売されている事実も認められる。
以上のことからすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その商品の包装に採用し得る形状の一形態を表したものとして理解するにとどまり、自他商品を識別するための標識としては認識し得ないといえることから、本願商標は、商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項の要件を具備しないことについて
請求人は、令和7年4月4日付け審判請求書(及び原審における同6年8月28日付け意見書)において、本願商標は、その長年の使用の結果、商標法第3条第2項の要件を具備するに至ったものである旨主張し、証拠方法として、第1号証ないし第831号証(枝番号を含む。)を提出しているが、以下のアないしウの理由により、提出された証拠をもってしては、その主張を採用することはできない。
ア 商標の使用について
本願商標は、別掲1のとおり、蓋がされた陶器製の釜を表したと考えられる立体的形状よりなるものである。
しかしながら、提出された証拠において示されている、請求人が本願商標を使用していると主張する請求人の業務に係る商品(包装を含む。以下「請求人商品」という。)の形状(画像)をみるに、本願商標又はこれと商標としての同一性を損なわないといえるもの(蓋がされた釜を示すもの)はごくわずか(第2号証、第665号証ほか)であって、証拠の大半は、容器内に商品が詰められ、蓋がない状態で表されている商品の画像が示されているものである(第10号証の1ないし17、第117号証ほか)。
また、実際に請求人商品が販売、陳列されるに際しては、例えば第1号証(6頁)に示されているように、包み紙が使用されているものと推認される。
したがって、提出された証拠によっては、本願商標又はこれと商標としての同一性を損なわないといえる商標が、第三者による宣伝広告等も含め、請求人主張の規模において使用されているという事実を確認することができず、また、需要者が本願商標に接する機会が多いものともいえない。
イ 請求人以外の者による本願商標と同一又は類似する標章の使用の有無及び使用状況について
上記(1)のとおり、本願の指定商品「釜めし」との関係においては、商品の容器(包装)が釜の形状であることは何ら特徴的とはいえない上、本願商標に近似する形状の容器が釜めしの容器(商品の包装)として採用されている事実(別掲2参照。)、及び、当該形状の陶器製の釜めし用容器が一般に製造、販売されている事実(別掲3参照。)が認められる。
このような状況において、本願商標をその指定商品に使用するときには、これに接する取引者、需要者によって、商品の包装の形状を表示するものとして一般に認識されるものであり、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものというべきものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは適当でないとともに、仮に、請求人商品が長期間、相当程度の規模で販売され、宣伝広告されてきたものであるとしても、それによって、本願商標を構成する立体的形状のみが独立して、自他商品の識別標識として需要者に認識されるに至っているとは考え難いものである。
なお、請求人は、本願商標の形状は弁当容器としての特殊性(特異性)を有する旨を主張しているが、本願の指定商品は、上記1のとおり「釜めし」であるから、商品「釜めし」との関係で、その商品の包装(容器)の形状における特殊性(特異性)が判断されるべきものである。
ウ 需要者の商標の認識度を調査したアンケートの結果について
請求人は、本願商標に係る需要者の認識度を示す証拠として、アンケート調査結果「容器の出所識別に関する調査 報告書」(第660号証)を提出している。
そこで、そのアンケート調査結果を見るに、商標法第3条第2項の要件を具備するには、その商品の需要者の間で全国的に認識されていることを要するところ、その調査範囲は、請求人商品の販売地域及びその近県の16都県(関東、中部地方の都県)に絞られており、全国の需要者の認識度を推し測るものとして、適切とはいえない。
また、本願商標の形状からの純粋想起を問うことを目的としたと考えられる設問(Q4)において、その問いの前提が「お弁当の容器です。」と始まっており、上記1のとおり、本願の指定商品は「釜めし」であるところ、本願商標の形状が「弁当の容器」であることを前提とした設問に係る回答内容が、商品「釜めし」である本願商標の形状の純粋想起を示しているとはいえない。
このように、このアンケート調査結果は、調査対象又は調査内容等において、本願商標に対する需要者の認識を推し量る上で的確性を欠く部分があるから、商標法第3条第2項の要件を判断する証拠として採用し難いものである。
以上のことからすれば、このアンケート調査結果からは、本願商標が使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているということはできない。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、商品「釜めし」を釜の形状をした土釜容器に入れて販売したのは、請求人が最初であり(第6号証)、当該商品の販売に際して、商品の容器(包装)が釜の形状をしていることは、取引者、需要者において、当然に予想されるものではない旨主張する。
加えて、請求人は、別掲2や請求人の提出する第643号証に挙げられた商品の容器の事例は、その材質や形状が本願商標とは異なり、使用開始時期等も不明であること、及び、別掲3に挙げられた事例は、本願の指定商品とは異なる分野の商品に係るものであることから、これらの情報は、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当することの根拠として、また、商標法第3条第2項の要件を具備しないことの根拠として、いずれも不十分である旨主張する。
しかしながら、請求人が提出する証拠からは、「弁当(いわゆる「駅弁」)」の容器として、本願商標のごとき釜の形状を最初に採択し、販売したのが請求人であることは主張どおりであるとしても、商品「釜めし」に係る事情は必ずしも明らかとはいえない。
また、上記(1)のとおり、我が国の国語辞書類において「釜めし」は「釜のまま供する。」ものであることが説明されていることに加え、本件審決時点で、釜めしを取り扱う分野において、実際の材質や細かな形状等は異なるにしても、本願商標のごとき、陶器製の釜めし用容器が、商品の包装として採用されている事実(別掲2ほか)、及び、調理用具(特に、業務用の釜めし容器)を取り扱う分野において、本願商標のような、蓋付きの陶器製の釜めし用容器が、一般に製造、販売されている事実(別掲3)を踏まえれば、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その商品の包装に採用し得る形状の一形態を表したものとして理解するにとどまるものというのが相当であるから、本願商標は、自他商品を識別するための標識としては機能し得ないといえ、かつ、上記(2)のとおり、仮に、請求人商品が長期間、相当程度の規模で販売され、宣伝広告されてきたものであるとしても、それによって、本願商標を構成する立体的形状のみが独立して、自他商品の識別標識として需要者に認識されるに至っているとは考え難いものである。
イ 請求人は、弁当や駅弁の表示において、蓋や掛け紙を外した状態で表示することは一般的であって、多くの証拠が、蓋を外した状態で表示されているとしても、請求人が実際に販売している「釜めし」は、「釜めし」を入れた土釜容器の上に蓋を必ず被せてあるから、請求人の「釜めし」を食するときには、必ずその蓋を取り外さなければならず、したがって、蓋は必ず需要者の目に触れることになるのであるから、「証拠の大半は、容器内に商品が詰められ、蓋がない状態で表されている商品の画像が示されている」として、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備しないと判断することは、食事をする時の状況を無視したものであり、妥当ではない旨主張する。
しかしながら、「ある標章が商標法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かは、出願に係る商標と外観において同一とみられる標章が指定商品とされる商品に使用されたことを前提として、その使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様、当該商品の販売数量又は売上高等、当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである」(平成24年(行ケ)第10285号、平成25年1月24日知財高裁判決)。
そうすれば、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものであることを主張する請求人は、本願商標又はこれと商標としての同一性を損なわないといえる商標が、その主張する規模等において使用されている事実を、具体的な証拠をもって立証すべきであるが、上記(1)のとおり、請求人が提出した証拠によっては、その事実を確認することができず、また、需要者が釜飯を食するときに蓋を視認するからといって、請求人が提出した蓋のない釜飯用の容器の証拠が本願商標の使用といえるとはいい難いものである。
そのほか、上記(2)のとおり、本願の指定商品を取り扱う分野やこれに関連する商品の分野における取引の実情等を総合考慮すれば、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するとはいい難いものである。
ウ 請求人は、アンケート調査結果(第660号証)について、調査対象の地域が限定されていることは、本願の指定商品が「釜めし」であり、「釜めし」は日持ち(品質維持:保持)や消費期限等の特殊性(特異性)があるため、妥当でないとはいえない旨主張する。
また、請求人は、同調査における本願商標の形状からの純粋想起を問うことを目的としたと考えられる設問(Q4)について、指定商品である「釜めし」も、製造社名や販売者名も含まれていない設問であることから、本願商標を純粋想起させ得るものであり、商標法第3条第2項の要件を具備しているか否かを判断する証拠として採用されるに十分なものである旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品は「釜めし」であり、その製造地、販売地等が限定されているものではなく、また、別掲2に挙げる商品の事例に係る情報をみても、商品の配送先等が相当程度限定されているとか、商品の消費期限が極めて短いといったことを述べているものは見当たらないことからすれば、請求人が「釜めし」に係る特殊性(特異性)であると主張する事情は、いずれも請求人の商品又は事業に係る個別的、限定的な事情であるというのが相当であって、上記アンケート調査において、その調査範囲を請求人商品の販売地域及びその近県の16都県に絞ったことが、適切とはいえないものである。
また、同調査における設問(Q4)についても、本願の指定商品は「釜めし」であるから、その需要者の認識度を調査するに当たっては、本願商標が「釜めしの容器」の形状であることを前提に回答者の認識を問うべきであって、これが「弁当の容器」の形状であることを前提とした設問は、適切とはいえないものである。
エ したがって、請求人の上記アないしウの主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、また、商標法第3条第2項の要件を具備するものともいえないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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