結論テキスト
登録第6739877号の登録を無効とする。
審判費用は被請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2025890018 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 勝訴(請求認容) |
理 由
本件登録第6739877号商標(以下「本件商標」という。)は、「KLEVV」の文字を標準文字により表してなり、令和5年3月5日に登録出願、第9類「コンピュータ周辺機器(コンピュータハードウエアを含む。),電気通信機械器具及び付属品,電子応用機械器具及び付属品,集積回路モジュール」を指定商品として、同年8月14日に登録査定、同年9月27日に設定登録されたものである。
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は、「KLEVV」の文字からなる商標(以下「引用商標1」という。)及び別掲1のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標2」といい、引用商標1及び2をまとめて「引用商標」という。)である。
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第134号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)海外における事業及び周知性
ア 請求人の事業
請求人は、香港法人であり(甲2)、クリエイティブな革新というブランド精神に基づいて採択した「KLEVV」のブランドを使用してメモリ製品ポートフォリオを提供している(甲3)。
請求人は、中国、シンガポール、韓国及び台湾に現地法人又は支社を有しており、半導体モジュール、SDカード、USB等のメモリ製品を製造・販売し、ビジネスを世界規模に拡大して市場で前例のないメモリ企業となった(甲3)。
引用商標は、クリエイティブな革新という趣旨の「Creative Evolution」から着想を得て請求人が創作した造語商標である(甲3、甲8)。請求人は、2014年5月に世界最大のブランドコンサルティング会社であるインターブランド社に依頼し、引用商標1と引用商標2の開発を行った(甲9)。
請求人は、「KLEVV」ブランドの開発に6万8000米ドルもの金額を投資しており、約5か月間の事前分析、2回のデザイン報告等を通じて最終的に商標の採択を確定した。その後も商標表記の基準ガイドラインを策定し、現在まで製品、広報物、ウェブページ等において「KLEVV」ブランドを使用する際の厳格な基準遵守を通じてブランド管理を行ってきた(甲9~甲11)。引用商標を使用した「KLEVV」ブランドは、ゲーミングPCメモリ、DRAMメモリ、SSD、SDカード、USB等のメモリ製品を対象とした、請求人のグローバルプレミアムブランドである。このようにして、請求人は2014年に「KLEVV」をメインブランドとしてローンチし、2015年よりグローバル展開を始め、2015年には、香港、韓国、アイルランド、タイ及び中国において、同ブランドの製品の販売を開始し、翌2016年には、日本、ドイツ、インド、2017年には台湾等においても同ブランドの製品の販売を開始した。現在、「KLEVV」製品が販売されている国は、世界22か国に及んでいる(甲3、甲12)。
イ 請求人の各国における販売実績
請求人の直近4年間の全世界における総売上高は、若干の変動はあるものの、日本円に換算して毎年1千億円を超える売上高となっている(甲13、甲14)。
このうち、引用商標を付した請求人の製品の直近4年間の国別の売上高は、毎年中国及び韓国では日本円に換算して各約8億から18億円、日本を含むアジア諸国及び北米・欧州諸国等においても高い売上高を維持している。
ウ 各国における商標登録
請求人は、中国、韓国、北米、欧州を始め世界各国において、引用商標1及び2についての多数の商標登録及び商標出願を保有している(甲15)。
エ 製品の宣伝広告・eスポーツ大会等のスポンサー等による広報活動
請求人は、引用商標を使用した「KLEVV」製品の知名度を高めるため、eスポーツの最大の大会ともいわれる「リーグ・オブ・レジェンド」に参加するプロゲーミングチームである「T1」を後援している(甲12)。「リーグ・オブ・レジェンド」は世界において、1億人以上のアクティブプレイヤーを有するPCゲームである(甲16)。請求人は、「T1」のスポンサーを2015年3月より開始した(甲3、甲12)。
請求人の引用商標は、韓国国内に限らず「T1」が出場する全ての試合と活動において表示され、また、「T1」のキャプテンである「Faker(フェイカー)」とのコラボ製品を販売する等により、請求人の製品であるメモリ関連、特にゲームメモリ市場での引用商標の周知・著名性の向上につながっている(甲21の3)。実際に、リサーチ会社EMBRAINにより実施した2021年度の「スポンサーシップ効果調査報告書」によれば、「リーグ・オブ・レジェンド」の韓国大会のスポンサー企業の中でのマクドナルドやティファニーを抑え、請求人の消費者認知度が3位となった(甲22~甲24)。
オ 国際展示会・見本市への出展
請求人は、引用商標を使用した「KLEVV」製品の性能・品質の高さを周知し、引用商標の認知度を高めるため、多数の国際的な展示会に出展している(甲3、甲12、甲29~甲44)。
カ 宣伝広告費支出
請求人は、毎年多数のオンライン広告、広報、後援活動、展示会参加等に、多額のマーケティング費用を投じてきており、毎月広告代理店を通じて広告実績と影響を分析する等積極的なブランド広告活動を行ってきた。
キ 受賞歴
請求人の引用商標を使用した「KLEVV」製品は、機能的かつ革新的なデザインが評価され、国際的なデザイン賞を数多く受賞してきた(甲12)。すなわち、2015年1月には、世界三大デザイン賞と呼ばれるドイツの「レッド・ドット・デザイン賞」を受賞した(甲45)。請求人は、その後もメモリモジュール、コンピューターコンポーネントなどで、「レッド・ドット・デザイン賞」を2019年、2021年、2022年、2024年にも受賞している(甲45、甲46)。
さらに、その他、世界各国のメディアにおいても請求人の引用商標を使用した「KLEVV」製品は高く評価されている(甲12、甲48~甲56)。
その後も、2024年には、もう一つの世界三大デザイン賞と呼ばれる「iFデザイン賞」も受賞した(甲45、甲46、甲57)。
そして、2017年11月には、韓国の主要新聞社である中央日報社により、引用商標1は「優秀ブランド大賞」(今年の優秀ブランド1位)を受賞している(甲64、甲65)。
ク その他の宣伝広告活動及び各種メディア・マスコミの報道
請求人は、SNSを活用した情報発信を中心に、オンライン上の宣伝広告活動を行ってきている(甲58、甲59)。
加えて、2020年12月に韓国、香港、台湾において街頭広告を行う等、オフラインでの宣伝活動も世界中で展開している(甲60~甲62)。
また、各種メディアにおける請求人及び請求人の引用商標を付した製品が取り上げられた記事は、日本、米国、カナダ、韓国、英国、タイ、フランス、スペイン、東南アジア、中東、アフリカなど、世界各地域で膨大な数に及ぶ(甲63)。
ケ 小括
このような請求人の継続的かつ積極的な営業活動及び宣伝広告により、引用商標1及び2は、フラッシュメモリ(ゲーム用PCメモリ)を中心とするパソコン及びデジタル機器関連製品の分野において、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれの時においても、韓国はもちろんのこと香港、台湾、中国、イギリス、スペイン、イタリア等の海外諸国において、請求人の事業を表示する商標として広く認識されていたものである。
(2)日本における使用状況
ア 我が国においては、請求人は、2016年より、輸入代理店である株式会社アーキサイト(以下「アーキサイト社」という。)を通じて引用商標を使用した「KLEVV」製品の販売を開始した。
アーキサイト社による販売・プロモーションにより、請求人の引用商標を使用した「KLEVV」製品は全国のヨドバシカメラ、ビックカメラ、ヤマダ電機を始めとする多くの家電量販店等で購入することが可能になっている。
さらに、2018年4月からはAmazon.co.jpにおいても引用商標を使用した「KLEVV」製品の販売が開始され、現在では、Yahooショッピング、au PAYマーケットやモノタロウ等の多数の通販サイトにおいて引用商標を使用した「KLEVV」製品の通信販売が行われている(甲72~甲75)。
これらの販売店・オンライン販売サイトで実際に販売されている、引用商標を使用した「KLEVV」製品の具体的なラインナップとしては、ゲーム用のPCメモリ、標準的なPCメモリ、SSD・SDカード・USBなどのメモリ製品に大別できる(甲3)。これらの全ての製品において、包装のみならず製品自体にも引用商標が必ず使用されており、製品の出所識別標識として機能している(甲76~甲80)。
そして、引用商標を使用した「KLEVV」製品の日本での売上げ総額は、2020年に約10億円、2021年に約9億円に達している。かかる売上げの一部は、請求人の輸入代理店であるアーキサイト社発行の確認書に示されている(甲81)。
この点、日本全国の大手家電販売店のPOSデータを日次で集信し、製品カテゴリーごとに集計した情報を配信する店頭実売データを提供している株式会社BCNの調査によれば、請求人のSSD製品の大手家電量販店における販売数量は2020年が17,801個、2021年は25,799個であった(甲82)。
イ 日本での商標登録状況
請求人は、引用商標とハウスマーク「ESSENCORE」を結合した「ESSENCORE KLEVV」について、登録を受けている(甲86)。また、片仮名「エッセンコア クレブ」についても、登録を受けている(甲87)。
ウ 日本における引用商標の宣伝・広告活動
請求人は、「KLEVV」製品の認知度を高めるため、2016年以降、自社のウェブサイトにおいて製品全般等の説明を行い、定期的に新製品に関するリリース記事を発表している(甲88)。
また、日本においては広告会社を通じた宣伝広告活動を戦略的に行っており、例えば2018年及び2019年の広告実績としては、X(旧Twitter)における広告配信、秋葉原駅における映像広告の放送、価格ドットコムにおけるオンライン広告掲載、ヨドバシカメラ秋葉原店における映像広告の放送、Apple専門誌である「Mac Fan」(マイナビ出版社)における雑誌広告、秋葉原の最新情報を発信する「エルミタージュ秋葉原」におけるオンラインでの製品紹介記事掲載等、オンライン及びオフラインの宣伝広告活動を織り交ぜて我が国需要者に対して請求人製品及び引用商標の宣伝広告ないし認知度向上に向けた取り組みを行っている(甲89~甲97)。
さらに、アーキサイト社も、請求人製品及び引用商標の宣伝広告活動を行っており、2018年12月には、タレントの蒼川愛氏を引用商標を使用した「KLEVV」製品のイメージキャラクターに起用し、蒼川氏が登場する店頭POP等、特に若年層を対象とした積極的な広告販売活動を行い、話題となった(甲98)。
請求人が日本における宣伝広告活動に費やした費用は、2018年には約29万米ドル(日本円で約4350万円相当)(1米ドル=150円換算、以下同じ)、2019年には11万米ドル(日本円で約1650万円相当)、2020年度には約38万米ドル(日本円で約5700万円相当)、2021年度には約37万米ドル(日本円で約5550万円相当)であった。
エ メディア・マスコミの報道
請求人の引用商標を使用した「KLEVV」製品の新製品の発表時には、引用商標「KLEVV」のブランドが各種メディア・マスコミにより取り上げられてきた(甲99)。
また、請求人は、2021年12月28日付けで、自社のウェブサイト上において引用商標を使用した「KLEVV」製品が、レッド・ドット・デザイン賞を受賞した旨のプレスリリースを行っているところ(甲100)、レッド・ドット・デザイン賞受賞に関しては、2021年12月28日付けのニューズウィーク日本版等にも掲載された(甲101、甲102)。
オ 需要者の認知度・ランキング等
請求人の製品がコストパフォーマンスに優れた高機能性と優れた品質によりオンラインゲームファンを中心に広く受け入れられていることを示すものとして、例えば、コンピュータメモリ製品で定評のあるKingston Technology社やTEAMジャパン社などの製品と請求人の製品を比較した製品比較サイトにおける評価が挙げられる(甲103)。
カ 小括
以上より、請求人及びアーキサイト社の継続的かつ積極的な販売戦略や宣伝広告活動等の営業活動及び努力により、引用商標1及び2は、我が国においても、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれの時においても、請求人の事業を表す商標として、需要者・取引者の間で相当程度認知されていたものである。
(1)被請求人による大量出願行為
被請求人は、2019年10月13日から2024年8月6日までの間に、本件商標を含む80件の商標登録出願(以下「本件大量出願」という。)を行っている(甲104)。しかも、その出願に係る指定商品又は役務は、コンピュータ周辺機器から飲食料品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供等まで幅広くカバーするものとなっている。自然人である被請求人が、これほど幅広い商品又は役務について、多種多様な商標を出願する背景は不明であるが、経験則上は、一自然人がこれほど幅広い商品又は役務を取り扱い、自らの使用のためにこれら多くの商標を採択し、実際に使用するとは通常は考え難いところである。
さらに、請求人が本件大量出願に係る出願商標を具体的に調査したところ、数件を除いてほぼ全ての出願商標が既に存在している他人のブランドと同一又は類似の商標であることが確認された(甲104)。これらの商標の多くは特徴的な造語商標であり、被請求人が、これら他人の商標と一致した商標を偶然に採択したとは到底考えられない。
加えて、本件大量出願の中には、周知・著名性を有する他人の商標と同一又は類似するといった理由や国際信義に反する商標であるといった理由で、特許庁による審査の段階で商標法第4条第1項第7号、第10号、第15号、第19号が適用され拒絶査定又は拒絶理由通知となった出願が7件も含まれ、他人の登録商標と同一又は類似する商標であることを理由とする商標法第4条第1項第11号が適用され拒絶査定又は拒絶理由通知となった出願も28件含まれている(甲104~甲111)。
以上からすれば、被請求人は、他人の商標と同一又は極めて類似する商標を登録出願されていないことを奇貨として、継続的に出願行為を繰り返し、多数の商標登録を不正に取得しているものと考えられる。
(2)被請求人と同一住所地の他の出願人の存在
さらに、請求人が調査したところ、被請求人の住所と同一の住所を使用した者が被請求人と同様に他人の商標と同一又は類似する商標を出願している事実が確認された(甲112、甲113)。
このような事実を併せ考慮すると、被請求人は自らのみならず、他人とともにあるいは他人を通じて、本件商標と同様に他人の商標と同一又は極めて類似する商標について登録出願されていないことを奇貨として、継続的に出願行為を繰り返し、多数の商標登録を不正に取得している可能性があることが強くうかがわれる。
(3)被請求人の商標登録に対する無効審判・異議申立て
上記の80件にも及ぶ本件大量出願ないしそれに基づく商標登録のうち、1件については商標法第4条第1項第10号、第15号、第19号違反として、無効審判請求がなされ現在審理係属中である。そして、9件については商標法第4条第1項第7号、第10号、第15号、第19号、同法第3条第1項柱書違反として登録異議の申立てがなされている(審理係属中は4件)。つまり、現在、被請求人が保有する商標登録は40件であるところ(甲104)、その25%に当たる10件について商標登録の有効性が争われていることになる。一方、商標登録件数の多い企業の保有商標権(2021年及び2022年に登録されたもの)のうち異議申立て又は無効審判を受けた件数の合計を調査した結果、各社の商標登録に対して異議申立て又は無効審判を受けているのは約0.3~0.5%程度にすぎなかった(甲114~甲117)。これらと比較すると、被請求人の保有商標登録に対する異議申立て等の割合である25%は極めて高い数値であることがうかがえる。
また、被請求人が出願した商標のうち、異議申立て又は無効審判が請求された商標以外に、刊行物等提出があった商標は別途7件存在することから、これらの出願についても、他人のブランドに係る商標である可能性が高く、少なくとも第三者がその登録について疑義や懸念を抱いたものであるということがいえる。
以上のとおり、被請求人が出願した商標については、短期間に、第三者からの多数の情報提供、異議申立て又は無効審判の請求がなされており、極めて特殊な状況にあるといえる。
(4)被請求人と請求人との交渉の経緯
被請求人は、2024年3月にアーキサイト社宛てに警告書を送付し、Amazon.co.jp及び同社サイトにおける「KLEVV」商標の使用は、被請求人の登録商標に係る商標権を侵害するとして、直ちに使用を中止するよう求めてきた(甲118)。これに対して、請求人は、商標権侵害は成立しない旨反論しつつ、早期の問題の解消を目指し話し合いによる解決の可能性について提案を行った(甲119)。
請求人の反論及び提案に対し、被請求人は、被請求人による本件商標の使用は、請求人の現時点における取扱商品との間で競合するものではなく、実質的な利益の衝突はないものと考えていると述べつつも、話し合いによる解決にも同意する姿勢を見せた(甲120)。請求人は、2件の商標登録の全部譲渡を求め、被請求人も全部譲渡をする前提でその条件交渉を行った(甲121、甲122)。
譲渡対価に関しては、被請求人から商標1件金100万円(税別)、2件で金200万円(税別)の提示があった後(甲123)、最終的には金150万円(税別)で2件の商標登録の譲渡を行うことで合意に至ったため、請求人は譲渡対価や支払時期等を含む合意書の準備を進めた(甲124、甲125)。その後、被請求人は、本件は譲受人が外国所在法人であるため免税事案であるにも関わらず、消費税分の金15万円の増額を求めてきたので(甲126)、請求人は、免税事案であるため、消費税分の支払いはできない旨伝えたところ、被請求人は譲渡には応じられず、交渉は終了する旨を一方的に通告してきた(甲127、甲128)。請求人は、かかる対応に困惑しつつも、なんとか交渉をまとめたいと考え、相手が主張する金15万円を加えた金165万円を提案したが、被請求人は何ら合理的な理由も告げずにこれを拒絶した。請求人は、一度は合意に至った事実も考慮し、さらに社内的に協議を行い、金200万円を譲渡対価として再度提案したが、被請求人はかかる提案についても何らの理由も告げず拒絶した(甲129、甲130)。請求人は、2024年11月15日付け書面(甲130)を受けて、これ以上の交渉による本件の解決は不可能な状況に至ったと判断し、やむなく本件無効審判請求に及んだものである。被請求人は、一度は合意に応じたにもかかわらず、合理的な理由もなくこれを反故にし、その後の請求人の誠意的な提案に対しても何ら応じなかったものであり、被請求人の対応は明らかに信義則に反し、公正な取引秩序を害するものである。
(5)本件商標の出願の経緯
被請求人は、本件商標に係る出願と同日付けで「商標の使用に係る商品名(役務名)」を「商品名:KLEVV メカニカルゲームキーボード、役務名:コンピュータ周辺機器及び付属品(コンピュータハードウエアを含む。)」等とし、「商標の使用時期」を「令和3年9月から使用中」として早期審査請求を行った(甲134)。この点、被請求人は本件商標の使用について、ゲーム機器修理用ドライバー、保護カバー及びこれらの関連製品に使用することを想定している旨を2024年5月24日付け書面で請求人に通知している(甲120)。さらに、2024年7月22日付け書面においても、被請求人が本件商標を使用する準備を行っていた旨、請求人に通知している(甲123)。
したがって、被請求人の2024年5月24日付け及び2024年7月22日付け書面の説明からすれば、本件商標に係る出願の早期審査請求時点においては本件商標は使用されていなかった可能性があり、被請求人名義の他の多岐にわたる商品又は役務を指定した本件大量出願の存在をも考慮すれば、当該早期審査請求が真実かつ正確な商標の使用情報・使用意思に基づいてなされたものとはにわかに信じがたいところである。さらに、被請求人は、早期審査に関する事情説明書に添付された「商標の使用した事実を示す書類(商品の見積書)」において、「KLEVV メカニカルゲームキーボード」等に本件商標を使用している旨主張しているが、当該主張は、請求人との交渉経過において被請求人が述べていた「被請求人による本件商標の使用は、請求人の現時点における取扱商品との間で競合するものではな」いという点(甲120)とも矛盾する。
このように、被請求人は本件商標の出願過程においても信義にもとる行動をとっており、また、請求人の引用商標の存在のみならず主力製品の詳細(ラインナップやスペック等)をも知った上で本件商標の出願を行っていることから、不正意思も推認される。
(6)先使用商標の周知性及び先使用商標製品の良質感に無断便乗する意図
引用商標は、請求人が多額の費用と労力をかけて創作し、採択した極めて独創性の高い造語商標であり、請求人の事業を表す商標として、需要者・取引者の間で相当程度認知されていたものである。このような独創性の高い「KLEVV」商標と同一の商標を被請求人が偶然に採択するということは到底考えられない。請求人の「KLEVV」商標がeスポーツファンを中心として広く認識されていた事実をも考慮すれば、本件商標の登録出願は、請求人の商標の品質・デザインの優秀性、及び周知性・知名度を認知した上で、引用商標に化体した信用に不当に便乗(フリーライド)し、利益の独占を図る不正意思をもって行われたものであるといわざるを得ない。また、被請求人は、引用商標と同一又は類似性の高い商標を被請求人の承諾を得ずに先取り的に登録出願したものであり、請求人の我が国における事業遂行を阻止し、引用商標による利益の独占を図る不正意図を有していたものである。
本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似する商標であって、不正の目的をもって使用するものであるため、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。
引用商標は、独創性の高い商標であるところ、本件商標は引用商標と同一又は類似性が非常に高い商標であること、本件商標の出願日は引用商標の使用開始日より遅く、また、本件商標の出願日以前に引用商標を使用した製品の国際的な受賞歴が請求人のウェブサイト及び複数のメディアで掲載されたこと等を総合的に考慮すれば、被請求人が偶然に引用商標と同一又は類似性が非常に高い商標を採択し、登録出願したものとは到底考えられない。
これらの事情を総合的に考慮すれば、本件商標は、登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、被請求人を権利者とする商標登録を認めることは、公正な取引秩序の維持の観点からみても不相当であって、商標法の目的にも反するというべきである。
以上より、本件商標は、公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標に該当するものであり、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。
被請求人は、比較的短期の間に、他人の使用する商標について、多数の商標登録出願を行い、商標登録を収集しているにすぎないものであり、これらの登録は他人の事業活動を妨害することを目的とし、又は他人からの譲渡対価の取得や違約金の取得を目的として行われたものというべきである。
そうすると、本件商標は、被請求人が現に自己の業務に係る商品に使用している商標に該当せず、また、将来自己の業務に係る商品に使用する意思があったともいい難いものである。
したがって、本件商標は、自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標には該当せず、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたものである。
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証から乙第8号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)引用商標の周知性
ア 外国における周知性
(ア)「請求人の事業」について
請求人は、「KLEVV製品が世界22か国に販売されている」旨を主張しているが、そもそも、請求人が自らホームページに掲載している会社沿革の情報であって、その記載情報の正確性について客観的な証明はなく、仮にこの情報が正しいものであったとしても、販売年数や販売実績、シェア率等の具体的な証拠が提示されていない以上、販売国数をもって周知性獲得の根拠とはなり得ない。なお、提示された証拠資料を精査しても、その22か国が具体的にどこの国であるかを明示しておらず、詳細は不明である。
(イ)「請求人の各国における販売実績」について
請求人は、会計報告書(甲13、甲14)を根拠に、自らの高い売上高の維持を主張しているが、いずれの証拠も請求人全体の売上高の記載のみで、引用商標を付した商品についての売上高は不明であり、当該証拠のみで引用商標の周知性獲得の根拠とはなり得ない。また、各国における販売実績とする資料については、その根拠が全く示されておらず証拠として参考にできるものではない。仮に、資料に記された数字が各国の売上高として正確なものであったとしても、売上高は年々下降傾向にあり、高い売上高が維持されているとはいい難いものである。
(ウ)「各国における商標登録」について
請求人が保有する世界各国の商標リスト(甲15)について、商標の保有国数によって周知性が決定されるものではなく、周知性獲得の根拠とはなり得ない。
(エ)「製品の宣伝広告・eスポーツ大会等のスポンサー等による広報活動」について
請求人は、eスポーツにおいて、韓国のeスポーツチームの一つであるT1が有名であること、さらに、請求人がT1のスポンサー(パートナー)である旨を主張している。
確かに、eスポーツ全体として、T1というeスポーツチームは好成績を収めるチームであることは認め得るものである。しかしながら、T1のスポンサーを精査すると、請求人である「KLEVV」は、最上位のリードパートナー(1社)でもなければ、その下方に位置するプレミアパートナー(5社)でもなく、更にその下方に位置するパートナー(6社)の内の一社であって、T1自体が表立って請求人の宣伝・広報活動を行っている事実は一切確認できなかった(乙5)。
請求人の提示した証拠資料(甲23、甲24)にて、T1のスポンサー表示として選手のユニフォーム左腕部に引用商標が付されていることや、配信画面への表示自体は確認できる。しかしながら、両証拠には、日付や場所、配信媒体といった根拠となる情報が欠けており、かつ、翻訳もされていない状態であるため、証拠能力に難がある。
ちなみに、配信画面にて当該引用商標の表示がされていたことは、提出された証拠資料(甲23)が真実だと仮定すれば認め得るものである。しかし、その表示が常時画面上に出ているわけでないことは当然であって、かかる表示がどれほどの効果、例えばeスポーツの試合を集中して観たい視聴者へも強烈に印象に残るものだったのか、そして、その表示時間がどれほどの長時間だったのか、そして、その表示回数すらも不明である等、客観的な証明が全くなされておらず、上記配信によって周知性の獲得がなされたという証拠にはなり得ない。
ところで、我が国日本にも数多くのスポーツチームがあり、サッカーや野球等、世界的な大会で成績を残しているチームも存在する。また、eスポーツに限らず、一般的なスポーツにおいてもスポンサーやパートナーとなった企業は多数存在する。しかし、スポンサーを有したチームが優秀な成績を残し有名になった場合においても、その全てのスポンサーが同時に有名になるわけではないことは自明の理である。例えば、サッカーのワールドカップに出場した日本チームにも多数のスポンサーが付いており、ユニフォームにマークが付されている企業もあるが、日本チームが活躍したことで全てのスポンサー企業の周知性が自然現象的に一気に上昇した、という事実はない。
次に、請求人は、韓国におけるeスポーツの試合における公式スポンサーであったことも主張している。
確かに、沿革(甲3、甲12)においての記載は認められるものの、動画の切り抜き画面と動画の説明が表示されている証拠(甲28)では、どの程度の頻度・時間で引用商標が表示されていたのかが不明、かつ、大部分が英語表記のため、証拠資料として不十分なものである。
そして、当該証拠資料を見るに、当該動画は3分31秒という短時間の動画であるとともに、視聴回数が500回、高評価が7件と、どれほどの周知効果をもたらした宣伝活動であったのか、たかが知れるものである。
(オ)「国際展示会・見本市への出展」について
請求人は、多数の国際的な展示会への出展を示唆しているが、展示会の規模、対象者、来場者数、来場者の中で請求人のブースに来訪した人数、配布物による周知効果等、といった情報がなく、上記展示会によってどれほどの周知効果があったかを具体的に示す情報は存在しない。
(カ)「宣伝広告費支出」について
請求人は、積極的な宣伝広告活動とその活動に使用された宣伝広告費用を示している。
しかしながら、その記載情報の正確性について客観的な証明はなく(特に2020年度の金額について、意図的な操作が疑われる)、仮にこの情報が正しいものであったとしても、宣伝広告活動によってどれだけの費用がかかり、その宣伝広告活動によってどの程度の各国需要者に周知できたかを推し量ることができない以上、証拠にはなり得ない。
(キ)「受賞歴」について
請求人は、引用商標を付した製品の外観が国際的なデザイン賞を数多く受賞している、と主張している。
しかしながら、その多くは、レビューサイト独自の評価を基にした受賞であって、受賞に係る記事を精査しても、単に宣伝記事が記載されているのみである。そのため、どのような評価基準で評価され、その評価が何名で行われたのかが不明であり、さらに、その評価が周知性にどの程度影響を与えることができたのかも不明である。
(ク)「その他の宣伝広告活動及び各種メディア・マスコミの報道」について
請求人は、オンライン上の宣伝広告活動を世界中で展開している、と主張している。
しかしながら、確かにfacebookのフォロワーは25万人にのぼるものの、請求人アカウントを精査すると、大多数の投稿に対し僅か数十件の「いいね!」が押下されているのみであり、投稿(甲58)についても、僅か38件の「いいね!」にとどまっていることが確認できる。
また、請求人の公式YouTubeチャンネル(甲59)に関しても、大多数の紹介動画は数百回の再生回数にとどまる。また、[KLevv×T1]と表記された3本の動画の再生回数のみが異様に再生されているにもかかわらず、チャンネル登録者数が6860人にとどまっているというチグハグな状態となっているため、当該動画の閲覧によって引用商標の周知にどれほどの影響を与えたのかが不明である。また、動画タイトルがハングル文字又は中国語の表記である以上、韓国及び中国国外からの視聴はある程度限定されるともいえ、全世界への周知が当該動画によってなされるということの証明とはならない。
しかも、上記facebookフォロワー25万人に対し、公式YouTubチャンネル登録者数6860人と、その数に大きな差が生じており、やはりfacebookの25万人というフォロワー数が、果たして真正な数であるのか甚だ疑問である。
(ケ)外国周知性まとめ
総じて、請求人が提出した証拠によれば、請求人が諸外国で引用商標を使用していることについて理解できるにとどまり、本件商標の登録出願時及び登録査定時前における引用商標を使用した商品の諸外国における販売数量や売上高、市場シェア等について全く証明されておらず、引用商標が相当に広い範囲で多数の取引者・需要者に知られているか否かは不明である。よって、当該証拠をもって引用商標が外国において周知であることの証明とはなり得ない。
イ 日本国内における周知性
(ア)請求人は、輸入代理店を介した日本国内の販売実績に関して主張している。また、日本国内の売上総額及び販売数量についても言及している。
しかしながら、各通販サイトについて、商品の出品が多数されたことのみをもって周知性を獲得し得ることは有り得ず、その販売個数や市場全体におけるシェア率等の客観的な証拠に基づいて決定されるべきものである。また、「日本の商習慣に合わせた販売・プロモーションを行っており」と主張しているが、具体的な手法や結果的な宣伝効果等が何ら提示されておらず、いずれの資料も根拠に乏しいといわざるを得ない。
(イ)「日本での登録状況」について
請求人は、日本における商標登録を2016年及び2018年に行っている旨を主張している。
確かに、「ESSENCORE KLEVV」及び「エッセンコア クレヴ」について日本で商標登録されている事実は確認できる。しかしながら、世界各国で「KLevv」を商標登録している中、日本においてのみ「KLevv」を出願すらしていなかった意図が全く理解できず、ただこれらの状況から理解できることとすれば、請求人は、日本において「ESSENCORE KLEVV」及び「エッセンコア クレヴ」を自ら使用する商標として登録した事実、すなわち請求人が日本国内で使用を想定していた商標は、あくまで「ESSENCORE KLEVV」あるいは「エッセンコア クレヴ」であり、引用商標ではないという事実である。
(ウ)「日本における引用商標の宣伝・広告活動」について
請求人は、請求人の有する商標の宣伝・広告活動を行っている、と主張している。
しかしながら、日本からの閲覧数が不明な自社ウェブサイトや、需要者全体からみてどれほどの閲覧がされているのかが不明なウェブサイトでのプレスリリース、不特定多数へ強制的に表示されるX(旧Twitter)の広告配信、東京都内の一区画のみに表示されるオフライン広告、といったように、非常に限定的な宣伝・広告活動が行われていることは確認できるが、当該活動によって全国に存在する需要者への周知が達成できているのかは疑問である。
また、請求人は、オンライン記事(甲98)を根拠に、タレントの蒼川愛氏を引用商標を使用した「KLEVV」製品のイメージキャラクターに起用したことで、店頭POP等、積極的な広告販売活動を行い話題となった等、主張しているが、そもそも店頭POPで実際に採用された状況写真などが証拠として提出されておらず、しかも現時点でWeb検索をしても、当該オンライン記事以外に引用商標とタレント蒼川愛氏とが同時に登場するニュースその他の記事等は一切確認することができない。単なるオンライン記事一つのみで周知性獲得の根拠とするのではなく、その内容に伴ってタレント蒼川愛氏の周知性の程度のいかんであったり、現在も継続してイメージキャラクターとして起用されているのか否か、既に解消されているならいつまでイメージキャラクターを務めていたのか、イメージキャラクターとしての具体的な登場シーン等を示すべきである。
(エ)「メディア・マスコミの報道」について
請求人は、各種メディア・マスコミに「KLEVV」製品が取り上げられていることを主張している。
しかしながら、全体の需要者における当該記事の閲覧者数や、その閲覧割合といった客観的な証拠が提示されていない以上、単に記事として取り上げられたことのみをもって周知性を証明する資料とはなり得ない。
(オ)「需要者の認知度・ランキング等」について
請求人は、製品比較サイト記事(甲103)を根拠として、需要者へ広く受け入れられていることの証明としている。
しかしながら、当該ページは一レビュアーの検証記事であり、さらに記事内において「インターネット上には口コミが少ない」と記載されていることから、到底周知性が存するとはいい難く、また、製品の良し悪しと周知性とが、必ずしも直接的に関連するとは限らず、周知性獲得の根拠とはなり得ない。
(カ)日本国内周知性まとめ
総じて、請求人が提出した証拠によれば、請求人が国内で引用商標を使用していることについて理解できるにとどまり、本件商標の登録出願時及び登録査定時前における引用商標を使用した商品の国内における販売数量や市場シェア等について全く証明されておらず、引用商標が相当に広い範囲で多数の取引者・需要者に知られているか否かは不明である。よって、当該証拠をもって引用商標が周知であることの証明とはなり得ない。
ウ 判例等
知財高裁における判例(乙1)によれば、「ウェブページについては,その閲覧数等が不明である以上,当該ウェブページに本件施設が紹介されていることをもって,原告使用標章の周知性を認めることはできない」旨、判示されている。
すなわち、本件において、請求人から証拠として提出されたウェブサイト等について、その閲覧数等が不明であるものについては、当該ウェブサイトに引用商標が掲載されていることをもって、引用商標の周知性獲得の根拠とはなり得ないとするのが相当である。
また、知財高裁における判例(乙2)によれば、「書面の内容については、具体的な根拠が何ら示されていないから、上記内容を事実として認めることはできない。また、仮にそれが事実であるとしても、原告の商品について引用商標がどのような態様で表示されていたかは明らかでなく、各国における原告の商品のシェアも不明であることからすれば、上記書面によって、引用商標が外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない」旨、判示されている。
すなわち、請求人が示す各甲号証は、単に引用商標が諸外国で使用されていることを示すのみで、各国における引用商標を付した商品の販売数量等について具体的に示されておらず、また、各国における引用商標を使用した商品のシェア等も全く不明であることからすれば、引用商標が外国の需要者の間に広く認識されていたものとは決して認められるものではない。
そして、審決例(乙3)によれば、「各SNSの記事内容は、外国語で書かれたものである上、フォロワー数、登録者数に我が国の取引者、需要者がどの程度含まれているのかは明らかではない」旨、述べられている。
すなわち、請求人が示したfacebook(甲58)やYouTube(甲59)の各資料は、主に英語で記載された内容であるため、諸外国における周知性を裏付ける資料としては、英語圏におけるフォロワー数、登録者数が明らかでない以上、周知性を裏付ける証拠としては不十分なものといえる。
さらに、審決例(乙4)によれば、「請求人提出の証拠からは、本件商標権者が、多数の商標登録出願をしている事実関係は把握できる(甲12)としても、それらによって何らかの不正の利益を得たり、他人に損害を与えるなど、具体的な行為をしているような事実関係は確認できない」旨、述べられている。
すなわち、請求人が「大量出願行為」を被請求人の不正目的の根拠として示すのであれば、「何らかの不正の利益を得たり、他人に損害を与えるなど、具体的な行為をしているような事実関係」が確認でき得る、確たる証拠を併せて提示すべきである。
エ 日本国周知・著名商標検索
特許情報プラットホームによる日本国周知・著名商標検索画面において、「KLEVV」を検索したところ、検索ヒット数は0件である。
オ 周知性まとめ
請求人が提出した証拠から分かることは、引用商標がPCメモリやSSD・SDカード・USBメモリ等に使用されていることのみであって、各商品の販売数量なども不明である。すなわち、請求人が提出した各証拠について、周知性獲得を証明する具体的な根拠は何ら示されておらず、日本国内及び外国における引用商標を使用した商品のシェアも不明であり、いずれの証拠も引用商標の周知性を根拠付ける証拠とはなり得ない。引用商標の周知性は、単にウェブサイト等への掲示によって決定されるものではなく、引用商標を請求人が使用していることについて、諸外国・日本全国又は特定の地域を超えた相当広範囲の地域において、日本国内及び外国の需要者及び取引者がどの程度の割合で認識しているかにより決定されるものであり、それが不明である現状において、引用商標が日本国内及び外国での周知性獲得は当然に否定されるべきものである。
(2)不正の目的
ア 引用商標には、日本国内及び外国における周知性獲得の事実は認められない。よって、引用商標に大きな信用や名声、顧客吸引力が存在するとは決していえるものではなく、被請求人において、引用商標の顧客吸引力等を利用したり、希釈化させたり、ましてや毀損させるなどといった不正の目的など存在するはずもない。
イ そもそも被請求人は、個人名あるいは「幸石ストア」と称する事業名称の下、主にHDMIケーブルやデスクトップPC用メモリモジュール、PC用ハードディスクLANケーブルを始めPC用の関連部品や附属品、バッテリ・充電器等を販売する個人事業者であり(乙8)、その他商品の販売や役務提供を手掛ける事業家である。
この点、請求人は、経験則として、一自然人が幅広い商品を取り扱うこと、そして多くの商標を使用することについて、通常では考え難い旨主張しているが、そもそもここでいう経験則とは誰のどのような法則を指すのか、何を言っているのか全く理解不明である。逆に、経験則からは、一自然人だからといって多くの商品を扱うことは当然にあり得ることであって、多くの商品を扱う以上、それら商品について多くの商標を使用することは当然にあり得ることである。
それにもかかわらず、このような請求人の主張は、被請求人の印象を悪くしようとする意図によるものと思われ、単なる推測の域を出ず、到底容認できるものではない。
被請求人は、請求人が主張する引用商標の使用開始時期と時を同じくする2015年6月頃から現在に至るまで、本件商標を付して各種商品の販売を行っていたものである(乙8)。
ウ 請求人は、被請求人が既に存在している他人のブランドと同一又は類似の商標を登録していることを述べているが、本件商標とは全く関係のない事案であり、明らかに被請求人の印象を悪くしようとする意図による主張であって、単なる推測の域を出ず、到底容認できるものではない。
エ また、請求人は、被請求人と同一住所地の他の出願人の存在を理由に、被請求人とその他人とが共謀して多数の商標登録を不正に取得していると主張しているが、本件商標とは全く関係のない事案であり、明らかに被請求人の印象を悪くしようとする意図による主張であって、単なる推測の域を出ず、到底容認できるものではない。
オ 請求人は、被請求人が所有する登録商標に対する無効審判や異議申立てが存在する事実をもって、被請求人の不正の目的を主張しているが、やはり本件商標とは全く関係のない事案であって、個別に反論することは割愛する。このような請求人の主張は、明らかに被請求人の印象を悪くする意図による主張としかいいようがなく、明らかに推測として勝手なストーリーを作り上げ、さも事実のように主張している論調は、到底容認できるものではない。
カ 被請求人は、自ら本件商標を使用するために出願を行い、登録を受けたのであって、これは商標登録を受ける権利として何人にも認められた商標法上の権利である。本件登録によって不正の利益を得たり、請求人に損害を加える目的をもって登録したものではない。
キ 被請求人は、登録を受ける以前の2015年頃から商標「KLEVV」の使用を開始し、そのまま継続して使用していたところ、2022年になって請求人が所有する登録第5918024号商標及び登録第6178533号商標(以下「請求人所有商標」という。)の存在に気づき、自ら使用する商標「KLEVV」と請求人所有商標との類似関係に不安を持ち、そこで自ら「KLEVV」について出願して登録を受けることで請求人所有商標と非類似であることの確証を得ようと考え、本件商標の出願手続に至ったものである。その後、無事に登録となり、請求人所有商標と非類似であることの確証も得たので、本件商標の使用をその後も継続して行っていたものである。
ク 請求人は、本件商標の登録後において、請求人の販売代理店であるアーキサイト社が、請求人所有商標ではなく、引用商標を使用している事実を発見し、アーキサイト社に対し、引用商標の使用差止めを求めたものである。
これに対し、請求人は、被請求人に対し、当初から「剽窃」、「悪意」、「無効」といった文言を連発し、被請求人を悪者と決めつけた高圧的な態度を繰り返していたため、金銭的な合意にまで至りかけてたものの、最終的な合意には至らなかったものである。この一連の交渉にかかる請求人の高圧的な印象について、被請求人は代理人を通し請求人側に伝達しているところであり(甲128等)、また、代理人を通して請求人側代理人に電話でも直接伝えているところでもある。
商標権を侵害する者に対し、その旨を主張して使用差止め等の権利行使を行うことは、法律で認められた商標権者の正当な権利である。それにもかかわらず、交渉の当初から被請求人を悪者と決めつけ、高圧的態度を繰り返し、その結果最終的な合意に至らなかったことを被請求人の一方的な責任とする主張について、到底容認できるものではない。
請求人は、本件商標について、剽窃的な商標であると繰り返し主張して、本無効理由に該当する旨主張しているが、引用商標が請求人の使用するものとして周知性を獲得していないことからすれば、そのような商標を剽窃して利益を得ようなど思いつくはずもないし、ましてや請求人と被請求人とで使用開始時期に差がないことからすれば、開始間もない時点で引用商標を付した商品が将来的に高い評価を得るだろう、とまで予知できるはずもない。
本件商標は、被請求人が自ら使用していた商標をそのまま登録したものであって、引用商標を剽窃したものでもなければ、審査基準に挙げられた例に該当するような事実もなく、請求人の主張は明らかに失当である。
請求人は、被請求人が商標を収集しているにすぎない旨主張するが、全くの見当違いであって、少なくとも本件商標について被請求人が使用していることは明らかである。
また、請求人は、交渉過程における被請求人の言動である「ゲーム機器用電動ドライバー、保護カバー及びこれらの関連製品に使用することを想定」という説明の一部を切り取って、早期審査に係る事情説明書との説明の齟齬を主張するが、仮に齟齬が不可であるとするならば、人として考えを変更したり、企業体として戦略を変更したりしてはいけないと主張していることとなり、かかる請求人の主張はあまりに独善的であって到底容認できるものではない。
本件商標は、請求人が自ら使用していた商標をそのまま登録したものであって、請求人の主張は明らかに失当である。
(1)両当事者の提出に係る証拠及び請求人の主張によれば、次の事実が認められる。
ア 引用商標の外国での使用
(ア)請求人は、香港で設立され、2014年(平成26年)にその名称を現在のESSENCORE Limited(エッセンコア リミテッド)とした企業であり(甲2)、半導体モジュール、SDカード、USB等のメモリ製品を製造、販売しており(甲3、請求人の主張)、同年に「Creative Evolution」から着想を得て引用商標を作成した(甲3、甲8、請求人の主張)。
(イ)請求人の2020年から2023年の各年の売上高は、約6億米ドルから約9億米ドルであり(甲13、甲14)、このうち引用商標を使用した商品の売上高は、中国において約500万米ドルから約1300万米ドル、韓国において約600万米ドルから約1200万米ドル、日本において約160万米ドルから約650万米ドル、その他のアジアにおいて約300万米ドルから1400万米ドル、欧州、北米、南米、アフリカなどにおいて約600万米ドルから約1300万米ドルである(請求人の主張)。
(ウ)請求人は、各国において引用商標を商標登録している(甲15)。
(エ)請求人は、eスポーツのプロゲーミングチームである「T1」のスポンサーであり(甲12、甲16、乙5)、「T1」所属のプロeスポーツ選手である「Faker」とのコラボ商品を販売しており(甲16、甲21の3)、また、EMBRAIN社による韓国における「クレブ(KLEVV)スポンサーシップ効果調査レポート」では、引用商標は認知度が高いとの結果が出されており(甲22)、さらに、当該eスポーツの配信画面や選手のユニフォームに引用商標が表示されている(甲23、甲24)。
(オ)請求人は、2015年(平成27年)以降、各国で開催された各種の展示会において引用商標を使用した商品を出展しており、当該展示会場には引用商標が表示されている(甲12、甲29~甲44)。
(カ)引用商標を使用した商品は、各国における各種のデザイン賞を受賞しており、当該受賞の紹介記事が各種ウェブサイトに掲載されている(甲12、甲45~甲57)。
(キ)請求人は、SNS(甲58、甲59)、並びに韓国、香港及び台湾での街頭広告(甲60~甲62)により、引用商標を使用した広告を行っており、また、引用商標に関する記事がインターネット上に多数掲載されている(甲63)。
(ク)請求人は、2017年(平成29年)に韓国において、引用商標について「今年の優秀ブランド1位」に選定され、当該選定が中央日報の記事に掲載された(甲64、甲65)。
イ 引用商標の日本国内での使用
(ア)アーキサイト社は、請求人の国内正規代理店であり(甲7、甲66、甲67)、請求人は、2016年(平成28年)からアーキサイト社を通じて引用商標を使用した商品の販売を開始した(請求人の主張)。
(イ)引用商標は、各種のメモリ製品に使用されており(甲76~甲80)、当該商品は、ヨドバシカメラ、ビックカメラなどの家電量販店のウェブサイトや、Amazon、Yahoo!ショッピングなどの通販サイトにおいて販売されている(甲68~甲75)。
(ウ)アーキサイト社が取り扱っている引用商標を使用した商品の2020年(令和2年)から2023年(令和5年)の各年の売上高は、約2億6千万円から約6億1千万円である(甲81)。
(エ)全国大手家電量販店のPOSデータによれば、引用商標を使用したSSD(ソリッドステートドライブ)の販売数量は、2020年(令和2年)が17,801個であり、2021年(令和3年)が25,799個であった(甲82)。
(オ)請求人は、2018年(平成30年)10月から2019年(令和元年)12月までの間に定期的に新商品のプレスリリースを行い、当該プレスリリースが各種のウェブサイトにおいて、記事として掲載されている(甲88)。
(カ)請求人は、X(旧Twitter)配信、駅構内映像広告、バナー広告、雑誌広告、屋外広告などにより、引用商標を使用した商品の広告宣伝を行っている(甲89~甲97)。
(キ)アーキサイト社は、女性タレントを使って、引用商標を使用した商品の広告を行っている(甲98)。
(ク)各種ウェブサイトにおいて、引用商標を使用した商品の紹介記事が掲載されている(甲99~甲103)。
(2)判断
前記(1)で認定した事実によれば、請求人は、2014年(平成26年)に引用商標を作成し、これをメモリ製品に使用しており、当該商品は、韓国を始め各国において相当程度の売上げがあり、また、引用商標を使用した商品は、SNSや街頭広告で広告されたり、プロeスポーツ選手とコラボされたり、インターネット上の記事に掲載されたり、各国で開催された各種の展示会に出品され、当該展示会場に引用商標が表示されたりしており、さらに、2017年(平成29年)に韓国において、引用商標が「今年の優秀ブランド1位」に選定され、当該選定が中央日報の記事に掲載されたことが認められる。
また、日本国内では、請求人は、2016年(平成28年)から国内正規代理店であるアーキサイト社を通じて引用商標を使用したメモリ製品の販売を開始し、当該商品は、家電量販店のウェブサイトや通販サイト等で販売され、相当程度の売上げがあり、また、当該商品は、X(旧Twitter)配信、駅構内映像広告、バナー広告、雑誌広告、屋外広告などにより広告宣伝されたり、各種ウェブサイトにおいて、紹介記事が掲載されたりしていることが認められる。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係るメモリ製品を表すものとして日本国内及び外国(特に韓国)の需要者の間に広く認識されていると判断するのが相当である。
(1)両当事者の提出に係る証拠及び請求人の主張並びに職権による調査によれば、次の事実が認められる。
ア 被請求人は、2019年(令和元年)10月13日から2024年(令和6年)8月6日までの間に、本件商標に係る商標登録出願を含め、80件もの商標登録出願をしている(甲104)。
イ 前記アの80件の商標登録出願に係る商標のうち、一部を除いた多くのものは、他人のブランドと同一又は類似のものであり、これらの多くは造語からなるものである(甲104)。
ウ 本件商標の登録査定後の商標登録出願に係る商標ではあるが、前記イの商標の中には、掃除機の商標として有名な「dyson」や「roomba」又は中国の企業として有名な「xiaomi」といった商標も含まれている(甲104)。
エ 前記アの商標登録出願の中には、出願に係る商標が商標法第4条第1項第11号又は同項第15号等に該当するとの理由により拒絶査定され、又は拒絶理由通知が通知されたものがある(甲105、甲107~甲111)。なお、職権による調査によれば、現時点において、前記アの80件の商標登録出願のうち、出願に係る商標が商標法第4条第1項第11号又は同項第15号に該当するとの理由により拒絶査定となったものが21件あった(別掲2)。
オ 本件審判の請求がされた時点において、前記アの商標登録出願に係る商標のうち、商標登録されたものは40件あり(請求人の主張)、これに対して、無効審判の請求又は登録異議の申立てがされたものがあり(甲104、甲132、甲133)、商標登録された40件のうち、25%に当たる10件について、商標登録の有効性が争われている(請求人の主張)。なお、職権による調査によれば、現在において、商標登録されたものは48件あり、これに対して、登録異議の申立てがされたものが9件(そのうち3件について商標登録を取り消すべき旨の決定)、無効審判の請求がされたものが7件(本件審判及び登録異議の申立てがされ商標登録が維持された1件を含む。)あった(別掲3)。
カ 2021年に商標登録件数が1位であった企業の商標登録件数は585件であり、そのうち、登録異議の申立て又は無効審判の請求がされたものは2件であり、また、2022年に1位であった企業の商標登録件数は575件であり、そのうち、登録異議の申立て又は無効審判の請求がされたものは3件であった(甲114~甲117)。なお、職権による調査によれば、商標に関して、年間の登録件数は約10万件、年間の無効審判請求件数は約100件、年間の登録異議申立て件数は約400件である(特許行政年次報告書2025年版 71ページ、74ページ、77ページ
https://www.jpo.go.jp/resources/report/nenji/2025/index.html)。
キ 被請求人は、令和6年3月に、アーキサイト社に対して本件商標に基づく警告を行った(甲118)。
ク 前記キの警告の後、請求人と被請求人との間で、本件商標の譲渡について協議されたが、不調に終わった(甲119~甲130)。その協議の中で、被請求人は、本件商標の採択の理由及び経緯について明らかにしていない(甲120)。
ケ 被請求人が所有する他の登録商標に対する登録異議の申立て及び無効審判の請求において、被請求人はそれぞれの申立人又は請求人に対して警告を行っている旨主張されている(甲132、甲133)。
コ 平成27年6月15日から令和6年6月11日までに被請求人又は「幸石ストア」の店名により発行された請求書には、その「商品名/品名」の欄に「KLEVV」の文字及び各種電子部品の名称からなる商品名又は品名が記載されている(乙8)。
(2)判断
ア 前記(1)で認定した事実によれば、被請求人は、令和元年10月13日から令和6年8月6日までの間に、本件商標に係る商標登録出願を含め、80件もの商標登録出願をしており、これらの多くの商標は造語からなるものであるにもかかわらず、その多くは、他人のブランドと同一又は類似のものであり、掃除機の商標として有名な「dyson」や「roomba」又は中国の企業として有名な「xiaomi」といった商標も含まれていることが認められる。
また、当該商標登録出願の中には、出願に係る商標が商標法第4条第1項第11号又は同項第15号等に該当するとの理由により拒絶査定され、又は拒絶理由通知が通知されたものが多くあり、また、商標登録されたものに対しても、無効審判の請求又は登録異議の申立てがされたものが多くあることが認められる。
なお、当該商標登録されたものは48件であるのに対し、無効審判の請求又は登録異議の申立てがされたものは16件であり、割合としては33%である。そして、商標登録件数の多い企業において、無効審判の請求又は登録異議の申立てがされる割合は、前記(1)カの数値から算出すると1%未満であり、特許庁の統計(年間の登録件数は約10万件、年間の無効審判請求件数は約100件、年間の登録異議申立て件数は約400件)に基づいて算出しても、同様に1%未満である。これらと比較すると、33%は極めて高い割合といえる。
そうすると、被請求人は、他人が使用しているブランド(商標)を意図的に集めて、これらを数年の間に大量に商標登録出願しているものといわなければならない。
イ また、被請求人は、請求人の国内正規代理店であるアーキサイト社に対して本件商標に基づく警告を行っており、さらに、被請求人が所有する他の登録商標に対して登録異議の申立てをした申立人及び無効審判を請求した請求人に対しても、それぞれの登録商標に基づく警告を行っていることが認められる。
ウ 加えて、本件商標及び引用商標は、いずれも「KLEVV」の文字からなる又は「KLeVV」の文字を含むものであって、既存の語ではない造語からなるものであるところ、前記1(1)ア(ア)のとおり、請求人は、「Creative Evolution」から着想を得て引用商標を作成したと主張しているのに対し、前記(1)クのとおり、被請求人は、本件商標の採択の理由及び経緯について明らかにしていない。
エ 以上によれば、被請求人は、他人が使用しているブランド(商標)を意図的に集めて、当該商標を自身で使用する又は当該他人の使用を妨害することを目的として、大量に商標登録出願しているというべきであり、その一環として、本件商標を商標登録出願したものといえる。
そして、たとえ、引用商標の作成と同時期から被請求人が本件商標を使用していることがうかがえるとしても、前記1(2)のとおり、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において請求人の業務に係るメモリ製品を表すものとして日本国内及び外国(特に韓国)の需要者の間に広く認識されていることをも合わせ踏まえれば、本件商標を商標登録出願した被請求人の行為は、請求人の商標を剽窃して、請求人による引用商標の使用を妨害するとともに、引用商標の信用、名声、顧客吸引力等に便乗するものというべきである。
そうすると、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものといわなければならない。
本件商標は、前記第1のとおり、「KLEVV」の文字を標準文字により表してなるものであり、引用商標は、前記第2及び別掲1のとおり、「KLEVV」の文字からなる又は「KLeVV」の文字を含むものである。
そうすると、本件商標と引用商標とは、いずれも「KLEVV(KLeVV)」の文字からなり、そのつづりを共通にするものであるから、その外観、称呼、観念についてそれぞれ比較するまでもなく、本件商標は、引用商標と同一又は類似の商標と判断するのが相当である。
前記1から3によれば、本件商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において請求人の業務に係るメモリ製品を表すものとして日本国内及び外国(特に韓国)の需要者の間に広く認識されている引用商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
前記1から3によれば、被請求人は、請求人が日本国内及び外国(特に韓国)において使用している引用商標を剽窃して、請求人による引用商標の使用を妨害するとともに、引用商標の信用、名声、顧客吸引力等に便乗する目的で、引用商標と同一又は類似の本件商標を商標登録出願したものといえる。
このような行為は、本件商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に当たるというべきである。
そして、商標法第4条第1項第7号にいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、「当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合」が含まれるものである(平成17年(行ケ)第10349号同18年9月20日判決)。
そうすると、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
請求人は、本件商標は、被請求人が現に自己の業務に係る商品に使用している商標に該当せず、また、将来自己の業務に係る商品に使用する意思があったともいい難いと主張している。
しかしながら、前記2(1)コによれば、被請求人は本件商標を使用していたことがうかがえることからすると、本件商標の登録査定時において、本件商標が使用をされていなかった又は被請求人に本件商標の使用の意思がなかったということはできない。
したがって、本件商標は、商標第3条第1項柱書の要件を満たしていたといえる。
以上のとおり、本件商標は、商標第3条第1項柱書の要件を満たしていたものの、同法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は、同項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第46条第1項により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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