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Trademark Appeal Case

商標冒認と混同の判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900129
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6935140号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

第1 本件商標

本件登録第6935140号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和6年8月30日に登録出願、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、令和7年3月13日に登録査定、同年6月5日に設定登録され、その商標権は現に有効に存続しているものである。

第2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件異議申立てにおいて引用する商標は、申立人が飲食店の店舗ロゴとして使用しているとする別掲2のとおりの構成からなるもの(以下「引用商標」という。)である。

第3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第7号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第38号証を提出した。

なお、申立人は、登録異議申立書の、登録異議の申立ての理由及び必要な証拠の表示について補正できる期間(理由補充期間。商標法第43条の4第2項。)経過後に、上申書をもって、本件商標が「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に該当しない旨上申するとともに、甲第39号証ないし甲第41号証を提出している。

1 商標法第3条第1項柱書について

(1)本件商標出願人たる法人の取締役及び従業員には、申立人の元従業員3名が含まれており、申立人(の代表者)と元従業員3名の間には、引用商標についての不使用合意がある。そして、元従業員3名は本件商標出願人である法人を実質的に経営している等の理由から、本件商標出願人は、本件商標をその指定役務について使用することができない(甲2~甲7、甲9、甲25、甲26、甲31及び甲32)。

(2)本件商標は、申立人が著作権を有する著作物であるため、本件商標出願人は、商標法第29条により、本件商標を使用できない(甲10~甲16及び甲32)。

(3)本件商標出願人は、自身の店舗において本件商標とは異なるロゴを使用し、かつ、申立人に対し、申立人に係る商標登録出願を取り下げさせる交渉材料として本件商標の登録出願の取下げを利用している(甲9、甲24及び甲32)。

(4)したがって、本件商標は、本件商標出願人にとって、自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標に該当しないから、本件商標は商標法第3条第1項柱書の要件を欠き、取消理由を有するものである。

2 商標法第4条第1項第7号について

(1)本件商標出願人は、本件商標が申立人が著作権を有する著作物であって、かつ、申立人がこれを役務「飲食物の提供」に商標として使用していることを知りつつ、本件商標を故意に冒認出願、すなわち剽窃的に出願したものである(甲10~甲23、甲28及び甲32)。

(2)上記1のとおり、本件商標出願人は、本件商標を自己の役務に使用する意思はなく、申立人に本件商標を登録させず、申立人に係る店舗の店名及びロゴを変更させるために、申立人(の代表者)と元従業員3名との間で本件商標の不使用合意があるにもかかわらず、本件商標を登録出願したものであって、加えて、申立人が、申立人に係る商標登録出願を行った後には、当該登録出願を取り下げさせる交渉材料としたものである(甲2~甲7、甲9~甲23、甲24~甲26、甲31及び甲32)。

(3)以上からすれば、本件商標は、不正な目的で、かつ、他人の商標及び著作物を背信的、剽窃的に登録出願したものであって、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当するから、商標法第4条第1項第7号に該当する、取消理由を有するものである。

3 商標法第4条第1項第15号について

(1)本件商標は、申立人に係る飲食店の店舗のロゴと同一であり、その指定役務も「飲食物の提供」で同一である。しかも、本件商標出願人の営業拠点である店舗は、申立人に係る前記飲食店と100メートル以内という至近距離に所在し、その客層も重なるものである(甲27~甲29、甲32及び甲34)。

(2)商標出願人の従業員で、申立人の元従業員である者が、申立人に係る店舗の公式Instagramアカウントを乗っ取っている。また、何者かによって、申立人に係る店舗のGoogleマップの位置情報及び店舗情報が、本件商標出願人に係る店舗のものに修正された(甲35、甲36、甲38及び甲39)。

(3)これらの状況から、本件商標出願人による本件商標の使用は、申立人によるそれと、具体的な出所の混同を生じることとなる。したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標であるから、商標法第4条第1項第15号に該当する、取消理由を有するものである。

第4 当審の判断

1 商標法第3条第1項柱書について

商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用している商標、あるいは、将来、自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(平成24年5月31日知的財産高等裁判所、平成24年(行ケ)第10019号)。

そうすると、本件商標出願人が、本件商標の登録査定時において、本件商標を自己の業務に係る指定役務について現に使用していなくとも、将来においてその使用をする意思があれば、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するといえるところ、申立人が提出する全証拠(甲1~甲38)によっても、本件商標出願人が、本件商標の登録査定時において、将来、自己の業務に係る指定役務に本件商標を使用する意思を有していたことを否定するに足りる事実は見いだせない。

なお、提出された証拠のうち、甲第32号証は申立人代表者による陳述書であるところ、提出された他の証拠(甲1~甲31及び甲33~甲38)から明らかな事実又はこれらの証拠から推認できる記載(申立人及び本件商標出願人の事業内容・設立日等、元従業員3名が申立人の従業員であったこと、申立人代表者と元従業員によるチャットの内容、申立人と本件商標出願の代理人弁護士との間の連絡事項の内容、2023年5月23日を作成日とする、「RL-ロゴ-反転-5_01_03」なる、本件商標と同一又は類似の画像からなる電子データが存在すること、申立人が自信の飲食店内等で引用商標を使用していること、及び、本件商標出願人が自身の店舗において本件商標とは異なるロゴを使用していること等)を除き、当該陳述書に記載された事項を裏付ける証拠は提出されていない。

また、後述のとおり、申立人から提出された、令和7年11月17日付け上申書及び添付物件(甲39~甲41)は、異議申立て期間及び理由補充期間の経過後に提出されたものであるから、これを採用することはできない。

したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものとはいえない。

2 商標法第4条第1項第7号について

商標法第4条第1項第7号に該当する商標とは、「商標法第4条第1項第7号でいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(ア)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(イ)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会的公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(ウ)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(エ)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(オ)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」(平成17年(行ケ)第10349号判決。)とされている。

そして、当事者間における権利取得が争点である商標の商標法第4条第1項第7号の適用について、「商標法は、出願人からされた商標登録出願について、当該商標について特定の権利利益を有する者との関係ごとに、類型を分けて、商標登録を受けることができない要件を、法4条各号で個別的具体的に定めているから、このことに照らすならば、当該出願が商標登録を受けるべきでない者からされたか否かについては、特段の事情がない限り当該各号の該当性の有無によって判断されるべきであるといえる。」(平成19年(行ケ)第10391号判決)とされている。

さらに、「当該出願人が本来商標登録を受けるべき者であるか否かを判断するに際して、先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨などからすれば、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきである。そして、特段の事情があるか否かの判断に当たっては、出願人と、本来商標登録を受けるべきと主張する者との関係を検討して、例えば、本来商標登録を受けるべきであると主張する者が、自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず、出願を怠っていたような場合や、契約等によって他者からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず、適切な措置を怠っていたような場合は、出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は、あくまでも、当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから、そのような場合にまで「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない。」(平成19年(行ケ)第10391号判決)とされている。

これらを踏まえ、申立人の主張及び提出された証拠を検討するに、本件商標が、申立人に係る店舗のロゴと同一又は類似のものであることはうかがえる。しかしながら、前記のとおり、先願主義を採用している日本の商標法の制度趣旨などからすれば、商標法第4条第1項第7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは、特段の事情のある例外的な場合を除くほか、許されないというべきであるから、単に他人が使用している商標と同一又は類似する商標を出願したという事実のみをもって、本件商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当するということはできない。

また、本件商標は、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激又は他人に不快な印象を与えるような文字ではなく、本件商標出願人が本件商標をその指定役務に使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合に該当するとはいえないものであり、さらには、他の法律によって当該商標の使用等が禁止されているものではないし、他国の国民感情を害することや国家間の信用を毀損することなど国際信義に反するような事情を見いだすこともできない。

したがって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とはいえないことから、商標法第4条第1項第7号に該当しない。

3 商標法第4条第1項第15号について

本件商標は、別掲1のとおりの構成からなり、引用商標は、別掲2のとおりの構成からなるところ、両者はほぼ同一の構成よりなるものであるから、本件商標と引用商標とは同一又は類似のものというのが相当である。

しかしながら、申立人からは、引用商標の周知・著名性に関する主張はなされておらず、提出された全証拠(甲1~甲38)によっても、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、役務「飲食物の提供」の需要者の間に広く認識されているものと認められない。

そうすると、引用商標の独創性の程度、本件商標の指定役務と申立人に係る役務の関連性の程度、需要者の共通性などを考慮したとしても、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定役務について使用しても、役務「飲食物の提供」の取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。

その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

4 申立人の主張について

(1)申立人は、本件商標出願人である法人の取締役及び従業員には、申立人の元従業員3名が含まれており、申立人(の代表者)と元従業員3名の間には、引用商標についての不使用合意があり、かつ、本件商標は申立人が著作権を有する著作物であることから、本件商標出願人は、本件商標をその指定役務について使用することができない旨、及び、本件商標出願人が、自身の店舗において本件商標とは異なるロゴを使用しているから、本件商標出願人は、本件商標をその指定役務について使用しておらず、かつ、使用する意思がない旨を主張する。

しかしながら、申立人による主張及び提出された証拠(甲6、甲7及び甲32)からは、通話・チャットアプリ(LINE)において、申立人の元従業員のうち1名から、「ルーフレスの名前は使用可能」、「ロゴは使わない」という内容の通話を確認するメッセージが、申立人代表者を含むグループチャット内に送信されたことはうかがえる。また、申立人提出の証拠(甲10~甲14及び甲32)においては、2023年5月23日を作成日とする、「RL-ロゴ-反転-5_01_03」なる、本件商標と同一又は類似の画像からなる電子データが存在することがうかがえる。さらに、申立人提出の証拠(甲24)によっては、本件商標出願人が、自身の店舗において、本件商標とは異なるロゴを使用していることはうかがえるものの、当該メッセージ及び電子データの存在、並びに、本件商標出願人が、自身の店舗において、本件商標とは異なるロゴを使用していることをもって、本件商標出願人が、本件商標の登録査定時において、将来、自己の業務に係る指定役務に本件商標を使用する意思を有していたことを否定するに足りる事実は見いだせないことは、上記第4の1のとおりである。

(2)申立人は、本件商標出願人は、申立人に対して同人に係る商標登録出願を取り下げさせる交渉材料として本件商標の登録出願の取下げを利用しているから、本件商標出願人は、本件商標をその指定役務について使用しておらず、かつ、使用する意思がない旨、及び、その商標登録出願の目的は不正なものである旨を主張する。

しかしながら、申立人の主張及び提出された証拠(甲8、甲9及び甲32)によっては、令和7年(2025年)3月14日に、商標登録出願人が、商標登録出願の取下げについて検討していたこと、及び、同年4月6日に、申立人の代表者が商標登録出願を取り下げるのであれば、商標登録出願人も商標登録出願を取り下げる意向を有していたことはうかがえるものの、これらの証拠をもって、本件商標出願人が、本件商標の登録査定時において、将来、自己の業務に係る指定役務に本件商標を使用する意思を有していたことを否定するに足りる事実、及び、不正の目的をもって本件商標の登録出願を行ったことを裏付ける事実は見いだせないことは上記第4の1及び2のとおりである。

5 申立人の提出に係る上申書について

申立人は、令和7年11月17日付け上申書を提出しているが、当該上申書及び添付物件(甲39~甲41)は、異議申立て期間及び理由補充期間の経過後に提出されたものであるから、これを採用することはできない。

6 むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものではなく、同法第4条第1項第7号及び同項第15号のいずれにも該当するとはいえず、その登録は、同法第3条及び同法第4条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。

その他、本件商標の登録が、商標法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせない。

したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。

よって、結論のとおり決定する。

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