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Trademark Appeal Case

役務の類否と周知性

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025900143
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
登録第6922413号商標の商標登録を維持する。

理由テキスト

理 由

1 本件商標

本件登録第6922413号商標(以下「本件商標」という。)は、「土地フェス」の文字を標準文字で表してなり、令和6年10月2日に登録出願、第37類「建設工事,建設工事に関する助言,建築設備の運転・点検・整備」を指定役務として、同7年3月18日に登録査定され、同年4月23日に設定登録されたものである。

2 引用商標

登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標に係る登録異議申立ての理由において引用する登録第6682752号商標(以下「引用商標」という。)は、「土地フェス」の文字を標準文字で表してなり、令和4年5月9日に登録出願、第35類「広告,経営の診断又は経営に関する助言,不動産に関する市場調査並びにその分析及び助言,建築業者・土木業者・建築士のあっせん及びこれらに関する情報の提供又は助言,建物・土地の売買・賃貸借・管理に関する消費者のための役務の選択における助言と情報の提供,建築物における来訪者の受付及び案内」及び第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,建物又は土地の情報の提供,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介」を指定役務として、同5年3月22日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

3 登録異議の申立ての理由

申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものであると要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第8号証を提出した。

(1)本件商標と引用商標について

本件商標「土地フェス」と引用商標「土地フェス」は、その構成文字において完全に同一であるから、称呼、観念についても同一である(甲1、甲2)。

(2)商標法第4条第1項第11号について

ア 両商標の指定役務の実質的類似性

本件商標の指定役務である第37類「建設工事」等と、引用商標の指定役務である第35類及び第36類の「建物の売買,建物・土地の売買・賃貸借・管理に関する消費者のための役務の選択における助言と情報の提供,建物又は土地の情報の提供」等は、類似商品・役務審査基準上は非類似とされている。

しかし、商品・役務の類否は、基準に形式的に従うだけでなく、取引の実情に即して判断されるべきものである。

本件において、両役務は以下の点から実質的に類似する関係にあると評価すべきである。

第1に、両者の需要者層は「マイホームの取得を希望する者」という点で完全に一致している。

需要者は、「土地を探し、情報を得て(引用商標の役務分野)、その土地を購入し(同)、そして購入した土地の上に建物を建設する(本件商標の役務分野)」という、一連の消費行動をとることが取引上の通例である。

第2に、近年の不動産・建設業界においては、不動産会社が建設部門を併設したり、ハウスメーカーが土地の斡旋から建物の建設までをワンストップで提供したりする事業形態が一般化しており、両役務が同一の事業者又は密接な関連性を有する事業者グループによって提供されるという取引の実情がある。

この点に関し、大阪地方裁判所平成21年(ワ)第13559号判決においても、「建築工事請負は、建物の売買と密接な関係があり、これに本件商標が使用された場合、原告の有する本件商標権と誤認混同が生じるといえる。したがって、被告の行為と本件商標の指定役務は類似する。」と判示されており、「建物の売買」(第36類)と「建築工事請負」(第37類)との間の密接な関連性、ひいては役務の類似性が認められている(甲3)。

イ 小括

よって、本件商標は、先願に係る引用商標と同一の商標であり、その指定役務は実質的に類似するから、商標法第4条第1項第11号に該当する。

(3)商標法第4条第1項第15号について

ア 引用商標及びその周知性について

申立人の引用商標に係る通常使用権者であるA社(甲4)は、本件商標の出願日より前から、土地の情報の提供等の役務について、自己の業務に係る役務を表示するものとして「土地フェス」の商標を使用し、引用商標は、A社の努力により、多くの需要者の間で周知となるに至っている。

なお、商標使用許諾契約書(甲4)は、引用商標の出願中に令和4年8月12日に早期審査に関する事情説明書に対する手続補足書によって提出されたものである。

この周知性に関して具体的には、A社は、全国各地において「土地フェス」の名称を冠したイベントを複数年にわたり継続的に開催し、その広告宣伝のために多額の費用を投下してきた(甲5、甲6)。

その結果、「土地フェス」のイベント開催回数は、2024年に全国各地で年間累計874回、2025年も6月14日時点で累計390回となっており、引用商標は、不動産、特にマイホームの取得を希望する需要者層の間で広く知られるに至っている。

そして、我が国の年間の新設持家の着工棟数が218,000戸(甲7)、日本国内にあるハウスメーカーの数が35,000社であること(甲8)に対し、A社の「土地フェス」イベントの開催回数が年間874回という事実は、当該市場において高い存在感を示していることがわかる。

以上の事実から、引用商標が、本件商標の出願時において、通常使用権者の業務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたことは明らかである。

イ 商標法第4条第1項第15号該当性について

商標法第4条第1項第11号の項目で検討した役務同士の類似性が仮に否定されたとしても、商標法第4条第1項第15号が、まさにこのような商品・役務が非類似である場合においても、出所の混同が生じる場合に適用される規定である。

本件においては、需要者が完全に一致しており、不動産会社が建設部門を併設したり、ハウスメーカーが土地の斡旋から建物の建設までをワンストップで提供したりする事業形態が一般化し、両役務が同一の事業者又は密接な関連性を有する事業者グループによって提供されるという取引の実情がある点を鑑みれば、申立人の著名な商標「土地フェス」と同一の商標が、需要者の消費行動において密接不可分な「建設工事」の役務について使用された場合、需要者がこれを「土地フェス」ブランドの関連サービス、あるいは事業多角化の一環と誤認し、役務の出所について混同することは必定である。

引用商標がその使用と宣伝広告によって築き上げた業務上の信用及び顧客吸引力は、商標法によって保護されるべき重要な法的利益であり、著名な商標と同一の商標が、関連性の極めて高い役務について併存することは、需要者の信頼を裏切り、公正な取引秩序を害するものであって、到底容認されるべきものではない。

ウ 小括

よって、本件商標は、たとえ指定役務が引用商標の役務と非類似であっても、申立人の著名な登録商標と同一であり、その需要者の共通性及び取引の実情から、役務の出所について混同を生ずるおそれが極めて高いものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 当審の判断

(1)引用商標の周知性

申立人の提出した証拠及び同人の主張によれば、申立人は、A社と引用商標について「通常使用権」を許諾する商標使用許諾契約を令和4年8月1日に締結したことが認められ(甲4)、また、A社は、上記契約締結以降、通常使用権者として、本件商標の登録査定後である2025年5月及び6月に、「土地フェス」の文字を使用したイベントを開催し、当該イベントにおいて土地に関する情報の提供の役務を提供したとされる(甲5、甲6)。

そして、申立人は、A社が全国各地において「土地フェス」の名称を冠したイベントを複数年にわたり継続的に開催しており、2024年に全国各地で累計874回、2025年は6月14日時点で累計390回開催し、その広告宣伝のために多額の費用を投下した旨主張しているが、上記イベントに係る広告の具体的な方法、回数、広告費等の詳細及び上記イベントの開催状況について確認できる証拠は提出されていない。

そうすると、引用商標が、A社により土地に関する情報の提供の役務に使用されているとしても、引用商標が使用された役務の広告宣伝、市場占有率、事業規模等、その周知性を客観的に評価できる証拠は見いだせない。

してみれば、申立人の主張及び同人提出の証拠によっては、引用商標が、申立人又は通常使用権者であるA社(以下「申立人ら」という。)の業務に係る役務に使用する商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。

(2)商標法第4条第1項第11号該当性について

ア 本件商標と引用商標の類否について

本件商標と引用商標は、いずれも「土地フェス」の文字を標準文字で表してなるものであるから、両者は同一の商標である。

イ 本件商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否について

(ア)役務の類否判断基準 指定商品が類似のものであるかどうかは、商品自体が取引上互いに誤認混同を生ずるおそれがあるかどうかだけにより判定すべきものではなく、それらの商品に同一又は類似の商標を使用するとき同一営業主の製造又は販売に係る商品と誤認されるおそれがあると認められる関係がある場合には、たとえ、商品自体が互いに誤認混同を生じるおそれがないものであっても、類似の商品に当たると解するのが相当である(最高裁昭和36年6月27日第三小法廷判決・民集15巻6号1730頁参照)。また、商標の類否判断に当たり考慮すべき取引の実情とは、その指定商品全般についての一般的・恒常的なそれを指すものであって、単に該商標が現在使用されている商品についてのみの特殊的・限定的なそれを指すものではないと解すべきである(最高裁昭和47年(行ツ)第33号・昭和49年4月25日第一小法廷判決参照)。

そして、商標法第4条第1項第11号における役務の類否は、出願商標及び引用商標の指定役務に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の製造・販売又は提供に係る役務と誤認されるおそれがあると認められる関係にあるかにより判断すべきであり、具体的には、提供の手段、目的又は場所、提供に関連する物品、需要者・取引者の範囲、提供主体の業種、当該役務に関する業務や事業者を規制する法律、同一の事業者が提供するものであるかどうか等の取引の事情を総合的に検討し、個別具体的に判断すべきである(令和4年(行ケ)第10090号)。

申立人は、本件商標の指定役務中、第37類の「建設工事」等と引用商標の指定役務中、第35類及び第36類の「建物・土地の売買・賃貸借・管理に関する消費者のための役務の選択における助言と情報の提供,建物の売買,建物又は土地の情報の提供」等は、需要者層はいずれもマイホームの取得を希望する者という点で一致し、両役務が同一の事業者又は密接な関連性を有する事業者グループによって提供されるという取引の実情があるから、本件商標と引用商標の指定役務は実質的に類似する役務である旨主張している。

そこで、まず、本件商標の指定役務中、「建設工事」(以下「本件役務」という場合がある。)と引用商標の指定役務中、「建物の売買」(以下「引用役務」という場合がある。)の類否について検討する。

(イ)本件役務

本件商標の指定役務中、「建設工事」は、建築業法第2条第1項の別表の上欄に掲げられた「建設工事」を参考にして、日本産業分類順に従って、総合工事、職別工事、設備工事に区分けしたものであり(商品及び役務の区分解説[国際分類第12-2024版対応])、その業種は、日本標準産業分類(「総務省」のウェブサイト(https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/R05index.htm))によると、「大分類D-建設業」の範ちゅうに分類され、主として注文又は自己建設によって建設工事を施工する事業所が、現場において行われる、建築物、土木施設その他土地に継続的に接着する工作物及びそれらに附帯する設備を新設、改造、修繕、解体、除却若しくは移設することであって、その需要者は、建築物の施工を依頼する一般消費者ということができ、また、上記役務は、それぞれの工事の専門業者によって提供されるサービスである。

(ウ)引用役務

引用商標の指定役務中、「建物の売買」は、不動産に関するサービスであり、その業種は、日本標準産業分類(前掲)によると、「大分類K-不動産業、物品賃貸業」、「中分類68-不動産取引業」に属し、主として建物の売買を行うものであり、宅地建物取引業法の規制を受けるものであって、その需要者は、建築物の販売を希望する者とその購入を希望する一般消費者等であり、また、上記役務は、宅地建物取引業法に基づく資格を有する不動産取引業者によって提供されるサービスである。

(エ)本件役務と引用役務の比較

上記(イ)及び(ウ)によれば、本件役務「建設工事」と引用役務「建物の売買」とは、いずれも一般消費者を需要者とするという点において共通するとしても、そのサービス内容(建物の建設工事と建物の売買)は互いに異なるものであり、また、業種(建設業と不動産取引業)、提供の手段、目的、規制する法律等が異なり、サービス提供事業者(工事事業者と不動産取引業者)も相違するから、通常、同一の事業者が提供するような役務ではない。

したがって、それら役務に同一又は類似の商標が使用された場合、当該役務の取引者、需要者に同一の営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれはないというべきである。

なお、申立人は、不動産・建設業界においては、不動産会社が建設部門を併設したり、ハウスメーカーが土地の斡旋から建物の建設までをワンストップで提供したりする事業形態が一般化しており、両役務が同一の事業者又は密接な関連性を有する事業者グループによって提供されるという取引の実情があり、「建築工事請負」は、「建物の売買」と類似性が認められた判決例を挙げ、本件役務と引用役務が類似する旨主張する。

しかしながら、申立人の提出に係る証拠によっては、「建設工事」と「建物の売買」が、一般に同一の事業者又は密接な関連性を有する事業者グループによって提供されている取引の実情を確認することができない。

そして、役務を提供する事業者の一部が一致しているとしても、そのことのみをもって、対比する役務が類似するということはできないものであり、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否の判断に当たり考慮すべき一般的、恒常的な取引の実情とはいえず、また、役務の類否判断は、上記(ア)のとおり、取引の事情を総合的に検討し、個別具体的に判断すべきであるから、類似性が認められた判決があることをもって、上記判断を覆すことはできない。

なお、上記以外の本件商標の指定役務と引用商標の指定役務についても、同一又は類似の商標をその指定役務に使用しても、同一の営業主の提供に係る役務と誤認されるおそれのない、非類似の役務というべきものである。

したがって、本件商標の指定役務は、引用商標のいずれの指定役務とも同一又は類似するものではない。

ウ 小括

上記のとおり、本件商標は、引用商標と同一の商標であるとしても、その指定役務は、引用商標の指定役務と類似するものではない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。

(3)商標法第4条第1項第15号該当性

ア 引用商標の周知性

上記(1)のとおり、引用商標は、申立人らの業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されているものではない。

イ 商標の類似性及び役務の関連性

上記(2)アのとおり、本件商標と引用商標は同一の商標であるから、類似性の程度は高いが、上記イのとおり、本件商標に係る指定役務と引用商標に係る指定役務は非類似のものであって、両役務の関連性は低い。

ウ 出所の混同のおそれ

上記ア及びイのとおり、引用商標は周知性を有するものではなく、本件商標と引用商標の類似性の程度が高いとしても、両者の役務の関連性が低いものであることからすれば、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定役務について使用しても、当該役務に係る需要者及び取引者が引用商標を連想又は想起するとは考え難く、その役務が他人(申立人ら)あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはない。

その他、本件商標について、出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。

したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。

(4)むすび

以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。

よって、結論のとおり決定する。

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