結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2023016683 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
本願は、令和1年11月7日(パリ条約による優先権主張 平成30年5月4日(US)米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 2年12月22日提出:手続補正書
令和 3年12月14日付け:拒絶理由通知
令和 4年 3月17日提出:意見書、手続補正書
同年 6月 2日提出:刊行物等提出書
同年 8月 2日付け:拒絶理由通知
令和 5年 2月 9日提出:意見書、手続補正書
同年 2月20日提出:刊行物等提出書
同年 5月26日付け:拒絶査定
同年10月 2日提出:審判請求書、手続補正書
同年11月16日提出:手続補正書(方式)
令和 6年 1月25日付け:前置報告
令和 7年 5月15日付け:拒絶理由通知
同年 8月18日提出:意見書、手続補正書
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、令和7年8月18日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 タイヤトレッドゴム組成物であって、
a.100部のエラストマー成分であって、
i.-10°C~-20°CのTgを有する25~45部の少なくとも1種の非官能化スチレン-ブタジエンゴムと、
ii.少なくとも95%のシス結合含量及び-101°C未満のTgを有する30~50部のポリブタジエンと、
iii.20~30部の天然ゴム、ポリイソプレン、又はこれらの組み合わせと、
を含む、100部のエラストマー成分と、
b.100~400m
2
/gの表面積を有する100~150phrの少なくとも1種の補強シリカ充填剤、及び10phr以下の補強カーボンブラック充填剤と、
c.70°C~110°CのTgを有する20~35phrの少なくとも1種の炭化水素樹脂と、
d.15~30phrの少なくとも1種の油と、
e.硬化パッケージと、を含み、
前記(i)の少なくとも1種の非官能化スチレン-ブタジエンゴムが、スチレン-ブタジエンゴム100部あたり30~40部の油で伸展された油展スチレン-ブタジエンゴムを含み、
前記タイヤトレッドゴム組成物は、60°Cにおけるtanδ値が0.27~0.34であり、かつ
a.-30°Cにおけるtanδ値が、前記60°Cにおけるtanδ値の1.3倍~2倍であること、
b.0°Cにおけるtanδ値が、前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.5倍であること、又は
c.30°Cにおけるtanδ値が、前記60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.1倍であること、
のうちの少なくとも1つを満たす、
タイヤトレッドゴム組成物。」
当審における令和7年5月15日付けの拒絶理由通知(以下「当審拒絶理由通知」という。)で通知した拒絶の理由は、概要、
「1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
本願発明に係る各成分を本願発明に係る配合量で配合した組成物でありさえすれば本願発明の課題を解決できると当業者が認識するとはいえない。そして、構造や特性が異なる種々のものが含まれる各成分を種々の配合量で配合した組成物として特定される本願発明が、発明の詳細な説明の記載や本願出願時の技術常識から前記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるということはできない。」
「2.(実施可能要件)この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
本願発明に係る各成分を本願発明に係る配合量で配合した組成物でありさえすれば本願発明に係るtanδ値を備えるということはできない。そして、本願発明に係るタイヤドレッドゴム組成物を製造しようとする当業者は、発明の詳細な記載や技術常識から示唆を得られないまま、本願発明に係る各成分として具体的にどのようなものを選択するかということや、本願発明に係る配合量として具体的にどのような量を選択するかという検討を迫られ、本願発明に係るタイヤドレッドゴム組成物を製造するために過度の試行錯誤をしなければならないことになるといえる。」
という理由を含むものである。
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり、明細書のサポート要件の存在は、特許出願人又は特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である(知財高判平17.11.11平成17(行ケ)10042号参照。)。
(2)発明の詳細な説明の記載
本願の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明(以下単に「発明の詳細な説明」という。)には、以下のとおりの記載がある。
(a)背景技術について
「【背景技術】
【0002】
タイヤは、路面に接触するトレッドを含めて多くの構成要素を含んでいる。タイヤトレッドを含むゴム組成物に使用される特定の成分は、様々であり得る。タイヤトレッドゴム組成物の配合は、1つの特性(例えば、転がり抵抗)に改善をもたらす配合への変更が、別の特性(例えば、乾燥牽引力)の劣化をもたらし得るので、複雑な科学である。」
(b)第1~第4の実施形態について
「【0004】
第1の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物が開示される。組成物は、(a)100部のエラストマー成分であって、(i)約-10~約-20°CのTgを有する25~45部の少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムと、(ii)少なくとも95%のシス結合含量及び-101°C未満のTgを有する30~50部のポリブタジエンと、(iii)20~35部の天然ゴム、ポリイソプレン、又はこれらの組み合わせと、を含む、100部のエラストマー成分と、(b)約100~約400m
2
/gの表面積を有する100~150phrの少なくとも1種の補強シリカ充填剤と、(c)約70~約110°C、好ましくは約80~約100°CのTgを有する15~40phrの少なくとも1種の炭化水素樹脂と、(d)10~30phrの少なくとも1種の油と、(e)硬化パッケージと、を含む。
【0005】
第2の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物が開示される。組成物は、(a)100部のエラストマー成分であって、(i)約-10~約-20°CのTg及び700,000~950,000グラム/モルのMwを有する25~45部の少なくとも1種の油展スチレン-ブタジエンゴムと、(ii)少なくとも95%のシス結合含量及び-101°C未満のTgを有する30~50部のポリブタジエンと、(iii)20~35部の天然ゴム、ポリイソプレン、又はこれらの組み合わせと、を含む、100部のエラストマー成分と、(b)約100~約400m
2
/gの表面積を有する100~150phrの少なくとも1種の補強シリカ充填剤と、(c)約70~約110°C、好ましくは約80~約100°CのTgを有する15~40phrの少なくとも1種の炭化水素樹脂と、(d)10~30phrの少なくとも1種の油と、(e)硬化パッケージと、を含む。
【0006】
第3の実施形態では、タイヤトレッドゴム組成物が開示される。組成物は、(a)100部のエラストマー成分であって、(i)約-10~約-20°CのTg及び700,000~950,000グラム/モルのMwを有する25~45部の少なくとも1種の油展スチレン-ブタジエンゴムと、(ii)少なくとも95%のシス結合含量及び-101°C未満のTgを有する30~50部のポリブタジエンと、(iii)20~35部の天然ゴム、ポリイソプレン、又はこれらの組み合わせと、を含む、100部のエラストマー成分と、(b)約100~約400m2/gの表面積を有する110~150phrの少なくとも1種の補強シリカ充填剤及び20phr以下のカーボンブラック充填剤と、(c)約70~約110°C、好ましくは約80~約100°CのTgを有する15~40phrの少なくとも1種の環式脂肪族炭化水素樹脂と、(d)10~30phrの少なくとも1種の油と、(e)硬化パッケージと、を含む。
【0013】
第4の実施形態では、第1の実施形態、第2の実施形態、又は第3の実施形態によるタイヤトレッドゴム組成物を含むトレッドを含むタイヤが開示される。」
(c)エラストマー成分の(ii)について
「【0032】
第1~第4の実施形態によれば、エラストマー成分の(ii)は、少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれより上)のシス結合含量、及び-101°C未満(例えば、-102、-103、-104、-105、-106、-107、-108、-109°C又はそれより下)のTg、又は-101~-110°C、-105~-110°C、若しくは-105~-108°CのTgを有するポリブタジエンゴムからなる。シス結合含量は、シス1,4-結合含量を指す。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、ポリブタジエンゴムは、少なくとも98%(例えば、98%、99%、又はそれより上)又は少なくとも99%(例えば、99%、99.5%、又はそれより上)のシス1,4-結合含量を有し得る。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物に使用される任意のポリブタジエンゴムは、-105°C以下(例えば、-105、-106、-107、-108、-109°C又はそれより下)のTgを有する。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物に使用される任意のポリブタジエンゴムは、3重量%未満(例えば、3%、2%、1%、0.5%、又はそれより下)、好ましくは1重量%未満(例えば、1%、0.5%、又はそれより下)又は0重量%のシンジオタクチック1,2-ポリブタジエンを含有する。一般に、第1~第4の実施形態によれば、少なくとも95%のシス結合含量及び-101°C未満のTgを有する1種又は2種以上のポリブタジエンゴムが、(ii)のために使用され得る。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、(ii)は、少なくとも95%(例えば、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれより上)のシス結合含量及び-101°C未満のTgを有する1種のポリブタジエンゴムのみからなる。」
(d)エラストマー成分の(iii)について
「【0033】
第1~第4の実施形態によれば、エラストマー成分の(iii)は、天然ゴム、ポリイソプレン、又はこれらの組み合わせからなる。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、(iii)は天然ゴムから(のみ)なる。第1の実施形態の他の実施形態では、(iii)はポリイソプレンから(のみ)なる。エラストマー成分の(iii)に天然ゴムが存在する場合、天然ゴムは、パラゴムノキ天然ゴム、非パラゴムノキ天然ゴム(例えば、グアユール天然ゴム)、又はこれらの組み合わせを含み得る。天然ゴムが第1~第4の実施形態のトレッドゴム組成物中で利用されるとき、天然ゴムは、好ましくは、1,000,000~2,000,000グラム/モル(例えば、1百万、1.1百万、1.2百万、1.3百万、1.4百万、1.5百万、1.6百万、1.7百万、1.8百万、1.9百万、2百万グラム/モル)、1,250,000~2,000,000グラム/モル、又は1,500,000~2,000,000グラム/モル(ポリスチレン標準を使用してGPCによって測定される)のMwを有する。第1の実施形態の好ましい実施形態では、(iii)の天然ゴム及び/又はポリイソプレンは、エポキシ化されておらず、特定のそのような実施形態では、トレッドゴム組成物は、10phr以下のエポキシ化天然ゴム又はエポキシ化ポリイソプレン、好ましくは5phr以下のエポキシ化天然ゴム又はエポキシ化ポリイソプレン、より好ましくは0phrのエポキシ化天然ゴム又はエポキシ化ポリイソプレンを含有する。」
(e)エラストマー成分の(i)について
「【0034】
第1~第4の実施形態によれば、(i)で使用される、約-10~約-20°CのTgを有するスチレン-ブタジエンゴムのMwは、様々であり得る。第2及び第3の実施形態によれば、並びに第1及び第4の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー成分の(i)は、約-10~約-20°C(例えば、-10、-11、-12、-13、-14、-15、-16、-17、-18、-19、又は-20°C)のTg及び700,000~1,200,000グラム/モル、(例えば、700,000、725,000、750,000、775,000、800,000、825,000、850,000、875,000、900,000、925,000、950,000、975,000、1,000,000、1,025,000、1,050,000、1,075,000、1,100,000、1,125,000、1,150,000、1,175,000、又は1,200,000グラム/モル)のMw、700,000~950,000グラム/モル(例えば、700,000、725,000、750,000、775,000、800,000、825,000、850,000、875,000、900,000、925,000、又は950,000グラム/モル)のMw、又は800,000~950,000 グラム/モル(例えば、800,000、825,000、850,000、875,000、900,000、925,000、又は950,000グラム/モル)のMwを有するスチレン-ブタジエンゴムからなり、特定のそのような実施形態では、(i)は、SBRを1種のみ含み、前述の範囲のうちの1つの範囲内のMwを有する。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー成分の(i)は、約-10~約-20°CのTg及び700,000~1,200,000グラム/モル(例えば、700,000、725,000、750,000、775,000、800,000、825,000、850,000、875,000、900,000、925,000、950,000、975,000、1,000,000、1,025,000、1,050,000、1,075,000、1,100,000、1,125,000、1,150,000、1,175,000、又は1,200,000グラム/モル)のMw、700,000~950,000グラム/モル(例えば、700,000、725,000、750,000、775,000、800,000、825,000、850,000、875,000、900,000、925,000、又は950,000グラム/モル)のMw、又は800,000~950,000グラム/モル(例えば、800,000、825,000、850,000、875,000、900,000、925,000、又は950,000グラム/モル)のMwを有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムを含み、特定のそのような実施形態では、(i)は、SBRを1種のみ含み、前述の範囲のうちの1つの範囲内のMwを有する。本明細書において言及されているMw値は、重量平均分子量であり、これは、スチレン-ブタジエン標準及び対象のポリマーに対してマルク-ハウインク定数により較正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用することにより決定することができる。
【0035】
第1~第4の実施形態によれば、(i)で使用される、約-10~約-20°CのTgを有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムのMnは、様々であり得る。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー成分の(i)は、約-10~約-20°CのTg及び300,000~500,000グラム/モル(例えば、300,000、325,000、350,000、375,000、400,000、425,000、450,000、475,000、又は500,000グラム/モル)のMnを有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムを含み、特定のそのような実施形態では、(i)は、SBRを1種のみ含み、前述の範囲内のMnを有する。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー成分の(i)は、約-10~約-20°CのTg及び350,000~450,000(例えば、350,000、375,000、400,000、425,000、又は450,000グラム/モル)のMnを有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムを含み、特定のそのような実施形態では、(i)は、SBRを1種のみ含み、前述の範囲内のMnを有する。(i)のSBRは、前述の範囲のうちの1つの範囲内のMnを前述の範囲のうちの1つの範囲内のMwと組み合わせて、任意追加的に、以下に記載のMw/Mn値と組み合わせて、有することができる。本明細書において言及されているMn値は、数平均分子量であり、これは、スチレン-ブタジエン標準及び対象のポリマーに対してマルク-ハウインク定数により較正したゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用することにより決定することができる。
【0036】
本明細書に開示される第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、エラストマー成分の(i)は、約-10~約-20°CのTg及び1.5~2.5(例えば、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、又は2.5、好ましくは1.7~2.5のMw/Mn(多分散度)を有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムを含み、特定のそのような実施形態では、(i)は、SBRを1種のみ含み、前述の範囲のうちの1つの範囲内のMw/Mnを有する。
【0037】
第1~第4の実施形態によれば、(i)で使用される、約-10~約-20°CのTgを有するスチレン-ブタジエンゴムのビニル結合含量(すなわち、1,2-ミクロ構造)は、様々であり得る。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、(i)で使用される、約-10~約-20°CのTgを有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムは、約30~約60%、30~60%(例えば、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、又は60%)、約35~約55、35~55(例えば、35、37、39、41、43、45、47、49、51、53、又は55%)、約40~約50%、40~50%(例えば、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、又は50%)、約42~約48%、又は42~48%(例えば、42%、43%、44%、45%、46%、47%、又は48%)のビニル結合含量を有する。(i)で使用される、約-10~約-20°CのTgを有するスチレン-ブタジエンゴムは、前述の範囲のうちの1つの範囲内のビニル結合含量を、任意選択的に上記のMw、Mn、及び/又はMw/Mnの範囲のうちの1つ又は複数と組み合わせて、有し得る。本明細書で言及されるビニル結合含量は、SBRポリマー鎖のブタジエン部分におけるビニル結合含量ではなく、SBRポリマー鎖中の総ビニル結合含量についてであるものとして理解されるべきであり、H
1
-NMR及びC
13
-NMRによって(例えば、300MHz Gemini 300 NMR Spectrometer System(Varian)を使用して)測定することができる。
【0038】
第1~第4の実施形態によれば、(i)で使用される、約-10~約-20°CのTgを有するスチレン-ブタジエンゴムのスチレンモノマー含量(すなわち、ブタジエン単位とは対照的にスチレン単位を含むポリマー鎖の重量パーセント)は様々であり得る。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、(i)で使用される、約-10~約-20°CのTgを有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムは、少なくとも20重量%(例えば、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%)のスチレンモノマー含量を有する。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、(i)で使用される、約-10~約-20°CのTgを有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムは、20~50重量%(例えば、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%)又は20~40重量%(例えば、20%、25%、30%、35%、又は40%)のスチレンモノマー含量を有する。
【0039】
第1~第4の実施形態によれば、(i)の約-10~約-20°CのTgを有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムは、官能化又は非官能化され得る。本明細書で使用されるとき、「官能化」という用語は、官能基及びカップリング剤の両方の使用を包含すると理解されるべきである。1種又は2種以上の官能基が各SBRに利用され得る。一般に、官能基は、ポリマーの先端部に、ポリマーの末端部に、ポリマー鎖の骨格に沿って、又はこれらの組み合わせで存在し得る。ポリマーの一方又は両方の末端に存在する官能基は、一般に、官能性開始剤、官能性停止剤、又はその両方の使用の結果である。代替として又は更に、官能基は、カップリング剤を使用した複数のポリマー鎖の結合の結果として存在し得る(以下に記載される)。第1~第4の実施形態の特定の好ましい実施形態では、(i)の約-10~約-20°CのTgを有する少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴムは、好ましくはシリカ反応性官能基で、官能化されている。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、(i)は、約-10~約-20°CのTgを有する1種のスチレン-ブタジエンゴムから(のみ)なり、特定のそのような実施形態では、スチレン-ブタジエンゴムは、シリカ反応性官能基で官能化されている。第1~第4の実施形態の他の好ましい実施形態では、(i)は、官能化されていない(すなわち、官能基もカップリング剤も含有しない)、約-10~約-20°CのTgを有する1種のスチレン-ブタジエンゴムから(のみ)なる。第1~第4の実施形態の他の実施形態では、(i)は、約-10~約-20°CのTgを有する2種以上のスチレン-ブタジエンゴム(例えば、2種、3種、又はそれより上)からなり、特定のそのような実施形態では、スチレン-ブタジエンゴムのうちの少なくとも1種は、シリカ反応性官能基で官能化されている。シリカ反応性官能基の非限定例として、一般に、窒素含有官能基、ケイ素含有官能基、酸素又は硫黄含有官能基、及び金属含有官能基が挙げられ、以下でより詳細に記載する。」
(f)補強シリカ充填剤について
「 補強シリカ充填剤
【0066】
上述のように、第1及び第2の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、約100~約400m
2
/gの表面積を有する少なくとも1種の補強シリカ充填剤を、100~150phr(例えば、100、101、104、105、109、110、111、114、115、119、120、121、124、125、129、130、131、134、135、139、140、141、144、145、149、又は150phr)の量で含む。同じく上述のように、第3の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、約100~約400m
2
/gの表面積を有する少なくとも1種の補強シリカ充填剤を、110~150phr(例えば、110、111、114、115、119、120、121、124、125、129、130、135、140、145、又は150phr)の量で含む。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、約100~約400m
2
/gの表面積を有する少なくとも1種の補強シリカ充填剤を、110~130phr(例えば、110、111、115、114、119、120、121、124、125、129、又は130phr)の量で含む。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、約100~約400m
2
/gの表面積を有する少なくとも1種の補強シリカ充填剤を、120~140phr(例えば、120、121、124、125、129、130、131、134、135、139、又は140phr)の量で含む。本明細書に開示される第4の実施形態は、第1、第2、又は第3の実施形態によるトレッドゴム組成物を利用するので、第4の実施形態もまた、約100~約400m
2
/gの表面積を有する少なくとも1種の補強シリカ充填剤を、前述の量のうちの1つで含むと理解されるべきである。第1~第4の実施形態によれば、約100~約400m
2
/gの表面積を有する1種又は2種以上の補強シリカ充填剤が利用され得、2種以上のこのような補強シリカ充填剤が利用されるそれらの実施形態では、前述の量は、全ての補強シリカ充填剤の総量を指す。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、約100~約400m
2
/gの表面積を有する補強シリカ充填剤が1種のみ利用される。第1~第4の実施形態の好ましい実施形態では、トレッドゴム組成物に使用される補強シリカ充填剤は、約100~約400m
2
/gの表面積を有するものだけであり、そのような実施形態では、トレッドゴム組成物は、上に記載した範囲の外側の表面積を有する補強シリカ充填剤を含まない(すなわち、0phrのそれを含有する)ものとして理解することができる。
【0067】
第1~第4の実施形態によれば、約100~約400m
2
/gの表面積を有する少なくとも1種の補強シリカ充填剤に使用される特定の種類のシリカは、様々であり得る。第1~第4の実施形態の特定の実施形態での使用に適した補強シリカ充填剤の非限定例としては、沈殿非晶質シリカ、湿性シリカ(水和ケイ酸)、乾燥シリカ(無水ケイ酸)、フュームドシリカ、ケイ酸カルシウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。第1~第4の実施形態の特定の実施形態で使用する他の好適な補強シリカ充填剤としては、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム(Mg
2
SiO
4
、MgSiO
3
など)、ケイ酸マグネシウムカルシウム(CaMgSiO
4
)、ケイ酸カルシウム(Ca
2
SiO
4
など)、ケイ酸アルミニウム(Al
2
SiO
5
、Al
4.3
SiO
4.5
H
2
Oなど)、ケイ酸アルミニウムカルシウム(Al
2
O
3
.CaO
2
SiO
2
など)などが挙げられるが、これらに限定されない。列挙された補強シリカ充填剤の中で、沈殿非晶質湿式プロセス、含水シリカ充填剤が好ましい。このような補強シリカ充填剤は、水中の化学反応により生成され、そこから一次凝集体へと強力に結合し、順次、二次凝集体へとわずかに強く結合する一次粒子を伴う超微粒の球状粒子として、沈殿される。表面積は、BET法で測定すると、様々な補強シリカ充填剤の補強特性を特徴付ける好ましい測定値である。本明細書に開示される第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、約100m
2
/g~約400m
2
/g、100m
2
/g~400m
2
/g、約100m
2
/g~約350m
2
/g、又は100m
2
/g~350m
2
/gの表面積(BET法によって測定される)を有する補強シリカ充填剤を含む。本明細書に開示される第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、約170m
2
/g~約350m
2
/g、170m
2
/g~350m
2
/g(例えば、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、又は350m
2
/g)、約170m
2
/g~約320m
2
/g、及び170m
2
/g~320m
2
/g(例えば、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、又は320m
2
/g)の範囲が含まれる、約150m
2
/g~約400m
2
/g、150m
2
/g~400m
2
/g(例えば、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、又は400m
2
/g)のBET表面積を有する補強シリカ充填剤を含み、特定のそのような実施形態では、ゴム組成物中に存在する唯一のシリカ充填剤は、前述の範囲のうちの1つの範囲内のBET表面積を有する。本明細書に開示される第1~第4の実施形態の他の実施形態では、ゴム組成物は、約100m
2
/g~約140m
2
/g、100m
2
/g~140m
2
/g(例えば、100、105、110、115、120、125、130、135、又は140m
2
/g)、約100m
2
/g~約125m
2
/g、100m
2
/g~125m
2
/g(例えば、100、105、110、115、120、又は125m
2
/g)、約100m
2
/g~約120m
2
/g、又は100~120m
2
/g(例えば、100、105、110、115、又は120m
2
/g)のBET表面を有する補強シリカ充填剤を含む。特定のそのような実施形態では、ゴム組成物中に存在する唯一のシリカ充填剤は、前述の範囲のうちの1つの範囲内のBET表面積を有する。本明細書に開示される第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、約5.5~約8、5.5~8(例えば、5.5、5.7、5.9、6.1、6.3、6.5、6.7、6.9、7.1、7.3、7.5、7.7、7.9、又は8)、約6~約8、6~8(例えば、6、6.2、6.4、6.6、6.8、7、7.2、7.4、7.6、7.8、又は8)、約6~約7.5、6~7.5、約6.5~約8、6.5~8、約6.5~約7.5、6.5~7.5、約5.5~約6.8、又は5.5~6.8のpHを有する補強シリカ充填剤を含む。第1~第4の実施形態の特定の実施形態で使用することができる市販の補強シリカ充填剤のいくつかとしては、PPG Industries(Pittsburgh,Pa.)によって製造された、Hi-Sil(登録商標)EZ120G、Hi-Sil(登録商標)EZ120G-D、Hi-Sil(登録商標)134G、Hi-Sil(登録商標)EZ 160G、Hi-Sil(登録商標)EZ 160G-D、Hi-Sil(登録商標)190、Hi-Sil(登録商標)190G-D、Hi-Sil(登録商標)EZ 200G、Hi-Sil(登録商標)EZ 200G-D、Hi-Sil(登録商標)210、Hi-Sil(登録商標)233、Hi-Sil(登録商標)243LD、Hi-Sil(登録商標)255CG-D、Hi-Sil(登録商標)315-D、Hi-Sil(登録商標)315G-D、Hi-Sil(登録商標)HDP 320Gなど、が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、複数の有用な商用の異なる補強シリカ充填剤もまた、Evonik Corporation(例えば、Ultrasil(登録商標)320 GR、Ultrasil(登録商標)5000 GR、Ultrasil(登録商標)5500 GR、Ultrasil(登録商標)7000 GR、Ultrasil(登録商標)VN2 GR、Ultrasil(登録商標)VN2、Ultrasil(登録商標)VN3、Ultrasil(登録商標)VN3 GR、Ultrasil(登録商標)7000 GR、Ultrasil(登録商標)7005、Ultrasil(登録商標)7500 GR、Ultrasil(登録商標)7800 GR、Ultrasil(登録商標)9500 GR、Ultrasil(登録商標)9000 G、Ultrasil(登録商標)9100 GR)及びSolvay(例えば、Zeosil(登録商標)1115MP、Zeosil(登録商標)1085GR、Zeosil(登録商標)1165MP、Zeosil(登録商標)1200MP、Zeosil(登録商標)Premium、Zeosil(登録商標)195HR、Zeosil(登録商標)195GR、Zeosil(登録商標)185GR、Zeosil(登録商標)175GR、及びZeosil(登録商標)165 GR)から入手可能である。」
(g)補強カーボンブラック充填剤について
「 カーボンブラック充填剤
【0077】
本明細書に開示される第3の実施形態によれば、並びに本明細書に開示される第1、第2、及び第4の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物中のカーボンブラック充填剤の量は限定される。より詳細には、第3の実施形態によれば、並びに第1、第2、及び第4の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、20phr以下のカーボンブラック充填剤(例えば、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1又は更に0phr)、10phr以下(例えば、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は更に0phr)のカーボンブラック充填剤、又は5phr以下(例えば、5、4、3、2、1又は更に0phr)のカーボンブラック充填剤を含有する。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、0phrのカーボンブラック充填剤を含有する。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、前述の限られた量のカーボンブラック充填剤は、補強カーボンブラック充填剤を指すと理解されるべきである。第1~第4の実施形態の他の実施形態では、前述の限られた量のカーボンブラック充填剤は、非補強カーボンブラック充填剤を指すと理解されるべきである。第1~第4の実施形態の更に他の実施形態では、前述の限られた量のカーボンブラック充填剤は、全てのカーボンブラック充填剤(すなわち、補強及び非補強カーボンブラック充填剤の両方)を指すと理解されるべきである。
【0078】
カーボンブラック充填剤が存在する、第1~第4の実施形態のそれらの実施形態では、利用される特定の1つの種類又は複数の種類のカーボンブラックは様々であり得る。一般に、第1~第4の実施形態の特定の実施形態のゴム組成物中の補強充填剤として使用する好適なカーボンブラックは、少なくとも約20m
2
/g(少なくとも20m
2
/gを含む)及び、より好ましくは、少なくとも約35m
2
/g~約200m
2
/g以上(35m
2
/g~200m
2
/gを含む)の表面積を有するものを含めた、一般に入手可能な商用製造されたカーボンブラックのいずれかを含む。カーボンブラックについて本明細書において使用される表面積の値は、臭化セチルトリメチル-アンモニウム(CTAB)技法を使用するASTM D-1765によって決定される。有用なカーボンブラックの中には、ファーネスブラック、チャネルブラック、及びランプブラックがある。より詳細には、有用なカーボンブラックの例としては、超耐摩耗性ファーネス(SAF)ブラック、高耐摩耗性ファーネス(HAF)ブラック、良押出性ファーネス(FEF)ブラック、微細ファーネス(FF)ブラック、準超耐摩耗性ファーネス(ISAF)ブラック、中補強性ファーネス(SRF)ブラック、中加工性チャネルブラック、難加工性チャネルブラック、及び導電性チャネルブラックが挙げられる。利用され得る他のカーボンブラックとしては、アセチレンブラックが挙げられる。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、前述のブラックの2種以上の混合物を含む。好ましくは、第1~第4の実施形態によれば、カーボンブラック充填剤が存在する場合、1つの種類(又は等級)の補強カーボンブラックのみからなる。第1~第4の実施形態の特定の実施形態で使用する典型的で好適なカーボンブラックは、ASTM D-1765-82aによって指定されている、N-110、N-220、N-339、N-330、N-351、N-550、及びN-660である。使用されるカーボンブラックは、ペレット化形状又は非ペレット化綿状塊とすることができる。好ましくは、一層均質な混合を行うため、非ペレット化カーボンブラックが好ましい。」
(h)炭化水素樹脂について
「 炭化水素樹脂
【0082】
上述のように、第1~第4の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、(c)約70~約110°C、又は70~110°C(例えば、70、75、80、85、90、95、100、105、又は110°C)のTgを有する、15~40phr(例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40phr)の少なくとも1種の炭化水素樹脂を含む。炭化水素樹脂のTgは、エラストマーのTg測定について上述した手順に従って、DSCによって測定することができる。第1の実施形態の他の実施形態では、(d)の少なくとも1種の炭化水素樹脂は、約75~約105°C、75~105°C(例えば、75、80、85、90、95、100又は105°C)、約80~約110°C、又は80~100°C(例えば、80、82、84、85、86、88、90、92、94、95、96、98、又は100°C)のTgを有する。第1の実施形態の特定の実施形態では、(c)は、20~40phr(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40phr)、又は20~35phr(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、又は35phr)の量で存在する。以下でより詳細に記載されるように、第3の実施形態によれば、並びに第1、第2、及び第4の実施形態の特定の実施形態では、(c)の少なくとも1種の炭化水素樹脂は、環式脂肪族樹脂を含む。
【0083】
第1~第4の実施形態によれば、1種又は2種以上の炭化水素樹脂がトレッドゴム組成物に利用され得、炭化水素樹脂の1つ又は複数の特定の種類は、様々であり得る。2種以上の炭化水素樹脂が利用される場合、上に記載の量は、全ての炭化水素樹脂の総量を指すと理解されるべきである。
【0084】
第3の実施形態によれば、並びに第1、第2、及び第4の実施形態の特定の好ましい実施形態では、(c)の炭化水素樹脂は、環式脂肪族樹脂を、任意追加的に、脂肪族樹脂、芳香族樹脂、及びテルペン樹脂から選択される1種又は複数種の追加の樹脂と組み合わせて、含む。1種又は複数種の追加の樹脂が存在する、第1~第4の実施形態のそれらの実施形態では、そのような追加の樹脂の総量は、好ましくは5phr以下、5phr未満、4phr未満、3phr未満、2phr未満、又は1phr未満(及び各場合において、(c)の炭化水素樹脂の全体量の10重量%以下、好ましくは5重量%以下)である。第1~第4の実施形態の他の実施形態では、(c)の炭化水素樹脂は、環式脂肪族樹脂(のみ)からなる。環式脂肪族樹脂が使用される場合、1種又は2種以上の環式脂肪族樹脂が利用され得る。第1、第3、及び第4の実施形態の特定の実施形態では、炭化水素樹脂は、いかなるテルペン樹脂も除外する(すなわち、0phrのテルペン樹脂がトレッドゴム組成物中に存在する)。本明細書で使用されるとき、用語「環式脂肪族樹脂」は、環式脂肪族ホモポリマー樹脂及び環式脂肪族コポリマー樹脂の両方を含むと理解されるべきである。環式脂肪族コポリマー樹脂は、1種又は複数種の環式脂肪族モノマーを、任意追加的に1種又は複数種の他(非環式脂肪族)のモノマーと組み合わせて、含む樹脂であって、全モノマーの重量での大部分が環式脂肪族である、樹脂を指す。第1~第4の実施形態の特定の実施形態において炭化水素樹脂として使用するのに好適な環式脂肪族樹脂の非限定例としては、シクロペンタジエン(「CPD」)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(「DCPD」)ホモポリマー又はコポリマー樹脂、及びこれらの組み合わせが挙げられる。環式脂肪族コポリマー樹脂の非限定例としては、CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、DCPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、CPD/テルペンコポリマー樹脂、DCPD/テルペンコポリマー樹脂、CPD/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/C5留分コポリマー樹脂)、DCPD/脂肪族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C5留分コポリマー樹脂)、CPD/芳香族コポリマー樹脂(例えば、CPD/C9留分コポリマー樹脂)、DCPD/芳香族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C9留分コポリマー樹脂)、CPD/芳香族-脂肪族コポリマー樹脂(例えば、CPD/C5及びC9留分コポリマー樹脂)、DCPD/芳香族-脂肪族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/C5及びC9留分コポリマー樹脂)、CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、CPD/スチレンコポリマー樹脂)、DCPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂(例えば、DCPD/スチレンコポリマー樹脂)、CPD/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/CPDコポリマー樹脂)、及びDCPD/テルペンコポリマー樹脂(例えば、リモネン/DCPDコポリマー樹脂)が挙げられる。例示的なそのような環式脂肪族樹脂は、Chemfax、Dow Chemical Company、Eastman Chemical Company、Idemitsu、Neville Chemical Company、Nippon、Polysat Inc.、Resinall Corp.、及びZeonを含む様々な企業から様々な商品名で市販されている。」
(i)油について
「 油
【0089】
上述のように、第1~第4の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、10~30phr(例えば、30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、又は10phr)の油を含む。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、15~30phr(例えば、24、23、22、21、20、19、18、17、16、又は15phr)の油を含む。用語「油」は、遊離油(通常、配合プロセス中に添加される)及び伸展油(ゴムを伸展させために使用される)の両方を包含することを意味する。したがって、トレッドゴム組成物が15~30phrの油を含むことを主張することにより、任意の遊離油及び任意の伸展油の総量が15~30phrであると理解されるべきである。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、トレッドゴム組成物は、前述の量(例えば、15~30phr、15~24phr、15~20phrなど)のうちの1つで遊離油のみを含有する。第1~第4の実施形態の他の実施形態では、トレッドゴム組成物は、前述の量(例えば、15~30phr、15~24phr、15~20phrなど)のうちの1つで伸展油のみを含有する。第1~第4の実施形態の更に他の実施形態では、トレッドゴム組成物中の油の少なくとも50重量%(例えば、50%、55%、60%、又はそれより上)が、油展ポリマー、例えば、(i)のための油展SBRからの油によって提供される。油展ゴムが使用される、第1~第4の実施形態のそれらの実施形態では、油展ゴムを調製するために使用される油の量は、様々であり得る。油展ゴムが使用される、第1~第4の実施形態のそれらの実施形態では、油展ゴムを調製するために使用される油の量は、様々であり得、特定のそのような実施形態では、油展ゴム(ポリマー)中に存在する伸展油の量は、ゴム100部あたり10~50部の油(例えば、100部若しくはゴムあたり10、15、20、25、30、35、40、45又は50部の油)、好ましくは100部若しくはゴムあたり10~40部の油又はゴム100部あたり20~40部の油である。非限定例として、伸展油は、トレッドゴム組成物全体でSBRが40部の量で使用されている(ii)のSBR中にゴム100部あたり油40部の量で使用され得、したがって、油展SBRによってトレッドゴム組成物に寄与する油の量は、16phrとして記載され得る。ゴム(特にスチレン-ブタジエンゴム)の油展は、SBRが比較的高いMw及び/又は比較的高いムーニー粘度を有するとき、加工又は混合を容易にするのに有益であり得る。本明細書に開示される第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、(i)で使用されるときに約-10~約-20°CのTgを有するスチレン-ブタジエンゴムは、100°Cにおいて少なくとも100のポリマームーニー粘度ML1+4を有する油展スチレン-ブタジエンゴムである。ポリマームーニー粘度とは、油展前のゴム又はポリマーのムーニー粘度を意味する。油展ゴムが、本明細書に開示されるトレッドゴム組成物のエラストマー成分中に使用されている場合、(i)、(ii)及び(iii)について指定された量は、油展ゴムの量ではなく、ゴムのみの量を指すと理解されるべきである。本明細書で使用されるとき、油は、石油系油(例えば、芳香油、ナフテン油、及び低PCA油)及び植物油(野菜、木の実、及び種子から採取することができるものなど)の両方を指す。植物油は一般にトリグリセリドを含み、この用語は、合成トリグリセリド、及び実際に植物から供給されたものを含むと理解されるべきである。
【0090】
第1~第4の実施形態によれば、1種又は複数種の油がトレッドゴム組成物中に存在する場合、様々な種類の加工油及び伸展油が利用され得、これには、芳香油、ナフテン油、及び低PCA油(石油由来又は植物由来)が挙げられるが、これらに限定されない。好適な低PCA油としては、IP346法によって測定すると、3重量%未満の多環式芳香族含有物を有するものが挙げられる。IP346法の手順は、Institute of Petroleum(英国)発行のStandard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts,2003,62nd editionに見出すことができる。例示的な石油由来の低PCA油としては、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理留出物芳香族抽出物(TDAE)、TRAE、及び重ナフテン系が挙げられる。例示的なMES油は、CATENEX SNR(SHELL製)、PROREX 15及びFLEXON 683(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 200(BP製)、PLAXOLENE MS(TOTAL FINA ELF製)、TUDALEN 4160/4225(DAHLEKE製)、MES-H(REPSOL製)、MES(Z8製)、並びにOLIO MES S201(AGIP製)として市販されている。例示的なTDAE油は、TYREX 20(EXXONMOBIL製)、VIVATEC 500、VIVATEC 180、及びENERTHENE 1849(BP製)、並びにEXTENSOIL 1996(REPSOL製)として入手可能である。例示的な重ナフテン系油は、SHELLFLEX 794、ERGON BLACK OIL、ERGON H2000、CROSS C2000、CROSS C2400、及びSAN JOAQUIN 2000Lとして入手可能である。例示的な低PCA油としてはまた、野菜、木の実、及び種子から採取することができるものなど、様々な植物由来の油も挙げられる。非限定例としては、以下に限定されないが、ダイズ油、ヒマワリ油(高オレイン酸ヒマワリ油を含む)、サフラワー油、コーン油、亜麻仁油、綿実油、菜種油、カシュー油、ゴマ油、ツバキ油、ホホバ油、マカダミアナッツ油、ココナツ油、及びヤシ油が挙げられる。前述の加工油を、伸展油として、すなわち、油展ポリマー又はコポリマーの調製のために、又は加工油若しくは遊離油(free oil)として使用することもできる。」
(j)硬化パッケージについて
「 硬化パッケージ
【0095】
上述のとおり、本明細書に開示される第1~第4の実施形態によれば、トレッドゴム組成物は、硬化パッケージを含む。硬化パッケージの含有成分は、第1~第4の実施形態によって様々であり得るが、一般に、硬化パッケージは、加硫剤、加硫促進剤、加硫活性化剤(例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸など)、加硫阻害剤、及びスコーチ防止剤のうちの少なくとも1つを含む。第1~第4の実施形態の特定の実施形態では、硬化パッケージは、少なくとも1つの加硫剤と、少なくとも1つの加硫促進剤と、少なくとも1つの加硫活性化剤と、任意選択的に、加硫阻害剤及び/又はスコーチ防止剤とを含む。加硫促進剤及び加硫活性化剤は、加硫剤のための触媒として働く。様々な加硫阻害剤及びスコーチ防止剤は、当分野で公知であり、所望の加硫特性に基づいて、当業者により選択され得る。
【0096】
第1~第4の実施形態の特定の実施形態で使用する好適な加硫剤の種類の例としては、硫黄又は過酸化物系の硬化性構成成分が挙げられる。したがって、ある種のこのような実施形態では、硬化性構成成分としては、硫黄系硬化剤又は過酸化物をベースとする硬化剤が挙げられる。第1~第4の実施形態の好ましい実施形態では、加硫剤は、硫黄系硬化剤を含み、特定のそのような実施形態では、加硫剤は、硫黄系硬化剤から(のみ)なる。特定の好適な硫黄加硫剤の例としては、「ゴム製造業者(rubbermaker)」の可溶性硫黄、二硫化アミン、ポリマー性ポリスルフィド、又は硫黄オレフィン付加物などの硫黄供与性硬化剤、及び不溶性のポリマー性硫黄が挙げられる。好ましくは、硫黄加硫剤は、可溶性硫黄、又は可溶性硫黄ポリマーと不溶性硫黄ポリマーとの混合物である。硬化に用いられる好適な加硫剤及びその他の組成物(例えば、加硫阻害剤、スコーチ防止剤)の一般的な開示として、Kirk-Othmer、「Encyclopedia of Chemical Technology」第3版、Wiley Interscience,N.Y.、1982年、Vol.20、pp.365~468、特に「Vulcanization Agents and Auxiliary Materials」、pp.390~402、又はA.Y.Coran、「Encyclopedia of Polymer Science and Engineering」第2版(1989年、John Wiley & Sons,Inc.)を参照可能であり、これらは参照により本明細書に組み込まれる。加硫剤は、単独で又は組み合わせて使用することができる。一般に、加硫剤は、第1~第4の実施形態の特定の実施形態において0.1~10phrの範囲の量で使用され得、これには、1~7.5phrが含まれ、1~5phr、好ましくは1~3.5phrが含まれる。」
(k)タイヤトレッド特性について
「 タイヤトレッド特性
【0104】
タイヤにおける第1~第3の実施形態のタイヤトレッドゴム組成物の使用は、改善された又は望ましいトレッド特性を有するタイヤをもたらし得る。これらの改善された又は望ましい特性としては、転がり抵抗、雪若しくは氷牽引摩擦、湿潤牽引摩擦、又は乾燥操縦性のうちの1つ又は複数を挙げることができる。これらの特性は、様々な方法によって測定され得るが、転がり抵抗、雪又は氷牽引摩擦、湿潤牽引摩擦、及び乾燥操縦性について本明細書で言及される値は、以下の温度において以下の手順に従って測定されるtanδ値を指す。tanδ値は、動的機械熱分光計(Gabo Qualimeter Testanlagen GmbH(Ahiden,Germany)のEplexor(登録商標)500N)を用いて以下の条件下で測定することができる:測定モード:引張試験モード、測定周波数:52Hz、50~-5°Cの0.2%ひずみ及び-5~65°Cの1%ひずみを適用、-30°C、0°C、30°C、及び60°Cの測定温度、試料形状:幅4.75mm×長さ29mm×厚さ2.0mm。測定は、硬化したゴムの試料(170°Cで15分間硬化)に対して行われる。-30°Cにおけるゴム組成物のtanδは、タイヤトレッド内に組み込まれているときのその雪又は氷牽引摩擦を示し、0°Cにおけるtanδは、タイヤトレッド内に組み込まれているときのその湿潤牽引摩擦を示し、30°Cにおけるtanδは、タイヤトレッド内に組み込まれているときのその乾燥操縦性を示し、60°Cにおけるそのtanδは、タイヤトレッド内に組み込まれているときのその転がり抵抗を示す。
【0105】
第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、0.27~0.34(例えば、0.27、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、0.33、又は0.34)、0.28~0.33(例えば、0.28、0.29、0.3、0.31、0.32、又は0.33)、又は0.29~0.32(例えば、0.29、0.3、0.31、又は0.32)の60°Cにおけるtanδの値を有する。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの値は、(a)60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.3倍(例えば、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、又はそれより上)、好ましくは60°Cにおけるtanδの1.3倍~2倍の-30°Cにおけるtanδの値、(b)60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.5倍(例えば、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、又はそれより上)、好ましくは60°Cにおけるtanδ値の1.5倍~2倍の0°Cにおけるtanδの値、又は(c)60°Cにおけるtanδ値の少なくとも1.1倍(例えば、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、又はそれより上)、好ましくは60°Cにおけるtanδ値の1.1倍~2倍の30°Cにおけるtanδの値、のうちの少なくとも1つと組み合わされ、特定のそのような実施形態では、60°Cにおけるtanδの値は、(a)、(b)、及び(c)のそれぞれと組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ(例えば、0.27~0.34、0.28~0.33、又は0.29~0.32)は、(a)60°Cにおけるtanδ値の1.3倍~2倍(例えば、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、又は2倍)、又は60°Cにおけるtanδ値の1.5~1.8倍(例えば、1.5倍、1.6倍、1.7倍、又は1.8倍)の-30°Cにおけるδについての値と組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ(例えば、0.27~0.34、0.28~0.33、又は0.29~0.32)は、(b)60°Cにおけるtanδ値の1.5倍~2倍(例えば、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、又は2倍)、又は60°Cにおけるtanδ値の1.6倍~1.9倍(例えば、1.6倍、1.7倍、1.8倍、又は1.9倍)の0°Cにおけるδについての値と組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ(例えば、0.27~0.34、0.28~0.33、又は0.29~0.32)は、(c)60°Cにおけるtanδ値の1.1倍~2倍(例えば、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、又は2倍)、60°Cにおけるtanδ値の1.1~1.8倍(例えば、1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、又は1.8倍)、又は60°Cにおけるtanδ値の1.2~1.6倍(例えば、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、又は1.9倍)の30°Cにおけるδについての値と組み合わされる。第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ(例えば、0.27~0.34、0.28~0.33、0.29~0.32)は、-30°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ、0°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つ、及び30°Cにおけるtanδの前述の値のうちの1つと組み合わされる。」
(3)参考文献の記載
ア 参考文献Aの記載
当審拒絶理由通知に掲げた、
参考文献A:松田孝昭,スチレン・ブタジエンゴムの最近の技術動向,日本ゴム協会誌,78巻,2号,2005年,46-50頁,doi.org/10.2324/gomu.78.46
には、以下のとおりの記載がある。
(l)「1.はじめに」の項
「 世の中に商品としてあるスチレン・ブタジエンゴム(以下SBR:
S
tyrene
B
utadiene
R
ubber)」は、乳化重合(ラジカル重合)または溶液重合(アニオン重合)により製造されている。乳化重合スチレン・ブタジエンゴム(E-SBR)は、1930年に製造されて以来、最も一般的に使用されているゴムである。また、溶液重合スチレン・ブタジエンゴム(S-SBR)の製造は、E-SBRに比較してその歴史は浅く、1959年にP社がアルキルリチウム触媒を用いて開発したのを始めとして
1),2)
、その後F社やS社も同様の技術を開発した
3),4)
。」
(m)「2.溶液重合SBR」の項
「近年S-SBRが注目されているのはアニオン重合法の特徴を生かしたその制御構造のしやすさであり、スチレン含量、ブタジエン部のビニル含量、分子量、分子量分布、分岐構造を制御した種々のS-SBRが商品として世の中に出ている。」
イ 参考文献Bの記載
当審拒絶理由通知に掲げた、
参考文献B:畦地利夫ほか,ゴムマトリクス中におけるシリカ粒子の分散・凝集挙動,高分子論文集,63巻,4号,2006年,234-240頁,doi.org/10.1295/koron.63.234
には、以下のとおりの記載がある。
(n)「1 緒言」の項
「カーボンブラックに関しては、カーボンブラック粒子表面へのポリマーの強固な相互作用
4)~8)
がポリマー-フィラー相互作用をほぼすべて反映していると考えられるが、シリカは、そのポリマーに対する表面相互作用は弱く、ポリマー中で凝集構造を形成しやすい。そのため、単純にシリカ粒子表面におけるポリマー-シリカ相互作用だけでなく、その凝集構造に起因する相互作用の影響も大きいと考えられる
9)~12)
。さらに、シリカのポリマーに対する表面相互作用は弱いため、分散性向上すなわちポリマー-フィラー相互作用を高めるためにシランカップリング剤が使用されることが一般的であり、この効果もポリマー-シリカ相互作用に対して大きく反映される。この@ポリマー-シリカ相互作用こそが、シリカ充填ゴムパウンドの補強性および粘弾特性を支配する大きなファクターであり、シリカ配合が多用される現在、その作用の詳細を把握することは不可欠である。
そこで、本報では表面性状・粒径の違うシリカ充填系における凝集・分散状態、およびフィラーゲル生成量等の比較を行った。その結果をもとに、ゴム中でのシリカ粒子自身の存在状態、さらに、それに対応したゴム-シリカ間親和性に与える影響を検討した。」
(4)発明の課題
段落0002及び0104(摘記(a)及び(k))をはじめとする発明の詳細な説明の記載からみて、本願発明の課題は「改善された又は望ましいトレッド特性を有するタイヤをもたらすタイヤトレッドゴム組成物を提供すること」であると認められる。
(5)検討
発明の詳細な説明には、本願発明に係る各成分を本願発明に係る配合量で配合した具体的な組成物は記載されていない。したがって、そのような具体的な組成物により前記課題が具体的に解決されたことも発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。
また、発明の詳細な説明には、本願発明に係る各成分のどのような構造や特性がどのように前記課題の解決に寄与するのかということや、本願発明に係る各成分の配合量の多寡がどのように前記課題の解決に寄与するのかということについても記載されていない。
さらに、発明の詳細な説明には、「タイヤにおける第1~第3の実施形態のタイヤトレッドゴム組成物の使用は、改善された又は望ましいトレッド特性を有するタイヤをもたらし得る」(摘記(k))と「タイヤにおける第1~第3の実施形態のタイヤトレッドゴム組成物の使用」は「改善された又は望ましいトレッド特性を有するタイヤ」をもたらす可能性があるに留まる旨の記載もある。
そして、本願発明に係る各成分を本願発明に係る配合量で配合した組成物により前記課題が具体的に解決されることは本願出願時の技術常識から当業者に自明であるとする根拠や、本願発明に係る各成分のどのような構造や特性が、あるいは本願発明に係る各成分の配合量の多寡がどのように前記課題の解決に寄与するのかは本願出願時の技術常識から当業者に自明であるとする根拠は見当たらない。
そうすると、本願発明に係る各成分を本願発明に係る配合量で配合した組成物でありさえすれば前記課題を解決できると当業者が認識するとはいえない。
一方、本願発明に係る各成分に関し、例えばスチレン-ブタジエンゴムについてみると、スチレン-ブタジエンゴムには重合方法が異なるもの、スチレン含量が異なるもの、ブタジエン部のビニル含量が異なるもの、分子量が異なるもの、分子量分布が異なるもの、分岐構造が異なるものなど種々のものがあることが本願出願時の技術常識であるから(摘記(l)及び(m))、発明の詳細な説明の記載(摘記(e))に接した当業者であれば本願発明に係る「-10°C~-20°CのTgを有する...非官能化スチレン-ブタジエンゴム」にはTg以外の構造や特性が異なる種々のスチレン-ブタジエンゴムが含まれると認識するといえる。また、例えばシリカについてみても、シリカには表面性状や粒径が異なるものなど種々のものがあることが本願出願時の技術常識であるから(摘記(n))、発明の詳細な説明の記載(摘記(f))に接した当業者であれば本願発明に係る「100~400m
2
/gの表面積を有する...補強シリカ充填剤」には比表面積以外の構造や特性が異なる種々のシリカ充填剤が含まれると認識するといえる。同様に、本願発明に係るそのほかの成分についても、発明の詳細な説明の記載(摘記(c)、(d)及び(g)~(j))に接した当業者であれば構造や特性が異なる種々のものが含まれると認識するといえる。そして、発明の詳細な説明に「タイヤは、路面に接触するトレッドを含めて多くの構成要素を含んでいる。タイヤトレッドを含むゴム組成物に使用される特定の成分は、様々であり得る。タイヤトレッドゴム組成物の配合は、1つの特性(例えば、転がり抵抗)に改善をもたらす配合への変更が、別の特性(例えば、乾燥牽引力)の劣化をもたらし得るので、複雑な科学である」(摘記(a))と記載されているように、タイヤ用ゴム組成物の分野において、組成物に配合される各成分の構造や特性の相違や各成分の配合量の多寡がタイヤ用ゴム組成物としての構造や特性の有意な相違として顕現することは本願出願時の技術常識である。
以上から、構造や特性が異なる種々のものが含まれる各成分を種々の配合量で配合した組成物として特定される本願発明が、発明の詳細な説明の記載や本願出願時の技術常識から前記課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるということはできない。
(6)請求人の主張について
審判請求人は、令和7年8月18日提出の意見書において、ゴム組成物の「-30°Cにおけるtanδ」、「0°Cにおけるtanδ」、「60°Cにおけるtanδ」、「30°Cにおけるtanδ」及び「60°Cにおけるtanδ」という指標は「雪又は氷牽引摩擦」、「湿潤牽引摩擦」、「乾燥操縦性」及び「転がり抵抗」というタイヤトレッド特性を示すものであることを指摘した上で(意見書4(3))、参考資料1’に記載された「発明例組成物」は本願発明の全ての構成要素を満たす組成物であるとともに本願発明で規定されているtanδ値の特性a.~d.の全てを満足しているのに対し、参考資料1’に記載された「対象組成物A」及び「対象組成物B」は本願発明の構成要素の一部を欠くとともに本願発明で規定されているtanδ値の特性a.~d.の全てを満足しているわけではないと主張し(意見書4(2)及び(4))、補正により成分bを限定したものである本願発明は発明の詳細な説明に記載された内容から拡張又は一般化可能な範囲であるとして(意見書4(1))、本願は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている(意見書5)とする。
しかし、特許出願後に実験データを提出して発明の詳細な説明の記載内容を記載外で補足することによって明細書のサポート要件に適合させることは許されないと解されるから(知財高判平17.11.11平成17(行ケ)10042号参照。知財高判平23.12.26平成22年(行ケ)10402号、知財高判平30.7.5平成29年(行ケ)10143号も同旨。)、そもそも参考資料1’の内容を発明の詳細な説明の記載を補うものとして参酌することは適切ではない。
また、仮に参考資料1’の内容を参酌しても、同実験結果は、本願発明に係る各成分を本願発明に係る配合量で配合しかつ本願発明に係るtanδ値を満たす組成物を開示するものに過ぎず、本願発明に係る各温度における各tanδ値が改善された又は望ましい各特性を意味することを裏付けるものではないから、発明の詳細な説明の記載や本願出願時の技術常識から本願発明に係るtanδ値を備えることにより前記課題を解決できることを当業者が認識できるということにはならない。そして、参考資料1’の表I補足の「発明組成物」についての記載は、本願発明を特定する事項を備えるか否かを「Yes」、「No」で示すとともに各成分をどの程度配合したかを示したものに過ぎず、各成分として具体的にどのようなものを配合したのかということや、構造や特性がどの程度異なる各成分を配合して「発明例組成物」を調製したのかということを何ら明らかにするものではないから、発明の詳細な説明の記載や本願出願時の技術常識から本願発明に係る各成分を本願発明に係る配合量で配合した組成物であれた高い蓋然性をもって本願発明に係るtanδ値を満たすと当業者が認識するということにもならない。
以上から、審判請求人の主張は前記(5)における判断を左右しない。
(7)サポート要件についてのまとめ
よって、本願発明が発明の詳細な説明に記載したものであるということはできない。
(1)実施可能要件の判断手法
物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法2条3項1号)、物の発明について実施可能要件を充足するか否かについては、当業者が、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を製造し、使用することができる程度の記載があるかどうかで判断するのが相当である(知財高判令6.4.25令和4年(行ケ)第10057号等参照。)。そして、実施可能要件については出願人がその証明責任を負うと解するのが相当である(知財高判令元.9.19平成30年(行ケ)10093号参照。)。
(2)発明の詳細な説明の記載及び参考文献の記載
発明の詳細な説明には、前記1(2)で述べたとおりのことが記載されている。また、当審拒絶理由通知に掲げた参考文献A及びBには、前記1(3)で述べたとおりのことが記載されている。
(3)検討
発明の詳細な説明には、本願発明に係る各成分を本願発明に係る配合量で配合した具体的な組成物は記載されていない。したがって、そのような具体的な組成物が本願発明に係るtanδ値を備えることも発明の詳細な説明には記載されているとはいえない。
また、発明の詳細な説明には、本願発明に係る各成分のどのような構造や特性がどのように本願発明に係るtanδ値に影響するのかということや、本願発明に係る各成分の配合量の多寡がどのように本願発明に係るtanδ値に影響するのかということについても記載されていない。
さらに、発明の詳細な説明には、「第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、ゴム組成物は、0.27~0.34...の60°Cにおけるtanδの値を有する」、「第1~第3の実施形態の特定の実施形態では、60°Cにおけるtanδの値は、(a)60°Cにおけるtanδ値の...1.3倍~2倍の-30°Cにおけるtanδの値、(b)60°Cにおけるtanδ値の...1.5倍~2倍の0°Cにおけるtanδの値、又は(c)60°Cにおけるtanδ値の...1.1倍~2倍の30°Cにおけるtanδの値、のうちの少なくとも1つと組み合わされ...る」(摘記(k))と「第1~第3の実施形態」のうちの「特定の実施形態」が本願発明に係るtanδ値を備えるに留まる旨の記載もある。
そして、本願発明に係る各成分を本願発明に係る配合量で配合した組成物でありさえすれば本願発明に係るtanδ値を備えることが本願出願時の技術常識であるとする根拠や、本願発明に係る各成分のどのような構造や特性が、あるいは本願発明に係る各成分の配合量の多寡がどのように本願発明に係るtanδ値に影響するのかは本願出願時の技術常識から当業者に自明であるとする根拠は見当たらない。
そうすると、本願発明に係る各成分を本願発明に係る配合量で配合した組成物でありさえすれば本願発明に係るtanδ値を備えるということはできない。したがって、本願発明に係るタイヤドレッドゴム組成物を製造しようとする当業者は、本願発明に係る各成分を本願発明に係る配合量で配合することを前提として、本願発明に係る各成分として具体的にどのようなものを選択するかということや、本願発明に係る配合量として具体的にどのような量を選択するかという試行錯誤をしなければならないといえる。
この点、本願発明に係る各成分に関し、例えばスチレン-ブタジエンゴムについてみると、スチレン-ブタジエンゴムには重合方法が異なるもの、スチレン含量が異なるもの、ブタジエン部のビニル含量が異なるもの、分子量が異なるもの、分子量分布が異なるもの、分岐構造が異なるものなど種々のものがあることが本願出願時の技術常識であるから(摘記(l)及び(m))、本願発明に係る「-10°C~-20°CのTgを有する...非官能化スチレン-ブタジエンゴム」にはTg以外の構造や特性が異なる種々のスチレン-ブタジエンゴムが含まれるといえる。また、例えばシリカについてみても、シリカには表面性状や粒径が異なるものなど種々のものがあることが本願出願時の技術常識であるから(摘記(n))、本願発明に係る「100~400m
2
/gの表面積を有する...補強シリカ充填剤」には比表面積以外の構造や特性が異なる種々のシリカ充填剤が含まれるといえる。同様に、本願発明に係るそのほかの成分についても、構造や特性が異なる種々のものが含まれるといえる。そして、発明の詳細な説明に「タイヤは、路面に接触するトレッドを含めて多くの構成要素を含んでいる。タイヤトレッドを含むゴム組成物に使用される特定の成分は、様々であり得る。タイヤトレッドゴム組成物の配合は、1つの特性(例えば、転がり抵抗)に改善をもたらす配合への変更が、別の特性(例えば、乾燥牽引力)の劣化をもたらし得るので、複雑な科学である」(摘記(a))と記載されているように、タイヤ用ゴム組成物の分野において、組成物に配合される各成分の構造や特性の相違や各成分の配合量の多寡がタイヤ用ゴム組成物としての構造や特性の有意な相違として顕現することは本願出願時の技術常識である。
以上から、本願発明に係るタイヤドレッドゴム組成物を製造しようとする当業者は、本願発明に係る各成分やその配合量について、多くの選択肢の中から製造するタイヤトレッドゴム組成物が本願発明に係るtanδ値を備えるようなものを選択しなければならないといえる。しかし、具体的にどのようなものを選択すればよいのかについては発明の詳細な説明には何ら記載されていないし、具体的にどのようなものを選択すればよいのかは本願出願時の技術常識から当業者に自明であるとする根拠は見当たらない。したがって、本願発明に係るタイヤドレッドゴム組成物を製造しようとする当業者は、発明の詳細な記載や本願出願時の技術常識から示唆を得られないまま、本願発明に係る各成分として具体的にどのようなものを選択するかということや、本願発明に係る配合量として具体的にどのような量を選択するかという検討を迫られ、本願発明に係るタイヤドレッドゴム組成物を製造するために過度の試行錯誤をしなければならないことになるといえる。
(4)請求人の主張について
審判請求人は、令和7年8月18日提出の意見書において、ゴム組成物の「-30°Cにおけるtanδ」、「0°Cにおけるtanδ」、「60°Cにおけるtanδ」、「30°Cにおけるtanδ」及び「60°Cにおけるtanδ」という指標は「雪又は氷牽引摩擦」、「湿潤牽引摩擦」、「乾燥操縦性」及び「転がり抵抗」というタイヤトレッド特性を示すものであることを指摘した上で(意見書4(3))、参考資料1’に記載された「発明例組成物」は本願発明の全ての構成要素を満たす組成物であるとともに本願発明で規定されているtanδ値の特性a.~d.の全てを満足しているのに対し、参考資料1’に記載された「対象組成物A」及び「対象組成物B」は本願発明の構成要素の一部を欠くとともに本願発明で規定されているtanδ値の特性a.~d.の全てを満足しているわけではないと主張し(意見書4(2)及び(4))、補正により成分bを限定したものである本願発明は発明の詳細な説明に記載された内容から実施可能であるとして(意見書4(1))、本願は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている(意見書5)とする。
しかし、特許出願が実施可能要件を満たすといえるためには、発明の詳細な説明自体に請求項に係る発明が実施可能なように記載する必要があり、その記載にない事項を後の実験等により補うことは許されないと解されるから(知財高判平19.7.19平成18(行ケ)10487号参照。知財高判平18.10.30平成17年(行ケ)10820号、知財高判平30.7.5平成29年(行ケ)10143号も同旨。)、そもそも参考資料1’の内容を発明の詳細な説明の記載を補うものとして参酌することは適切ではない。
また、仮に参考資料1’の内容を参酌しても、参考資料1’の表I補足の「発明組成物」についての記載は、本願発明を特定する事項を備えるか否かを「Yes」、「No」で示すとともに各成分をどの程度配合したかを示したものに過ぎず、各成分として具体的にどのようなものを配合したのかということや、構造や特性がどの程度異なる各成分を配合して「発明例組成物」を調製したのかということを何ら明らかにするものではないから、当業者が過度の試行錯誤を要することなく本願発明に係るタイヤドレッドゴム組成物を製造することができるということにはならない。
以上から、審判請求人の主張は前記(3)における判断を左右しない。
(5)実施可能要件についてのまとめ
よって、発明の詳細な説明の記載が当業者が本願発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
以上のとおりであるから、当審拒絶理由通知のとおり、本願は本願発明について特許法第36条第6項第1号及び同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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