結論テキスト
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2023800083 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第5172193号発明の特許請求の範囲の請求項2に記載された発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求める。
(1)被請求人のうち中越製陶株式会社(以下「第一被請求人」という。)による答弁の趣旨
本件審判請求は成り立たない
審判費用は請求人の負担とする
との審決を求める。
(2)被請求人のうち有限会社リタッグ(以下「第二被請求人」という。)による答弁の趣旨
概ね、請求人の主張を認める。
(1)本件特許の出願から設定登録までの経緯
本件無効審判の請求に係る特許第5172193号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成19年4月3日を出願日とする特許出願(特願2007-97450号)であって、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は、次のとおりである。
平成24年 2月14日付け:拒絶理由通知書
同年 4月17日:意見書、手続補正書の提出
同年12月18日付け:特許査定
平成25年 1月11日:設定登録
(2)本件無効審判の手続の経緯
令和5年12月25日:審判請求書差出
令和6年 3月18日付け:手続補正指令書(方式)
同年 4月30日:審判請求書の手続補正書差出
同年 8月26日:審判事件答弁書差出(第二被請求人)
同年 9月 2日:審判事件答弁書差出(第一被請求人)
同月26日付け:手続補正指令書(方式)
同年10月 9日:審判事件答弁書(第二被請求人)の手続補正書提
出
同年11月15日:審判事件答弁書(第一被請求人)の手続補正書提
出
令和7年 5月 8日付け:審理事項通知書
同年 5月26日:口頭審理陳述要領書差出(請求人)
同年 6月11日:尋問事項書(当日)差出(請求人)
同月23日:第1回口頭審理
同月30日付け:審尋(第一被請求人に対し)
同年 7月10日付け:書面審理通知書(第一被請求人に対し)
第1回口頭審理を欠席した第一被請求人に対し、令和7年6月30日付けの審尋により、第1回口頭審理調書を送付するとともに、請求人主張の無効理由を第1回口頭審理調書で整理されたとおりと認めない場合、または請求人提出の甲第1号証~甲第54号証(枝番含む)の成立を認めない場合には、回答書を提出してその旨を述べるよう、期間を定めて求めた。また、本件審理は以降書面審理とする旨を調書に記した第1回口頭審理を欠席した第一被請求人に対し、令和7年7月10日付けで書面審理通知書を送付した。
上記審尋に対し、審尋で定めた上記期間内に第一被請求人から応答はなかった。
なお、各提出書類について、以下では、次のように略する場合がある。
・請求人提出の令和6年4月30日差出の手続補正書により補正される前の審判請求書; 当初請求書
・請求人提出の令和6年4月30日差出の手続補正書による補正後の審判請求書; 補正後請求書
・請求人提出の口頭審理陳述要領書; 要領書
・請求人差出の尋問事項書(当日); 尋問事項書
・第一被請求人提出の令和6年11月15日提出の手続補正書により補正された審判事件答弁書; 第一被請求人答弁書
・第二被請求人提出の令和6年10月9日提出の手続補正書により補正された審判事件答弁書; 第二被請求人答弁書
本件特許の請求項2に係る発明(以下、「本件特許発明」という。)は、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項2の記載、及び請求項2が引用する請求項1の記載は、請求項順に示すと、次のとおりである。
「【請求項1】
既存U字溝の既存蓋に代えて新たな蓋を装着するU字溝の改修方法であって、前記新たな蓋が、フレーム状の一次蓋と、該一次蓋の開口部に脱着自在の二次蓋からなり、既存U字溝の上部を切除することなく、前記一次蓋が前記既存U字溝の既存蓋受部に装着され、接着一体化されることを特徴とするU字溝の改修方法。
【請求項2】
請求項1の改修方法において、前記二次蓋が前記既存蓋よりも薄いものであることを特徴とするU字溝の改修方法。」
(1)無効理由について
請求人が主張する無効理由は、補正後請求書、要領書、第1回口頭審理調書を総合すると、次のとおりのものである。
ア 本件特許の請求項2に係る発明である本件特許発明は、「前記二次蓋が前記既存蓋よりも薄いもの」という物の発明である。
イ 本件特許発明は、主たる甲号証である甲第2号証、甲第3号証、または甲第4号証により本件特許出願前に公然知られた発明(特許法第29条第1項第1号)、主たる甲号証である甲第2号証、甲第3号証、または甲第4号証が本件特許出願前に公然実施された発明(同項第2号)、または、主たる甲号証である甲第2号証、甲第3号証、または甲第4号証により本件特許出願前に頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明(同項第3号)であるか、前述した同項第1号~第3号に掲げる発明に基づいて、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、同条同項または第2項の規定に違反して特許がされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
ウ 上記イの無効理由において、
(ア)甲第2号証の実施を示す従たる書証は、甲第21号証~甲第24号証、甲第48号証~甲第50号証、丙第4号証、丙第5号証、及び丙第7号証~丙第10号証である。
(イ)甲第3号証の実施を示す従たる書証は、甲第2号証、甲第4号証、甲第11号証~甲第27号証、甲第34号証、甲第37号証、甲第39号証~甲第41号証、甲第47号証~甲第50号証、丙第4号証~丙第8号証、及び丙第10号証である。
(ウ)甲第4号証の実施を示す従たる書証は、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証~甲第29号証、甲第33号証、甲第34号証、甲第36号証~甲第52号証、丙第1号証~丙第7号証、及び丙第9号証である。
(2)無効理由でないことが確認された主張について(第1回口頭審理調書)
ア 当初請求書に特許法第29条の2の条文が記載されていた点について、請求人は、令和6年4月30日差出の手続補正書による補正によって、特許法第29条の2に係る主張を取り下げていることを、第1回口頭審理で確認した。
なお、令和6年4月30日差出の手続補正書による審判請求書の補正は、第一被請求人及び第二被請求人への審判請求書の副本の送付前、かつ、第一被請求人及び第二被請求人による答弁書提出前に行われているため、上記補正による特許法第29条の2に係る主張の取り下げについて、第一被請求人及び第二被請求人の同意が必要となるものではない。
イ 補正後請求書の第43頁第16行~17行に「(冒認出願。特許法第49条第2号及び同法第7号違反)」の記載があり、第58頁第19行及び第100頁第7行にも「冒認出願」の記載がある点について、請求人は、これらの点を、特許法第123条第1項第6号に係る冒認出願を無効理由として主張するものではないことを、第1回口頭審理で確認した。
(1)提出された書証
請求人は、次の書証を提出した。
ア 当初請求書に添付して提出
甲第1号証 :特許第5172193号公報(当審注;本件特許公報)
甲第2号証 :登録実用新案第3108197号公報
甲第3号証 :特許第4199803号公報
甲第4号証 :特許第2514918号公報
甲第5号証 :意匠登録第1015721号公報
甲第6号証 :登録実用新案第3108053号公報
甲第7号証 :商標登録第4121733号公報
甲第8号証 :商標登録第4121734号公報
甲第9号証 :「週間ブロック通信」,公共事業通信社,平成9年11月
10日,第1886号,第1頁及び第14頁~第16頁
甲第10号証 :「リボーン側溝技術提供契約書」(有限会社リタッグ及
び中越製陶株式会社),平成8年4月9日付け
甲第11号証 :「RUG側溝技術協力契約書」(有限会社リタッグ及び
中越製陶株式会社),平成17年4月20日付け
甲第12号証 :「「リボーン側溝」ECOンビ工法技術協力書」(有
限会社リタッグ及び中越製陶株式会社),平成21年1
月21日付け
甲第13号証 :「証明書」,荒井コンクリート工業株式会社代表取締
役,平成13年12月13日付け
甲第14号証 :「リボーン側溝」,株式会社テラコン,第1頁~第12
頁及び写真
甲第15号証 :「リボーン側溝技術提供契約書 Rレジン蓋」(有限会
社リタッグ、株式会社ヤマウ),平成12年4月1日付
け
甲第16号証 :リボーン側溝webカタログの印刷物,第9頁~第10
頁,第25頁,第35頁~第36頁,株式会社ヤマウ
甲第17号証 :「福岡市大名町の敷設現場 現場立会い記録」
甲第18号証 :「全国リボーン側溝工業会 第4回定期総会議事録(平
成14年11月総会) 全国リボーン側溝工業会四国支
部製品 リボーンVS側溝」,平成15年2月28日付
け
甲第19号証 :「リボーン側溝技術提供契約書 リボーン側溝用 集水
蓋部門」(有限会社リタッグ、インフラテック株式会
社),平成10年12月22日付け
甲第20号証 :「FRC製集水蓋版ファイコン」,インフラテック株式
会社,第1頁及び第6頁
甲第21号証 :「ECOンビ工法ってなに?」,中越製陶株式会社
甲第22号証 :概要説明書(その1)~(その6),新技術の名称 リ
ボーン ユニバーサルデザイン グレード側溝,登録N
o.18D2001,新潟県産品登録書
甲第23号証 :写真2枚が掲載された書面
甲第24号証 :「ECOンビ工法」,中越製陶株式会社
甲第25号証 :「製品のご案内 リボーン側溝 静寂なる環境のため
に」,中越製陶株式会社
甲第26号証 :「21.レジンコンクリート工業会第5回定期総会 平
成18年6月27日」,21.レジンコンクリート工業
会
甲第27号証 :「~蓋のガタツキをなくし、騒音を解消する 道路側溝
からリボーン側溝へ~」,株式会社カンケン
甲第28号証 :特開2000-120154号公報
甲第29号証 :「特開2000-120154 リボーンスラブ実施
(株式会社クレスコ) 山口県内」と記載され、写真5
枚が掲載された書面
甲第30号証 :第1準備書面,令和4年(ワ)第11921号 特許権
侵害差止等請求事件,令和4年11月21日付け
甲第31号証 :第3準備書面,令和4年(ワ)第11921号 特許権
侵害差止等請求事件,令和5年4月7日付け
甲第32号証 :証拠説明書(1),特許権に基づく差止等請求事件,原
告中越製陶株式会社,被告株式会社カンケン,令和4年
5月17日付け
甲第33号証 :設計図面
甲第34号証 :国際公開第2005/124041号
イ 要領書に添付して提出
甲第35号証 :登録実用新案第3033335号公報
甲第36号証の1 :FAX通信案内,平成10年8月27日付け
甲第36号証の2 :写真11枚が掲載された書面
甲第37号証の1 :公共工事等における新技術活用システム事後評価結
果通知書 国四整施企第33号 平成27年12月
22日付け,技術名称:リボーン側溝,NETIS
登録番号:CG-980014-V
甲第37号証の2 :NETIS新技術情報提供システムのウェブページ
の印刷物
甲第38号証 :日本レジン製品協会のウェブページの印刷物
甲第39号証 :「リボーンVS側溝(RVS) リボーン道路用鉄筋コ
ンクリート側溝(RPU) CATALOGUE」,株
式会社カンケン
甲第40号証 :「製品のご案内 リボーン側溝」,中越製陶株式会社
甲第41号証 :「製品のご案内 リボーン側溝」,坂町窯業株式会社
甲第42号証 :設計図面
甲第43号証 :特開2001-288804号公報
甲第44号証 :陳述書,令和4年(ワ)第11921号 特許権侵害に
基づく差止等請求事件,令和5年4月7日付け
甲第45号証 :「リボーン側溝工業会準備委員会 第一回会議 平成8
年4月8日」と題された1枚紙,「株式会社ウチコン」
と記載された設計図面3枚,及び株式会社ウチコンへの
案内図1枚
甲第46号証 :平成11年11月5日の全国リボーン側溝工業会定期総
会の懇親会風景とされる写真1枚が掲載された書面
甲第47号証 :「道路用鉄筋コンクリート側溝 JIS A 5345
-1996」,平成8年11月20日改正,日本規格協
会発行
甲第48号証 :設計図面
甲第49号証 :設計図面
甲第50号証 :「リボーン側溝 中越製陶株式会社 RUG(ラグ)側
溝」
甲第51号証 :「ECOンビ工法 ECOnomical & ECO
logical」パンフレット,ECOンビ工法研究
会,及び写真2枚
甲第52号証 :96-06-17付けFAX3枚
ウ 尋問事項書に添付して提出
甲第53号証の1 :FAX送信案内,25年8月31日付け,ECOン
ビ二次蓋注文書
甲第53号証の2 :御注文請書,2013年9月10日付け
甲第53号証の3 :御注文請書,2013年12月12日付け
甲第54号証 :再発行御注文請書,2013年12月12日付け
(3)補正の許否の決定
請求人は、要領書に添付して甲第35号証~甲第52号証(枝番を含む)を新たに提出し、要領書における無効理由に係る主張を行った。
審判長は、第1回口頭審理において、要領書に記載された甲第35号証に基づく主張の追加は、無効理由の根拠となる新たな先行技術に基づく主張の追加であり、審判請求の理由の要旨を変更するものであるから、特許法第131条の2第2項に基づき許可しないことを、決定した。
(4)証人による人証の申出について
請求人は尋問事項書を提出し、第1回口頭審理において証人尋問の実施を希望した。
しかしながら、尋問事項書は第1回口頭審理の直前に提出され、特許法施行規則58条2項で定める証人尋問申出書が提出されなかったことから、合議体は、第1回口頭審理においては請求人が希望する口頭審理は行わないこととした。
また、後記第6の11(1)に示すとおり、請求人が証人尋問で立証しようとする事項は、それらを事実と仮定しても、上記1(1)に請求人が主張する特許法第29条に係る無効理由についての判断を左右するものとは認められないから、合議体は本件無効審判の審理において、請求人が希望した証人尋問は行わないこととした。
(1)主張の概要
請求人が主張する無効理由に対し、第一被請求人は第一被請求人答弁書において、引用発明は少なくとも本件特許発明の特徴部分を備えておらず、本件特許発明について新規性または進歩性がないとはいえない旨を主張している。
(2)証拠方法
第一被請求人は、特に証拠を提出していない。
(1)主張の概要
請求人が主張する無効理由に対し、第二被請求人は第二被請求人答弁書において、請求人の主張を概ね認めている。
なお、第二被請求人は第二被請求人答弁書において、本件特許に基づく第一被請求人による特許権侵害差止等請求事件 令和4年(ワ)第11921号の提訴等に同意していない旨を述べるとともに、本件無効審判において本件特許発明に係る本件特許を維持すべき理由はない旨を述べている。
(2)証拠方法
第二被請求人は、次の書証を提出した。
丙第1号証 :「リボーン側溝説明会 風景 開催日 平成7年11月22日」と説明がされた写真2枚
丙第2号証 :意匠登録第1037733号公報
丙第3号証 :設計図面
丙第4号証 :設計図面
丙第5号証 :設計図面
丙第6号証 :「ECOンビ 1次蓋 規格形状図」「ECOンビ 2次
蓋 規格形状図」と題された図面
丙第7号証 :証明書,令和6年2月9日付け,トヨタ工機株式会社代表
取締役
丙第8号証 :御承認願書,中越製陶株式会社
丙第9号証 :「「リボーン側溝」ECOンビ工法一次蓋技術提供契約
書」(有限会社リタッグ,中越製陶株式会社及び株式会
社カンケン),平成22年4月2日付け
丙第10号証 :判決,令和4年(ワ)第11921号 特許権侵害に基
づく差止等請求事件,令和6年7月11日言渡
以下、請求人が主張する無効理由について、判断する。
(1)請求人の解釈
請求人は、上記第4の1(1)に示したとおり、本件特許発明は「前記二次蓋が前記既存蓋よりも薄いもの」という物の発明である、という解釈を前提として、特許法第29条に係る無効理由が成立する旨を主張している。
(2)特許請求の範囲の請求項2の記載により特定される構成
本件特許発明を特定する、特許請求の範囲における請求項2の記載、及び、請求項2が引用する請求項1の記載は、上記第3に示したとおりである。
請求項2が引用する請求項1の記載により特定される構成を含めて、請求項2の記載により特定される構成を全て示すと、次のとおりとなる。
なお、当審で適宜に改行を加え、「1A」等の分説を付した。
「1A: 既存U字溝の既存蓋に代えて新たな蓋を装着するU字溝の改修方法であって、
1B: 前記新たな蓋が、フレーム状の一次蓋と、該一次蓋の開口部に脱着自在の二次蓋からなり、
1C: 既存U字溝の上部を切除することなく、前記一次蓋が前記既存U字溝の既存蓋受部に装着され、接着一体化されることを特徴とする
1D: U字溝の改修方法において、
2A: 前記二次蓋が前記既存蓋よりも薄いものであることを特徴とする
2B: U字溝の改修方法。」
(3)本件特許発明のカテゴリ、構成及び技術的意義
ア 発明の認定の基準
請求項に係る発明の要旨認定は、特段の事情がない限り、願書に添付された明細書の特許請求の範囲の記載に基づいてなされるべきである(最二小判平成3年3月8日民集45巻3号123頁(リパーゼ事件))。
以下、上記基準に基づいて、判断する。
イ 本件特許発明のカテゴリ
(ア)請求項2の記載に基づく特定
本件特許発明を特定する請求項2の末尾が「U字溝の改修方法」となっていること(構成2B)、請求項2が引用する請求項1に係る発明が「U字溝の改修方法」の発明であること(構成1A及び構成1D)、及び、請求項2の記載において引用する請求項1の記載を含めて、請求項2の記載が一貫して「U字溝の改修方法」という方法の発明を特定するものとなっていること(構成1A、構成1D、及び構成2B)から、特許請求の範囲の請求項2の記載に基づいて特定される本件特許発明のカテゴリは、「U字溝の改修方法」という、方法の発明である。
(イ)請求人の主張について
請求人は、本件特許発明は「前記二次蓋が前記既存蓋よりも薄いもの」という物の発明であって、方法の発明ではない旨を主張している(要領書第4頁第15行~第6頁第13行、第1回口頭審理調書、及び上記第4の1(1)ア)。
しかしながら、本件特許発明を物の発明とする請求人の上記解釈は、本件特許発明を特定する請求項2の末尾が「U字溝の改修方法」となっていること、及び、請求項2の記載において引用する請求項1の記載を含めて、請求項2の記載が一貫して「U字溝の改修方法」という方法の発明を特定するものとなっていることを無視するものであるから、特許請求の範囲の請求項2の記載に基づかない独自の解釈であって、採用することができない。
請求人は本件特許発明を物の発明と解釈する根拠として、請求項2を改修方法の発明とするのであれば請求項1と請求項2を分ける必要がないから、請求項1に係る改修方法の発明と区別して、請求項2は「二次蓋」という物を分離した発明である旨を主張している(要領書第5頁第7行~第18行)。
しかしながら、請求項1が「U字溝の改修方法」の発明であることは、本件特許発明を特定する請求項2の記載が、末尾を含めて一貫して「U字溝の改修方法」を特定する記載であることを離れて、請求項2の記載に基づいて特定される本件特許発明を、物の発明と認定すべき特段の事情とはならない。
また請求人は、本件特許発明を物の発明と解釈することに関連して、特許権侵害差止請求事件において、本件特許発明に基づいて「ECOンビ二次蓋」という物について提訴がされた旨を主張している(要領書第6頁第1行~第5行)。
請求人がここで言及する訴訟事件である、令和4年(ワ)第11921号事件(以下、「別件侵害訴訟」という。)においては、本件特許発明に係る特許権に基づき、「ECOンビ二次蓋」という被告製品に対して特許法第101条第4号及び第5号の間接侵害が主張されたと認められる(丙第10号証第3頁第22行~第4頁第16行、第10頁第18行~第11頁第12行、及び第39頁)。
しかしながら、特許法第101条第4号及び第5号は、「特許が方法の発明についてされている場合」において、「その方法の使用」に「用いる物」の業としての生産等について、「当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす」ことを規定するから、別件侵害訴訟は、特許に係る発明が「方法の発明」であることを前提とするものである。また、本件特許発明に基づいて、特許法第101条第4号及び第5号の間接侵害の主張がなされたからといって、本件特許発明のカテゴリが「方法の発明」から「物の発明」へと変わるものではない。そのため、別件侵害訴訟において、「ECOンビ二次蓋」という物について特許法第101条第4号及び第5号の間接侵害の主張がされたことは、本件特許発明を特定する請求項2の記載を離れて、本件特許発明を物の発明と認定すべき特段の事情とはならない。
ウ 本件特許発明が有する構成
本件特許発明は、特許請求の範囲の請求項2の記載に基づいて認定すると、上記イのとおり、発明のカテゴリが方法である「U字溝の改修方法」であって、発明の構成として、上記(2)に示した構成1A~2Bの全ての構成を有するものである。
本件特許発明について、物の発明であって「前記二次蓋が前記既存蓋よりも薄いもの」という構成のみを有する旨をいう、請求人の解釈は、特許請求の範囲の請求項2の記載により特定される上記(2)に示す構成のうち、構成2A以外の全ての構成を無視するものであって、採用することができない。
エ 本件特許発明の技術的意義
(ア)本件明細書等の記載
本件特許発明に関し、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面(以下、「本件明細書等」という。)には、次の記載及び図示がある(下線は当審で付した。)。
a 段落【0001】
「【技術分野】
【0001】
本発明は、道路側部に沿って、又は道路を横断して埋設設置された
U字溝の改修方法
に関する。」
b 段落【0002】-【0003】
「【背景技術】
【0002】
埋設設置されたU字溝は、設置直後でもガタツキによる騒音の問題に悩ませられたり、年月が経過するに従って老朽化し、強度が低下していたり、地上に露出している部分や蓋受部が磨り減ったり欠けたりするので、このような騒音を発するU字溝や老朽化したU字溝の蓋受部を補修する必要がある。また、従来のU字溝の蓋は、厚さが100mm程度あり、その重さは45kg程度であった。したがって、蓋はかなり重く、側溝内の清掃作業をする場合などにおいて、蓋を着脱する作業が困難を極める。そこで、このような
既存の蓋を騒音防止型や厚さの薄い軽量の蓋に交換
したいという要望もある。
【0003】
下記特許文献1には、既存の蓋と交換するための軽量な薄い蓋が開示されている。
図14は、従来の、老朽化した側溝に軽量蓋を装着して改修する方法を説明する、蓋受部付近の断面図である。
地中に埋設された既存のU字溝の既存蓋(図示せず)を取り除き、蓋受部(蓋受面1a及び縦壁1bからなる)の欠けた部分を補修する。符号21はこのような補修部で、モルタルなどの適宜の補修材を塗り、コテ仕上げをしたものである。その後、
従来の蓋よりも薄く軽量な蓋20
を装着する。蓋20は、
レジンコンクリート製など
、曲げ強度が大きいもので、下面の両側に脚部20a(角パイプなど)が設けられている。
また、蓋受部を補修する際に、蓋受面1aを、モルタルなどで脚部20aの高さまで嵩上げし、脚部を有しない蓋を装着する方法もある。
また、U字溝の蓋受部付近、例えば図14の線Xよりも上の部分をカッターで切断して取り除き、現場で、型枠を組み、コンクリートを流し込んで、取り除いた部分を作り直し、新たな蓋を装着する方法もある。」
c 段落【0004】-【0005】
「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の、蓋受部を補修した後に、脚部20aの付いた蓋を装着する方法は、補修作業が面倒な上、補修部が乾燥して強度を発現するまで蓋を装着することができないので相当の工期を要し、また、脚部20aの付いた蓋を特別に製作しなければならないという問題がある。
上記の、蓋受面1aを、モルタルなどで脚部20aの高さまで嵩上げする方法は、モルタルなどで嵩上げする作業が面倒な上、当該部分が乾燥して強度が発現するまで蓋を装着することができないので相当の工期を要するという問題がある。
上記の、U字溝の蓋受部付近を取り除き、作り直す方法は、作り直す作業がさらに面倒な上、作り直した部分が乾燥して強度が発現するまで蓋を装着することができないのでかなりの工期を要し、またコンクリート廃棄物が発生するという問題がある。
上記いずれの手法で既存の側溝形状を復元しても、蓋のガタツキによる側溝と蓋の破壊は改善されず、同等の改修工事を繰り返している現状がある。
また、上記いずれの方法も、老朽化したU字溝の強度を改善することはできない。すなわち、U字溝の近くを車両が通行した際など、U字溝には土圧と共に車輛の積載荷重が作用し、U字溝の側壁が内側に傾き、これが繰り返されることで側壁が破壊されるおそれがある。
【0005】
本発明は、既存U字溝の蓋受部分の補修を省略し、従って、補修時に発生するコンクリート廃棄物がなく、容易に新たな軽量蓋を装着でき、現場での工期も短縮できるようにすることを課題とするものである。
また本発明は、老朽化したU字溝の強度を改善できるようにすることも課題とするものである。」
d 段落【0006】
「【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、既存U字溝の既存蓋に代えて新たな蓋を装着するU字溝の改修方法であって、前記新たな蓋が、フレーム状の一次蓋と、該一次蓋の開口部に脱着自在の二次蓋からなり、既存U字溝の上部を切除することなく、前記一次蓋が前記既存U字溝の既存蓋受部に装着され、接着一体化される
ことを特徴とする
U字溝の改修方法
である。」
e 段落【0008】
「【発明の効果】
【0008】
本発明は、
既存の蓋よりも薄い蓋を使用するので、蓋が軽量化され、側溝内の清掃作業をする場合などにおいて、蓋を着脱する作業が容易となる
。
既存U字溝の蓋受部の補修が必要ないので、現場での作業が容易となり、コンクリート廃棄物も無くし工期も短縮できる
。
一次蓋の連結部材が横梁として作用するので、既存U字溝の強度が改善され、既存U字溝の側壁が内側に傾くのを防止できる
。
二次蓋として、騒音の発生しない蓋を用いることが容易にでき、車両が蓋の上を通過した際の蓋鳴りを防ぐことが可能となる
。
蓋受部材に垂下壁を設けると、U字溝の蓋受面の角が欠けていても、せき板を設けることなく接着剤の注入を容易に行うことができる。」
f 段落【0016】-【0018】
「【0016】
図7に、一次蓋の蓋受部材3の蓋受面と、二次蓋5の関係を示す。
蓋受部材3の蓋受面3a及び二次蓋5の接面部8はいずれも曲面となっており
、蓋受面3aの曲率中心O1と二次蓋の接面部8の曲率中心O2とが僅かに(0.1~0.5mm)離れている。二次蓋5の接面部8の曲面は、O1(蓋受部材3の蓋受面3aの曲率中心)を基準として垂線から角度αの所から始まり角度βにわたって形成されている。αは、二次蓋に跳ね上がりを防止する突起部10を設けた関係上設けたもので、30°~35°程度が適当である。突起部を設けない場合は0°でもよい。α+βは60°が適当である。接面部8の上端部は接合点9(二次蓋を装着したとき蓋受面3aと接する部分)となっており、その上部は蓋受部材3に干渉しないように、接合点9でやや折れ曲がった後直線となっている。蓋受面3aは、積載荷重がかかったときに、蓋の接面部8となるべく広い面積で接するように設計すればよい。図7に示すように、O2はO1のやや外側上方にずらすのがよい。また、蓋受面3a及び接面部8の曲率半径を11~25mmにすると、二次蓋の上に積載荷重が作用したときの曲げ強度が大きくなり、好ましい。なお、図7ではO1とO2の距離、及び蓋受部材と二次蓋の曲面の離れ具合を強調して表している。
【0017】
図7に示すのは二次蓋を一次蓋に装着した(積載荷重のない)状態で、蓋受部材3と二次蓋5とは、接面部8の端部の接合点9で接する線状の接触である。これに積載荷重が作用すると、二次蓋が僅かに変形し、蓋受面3aと接面部8とが面接触となり、接触面積が広くなって、二次蓋に作用した力が有効に一次蓋に伝達される。
【0018】
二次蓋5は、一次蓋に装着した(積載荷重のない)状態では線接触で、蓋の上を車両が通行した際、蓋鳴りすることがない無騒音蓋である
。」
g 【図1】
「
45
64
0001432438000001.jpg
」
h 【図2】
「
46
57
0001432438000002.jpg
」
i 【図7】
「
72
61
0001432438000003.jpg
」
j 【図14】
「
57
59
0001432438000004.jpg
」
(イ)本件明細書等における課題及び効果と、本件特許発明の構成との対応
a 本件明細書等における課題
上記(ア)における本件明細書等の記載及び図示より、本件明細書等において解決しようとする課題は、U字溝の改修方法に関し、既存の蓋を騒音防止型や厚さの薄い軽量の蓋に交換するうえで、既存U字溝の蓋受部分の補修を省略し、従って、補修時に発生するコンクリート廃棄物がなく、容易に新たな蓋を装着でき、現場での工期も短縮できるようにすることであると、理解される(段落【0001】、【0002】、【0005】)。
b 本件特許発明が有する、請求項1に係る発明の構成(構成1A~1D)
上記aに示した、本件明細書等における課題は、既存U字溝の既存蓋に代えて新たな蓋を装着するU字溝の改修方法であって、前記新たな蓋が、フレーム状の一次蓋と、該一次蓋の開口部に脱着自在の二次蓋からなり、既存U字溝の上部を切除することなく、前記一次蓋が前記既存U字溝の既存蓋受部に装着され、接着一体化される(段落【0006】)という、本件特許発明が有する請求項1に係る発明の構成(構成1A~1D)により、解決されると理解される。
また、本件明細書等の段落【0008】に記載される発明の効果のうち、「既存U字溝の蓋受部の補修が必要ないので、現場での作業が容易となり、コンクリート廃棄物も無くし工期も短縮できる」という効果、及び「一次蓋の連結部材が横梁として作用するので、既存U字溝の強度が改善され、既存U字溝の側壁が内側に傾くのを防止できる」という効果は、本件特許発明が有する請求項1に係る発明の構成(構成1A~1D)により、得られることが理解される。
c 本件特許発明が、請求項2において追加して有する構成(構成2A)
本件特許発明が、請求項1に係る発明の構成を有する「U字溝の改修方法」の発明であること(構成1A~1D及び構成2B)に加えて、さらに追加して有する構成2Aについて、検討する。
本件明細書等の、段落【0003】の記載及び【図14】の図示より、単に従来の蓋よりも薄いレジンコンクリート製などの蓋自体については、本件明細書等において新規な技術として提示されてはいないことが、理解される。
そのうえで、本件特許発明は、請求項1に係る発明の構成を有する「U字溝の改修方法」の発明であること(構成1A~1D及び構成2B)に加えて、さらに構成2Aを有することにより、改修した後の「二次蓋」を改修する前の「既存の蓋」より「薄い」ものとすることができるから、改修前との対比において、段落【0008】に記載される効果のうち、「既存の蓋よりも薄い蓋を使用するので、蓋が軽量化され、側溝内の清掃作業をする場合などにおいて、蓋を着脱する作業が容易となる」という効果を奏することが、理解される。
d 付言;本件特許発明において特定されない構成
本件明細書等において説明される具体例の構成のうち、本件特許発明においては特定されない構成に関し、付言する。
本件明細書等の段落【0016】-【0018】、及び【図7】に示される、接面部が曲面部となっている二次蓋は、積載荷重のない状態では線接触となり、蓋鳴りすることがない無騒音蓋である。
本件特許発明において、「二次蓋」の具体例として、上述した無騒音蓋の構成を有する蓋を採用した場合には、段落【0008】に記載される効果のうち、「二次蓋として、騒音の発生しない蓋を用いることが容易にでき、車両が蓋の上を通過した際の蓋鳴りを防ぐことが可能となる」という効果を、併せて奏することが理解される。
しかしながら、接面部が曲面部となる無騒音蓋に関する構成は、本件特許発明の構成として特定されているものではないから、無集音蓋を用いるか否かは本件特許発明においては任意であって、本件特許発明の構成を充足するか否かを左右するものではない。
(ウ)本件特許発明の技術的意義
以上をまとめると、本件特許発明は、単に従来の蓋よりも薄いレジンコンクリート製などの蓋自体については既存の技術であることを前提としながら、構成1A~構成2Bを有する「U字溝の改修方法」の発明であることにより、段落【0005】に記載される「既存U字溝の蓋受部分の補修を省略し、従って、補修時に発生するコンクリート廃棄物がなく、容易に新たな軽量蓋を装着でき、現場での工期も短縮できるようにする」という課題を解決する、という技術的意義を有するものである。
また、本件特許発明は、構成1A~構成2Bを有する「U字溝の改修方法」の発明であることにより、段落【0008】に記載される、「既存の蓋よりも薄い蓋を使用するので、蓋が軽量化され、側溝内の清掃作業をする場合などにおいて、蓋を着脱する作業が容易となる」という効果、「既存U字溝の蓋受部の補修が必要ないので、現場での作業が容易となり、コンクリート廃棄物も無くし工期も短縮できる」という効果、及び「一次蓋の連結部材が横梁として作用するので、既存U字溝の強度が改善され、既存U字溝の側壁が内側に傾くのを防止できる」という効果を奏する、技術的意義を有するものである。
(4)小括
以上より、本件特許発明は、上記(2)に示す構成1A~2Bの全ての構成を有する「U字溝の改修方法」の発明であって、本件特許発明が有する構成1A~2Bにより、上記(3)エ(イ)及び(ウ)に示す技術的意義を有するものと、理解される。
以下、上記の理解に基づいて、請求人が主張する特許法第29条第1項または第2項の無効理由が成立するか否かを、判断する。
事案に鑑み、まず、2~4において、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証をそれぞれ主たる甲号証とした特許法第29条第1項第3号の無効理由について判断し、次に、5~7において、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証をそれぞれ主たる甲号証とした特許法第29条第1項第1号または第2号の無効理由について判断し、その後、8~10において、甲第2号証、甲第3号証及び甲第4号証をそれぞれ主たる甲号証とした特許法第29条第2項の無効理由について判断する。
(1)甲第2号証について
ア 発行日
甲第2号証は、発行日が本件特許出願前の平成17年4月7日であるから、甲第2号証に記載された発明は、特許法第29条第1項第3号に係る発明になったといえる。
以下、下記イ及びウにおいて、甲第2号証における記載及び図示より、甲第2号証に記載された発明を認定し、下記(2)以降において、本件特許発明との対比・判断を行うことで、本件特許発明が甲第2号証により特許法第29条第1項第3号に係る発明になった発明と同一であることにより、同条同項の規定に違反して特許がされたという無効理由(特許法第123条第1項第2号)を有するか否かを、判断することとする。
イ 記載及び図示
甲第2号証には、次の記載及び図示がある(下線は、当審において付した。以下、同様。)
(ア)【実用新案登録請求の範囲】
「【請求項1】
レジンコンクリートにより四辺形状の板状に成形され、表裏貫通する複数の幅方向のスリットを有し、側溝本体又は桝本体の接面部と接する蓋接面部が凸の曲面となっており、かつ、前記蓋接面部の曲率半径が、11~25mmであることを特徴とする溝蓋。
【請求項2】
請求項1に記載の溝蓋において、その長さ方向の両端に前記スリットの縦半割形状の切欠部を設けると共に、各スリット及び切欠部の間隔を等しくしたことを特徴とする溝蓋。
【請求項3】
前記蓋接面部と接する本体接面部が凹の曲面となっており、該本体接面部の曲率半径が前記蓋接面部の曲率半径と等しい
側溝本体
と、これに
装着する
請求項1又は2に記載の
溝蓋からな
り、前記蓋接面部と本体接面部の曲率中心が相互に0.5~1.5mm離れていることを特徴とす
る側溝
。」
(イ)段落【0013】-【0015】
「【実施例】
【0013】
以下、実施例を表した図面に基づいて本考案を詳細に説明する。図1は実施例の溝蓋1の斜視図、図2は溝蓋1の平面図、図3は図2におけるAA線断面図、図4は図1におけるBB線断面図である。図5は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径を15mm(R15)とした実施例の側溝の説明図である。図6は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径を20mm(R20)とした実施例の側溝の説明図である。図7は本体接面部及び蓋接面部の曲率半径を30mm(R30)とした比較例の側溝の説明図である。図5~7において、いずれも下段に全体の断面を示し、上段に側溝本体と溝蓋の接触部分を拡大して示している。
【0014】
溝蓋1は
レジンコンクリート製で
、平面形状が四辺形状の板状をなし、内部には適宜量の鉄筋が配置され、補強されている。厚さは、例えば有効溝幅300mmの場合、50mm程度にすることができる。これは
従来のコンクリート製の溝蓋の約1/2の厚さである
。表裏貫通する幅方向のスリット3が長さ方向に複数並べて設けられている。また、長さ方向の両端には切欠部4が設けられている。切欠部4の形状はスリット3を縦に半割した形状である。各スリット3及び切欠部4の間隔(d)は等しくなっているので、複数の溝蓋1を連続して設置した場合、スリットが一定間隔で連続して設けられているように見え、意匠的に優れたものとなる。なお、溝蓋を連続して設置しない場合(桝に装着する場合など)においては、切欠部4は不要である。
【0015】
溝蓋1の接面部2
、すなわち
側溝
又は桝
本体と接する
部分
は
、曲率半径が11~25mmの凸の
曲面となっている
。蓋接面部の曲率半径が11mm未満であると、積載荷重が作用したときに蓋接面部に過大な応力が発生し、蓋接面部が破壊するおそれがある。蓋接面部の曲率半径が25mmを超えると、溝蓋の幅を十分に小さくすることができず、溝蓋の薄型・軽量化が不十分となるばかりでなく、コンクリート使用量を適正にした場合、側溝又は桝本体の外面をフラットにすることができない。」
(ウ)段落【0018】
「【0018】
図8に示すのは蓋を本体に装着した(
積載荷重のない
)
状態で
、側溝本体5と
溝蓋1と
は、蓋接面部2の端部の接合点10で接する
線状
の
接触
であり、溝蓋及び側溝本体に多少の製造上の寸法誤差があっても、これが吸収されてガタツキが生じない。これに積載荷重が作用すると、溝蓋と側溝本体の側板が僅かに変形し、図9に示すように、本体接面部8と蓋接面部2とが広い面積で接触し、溝蓋に作用した力が有効に本体側に伝達される。なお、図9では、溝蓋と本体側板の変形を強調して表している。」
(エ)段落【0020】
「【0020】
本考案の
溝蓋
は、断面がU字状のいわゆる
U字溝
、断面が門形の自由勾配型の側溝(対向する2側板の上部を梁部材で連結したもの)などあらゆる
側溝に使用
でき、また側溝に並設される側溝桝、雨水桝などあらゆる用途の桝に使用できる。本考案の側溝は、U字溝はもとより、自由勾配形の側溝、水路の断面形状が円形や卵形の側溝など、本体と溝蓋とからなるあらゆるタイプの側溝に適用できる。」
(オ)【図1】
「
41
59
0001432438000005.jpg
」
(カ)【図8】
「
68
48
0001432438000006.jpg
」
ウ 記載された発明
上記イより、甲第2号証には、物の発明として次の甲2蓋発明が記載されており、方法の発明として次の甲2方法発明が記載されていると認められる。
<甲2蓋発明>
「レジンコンクリート製で、従来のコンクリート製の溝蓋の約1/2の厚さであり、
側溝本体5と接する接面部2は、曲面となっており、積載荷重のない状態で、側溝本体5と線状に接触する溝蓋1であって、
U字溝である側溝の側溝本体5に装着して使用できる、
溝蓋1。」
<甲2方法発明>
「甲2蓋発明に係る溝蓋1を、U字溝である側溝に装着して使用する、方法。」
(2)対比・判断
ア 対比
本件特許発明と、甲2方法発明とを対比する。
本件特許発明で使用する「前記既存蓋よりも薄い」「前記二次蓋」と、甲2方法発明で使用する「従来のコンクリート製の溝蓋の約1/2の厚さ」である「溝蓋1」とは、本件特許発明における「前記既存蓋」が広い意味では従来の蓋と言い得ることを踏まえると、「従来の蓋よりも薄い蓋」という点で、共通する。
本件特許発明において、「二次蓋」を使用する「U字溝の改修方法」である構成と、甲2方法発明において、「溝蓋1」を「U字溝である側溝に装着して使用する、方法」である構成とは、「蓋を使用する、U字溝に関する方法」という点で、共通する。
以上を整理すると、本件特許発明と甲2方法発明とは、
「従来の蓋よりも薄い蓋を使用する、U字溝に関する方法。」
という点で一致し、以下の相違点1a及び相違点2aで相違する。
<相違点1a>
方法の発明として、
本件特許発明は、「既存U字溝の既存蓋に代えて新たな蓋を装着するU字溝の改修方法」であり(構成1A)、
「前記新たな蓋が、フレーム状の一次蓋と、該一次蓋の開口部に脱着自在の二次蓋からなり」(構成1B)、
「既存U字溝の上部を切除することなく、前記一次蓋が前記既存U字溝の既存蓋受部に装着され、接着一体化される」ものである(構成1C)、
「U字溝の改修方法」(構成1D及び2B)であるのに対し、
甲2方法発明は、「溝蓋1」を使用する「U字溝」に関する方法ではあっても、「既存U字溝の既存蓋に代えて新たな蓋を装着するU字溝の改修方法」ではなく、「新たな蓋」として「フレーム状の一次蓋と、該一次蓋の開口部に脱着自在の二次蓋からな」るものを用いるものではなく、「新たな蓋」の「装着」について「既存U字溝の上部を切除することなく、前記一次蓋が前記既存U字溝の既存蓋受部に装着され、接着一体化され」ない点。
<相違点2a>
使用する「薄い」「蓋」に関し、
本件特許発明においては、「既存U字溝の既存蓋に代えて」用いる「フレーム状の一次蓋と、該一次蓋の開口部に脱着自在の二次蓋からな」る「新たな蓋」の一部である「前記二次蓋」について、改修前の「前記既存蓋」よりも薄いと特定されるのに対し、
甲2方法発明においては、「U字溝である側溝」に「使用」できる「溝蓋1」について、「従来のコンクリート製の溝蓋」と比べて「約1/2の厚さ」であるものの、改修前の「既存U字溝の既存蓋」に比べて薄いとは特定されていない点。
イ 判断
上記相違点1aについて、判断する。
相違点1aは、本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る発明の構成の全てを含む。
そして、本件特許発明は、上記1(3)エ(イ)bに示したとおり、相違点1aが含む本件特許の請求項1に係る発明の構成により、本件明細書等に記載される課題を解決し、段落【0008】に記載される発明の効果のうち、「既存U字溝の蓋受部の補修が必要ないので、現場での作業が容易となり、コンクリート廃棄物も無くし工期も短縮できる」という効果、及び「一次蓋の連結部材が横梁として作用するので、既存U字溝の強度が改善され、既存U字溝の側壁が内側に傾くのを防止できる」という効果を奏するから、上記相違点1aは、実質的な相違点である。
したがって、上記相違点2aについて判断するまでもなく、本件特許発明は甲2方法発明ではない。
(3)本件特許発明が甲第2号証により特許法第29条第1項第3号に係る発明になった発明と同一であるか否か
上記(2)イのとおり、本件特許発明は、甲2方法発明と同一ではない。
また、構成1A~2Bを有する「U字溝の改修方法」の発明である本件特許発明は、詳細に対比・判断するまでもなく、上記(1)ウに認定した甲2蓋発明と同一ではない。
したがって、本件特許発明は、甲第2号証により特許法第29条第1項第3号に係る発明となった発明と同一であることにより、本件特許発明に係る特許についての無効理由を有するものではない。
(4)請求人の主張について
請求人は、本件特許発明は「前記二次蓋が前記既存蓋よりも薄いもの」という物の発明であるとして、本件特許発明は甲第2号証により特許法第29条第1項第3号に係る発明となった発明と同一である旨を主張している(上記第4の1(1)ア及びイ)。
しかしながら、上記1(3)イ及びウに示したとおり、本件特許発明を「前記二次蓋が前記既存蓋よりも薄いもの」という物の発明であるとする請求人の解釈は、特許請求の範囲の請求項2の記載を離れたものであって採用することができず、本件特許発明は、上記1(2)に示した構成1A~2Bの全ての構成を有する「U字溝の改修方法」と認定されるべきである。
そして、本件特許発明と、甲第2号証に記載された発明との対比・判断は、上記(1)~(3)に示したとおりである。
したがって、請求人の上記主張を考慮しても、上記(1)~(3)の対比・判断を変更すべき事情はない。
(5)小括
よって、本件特許発明に係る特許について、甲第2号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第3号に係る無効理由は、成立しない。
(1)発行日、及び証拠としての適格性
甲第3号証は、本件特許出願より後の平成20年12月24日に発行されているから、甲第3号証に記載された発明が、本件特許発明に対して、特許法第29条第1項第3号に係る「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」となることはない。
したがって、甲第3号証の記載内容について認定・判断するまでもなく、本件特許発明について、甲第3号証により特許法第29条第1項第3号に係る発明となった発明と同一となることはない。
(2)請求人の主張について
甲第3号証に関し、審理事項通知において、本件特許出願前に頒布された刊行物または電気通信回線を通じて公開されたものとはいえないこと、及び、甲第3号証を直接の証拠として、特許法第29条第1項各号に係る先行発明等を示すことはできないこと説示したところ、請求人は要領書において、次のように主張している(要領書第17頁第3行~第11行)。
「特許庁の誤審である。
甲3発明に記載の、「PCT国際公開番号WO2005/124041(国際公開日:平成17年12月19日)」とは、甲3発明における国際公開公報(甲34)であるから、特許法第29条1項3号「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」の規定に該当する。(審判請求書30~31頁)国際公開公報(甲34)は、甲3発明に記載の「PCT国際公開番号WO2005/124041」で明白であり、その明細書も略同一であり、甲3発明は国際公開公報(甲34)と同一として認定すべきである。」
しかしながら、甲第3号証は、本件特許出願より後の平成20年12月24日に発行された刊行物であるから、甲第3号証の第1頁に「国際公開番号 WO2005/124041」、「国際公開日 平成17年12月29日(2005.12.29)」という記載があるからといって、本件特許出願より後に発行された甲第3号証の発行日が、本件特許出願より前の甲第34号証の国際公開日に変わるものではない。
また、甲第3号証と甲第34号証とは、発行日等が異なる別途の刊行物であり、補正等によって記載の内容も相違し得るものであるから、甲第34号証に言及する上記請求人の主張を考慮しても、甲第3号証を主たる甲号証として、本件特許発明に対して、特許法第29条第1項第3号に係る発明を認定することはできない。
(3)小括
よって、本件特許発明に係る特許について、甲第3号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第3号に係る無効理由は、成立しない。
(1)甲第4号証について
ア 発行日
甲第4号証は、発行日が本件特許出願前の平成8年7月10日であるから、甲第4号証に記載された発明は、特許法第29条第1項第3号に係る発明になったといえる。
以下、下記イ及びウにおいて、甲第4号証における記載及び図示より、甲第4号証に記載された発明を認定し、下記(2)以降において、本件特許発明との対比・判断を行うことで、本件特許発明が甲第4号証により特許法第29条第1項第3号に係る発明になった発明と同一であることにより、同条同項の規定に違反して特許がされたという無効理由(特許法第123条第1項第2号)を有するか否かを、判断することとする。
イ 記載及び図示
甲第4号証には、次の記載及び図示がある。
(ア)【発明の詳細な説明】
「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、一般道路側溝、特に幅員の狭い道路において、有蓋側溝の上を車両が通過する可能性の高い道路の側溝に関する。
【0002】
【従来の技術】従来土木工事において側溝を設置する場合、通常、フラットなコンクリート面で側溝蓋を支えており、特に平面精度を要求される。従来の側溝蓋受け部のフラット部については、その構造上の特性から土や小石が溜りやすく、人の手で清掃しなければならなかった。発生する騒音の解消についてはゴムパッキング等を挟み騒音の軽減を計っている。また設置工事の際、側溝蓋の脱着作業は垂直方向になされる必要が有る。
【0003】
【発明が解消しようとする課題】側溝蓋のガタッキによる
騒音防止のため
、特にフラット部の平面精度が要求されるが、満足されていない。また二次原因として異物が挟み込まれた場合、平面機能が損なわれ、側溝蓋の騒音発生の原因となり、更にコンクリート面同志がぶつかり合う事になり側溝蓋の破損、及び側溝蓋受け部の破損につながっている。
【0004】この発明は、このような従来の技術の欠点を除去して、新規な形状の、騒音の発生しない側溝を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】図1はこの発明の原理を説明する図である。まず図1の正面図で示すように、
接面部を曲面に成形加工した側溝蓋1
を、
幾何学的に相似な曲面に成形加工した接面部を持つ側溝2に、密着するように設置する
。
【0006】
【作用】この様にして幾何学的に相似した曲面を持った側溝蓋1と側溝2を設置すると、両者は側溝蓋1の自重により密着する。
【0007】
【実施例】具体的な実施例について説明すれば、側溝蓋1のコンクリート製のものは、型枠成形とし、鉄製のものについても型枠成形とし、素材は鋳鉄による。側溝2についてもコンクリート型枠成形による。また、合成樹脂、セラミックス等の新素材であっても、強度が許容されれば選択される。
【0008】
【発明の効果】この発明は側溝蓋の接面部と側溝の接面部が曲面で密着することに特徴が有る。これにより車両等の通過騒音を解消することが可能になり、側溝蓋、及び側溝の破損の発生をも防ぐ。
【0009】例えば、側溝に棚受け部が無いことから設置時に側溝蓋との底面接触が無くなり側溝蓋の接面部と側溝の接而部で支え合うことになり、底面に土、小石等の異物を挟み込むことが無くなった。また側溝蓋と側溝の接触面積が広くなり安定性が増す。
【0010】また、側溝蓋に垂直加重がかかった場合、接触面が曲面であるために、力線が分散され、側溝蓋にかかる負担が軽減され耐用年数が延びる。
【0011】更に、曲面の持つ特性により、側溝清掃時の蓋上げ作業が容易である。又、設置工事も簡略化できる。
【0012】以上のようにこの発明は側溝蓋の接面部、側溝の接面部を曲面に成形加工することにより側溝蓋、側溝の密着を計るものであり、少ないコストで大きな効果を生むものである。土木工事の分野において広く利用できるものと期待できる。」
(イ)【図2】
「
52
58
0001432438000007.jpg
」
(ウ)【図3】
「
32
47
0001432438000008.jpg
」
ウ 図より看取される事項
上記イ(イ)に示す【図2】より、
側溝2
は
U字溝である
ことが、看取される。
エ 記載された発明
上記イ及びウより、甲第4号証には、物の発明として次の甲4蓋発明が記載されており、方法の発明として次の甲4方法発明が記載されていると認められる。
<甲4蓋発明>
「騒音防止のため、接面部を曲面に成形加工した側溝蓋1。」
<甲4方法発明>
「甲4蓋発明に係る側溝蓋1を、幾何学的に相似な曲面に成形加工した接面部を持つ、U字溝である側溝2に、密着するように設置する、方法。」
(2)対比・判断
ア 対比
本件特許発明と、甲4方法発明とを対比する。
本件特許発明で使用する「前記既存蓋よりも薄い」「前記二次蓋」と、甲4方法発明で使用する「側溝蓋1」とは、「蓋」という点で、共通する。
本件特許発明において、「二次蓋」を使用する「U字溝の改修方法」である構成と、甲4方法発明において、「側溝蓋1」を「U字溝である側溝2に、密着するように設置する、方法」である構成とは、「蓋を使用する、U字溝に関する方法」という点で、共通する。
以上を整理すると、本件特許発明と甲4方法発明とは、
「蓋を使用する、U字溝に関する方法。」
という点で一致し、以下の相違点1b及び相違点2bで相違する。
<相違点1b>
方法の発明として、
本件特許発明は、「既存U字溝の既存蓋に代えて新たな蓋を装着するU字溝の改修方法」であり(構成1A)、
「前記新たな蓋が、フレーム状の一次蓋と、該一次蓋の開口部に脱着自在の二次蓋からなり」(構成1B)、
「既存U字溝の上部を切除することなく、前記一次蓋が前記既存U字溝の既存蓋受部に装着され、接着一体化される」ものである(構成1C)、
「U字溝の改修方法」(構成1D及び2B)であるのに対し、
甲4方法発明は、「側溝蓋1」を使用する「U字溝」に関する方法ではあっても、「既存U字溝の既存蓋に代えて新たな蓋を装着するU字溝の改修方法」ではなく、「新たな蓋」として「フレーム状の一次蓋と、該一次蓋の開口部に脱着自在の二次蓋からな」るものを用いるものではなく、「新たな蓋」の「装着」について「既存U字溝の上部を切除することなく、前記一次蓋が前記既存U字溝の既存蓋受部に装着され、接着一体化され」ない点。
<相違点2b>
使用する「蓋」に関し、
本件特許発明においては、「既存U字溝の既存蓋に代えて」用いる「フレーム状の一次蓋と、該一次蓋の開口部に脱着自在の二次蓋からな」る「新たな蓋」の一部である「前記二次蓋」について、改修前の「前記既存蓋よりも薄い」と特定されるのに対し、
甲4方法発明においては、「U字溝である側溝2」に「使用」する「側溝蓋1」について、「騒音防止のため、接面部を曲面に成形加工」しているが、厚さについては何ら特定されていない点。
イ 判断
上記相違点1bについて、判断する。
相違点1bは、本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る発明の構成の全てを含む。
そして、本件特許発明は、上記1(3)エ(イ)bに示したとおり、相違点1bが含む本件特許の請求項1に係る発明の構成により、本件明細書等に記載される課題を解決し、段落【0008】に記載される発明の効果のうち、「既存U字溝の蓋受部の補修が必要ないので、現場での作業が容易となり、コンクリート廃棄物も無くし工期も短縮できる」という効果、及び「一次蓋の連結部材が横梁として作用するので、既存U字溝の強度が改善され、既存U字溝の側壁が内側に傾くのを防止できる」という効果を奏するから、上記相違点1bは、実質的な相違点である。
したがって、上記相違点2bについて判断するまでもなく、本件特許発明は甲4方法発明ではない。
(3)本件特許発明が甲第4号証により特許法第29条第1項第3号に係る発明になった発明と同一であるか否か
上記(2)イのとおり、本件特許発明は、甲4方法発明と同一ではない。
また、構成1A~2Bを有する「U字溝の改修方法」の発明である本件特許発明は、詳細に対比・判断するまでもなく、上記(1)エに認定した甲4蓋発明と同一ではない。
したがって、本件特許発明は、甲第4号証により特許法第29条第1項第3号に係る発明となった発明と同一であることにより、本件特許発明に係る特許についての無効理由を有するものではない。
(4)請求人の主張について
請求人は、本件特許発明は「前記二次蓋が前記既存蓋よりも薄いもの」という物の発明であるとして、本件特許発明は甲第4号証により特許法第29条第1項第3号に係る発明となった発明と同一である旨を主張している(上記第4の1(1)ア及びイ)。
しかしながら、上記1(3)イ及びウに示したとおり、本件特許発明を「前記二次蓋が前記既存蓋よりも薄いもの」という物の発明であるとする請求人の解釈は、特許請求の範囲の請求項2の記載を離れたものであって採用することができず、本件特許発明は、上記1(2)に示した構成1A~2Bの全ての構成を有する「U字溝の改修方法」と認定されるべきである。
そして、本件特許発明と、甲第4号証に記載された発明との対比・判断は、上記(1)~(3)に示したとおりである。
なお、請求人は、甲第4号証に記載された発明における蓋の厚さに関する構成が、本件特許発明と一致する旨も主張しているが、甲第4号証には蓋の厚さについて何ら開示はないから、本件特許発明と甲第4号証に記載された発明との対比において、蓋の厚さに関する構成の一部が一致点となるものでもない。
したがって、請求人の上記主張を考慮しても、上記(1)~(3)の対比・判断を変更すべき事情はない。
(5)小括
よって、本件特許発明に係る特許について、甲第4号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第3号に係る無効理由は、成立しない。
(1)当該無効理由が成立するためには
上記2に対比・判断したとおり、本件特許発明と甲第2号証に記載された発明とは、上記2(2)アに示した相違点1a及び相違点2aで相違し、両者は同一でない。
そうであるところ、本件特許発明について、甲第2号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第1号または第2号の無効理由が成立するためには、
ア 甲第2号証を主たる証拠として、本件特許出願より前に公然知られた発明または公然実施された発明が認定されること
イ 上記アで認定される発明が、甲第2号証に記載された発明の構成に加えて、本件特許の請求項1に係る構成の全てを含む相違点1aに係る構成、及び相違点2aに係る構成を有すること
を要する。
(2)請求人が従たる証拠として挙げる書証
請求人が、甲第2号証の実施を示す従たる書証であるとする証拠は、上記第4の1(1)ウ(ア)に整理したとおり、甲第21号証~甲第24号証、甲第48号証~甲第50号証、丙第4号証、丙第5号証、及び丙第7号証~丙第10号証である。
そこで、請求人が言及する上記書証を考慮した場合に、上記(1)ア及びイに示した要件が満たされるか否かを、以下に判断する。
ア 甲第21号証
甲第21号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、第7頁に「H29認定」と記載されているから、本件特許出願より後に作成・頒布または公開がされたと認められる。
したがって、たとえ甲第21号証を考慮しても、上記(1)アの発明が認定されるものではなく、当該認定される発明が上記(1)イの構成を有することが示されるものではない。
イ 甲第22号証
甲第22号証は、第1頁の「変更登録年月日」に「2008.10.30」と記載されているから、甲第22号証の全体は、本件特許出願より後に作成されたと認められる。
ここで、甲第22号証には「概要説明書(その6)」と記載された頁に、「施工時期」として平成19年3月以前の時期が記載された工事名が記載されているから、平成19年3月以前の施工時期が記載された工事については、本件特許出願より前に施工がされたと考えられる。
しかしながら、甲第22号証において平成19年3月以前の施工時期が記載された工事については、概略の施工時期と工事名とが示されているにとどまり、具体的な工事の内容や、工事の内容のうちどの部分がどのように公然と知られたか、あるいはどの部分がどのように公然と実施されたのかは、示されるものではない。
したがって、たとえ甲第22号証を考慮しても、上記(1)アの発明が認定され、かつ当該認定される発明が上記(1)イの構成を有することが、示されるものではない。
ウ 甲第23号証
甲第23号証は、証拠説明書において「ECOンビ二次蓋の敷設現場の写真」とされる写真2枚であるが、写真の撮影日は証拠説明書によれば本件特許出願より後の平成24年11月16日とされており、写真の内容も、スリットが形成された蓋が設けられた側溝を上から撮影した様子を示すにとどまる。
したがって、たとえ甲第23号証を考慮しても、上記(1)アの発明が認定され、かつ当該認定される発明が上記(1)イの構成を有することが、示されるものではない。
エ 甲第24号証
甲第24号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、表紙右上に「2016.6」と記載されているから、本件特許出願より後に作成・頒布または公開がされたと認められる。
したがって、たとえ甲第24号証を考慮しても、上記(1)アの発明が認定されるものではなく、当該認定される発明が上記(1)イの構成を有することが示されるものではない。
オ 甲第48号証及び甲第49号証
甲第48号証及び甲第49号証は、側溝または蓋の設計図面であり、本件特許出願より前の日付が記載されているが、図示される側溝または蓋の形状を示すにとどまり、上記(1)イの構成を有する技術事項を示すものではなく、当該技術事項が本件特許出願前に公然知られまたは公然実施されたことを示すものではない。
したがって、たとえ甲第48号証及び甲第49号証を考慮しても、上記(1)アの発明が認定され、かつ当該認定される発明が上記(1)イの構成を有することが、示されるものではない。
カ 甲第50号証
甲第50号証は、記載の全体からみて、パンフレットあるいはそれに類するものと認められるところ、証拠説明書によると平成20年6月11日頃に請求人が受信したとされるものであり、本件特許出願より前に頒布または公開がされたものとはいえない。
また、内容について検討しても、最終頁に「ECOンビ工法一次蓋」という記載があるものの、本件特許発明の構成1A~1Dに係る構成を示すものではない。
したがって、たとえ甲第50号証を考慮しても、上記(1)アの発明が認定され、かつ当該認定される発明が上記(1)イの構成を有することが、示されるものではない。
キ 丙第4号証及び丙第5号証
丙第4号証及び丙第5号証は、側溝または蓋の設計図面であり、本件特許出願より前の日付が記載されているが、図示される側溝または蓋の形状を示すにとどまり、上記(1)イの構成を有する技術事項を示すものではなく、当該技術事項が本件特許出願前に公然知られまたは公然実施されたことを示すものではない。
したがって、たとえ丙第4号証及び丙第5号証を考慮しても、上記(1)アの発明が認定され、かつ当該認定される発明が上記(1)イの構成を有することが、示されるものではない。
ク 丙第7号証
丙第7号証は、令和6年2月9日の日付が記された証明書であり、4つの図面(証拠説明書によれば丙第3号証~丙第6号証)について設計記録日が正しいことを証明する旨を述べているが、同証明書中で記される4つの「品名」のいずれも丙第6号証と整合しないとともに、当該「品名」と不整合が生じるわけではない丙第4号証及び丙第5号証について、上記キの判断を変更すべき事情を示すものではない。
ケ 丙第8号証
丙第8号証は、本件特許出願より後の平成19年12月27日の日付が記された認証書を付して、工事において「ECOンビ 二次蓋」の名称を有する4種類の蓋を納品することを求める、承認願書であり、同承認願書自体が本件特許出願より後に作成されたことが明らかであって、同承認願書に係る願い出が具体的な技術内容とともに本件特許出願より前に公然と知られ、または公然実施されたことを示すものではない。
また、内容について検討しても、「ECOンビ 二次蓋」なる蓋の構造以外を示すものではない。
したがって、たとえ丙第8号証を考慮しても、上記(1)アの発明が認定されるものではなく、当該認定される発明が上記(1)イの構成を有することが示されるものではない。
コ 丙第9号証
丙第9号証は、本件特許出願より後の平成22年4月2日の日付が付された契約書であり、第21条に秘密保持に関する条項も含まれているから、丙第9号証を考慮しても、上記(1)アの発明が認定されるものではなく、当該認定される発明が上記(1)イの構成を有することが示されるものではない。
サ 丙第10号証
丙第10号証は、本件特許出願より後の令和6年7月11日に言渡された、別件侵害訴訟の判決であって、本件特許発明に関し、第一被請求人が「ECOンビ二次蓋」という被告製品について、特許法第101条第4号及び第5号の間接侵害を主張したことが示されている。
しかしながら、丙第10号証を考慮しても、別件侵害訴訟においては、本件特許出願より後の平成27年5月に製造が開始された被告製品について(丙第10号証第28頁第7行~第8行)、第二被請求人と被告との許諾契約に基づき製造販売が行われたことが示されているのであって、本件特許出願より前に、上記(1)イの構成を有する発明が公然と知られ、または公然実施されたことが示されているものではない。
(3)無効理由の成立の有無
上記(2)に示すとおり、請求人が甲第2号証の従たる書証である旨を述べる書証について考慮しても、上記(1)ア及びイに示した要件が満たされるとはいえない。
したがって、本件特許発明について、甲第2号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第1号または第2号の無効理由は成立しない。
(4)請求人の主張について
請求人は、たとえば甲第21号証や甲第24号証に関し、「本件発明の出願前か否かを目的に証拠提出した訳でな」い旨を述べ、別件侵害訴訟等において第一被請求人より、本件特許発明に係る「二次蓋」についてECOンビ工法で用いる「二次蓋」と同じ物である主張がされたとして、「出願前か否かで拒絶すのでなく、・・・審査して頂きたい。」と主張している(要領書第38頁第13行~第39頁第7行)。
上記請求人の主張は、本件特許発明を単に「前記二次蓋が前記既存蓋よりも薄いもの」という物の発明と解したうえで、別件侵害訴訟において間接侵害が主張された蓋と同様または類似する構造の蓋が存在することを示せば、証拠が本件特許出願より前であるか後であるかを問わず、特許法第29条の無効理由が成立するという理解に基づくと思われる。
しかしながら、上記1に示したとおり、本件特許発明は構成1A~2Bの全ての構成を有する「U字溝の改修方法」の発明であるから、請求人が主張する特許法第29条に係る無効理由は、前提とする本件特許発明の解釈から、妥当なものではない。
また、上記(1)に示したとおり、本件特許発明について甲第2号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第1号または第2号の無効理由が成立するためには、上記(1)ア及びイに示した要件が満たされる必要があるところ、上記(2)に示したとおり、請求人が甲第2号証の従たる書証であるとする証拠について考慮しても、上記(1)ア及びイに示した要件が満たされるものではない。なおこの点に関し、特許法第29条に係る無効理由について、証拠が本件特許出願より前か否かが重要でない旨をいう請求人の主張は、妥当なものとして採用することができない。
そして、その余の請求人の縷々の主張を考慮しても、本件特許発明について、上記(1)ア及びイに示した要件が満たされるとはいえない。
したがって、上記請求人の主張について考慮しても、甲第2号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第1号または第2号の無効理由の成立の有無について、上記(3)の判断を変更すべき事情はない。
(1)当該無効理由が成立するためには
上記3に示したとおり、甲第3号証は、本件特許出願より後に発行されているので、甲第3号証を主たる証拠として、本件特許発明に対し、特許法第29条第1項第3号に係る発明が認定されるものではない。
そうであるところ、本件特許発明について、甲第3号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第1号または第2号の無効理由が成立するためには、
ア 甲第3号証を主たる証拠として、本件特許出願より前に公然知られた発明または公然実施された発明が認定されること
イ 上記アで認定される発明が、本件特許発明の全ての構成を有すること
を要する。
(2)請求人が従たる証拠として挙げる書証
請求人が、甲第3号証の実施を示す従たる書証であるとする証拠は、上記第4の1(1)ウ(イ)に整理したとおり、甲第2号証、甲第4号証、甲第11号証~甲第27号証、甲第34号証、甲第37号証、甲第39号証~甲第41号証、甲第47号証~甲第50号証、丙第4号証~丙第8号証、及び丙第10号証である。
ア 甲第2号証及び甲第4号証
甲第2号証、及び甲第4号証は、甲第3号証とは異なる別途の刊行物であって、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
イ 甲第11号証について
甲第11号証は、第一被請求人と第二被請求人の間の契約書であって、本件特許出願より前の日付は付されているが、秘密保持に関する条項も含むものであり、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ウ 甲第12号証について
甲第12号証は、第一被請求人と第二被請求人の間の契約書であって、本件特許出願より後の日付が付され、かつ、秘密保持に関する条項も含むものであり、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
エ 甲第13号証
甲第13号証は、本件特許出願より前の平成13年12月13日の日付が付された証明書であるが、添付される図面2枚に湾曲部を有する蓋と側溝とが当接する部分の様子が図示されているにとどまり、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
オ 甲第14号証
甲第14号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、頒布または公開された日が不明である。第1頁に「特許第2514918号」と記載されていることから、早くとも当該特許番号を有する甲第4号証の発行日より後に作成されたと認められるが、当該記載をもって、本件特許出願より前に頒布または発行されたということはできない。
また、甲第14号証は、甲第3号証とは異なる別途の刊行物であって、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
カ 甲第15号証
甲第15号証は、本件特許出願より前の日付が付された契約書であるが、秘密保持に関する条項も含むものである。また、添付される特許第2514918号公報、商標登録第4121733号公報、商標登録第4121734号公報、意匠登録第1015721号公報、及び意匠登録第1037733号公報は、いずれも本件特許出願より前に頒布または公開がされているが、これらはいずれも甲第3号証とは異なる別途の刊行物であるから、秘密保持に関する条項を含む契約書の全体を考慮しても、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
キ 甲第16号証
甲第16号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、頒布または公開された日が不明である。証拠説明書によれば、本件特許出願より前の平成12年4月10日に作成されたとされているが、本件特許出願より前に頒布または公開がされていたとしても、甲第3号証とは異なる別途の刊行物であるから、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ク 甲第17号証
甲第17号証は、「福岡市大名町の敷設現場 現場立会い記録」と題された記録であり、写真3枚が付されているが、写真3枚は、路面に敷設された蓋を有する側溝の様子を上から示すにとどまり、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ケ 甲第18号証
甲第18号証は、「全国リボーン側溝工業会 第4回定期総会議事録(平成14年11月総会)」と題され、第11頁に「以上、この議事録が正確であることを証します。平成15年2月28日」と記載がされた議事録であるところ、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
コ 甲第19号証
甲第19号証は、本件特許出願より前の日付が付された契約書であるが、秘密保持に関する条項も含むものである。また、添付される特許第2514918号公報、意匠登録第1015721号公報、商標登録第4121733号公報、及び商標登録第4121734号公報は、いずれも本件特許出願より前に頒布または公開がされているが、これらはいずれも甲第3号証とは異なる別途の刊行物であるから、秘密保持に関する条項を含む契約書の全体を考慮しても、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
サ 甲第20号証
甲第20号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、末尾に「2019.02」と記載されていることから、本件特許出願より後に作成・頒布または公開がされたと認められ、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
シ 甲第21号証~甲第24号証
甲第21号証~甲第24号証は、上記5(2)ア~エに指摘したのと同じ理由で、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ス 甲第25号証
甲第25号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、頒布または公開された日が不明である。第2頁に「特許第2514918号」と記載されていることから、早くとも当該特許番号を有する甲第4号証の発行日より後に作成されたと認められるが、当該記載をもって、本件特許出願より前に頒布または発行されたということはできない。
また、甲第25号証は、甲第3号証とは異なる別途の刊行物であって、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
セ 甲第26号証
甲第26号証は、「21.レジンコンクリート工業会第5回定期総会」と題されており、表紙に記載される「平成18年6月27日」は本件特許出願より前であるが、記載される内容を考慮しても、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ソ 甲第27号証
甲第27号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、頒布または公開された日が不明である。第2頁に「特許第2514918号」と記載されていることから、早くとも当該特許番号を有する甲第4号証の発行日より後に作成されたと認められるが、当該記載をもって、本件特許出願より前に頒布または発行されたということはできない。
また、甲第27号証は、甲第3号証とは異なる別途の刊行物であって、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
タ 甲第34号証
甲第34号証は、甲第3号証の第1頁に「国際公開番号 WO2005/124041」と国際公開番号が記載される刊行物であるが、甲第3号証とは別途の刊行物であって、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものとはいえない。
なお、甲第34号証の記載内容について検討しても、接面部が曲面状となった蓋及び側溝の構造を示すにとどまり、本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る発明の構成(構成1A~1D)が公然知られまたは公然実施されたことを示すものではない。
したがって、甲第34号証を考慮しても、上記(1)ア及びイの要件が満たされるものではない。
チ 甲第37号証の1及び甲第37号証の2
甲第37号証の1及び甲第37号証の2は、本件特許出願より後の日付が付された「公共工事等における新技術活用システム事後評価結果通知書」、及び、本件特許出願より後の更新日が入った「NETIS 新技術情報提供システム」の「技術名称 リボーン側溝」に関する印刷物であるが、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ツ 甲第39号証
甲第39号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、頒布または公開された日が不明である。
また、甲第39号証は、甲第3号証とは異なる別途の刊行物であって、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
テ 甲第40号証
甲第40号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、頒布または公開された日が不明である。第2頁に「特許第2514918号」と記載されていることから、早くとも当該特許番号を有する甲第4号証の発行日より後に作成されたと認められるが、当該記載をもって、本件特許出願より前に頒布または発行されたということはできない。また、請求人は証拠説明書において、甲第43号証に関係するとして「甲45」(当審注;「甲43」の誤記と認める)の公開日である「平成13年10月19日」に公開されたとしているが、他の刊行物と何らか関連する記載が一部にあったからといって、甲第40号証の頒布または公開日が他の刊行物と同一となるものではない。
いずれにせよ、甲第40号証は、甲第3号証とは異なる別途の刊行物であって、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ト 甲第41号証
甲第41号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められ、記載の内容がほぼ甲第40号証と同様であるところ、甲第40号証と同様に、頒布または公開された日が不明である。
また、甲第41号証は、甲第40号証と同様に、甲第3号証とは異なる別途の刊行物であって、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ナ 甲第47号証
甲第47号証は、道路用鉄筋コンクリート側溝に関するJIS規格であるところ、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ニ 甲第48号証及び甲第49号証
甲第48号証及び甲第49号証は、側溝または蓋の設計図面であり、本件特許出願より前の日付が記載されているが、図示される側溝または蓋の形状を示すにとどまり、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ヌ 甲第50号証
甲第50号証は、記載の全体からみて、パンフレットあるいはそれに類するものと認められるところ、証拠説明書によると平成20年6月11日頃に請求人が受信したとされるものであり、本件特許出願より前に頒布または公開がされたものとはいえない。
また、甲第50号証は、甲第3号証とは異なる別途の刊行物であって、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ネ 丙第4号証及び丙第5号証
丙第4号証及び丙第5号証は、側溝または蓋の設計図面であり、本件特許出願より前の日付が記載されているが、図示される側溝または蓋の形状を示すにとどまり、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ノ 丙第6号証
丙第6号証は、「ECOンビ 1次蓋 規格形状図」及び「ECOンビ 2次蓋 規格形状図」と題された図面及び表(全1枚)であるが、公開または頒布がされたか不明であるとともに、公開日あるいは頒布日等も不明である。
この点に関し、証拠説明書においては、「2005年(平成17年)11月21日頃(発行日)」と記載されているが、「立証の趣旨」の箇所における「丙6図面は、本件特許発明を実施する契約書(丙9・・・)の締結で、・・・型枠と共に簡易図面(カタログ掲載用)を納品し、発行日も納品の頃であり、」との記載、及び丙第9号証の契約書が本件特許出願より後の平成22年4月2日であることからすれば、証拠説明書に記載される発行日は整合しない。
また、丙第7号証の証明書に関し、証拠説明書の「立証の趣旨」の箇所において、「実施図面(丙3~丙6)を製図したトヨタ工機株式会社の図面作成の証明書」と記載されているが、丙第7号証に記される4つの「品名」はいずれも丙第6号証と整合しない。
そして、内容について検討しても、丙第6号証は、図面に図示される蓋の形状を示すにとどまるから、本件特許発明が有する構成1A~1Dを開示するものではない。
したがって、丙第6号証は、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ハ 丙第7号証
丙第7号証は、令和6年2月9日の日付が記された証明書であり、4つの図面(証拠説明書によれば丙第3号証~丙第6号証)について設計記録日が正しいことを証明する旨を述べているが、同証明書中で記される4つの「品名」のいずれも丙第6号証と整合しないとともに、丙第4号証、丙第5号証及び丙第6号証について、上記ネ及びノの判断を変更すべき事情を示すものではない。
ヒ 丙第8号証
丙第8号証は、上記5(2)ケに指摘したのと同じ理由で、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
フ 丙第10号証
丙第10号証は、上記5(2)サに指摘したのと同じ理由で、本件特許より後に発行された甲第3号証について本件特許出願より前に公知となり、または公然実施されたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
(3)無効理由の成立の有無
上記(2)に示すとおり、請求人が甲第3号証の従たる書証である旨を述べる書証について考慮しても、上記(1)ア及びイに示した要件が満たされるとはいえない。
したがって、本件特許発明について、甲第3号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第1号または第2号の無効理由は成立しない。
(4)請求人の主張について
甲第3号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第1号または第2号の無効理由について、請求人が縷々に主張する点は、上記5(4)に示したのと同じ理由で、採用することができない。
したがって、請求人の主張について考慮しても、甲第3号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第1号または第2号の無効理由の成立の有無について、上記(3)の判断を変更すべき事情はない。
(1)当該無効理由が成立するためには
上記4に対比・判断したとおり、本件特許発明と甲第4号証に記載された発明とは、上記4(2)アに示した相違点1b及び相違点2bで相違し、両者は同一でない。
そうであるところ、本件特許発明について、甲第4号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第1号または第2号の無効理由が成立するためには、
ア 甲第4号証を主たる証拠として、本件特許出願より前に公然知られた発明または公然実施された発明が認定されること
イ 上記アで認定される発明が、甲第4号証に記載された発明の構成に加えて、本件特許の請求項1に係る構成の全てを含む相違点1bに係る構成、及び相違点2bに係る構成を有すること
を要する。
(2)請求人が従たる証拠として挙げる書証
請求人が、甲第4号証の実施を示す従たる書証であるとする証拠は、上記第4の1(1)ウ(ウ)に整理したとおり、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証~甲第29号証、甲第33号証、甲第34号証、甲第36号証~甲第52号証、丙第1号証~丙第7号証、及び丙第9号証である。
そこで、請求人が言及する上記書証を考慮した場合に、上記(1)ア及びイに示した要件が満たされるか否かを、以下に判断する。
ア 甲第2号証及び甲第3号証について
甲第2号証及び甲第3号証は、甲第4号証とは別途の刊行物であり、甲第4号証について、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
イ 甲第5号証~甲第9号証について
甲第5号証~甲第9号証は、甲第4号証とは別途の刊行物であり、甲第4号証について、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ウ 甲第10号証について
甲第10号証は、第一被請求人と第二被請求人の間の契約書であり、甲第4号証に係る出願の明細書及び図面が添付されているが、秘密保持に関する条項も含まれており、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
エ 甲第11号証について
甲第11号証は、第一被請求人と第二被請求人の間の契約書であって、本件特許出願より前の日付は付されているが、秘密保持に関する条項も含むものであり、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
オ 甲第12号証について
甲第12号証は、第一被請求人と第二被請求人の間の契約書であって、本件特許出願より後の日付が付され、かつ、秘密保持に関する条項も含むものであり、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
カ 甲第13号証
甲第13号証は、本件特許出願より前の平成13年12月13日の日付が付された証明書であるが、添付される図面2枚に湾曲部を有する蓋と側溝とが当接する部分の様子が図示されているにとどまり、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
キ 甲第14号証
甲第14号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、頒布または公開された日が不明である。第1頁に「特許第2514918号」と記載されていることから、早くとも当該特許番号を有する甲第4号証の発行日より後に作成されたと認められるが、当該記載をもって、本件特許出願より前に頒布または発行されたということはできない。
また、甲第14号証は、甲第4号証とは異なる別途の刊行物であって、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、とりわけ本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る構成を含む技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではない。
したがって、甲第14号証は、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ク 甲第15号証
甲第15号証は、本件特許出願より前の日付が付された契約書であるが、秘密保持に関する条項も含むものである。また、添付される特許第2514918号公報、商標登録第4121733号公報、商標登録第4121734号公報、意匠登録第1015721号公報、及び意匠登録第1037733号公報は、いずれも本件特許出願より前に頒布または公開がされているが、秘密保持に関する条項を含む契約書の全体を考慮しても、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、とりわけ本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る構成を含む技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではない。
したがって、甲第15号証は、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ケ 甲第16号証
甲第16号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、頒布または公開された日が不明である。証拠説明書によれば、本件特許出願より前の平成12年4月10日に作成されたとされているが、本件特許出願より前に頒布または公開がされていたとしても、甲第4号証とは異なる別途の刊行物であるから、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、とりわけ本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る構成を含む技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではない。
したがって、甲第16号証は、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
コ 甲第17号証
甲第17号証は、「福岡市大名町の敷設現場 現場立会い記録」と題された記録であり、写真3枚が付されているが、写真3枚は、路面に敷設された蓋を有する側溝の様子を上から示すにとどまり、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではないから、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
サ 甲第18号証
甲第18号証は、「全国リボーン側溝工業会 第4回定期総会議事録(平成14年11月総会)」と題され、第11頁に「以上、この議事録が正確であることを証します。平成15年2月28日」と記載がされた議事録であるところ、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではないから、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
シ 甲第19号証
甲第19号証は、本件特許出願より前の日付が付された契約書であるが、秘密保持に関する条項も含むものである。また、添付される特許第2514918号公報、意匠登録第1015721号公報、商標登録第4121733号公報、及び商標登録第4121734号公報は、いずれも本件特許出願より前に頒布または公開がされているが、秘密保持に関する条項を含む契約書の全体を考慮しても、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、とりわけ本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る構成を含む技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではない。
したがって、甲第19号証は、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ス 甲第20号証
甲第20号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、末尾に「2019.02」と記載されていることから、本件特許出願より後に作成・頒布または公開がされたと認められ、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
セ 甲第21号証~甲第24号証
甲第21号証~甲第24号証は、上記5(2)ア~エに指摘したのと同じ理由で、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ソ 甲第25号証
甲第25号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、頒布または公開された日が不明である。第2頁に「特許第2514918号」と記載されていることから、早くとも当該特許番号を有する甲第4号証の発行日より後に作成されたと認められるが、当該記載をもって、本件特許出願より前に頒布または発行されたということはできない。
また、甲第25号証は、本件特許出願より前に頒布または公開がされていたとしても、甲第4号証とは異なる別途の刊行物であるから、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、とりわけ本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る構成を含む技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではない。
したがって、甲第25号証は、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
タ 甲第26号証
甲第26号証は、「21.レジンコンクリート工業会第5回定期総会」と題されており、表紙に記載される「平成18年6月27日」は本件特許出願より前であるが、記載される内容を考慮しても、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
チ 甲第27号証
甲第27号証は、記載の全体からみて、カタログあるいはそれに類するものと認められるところ、頒布または公開された日が不明である。第2頁に「特許第2514918号」と記載されていることから、早くとも当該特許番号を有する甲第4号証の発行日より後に作成されたと認められるが、当該記載をもって、本件特許出願より前に頒布または発行されたということはできない。
また、甲第27号証は、本件特許出願より前に頒布または公開がされていたとしても、甲第4号証とは異なる別途の刊行物であるから、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、とりわけ本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る構成を含む技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではない。
したがって、甲第27号証は、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ツ 甲第28号証
甲第28号証は、本件特許出願より前に頒布または公開がされた刊行物であるところ、甲第4号証に言及はしていても(段落【0003】参照)、既設側溝を騒音防止処理するうえで側溝躯体から側溝蓋を受ける側溝蓋支持部を含む周辺部分を除去するから(【請求項4】参照)、本件特許の請求項1に係る構成に反する処理を行うものであり、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容として、とりわけ本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る構成を含む技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではない。
したがって、甲第28号証は、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
テ 甲第29号証
甲第29号証は、「特開2000-120154 リボーンスラブ実施(株式会社クレスコ) 山口県内」の記載の後に、写真5枚が並べられたものであるが、当該5枚の写真に示される施工の具体的な内容、及び、当該施工が本件特許の出願より前に、不特定多数の者の前で公然と実施されたか、あるいは不特定多数の者に知られたかが不明であるとともに、仮に既存の側溝を改修する施工の様子であったとしても、2枚目の写真からすれば甲第28号証と同様に、既存の側溝の上部を切除しており、本件特許の請求項1に係る構成に反する処理を行っていると考えられる。また、写真と甲第4号証との関係も不明である。
したがって、甲第29号証は、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容として、とりわけ本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る構成を含む技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではないから、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ト 甲第33号証
甲第33号証は、側溝または蓋の設計図面であり、本件特許出願より前の日付が記載されているが、図示される側溝または蓋の形状を示すにとどまり、甲第4号証に記載される内容にさらに構成を付加した技術内容が、本件特許出願前に公然知られ、または公然実施がされたことを示すものではなく、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ナ 甲第34号証
甲第34号証は、本件特許出願より前に公開された刊行物であるところ、甲第4号証とは別途の刊行物であり、また記載内容について検討しても、接面部が曲面状となった蓋及び側溝の構造を示すにとどまり、本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る発明の構成(構成1A~1D)が公然知られまたは公然実施されたことを示すものではないから、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ニ 甲第36号証~甲第52号証
甲第36号証~甲第52号証は、審判請求時に請求人が提出した甲第2号証~甲第34号証と関連する書証として、要領書に添付して提出されたものであるが、いずれの書証についても、本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る発明の構成(構成1A~1D)が、本件特許出願より前に公然知られまたは公然実施されたことを示すものではないから、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ヌ 丙第1号証~丙第3号証
丙第1号証は、「リボーン側溝説明会 風景」と題され、会合の様子と思われる写真2枚が付されたものであり、丙第2号証は、「側溝用ブロック」の図面4つを示す登録意匠公報であり、丙第3号証は、本件特許出願より前の日付が付された側溝及び蓋の設計図面であるところ、いずれの書証についても、本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る発明の構成(構成1A~1D)が、本件特許出願より前に公然知られまたは公然実施されたことを示すものではないから、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
ネ 丙第4号証~丙第7号証、及び丙第9号証
丙第4号証~丙第7号証、及び丙第9号証は、上記5(2)キ、ク、コ、及び/又は上記6(2)ネ、ノ、ハに示したのと同様の理由で、本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る発明の構成(構成1A~1D)が、本件特許出願より前に公然知られまたは公然実施されたことを示すものではないから、上記(1)ア及びイの要件が満たされることを示すものではない。
(3)無効理由の成立の有無
上記(2)に示すとおり、請求人が甲第4号証の従たる書証である旨を述べる書証について考慮しても、上記(1)ア及びイに示した要件が満たされるとはいえない。
したがって、本件特許発明について、甲第4号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第1号または第2号の無効理由は成立しない。
(4)請求人の主張について
甲第4号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第1号または第2号の無効理由について、請求人が縷々に主張する点は、上記5(4)に示したのと同じ理由で、採用することができない。
したがって、請求人の主張について考慮しても、甲第4号証を主たる甲号証とした特許法第29条第1項第1号または第2号の無効理由の成立の有無について、上記(3)の判断を変更すべき事情はない。
(1)甲第2号証に記載された発明を主たる引用発明として
ア 当該無効理由が成立するためには
上記2に対比・判断したとおり、本件特許発明と甲第2号証に記載された発明とは、上記2(2)アに示した相違点1a及び相違点2aで相違する。
そのため、本件特許発明について、甲第2号証に記載された発明を主たる引用発明として、特許法第29条第2項の無効理由が成立するためには、本件特許の請求項1に係る構成の全てを含む相違点1aに係る構成、及び相違点2aに係る構成が、本件特許出願の時点において、いずれも当業者が容易に想到できたものであることを要する。
イ 請求人が提出した書証、及び第二被請求人が提出した書証について
審判請求時に請求人が提出した甲第3号証~甲第34号証は、上記相違点1aに係る構成である、本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る発明の構成が、本件特許出願より前に公然知られ、公然実施され、頒布された刊行物に記載され、または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったことを示すものではなく、当該構成が本件特許出願の時点において周知技術または技術常識であったことを示すものではない。
甲第36号証~甲第52号証は、審判請求時に提出された甲第2号証~甲第34号証と関連する書証として、要領書に添付して請求人が提出したものであるが、これらの書証についても、上記相違点1aに係る構成である、本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る発明の構成が、本件特許出願より前に公然知られ、公然実施され、頒布された刊行物に記載され、または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったことを示すものではなく、当該構成が本件特許出願の時点において周知技術または技術常識であったことを示すものではない。
甲第53号証及び甲第54号証は、甲第3号証に関連する書証として、尋問事項書に添付して請求人が提出したものであるが、これらの書証についても、上記相違点1aに係る構成である、本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る発明の構成が、本件特許出願より前に公然知られ、公然実施され、頒布された刊行物に記載され、または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったことを示すものではなく、当該構成が本件特許出願の時点において周知技術または技術常識であったことを示すものではない。
丙第1号証~丙第10号証は、第二被請求人が提出した書証であるが、これらの書証についても、上記相違点1aに係る構成である、本件特許発明が有する本件特許の請求項1に係る発明の構成が、本件特許出願より前に公然知られ、公然実施され、頒布された刊行物に記載され、または電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったことを示すものではなく、当該構成が本件特許出願の時点において周知技術または技術常識であったことを示すものではない。
なお、請求人が要領書に添付して提出した甲第35号証は、審判請求時に提出された甲第2号証~甲第34号証と関連する書証として提出されたものではなく、無効理由の根拠となる新たな先行技術を提出するものであるから、甲第35号証に基づく主張の追加は、審判請求の理由の要旨を変更するものとして、特許法第131条の2第2項に基づき許可しないことを、第1回口頭審理において決定した(上記第4の2(3)及び第1回口頭審理調書)。
ウ 小括
上記イのとおり、甲第3号証~甲第34号証、甲第36号証~甲第54号証、及び丙第1号証~丙第10号証を考慮しても、上記相違点1aに係る構成が、本件特許出願より前に公然知られ、公然実施され、頒布された刊行物に記載され、または電気通信回線を通じて公衆に利用可能であったとはいえず、周知技術または技術常識であったともいえない。
したがって、甲第3号証~甲第34号証、甲第36号証~甲第54号証、及び丙第1号証~丙第10号証を考慮しても、甲第2号証に記載された発明において、本件特許の出願時点において上記相違点1aに係る構成に至ることが示唆されていたものではなく、当該構成に至ることは、本件特許の出願時点において、当業者にとって想到容易でない。
よって、その余の相違点2aについて判断するまでもなく、甲第2号証に記載された発明を主たる引用発明として、本件特許発明について、特許法第29条第2項に係る無効理由は、成立しない。
(2)甲第2号証を主たる甲号証とした公知発明または公然実施発明を主たる引用発明として
上記5に指摘したとおり、請求人が甲第2号証の実施を示す旨を述べる書証について検討しても、甲第2号証を主たる甲号証として、本件特許発明が有する構成1A~1D(甲第2号証に記載された発明との相違点1aに係る構成であり、本件特許の請求項1に係る構成の全て)を含む発明が、本件特許出願前に公然と知られ、または公然実施されたとは認められない。
そして、本件特許発明が有する、構成1A~構成1Dは、上記(1)に示したとおり、甲第3号証~甲第34号証、甲第36号証~甲第54号証、及び丙第1号証~丙第10号証を考慮しても、本件特許出願より前に公然知られ、公然実施され、頒布された刊行物に記載され、または電気通信回線を通じて公衆に利用可能であったとはいえず、周知技術または技術常識であったともいえない。
したがって、本件特許発明が有する構成2A及び2Bについて検討するまでもなく、甲第2号証を主たる甲号証とした公知発明または公然実施発明を主たる引用発明として、本件特許発明について、特許法第29条第2項に係る無効理由は、成立しない。
(1)甲第3号証に記載された発明を主たる引用発明として
上記3に指摘したとおり、甲第3号証は、本件特許出願より後の平成20年12月24日に発行されているから、甲第3号証に記載された発明が、本件特許発明に対して、特許法第29条第1項第3号に係る「特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた発明」となることはない。
したがって、甲第3号証に記載された発明を主たる引用発明として、本件特許発明について、特許法第29条第2項に係る無効理由は、成立しない。
(2)甲第3号証を主たる甲号証とした公知発明または公然実施発明を主たる引用発明として
上記6に指摘したとおり、請求人が甲第3号証の実施を示す旨を述べる書証について検討しても、甲第3号証を主たる甲号証として、本件特許発明が有する構成1A~1D(本件特許の請求項1に係る構成の全て)を含む発明が、本件特許出願前に公然と知られ、または公然実施されたとは認められない。
そして、本件特許発明が有する、構成1A~構成1Dは、本件特許発明と甲第2号証に記載された発明との相違点1aに含まれること、及び上記8(1)イ指摘したことを踏まえると、甲第2号証、甲第4号証~甲第34号証、甲第36号証~甲第54号証、及び丙第1号証~丙第10号証を考慮しても、本件特許出願より前に公然知られ、公然実施され、頒布された刊行物に記載され、または電気通信回線を通じて公衆に利用可能であったとはいえず、周知技術または技術常識であったともいえない。
したがって、本件特許発明が有する構成2A及び2Bについて検討するまでもなく、甲第3号証を主たる甲号証とした公知発明または公然実施発明を主たる引用発明として、本件特許発明について、特許法第29条第2項に係る無効理由は、成立しない。
(1)甲第4号証に記載された発明を主たる引用発明として
ア 当該無効理由が成立するためには
上記4に対比・判断したとおり、本件特許発明と甲第4号証に記載された発明とは、上記4(2)アに示した相違点1b及び相違点2bで相違する。
そのため、本件特許発明について、甲第4号証に記載された発明を主たる引用発明として、特許法第29条第2項の無効理由が成立するためには、本件特許の請求項1に係る構成の全てを含む相違点1bに係る構成、及び相違点2bに係る構成が、本件特許出願の時点において、いずれも当業者が容易に想到できたものであることを要する。
しかしながら、本件特許発明が有する、上記相違点1bに係る構成に含まれる、本件特許発明の構成1A~構成1Dは、本件特許発明と甲第2号証に記載された発明との相違点1aに含まれること、及び上記8(1)イ指摘したことを踏まえると、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証~甲第34号証、甲第36号証~甲第54号証、及び丙第1号証~丙第10号証を考慮しても、本件特許出願より前に公然知られ、公然実施され、頒布された刊行物に記載され、または電気通信回線を通じて公衆に利用可能であったとはいえず、周知技術または技術常識であったともいえない。
したがって、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証~甲第34号証、甲第36号証~甲第54号証、及び丙第1号証~丙第10号証を考慮しても、甲第4号証に記載された発明において、本件特許の出願時点において上記相違点1bに係る構成に至ることが示唆されていたものではなく、当該構成に至ることは、本件特許の出願時点において、当業者にとって想到容易でない。
よって、その余の相違点2bについて判断するまでもなく、甲第4号証に記載された発明を主たる引用発明として、本件特許発明について、特許法第29条第2項に係る無効理由は、成立しない。
(2)甲第4号証を主たる甲号証とした公知発明または公然実施発明を主たる引用発明として
上記7に指摘したとおり、請求人が甲第4号証の実施を示す旨を述べる書証について検討しても、甲第4号証を主たる甲号証として、本件特許発明が有する構成1A~1D(甲第4号証に記載された発明との相違点1bに係る構成であり、本件特許の請求項1に係る構成の全て)を含む発明が、本件特許出願前に公然と知られ、または公然実施されたとは認められない。
そして、本件特許発明が有する、構成1A~構成1Dは、上記(1)に示したとおり、甲第2号証、甲第3号証、甲第5号証~甲第34号証、甲第36号証~甲第54号証、及び丙第1号証~丙第10号証を考慮しても、本件特許出願より前に公然知られ、公然実施され、頒布された刊行物に記載され、または電気通信回線を通じて公衆に利用可能であったとはいえず、周知技術または技術常識であったともいえない。
したがって、本件特許発明が有する構成2A及び2Bについて検討するまでもなく、甲第4号証を主たる甲号証とした公知発明または公然実施発明を主たる引用発明として、本件特許発明について、特許法第29条第2項に係る無効理由は、成立しない。
(1)証人尋問の希望について
請求人は、証人尋問の実施を希望し、第1回口頭審理の直前に尋問事項書を提出している。
尋問事項書の内容を検討すると、請求人が証人尋問で立証しようとする事項は、丙第10号証に係る別件侵害訴訟の経緯、丙第9号証に係る実施契約の内容、本件特許出願前にレジンコンクリート製の蓋が公知であったこと、及び本件特許発明に係る二次蓋と甲第3号証で用いられる蓋とが同じ構造であることである。
しかしながら、これらの事項については、仮に事実と仮定しても、本件特許発明が有する構成1A~構成1Dに関して、上記1の認定及び上記2~10の対比・判断を左右するものではないから、本件無効審判において請求人が主張する特許法第29条に係る無効理由についての判断を左右するものとは認められない。
したがって合議体は、本件無効審判の審理において、請求人が希望した証人尋問は行わないこととした。
(2)その余の縷々の主張について
請求人が主張する特許法第29条に係る無効理由は、上記第4の1(1)アに示したとおり、本件特許発明を、「前記二次蓋が前記既存蓋よりも薄いもの」という物の発明であるとする、独自の解釈に依拠したものである。また請求人は、特許法第29条に係る無効理由に関し、別件侵害訴訟において、「ECOンビ二次蓋」という被告製品について特許法第101条第4号及び第5号の間接侵害が主張されたことに、縷々に言及している。
しかしながら、本件特許発明は、上記1に認定したとおり、構成1A~2Bの全ての構成を有する「U字溝の改修方法」の発明であり、当該構成により、本件明細書等の段落【0008】に記載される効果を奏するという、技術的意義を有するものである。
そして、本件特許発明の有する構成及び技術的意義は、別件侵害訴訟において、「ECOンビ二次蓋」という被告製品について特許法第101条第4号及び第5号の間接侵害が主張されたことによって、変わるものではない。
したがって、本件特許発明を「前記二次蓋が前記既存蓋よりも薄いもの」という物の発明であるとする、独自の解釈に依拠した、請求人によるその余の縷々の主張、及び、別件侵害訴訟において間接侵害が主張されたことに依拠した、請求人によるその余の縷々の主張は、いずれも上記1~10の認定・対比及び判断を左右するものでなく、採用することができない。
以上のとおりであるから、本件無効審判において請求人が主張する上記第4の1(1)の無効理由は、いずれも理由がないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明についての特許は、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
Next Action
類似審決の追加調査から中間応答、新規出願の費用確認まで、この審決を起点に次のアクションへ進めます。
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