結論テキスト
特許第7419056号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3、4について訂正することを認める。
特許第7419056号の請求項1~4に係る特許を維持する。
Trademark Appeal Case
本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。
| 審判番号 | 2024700678 |
|---|---|
| 審判種別 | 記載はありません。 |
| 結論 | 敗訴(請求棄却) |
理 由
特許第7419056号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願(特願2019-233731号)は、令和元年12月25日に出願され、令和6年1月12日にその特許権の設定登録がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和6年7月19日に特許異議申立人 斎藤 敏子 (以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~4(全請求項)に係る特許に対し、特許異議の申立てがされたものである。
その後の主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和6年10月29日付け 取消理由通知書
同年12月24日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
令和7年 1月28日付け 訂正請求があった旨の通知書
同年 2月28日 意見書の提出(申立人)
同年 4月18日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 6月 9日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年 同月23日付け 訂正請求があった旨の通知書
同年 7月24日 意見書の提出(申立人)
なお、令和6年12月24日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「先の訂正請求」という。)は、令和7年6月9日提出の訂正請求書による訂正の請求がされたので、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
令和7年6月9日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)の趣旨は、
「特許第7419056号の特許請求の範囲を本件請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項3及び4について訂正することを求める。」
というものである。
本件訂正の内容は、訂正請求書の記載及び訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載からみて、次の訂正事項1~5からなるものであると認められる。
なお、下線は訂正による記載の変更箇所を示す。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項3に
「界面活性剤」
とあるのを、
「
エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む
界面活性剤」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「アミノ変性シリコーン」
とあるのを、
「
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含む
アミノ変性シリコーン」
に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4に
「界面活性剤」
とあるのを、
「
エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む
界面活性剤」
に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「アミノ変性シリコーン」
とあるのを
「
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含む
アミノ変性シリコーン」
に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4の末尾に
「水中油型エマルジョン組成物は除く)。油型エマルジョン組成物。」
とあるのを、
「水中油型エマルジョン組成物は除く)
。
」
に訂正する。
(6)訂正の単位について
本件訂正前の請求項3及び4は、いずれも他の請求項の記載を引用するものでなく、両請求項の記載を引用する他の請求項もなく、両請求項は特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する「一群の請求項」に該当しないから、本件訂正請求は、訂正事項1及び2、並びに、訂正事項3~5により、それぞれ訂正前の請求項3及び4に対応する訂正後の請求項3及び4について、「請求項ごと」に訂正を請求するものである。
(1)訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項3に記載された「界面活性剤」を「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテル」は、本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0044】において、
「<実施例1>
アミノ変性シリコーンとして、・・・
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサン
(アモジメチコン)20質量部に、変色抑制剤として、酢酸を、・・・、界面活性剤として、
エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテル
と、酢酸とグリセリンを含む相分離しないオイル状の混合物(酢酸含有量の異なる3種)を得た。・・・水中油型エマルジョン1を得た。処方を表1に示す。」(摘記中の下線は当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。以下、他の摘記箇所も同様である。)
として、実施例の水中油型エマルジョンに配合された界面活性剤であることが記載されていることから、訂正事項1による訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件明細書等」という。)の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項1による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項3に記載の「アミノ変性シリコーン」を「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含む」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサン」は、上記(1)で摘記した本件明細書の【0044】において、実施例の水中油型エマルジョンに配合されたアミノ変性シリコーンであることが記載されていることから、訂正事項2による訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。
したがって、訂正事項2による訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項3について
訂正事項3による訂正も、訂正事項1による訂正と同様に、訂正前の請求項4に記載されている「界面活性剤」を「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、上記(1)で訂正事項1について述べたのと同様の理由により、訂正事項3による訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項3による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(4)訂正事項4について
訂正事項4による訂正も、訂正事項2による訂正と同様に、訂正前の請求項4に記載されている「アミノ変性シリコーン」を「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含む」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、上記(2)で訂正事項2について述べたのと同様の理由により、訂正事項4による訂正は、本件明細書等の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではないから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項4による訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(5)訂正事項5について
訂正事項5による訂正は、「水中油型エマルジョン組成物は除く)。油型エマルジョン組成物。」との記載から、末尾の「油型エマルジョン組成物。」との記載を削除するものである。
そして、この「油型エマルジョン組成物。」との記載は、エマルジョンとして、単なる「油型」というものは存在しないので、その用語の意味自体が不明であるし、請求項4において先に記載されている発明特定事項とも関係しておらず、発明特定事項としての位置づけも不明である。
また、その直前には「水中油型エマルジョン組成物」という一部重複する事項が記載されていることからすると、当該「油型エマルジョン組成物。」なる事項は、誤って記載したものであると推定される。
そうすると、上記末尾の「油型エマルジョン組成物。」との記載は、その記載が存在すること自体で誤りであることが明らかであり、本来記載されるべきでないものであったと認められ、訂正事項5による訂正は、本来その意であることが明らかな上記末尾の記載が存在しない記載に正すものであると認められる。
よって、訂正事項5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであり、本件特許の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてしたものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
本件特許異議申立事件においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正事項1~4による訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、訂正事項5による訂正は同第2号に掲げる事項を目的とするものであるが、訂正後の請求項3及び4に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
よって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3、4について訂正することを認める。
上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の本件特許の請求項1~4(請求項1及び2は、本件訂正の対象ではないが、便宜的に、これらの請求項も併せて、以下、請求項の番号順に「本件訂正請求項1」等という。)の記載は、令和7年6月9日提出の訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された、次のとおりのものである(下線は、訂正による記載の変更箇所を示す。)。以下、これらの請求項に係る発明を、請求項の番号順に「本件訂正発明1」等といい、これらをまとめて「本件訂正発明」ということがある。
「【請求項1】
酢酸を含む酸を添加する工程を含み、
前記酢酸が、アミノ変性シリコーンのアミノ基に対して配位し、中和することにより、前記アミノ基の酸化を抑制されることを特徴とする、前記アミノ変性シリコーンと水とを含む水中油型エマルジョン組成物(但し、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物は除く)の変色を抑制する方法。
【請求項2】
前記酢酸を含む酸の添加量は、前記水中油型エマルジョン組成物に含まれるアミノ変性シリコーンに対する中和率が30%以上となる量である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
酢酸を含む変色抑制剤と、
エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む
界面活性剤と、
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含む
アミノ変性シリコーンとを混合する第一ステップと、
前記第一ステップで得られる混合物に水を加えて分散させ、水中油型エマルジョン組成物を得る第二ステップと、を含み、
前記酢酸が、前記アミノ変性シリコーンのアミノ基に対して配位し、中和することにより、前記アミノ基の酸化が抑制され、変色が抑制された前記水中油型エマルジョン組成物(但し、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物は除く)の製造方法。
【請求項4】
(A)
N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含む
アミノ変性シリコーンと、
(B)酢酸を含む変色抑制剤と、
(C)水と、
(D)
エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む
界面活性剤と、を含み、
前記酢酸が、前記アミノ変性シリコーンのアミノ基に対して配位し、中和することにより、前記アミノ基の酸化が抑制され、
前記変色抑制剤の含有量は、前記水中油型エマルジョンに含まれるアミノ変性シリコーンに対する中和率が30%以上となる量であることを特徴とする、変色が抑制された水中油型エマルジョン組成物(但し、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物は除く)
。
」
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)の全体の記載からみて、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由として、下記(1)~(4)に概要を示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張していると認められ、証拠方法として、申立書に添付して、下記(5)に示す甲第1号証~甲第4号証(以下それぞれ番号順に「甲1」~「甲4」ともいう。)を提出している。
なお、ここでいう「請求項1」等は、本件特許の設定登録時の請求項1等のことである。
(1)申立理由1-1(甲1を主引例とする新規性欠如)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由1-2(甲1を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明又は甲1に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由2-1(甲2を主引例とする新規性欠如)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由2-2(甲2を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項1~4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲2に記載された発明又は甲2に記載された発明並びに甲3及び甲4に記載された事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)証拠方法
甲第1号証:特開平8-53547号公報
甲第2号証:特開平7-97455号公報
甲第3号証:特開平4-363329号公報
甲第4号証:特表2019-515935号公報
(1)先の取消理由通知の取消理由の概要
当審合議体が令和6年10月29日付け取消理由通知(以下「先の取消理由通知」という。)で特許権者に通知した取消理由の概要は、下記ア~エのとおりであり、先の取消理由通知の取消理由と申立理由との対応関係は、下記オのとおりである。
なお、ここでいう「請求項3」等は、本件特許の設定登録時の請求項3等のことであり、甲1及び甲2は、申立理由のものと同じ文献である。また、取消理由の番号については、申立理由の番号に対応するように先の取消理由通知に記載した取消理由の番号を一部修正した。
ア 取消理由1-1(甲1を主引例とする新規性欠如)
本件特許の請求項3及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 取消理由1-2(甲1を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項3及4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 取消理由2-1(甲2を主引例とする新規性欠如)
本件特許の請求項3及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲2に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
エ 取消理由2-2(甲2を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項3及4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲2に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、同法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
オ 先の取消理由通知の取消理由と申立理由との対応関係
取消理由1-1及び同2-1は、申立理由1-1及び同2-1のうち、本件特許の請求項3及4を対象とするものと、それぞれ同旨である。
また、取消理由1-2及び同2-2は、申立理由1-2及び同2-2のうち、本件特許の請求項3及4を対象とするものと、それぞれ同旨である。
(2)取消理由通知(決定の予告)の取消理由の概要
当審合議体が令和7年4月18日付け取消理由通知(決定の予告)(以下「決定予告」と略記する。)で特許権者に通知した取消理由の概要は、下記ア及びイのとおりであり、決定予告の取消理由と、先の取消理由通知の取消理由及び申立理由との対応関係は、下記ウのとおりである。
なお、ここでいう「訂正請求項3」等は、先の訂正請求により訂正された本件特許の請求項3等のことであり、甲1及び甲2は、申立理由のものと同じである。また、取消理由の番号については、申立理由の番号に対応するように決定予告に記載した取消理由の番号を一部修正した。
ア 取消理由1-2(甲1を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項3及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
イ 取消理由2-2(甲2を主引例とする進歩性欠如)
本件特許の請求項3及び4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された甲2に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
ウ 決定予告の取消理由と、先の取消理由通知の取消理由及び申立理由との対応関係
決定予告の取消理由1-2及び同2-2は、先の取消理由通知の取消理由1-2及び同2-2と、それぞれ同旨であり、かつ、申立理由1-2及び同2-2のうち、本件特許の請求項3及4を対象とするものと、それぞれ同旨である。
当審合議体は、本件訂正請求項3及び4に係る特許は、決定予告で通知した取消理由及び先の取消理由通知で通知した取消理由によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由は以下のとおりである。
決定予告及び先の取消理由通知において引用文献とした甲1及び甲2について、取消理由の判断に必要な範囲で、記載事項を以下に摘記する。なお、特に注釈がない限り、摘記中の下線は当審が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。
(1)甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている。
摘記1a:
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも1種の、
一般式(I)
:
【化1】
25
151
0001433055000001.jpg
のシロキサン単位
及び場合により、一般式(II):
【化2】
25
151
0001433055000002.jpg
のシロキサン単位[式中、R
1
は、同一又は異なる、一価の非置換の又は弗素原子、塩素原子又は臭素原子でより置換されたC
1
~C
18
-炭化水素、水素原子、C
1
~C
12
-アルコキシ-又はヒドロキシ基又はアルキルグリコール基を表わし、
Q
は、
一般式(III)
:
-R
2
-NR
3
(CH
2
)
m
NR
4
R
5
(III)
の基
を表わし、ここで、
R
2
は、
二価のC
1
~C
18
-炭化水素
を表わし、
R
3
は、
水素原子
又は非置換の又は弗素原子、塩素原子又は臭素原子で置換されたC
1
~C
10
-アルキル基を表わし、
R
4
は、
水素原子
又は非置換の又は弗素原子、塩素原子又は臭素原子で置換された
C
1
~C
10
-アルキル基
を表わし、
R
5
は、非置換の又は弗素原子、塩素原子又は臭素原子で置換された
C
1
~C
10
-アルキル基
を表わし、aは、0、1又は2の値を表わし、bは、1、2又は3の値を表わし、cは、0、1、2又は3の値を表わしかつmは、2、3又は4の値を表わし、かつa及びbからなる合計は最大3である]から構成されている
アミノ官能性オルガノポリシロキサン
。
【請求項2】式中の
R
4
は、
水素原子
又は
C
2
~C
6
-アルキル基
を表わし、かつ
R
5
は、
C
2
~C
6
-アルキル基
を表わす、請求項1に記載のアミノ官能性オルガノポリシロキサン。
【請求項3】 一般式Iの単位のほかに、一般式IIの単位も有する、請求項1又は2に記載のアミノ官能性オルガノポリシロキサン。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項
に記載の
アミノ官能性オルガノポリシロキサン
の
水性エマルジョン。
」
摘記1b:
「【0002】
【従来の技術】
アミノ基を有するオルガノポリシロキサン
は、すでにすこし前から、織物仕上剤として使用されている。それで処理された織物には、良好な柔軟感触効果が達成される。
今までに
、
アミノ官能基
:
-(CH
2
)
3
NHCH
2
CH
2
NH
2
を有するオルガノポリシロキサンが有利に使用されている
。
【0003】これは、例えば米国特許(US-A)第4098701号明細書に記載されている。しかしながら、
前記のアミノ官能基は、熱黄変化、高められた温度によって促進される強い変色化傾向を示す
。
【0004】アミノ官能性オルガノポリシロキサンに付いているアミノ基を有機エポキシドで変性することによって熱黄変化を減少させることは、・・・に記載された、アシル化剤、例えばカルボン酸及びその無水物での変性によって達成可能である。
・・・
【0006】良好な柔軟感触-及び黄変化特性を有するアミノ官能性オルガノポリシロキサン、例へば、・・・の、ピペラジニル基含有オルガノポリシロキサンも開発された。しかしながら、複素環系アミノ基を有するオルガノポリシロキサンは、製造困難であり、かつ従って実際には、織物仕上剤としての役割を果たさない。
【0007】
【発明が解決しようとする
課題
】
本発明は
、繊維及び繊維材料の処理の際に使用され得る、安定なエマルジョンに加工可能な、
アミノ官能性オルガノポリシロキサン
を製造することを課題とし、その際、処理された繊維及び繊維材料は、極めて良好な柔軟感触及び卓越した縫合可能性を有し、かつその際、
僅かな黄変化傾向だけを示す
。」
摘記1c:
「【0029】一般式Iのシロキサン単位対一般式IIのシロキサン単位の比は、有利に、1:10~30000、殊に1:20~300である。
アミン含量
は、
中和点までの滴定
で、
1n塩酸(ml)/アミノ官能性オルガノポリシロキサン(g)の消費量
として測定されて、有利に、0.001~2mg当量/g、殊に0.1~1.0mg当量/gである。」
摘記1d:
「【0049】アミノ官能性オルガノポリシロキサンは、有利に、水性エマルジョンの形で使用される。エマルジョンは小さい粒度を有する。従って、エマルジョンの貯蔵-及び剪断安定性は、極めて良好である。
【0050】微細なオルガノポリシロキサンエマルジョンの好適な製法は、例えば、米国特許(US-A)第5302657号明細書から公知である。その際、エマルジョンは、オルガノポリシロキサン中に可溶性の乳化剤を用いて、2段階で製造され、その際、最初の段階で、濃縮物が得られ、これが、第二段階で、水で希釈される。
【0051】
乳化剤
としては、
アミノ官能性オルガノポリシロキサンエマルジョンの製造に使用可能な任意の乳化剤
が使用できる。
・・・
【0053】
非イオン性乳化剤
としては、
特に次のものが好適である
:
5.
アルキルポリグリコールエーテル
、
特に4~40個のEO-単位及び8~20個のC-原子のアルキル基を有するもの
、
6.・・・」
摘記1e:
「【0066】次の実施例において、他の記載のない限り、部及びパーセント率の全表示は、重量による。
【0067】
【実施例】
例 1:
(合議体注:下線は原文のまま。)
a)
次の構造のアミノ官能性シランA
の製造:
【0068】
【化13】
20
133
0001433055000003.jpg
【0069】N,N-ジエチルエチレンジアミン465g(4モル)を前もって装入し、かつ窒素ガス下で140~150°Cに加熱する。引続いて、3-クロルプロピルメチルジメトキシシラン182.4g(1モル)を約30分間かけて添加
し、かつ更にもう4時間140°Cで撹拌する。その後、80°Cに冷却し、かつ生成した、塩酸塩として結合したHClを、エチレンジアミンでの塩置換(Umsalzen)によって、除去する。引続いての分別蒸留によって、約90°C/2ミリバールの沸点で、次の分析データを有するシランA80~90%が得られる:
外観:無色~帯黄色液体
純度(GC):>95%
アミン含量:7.6mg当量/gb) 次の構造を有するアミノ官能性シランA′の製造
【0070】
【化14】
21
133
0001433055000004.jpg
【0071】例1aを繰り返すが、N,N-ジエチルエチレンジアミンの代りに、N-シクロヘキシルエチレンジアミン568g(4モル)を使用する。蒸留後に、次の分析データを有するシランA′約80~90%が得られる:外観:無色~帯黄色液体
純度(GC):>95%
アミン含量:6.9mg当量/g
例 2
(合議体注:下線は原文のまま。)
a) シランAのオリゴマー加水分解物Bへの加水分解
シランA260g(1モル)に、窒素ガス下で、水90g(5モル)を加え、かつ90°Cに加熱する。遊離するメタノールを、撹拌下にこの温度で留去させる。メタノール遊離の終了後に、過剰の水を、減圧下(10ミリバール)で、100°Cの温度で除去する。次の分析データを有する、殆んど無色の油状物約220gが得られる:
粘度(25°C):500mm
2
/s
アミン含量:8.78mg当量/g
1
H及び
29
Si-NMR:メトキシ基を含有しない直鎖及び環状シロキサンからなる混合物。
【0072】b) シランA′のオリゴマー加水分解物B′への加水分解シランA′289g(1モル)を、例2a)と同様にして、加水分解させる。次の分析データを有する無色の油状物約240gが得られる:
粘度(25°C):2300mm
2
/s
アミン含量:7.9mg当量/g
1
H及び
29
Si-NMR:メトキシ基を含有しない直鎖及び環状シロキサンからなる混合物。
【0073】
例3~6:
アミン官能性ポリシロキサンC~Fの製造
例 3
(合議体注:下線は原文のまま。)
OH-末端位のポリジメチルシロキサン1000g、鎖長35を有するMe
3
SiO-末端位のポリジメチルシロキサン140g及び加水分解物B76gからなる混合物を、窒素ガス下で、80°Cに加熱し、かつメタノール中のベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTAH)の40%の溶液1.8gを加える。引続いて、100°Cで、減圧(200ミリバール)下で、6時間撹拌し、この際、生成する縮合水を同時に除去する。次いで、5ミリバールの真空で、1時間、150°Cに加熱し、その際、触媒BTAHは失活されかつ揮発性の成分は除去される。濾過後に、次の特性を有する無色の油状物が得られる
(アミノシロキサンC)
:
【0074】
【表1】
60
151
0001433055000005.jpg
【0075】
例 4
(合議体注:下線は原文のまま。)
OH-末端位のポリジメチルシロキサン1000g、鎖長35を有するMe
3
SiO-末端位のポリジメチルシロキサン140g及び加水分解物B38gからなる混合物を、窒素ガス下で、80°Cに加熱し、かつメタノール中の40%のBTAH-溶液1.8gを加える。次いで、100°C及び約200ミリバールの減圧で、6時間撹拌し、かつその際、縮合水を除去する。引続いて、圧力を約5ミリバールに減らし、かつ1時間150°Cに加熱する。その際、BTAH-失活及び揮発性成分の除去が行なわれる。濾過後に、次の特性を有する無色の油状物が得られる(
アミノシロキサンD
):
【0076】
【表2】
59
151
0001433055000006.jpg
【0077】
例 5
(合議体注:下線は原文のまま。)
a) OH-末端位のポリジメチルシロキサン1000g、鎖長35を有する Me
3
SiO-末端位のポリジメチルシロキサン50g及び加水分解物B46gからなる混合物を、窒素ガス下で、80°Cに加熱し、かつメタノール中の40%のBTAH-溶液1.6gを加える。次いで、100°C及び約200ミリバールの減圧で、6時間撹拌し、この際、生成する縮合水を除去する。引続いて、圧力を5ミリバールに減らし、かつ1時間150°Cに加熱する。その際、BTAH-失活及び揮発性成分の除去が行なわれる。濾過後に、次の特性を有する無色の油状物が得られる(アミノシロキサンE):
【0078】
【表3】
54
151
0001433055000007.jpg
【0079】b) 例5を繰り返すが、加水分解物Bの代りに、加水分解物B′51gを使用
する。得られるアミノシロキサンE′は、次の特性を有する:
【0080】
【表4】
70
151
0001433055000008.jpg
【0081】
例 6
(合議体注:下線は原文のまま。)
OH-末端位のポリジメチルシロキサン1000g及びシランA53gからなる混合物に、メタノール中の40%のBTAH-溶液0.53gを加え、かつ200ミリバールの減圧で、5時間、80°Cに加熱し、その際、揮発性の成分を留去させる。引続いて、60ミリバールの圧力で、1時間、150°Cに加熱し、かつその際、触媒BTAHが失活されかつ揮発性成分が除去される。次の特性を有する無色の油状物が得られる(
アミノシロキサンF
):
【0082】
【表5】
58
151
0001433055000009.jpg
【0083】
例 7
(合議体注:下線は原文のまま。)
アミノシロキサンC~F及び比較として用いられる、本発明に依らない、次の構造
:
【0084】
【表6】
87
151
0001433055000010.jpg
【0085】
を有するアミノ官能性シリコーン油G及びH
の、次の標準処方に依る、
非イオン性O/W-エマルジョン
の製造:
アミノ官能性シリコーン油
を、必要量の
乳化剤 Genapol(登録商標)X060(Hoechst AG社の6個のエチレンオキシド単位を有するイソトリデシルアルコールポリグリコールエーテル
)と
混合
させ、かつ
酢酸
の
添加
後に、
高速回転混合機
を用いて、
水
を少量ずつ加えながら、
乳濁
させる。次の第I表は、
エマルジョン組成
及びその特徴を示す。
【0086】
【表7】
72
151
0001433055000011.jpg
」
(2)甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
摘記2a:
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノポリシロキサン-マイクロエマルジョンの製造法
において、成分:
A)
オルガノポリシロキサン
、
B)
乳化剤
C)
水
、
場合によってはD)
共界面活性剤
、および場合によってはE)
酸
を
任意の順序で一緒に添加し、混合することによって製造する
ことを特徴とする、
オルガノポリシロキサン-マイクロエマルジョンの製造法
。
【請求項2】
オルガノポリシロキサンA
として
一般式(I)
:
R
n
R’
m
SiO
(4-n-m)/2
(I)
[式中、Rは同一または異なった、場合によっては置換された、それぞれ炭素原子1~18個を有する炭化水素基または炭化水素オキシ基を表わし、
R’
は同一または異なった、Si-C結合した、
極性基を有する置換炭化水素基
またはヒドロキシル基を表わし、nは0、1、2または3の数値である整数であり、mは0、1、2または3の数値である整数であり、かつn+mの合計は1.8~2.2の平均値を有し、およびmはポリオルガノシロキサンが少なくとも1つの基R’を有するように選択される]で示されるオルガノポリシロキサンを使用する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
R’
が
一般式(II)
:
-
R1-[NR2(CH
2
)
a
]
b
NHR2 (II)
[式中、
R1
は
2価のC
1
~C
18
炭化水素基
を表わし、
R2
は
水素原子
、または場合によっては置換されたC
1
~C
18
炭化水素基を表わし、
a
は2、
3
、4、5または6の数値であり、および
b
は0、
1
、2、3または4の数値である]で示される基を表わす請求項2記載の方法。」
摘記2b:
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、簡単に実施可能で、殊に、濃縮物が製造されなくてもよく、成分の添加順序が保持されなくてもよく、かつ加温が必要でない方法によって安定したオルガノポリシロキサンマイクロエマルジョンを提供することである。」
摘記2c:
「【0012】
マイクロエマルジョンは水中油型
のものであり、即ちこのエマルジョンは、オルガノポリシロキサンAを含有する非連続的油相、および連続的水相を有す。」
摘記2d:
「【0031】
アミノ官能性オルガノポリシロキサンAが使用される場合
には、この化合物が
0.05~3.0
、殊に
0.1~1.0
の
アミン値
を有するのが
有利である
。
アミノ官能性物質のアミン値は、アミノ官能性物質1gを滴定する場合の1n塩酸のcm3での消費として測定
される。
【0032】
下記の乳化剤B
は、
本発明による方法の場合での使用に特に好適である:
1.例えば・・・
・・・
【0036】
5
.
アルキルポリグリコールエーテル
、
有利にEO単位2~40個、およびC原子4~20個からなるアルキル基を有するもの
。
・・・
【0044】13.・・・」
摘記2e:
「【0052】本発明による方法の場合、酸Eは所望のpH値を調節するため、または他の成分を用いて酸付加塩を形成するために使用される。好ましくは、前記の一般式(I)のオルガノポリシロキサンAが使用される場合(但し、R’はアミノ官能性基を表わす)、酸を添加する。
・・・
【0054】特に有利な酸は酢酸およびギ酸である。」
摘記2f:
「【0063】
【実施例】
例
下記の例中では、他に記載がない限り、全ての量記載およびパーセント記載は重量に関する。他に記載がない場合には、次の例は、大気圧(約0.1MPa(絶対))および室温(約20°C)で、もしくは付加的な加熱または冷却なしに室温で反応体を一緒に添加する際に調節されるか、または成分もしくは混合物への混合装置の作用によって調節される温度および圧力で実施される。
【0064】アミノ官能性オルガノポリシロキサンA:
A1
:
ジメチルシロキシ-メチル(N-[2-アミノエチル]-3-アミノプロピル)シロキシ単位とメトキシジメチルシリル末端基とからなるオルガノポリシロキサン
;
粘度
:
25°Cで1200mPa.s
;
アミン値
:
0.6
。
【0065】A2:ジメチルシロキシ-メチル(N-[2-アミノエチル]-3-アミノプロピル)シロキシ単位とメトキシジメチルシリル末端基とからなるオルガノポリシロキサン;粘度:25°Cで1000mPa.s;アミン値:0.3。
【0066】A3:ジメチルシロキシ-メチル(N-[2-アミノエチル]-3-アミノプロピル)シロキシ単位とメトキシジメチルシリル末端基とからなるオルガノポリシロキサン;粘度:25°Cで6500mPa.s;アミン値:0.13。
【0067】A4:ジメチルシロキシ-メチル(N-シクロヘキシル-3-アミノプロピル)シロキシ単位とトリメチルシリル末端基とからなるオルガノポリシロキサン;粘度:25°Cで1000mPa.s;アミン値:0.3。
【0068】
乳化剤(B)
:
B1
:
平均で酸化エチレン単位8個を有するイソトリデシルエトキシレート
。
【0069】B2:平均で酸化エチレン単位6個を有するイソトリデシルエトキシレート。
【0070】
B3
:
酸化エチレン単位2個を有するn-ブチルエトキシレート
。
【0071】
B4
:
1.35のグリコシド化度を有する(水中に50%の)C
8
/C
11
-アルキルポリグリコシド
。
【0072】
例1
次のものからなるマイクロエマルジョンの製造
:
ポリシロキサンA1 30重量部
、
乳化剤B1 10重量部
、
乳化剤B3 15重量部
、
水(C) 45重量部
、および
氷酢酸(E) 0.57重量部
。
【0073】
成分1.
を
予め装入
した後、
他の成分を引続き連続して添加
した。それぞれ成分の添加後、
短時間(約15秒間)振動させるか、もしくは撹拌
した。
最後の成分を添加後
、さらに
30分間放置
した。
【0074】
次の順でマイクロエマルジョン成分の合一添加を実施した
:
a)装入物B1;B3、C、E、A1添加。
【0075】
b)
装入物
B1
;
B3
、
E
、
A1
、
C
添加。
【0076】
c)
装入物
E
;
A1
、
B1
、
B3
、
C
添加。
【0077】d)装入物B1;B3、C、A1、E添加。
【0078】
e)
装入物
B3
;
B1
、
A1
、
E
、
C
添加。
【0079】
f)
装入物
A1
;
E
、
B1
、
B3
、
C
添
加
。
【0080】g)装入物C;B1、B3、A1、E添加。
【0081】h)装入物C;B1、B3、E、A1添加。
【0082】a)~h)の全ての場合に、
水のように透明なマイクロエマルジョンが得られた
。“粒度”はいずれの場合にも測定できなかったが(マルベルン社(Fa.Malvern)の自動サイズ測定器(Autosizer)2Cを用いて測定)、それというのも粒子が過小(<<10nm)であった。マイクロエマルジョンは3ヵ月を上回って貯蔵安定性であるが、しかし約1週間の滞留時間後、軽く黄ばんで変色し始めた。
例2
次のものからなるマイクロエマルジョンの製造
:
ポリシロキサンA1 15重量部
、
乳化剤B3 5重量部
、
乳化剤B4(水中に50%で) 30重量部
、
水(C) 50重量部
、および
氷酢酸(E) 0.28重量部。
【0083】
成分1.
を
予め装入
した後、
他の成分を引続き連続して添加
した。それぞれ成分の添加後、
短時間(約15秒間)振動させるか、もしくは撹拌
した。
最後の成分を添加後
、さらに
1時間放置
した。
【0084】
次の順でマイクロエマルジョン成分の合一添加を実施した
:
a)装入物B4;B3、C、E、A1添加。
【0085】
b)
装入物
B3
;
B4
、
E
、
A1
、
C
添加。
【0086】c)装入物C;E、B4、B3、A1添加。
【0087】a)~c)の全ての場合に、
水のように透明な、乳化剤B4の固有色によって黄褐色に変色したマイクロエマルジョンが得られた
。“粒度”はいずれの場合にも<20nmであった(マルベルン社(Fa.Malvern)の自動サイズ測定器(Autosizer)2Cを用いて測定)。マイクロエマルジョンは3ヵ月を上回って貯蔵安定性であった。
・・・
【0094】
例4
次のものからなるマイクロエマルジョンの製造
:
ポリシロキサンA3 15重量部
、
乳化剤B2 15重量部
、
乳化剤B3 5重量部
、
水(C) 65重量部
、および
氷酢酸(E) 0.07重量部
。
【0095】
成分1.
を
予め装入
した後、
他の成分を引続き連続して添加
した。それぞれ成分の添加後、
短時間(約15秒間)振動させるか、もしくは撹拌
した。
最後の成分を添加後、さらに1時間放置した。
【0096】
次の順でマイクロエマルジョン成分の合一添加を実施した:
a)装入物B2;B3、C、E、A3添加。
【0097】
b)
装入物
B2
;
B3
、
E
、
A3
、
C
添加。
【0098】c)装入物C;E、B2、B3、A3添加。
【0099】a)およびc)の場合には、水のように透明な、b)の場合には透明なマイクロエマルジョンが得られた。マイクロエマルジョンは3ヵ月を上回って貯蔵安定性であった。」
(1)甲1に記載された発明
ア 甲1組成物発明
甲1には、摘記1a、1d及び1eの記載、特に、摘記1eの例3、4、6及び7の記載からみて、次のO/Wエマルジョンに関する発明(以下「甲1組成物発明1」~「甲1組成物発明3」という。)が記載されていると認められる。
≪甲1組成物発明1≫
「以下の組成からなる非イオン性O/WエマルジョンI。
次の特性を有するアミノシロキサンC: 170部
60
151
0001433055000012.jpg
乳化剤 Genapol(登録商標)X60 60部
(Hoechst AG社の6個のエチレンオキシド単位を
有するイソトリデシルアルコールポリグリコールエーテル)
酢酸 3.8部
水 766部」
≪甲1組成物発明2≫
「以下の組成からなる非イオン性O/WエマルジョンJ。
次の特性を有するアミノシロキサンD: 170部
59
151
0001433055000013.jpg
乳化剤 Genapol(登録商標)X60 60部
(Hoechst AG社の6個のエチレンオキシド単位を
有するイソトリデシルアルコールポリグリコールエーテル)
酢酸 1.9部
水 768部」
≪甲1組成物発明3≫
「以下の組成からなる非イオン性O/WエマルジョンL。
次の特性を有するアミノシロキサンF: 170部
58
151
0001433055000014.jpg
乳化剤 Genapol(登録商標)X60 60部
(Hoechst AG社の6個のエチレンオキシド単位を
有するイソトリデシルアルコールポリグリコールエーテル)
酢酸 2.5部
水 767.5部」
イ 甲1方法発明
摘記1eの【0083】~【0086】「
例 7
」には、
「アミノシロキサンC~F及び比較として用いられる、本発明に依らない、次の構造:・・・を有するアミノ官能性シリコーン油G及びHの、次の標準処方に依る、非イオン性O/W-エマルジョンの製造:アミノ官能性シリコーン油を、必要量の乳化剤 Genapol(登録商標)X060(Hoechst AG社の6個のエチレンオキシド単位を有するイソトリデシルアルコールポリグリコールエーテル)と混合させ、かつ酢酸の添加後に、高速回転混合機を用いて、水を少量ずつ加えながら、乳濁させる。次の第I表は、エマルジョン組成及びその特徴を示す。」
との記載に続いて、エマルジョンI、J、K+K′、L、M、Nの組成を示した表(【表7】)が記載されているので、上記エマルジョンI、J及びLは、上記「非イオン性O/W-エマルジョンの製造」に記載のとおりの製造方法により製造されたものと認められる。なお、摘記1a~1eの記載全体からみて、甲1において「アミノ官能性オルガノポリシロキサン」、「アミノ官能性ポリシロキサン」、「アミノシロキサン」及び「アミノ官能性シリコーン油」と表記されているものは、いずれも同義と認められる。
そうすると、甲1には、上記甲1組成物発明1~3のエマルジョンの製造方法として、次の製造方法の発明(以下「甲1方法発明」という。)も記載されていると認められる。
≪甲1方法発明≫
「次の特性を有するアミノシロキサンC:
60
151
0001433055000015.jpg
、次の特性を有するアミノシロキサンD:
59
151
0001433055000016.jpg
、又は、次の特性を有するアミノシロキサンF:
58
151
0001433055000017.jpg
を、乳化剤 Genapol(登録商標)X060(Hoechst AG社の6個のエチレンオキシド単位を有するイソトリデシルアルコールポリグリコールエーテル)と混合させ、かつ酢酸の添加後に、高速回転混合機を用いて、水を少量ずつ加えながら、乳濁させる、甲1組成物発明1の非イオン性O/WエマルジョンI、甲1組成物発明2の非イオン性O/WエマルジョンJ、又は、甲1組成物発明3の非イオン性O/WエマルジョンLの製造方法。」
(2)本件訂正発明3について
ア 対比
本件訂正発明3と甲1方法発明を対比する。
甲1方法発明における「酢酸」は、本件訂正発明3における「酢酸を含む変色抑制剤」と、「酢酸」を含むものである点で共通する。
甲1方法発明における「アミノシロキサンC」、「アミノシロキサンD」及び「アミノシロキサンF」は、それらの構造式からみて、いずれも本件訂正発明3における「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含むアミノ変性シリコーン」と、「アミノ変性シリコーン」である点で共通する。
甲1方法発明における「乳化剤 Genapol(登録商標)X060(Hoechst AG社の6個のエチレンオキシド単位を有するイソトリデシルアルコールポリグリコールエーテル)」は、本件訂正発明3における「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む界面活性剤」と、「界面活性剤」である点で共通する。
甲1方法発明における「甲1組成物発明1の非イオン性O/WエマルジョンI」、「甲1組成物発明2の非イオン性O/WエマルジョンJ」及び「甲1組成物発明3の非イオン性O/WエマルジョンL」は、いずれも本件訂正発明3における「水中油型エマルジョン組成物」に相当する。
甲1方法発明における、「アミノシロキサンC」、「アミノシロキサンD」又は「アミノシロキサンF」を、「乳化剤 Genapol(登録商標)X060(Hoechst AG社の6個のエチレンオキシド単位を有するイソトリデシルアルコールポリグリコールエーテル)」と「混合」させ、かつ「酢酸」の「添加」後に、「高速回転混合機を用いて、水を少量ずつ加えながら、乳濁させる」という工程のうち、水を加えるまでの段階は、アミノシロキサンC、D又はFと、乳化剤 Genapol(登録商標)X060と、酢酸を、高速回転混合機で混合するものであるから、本件訂正発明3における、「酢酸」と、「界面活性剤」と、「アミノ変性シリコーン」とを「混合」する「第一ステップ」に相当する。
甲1方法発明における上記工程のうち、水を少量ずつ加えながら「乳濁させる」段階は、それによりO/Wエマルジョンを得ているといえるから、本件訂正発明3における「前記第一ステップで得られる混合物」に「水を加えて分散」させ、「水中油型エマルジョン組成物」を得る「第二ステップ」に相当する。
甲1方法発明において、得られる非イオン性O/Wエマルジョンは、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物ではない。
そうすると、本件訂正発明3と甲1方法発明とは、
「酢酸と、界面活性剤と、アミノ変性シリコーンとを混合する第一ステップと、
前記第一ステップで得られる混合物に水を加えて分散させ、水中油型エマルジョン組成物を得る第二ステップと、
を含む、
水中油型エマルジョン組成物(但し、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物は除く)の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1-1>
本件訂正発明3では、酢酸が「変色抑制剤」の成分として混合されているのに対し、甲1方法発明では、そのような特定をしていない点
<相違点1-2>
本件訂正発明3では、「前記酢酸が、前記アミノ変性シリコーンのアミノ基に対して配位し、中和することにより、前記アミノ基の酸化が抑制され」るとしているのに対し、甲1方法発明では、そのような特定をしていない点
<相違点1-3>
水中油型エマルジョン組成物について、本件訂正発明3では、「変色が抑制された」としているのに対し、甲1方法発明では、そのような特定をしていない点
<相違点1-4>
界面活性剤について、本件訂正発明3では、「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテル」を含むのに対し、甲1方法発明では、「Genapol(登録商標)X060(Hoechst AG社の6個のエチレンオキシド単位を有するイソトリデシルアルコールポリグリコールエーテル)」(以下「GenapolX060」と略称することがある。)を含む点
<相違点1-5>
アミノ変性シリコーンが、本件訂正発明3では「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサン」を含むのに対し、甲1方法発明では下記の構造の基を有するアミノシロキサンである点。
「
30
48
0001433055000018.jpg
」
イ 相違点の判断
(ア)新規性について
事案に鑑み、相違点1-5について検討する。
相違点1-5に係るアミノ変性シリコーンのアミノ変性に対応する置換基の構造は、本件訂正発明3における「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサン」では、構造式で示すと、
「
-(CH
2
)
3
NHCH
2
CH
2
NH
2
」
であるところ、甲1方法発明におけるアミノシロキサンでは、
「
30
48
0001433055000019.jpg
」
であって、末端のアミノ基における2つのエチル基による置換の有無という点で、両者は明らかに相違するものであるから、相違点1-5は実質的な相違点である。
したがって、相違点1-1~相違点1-4について検討するまでもなく、本件訂正発明3は甲1に記載された発明であるとはいえない。
(イ)進歩性について
甲1の請求項1(摘記1a)には、アミノ官能性オルガノポリシロキサンについて、
「少なくとも1種の、
一般式(I)
:
【化1】
25
151
0001433055000020.jpg
のシロキサン単位
及び場合により、一般式(II):
【化2】
25
151
0001433055000021.jpg
のシロキサン単位[式中、R
1
は、同一又は異なる、一価の非置換の又は弗素原子、塩素原子又は臭素原子でより置換されたC
1
~C
18
-炭化水素、水素原子、C
1
~C
12
-アルコキシ-又はヒドロキシ基又はアルキルグリコール基を表わし、
Q
は、
一般式(III):
-R
2
-NR
3
(CH
2
)
m
NR
4
R
5
(III)
の基
を表わし、ここで、
R
2
は、
二価のC
1
~C
18
-炭化水素
を表わし、R
3
は、
水素原子
又は非置換の又は弗素原子、塩素原子又は臭素原子で置換されたC
1
~C
10
-アルキル基を表わし、
R
4
は、
水素原子
又は非置換の又は弗素原子、塩素原子又は臭素原子で置換された
C
1
~C
10
-アルキル基
を表わし、
R
5
は、非置換の又は弗素原子、塩素原子又は臭素原子で置換された
C
1
~C
10
-アルキル基
を表わし、・・・]から構成されている
アミノ官能性オルガノポリシロキサン
。」
であること、
すなわち末端のアミノ基に結合するR
5
が
、
非置換の又は弗素原子、塩素原子又は臭素原子で置換されたC
1
~C
10
-アルキル基であることが特定されており
、
その選択肢に水素原子は含まれていない
。
そして、同【0002】~【0007】(摘記1b)の、
「アミノ基を有するオルガノポリシロキサンは、・・・、織物仕上剤として使用されている。・・・。
今までに
、
アミノ官能基
:
-(CH
2
)
3
NHCH
2
CH
2
NH
2
を有するオルガノポリシロキサンが有利に使用されている
。
・・・。しかしながら、
前記のアミノ官能基は、熱黄変化、高められた温度によって促進される強い変色化傾向を示す
。
・・・
本発明は
、・・・、安定なエマルジョンに加工可能な、
アミノ官能性オルガノポリシロキサン
を製造することを課題とし、その際、処理された繊維及び繊維材料は、・・・、
僅かな黄変化傾向だけを示す
。」
との記載からみて、甲1の請求項1に記載のアミノ官能性オルガノポリシロキサンは、織物仕上剤として従来の「-(CH
2
)
3
NHCH
2
CH
2
NH
2
」すなわち「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基」を有するオルガノポリシロキサンで処理した際に生じる繊維及び繊維材料の変色化傾向を改善するものであると解される。
そうすると、甲1方法発明における、アミノシロキサンC、D及びFを、その特徴点であるアミノ官能基:
「
30
48
0001433055000022.jpg
」
の構造部分を敢えて変更して、繊維及び繊維材料の強い変色化傾向を示すとされる従来のアミノ官能基:
「-(CH
2
)
3
NHCH
2
CH
2
NH
2
」
すなわち、
「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基」
を含有するジメチルポリシロキサンとすること、すなわち、相違点1-5に係る構成を採用することは、阻害要因があり、当業者が容易になし得たことであるとはいえないし、甲3及び甲4の記載事項を含めた本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、甲1方法発明において、相違点1-5に係る構成を採用することを動機付けるような根拠は見いだせない。
(ウ)まとめ
したがって、相違点1-1~相違点1-4について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明、甲1、3~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人の主張の概要
申立人は、令和7年7月24日付けの意見書(以下「申立人意見書」という。)において、甲1を主引例とする本件訂正発明3の新規性又は進歩性の欠如に関連して、概略、以下のa~cの主張をしている。
主張a
甲1の例8において、甲1方法発明によって得られた組成物を用いて織物仕上げをし、黄変化を評価しているが、評価対象が「繊維」であって、「エマルジョン」ではないから、甲1組成物発明1~3に使用されている界面活性剤が、エマルジョンの黄変化を抑制していない、と断定することはできない。
(申立人意見書の3頁14~20行)
主張b
本件訂正発明3においては、訂正事項1及び2により特定されたもの以外の他のアミノ変性シリコーンや界面活性剤も含んでよいと解されるところ、その場合の効果が本件明細書において実証されていない。
(申立人意見書の4頁「(ア-2)」の項)
主張c
(a)「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含むアミノ変性シリコーン」及び「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む界面活性剤」を、どの程度使用すれば、エマルジョンの色調が経時変化しない、という作用効果を奏するのか、本件明細書においてその使用量が記載されておらず、特許法第36条第4項第1号の規定に違反する。
(b)特許請求の範囲には、「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含むアミノ変性シリコーン」及び「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む界面活性剤」の必要な使用量の記載がなく、使用量が少なすぎる場合は効果を奏しないであろうから、発明でないものを含み、発明が不明瞭であり、特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。
(c)「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含むアミノ変性シリコーン」及び「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む界面活性剤」を用いた例と、甲1方法発明や甲1組成物発明1~3のアミノシロキサン及び界面活性剤を用いた例を、例えば貯蔵の温度や期間などを揃えて、エマルジョンの色調の経時変化を対比した実験結果は示されていないので、進歩性を肯定するような顕著な効果の差異を見出すことができない。
(申立人意見書の第4~5頁「(ア-3)」の項)
(イ)当審合議体の判断
申立人の上記主張a~cは、いずれも採用できない。その理由は以下のとおりである。
a 主張aについて
上記イ(イ)において詳述したとおり、甲1方法発明における、アミノシロキサンC、D及びFを、「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサン」に変更すること、すなわち、相違点1-5に係る構成を採用することは、阻害要因があり、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、当業者が容易になし得たことであるとはいえないから、本件訂正発明3は、甲1に記載された発明、甲1、3~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
甲1においては、製造されるアミノ官能性オルガノポリシロキサンの水性エマルジョン自体の経時的な変色について着目しておらず、甲1方法発明により得られた非イオン性O/WエマルジョンI、J及びLの経時的な変色が抑制されるか否かは不明であるが、そのことは、上記の阻害要因が存在すること等とは関係がなく、相違点1-5に係る構成を採用することを当業者が容易になし得たとはいえないという判断を左右するものではない。
b 主張bについて
甲1方法発明において、相違点1-5に係る構成を採用することは、阻害要因があり、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、当業者が容易になし得たとはいえないことは、上記イ(イ)において詳述したとおりであり、本件訂正発明3において、「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサン」以外のアミノ変性シリコーン、及び、「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテル」以外の界面活性剤が含まれることは、上記の阻害要因が存在すること等とは関係がなく、相違点1-5に係る構成を採用することを当業者が容易になし得たとはいえないという判断を左右するものではない。
c 主張c(a)及び(b)について
本件特許が、特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるという主張は、申立書において本件特許を取り消すべき理由として記載されていたものではないし、本件訂正によって新たに生じた本件特許を取り消すべき理由であるとも解されないので、申立人の主張は採用できない。
d 主張c(c)について
甲1方法発明において、相違点1-5に係る構成を採用することは、阻害要因があり、本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、当業者が容易になし得たとはいえないことは、上記イ(イ)で詳述したとおりであり、申立人が主張する、例えば貯蔵の温度や期間などを揃えた、エマルジョンの色調経時変化を対比した実験結果が示されていないことは、上記の阻害要因が存在すること等とは関係がなく、相違点1-5に係る構成を採用することを当業者が容易になし得たとはいえないという判断を左右するものではない。
エ 小括
以上のとおり、本件訂正発明3は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明、甲1、3~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件訂正発明4について
ア 甲1組成物発明1との対比・判断
(ア)対比
本件訂正発明4と甲1組成物発明1を対比する。
甲1組成物発明1における「アミノシロキサンC」は、その構造式からみて、本件訂正発明4における「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含むアミノ変性シリコーン」と、「(A)アミノ変性シリコーン」である点で共通する。
甲1組成物発明1における「酢酸」は、本件訂正発明4における「(B)酢酸を含む変色抑制剤」と、「酢酸」を含むものである点で共通する。
甲1組成物発明1における「水」は、本件訂正発明4における「(C)水」に相当する。
甲1組成物発明1における「乳化剤 Genapol(登録商標)X060(Hoechst AG社の6個のエチレンオキシド単位を有するイソトリデシルアルコールポリグリコールエーテル)」は、本件訂正発明4における「(D)エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む界面活性剤」と、「界面活性剤」である点で共通する。
甲1組成物発明1における「非イオン性O/WエマルジョンI」は、本件訂正発明4における「水中油型エマルジョン組成物」に相当する。
また、甲1組成物発明1の非イオン性O/Wエマルジョンは、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物ではない。
そうすると、本件訂正発明4と甲1組成物発明1とは、
「(A)アミノ変性シリコーンと、(B)酢酸と、(C)水と、(D)界面活性剤と、を含む、水中油型エマルジョン組成物(但し、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物は除く)。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1-6>
本件訂正発明4では、酢酸が「変色抑制剤」の成分として含まれているのに対し、甲1組成物発明1では、そのような特定をしていない点
<相違点1-7>
水中油型エマルジョン組成物について、本件訂正発明4では、「前記酢酸が、前記アミノ変性シリコーンのアミノ基に対して配位し、中和することにより、前記アミノ基の酸化が抑制され」るとしているのに対し、甲1組成物発明1では、そのような特定をしていない点
<相違点1-8>
水中油型エマルジョン組成物について、本件訂正発明4では、「変色が抑制された」としているのに対し、甲1組成物発明1では、そのような特定をしていない点
<相違点1-9>
本件訂正発明4では、「変色抑制剤の含有量は、前記水中油型エマルジョン組成物に含まれるアミノ変性シリコーンに対する中和率が30%以上となる量である」としているのに対し、甲1組成物発明1では、そのような特定をしていない点
<相違点1-10>
界面活性剤について、本件訂正発明4では、「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテル」を含むのに対し、甲1組成物発明1では、「Genapol(登録商標)X060(Hoechst AG社の6個のエチレンオキシド単位を有するイソトリデシルアルコールポリグリコールエーテル)」を含む点
<相違点1-11>
アミノ変性シリコーンが、本件訂正発明4では「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサン」を含むのに対し、甲1組成物発明1では下記の構造の基を有するアミノシロキサンである点。
「
30
48
0001433055000023.jpg
」
(イ)相違点の判断
事案に鑑み、相違点1-11について検討する。
相違点1-11は、上記(2)アで認定した相違点1-5と実質的に同じことであるから、上記(2)イで述べたのと同様の理由により、相違点1-11は、実質的な相違点であり、また、相違点1-11に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるともいえない。
(ウ)まとめ
したがって、甲1組成物発明1との対比・判断において、相違点1-6~相違点1-10について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲1に記載された発明であるとはいえず、甲1に記載された発明、甲1、3~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲1組成物発明2及び3との対比・判断
甲1組成物発明2及び甲1組成物発明3は、甲1組成物発明1において、アミノシロキサンCを、それぞれアミノシロキサンD及びアミノシロキサンFに変更し、また、酢酸及び水の含有量を変更した点においてのみ、甲1組成物発明1と異なる組成物である。
したがって、甲1組成物発明2及び3に基づいても、上記アで述べたのと同様の理由により、本件訂正発明4は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明、甲1、3~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
本件訂正発明4についての、申立人意見書における申立人の主張は、上記(2)ウ(ア)の主張a~cと実質的に同じであると認められる。
そして、上記(2)ウ(イ)で説示したのと同様の理由により、申立人の主張は、いずれも採用できない。
エ 小括
以上のとおり、本件訂正発明4は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明、甲1、3~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)甲1を主引用例とした場合についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正発明3及び4は、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明、甲1、3~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項3及び4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定及び特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
よって、先の取消理由通知の取消理由1-1は解消しており、決定予告の取消理由1-2及び先の取消理由通知の取消理由1-2も解消している。
(1)甲2に記載された発明
ア 甲2組成物発明
甲2には、摘記2a、2c及び2fの記載、特に、摘記2fの例1、2及び4の記載からみて、次の水中油型エマルジョンに関する発明(以下「甲2組成物発明1」、「甲2組成物発明2」及び「甲2組成物発明4」という。)が記載されていると認められる。
≪甲2組成物発明1≫
「次のものからなる水中油型マイクロエマルジョン。
アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1: 30重量部
ジメチルシロキシ-メチル(N-[2-アミノエチル]-
3-アミノプロピル)シロキシ単位とメトキシジメチル
シリル末端基とからなるオルガノポリシロキサン;
粘度:25°Cで1200mPa.s;アミン値:0.6
乳化剤B1: 10重量部
平均で酸化エチレン単位8個を有するイソトリデシル
エトキシレート
乳化剤B3: 15重量部
酸化エチレン単位2個を有するn-ブチルエトキシレート
水(C) 45重量部
および
氷酢酸(E) 0.57重量部」
≪甲2組成物発明2≫
「次のものからなる水中油型マイクロエマルジョン。
アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1: 15重量部
ジメチルシロキシ-メチル(N-[2-アミノエチル]-
3-アミノプロピル)シロキシ単位とメトキシジメチル
シリル末端基とからなるオルガノポリシロキサン;
粘度:25°Cで1200mPa.s;アミン値:0.6
乳化剤B3: 5重量部
酸化エチレン単位2個を有するn-ブチルエトキシレート
乳化剤B4(水中に50%で): 30重量部
1.35のグリコシド化度を有する(水中に50%の)
C
8
/C
11
-アルキルポリグリコシド
水(C) 50重量部
および
氷酢酸(E) 0.28重量部」
≪甲2組成物発明4≫
「次のものからなる水中油型マイクロエマルジョン。
アミノ官能性オルガノポリシロキサンA3: 15重量部
ジメチルシロキシ-メチル(N-[2-アミノエチル]-
3-アミノプロピル)シロキシ単位とメトキシジメチル
シリル末端基とからなるオルガノポリシロキサン;
粘度:25°Cで6500mPa.s;アミン値:0.13
乳化剤B2: 15重量部
平均で酸化エチレン単位6個を有するイソトリデシル
エトキシレート
乳化剤B3: 5重量部
平均で酸化エチレン単位6個を有するイソトリデシル
エトキシレート
水(C) 65重量部
および
氷酢酸(E) 0.07重量部」
イ 甲2方法発明
甲2の摘記2fの例1、2及び4には、それぞれ、上記アで認定した甲2組成物発明1、2及び4の水中油型マイクロエマルジョンの製造について、概略、次のように記載されている。
例1(摘記2f【0072】~【0082】)には、甲2組成物発明1の水中油型マイクロエマルジョンを製造したことが記載されており、その5つの成分、即ち、
・アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1(「A1」)、
・乳化剤B1(「B1」)、
・乳化剤B3(「B3」)、
・水(C)(「C」)、及び、
・氷酢酸(E)(「E」)
の添加の順序が異なるa)~h)の8つの態様が記載され、成分1、即ち、最初の成分を、予め装入した後、他の成分を引き続き連続して添加し、それぞれの成分の添加後に、短時間(約15秒間)振動又は撹拌し、最後の成分を添加後、さらに30分間放置したことが記載されており、上記8つの態様のうち、水(C)(「C」)を最後の成分として添加するものとして、次のb)、c)、e)及びf)の4つの態様が記載されている。
・b) 装入物、即ち、最初の成分がB1;続いて添加する成分が、順に、B3、E、A1、C
・c) 装入物、即ち、最初の成分がE;続いて添加する成分が、順に、A1、B1、B3、C
・e) 装入物、即ち、最初の成分がB3;続いて添加する成分が、順に、B1、A1、E、C
・f) 装入物、即ち、最初の成分がA1;続いて添加する成分が、順に、E、B1、B3、C
同様に、例2(摘記2f【0082】~【0087】)には、甲2組成物発明2の水中油型マイクロエマルジョンを製造したことが記載されており、その5つの成分、即ち、
・アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1(「A1」)、
・乳化剤B3(「B3」)、
・乳化剤B4(「B4」)、
・水(C)(「C」)、及び、
・氷酢酸(E)(「E」)
の添加の順序が異なるa)~c)の3つの態様が記載され、成分1、即ち、最初の成分を、予め装入した後、他の成分を引き続き連続して添加し、それぞれの成分の添加後に、短時間(約15秒間)振動又は撹拌し、最後の成分を添加後、さらに1時間放置したことが記載され、上記3つの態様のうち、水(C)(「C」)を最後の成分として添加するものとして、次のb)の態様が記載されている。
・b) 装入物、即ち、最初の成分がB3;続いて添加する成分が、順に、B4、E、A1、C
そして、例4(摘記2f【0094】~【0099】)には、甲2組成物発明4の水中油型マイクロエマルジョンを製造したことが記載されており、その5つの成分、即ち、
・アミノ官能性オルガノポリシロキサンA3(「A3」)、
・乳化剤B2(「B2」)、
・乳化剤B3(「B3」)、
・水(C)(「C」)、及び、
・氷酢酸(E)(「E」)
の添加の順序が異なるa)~c)の3つの態様が記載され、成分1、即ち、最初成分を、予め装入した後、他の成分を引き続き連続して添加し、それぞれの成分の添加後に、短時間(約15秒間)振動又は撹拌し、最後の成分を添加後、さらに1時間放置したことが記載され、上記3つの態様のうち、水(C)(「C」)を最後の成分として添加するものとして、次のb)の態様が記載されている。
・b) 装入物、即ち、最初の成分がB2;続いて添加する成分が、順に、B3、E、A3、C
そうすると、甲2には、甲2組成物発明1、2及び4の水中油型マイクロエマルジョンの製造方法として、次の製造方法の発明(以下「甲2方法発明1-1」~「甲2方法発明1-4」、「甲2方法発明2」及び「甲2方法発明4」)も記載されていると認められる。
≪甲2方法発明1-1≫
「次のものからなる水中油型マイクロエマルジョンの製造方法であって、
アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1: 30重量部
ジメチルシロキシ-メチル(N-[2-アミノエチル]-
3-アミノプロピル)シロキシ単位とメトキシジメチル
シリル末端基とからなるオルガノポリシロキサン;
粘度:25°Cで1200mPa.s;アミン値:0.6
乳化剤B1: 10重量部
平均で酸化エチレン単位8個を有するイソトリデシル
エトキシレート
乳化剤B3: 15重量部
酸化エチレン単位2個を有するn-ブチルエトキシレート
水(C) 45重量部
および
氷酢酸(E) 0.57重量部
乳化剤B1を予め装入した後、他の成分を、乳化剤B3、氷酢酸(E)、アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1、水(C)の順に引続き連続して添加し、それぞれ成分の添加後、短時間(約15秒間)振動又は撹拌し、最後に水(C)を添加後、さらに30分間放置する、方法。」
≪甲2方法発明1-2≫
「次のものからなる水中油型マイクロエマルジョンの製造方法であって、
アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1: 30重量部
ジメチルシロキシ-メチル(N-[2-アミノエチル]-
3-アミノプロピル)シロキシ単位とメトキシジメチル
シリル末端基とからなるオルガノポリシロキサン;
粘度:25°Cで1200mPa.s;アミン値:0.6
乳化剤B1: 10重量部
平均で酸化エチレン単位8個を有するイソトリデシル
エトキシレート
乳化剤B3: 15重量部
酸化エチレン単位2個を有するn-ブチルエトキシレート
水(C) 45重量部
および
氷酢酸(E) 0.57重量部
氷酢酸(E)を予め装入した後、他の成分を、アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1、乳化剤B1、乳化剤B3、水(C)の順に引続き連続して添加し、それぞれ成分の添加後、短時間(約15秒間)振動又は撹拌し、最後に水(C)を添加後、さらに30分間放置する、方法。」
≪甲2方法発明1-3≫
「次のものからなる水中油型マイクロエマルジョンの製造方法であって、
アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1: 30重量部
ジメチルシロキシ-メチル(N-[2-アミノエチル]-
3-アミノプロピル)シロキシ単位とメトキシジメチル
シリル末端基とからなるオルガノポリシロキサン;
粘度:25°Cで1200mPa.s;アミン値:0.6
乳化剤B1: 10重量部
平均で酸化エチレン単位8個を有するイソトリデシル
エトキシレート
乳化剤B3: 15重量部
酸化エチレン単位2個を有するn-ブチルエトキシレート
水(C) 45重量部
および
氷酢酸(E) 0.57重量部
乳化剤B3を予め装入した後、他の成分を、乳化剤B1、アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1、氷酢酸(E)、水(C)の順に引続き連続して添加し、それぞれ成分の添加後、短時間(約15秒間)振動又は撹拌し、最後に水(C)を添加後、さらに30分間放置する、方法。」
≪甲2方法発明1-4≫
「次のものからなる水中油型マイクロエマルジョンの製造方法であって、
アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1: 30重量部
ジメチルシロキシ-メチル(N-[2-アミノエチル]-
3-アミノプロピル)シロキシ単位とメトキシジメチル
シリル末端基とからなるオルガノポリシロキサン;
粘度:25°Cで1200mPa.s;アミン値:0.6
乳化剤B1: 10重量部
平均で酸化エチレン単位8個を有するイソトリデシル
エトキシレート
乳化剤B3: 15重量部
酸化エチレン単位2個を有するn-ブチルエトキシレート
水(C) 45重量部
および
氷酢酸(E) 0.57重量部
アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1を予め装入した後、他の成分を、氷酢酸(E)、乳化剤B1、乳化剤B3、水(C)の順に引続き連続して添加し、それぞれ成分の添加後、短時間(約15秒間)振動又は撹拌し、最後に水(C)を添加後、さらに30分間放置する、方法。」
≪甲2方法発明2≫
「次のものからなる水中油型マイクロエマルジョンの製造方法であって、
アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1: 15重量部
ジメチルシロキシ-メチル(N-[2-アミノエチル]-
3-アミノプロピル)シロキシ単位とメトキシジメチル
シリル末端基とからなるオルガノポリシロキサン;
粘度:25°Cで1200mPa.s;アミン値:0.6
乳化剤B3: 5重量部
酸化エチレン単位2個を有するn-ブチルエトキシレート
乳化剤B4(水中に50%で): 30重量部
1.35のグリコシド化度を有する(水中に50%の)
C8/C11-アルキルポリグリコシド
水(C) 50重量部
および
氷酢酸(E) 0.28重量部
乳化剤B3を予め装入した後、他の成分を、乳化剤B4、氷酢酸(E)、アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1、水(C)の順に引続き連続して添加し、それぞれ成分の添加後、短時間(約15秒間)振動又は撹拌し、最後に水(C)を添加後、さらに1時間放置する、方法。」
≪甲2方法発明4≫
「次のものからなる水中油型マイクロエマルジョンの製造方法であって、
アミノ官能性オルガノポリシロキサンA3: 15重量部
ジメチルシロキシ-メチル(N-[2-アミノエチル]-
3-アミノプロピル)シロキシ単位とメトキシジメチル
シリル末端基とからなるオルガノポリシロキサン;
粘度:25°Cで6500mPa.s;アミン値:0.13
乳化剤B2: 15重量部
平均で酸化エチレン単位6個を有するイソトリデシル
エトキシレート
乳化剤B3: 5重量部
平均で酸化エチレン単位6個を有するイソトリデシル
エトキシレート
水(C) 65重量部
および
氷酢酸(E) 0.07重量部
乳化剤B2を予め装入した後、他の成分を、乳化剤B3、氷酢酸(E)、アミノ官能性オルガノポリシロキサンA3、水(C)の順に引続き連続して添加し、それぞれ成分の添加後、短時間(約15秒間)振動又は撹拌し、最後に水(C)を添加後、さらに1時間放置する、方法。」
(2)本件訂正発明3について
ア 甲2方法発明1-1との対比・判断
(ア)対比
本件訂正発明3と甲2方法発明1-1を対比する。
甲2方法発明1-1における「氷酢酸(E)」は、本件訂正発明3における「酢酸を含む変色抑制剤」と、「酢酸」を含むものである点で共通する。
甲2方法発明1-1における「アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1」は、
「
ジメチルシロキシ
-メチル
(N-[2-アミノエチル]-3-アミノプロピル
)シロキシ単位と、メトキシジメチルシリル末端基と、からなるオルガノ
ポリシロキサン
」であるから(甲2【0064】:摘記2f)、「N-[2-アミノエチル]-3-アミノプロピル」基を有するジメチルポリシロキサンであるといえるので、
本件訂正発明3における「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含むアミノ変性シリコーン」に相当する。
甲2方法発明1-1における「乳化剤B1」及び「乳化剤B3」は、いずれも本件訂正発明3における「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む界面活性剤」と、「界面活性剤」である点で共通する。
甲2方法発明1-1における「水中油型マイクロエマルジョン」は、本件訂正発明3における「水中油型エマルジョン組成物」に相当する。
甲2方法発明1-1における、「乳化剤B1を予め装入した後、他の成分を、乳化剤B3、氷酢酸(E)、アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1、水(C)の順に引続き連続して添加し、それぞれ成分の添加後、短時間(約15秒間)振動又は撹拌し、最後に水(C)を添加後、さらに30分間放置する」という一連の工程において、上記各成分は、それぞれ添加された直後に攪拌又は振動の混合処理が行われるものと認められるので、水(C)を添加するまでの段階は、本件訂正発明3における、「酢酸」と、「界面活性剤」と、「アミノ変性シリコーン」とを「混合」する「第一ステップ」に相当する。
また、甲2方法発明1-1における上記一連の工程のうち、水(C)の添加後の段階は、それにより水中油型マイクロエマルジョンを得ていることから、本件訂正発明3における「前記第一ステップで得られる混合物」に「水を加えて分散」させ、「水中油型エマルジョン組成物」を得る「第二ステップ」に相当する。
甲2方法発明1-1において、得られる水中油型マイクロエマルジョンは、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物ではない。
そうすると、本件訂正発明3と甲2方法発明1-1とは、
「酢酸と、界面活性剤と、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含むアミノ変性シリコーンとを混合する第一ステップと、
前記第一ステップで得られる混合物に水を加えて分散させ、水中油型エマルジョン組成物を得る第二ステップと、を含む、
水中油型エマルジョン組成物(但し、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物は除く)の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点2-1>
本件訂正発明3では、酢酸が「変色抑制剤」の成分として混合されているのに対し、甲2方法発明1-1では、そのような特定をしていない点
<相違点2-2>
本件訂正発明3では、「前記酢酸が、前記アミノ変性シリコーンのアミノ基に対して配位し、中和することにより、前記アミノ基の酸化が抑制され」るとしているのに対し、甲2方法発明1-1では、そのような特定をしていない点
<相違点2-3>
水中油型エマルジョン組成物について、本件訂正発明3では、「変色が抑制された」としているのに対し、甲2方法発明1-1では、そのような特定をしていない点
<相違点2-4>
界面活性剤について、本件訂正発明3では、「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテル」を含むのに対し、甲2方法発明1-1では、「乳化剤B1:平均で酸化エチレン単位8個を有するイソトリデシルエトキシレート」及び「乳化剤B3:酸化エチレン単位2個を有するn-ブチルエトキシレート」を含む点
(イ)相違点の判断
a 新規性について
事案に鑑み、相違点2-4について検討する。
界面活性剤について、本件訂正発明3における「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテル」と、甲2方法発明1-1における「乳化剤B1:平均で酸化エチレン単位8個を有するイソトリデシルエトキシレート」及び「乳化剤B3:酸化エチレン単位2個を有するn-ブチルエトキシレート」は、エチレンオキサイド付加数及びアルキル基の鎖長と分岐の有無の点で構造が異なるものであるから、相違点2-4は実質的な相違点である。
したがって、甲2方法発明1-1との対比・判断において、相違点2-1~相違点2-3について検討するまでもなく、本件訂正発明3は甲2に記載された発明であるとはいえない。
b 進歩性について
甲2には、
「【0032】
下記の乳化剤B
は、
本発明による方法の場合での使用に特に好適である
:
1.例えば・・・
・・・
【0036】
5
.
アルキルポリグリコールエーテル
、
有利にEO単位2~40個、およびC原子4~20個からなるアルキル基を有するもの
。
・・・
【0044】13.・・・」
との記載があるところ(摘記2d)、本件訂正発明3における界面活性剤に含まれることが特定された、「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテル」は、EO単位が13個であり、C原子16個からなる直鎖アルキル基であるセチル基を有する、アルキルポリグリコールエーテルに該当するから、甲2には、本件訂正発明3で特定する当該界面活性剤の成分を概念上包含し得るアルキルポリグリコールエーテルが、特に好適であるとされている複数のものの一つとして例示されているということは認められる。
しかしながら、本件明細書には、本件訂正発明3の具体例として記載されている実施例1~3の方法により製造された、アミノ変性シリコーンである「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサン」と、界面活性剤である「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテル」と、変色抑制剤としての「酢酸」を含む、水中油型エマルジョンは、経時的な変色が抑制されることが具体的な比較試験データにより裏付けられている。
これに対して、甲2は、オルガノポリシロキサン-マイクロエマルジョン自体の経時的な変色に着目したものではなく、甲2方法発明1-1によって得られた水中油型マイクロエマルジョンの経時的な変色が抑制されるか否かについては不明である。
そうすると、甲2の記載からは、甲2方法発明1-1において、経時的な変色が抑制されたマイクロエマルジョンを製造するという観点から、乳化剤として、「平均で酸化エチレン単位8個を有するイソトリデシルエトキシレート」又は「酸化エチレン単位2個を有するn-ブチルエトキシレート」に代えて、甲2において、特に好適であるとして例示されている複数のものの一つに概念上は包含し得るものが示されているとしても、具体的には記載されていない「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテル」という、甲2方法発明1-1における乳化剤B1及び乳化剤B3とは、エチレンオキサイド付加数及びアルキル基の鎖長と分岐の有無の点で構造が異なる、特定の構造を有する当該界面活性剤を敢えて選択して用いること、すなわち、相違点2-4に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
そして、甲3及び甲4の記載事項を含めた本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、甲2方法発明1-1において、相違点2-4に係る構成を採用することを動機付けるような根拠は見いだせない
(ウ)まとめ
したがって、甲2方法発明1-1との対比・判断において、相違点2-1~相違点2-3について検討するまでもなく、本件訂正発明3は、甲2に記載された発明であるとはいえず、甲2に記載された発明、甲2~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲2方法発明1-2、1-3、1-4、2及び4との対比・判断
甲2方法発明1-2、1-3及び1-4は、甲2方法発明1-1とは、水(C)以外の4つの成分を添加する順番を変更した点のみが異なる方法である。
甲2方法発明2は、甲2方法発明1-1とは、乳化剤としてB1に代えてB4を用いた点、各成分の添加量、並びに、氷酢酸(E)、アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1及び水(C)以外の成分を添加する順番を変更した点のみが異なる方法である。
甲2方法発明4は、甲2方法発明1-1とは、アミノ官能性オルガノポリシロキサンとしてA1に代えてA3を用い、乳化剤としてB1に代えてB2を用い、各成分の添加量、及び、水(C)以外の成分を添加する順番を変更した点のみが異なる方法である。
したがって、上記アで述べたのと同様の理由により、甲2方法発明1-2、1-3、1-4、2及び4に基づいても、本件訂正発明3は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明、甲2~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人の主張の概要
申立人は、申立人意見書において、甲2を主引例とする本件訂正発明3の新規性又は進歩性の欠如に関連して、概略、以下のa~cの主張をしている。
主張a
甲2方法発明1等及び甲2組成物発明1-1等と、本件訂正発明3及び4とで、アミノ変性シリコーンについての構造上の差異は不明である。
仮に相違するとしても、甲3の記載を参酌して、アミノ変性シリコーンの末端の構造を本件訂正発明3のものにすることは、当業者が通常試みることである。
(申立人意見書の6~10頁「(イ-1)」~「(イ-4)」の項)
主張b
本件訂正発明3においては、訂正事項1及び2により特定されたもの以外の他のアミノ変性シリコーンや界面活性剤も含んでよいと解されるところ、その場合の効果が本件明細書において実証されていない。
(申立人意見書の10頁「イ-5)」の項)
主張c
(a)「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含むアミノ変性シリコーン」及び「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む界面活性剤」を、どの程度使用すれば、エマルジョンの色調が経時変化しない、という作用効果を奏するのか、本件明細書においてその使用量が記載されておらず、特許法第36条4項1号の規定に違反する。
(b)特許請求の範囲には、「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含むアミノ変性シリコーン」及び「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む界面活性剤」の必要な使用量の記載がなく、使用量が少なすぎる場合は効果を奏しないであろうから、発明でないものを含み、発明が不明瞭であり、特許法第36条第6項第2号の規定に違反する。
(c)「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含むアミノ変性シリコーン」及び「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む界面活性剤」を用いた例と、甲2方法発明や甲2組成物発明のアミノ官能性オルガノポリシロキサン及び界面活性剤を用いた例を、例えば貯蔵の温度や期間などを揃えて、エマルジョンの色調の経時変化を対比した実験結果は示されていないので、進歩性を肯定するような顕著な効果の差異を見出すことができない。
(申立人意見書の10~11頁「(イ-6)」の項)
(イ)当審合議体の判断
申立人の上記主張a~cは、いずれも採用できない。その理由は以下のとおりである。
a 主張aについて
上記ア(ア)で認定したとおり、アミノ変性シリコーンについて、甲2方法発明1-1における「アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1」は、本件訂正発明3における「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含むアミノ変性シリコーン」に相当するものである。
この点については、甲2方法発明1-2、1-3、1-4、2及び4におおける、「アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1」及び「アミノ官能性オルガノポリシロキサンA3」も同様である。
b 主張bについて
甲2方法発明1-1において、界面活性剤に「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む界面活性剤」を含むものとするという、相違点2-4に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たとはいえないことは、上記ア(イ)bにおいて詳述したとおりであり、本件訂正発明3において、「N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサン」以外のアミノ変性シリコーン、及び、「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテル」以外の界面活性剤が含まれることは、相違点2-4に係る構成を採用することを当業者が容易になし得たとはいえないという判断を左右するものではない。
この点については、甲2方法発明1-2、1-3、1-4、2及び4も同様である。
c 主張c(a)及び(b)について
本件特許が、特許法第36条第4項第1号及び同法同条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるという主張については、申立書において本件特許を取り消すべき理由として記載されていたものではないし、本件訂正によって新たに生じた本件特許を取り消すべき理由であるとも解されないので、申立人の主張は採用できない。
d 主張c(c)について
甲2方法発明1-1において、相違点2-4に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たとはいえないことは、上記ア(イ)bで詳述したとおりであり、申立人が主張する、例えば貯蔵の温度や期間などを揃えた、エマルジョンの色調経時変化を対比した実験結果が示されていないことは、相違点2-4に係る構成を採用することを当業者が容易になし得たとはいえないという判断を左右するものではない。
この点については、甲2方法発明1-2、1-3、1-4、2及び4も同様である。
エ 小括
以上のとおり、本件訂正発明3は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明、甲2~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件訂正発明4について
ア 甲2組成物発明1との対比・判断
(ア)対比
本件訂正発明4と甲2組成物発明1を対比する。
甲2組成物発明1における「アミノ官能性オルガノポリシロキサンA1」は、上記(2)ア(ア)で認定したのと同様の理由により、本件訂正発明4における「(A)N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含むアミノ変性シリコーン」に相当する。
甲2組成物発明1における「氷酢酸(E)」は、本件訂正発明4における「(B)酢酸を含む変色抑制剤」と、「酢酸」を含むものである点で共通する。
甲2組成物発明1における「水(C)」は、本件訂正発明4における「(C)水」に相当する。
甲2組成物発明1における「乳化剤B1」及び「乳化剤B3」は、いずれも本件訂正発明4における「(D)エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテルを含む界面活性剤」と、「界面活性剤」である点で共通する。
甲2組成物発明1における「水中油型マイクロエマルジョン」は、本件訂正発明4における「水中油型エマルジョン組成物」に相当する。
また、甲2組成物発明1の水中油型マイクロエマルジョンは、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物ではない。
そうすると、本件訂正発明4と甲2組成物発明1とは、
「(A)N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基含有ジメチルポリシロキサンを含むアミノ変性シリコーンと、
(B)酢酸と、
(C)水と、
(D)界面活性剤と、を含む、水中油型エマルジョン組成物(但し、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物は除く)。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点2-5>
本件訂正発明4では、酢酸が「変色抑制剤」の成分として含まれているのに対し、甲2組成物発明1では、そのような特定をしていない点
<相違点2-6>
水中油型エマルジョン組成物について、本件訂正発明4では、「前記酢酸が、前記アミノ変性シリコーンのアミノ基に対して配位し、中和することにより、前記アミノ基の酸化が抑制され」るとしているのに対し、甲2組成物発明1では、そのような特定をしていない点
<相違点2-7>
水中油型エマルジョン組成物について、本件訂正発明4では、「変色が抑制された」としているのに対し、甲2組成物発明1では、そのような特定をしていない点
<相違点2-8>
本件訂正発明4では、「変色抑制剤の含有量は、前記水中油型エマルジョン組成物に含まれるアミノ変性シリコーンに対する中和率が30%以上となる量である」としているのに対し、甲2組成物発明1では、そのような特定がされていない点
<相違点2-9>
界面活性剤について、本件訂正発明4では、「エチレンオキサイド付加数が13モルであるポリオキシエチレンセチルエーテル」を含むのに対し、甲2組成物発明1では、「乳化剤B1:平均で酸化エチレン単位8個を有するイソトリデシルエトキシレート」及び「乳化剤B3:酸化エチレン単位2個を有するn-ブチルエトキシレート」を含む点
(イ)相違点の判断
事案に鑑み、相違点2-9について検討する。
相違点2-9は、上記(2)ア(ア)で認定した相違点2-4と実質的に同じことであるから、上記(2)ア(イ)で述べたのと同様の理由により、相違点2-9は、実質的な相違点であり、また、相違点2-9に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
(ウ)まとめ
したがって、甲2組成物発明1との対比・判断において、相違点2-5~2-8について検討するまでもなく、本件訂正発明4は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明、甲2~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 甲2組成物発明2及び4との対比・判断
甲2組成物発明2は、甲2組成物発明1とは、乳化剤としてB1に代えてB4を用い、各成分の添加量を変更した点でのみ、異なる組成物である。
甲2組成物発明4は、甲2組成物発明1とは、アミノ官能性オルガノポリシロキサンとしてA1に代えてA3を用い、乳化剤としてB1に代えてB2を用い、各成分の添加量を変更した点でのみ、異なる組成物である。
甲2組成物発明2における「乳化剤B4」及び甲2組成物発明4における「乳化剤B2」は、いずれも本件訂正発明4における「(D)界面活性剤」に相当し、甲2組成物発明4における「アミノ官能性オルガノポリシロキサンA3」(以下、便宜のため「ポリシロキサンA3」と略記する。)は、その構造からみて、本件訂正発明4における「(A)アミノ変性シリコーン」に相当する。
したがって、甲2組成物発明2及び4に基づいても、上記アで述べたのと同様の理由により、本件訂正発明4は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明、甲2~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
本件訂正発明4についての、申立人意見書における申立人の主張は、上記(2)ウ(ア)の主張a~cと実質的に同じであると認められる。
そして、上記(2)ウ(イ)で説示したのと同様の理由により、申立人の主張は、いずれも採用できない。
エ 小括
以上のとおり、本件訂正発明4は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明、甲2~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)甲2を主引用例とした場合についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正発明3及び4は、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明、甲2~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項3及び4に係る特許は、特許法第29条第1項の規定及び特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
よって、先の取消理由通知の取消理由2-1は解消しており、決定予告の取消理由2-2及び先の取消理由通知の取消理由2-2も解消している。
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲1方法発明を対比する。
甲1方法発明における「酢酸の添加」は、本件訂正発明1における「酢酸を含む酸を添加する工程」に相当する。
甲1方法発明における「アミノシロキサンC」、「アミノシロキサンD」及び「アミノシロキサンF」は、それらの構造式からみて、いずれも本件訂正発明1における「アミノ変性シリコーン」に相当する。
よって、甲1方法発明における「甲1組成物発明1の非イオン性O/WエマルジョンI」、「甲1組成物発明2の非イオン性O/WエマルジョンJ」及び「甲1組成物発明3の非イオン性O/WエマルジョンL」は、いずれも本件訂正発明1における「アミノ変性シリコーンと水とを含む水中油型エマルジョン組成物」に相当する。
甲1方法発明において、得られる非イオン性O/Wエマルジョンは、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物ではない。
そうすると、本件訂正発明1と甲1方法発明とは、
「酢酸を含む酸を添加する工程を含む、
アミノ変性シリコーンと水とを含む水中油型エマルジョン組成物(但し、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物は除く)についての方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点1-12>
本件訂正発明1では、「酢酸」が「アミノ変性シリコーンのアミノ基に対して配位し、中和することにより、前記アミノ基の酸化が抑制される」のに対し、甲1方法発明では、そのような特定をしていない点
<相違点1-13>
本件訂正発明1では、「方法」が、「アミノ変性シリコーンと水とを含む水中油型エマルジョン組成物(但し、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物は除く)の変色を抑制する」ものであるのに対し、甲1方法発明では、そのような特定をしていない点
イ 相違点の判断
事案に鑑み、相違点1-13について検討する。
甲1方法発明においては、「方法」は、「アミノ変性シリコーンと水とを含む水中油型エマルジョン組成物(但し、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物は除く)の変色を抑制する」ためのものではないから、相違点1-13は実質的な相違点である。
また、甲1には、酢酸を添加する目的については記載されていないから、甲1方法発明を、アミノ変性シリコーンと水とを含む水中油型エマルジョン組成物の変色を抑制する方法とすることは、甲3及び甲4の記載事項を含めた本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、相違点1-12について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明、甲1、3~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1において、酢酸を含む酸の添加量を限定した発明であるから、上記(1)で述べたのと同様の理由により、甲1に記載された発明であるとはいえず、また、甲1に記載された発明、甲1、3~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立人の主張について
申立人は、本件特許発明3(本件訂正前の請求項3に係る発明)を実施すれば、酢酸が、アミノ変性シリコーンのアミノ基に対して配位し、中和することによりアミノ基の酸化が抑制することができ、さらには水中油型エマルジョンの着色を抑制できると解される旨を主張している。(申立書の59頁14行~最下行)
しかしながら、本件訂正発明1における「アミノ変性シリコーンと水とを含む水中油型エマルジョン組成物・・・の変色を抑制する」という特定は、方法の目的を特定したものであると解され、甲1方法発明が、その目的について特定していない以上、この点は実質的な相違点であるから、申立人の上記主張は採用できない。
また、申立人は、申立人意見書において、訂正事項1~4に対応する限定をしていない本件発明1及び本件発明2は、変色抑制の効果を欠くか、少なくとも不明である部分を含んでおり、その部分を取り除かない限り、発明でないものを含み、権利範囲が不明瞭であり、また、当業者は過度な試行錯誤を強いられ、実施することが困難であるから、特許法第36条第6項第2号及び同法同条第4項第1号の規定に違反する旨を主張している。(申立人意見書の15頁「(エ)」の項)
しかしながら、本件特許が、特許法第36条第6項第2号及び同法同条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるという主張については、申立書において本件特許を取り消すべき理由として記載されていたものではないし、本件訂正によって新たに生じた本件特許を取り消すべき理由であるとも解されないので、申立人の上記主張は採用できない。
(1)本件訂正発明1について
ア 対比
本件訂正発明1と甲2方法発明1-1を対比する。
甲2方法発明1-1における「氷酢酸(E)を予め装入した」ことは、本件訂正発明1における「酢酸を含む酸を添加する工程」に相当する。
甲2方法発明1-1における「アミノ官能性ポリガのポリシロキサンA1」は、その構造からみて、本件訂正発明1における「アミノ変性シリコーン」に相当する。
よって、甲2方法発明1-1における「水中油型マイクロエマルジョン」は、本件訂正発明1における「アミノ変性シリコーンと水とを含む水中油型エマルジョン組成物」に相当する。
甲2方法発明1-1において、得られる水中油型マイクロエマルジョンは、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物ではない。
そうすると、本件訂正発明1と甲2方法発明1-1とは、
「酢酸を含む酸を添加する工程を含む、
前記アミノ変性シリコーンと水とを含む水中油型エマルジョン組成物(但し、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物は除く)についての方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
<相違点2-10>
本件訂正発明1では、「酢酸」が「アミノ変性シリコーンのアミノ基に対して配位し、中和することにより、前記アミノ基の酸化が抑制される」のに対し、甲2方法発明1-1では、そのような特定をしていない点
<相違点2-11>
本件訂正発明1では、「方法」が、「アミノ変性シリコーンと水とを含む水中油型エマルジョン組成物(但し、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物は除く)の変色を抑制する」ものであるのに対し、甲2方法発明1-1では、そのような特定をしていない点
イ 相違点の判断
事案に鑑み、相違点2-11について検討する。
甲2方法発明1-1においては、「方法」は、「アミノ変性シリコーンと水とを含む水中油型エマルジョン組成物(但し、エポキシ基含有オルガノシラン及びアミノ基含有オルガノシランを含む水中油型エマルジョン組成物は除く)の変色を抑制する」ためのものではないから、上記相違点は実質的な相違点である。
また、甲2【0052】(摘記2e)には、酢酸を添加する目的について、「酸Eは所望のpH値を調節するため、または他の成分を用いて酸付加塩を形成するために使用される。」と記載されているが、この記載から、甲2方法発明エマルジョンの変色抑制をする方法とすることは、甲3及び甲4の記載事項を含めた本件特許の出願時の技術常識を考慮しても、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
ウ 小括
以上のとおり、甲2方法発明1-1との対比・判断において、相違点2-10について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲2に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明、甲2~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、甲2方法発明1-2~1-4、2及び4に基づく対比・判断も同様である。
(2)本件訂正発明2について
本件訂正発明2は、本件訂正発明1において、酢酸を含む酸の添加量を限定した発明であるから、上記(1)で述べたものと同様の理由により、甲2に記載された発明であるとはいえず、また、甲2に記載された発明、甲2~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立人の主張について
申立人は、本件特許発明3(本件訂正前の請求項3に係る発明)を実施すれば、酢酸が、アミノ変性シリコーンのアミノ基に対して配位し、中和することによりアミノ基の酸化が抑制することができ、さらには水中油型エマルジョンの着色を抑制できると解される旨主張している。(申立書の68頁1行~14行)
しかしながら、本件訂正発明1における「アミノ変性シリコーンと水とを含む水中油型エマルジョン組成物・・・の変色を抑制する」という特定は、方法の目的を特定したものであると解され、甲2方法発明1-1等が、その目的について特定していない以上、この点は実質的な相違点でないとはいえないから、申立人の上記主張は採用できない。
また、申立人は、申立人意見書において、上記1(3)で述べたのと同様の特許法第36条第6項第2号及び同法同条第4項第1号の規定に違反する旨の主張をしているが、上記1(3)で述べたのと同様の理由により、当該主張は採用できない。
以上のとおり、本件訂正発明1及び2は、甲1又は2に記載された発明であるとはいえず、また、甲1又は甲2に記載された発明、甲1~4に記載された技術的事項、及び、本件特許の出願時の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定及び特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえない。
以上のとおり、本件訂正請求は適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項3、4について訂正することを認める。
先の取消理由通知書及び/又は取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由及び証拠、並びに、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の訂正後の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件特許の訂正後の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
Next Action
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