sokuhyo

Trademark Appeal Case

特許訂正の要件判断

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2024701216
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7509581号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7509581号の請求項1、5~8に係る特許を維持する。
特許第7509581号の請求項2~4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許7509581第(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願(特願2020-96050号)は、令和2年6月2日に出願され、令和6年6月24日にその特許権の設定の登録がされ、令和6年7月2日に特許掲載公報が発行された。

その後、令和6年12月19日に、請求項1~8に係る特許に対し、特許異議申立人 林 法子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立て(以下「異議申立」という。また、申立人が証拠として提出した甲第1号証等を「甲1」等と略す。)がされた。

その後の手続等の経緯の概要は、以下のとおりである。

令和7年 5月16日付け:取消理由通知書

令和7年 7月18日 :訂正請求書の提出(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。)

令和7年 7月18日 :特許権者による意見書の提出

令和7年 9月 4日 :申立人による意見書の提出

第2 本件訂正請求について

1 請求の趣旨

本件訂正請求の趣旨は、特許第7509581号の明細書、および、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、および、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求める、というものである。

2 訂正の内容

本件訂正請求により特許権者が求める訂正の内容は、次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。なお、本件訂正は、一群の請求項である訂正後の請求項〔1~8〕についてなされたものである。また、下線は、訂正箇所を示す。

(1) 訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1の「粘着剤層と、厚みが50μm~200μmであり、23°Cにおける貯蔵弾性率が2×10

9

Pa以上であり、180°Cにおける貯蔵弾性率が2×10

8

Pa以上である基材と、を含む、半導体加工用粘着シートであって、」との記載を、

「粘着剤層と、

ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種の樹脂で構成され、

厚みが50μm~200μmであり、23°C

、周波数1Hz

における貯蔵弾性率が2×10

9

Pa

~1×10

10

Pa

であり、180°C

、周波数1Hz

における貯蔵弾性率が2×10

8

Pa

~×10

10

Pa

である基材と、を含む、半導体加工用粘着シートであって、

該半導体加工用粘着シートが、緩和層をさらに含み、

該緩和層が、(メタ)アクリル系ポリマーを架橋した架橋物を含み、

該(メタ)アクリル系ポリマーがモノマー成分として(メタ)アクリル酸を含まず、

」と訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7も同様に訂正する。)。

(2) 訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3) 訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3を削除する。

(4) 訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4を削除する。

(5) 訂正事項5

特許請求の範囲の請求項5の「請求項3または4に記載の半導体加工用粘着シート」との記載を、

「請求項

1

に記載の半導体加工用粘着シート」と訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~8も同様に訂正する。)。

(6) 訂正事項6

特許請求の範囲の請求項6の「請求項3から5のいずれかに記載の半導体加工用粘着シート」との記載を、

「請求項

1、または、5

に記載の半導体加工用粘着シート」と訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~8も同様に訂正する。)。

(7) 訂正事項7

特許請求の範囲の請求項7の「請求項1から6のいずれかに記載の半導体加工用粘着シート」との記載を、

「請求項

1、5、または、6

に記載の半導体加工用粘着シート」と訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。)。

(8) 訂正事項8

特許請求の範囲の請求項8の「請求項2から7のいずれかに記載の半導体加工用粘着シート」との記載を、

「請求項

1、5、6、または、7

に記載の半導体加工用粘着シート」と訂正する。

(9) 訂正事項9

願書に添付した明細書の段落【0075】の「測定条件は、周波数1Hz、昇温速度10°C/分とし、22°Cにおける貯蔵弾性率E’を各サンプルの貯蔵弾性率E’とした。」との記載を、

「測定条件は、周波数1Hz、昇温速度10°C/分とし、

23°C、および、180

°Cにおける貯蔵弾性率E’を各サンプルの貯蔵弾性率E’とした。」と訂正する。

3 訂正要件の判断

(1) 訂正事項1

ア 訂正の目的

(ア) 訂正事項1に係る請求項1の訂正は、「基材」について、

「ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種の樹脂で構成されるもの」に限定し、

「23°C」及び「180°C」における「貯蔵弾性率」が、それぞれ「2×10

9

Pa以上であり」及び「2×10

8

Pa以上」とされていたものを、それぞれ「2×10

9

Pa~1×10

10

Pa」及び「2×10

8

Pa~1×10

10

Pa」と上限値を有するものに限定し、

「半導体加工用粘着シート」について、

「緩和層をさらに含み」、「該緩和層が、(メタ)アクリル系ポリマーを架橋した架橋物を含み」、「該(メタ)アクリル系ポリマーがモノマー成分として(メタ)アクリル酸を含ま」ないものに限定するものである。

(イ) また、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、「23°Cにおける貯蔵弾性率」及び「180°における貯蔵弾性率」が、どのような周波数(Hz)におけるものなのかが明らかでなかったところ、「周波数1Hz」におけるものであることを明らかにするものである。

(ウ) してみると、訂正事項1に係る上記(ア)及び(イ)に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無

(ア) 本件特許明細書の段落【0018】には、「基材は、任意の適切な樹脂から構成され得る。基材層を構成する樹脂の具体例としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)、・・・略・・・ポリイミド、・・・略・・・ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。」、「好ましくは、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンが用いられる。これらの樹脂を用いることにより、加熱工程に供された場合であっても半導体ウエハを適切に支持し得る。また、加熱工程後に基材の収縮を抑制することができ、収縮応力の小さい基材を形成することができる。」、

同段落【0017】には、「基材は1層のみであってもよく、2以上の層であってもよい。基材が2以上の層である場合、基材同士を積層してもよく、・・・略・・・。基材が2以上の層である場合、半導体ウエハに含まれる全ての基材の合計厚みが上記基材の厚みとなるよう用いられる。」との記載がある。

そうすると、基材は、任意の適切な樹脂から構成され得ること、また、基材層を構成する樹脂として、好ましくは、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンが用いられることが理解できる。一方、基材が1種の樹脂のみからなることは明記されておらず、基材が2以上の層の積層で構成される場合、各層の樹脂が異なることが普通である。

してみると、「基材」を、「ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種の樹脂で構成されるもの」に限定する訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。

また、本件特許明細書の段落【0014】には、「基材の23°Cにおける貯蔵弾性率は、例えば、1×10

10

Pa以下である。」、段落【0015】には、「基材の180°Cにおける貯蔵弾性率は、例えば、1×10

10

Pa以下である。」との記載がある。

してみると、「基材」の「23°C」及び「180°C」における「貯蔵弾性率」の上限を限定する訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。

さらに、本件特許明細書の段落【0041】には、「半導体ウエハ加工用粘着シートは緩和層をさらに含む。」、段落【0042】には、「緩和層は好ましくは(メタ)アクリル系ポリマーを架橋した架橋物を含む。」、段落【0043】には、「(メタ)アクリル系ポリマーはモノマー成分として(メタ)アクリル酸を含まない。」との記載がある。

してみると、「半導体加工用粘着シート」について、「緩和層をさらに含み」、「該緩和層が、(メタ)アクリル系ポリマーを架橋した架橋物を含み」、「該(メタ)アクリル系ポリマーがモノマー成分として(メタ)アクリル酸を含まないもの」に限定する訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。

(イ) 本件特許明細書の段落【0075】には、「基材の貯蔵弾性率E’」について、測定条件は、周波数1Hz、昇温速度10°C/分とし」との記載がある。

してみると、「23°Cにおける貯蔵弾性率」及び「180°における貯蔵弾性率」について、「周波数1Hz」におけるものとする訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。

(ウ) したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記ア及びイに照らせば、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。

エ 請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7についても同様である。

オ 小括

以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、訂正要件を満たす。

(2) 訂正事項2~訂正事項4

ア 訂正の目的

訂正事項2~訂正事項4に係る訂正は、請求項2~請求項4を削除するというものであるから、訂正事項2~訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無

上記アに照らせば、訂正事項2~訂正事項4に係る訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。

したがって、訂正事項2~訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記ア及びイに照らせば、訂正事項2~訂正事項4に訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項2~訂正事項4に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。

エ 小括

以上のとおりであるから、訂正事項2~訂正事項4に係る訂正は、訂正要件を満たす。

(3) 訂正事項5

ア 訂正の目的

(ア) 訂正事項5に係る請求項5の訂正は、訂正前の請求項5においては、請求項3または4の記載を引用していたところ、訂正事項1に係る請求項1の訂正により、請求項1が訂正され、訂正事項2~訂正事項4に係る訂正により、請求項2~4が削除されたことに伴って、請求項1の記載を引用する記載とすることにより、訂正前の請求項4の記載を引用するものに限定すると共に、「基材」について、「ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種の樹脂で構成されるもの」、及び、「23°C」及び「180°C」における「貯蔵弾性率」が、それぞれ「2×10

9

Pa~1×10

10

Pa」及び「2×10

8

Pa~1×10

10

Pa」であるものに限定し、また、「23°Cにおける貯蔵弾性率」及び「180°における貯蔵弾性率」が「周波数1Hz」におけるものであることを明らかにするものである。

(イ) してみると、訂正事項5に係る請求項5の訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無

上記ア及び上記(1)イに照らせば、訂正事項5に係る請求項5の訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。

したがって、訂正事項5に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記ア及びイに照らせば、訂正事項5に係る請求項5の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項5に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。

エ 請求項5の記載を引用する請求項6~8についても同様である。

オ 小括

以上のとおりであるから、訂正事項5に係る訂正は、訂正要件を満たす。

(4) 訂正事項6

ア 訂正の目的

(ア) 訂正事項6に係る請求項6の訂正は、訂正前の請求項6においては、請求項3~5の記載を引用していたところ、訂正事項1に係る請求項1の訂正により、請求項1が訂正され、訂正事項2~訂正事項4に係る訂正により、請求項2~4が削除されたことに伴って、請求項1または請求項5の記載を引用することにより、訂正前の請求項4または請求項5の記載を引用するものに限定すると共に、「基材」について、「ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種の樹脂で構成されるもの」、及び、「23°C」及び「180°C」における「貯蔵弾性率」が、それぞれ「2×10

9

Pa~1×10

10

Pa」及び「2×10

8

Pa~1×10

10

Pa」であるものに限定し、「23°Cにおける貯蔵弾性率」及び「180°における貯蔵弾性率」が「周波数1Hz」におけるものであることを明らかにするものである。

(イ) してみると、訂正事項6に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無

上記ア及び上記(1)イに照らせば、訂正事項6に係る請求項6の訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。

したがって、訂正事項6に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記ア及びイに照らせば、訂正事項6に係る請求項6の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項6に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。

エ 請求項6の記載を引用する請求項7~8についても同様である。

オ 小括

以上のとおりであるから、訂正事項6に係る訂正は、訂正要件を満たす。

(5) 訂正事項7

ア 訂正の目的

(ア) 訂正事項7に係る請求項7の訂正は、訂正前の請求項7においては、請求項1~6の記載を引用していたところ、訂正事項2~訂正事項4に係る訂正により、請求項2~4が削除されたことに伴い、引用する請求項から削除された請求項2~4を除いて、請求項1、請求項5又は請求項6を引用する記載に改め、整合させるものである。

(イ) してみると、訂正事項7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無

上記アに照らせば、訂正事項7に係る請求項7の訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。

したがって、訂正事項7に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記ア及びイに照らせば、訂正事項7に係る請求項7の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項7に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。

エ 請求項7の記載を引用する請求項8についても同様である。

オ 小括

以上のとおりであるから、訂正事項7に係る訂正は、訂正要件を満たす。

(6) 訂正事項8

ア 訂正の目的

(ア) 訂正事項8に係る請求項8の訂正は、訂正前の請求項8においては、請求項2~7の記載を引用していたところ、訂正事項1に係る請求項1の訂正により、請求項1が訂正され、訂正事項2~訂正事項4に係る訂正により、請求項2~4が削除されたことに伴って、請求項1、請求項5、請求項6または請求項7の記載を引用することにより、訂正前の請求項4、請求項5~請求項7の記載を引用するものに限定すると共に、「基材」について、「ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種の樹脂で構成されるもの」、及び、「23°C」及び「180°C」における「貯蔵弾性率」が、それぞれ「2×10

9

Pa~1×10

10

Pa」及び「2×10

8

Pa~1×10

10

Pa」であるものに限定し、「23°Cにおける貯蔵弾性率」及び「180°における貯蔵弾性率」が「周波数1Hz」におけるものであることを明らかにするものである。

(イ) してみると、訂正事項8に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無

上記ア及び上記(1)イに照らせば、訂正事項8に係る請求項8の訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。

したがって、訂正事項8に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記ア及びイに照らせば、訂正事項8に係る請求項8の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

したがって、訂正事項8に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。

エ 小括

以上のとおりであるから、訂正事項8に係る訂正は、訂正要件を満たす。

(7) 訂正事項9

ア 訂正の目的

(ア) 訂正事項9に係る訂正は、訂正前の願書に添付した明細書の段落【0075】に記載されていた実施例及び比較例の基材の貯蔵弾性率を測定した際の温度条件を示す「22°C」との記載と、その測定結果を示す同段落【0086】【表2】中の「貯蔵弾性率23°C(Pa)」及び「貯蔵弾性率180°C(Pa)」との記載の間に生じていた不整合を正すことを目的とした訂正であるところ、上記【表2】及び特許請求の範囲の記載に照らせば、前者の記載(22°C)が後者の記載(23°C及び180°C)の誤記であることは当業者に自明である。したがって、上記不整合を正すことを目的とした訂正事項9に係る訂正は、誤記の訂正を目的としたものであることは明らかである。

(イ) してみると、訂正事項9による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。

イ 新規事項追加の有無

上記アに照らせば、訂正事項9に係る訂正によって、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項が導入されることはない。

したがって、訂正事項9に係る訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否

上記アで述べたとおり、訂正事項9に係る訂正は、明細書の誤記を特許請求の範囲の記載と整合させることを目的としたものであるから、この訂正が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことは明らかである。

したがって、訂正事項9に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。

エ 小括

以上のとおりであるから、訂正事項9に係る請求項9の訂正は、訂正要件を満たす。

(8) 明細書の訂正と一群の請求項との関係について

前記(1)~(6)のとおり、訂正事項9による明細書の訂正は、一群の請求項である請求項〔1~8〕の全てについて行うものである。

4 まとめ

本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

よって、特許第7509581号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。

第3 本件特許発明

本件訂正は、上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1、5~8に係る発明(以下、「本件特許発明1」、「本件特許発明5」~「本件特許発明8」という。これらを総称して「本件特許発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1、5~8に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】粘着剤層と、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種の樹脂で構成され、厚みが50μm~200μmであり、23°C、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が2×10

9

Pa~1×10

10

Paであり、180°C、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が2×10

8

Pa~1×10

10

Paである基材と、を含む、半導体加工用粘着シートであって、

該半導体加工用粘着シートが、緩和層をさらに含み、

該緩和層が、(メタ)アクリル系ポリマーを架橋した架橋物を含み、

該(メタ)アクリル系ポリマーがモノマー成分として(メタ)アクリル酸を含まず、

該半導体加工用粘着シートの外周リブウエハ加熱反り評価における反り量が0mm~5mmであり、かつ、外周リブウエハたわみ評価におけるたわみ量が0mm~5mmである、半導体加工用粘着シート。」

「【請求項5】

前記(メタ)アクリル系ポリマーが水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーを0.1モル%~8モル%含む、請求項1に記載の半導体加工用粘着シート。

【請求項6】

前記(メタ)アクリル系ポリマーが炭素数4以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを50モル%~99モル%含む、請求項1、または、5に記載の半導体加工用粘着シート。

【請求項7】

前記粘着剤層が紫外線硬化型粘着剤を含む、請求項1、5、または、6に記載の半導体加工用粘着シート。

【請求項8】

前記緩和層が紫外線硬化能を有さない、請求項1、5、6、または、7に記載の半導体加工用粘着シート。」

第4 取消理由の概要

本件訂正前の請求項1~8に係る特許に対して、令和7年5月16日付けで特許権者に通知した取消理由(以下、単に「取消理由」といい、この通知を「取消理由通知」という。)の要旨は、次のとおりである。

●取消理由1(新規性)

本件特許の請求項1、2、7、8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、本件特許の請求項1、2、7、8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

●取消理由2(進歩性)

本件特許の請求項1~8に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

●取消理由3(サポート要件)

本件特許の請求項1~8に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

●取消理由4(実施可能要件)

本件特許の請求項1、7~8に係る特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1、7~8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

●取消理由5(明確性要件)

本件特許の請求項1~8に係る発明は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件特許の請求項1~8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(引用文献等一覧参照)

甲1:特開2005―53998号公報

甲2:特開2015-218287号公報

甲3:特開2010-278297号公報

甲4:特開2012-33636号公報

甲5:特開平10-44293号公報

甲6:特開2012-69586号公報

甲7:特開2011-21193号公報

甲8:国際公開第2020/095828号

甲9:特開2018-203836号公報

甲10:特開2018-44132号公報

甲11:特開2004-323543号公報

甲12:特開2015-34302号公報

甲13:特開2016-164953号公報

(合議体注:甲1あるいは甲13が主引用例である。甲2~甲12は、技術常識を示す文献であるか、あるいは副引用例である。)

第5 当合議体の判断

1 甲1を主引用例とする取消理由2(進歩性)について

(1) 甲1の記載

甲1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、合議体が付したものであり、引用発明の認定の根拠となった記載等を示すためのものである。以下同様である。

ア 「【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】

本発明は再剥離型粘着シートに関する。また本発明は、再剥離型粘着シートを用いた半導体素子の製造方法、さらには当該製造方法により得られた半導体素子に関する。

本発明の再剥離型粘着シートは、ウエハ加工用粘着シートとして有用である。

・・・略・・・なお、

これら粘着シートは、ウエハの加工後に剥離される。

【0002】

【従来の技術】

半導体ウエハにはパターニングが施されているが、パターニングを施すまで(前工程)は、ハンドリングの点からウエハは一定の厚さを有している。一方、ウエハにパターニングを施した後(後工程)では、ウエハ裏面に機械研削を施し、ウエハを所定の厚さまで薄型化する工程、さらに薄型化したウエハを切断によりチップ化する工程が施される。一般に、かかる後工程におけるウエハ裏面の薄型化工程ではウエハのパターニング表面を保護することを目的として、また薄型化ウエハを切断する際には薄型化ウエハを固定し支持することを目的として、半導体ウエハには粘着シートが貼り合わされた状態で各加工が施される。特に、半導体ウエハを薄型に加工した後に、半導体ウエハの裏面にエッチング処理やスパッタ・蒸着処理などが施される場合や、ダイボンドフィルムを貼り付ける場合には、

半導体ウエハに保護シートを貼り付けた状態で、100~200°C程度の熱がかる。

【0003】

近年、半導体ウエハの大型化、またICカード用途などでのウエハの薄型化が進んでいる。しかし、大型化、薄型化した半導体ウエハは、薄型化工程、加熱環境下において熱により大きく反りが生じ、破損し易い。そのため、搬送カセットに格納できない、搬送中や粘着シートの剥離中に割れる、パターン面にダメージが生じるなどの問題が発生している・・・略・・・。

・・・略・・・

【0005】

【発明が解決しようとする課題】

本発明は、基材フィルム上に粘着剤層が設けられた再剥離型粘着シートであって、半導体ウエハに貼り付けた状態で、加熱環境下におかれた場合にも、半導体ウエハの反りを防止することができる再剥離型粘着シートを提供することを目的とする

・・・略・・・

【0006】

【課題を解決するための手段】

・・・略・・・

【0007】

すなわち本発明は、基材フィルム上に粘着剤層が設けられている再剥離型粘着シートであって、

基材フィルムと粘着剤層との間に、少なくとも1層の中間層を有し、

中間層は、23°Cにおける貯蔵弾性率(G’)が3.0×10

4

~1.0×10

8

Paであり、かつ200°Cにおける貯蔵弾性率(G’)が1.0×10

3

~8.0×10

4

Paであることを特徴とする再剥離型粘着シート、に関する

【0008】

上記本発明の再剥離型粘着シートは、熱工程により生じるウエハの反りが、粘着シート自体が大きく熱収縮することが主な原因であると考え、基材フィルムと粘着剤層との間に前記所定の貯蔵弾性率(G’)を有する中間層を設けたものである。

当該中間層により基材フィルムの熱収縮応力を緩和することができ、加熱環境下におかれた場合にもウエハの反りを大幅に低減できる。その結果、ウエハの割れなどの問題を解決でき、円滑なウエハ加工プロセスを継続的に実施することができる。

【0009】

中間層の貯蔵弾性率(G’)は、23°Cにおいて、3.0×10

4

~1.0×10

8

Paである。23°Cにおける貯蔵弾性率(G’)が前記範囲内であれば、再剥離型粘着シートを半導体ウエハに貼り合わせる際に、中間層のはみ出しによるウエハ汚染や貼り合わせローラーなどの装置を汚染する問題は起こらず、良好な貼り合わせ作業性を確保できる。中間層の23°Cにおける貯蔵弾性率(G’)は、好ましくは5.0×10

4

~5.0×10

7

Paである。さらに好ましくは5.0×10

4

~5.0×10

6

Paである。

【0010】

しかも、中間層の貯蔵弾性率(G’)は、200°Cの温度範囲において、1.0×10

3

~8.0×10

4

Paである。200°Cの温度範囲における貯蔵弾性率(G’)が前記範囲内であれば、基材フィルムの熱収縮応力を十分に緩和でき、大幅な半導体ウエハ反りの低減が可能である。中間層の200°Cの温度範囲における貯蔵弾性率(G’)は、好ましくは1.0×10

3

~5.0×10

4

Paである。さらに好ましくは1.0×10

3

~2.0×10

4

Paである。

【0011】

前記再剥離型粘着シートにおける、中間層は、有機粘弾性体により形成することができる。前記有機粘弾性体のゲル分率は、40重量%以下であることが、前記貯蔵弾性率(G’)の中間層を形成するうえで好ましい。有機粘弾性体のゲル分率は、好ましくは10~40重量%、さらに好ましくは20~30重量%である。

・・・略・・・

【0018】

【発明の実施の形態】

以下、本発明の再剥離型粘着シートを、図1を参照しつつ詳細に説明する。図1に示すように、本発明の再剥離型粘着シートは、基材フィルム11上に、中間層12を介して粘着剤層13が設けられている。中間層12は少なくとも1層が設けられる。

・・・略・・・

【0019】

基材フィルムの材料としては、各種の材料を特に制限なく使用することができる。例えば、・・・ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル・・・略・・・などがあげられる。

【0020】

基材フィルムの材料としては、前述の通り、ガラス転移温度(Tg)が70°C以上、融点が200°C以上であるもの、また加熱収縮率が2%以下であるものが好適に用いられる。このような基材フィルムの材料としては、・・・略・・・ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル・・・略・・・などがあげられる。

・・・略・・・

【0023】

基材フィルムの厚さは通常5~1000μmである。切断などの作業性の観点から、好ましくは7~500μm、より好ましくは10~100μmである。

【0024】

中間層を形成する材料としては、前記貯蔵弾性率を満足し、加熱時の応力緩和機能を有する材料を特に制限なく使用することができる。中間層の形成材料としては、有機粘弾性体や熱可塑性樹脂があげられる。特に分子設計の汎用性、生産性の観点から、有機粘弾性体が好ましい。特にゴム系あるいはアクリル系の有機粘弾性体が好ましい。

【0025】

ゴム系の有機粘弾性体としては、たとえば、天然ゴム、ポリイソブチレンゴム・・・略・・・の如きゴム系ポリマーがあげられる。

アクリル系の有機粘弾性体としては、アクリル酸ないしメタクリル酸のアルキルエステルを主成分とするアクリル系ポリマーがあげられる。アクリル系ポリマーは粘着剤層に用いるものと同様のものを例示できる。

【0026】

前述の通り有機粘弾性体としてはゲル分率は40%以下であるものが好ましい。また、有機粘弾性体は、重量平均分子量が1~75万、好ましくは5~50万であるものが、中間層として好ましい機能を発現できる。

・・・略・・・

【0027】

中間層の形成材料としては、これら有機粘弾性体を単独で用いることができる他、これらをベースポリマーとして含有するゴム系粘着剤またはアクリル系粘着剤を有機粘弾性体として用いることができる。

・・・略・・・

【0029】

中間層の厚さは、基材フィルムや粘着剤層の種類に応じて適宜に決定されるが、通常、5~250μm、好ましくは10~150μmである。

【0030】

前記粘着剤層を構成する粘着剤としては、たとえば、一般的に使用されている感圧性粘着剤を使用でき、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等な粘着剤を用いることができる。なかでも、半導体ウエハが熱工程を経る場合には、耐熱性、被着体汚染性や汎用性の観点から、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤が好ましく使用される。

【0031】

前記アクリル系ポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、・・・略・・・などの・・・略・・・1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマーなどがあげられる。

・・・略・・・

【0032】

前記アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性などの改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。このようなモノマー成分として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート・・・略・・・などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル・・・略・・・などのヒドロキシル基含有モノマー;・・・略・・・などがあげられる。

・・・略・・・

【0045】

粘着剤層の厚さは適宜に決定できるが、特に切断などの作業性の面から、1~500μm、好ましくは3~250μmである。

【0046】

粘着剤層の粘着力は使用目的等に応じて適宜に決定されるが、一般には半導体ウエハに対する密着維持性やウエハよりの剥離性などの点より、粘着力(25°C,180°ピール値,剥離速度300mm/min)が0.01~15N/25mmテープ幅、好ましくは0.05~10N/25mmテープ幅以上である。放射線硬化型粘着剤の場合は、エネルギー線照射後の粘着力が0.5N/25mmテープ幅以下が好ましい。

【0047】

なお、放射線硬化型粘着剤を使用する場合には、使用条件や組成、配合によって、被着体を貼り合わせる前に、予め放射線を照射し、粘着力を低下させた状態で貼り合わせることも可能である。

・・・略・・・

【0051】

本発明の再剥離型粘着シートは、常法に従って、たとえば、半導体ウエハの保護シートとして用いられる。

・・・略・・・

【0052】

薄型加工は、常法を採用できる。・・・略・・・

薄型加工後には、保護シートを剥離するが、保護シートの粘着剤層として、放射線照射により粘着力が低下する放射線硬化型粘着剤を用いている場合には、保護シートに放射線を照射して、粘着力を低下させてから剥離する。

・・・略・・・

【0053】

【実施例】

【0054】

(貯蔵弾性率)

中間層形成材を、レオメトリック社製、粘弾性スペクトロメータ(周波数1Hz,サンプル厚2mm,圧着加重100g)を用いて、各測定温度(23°C,200°C)において測定した値である。

・・・略・・・

【0057】

実施例1

(中間層の形成)

基材フィルムとして、厚さ25μmのポリエチレンナフタレートフィルム(商品名:テオネックスTM-Q83,帝人デュポンフイルム(株)製)を用いた。ポリエチレンナフタレートフィルムの加熱収縮率は0.90%であった。ガラス転移温度は121°C、融点269°Cであった。

【0058】

上記基材フィルム上に、重量平均分子量7万のポリイソブチレン(ゲル分率30重量%)のトルエン溶液(40重量%)を塗布、乾燥し、厚さ80μmのポリイソブチレン中間層を設けた。

・・・略・・・

【0060】

(再剥離型粘着シートの作製)

・・・略・・・

【0061】

実施例2

(中間層の形成)

2-エチルヘキシルアクリレート100重量部およびアクリル酸2.5重量部を共重合して重量平均分子量40万のアクリル系ポリマー(ゲル分率30重量%)の溶液(40重量%のトルエン溶液)を調製した。前記アクリル系ポリマー溶液の固形分100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学社製,テトラッドC)0.03重量部を配合してアクリル系粘着剤溶液を調製した。実施例1において、当該アクリル系粘着剤溶液を用いて中間層を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてアクリル系中間層を形成した。

【0062】

アクリル系中間層の貯蔵弾性率(G’)は、23°Cにおいて3.4×10

6

Pa、200°Cにおいて8.3×10

3

Pa、であった。

【0063】

(再剥離型粘着シートの作製)

前記アクリル系中間層上に、実施例1と同様にして、アクリル系粘着剤層を転写して、再剥離型粘着シートを作製した。

・・・略・・・

【0070】

実施例5

(粘着剤の調製)

2-エチルヘキシルアクリレート75重量部、アクリロイルモルホリン25重量部および2-ヒドロキシエチルアクリレート7重量部を共重合して重量平均分子量60万のアクリル系ポリマーの溶液(35重量%のトルエン溶液)を調製した。当該アクリル系ポリマーの2-ヒドロキシエチルアクリレートの水酸基1当量に対して、0.8当量のメタクリロイルオキシエチレンイソシアネートを付加して紫外線硬化性アクリル系ポリマーを調製した。紫外線硬化性アクリル系ポリマー100重量部に、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製,コロネートL)0.8重量部および光反応開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製,イルガキュア651)1.5重量部を配合して紫外線硬化アクリル系粘着剤を調製した。

【0071】

(再剥離型粘着シートの作製)

上記紫外線反応性アクリル系粘着剤を、ポリエステルセパレーター(商品名:セラピールBNA(S)、東洋メタライジング(株)製)上に塗布し、乾燥して、20μmの紫外線硬化型粘着剤層を形成した。実施例2において作成したアクリル系中間層上に、この紫外線硬化型粘着剤層を、転写して、再剥離型粘着シートを作製した。この粘着シートにセパレーター側から紫外線を照射し

(紫外線照射装置:NEL UM-110、日東精機(株)製、紫外線照射積算光量:

500mJ/cm

2

)

てから使用に供した。

・・・略・・・

【0080】

(評価方法)

実施例

および比較例

で得られた再剥離型粘着シートと8インチシリコンウエハ(厚さ750μm)とを貼合せ

(貼合せ装置:DR-8500II,日東精機(株)製)、

研削装

置(DFG-840,ディスコ(株)製)

にてウエハ厚さ100μmまで研削した。ウエハを下側、シートを上側にして水平板上に載置し、ウエハ中心部を原点として、ウエハ最外周部分の浮き量を

デジタルマイクロスコープ(製品名:VH-6300,キーエンス(株)製)で

測定し、これを研削後反り量(mm)とした。その後、再剥離型粘着シートが貼り合わされたままの研削ウエハを、180°Cのホットプレート上で2分間加熱した後、放冷した。放冷後のウエハ外周部浮き量を、前記同様に測定し、これを加熱後反り量(mm)とした。結果を表1に示す。

【0081】

【表1】

62

63

0001433073000001.jpg

一般的なウエハ搬送用カセットに格納できる反り量10mmを規準とし、10mm未満のものを良好、10mm以上のものを不良と判断できる

。研削後反り量は実施例、比較例のいずれも全て良好な結果を得た。」

イ 「【図1】

25

55

0001433073000002.jpg

(2) 甲1に記載された発明

甲1の【0001】、【0005】、【0008】~【0010】、【0054】、【0057】~【0061】、【0070】~【0071】、【0080】~【0081】(【表1】)等の記載から理解される、実施例5(【0070】~【0071】)で作製された、以下の「ウエハ加工用粘着シートとして有用」(【0001】)な「再剥離型粘着シート」の発明を、「甲1発明」とする(なお、甲1発明の構成中の丸括弧内は、甲1発明の認定根拠箇所を示すものである。)。

「 基材フィルムとして、厚さ25μmのポリエチレンナフタレートフィルム(商品名:テオネックスTM-Q83,帝人デュポンフイルム(株)製)を用い、このポリエチレンナフタレートフィルムの加熱収縮率は0.90%であり、ガラス転移温度は121°C、融点269°Cであり、(【0057】)

2-エチルヘキシルアクリレート100重量部およびアクリル酸2.5重量部を共重合して重量平均分子量40万のアクリル系ポリマー(ゲル分率30重量%)の溶液(40重量%のトルエン溶液)を調製し、前記アクリル系ポリマー溶液の固形分100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学社製,テトラッドC)0.03重量部を配合してアクリル系粘着剤溶液を調製し、(【0061】)

上記基材フィルム上に、上記アクリル系粘着剤溶液を塗布、乾燥し、厚さ80μmのアクリル系中間層を作成し、(【0061】、【0058】)

このアクリル系中間層の下記の定義による貯蔵弾性率(G’)は、23°Cにおいて3.4×10

6

Pa、200°Cにおいて8.3×10

3

Paであり、(【0062】)

2-エチルヘキシルアクリレート75重量部、アクリロイルモルホリン25重量部および2-ヒドロキシエチルアクリレート7重量部を共重合して重量平均分子量60万のアクリル系ポリマーの溶液(35重量%のトルエン溶液)を調製し、当該アクリル系ポリマーの2-ヒドロキシエチルアクリレートの水酸基1当量に対して、0.8当量のメタクリロイルオキシエチレンイソシアネートを付加して紫外線硬化性アクリル系ポリマーを調製し、紫外線硬化性アクリル系ポリマー100重量部に、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製,コロネートL)0.8重量部および光反応開始剤(チバスペシャルティケミカルズ社製,イルガキュア651)1.5重量部を配合して紫外線硬化アクリル系粘着剤を調製し、(【0070】)

上記紫外線反応性アクリル系粘着剤を、ポリエステルセパレーター(商品名:セラピールBNA(S)、東洋メタライジング(株)製)上に塗布し、乾燥して、20μmの紫外線硬化型粘着剤層を形成し、

作成したアクリル系中間層上に、この紫外線硬化型粘着剤層を、転写して、作製された、(【0071】)

ウエハ加工用粘着シートとして有用な再剥離型粘着シートであって、(【0001】)

再剥離型粘着シートにセパレーター側から紫外線を照射し(500mJ/cm

2

)てから使用に供されるものであり、(【0071】)

再剥離型粘着シートと8インチシリコンウエハ(厚さ750μm)とを貼合せ、研削装置にてウエハ厚さ100μmまで研削し、

ウエハを下側、シートを上側にして水平板上に載置し、ウエハ中心部を原点として、ウエハ最外周部分の浮き量を測定し、これを研削後反り量(mm)とし、

その後、再剥離型粘著シートが貼り合わされたままの研削ウエハを、180°Cのホットプレート上で2分間加熱した後、放冷し、放冷後のウエハ外周部浮き量を、前記同様に測定し、これを加熱後反り量(mm)とした時、(【0080】)

研削後反り量は1.0mm、加熱後反り量は2.0mmである、(【0081】【表1】)

ウエハ加工用粘着シートとして有用な再剥離型粘着シート。

(貯蔵弾性率)

中間層形成材を、レオメトリック社製、粘弾性スペクトロメータ(周波数1Hz,サンプル厚2mm,圧着加重100g)を用いて、各測定温度(23°C,200°C)において測定した値である。(【0054】)」

(3) 本件特許発明1について

ア 対比

本件特許発明1と甲1発明を対比する。

(ア) 粘着剤層

甲1発明の「紫外線硬化型粘着剤層」は、本件特許発明1の「粘着剤層」に相当する。

(イ) 基材

甲1発明の「基材フィルム」は、「ポリエチレンナフタレートフィルム」であるから、本件特許発明1の「ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種の樹脂で構成され」とされる、「基材」に相当する。

(ウ) 緩和層

甲1発明の「アクリル系粘着剤溶液」の組成(特に、アクリル系ポリマーへのエポキシ系架橋剤の配合)、及び、アクリル系中間層の作成方法からみて、甲1発明の「アクリル系ポリマー」及び「アクリル系中間層」は、それぞれ本件特許発明1の「(メタ)アクリル系ポリマー」及び「緩和層」に相当する。

また、甲1発明は、本件特許発明1の「前記緩和層が、(メタ)アクリル系ポリマーを架橋した架橋物を含む」との構成を具備する。

(エ) 「半導体加工用粘着シート」

甲1発明の「再剥離型粘着シート」は、「ウエハ加工用粘着シートとして有用な」ものである。

そうすると、上記(ア)~(ウ)より、甲1発明の「再剥離型粘着シート」は、本件特許発明1の「半導体加工用粘着シート」に相当し、本件特許発明1の「半導体加工用粘着シート」と、甲1発明は、「粘着剤層」と、「基材と、を含む」点で共通する。

また、上記(ウ)より、甲1発明は、本件特許発明1の「該半導体加工用粘着シートが、緩和層をさらに含み」との構成を具備する。

(オ) 上記(ア)~(エ)より、

本件特許発明1と、甲1発明は、

「粘着剤層と、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種の樹脂で構成される基材と、を含む、

半導体加工用粘着シートであって、

該半導体加工用粘着シートが、緩和層をさらに含み、

該緩和層が、(メタ)アクリル系ポリマーを架橋した架橋物を含む、半導体加工用粘着シート。」の構成で一致し、以下の点で相違、又は、一応相違する。

(相違点1-1-1)

本件特許発明1では、「基材」の「厚みが50μm~200μmであ」るのに対して、甲1発明では、「基材フィルム」が「厚さ25μm」である点。

(相違点1-1-2)

本件特許発明1では、「基材」の「23°C、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が2×10

9

Pa以上であり、180°C、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が2×10

8

Pa以上である」のに対して、甲1発明では、「基材フィルム」の「23°C、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率」及び「180°C、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率」が不明である点。

(相違点1-1-3)

本件特許発明1では、「該半導体加工用粘着シートの外周リブウエハ加熱反り評価における反り量が0mm~5mmであり」、かつ、「外周リブウエハたわみ評価におけるたわみ量が0mm~5mmである」のに対して、甲1発明では、「外周リブウエハ加熱反り評価における反り量」及び「外周リブウエハたわみ評価におけるたわみ量」が不明である点。

(相違点1-1-4)

「(メタ)アクリル系ポリマー」が、本件特許発明1では、「モノマー成分として(メタ)アクリル酸を含まない」のに対して、甲1発明では、「2-エチルヘキシルアクリレート100重量部およびアクリル酸2.5重量部を共重合し」たものである点。

イ 判断

事案に鑑み、相違点1-1-4について検討する。

(ア) 甲1に記載された技術事項を踏まえた検討

甲1の【0001】、【0005】、【0007】~【0011】、【0024】~【0027】、【0053】~【0081】等の記載から、甲1発明は、中間層を、2-エチルヘキシルアクリレート100重量部及びアクリル酸2.5重量部を共重合して、重量平均分子量40万のアクリル系ポリマー(ゲル分率30重量%)を形成し、さらに、アクリル系ポリマー100重量部に対してエポキシ系架橋剤0.03重量部を配合してアクリル系粘着剤を調製することにより形成し、中間層の23°C、周波数1Hzの貯蔵弾性率を3.4×10

6

Pa、200°C、周波数1Hzの貯蔵弾性率を8.3×10

3

として、当該中間層により基材フィルムの熱収縮応力を緩和することにより、研削後反り量1.0mm、180°C加熱後反り量2.0mmという一般的なウエハ搬送用カセットに格納できる反り量10mmからみて十分抑制された、好ましい態様のものと理解できるところ、以下に示すとおり、このような好ましい態様である甲1発明の「アクリル系粘着剤」を、アクリル酸を含まない構成とする動機付けとなるような記載は、甲1には見当たらない。

すなわち、甲1には、加熱時の応力緩和機能を有する中間層を形成する材料として好ましいアクリル系ポリマーについて、「アクリル系ポリマーは粘着剤層に用いるものと同様のものを例示できる」(【0024】~【0025】)こと、当該「アクリル系ポリマー」について、「アクリル系ポリマーは、凝集力、耐熱性などの改質を目的として、必要に応じ、(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい」こと、当該「他のモノマー成分」について、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレートなどのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルなどのヒドロキシル基含有モノマーなどがあげられることが(【0032】)等の技術事項が記載されているにとどまる。

ここで、上述したとおり、反り量の抑制は、中間層による基材フィルムの熱収縮応力の緩和によるものであるところ、中間層の貯蔵弾性率が「アクリル系ポリマー」におけるモノマー成分に依存することは技術常識であるから、甲1において「他のモノマー成分」として多数列挙されたものの中から、甲1発明の中間層において、アクリル酸以外の任意のモノマーを単に選択したからといって、基材フィルムの熱収縮応力を甲1発明と同程度緩和できて、なおかつ、凝集力、耐熱性などの特性の改善が期待できると当業者が認識するとまではいえない。

そうすると、上述したとおり

既に十分好ましい効果を奏する甲1発明において、凝集力、耐熱性などの改質を目的としたモノマー成分としてのアクリル酸に代えて他のモノマーを敢えて採用する、すなわち、アクリル酸を含まない構成とする積極的な動機づけを甲1に見出すことはできない。そして、後記(イ)に示すとおり、各甲号証の記載事項を検討しても同様である。

(イ) その他の甲号証に記載された周知技術及び技術事項を踏まえた検討

a 甲4、甲6及び甲7から認定される周知技術を踏まえた検討

申立人が提出した甲4の【0090】、図3等には、

アクリル系粘着剤中のアクリル酸が半導体裏面用フィルムに物質拡散して、粘着剤層と半導体裏面用フィルムとの境界面を消失させて、半導体チップを半導体裏面用フィルムと一体的にピックアップする際の剥離性の低下を生じさせることから、アクリル系粘着剤において、アクリル系ポリマーと共重合可能なモノマーとして、アクリル酸を含まない方が好ましいこと

、が記載されている。

また、同甲6の【0022】、図3等には、

基材上に粘着剤層を有するダイシングフィルムと、該ダイシングフィルム上に設けられた、半導体ウェハがその上に圧着されたダイボンドフィルムとを有するダイシング・ダイボンドフィルムにおいて、

粘着剤層とダイボンドフィルムの反応や相互作用を防止することができ、半導体チップをダイボンドフィルムと共に粘着剤層から剥離する際(請求項10等)のピックアップ性の一層の向上が図れる

ように、

粘着剤層はアクリル酸を含まないこと

が好ましいこと、が記載されている。

さらに、甲7【0016】及び【0032】、図3等には、

基材上に粘着剤層を有するダイシングテープと、該粘着剤層上に設けられたダイボンドフィルムとを備えるダイシング・ダイボンドフィルムの粘着剤層において、

アクリル酸とダイボンドフィルムの反応や相互作用を防止し、粘着剤層とダイボンドフィルムとの剥離性を低下させることなく、半導体チップをダイボンドフィルムと共に粘着剤から剥離する際のピックアップ性の一層の向上が図れるように、粘着剤はモノマー成分として、アクリル酸を含まないこと

が好ましいこと、が記載されている。

そうすると、

粘着剤層の被着体との剥離性の低下が生じないように、粘着剤層において共重合可能なモノマーとしてアクリル酸を含まないこと、あるいは粘着剤にアクリル酸を含まないようにすること

までは、本件特許出願前に当業者に周知の技術であるといえる(以下「周知技術1」という。)。

しかしながら、甲1発明の「ウエハ加工用粘着シートとして有用な再剥離型粘着シート」において、ウエハ加工後に

基材フィルム、アクリル系中間層及び粘着剤層が一体となって剥離される

(【0001】、【0052】等)ことから、

アクリル系中間層と粘着剤層あるいは基材フィルムとの剥離性の低下が問題となることはない。

そうすると、甲1発明の「アクリル系中間層」の設計変更を考える当業者が、上記の粘着剤層と被着体の剥離性の低下を防ぐ周知技術1を採用しようとは考えない。

b 甲5に記載された技術事項を踏まえた検討

また、申立人が提出した甲5の【0001】、【0022】~【0023】、【0029】、【0034】~【0035】及び【0074】~【0078】等には、接着ミス時等に液晶セルを損傷させずに容易に剥離でき、かつ液晶セルに貼着して

加熱加湿雰囲気においても発泡や剥がれ

、光学特性の低下やセルの反りを生じにくくした、

液晶表示装置等に好適な粘着層付設型の光学フィルムに関して

(【0001】)、

粘着層の飽和吸水率を低い設定とすることにより、加熱加湿処理による発泡や剥がれを防止できること(【0022】~【0023】)、

適度な凝集性、接着性を示し、耐候性や耐熱性などに優れる、アクリル系重合体のポリマーを用いることができる(【0029】)ところ、

粘着剤としての凝集性や接着性を改質するための、あるいは架橋反応性を付与するための単量体を共重合成分として、水酸基やカルボキシル基やエポキシ基等の官能基を有するものは飽和吸水率を上昇させる傾向にあることから最小限の使用が好ましい場合が多い

が、本発明においては、0.4重量%以下(【0022】)の飽和吸水率を満足する範囲で適宜な量の種々の

単量体を共重合させることができる(【0034】)、

特に分子間架橋剤と反応可能な官能基を有して分子間架橋に関与する

単量体は、共重合させる場合が多く、その共重合用単量体の例としては、アクリル酸やメタクリル酸

、カルボキシル基含有単量体、ヒドロキシル基含有単量体など

があげられ

かかる官能基を有する単量体は、上記主成分モノマーの種類にもよるが通常、2重量%以下程度の共重合で、

得られる共重合体の当該飽和吸水率を前記範囲とできること(【0035】、【0074】~【0078】)、

が記載されている。

そうすると、

加熱加湿雰囲気下において使用される、液晶表示装置に好適な粘着層付設型光学フィルムにおける粘着剤の共重合成分としてアクリル酸やメタクリル酸等の単量体を採用すれば、適度な凝集性、接着性を維持できて、かつ、加熱(90°C程度)加湿雰囲気における発泡や剥がれ、光学特性の低下やセルの反りを生じにくくできる

こと(以下「甲5記載技術事項」という。)が記載されていると認められる。

しかしながら、甲1発明は、100~200°C程度の加熱工程に供される(甲1の【0002】、【0010】、【0080】等)、「ウエハ加工用粘着シートとして有用な再剥離型粘着シート」であって、

加熱(90°C程度)加湿雰囲気下において使用される液晶表示装置に好適な粘着層付設型光学フィルムとは技術分野及び使用環境が異なる。

そうすると、甲1発明の「ウエハ加工用粘着シートとして有用な再剥離型粘着シート」の「アクリル系中間層」の設計変更を考える当業者が、技術分野(LCD用の光学フィルムと半導体ウエハ)及び使用環境が異なる甲5記載技術事項を採用しようとは考えない。

してみると、甲1発明において、甲4、6、7に記載されたような周知技術1及び甲5に記載された技術的事項に基づいて、相違点1-1-4に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。

(ウ) 基材の厚みに関し、異議申立人が提出した甲2(【0001】、【0015】、【0023】、【0025】~【0026】)及び甲3(【0001】、【0015】)に記載された技術的事項に基づいて検討したとしても、相違点1-1-4に係る本件特許発明1の構成に至らないから、甲1発明において、相違点1-1-4に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。

同様に、異議申立人が提出した甲8([0058]~[0059])、甲9(【0082】~【0083】)、甲10(【0052】~【0053】)、甲11(【0012】)及び甲12(【0011】~【0013】)に記載された技術的事項に基づいて検討したとしても、相違点1-1-4に係る本件特許発明1の構成に至らないから、甲1発明において、相違点1-1-4に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。

(エ) 令和7年9月4日提出の意見書における申立人の主張について

a 同意見書の7~9頁において、

(a) 申立人は、甲4には、アクリル酸が隣接する他の層に拡散して

剥離性

の低下を招くこと、甲5には、アクリル酸やメタクリル酸等の官能基を有する共重合成分は、

飽和吸水率

を上昇させる傾向にあることから最小限の使用が好ましい場合が多いこと、甲6及び甲7には、アクリル酸により、隣接する他の層との反応や相互作用を生じ

ピックアップ性

が低下することが記載されている、

(b) 甲4~7ではアクリ系ポリマーが緩和層ではなく粘着材層において用いられていますが、上記剥離性、飽和吸水率及びピックアップ性は、<粘着剤層の物性・特性>や<粘着層とこれに積層される層との関係で奏される物性・特性>といった狭義のものではなく、<モノマー成分としてアクリル酸を含むアクリル系ポリマーの

一般的な

物性・特性>と解することができます、

(c) したがって、剥離性、吸水性、ピックアップ性等の物性・特性を考慮して、本件特許発明1の緩和層に相当する甲1発明の中間層を形成するアクリル系ポリマーに僅かに含まれているアクリル酸を除くことは、当業者であれば適宜なし得ることであるといえます、と主張する。

b しかしながら、上記(イ)aで述べたとおり、甲1発明においては、アクリル系中間層と粘着剤層の剥離性の低下が問題とならないから、当業者は、粘着剤層と被着体の剥離性の低下を防ぐ周知技術1を採用しようとは考えない。また、上記(イ)bで述べたとおり、甲1発明において、当業者は、技術分野及び使用環境が異なる甲5記載技術事項を採用しようとは考えない。

してみると、意見書における申立人の上記主張を採用することはできない。

(オ) 小括

以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、及び、甲2~甲12に記載された技術的事項又は周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(4) 本件特許発明5~8について

本件特許発明5~8は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。

そうすると、上記(2)イのとおり、本件特許発明1は、甲1に記載された発明、及び、甲2~甲12に記載された技術的事項又は周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない以上、本件特許発明5~8は、甲1に記載された発明、及び、甲2~甲12に記載された技術的事項あるいは周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということができない。

2 甲13を主引用例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について

(1) 本件特許発明1について

本件訂正請求による訂正により、

本件特許発明1は、甲13を主引用例とする取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)の対象となっていなかった、訂正前の請求項4に係る発明に

(、さらに「基材」が「ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種の樹脂で構成され」との限定を付加し、「貯蔵弾性率」が「周波数1Hz」におけるものであることを明確にしたものに)

対応するものとなった

してみると、本件特許の請求項1に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえないし、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものともいえない。

(2) 本件特許発明5~8について

本件特許発明5~8は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。

そうすると、上記(1)で述べたとおりであるから、本件特許の請求項5~8に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。また、本件特許の請求項5~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。

3 取消理由3(サポート要件)について

(1) サポート要件の判断基準

特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、

特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、

また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断されるべきである。

これを本件特許発明についてみると以下のとおりとなる。

(2) サポート要件についての判断

上記(1)の判断基準に基づいて、特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かについて、以下検討する。

ア 本件特許発明が解決しようとする課題

本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載の【0002】~【0006】の記載によれば、本件特許発明が解決しようとする課題は、外周リブウエハの大径化に伴うウエハのたわみの発生や、加熱工程における加熱時の粘着シートを貼付した半導体ウエハの反りの発生による歩留まりを低下させることなく、半導体ウエハを適切に保護する半導体加工用粘着シートを提供することであると認められる。

イ 特許請求の範囲に記載された発明について

本件特許発明は、「第3 本件特許発明」で述べたとおりものである。

(3) 当該発明の課題を解決できると認識できる範囲できる範囲

ア 本件訂正請求による訂正により、本件特許発明1は、「半導体加工用粘着シート」の「基材」について、

「ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種の樹脂で構成され」るとして、材料が新たに特定され、

「23°C、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が2×10

9

Pa~1×10

10

Paであり、180°C、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が2×10

8

Pa~1×10

10

Paである」として、上限値が新たに特定され、

「半導体加工用粘着シート」について、「緩和層をさらに含」み、「該緩和層が、(メタ)アクリル系ポリマーを架橋した架橋物を含み」、「該(メタ)アクリル系ポリマーがモノマー成分として(メタ)アクリル酸を含ま」ないことが、新たに特定されることとなった。

イ そうしてみると、基材の23°C、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率を1×10

9

~1×10

10

Paとすることによる、半導体ウエハの適切な支持、たわみの抑制に対する作用機序(因果関係)、及び、基材の180°C、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率を2×10

8

~1×10

10

Paとすることによる、加熱工程に供された場合の半導体ウエハの適切な支持に対する作用機序(因果関係)が理解できなくとも、発明の詳細な説明の【0016】~【0018】の基材としてポリエチレンナフタレート、ポリイミド及びポリエーテルエーテルケトンを用いることにより、加熱工程時、半導体ウエハを適切に支持でき、基材の収縮を抑制することができ、収縮応力の小さい基材を形成できるとの記載、【0041】、【0043】~【0051】及び【0053】の緩和層の加熱工程において基材の収縮を緩和し、反りの発生を抑制するとの機能についての記載、(メタ)アクリル系ポリマー材料についての記載、架橋剤についての記載、緩和層を厚み緩和層の厚みを5~600μmとすることにより、加熱工程に供された場合であっても反りの発生をより抑制することができ、半導体ウエハをより良好に支持することができ、歩留まりの低下を抑制し得るとの記載、【0058】~【0086】の実施例、比較例、それらの対比結果(【表2】)及び技術常識に基づけば、当業者は、上記アで述べた発明特定事項を具備する本件特許発明1は、上記(2)アで述べた発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると理解できる。本件特許発明5~8についても同様である。

ウ 以上のとおり、本件特許発明1、5~8は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、本件特許の請求項1、5~8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

(4) 申立人の主張について

ア 特許異議申立書4頁、24~26頁において、申立人は、サポート要件違反について、概略、次の主張をしている。

半導体加工用粘着シートの基材として「厚みが50μm~200μm」、「23°Cにおける貯蔵弾性率が2×10

9

Pa以上」および「180°Cにおける貯蔵弾性率が2×10

8

Pa以上」の基材を用いれば、半導体加工用粘着シートが、必ず、iv)(「該半導体加工用粘着シートの外周リブウエハ加熱反り評価における反り量が0mm~5mm」)の物性およびv)(「外周リブウエハたわみ評価におけるたわみ量が0mm~5mm」)の物性を有するものとなるとはいえない点(25頁)、

本件発明1~8の基材の規定は、物性については、「23°Cにおける貯蔵弾性率」および「180°Cにおける貯蔵弾性率」の上限が規定されておらず、素材については、何ら規定されていない点(25頁)、

本件発明1~8の基材の規定は、上記の物性および素材を、どのように設定すれば、半導体加工用粘着シートが、上iv)の物性および上記v)の物性を有するものとなるのか不明である点(25頁)、

緩和層の無い場合、緩和層の厚みが40μmを下回る薄い場合、および、緩和層の組成が、アクリル酸エチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル等のアクリル系モノマーを重合開始剤:アゾビスイソブチロニトリルを用いて重合したものである以外のものである場合に、半導体加工用粘着シートが、上記iv)の物性および上記v)の物性を有するものとなるとはいえない点(26頁)。

イ 判断

しかしながら、上記(3)アで述べたとおり、本件訂正請求による訂正により、本件特許発明1において、基材の材料、貯蔵弾性率の上限値、緩和層を備えること、及び、緩和層の材料がさらに特定されることとなった。そうすると、上記(3)イで述べたとおり、発明の詳細な説明の記載に基づけば、当業者は、本件特許発明1は、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると理解できる。

したがって、申立人が主張する上記アの取消しの理由は採用できない。

4 取消理由4(実施可能要件)について

(1) 本件訂正請求による訂正により、本件特許発明1は、取消理由4(実施可能要件)の対象となっていなかった訂正前の請求項4に係る発明に(、さらに「基材」が「ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種の樹脂で構成され」との限定を付加し、「貯蔵弾性率」が「周波数1Hz」におけるものであることを明確にしたものに)対応するものとなった。

してみると、本件特許の請求項1、5~8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

(2) 申立人の主張について

ア 特許異議申立書2頁、18~21頁において、申立人は、実施可能要件違反について、

本件発明1~8が備える、外周リブウエハの加熱反り量を「0mm~5mm」とする物性に係る事項、および、外周リブウエハのたわみ数を「0mm~5mm」とする物性に係る事項は、発明の課題を解決するために必要とされる、半導体加工用粘着シートの望ましい物性を、単に直接規定したものにすぎない(18~19頁)、

発明の詳細な説明には、実施例1~9の限られた半導体加工用粘着シートでは、外周リブウエハの加熱反り量が「0mm~5mm」となっており、外周リブウエハのたわみ量が「0mm~5mm」となっているものの、半導体加工用粘着シートという<物の発明>において、どの構成要素(基材、粘着剤層、緩和層など)を、どのように調整(形状、構造、素材・成分など)すれば、半導体加工用粘着シートの外周リブウエハの加熱反り量を「0mm~5mm」とでき、外周リブウエハのたわみ量を「0mm~5mm」とできるのかについて一般的に教示する記載はなされていない、

発明の詳細な説明の記載では、限られた実施例を忠実に再現する場合を除き、本件発明1~8を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない(19~21頁)、

緩和層の無い場合、緩和層の厚みが40μmを下回る薄い場合、および、緩和層の組成が上記以外のものである場合に、半導体加工用粘着シートが、必ず、上記iv)の物性および上記v)の物性を有するものとなるとはいえない(21頁)、

当業者といえども、上記iV)の物性および上記v)の物性を有する半導体加工用粘着シートを得るには過度の試行錯誤を要するといえる、と主張する。

イ 判断

本件訂正請求による訂正後の本件特許発明1は、3(3)アのとおりのものであるところ、本件特許明細書の発明の詳細な説明の、緩和層についての【0041】~【0053】の記載、基材についての【0014】~【0018】の記載(機能、材料、収縮(応力)貯蔵弾性率等)、実施例、比較例、それらの対比結果及び技術常識に基づき、基材の厚み、材質、収縮(応力)及び貯蔵弾性率、緩和層の材料、厚みを調整することにより、本件特許発明1の「外周リブウエハ加熱反り評価における反り量が0mm~5mm」、かつ、「外周リブウエハたわみ評価におけるたわみ量が0mm~5mm」を満たす、半導体加工用粘着シートを、過度の試行錯誤をすることなく製造できると認められる。本件特許発明5~8についても同様である。

そうすると、本件特許発明1、5~8について、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、本件特許の請求項1、5~8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。

したがって、申立人が主張する上記アの取消しの理由は採用できない。

5 取消理由5(明確性)について

(1) 本件訂正請求による訂正により、請求項1において、「基材」の「貯蔵弾性率」が「周波数1Hz」におけるものであることが明確となった。

してみると、請求項1の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。請求項1の記載を引用する請求項5~8についても同様である。

したがって、本件特許発明1、5~8は明確である。

(2) 申立人の主張について

ア 特許異議申立書22~23頁において、申立人は、明確性要件違反について、

本件発明1~8が備える、iv)、および、v)の物性に係る事項は、発明の課題を解決するために必要とされる、半導体加工用粘着シートの望ましい物性を、単に直接規定したものにすぎず、半導体加工用粘着シートという<物の発明>において、どの構造要素(基材、粘着材層、緩和層など)を、どのように調整(形状、構造、素材・成分など)すれば、上記の望ましい物性が実現できるのか明確でない、

基材については、<実施例1>~<実施例9>では、特定の物性(貯蔵弾性率)、素材(テオネックス(登録商標)フィルムQ51)の基材だけしか用いられていない一方、本件発明1~8の基材の規定は、物性(貯蔵弾性率)については広範であり、かつ、上限が規定されておらず、素材については何ら規定されていない、

したがって、本件発明1~8の基材の規定は、上記の物性および素材を、どのように設定すれば、上記の望ましい物性が実現できるのかが明確でない、

よって、本件発明1~8は、特許受けようとする発明が明確でない、と主張する。

イ 判断

本件特許発明1は、第3で述べたとおりのものであるところ、

「粘着剤層」と「基材」と「緩和層」を含み、

該「基材」が、「ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、および、ポリエーテルエーテルケトンからなる群れより選択される少なくとも1種の樹脂で構成され」、「厚みが50μm~200μmであり」、「23°C、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が2×10

9

Pa~1×10

10

Paであり、180°C、周波数1Hzにおける貯蔵弾性率が2×10

8

Pa~1×10

10

Paであ」り、

該「緩和層」が、「(メタ)アクリル系ポリマーを架橋した架橋物を含み」、「該(メタ)アクリル系ポリマーがモノマー成分として(メタ)アクリル酸を含まない」ものであって、

(発明の詳細な説明の【0011】~【0012】、【0077】~【0079】の定義による)「外周リブウエハ加熱反り評価」における反り量が0mm~5mm、かつ、「外周リブウエハたわみ評価」におけるたわみ量が0mm~5mmである、との事項によって特定される、「半導体加工用粘着シート」は、物の発明として、明確である。

したがって、申立人が主張する上記のアの取消しの理由は採用できない。

第6 むすび

本件特許の請求項1、5~8に係る特許は、いずれも、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。

また、他に本件特許の請求項1、5~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

また、本件特許の請求項2~4に係る特許は、本件訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、本件特許の請求項2~4に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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