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Trademark Appeal Case

特許訂正の新規事項

本データベースは、特許庁の審決例をAIで解析・要約したものです。拒絶理由通知に対する意見書作成や、審判請求書等の作成時の参考としてお役立てください。

基本情報

審判番号2025700045
審判種別記載はありません。
結論敗訴(請求棄却)

結論テキスト

結 論
特許第7510283号の明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3〕、4について訂正することを認める。
特許第7510283号の請求項1、3、4に係る特許を維持する。
特許第7510283号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由テキスト

理 由

第1 手続の経緯

特許第7510283号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和2年6月9日(優先権主張 令和1年6月13日)を出願日とする出願であって、令和6年6月25日にその特許権の設定登録がされ、同年7月3日に特許掲載公報が発行され、令和7年1月6日に特許異議申立人 真角 侑子(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。

その後、令和7年6月25日付けで当審において取消理由を通知し(発送は同年7月1日)、この取消理由の通知に対し、特許権者は、その指定期間内である同年8月29日に訂正請求書・意見書を提出した。

なお、当審において令和7年9月16日付けで、申立人に対して意見書提出の期間を指定して、訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を行ったが、当該期間内に申立人から意見書の提出はなかった。

第2 訂正の適否についての判断

1 訂正の内容

令和7年8月29日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7510283号の明細書、特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求める」ものであり、本件訂正の内容は、以下のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1を「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率が100MPa以上であり、-5°Cにおける30%引張応力が5.5N/10mm以上である」と記載されているのを、「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率が100MPa以上

400MPa以下

であり、-5°Cにおける30%引張応力が5.5N/10mm以上

30N/10mm以下

であ

り、室温における30%引張応力が3.2N/10mm以上7.8N/10mm以下である

」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3も同様に訂正する)。

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に「請求項1または2に記載のダイシングテープ」と記載されているのを、「請求項

1に

記載のダイシングテープ」に訂正する。

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項4を「基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、前記ダイシングテープの粘着剤層上に積層されたダイボンド層と、を備え、前記ダイシングテープの-5°Cにおける引張貯蔵弾性率が100MPa以上であり、前記ダイシングテープの-5°Cにおける30%引張応力が5.5N/10mm以上であるダイシングダイボンドフィルム。」と記載されているのを、「基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、前記ダイシングテープの粘着剤層上に積層されたダイボンド層と、を備え、前記ダイシングテープの-5°Cにおける引張貯蔵弾性率が100MPa以上

400MPa以下

であり、前記ダイシングテープの-5°Cにおける30%引張応力が5.5N/10mm以上

30N/10mm以下

であ

り、前記ダイシングテープの室温における30%引張応力が3.2N/10mm以上7.8N/10mm以下である

ダイシングダイボンドフィルム。」に訂正する。

(5)訂正事項5

明細書の段落【0007】に「そこで、本発明は、低温条件下において、エキスパンドによる半導体ウェハから複数の半導体チップへの割断性をより一層向上させることができるダイシングテープ及びダイシングダイボンディングフィルムを提供することを課題とする。」と記載されているのを、「そこで、本発明は、低温条件下において、エキスパンドによる半導体ウェハから複数の半導体チップへの

均一

割断性をより一層向上させることができるダイシングテープ及びダイシングダイボンディングフィルムを提供することを課題とする。」に訂正する。

(6)一群の請求項について

訂正前の請求項1~3について、請求項2、3は、請求項1を引用しているものであるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。

したがって、訂正前の請求項1~3に係る本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項〔1~3〕について請求されたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的について

訂正事項1は、訂正前の請求項1の「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」が「400MPa以下」であること、本件訂正前の請求項1の「-5°Cにおける30%引張応力」が「30N/10mm以下」であること、訂正前の請求項1の「ダイシングテープ」が「室温における30%引張応力が3.2N/10mm以上7.8N/10mm以下である」であることを限定するものである。

よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて

訂正事項1は、上記アのとおり、訂正前の請求項1の構成を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合する。

ウ 願書に添付した明細書、特許請求項の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であることについて

特許明細書等の【0025】には、「ダイシングテープ10」の「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」が「400MPa以下」であることが、【0028】には、「ダイシングテープ10」の「-5°Cにおける30%引張応力」が「30N/10mm以下」であることが記載されている。

また、特許明細書等の【0029】、【0030】には、「ダイシングテープ10」の「室温における30%引張応力」が「3.2N/10mm以上」及び「30N/10mm以下」であることが記載されているところ、【0113】の【表1】には、「割断性」が「○」である実施例1~9において、「室温における30%引張応力」の最大値が、実施例8の「7.8N/10mm」であることが記載されているから、「室温における30%引張応力」を「3.2N/10mm以上7.8N/10mm以下」とすることが記載されているといえる。

よって、訂正事項1は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合する。

エ 独立特許要件について

本件においては、全ての請求項1~4について特許異議の申立てがなされているので、訂正事項1に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(2)訂正事項2について

訂正事項2は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

また、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであることは明らかであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

そして、本件においては、全ての請求項1~4について特許異議の申立てがなされているので、訂正事項2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(3)訂正事項3について

訂正事項3は、訂正後の請求項3が請求項1または2を引用するものであったところ、訂正事項2により訂正前の請求項2が削除されたことに伴い、訂正後の請求項3が請求項1を引用するものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」及び同第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

また、特許明細書等に記載した事項の範囲内のものであることは明らかであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

そして、本件においては、全ての請求項1~4について特許異議の申立てがなされているので、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(4)訂正事項4について

ア 訂正の目的について

訂正事項4は、訂正前の請求項4の「前記ダイシングテープの-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」が「400MPa以下」であること、本件訂正前の請求項4の「前記ダイシングテープの-5°Cにおける30%引張応力」が「30N/10mm以下」であること、訂正前の請求項4の「前記ダイシングテープ」が「室温における30%引張応力が3.2N/10mm以上7.8N/10mm以下である」ことを限定するものである。

よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。

イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて

訂正事項4は、上記アのとおり、訂正前の請求項4の構成を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。

よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。

ウ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることについて

上記(1)ウで示したように、特許明細書等には、「ダイシングテープ」について、「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」が「400MPa以下」であること、「-5°Cにおける30%引張応力」が「30N/10mm以下」であることが記載されている。また、「室温における30%引張応力」を「3.2N/10mm以上7.8N/10mm以下」とすることが記載されているといえる。

よって、訂正事項4は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。

エ 独立特許要件について

本件においては、全ての請求項1~4について特許異議の申立てがなされているので、訂正事項4に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。

(5)訂正事項5について

訂正事項5は、訂正前明細書の【0007】に記載された「割断性」が、訂正前明細書の【0023】に記載された「割断のし易さ」又は「均一割断性」のいずれであるのか、その意味が明瞭でなかったものを、「均一割断性」と訂正することにより、明瞭とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。

また、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことは明らかであるから、特許法第120条の5第9項の規定によって準用する同法第126条第5項及び第6項に適合するものである。

3 小括

以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

したがって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕、4について訂正することを認める。

第3 本件発明

本件訂正請求により訂正された請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明4」という。また、併せて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】

基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープであって、

-5°Cにおける引張貯蔵弾性率が100MPa以上400MPa以下であり、

-5°Cにおける30%引張応力が5.5N/10mm以上30N/10mm以下であり、

室温における30%引張応力が3.2N/10mm以上7.8N/10mm以下である

ダイシングテープ。

【請求項2】

(削除)

【請求項3】

室温における30%引張応力に対する-5°Cにおける30%引張応力の比が1.7以上である

請求項1に記載のダイシングテープ。

【請求項4】

基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープと、

前記ダイシングテープの粘着剤層上に積層されたダイボンド層と、を備え、

前記ダイシングテープの-5°Cにおける引張貯蔵弾性率が100MPa以上400MPa以下であり、

前記ダイシングテープの-5°Cにおける30%引張応力が5.5N/10mm以上30N/10mm以下であり、

前記ダイシングテープの室温における30%引張応力が3.2N/10mm以上7.8N/10mm以下である

ダイシングダイボンドフィルム。」

第4 申立理由の概要

1 申立人の提出した証拠

申立人は、次の甲第1号証~甲第18号証(枝番を含む。以下、それぞれ「甲1」~「甲18」などという。)を証拠として提出している。

甲第1号証(甲1):特開2013-38408号公報

甲第2号証(甲2):特開2019-16787号公報

甲第3号証(甲3):国際公開第2019/008808号

甲第4号証(甲4):「3次元半導体実装への新規粘着テープ」、日本接着学会誌、2006年7月1日、第42巻、第7号、p.280~286

甲第4号証の2(甲4の2):J-STAGEのウェブページ、[online]、2025年1月6日(出力日)、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/adhesion/42/7/42_7-3/_article/-char/ja/> (当審注:甲4の発行日を示す証拠)

甲第5号証(甲5):特開2012-59768号公報

甲第6号証(甲6):特開2019-16633号公報

甲第7号証(甲7):「レオロジーの基礎と応用(2)」、色材協会誌、2009年10月20日、第82巻、第10号、p.447~453

甲第7号証の2(甲7の2):J-STAGEのウェブページ、[online]、2025年1月6日(出力日)、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/shikizai/82/10/82_10_447/_article/-char/ja/> (当審注:甲7の発行日を示す証拠)

甲第8号証(甲8):「粘弾性および動的粘弾性測定の基本概念03」、[online]、2015年、サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社、インターネット<URL:https://documents.thermofisher.com/TFS-Assets/CAD/Application-Notes/MC15004.pdf>

甲第8号証の2(甲8の2):google.comの2015年1月1日から12月31日の期間検索のウェブページ、[online]、2025年3月18日(出力日)、インターネット<URL:https://www.google.com/search?q=https%3A%2F%2Fassets.thermofisher.com%2FTFS-Assets%2FCAD%2FApplication-Notes%2FMC15004.pdf&sca_esv=a9a17715c624a2d7&rlz=1C1GCEU_jaJP1064JP1069&source=lnt&tbs=cdr%3A1%2Ccd_min%3A1%2F1%2F2015%2Ccd_max%3A12%2F31%2F2015&tbm=> (当審注:甲8が2015年1月1日から12月31日の期間にインターネットに掲載されていたことを示す証拠)

甲第8号証の3(甲8の3):google.comの2014年12月31日より前の期間検索のウェブページ、[online]、2025年3月18日(出力日)、インターネット<URL:https://www.google.com/search?q=https%3A%2F%2Fassets.thermofisher.com%2FTFS-Assets%2FCAD%2FApplication-Notes%2FMC15004.pdf&sca_esv=a9a17715c624a2d7&rlz=1C1GCEU_jaJP1064JP1069&source=lnt&tbs=cdr%3A1%2Ccd_min%3A%2Ccd_max%3A12%2F31%2F2014&tbm=> (当審注:甲8が2014年12月31日より前にインターネットに掲載されていなかったことを示す証拠)

甲第9号証(甲9):「製品ガイド ダイシングテープ【UV硬化型】」、[online]、2024年、株式会社イワナカコーポレーション、インターネット<URL:https://www.iwanaka-corp.co.jp/struct/wp-content/uploads/b60f68372b9a9777bbbbede398aa9e37.pdf>

甲第9号証の2(甲9の2):bing.comの検索結果のウェブページ、[online]、インターネット<URL:https://www.bing.com/search?q=%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%97%E5%BC%95%E5%BC%B5%E5%BC%B7%E5%BA%A6&form=ANNH01&refig=eee287e230b845ee89dbbf25ff58ffdd&pc=DCTS> (当審注:甲9が株式会社イワナカコーポレーションが掲載者であることを示す証拠)

甲第9号証の3(甲9の3):google.comの2024年1月1日から12月31日の期間検索のウェブページ、[online]、2025年3月18日(出力日)、インターネット<URL:https://www.google.com/search?q=https%3A%2F%2Fwww.iwanaka-corp.co.jp%2Fstruct%2Fwp-content%2Fuploads%2Fb60f68372b9a9777bbbbede398aa9e37.pdf&sca_esv=a9a17715c624a2d7&rlz=1C1GCEU_jaJP1064JP1069&source=lnt&tbs=cdr%3A1%2Ccd_min%3A1%2F1%2F2024%2Ccd_max%3A12%2F31%2F2024&tbm=> (当審注:甲9が2024年1月1日から12月31日の期間にインターネットに掲載されていたことを示す証拠)

甲第9号証の4(甲9の4):google.comの2023年12月31日より前の期間検索のウェブページ、[online]、2025年3月18日(出力日)、インターネット<URL:https://www.google.com/search?q=https%3A%2F%2Fwww.iwanaka-corp.co.jp%2Fstruct%2Fwp-content%2Fuploads%2Fb60f68372b9a9777bbbbede398aa9e37.pdf&sca_esv=a9a17715c624a2d7&rlz=1C1GCEU_jaJP1064JP1069&source=lnt&tbs=cdr%3A1%2Ccd_min%3A%2Ccd_max%3A12%2F31%2F2023&tbm=> (当審注:甲9が2023年12月31日より前にインターネットに掲載されていなかったことを示す証拠)

甲第10号証(甲10):特開2015-185591号公報

甲第11号証(甲11):特開2018-182297号公報

甲第12号証(甲12):「製品設計知識」、[online]、2024年、田口技術士事務所、インターネット<URL:https://seihin-sekkei.com/blog-pla-think-13/>

甲第12号証の2(甲12の2):田口技術士事務所 田口宏之、「製品設計の「キモ」(1)~プラスチックにおける応力とひずみの関係~)」、[online]、2017年5月14日、プラスチックス・ジャパン・ドットコム、インターネット<URL:https://plastics-japan.com/archives/2545> (当審注:甲12に記載された「2017年5月にプラスチック・ジャパン.comに寄稿した記事」を示す証拠)

甲第13号証(甲13):「機械的性質」、[online]、2021年、東レ株式会社、インターネット<URL:https://www.plastics.toray/ja/technical/amilan/tec_015.html>

甲第13号証の2(甲13の2):google.comの2021年1月1日から12月31日の期間検索のウェブページ、[online]、2025年3月18日(出力日)、インターネット<URL:https://www.google.com/search?q=https%3A%2F%2Fwww.plastics.toray%2Fja%2Ftechnical%2Familan%2Ftec_015.html&sca_esv=a9a17715c624a2d7&rlz=1C1GCEU_jaJP1064JP1069&source=lnt&tbs=cdr%3A1%2Ccd_min%3A1%2F1%2F2021%2Ccd_max%3A12%2F31%2F2021&tbm=> (当審注:甲13が2021年1月1日から12月31日の期間にインターネットに掲載されていたことを示す証拠)

甲第13号証の3(甲13の3):google.comの2020年12月31日より前の期間検索のウェブページ、[online]、2025年3月18日(出力日)、インターネット<URL:https://www.google.com/search?q=https%3A%2F%2Fwww.plastics.toray%2Fja%2Ftechnical%2Familan%2Ftec_015.html&sca_esv=a9a17715c624a2d7&rlz=1C1GCEU_jaJP1064JP1069&source=lnt&tbs=cdr%3A1%2Ccd_min%3A%2Ccd_max%3A12%2F31%2F2020&tbm=> (当審注:甲13が2020年12月31日より前にインターネットに掲載されていなかったことを示す証拠)

甲第14号証(甲14):特開2018-178002号公報

甲第15号証(甲15):「引張応力、引張強度の計算」、[online]、2021年10月13日、株式会社キャットテックラボ、インターネット<URL:https://cattech-lab.com/science-tools/tensile-stress/>

甲第15号証の2(甲15の2):google.comの2019年1月1日から12月31日の期間検索のウェブページ、[online]、2025年3月18日(出力日)、インターネット<URL:https://www.google.com/search?q=https%3A%2F%2Fcattech-lab.com%2Fscience-tools%2Ftensile-stress%2F&sca_esv=a9a17715c624a2d7&rlz=1C1GCEU_jaJP1064JP1069&source=lnt&tbs=cdr%3A1%2Ccd_min%3A1%2F1%2F2019%2Ccd_max%3A12%2F31%2F2019&tbm=> (当審注:甲15が2019年1月1日から12月31日の期間にインターネットに掲載されていたことを示す証拠)

甲第15号証の3(甲15の3):google.comの2018年12月31日より前の期間検索のウェブページ、[online]、2025年3月18日(出力日)、インターネット<URL:https://www.google.com/search?q=https%3A%2F%2Fcattech-lab.com%2Fscience-tools%2Ftensile-stress%2F&sca_esv=a9a17715c624a2d7&rlz=1C1GCEU_jaJP1064JP1069&source=lnt&tbs=cdr%3A1%2Ccd_min%3A%2Ccd_max%3A12%2F31%2F2018&tbm=> (当審注:甲15が2018年12月31日より前にインターネットに掲載されていなかったことを示す証拠)

甲第15号証の4(甲15の4):「引張応力、引張強度の計算」、[online]、2019年、株式会社キャットテックラボ、インターネット<URL:https://cattech-lab.com/science-tools/tensile-stress/> (当審注:甲15のウェブページを画面保存したもの。甲15の公開日が2019年9月26日で、更新日が2021年10月13日であることを示す証拠)

甲第16号証(甲16):特開2013-199562号公報

甲第17号証(甲17):国際公開第2015/002270号

甲第18号証(甲18):国際公開第2013/175987号

2 申立理由の概要

申立人が特許異議申立書で主張する理由のうち、取消理由通知で一部でも採用しなかった理由は、概略、次のとおりである。

(1)申立理由1(サポート要件違反)

本件発明1~4は、特許請求の範囲が、発明の詳細な説明に記載したものではない。よって、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2)申立理由2(実施可能要件違反)

本件発明1~4は、これらの発明を実施することができる程度に、明細書に必要な事項を記載しているとは認められない。よって、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

(3)申立理由3(甲1を主引用例とする進歩性違反)

本件発明1~4は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲1に記載された発明及び甲2~甲18に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)申立理由4(甲2を主引用例とする進歩性違反)

本件発明1~4は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲18に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)申立理由5(甲3を主引用例とする進歩性違反)

本件発明1~4は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲3に記載された発明及び甲1、甲2、甲4~甲18に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)申立理由6(甲4を主引用例とする進歩性違反)

本件発明1~4は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲4に記載された発明及び甲1~甲3、甲5~甲18に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)申立理由7(甲5を主引用例とする進歩性違反)

本件発明1~4は、本件特許の出願日前に日本国内又は外国において頒布された甲5に記載された発明及び甲1~甲4、甲6~甲18に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 取消理由通知の取消理由について

1 取消理由の概要

当審において、令和7年6月25日付けで特許権者に通知した取消理由通知の取消理由の概要は次のとおりである。

(1) 取消理由1(サポート要件違反)

本件発明1~4は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

ア 「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」及び「-5°Cにおける30%引張応力」の上限値が特定されていないことによって、課題を解決できないものを含んでいる。

イ 「割断性」の評価をどのように行ったのか明らかでないから、課題を解決できているのか理解することができない。

(2)取消理由2(進歩性違反)

本件発明1~4は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、本件特許出願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~4は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

<引用文献等一覧>

1.引用文献1(甲6):特開2019-16633号公報

2.引用文献2(甲3):国際公開2019/008808号

2 取消理由1(サポート要件違反)についての当審の判断

(1)「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」及び「-5°Cにおける30%引張応力」の上限値について

本件発明1は、上記第3に記載したとおりのものであり、本件訂正により、「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」及び「-5°Cにおける30%引張応力」の上限値がそれぞれ特定された。これにより、本件発明1は、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとなった。

(2)「割断性」の評価について

特許権者は、令和7年8月29日提出の意見書(3頁下から5行~最終行)において、「本件発明における均一割断性の評価では、割断「率」をみているので、一定の基準のもとでチップのワレや欠け等の割断不良の有無をみて均一に割断されているか否かを判断し、割断不良の無いチップの数を割断されたチップの総数で除することにより割断率を算出していることも、当業者であれば十分に理解することができます。」と主張した。これにより、本件特許の明細書(以下、「本件明細書」という。)の【0101】に記載された「割断性」の評価方法は、「顕微鏡観察によりダイボンド層付き半導体チップの割断部を観察」することにより、「チップの割れや欠け等の割断不良の有無」を取得し、割断不良の無いチップの数を割断されたチップの総数で除することにより「割断率」を算出していることが理解でき、【0113】の【表1】において、割断率が90%以上で「○」と評価された実施例1~9は、本件発明の課題を解決できるものであることが明らかとなった。

(3)小括

以上(1)、(2)によれば、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載ものであると認められる。また、本件発明3、4も同様であり、本件発明2は本件訂正により削除された。

よって、サポート要件違反についての取消理由1は解消された。

3 取消理由2(進歩性)についての当審の判断

(1)引用文献の記載、引用発明等

ア 引用文献1(申立人が提出した甲6)

(ア)引用文献1の記載

本件特許出願前(優先日前)に公開された引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付した。以下同様。)

「【技術分野】

【0001】

本発明は、ダイシングテープ、ダイシングダイボンドフィルム、及び半導体装置の製造方法に関する。より詳細には、本発明は、ダイシングテープ、該ダイシングテープを用いたダイシングダイボンドフィルム、及び該ダイシングダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法に関する。」

「【0005】

そこで、近年、半導体ウエハの表面に溝を形成し、その後裏面研削を行うことにより、個々の半導体チップを得る方法(「DBG(Dicing Before Grinding)」と称する場合がある)(例えば、特許文献2参照)や、半導体ウエハにおける分割予定ラインにレーザー光を照射して改質領域を形成することにより、半導体ウエハを分割予定ラインにて容易に分割可能とした後、この半導体ウエハをダイシングダイボンドフィルムに貼り付け、その後、

ダイシングテープを低温下(例えば、-25~0°C)にてエキスパンド(以下、「クールエキスパンド」と称する場合がある)することにより、半導体ウエハとダイボンドフィルムを共に割断させて、個々の半導体チップ(ダイボンドフィルム付き半導体チップ)を得る方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。これは、いわゆる、ステルスダイシング(登録商標)と呼ばれる方法である

。また、DBGにおいても、得られた個々の半導体チップをダイシングダイボンドフィルムに貼り付け、その後、ダイシングテープをクールエキスパンドすることによりダイボンドフィルムを割断させて、個々のダイボンドフィルム付き半導体チップを得る方法も知られている。

・・・

【0007】

DBGや

ステルスダイシング等において、ダイボンドフィルムを割断した後は、ダイシングダイボンドフィルムを常温付近でエキスパンド(以下、「常温エキスパンド」と称する場合がある)して隣接する個々のダイボンドフィルム付き半導体チップ同士の間隔を広げ

、その後半導体チップの外周部分を熱収縮(以下、「ヒートシュリンク」と称する場合がある)させて半導体チップ同士の間隔を広げたまま固定することにより、得られた個々のダイボンドフィルム付き半導体チップのピックアップを容易に行うことができる。

【0008】

近年、半導体の高容量化のニーズにより回路層の多層化や、シリコン層の薄層化が進んでいる。しかし、回路層の多層化により回路層の厚さ(総厚み)が増加することで、回路層に含まれる樹脂の割合が増加する傾向があり、これによって、多層化された回路層と、薄層化されたシリコン層との線膨張率の差が顕著になり、半導体チップが反りやすくなる。このため、特に、ダイシング後に得られる、ダイボンドフィルム付きの回路層が多層化された半導体チップは、ダイシングテープの粘着剤層とダイボンドフィルムとの界面で、常温エキスパンド時及びその後(例えば、ピックアップするまでの間等)に浮き(剥離)が発生しやすかった。

【0009】

本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、常温エキスパンド時及びその後において、ダイボンドフィルム付き半導体チップの浮きが起こりにくいダイシングテープ、該ダイシングテープを用いたダイシングダイボンドフィルム、及び該ダイシングダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法を提供することにある。

・・・

【0022】

図1に示すように、

ダイシングテープ1は、基材11及び基材11上に積層された粘着剤層12を備える

【0023】

ダイシングテープ1は、

上述のように、

少なくとも一方向の、23°Cの温度条件で30%延伸してから1000秒後の応力緩和率が45%以上であり

、好ましくは50%以上、より好ましくは55%以上、さらに好ましくは60%以上である。上記応力緩和率が45%以上であることにより、常温エキスパンドした際に発生した応力が早期に減少するため、常温エキスパンド時及びその後において、ダイボンドフィルム付き半導体チップの底面にかかる応力を極力抑えることができる。このため、回路層が多層化された半導体チップを用いた場合であっても、常温エキスパンド時及びその後に浮きが発生しにくい。上記応力緩和率の上限は、特に限定されず、大きいほど残存応力が早期に減少するため、ダイボンドフィルム付き半導体チップの浮きが起こりにくくなり、好ましい。なお、本明細書において、上記「少なくとも一方向の、23°Cの温度条件で30%延伸してから1000秒後の応力緩和率」を、単に「応力緩和率」と称する場合がある。

・・・

【0026】

ダイシングテープ1

は、上述のように、上記

少なくとも一方向

(すなわち、上記応力緩和率が45%以上である方向)

の、23°Cの温度条件で30%延伸してから1000秒後の応力値が4MPa以下であり

、好ましくは3.8MPa以下、より好ましくは3.5MPa以下である。上記応力値の下限は0MPaであり、低いほど残存応力が小さいこととなりダイボンドフィルム付き半導体チップの浮きがより起こりにくくなるため好ましい。上記応力値は、上記応力緩和率を算出する過程で得られる。なお、本明細書において、少なくとも一方向の、23°Cの温度条件で30%延伸してから1000秒後の応力値を、「30%延伸1000秒後の応力値」と称する場合がある。

・・・

【0028】

後述のダイボンドフィルム2の初期弾性率が高い場合、

ダイシングテープ1は、

特に限定されないが、上記少なくとも一方向(すなわち、上記応力緩和率が45%以上である方向)の、

23°Cの温度条件で30%延伸した時の応力値(上記30%延伸時の応力値)が、5MPa以上であることが好ましく

、より好ましくは6.5MPa以上、さらに好ましくは8MPa以上である。上記応力値の上限は、例えば30MPaであり、好ましくは20MPa、より好ましくは15MPaである。

上記応力値が5MPa以上であると、クールエキスパンド時に半導体ウエハやダイボンドフィルムの割断がより容易となる

。上記応力値は、上記応力緩和率を算出する過程で得られる。なお、ダイボンドフィルム2の初期弾性率が低い場合、上記30%延伸時の応力値は、5MPa未満であってもよい。

・・・

【0074】

図2に示すように、

ダイシングダイボンドフィルム3は、ダイシングテープ1と、ダイシングテープ1における粘着剤層12上に積層されたダイボンドフィルム2とを備える

。なお、図2に示す粘着剤層12は、放射線硬化型粘着剤層である。粘着剤層12の半導体ウエハ貼り付け部分に対応する部分12aは、粘着力非低減型粘着剤により形成されている領域(放射線照射により架橋度が増大しその粘着力が低下している領域)であり、他の部分12bとの粘着力の差を設けられている。これにより、上記部分12bによりダイボンドフィルム2を介してダイシング前の半導体ウエハを十分に密着固定でき、且つ、上記部分12aの密着力が低下しているためダイボンドフィルムの割断後はダイボンドフィルム付き半導体チップを容易にピックアップすることができる。

・・・

【0105】

[半導体装置の製造方法]

本発明のダイシングダイボンドフィルムを用いて、半導体装置を製造することができる

。具体的には、本発明のダイシングダイボンドフィルムにおける上記ダイボンドフィルム側に、複数の半導体チップを含む半導体ウエハの分割体、又は複数の半導体チップに個片化可能な半導体ウエハを貼り付ける工程(「工程A」と称する場合がある)と、

相対的に低温の条件下で、本発明のダイシングダイボンドフィルムにおける本発明のダイシングテープをエキスパンドして、少なくとも上記ダイボンドフィルムを割断してダイボンドフィルム付き半導体チップを得る工程(「工程B」と称する場合がある)

と、相対的に高温の条件下で、上記ダイシングテープをエキスパンドして、上記ダイボンドフィルム付き半導体チップ同士の間隔を広げる工程(「工程C」と称する場合がある)と、上記ダイボンドフィルム付き半導体チップをピックアップする工程(「工程D」と称する場合がある)とを含む製造方法により、半導体装置を製造することができる。なお、上記工程A~Dを含む半導体装置の製造方法を、「本発明の製造方法」と称する場合がある。

・・・

【実施例】

【0130】

以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。

【0131】

実施例1

(ダイシングテープの作製)

冷却管、窒素導入管、温度計、及び撹拌装置を備えた反応容器に、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)100質量部、アクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)19質量部、過酸化ベンゾイル0.4質量部、及びトルエン80質量部を入れ、窒素気流中で60°Cにて10時間重合を行い、アクリル系ポリマーAを含む溶液を得た。

このアクリル系ポリマーAを含む溶液に2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)1.2質量部を加え、空気気流中で50°Cにて60時間、付加反応を行い、アクリル系ポリマーA’を含む溶液を得た。

次に、アクリル系ポリマーA’100質量部に対し、ポリイソシアネート化合物(商品名「コロネートL」、東ソー(株)製)1.3質量部、及び光重合開始剤(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)3質量部を加えて、粘着剤組成物Aを作製した。

得られた粘着剤組成物Aを、PET系セパレータのシリコーン処理を施した面上に塗布し、120°Cで2分間加熱固化し、

厚さ10μmの粘着剤層A

を形成した。次いで、

粘着剤層Aの露出面に

基材

としてポリ塩化ビニルフィルム(商品名「V9K」、アキレス(株)製、

厚さ100μm

)

を貼り合わせ、

23°Cにて72時間保存して、

ダイシングテープAを作製した

・・・

【0141】

<評価>

実施例

及び比較例

で得られたダイシングテープ

及びダイシングダイボンドフィ

ルムについて、以下の評価を行った

結果を表1に示す

【0142】

(ダイシングテープの引張応力及び応力緩和率)

実施例

及び比較例

で得られたダイシングテープから、基材のMD方向を長さ方向として長さ140mm×幅20mmに切り出して短冊状試験片を得た

この短冊状試験片を、23°C

、50%RH

の雰囲気下で

、初期チャック間距離100mmとし、引張速度100mm/分で

引張試験機

(商品名「AFX-50NX」、(株)島津製作所製)

を用いて、伸び率30%まで延伸(伸長)させて停止して、応力値を

2000秒間

測定した

。そして、

延伸させて停止した際の応力値を「30%延伸時の応力値」

、延伸停止から1000秒経過したときの応力値を「30%延伸1000秒後の応力値」

として得た

。そして、30%延伸時の応力値をA、30%延伸1000秒後の応力値をBとし、23°Cの温度条件で30%延伸してから1000秒後の応力緩和率を下記式により求めた。

応力緩和率(%)=(A-B)/A×100

・・・

【0147】

【表1】

44

90

0001433076000001.jpg

「【図1】

28

90

0001433076000002.jpg

「【図2】

36

90

0001433076000003.jpg

a 上記【0022】によれば、引用文献1に記載された「ダイシングテープ1」は、「基材11及び基材11上に積層された粘着剤層12」を備えている。

b 上記【0023】によれば、「ダイシングテープ1」は、「少なくとも一方向の、23°Cの温度条件で30%延伸してから1000秒後の応力緩和率が45%以上」である。

c 上記【0026】によれば、「ダイシングテープ1」は、「少なくとも一方向」「の、23°Cの温度条件で30%延伸してから1000秒後の応力値が4MPa以下」である。

d 上記【0131】によれば、「ダイシングテープA」は、「厚さ10μmの粘着剤層A」「の露出面に、」「厚さ100μm」の「基材」「を貼り合わせ」たものである。なお、「ダイシングテープA」及び「粘着剤層A」は、引用文献1に開示された実施例1における「ダイシングテープ1」及び「粘着剤層12」のことであるから、以下、「ダイシングテープ1」及び「粘着剤層12」という。

e 上記【0141】によれば、表1の結果は、実施例で得られた「ダイシングテープ」の評価を行ったものである。また、上記【0142】によれば、実施例で得られた「ダイシングテープ」から、「基材のMD方向を長さ方向として長さ140mm×幅20mmに切り出して短冊状試験片を得」て、この「短冊状試験片」を、「23°C」の雰囲気下で、「引張試験機」を用いて、伸び率30%まで延伸(伸長)させて停止して、応力値を測定し、延伸させて停止した際の応力値を「30%延伸時の応力値」としたものである。

f 上記【0147】の【表1】によれば、「実施例1」の「30%延伸時の応力値」は、「10.6MPa」である。

g 上記【0074】によれば、引用文献1に記載された「ダイシングダイボンドフィルム3」は、「ダイシングテープ1と、ダイシングテープ1における粘着剤層12上に積層されたダイボンドフィルム2」を備えている。

(イ)引用発明A

上記(ア)a~fによれば、引用文献1の実施例1には、以下の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されている。(括弧内は、上記(ア)の引用元を示す。以下同様。)

「基材11及び基材11上に積層された粘着剤層12を備え、(a)

少なくとも一方向の、23°Cの温度条件で30%延伸してから1000秒後の応力緩和率が45%以上であり、(b)

少なくとも一方向の、23°Cの温度条件で30%延伸してから1000秒後の応力値が4MPa以下であるダイシングテープ1であって、(c)

厚さ10μmの粘着剤層12の露出面に、厚さ100μmの基材を貼り合わせたものであり、(d)

基材のMD方向を長さ方向として長さ140mm×幅20mmに切り出した短冊状試験片を、23°Cの雰囲気下で、引張試験機を用いて、伸び率30%まで延伸させて停止した際に測定した応力値である30%延伸時の応力値が、10.6MPaである、(e、f)

ダイシングテープ1。(a)」

(ウ)引用発明B

また、上記(ア)a~gによれば、引用文献1の実施例1には、以下の発明(以下、「引用発明B」という。)も記載されている。

「ダイシングテープ1と、ダイシングテープ1における粘着剤層12上に積層されたダイボンドフィルム2と、を備えたダイシングダイボンドフィルム3であって、(g)

ダイシングテープ1は、基材11及び基材11上に積層された粘着剤層12を備え、(a)

ダイシングテープ1は、少なくとも一方向の、23°Cの温度条件で30%延伸してから1000秒後の応力緩和率が45%以上であり、(b)

ダイシングテープ1は、少なくとも一方向の、23°Cの温度条件で30%延伸してから1000秒後の応力値が4MPa以下であり、(c)

ダイシングテープ1は、厚さ10μmの粘着剤層12の露出面に、厚さ100μmの基材を貼り合わせたものであり、(d)

ダイシングテープ1は、基材のMD方向を長さ方向として長さ140mm×幅20mmに切り出した短冊状試験片を、23°Cの雰囲気下で、引張試験機を用いて、伸び率30%まで延伸させて停止した際に測定した応力値である30%延伸時の応力値が、10.6MPaである、(e、f)

ダイシングダイボンドフィルム3。(g)」

イ 引用文献2(申立人が提出した甲3)

(ア)引用文献2の記載

本件特許出願前(優先日前)に公開された引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「[0021] 本実施形態に係る

ステルスダイシング用粘着シートは、基材と、当該基材の一方の面側に積層された粘着剤層とを備える

。基材と粘着剤層とは直接積層されていることが好ましいが、これに限定されるものではない。」

「[0068]2.基材

本実施形態に係る

ステルスダイシング用粘着シートにおける基材は、0°Cにおける貯蔵弾性率が、100MPa以上、1500MPa以下であるものが好ましい

。一般的に、基材の貯蔵弾性率が過度に低い場合、エキスパンド工程において、ステルスダイシング用粘着シートにおける半導体ウエハが積層されている領域よりも、半導体ウエハが積層されていない領域において優先的に伸張し易いものとなってしまう。しかしながら、

上記貯蔵弾性率が上記範囲であることで、ステルスダイシング用粘着シートにおける半導体ウエハが積層されている領域も良好に伸張することができ、その結果、個々のチップを効果的に切断分離することが可能となる

。なお、上記貯蔵弾性率の測定方法は、後述する試験例に示す通りである。

[0069] また、上記貯蔵弾性率が100MPa以上であると、基材が所定の剛性を示すため、剥離シート等に形成した粘着剤層を転写によって当該基材に積層することができ、効率良くステルスダイシング用粘着シートを製造することができる。さらに、ステルスダイシング用粘着シートのハンドリング性も良好になる。一方、

上記貯蔵弾性率が1500MPa以下であると、ステルスダイシング用粘着シートがクールエキスパンドによって良好に伸長する

。また、リングフレームに装着したステルスダイシング用粘着シートによって、半導体ウエハを良好に支持することができる。

[0070] 以上の観点から、

上記貯蔵弾性率の下限値は、

120MPa以上であることがより好ましく、

特に150MPa以上であることが好ましい

。また、

上記貯蔵弾性率の上限値は、

1200MPa以下であることがより好ましく、

特に1000MPa以下であることが好ましい

。」

a 上記[0021]によれば、引用文献2に記載された「ステルスダイシング用粘着シート」は、「基材」と、「当該基材の一方の面側に積層された粘着剤層」を備える。

b 上記[0068]によれば、「ステルスダイシング用粘着シート」の「基材」は、「0°Cにおける貯蔵弾性率が、100MPa以上、1500MPa以下」とすることで、「ステルスダイシング用粘着シートにおける半導体ウエハが積層されている領域も良好に伸張することができ、その結果、個々のチップを効果的に切断分離することが可能となる」。

c 上記[0069]によれば、「上記貯蔵弾性率が1500MPa以下であると、ステルスダイシング用粘着シートがクールエキスパンドによって良好に伸長する」。

d 上記[0070]によれば、「上記貯蔵弾性率」は、特に「150MPa以上」、「1000MPa以下」であることが好ましい。

e 上記b、cによれば、引用文献2の「貯蔵弾性率」は、「ステルスダイシング用粘着シート」の「伸長」に関するものであり、引き延ばしに関する指標であるから、「引張貯蔵弾性率」であるといえる。

(イ)引用文献2の記載事項

上記(ア)a~eによれば、引用文献2には、以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

「基材と、当該基材の一方の面側に積層された粘着剤層を備えるステルスダイシング用粘着シートにおいて、基材の0°Cにおける引張貯蔵弾性率を、100MPa以上、1500MPa以下とすること、特に150MPa以上、1000MPa以下とすることで、ステルスダイシング用粘着シートにおける半導体ウエハが積層されている領域も良好に伸張することができ、その結果、個々のチップを効果的に切断分離することが可能となり、また、上記引張貯蔵弾性率が1500MPa以下であると、ステルスダイシング用粘着シートがクールエキスパンドによって良好に伸長する。」

(2)本件発明1について

ア 対比

本件発明1と引用発明Aを対比する。

(ア)引用発明Aの「ダイシングテープ1」は、「粘着剤層12」の露出面に「基材」を貼り合わせたものであるから、「粘着剤層12」は「基材」層上に積層されたものであるといえる。

そうすると、引用発明Aの「ダイシングテープ1」は、本件発明1と同様の「基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープ」である点で一致する。

(イ)引用発明Aの「ダイシングテープ1」は、「基材のMD方向を長さ方向として長さ140mm×幅20mmに切り出した短冊状試験片を、23°Cの雰囲気下で、引張試験機を用いて、伸び率30%まで延伸させて停止した際に測定した応力値である30%延伸時の応力値が、10.6MPa」であって、「23°Cの雰囲気下で、引張試験機を用いて、伸び率30%まで延伸させて停止した際に測定した応力値」は、「23°Cにおける30%引張応力」といえるから、引用発明Aの「ダイシングテープ1」は、「23°Cにおける30%引張応力」が、「10.6MPa」である。

また、引用発明Aの「ダイシングテープ1」は、「厚さ10μmの粘着剤層A」と「厚さ100μmの基材」とを合わせた厚さ110μmであるから、1MPa=1N/mm

2

であることを考慮して単位を変換すると、「23°Cにおける30%引張応力」が、「11.66N/10mm」である。

そして、温度条件が低温であるほど、ダイシングテープの引張応力は大きくなることは技術常識であるから、引用発明Aの「ダイシングテープ1」は、「-5°Cにおける30%引張応力」が、「11.66N/10mm」より大きくなることは明らかである。

そうすると、引用発明Aと本件発明1は、「-5°Cにおける30%引張応力が5.5N/10mm以上」である点で共通する。

(ウ)上記(イ)で検討したように、引用発明Aの「ダイシングテープ1」は、「23°Cにおける30%引張応力」が、「11.66N/10mm」である。そして、本件明細書の【0029】をみると、「室温(23°C)」と記載されているから、引用発明Aにおける「23°C」も「室温」といえるものである。

そうすると、引用発明Aと本件発明1は、「室温における30%引張応力が3.2N/10mm以上」である点で共通する。

(エ)以上によれば、本件発明1と引用発明Aは、以下の一致点、相違点を有する。

[一致点]

基材層上に粘着剤層が積層されたダイシングテープであって、

-5°Cにおける30%引張応力が5.5N/10mm以上であり、

室温における30%引張応力が3.2N/10mm以上である

ダイシングテープ。

[相違点]

(相違点1)

本件発明1は、「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」が「100MPa以上400MPa以下」であるのに対し、引用発明Aでは、「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」が特定されていない点。

(相違点2)

本件発明1は、「-5°Cにおける30%引張応力」の上限は「30N/10mm以下」であるのに対し、引用発明Aでは、不明な点。

(相違点3)

本件発明1は、「室温における30%引張応力」の上限は「7.8N/10mm以下」であるのに対し、引用発明Aは、上記(イ)で検討したように、「室温における30%引張応力」が「11.66N/10mm」である点。

イ 判断

(ア)本件発明1は、ダイシングテープの「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」、「-5°Cにおける30%引張応力」及び「室温における30%引張応力」の3つのパラメータ(以下、「3種パラメータ」という。)が、特許請求の範囲で規定された数値範囲を満たすことにより、本件明細書の【0007】に記載された「低温条件下において、エキスパンドによる半導体ウェハから複数の半導体チップへの均一割断性をより一層向上させることができるダイシングテープ及びダイシングダイボンディングフィルムを提供する」という課題を解決するものであるから、上記3種パラメータそれぞれに係る相違点1~相違点3について、個別に検討するのではなく、まとめて検討する必要がある。

(イ)引用文献2記載事項において、「ステルスダイシング用粘着シート」の「基材の0°Cにおける引張貯蔵弾性率」が150MPa以上であることから、「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」も150MPa以上となることは明らかであるといえる。

しかしながら、引用文献2の記載はそれにとどまり、上記3種パラメータそれぞれに係る相違点1~相違点3のすべてを特定の数値又は数値範囲とすることは記載されていない。

そうすると、引用発明Aに引用文献2記載事項を組み合わせることができたとしても、相違点1~相違点3の数値範囲をすべて満たすダイシングテープとすることはできない。

よって、本件発明1は、引用発明A及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(ウ)以上のとおりであるから、本件発明1は、引用発明A及び引用文献2記載事項に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)本件発明3について

本件発明3は、本件発明1を限定した発明であり、引用発明Aと対比すると、少なくとも、上記(2)ア(エ)の相違点1~相違点3を有する。

そうすると、本件発明1が上記(2)イのとおり、引用発明A及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明3も、引用発明A及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(4)本件発明4について

本件発明4が備える「ダイシングテープ」は、本件発明1の「ダイシングテープ」と同じものであり、引用発明Bが備える「ダイシングテープ1」は、引用発明Aの「ダイシングテープ1」と同じものであるから、本件発明4と引用発明Bを対比すると、上記(2)ア(エ)の相違点1~相違点3を有する。

そうすると、本件発明1が上記(2)イのとおり、引用発明A及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件発明4も、引用発明Aの「ダイシングテープ1」を備える引用発明B及び引用文献2記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(5)申立人の主張について

申立人は、特許異議申立書171頁11行~174頁3行において、本件発明1~4は、引用文献1(甲6)に、他の公知文献や周知技術を組み合わせることにより、当業者が容易に想到し得たものに過ぎない旨主張している。

しかしながら、上記(2)イ(イ)で示したように、ダイシングテープの上記3種パラメータそれぞれに係る相違点1~相違点3のすべてを特定の数値又は数値範囲とすることについて、引用文献2(甲3)には記載されていないし、甲1、甲2、甲4、甲5、甲7~甲18のいずれにも記載されていない。また、そのように特定の数値又は数値範囲とすることが周知技術であったということもできない。

したがって、申立人の主張を採用することはできない。

(6)小括

以上によれば、本件発明1、本件発明3、本件発明4は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

よって、進歩性についての取消理由2は解消された。

第6 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について

上記第4の2で示した申立理由について、当審の判断を示す。

1 申立理由1(サポート要件違反)について

(1)本件発明1及び本件発明4の「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」及び「-5°Cにおける30%引張応力」の技術的意味及び臨界的意味について

申立人は、特許異議申立書55頁下から5行~56頁最終行、58頁3行~59頁下から6行において、本件発明1の「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」の下限値である「100MPa以上」という規定、及び、本件発明1の「-5°Cにおける30%引張応力」の下限値である「5.5N/10mm以上」という規定に関して、その技術的意味や臨界点的意味を認識することができず、サポート要件を充足していない旨主張している。

しかしながら、本件明細書の【0113】【表1】では、「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」、「-5°Cにおける30%引張応力」及び「室温における30%引張応力」の3種パラメータのすべてが、本件発明1で規定されている数値範囲となる実施例1~9において、「割断性」が「○」となり、3種パラメータの一部が本件発明1で規定されている数値範囲から外れている比較例1、2において、「割断性」が「×」となることが記載されており、特に、「割断性」が「○」となる実施例1~9において、「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」の最小値は、実施例6の「105.7MPa」であることが、「割断性」が「×」となる比較例1、2において、「-5°Cにおける30%引張応力」の最大値が、比較例1の「5.0N/10m」であることが示されている。また、【0101】には、割断率が90%以上で「○」と評価することが記載されている。

そうすると、申立人が主張する「-5°Cにおける引張貯蔵弾性率」及び「-5°Cにおける30%引張応力」に加え、「室温における30%引張応力」を含むダイシングテープの3種パラメータを本件発明1で規定されている数値範囲とすることで、割断率が90%以上となるという技術的意味及び臨界点的意味が認識できる。

(2)本件発明1(訂正前の請求項2に係る発明)の「室温における30%引張応力」について

申立人は、特許異議申立書59頁下から5行~61頁下から3行において、「室温における30%引張応力」に関し、その上限値が存在しないことのみならず、その下限値である「3.2N/10mm以上」という規定に関しても、その技術的意味や臨界点的意味を認識することができず、サポート要件を充足していない旨主張している。

しかしながら、本件発明1は、上記第3に記載したとおりのものであり、本件訂正により、「室温における30%引張応力」の上限値が特定された。

また、本件明細書の【0113】【表1】では、「割断性」が「○」となる実施例1~9において、「室温における30%引張応力」の最小値が、実施例2の「3.2N/10mm」であることが示されており、ダイシングテープの3種パラメータに含まれる「室温における30%引張応力」を、本件発明1で規定されている数値範囲とすることで、割断率が90%以上となるという技術的意味及び臨界点的意味が認識できる。

(3)本件発明3の「室温における30%引張応力に対する-5°Cにおける30%引張応力の比」について

ア 申立人は、特許異議申立書61頁下から2行~65頁10行において、「室温における30%引張応力に対する-5°Cにおける30%引張応力の比」に関し、その上限値が存在しないことのみならず、その下限値である「1.7以上」という規定に関しても、その技術的意味や臨界点的意味を認識することができず、サポート要件を充足していない旨主張している。

しかしながら、本件発明3は本件発明1の構成を含むものであり、本件発明1は、ダイシングテープの3種パラメータを本件発明1で規定されている数値範囲とすることで、発明の課題を解決できるものである。

そうすると、本件発明3も「室温における30%引張応力に対する-5°Cにおける30%引張応力の比」の技術的意味や臨界的意味の如何にかかわらず、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されたものである。

イ なお、申立人は、特許異議申立書63頁下から4行~65頁4行において、「室温における30%引張応力に対する-5°Cにおける30%引張応力の比」に関し、実施例3では「1.4」であって、比較例1及び2の「1.6」よりも低いにもかかわらず、割断性の評価結果に逆転が生じてしまっているから、「1.7以上」と規定する技術的意味や臨界点的意味は何ら見いだせない旨主張する。

しかしながら、上述のとおり、本件発明3は本件発明1の構成を含むものであり、本件発明1は、ダイシングテープの3種パラメータを本件発明1で規定されている数値範囲とすることで、発明の課題を解決できるものであるから、本件発明3も、3種パラメータを本件発明1で規定されている数値範囲とすることを前提とするものである。

しかるところ、申立人の主張は、3種パラメータを満たす実施例3と、3種パラメータを満たさない比較例1及び2の「室温における30%引張応力に対する-5°Cにおける30%引張応力の比」とを単に比較してサポート要件を充足しないと述べるものであるから、上述の前提を欠き、理由がない。

(4)小括

以上によれば、本件発明1、3は、発明の詳細な説明に記載ものであると認められる。また、本件発明4も同様であり、本件発明2は本件訂正により削除された。

よって、申立人の主張するサポート要件違反は理由がない。

2 申立理由2(実施可能要件違反)について

申立人は、特許異議申立書65頁下から8行~67頁最終行において、本件発明1、3、4は、ダイシングテープの各種パラメータを規定しているが、本件明細書を見ても、どのようにダイシングテープやダイシングダイボンドフィルムを製造すれば、そのようなパラメータを有するものができるのか理解することができず、過度な試行錯誤を要することなく本件発明1、3、4の実施をすることができない旨主張している。

しかしながら、本件明細書の【0093】~【0109】には、実施例1~9に係るダイシングテープ及びダイシングダイボンドフィルムの製造方法が記載されている。また、【0041】には、ダイシングテープの基材層を、エラストマー層と非エラストマー層の積層構造とし、エラストマー層を引張応力を緩和する応力緩和層として機能させることで、基材層を適度な硬さを有しつつ、比較的伸び易いものとすることができることが記載されており、少なくともエラストマー層と非エラストマー層の比率を調整することで、ダイシングテープの各種パラメータを調整できることは、当業者であれば十分に理解できる。

よって、申立人の主張する実施可能要件違反は理由がない。

3 申立理由3~申立理由7(甲1~甲5を主引用例とする進歩性違反)について

申立人は、特許異議申立書68頁1行~158頁3行において、本件発明1、3、4は、甲1~甲5のいずれかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである旨主張している。

しかしながら、上記第5の3(2)ア(エ)、上記第5の3(2)イ(イ)、上記第5の3(5)で示したように、甲1~甲18(甲6及び甲3は、引用文献1及び引用文献2である。)のいずれにも、上記第5の3(2)イ(ア)で示したダイシングテープの3種パラメータのすべてを特定の数値又は数値範囲とすることは記載されていないし、そのように特定の数値又は数値範囲とすることが周知技術であったということもできないから、本件発明1、3、4は、甲1~甲5のいずれかに記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。

よって、申立人の主張する進歩性違反は理由がない。

第7 むすび

以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件特許の請求項1、3、4に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件特許の請求項1、3、4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

そして、本件訂正により請求項2は削除されたから、本件特許の請求項2に係る特許異議の申立てについては対象となる請求項が存在しなくなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

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